説明

交通情報通信システム

【課題】センタの通信処理の負荷の増大を解消することができる交通情報通信システムを提供すること。
【解決手段】本発明による交通情報通信システム1は、センタと自車両及び他車両との間において交通情報を通信する路車間通信手段と、設定された目的地までの経路情報を探索する探索手段と、自車両と他車両との間において前記経路情報を通信する車車間通信手段を、自車両及び他車両に備えるとともに、自車両の車車間通信手段が自車両の経路情報を他車両の車車間通信手段に通信して、他車両の探索手段が自車両の経路情報と他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定して、他車両の車車間通信手段が自車両の車車間通信手段に応答情報を通信する場合に、自車両の路車間通信手段と他車両の路車間通信手段のいずれか一方が、センタに交通情報を通信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両からセンタに交通情報をアップロードする交通情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、渋滞情報に代表される交通情報を、複数の車両すなわちプローブカーの車載器から路側のセンタにアップロードすなわち通信して交通情報データベースを作成する交通情報通信システムがある。この場合において、複数のプローブカーから交通情報をアップロードするにあたり、通信回数が非常に多くなるためにセンタの通信処理の負荷が増大することを解消するために、目的地に応じてプローブカーを選択する交通情報通信システムが、特許文献1に記載されているように提案されている。
【特許文献1】特開2007−179099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような交通情報通信システムにおいても、目的地が異なっていても、経路上のリンクが重複する場合においてプローブカーを選択するにあたっては、複数のプローブカーからセンタがリンクに関する情報を収集する必要が生じるため、これによっても通信回数が非常に多くなり、依然としてセンタの通信処理の負荷の増大が解消できないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、センタの通信処理の負荷の増大を解消することができる交通情報通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明による交通情報通信システムは、
センタと自車両及び他車両との間において交通情報を通信する路車間通信手段と、設定された目的地までの経路情報を探索する探索手段と、自車両と他車両との間において前記経路情報を通信する車車間通信手段を、自車両及び他車両に備えるとともに、
前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を前記他車両の車車間通信手段に通信して、前記他車両の探索手段が前記自車両の経路情報と前記他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定して、前記他車両の車車間通信手段が前記自車両の車車間通信手段に応答情報を通信する場合に、前記自車両の路車間通信手段と前記他車両の路車間通信手段のいずれか一方が、前記センタに交通情報を通信することを特徴とする。
【0006】
ここで、
前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の進行方向情報を前記他車両の車車間通信手段に通信して、前記自車両の進行方向と前記他車両の進行方向が一致する場合に、前記他車両の探索手段が前記自車両の経路情報と前記他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定することが好ましい。
【0007】
これによれば、進行方向が一致しない場合を重複の判定から除外することができる。これに加えて、前記自車両の経路情報と前記他車両の経路情報の少なくとも一部が重複する場合に、前記自車両の路車間通信手段と前記他車両の路車間通信手段のいずれか一方が代表して、前記センタに交通情報を通信すなわちアップロードするので、通信回数を減らして、前記センタの通信処理の負荷を軽減することができる。
【0008】
ここで、
前記自車両が渋滞走行中又は交差点において停車中である場合に、前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を前記他車両の車車間通信手段に通信することが好ましい。
【0009】
これによれば、前記車車間通信手段による通信回数を減らすことができるとともに、前記自車両の周辺に他車両が存在する可能性が高い状況において、前記自車両の車車間通信手段による通信を行い、経路情報の重複の判定を効率よく行うことができる。
【0010】
さらに、
前記経路情報は前記目的地までのリンク情報を含み、前記自車両の車車間通信手段が当該リンク情報を前記他車両の車車間通信手段に通信するにあたって、前記自車両の探索手段が当該リンク情報の目的地リンクにダミーのリンク情報を付加することが好ましい。
【0011】
これによれば、前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を他車両の車車間通信手段に通信するにあたり、前記経路情報が含むリンク情報の終端部の目的地リンクに含まれる目的地が他車両に通信されて他車両の乗員に自車両の目的地が判明してしまうことを防止することができる。
【0012】
加えて、
前記ダミーのリンク情報は、前記目的地リンクと接続しないリンク情報であることが好ましい。
【0013】
これによれば、前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を他車両の車車間通信手段に通信するにあたり、前記経路情報が含むリンク情報の終端部に含まれる目的地が他車両に通信されて他車両の乗員に自車両の目的地が判明してしまうことを防止する効果を高めることができる。
【0014】
さらに、
前記自車両の車車間通信手段が前記リンク情報を前記他車両の車車間通信手段に通信するにあたって、当該リンク情報を分割して通信することが好ましい。この場合において、前記リンク情報を分割する手法は、リンク毎に分割しても良いし、一定時間毎に分割しても良いし、一定距離毎に分割しても良い。
【0015】
これによれば、前記自車両の車車間通信手段が通信した前記自車両の前記リンク情報が、前記他車両の前記リンク情報と重複しなくなった時点で、前記他車両の車車間通信手段から不重複であることを前記自車両の車車間通信手段に通信して、前記自車両の車車間通信手段は通信を停止して通信回数を減らすことができる。
【0016】
なお、
前記交通情報は渋滞情報を含み、それ以外にも事故規制情報、旅行時間、道路工事情報を含むものであっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センタの通信処理の負荷の増大を解消することができる交通情報通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態を示す模式図である。
【0020】
本発明に係わる交通情報通信システム1は、自車両及び他車両に備えられた、カーナビゲーションECU(Electronic Control Unit)2と、路側のセンタに備えられたサーバ3と、基地局4とを備えて構成される。カーナビゲーションECU2と、サーバ3とは、ネットワークを介して接続される。
【0021】
このネットワークは、例えば、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、衛星電話、ビーコン等の無線にて構成されるものである。
【0022】
なお、カーナビゲーションECU2とサーバ3の路車間通信を実現するネットワークは、PPPプロトコル(Point to Point Protocol)に従うものでありPPPプロトコルによりこれらの間でデータリンクを確立し、上位層であるTCP/IPプロトコル(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、TCP/IPと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)を実現して、データの送受信を可能とするものである。
【0023】
次にセンタのサーバ3について図を用いて詳細に説明する。図2は、本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態の一部をなす路側のセンタのサーバ3を示す模式図である。
【0024】
図2に示すように、サーバ3はそれぞれバスで相互に接続されているCPU71、主記憶装置72、HDDなどの記憶装置73、表示装置74、入力装置75、ドライブ装置76及び通信装置77を備えて構成される。
【0025】
CPU71は、OSやアプリケーションなどのプログラムを記憶装置73から読み込んで実行することで種々の機能を提供すると共に、サーバ3が行う処理を統括的に制御して後述する制御を行う配信データ解析部3aを構成するものである。
【0026】
主記憶装置72はRAMにより構成され、OSやプログラム、データを一時保管する作業領域を構成する。記憶装置73は、HDDやフラッシュメモリなど不揮発性メモリであり、OS、プログラム、ドライバ等のファイルを格納し記憶するとともに交通情報データベースと地図情報データベースを記憶している。
【0027】
表示装置74は、CPU71が実行するプログラムに基づく画面情報を所定の解像度や色数等で液晶ディスプレイにより描画するものであって、このディスプレイは例えば、GUI(Graphical User Interface)画面を形成し、操作に必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するものである。
【0028】
入力装置75はキーボードやマウスなどで構成され、ユーザからの様々な操作指示をサーバ3に入力するために設けられるものである。さらに、ドライブ装置76は、記憶媒体78が挿入可能に構成されており、記憶媒体78に記憶されたデータを読み取って主記憶装置72等に送信するものである。通信装置77は、前述したネットワークに接続するためのインターフェイスであり、例えばモデム、NIC等で構成されて、後述する制御を行う交通情報提供部3bを構成する。
【0029】
このように構成されるサーバ3において、CPU71がプログラムを実行することで、交通情報提供部3bが自車両又は他車両のカーナビゲーションECU2から交通情報を受信し、配信データ解析部3aが、記憶装置73に前回までに記憶されている交通情報データベースに受信した交通情報を追加し修正する。さらに、交通情報提供部3bは、修正された交通情報データベースを自車両及び他車両のカーナビゲーションECU2にネットワークを介して配信する。
【0030】
次に自車両及び他車両のカーナビゲーションECU2について図を用いて詳細に説明する。図3は、本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態の一部をなすカーナビゲーションECU2を示す模式図である。
【0031】
カーナビゲーションECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段2a、案内手段2b、表示手段2cとして機能するものである。
【0032】
カーナビゲーションECU2には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)アンテナ5と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)6と、ステアリングセンサ7と、受信機8と、データベース9と、ディスプレイ10と、スピーカ11と、タッチパネル12が接続され、さらに、CAN(Controller Area Network)等の通信規格により、ABS(Anti−Lock Brake System)13と、車車間通信装置14と、路車間通信装置15が接続される。
【0033】
GPSアンテナ5は、地球上空の複数の衛星の内三個の衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU2の探索手段2aは、例えば三角測量の原理で自車の位置つまりは経度と緯度を測定する。
【0034】
ここで、IMU6は車両のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ7は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。タッチパネル12はユーザが目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベース9はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。
【0035】
また、ディスプレイ10は入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU2の探索手段2aが探索した経路情報をカーナビゲーションECU2の案内手段2bの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示するものである。
【0036】
また、ABS13は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得される車輪速より演算しており、カーナビゲーションECU2はその車速をABS13からCAN等の通信規格による伝送により取得している。
【0037】
さらに、受信機8は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの交通情報(渋滞情報、道路の幅員情報、災害、事故の発生情報を含む)を受信する。
【0038】
上述したGPSアンテナ5を用いたカーナビゲーションECU2の探索手段2aによる自車の位置の測定は、衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは衛星からの電波をGPSアンテナ5が受信できないため、自車の位置が測定できないという問題が生じる。
【0039】
このため、GPSアンテナ5が衛星から電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU2の探索手段2aは、ABS13が検出した車速とIMU6が検出したヨーレート、ステアリングセンサ7が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算していわゆる自立航法の手法により自車の位置を測定する。これにより、GPSアンテナ5を用いた自車の位置の測定と併せて、トータルの自車位置の測定の精度を高めている。
【0040】
そして、カーナビゲーションECU2の案内手段2bは、データベース9内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置と、タッチパネル12により入力された目的地と、探索手段2aにより探索された経路情報とを併せてディスプレイ10に表示する。
【0041】
車車間通信装置14は、図示しない通信機及び受信機それらを制御するECUを含み、自車両及び他車両に搭載され、スペクトラム拡散方式を用いた無線による車車間通信を実現する車車間通信手段を構成するものである。つまり、車車間通信装置14は、探索手段2aにより探索された目的地までのリンク情報を含む経路情報を、自車両と他車両との間において通信する。
【0042】
路車間通信装置15は、図示しない通信機及び受信機それらを制御するECUを含み、自車両及び他車両に搭載され、前述したネットワークを介してセンタのサーバ3との間において路車間通信を実現する路車間通信手段を構成するものである。つまり、路車間通信装置15は、センタと自車両及び他車両との間において交通情報を通信する。
【0043】
以下に以上述べた自車両及び他車両の、カーナビゲーションECU2、車車間通信装置14、路車間通信装置15の制御内容を、経路情報の具体例を用いて説明する。図4〜6は、本発明に係わる交通情報通信システム1の制御内容を示す模式図である。
【0044】
自車両の車車間通信装置14は、自車両の経路情報を他車両の車車間通信装置14に通信して、他車両のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが自車両の経路情報と他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定して、他車両の車車間通信装置14が自車両の車車間通信装置14に応答情報を通信する場合に、自車両の路車間通信装置15と他車両の路車間通信手段15のいずれか一方が、センタに交通情報を通信する。
【0045】
ここで、自車両の車車間通信装置14は自車両の進行方向情報を他車両の車車間通信装置14に通信し、自車両の進行方向と他車両の進行方向が一致する場合に、他車両のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが自車両の経路情報と他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定する。
【0046】
さらに、自車両が渋滞走行中又は交差点において停車中である場合に、自車両の車車間通信装置14が自車両の経路情報を他車両の車車間通信装置14に通信する。
【0047】
例えば、図4に示すように、自車両がA車、他車両がB車であり、A車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが探索した経路情報すなわちリンク情報が、「1→24→32→6→98→18→4→77→84→52→46→62→23→9→38→81→13→71→3→53→67→38→114→93→109」であって、A車が交差点において赤信号で停車して信号待ちをしており、経路情報のリンク番号に下線がついておらず、経路重複フラグが0の場合に、A車の車車間通信装置14は、時にB車を含む周囲の車の車車間通信装置14に対して図4中円で示すA車の車車間通信の範囲内において車車間通信を開始する。
【0048】
加えて、経路情報は目的地までのリンク情報であって、自車両の車車間通信装置14がリンク情報を他車両の車車間通信装置14に通信するにあたって、自車両のカーナビゲーションECU2の探索手段2aがリンク情報の目的地リンクにダミーのリンク情報を付加する。なお、ダミーのリンク情報は、目的地リンクと接続しないリンク情報としてカーナビゲーションECU2の探索手段2aが生成する。
【0049】
例えば、図5に示すように、A車の経路情報の終端部の目的地リンクの番号「109」に対するダミーのリンク情報として、「137→111→98→111」を自車両つまりはA車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが生成して、目的地リンクの番号「109」に付加する。
【0050】
さらに、自車両の車車間通信装置14がリンク情報を他車両の車車間通信装置14に通信するにあたって、リンク情報を分割して通信する。この場合において、リンク情報を分割する手法は、リンク毎に分割しても良いし、一定時間毎に分割しても良いし、一定距離毎に分割しても良い。なお、交通情報は渋滞情報を含み、それ以外にも事故規制情報、旅行時間、道路工事情報を含むものであっても良い。
【0051】
例えば、図6に示すように、A車の経路情報すなわちリンク情報が「1→24→32→6→98→18→4→77→84→52→46→62→23→9→38→81→13→71→3→53→67→38→114→93→109」であって、B車の経路情報すなわちリンク情報が「1→24→32→6→98→18→4→77→84→52→46→62→23→8→80→78→54→99→2→87→25→101→121→104→201」である場合に、自車両であるA車の車車間通信装置14は3つのリンクの塊毎にリンク情報を他車両であるB車の車車間通信装置14に通信する。
【0052】
B車の車車間通信装置14により受信されたA車のリンク情報は、B車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aにより、B車のリンク情報と比較されて、重複している場合には、B車のリンク情報の「1→24→32」の部分に下線を引いて経路重複フラグを1とし、他車両であるB車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが自車両の経路情報と他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定して、B車の車車間通信装置14がA車の車車間通信装置14に応答情報を通信して、次の3つのリンクを要求する。
【0053】
この応答情報をA車の車車間通信装置14が受信すると、A車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aにより、A車のリンク情報の「1→24→32」の部分に二重の下線を引いて経路重複フラグを2とし、A車の車車間通信装置14は次の3つのリンクの塊をB車の車車間通信装置14に通信する。この場合において、A車の路車間通信装置15とB車の路車間通信手段15のいずれか一方ここではA車の路車間通信装置15が、センタに交通情報を通信する。
【0054】
以下に以上述べた自車両及び他車両の、カーナビゲーションECU2、車車間通信装置14、路車間通信装置15の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図7は、本発明に係わる交通情報通信システム1の制御内容を示すフローチャートである。
【0055】
S1において、自車両であるA車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aは設定された目的地に基づいて経路情報すなわちリンク情報を探索する。この場合において、リンク情報に含まれるリンク番号は経路重複フラグを有しており、センタに交通情報を送信するためのリンク情報においては経路情報フラグを0とする。
【0056】
S2においてA車が出発した後、S3において、A車の車車間通信装置14は自車両が渋滞走行中である又は交差点において停止中であるかどうかを、ABS13から取得した車速と、カーナビゲーションECU2の探索手段2aから取得した自車の位置から判定し、条件成立の場合はS4にすすみ、条件不成立の場合にはS3に戻る。
【0057】
S4においてリンク情報の経路重複フラグが0であるかどうかを判定し、条件成立の場合にはS5にすすみ、条件不成立の場合にはS3に戻る。
【0058】
S5において、A車の車車間通信装置14はB車を含む周囲の車に進行方向を含む情報を送信し、S6において、B車の車車間通信装置14は受信したA車の進行方向と、B車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aから取得したB車の進行方向が同じすなわち一致しているかどうかを判定し、条件成立の場合にはS7にすすみ、条件不成立の場合にはS3に戻る。
【0059】
S7において、A車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aはリンク情報を3リンク毎に分割し、S8にすすむ。S8において、A車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aはB車の車車間通信装置14に通信すなわち送っていないリンク情報の距離又は残リンク情報が規定値以上であるかどうかを判定し、条件成立の場合にはS9にすすみ、条件不成立の場合にはS12にすすむ。
【0060】
S12において、A車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aは、A車のリンク情報の後端部の目的地リンクの後に、ダミーのリンク情報を生成して付加する。付加するダミーのリンク情報の経路重複フラグは1とする。
【0061】
S9において、A車の車車間通信装置14は分割されたリンク情報を車車間通信によりB車を含む周囲の車に送るすなわち通信して、S10にすすむ。周囲の車の内B車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aは、受信したA車のリンク情報が自分すなわちB車のリンク情報と重複しているかどうかを判定し、条件成立の場合にはS11にすすみ、条件不成立の場合にはS3に戻る。
【0062】
S11において、受け手であるB車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aはB車のリンク情報の経路重複フラグを1にして、送り手であるA車のカーナビゲーションECU2の探索手段2AはA車のリンク情報の経路重複フラグを2とするとともに、A車の路車間通信装置15が代表してセンタに交通情報を通信する。
【0063】
これらの制御内容により実現される本実施例の交通情報通信システム1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0064】
すなわち、自車両であるA車の車車間通信装置14が自車両の進行方向情報を他車両の車車間通信装置14に通信して、自車両であるA車の進行方向と他車両であるB車の進行方向が一致する場合に、他車両であるB車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aが自車両であるA車の経路情報と他車両であるB車の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定することにより、進行方向が一致しない場合を経路情報の重複の判定から除外することができ、無駄な処理を省略することができる。
【0065】
これに加えて、自車両であるA車の経路情報と他車両であるB車の経路情報の少なくとも一部が重複する場合に、自車両であるA車の路車間通信装置15と他車両であるB車の路車間通信装置15のいずれか一方が代表して、センタに交通情報を通信すなわちアップロードするので、通信回数を減らして、センタの通信処理の負荷を軽減することができる。
【0066】
また、自車両であるA車が渋滞走行中又は交差点において停車中である場合に、自車両であるA車の車車間通信装置14が自車両であるA車の経路情報を、B車を含む他車両の車車間通信装置14に通信することにより、車車間通信装置14による通信回数を減らすことができるとともに、自車両であるA車の周辺すなわち図4に示した車車間通信の範囲に他車両が存在する可能性が高い状況において、自車両であるA車の車車間通信装置14による通信を行い、経路情報の重複の判定を効率よく行うことができる。
【0067】
さらに、経路情報が目的地までのリンク情報を含み、自車両であるA車の車車間通信装置14がリンク情報をB車を含む他車両の車車間通信装置14に通信するにあたって、自車両であるA車のカーナビゲーションECU2の探索手段2aがリンク情報の目的地リンクにダミーのリンク情報を付加することにより、自車両であるA車の車車間通信装置14が自車両であるA車の経路情報を、B車を含む他車両の車車間通信装置14に通信するにあたり、経路情報が含むリンク情報の終端部の目的地リンクに含まれる目的地が他車両に通信されて他車両の乗員に自車両の目的地が判明してしまうことを防止することができる。
【0068】
加えて、ダミーのリンク情報を、目的地リンクと接続しないリンク情報として生成することにより、自車両であるA車の車車間通信装置14が自車両であるA車の経路情報をB車を含む他車両の車車間通信装置14に通信するにあたり、経路情報が含むリンク情報の終端部に含まれる目的地が他車両に通信されて他車両の乗員に自車両の目的地が判明してしまうことを防止する効果をさらに高めることができる。
【0069】
さらに、自車両であるA車の車車間通信装置14がリンク情報を、B車を含む他車両の車車間通信装置14に通信するにあたって、リンク情報を分割して通信することにより、自車両であるA車の車車間通信装置14が通信した自車両であるA車のリンク情報が、他車両のリンク情報と重複しなくなった時点で、他車両の車車間通信装置14から不重複であることを自車両であるA車の車車間通信装置14に通信して、自車両であるA車の車車間通信装置14は通信を停止して通信回数を減らすことができる。
【0070】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0071】
例えば、本実施例においては、自車両であるA車の経路情報と他車両であるB車の経路情報の少なくとも一部が重複する場合に、自車両であるA車の路車間通信装置15と他車両であるB車の路車間通信装置15のいずれか一方のうち、A車の路車間通信装置15がセンタに交通情報をアップロードしたが、B車の路車間通信装置15が代表して、センタに交通情報を通信すなわちアップロードする構成としても良い。
【0072】
また、本実施例においては車速をABS13から取得したが、これもエンジンECUやトランスミッションECU等の他の車載機器から取得することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、センタの通信処理の負荷の増大を解消することができる交通情報通信システムに関するものであり、比較的軽微な制御上の変更により、所望の効果を得ることができるので、通常の乗用車、トラック、バス等のいずれにも適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る交通情報通信システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る交通情報通信システムの一実施形態の一部を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る交通情報通信システムの一実施形態の一部を示すブロック図である。
【図4】本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態の制御内容を示す模式図である。
【図5】本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態の制御内容を示す模式図である。
【図6】本発明に係わる交通情報通信システムの一実施形態の制御内容を示す模式図である。
【図7】本発明に係る交通情報通信システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 交通情報通信システム
2 カーナビゲーションECU
3 サーバ
4 基地局
5 GPSアンテナ
6 IMU
7 ステアリングセンサ
8 受信機
9 データベース
10 ディスプレイ
11 スピーカ
12 タッチパネル
13 ABS
14 車車間通信装置
15 路車間通信装置
71 CPU
72 主記憶装置
73 記憶装置
74 表示装置
75 入力装置
76 ドライブ装置
77 通信装置
78 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタと自車両及び他車両との間において交通情報を通信する路車間通信手段と、設定された目的地までの経路情報を探索する探索手段と、自車両と他車両との間において前記経路情報を通信する車車間通信手段を、自車両及び他車両に備えるとともに、
前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を前記他車両の車車間通信手段に通信して、前記他車両の探索手段が前記自車両の経路情報と前記他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定して、前記他車両の車車間通信手段が前記自車両の車車間通信手段に応答情報を通信する場合に、前記自車両の路車間通信手段と前記他車両の路車間通信手段のいずれか一方が、前記センタに交通情報を通信することを特徴とする交通情報通信システム。
【請求項2】
前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の進行方向情報を前記他車両の車車間通信手段に通信して、前記自車両の進行方向と前記他車両の進行方向が一致する場合に、前記他車両の探索手段が前記自車両の経路情報と前記他車両の経路情報の少なくとも一部が重複すると判定することを特徴とする請求項1に記載の交通情報システム。
【請求項3】
前記自車両が渋滞走行中又は交差点において停車中である場合に、前記自車両の車車間通信手段が前記自車両の経路情報を前記他車両の車車間通信手段に通信することを特徴とする請求項1又は2に記載の交通情報通信システム。
【請求項4】
前記経路情報は前記目的地までのリンク情報を含み、前記自車両の車車間通信手段が当該リンク情報を前記他車両の車車間通信手段に通信するにあたって、前記自車両の探索手段が当該リンク情報の目的地リンクにダミーのリンク情報を付加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の交通情報システム。
【請求項5】
前記ダミーのリンク情報は、前記目的地リンクと接続しないリンク情報であることを特徴とする請求項4に記載の交通情報システム。
【請求項6】
前記自車両の車車間通信手段が前記リンク情報を前記他車両の車車間通信手段に通信するにあたって、当該リンク情報を分割して通信することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交通情報システム。
【請求項7】
前記交通情報が渋滞情報を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交通情報システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−59092(P2009−59092A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224644(P2007−224644)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】