説明

作業車両

【課題】排気ガスの排出経路に設けているディーゼルパティキュレートフィルタの状態把握、及び再生の容易化。
【解決手段】排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタを備えたディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタの上流側及び下流側の排気ガス圧力を圧力センサで測定可能に構成し、エンジン停止直前の圧力センサの差圧が所定値以上の圧力を検出すると、エンジン停止後であっても作業車両の電源を自動的に起動して作業者への報知を行ない、作業者が選択スイッチで再生モードを選択すると、エンジンが自動的に始動してアイドリング回転数でディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行なう構成とし、前記圧力センサの差圧が所定値以下になると、自動的にエンジン停止と電源停止を行なうことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ、及びコモンレールを備えたディーゼルエンジンを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を再生させるにあたり、DPF前後の圧力を検出して所定値以上になると絞り弁を絞ってDPFの温度を上昇させてDPFを再生する構成である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−90359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、一旦エンジンを停止してしまうと、DPFの再生は行なわれず、次回の運転時にはDPFは詰った状態であるので、エンジン馬力の低下により効率の良い運転ができないという欠点がある。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを搭載した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を備えたディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側及び下流側の排気ガス圧力を圧力センサ(58),(53)で測定可能に構成し、エンジン停止直前の圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、エンジン停止後であっても作業車両の電源を自動的に起動して作業者への報知を行ない、作業者が選択スイッチ(67)で再生モードを選択すると、エンジンが自動的に始動してアイドリング回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生を行なう構成とし、前記圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以下になると、自動的にエンジン停止と電源停止を行なうことを特徴とする作業車両としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、燃焼した排気ガスはシリンダから出ていくが、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)は排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集する。しかし、低負荷状態が長時間続くと粒状化物質(PM)が蓄積状態となって詰ってしまう。この詰り状態を圧力センサ(58),(53)で測定する。
【0007】
エンジン停止直前の圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、エンジン停止後であっても作業車両の電源を自動的に起動して作業者への報知を行なう。そして、作業者が選択スイッチ(67)で再生モードを選択すると、エンジンが自動的に始動してアイドリング回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生を行なう。その後、圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以下になると、自動的にエンジン停止と電源停止を行なう。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記ディーゼルエンジンにコモンレール(1)を設けるとともに前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の下流側に空燃費センサ(63)を設け、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生中に空燃費センサ(63)の検出値が適正な値となるようにコモンレール(1)からの燃料噴射制御を行うように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業車両としたものである。
【0009】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、ディーゼルエンジンにコモンレール(1)を設け、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の下流側に空燃費センサ(63)を設ける。ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生中に空燃費センサ(63)の検出値が適正な値となるようにコモンレール(1)からの燃料噴射制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、エンジン停止後においても、エンジン停止直前のディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側及び下流側の排気ガス圧力の差圧が所定値以上であると、エンジン停止後であっても作業車両の電源を自動的に起動して作業者への報知を行なうので、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の状態を容易に把握することが可能となる。その後、作業者が選択スイッチ(67)で再生モードを選択すると、エンジンが自動的に始動してアイドリング回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生を行ない、圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以下になると、自動的にエンジン停止と電源停止を行なうので、再生中であっても、作業者は本機側から離れてその他の作業などを行なうことが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生中に空燃費センサ(63)の検出値が適正な値となるようにコモンレール(1)からの燃料噴射制御を行うので、再生中の燃費が向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0013】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0014】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0015】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0016】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0017】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0018】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0019】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0020】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0021】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0022】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0023】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0024】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0025】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0026】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0027】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0028】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0029】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0030】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0031】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0032】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)を設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0033】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0034】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0035】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。また、圧力センサ52の替わりにDOC46aとDPF46bとの間に圧力センサ58を設ける構成としてもよい。
【0036】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0037】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0038】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0039】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0040】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0041】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ59を設けているので、この温度センサ59による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0042】
前記絞り弁47を絞ってDPF46bの強制再生を行なう場合において、エンジン回転数を低い回転数にして供給酸素量を増加させるとともに、排気ガス流速が減少することで温度を上昇しやすくしていた。ところが、再生中にエンジン回転数がローアイドルまたはその近傍に変更された場合、供給酸素量の増加と流速の減少により、煤が急速に燃焼してしまう。その結果、温度が急速に上昇してDPF46bが損傷してしまう可能性がある。そこで、最高温度が許容温度を超えないようにする煤を管理する必要がある。
【0043】
このために、温度センサ59が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域まで上昇させるように構成する。これにより、排気ガスの流速が速くなるので最高温度が下がり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。また、前記温度センサ59の所定値の値を限界値近傍で制御すると、DPF46bの再生を効率よく行なうことができるようになる。
【0044】
前記エンジン回転数を中速域まで上昇させるにあたり、一旦最高回転数まで上昇させ、その後中速域まで減速させるように構成してもよい、これにより、一旦排気ガスが最高速度で流れるので、予熱などでDPF46bが加熱されてしまって閾値の温度を超えてしまうことを防止できるようになる。
【0045】
また、DPF46bの強制再生中において、前述のようにエンジン回転数をローアイドルに移行するときにおいて、ポスト噴射を中断し、その後エンジン回転数を最高回転数まで上昇させ、中速域に移行する段階でポスト噴射を再開する構成とする。これにより、排気ガス温度の急激な上昇が抑制できるので、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【0046】
DPF46b前後の差圧が所定値以上になった場合、作業後に運転者がDPF46bの再生モードを選択することで、自動でDPF46bの再生を行い、DPF46b再生後は自動でエンジンを停止するように構成する。DPF46b前後の差圧を圧力センサ58、53で監視する。エンジン停止直前のDPF46b前後差圧が所定値以上であると、警告ランプやアラームで報知し、運転者は自らDPF46bの再生を行なうスイッチ(図示せず)を操作する。
【0047】
そして、エンジンキーが切りの位置になっても、前記再生モードを選択していることで、エンジンはアイドリング状態で回転を維持し、DPF46bの再生を実行する。DPF46b前後の差圧が所定値以下になると、エンジンを自動で停止する。
【0048】
これにより、作業終了後であっても自動でDPF46bの再生、エンジン停止が可能となるために、運転者は本機から離れて他の作業ができるようになる。
また、図6に示すように、一旦エンジンを停止しても、エンジン停止直前のDPF46bの差圧が所定値以上であれば、警告(ランプやアラーム)を行い、作業者の選択でスイッチ67を操作することで、キースイッチは切りであるにもかかわらず、自動でエンジンを始動してDPF46bの再生を行い、再生が終了すると自動でエンジンを停止するように構成してもよい。
【0049】
また、図7に示すように、DPF46b前後の差圧が所定値以上になった場合は、キースイッチを切りにしてもエンジン停止せず、アイドリング状態で運転継続して再生を行なうように構成してもよい。そして、DPF46b再生後は自動でエンジンを停止するように構成してもよい。
【0050】
DPF46bの再生を行なうときには、図5に示すように、吸気側の空気を管路61からDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。即ち、DPF46bの再生を行なうときには、バルブ60を開いて酸素量の多い過給器TB上流側の吸気側の空気をDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。これにより、再生効率が向上するようになる。
【0051】
また、DPF46bの温度を温度センサ62、59で監視し、3段階のステップで再生時の昇温を確認するようにしてもよい。まず、吸気の絞り(図示せず)を行い、この吸気の絞り状態での昇温確認を行う。次に、第一ポスト噴射を行って昇温を確認する。この時点で、DPF46bの前後温度が250度に達していなければ第二ポスト噴射を行っても更なる温度上昇は見込めないので、一旦再生を中断するようにする。もちろん、250度以上であれば第二ポスト噴射を行ってDPF46bの再生を行なうようにする。
【0052】
図5に示しているように、DPF46bの下流側には空燃比センサ63を設けている。ポスト噴射を行なってDPF46bの再生を行なう場合、燃料噴射量が多くなりすぎると燃費が悪化し、少ないと温度が上昇しなくて再生ができなくなる。そこで、空燃比センサ63の値をECU100にフィードバックして噴射量を決める構成とする。これにより、適切な燃費となるとともに、DPF46bの再生の可能となる。また、前記空燃比センサ63の替わりに吸気マニホールド内の圧力値をフィードバックするように構成してもよい。
【0053】
前述のようなDPF46bの再生を行なうにあたり、複数気筒の場合、一部の気筒の燃焼を停止するように構成してもよい。このように、一部気筒の燃焼を停止することで、エンジンのフリクションは同一でもシリンダーあたりの負荷を増やして排気温度を上昇させるようにしてもよい。
【0054】
次に、図8について説明する。
この場合においては、EGR回路44は吸気マニホールド38への吸気管38aと、排気マニホールド42からの排気管42bとの間を直接接続している構成である。そして、吸気管38aとDPF46b上流側の管路66とをバイパス回路64で接続する構成としている。このバイパス回路64にはバルブ65を設けている。そして、DPF46b前後の温度が異常に高い場合には、前記バルブ65を開いて吸気側の空気を送って流速を上げてDPF46bの温度を下げるようにする。これにより、DPF46bの異常燃焼を防止可能となる。この場合、燃料噴射量を少なくするように構成することで、排気系の溶損を防止できるようになる。
【0055】
また、高回転、低負荷時において、前記バルブ65を開くことで、触媒の反応に必要な酸素の供給を行なうことが可能となる。
前記バイパス回路64からの放出は、管路66内を流れる排気ガスに対して略垂直となるように構成することで、排気ガスの拡散が行なわれるようになる。このため、DPF46bへの粒状化物質PMの堆積は均一になり、DPF46bの一部が詰まるようなことを防止できるようになる。図8に示しているEGRバルブと絞り弁については、図5で説明したEGRバルブ43と絞り弁47と同じ機能を有するものである。
【0056】
次に、図9について説明する。
L1は従来の出力を示し、L2は本提案の出力を示している。L3は従来のトルクを示し、L4は本提案のトルクを示している。
【0057】
即ち、定格出力から最大トルクと同じトルクになる回転まで、定格出力と同一出力(最大出力帯)を構成している。この最大トルクと同じトルクになる回転から最大トルクまで同一トルク(最大トルク帯)を構成している。このように構成することで、ロータリなど定格回転での高負荷作業を行なう場合に、過負荷状態になっても、トルクが急激に増大するため、大きな回転低下につながらず復帰することが可能となる。
【0058】
また、負荷状態をモニタリングし、エンジン回転(エンジン回転とミッションでもよい)により車速を制御することで、負荷状態を最適化するようにする。これにより、最大出力帯であれば同一出力のため、エンジン回転による車速の微調整が可能となり、負荷率をモニタリングし、車速を調節することにより、負荷状態を最適化することができるようになる。エンジン回転とミッションにより車速を制御すると、より滑らかな変速が可能となる。
【0059】
さらに、定常作業負荷状態を選択可能にする。これにより、最大出力帯内であれば同一出力のため、エンジン回転による車速の微調整が可能となり、負荷率をモニタリングし、ミッションによる車速変更とエンジン回転による微調整を組み合わせることにより負荷状態を最適化し、より滑らかな変速が可能となる。そして、定常作業負荷状態を選択(定常作業の負荷を軽めに設定)することにより、過負荷時のバックアップにより余裕を持たせることができるようになる。
【0060】
さらに、圃場の状態により定常作業負荷状態(出力、エンジン回転、車速、ギヤ)を自動制御する構成とする。これにより、負荷率のモニタリングにより圃場の状態を把握し、過負荷時のバックアップを考慮し、定常作業負荷(出力、エンジン回転、車速、ギヤ)を自動制御することにより、より安定した作業が可能となる。さらに、ユーザーの好みにより、スピード優先と安定性優先を選択可能にすることで、作業能率が向上するようになる。
【0061】
図5で説明したEGRバルブ43の別制御について説明する。吸気温度と冷却水温度から冷間の程度を場合分けし、補正係数によりEGRバルブ43の開度を調整して還元率を制御するように構成してもよい。冷間時のEGR還元は、シリンダーライナー及びピストンリング等の腐食磨耗を促進させるため、還元率を下げた方が耐久性が向上する。よって前述のような冷間時補正マップを設けて制御することで、耐久性が向上するようになる。補正係数としては、例えば、強冷間補正では0.6、中冷間補正では0.8、弱冷間補正では0.95程度が望ましい。ただし、ブローバイガス還元過多の場合は、補正係数ゼロにてマップによる制御を行なわないようにする。
【0062】
次に、図10について説明する。
エンジン始動時においては、安定燃焼開始の直前でアンダーシュートが発生する。特に、冷間始動時に顕著となる。この現象を防止するために、図10に示す制御を行なう構成とする。即ち、エンジン始動時に冷却水温を測定し、水温に応じて補正係数を算出して燃料噴射量の補正を行う構成とする。この補正は、アンダーシュートに入ろうとするエンジン回転数の傾きを制御するものであり、低温時においては、セルスタータ時の高回転数から燃焼時の回転数へ下がっていく移行時の傾きを小さくなるように制御する。
【0063】
また、図11に示すように、作業後にエンジン回転数が高回転状態で所定時間放置されると、自動的にアイドリング状態になるようにする。このとき、アクセルレバーは自動では動かない。そして、再びエンジン回転数を元の回転数Rに復帰させる場合は、アクセルレバーを元の位置よりも所定量D超えないと復帰しない構成とする。これにより、アクセルレバーの戻し忘れを防止できるようになる。また、前述したように、作業後にエンジン回転数が高回転状態で所定時間放置されると、自動的にアイドリング状態になるようにする構成としているが、この機能を実行させないように構成してもよい。選択スイッチ等で選択することで、作業の幅が広がるようになり、作業効率が向上するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】再生モードのフローチャート図
【図7】再生モードのフローチャート図
【図8】吸気系と排気系の模式図
【図9】性能曲線図
【図10】エンジン始動時補正のフローチャート図
【図11】エンジン回転数のタイムチャート図
【符号の説明】
【0066】
PM 粒状化物質
1 コモンレール
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
58,53 圧力センサ
63 空燃費センサ
67 選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を備えたディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側及び下流側の排気ガス圧力を圧力センサ(58),(53)で測定可能に構成し、エンジン停止直前の圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、エンジン停止後であっても作業車両の電源を自動的に起動して作業者への報知を行ない、作業者が選択スイッチ(67)で再生モードを選択すると、エンジンが自動的に始動してアイドリング回転数でディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生を行なう構成とし、前記圧力センサ(58),(53)の差圧が所定値以下になると、自動的にエンジン停止と電源停止を行なうことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ディーゼルエンジンにコモンレール(1)を設けるとともに前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の下流側に空燃費センサ(63)を設け、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生中に空燃費センサ(63)の検出値が適正な値となるようにコモンレール(1)からの燃料噴射制御を行うように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−77954(P2010−77954A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250565(P2008−250565)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】