信号レベル変換回路および位相同期回路
【課題】信号レベル変換回路の上限動作周波数を向上させる。
【解決手段】クロック信号をゲート(G)電極に受ける第1MOSトランジスタ(MOS−Tr)と,ドレイン(D)電極を第1MOS−TrのD電極に接続される第2MOS−Trと,逆相のクロック信号をG電極に受ける第3MOS−Trと,G電極およびD電極を第2MOS−TrのG電極と第3MOS−TrのD電極に接続された第4MOS−Trと,第1および第2MOS−TrのD電極から取り出した信号を受けるインバータ回路により構成されたレベル変換回路において,第2MOS−Trのソース電極と電源の間,または,第4MOS−Trのソース電極と電源の間の少なくとも一方に,並列に接続した複数の第5MOS−Trを設け,インバータ回路の出力の平均電圧が低電位側の電源と高電位側の電源の中間の電圧になるように第5MOS−Trの導通及び遮断を制御する制御回路を設ける。
【解決手段】クロック信号をゲート(G)電極に受ける第1MOSトランジスタ(MOS−Tr)と,ドレイン(D)電極を第1MOS−TrのD電極に接続される第2MOS−Trと,逆相のクロック信号をG電極に受ける第3MOS−Trと,G電極およびD電極を第2MOS−TrのG電極と第3MOS−TrのD電極に接続された第4MOS−Trと,第1および第2MOS−TrのD電極から取り出した信号を受けるインバータ回路により構成されたレベル変換回路において,第2MOS−Trのソース電極と電源の間,または,第4MOS−Trのソース電極と電源の間の少なくとも一方に,並列に接続した複数の第5MOS−Trを設け,インバータ回路の出力の平均電圧が低電位側の電源と高電位側の電源の中間の電圧になるように第5MOS−Trの導通及び遮断を制御する制御回路を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ローレベルが十分に下がりきらない(または,ハイレベルが十分に上がりきらない)電圧制御発振器の出力信号を,低電位側電源の電圧から高電位側電源の電圧までの略フル振幅で振れる信号に変換する信号レベル変換回路に関し,特に高い動作周波数が要求される場合に好適な信号レベル変換回路およびそれを使った位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の情報処理装置に使用する集積回路(いわゆるLSI)の処理能力を上げるためにはクロック信号の高速化が必要である。近年の集積回路のクロック周波数は数GHzに及ぶものもあり,今後更に高い周波数のクロック信号が必要になることはほぼ明白である。このクロック信号を供給するために,多くの場合は位相同期回路(いわゆるPLL)が使用される。位相同期回路は,発振周波数を制御信号で制御できる発振器と,この発振器の出力を分周した信号を基準クロック信号と比較する部分と,その比較結果を元に上記制御信号を介して発振周波数を制御する部分とにより構成される。
【0003】
ところが多くの場合,制御信号によって発振周波数を制御できる発振器の出力は,低電位側の電源電圧から高電位側の電源電圧の間で振れるフル振幅の信号ではなく,低電位側の電源電圧まで下がりきらない信号であったり,高電位側の電源電圧まで上がりきらない信号であったりする。このため,発振器の出力をフル振幅の信号に変換するレベル変換回路が必要となる。このレベル変換回路として,特許文献1や特許文献2に種々の回路が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているレベル変換回路は,同文献の代表図などに示されている。この回路は,閾値可変のインバータ回路とこのインバータ回路の出力の平均電圧が所望の値であるかどうかを判定する回路より成り,所望の値でない場合にはインバータ回路の閾値を変化させるように構成されている。
【0005】
特許文献2に開示されているレベル変換回路は,同文献の図3に記号LSの部分として示されている。この回路は,入力信号と同じ電圧レベルでほぼ逆極性の信号を受けるPMOSトランジスタとゲート電極およびドレイン電極を接続されたNMOSトランジスタから成る制御部と,入力信号を受けるPMOSトランジスタと制御部からの信号を受けるNMOSトランジスタから成るPMOSインバータ回路と,このPMOSインバータ回路の出力の駆動力を上げる何段かのCMOSインバータ回路によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−303554号公報
【特許文献2】特開2008−219815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているレベル変換回路の構成要素である閾値可変のインバータ回路の構成は,同文献の図6と図12に示されている。参考までに,これらの図を図9および図10に示す。これらの回路では,必要以上の寄生容量が信号経路に付くため,特に周波数の高い用途に使用する場合には高速動作の妨げになるという問題がある。
【0008】
例えば特許文献1の図6の構成では,入力端子8はPMOSトランジスタ514〜516およびNMOSトランジスタ517〜519の計6個のMOSトランジスタのゲート電極に常時接続されている。また,出力端子19は上記6個のMOSトランジスタのドレイン電極に常時接続されている。しかしながら,スイッチ素子511〜513のうちのいずれか1個もしくは2個が遮断されている時には対応するPMOSトランジスタ514〜516が機能しない。するとそのMOSトランジスタのゲート容量は不要な寄生容量であるが入力端子8に付いていることになり,ドレイン容量は不要な寄生容量であるが出力端子19に付いていることになる。スイッチ素子51A〜51Cに対応するNMOSトランジスタ517〜519のゲート容量およびドレイン容量も同様である。
【0009】
また,例えば特許文献1の図12の構成では,入力端子8はスイッチ素子506〜50Aの計5個のスイッチ素子に常時接続されている。しかしながら,これらのスイッチ素子のうちの何個かが遮断されている時にはそのスイッチ素子の容量は不要な寄生容量であるが入力端子8に付いていることになる。また,この図ではインバータ回路501〜505の出力は全て19と表記されているが,具体的にこの5本を1本にまとめるための何らかの手段が必要である。常識的には,何らかのスイッチ素子などを介して接続するかまたはインバータ回路501〜505の出力端子を高抵抗化できる構成にして直接接続することが考えられる。しかしいずれの場合も,インバータ回路501〜505からの信号線が常時信号経路に接続されることになる。このため,スイッチ素子506〜50Aのうち遮断されているスイッチ素子に対応するインバータ回路501〜505の分が不要な寄生容量として付くことになる。
【0010】
すなわち,特許文献1の図6や図12に示された構成では,入力信号や出力信号のノードに不要な寄生容量が付くことになる。すると,信号がこの回路を通過する時に不要な寄生容量まで充放電することになり,特に周波数の高い用途に使用する場合には高速動作の妨げになる。
【0011】
なお,特許文献1の図16には閾値可変のインバータ回路として動作する更に他の回路が記載されているが,この回路の出力はフル振幅にならないため本発明の目的には使えない。
【0012】
特許文献2の図3に開示されているレベル変換回路を,参考までに図11に示す。この回路は,入力信号を受けるPMOSトランジスタTp32と負荷として作用するNMOSトランジスタTn31の構成するインバータ回路がレベル変換を行なう部分である。そして,Tn31の抵抗値を最適値に保つための制御回路として,上記インバータ回路を構成するMOSトランジスタと同じ特性のPMOSトランジスタTp33およびNMOSトランジスタTn30で構成する回路がある。ところが,Tp33およびTn30の接続点の平均電圧が後段のインバータ回路IV38の閾値と必ずしも一致しないため,Tp32およびTn31が構成するインバータ回路の出力電圧が振動する範囲も最適値から多少ずれることになる。この回路を通過する信号の周波数がある程度低い場合には殆ど問題ないが,この回路が動作できる上限周波数に近くなって信号波形が正弦波に近くなると出力波形の振幅が小さくなり,上記のずれが同じであっても相対的に大きくなる。極端な場合には,Tp32およびTn31が構成するインバータ回路の出力電圧の振動する範囲が後段のインバータ回路の閾値を越えなくなって信号が消滅する。その周波数が上限動作周波数となる。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は,信号レベル変換回路の上限動作周波数を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
周期的に変化するクロック入力信号をゲート電極に受ける第1のMOSトランジスタと,ドレイン電極を上記第1のMOSトランジスタのドレイン電極に接続され負荷として作用する上記第1のMOSトランジスタとは逆の導電型の第2のMOSトランジスタと,上記クロック入力信号とほぼ逆相のクロック入力信号をゲート電極に受ける上記第1のMOSトランジスタと同じ導電型の第3のMOSトランジスタと,ゲート電極およびドレイン電極を上記第2のMOSトランジスタのゲート電極と上記第3のMOSトランジスタのドレイン電極に接続された上記第2のMOSトランジスタと同じ導電型の第4のMOSトランジスタと,上記第1および第2のMOSトランジスタのドレイン電極の接続点から取り出した信号を直接または何段かのインバータ回路を介して受ける第1のインバータ回路により構成されたレベル変換回路において,
上記第2のMOSトランジスタのソース電極と電源の間,または,上記第4のMOSトランジスタのソース電極と電源の間の少なくとも一方に,上記第2のMOSトランジスタと同じ導電型の並列に接続した複数の第5のMOSトランジスタを設け,上記第1のインバータ回路の出力の平均電圧が低電位側の電源と高電位側の電源の中間の電圧になるように上記第5のMOSトランジスタのうちのいくつかを導通させ残りを遮断させるように制御する制御回路を設けることにより,本発明の課題を解決できる。
【0015】
上記制御回路は,上記第1のインバータ回路の出力を受ける第2のインバータ回路と,上記第2のインバータ回路の出力をローパスフィルタを介して受ける第3のインバータ回路と,上記第3のインバータ回路の出力がハイレベルであればカウントアップ(またはカウントダウン)しローレベルであればカウントダウン(またはカウントアップ)するカウンタ回路により構成できる。
【発明の効果】
【0016】
レベル変換回路の上限動作周波数を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図2】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図3】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の他の一例を表わす構成図。
【図4】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の他の一例を表わす構成図。
【図5】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の更に他の一例を表わす構成図。
【図6】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の更に他の一例を表わす構成図。
【図7】本発明の位相同期回路に使用する発振器の実施形態の一例を表わす構成図。
【図8】本発明の位相同期回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図9】公知の特許文献1に記載された図面の1つ。
【図10】公知の特許文献1に記載された他の図面の1つ。
【図11】公知の特許文献2に記載された図面の1つ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明の信号レベル変換回路および位相同期回路について,いくつかの実施形態を説明する。なお,図9以降を除き同一の部分は別の図においても同一の記号で示すものとする。
【0019】
[実施形態の1]
上記課題を解決するための回路の構成の一実施形態を図1に示す。図1において,Tp1〜Tp5はPチャネル型MOSトランジスタ(以下,PMOSと称する),Tn1〜Tn23はNチャネル型MOSトランジスタ(以下,NMOSと称する),IV11とIV12はインバータ回路,C1は容量素子,R1は抵抗素子,100は制御回路,INPはクロック入力信号を入力する端子,INNはクロック入力信号と略180度位相がずれ同じ電圧レベルで変化する信号(以下,逆相クロック入力信号と称する)を入力する端子,IN2はINPへのクロック入力信号より低い周波数の第2のクロック信号を入力する端子,OUTはクロック出力信号を出力する端子,Vddは高電位側の電源端子,Vssは低電位側の電源端子,ENBLは制御信号111〜123をその時の値に固定する信号を入力する端子,111〜123は制御回路100が出力する制御信号,A点〜C点は説明に必要なその他の信号のノードを表わす。
【0020】
ここで,Tp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23は,それぞれ特性がほぼ同じになるように設計するものとする。具体的には,MOSトランジスタのゲート長およびゲート幅などの幾何学的構造を一致させると共に電流が流れる方向も一致するように配置する。Tp3およびTn3とTp4およびTn4とTp5およびTn5はそれぞれインバータ回路を構成するが,徐々に駆動能力を上げていくため後段にいくほどゲート幅の大きい(または多数を並列に接続した)MOSを使用する。C1とR1が構成するローパスフィルタの時定数はINPのクロック入力の周期より十分(数倍以上)長く,第2のクロック信号の周期はC1とR1が構成するローパスフィルタの時定数より十分(数倍以上)長くなるように設計するものとする。インバータ回路IV11やIV12は,入力容量や貫通電流を低減するためになるべくゲート幅の小さいMOSで構成する。また,制御回路100は,制御信号111〜113のうちの少なくとも1つがローレベル(以下,Lと表記する)でかつ制御信号121〜123のうちの少なくとも1つがLである場合にはA点の信号レベルにかかわらず第2のクロック信号に従って制御信号111〜113と制御信号121〜123をカウントアップし,制御信号111〜113が全てハイレベル(以下,Hと表記する)である場合にはA点がLであれば第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントダウンしA点がHであれば第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントアップし,制御信号121〜123が全てHである場合にはA点がLであれば第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントアップしA点がHであれば第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントダウンするように構成する。また制御回路100は,制御信号111〜113または制御信号121〜123が全てHである場合にはそれ以上カウントアップさせる条件になっても変化させないように構成する。
【0021】
次に,この回路の動作について説明する。制御信号111〜113のうちの少なくとも1つがLでかつ制御信号121〜123のうちの少なくとも1つがLであれば制御信号111〜113と制御信号121〜123は第2のクロック信号に従って必ずカウントアップされるため,初期状態から8サイクルの間を除き制御信号111〜113と制御信号121〜123の少なくとも一方は全てHである。ここでは先ず,制御信号111〜113と制御信号121〜123が両方とも全てHである場合から説明する。
【0022】
INNに入力される逆相クロック入力がLの時にはTp2は導通し,Tn2に流れる電流がTp2に流れる電流と釣り合うまでB点の電圧は上昇する。INNに入力される逆相クロック入力がHの時にはTp2は遮断し,Tn2が遮断するまでB点の電圧は下降する。逆相クロック入力の周波数が高くなるとB点の電圧の変化が追いつかず振幅は小さくなるが,長時間平均で見るとTn2に流れる電流がTp2に流れる電流と釣り合うはずであり,B点の電圧はその平均電流に対応する電圧付近で振動する。このB点の電圧がTn1のゲートに加えられ,Tp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23の特性がそれぞれほぼ同じであるから,INPに入力されるクロック入力がLの時にはTp1が導通してC点の電圧はVddの電圧に近付き,INPに入力されるクロック入力がHの時にはTp1が遮断してC点の電圧はVssの電圧に近付く。従って,クロック入力が比較的低周波の場合にはこのままでもC点の電圧変化がTp3〜Tp5とTn3〜Tn5が構成する3段のインバータ回路を経由してOUTに出力される。
【0023】
ところがクロック入力の周波数が高くなると,C点の電圧が十分上がりきる前にTp1が遮断したりC点の電圧が十分下がりきる前にTp1が導通したりして,C点の電圧の振幅が小さくなる。C点の電圧はB点の電圧の振動範囲を含む範囲で振動するが,プロセスばらつきなどもあるためB点の電圧の振動の中心をTp3およびTn3が構成するインバータ回路の閾値と常に一致させることはできない。従って,C点の電圧の振動の中心もTp3およびTn3が構成するインバータ回路の閾値と異なることになり,Vss側に偏ったりVdd側に偏ったりする。すると,その偏った電圧がTp3〜Tp5とTn3〜Tn5が構成する3段のインバータ回路とIV12とC1およびR1が構成するローパスフィルタとIV11を介してA点の電圧に反映される。C点の電圧が例えばVss側に偏ると,IV12の出力もVss側に偏りローパスフィルタとIV11を介してA点はHになる。すると制御信号111〜113が第2のクロック信号に従ってカウントダウンされTn11〜Tn13のうちのいくつかが遮断される。するとC点からVss端子までの経路の抵抗が上がってC点の電圧が上昇する。逆にC点の電圧がVdd側に偏ると,制御信号121〜123が第2のクロック信号に従ってカウントダウンされTn21〜Tn23のうちのいくつかが遮断される。するとB点からVss端子までの経路の抵抗が上がってB点の電圧が上昇し,Tn1の抵抗が下がる。その結果C点の電圧が下降する。そしてC点の電圧の偏りがVss側からVdd側またはVdd側からVss側に逆転すると,それまでカウントダウンされてきた制御信号の変化がカウントアップに転じ,以降は最小ビット分のアップダウンのみを繰り返す。
【0024】
この状態になるまでに必要な時間が経過した後,ENBL信号を通じて制御信号111〜113および121〜123をその時の値に固定する。この時には制御信号111〜113または121〜123の最小ビット分の変化だけでC点の電圧の偏りが逆転する状態になっているため,そのC点の電圧はTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動している。Tn11〜Tn13およびTn21〜Tn23による制御の分解能が十分に小さくなるように設定してあれば,C点の電圧の振動のほぼ中心にTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧があり,INPに入力されたクロック信号がOUTまで最も届きやすい状態にある。最初から制御信号111〜113または制御信号121〜123のいずれかにLを含む状態からスタートしても,最終的にはこの状態になる。
【0025】
ここで,Tp1およびTn1が構成するインバータの閾値電圧を制御する回路は,B点の電圧を設定する回路とTn11〜Tn13が構成する回路であり,いずれもINPやC点のノードの寄生容量を増やすものではない。また,後段のインバータ回路に付加される余分な寄生容量は,ゲート幅の小さいMOSで構成したIV12の入力容量のみであり駆動能力の最も大きいTp5およびTn5が構成するインバータで駆動するため,余分な寄生容量による上限周波数の低下は最小限である。従って,特許文献1に記載された構成の回路より高い周波数で動作させることができる。また,上述のように制御信号111〜113および制御信号121〜123によってTn11〜Tn13およびTn21〜Tn23を最適に制御するためC点の電圧を最適な範囲で振動させることができ,特許文献2に記載された構成の回路より高い周波数で動作させることができる。すなわち,特許文献1に記載された構成でも特許文献2に記載された構成でも実現できない高い周波数において動作する信号レベル変換回路を実現できる。
【0026】
次に,実施形態の1に使用する制御回路100の構成を図2に示す。図2において,IV21とIV22はインバータ回路,ND21〜ND23はNAND回路,201と202はカウンタ回路を表わす。カウンタ回路201および202には,UP/DN端子に入力する信号がHであればCK端子に入力する信号に従って出力信号をカウントアップし,Lであればカウントダウンする回路を使用する。またカウンタ回路201および202には,出力信号が全てHであればUP/DN端子に入力する信号がHであっても出力信号を変化させない回路を使用する。
【0027】
この回路は,ENBL端子に入力する信号がHであればIN2端子に入力する第2のクロック信号に従って制御信号111〜123が変化し,ENBL端子に入力する信号がLであれば制御信号111〜123は変化しない。そこで先ず,ENBL端子に入力する信号がHである場合から説明する。
【0028】
制御信号111〜113のいずれかがLである場合には,A点の信号にかかわらずND21の出力がHとなり,カウンタ回路202は第2のクロック信号に従って出力すなわち制御信号121〜123をカウントアップさせる。制御信号111〜113の全てがHである場合には,A点の信号がHであればND21の出力がHとなりカウンタ回路202は第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントアップさせ,A点の信号がLであればND21の出力がLとなりカウンタ回路202は第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントダウンさせる。制御信号121〜123のいずれかがLである場合には,A点の信号にかかわらずND22の出力がHとなり,カウンタ回路201は第2のクロック信号に従って出力すなわち制御信号111〜113をカウントアップさせる。制御信号121〜123の全てがHである場合には,A点の信号がLであればND22の出力がHとなりカウンタ回路201は第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントアップさせ,A点の信号がHであればND22の出力がLとなりカウンタ回路201は第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントダウンさせる。
【0029】
すなわち,制御信号111〜113のいずれかがLでかつ制御信号121〜123のいずれかがLである場合には両方ともカウントアップさせ,制御信号111〜113または制御信号121〜123のどちらか一方または両方がオールHであればA点の信号に基づいて反対側の制御信号をカウントアップまたはカウントダウンさせる。また,制御信号111〜113または制御信号121〜123がオールHであればそれ以上はカウントアップしないため,初期状態の後カウンタ回路201および202がオールLからオールHまでカウントアップするのに必要なサイクル数を経過すれば,制御信号111〜113または制御信号121〜123の少なくとも一方は必ずオールHである。
【0030】
ENBL端子に入力する信号をLにすれば第2のクロック信号にかかわらずND23の出力がHに固定されるため,制御信号111〜123は変化しない。従って,INPおよびINN端子にクロック信号を供給する系が安定しかつ制御信号111〜123を最適値に設定するために必要なサイクル数が経過した後は,ENBL端子に入力する信号をLにして制御信号111〜123をその時の値に固定し安定化させることができる。
【0031】
なお,この実施形態においてはTn11〜Tn13およびTn21〜Tn23をそれぞれ3個ずつ設け制御信号111〜113および制御信号121〜123をそれぞれ3ビットとする構成について説明したが,制御信号が3ビットずつに限定されないことは言うまでもない。また,Tp3〜Tp5およびTn3〜Tn5が構成するインバータが3段の場合について説明したが,これらのインバータの段数が3段に限定されないことは言うまでもない。更に,PMOSとNMOSをそっくり入れ替えてVddとVssを逆にしHとLを逆にした構成も有り得ることは言うまでもない。また,ここではTp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23の特性がほぼ同じであることを前提に説明したが,これらの特性が必ずしも一致していなくても同様の効果は得られる。
【0032】
[実施形態の2]
実施形態の1において,C点の電圧がVdd側に偏るかVss側に偏るかが明らかな場合や,いずれに偏るかを特定できるようにTp1およびTp2やTn1およびTn2を非対称に設計しておけば,Tn11〜Tn13側またはTn21〜Tn23側のいずれかのNMOSを設けない構成も可能である。Tn21〜Tn23側を設けない構成の一実施形態を図3に示す。
【0033】
この回路は,Tn11〜Tn13が全て導通していればC点の電圧がVss側に偏ることがわかっている場合に有効である。制御信号111〜113が全てHであればTn11〜Tn13が全て導通しC点の電圧がVss側に偏るため,制御信号111〜113はカウントダウンされる。制御信号111〜113が全てLになればTn11〜Tn13が全て遮断しC点の電圧がVddになるため,その前に制御信号111〜113がカウントアップする方に転じる。そしてC点の電圧がTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動する状態になった以降は実施形態の1と同じである。
【0034】
実施形態の2に使用する制御回路100の構成を図4に示す。図4に示すように,この回路はインバータ回路IV21とNAND回路ND23とカウンタ回路201によって構成される。A点がHの時は制御信号111〜113はカウントダウンされ,A点がLの時は制御信号111〜113はカウントアップされる。その他は実施形態の1に使用する制御回路100と同じである。
【0035】
[実施形態の3]
実施形態の1において,Tn11〜Tn13側を設けない構成の一実施形態を図3に示す。この回路は,Tn21〜Tn23が全て導通していればC点の電圧がVdd側に偏ることがわかっている場合に有効である。制御信号121〜123が全てHであればTn21〜Tn23が全て導通しC点の電圧がVdd側に偏るため,制御信号121〜123はカウントダウンしていく。制御信号121〜123が全てLになればTn21〜Tn23が全て遮断しB点の電圧がVddになってC点の電圧が下がりすぎるため,その前に制御信号121〜123がカウントアップする方に転じる。そしてC点の電圧がTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動する状態になった以降は実施形態の1と同じである。
【0036】
実施形態の3に使用する制御回路100の構成を図6に示す。図6に示すように,この回路はインバータ回路IV21およびIV22とNAND回路ND23とカウンタ回路202によって構成される。A点がHの時は制御信号121〜123はカウントアップされ,A点がLの時は制御信号121〜123はカウントダウンされる。その他は実施形態の1に使用する制御回路100と同じである。
【0037】
実施形態の2または実施形態の3のいずれにおいても実施形態の1と同様に,余分な寄生容量を増やすことなくC点の電圧レベルを最適値に制御できるため,特許文献1に記載された構成でも特許文献2に記載された構成でも実現できない高い周波数において動作する信号レベル変換回路を実現できる。
【0038】
[実施形態の4]
実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路にクロック入力信号および逆相クロック入力信号を供給する発振器の実施形態の1つを図7に示す。図7において,Tp71〜Tp78はPMOS,Tn71〜Tn78はNMOS,C71〜C72は容量素子,R71〜R73は抵抗素子,INPおよびINNは実施形態の1〜3のいずれかの信号レベル変換回路にクロック入力信号および逆相クロック入力信号を出力する端子,S_DGはデジタル制御信号を入力する端子,S_AGはアナログ制御信号を入力する端子,D点は説明に必要なその他の信号のノードを表わす。また,OSCはTp71〜Tp73およびTn71〜Tn73が構成する部分であり発振部を,BUFはTp74〜Tp77およびTn74〜Tn77が構成する部分でありバッファ部を,DG_CTLはTp78およびR71が構成する部分でありデジタル制御部を,AG_CTLはTn78およびC72およびR72〜R73が構成する部分でありアナログ制御部をそれぞれ表わす。OSCは3段のインバータをリング状に接続した構成であり,いわゆるリングオシレータとして動作する。BUFは発振部OSCに付加する寄生容量を最小限にして信号を取り出しINPおよびINNに出力する回路である。AG_CTLはOSCおよびBUFに流れるトータル電流を制御する。DG_CTLはOSCのリングの枝の1つの合成抵抗値を微少に変化させて発振周波数を微少に制御する回路である。C71は,VddとD点の間の電圧変動の高周波成分を抑えるために設けてある。AG_CTLによって電流を絞るとD点の電圧が上昇する。するとOSCの発振周波数が低下しOSCやBUFの電源電流が低下する。そしてD点の電圧は,OSCとBUFのトータル電流がAG_CTLの流す電流と釣り合う状態で落ち着く。その時にINPやINNに出力される信号の電圧は,高い方はほぼVddまで上がりきるが,低い方はD点より低い電圧になり得ないためVssまでは下がりきらない。これをフル振幅の信号に変換するために実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路を使用する。特にOSCを構成するインバータが3段の場合にはD点が比較的高い電圧でも高い周波数で発振するため,実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路が有用である。
【0039】
[実施形態の5]
実施形態の4などの発振器と信号レベル変換回路の組み合わせを使って位相同期回路を構成した実施形態の1つを図8に示す。図8において,801は位相比較器,802は周波数比較器,803はチャージポンプ,804は発振器,805は信号レベル変換回路,806は分周器,807はインバータ回路,CLK_REFは基準として外から供給するクロック信号を入力する端子,CLKB_REFはそれを反転した信号のノード,CLK_FBは分周器806の出力をそれぞれ表わす。信号レベル変換回路805には実施形態の1〜3などの回路,発振器804には図7に示した回路などを使用する。
【0040】
位相比較器801は,CLK_REFとCLK_FBの信号の例えば立ち上がりエッジ同士を比較し,いずれの信号の位相が早いかを判定する。周波数比較器802は,CLKB_REFとCLK_FBの例えば立ち下がりエッジ同士を比較し,各信号が交互に現れているかあるいはいずれかの信号が連続して現れたかを判定する。チャージポンプ803は,位相比較器801と周波数比較器802の判定結果に基づいてS_AGのノードに電荷を注入したり流出させたりする回路である。そして,チャージポンプ803により制御された信号をアナログ制御信号とし,位相比較器801の判定結果をデジタル制御信号として,発振器804が発振する。その出力を分周してCLK_FBにフィードバックすることにより,所定の発振出力がOUTの端子に出力される。
【0041】
信号レベル変換回路805として本発明の回路を使用することにより,高い周波数でも安定した出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
Tp1〜Tp78 Pチャネル型MOSトランジスタ
Tn1〜Tn78 Nチャネル型MOSトランジスタ
C1〜C72 容量素子
R1〜R73 抵抗素子
IV11〜IV22,807 インバータ回路
ND21〜ND23 NAND回路
100 制御回路
201〜202 カウンタ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は,ローレベルが十分に下がりきらない(または,ハイレベルが十分に上がりきらない)電圧制御発振器の出力信号を,低電位側電源の電圧から高電位側電源の電圧までの略フル振幅で振れる信号に変換する信号レベル変換回路に関し,特に高い動作周波数が要求される場合に好適な信号レベル変換回路およびそれを使った位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の情報処理装置に使用する集積回路(いわゆるLSI)の処理能力を上げるためにはクロック信号の高速化が必要である。近年の集積回路のクロック周波数は数GHzに及ぶものもあり,今後更に高い周波数のクロック信号が必要になることはほぼ明白である。このクロック信号を供給するために,多くの場合は位相同期回路(いわゆるPLL)が使用される。位相同期回路は,発振周波数を制御信号で制御できる発振器と,この発振器の出力を分周した信号を基準クロック信号と比較する部分と,その比較結果を元に上記制御信号を介して発振周波数を制御する部分とにより構成される。
【0003】
ところが多くの場合,制御信号によって発振周波数を制御できる発振器の出力は,低電位側の電源電圧から高電位側の電源電圧の間で振れるフル振幅の信号ではなく,低電位側の電源電圧まで下がりきらない信号であったり,高電位側の電源電圧まで上がりきらない信号であったりする。このため,発振器の出力をフル振幅の信号に変換するレベル変換回路が必要となる。このレベル変換回路として,特許文献1や特許文献2に種々の回路が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているレベル変換回路は,同文献の代表図などに示されている。この回路は,閾値可変のインバータ回路とこのインバータ回路の出力の平均電圧が所望の値であるかどうかを判定する回路より成り,所望の値でない場合にはインバータ回路の閾値を変化させるように構成されている。
【0005】
特許文献2に開示されているレベル変換回路は,同文献の図3に記号LSの部分として示されている。この回路は,入力信号と同じ電圧レベルでほぼ逆極性の信号を受けるPMOSトランジスタとゲート電極およびドレイン電極を接続されたNMOSトランジスタから成る制御部と,入力信号を受けるPMOSトランジスタと制御部からの信号を受けるNMOSトランジスタから成るPMOSインバータ回路と,このPMOSインバータ回路の出力の駆動力を上げる何段かのCMOSインバータ回路によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−303554号公報
【特許文献2】特開2008−219815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているレベル変換回路の構成要素である閾値可変のインバータ回路の構成は,同文献の図6と図12に示されている。参考までに,これらの図を図9および図10に示す。これらの回路では,必要以上の寄生容量が信号経路に付くため,特に周波数の高い用途に使用する場合には高速動作の妨げになるという問題がある。
【0008】
例えば特許文献1の図6の構成では,入力端子8はPMOSトランジスタ514〜516およびNMOSトランジスタ517〜519の計6個のMOSトランジスタのゲート電極に常時接続されている。また,出力端子19は上記6個のMOSトランジスタのドレイン電極に常時接続されている。しかしながら,スイッチ素子511〜513のうちのいずれか1個もしくは2個が遮断されている時には対応するPMOSトランジスタ514〜516が機能しない。するとそのMOSトランジスタのゲート容量は不要な寄生容量であるが入力端子8に付いていることになり,ドレイン容量は不要な寄生容量であるが出力端子19に付いていることになる。スイッチ素子51A〜51Cに対応するNMOSトランジスタ517〜519のゲート容量およびドレイン容量も同様である。
【0009】
また,例えば特許文献1の図12の構成では,入力端子8はスイッチ素子506〜50Aの計5個のスイッチ素子に常時接続されている。しかしながら,これらのスイッチ素子のうちの何個かが遮断されている時にはそのスイッチ素子の容量は不要な寄生容量であるが入力端子8に付いていることになる。また,この図ではインバータ回路501〜505の出力は全て19と表記されているが,具体的にこの5本を1本にまとめるための何らかの手段が必要である。常識的には,何らかのスイッチ素子などを介して接続するかまたはインバータ回路501〜505の出力端子を高抵抗化できる構成にして直接接続することが考えられる。しかしいずれの場合も,インバータ回路501〜505からの信号線が常時信号経路に接続されることになる。このため,スイッチ素子506〜50Aのうち遮断されているスイッチ素子に対応するインバータ回路501〜505の分が不要な寄生容量として付くことになる。
【0010】
すなわち,特許文献1の図6や図12に示された構成では,入力信号や出力信号のノードに不要な寄生容量が付くことになる。すると,信号がこの回路を通過する時に不要な寄生容量まで充放電することになり,特に周波数の高い用途に使用する場合には高速動作の妨げになる。
【0011】
なお,特許文献1の図16には閾値可変のインバータ回路として動作する更に他の回路が記載されているが,この回路の出力はフル振幅にならないため本発明の目的には使えない。
【0012】
特許文献2の図3に開示されているレベル変換回路を,参考までに図11に示す。この回路は,入力信号を受けるPMOSトランジスタTp32と負荷として作用するNMOSトランジスタTn31の構成するインバータ回路がレベル変換を行なう部分である。そして,Tn31の抵抗値を最適値に保つための制御回路として,上記インバータ回路を構成するMOSトランジスタと同じ特性のPMOSトランジスタTp33およびNMOSトランジスタTn30で構成する回路がある。ところが,Tp33およびTn30の接続点の平均電圧が後段のインバータ回路IV38の閾値と必ずしも一致しないため,Tp32およびTn31が構成するインバータ回路の出力電圧が振動する範囲も最適値から多少ずれることになる。この回路を通過する信号の周波数がある程度低い場合には殆ど問題ないが,この回路が動作できる上限周波数に近くなって信号波形が正弦波に近くなると出力波形の振幅が小さくなり,上記のずれが同じであっても相対的に大きくなる。極端な場合には,Tp32およびTn31が構成するインバータ回路の出力電圧の振動する範囲が後段のインバータ回路の閾値を越えなくなって信号が消滅する。その周波数が上限動作周波数となる。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は,信号レベル変換回路の上限動作周波数を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
周期的に変化するクロック入力信号をゲート電極に受ける第1のMOSトランジスタと,ドレイン電極を上記第1のMOSトランジスタのドレイン電極に接続され負荷として作用する上記第1のMOSトランジスタとは逆の導電型の第2のMOSトランジスタと,上記クロック入力信号とほぼ逆相のクロック入力信号をゲート電極に受ける上記第1のMOSトランジスタと同じ導電型の第3のMOSトランジスタと,ゲート電極およびドレイン電極を上記第2のMOSトランジスタのゲート電極と上記第3のMOSトランジスタのドレイン電極に接続された上記第2のMOSトランジスタと同じ導電型の第4のMOSトランジスタと,上記第1および第2のMOSトランジスタのドレイン電極の接続点から取り出した信号を直接または何段かのインバータ回路を介して受ける第1のインバータ回路により構成されたレベル変換回路において,
上記第2のMOSトランジスタのソース電極と電源の間,または,上記第4のMOSトランジスタのソース電極と電源の間の少なくとも一方に,上記第2のMOSトランジスタと同じ導電型の並列に接続した複数の第5のMOSトランジスタを設け,上記第1のインバータ回路の出力の平均電圧が低電位側の電源と高電位側の電源の中間の電圧になるように上記第5のMOSトランジスタのうちのいくつかを導通させ残りを遮断させるように制御する制御回路を設けることにより,本発明の課題を解決できる。
【0015】
上記制御回路は,上記第1のインバータ回路の出力を受ける第2のインバータ回路と,上記第2のインバータ回路の出力をローパスフィルタを介して受ける第3のインバータ回路と,上記第3のインバータ回路の出力がハイレベルであればカウントアップ(またはカウントダウン)しローレベルであればカウントダウン(またはカウントアップ)するカウンタ回路により構成できる。
【発明の効果】
【0016】
レベル変換回路の上限動作周波数を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図2】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図3】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の他の一例を表わす構成図。
【図4】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の他の一例を表わす構成図。
【図5】本発明の信号レベル変換回路の実施形態の更に他の一例を表わす構成図。
【図6】本発明の信号レベル変換回路に使用する制御回路の実施形態の更に他の一例を表わす構成図。
【図7】本発明の位相同期回路に使用する発振器の実施形態の一例を表わす構成図。
【図8】本発明の位相同期回路の実施形態の一例を表わす構成図。
【図9】公知の特許文献1に記載された図面の1つ。
【図10】公知の特許文献1に記載された他の図面の1つ。
【図11】公知の特許文献2に記載された図面の1つ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明の信号レベル変換回路および位相同期回路について,いくつかの実施形態を説明する。なお,図9以降を除き同一の部分は別の図においても同一の記号で示すものとする。
【0019】
[実施形態の1]
上記課題を解決するための回路の構成の一実施形態を図1に示す。図1において,Tp1〜Tp5はPチャネル型MOSトランジスタ(以下,PMOSと称する),Tn1〜Tn23はNチャネル型MOSトランジスタ(以下,NMOSと称する),IV11とIV12はインバータ回路,C1は容量素子,R1は抵抗素子,100は制御回路,INPはクロック入力信号を入力する端子,INNはクロック入力信号と略180度位相がずれ同じ電圧レベルで変化する信号(以下,逆相クロック入力信号と称する)を入力する端子,IN2はINPへのクロック入力信号より低い周波数の第2のクロック信号を入力する端子,OUTはクロック出力信号を出力する端子,Vddは高電位側の電源端子,Vssは低電位側の電源端子,ENBLは制御信号111〜123をその時の値に固定する信号を入力する端子,111〜123は制御回路100が出力する制御信号,A点〜C点は説明に必要なその他の信号のノードを表わす。
【0020】
ここで,Tp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23は,それぞれ特性がほぼ同じになるように設計するものとする。具体的には,MOSトランジスタのゲート長およびゲート幅などの幾何学的構造を一致させると共に電流が流れる方向も一致するように配置する。Tp3およびTn3とTp4およびTn4とTp5およびTn5はそれぞれインバータ回路を構成するが,徐々に駆動能力を上げていくため後段にいくほどゲート幅の大きい(または多数を並列に接続した)MOSを使用する。C1とR1が構成するローパスフィルタの時定数はINPのクロック入力の周期より十分(数倍以上)長く,第2のクロック信号の周期はC1とR1が構成するローパスフィルタの時定数より十分(数倍以上)長くなるように設計するものとする。インバータ回路IV11やIV12は,入力容量や貫通電流を低減するためになるべくゲート幅の小さいMOSで構成する。また,制御回路100は,制御信号111〜113のうちの少なくとも1つがローレベル(以下,Lと表記する)でかつ制御信号121〜123のうちの少なくとも1つがLである場合にはA点の信号レベルにかかわらず第2のクロック信号に従って制御信号111〜113と制御信号121〜123をカウントアップし,制御信号111〜113が全てハイレベル(以下,Hと表記する)である場合にはA点がLであれば第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントダウンしA点がHであれば第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントアップし,制御信号121〜123が全てHである場合にはA点がLであれば第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントアップしA点がHであれば第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントダウンするように構成する。また制御回路100は,制御信号111〜113または制御信号121〜123が全てHである場合にはそれ以上カウントアップさせる条件になっても変化させないように構成する。
【0021】
次に,この回路の動作について説明する。制御信号111〜113のうちの少なくとも1つがLでかつ制御信号121〜123のうちの少なくとも1つがLであれば制御信号111〜113と制御信号121〜123は第2のクロック信号に従って必ずカウントアップされるため,初期状態から8サイクルの間を除き制御信号111〜113と制御信号121〜123の少なくとも一方は全てHである。ここでは先ず,制御信号111〜113と制御信号121〜123が両方とも全てHである場合から説明する。
【0022】
INNに入力される逆相クロック入力がLの時にはTp2は導通し,Tn2に流れる電流がTp2に流れる電流と釣り合うまでB点の電圧は上昇する。INNに入力される逆相クロック入力がHの時にはTp2は遮断し,Tn2が遮断するまでB点の電圧は下降する。逆相クロック入力の周波数が高くなるとB点の電圧の変化が追いつかず振幅は小さくなるが,長時間平均で見るとTn2に流れる電流がTp2に流れる電流と釣り合うはずであり,B点の電圧はその平均電流に対応する電圧付近で振動する。このB点の電圧がTn1のゲートに加えられ,Tp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23の特性がそれぞれほぼ同じであるから,INPに入力されるクロック入力がLの時にはTp1が導通してC点の電圧はVddの電圧に近付き,INPに入力されるクロック入力がHの時にはTp1が遮断してC点の電圧はVssの電圧に近付く。従って,クロック入力が比較的低周波の場合にはこのままでもC点の電圧変化がTp3〜Tp5とTn3〜Tn5が構成する3段のインバータ回路を経由してOUTに出力される。
【0023】
ところがクロック入力の周波数が高くなると,C点の電圧が十分上がりきる前にTp1が遮断したりC点の電圧が十分下がりきる前にTp1が導通したりして,C点の電圧の振幅が小さくなる。C点の電圧はB点の電圧の振動範囲を含む範囲で振動するが,プロセスばらつきなどもあるためB点の電圧の振動の中心をTp3およびTn3が構成するインバータ回路の閾値と常に一致させることはできない。従って,C点の電圧の振動の中心もTp3およびTn3が構成するインバータ回路の閾値と異なることになり,Vss側に偏ったりVdd側に偏ったりする。すると,その偏った電圧がTp3〜Tp5とTn3〜Tn5が構成する3段のインバータ回路とIV12とC1およびR1が構成するローパスフィルタとIV11を介してA点の電圧に反映される。C点の電圧が例えばVss側に偏ると,IV12の出力もVss側に偏りローパスフィルタとIV11を介してA点はHになる。すると制御信号111〜113が第2のクロック信号に従ってカウントダウンされTn11〜Tn13のうちのいくつかが遮断される。するとC点からVss端子までの経路の抵抗が上がってC点の電圧が上昇する。逆にC点の電圧がVdd側に偏ると,制御信号121〜123が第2のクロック信号に従ってカウントダウンされTn21〜Tn23のうちのいくつかが遮断される。するとB点からVss端子までの経路の抵抗が上がってB点の電圧が上昇し,Tn1の抵抗が下がる。その結果C点の電圧が下降する。そしてC点の電圧の偏りがVss側からVdd側またはVdd側からVss側に逆転すると,それまでカウントダウンされてきた制御信号の変化がカウントアップに転じ,以降は最小ビット分のアップダウンのみを繰り返す。
【0024】
この状態になるまでに必要な時間が経過した後,ENBL信号を通じて制御信号111〜113および121〜123をその時の値に固定する。この時には制御信号111〜113または121〜123の最小ビット分の変化だけでC点の電圧の偏りが逆転する状態になっているため,そのC点の電圧はTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動している。Tn11〜Tn13およびTn21〜Tn23による制御の分解能が十分に小さくなるように設定してあれば,C点の電圧の振動のほぼ中心にTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧があり,INPに入力されたクロック信号がOUTまで最も届きやすい状態にある。最初から制御信号111〜113または制御信号121〜123のいずれかにLを含む状態からスタートしても,最終的にはこの状態になる。
【0025】
ここで,Tp1およびTn1が構成するインバータの閾値電圧を制御する回路は,B点の電圧を設定する回路とTn11〜Tn13が構成する回路であり,いずれもINPやC点のノードの寄生容量を増やすものではない。また,後段のインバータ回路に付加される余分な寄生容量は,ゲート幅の小さいMOSで構成したIV12の入力容量のみであり駆動能力の最も大きいTp5およびTn5が構成するインバータで駆動するため,余分な寄生容量による上限周波数の低下は最小限である。従って,特許文献1に記載された構成の回路より高い周波数で動作させることができる。また,上述のように制御信号111〜113および制御信号121〜123によってTn11〜Tn13およびTn21〜Tn23を最適に制御するためC点の電圧を最適な範囲で振動させることができ,特許文献2に記載された構成の回路より高い周波数で動作させることができる。すなわち,特許文献1に記載された構成でも特許文献2に記載された構成でも実現できない高い周波数において動作する信号レベル変換回路を実現できる。
【0026】
次に,実施形態の1に使用する制御回路100の構成を図2に示す。図2において,IV21とIV22はインバータ回路,ND21〜ND23はNAND回路,201と202はカウンタ回路を表わす。カウンタ回路201および202には,UP/DN端子に入力する信号がHであればCK端子に入力する信号に従って出力信号をカウントアップし,Lであればカウントダウンする回路を使用する。またカウンタ回路201および202には,出力信号が全てHであればUP/DN端子に入力する信号がHであっても出力信号を変化させない回路を使用する。
【0027】
この回路は,ENBL端子に入力する信号がHであればIN2端子に入力する第2のクロック信号に従って制御信号111〜123が変化し,ENBL端子に入力する信号がLであれば制御信号111〜123は変化しない。そこで先ず,ENBL端子に入力する信号がHである場合から説明する。
【0028】
制御信号111〜113のいずれかがLである場合には,A点の信号にかかわらずND21の出力がHとなり,カウンタ回路202は第2のクロック信号に従って出力すなわち制御信号121〜123をカウントアップさせる。制御信号111〜113の全てがHである場合には,A点の信号がHであればND21の出力がHとなりカウンタ回路202は第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントアップさせ,A点の信号がLであればND21の出力がLとなりカウンタ回路202は第2のクロック信号に従って制御信号121〜123をカウントダウンさせる。制御信号121〜123のいずれかがLである場合には,A点の信号にかかわらずND22の出力がHとなり,カウンタ回路201は第2のクロック信号に従って出力すなわち制御信号111〜113をカウントアップさせる。制御信号121〜123の全てがHである場合には,A点の信号がLであればND22の出力がHとなりカウンタ回路201は第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントアップさせ,A点の信号がHであればND22の出力がLとなりカウンタ回路201は第2のクロック信号に従って制御信号111〜113をカウントダウンさせる。
【0029】
すなわち,制御信号111〜113のいずれかがLでかつ制御信号121〜123のいずれかがLである場合には両方ともカウントアップさせ,制御信号111〜113または制御信号121〜123のどちらか一方または両方がオールHであればA点の信号に基づいて反対側の制御信号をカウントアップまたはカウントダウンさせる。また,制御信号111〜113または制御信号121〜123がオールHであればそれ以上はカウントアップしないため,初期状態の後カウンタ回路201および202がオールLからオールHまでカウントアップするのに必要なサイクル数を経過すれば,制御信号111〜113または制御信号121〜123の少なくとも一方は必ずオールHである。
【0030】
ENBL端子に入力する信号をLにすれば第2のクロック信号にかかわらずND23の出力がHに固定されるため,制御信号111〜123は変化しない。従って,INPおよびINN端子にクロック信号を供給する系が安定しかつ制御信号111〜123を最適値に設定するために必要なサイクル数が経過した後は,ENBL端子に入力する信号をLにして制御信号111〜123をその時の値に固定し安定化させることができる。
【0031】
なお,この実施形態においてはTn11〜Tn13およびTn21〜Tn23をそれぞれ3個ずつ設け制御信号111〜113および制御信号121〜123をそれぞれ3ビットとする構成について説明したが,制御信号が3ビットずつに限定されないことは言うまでもない。また,Tp3〜Tp5およびTn3〜Tn5が構成するインバータが3段の場合について説明したが,これらのインバータの段数が3段に限定されないことは言うまでもない。更に,PMOSとNMOSをそっくり入れ替えてVddとVssを逆にしHとLを逆にした構成も有り得ることは言うまでもない。また,ここではTp1およびTp2とTn1およびTn2とTn11およびTn21とTn12およびTn22とTn13およびTn23の特性がほぼ同じであることを前提に説明したが,これらの特性が必ずしも一致していなくても同様の効果は得られる。
【0032】
[実施形態の2]
実施形態の1において,C点の電圧がVdd側に偏るかVss側に偏るかが明らかな場合や,いずれに偏るかを特定できるようにTp1およびTp2やTn1およびTn2を非対称に設計しておけば,Tn11〜Tn13側またはTn21〜Tn23側のいずれかのNMOSを設けない構成も可能である。Tn21〜Tn23側を設けない構成の一実施形態を図3に示す。
【0033】
この回路は,Tn11〜Tn13が全て導通していればC点の電圧がVss側に偏ることがわかっている場合に有効である。制御信号111〜113が全てHであればTn11〜Tn13が全て導通しC点の電圧がVss側に偏るため,制御信号111〜113はカウントダウンされる。制御信号111〜113が全てLになればTn11〜Tn13が全て遮断しC点の電圧がVddになるため,その前に制御信号111〜113がカウントアップする方に転じる。そしてC点の電圧がTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動する状態になった以降は実施形態の1と同じである。
【0034】
実施形態の2に使用する制御回路100の構成を図4に示す。図4に示すように,この回路はインバータ回路IV21とNAND回路ND23とカウンタ回路201によって構成される。A点がHの時は制御信号111〜113はカウントダウンされ,A点がLの時は制御信号111〜113はカウントアップされる。その他は実施形態の1に使用する制御回路100と同じである。
【0035】
[実施形態の3]
実施形態の1において,Tn11〜Tn13側を設けない構成の一実施形態を図3に示す。この回路は,Tn21〜Tn23が全て導通していればC点の電圧がVdd側に偏ることがわかっている場合に有効である。制御信号121〜123が全てHであればTn21〜Tn23が全て導通しC点の電圧がVdd側に偏るため,制御信号121〜123はカウントダウンしていく。制御信号121〜123が全てLになればTn21〜Tn23が全て遮断しB点の電圧がVddになってC点の電圧が下がりすぎるため,その前に制御信号121〜123がカウントアップする方に転じる。そしてC点の電圧がTp3およびTn3が構成するインバータの閾値電圧付近を中心に振動する状態になった以降は実施形態の1と同じである。
【0036】
実施形態の3に使用する制御回路100の構成を図6に示す。図6に示すように,この回路はインバータ回路IV21およびIV22とNAND回路ND23とカウンタ回路202によって構成される。A点がHの時は制御信号121〜123はカウントアップされ,A点がLの時は制御信号121〜123はカウントダウンされる。その他は実施形態の1に使用する制御回路100と同じである。
【0037】
実施形態の2または実施形態の3のいずれにおいても実施形態の1と同様に,余分な寄生容量を増やすことなくC点の電圧レベルを最適値に制御できるため,特許文献1に記載された構成でも特許文献2に記載された構成でも実現できない高い周波数において動作する信号レベル変換回路を実現できる。
【0038】
[実施形態の4]
実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路にクロック入力信号および逆相クロック入力信号を供給する発振器の実施形態の1つを図7に示す。図7において,Tp71〜Tp78はPMOS,Tn71〜Tn78はNMOS,C71〜C72は容量素子,R71〜R73は抵抗素子,INPおよびINNは実施形態の1〜3のいずれかの信号レベル変換回路にクロック入力信号および逆相クロック入力信号を出力する端子,S_DGはデジタル制御信号を入力する端子,S_AGはアナログ制御信号を入力する端子,D点は説明に必要なその他の信号のノードを表わす。また,OSCはTp71〜Tp73およびTn71〜Tn73が構成する部分であり発振部を,BUFはTp74〜Tp77およびTn74〜Tn77が構成する部分でありバッファ部を,DG_CTLはTp78およびR71が構成する部分でありデジタル制御部を,AG_CTLはTn78およびC72およびR72〜R73が構成する部分でありアナログ制御部をそれぞれ表わす。OSCは3段のインバータをリング状に接続した構成であり,いわゆるリングオシレータとして動作する。BUFは発振部OSCに付加する寄生容量を最小限にして信号を取り出しINPおよびINNに出力する回路である。AG_CTLはOSCおよびBUFに流れるトータル電流を制御する。DG_CTLはOSCのリングの枝の1つの合成抵抗値を微少に変化させて発振周波数を微少に制御する回路である。C71は,VddとD点の間の電圧変動の高周波成分を抑えるために設けてある。AG_CTLによって電流を絞るとD点の電圧が上昇する。するとOSCの発振周波数が低下しOSCやBUFの電源電流が低下する。そしてD点の電圧は,OSCとBUFのトータル電流がAG_CTLの流す電流と釣り合う状態で落ち着く。その時にINPやINNに出力される信号の電圧は,高い方はほぼVddまで上がりきるが,低い方はD点より低い電圧になり得ないためVssまでは下がりきらない。これをフル振幅の信号に変換するために実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路を使用する。特にOSCを構成するインバータが3段の場合にはD点が比較的高い電圧でも高い周波数で発振するため,実施形態の1〜3などの信号レベル変換回路が有用である。
【0039】
[実施形態の5]
実施形態の4などの発振器と信号レベル変換回路の組み合わせを使って位相同期回路を構成した実施形態の1つを図8に示す。図8において,801は位相比較器,802は周波数比較器,803はチャージポンプ,804は発振器,805は信号レベル変換回路,806は分周器,807はインバータ回路,CLK_REFは基準として外から供給するクロック信号を入力する端子,CLKB_REFはそれを反転した信号のノード,CLK_FBは分周器806の出力をそれぞれ表わす。信号レベル変換回路805には実施形態の1〜3などの回路,発振器804には図7に示した回路などを使用する。
【0040】
位相比較器801は,CLK_REFとCLK_FBの信号の例えば立ち上がりエッジ同士を比較し,いずれの信号の位相が早いかを判定する。周波数比較器802は,CLKB_REFとCLK_FBの例えば立ち下がりエッジ同士を比較し,各信号が交互に現れているかあるいはいずれかの信号が連続して現れたかを判定する。チャージポンプ803は,位相比較器801と周波数比較器802の判定結果に基づいてS_AGのノードに電荷を注入したり流出させたりする回路である。そして,チャージポンプ803により制御された信号をアナログ制御信号とし,位相比較器801の判定結果をデジタル制御信号として,発振器804が発振する。その出力を分周してCLK_FBにフィードバックすることにより,所定の発振出力がOUTの端子に出力される。
【0041】
信号レベル変換回路805として本発明の回路を使用することにより,高い周波数でも安定した出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
Tp1〜Tp78 Pチャネル型MOSトランジスタ
Tn1〜Tn78 Nチャネル型MOSトランジスタ
C1〜C72 容量素子
R1〜R73 抵抗素子
IV11〜IV22,807 インバータ回路
ND21〜ND23 NAND回路
100 制御回路
201〜202 カウンタ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の周期で繰り返す第1のクロック入力信号が入力され,上記第1のクロック入力信号と同じ周期で上記第1のクロック入力信号より大きな振幅のクロック出力信号を出力する信号レベル変換回路であって,
上記第1のクロック入力信号がゲート電極に入力される第1導電型の第1のMOSトランジスタと,上記第1のMOSトランジスタと直列に接続された上記第1導電型とは逆の第2導電型の第2のMOSトランジスタと,上記第1のクロック入力信号とほぼ同じ電圧レベルで位相がほぼ半周期ずれた逆相クロック入力信号がゲート電極に入力され上記第2のMOSトランジスタのゲート電極にドレイン電極が接続された上記第1導電型の第3のMOSトランジスタと,上記第3のMOSトランジスタのドレイン電極にドレイン電極とゲート電極を接続された上記第2導電型の第4のMOSトランジスタを備え,上記第1および第2のMOSトランジスタの接続点の信号を直接もしくは1段以上のインバータ回路を介して入力され上記クロック出力信号を出力する第1のインバータ回路とを備えた信号レベル変換回路において,
上記第2のMOSトランジスタのソース電極と一方の電源の間または上記第4のMOSトランジスタのソース電極と上記一方の電源の間の少なくともいずれかに上記第2導電型の複数の第5のMOSトランジスタを並列に設け,上記クロック出力信号の平均電圧が上記第1のインバータ回路の出力電圧のハイレベルとローレベルの中間の電圧に略等しくなるように上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断を制御する制御回路を設けたことを特徴とするレベル変換回路。
【請求項2】
上記第1のインバータ回路の出力を受ける第2のインバータ回路と,ローパスフィルタを介して上記第2のインバータ回路の出力を受ける第3のインバータ回路を備え,上記制御回路は上記第1のクロック信号より低い周波数の第2のクロック信号をカウントしそのカウント値によって上記第5のMOSトランジスタを制御する少なくとも1個のカウンタ回路を備え,上記カウンタ回路は上記第3のインバータ回路の出力がハイレベルかローレベルかによってカウントアップするかカウントダウンするかを制御されるように構成されたことを特徴とする請求項1の信号レベル変換回路。
【請求項3】
上記制御回路は,上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断の制御を開始してから所定の時間が経過した後は,上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断をその時点の状態に保持し以後変化させないようにする機構を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれかの信号レベル変換回路。
【請求項4】
高電位側の電源と低電位側の電源の間に直列に接続された発振器および上記第2導電型の第6のMOSトランジスタを備え,上記発振器の発振周波数は上記第6のMOSトランジスタによって制御され,上記発振器の出力を上記第1のクロック入力信号および上記逆相のクロック入力信号として受けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの信号レベル変換回路。
【請求項5】
高電位側の電源と低電位側の電源の間に直列に接続された発振器および上記第2導電型の第6のMOSトランジスタと,上記発振器の出力を上記第1のクロック入力信号および上記逆相のクロック入力信号として受ける請求項1〜3のいずれかの信号レベル変換回路と,上記信号レベル変換回路の出力を分周する分周器と,上記分周器の出力と外部から入力される基準クロック信号の位相および周波数を比較する回路と,上記位相および周波数を比較した結果に基づいて上記第6のMOSトランジスタのゲート電圧を制御することにより上記発振器の発振周波数を制御することを特徴とする位相同期回路。
【請求項1】
一定の周期で繰り返す第1のクロック入力信号が入力され,上記第1のクロック入力信号と同じ周期で上記第1のクロック入力信号より大きな振幅のクロック出力信号を出力する信号レベル変換回路であって,
上記第1のクロック入力信号がゲート電極に入力される第1導電型の第1のMOSトランジスタと,上記第1のMOSトランジスタと直列に接続された上記第1導電型とは逆の第2導電型の第2のMOSトランジスタと,上記第1のクロック入力信号とほぼ同じ電圧レベルで位相がほぼ半周期ずれた逆相クロック入力信号がゲート電極に入力され上記第2のMOSトランジスタのゲート電極にドレイン電極が接続された上記第1導電型の第3のMOSトランジスタと,上記第3のMOSトランジスタのドレイン電極にドレイン電極とゲート電極を接続された上記第2導電型の第4のMOSトランジスタを備え,上記第1および第2のMOSトランジスタの接続点の信号を直接もしくは1段以上のインバータ回路を介して入力され上記クロック出力信号を出力する第1のインバータ回路とを備えた信号レベル変換回路において,
上記第2のMOSトランジスタのソース電極と一方の電源の間または上記第4のMOSトランジスタのソース電極と上記一方の電源の間の少なくともいずれかに上記第2導電型の複数の第5のMOSトランジスタを並列に設け,上記クロック出力信号の平均電圧が上記第1のインバータ回路の出力電圧のハイレベルとローレベルの中間の電圧に略等しくなるように上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断を制御する制御回路を設けたことを特徴とするレベル変換回路。
【請求項2】
上記第1のインバータ回路の出力を受ける第2のインバータ回路と,ローパスフィルタを介して上記第2のインバータ回路の出力を受ける第3のインバータ回路を備え,上記制御回路は上記第1のクロック信号より低い周波数の第2のクロック信号をカウントしそのカウント値によって上記第5のMOSトランジスタを制御する少なくとも1個のカウンタ回路を備え,上記カウンタ回路は上記第3のインバータ回路の出力がハイレベルかローレベルかによってカウントアップするかカウントダウンするかを制御されるように構成されたことを特徴とする請求項1の信号レベル変換回路。
【請求項3】
上記制御回路は,上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断の制御を開始してから所定の時間が経過した後は,上記第5のMOSトランジスタの導通および遮断をその時点の状態に保持し以後変化させないようにする機構を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれかの信号レベル変換回路。
【請求項4】
高電位側の電源と低電位側の電源の間に直列に接続された発振器および上記第2導電型の第6のMOSトランジスタを備え,上記発振器の発振周波数は上記第6のMOSトランジスタによって制御され,上記発振器の出力を上記第1のクロック入力信号および上記逆相のクロック入力信号として受けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの信号レベル変換回路。
【請求項5】
高電位側の電源と低電位側の電源の間に直列に接続された発振器および上記第2導電型の第6のMOSトランジスタと,上記発振器の出力を上記第1のクロック入力信号および上記逆相のクロック入力信号として受ける請求項1〜3のいずれかの信号レベル変換回路と,上記信号レベル変換回路の出力を分周する分周器と,上記分周器の出力と外部から入力される基準クロック信号の位相および周波数を比較する回路と,上記位相および周波数を比較した結果に基づいて上記第6のMOSトランジスタのゲート電圧を制御することにより上記発振器の発振周波数を制御することを特徴とする位相同期回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−219882(P2010−219882A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64309(P2009−64309)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人情報通信研究機構、ユニバーサルリンク技術の研究開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人情報通信研究機構、ユニバーサルリンク技術の研究開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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