説明

光切断線抽出装置,光切断線抽出方法

【課題】移動する被測定物の表面に照射したライン光の像を含む撮像画像の輝度情報を入力し,その入力情報に基づいて光切断線を抽出する処理を高速で実行すること。
【解決手段】回路610が水平1ライン分の画素郡がさらに複数に区分された画素ブロックごとにその輝度情報を並行して入力する処理,その後段側で回路611a〜611dがそれぞれ1つ前段で記録された全ての輝度情報を2個ごとに比較して輝度が高い方の輝度情報及びその座標情報を記録する処理を複数段に連ねて行う処理,その最終段の回路で記録された輝度情報と前回記録した輝度情報とを比較して輝度が高い方の最高輝度情報及び座標情報を回路612が記録する処理,を所定のクロック信号CLKに同期して並列して実行し,水平同期信号Hsyncに同期して,最高輝度情報及びその座標情報を,SDRAM62に対し順次追記的に書き込み,その最高情報を水平同期信号に同期して初期化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,相対的に移動する被測定物の表面(回転するタイヤの表面等)に照射したライン光の像(光切断線の像)を含む二次元画像を撮像する撮像素子からその撮像画像における各画素の輝度情報を入力し,入力した輝度情報に基づいて前記光切断線の像を抽出する光切断線抽出装置及び光切断線抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは,ゴムや化学繊維,スチールコード等の各種材料が積層された構造を有し,その積層構造に不均一な部分が存在すると,空気が充填された場合に相対的に耐圧性の弱い部分においてバルジと呼ばれる隆起部(凸部)や,デント又はデプレッションと呼ばれる窪み部(凹部)が生じる。そのようなバルジやデント等の形状欠陥が生じるタイヤは,安全上の問題或いは外観不良の問題から,検査して出荷対象から除外する必要がある。
従来,タイヤの形状欠陥の検査は,タイヤを回転機で回転させながら接触式もしくは非接触式のポイント測定式センサにより複数ポイントの表面高さを検出し,その表面高さの分布からタイヤの表面形状を測定することによって行われてきた。しかしながら,ポイント測定式センサを用いたタイヤの形状測定に基づく形状欠陥の検査では,配列するセンサの数の制約及び検査時間の制約から,タイヤにおける形状欠陥の検出対象面全体の形状を網羅的に測定することができず,形状欠陥の検出漏れが生じやすいという問題点があった。
一方,特許文献1には,回転するタイヤの表面にスリット光(ライン光)を照射してそのスリット光の像を撮像し,その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことによってタイヤの表面形状を測定する技術について示されている。その特許文献1に示される技術によれば,タイヤにおける形状欠陥の検出対象面(タイヤのサイドウォール面やトレッド面)全体の形状を網羅的に(連続的に)測定することができ,形状欠陥の検出漏れを防止できる。
【0003】
ところで,タイヤの形状欠陥検査に許容される検査時間はタイヤ1本当たり1秒程度である。また,光切断法によるタイヤの形状測定では,光切断線の像とタイヤ表面に記された文字とを区別するため,回転するタイヤの周方向において,少なくともその文字の線幅(1mm程度)以下の空間分解能で撮像を行う必要がある。そして,その検査時間及び空間分解能の要件を満たすためには,乗用車用タイヤでは1秒当たり2000フレーム,それより大きなトラック用或いはバス用のタイヤでは1秒当たり4000フレームの撮像を行う必要がある。これに対し,昨今の撮像素子は撮像処理の高速化が進み,COMSセンサに代表される高速タイプの撮像素子は,毎秒2000〜4000フレームという高速な撮像も可能である。
また,光切断法による形状測定では,各撮像画像(1フレーム分の画像)から光切断線の像(ライン光の像)を抽出する処理,即ち,撮像画像を構成する各画素の輝度情報に基づいて輝度の高い光切断線の位置(座標)を検出する画像処理を行い,抽出された光切断線の像(即ち,その座標)からタイヤの表面形状(表面高さ)を求める必要がある。通常,光切断線の抽出処理は,撮像画像における水平1ライン分の画素群ごと(Y座標における各位置ごと)にその輝度が最大の画素の位置(X座標)を特定することによって行われる。そして,タイヤの形状欠陥検査において,撮像画像(各画素の輝度情報)に基づく処理の中で,光切断線の抽出処理が演算負荷の大部分を占める。なお,特許文献1には,光切断線の抽出処理が,CPU,ROM,RAMから構成されるMPU(マイクロコンピュータ)によって実行される例が示されている。
そして,昨今のタイヤの形状欠陥検査の工程においては,高速化されたタイヤ表面の撮像工程(例えば1秒)に対し,極力リアルタイムで形状結果の有無の判別結果を得たいというニーズが高い。
また,タイヤ以外の被測定物においても,その被測定物の表面を走査して光切断法による形状測定を行う場合,限られた時間内で非常に広い測定対象面の形状測定を行わなければならない場合や,限られた時間内で非常に高い空間分解能で測定対象面の形状測定を行わなければならない場合等に,高い撮像レートで撮像された多数の撮像画像について,或いは解像度の高い(画素数の多い)撮像画像について,限られた時間内に光切断線の抽出処理を完了させたというニーズがある。
なお,被測定物をライン光(光切断線)により走査する方法としては,ライン光の照射及びその像の撮像に関する光学系を固定した状態で,被測定物自体を直線移動或いは回転させることによって被測定物の表面を移動させる場合と,被測定物を固定した状態で,その被測定物の表面に沿って前記光学系を直線移動或いは回転移動させる場合との両方が考えられる。
【特許文献1】特開平11−138654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,タイヤの形状欠陥等の検査装置(測定装置)の一部品として許容される実用的なMPUは,その処理能力の制約により,1つの撮像画像(1フレーム分の画像の輝度情報)が得られた後に,その撮像画像に基づく光切断線の抽出処理を1/2000[秒]〜1/4000[秒]以内で実行することが難しいという問題点があった。そのため,従来のタイヤの形状欠陥の検査では,撮像素子による撮像画像の情報を大容量のメモリ(ハードディスク等)に記憶させ,タイヤ表面の撮像工程の終了後においても,撮像画像に基づく光切断線の抽出処理(MPUによる画像処理)を実行しなければならず,それがタイヤの生産効率の悪化を招くことになる。
また,タイヤ以外の被測定物,例えば,鉄道軌道周辺の構造物等(トンネル等)が被測定物である場合においても,その被測定物の表面を走査して光切断法による形状測定を行う場合,高い撮像レートで撮像された多数の撮像画像について,或いは解像度の高い撮像画像について,限られた時間内に光切断線の抽出処理を完了できなければ,測定効率の悪化を招くことになる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,例えば,1秒当たり2000〜4000フレーム以上という高い撮像レートで撮像を行う撮像素子(CMOSセンサ等)や,非常に解像度の高い画像の撮像を行う撮像素子から,被測定物の表面に照射したライン光の像(光切断線の像)を含む撮像画像の情報(輝度情報)を入力し,その情報に基づいて光切断線を抽出する処理を,ASICやFPGA等の実用的な素子(回路)を用いて高速で(リアルタイムで)実行することができる光切断線抽出装置及び光切断線抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明に係る光切断線抽出装置は,相対的に移動する被測定物の表面に形成される光切断線の像を含む二次元画像を撮像する撮像素子(CMOSセンサがその典型例)から,その撮像画像における各画素の輝度情報を入力し,入力した輝度情報に基づいて前記光切断線の像を抽出する装置であり,次の(1−1)〜(1−6)に示す各構成要素を備えるものである。
(1−1)前記撮像素子からその撮像画像における水平1ライン分の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる画素ブロックごとにその輝度情報を並行して入力し,入力した前記画素ブロックの輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,所定周波数のクロック信号に同期して実行する情報入力手段。
(1−2)前記情報入力手段の後段側に複数段に連ねて設けられ,それぞれ1つ前段で記録された全ての輝度情報を2個ごとに比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する複数の第1の輝度比較手段。
(1−3)前記画素ブロックの輝度情報のうち輝度が最高の情報を記録する最終段の前記第1の輝度比較手段により記録された輝度情報と前回記録した処理結果である輝度情報とを比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第2の輝度比較手段。
(1−4)前記第2の輝度比較手段において前記撮像画像における水平1ライン分の画素群それぞれの中で輝度が最高の画素の輝度情報が記録されたタイミングを表す水平同期信号を生成する水平同期信号生成手段。
(1−5)前記第2の輝度比較手段により記録された輝度情報及びその画素の座標情報を,所定の光切断線情報記憶手段に対し前記水平同期信号に同期して順次追記的に書き込む(記憶手段の記憶領域に対し前記水平同期信号に同期して順次記憶位置を変更しつつ書き込む)情報記録手段。
(1−6)前記第2の輝度比較手段により記録された輝度情報を前記水平同期信号に同期して初期化する輝度初期化手段。
なお,「相対的に移動する被測定物の表面」とは,被測定物の表面自体が,その被測定物の直線移動や回転等によって移動する場合と,被測定物自体は固定された状態で,ライン光の照射及びその像の撮像を行う光学系が被測定物の表面に沿って移動する場合とを含むことを意味する。
【0006】
CMOSセンサ等の超高速の撮像素子は,1フレーム分の撮像画像について,その撮像画像における水平1ライン分(X軸方向1ライン分)の画素群がさらに複数に区分された画素群(前記画素ブロック)ごとに,その輝度情報を並行して出力(パラレル出力)する処理を高周波数(例えば,20[MHz]〜40[MHz])のクロック信号に同期して実行する機能を備えている。
本発明に係る光切断線抽出装置は,1フレーム分の撮像画像の情報(輝度情報)が全て得られた後に,その情報に基づく光切断線抽出処理を実行するのではなく,前記高周波数のクロック信号に同期して,撮像画像の一部である前記画素ブロックごとに,その輝度情報をパラレル入力し,さらに,その輝度情報の中から最高輝度の情報を抽出する処理を演算負荷の小さな単位処理(前記第1の輝度比較手段や前記第2の輝度比較手段の処理)に分けてそれらを複数段階に連ねて実行することにより,1フレーム分の撮像画像から抽出した光切断線の情報(水平1ラインごとの最高輝度の輝度情報及びその座標)を前記所定の記憶手段に記録する。
これにより,本発明に係る光切断線抽出装置は,撮像素子による1フレーム分の撮像完了タイミングに対して若干の遅延が生じるものの,光切断線抽出処理を撮像素子の撮像レートに対してリアルタイムで実行することができる。しかも,前記クロック信号に同期して実行すべき前記単位処理の演算負荷を小さく抑えることができるので,本発明に係る光切断線抽出装置は,ASICやFPGA等の実用的な素子(回路)を用いて実現できる。
また,前記所定の記憶手段には,1フレーム分の撮像画像から抽出した光切断線の情報が記録されるので,光切断法による形状測定処理を実行するコンピュータがその記録情報を順次取り込めば,そのコンピュータによって被測定物の表面の移動方向における形状(高さ分布)を測定することができる。
なお,1組の前記画素ブロックの輝度情報についての前記情報入力手段の処理及び1段目の前記第1の輝度比較手段の処理は,前記クロック信号の2周期分の期間に分けて実行される場合と,その両方の処理が前記クロック信号の1周期分の期間内に続けて実行される場合とが考えられる。
【0007】
例えば,前記撮像素子が,320×256の解像度の撮像画像について,水平1ライン分の256画素を16のブロックに区分したときの画素ブロック(16個の画素群)ごとに,その輝度情報(16個の輝度情報)を20.5[MHz]以上のクロック信号に同期してパラレル出力し,本発明に係る光切断線抽出装置が,その20.5[MHz]以上のクロック信号に同期して処理を実行すれば,理論上,1秒当たり4000フレームという撮像レートに対してリアルタイムで光切断線抽出処理を実行できる。また,一般的なASICSやFPGA等の実用的な素子(回路)において,20.5[MHz]程度或いはそれ以上(例えば,40[MHz]程度)のクロック信号に同期して処理を実行することに何ら支障はない。
なお,上記の例の場合,撮像素子の撮像処理終了時(1フレーム分の画像における最後の画素ブロックの輝度情報出力開始時)から,その撮像画像についての光切断線の情報の記録完了までに数クロック分程度の遅延時間が生じる。例えば,最後の画素ブロックの輝度情報入力にクロック信号1クロック分,その画素ブロックについて16個の輝度情報の中から輝度が最大の1つの輝度情報を特定する処理(前記第1の輝度比較手段の処理)に同4クロック分,撮像画像における最後の1ライン分(16の画素ブロック)の輝度情報の中から輝度が最大の1つの輝度情報を確定する処理(最後の1ライン分の画像について前記第2の輝度比較手段が実行する最後の処理)に同1クロック分,前記情報記録手段の処理に同1クロック分を要するとした場合,それらを合計した7クロック分の遅延時間が生じる。
【0008】
また,本発明に係る光切断線抽出装置が,さらに,次の(1−7)に示す構成要素を備えることが考えられる。
(1−7)一定単位の前記移動(相対的な移動が一定単位ずつ進んだこと)を検出してその検出信号を出力する移動検出手段(例えば,回転する被測定物の回転軸に設けられたロータリーエンコーダ)の検出信号に同期して,前記情報記録手段により前記所定の記憶手段に書き込まれた情報を外部へ伝送する情報伝送手段。
これにより,前記角度変化検出手段の検出信号が撮像画像における垂直同期信号となり,その垂直同期信号に同期して,1フレーム分の画像から抽出された光切断線の情報が,外部装置(例えば,光切断法による形状測定処理を実行するコンピュータ)へ伝送される。その結果,その外部装置によって被測定物の表面の移動方向における形状(高さ分布)を測定することができる。
【0009】
また,本発明は,以上に示した光切断線抽出装置を用いて,相対的に移動する被測定物の表面に形成される光切断線の像を含む二次元画像を撮像する撮像素子(CMOSセンサがその典型例)から,その撮像画像における各画素の輝度情報を入力し,入力した輝度情報に基づいて前記光切断線の像を抽出する光切断線抽出方法として捉えることもできる。
即ち,本発明に係る光切断線抽出方法は,次の(2−1)〜(2−6)に示す各手順を実行する方法である。
(2−1)所定の情報入力回路により,前記撮像素子からその撮像画像における水平1ライン分の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる画素ブロックごとにその輝度情報を並行して入力し,入力した前記画素ブロックの輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,所定周波数のクロック信号に同期して実行する輝度情報入力手順。
(2−2)前記情報入力回路の後段側に複数段に連ねて設けられた第1の比較回路それぞれにより,1つ前段の回路により記録された全ての輝度情報を2個ごとに比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第1の輝度比較手順。
(2−3)前記画素ブロックの輝度情報のうち輝度が最高の輝度情報を保持する最終段の前記第1の輝度比較回路の後段側に設けられた第2の輝度比較回路により,最終段の前記第1の輝度比較回路により記録された輝度情報と当該第2の輝度比較回路により前回記録した処理結果である輝度情報とを比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第2の輝度比較手順。
(2−4)所定の信号生成回路により,前記第2の輝度比較回路において前記撮像画像における水平1ライン分の画素群それぞれの中で輝度が最高の画素の輝度情報が記録されたタイミングを表す水平同期信号を生成する水平同期信号生成手順。
(2−5)所定の情報記録回路により,前記第2の輝度比較回路によって記録された輝度情報及びその画素の座標情報を,所定の光切断線記憶手段に対し前記水平同期信号に同期して順次追記的に書き込む情報記録手順。
(2−6)所定の輝度初期化回路により,前記第2の輝度比較回路により記録された輝度情報を前記水平同期信号に同期して初期化する輝度初期化手順。
また,本発明に係る光切断線抽出方法において,さらに次の(2−7)に示す手順を実行することも考えられる。
(2−7)一定単位の前記移動を検出してその検出信号を出力する角度変化検出手段の検出信号に同期して,前記情報記録回路により前記所定の光切断線記憶手段に書き込まれた情報を所定の情報伝送回路により外部へ伝送する情報伝送手順。
このような本発明に係る光切断線抽出方法は,前述した本発明に係る光切断線抽出装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,例えば,1秒当たり2000〜4000フレーム以上という高い撮像レートで撮像を行う撮像素子(CMOSセンサ等),或いは高解像度での撮像を行う撮像素子から,被測定物の表面に照射したライン光の像(光切断線の像)を含む撮像画像の輝度情報を入力し,その輝度情報に基づいて光切断線を抽出する処理を,ASICやFPGA等の実用的な素子(回路)を用いて高速で(リアルタイムで)実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る光切断線抽出装置Xを備えた形状測定装置Wの概略構成を表す図,図2は形状測定装置Wが備えるセンサユニットにおける光源及びカメラの三次元配置を模式的に表した図,図3は光切断線抽出装置X及びこれと信号授受を行う機器の概略構成を表すブロック図,図4は光切断線抽出装置Xが備える画像処理回路の概略ブロック図,図5は撮像画像と光切断線抽出装置Xによる検出データとの対応関係を模式的に表した図である。
【0012】
まず,図1及び図2を参照しつつ,本発明の実施形態に係る光切断線抽出装置Xを備えた形状測定装置W全体及びセンサユニットの構成について説明する。
形状測定装置Wは,回転するタイヤ1(被測定物の一例)の表面に照射したライン光(スリット光)の像(光切断線Lsの像)をカメラ20(カメラ20が備える撮像素子であるCMOSセンサ21)によって撮像し,その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことによってタイヤ1の表面形状を検出する装置である。タイヤ1がその回転軸1aの周りに回転することにより,タイヤ1の表面はライン光やカメラに対して移動する。
また,形状測定装置Wが備える光切断線抽出装置Xは,移動するタイヤ1の表面に形成される光切断線の像を含む二次元画像を撮像する撮像素子から,その撮像画像における各画素の輝度データを入力し,入力した輝度データに基づいて光切断線の像を抽出する(光切断線の像の座標を検出する)光切断線抽出処理を実行する装置である。
図1に示すように,形状測定装置Wは,タイヤ回転機2,センサユニット3,ユニット駆動装置4,エンコーダ5,光切断線抽出装置X及びホストコンピュータ7等を備えている。
前記タイヤ回転機2は,形状測定の対象であるタイヤ1をその回転軸1gを中心に回転させるモータ等の回転装置である。例えば,前記タイヤ回転機2は,タイヤ1を60rpmの回転速度で回転させる。これにより,形状測定装置Wは,タイヤ1を1回転させる1秒の間に,後述するセンサユニット3によって,タイヤ1のトレッド面及びサイドウォール面の全周範囲の表面形状を検出する。
前記センサユニット3は,回転するタイヤ1の表面にライン光を照射する光源10及びタイヤ1の表面上の光切断線Lsの像(ライン光の像)を撮像するカメラ20などが組み込まれたユニットである。本実施形態では,タイヤ1の2つのサイドウォール面それぞれの形状測定に用いられる2つのセンサユニット3a,3cと,タイヤ1のトレッド面の形状測定に用いられる1つのセンサユニット3bとを併せて3つのセンサユニット3を備えている。
【0013】
前記ユニット駆動装置4は,センサユニット3それぞれをサーボモータ等の駆動装置を駆動源として移動可能に支持し,タイヤ1に対する各センサユニット3の位置を位置決めする装置である。前記ユニット駆動装置4は,所定の操作部に対する操作に応じて,又は外部装置からの制御指令に応じて,タイヤ1が前記タイヤ回転機2に対して着脱される前に,各センサユニット3をタイヤ1から離間した所定の退避位置に位置決めし,新たなタイヤ1が前記タイヤ回転機2に装着された後,各センサユニット3をタイヤ1に近接した所定の検査位置に位置決めする。
前記エンコーダ5は,前記タイヤ回転機2の回転軸に設けられ,その回転軸の回転角度,即ち,タイヤ1の回転の角度が所定の単位角度ずつ変化したことを検出してその検出信号(パルス信号)を後述するリセット信号RESETとして出力するセンサ(前記角度変化検出手段の一例)であり,その検出信号(リセット信号RESET)は,前記センサユニット3が備えるカメラの撮像タイミングの制御及び光切断線抽出装置Xからホストコンピュータ7へのデータ転送タイミングの制御に用いられる。なお,エンコーダ5は,タイヤ1の表面の一定単位の移動を検出してその検出信号を出力する前記移動検出手段の一例である。
【0014】
また,前記センサユニット3は,図2に示すように,ライン光(スリット光)を出力する投光装置10と,カメラ20とを備えている。なお,図2には,測定対象面がタイヤ1のサイドウォール面である場合の例を示している。
図2に示すように,カメラ20の撮像画像の座標系におけるX軸方向(水平ライン方向)と回転によるタイヤ1表面の移動方向Rとが平行となり,撮像画像の座標系におけるY軸方向とタイヤ1表面におけるその移動方向に直交する方向とが平行となるように投光装置10及びカメラ20が配置されている。
また,投光装置10は,タイヤ1表面に形成される光切断線Lsの像が,撮像画像の座標系におけるY軸方向に伸びて形成されるようその出力光(ライン光)の向きが設定されている。以上のことは,測定対象面がタイヤ1のサイドウォール面である場合もトレッド面である場合も同様である。
即ち,タイヤ1のサイドウォール面の測定においては,タイヤ1の半径方向(タイヤ1の回転軸1gに対する法線の方向)及びタイヤ1の回転軸1gの方向の両方に直交する方向が座標系のX軸方向と平行であり,タイヤ1の半径方向が座標系のY軸方向と平行であり,また,光切断線Lsがタイヤ1の半径方向に伸びて形成される。
また,タイヤ1のトレッド面の測定においては,タイヤ1の回転軸1gの方向が座標系のY軸方向と平行であり,タイヤ1の外周円の接線方向が座標系のX軸方向と平行であり,また,光切断線Lsがタイヤ1の回転軸1gの方向に伸びて形成される。
【0015】
次に,図3に示すブロック図を参照しつつ,光切断線抽出装置X及びこれと信号授受を行う機器の関係について説明する。
図3に示すように,光切断線抽出装置Xは,画像処理回路61,SDRAM62及びパラレルI/Oインターフェース63(図3においてPIO I/Fと記す)を備えている。
画像処理回路61は,プログラマブルなLSIであるFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現される回路であり,主として光切断線抽出処理を実行する回路である。
SDRAM62は,画像処理回路61の処理結果である光切断線のデータを一時記憶する高速メモリである。なお,本メモリは,SRAM等の他の高速メモリを採用することも考えられる。
パラレルI/Oインターフェース63は,SDRAM62に1フレーム分の撮像画像についての光切断線のデータが蓄積(記録)されるごとに,その光切断線のデータをパラレル転送によってホストコンピュータ7に対して高速転送する回路である。なお,ホストコンピュータ7は,光切断線抽出装置X側のパラレルI/Oインターフェース63との間でデータ伝送を行うパラレルI/Oインターフェース71を備え,これを通じて光切断線のデータをその主メモリ内に取り込む。
そして,ホストコンピュータ7は,パラレルI/Oインターフェース71を通じて取得した光切断線のデータに基づいて,光切断法による形状測定処理を実行する。例えば,ホストコンピュータ7は,取得した光切断線のデータに基づいて,タイヤ1表面の回転方向における形状(高さ分布)を求め,その形状を不図示の表示装置に表示させたり,その形状が予め定められた合格条件(或いは不合格条件)を満たすか否かを判別することによってタイヤ形状の欠陥有無を判別したりする処理を実行する。
なお,ホストコンピュータ7は,取得した光切断線のデータにおいて,輝度データの輝度レベルが所定のレベルに満たないものについては,光切断線が存在しない領域のデータとして処理する。
【0016】
また,前記カメラ20は,不図示の対物レンズと,その対物レンズによる結像画像を撮像する撮像素子であるCMOSセンサ21と,そのCMOSセンサ21から出力される撮像データを表すアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ22(図3においてADCと記す)とを備えている。
CMOSセンサ21は,高周波数(例えば,4000[Hz]以上)のクロック信号CLKに同期して,1フレーム分の撮像画像について,その撮像画像における水平1ライン分(X軸方向1ライン分)の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる前記画素ブロックごとに,その輝度データを並行して出力(パラレル出力)する。その画素ブロックごとの輝度データDbkは,A/Dコンバータ22を通じて光切断線抽出装置Xにおける画像処理回路61に伝送される。その際,CMOSセンサ21は,輝度データDbkを出力する際,その輝度データDbkが,1フレーム分の画像における何番目の画素ブロックのデータであるかを表すブロック番号データBNも同時に(輝度データDbkの出力と並行して)出力する。このブロック番号データBNは,1フレーム分の画像における各画素ブロックの位置を表す情報であり,これも光切断線抽出装置Xにおける画像処理回路61に伝送される。
なお,クロック信号CLKは,光切断線抽出装置Xの内部或いは外部に設けられた所定の発振回路30から供給される。
また,CMOSセンサ21は,エンコーダ5の検出信号(前記リセット信号RESET)に同期して,1フレーム分の画像の撮像を行う。例えば,CMOSセンサ21は,60rpmの速度で回転するタイヤ1が0.09°(=360°/4000)回転したことがエンコーダ5によって検出されるごとに1フレーム分の画像の撮像を実行する。1秒間に4000フレームの撮像レートでの撮像が行われる。
本実施形態においては,CMOSセンサ21は,320×256の解像度の撮像画像について,水平1ライン分の256画素を16のブロックに区分したときの画素ブロック(16個の画素群)ごとに,その輝度データ(16個の輝度データD00〜D0f)を40[MHz]のクロック信号CLKに同期してパラレル出力するものとする。なお,40[MHz]というクロック信号CLKの周波数は,1秒間に4000フレームという撮像レートに対応可能な理論上の必要周波数20.5[MHz]に対して十分に余裕のある周波数である。また,撮像画像の解像度が256×256であれば,クロック信号CLKの周波数は20[MHz]程度でも十分である。
さらに,CMOSセンサ21は,撮像画像における水平1ライン分(X軸方向1ライン分)の画素群の輝度データを出力するごとに,即ち,水平1ライン分の画素群における最後の画素ブロックの輝度データDbkを出力するごとに,ライン完結信号END−LINEを出力する。クロック信号CLK及びライン完結信号END−LINEも,光切断線抽出装置Xにおける画像処理回路61に入力される。
なお,CMOSセンサ21に代わる撮像素子として,CCD等を採用することも考えられる。
また,前記エンコーダ5によるタイヤ1の回転角度変化の検出信号は,前記リセット信号RESETとして,光切断線抽出装置Xにおける画像処理回路61及びパラレルI/Oインターフェース63に入力される。
【0017】
図5は,CMOSセンサ21によるタイヤ1の撮像画像(図5における下側の図)と光切断線抽出装置Xによる検出データ(Xp,Yi,Kp)(図5における上側の図)との対応関係を模式的に表した図である。なお,図5(b)において,便宜上,撮像画像における光切断線Lsの像が黒色,その背景が白色で表されているが,実際の撮像画像は,光切断線Lsの像の部分の輝度が高く,その背景の領域の輝度が低い画像である。
画像処理回路61は,前記画素ブロックの輝度データDbkを順次入力し,その入力データが水平1ライン分のデータとなるごとに,一定の遅延時間の後に,その水平1ライン分の画素の輝度データのうち最も輝度の高い輝度データ(ライン内最高輝度データKp)と,そのライン内最高輝度データKpに対応する画素の位置のX座標(Xp)及びY座標(Yi)を特定できる座標情報とを光切断線の抽出データとしてSDRAM62に記録する。但し,本実施形態においては,Y座標(Yi)は,ライン内最高輝度データKpのデータ列における各データKpの並び順によって特定され,Y座標(Yi)それぞれを表す個別のデータは直接的にはSDRAM62に記録されない。
【0018】
次に,図4に示すブロック図を参照しつつ,画像処理回路61の構成及び処理について説明する。
画像処理回路61は,簡易なデータ処理及びその処理結果をレジスタへ記録する処理を行う回路(以下,単工程回路という)が複数段に連ねられ,その単工程回路それぞれが,発振回路30から出力されるクロック信号CLKに同期して(パルス信号が入力されるごとに)それぞれが担当する処理を並行して実行する回路である。ここで,1段目の単工程回路は,クロック信号CLKに同期してCMOSセンサ21から前記画素ブロックの輝度データDbkを入力し,その入力データを予め定められたレジスタ(例えば,1つ後段の単工程回路が備えるレジスタ)に記録する処理を実行し,2段目以降の単工程回路は,それぞれ1つ前の段の単工程回路によりレジスタに記録されたデータに基づくデータ処理及びその処理結果をレジスタ(例えば,1つ後段の単工程回路が備えるレジスタ)に記録する処理を実行する。
【0019】
より具体的には,1段目の単工程回路610は,CMOSセンサ21から前記画素ブロックごとにその輝度データDbk(D00〜D0f)と前記ブロック番号データBNとを並行して入力し,入力した画素ブロックの輝度データDbk及びブロック番号データBNを所定の入力バッファに記録する処理を,クロック信号CLKに同期して実行する回路である(前記情報入力手段,前記情報入力回路の一例)。ここで,ブロック番号データBNは,入力データに対応する画素ブロックの撮像画像における位置(座標)を表す情報であり,また,入力した輝度データD00〜D0fの記憶位置(レジスタのアドレス)が,画素ブロック内での各画素の位置(順番)に対応するので,1段目の単工程回路610は,入力した画素ブロックの輝度データDbkとともに,その画素ブロックの画素の座標情報もレジスタに記録する回路となっている。
また,1段目の単工程回路610は,エンコーダ5の角度変化検出信号である前記リセット信号RSETに同期して,既に前記入力バッファに記録した輝度データD00〜D0fを初期化(最低輝度値0に更新)する。
なお,前述したように,輝度データDbkは,CMOSセンサ21の撮像画像における水平1ライン分の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる画素ブロックの輝度データである。図4に示す例は,16画素からなる画素ブロックの輝度データ(16個の輝度データD00〜D0f)が並行入力される例である。また,1段目の単工程回路610におけるリセット信号RESETに応じた輝度データの初期化は必ずしも必要ではない。
【0020】
2段目〜5段目の単工程回路611a〜611dは,データ入力用の1段目の単工程回路610の後段側に複数段(ここでは,4段)に連ねて設けられ,それぞれ1つ前段の単工程回路により記録された全ての輝度データを2個ごとに比較し,輝度が高い方の輝度データ及びその画素の座標情報を予め定められたレジスタ(ここでは,1つ後段の単工程回路が備えるレジスタ)に記録する処理を,クロック信号CLKに同期して実行する複数(ここでは4つ)のデータ比較回路である(前記第1の輝度比較手段,前記第1の輝度比較回路の一例)。
即ち,2段目の単工程回路611aは,クロック信号CLKに同期して,1段目の単工程回路610により記録された全ての輝度データD00〜D0fを2個ごとに比較し,輝度が高い方の輝度データD10〜D17と,その輝度データD10〜D17に対応する画素の位置(座標)を表す座標情報BN,C10〜C17とを1つ後段の単工程回路が備えるレジスタに記録する。ここで,座標情報には前記ブロック番号データBNと,2個の画素のうち輝度が高いと判別された一方の画素の画素ブロック内での位置(順番)を表すブロック内画素番号データC10〜C17とが含まれる。
また,3段目の単工程回路611bは,クロック信号CLKに同期して,2段目の単工程回路611aにより記録された全ての輝度データD10〜D07を2個ごとに比較し,輝度が高い方の輝度データD20〜D23と,その輝度データD20〜D23に対応する画素の位置(座標)を表す座標情報BN,C20〜C23とを1つ後段の単工程回路が備えるレジスタに記録する。ここで,座標情報には前記ブロック番号データBNと,2個の画素のうち輝度が高いと判別された一方の画素の画素ブロック内での位置(順番)を表すブロック内画素番号データC20〜C23とが含まれる。
以下,4段目の単工程回路611c及び5段目の単工程回路611dも,それぞれ3段目の単工程回路611bと同様の処理をクロック信号CLKに同期して実行する。
これにより,2段目〜5段目の単工程回路611a〜611dの中で最終段の単工程回路611dは,1つの前記画素ブロックの輝度データD00〜D0fのうち輝度が最高の輝度データD40及びその座標情報BN,C40をレジスタ(ここでは,6段目の単工程回路612aが備えるレジスタ)に記録する回路となる。
即ち,前記画素ブロックが2N個(但し,Nは2以上の整数)の画素から構成される場合,画像処理回路61は,2段目〜5段目の単工程回路611a〜611dのそれぞれに相当する単工程回路がN段に連ねられた回路を備えるものである。
なお,1段目の単工程回路610は,前記画素ブロックの輝度データD00〜D0fを単に入力する軽い処理(演算を伴わない処理)を行うだけであるので,クロック信号CLKの1周期分の期間内に,1段目の単工程回路610の処理と,2段目の単工程回路611aの処理との両方が行われるよう構成してもよい。
【0021】
6段目の単工程回路612a及び7段目の単工程回路612bからなる6・7段目単工程回路612は,画素ブロックの輝度データD00〜D0fのうち輝度が最高のデータを保持する5段目の単工程回路611d(最終段の前記第1の輝度比較手段に相当)により記録された輝度データD40と,当該6段目の単工程回路612がレジスタへ前回記録した処理結果である輝度データD50’とを比較し,輝度が高い方の輝度データD50及びその画素の座標情報ADDRを所定のレジスタ(7段目の単工程回路612bが備えるレジスタ及び出力レジスタ61y)に記録する処理を,クロック信号CLKに同期して実行する回路である(前記第2の輝度比較手段,前記第2の輝度比較回路の一例)。
より具体的には,6段目の単工程回路612aは,クロック信号CLKに同期して,5段目の単工程回路611dにより記録された輝度データD40と,当該6段目の単工程回路612aが7段目の単工程回路612bのレジスタに前回記録した処理結果である輝度データD50’とを比較し,輝度が高い方の輝度データD50及びその画素の座標情報ADDRを,7段目の単工程回路612bが備えるレジスタに記録する。ここで,座標情報ADDRは,前記ブロック番号データBNと前記ブロック内画素番号データC40とを組み合わせた情報である。なお,6段目の単工程回路612aは,5段目の単工程回路611dにより記録された輝度データD40の方が輝度が高い場合には,5段目の単工程回路611dにより記録された前記ブロック番号データBN及び前記ブロック内画素番号データC40を組み合わせた座標情報ADDRをレジスタに記録し,そうでない場合は,既に7段目の単工程回路612bのレジスタに記録されている座標情報ADDRを同じ内容のまま維持させる(同じ内容を上書きすることを含む)。
【0022】
また,7段目の単工程回路612bは,クロック信号CLKに同期して,6段目の単工程回路612aにより記録された輝度データ50及びその画素の座標情報ADDRを,予め定められたデータフォーマットに整形した状態(例えば,無効データを付加してデータ長を予め定められたデータ長に変換した状態)で前記出力レジスタ61yに記録する回路である。
さらに,7段目の単工程回路612bは,後述する水平同期信号Hsyncに同期して,当該7段目の単工程回路612bが備えるレジスタに既に記録された輝度データD50及びその画素の座標情報ADDR(6・7段目単工程回路612が記録した情報)を初期化(最低輝度値0に更新)する(前記輝度初期化手段,前記輝度初期化回路の一例)。
また,第2段目〜第7段目の単工程回路610,611a〜611d,612a,612bは,エンコーダ5の角度変化検出信号である前記リセット信号RSETに同期して,既にレジスタに記録した輝度データD10〜D17,D20〜D23,D30,D31,D40,D50を初期化(最低輝度値0に更新)する。
なお,第2段目〜第7段目の単工程回路610,611a〜611d,612a,612bが,前記輝度初期化手段及び前記輝度初期化回路の一例である。
以上に示した第1段目〜第7段目の単工程回路610,611a〜611d,612a,612bの処理により,初期状態(データの初期化済み状態)となった後に入力された画素ブロック全てについて,輝度が最高の画素の輝度データD50及びその画素の座標情報ADRESSが出力レジスタ61yに記録されることになる。
【0023】
ところで,図4に示す回路の例では,第1段目の単工程回路610により,撮像画像における水平1ライン分の画素群のうちの最後の画素ブロックの輝度データD00〜D0fが画像処理回路61に入力された時点,即ち,前記ライン完結信号END−LINが入力された時点から,その水平1ライン分の画素群全ての中で輝度が最高の画素の輝度データDmax及びその画素の座標情報Amaxの出力レジスタ61yへの記録処理(第6段目の単工程回路614による処理)が開始されるまでに,クロック信号CLKにおいて6クロック分のステップ(時間)を要する。従って,ライン完結信号END−LINを,クロック信号CLKにおける6クロック分だけ遅延(シフト)させた信号は,6・7段目単工程回路612によって撮像画像における水平1ライン分の画素群それぞれの中で輝度が最高の画素の輝度データが出力レジスタ61yに記録された(記録が完了した)タイミングを表す信号,即ち,出力レジスタ61yの記録データを基準としたときの水平同期信号Hsyncとなる。
そして,画像処理回路61は,ライン完結信号END−LINを,クロック信号CLKにおける6クロック分だけ遅延(シフト)させることによってその水平同期信号Hsyncを生成する遅延回路614を備えている(前記水平同期信号生成手段,前記水平同期信号生成回路の一例)。
なお,前述したように,クロック信号CLKの1周期分の周期内に1段目の単工程回路610及び2段目の単工程回路611aの両方の処理が行われる場合には,遅延回路614は,ライン完結信号END−LINをクロック信号CLKにおける5クロック分だけ遅延(シフト)させればよい。
【0024】
前述したように,第1段目〜第7段目の単工程回路610,611a〜611d,612a,612bの処理により,初期状態(データの初期化済み状態)となった後に入力された画素ブロック全てについて,輝度が最高の画素の輝度データD50及びその画素の座標情報ADRESSが出力レジスタ61yに記録されることになる。
また,7段目の単工程回路612bにより,水平同期信号Hsyncに同期して,当該7段目の単工程回路612bが備えるレジスタに既に記録された輝度データD50及びその画素の座標情報ADDRが初期化(最低輝度値0に更新)されるため,出力レジスタ61yには,水平同期信号Hsyncが発生した時点において,水平1ライン分の画素群の中で輝度が最高の画素の輝度データ及びその画素の座標情報が記録されている(記憶している)状態となる。
【0025】
そして,画像処理回路61は,出力レジスタ61yに記録されたデータを前記SDRAM62に書き込む処理を,水平同期信号Hsyncに同期して実行する第8段目の単工程回路であるゲート回路613を備えている。
このゲート回路613は,出力レジスタ61yに記録された輝度データD50及びその画素の座標情報ADDRを,SDRAM62(前記所定の光切断線情報記憶手段の一例)の記憶領域に対し,前記水平同期信号Hsyncに同期して順次記憶位置を変更しつつ書き込む(即ち,順次追記的に書き込む)処理を実行する(前記情報記録手段,前記情報記録回路の一例)。
以上に示した画像処理回路61の処理により,エンコーダ5の角度変化検出信号であるリセット信号RESETが発生してから,次のリセット信号RESETが発生するまでの間に,1フレーム分の撮像画像についての光切断線のデータが蓄積(記録)されることになる。ここで,光切断線のデータとは,水平1ラインごとに(Y座標方向の各位置Yiそれぞれについて)輝度が最高の画素の輝度値Kpを表すデータD50と,その画素の座標Xpを表す座標情報ADDRとを含むデータである。
そして,前記パラレルI/Oインターフェース63は,エンコーダ5の角度変化検出信号であるリセット信号RESETに同期して,即ち,SDRAM62に1フレーム分の撮像画像についての光切断線のデータが蓄積(記録)されるごとに,ゲート回路613によってSDRAM62に書き込まれたデータ(光切断線のデータ)を,パラレル転送によって外部のホストコンピュータ7に対して高速転送する(前記情報伝送手段,前記情報伝送回路の一例)。
【0026】
以上に示した光切断線抽出装置Xは,1フレーム分の撮像画像の情報(輝度情報)が全て得られた後に,その情報に基づく光切断線抽出処理を実行するのではなく,高周波数のクロック信号CLKに同期して,撮像画像の一部である前記画素ブロックごとに,その輝度データDbkをパラレル入力し,さらに,その輝度データDbkの中から最高輝度のデータを抽出する処理を,前記単工程回路それぞれにより,演算負荷の小さな処理に分けてそれらの処理を複数段階に連ねて実行し,それによって1フレーム分の撮像画像から抽出した光切断線のデータ(水平1ラインごとの最高輝度の輝度データ及びその座標)をSDRAM62に記録する。
これにより,光切断線抽出装置Xは,CMOSセンサ21による1フレーム分の撮像完了タイミングに対して若干の遅延が生じるものの,光切断線抽出処理をCMOSセンサ21の撮像レートに対してリアルタイムで実行することができる。しかも,クロック信号CLKに同期して実行すべき処理(単工程回路それぞれの処理)の演算負荷を小さく抑えることができるので,本発明に係る光切断線抽出装置は,ASICやFPGA等の実用的な素子(回路)を用いて実現できる。
また,光切断線抽出装置Xは,比較的少数の画素群(画素ブロック)ごとにその輝度データを入力し,2個ずつのデータ比較によって輝度の高い方のデータのみを順次残す(レジスタに記録する)ので,比較的小さな容量のメモリ(レジスタ)を備えるだけで済み,シンプルな装置(回路)構成によって実現できる。
また,光切断線抽出装置Xは,撮像画像の解像度が高いために時間当たりに入力される輝度データの数が多い場合でも,1フレーム分の撮像完了タイミングに対する遅延が生じるものの,光切断線抽出処理を連続的な撮像に対してリアルタイムで実行することができる。
【0027】
また,SDRAM62には,CMOSセンサ21の撮像レート(例えば,1/4000[秒])にほぼ同期して光切断線のデータが記録され,それがホストコンピュータ7に転送される。そして,ホストコンピュータ7として実用的なコンピュータ(パーソナルコンピュータ等)を採用した場合,そのホストコンピュータ7が,パラレルI/Oインターフェース71を通じて光切断線のデータを取得し,そのデータに基づいてタイヤ表面の回転方向における形状(高さ分布)測定やその測定データに基づくタイヤ1の合否判定を行うのに要する時間は,1/4000[秒]程度もあれば十分である。
従って,光切断線抽出装置Xを用いれば,タイヤの形状欠陥検査の工程において,高速化されたタイヤ1表面の撮像工程(例えば1秒)に対し,リアルタイムで形状結果の有無の判別結果を得ることができる。
【0028】
以上に示した光切断線抽出装置Xは,ライン完結信号END−LINEをCMOSセンサ21から取得し,そのライン完結信号END−LINEに基づいて,前記水平同期信号Hsyncを生成する例を示したが,他の方法によって水平同期信号Hsyncを生成することも考えられる。
例えば,画像処理回路61に,リセット信号RSETが入力されてからのクロック信号CLKの入力数をカウントし,そのカウント数が予め定められた数となったときに前記水平同期信号Hsyncを発生させるカウンタ回路を設けること等も考えられる。
同様に,画像処理回路61に,前記ブロック番号データBNを生成する回路を設けることも考えられる。そのような回路としては,例えば,リセット信号RSETが入力されるごとにブロック番号データBNを初期化し,その後,クロック信号CLKの入力数をカウントしてそのカウント数が予め定められた数となるごとに,前記ブロック番号データBNの値をカウントアップすることによって前記ブロック番号データBNを生成する回路等が考えられる。
また,図4に示した画像処理回路61において,ゲート回路613を,7段目の単工程回路612bが備えるレジスタに記録されたデータをSDRAM62に書き込む回路とし,前記出力レジスタ61y及びその出力レジスタ61yへの記録処理を省略した構成も考えられる。但しその場合,前記遅延回路614によるライン完結信号END−LINEの遅延クロック数は5クロックとなる。
【0029】
また,前述した実施形態では,回転するタイヤ1を被測定物とし,その回転によって移動するタイヤ表面に形成された光切断線を抽出する光切断線抽出装置Xを示したが,同様の機器構成により,他の移動する被測定物の表面の形状を測定することも可能である。
例えば,前記センサユニット3を,直線方向に移動する被測定物の測定対象面に対向させて配置し,前記光切断線抽出装置Xが前述した実施形態における処理と同様の処理を行えば,その被測定物の表面に形成された光切断線の抽出処理を高速で実行することができる。
また,実施形態に示したように,センサユニット3が固定された状態で,タイヤ1等の被測定物の表面を移動させることによって被測定物の表面を走査する装置構成の他,例えば,鉄道軌道周辺の構造物等(トンネル等)が被測定物である場合のように,被測定物が固定された状態で,センサユニット3を被測定物の表面に沿って移動(直線移動や回転移動)させることによって被測定物の表面を走査する装置構成も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は,光切断線抽出装置への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る光切断線抽出装置Xを備えた形状測定装置Wの概略構成を表す図。
【図2】形状測定装置Wが備えるセンサユニットにおける光源及びカメラの三次元配置を模式的に表した図。
【図3】光切断線抽出装置X及びこれと信号授受を行う機器の概略構成を表すブロック図。
【図4】光切断線抽出装置Xが備える画像処理回路の概略ブロック図。
【図5】撮像画像と光切断線抽出装置Xによる検出データとの対応関係を模式的に表した図。
【符号の説明】
【0032】
W :形状測定装置
1 :タイヤ
2 :タイヤ回転機
3 :センサユニット
4 :ユニット駆動装置
5 :エンコーダ
6 :画像処理装置
10:投光装置
11,12,13:ライン光源
20:カメラ
21:撮像素子
22:カメラレンズ
Ls1,Ls2,Ls3:光切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する被測定物の表面に形成される光切断線の像を含む二次元画像を撮像する撮像素子から,その撮像画像における各画素の輝度情報を入力し,入力した輝度情報に基づいて前記光切断線の像を抽出する光切断線抽出装置であって,
前記撮像素子からその撮像画像における水平1ライン分の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる画素ブロックごとにその輝度情報を並行して入力し,入力した前記画素ブロックの輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,所定周波数のクロック信号に同期して実行する情報入力手段と,
前記情報入力手段の後段側に複数段に連ねて設けられ,それぞれ1つ前段において記録された全ての輝度情報を2個ごとに比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する複数の第1の輝度比較手段と,
前記画素ブロックの輝度情報のうち輝度が最高の情報を所定の記憶手段に記録する最終段の前記第1の輝度比較手段により記録された輝度情報と前回記録した処理結果である輝度情報とを比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第2の輝度比較手段と,
前記第2の輝度比較手段において前記撮像画像における水平1ライン分の画素群それぞれの中で輝度が最高の画素の輝度情報が記録されたタイミングを表す水平同期信号を生成する水平同期信号生成手段と,
前記第2の輝度比較手段により記録された輝度情報及びその画素の座標情報を,所定の光切断線情報記憶手段に対し前記水平同期信号に同期して順次追記的に書き込む情報記録手段と,
前記第2の輝度比較手段により記録された輝度情報を前記水平同期信号に同期して初期化する輝度初期化手段と,
を具備してなることを特徴とする光切断線抽出装置。
【請求項2】
一定単位の前記移動を検出してその検出信号を出力する移動検出手段の検出信号に同期して,前記情報記録手段により前記所定の光切断線情報記憶手段に書き込まれた情報を外部へ伝送する情報伝送手段を具備してなる請求項1に記載の光切断線抽出装置。
【請求項3】
前記撮像素子がCMOSセンサである請求項1又は2のいずれかに記載の光切断線抽出装置。
【請求項4】
前記被測定物が回転するタイヤである請求項1〜3のいずれかに記載の光切断線抽出装置。
【請求項5】
相対的に移動する被測定物の表面に形成される光切断線の像を含む二次元画像を撮像する撮像素子から,その撮像画像における各画素の輝度情報を入力し,入力した輝度情報に基づいて前記光切断線の像を抽出する処理を実行する光切断線抽出方法であって,
所定の情報入力回路により,前記撮像素子からその撮像画像における水平1ライン分の画素群がさらに複数に区分された画素群からなる画素ブロックごとにその輝度情報を並行して入力し,入力した前記画素ブロックの輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,所定周波数のクロック信号に同期して実行する輝度情報入力手順と,
前記情報入力回路の後段側に複数段に連ねて設けられた第1の比較回路それぞれにより,1つ前段の回路により記録された全ての輝度情報を2個ごとに比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第1の輝度比較手順と,
前記画素ブロックの輝度情報のうち輝度が最高の情報を記録する最終段の前記第1の輝度比較回路の後段側に設けられた第2の輝度比較回路により,最終段の前記第1の輝度比較回路により記録された輝度情報と当該第2の輝度比較回路により前回記録した処理結果である輝度情報とを比較して輝度が高い方の輝度情報及びその画素の座標情報を所定の記憶手段に記録する処理を,前記クロック信号に同期して実行する第2の輝度比較手順と,
所定の信号生成回路により,前記第2の輝度比較回路において前記撮像画像における水平1ライン分の画素群それぞれの中で輝度が最高の画素の輝度情報が記録されたタイミングを表す水平同期信号を生成する水平同期信号生成手順と,
所定の情報記録回路により,前記第2の輝度比較回路により記録された輝度情報及びその画素の座標情報を,所定の光切断線情報記憶手段に対し前記水平同期信号に同期して順次追記的に書き込む情報記録手順と,
所定の輝度初期化回路により,前記第2の輝度比較回路により記録された輝度情報を前記水平同期信号に同期して初期化する輝度初期化手順と,
を実行してなることを特徴とする光切断線抽出方法。
【請求項6】
一定単位の前記移動を検出してその検出信号を出力する移動検出手段の検出信号に同期して,前記情報記録回路により前記所定の光切断線情報記憶手段に書き込まれた情報を所定の情報伝送回路により外部へ伝送する情報伝送手順をさらに実行してなる請求項5に記載の光切断線抽出方法。
【請求項7】
前記撮像素子がCMOSセンサである請求項5又は6のいずれかに記載の光切断線抽出方法。
【請求項8】
前記被測定物が回転するタイヤである請求項5〜7のいずれかに記載の光切断線抽出方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−42114(P2009−42114A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208353(P2007−208353)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】