光学式検出センサ
【課題】伝送路の曲げによる影響を受けず、光源の波長スペクトルが変化することによる光ファイバNAの変化によって変動する測定値を抑制し、精度良く測定することのできる光学式検出センサを提供する。
【解決手段】光源から出力された出射光を第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に照射し、第2及び第3光ファイバでこの反射光を受光して被測定物の変位量を算出する光学式検出センサであって、第1光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つこの第2及び第3光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第1光ファイバと、第2及び第3光ファイバは、法線を介して対向配置され、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有する。
【解決手段】光源から出力された出射光を第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に照射し、第2及び第3光ファイバでこの反射光を受光して被測定物の変位量を算出する光学式検出センサであって、第1光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つこの第2及び第3光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第1光ファイバと、第2及び第3光ファイバは、法線を介して対向配置され、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光強度の変化を測定することにより圧力や温度などの物理量を検出する光学式検出センサに関し、特に、変位量を高精度検出する光学式検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の変位、温度、圧力等の物理量を測定するセンサとして電気式センサが一般に良く知られている。しかしこの場合は、測定信号(電気信号)を電線により遠隔地に伝送するため、電磁雑音の影響を受け易く、測定誤差の要因になるという問題を有していた。これに対して光学式センサでは、測定信号を光信号に変換し、光ファイバで遠隔地に伝送するため、電磁雑音の影響を受けることなく信号伝送することが可能であり、測定誤差も少なく、非常に高精度な測定が可能となるという利点を有している。
【0003】
このような光式物理量センサとしては、圧力によってひずむ機構を有する起歪体(例えば、ブルドン管など)を用い、圧力変化をひずみ変化に変換し、このひずみをファイバグレーティング(FBG)で検知するものなどがある。また、光ファイバ端面に、圧力によって位置変動する反射板(ダイアフラムなど)を対向配置させて固定し、光ファイバ端面からの出射光が反射板で反射する反射光を測定することで位置変動を検知し、その位置から圧力を検出するものなどがある。
【0004】
この位置変動量の検出方法として、複数の反射光による干渉状態や、ビート周波数を検出するもの(例えば、特許文献1参照)や、反射板に振動子を固定し、その振動子の共振周波数を検出するもの(例えば、特許文献2参照)などがあるが、これらは信号処理が困難であり、複雑な演算処理が必要となる。
【0005】
これに対し、シンプルな構造で測定可能な方法として、反射光の強度変化測定法がある。この方法であれば、測定装置が安価な材料や部品で構成することが可能であり、測定した信号処理も非常に容易に行うことができる。その一方で光強度を測定していることから、反射板の位置変動以外の要因、例えば伝送損失などによる強度変化が測定誤差となり測定値に重畳するという問題があるが、伝送損失変化を非常に小さくするか、若しくは複数の反射光強度による比をとり補償することで測定精度を高めることが可能である。
【0006】
例えば特許文献3においては、コア径、コア部屈折率分布、開口数(NA)などのいずれかのパラメータが異なる第1、第2の2種類の光ファイバを並列に固定し、光ファイバ端面を反射板の反射面に対向させ、光ファイバ長手方向と反射面に対する法線が平行になるように設置する構成となっている。これにより第1の光ファイバ端面から出射され反射板で反射した光を、第2の光ファイバによって受光し、かつ第2の光ファイバから出射され反射板で反射した光を、第1の光ファイバで受光することができ、それぞれ受光した反射光を光分岐器によって分岐し、光電変換器で測定された2つの光強度の比をとることで伝送損失の影響を補償することが可能となる。
【0007】
また上述の測定方法に加え、それぞれの光ファイバから出射し反射板で反射した光の戻り光も測定する方法や、同種光ファイバを出射用2本と受光用2本の4本使用し、光分岐器を使用せず、それぞれの強度比をとる方法などがある。
【0008】
また、特許文献4及び特許文献5には、発光ダイオード光源との結合が容易で、且つコア径が大きいために光強度を大きくとることができるマルチモードファイバを用い、測定対象である液面の法線に対して角度Φ(0°≦Φ≦5°)で複数本の光ファイバを固定し、液面の変位を検出するという技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3304696号公報(第15頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−214966号公報(第4頁、第1−4図)
【特許文献3】特公平6−8724号公報(第3−4頁、第1−2図)
【特許文献4】米国特許第4996418号明細書(第1図、第15図、第16図)
【特許文献5】米国特許第5068527号明細書(第1図)
【特許文献6】米国特許第6433350号明細書
【特許文献7】米国特許第4479717号明細書
【特許文献8】仏国特許発明第2399000号明細書
【特許文献9】特開平10−9813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3記載の技術では光ファイバ長手方向と反射面に対する法線が平行になっているため、光ファイバと反射板との距離変化に対する反射光強度変化量(測定感度)を変更する場合、パラメータが異なる特殊光ファイバを作製する必要があり、測定感度を容易に選択することは困難である。また、光ファイバ端面が長手方向に対して直角なため、光ファイバ端面と空気層の境界でフレネル反射が発生し、受光強度の変動や、出射光の強度損失の増加などによって測定精度が悪化する。さらに、ファイバ端面と反射板との間で多重反射が発生し易く、それにより測定精度が悪化する。
【0010】
また、以前では光強度変化を利用する方式において、光強度が大きくとれることは重要であり、特許文献4及び特許文献5などのようにマルチモードファイバを使用することは有用であった。しかし、マルチモードファイバは曲げに弱いという問題があり、曲げによりモードの伝搬状態が変化するためNAが容易に変化し、かつ損失も変化する。また、光源として発光ダイオード(LED:light-emitting diode)を使用することは価格および偏波依存性の観点から有利であるが、LEDは温度変化によって強度スペクトルが変化する温度依存性をもっており、温度が上昇すると光強度は減衰し、ピーク波長は長波側にシフトする。よって波長依存性のある光カップラや光フィルタを使用すると測定値が変動してしまい測定誤差が大きくなる。また、NAの波長依存性の大きい光ファイバを使用すると、LEDの波長変動によってNAが大きく変化し、出射光のビーム形状や、反射光の受光量が変化するため、反射面による結合効率が変化する。この結合効率の変動は補償することができないため、そのまま測定精度の悪化につながってしまう。また光通信などデジタルで使用する場合では曲げ損失は余り影響ないが、このようにアナログ伝送に利用する場合には、曲げによる損失の影響は非常に大きく、測定精度が悪化してしまう。
【0011】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送路の曲げによる影響を受けず、光源の波長スペクトルが変化することによる光ファイバNAの変化によって変動する測定値を抑制し、精度良く測定することのできる光学式検出センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、光源と、光源から出力された出射光を導光する第1光ファイバと、第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に出射光を照射し、この被測定物で反射した反射光を受光する第2及び第3光ファイバと、第2及び第3光ファイバ内を導光した反射光をそれぞれ受光して電気信号に変換する第1及び第2受光素子と、第1及び第2受光素子で変換された電気信号の比率を基に被測定物の変位量を算出する演算処理手段を少なくとも備え、第1光ファイバは、この第1光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つこの第2及び第3光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第1光ファイバと、第2及び第3光ファイバは、法線を介して対向配置され、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有するものであることを要旨とする。
【0013】
また本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバのコアが同一平面上に配置されるように形成された第1乃至第3V溝を有するV溝アレイ基板を備え、V溝に配置固定された第1乃至第3光ファイバの端面と、V溝アレイ基板の端面は同一面上に位置し、且つ該端面は前記法線に対して垂直方向に形成されていることを要旨とする。
【0014】
更に本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の光学式検出センサであって、 第1光ファイバと法線がなす角度θ、及び第2及び第3光ファイバと法線がなす角度θは、5°<θ≦10°であることを要旨とする。
【0015】
また更に本発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、光源として発光ダイオードを適用する場合は、光源と第1光ファイバの間に、透過中心波長がこの発光ダイオードの0℃における光強度スペクトルのピーク波長より長波側に位置し、且つ帯域幅が1nm以上20nm以下を有するバンドパスフィルタを設けることを要旨とする。
【0016】
また本発明の請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長における開口数NAが0.1以上0.15以下であることを要旨とする。
【0017】
更に本発明の請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長におけるモードフィールド径が7.9μm以上9.3μm以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、伝送路の曲げによる影響を受けず、光源の波長スペクトルが変化することによる光ファイバNAの変化によって変動する測定値を抑制し、精度良く測定することのできる光学式検出センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの構成図である。図2は、図1に示した測定部Aの拡大図である。
【0021】
図1に示すように本発明の光学式検出センサ1は、反射面2aを有し光ファイバ端面との相対距離Dが圧力や温度などの物理量に応じて変化する反射板(被測定物)2と、光源3からの光を反射板2に伝送する第1光ファイバ4(出射ポートとして機能する)と、反射面2aで反射した光を第1及び第2受光部5及び6にそれぞれ伝送する第2及び第3光ファイバ7及び8(反射ポートとして機能する)と、第1及び第2受光部5及び6からの電気信号をそれぞれ増幅する増幅器9と、増幅された電気信号の比をとり物理量を算出する演算処理部10から構成されており、第1光ファイバ4の端部から出射した光は反射面2aで反射され、第2光ファイバ7と第3光ファイバ8に結合した反射光が第1及び第2受光部5及び6に伝送され演算処理部10で反射板2の変位量を算出するものである。以下、第1、第2及び第3光ファイバ4、5及び6の端部と、これに対向配置させた反射板2の周辺部を測定部Aと称す。
【0022】
具体的には図2の測定部A拡大図に示すように、反射面2aに対向配置させた3本の光ファイバ端面は、光ファイバの長手方向と反射面2aに対する法線とのなす角度θとなるように固定されている。また第2光ファイバ7と第3光ファイバ8は平行配置され、且つ第1光ファイバ4と第2及び第3光ファイバ7及び8の固定角度は反射面に対する法線を基準に対称配置されている。
【0023】
第1〜3光ファイバ4、7、8は、NAの波長依存性が小さい光ファイバを使用する。具体的には波長λに対する開口数(NA)の変化量(dNA/dλ)が4×10-5以下であることが好ましい。NAの波長依存性が小さい光ファイバを使用すると曲げや波長変化によるNA変化の影響を抑制することができることから変位量測定の測定精度を向上させることができる。
【0024】
また、NA変化の小さな光ファイバの中でもシングルモードで伝搬する光ファイバを選択することが望ましい。この場合もまたNA変化をより小さくすることができるため測定精度を向上させることができる。また使用波長や曲げ損を考慮するとマルチモード光ファイバを用いる場合に比べて更に測定精度を向上させることが可能になる。
【0025】
ここで使用波長とは、使用する光源における強度スペクトルのピーク波長のことである。本実施の形態においては波長1300nmのLED光源を使用している。シングルモードで伝搬する光ファイバを使用すると、コア径が小さいため光強度を大きくとることが困難となるが、A/D変換した後にデジタル高速フーリエ変換(FFT)を行うことで精度良く測定することが可能である。このような計算処理を行うための演算処理回路、LED、及び受光素子としてのフォトダイオードなどは安価に手に入れることができるため材料コストの低減に寄与する。
【0026】
次に、図3を参照して、相対距離Dの変化に対する光強度及び強度比の変化特性を説明する。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦左軸は光強度(mW)、縦右軸は強度比を示している。
【0027】
この特性グラフは、第1〜第3光ファイバ4、7、8の端面と反射面2a間の相対距離Dの変化に対する、第2、第3光ファイバ7、8それぞれの反射光強度P1、P2及び強度比F(P1、P2)の変化を示したものである。以下、この変化特性を距離依存性と呼ぶ。強度比Fの算出式は、F(P1、P2)=(P2−P1)/(P1+P2)とした。この距離依存性に示されているように、第2光ファイバ7の反射光強度P1と第3光ファイバ8の反射光強度P2はそれぞれピークを有する曲線となる。また強度比F(P1、P2)は、曲線P1と曲線P2の交点を通過し、ほぼ線形のスロープを有する曲線となる。物理量の測定を行う場合には、このスロープ部が使用され、より線形である方が距離変化を物理量に変換する補正関数がシンプルとなり演算処理し易く、誤差が小さいという利点がある。一方、測定感度は、スロープの傾きΔ=dF(P1、P2)/dDで表され、Δが大きい方が測定感度は高くなる。
【0028】
ここで、図4を参照して、固定角度θをθLに変化(θ<θL)させた場合の距離依存性の変化を説明する。固定角度θを大きくすると曲線P1、曲線P2のピーク位置は曲線P11、曲線P21、即ち反射面2aに近づきスロープの傾きΔは大きくなる。一方、角度θを小さくするとピーク位置は反射面から遠くなり傾きΔも小さくなる(図示せず)。
【0029】
このように固定角度θを変化させるとΔが変化するため、これを利用することで測定感度を容易に選択することが可能となる。また測定できる光強度においては、各光強度曲線のピーク位置により変化し、各曲線のピーク位置が近いと光強度は大きく、ピーク位置が遠いと光強度は小さくなる。
【0030】
ここで測定範囲、すなわち距離依存性においても線形のスロープが存在する相対距離範囲は、測定感度とトレードオフの関係にあり、測定感度が大きくなると測定範囲は狭く、逆に測定感度が小さくなると測定範囲は広くなる。固定角度θ=10°以上になると測定範囲は60μmでほぼ飽和してしまう。また光ファイバとしてシングルモードで伝搬するファイバを用いた場合、固定角度θ=5°より小さい角度では、測定できる光強度が非常に小さくなり測定精度が悪化する。従って、固定角度は5°<θ≦10°であることが望ましい。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、V溝アレイ石英基板11を使用した場合の測定部Aを示す。図5は、本発明の他の実施の形態に係る光学式検出センサの測定部Aの拡大図である。図6は、V溝アレイ石英基板11のA−A線断面図である。
【0032】
図5及び図6に示すように、第1〜第3光ファイバ4、7、8を固定角度θで固定する場合、予めV溝加工が施されたアレイ石英基板11を用いることで精度良く光ファイバを固定することができる。固定方法としては、V溝に沿って光ファイバを仮留めし、上部からV溝加工なしの光ファイバ押え蓋12で挟んだ状態で樹脂によって固定する。これにより3本の第1〜第3光ファイバコア部4a、7a、8aは、同一平面上に精度良く固定することができ、高さばらつきによる強度変動を抑制し測定精度の悪化を防止することができる。ここでV溝アレイ基板に使用される材料は石英に限定されず、V溝形成が可能な材料であれば材料は問わない。
【0033】
また図6に示すように、V溝アレイ石英基板11の端面部での各光ファイバの間隔は、より大きな光強度を得るためにできるだけ近い方が望ましい。しかし、第1光ファイバ4と第2光ファイバ7の間では、斜めに挿入された光ファイバ同士がぶつからないように考慮する必要があり、V溝加工の精度と光ファイバの作製精度を考えると、コア部の間隔L1は、140μm以上265μm以下とすることが望ましい。また第2光ファイバ7と第3光ファイバ8は平行配置されているため、コア間隔L2は127μm以上252μm以下が望ましい。
【0034】
また、光ファイバを固定後にアレイ石英基板11の端面を研磨することで全光ファイバの端面が斜めにカットされるので、光ファイバ端面によるフレネル反射が低減されることに加え、ファイバ端面と反射板との間での多重反射が発生するのを抑制することができ、その結果、測定精度が改善することができる。
【0035】
一方、光源としてLEDを使用する場合には温度依存性による波長シフトの問題があるが、バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を挿入することで出射光の波長および強度変化を抑制することができる。特に、波長依存性を有する光ファイバのNAなどによる測定誤差を小さくすることができる。ここで挿入するBPFの光学特性として、透過中心波長が、0℃におけるLEDのスペクトルのピーク波長より長波で、且つ帯域幅は1nm以上、20nm以下であることが望ましい。また、LEDとBPFを組合せた光源と、上記に述べたNAの波長依存性が小さな光ファイバを使用し、更に使用波長や曲げ損を考慮すると測定精度をさらに良くすることが可能となる。波長λの変化に対する強度比F(P1、P2)の変化であるdF(P1、P2)/dλは、光ファイバのNAが変化することで変動する。このdF(P1、P2)/dλの変動は直接測定誤差につながるため、センサ全体の測定誤差を考慮すると、dF(P1、P2)/dλが2.5×10-4以下であることが望ましく、そのためには波長λの変化に対するNA変化であるdNA/dλが4×10-5以下である必要がある。
【0036】
従って、本発明によれば、NAの波長依存性が小さい光ファイバを選択すると共に、望ましくは波長依存性が4×10-5以下の光ファイバを使用する。またNAの波長依存性が小さい光ファイバの具体例としてはシングルモード光ファイバを用いる。これによりNA変動や曲げ損変動を抑制し、ひいては測定精度を向上させることができる。
【0037】
また、V溝アレイ石英基板11を用いて光ファイバを固定し、基板端面と光ファイバ端面を同一面とするように端面研磨を行うことで、3本のコアの高さばらつきを小さくし、且つ光ファイバ端面でのフレネル反射や反射面との多重反射を抑制できるため、更に測定精度が改善することができる。
【0038】
更に、光ファイバの固定角度θを調整することにより、測定範囲・感度を容易に選択することが可能になり、この調整により測定精度を向上させることができる。
【0039】
また更に、光源をLEDとした場合に、LEDとバンドパスフィルタを組合せることでLEDの温度依存性を抑制することができる。更に光ファイバNAの波長依存性も抑えることができるので両者の相乗効果により更に測定精度を改善することができる。
【0040】
(実施例1)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第1実施例を説明する。
【0041】
本実施例では、光ファイバ固定角度θが、4°、5°、6°、8°、10°を有するV溝アレイ石英基板11をそれぞれ用意し、各アレイ端面に反射板2を対向配置させ、他の部材構成は図5の構成と同様にした。そして第1光ファイバ4から出力された出射光を反射面2aに照射し、反射した反射光を第2及び第3光ファイバ7及び8で受光し、それぞれの光強度P1とP2から比率を算出し、相対距離Dが変化したときの強度比の変化を測定した。ここで光強度比Fの算出式はF(P1、P2)=(P2‐P1)/(P1+P2)に基づいて算出した。
【0042】
図7に相対距離Dの変化に対する光強度比Fの測定結果を示す。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦軸は強度比を示している。
【0043】
図7に示すように、いずれも相対距離Dが大きくなるに従って、強度比は増加する傾向にある。線形のスロープ部においては、固定角度θが大きくなるにつれて、傾きΔが大きくなるので測定感度は高くなり、測定範囲は小さくなる。また固定角度θが大きくなると、強度比のスロープの立ち上がる相対距離が小さくなる。これは固定角度θが大きなものの方が、相対距離の小さい位置に光強度のピークがあるためで、これにより測定できる光強度の絶対値も大きくなる。
【0044】
これらの結果から、固定角度θと測定範囲の関係を求めたものを図8に示す。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦軸は測定範囲を示している。同図によれば、固定角度θ=10°より大きくなると測定範囲は60μmでほぼ飽和してしまう。一方、これ以上大きくしても測定感度はほとんど変化がない。また固定角度θ=4°で測定範囲は400μmであり、これより小さい角度では測定範囲は広くなるが、測定感度は非常に小さくなり、光強度が非常に小さくなるため測定が非常に困難であり測定精度悪化の原因となるため、実際に使用するには5°より大きな角度であることが望ましい。以上のことを鑑みると、固定角度θは5°<θ≦10°が最適範囲と言える。
【0045】
(実施例2)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第2実施例を説明する。
【0046】
本実施例では、光源にLEDを使用し、LEDの温度を0℃から80℃まで変化させた場合の光強度の変動を、BPFを挿入したときとしないときで比較し、その効果を示すものである。
【0047】
図9にLEDにBPFを挿入しない場合の温度に対する強度スペクトルの変化を示す。同図において横軸は波長を示し、縦左軸は光強度、縦右軸は透過率を示している。
【0048】
図9に示すように、強度スペクトルは温度が上昇するに従って、強度が全体的に減衰し、ピーク波長は長波側に約40nmシフトすることが確認できた(0℃のピーク値と80℃のピーク値の差分より算出。)。
【0049】
ここで図9に示すように、帯域幅が10nm程度であり、中心波長が1330nmの第1BPF13と1280nmの第2BPF14の2種類をそれぞれ挿入した場合の光強度のばらつきを確認した。図10に第1BPF13、第2BPF14を挿入した場合の温度変化に対する強度変動を示す。同図において横軸はLED温度を示し、縦軸は光強度を示している。(1)BPFなしの場合、最大強度と最小強度との差が10倍以上あるのに対し、(2)第1BPF13を挿入すると2倍程度に抑えることができた。しかし、(3)第2BPF14を挿入すると強度変化量は100倍以上と大きくなり悪化した。 従って、BPFを挿入することにより、LEDの温度依存性による波長シフトの影響は抑制できるが、光強度変動は挿入するBPFの中心波長に依存し、0℃のときのピーク波長よりも長波側に設定するのが良い。帯域幅も狭くし過ぎると光強度の絶対値が小さくなってしまい測定精度の悪化につながるため、帯域幅の下限は1nm以上であることが望ましい。また帯域幅を広くし過ぎると、強度スペクトル変化の影響を受けるため、帯域幅の上限は20nm以下であることが望ましい。
【0050】
(実施例3)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第3実施例を説明する。
【0051】
本実施例では、シングルモード(SM)で伝搬する光ファイバ(1)、(2)、(3)とマルチモード(MM)で伝搬する光ファイバ(4)を用い、それぞれのNAの波長依存性を測定した。本実験で使用した4種類の光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径を図11に示す。ここでモードフィールド径において、光ファイバ(4)はMMで伝搬する光ファイバであるため、一般的な評価値として用いられているコア径で表記した。図12にこれら各光ファイバにおけるNAの波長依存性の測定結果を示す。同図において横軸は波長λを示し、縦軸は波長λの変化に対するNA変化であるdNA/dλを示している。SMで伝搬する光ファイバに比べ、MMで伝搬する光ファイバのdNA/dλはばらつきが大きく、その値の再現性はない。従ってMMで伝搬する光ファイバを使用する場合は、波長変化によりNAが変動し測定精度も悪化する。またSMで伝搬する光ファイバでは、光ファイバ(2)がdNA/dλの大きさが4.8×10-5と大きく、光ファイバ(1)と(3)は1.5×10-5以下と小さい。従ってSMで伝搬する光ファイバの中でも、光ファイバ(1)や(3)のようなdNA/dλが小さなものを使用することで、波長変化によるNA変動をより効果的に抑制でき、更に測定誤差を小さくすることが可能となる。ここで測定強度を大きくとりたい場合、NAは小さい方が良いことから、光ファイバ(1)を使用するのが最適である。
【0052】
(実施例4)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第4実施例を説明する。
【0053】
本実施例では、SMで伝搬する光ファイバ(1)、(2)、(3)を用意し、波長1200nmから1600nmの範囲において、図5のV溝アレイ石英基板11を使用した測定系を用いて、強度比F(P1、P2)を測定し、その変動を確認した。ここでは一例として光ファイバの固定角度θ=5°の場合について説明するが、その他の角度においてもほぼ同等の結果が得られた。また今回使用した光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径は図11に示したものを使用した。相対距離Dは、波長1200nmにおいて距離依存性のスロープが最も線形になる位置で固定した。ここで強度比F(P1、P2)=(P2‐P1)/(P1+P2)とした。
【0054】
図13に波長変化に対する強度比の変動量の関係を示す。同図において横軸は波長を示し、縦軸は強度比変動量を示している。ここで変動量とは、波長1200nmにおける強度比を基準とし、実際に使用する強度比のフルスケールに対しての変化の割合を表している。同図より、グラフのスロープが大きいほど、波長依存性が大きいことを表している。使用光源がLEDの場合、温度が0℃から80℃まで変化すると、波長は約40nm長波側にシフトする。実際に使用する場合の許容測定誤差として、この波長シフト量40nmでの強度比変動量が±1%以下である必要があり、これを波長変化に対する強度比の変化dF(P1、P2)/dλに変換すると2.5×10-4以下となる。
【0055】
ここで図14に波長λの変化に対するNA変化(dNA/dλ)とdF(P1、P2)/dλの関係を示す。この結果より、dF(P1、P2)/dλ≦2.5×10-4となるには、dNA/dλ≦4×10-5である必要があり、NA波長依存性がこの範囲内である光ファイバを使用することで、測定精度を良くすることが可能であることが示された。
【0056】
(実施例5)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第5実施例を説明する。
【0057】
本実施例では、NAの異なる2種類の光ファイバを用い、それぞれの曲げ損失を測定した。本実施例で使用した光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径は図11に示した通りである。曲げ径は20mmで行い徐々に巻数を増やしたときの曲げ損失を測定した。また測定光源には波長が1300nm、1550nmの2種類を使用した。
【0058】
図15に各光ファイバにおける曲げ損失の測定結果を示す。同図において横軸は巻数を示し、縦軸は損失変化を示している。この測定結果によれば、波長1300nmの場合、光ファイバ(1)と(2)は共に曲げ損失は小さく、巻数を増やしても損失は増加しなかった。しかし、波長1550nmの場合、光ファイバ(2)はほとんど損失がないが、光ファイバ(1)の曲げ損失は非常に大きく、巻数6回で強度が半分にまで減少した。
【0059】
上記測定結果より光ファイバの曲げ損失は、使用する光源の波長によって大きく異なることが示された。従って使用波長に応じて最適な光ファイバを選択する必要があり、光源と光ファイバとの組合せを適切に選択することによって測定誤差を小さくすることが可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの構成図である。
【図2】図1に示した測定部Aの拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの相対距離Dの変化に対する光強度及び強度比の変化特性を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの固定角度θをθLに変化(θ<θL)させた場合の距離依存性の変化を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る光学式検出センサの測定部Aの拡大図である。
【図6】図5に示すV溝アレイ石英基板11のA−A線断面図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る相対距離Dの変化に対する光強度比Fの測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施例に係る固定角度θと測定範囲の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施例に係るLEDにBPFを挿入しない場合の温度に対する強度スペクトルの変化を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施例に係るBPF13、BPF14を挿入した場合の温度変化に対する強度変動を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施例に係る4種類の光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径をまとめた表である。
【図12】本発明の第3実施例に係る光ファイバにおけるNAの波長依存性の測定結果を示すグラフである。
【図13】本発明の第4実施例に係る波長変化に対する強度比の変動量の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の第4実施例に係る波長λの変化に対するNA変化(dNA/dλ)とdF(P1、P2)/dλの関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第5実施例に係る光ファイバの曲げ損失の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1…光学式検出センサ
2…反射板
2a…反射面
3…光源
4…第1光ファイバ
4a…第1光ファイバコア部
5…第1受光部
6…第2受光部
7…第2光ファイバ
7a…第2光ファイバコア部
8…第3光ファイバ
8a…第3光ファイバコア部
9…増幅器
10…演算処理部
11…V溝アレイ石英基板
12…光ファイバ押え蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、光強度の変化を測定することにより圧力や温度などの物理量を検出する光学式検出センサに関し、特に、変位量を高精度検出する光学式検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の変位、温度、圧力等の物理量を測定するセンサとして電気式センサが一般に良く知られている。しかしこの場合は、測定信号(電気信号)を電線により遠隔地に伝送するため、電磁雑音の影響を受け易く、測定誤差の要因になるという問題を有していた。これに対して光学式センサでは、測定信号を光信号に変換し、光ファイバで遠隔地に伝送するため、電磁雑音の影響を受けることなく信号伝送することが可能であり、測定誤差も少なく、非常に高精度な測定が可能となるという利点を有している。
【0003】
このような光式物理量センサとしては、圧力によってひずむ機構を有する起歪体(例えば、ブルドン管など)を用い、圧力変化をひずみ変化に変換し、このひずみをファイバグレーティング(FBG)で検知するものなどがある。また、光ファイバ端面に、圧力によって位置変動する反射板(ダイアフラムなど)を対向配置させて固定し、光ファイバ端面からの出射光が反射板で反射する反射光を測定することで位置変動を検知し、その位置から圧力を検出するものなどがある。
【0004】
この位置変動量の検出方法として、複数の反射光による干渉状態や、ビート周波数を検出するもの(例えば、特許文献1参照)や、反射板に振動子を固定し、その振動子の共振周波数を検出するもの(例えば、特許文献2参照)などがあるが、これらは信号処理が困難であり、複雑な演算処理が必要となる。
【0005】
これに対し、シンプルな構造で測定可能な方法として、反射光の強度変化測定法がある。この方法であれば、測定装置が安価な材料や部品で構成することが可能であり、測定した信号処理も非常に容易に行うことができる。その一方で光強度を測定していることから、反射板の位置変動以外の要因、例えば伝送損失などによる強度変化が測定誤差となり測定値に重畳するという問題があるが、伝送損失変化を非常に小さくするか、若しくは複数の反射光強度による比をとり補償することで測定精度を高めることが可能である。
【0006】
例えば特許文献3においては、コア径、コア部屈折率分布、開口数(NA)などのいずれかのパラメータが異なる第1、第2の2種類の光ファイバを並列に固定し、光ファイバ端面を反射板の反射面に対向させ、光ファイバ長手方向と反射面に対する法線が平行になるように設置する構成となっている。これにより第1の光ファイバ端面から出射され反射板で反射した光を、第2の光ファイバによって受光し、かつ第2の光ファイバから出射され反射板で反射した光を、第1の光ファイバで受光することができ、それぞれ受光した反射光を光分岐器によって分岐し、光電変換器で測定された2つの光強度の比をとることで伝送損失の影響を補償することが可能となる。
【0007】
また上述の測定方法に加え、それぞれの光ファイバから出射し反射板で反射した光の戻り光も測定する方法や、同種光ファイバを出射用2本と受光用2本の4本使用し、光分岐器を使用せず、それぞれの強度比をとる方法などがある。
【0008】
また、特許文献4及び特許文献5には、発光ダイオード光源との結合が容易で、且つコア径が大きいために光強度を大きくとることができるマルチモードファイバを用い、測定対象である液面の法線に対して角度Φ(0°≦Φ≦5°)で複数本の光ファイバを固定し、液面の変位を検出するという技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3304696号公報(第15頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−214966号公報(第4頁、第1−4図)
【特許文献3】特公平6−8724号公報(第3−4頁、第1−2図)
【特許文献4】米国特許第4996418号明細書(第1図、第15図、第16図)
【特許文献5】米国特許第5068527号明細書(第1図)
【特許文献6】米国特許第6433350号明細書
【特許文献7】米国特許第4479717号明細書
【特許文献8】仏国特許発明第2399000号明細書
【特許文献9】特開平10−9813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3記載の技術では光ファイバ長手方向と反射面に対する法線が平行になっているため、光ファイバと反射板との距離変化に対する反射光強度変化量(測定感度)を変更する場合、パラメータが異なる特殊光ファイバを作製する必要があり、測定感度を容易に選択することは困難である。また、光ファイバ端面が長手方向に対して直角なため、光ファイバ端面と空気層の境界でフレネル反射が発生し、受光強度の変動や、出射光の強度損失の増加などによって測定精度が悪化する。さらに、ファイバ端面と反射板との間で多重反射が発生し易く、それにより測定精度が悪化する。
【0010】
また、以前では光強度変化を利用する方式において、光強度が大きくとれることは重要であり、特許文献4及び特許文献5などのようにマルチモードファイバを使用することは有用であった。しかし、マルチモードファイバは曲げに弱いという問題があり、曲げによりモードの伝搬状態が変化するためNAが容易に変化し、かつ損失も変化する。また、光源として発光ダイオード(LED:light-emitting diode)を使用することは価格および偏波依存性の観点から有利であるが、LEDは温度変化によって強度スペクトルが変化する温度依存性をもっており、温度が上昇すると光強度は減衰し、ピーク波長は長波側にシフトする。よって波長依存性のある光カップラや光フィルタを使用すると測定値が変動してしまい測定誤差が大きくなる。また、NAの波長依存性の大きい光ファイバを使用すると、LEDの波長変動によってNAが大きく変化し、出射光のビーム形状や、反射光の受光量が変化するため、反射面による結合効率が変化する。この結合効率の変動は補償することができないため、そのまま測定精度の悪化につながってしまう。また光通信などデジタルで使用する場合では曲げ損失は余り影響ないが、このようにアナログ伝送に利用する場合には、曲げによる損失の影響は非常に大きく、測定精度が悪化してしまう。
【0011】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送路の曲げによる影響を受けず、光源の波長スペクトルが変化することによる光ファイバNAの変化によって変動する測定値を抑制し、精度良く測定することのできる光学式検出センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、光源と、光源から出力された出射光を導光する第1光ファイバと、第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に出射光を照射し、この被測定物で反射した反射光を受光する第2及び第3光ファイバと、第2及び第3光ファイバ内を導光した反射光をそれぞれ受光して電気信号に変換する第1及び第2受光素子と、第1及び第2受光素子で変換された電気信号の比率を基に被測定物の変位量を算出する演算処理手段を少なくとも備え、第1光ファイバは、この第1光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つこの第2及び第3光ファイバの長手方向と被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、第1光ファイバと、第2及び第3光ファイバは、法線を介して対向配置され、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有するものであることを要旨とする。
【0013】
また本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバのコアが同一平面上に配置されるように形成された第1乃至第3V溝を有するV溝アレイ基板を備え、V溝に配置固定された第1乃至第3光ファイバの端面と、V溝アレイ基板の端面は同一面上に位置し、且つ該端面は前記法線に対して垂直方向に形成されていることを要旨とする。
【0014】
更に本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の光学式検出センサであって、 第1光ファイバと法線がなす角度θ、及び第2及び第3光ファイバと法線がなす角度θは、5°<θ≦10°であることを要旨とする。
【0015】
また更に本発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、光源として発光ダイオードを適用する場合は、光源と第1光ファイバの間に、透過中心波長がこの発光ダイオードの0℃における光強度スペクトルのピーク波長より長波側に位置し、且つ帯域幅が1nm以上20nm以下を有するバンドパスフィルタを設けることを要旨とする。
【0016】
また本発明の請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長における開口数NAが0.1以上0.15以下であることを要旨とする。
【0017】
更に本発明の請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学式検出センサであって、第1乃至第3光ファイバは、光源の出力波長におけるモードフィールド径が7.9μm以上9.3μm以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、伝送路の曲げによる影響を受けず、光源の波長スペクトルが変化することによる光ファイバNAの変化によって変動する測定値を抑制し、精度良く測定することのできる光学式検出センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの構成図である。図2は、図1に示した測定部Aの拡大図である。
【0021】
図1に示すように本発明の光学式検出センサ1は、反射面2aを有し光ファイバ端面との相対距離Dが圧力や温度などの物理量に応じて変化する反射板(被測定物)2と、光源3からの光を反射板2に伝送する第1光ファイバ4(出射ポートとして機能する)と、反射面2aで反射した光を第1及び第2受光部5及び6にそれぞれ伝送する第2及び第3光ファイバ7及び8(反射ポートとして機能する)と、第1及び第2受光部5及び6からの電気信号をそれぞれ増幅する増幅器9と、増幅された電気信号の比をとり物理量を算出する演算処理部10から構成されており、第1光ファイバ4の端部から出射した光は反射面2aで反射され、第2光ファイバ7と第3光ファイバ8に結合した反射光が第1及び第2受光部5及び6に伝送され演算処理部10で反射板2の変位量を算出するものである。以下、第1、第2及び第3光ファイバ4、5及び6の端部と、これに対向配置させた反射板2の周辺部を測定部Aと称す。
【0022】
具体的には図2の測定部A拡大図に示すように、反射面2aに対向配置させた3本の光ファイバ端面は、光ファイバの長手方向と反射面2aに対する法線とのなす角度θとなるように固定されている。また第2光ファイバ7と第3光ファイバ8は平行配置され、且つ第1光ファイバ4と第2及び第3光ファイバ7及び8の固定角度は反射面に対する法線を基準に対称配置されている。
【0023】
第1〜3光ファイバ4、7、8は、NAの波長依存性が小さい光ファイバを使用する。具体的には波長λに対する開口数(NA)の変化量(dNA/dλ)が4×10-5以下であることが好ましい。NAの波長依存性が小さい光ファイバを使用すると曲げや波長変化によるNA変化の影響を抑制することができることから変位量測定の測定精度を向上させることができる。
【0024】
また、NA変化の小さな光ファイバの中でもシングルモードで伝搬する光ファイバを選択することが望ましい。この場合もまたNA変化をより小さくすることができるため測定精度を向上させることができる。また使用波長や曲げ損を考慮するとマルチモード光ファイバを用いる場合に比べて更に測定精度を向上させることが可能になる。
【0025】
ここで使用波長とは、使用する光源における強度スペクトルのピーク波長のことである。本実施の形態においては波長1300nmのLED光源を使用している。シングルモードで伝搬する光ファイバを使用すると、コア径が小さいため光強度を大きくとることが困難となるが、A/D変換した後にデジタル高速フーリエ変換(FFT)を行うことで精度良く測定することが可能である。このような計算処理を行うための演算処理回路、LED、及び受光素子としてのフォトダイオードなどは安価に手に入れることができるため材料コストの低減に寄与する。
【0026】
次に、図3を参照して、相対距離Dの変化に対する光強度及び強度比の変化特性を説明する。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦左軸は光強度(mW)、縦右軸は強度比を示している。
【0027】
この特性グラフは、第1〜第3光ファイバ4、7、8の端面と反射面2a間の相対距離Dの変化に対する、第2、第3光ファイバ7、8それぞれの反射光強度P1、P2及び強度比F(P1、P2)の変化を示したものである。以下、この変化特性を距離依存性と呼ぶ。強度比Fの算出式は、F(P1、P2)=(P2−P1)/(P1+P2)とした。この距離依存性に示されているように、第2光ファイバ7の反射光強度P1と第3光ファイバ8の反射光強度P2はそれぞれピークを有する曲線となる。また強度比F(P1、P2)は、曲線P1と曲線P2の交点を通過し、ほぼ線形のスロープを有する曲線となる。物理量の測定を行う場合には、このスロープ部が使用され、より線形である方が距離変化を物理量に変換する補正関数がシンプルとなり演算処理し易く、誤差が小さいという利点がある。一方、測定感度は、スロープの傾きΔ=dF(P1、P2)/dDで表され、Δが大きい方が測定感度は高くなる。
【0028】
ここで、図4を参照して、固定角度θをθLに変化(θ<θL)させた場合の距離依存性の変化を説明する。固定角度θを大きくすると曲線P1、曲線P2のピーク位置は曲線P11、曲線P21、即ち反射面2aに近づきスロープの傾きΔは大きくなる。一方、角度θを小さくするとピーク位置は反射面から遠くなり傾きΔも小さくなる(図示せず)。
【0029】
このように固定角度θを変化させるとΔが変化するため、これを利用することで測定感度を容易に選択することが可能となる。また測定できる光強度においては、各光強度曲線のピーク位置により変化し、各曲線のピーク位置が近いと光強度は大きく、ピーク位置が遠いと光強度は小さくなる。
【0030】
ここで測定範囲、すなわち距離依存性においても線形のスロープが存在する相対距離範囲は、測定感度とトレードオフの関係にあり、測定感度が大きくなると測定範囲は狭く、逆に測定感度が小さくなると測定範囲は広くなる。固定角度θ=10°以上になると測定範囲は60μmでほぼ飽和してしまう。また光ファイバとしてシングルモードで伝搬するファイバを用いた場合、固定角度θ=5°より小さい角度では、測定できる光強度が非常に小さくなり測定精度が悪化する。従って、固定角度は5°<θ≦10°であることが望ましい。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、V溝アレイ石英基板11を使用した場合の測定部Aを示す。図5は、本発明の他の実施の形態に係る光学式検出センサの測定部Aの拡大図である。図6は、V溝アレイ石英基板11のA−A線断面図である。
【0032】
図5及び図6に示すように、第1〜第3光ファイバ4、7、8を固定角度θで固定する場合、予めV溝加工が施されたアレイ石英基板11を用いることで精度良く光ファイバを固定することができる。固定方法としては、V溝に沿って光ファイバを仮留めし、上部からV溝加工なしの光ファイバ押え蓋12で挟んだ状態で樹脂によって固定する。これにより3本の第1〜第3光ファイバコア部4a、7a、8aは、同一平面上に精度良く固定することができ、高さばらつきによる強度変動を抑制し測定精度の悪化を防止することができる。ここでV溝アレイ基板に使用される材料は石英に限定されず、V溝形成が可能な材料であれば材料は問わない。
【0033】
また図6に示すように、V溝アレイ石英基板11の端面部での各光ファイバの間隔は、より大きな光強度を得るためにできるだけ近い方が望ましい。しかし、第1光ファイバ4と第2光ファイバ7の間では、斜めに挿入された光ファイバ同士がぶつからないように考慮する必要があり、V溝加工の精度と光ファイバの作製精度を考えると、コア部の間隔L1は、140μm以上265μm以下とすることが望ましい。また第2光ファイバ7と第3光ファイバ8は平行配置されているため、コア間隔L2は127μm以上252μm以下が望ましい。
【0034】
また、光ファイバを固定後にアレイ石英基板11の端面を研磨することで全光ファイバの端面が斜めにカットされるので、光ファイバ端面によるフレネル反射が低減されることに加え、ファイバ端面と反射板との間での多重反射が発生するのを抑制することができ、その結果、測定精度が改善することができる。
【0035】
一方、光源としてLEDを使用する場合には温度依存性による波長シフトの問題があるが、バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を挿入することで出射光の波長および強度変化を抑制することができる。特に、波長依存性を有する光ファイバのNAなどによる測定誤差を小さくすることができる。ここで挿入するBPFの光学特性として、透過中心波長が、0℃におけるLEDのスペクトルのピーク波長より長波で、且つ帯域幅は1nm以上、20nm以下であることが望ましい。また、LEDとBPFを組合せた光源と、上記に述べたNAの波長依存性が小さな光ファイバを使用し、更に使用波長や曲げ損を考慮すると測定精度をさらに良くすることが可能となる。波長λの変化に対する強度比F(P1、P2)の変化であるdF(P1、P2)/dλは、光ファイバのNAが変化することで変動する。このdF(P1、P2)/dλの変動は直接測定誤差につながるため、センサ全体の測定誤差を考慮すると、dF(P1、P2)/dλが2.5×10-4以下であることが望ましく、そのためには波長λの変化に対するNA変化であるdNA/dλが4×10-5以下である必要がある。
【0036】
従って、本発明によれば、NAの波長依存性が小さい光ファイバを選択すると共に、望ましくは波長依存性が4×10-5以下の光ファイバを使用する。またNAの波長依存性が小さい光ファイバの具体例としてはシングルモード光ファイバを用いる。これによりNA変動や曲げ損変動を抑制し、ひいては測定精度を向上させることができる。
【0037】
また、V溝アレイ石英基板11を用いて光ファイバを固定し、基板端面と光ファイバ端面を同一面とするように端面研磨を行うことで、3本のコアの高さばらつきを小さくし、且つ光ファイバ端面でのフレネル反射や反射面との多重反射を抑制できるため、更に測定精度が改善することができる。
【0038】
更に、光ファイバの固定角度θを調整することにより、測定範囲・感度を容易に選択することが可能になり、この調整により測定精度を向上させることができる。
【0039】
また更に、光源をLEDとした場合に、LEDとバンドパスフィルタを組合せることでLEDの温度依存性を抑制することができる。更に光ファイバNAの波長依存性も抑えることができるので両者の相乗効果により更に測定精度を改善することができる。
【0040】
(実施例1)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第1実施例を説明する。
【0041】
本実施例では、光ファイバ固定角度θが、4°、5°、6°、8°、10°を有するV溝アレイ石英基板11をそれぞれ用意し、各アレイ端面に反射板2を対向配置させ、他の部材構成は図5の構成と同様にした。そして第1光ファイバ4から出力された出射光を反射面2aに照射し、反射した反射光を第2及び第3光ファイバ7及び8で受光し、それぞれの光強度P1とP2から比率を算出し、相対距離Dが変化したときの強度比の変化を測定した。ここで光強度比Fの算出式はF(P1、P2)=(P2‐P1)/(P1+P2)に基づいて算出した。
【0042】
図7に相対距離Dの変化に対する光強度比Fの測定結果を示す。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦軸は強度比を示している。
【0043】
図7に示すように、いずれも相対距離Dが大きくなるに従って、強度比は増加する傾向にある。線形のスロープ部においては、固定角度θが大きくなるにつれて、傾きΔが大きくなるので測定感度は高くなり、測定範囲は小さくなる。また固定角度θが大きくなると、強度比のスロープの立ち上がる相対距離が小さくなる。これは固定角度θが大きなものの方が、相対距離の小さい位置に光強度のピークがあるためで、これにより測定できる光強度の絶対値も大きくなる。
【0044】
これらの結果から、固定角度θと測定範囲の関係を求めたものを図8に示す。同図において横軸は相対距離Dを示し、縦軸は測定範囲を示している。同図によれば、固定角度θ=10°より大きくなると測定範囲は60μmでほぼ飽和してしまう。一方、これ以上大きくしても測定感度はほとんど変化がない。また固定角度θ=4°で測定範囲は400μmであり、これより小さい角度では測定範囲は広くなるが、測定感度は非常に小さくなり、光強度が非常に小さくなるため測定が非常に困難であり測定精度悪化の原因となるため、実際に使用するには5°より大きな角度であることが望ましい。以上のことを鑑みると、固定角度θは5°<θ≦10°が最適範囲と言える。
【0045】
(実施例2)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第2実施例を説明する。
【0046】
本実施例では、光源にLEDを使用し、LEDの温度を0℃から80℃まで変化させた場合の光強度の変動を、BPFを挿入したときとしないときで比較し、その効果を示すものである。
【0047】
図9にLEDにBPFを挿入しない場合の温度に対する強度スペクトルの変化を示す。同図において横軸は波長を示し、縦左軸は光強度、縦右軸は透過率を示している。
【0048】
図9に示すように、強度スペクトルは温度が上昇するに従って、強度が全体的に減衰し、ピーク波長は長波側に約40nmシフトすることが確認できた(0℃のピーク値と80℃のピーク値の差分より算出。)。
【0049】
ここで図9に示すように、帯域幅が10nm程度であり、中心波長が1330nmの第1BPF13と1280nmの第2BPF14の2種類をそれぞれ挿入した場合の光強度のばらつきを確認した。図10に第1BPF13、第2BPF14を挿入した場合の温度変化に対する強度変動を示す。同図において横軸はLED温度を示し、縦軸は光強度を示している。(1)BPFなしの場合、最大強度と最小強度との差が10倍以上あるのに対し、(2)第1BPF13を挿入すると2倍程度に抑えることができた。しかし、(3)第2BPF14を挿入すると強度変化量は100倍以上と大きくなり悪化した。 従って、BPFを挿入することにより、LEDの温度依存性による波長シフトの影響は抑制できるが、光強度変動は挿入するBPFの中心波長に依存し、0℃のときのピーク波長よりも長波側に設定するのが良い。帯域幅も狭くし過ぎると光強度の絶対値が小さくなってしまい測定精度の悪化につながるため、帯域幅の下限は1nm以上であることが望ましい。また帯域幅を広くし過ぎると、強度スペクトル変化の影響を受けるため、帯域幅の上限は20nm以下であることが望ましい。
【0050】
(実施例3)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第3実施例を説明する。
【0051】
本実施例では、シングルモード(SM)で伝搬する光ファイバ(1)、(2)、(3)とマルチモード(MM)で伝搬する光ファイバ(4)を用い、それぞれのNAの波長依存性を測定した。本実験で使用した4種類の光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径を図11に示す。ここでモードフィールド径において、光ファイバ(4)はMMで伝搬する光ファイバであるため、一般的な評価値として用いられているコア径で表記した。図12にこれら各光ファイバにおけるNAの波長依存性の測定結果を示す。同図において横軸は波長λを示し、縦軸は波長λの変化に対するNA変化であるdNA/dλを示している。SMで伝搬する光ファイバに比べ、MMで伝搬する光ファイバのdNA/dλはばらつきが大きく、その値の再現性はない。従ってMMで伝搬する光ファイバを使用する場合は、波長変化によりNAが変動し測定精度も悪化する。またSMで伝搬する光ファイバでは、光ファイバ(2)がdNA/dλの大きさが4.8×10-5と大きく、光ファイバ(1)と(3)は1.5×10-5以下と小さい。従ってSMで伝搬する光ファイバの中でも、光ファイバ(1)や(3)のようなdNA/dλが小さなものを使用することで、波長変化によるNA変動をより効果的に抑制でき、更に測定誤差を小さくすることが可能となる。ここで測定強度を大きくとりたい場合、NAは小さい方が良いことから、光ファイバ(1)を使用するのが最適である。
【0052】
(実施例4)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第4実施例を説明する。
【0053】
本実施例では、SMで伝搬する光ファイバ(1)、(2)、(3)を用意し、波長1200nmから1600nmの範囲において、図5のV溝アレイ石英基板11を使用した測定系を用いて、強度比F(P1、P2)を測定し、その変動を確認した。ここでは一例として光ファイバの固定角度θ=5°の場合について説明するが、その他の角度においてもほぼ同等の結果が得られた。また今回使用した光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径は図11に示したものを使用した。相対距離Dは、波長1200nmにおいて距離依存性のスロープが最も線形になる位置で固定した。ここで強度比F(P1、P2)=(P2‐P1)/(P1+P2)とした。
【0054】
図13に波長変化に対する強度比の変動量の関係を示す。同図において横軸は波長を示し、縦軸は強度比変動量を示している。ここで変動量とは、波長1200nmにおける強度比を基準とし、実際に使用する強度比のフルスケールに対しての変化の割合を表している。同図より、グラフのスロープが大きいほど、波長依存性が大きいことを表している。使用光源がLEDの場合、温度が0℃から80℃まで変化すると、波長は約40nm長波側にシフトする。実際に使用する場合の許容測定誤差として、この波長シフト量40nmでの強度比変動量が±1%以下である必要があり、これを波長変化に対する強度比の変化dF(P1、P2)/dλに変換すると2.5×10-4以下となる。
【0055】
ここで図14に波長λの変化に対するNA変化(dNA/dλ)とdF(P1、P2)/dλの関係を示す。この結果より、dF(P1、P2)/dλ≦2.5×10-4となるには、dNA/dλ≦4×10-5である必要があり、NA波長依存性がこの範囲内である光ファイバを使用することで、測定精度を良くすることが可能であることが示された。
【0056】
(実施例5)
次に、本発明に係る光学式検出センサの第5実施例を説明する。
【0057】
本実施例では、NAの異なる2種類の光ファイバを用い、それぞれの曲げ損失を測定した。本実施例で使用した光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径は図11に示した通りである。曲げ径は20mmで行い徐々に巻数を増やしたときの曲げ損失を測定した。また測定光源には波長が1300nm、1550nmの2種類を使用した。
【0058】
図15に各光ファイバにおける曲げ損失の測定結果を示す。同図において横軸は巻数を示し、縦軸は損失変化を示している。この測定結果によれば、波長1300nmの場合、光ファイバ(1)と(2)は共に曲げ損失は小さく、巻数を増やしても損失は増加しなかった。しかし、波長1550nmの場合、光ファイバ(2)はほとんど損失がないが、光ファイバ(1)の曲げ損失は非常に大きく、巻数6回で強度が半分にまで減少した。
【0059】
上記測定結果より光ファイバの曲げ損失は、使用する光源の波長によって大きく異なることが示された。従って使用波長に応じて最適な光ファイバを選択する必要があり、光源と光ファイバとの組合せを適切に選択することによって測定誤差を小さくすることが可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの構成図である。
【図2】図1に示した測定部Aの拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの相対距離Dの変化に対する光強度及び強度比の変化特性を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る光学式検出センサの固定角度θをθLに変化(θ<θL)させた場合の距離依存性の変化を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る光学式検出センサの測定部Aの拡大図である。
【図6】図5に示すV溝アレイ石英基板11のA−A線断面図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る相対距離Dの変化に対する光強度比Fの測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施例に係る固定角度θと測定範囲の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施例に係るLEDにBPFを挿入しない場合の温度に対する強度スペクトルの変化を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施例に係るBPF13、BPF14を挿入した場合の温度変化に対する強度変動を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施例に係る4種類の光ファイバの波長1300nmにおけるNAとモードフィールド径をまとめた表である。
【図12】本発明の第3実施例に係る光ファイバにおけるNAの波長依存性の測定結果を示すグラフである。
【図13】本発明の第4実施例に係る波長変化に対する強度比の変動量の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の第4実施例に係る波長λの変化に対するNA変化(dNA/dλ)とdF(P1、P2)/dλの関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第5実施例に係る光ファイバの曲げ損失の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1…光学式検出センサ
2…反射板
2a…反射面
3…光源
4…第1光ファイバ
4a…第1光ファイバコア部
5…第1受光部
6…第2受光部
7…第2光ファイバ
7a…第2光ファイバコア部
8…第3光ファイバ
8a…第3光ファイバコア部
9…増幅器
10…演算処理部
11…V溝アレイ石英基板
12…光ファイバ押え蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出力された出射光を導光する第1光ファイバと、
前記第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に前記出射光を照射し、該被測定物で反射した反射光を受光する第2及び第3光ファイバと、
前記第2及び第3光ファイバ内を導光した反射光をそれぞれ受光して電気信号に変換する第1及び第2受光素子と、
前記第1及び第2受光素子で変換された電気信号の比率を基に前記被測定物の変位量を算出する演算処理手段を少なくとも備え、
前記第1光ファイバは、該第1光ファイバの長手方向と前記被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、
前記第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つ該第2及び第3光ファイバの長手方向と前記被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、
前記第1光ファイバと、前記第2及び第3光ファイバは、前記法線を介して対向配置され、
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有するものであることを特徴とする光学式検出センサ。
【請求項2】
第1乃至第3光ファイバのコアが同一平面上に配置されるように形成された第1乃至第3V溝を有するV溝アレイ基板を備え、
前記V溝に配置固定された前記第1乃至第3光ファイバの端面と、前記V溝アレイ基板の端面は同一面上に位置し、且つ該端面は前記法線に対して垂直方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学式検出センサ。
【請求項3】
前記第1光ファイバと法線がなす角度θ、及び前記第2及び第3光ファイバと法線がなす角度θは、5°<θ≦10°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式検出センサ。
【請求項4】
前記光源として発光ダイオードを適用する場合は、
前記光源と前記第1光ファイバの間に、透過中心波長が該発光ダイオードの0℃における光強度スペクトルのピーク波長より長波側に位置し、且つ帯域幅が1nm以上20nm以下を有するバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【請求項5】
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長における開口数NAが0.1以上0.15以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【請求項6】
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長におけるモードフィールド径が7.9μm以上9.3μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【請求項1】
光源と、
前記光源から出力された出射光を導光する第1光ファイバと、
前記第1光ファイバの端面から相対距離離して配置された被測定物に前記出射光を照射し、該被測定物で反射した反射光を受光する第2及び第3光ファイバと、
前記第2及び第3光ファイバ内を導光した反射光をそれぞれ受光して電気信号に変換する第1及び第2受光素子と、
前記第1及び第2受光素子で変換された電気信号の比率を基に前記被測定物の変位量を算出する演算処理手段を少なくとも備え、
前記第1光ファイバは、該第1光ファイバの長手方向と前記被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、
前記第2及び第3光ファイバは、平行配置され、且つ該第2及び第3光ファイバの長手方向と前記被測定物の照射面に対する法線とが角度θとなるように配置され、
前記第1光ファイバと、前記第2及び第3光ファイバは、前記法線を介して対向配置され、
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長に対してdNA/dλが4×10-5以下の特性を有するものであることを特徴とする光学式検出センサ。
【請求項2】
第1乃至第3光ファイバのコアが同一平面上に配置されるように形成された第1乃至第3V溝を有するV溝アレイ基板を備え、
前記V溝に配置固定された前記第1乃至第3光ファイバの端面と、前記V溝アレイ基板の端面は同一面上に位置し、且つ該端面は前記法線に対して垂直方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学式検出センサ。
【請求項3】
前記第1光ファイバと法線がなす角度θ、及び前記第2及び第3光ファイバと法線がなす角度θは、5°<θ≦10°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式検出センサ。
【請求項4】
前記光源として発光ダイオードを適用する場合は、
前記光源と前記第1光ファイバの間に、透過中心波長が該発光ダイオードの0℃における光強度スペクトルのピーク波長より長波側に位置し、且つ帯域幅が1nm以上20nm以下を有するバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【請求項5】
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長における開口数NAが0.1以上0.15以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【請求項6】
前記第1乃至第3光ファイバは、前記光源の出力波長におけるモードフィールド径が7.9μm以上9.3μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学式検出センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−24826(P2007−24826A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211287(P2005−211287)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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