光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法
【課題】層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出する。
【解決手段】信号処理部93は、光立体構造像生成部120、特定層抽出手段及びノイズ領域消去手段としての特定層抽出/ノイズ除去部121、欠落領域抽出手段としての欠落領域抽出部122、欠落領域範囲算出手段としての欠落領域範囲算出部123、関心領域分類手段としての関心領域分類部124、閾値/基準値格納部125、属性付加手段及び属性制御手段としての属性付加/制御部126及びコンピュータグラフィック画像構築手段としてのレンダリング部127を備えて構成される。
【解決手段】信号処理部93は、光立体構造像生成部120、特定層抽出手段及びノイズ領域消去手段としての特定層抽出/ノイズ除去部121、欠落領域抽出手段としての欠落領域抽出部122、欠落領域範囲算出手段としての欠落領域範囲算出部123、関心領域分類手段としての関心領域分類部124、閾値/基準値格納部125、属性付加手段及び属性制御手段としての属性付加/制御部126及びコンピュータグラフィック画像構築手段としてのレンダリング部127を備えて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法に係り、特に測定対象の構造情報の処理部分に特徴のある光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の光断層画像を取得する際に、OCT(Optical Coherence Tomography)計測を利用した光断層画像取得装置が用いられることがある。この光断層画像取得装置は、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、該測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光、もしくは後方散乱光と参照光とを合波し、該反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を取得するものである(特許文献1)。以下、測定対象からの反射光、後方散乱光をまとめて反射光と標記する。
【0003】
上記のOCT計測には、大きくわけてTD−OCT(Time domain OCT)計測とFD−OCT(Fourier Domain OCT)計測の2種類がある。TD−OCT計測は、参照光の光路長を変更しながら干渉光強度を測定することにより、測定対象の深さ方向の位置(以下、深さ位置という)に対応した反射光強度分布を取得する方法である。
【0004】
一方、FD−OCT計測は、参照光と信号光の光路長は変えることなく、光のスペクトル成分毎に干渉光強度を測定し、ここで得られたスペクトル干渉強度信号を計算機にてフーリエ変換に代表される周波数解析を行うことで、深さ位置に対応した反射光強度分布を取得する方法である。TD−OCTに存在する機械的な走査が不要となることで、高速な測定が可能となる手法として、近年注目されている。
【0005】
FD−OCT計測を行う装置構成で代表的な物としては、SD−OCT(Spectral Domain OCT)装置とSS−OCT(Swept Source OCT)の2種類が挙げられる。SD−OCT装置は、SLD(Super Luminescence Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、白色光といった広帯域の低コヒーレント光を光源に用い、マイケルソン型干渉計等を用いて、広帯域の低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、測定光を測定対象に照射させ、そのとき戻って来た反射光と参照光とを干渉させ、この干渉光をスペクトロメータを用いて各周波数成分に分解し、フォトダイオード等の素子がアレイ状に配列されたディテクタアレイを用いて各周波数成分毎の干渉光強度を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより、光断層画像を構成するようにしたものである。
【0006】
一方、SS−OCT装置は、光周波数を時間的に掃引させるレーザを光源に用い、反射光と参照光とを各波長において干渉させ、光周波数の時間変化に対応した信号の時間波形を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより光断層画像を構成するようにしたものである。
【0007】
ところで、OCT計測は上述したように特定の領域の光断層像を取得する方法であるが、内視鏡下では、例えば癌病変部を通常照明光内視鏡や特殊光内視鏡の観察により発見し、その領域をOCT測定することで、癌病変部がどこまで浸潤しているかを見わけることが可能となる。また、測定光の光軸を2次元的に走査することで、OCT計測による深さ情報と合わせて3次元的な情報を取得することができる。
【0008】
OCT計測と3次元コンピュータグラフィック技術の融合により、マイクロメートルオーダの分解能を持つ3次元構造モデルを表示することが可能となる事から、以下ではこのOCT計測による3次元構造モデルを光立体構造像と呼ぶ。
【0009】
OCTにより、例えば食道の癌深達度の観察が行われている。食道のOCT像では、手前から薄い上皮層と強散乱の基底膜、その奥にやや強い散乱の粘膜固有層が描出され、その下部にやや低散乱の粘膜筋板、強散乱の粘膜下層、そして低散乱の筋層が描出される。
【0010】
癌の発生による組織構造変化の一例を説明すると、癌が上皮層に発生して増殖すると、上皮の肥厚が現れる。この時期、癌に向かって粘膜下層にある血管から新生血管が粘膜層に向けて伸び、基底膜を超えて癌細胞周辺に形成されることが知られている。癌が進行すると基底膜を破り固有層に浸潤し、さらに進行すると粘膜筋板、粘膜下層、筋層へと浸潤深さが深くなる。
【0011】
基底膜を浸潤していない癌は「上皮内新生物」と呼ばれ、切除すれば完治する、というひとつの指標となる。早期癌をより早く見つけて、転移の危険性のないうちに低侵襲な治療をするために、基底膜より下に浸潤しているかどうかの見極めが大事である。基底膜を超えて浸潤している場合は、次の指標として粘膜筋板を超えているかどうかが重要となる。粘膜筋板を超えていない場合は、転移の確率が低いため、内視鏡下切除治療が選択される。一方、粘膜筋板を超えた場合は、転移の確率が高くなるため、開胸手術や放射線治療が選択される。早期癌をより低侵襲な治療をするために、粘膜筋板より下に浸潤しているかどうかの見極めが大事である。そこで、基底膜、あるいは粘膜筋板といった特定の膜、もしくは層のみ抽出して画像化する事が期待される。しかし、基底膜の状態を直接観察する方法はなかった。
【0012】
OCTにより、例えば、眼底を例として、特定の散乱強度を抽出して、層構造を抽出する手法が開示されている(特許文献2)。層構造の抽出には、具体的には深さ方向の1次元微分フィルタ等を用いて層構造、もしくは層の境界部を抽出するとしている。眼底の場合、層構造が明確でありまた構造の変化が少ないため、この様な手法で抽出しても誤差は少ない。しかし、食道など消化管で行われている例はなかった。
【0013】
癌が上皮層に発生すると、癌に向かって新生血管が粘膜層に形成される事が知られている。食道の早期癌の場合、新生血管は、粘膜下層から基底膜を通り抜けて粘膜上皮層に伸び、IPCL(上皮乳頭血管ループ)を形成する。癌が進行すると、基底膜をやぶり、癌が粘膜下層に入り込む。新生血管は、癌に向かってランダムな方向で形成される。通常の内視鏡検査では、表面から透けて見える新生血管の密度分布や形状から癌のグレードを判定する手法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−128708号公報
【特許文献2】特開2008−73099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
OCTの断層像では、基底膜を示す信号が観察されている。しかしながら、食道粘膜の場合、粘膜内に基底膜と同様に強散乱を示す新生血管などの構造物による誤認識や、癌になると極端に肥厚する場合や血管などの比較的浅い層の構造物の影響によるそれ以降の深さの光強度の減衰により、抽出が困難となることがある。また、癌の浸潤により基底膜が喪失している場合もあるが、基底膜以外の層や構造物により現れる別の層と基底膜とが連続しているのか不連続なのかがわかりにくい、という欠点がある。
【0016】
また、新生血管の分布は、癌の広がりを知るための有用な指標である。しかし、従来のOCT計測手法は、粘膜表面近くまで来ている新生血管の密度が、周辺の正常部と比較して際だっているかどうかを見ているにすぎない。一方、従来の内視鏡観察手法は、粘膜表面近くまで来ている新生血管を見ているにすぎない。
【0017】
そのため、従来の手法では、例えば炎症を起こして充血しているような場合に新生血管との見分けが困難である、粘膜上に非癌粘膜が覆っている場合に視認性が悪い、といった欠点があった。例えば、新生血管が基底膜を超える時に作り出す穴を直接的に見ることができれば、生体内部の新生血管の分布をより精度良く見極められると期待されるが、このような方法はなかった。
【0018】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することのできる光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の光立体構造計測装置は、層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置において、前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶手段と、前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出手段と、前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出手段と、前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出手段と、前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類手段と、を備えて構成される。
【0020】
請求項1に記載の光立体構造計測装置では、前記特定層抽出手段が前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出し、前記欠落領域抽出手段が記特定層領域上にて前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出し、前記欠落領域範囲算出手段が前記欠落領域の範囲の大きさを算出し、前記関心領域分類手段が前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類することで、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【0021】
請求項2に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1に記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層抽出手段は、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した領域が前記所定の範囲未満の場合、該領域をノイズ領域として前記光立体構造情報より消去するノイズ領域消去手段を有することが好ましい。
【0022】
請求項3に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1または2に記載の光立体構造計測装置であって、前記光立体構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を構築するコンピュータグラフィック画像構築手段をさらに備えることが好ましい。
【0023】
請求項4に記載の光立体構造計測装置のように、請求項3に記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層領域及び前記関心領域が識別可能な属性を前記特定層領域及び前記関心領域に付加する属性付加手段を備え、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して、少なくとも前記属性が付加された前記特定層領域及び前記関心領域を有する前記コンピュータグラフィック画像を構築することが好ましい。
【0024】
請求項5に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4に記載の光立体構造計測装置であって、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記測定対象の積層の深さ方向より前記特定層領域を投影した投影画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することが好ましい。
【0025】
請求項6に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4または5に記載の光立体構造計測装置であって、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して光立体構造画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することが好ましい。
【0026】
請求項7に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記属性付加手段は、少なくとも前記所定の範囲判定基準値うちの最小範囲判定基準値未満の前記関心領域の属性を前記特定層領域の属性とする属性制御手段を有することが好ましい。
【0027】
請求項8に記載の光立体構造計測装置のように、請求項7に記載の光立体構造計測装置であって、前記属性制御手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記最小範囲判定基準値より大きな値の複数の範囲判定基準値に基づき、異なる複数の前記属性を前記関心領域分類手段が分類した前記関心領域毎に付加することが好ましい。
【0028】
請求項9に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記測定対象は生体粘膜組織であり、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの第1の範囲判定基準値以上で、かつ前記第1の範囲判定基準値より大きい第2の範囲判定基準値未満の前記関心領域を新生血管領域に分類することが好ましい。
【0029】
請求項10に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9に記載の光立体構造計測装置であって、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記第2の範囲判定基準値以上の前記関心領域を癌浸潤領域に分類することが好ましい。
【0030】
請求項11に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9または10に記載の光立体構造計測装置であって、前記関心領域分類手段が判定した前記新生血管領域の分布を前記特定層領域上に新生血管分布像として生成する新生血管分布像生成手段をさらに備えることが好ましい。
【0031】
請求項12に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層領域は、前記生体粘膜組織の基底膜領域及び粘膜筋板領域の少なくともいずれか一方の領域を含むことが好ましい。
【0032】
請求項13に記載の光立体構造計測装置の構造情報処理方法は、層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置の構造情報処理方法において、前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶ステップと、前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出ステップと、前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出ステップと、前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出ステップと、前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類ステップと、を備えて構成される。
【0033】
請求項13に記載の光立体構造計測装置の構造情報処理方法では、前記特定層抽出ステップが前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出し、前記欠落領域抽出ステップが前記特定層領域上にて前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出し、前記欠落領域範囲算出ステップが前記欠落領域の範囲の大きさを算出し、前記関心領域分類ステップが前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類することで、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る光立体構造画像化装置の構成を示すブロック図
【図2】図1の光立体構造画像化装置において走査手段の変形例を示す図
【図3】図1の信号処理部の構成を示すブロック図
【図4】図1の光立体構造画像化装置の3次元CG画像生成処理の流れを示すフローチャート
【図5】図3の特定層抽出/ノイズ除去部にて光立体構造像より特定層を抽出すると共に光立体構造像のノイズを除去する具体的な手順の一例を説明するための図
【図6】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された特定層の投影図
【図7】実施例1における図3の属性付加/制御部による特定層からの関心領域Aの消去を説明する図
【図8】実施例1における図3のレンダリング部により生成されるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図9】図5の手順の実施例2を説明するための図
【図10】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例2における特定層の投影図
【図11】図3の属性付加/制御部による特定層での関心領域の実施例2における処理を説明する図
【図12】図3のレンダリング部により生成される実施例2におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図13】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例3における特定層の投影図
【図14】図3のレンダリング部により生成される実施例3におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図15】図3の属性付加/制御部が生成する新生血管の分布像を示す図
【図16】図15の新生血管の分布像を基底膜領域に重畳させた場合の図
【図17】図15の新生血管の分布像をレンダリングしたコンピュータグラフィック画像を示す図
【図18】内視鏡画像に図11の投影図に重畳した図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る光立体構造計測装置としての光立体構造画像化装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の実施形態に係る光立体構造画像化装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光立体構造計測装置である光立体構造画像化装置1は、例えば体腔内の生体組織や細胞等の測定対象の断層画像を例えば波長1.3μmを中心とするSS−OCT計測により取得するものであって、OCT光源10、干渉情報検出部70を有するOCT干渉計30、プローブ40、CG画像生成部90及びモニタ100を備えて構成される。
【0038】
OCT光源10は周波数を一定の周期で掃引させながら赤外領域のレーザ光Lを射出する光源である。
【0039】
OCT光源10から射出されたレーザ光Lは、OCT干渉計30内の光分波部3により測定光L1と参照光L2とに分波される。光分波部3は、例えば、分岐比90:10の光カプラから構成され、測定光:参照光=90:10の割合で分波する。
【0040】
OCT干渉計30では、光分波部3により分波された参照光L2は、サーキュレータ5aを介して参照光調整手段としての光路長調整部80により光路長が調整されて反射される。
【0041】
この光路長調整部80は、断層画像の取得を開始する位置を調整するために参照光L2の光路長を変更するものであり、コリメータレンズ81、82および反射ミラー83を有している。そして、サーキュレータ5aからの参照光L2はコリメータレンズ81、82を透過した後に反射ミラー83により反射され、参照光L2の戻り光L2aは再びコリメータレンズ81、82を介してサーキュレータ5aに入射される。
【0042】
ここで、反射ミラー83は可動ステージ84上に配置されており、可動ステージ84はミラー移動部85により矢印A方向に移動可能に設けられている。そして可動ステージ84が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変更するようになっている。そして、光路長調整部80からの参照光L2の戻り光L2aは、サーキュレータ5aを介して光合分波部4に導光される。
【0043】
一方、光分波部3により分波された測定光L1は、サーキュレータ5b及び光ファイバFBを介してプローブ40に導光される。プローブ40の出射端から測定光L1が出射されて測定対象Tに照射され、その戻り光L3が再びプローブ40に入射し、サーキュレータ5bに戻ってくる。
【0044】
プローブ40は、入射された測定光L1を光学ロータリコネクタ部41を介して測定対象Tまで導光し、測定対象Tに照射する。また、プローブ40は、測定光L1が測定対象Tに照射されたときの測定対象Tからの戻り光L3を導光する。
【0045】
測定対象Tの深さ方向をZ、プローブの長手軸方向をX、ZX面に直角な方向をYとすると、プローブ40は、走査手段としての光走査部42内の図示しないモータにより、光学ロータリコネクタ部41から先のファイバ部が回転する構成となっており、それにより測定対象T上において円周状に測定光L1を走査するようになっており、これによりZY平面の2次元断層画像が計測可能となっている。さらに、光走査部42内の図示しないモータによりプローブ40の先端が測定光L1の走査円が形成する平面に対して垂直な方向Xに進退走査することにより、XYZの3次元断層画像の計測が可能となっている。また、プローブ40は、図示しない光コネクタにより光ファイバFBに対して着脱可能に取り付けられている。
【0046】
図2は図1の光立体構造画像化装置において走査手段の変形例を示す図である。
【0047】
勿論、プローブ先端形状や走査方向はこれに限る物ではなく、例えば、ファイバ先端側に図2に示すように、レンズL及びガルバノミラー等の高速走査ミラーMを配置した光送受部900を設け、高速走査ミラーMにより2次元走査を行ってもよいし、ステージ(図示せず)によって進退走査するように集光手段及び走査手段を構成してもよい。あるいは、測定対象をステージによって2次元的に走査してもよい。あるいは、これら光軸走査機構、および測定試料移動機構を組み合わせて構成してもよい。OCT装置の光軸走査は、このようにガルバノミラーを用いたものでも、ステージによって走査するタイプでも、どれでもよい。プローブの場合、偏向ミラーのみモータで回転させても、ファイバに固定して、ファイバ毎回転させてもよい。回転に限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いて線形走査させてもよい。
【0048】
測定対象Tからの反射光(あるいは後方散乱光)L3は、OCT干渉計30に導光され、OCT干渉計30にてサーキュレータ5bを介して光合分波部4に導光される。そして、この光合分波部4において測定光L1の反射光(あるいは後方散乱光)L3と参照光L2の戻り光L2aとを合波し干渉情報検出部70側に射出するようになっている。
【0049】
干渉情報検出部70は、光合分波部4により合波された測定光L1の反射光(あるいは後方散乱光)L3と参照光L2の戻り光L2aとの干渉光L5を、所定のサンプリング周波数で検出するものであり、干渉光L5の光強度を測定するInGaAsフォトディテクタ71aおよび71bと、InGaAsフォトディテクタ71aの検出値とInGaAsフォトディテクタ71bの検出値のバランス検波を行なう干渉光検出部72とを備えている。なお、干渉光L5は、光合分波部4において2分され、InGaAsフォトディテクタ71aおよび71bにおいて検出され、干渉光検出部72に出力される。干渉光検出部72は、OCT光源10の掃引トリガ信号Sに同期して、干渉光L5をフーリエ変換することにより、測定対象Tの各深さ位置における反射光(あるいは後方散乱光)L3の強度を検出する。
【0050】
CG画像生成部90は、干渉光検出部72により検出された測定対象Tの各深さ位置における反射光(あるいは後方散乱光)L3の強度を干渉情報の信号強度情報として光立体構造情報記憶手段としてのメモリ91に格納する。CG画像生成部90はメモリ91のほかに、信号処理部93、制御部94を備えて構成される。信号処理部93は、メモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する。制御部94は、信号処理部93を制御すると共に、OCT光源10発光制御を行うと共に、ミラー移動部85を制御する。
【0051】
図3は図1の信号処理部の構成を示すブロック図である。信号処理部93は、図3に示すように、光立体構造像生成部120、特定層抽出手段及びノイズ領域消去手段としての特定層抽出/ノイズ除去部121、欠落領域抽出手段としての欠落領域抽出部122、欠落領域範囲算出手段としての欠落領域範囲算出部123、関心領域分類手段としての関心領域分類部124、閾値/基準値格納部125、属性付加手段及び属性制御手段としての属性付加/制御部126及びコンピュータグラフィック画像構築手段としてのレンダリング部127を備えて構成される。
【0052】
光立体構造像生成部120は、メモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する。
【0053】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、連続した構造情報の範囲と所定の閾値とを比較することで、連続した構造情報の範囲と所定の閾値以上の場合には光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の特定層領域(例えば、基底膜領域、あるいは粘膜筋板領域)とすると共に、連続した構造情報の範囲と所定の閾値未満の場合にはノイズ領域として測定対象Tの構造情報のノイズ領域を抽出しこのノイズ領域を光立体構造像から除去する。
【0054】
欠落領域抽出部122は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出した特定層領域上において構造情報が欠落している欠落領域を抽出する。
【0055】
欠落領域範囲算出部123は、欠落領域抽出部122にて抽出した欠落範囲の大きさ、例えば面積を算出する。
【0056】
関心領域分類部124は、欠落領域範囲算出部123にて算出した欠落範囲の大きさを所定の範囲判定基準値と比較し、欠落領域を欠落範囲の大きさに応じた複数の関心領域(例えば、新生血管領域、微小癌浸潤領域、進行癌浸潤領域等)分類する。
【0057】
閾値/基準値格納部125は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて使用する所定の閾値、関心領域分類部124にて使用する範囲判定基準値等を格納している。
【0058】
属性付加/制御部126は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域に属性を付加・設定する。
【0059】
レンダリング部127は、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域の構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を生成する。なお、レンダリング部127は、属性付加/制御部126に付加・設定された特定層領域及び関心領域の属性に基づき、特定層領域及び関心領域を識別可能にコンピュータグラフィック画像を構築する。すなわち、レンダリング部127は、特定層領域及び関心領域の属性に基づき、例えば異なる色付け処理、あるいは強調処理を実行し光立体構造CG画像等のコンピュータグラフィック画像を構築する。なお、レンダリング部127は構築したコンピュータグラフィック画像をモニタ100に出力するようになっている。
【0060】
次に、このように構成された本実施形態の光立体構造画像化装置1の作用を図4のフローチャートを用いて説明する。図4は図1の光立体構造画像化装置の3次元CG画像生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図4に示すように、制御部94は、光立体構造像生成部120にてメモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する(ステップS1)。なお、光立体構造像生成部120は、連続性の判定に適した大きさ以下の高周波のノイズを除去するため、ローパスフィルタ、あるいは平均化処理などのノイズ除去手段を行う。
【0062】
次に、制御部94は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて閾値/基準値格納部125からの所定の閾値に基づいて、光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の層構造の構造情報を抽出する(ステップS2)。
【0063】
さらに、制御部94は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて閾値/基準値格納部125からの所定の閾値に基づいて、測定対象Tの干渉情報の信号強度情報のノイズ情報を抽出しこのノイズ情報を光立体構造像から除去する(ステップS3)。
【0064】
このステップS2及びS3の処理の詳細について、図5ないし図7を用いて説明する。図5は図3の特定層抽出/ノイズ除去部にて光立体構造像より特定層を抽出すると共に光立体構造像のノイズを除去する具体的な手順の一例を説明するための図であり、図6は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された特定層の投影図である。
【0065】
図5(A)において、例えば、生体における食道は、上層から、粘膜表面150、薄い上皮層151、強散乱の基底膜152、やや強い散乱の粘膜固有層153、やや低散乱の粘膜筋板154、強散乱の粘膜下層155、筋層(不図示)というような層構造を有している。
【0066】
癌が上皮層151に発生すると、上皮層151の厚みが増大し上皮層151に肥厚が現れる。そして癌はまず基底膜152を破り粘膜固有層153に浸潤し、さらに進行すると粘膜筋板154、粘膜下層155、筋層へと浸潤深さが深くなる。癌の浸潤有無を見分けるために、基底膜152より下に浸潤しているかどうかの見極めが重要となる。
【0067】
図5(A)に示す食道の粘膜組織を光立体構造画像化装置1によりOCT計測を行うと、光立体構造画像化装置1は、図5(B)のような干渉情報の信号強度情報を得ることができる。なお図5(B)においては説明を簡略化するため、食道の積層の深さ方向を有する断面における、粘膜表面150、上皮層151、基底膜152の干渉情報の信号強度情報である粘膜表面強度情報150a、上皮層強度情報151a、基底膜強度情報152aを模式的に示している。
【0068】
図5(A)に示すように、例えば上皮層151には毛細血管156等があるために、図5(B)に示すように、上皮層強度情報151aには毛細血管156に応じた毛細血管強度情報156aが検出される。この毛細血管強度情報156aはOCT計測時に下層に対して影となり基底膜強度情報152aには強度情報が欠落した欠落部分158aが発生する。さらに、上皮層強度情報151aには、ノイズ成分157aが発生する場合もある。
【0069】
このため、特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS2にて干渉情報の信号強度情報より、粘膜表面150、上皮層151、基底膜152の構造情報である、粘膜表面構造情報150b、上皮層構造情報151b、基底膜構造情報152bを抽出する。
【0070】
これらの構造情報を抽出した場合には、図5(C)に示すように上皮層構造情報151b内に毛細血管あるいはノイズによる小さな領域の構造情報156b、157bを抽出すると共に、基底膜構造情報152bにおいては毛細血管等により影となる欠落した欠落領域158bを抽出する。
【0071】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS2において、連続した構造情報の範囲の大きさ(図5(C)の場合は連続した構造情報の長さ)と閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値とを比較することで、連続した構造情報の範囲の大きさが所定の閾値以上の場合には光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の特定層領域である粘膜表面150、上皮層151、基底膜152を抽出する。なお、欠落領域158bは上皮層151と共に抽出される。
【0072】
さらに、特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS3において、連続した構造情報の範囲の大きさがと所定の閾値未満の場合にはノイズ領域として測定対象Tの構造情報のノイズ領域を抽出する。そして、特定層抽出/ノイズ除去部121は、このノイズ領域を光立体構造像から除去する。すなわち、このステップS3の処理により、特定層抽出/ノイズ除去部121は、図5(C)に示した小さな領域の構造情報156b、157bをノイズ領域として光立体構造像から除去する。
【0073】
このようなステップS2、S3の処理により、特定層抽出/ノイズ除去部121は、図5(D)のように、構造情報156b、157bからなるノイズ領域を除去した、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152Aを抽出する。なお、欠落領域158Aは上皮層領域151Aと共に抽出される。
【0074】
以上、説明の簡略化のため、図5においては2次元断面像を用いて説明したが、特定層抽出/ノイズ除去部121は、具体的には、上記ステップS2、S3の処理を光立体構造像全体に対して実行する。
【0075】
すなわち、特定層抽出/ノイズ除去部121は、まず、深さ方向に向かって干渉情報の信号強度情報の高くなる点(抽出点)を抽出する。これを3次元像全体に対して行う。
【0076】
抽出点は、隣接している抽出点をまとまることで、いくつかの抽出領域を形成する。それぞれの抽出領域毎に、特定層抽出/ノイズ除去部121は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とそれ以外の構造物(例えば、構造情報156b、157b:図5(C)参照))とを分離する。
【0077】
そして、特定層抽出/ノイズ除去部121は、それぞれの抽出領域を、上面から見た図6に示すような投影図170において、投影図170の面積(連続した構造情報の範囲の大きさ)がある一定面積(閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値)以上の場合は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とし、それ以外(例えば、構造情報156b、157b:図5(C)参照)はノイズ領域と見なして除去する。
【0078】
図4に戻り、次に、制御部94は、欠落領域抽出部122にて例えば図6に示した基底膜領域152Aの投影図170上に発生した複数の欠落領域158Aを抽出する(ステップS4)。
【0079】
次に、制御部94は、欠落領域範囲算出部123において欠落領域抽出部122にて抽出した欠落領域158Aの大きさ、例えば面積を算出する(ステップS5)。
【0080】
そして、制御部94は、関心領域分類部124において欠落領域範囲算出部123にて算出した欠落領域158Aの大きさを閾値/基準値格納部125からの所定の範囲判定基準値と比較し、欠落領域158Aを欠落範囲の大きさに応じた複数の関心領域(例えば、新生血管領域、微小癌浸潤領域、進行癌浸潤領域等)に分類する(ステップS6)。
【0081】
具体的には、関心領域分類部124は、投影図17の内部にある欠落領域158Aに対して、例えばその直径に応じたクラスの関心領域に分類する。例えば、関心領域分類部124は、径10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)、径10ミクロン以上200ミクロン未満を関心領域B(例えば、新生血管領域)、径200ミクロン以上1mm未満を関心領域C(例えば、微小浸潤領域)、径1mm以上を関心領域D(例えば、進行浸潤領域)等に分類する。
【0082】
次に、制御部94は、属性付加/制御部126において特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)及び関心領域分類部124により分類された各関心領域に属性を付加・設定する(ステップS7)。例えば色属性を特定層領域及び各関心領域に付加・設定する。
【0083】
そして、制御部94は、レンダリング部127において光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域の構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を生成する(ステップS8)。なお、レンダリング部127は、属性付加/制御部126に付加・設定された特定層領域及び関心領域の属性に基づき、特定層領域及び関心領域を識別可能にコンピュータグラフィック画像を構築する。すなわち、レンダリング部127は、特定層領域及び関心領域の属性に基づき、例えば異なる色付け処理、あるいは強調処理を実行しコンピュータグラフィック画像を構築する。
【0084】
そして、制御部94は、レンダリング部127にて構築したコンピュータグラフィック画像をモニタ100に出力し、モニタ100にコンピュータグラフィック画像を表示させる(ステップS9)。
【0085】
上記のステップS6〜S8の処理を以下の実施例1〜にて具体的に説明する。
【0086】
<実施例1>
図7は実施例1における図3の属性付加/制御部による特定層からの関心領域Aの消去を説明する図であり、図8は実施例1における図3のレンダリング部により生成されるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。
【0087】
図5及び図6にて説明した基底膜領域152A上の欠落領域158bの場合は、関心領域分類部124は、ステップS6にて欠落領域158bを例えば10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)と分類する。
【0088】
属性付加/制御部126は、ステップS7にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図7に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158b)を消去する。
【0089】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図8に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去されることとなる。
【0090】
<実施例2>
図9は図5の手順の実施例2を説明するための図であり、図10は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例2における特定層の投影図である。また、図11は図3の属性付加/制御部による特定層での関心領域の実施例2における処理を説明する図であり、図12は図3のレンダリング部により生成される実施例2におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。ここで、図9(A)〜(D)での処理内容は図6(A)〜(D)での処理内容と同じであるので、説明は省略する。
【0091】
図9に示すように、基底膜領域152Aに癌が浸潤し基底膜領域152Aの一部が喪失した場合は、関心領域分類部124は、ステップS6にて喪失による欠落領域180bを例えば径1mm以上を関心領域D(例えば、進行浸潤領域)と分類する。なお、関心領域分類部124は、図9(A)〜(D)での欠落領域158bについては実施例1と同様に例えば10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)と分類する。
【0092】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、それぞれの抽出領域を、上面からの見た図10に示すような投影図170において、投影図170の面積(連続した構造情報の範囲の大きさ)がある一定面積(閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値)以上の場合は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とし、それ以外(例えば、構造情報156b、157b)は、ノイズ領域と見なして除去する。
【0093】
属性付加/制御部126は、投影図170にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図11に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158)を消去すると共に、欠落領域180bは径1mm以上の関心領域D(進行浸潤領域)として基底膜領域152A上に残す(ステップS7)。
【0094】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図12に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に例えば識別可能な色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去され、基底膜領域152A上には例えば識別可能な色属性が付加された関心領域D(欠落領域180b)としての進行浸潤領域がレンダリングされることとなる。
【0095】
<実施例3>
図13は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例3における特定層の投影図である。また、図14は図3のレンダリング部により生成される実施例3におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。
【0096】
食道の早期癌の場合、新生血管は、粘膜下層から基底膜を通り抜けて粘膜上皮層に伸び、IPCL(上皮乳頭血管ループ)を形成する。癌が進行すると、基底膜をやぶり、癌が粘膜下層に入り込む。新生血管は、癌に向かってランダムな方向で形成される。通常の内視鏡検査では、表面から透けて見える新生血管の密度分布や形状から癌のグレードを判定する手法が行われているが粘膜表面近くまで来ている新生血管を見ているにすぎない。
【0097】
実施例3では、生体内部の新生血管の分布の見極めや、新生血管による基底膜の状態を観察するための実施例である。
【0098】
関心領域分類部124は、ステップS6にて欠落領域を例えば関心領域A〜Dに分類する。
【0099】
属性付加/制御部126は、投影図170にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図13に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158)を消去すると共に、欠落領域190bは径10ミクロン以上200ミクロン未満の関心領域B(新生血管領域)、欠落領域191bは径200ミクロン以上1mm未満の関心領域C(微小浸潤領域)、欠落領域192bは径1mm以上の関心領域D(進行浸潤領域)として基底膜領域152A上に残す(ステップS7)。
【0100】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図14に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に例えば識別可能な色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去され、基底膜領域152A上には例えば識別可能な色属性が付加された関心領域B〜D(欠落領域190b、欠落領域191b、欠落領域192b)としての新生血管領域、微小浸潤領域、進行浸潤領域がレンダリングされることとなる。
【0101】
図15は図3の属性付加/制御部が生成する新生血管の分布像を示す図であり、図16は図15の新生血管の分布像を基底膜領域に重畳させた場合の図であり、さらに図17は図15の新生血管の分布像をレンダリングしたコンピュータグラフィック画像を示す図である。
【0102】
なお、実施例3の属性付加/制御部126は、図15に示すように、新生血管の分布を分布像200として生成し、この新生血管の分布像200を図16に示すように、基底膜領域152Aの投影図170に重畳させることができる。これによりレンダリング部127は、基底膜上での新生血管の分布状態が容易に認識可能な図17に示すようなコンピュータグラフィック画像140を生成することが可能となり、癌診断をより確実に行うことができる。
【0103】
この実施例3では、特に基底膜の構造から、新生血管の密度、浸潤の状態をわかりやすく表示できる。浅い領域にある構造物による深部の不明瞭化領域においても、層構造の抽出がより確実に行われる。また、眼内の新生血管が原因となっている加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、血管新生緑内障の診断にも有効である。この場合、基底膜のかわりに網膜を抽出して観察する。
【0104】
以上のように、本実施形態及びその実施例1〜3において説明したように、特に以下のような効果を得ることができる。
【0105】
(1)生体構造が病変により変化しても、特定の層を抽出しやすい。
【0106】
(2)浅い領域にある構造物による深部の不明瞭化領域においても、層構造の抽出がより確実に行われる。
【0107】
(3)癌による層構造の連続性の喪失を判別しやすい。
【0108】
このように本実施形態によれば、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することできる。
【0109】
図18は内視鏡画像に図11の投影図に重畳した図である。本実施形態及びその実施例1〜3においては、プローブ40を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して、内視鏡画像観察とOCT計測を行う場合には、図18に示すように、レンダリング部127は、内視鏡画像300上に投影図170を半透明な状態で重畳させることができる。そして、レンダリング部127は、このような内視鏡画像300上で投影図170を半透明な状態で重畳させた画像をモニタ100に表示させることで、より癌診断を向上させることが可能となる。
【0110】
なお、癌のスクリーニングに公知のNBI(Narrow Band Imaging)と呼ばれる手法や公知のFICE(Flexible spectral Imaging Color Enhancement)と呼ばれる手法がある。これらは、青、緑の波長域を画像化することで、病変部の特徴を視認しやすくする手法である。このNBI/FICE画像に投影図170を半透明な状態で重畳させた画像をモニタ100に表示させるようにしてもよい。
【0111】
以上、本発明の光立体構造計測装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0112】
食道の基底膜を例として説明したが、他の消化管、例えば胃、小腸、大腸などでは、粘膜筋板を抽出すると、その浸潤をわかりやすく視認させる事ができる。あるいは、基底膜の存在する口腔、舌、咽頭、胃、小腸、大腸、胆管などの消化管や、鼻腔、喉頭、気管支などの呼吸器、膀胱、尿管、尿道などの泌尿器、子宮、膣などの生殖器、皮膚などや、層構造のある眼底など、特定の膜あるいは層の構造に異変をきたす組織であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1…光立体構造画像化装置、10…OCT光源、30…OCT干渉計、40…プローブ、70…干渉情報検出部、90…CG画像生成部、91…メモリ、93…信号処理部、94…制御部、100…モニタ、120…光立体構造像生成部、121…特定層抽出/ノイズ除去部、122…欠落領域抽出部、123…欠落領域範囲算出部、124…関心領域分類部、125…閾値/基準値格納部、126…属性付加/制御部、127…レンダリング部
【技術分野】
【0001】
本発明は光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法に係り、特に測定対象の構造情報の処理部分に特徴のある光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の光断層画像を取得する際に、OCT(Optical Coherence Tomography)計測を利用した光断層画像取得装置が用いられることがある。この光断層画像取得装置は、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、該測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光、もしくは後方散乱光と参照光とを合波し、該反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を取得するものである(特許文献1)。以下、測定対象からの反射光、後方散乱光をまとめて反射光と標記する。
【0003】
上記のOCT計測には、大きくわけてTD−OCT(Time domain OCT)計測とFD−OCT(Fourier Domain OCT)計測の2種類がある。TD−OCT計測は、参照光の光路長を変更しながら干渉光強度を測定することにより、測定対象の深さ方向の位置(以下、深さ位置という)に対応した反射光強度分布を取得する方法である。
【0004】
一方、FD−OCT計測は、参照光と信号光の光路長は変えることなく、光のスペクトル成分毎に干渉光強度を測定し、ここで得られたスペクトル干渉強度信号を計算機にてフーリエ変換に代表される周波数解析を行うことで、深さ位置に対応した反射光強度分布を取得する方法である。TD−OCTに存在する機械的な走査が不要となることで、高速な測定が可能となる手法として、近年注目されている。
【0005】
FD−OCT計測を行う装置構成で代表的な物としては、SD−OCT(Spectral Domain OCT)装置とSS−OCT(Swept Source OCT)の2種類が挙げられる。SD−OCT装置は、SLD(Super Luminescence Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、白色光といった広帯域の低コヒーレント光を光源に用い、マイケルソン型干渉計等を用いて、広帯域の低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、測定光を測定対象に照射させ、そのとき戻って来た反射光と参照光とを干渉させ、この干渉光をスペクトロメータを用いて各周波数成分に分解し、フォトダイオード等の素子がアレイ状に配列されたディテクタアレイを用いて各周波数成分毎の干渉光強度を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより、光断層画像を構成するようにしたものである。
【0006】
一方、SS−OCT装置は、光周波数を時間的に掃引させるレーザを光源に用い、反射光と参照光とを各波長において干渉させ、光周波数の時間変化に対応した信号の時間波形を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより光断層画像を構成するようにしたものである。
【0007】
ところで、OCT計測は上述したように特定の領域の光断層像を取得する方法であるが、内視鏡下では、例えば癌病変部を通常照明光内視鏡や特殊光内視鏡の観察により発見し、その領域をOCT測定することで、癌病変部がどこまで浸潤しているかを見わけることが可能となる。また、測定光の光軸を2次元的に走査することで、OCT計測による深さ情報と合わせて3次元的な情報を取得することができる。
【0008】
OCT計測と3次元コンピュータグラフィック技術の融合により、マイクロメートルオーダの分解能を持つ3次元構造モデルを表示することが可能となる事から、以下ではこのOCT計測による3次元構造モデルを光立体構造像と呼ぶ。
【0009】
OCTにより、例えば食道の癌深達度の観察が行われている。食道のOCT像では、手前から薄い上皮層と強散乱の基底膜、その奥にやや強い散乱の粘膜固有層が描出され、その下部にやや低散乱の粘膜筋板、強散乱の粘膜下層、そして低散乱の筋層が描出される。
【0010】
癌の発生による組織構造変化の一例を説明すると、癌が上皮層に発生して増殖すると、上皮の肥厚が現れる。この時期、癌に向かって粘膜下層にある血管から新生血管が粘膜層に向けて伸び、基底膜を超えて癌細胞周辺に形成されることが知られている。癌が進行すると基底膜を破り固有層に浸潤し、さらに進行すると粘膜筋板、粘膜下層、筋層へと浸潤深さが深くなる。
【0011】
基底膜を浸潤していない癌は「上皮内新生物」と呼ばれ、切除すれば完治する、というひとつの指標となる。早期癌をより早く見つけて、転移の危険性のないうちに低侵襲な治療をするために、基底膜より下に浸潤しているかどうかの見極めが大事である。基底膜を超えて浸潤している場合は、次の指標として粘膜筋板を超えているかどうかが重要となる。粘膜筋板を超えていない場合は、転移の確率が低いため、内視鏡下切除治療が選択される。一方、粘膜筋板を超えた場合は、転移の確率が高くなるため、開胸手術や放射線治療が選択される。早期癌をより低侵襲な治療をするために、粘膜筋板より下に浸潤しているかどうかの見極めが大事である。そこで、基底膜、あるいは粘膜筋板といった特定の膜、もしくは層のみ抽出して画像化する事が期待される。しかし、基底膜の状態を直接観察する方法はなかった。
【0012】
OCTにより、例えば、眼底を例として、特定の散乱強度を抽出して、層構造を抽出する手法が開示されている(特許文献2)。層構造の抽出には、具体的には深さ方向の1次元微分フィルタ等を用いて層構造、もしくは層の境界部を抽出するとしている。眼底の場合、層構造が明確でありまた構造の変化が少ないため、この様な手法で抽出しても誤差は少ない。しかし、食道など消化管で行われている例はなかった。
【0013】
癌が上皮層に発生すると、癌に向かって新生血管が粘膜層に形成される事が知られている。食道の早期癌の場合、新生血管は、粘膜下層から基底膜を通り抜けて粘膜上皮層に伸び、IPCL(上皮乳頭血管ループ)を形成する。癌が進行すると、基底膜をやぶり、癌が粘膜下層に入り込む。新生血管は、癌に向かってランダムな方向で形成される。通常の内視鏡検査では、表面から透けて見える新生血管の密度分布や形状から癌のグレードを判定する手法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−128708号公報
【特許文献2】特開2008−73099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
OCTの断層像では、基底膜を示す信号が観察されている。しかしながら、食道粘膜の場合、粘膜内に基底膜と同様に強散乱を示す新生血管などの構造物による誤認識や、癌になると極端に肥厚する場合や血管などの比較的浅い層の構造物の影響によるそれ以降の深さの光強度の減衰により、抽出が困難となることがある。また、癌の浸潤により基底膜が喪失している場合もあるが、基底膜以外の層や構造物により現れる別の層と基底膜とが連続しているのか不連続なのかがわかりにくい、という欠点がある。
【0016】
また、新生血管の分布は、癌の広がりを知るための有用な指標である。しかし、従来のOCT計測手法は、粘膜表面近くまで来ている新生血管の密度が、周辺の正常部と比較して際だっているかどうかを見ているにすぎない。一方、従来の内視鏡観察手法は、粘膜表面近くまで来ている新生血管を見ているにすぎない。
【0017】
そのため、従来の手法では、例えば炎症を起こして充血しているような場合に新生血管との見分けが困難である、粘膜上に非癌粘膜が覆っている場合に視認性が悪い、といった欠点があった。例えば、新生血管が基底膜を超える時に作り出す穴を直接的に見ることができれば、生体内部の新生血管の分布をより精度良く見極められると期待されるが、このような方法はなかった。
【0018】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することのできる光立体構造計測装置及びその構造情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の光立体構造計測装置は、層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置において、前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶手段と、前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出手段と、前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出手段と、前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出手段と、前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類手段と、を備えて構成される。
【0020】
請求項1に記載の光立体構造計測装置では、前記特定層抽出手段が前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出し、前記欠落領域抽出手段が記特定層領域上にて前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出し、前記欠落領域範囲算出手段が前記欠落領域の範囲の大きさを算出し、前記関心領域分類手段が前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類することで、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【0021】
請求項2に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1に記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層抽出手段は、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した領域が前記所定の範囲未満の場合、該領域をノイズ領域として前記光立体構造情報より消去するノイズ領域消去手段を有することが好ましい。
【0022】
請求項3に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1または2に記載の光立体構造計測装置であって、前記光立体構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を構築するコンピュータグラフィック画像構築手段をさらに備えることが好ましい。
【0023】
請求項4に記載の光立体構造計測装置のように、請求項3に記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層領域及び前記関心領域が識別可能な属性を前記特定層領域及び前記関心領域に付加する属性付加手段を備え、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して、少なくとも前記属性が付加された前記特定層領域及び前記関心領域を有する前記コンピュータグラフィック画像を構築することが好ましい。
【0024】
請求項5に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4に記載の光立体構造計測装置であって、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記測定対象の積層の深さ方向より前記特定層領域を投影した投影画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することが好ましい。
【0025】
請求項6に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4または5に記載の光立体構造計測装置であって、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して光立体構造画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することが好ましい。
【0026】
請求項7に記載の光立体構造計測装置のように、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記属性付加手段は、少なくとも前記所定の範囲判定基準値うちの最小範囲判定基準値未満の前記関心領域の属性を前記特定層領域の属性とする属性制御手段を有することが好ましい。
【0027】
請求項8に記載の光立体構造計測装置のように、請求項7に記載の光立体構造計測装置であって、前記属性制御手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記最小範囲判定基準値より大きな値の複数の範囲判定基準値に基づき、異なる複数の前記属性を前記関心領域分類手段が分類した前記関心領域毎に付加することが好ましい。
【0028】
請求項9に記載の光立体構造計測装置のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記測定対象は生体粘膜組織であり、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの第1の範囲判定基準値以上で、かつ前記第1の範囲判定基準値より大きい第2の範囲判定基準値未満の前記関心領域を新生血管領域に分類することが好ましい。
【0029】
請求項10に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9に記載の光立体構造計測装置であって、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記第2の範囲判定基準値以上の前記関心領域を癌浸潤領域に分類することが好ましい。
【0030】
請求項11に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9または10に記載の光立体構造計測装置であって、前記関心領域分類手段が判定した前記新生血管領域の分布を前記特定層領域上に新生血管分布像として生成する新生血管分布像生成手段をさらに備えることが好ましい。
【0031】
請求項12に記載の光立体構造計測装置のように、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置であって、前記特定層領域は、前記生体粘膜組織の基底膜領域及び粘膜筋板領域の少なくともいずれか一方の領域を含むことが好ましい。
【0032】
請求項13に記載の光立体構造計測装置の構造情報処理方法は、層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置の構造情報処理方法において、前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶ステップと、前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出ステップと、前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出ステップと、前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出ステップと、前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類ステップと、を備えて構成される。
【0033】
請求項13に記載の光立体構造計測装置の構造情報処理方法では、前記特定層抽出ステップが前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出し、前記欠落領域抽出ステップが前記特定層領域上にて前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出し、前記欠落領域範囲算出ステップが前記欠落領域の範囲の大きさを算出し、前記関心領域分類ステップが前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類することで、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る光立体構造画像化装置の構成を示すブロック図
【図2】図1の光立体構造画像化装置において走査手段の変形例を示す図
【図3】図1の信号処理部の構成を示すブロック図
【図4】図1の光立体構造画像化装置の3次元CG画像生成処理の流れを示すフローチャート
【図5】図3の特定層抽出/ノイズ除去部にて光立体構造像より特定層を抽出すると共に光立体構造像のノイズを除去する具体的な手順の一例を説明するための図
【図6】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された特定層の投影図
【図7】実施例1における図3の属性付加/制御部による特定層からの関心領域Aの消去を説明する図
【図8】実施例1における図3のレンダリング部により生成されるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図9】図5の手順の実施例2を説明するための図
【図10】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例2における特定層の投影図
【図11】図3の属性付加/制御部による特定層での関心領域の実施例2における処理を説明する図
【図12】図3のレンダリング部により生成される実施例2におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図13】図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例3における特定層の投影図
【図14】図3のレンダリング部により生成される実施例3におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図
【図15】図3の属性付加/制御部が生成する新生血管の分布像を示す図
【図16】図15の新生血管の分布像を基底膜領域に重畳させた場合の図
【図17】図15の新生血管の分布像をレンダリングしたコンピュータグラフィック画像を示す図
【図18】内視鏡画像に図11の投影図に重畳した図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る光立体構造計測装置としての光立体構造画像化装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の実施形態に係る光立体構造画像化装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光立体構造計測装置である光立体構造画像化装置1は、例えば体腔内の生体組織や細胞等の測定対象の断層画像を例えば波長1.3μmを中心とするSS−OCT計測により取得するものであって、OCT光源10、干渉情報検出部70を有するOCT干渉計30、プローブ40、CG画像生成部90及びモニタ100を備えて構成される。
【0038】
OCT光源10は周波数を一定の周期で掃引させながら赤外領域のレーザ光Lを射出する光源である。
【0039】
OCT光源10から射出されたレーザ光Lは、OCT干渉計30内の光分波部3により測定光L1と参照光L2とに分波される。光分波部3は、例えば、分岐比90:10の光カプラから構成され、測定光:参照光=90:10の割合で分波する。
【0040】
OCT干渉計30では、光分波部3により分波された参照光L2は、サーキュレータ5aを介して参照光調整手段としての光路長調整部80により光路長が調整されて反射される。
【0041】
この光路長調整部80は、断層画像の取得を開始する位置を調整するために参照光L2の光路長を変更するものであり、コリメータレンズ81、82および反射ミラー83を有している。そして、サーキュレータ5aからの参照光L2はコリメータレンズ81、82を透過した後に反射ミラー83により反射され、参照光L2の戻り光L2aは再びコリメータレンズ81、82を介してサーキュレータ5aに入射される。
【0042】
ここで、反射ミラー83は可動ステージ84上に配置されており、可動ステージ84はミラー移動部85により矢印A方向に移動可能に設けられている。そして可動ステージ84が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変更するようになっている。そして、光路長調整部80からの参照光L2の戻り光L2aは、サーキュレータ5aを介して光合分波部4に導光される。
【0043】
一方、光分波部3により分波された測定光L1は、サーキュレータ5b及び光ファイバFBを介してプローブ40に導光される。プローブ40の出射端から測定光L1が出射されて測定対象Tに照射され、その戻り光L3が再びプローブ40に入射し、サーキュレータ5bに戻ってくる。
【0044】
プローブ40は、入射された測定光L1を光学ロータリコネクタ部41を介して測定対象Tまで導光し、測定対象Tに照射する。また、プローブ40は、測定光L1が測定対象Tに照射されたときの測定対象Tからの戻り光L3を導光する。
【0045】
測定対象Tの深さ方向をZ、プローブの長手軸方向をX、ZX面に直角な方向をYとすると、プローブ40は、走査手段としての光走査部42内の図示しないモータにより、光学ロータリコネクタ部41から先のファイバ部が回転する構成となっており、それにより測定対象T上において円周状に測定光L1を走査するようになっており、これによりZY平面の2次元断層画像が計測可能となっている。さらに、光走査部42内の図示しないモータによりプローブ40の先端が測定光L1の走査円が形成する平面に対して垂直な方向Xに進退走査することにより、XYZの3次元断層画像の計測が可能となっている。また、プローブ40は、図示しない光コネクタにより光ファイバFBに対して着脱可能に取り付けられている。
【0046】
図2は図1の光立体構造画像化装置において走査手段の変形例を示す図である。
【0047】
勿論、プローブ先端形状や走査方向はこれに限る物ではなく、例えば、ファイバ先端側に図2に示すように、レンズL及びガルバノミラー等の高速走査ミラーMを配置した光送受部900を設け、高速走査ミラーMにより2次元走査を行ってもよいし、ステージ(図示せず)によって進退走査するように集光手段及び走査手段を構成してもよい。あるいは、測定対象をステージによって2次元的に走査してもよい。あるいは、これら光軸走査機構、および測定試料移動機構を組み合わせて構成してもよい。OCT装置の光軸走査は、このようにガルバノミラーを用いたものでも、ステージによって走査するタイプでも、どれでもよい。プローブの場合、偏向ミラーのみモータで回転させても、ファイバに固定して、ファイバ毎回転させてもよい。回転に限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いて線形走査させてもよい。
【0048】
測定対象Tからの反射光(あるいは後方散乱光)L3は、OCT干渉計30に導光され、OCT干渉計30にてサーキュレータ5bを介して光合分波部4に導光される。そして、この光合分波部4において測定光L1の反射光(あるいは後方散乱光)L3と参照光L2の戻り光L2aとを合波し干渉情報検出部70側に射出するようになっている。
【0049】
干渉情報検出部70は、光合分波部4により合波された測定光L1の反射光(あるいは後方散乱光)L3と参照光L2の戻り光L2aとの干渉光L5を、所定のサンプリング周波数で検出するものであり、干渉光L5の光強度を測定するInGaAsフォトディテクタ71aおよび71bと、InGaAsフォトディテクタ71aの検出値とInGaAsフォトディテクタ71bの検出値のバランス検波を行なう干渉光検出部72とを備えている。なお、干渉光L5は、光合分波部4において2分され、InGaAsフォトディテクタ71aおよび71bにおいて検出され、干渉光検出部72に出力される。干渉光検出部72は、OCT光源10の掃引トリガ信号Sに同期して、干渉光L5をフーリエ変換することにより、測定対象Tの各深さ位置における反射光(あるいは後方散乱光)L3の強度を検出する。
【0050】
CG画像生成部90は、干渉光検出部72により検出された測定対象Tの各深さ位置における反射光(あるいは後方散乱光)L3の強度を干渉情報の信号強度情報として光立体構造情報記憶手段としてのメモリ91に格納する。CG画像生成部90はメモリ91のほかに、信号処理部93、制御部94を備えて構成される。信号処理部93は、メモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する。制御部94は、信号処理部93を制御すると共に、OCT光源10発光制御を行うと共に、ミラー移動部85を制御する。
【0051】
図3は図1の信号処理部の構成を示すブロック図である。信号処理部93は、図3に示すように、光立体構造像生成部120、特定層抽出手段及びノイズ領域消去手段としての特定層抽出/ノイズ除去部121、欠落領域抽出手段としての欠落領域抽出部122、欠落領域範囲算出手段としての欠落領域範囲算出部123、関心領域分類手段としての関心領域分類部124、閾値/基準値格納部125、属性付加手段及び属性制御手段としての属性付加/制御部126及びコンピュータグラフィック画像構築手段としてのレンダリング部127を備えて構成される。
【0052】
光立体構造像生成部120は、メモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する。
【0053】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、連続した構造情報の範囲と所定の閾値とを比較することで、連続した構造情報の範囲と所定の閾値以上の場合には光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の特定層領域(例えば、基底膜領域、あるいは粘膜筋板領域)とすると共に、連続した構造情報の範囲と所定の閾値未満の場合にはノイズ領域として測定対象Tの構造情報のノイズ領域を抽出しこのノイズ領域を光立体構造像から除去する。
【0054】
欠落領域抽出部122は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出した特定層領域上において構造情報が欠落している欠落領域を抽出する。
【0055】
欠落領域範囲算出部123は、欠落領域抽出部122にて抽出した欠落範囲の大きさ、例えば面積を算出する。
【0056】
関心領域分類部124は、欠落領域範囲算出部123にて算出した欠落範囲の大きさを所定の範囲判定基準値と比較し、欠落領域を欠落範囲の大きさに応じた複数の関心領域(例えば、新生血管領域、微小癌浸潤領域、進行癌浸潤領域等)分類する。
【0057】
閾値/基準値格納部125は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて使用する所定の閾値、関心領域分類部124にて使用する範囲判定基準値等を格納している。
【0058】
属性付加/制御部126は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域に属性を付加・設定する。
【0059】
レンダリング部127は、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域の構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を生成する。なお、レンダリング部127は、属性付加/制御部126に付加・設定された特定層領域及び関心領域の属性に基づき、特定層領域及び関心領域を識別可能にコンピュータグラフィック画像を構築する。すなわち、レンダリング部127は、特定層領域及び関心領域の属性に基づき、例えば異なる色付け処理、あるいは強調処理を実行し光立体構造CG画像等のコンピュータグラフィック画像を構築する。なお、レンダリング部127は構築したコンピュータグラフィック画像をモニタ100に出力するようになっている。
【0060】
次に、このように構成された本実施形態の光立体構造画像化装置1の作用を図4のフローチャートを用いて説明する。図4は図1の光立体構造画像化装置の3次元CG画像生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図4に示すように、制御部94は、光立体構造像生成部120にてメモリ91に格納された干渉情報の信号強度情報に基づいて測定対象Tの構造情報からなる光立体構造像を生成する(ステップS1)。なお、光立体構造像生成部120は、連続性の判定に適した大きさ以下の高周波のノイズを除去するため、ローパスフィルタ、あるいは平均化処理などのノイズ除去手段を行う。
【0062】
次に、制御部94は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて閾値/基準値格納部125からの所定の閾値に基づいて、光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の層構造の構造情報を抽出する(ステップS2)。
【0063】
さらに、制御部94は、特定層抽出/ノイズ除去部121にて閾値/基準値格納部125からの所定の閾値に基づいて、測定対象Tの干渉情報の信号強度情報のノイズ情報を抽出しこのノイズ情報を光立体構造像から除去する(ステップS3)。
【0064】
このステップS2及びS3の処理の詳細について、図5ないし図7を用いて説明する。図5は図3の特定層抽出/ノイズ除去部にて光立体構造像より特定層を抽出すると共に光立体構造像のノイズを除去する具体的な手順の一例を説明するための図であり、図6は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された特定層の投影図である。
【0065】
図5(A)において、例えば、生体における食道は、上層から、粘膜表面150、薄い上皮層151、強散乱の基底膜152、やや強い散乱の粘膜固有層153、やや低散乱の粘膜筋板154、強散乱の粘膜下層155、筋層(不図示)というような層構造を有している。
【0066】
癌が上皮層151に発生すると、上皮層151の厚みが増大し上皮層151に肥厚が現れる。そして癌はまず基底膜152を破り粘膜固有層153に浸潤し、さらに進行すると粘膜筋板154、粘膜下層155、筋層へと浸潤深さが深くなる。癌の浸潤有無を見分けるために、基底膜152より下に浸潤しているかどうかの見極めが重要となる。
【0067】
図5(A)に示す食道の粘膜組織を光立体構造画像化装置1によりOCT計測を行うと、光立体構造画像化装置1は、図5(B)のような干渉情報の信号強度情報を得ることができる。なお図5(B)においては説明を簡略化するため、食道の積層の深さ方向を有する断面における、粘膜表面150、上皮層151、基底膜152の干渉情報の信号強度情報である粘膜表面強度情報150a、上皮層強度情報151a、基底膜強度情報152aを模式的に示している。
【0068】
図5(A)に示すように、例えば上皮層151には毛細血管156等があるために、図5(B)に示すように、上皮層強度情報151aには毛細血管156に応じた毛細血管強度情報156aが検出される。この毛細血管強度情報156aはOCT計測時に下層に対して影となり基底膜強度情報152aには強度情報が欠落した欠落部分158aが発生する。さらに、上皮層強度情報151aには、ノイズ成分157aが発生する場合もある。
【0069】
このため、特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS2にて干渉情報の信号強度情報より、粘膜表面150、上皮層151、基底膜152の構造情報である、粘膜表面構造情報150b、上皮層構造情報151b、基底膜構造情報152bを抽出する。
【0070】
これらの構造情報を抽出した場合には、図5(C)に示すように上皮層構造情報151b内に毛細血管あるいはノイズによる小さな領域の構造情報156b、157bを抽出すると共に、基底膜構造情報152bにおいては毛細血管等により影となる欠落した欠落領域158bを抽出する。
【0071】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS2において、連続した構造情報の範囲の大きさ(図5(C)の場合は連続した構造情報の長さ)と閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値とを比較することで、連続した構造情報の範囲の大きさが所定の閾値以上の場合には光立体構造像生成部120より構築された光立体構造像の特定層領域である粘膜表面150、上皮層151、基底膜152を抽出する。なお、欠落領域158bは上皮層151と共に抽出される。
【0072】
さらに、特定層抽出/ノイズ除去部121は、ステップS3において、連続した構造情報の範囲の大きさがと所定の閾値未満の場合にはノイズ領域として測定対象Tの構造情報のノイズ領域を抽出する。そして、特定層抽出/ノイズ除去部121は、このノイズ領域を光立体構造像から除去する。すなわち、このステップS3の処理により、特定層抽出/ノイズ除去部121は、図5(C)に示した小さな領域の構造情報156b、157bをノイズ領域として光立体構造像から除去する。
【0073】
このようなステップS2、S3の処理により、特定層抽出/ノイズ除去部121は、図5(D)のように、構造情報156b、157bからなるノイズ領域を除去した、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152Aを抽出する。なお、欠落領域158Aは上皮層領域151Aと共に抽出される。
【0074】
以上、説明の簡略化のため、図5においては2次元断面像を用いて説明したが、特定層抽出/ノイズ除去部121は、具体的には、上記ステップS2、S3の処理を光立体構造像全体に対して実行する。
【0075】
すなわち、特定層抽出/ノイズ除去部121は、まず、深さ方向に向かって干渉情報の信号強度情報の高くなる点(抽出点)を抽出する。これを3次元像全体に対して行う。
【0076】
抽出点は、隣接している抽出点をまとまることで、いくつかの抽出領域を形成する。それぞれの抽出領域毎に、特定層抽出/ノイズ除去部121は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とそれ以外の構造物(例えば、構造情報156b、157b:図5(C)参照))とを分離する。
【0077】
そして、特定層抽出/ノイズ除去部121は、それぞれの抽出領域を、上面から見た図6に示すような投影図170において、投影図170の面積(連続した構造情報の範囲の大きさ)がある一定面積(閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値)以上の場合は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とし、それ以外(例えば、構造情報156b、157b:図5(C)参照)はノイズ領域と見なして除去する。
【0078】
図4に戻り、次に、制御部94は、欠落領域抽出部122にて例えば図6に示した基底膜領域152Aの投影図170上に発生した複数の欠落領域158Aを抽出する(ステップS4)。
【0079】
次に、制御部94は、欠落領域範囲算出部123において欠落領域抽出部122にて抽出した欠落領域158Aの大きさ、例えば面積を算出する(ステップS5)。
【0080】
そして、制御部94は、関心領域分類部124において欠落領域範囲算出部123にて算出した欠落領域158Aの大きさを閾値/基準値格納部125からの所定の範囲判定基準値と比較し、欠落領域158Aを欠落範囲の大きさに応じた複数の関心領域(例えば、新生血管領域、微小癌浸潤領域、進行癌浸潤領域等)に分類する(ステップS6)。
【0081】
具体的には、関心領域分類部124は、投影図17の内部にある欠落領域158Aに対して、例えばその直径に応じたクラスの関心領域に分類する。例えば、関心領域分類部124は、径10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)、径10ミクロン以上200ミクロン未満を関心領域B(例えば、新生血管領域)、径200ミクロン以上1mm未満を関心領域C(例えば、微小浸潤領域)、径1mm以上を関心領域D(例えば、進行浸潤領域)等に分類する。
【0082】
次に、制御部94は、属性付加/制御部126において特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)及び関心領域分類部124により分類された各関心領域に属性を付加・設定する(ステップS7)。例えば色属性を特定層領域及び各関心領域に付加・設定する。
【0083】
そして、制御部94は、レンダリング部127において光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像、特定層抽出/ノイズ除去部121にて抽出された特定層領域及び関心領域分類部124により分類された関心領域の構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を生成する(ステップS8)。なお、レンダリング部127は、属性付加/制御部126に付加・設定された特定層領域及び関心領域の属性に基づき、特定層領域及び関心領域を識別可能にコンピュータグラフィック画像を構築する。すなわち、レンダリング部127は、特定層領域及び関心領域の属性に基づき、例えば異なる色付け処理、あるいは強調処理を実行しコンピュータグラフィック画像を構築する。
【0084】
そして、制御部94は、レンダリング部127にて構築したコンピュータグラフィック画像をモニタ100に出力し、モニタ100にコンピュータグラフィック画像を表示させる(ステップS9)。
【0085】
上記のステップS6〜S8の処理を以下の実施例1〜にて具体的に説明する。
【0086】
<実施例1>
図7は実施例1における図3の属性付加/制御部による特定層からの関心領域Aの消去を説明する図であり、図8は実施例1における図3のレンダリング部により生成されるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。
【0087】
図5及び図6にて説明した基底膜領域152A上の欠落領域158bの場合は、関心領域分類部124は、ステップS6にて欠落領域158bを例えば10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)と分類する。
【0088】
属性付加/制御部126は、ステップS7にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図7に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158b)を消去する。
【0089】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図8に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去されることとなる。
【0090】
<実施例2>
図9は図5の手順の実施例2を説明するための図であり、図10は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例2における特定層の投影図である。また、図11は図3の属性付加/制御部による特定層での関心領域の実施例2における処理を説明する図であり、図12は図3のレンダリング部により生成される実施例2におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。ここで、図9(A)〜(D)での処理内容は図6(A)〜(D)での処理内容と同じであるので、説明は省略する。
【0091】
図9に示すように、基底膜領域152Aに癌が浸潤し基底膜領域152Aの一部が喪失した場合は、関心領域分類部124は、ステップS6にて喪失による欠落領域180bを例えば径1mm以上を関心領域D(例えば、進行浸潤領域)と分類する。なお、関心領域分類部124は、図9(A)〜(D)での欠落領域158bについては実施例1と同様に例えば10ミクロン未満を関心領域A(例えば、正常な毛細血管領域orノイズ)と分類する。
【0092】
特定層抽出/ノイズ除去部121は、それぞれの抽出領域を、上面からの見た図10に示すような投影図170において、投影図170の面積(連続した構造情報の範囲の大きさ)がある一定面積(閾値/基準値格納部125に格納されている所定の閾値)以上の場合は、連続性のある層(例えば、粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)とし、それ以外(例えば、構造情報156b、157b)は、ノイズ領域と見なして除去する。
【0093】
属性付加/制御部126は、投影図170にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図11に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158)を消去すると共に、欠落領域180bは径1mm以上の関心領域D(進行浸潤領域)として基底膜領域152A上に残す(ステップS7)。
【0094】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図12に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に例えば識別可能な色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去され、基底膜領域152A上には例えば識別可能な色属性が付加された関心領域D(欠落領域180b)としての進行浸潤領域がレンダリングされることとなる。
【0095】
<実施例3>
図13は図3の特定層抽出/ノイズ除去部により抽出された実施例3における特定層の投影図である。また、図14は図3のレンダリング部により生成される実施例3におけるコンピュータグラフィック画像の一例を示す図である。
【0096】
食道の早期癌の場合、新生血管は、粘膜下層から基底膜を通り抜けて粘膜上皮層に伸び、IPCL(上皮乳頭血管ループ)を形成する。癌が進行すると、基底膜をやぶり、癌が粘膜下層に入り込む。新生血管は、癌に向かってランダムな方向で形成される。通常の内視鏡検査では、表面から透けて見える新生血管の密度分布や形状から癌のグレードを判定する手法が行われているが粘膜表面近くまで来ている新生血管を見ているにすぎない。
【0097】
実施例3では、生体内部の新生血管の分布の見極めや、新生血管による基底膜の状態を観察するための実施例である。
【0098】
関心領域分類部124は、ステップS6にて欠落領域を例えば関心領域A〜Dに分類する。
【0099】
属性付加/制御部126は、投影図170にて関心領域Aに対しては基底膜領域152Aと同じ属性を付加することで、図13に示すように、基底膜領域152Aから関心領域A(欠落領域158)を消去すると共に、欠落領域190bは径10ミクロン以上200ミクロン未満の関心領域B(新生血管領域)、欠落領域191bは径200ミクロン以上1mm未満の関心領域C(微小浸潤領域)、欠落領域192bは径1mm以上の関心領域D(進行浸潤領域)として基底膜領域152A上に残す(ステップS7)。
【0100】
これにより、レンダリング部127は、ステップS8にて図14に示すように、光立体構造像生成部120にて生成された光立体構造像に例えば識別可能な色属性が付加された特定層領域(粘膜表面領域150A、上皮層領域151A、基底膜領域152A)をレンダリングしてコンピュータグラフィック画像140を生成する。この場合のコンピュータグラフィック画像140は、基底膜領域152Aからは欠落領域158が消去され、基底膜領域152A上には例えば識別可能な色属性が付加された関心領域B〜D(欠落領域190b、欠落領域191b、欠落領域192b)としての新生血管領域、微小浸潤領域、進行浸潤領域がレンダリングされることとなる。
【0101】
図15は図3の属性付加/制御部が生成する新生血管の分布像を示す図であり、図16は図15の新生血管の分布像を基底膜領域に重畳させた場合の図であり、さらに図17は図15の新生血管の分布像をレンダリングしたコンピュータグラフィック画像を示す図である。
【0102】
なお、実施例3の属性付加/制御部126は、図15に示すように、新生血管の分布を分布像200として生成し、この新生血管の分布像200を図16に示すように、基底膜領域152Aの投影図170に重畳させることができる。これによりレンダリング部127は、基底膜上での新生血管の分布状態が容易に認識可能な図17に示すようなコンピュータグラフィック画像140を生成することが可能となり、癌診断をより確実に行うことができる。
【0103】
この実施例3では、特に基底膜の構造から、新生血管の密度、浸潤の状態をわかりやすく表示できる。浅い領域にある構造物による深部の不明瞭化領域においても、層構造の抽出がより確実に行われる。また、眼内の新生血管が原因となっている加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、血管新生緑内障の診断にも有効である。この場合、基底膜のかわりに網膜を抽出して観察する。
【0104】
以上のように、本実施形態及びその実施例1〜3において説明したように、特に以下のような効果を得ることができる。
【0105】
(1)生体構造が病変により変化しても、特定の層を抽出しやすい。
【0106】
(2)浅い領域にある構造物による深部の不明瞭化領域においても、層構造の抽出がより確実に行われる。
【0107】
(3)癌による層構造の連続性の喪失を判別しやすい。
【0108】
このように本実施形態によれば、層構造を有する測定対象の構造情報から層領域の連続性が容易に識別でき、また浅い層領域にある構造物により深部の不明瞭化した層領域の構造情報を確実に抽出することできる。
【0109】
図18は内視鏡画像に図11の投影図に重畳した図である。本実施形態及びその実施例1〜3においては、プローブ40を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して、内視鏡画像観察とOCT計測を行う場合には、図18に示すように、レンダリング部127は、内視鏡画像300上に投影図170を半透明な状態で重畳させることができる。そして、レンダリング部127は、このような内視鏡画像300上で投影図170を半透明な状態で重畳させた画像をモニタ100に表示させることで、より癌診断を向上させることが可能となる。
【0110】
なお、癌のスクリーニングに公知のNBI(Narrow Band Imaging)と呼ばれる手法や公知のFICE(Flexible spectral Imaging Color Enhancement)と呼ばれる手法がある。これらは、青、緑の波長域を画像化することで、病変部の特徴を視認しやすくする手法である。このNBI/FICE画像に投影図170を半透明な状態で重畳させた画像をモニタ100に表示させるようにしてもよい。
【0111】
以上、本発明の光立体構造計測装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0112】
食道の基底膜を例として説明したが、他の消化管、例えば胃、小腸、大腸などでは、粘膜筋板を抽出すると、その浸潤をわかりやすく視認させる事ができる。あるいは、基底膜の存在する口腔、舌、咽頭、胃、小腸、大腸、胆管などの消化管や、鼻腔、喉頭、気管支などの呼吸器、膀胱、尿管、尿道などの泌尿器、子宮、膣などの生殖器、皮膚などや、層構造のある眼底など、特定の膜あるいは層の構造に異変をきたす組織であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1…光立体構造画像化装置、10…OCT光源、30…OCT干渉計、40…プローブ、70…干渉情報検出部、90…CG画像生成部、91…メモリ、93…信号処理部、94…制御部、100…モニタ、120…光立体構造像生成部、121…特定層抽出/ノイズ除去部、122…欠落領域抽出部、123…欠落領域範囲算出部、124…関心領域分類部、125…閾値/基準値格納部、126…属性付加/制御部、127…レンダリング部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置において、
前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶手段と、
前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出手段と、
前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出手段と、
前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出手段と、
前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類手段と、
を備えたことを特徴とする光立体構造計測装置。
【請求項2】
前記特定層抽出手段は、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した領域が前記所定の範囲未満の場合、該領域をノイズ領域として前記光立体構造情報より消去するノイズ領域消去手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光立体構造計測装置。
【請求項3】
前記光立体構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を構築するコンピュータグラフィック画像構築手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光立体構造計測装置。
【請求項4】
前記特定層領域及び前記関心領域が識別可能な属性を前記特定層領域及び前記関心領域に付加する属性付加手段を備え、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して、少なくとも前記属性が付加された前記特定層領域及び前記関心領域を有する前記コンピュータグラフィック画像を構築することを特徴とする請求項3に記載の光立体構造計測装置。
【請求項5】
前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記測定対象の積層の深さ方向より前記特定層領域を投影した投影画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することを特徴とする請求項4に記載の光立体構造計測装置。
【請求項6】
前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して光立体構造画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することを特徴とする請求項4または5に記載の光立体構造計測装置。
【請求項7】
前記属性付加手段は、少なくとも前記所定の範囲判定基準値うちの最小範囲判定基準値未満の前記関心領域の属性を前記特定層領域の属性とする属性制御手段を有することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項8】
前記属性制御手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記最小範囲判定基準値より大きな値の複数の範囲判定基準値に基づき、異なる複数の前記属性を前記関心領域分類手段が分類した前記関心領域毎に付加することを特徴とする請求項7に記載の光立体構造計測装置。
【請求項9】
前記測定対象は生体粘膜組織であり、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの第1の範囲判定基準値以上で、かつ前記第1の範囲判定基準値より大きい第2の範囲判定基準値未満の前記関心領域を新生血管領域に分類することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項10】
前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記第2の範囲判定基準値以上の前記関心領域を癌浸潤領域に分類することを特徴とする請求項9に記載の光立体構造計測装置。
【請求項11】
前記関心領域分類手段が判定した前記新生血管領域の分布を前記特定層領域上に新生血管分布像として生成する新生血管分布像生成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9または10に記載の光立体構造計測装置。
【請求項12】
前記特定層領域は、前記生体粘膜組織の基底膜領域及び粘膜筋板領域の少なくともいずれか一方の領域を含むことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項13】
層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置の構造情報処理方法において、
前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶ステップと、
前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出ステップと、
前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出ステップと、
前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出ステップと、
前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類ステップと、
を備えたことを特徴とする光立体構造計測装置の構造情報処理方法。
【請求項1】
層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置において、
前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶手段と、
前記光立体構造情報記憶手段に格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出手段と、
前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出手段と、
前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出手段と、
前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類手段と、
を備えたことを特徴とする光立体構造計測装置。
【請求項2】
前記特定層抽出手段は、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した領域が前記所定の範囲未満の場合、該領域をノイズ領域として前記光立体構造情報より消去するノイズ領域消去手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光立体構造計測装置。
【請求項3】
前記光立体構造情報をレンダリング処理してコンピュータグラフィック画像を構築するコンピュータグラフィック画像構築手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光立体構造計測装置。
【請求項4】
前記特定層領域及び前記関心領域が識別可能な属性を前記特定層領域及び前記関心領域に付加する属性付加手段を備え、前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して、少なくとも前記属性が付加された前記特定層領域及び前記関心領域を有する前記コンピュータグラフィック画像を構築することを特徴とする請求項3に記載の光立体構造計測装置。
【請求項5】
前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記測定対象の積層の深さ方向より前記特定層領域を投影した投影画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することを特徴とする請求項4に記載の光立体構造計測装置。
【請求項6】
前記コンピュータグラフィック画像構築手段は、前記光立体構造情報をレンダリング処理して光立体構造画像を前記コンピュータグラフィック画像として構築することを特徴とする請求項4または5に記載の光立体構造計測装置。
【請求項7】
前記属性付加手段は、少なくとも前記所定の範囲判定基準値うちの最小範囲判定基準値未満の前記関心領域の属性を前記特定層領域の属性とする属性制御手段を有することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項8】
前記属性制御手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記最小範囲判定基準値より大きな値の複数の範囲判定基準値に基づき、異なる複数の前記属性を前記関心領域分類手段が分類した前記関心領域毎に付加することを特徴とする請求項7に記載の光立体構造計測装置。
【請求項9】
前記測定対象は生体粘膜組織であり、前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの第1の範囲判定基準値以上で、かつ前記第1の範囲判定基準値より大きい第2の範囲判定基準値未満の前記関心領域を新生血管領域に分類することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項10】
前記関心領域分類手段は、前記所定の範囲判定基準値うちの前記第2の範囲判定基準値以上の前記関心領域を癌浸潤領域に分類することを特徴とする請求項9に記載の光立体構造計測装置。
【請求項11】
前記関心領域分類手段が判定した前記新生血管領域の分布を前記特定層領域上に新生血管分布像として生成する新生血管分布像生成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9または10に記載の光立体構造計測装置。
【請求項12】
前記特定層領域は、前記生体粘膜組織の基底膜領域及び粘膜筋板領域の少なくともいずれか一方の領域を含むことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の光立体構造計測装置。
【請求項13】
層構造を有する測定対象の積層の深さ方向に測定光を照射し、かつ前記測定光の光軸を2次元走査して前記測定対象の光立体構造情報を取得する光立体構造計測装置の構造情報処理方法において、
前記光立体構造情報を格納する光立体構造情報記憶ステップと、
前記光立体構造情報記憶ステップにて格納された前記光立体構造情報の情報値を所定の閾値と比較し、前記所定の閾値以上の前記光立体構造情報の情報値が連続した所定の範囲以上の領域を前記測定対象の特定層領域として抽出する特定層抽出ステップと、
前記特定層領域上にて、前記光立体構造情報の情報値が前記所定の閾値未満の領域を欠落領域として抽出する欠落領域抽出ステップと、
前記欠落領域の範囲の大きさを算出する欠落領域範囲算出ステップと、
前記欠落領域の範囲の大きさを複数の所定の範囲判定基準値と比較し、前記欠落領域を複数種類の関心領域に分類する関心領域分類ステップと、
を備えたことを特徴とする光立体構造計測装置の構造情報処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図18】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図18】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−220669(P2010−220669A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68557(P2009−68557)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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