説明

光結合器

【課題】 光信号の複数の伝搬モードによるモード分散を抑え、集積回路素子間の光配線又は光ファイバ通信における伝送容量を向上させる。
【解決手段】 受光素子と、前記受光素子に入力信号光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信や光配線の分野で使用される、受光素子を用いた光結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の分野において、信号で変調された光信号を電気信号に変換する場合、一般にフォトダイオード(受光素子)を用いた光結合器が用いられる。
【0003】
また、近年、半導体からなる集積素子の分野では、高速・高密度化への進展が著しく、従来の電気的な配線による相互接続では、信号の遅延、減衰、干渉等により、十分な特性が期待できなくなることが問題となっている。この問題は、IOボトルネックといわれ、これを解決するために光インターコネクション技術が注目されている。光インターコネクション技術は、通信機器相互間や通信機器内のボード間にとどまらず、一つのボード内の集積回路素子間でも行うことが検討されている。従来、ボード内光インターコネクションを実現するための光結合器として、特許文献1に開示されたものは、いわゆる光ピンと呼ばれるものであり、光ファイバを加工した光ピンを回路付光導波路基板に形成された穴に差し込んで使用するものである。この方式では、回路付光導波路基板に沿って導波路を導波してきた信号光を、差し込まれた光ピンの斜面にて反射させ、回路付光導波路基板に垂直な方向に取り出し、プレーナー型(planar type)のフォトダイオードによって受光して電気信号に変換し、又は、回路付光導波路基板に垂直な方向に面発光型レーザ(VCSEL)から出射された信号光を、差し込まれた光ピンの斜面にて反射させ、回路付光導波路基板に沿って導波路を導波させるものである。
【0004】
【特許文献1】:特開2004−085913号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトダイオードを用いて光信号を電気信号に変換する場合、信号光に大きなモード分散があると、光源からフォトダイオードへの信号光の到達時間にばらつきを生じ、伝送容量が充分に確保できない場合がある。
【0006】
特に、基板内の光配線に使用されるマルチモード光導波路では、導波路を伝搬する複数のモードの伝搬角度(コア−クラッド界面での全反射角度)の差によって生じるモード分散により、受光素子への信号到達時間のばらつき(スキュー)が著しくなり、伝送容量が十分に確保できない。
【0007】
このため、光導波路としてシングルモード光導波路を採用したり、屈折率分布型(GRIN)のマルチモード光導波路を採用することも考えられる。しかし、前者の場合には発光素子とシングルモード導波路との光結合が難しくなるという難点がある。また、後者についても、屈折率の制御が難しく、構造が複雑にならざるを得ないという難点がある。
【0008】
また、光ファイバ通信に受光素子を使用する場合にも、同様にモード分散により伝送容量が制限されることは知られている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決することのできる光結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本第1の発明は、受光素子と、前記受光素子に入力信号光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させることを特徴とする光結合器である。
【0011】
また、本第2の発明は、受光素子と、前記受光素子に入力信号光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、シングルモード光導波路である受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させることを特徴とする光結合器である。
【0012】
また、本第3の発明は、受光素子と、マルチモード光導波路と、前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させることを特徴とする光結合器である。
【0013】
また、本第4の発明は、受光素子と、マルチモード光導波路と、前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、前記マルチモード光導波路の比屈折率差よりも小さい比屈折率差を有するコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させることを特徴とする光結合器である。
【0014】
また、本第5の発明は、受光素子と、マルチモード光導波路と、前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、前記光結合手段は、コアと該コアを囲むクラッドとからなるシングルモード光導波路である受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させることを特徴とする光結合器である。
【0015】
また、本第6の発明は、上記本第3乃至第5のいずれか1つの発明において、前記マルチモード光導波路を伝搬する光を前記受光素子に向かって反射する反射端面が前記マルチモード光導波路に形成されていることを特徴とする光結合器である。
【0016】
また、本第7の発明は、上記第6の発明において、前記受光用光伝送路が、前記マルチモード光導波路の前記反射端面によって反射された光が入射されるように配置されていることを特徴とする光結合器である。
【0017】
また、本第8の発明は、上記本第7の発明において、前記受光用光伝送路が、前記受光素子を搭載する受光素子搭載基板上に固定されていることを特徴とする光結合器である。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の本第1の発明の構成によれば、前記光結合手段は、光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させるものとなっている。このため、受光用光伝送路に入射した入力信号光のうち、基本モードを含む伝搬角度が小さい低次モード光は受光用光伝送路を導波して受光素子に到達するが、該低次モード光以外の伝搬角度が大きい高次モード光は、前記クラッドに放出され、受光素子に到達する強度が低減される。したがって、入力信号光に著しいモード分散が生じている場合であっても、主として基本モードを含む低次モードの光が受光素子により受光されるので、光源から受光素子への信号光の到達時間のばらつきが低減され、伝送容量を向上させることができる。
【0019】
また、上記構成の本第2の発明の構成によれば、前記光結合手段は、シングルモード光導波路である受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させるものとなっている。このため、受光用光伝送路に入射した入力信号光により、受光用光伝送路のコア内に単一の導波モードのみが誘起され、これが受光素子に到達する。したがって、入力信号光に著しいモード分散が生じている場合であっても、主として基本モードが受光素子により受光されるので、光源から受光素子への信号光の到達時間のばらつきが低減され、伝送容量を向上させることができる。
【0020】
また、上記構成の本第3の発明の構成によれば、前記光結合手段は、光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させるものとなっている。このため、前記マルチモード光導波路を伝搬して受光用光伝送路に入射したマルチモードの入力信号光のうち、基本モードを含む伝搬角度が小さい低次モード光は受光用光伝送路を導波して受光素子に到達するが、該低次モード光以外の伝搬角度が大きい高次モード光は、前記クラッドに放出され、受光素子に到達する強度が低減される。したがって、マルチモード光導波路を導波する光に著しいモード分散が生じていても、基本モードを含む低次モードのみが受光素子により受光されるので、光源から受光素子への信号光の到達時間のばらつきが低減され、伝送容量を向上させることができる。
【0021】
また、本第4の発明の構成によれば、前記光結合手段は、前記マルチモード光導波路の比屈折率差よりも小さい比屈折率差を有するコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させるものとなっている。比屈折率差の小さい光伝送路では、コア−クラッド界面での全反射角度が小さいために誘起されるモードの伝搬角度差が小さくなる。このため、前記マルチモード光導波路を伝搬して受光用光伝送路に到達したマルチモードの入力信号光によって、受光用光伝送路のコアに誘起されるモードは、前記マルチモード光導波路のコア中よりも伝搬角度差が小さいものとなり、これが受光素子に到達する。したがって、マルチモード光導波路を導波する光に著しいモード分散が生じていても、伝搬角度差が小さいモードの光が受光素子により受光されるので、光源から受光素子への信号光の到達時間のばらつきが低減され、伝送容量を向上させることができる。
【0022】
また、本第5の発明によれば、前記光結合手段は、コアと該コアを囲むクラッドとからなるシングルモード光導波路である受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させるものとなっている。このため、受光用光伝送路に到達したマルチモードの入力信号光により、受光用光伝送路のコア内に単一の導波モードのみが誘起され、これが受光素子に到達する。したがって、マルチモード光導波路を導波する光に著しいモード分散が生じていても、主として基本モードが受光素子により受光されるので、光源から受光素子への信号光の到達時間のばらつきが低減され、伝送容量を向上させることができる。
【0023】
また、上記第3乃至第5の発明では、光導波路としてマルチモード光導波路を使用しているので、基板に実装された集積回路素子間の光配線に本発明を適用する場合において、光源である垂直キャビティ型半導体レーザ(VCSEL)等との光結合の容易性を維持しつつ、マルチモード光導波路のモード分散による、信号到達時間のばらつきを低減し、伝送容量を高めることが可能である。
【0024】
また、本第6の発明の構成では、上記第3乃至第5のいずれか1つの発明において、
前記マルチモード光導波路を伝搬する光を前記受光素子に向かって反射する反射端面が前記マルチモード光導波路に形成されている。このため、マルチモード光導波路内の光の伝搬方向と受光素子に入射する光の光軸とが交差する構成となり、光路を変換することができるので、基板に実装された集積回路素子間の光配線に本発明を適用する場合に適した構成となる。
【0025】
また、本第7の発明の構成では、上記第6の発明において、前記受光用光伝送路が、前記マルチモード光導波路の前記反射端面によって反射された光が入射されるように配置されている。本第7の発明では、反射端面によって光路を変換された光が受光用光伝送路に入射する構成となるので、基板に実装された集積回路素子間の光配線に本発明を適用する場合に、さらに適した構成となる。
【0026】
また、本第8の発明の構成では、上記本第7の発明において、
前記受光用光伝送路が、前記受光素子を搭載する受光素子搭載基板上に固定されている。このため、受光素子とマルチモード光導波路との、受光用光伝送路を介した位置あわせが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態例)
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態例に係る光結合器の断面図を示したものである。本第1の実施形態例に係る光結合器1は、電気配線基板上に実装されたLSI等の集積回路素子の光配線に用いられる光結合器であって、受光素子2と、受光素子2を配置固定する電気配線基板3と、マルチモード光導波路4と、マルチモード光導波路4を伝搬してきた光を入射し、受光素子2の方に導波する受光用光伝送路5とを有する。
【0029】
受光素子2は、プレーナ型(面受光型)のもので、受光素子搭載基板6に固定された状態で、受光面が受光用光伝送路5に対向するように電気配線基板3上に配置固定されている。
【0030】
電気配線基板3は、絶縁層3aの片面又は両面に所定の導体パターン層3bを形成してなるもので、受光素子2を固定する位置に対応する部分に空孔3cが形成されている。電気配線基板3としては、絶縁層3aとしてガラスエポキシのような剛体性の材料を使用したもののほか、ポリイミド等を使用したフレキシブル基板を使用することも可能である。なお、絶縁層3aは必須のものではなく、たとえばマルチモード光導波路4上に所望の回路パターンを印刷した導体パターン層3bのみを備えるようにしてもよい。
【0031】
マルチモード光導波路4は、電気配線基板3の導体パターン層3bに沿って順次積層されたクラッド層4b、コア層4a、クラッド層4bからなるもので、エポキシ系樹脂からなる有機導波路である。コア層4aの屈折率がクラッド層4bの屈折率よりも大きくなるよう、適宜材料の配合が調整されている。なお、マルチモード光導波路4の材料としては、エポキシ系樹脂のほか、用途に応じてポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂等も使用可能である。
【0032】
マルチモード光導波路4における、電気配線基板3の空孔3cに対応する位置には、コア層4aを伝搬してきた光を受光素子2の方(図1の上方)に反射し、出射部4cから出射させるよう、マルチモード光導波路4の光軸に対して45度の傾きをもつ反射面4dが形成され、該反射面4d上には、反射率を高めるためにAu膜が形成されている。
【0033】
受光用光伝送路5は、エポキシ系樹脂の樹脂から形成されたコア5aとクラッド5bとからなる。受光用光伝送路5は、マルチモード光導波路4を導波し、反射面4dで反射して出力部4cから出射した信号光がコア5aに入射するような、電気配線基板3の空孔3c内の位置でマルチモード光導波路4上に固定されている。なお、受光用光伝送路5の材料としては、エポキシ系樹脂に限るものではなく、用途に応じてポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂等も使用可能である。
【0034】
また、受光用光伝送路5のコア5aの先端部は、上記信号光の伝送方向に向かってその径が小さくなるよう、たとえばテーパー形状となっている。そして、受光素子搭載基板6に固定された受光素子2の受光面は上記受光用伝送路5のコア径の小さい側の端部に対向し、その出射光を受光するように位置合わせされている。この状態で、受光素子搭載基板6は半田7を介して空孔3cの周囲にて電気配線基板3の導体パターン層3bに固定されている。さらに、受光素子搭載基板6、受光用光伝送路5、半田7、空孔3cで囲まれた空隙部には、光透過性樹脂8が充填されている。
【0035】
なお、受光素子搭載基板6の表面には所定の回路パターンが形成されており、半田7を介して電気配線基板3の導体パターン層3bと電気的に接続されている。
【0036】
上記構成の光結合器は、たとえば次のように作製される。まず第1に、絶縁層3aの片面又は両面に所定の回路を構成する導体パターン層3bを形成した電気配線基板3の一方の面に、エポキシ系樹脂をスピンコートし、クラッド層4b、コア層4aを形成する。フォトリソグラフィによりコア層4aをパターニングした後、さらにエポキシ樹脂をスピンコートしてクラッド層4bを刑成し、マルチモード光導波路4を完成する。そして、ダイシング加工により、マルチモード光導波路4の所定の位置に斜面(反射面)4dを形成し、スパッタリングでAuを蒸着する。また、上記所定の位置に対応した電気配線基板3の部分は、レーザ加工及びエッチングにより、空孔3cを形成する。かくして、電気配線基板3とマルチモード光導波路4とからなる光回路基板9が構成される。
【0037】
一方、受光用光伝送路5は、図2に示すように、型枠10の内部にクラッド5bとなる樹脂材を充填し、これが未硬化の状態でテーパー状の先端部を有する型材11を押し込み、クラッド樹脂を硬化させ、クラッド5bを形成する。そして、型材11を除去し、コアとなる樹脂材を充填して硬化させ、コア5aを形成する。しかるのち、型枠10を除去することにより、受光用光伝送路5を得る。
【0038】
このようにして得られた受光用光伝送路5を、コア径の小さい方の端部が上部となるように電気配線基板3の空孔3c内に配置し、マルチモード光導波路4に光を入射させながら、反射面4dで反射され出力部4cから出力される光がコア5aに入射するように位置合わせして接着剤等により固定する。
【0039】
次に、受光素子2を受光素子搭載基板6に固定し、受光素子搭載基板を半田(半田ボール)7を介して受光面を受光用光伝送路5のコア5aの端部に対向するように配置し、加熱して半田ボールを溶融・凝固させることによって、受光素子2を固定する。
【0040】
最後に、半田7の隙間から、受光素子搭載基板6、受光用光伝送路5、半田7、空孔3cで囲まれた空隙部に光透過性樹脂8を注入し、固化させる。
【0041】
以上のように構成された本第1の実施形態に係る光結合器において、不図示の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL)からマルチモード光導波路に光結合し、伝搬する信号光12は、マルチモード光導波路内を複数のモードで伝搬する。これら複数のモードは、コア層4aとクラッド層4bとの界面で異なった角度での全反射を繰り返しながら伝搬するため、光源たる半導体レーザ素子から受光素子にまで到達するのに要する時間がそれぞれ異なる。
【0042】
このようなマルチモード信号光12は、反射面4dにて反射し、出力部4cから受光用光伝送路に結合する。このとき、受光用光伝送路のコア5aの先端部は、光の進行方向に向かってコア径が小さくなるテーパー形状となっているので、伝搬光のうち、高次モードの光12bは、図1に示すようにクラッドに放射され、主として基本モードを含む伝搬角度が小さい低次モードの光12aがコア5aを導波伝搬して他端に到達し、受光素子2に入射する。このため、伝搬角度が大きいためにコアとクラッドとの間でより多くの全反射を繰り返して伝搬する高次モード光12bが受光素子に到達する強度が低減されるので、光源たる半導体レーザ素子から受光素子にまで到達するのに要する時間のモードによるばらつきが低減されることになる。よって、伝送容量を向上させることができる。
【0043】
なお、受光用光伝送路5のコア5aの形状としては、図1又は図2のようなものとしたが、図3に示すように、光の伝送方向に向かって径が減少し、その先端に、シングルモード伝送路部分5a1を有するものとしてもよい。このような構成によれば、受光用光伝送路5を介して基本モードの光を受光素子に到達させ、基本モード以外の高次モードの到達強度を低くすることができるので、より好ましい。
【0044】
なお、図4は、本第1の実施形態例の第1の変形例に係る光結合器1’を示したものである。上記第1の実施形態例では、受光用光伝送路5は、電気配線基板3の空孔3cに露出したマルチモード光導波路4上に固定されている。これに対し、図4に示す第1の変形例では、受光用光伝送路5が、受光素子2を埋め込むように受光素子搭載基板6上に一体化されている。このような構成は、受光素子とマルチモード光伝送路との位置あわせ作業が簡略化されるという利点を有する。
【0045】
また、図5は、本第1の実施形態例の第2の変形例に係る光結合器1’’を示したものである。上記第1の実施形態例では、電気配線基板3は、マルチモード光導波路4の上側において一つの絶縁層3aの両面に導体パターン層3b、3bを形成したものであったが、図5に示す第2の変形例では、電気配線基板3は、マルチモード光導波路4の上側に複数の絶縁層3aと所定の導体パターン層3bとが交互に積層されるとともに、マルチモード光導波路4の下方にも絶縁層3aと導体パターン層3bとを有している。これにより、複雑な電気回路パターンを形成している。その結果、電気配線基板3は、第1の実施形態における電気配線基板(図1)よりも、マルチモード光導波路4の上側の領域において厚くなっている。本発明では、マルチモード光導波路4を導波し、反射面4dで受光素子2の方に反射した光が、受光用光伝送路5を介して受光素子の方に導波されるので、本第2の変形例のように、マルチモード光導波路4の出力部4cから受光素子2までの距離が大きくならざるを得ない場合であっても、基本モードを含む低次モードの光を、効率よく受光素子2に導くことができる。
【0046】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例を、図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態例と同一機能を有する各構成部については同一符号を付して示し、その重複説明は省略する。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施形態例に係る光結合器20を示したものである。本第2の実施形態例が第1の実施形態例と異なる特徴的部分は、受光用伝送路として、マルチモード光導波路4の比屈折率差よりも小さな比屈折率差を有する受光用光伝送路13を有する点にある。なお、図6に示されているように、受光用光伝送路13のコア13aは、光の進行方向に沿って一様な径を有している。
【0048】
受光用光伝送路13とマルチモード光導波路4とは、そのコアサイズはほぼ同一であるが、受光用光伝送路13の比屈折率差がマルチモード光導波路4のものよりも小さい点で異なっている。このため、受光用光伝送路13では、コア13aとクラッド13bとの界面における全反射可能角度が小さくなるので、本第2の実施形態例における受光用光伝送路13のコア13aを導波可能なモードの伝搬角度は、マルチモード光導波路4のコア層4aを導波するモードの伝搬角度の範囲でも小さいものに限定される。したがって、マルチモード光導波路4を導波し、反射面4dで反射され、出力部4cから出射する光により、受光用光伝送路13には、マルチモード光導波路4aを導波していたモードの伝搬角度の範囲の中でも、特に小さいモードが誘起される。このモードの光が、受光素子2に到達する。よって、マルチモード光導波路4のコア4aとクラッド4bとの間でより多くの全反射を繰り返して伝搬する伝搬角度が大きな高次モード光12bが受光素子2に到達する強度が低減されるので、光源たる不図示の半導体レーザ素子から受光素子2にまで到達するのに要する時間のモードによるばらつきが低減されることになる。したがって、本第2の実施形態例による光結合器を用いて、伝送容量を向上させることができる。
【0049】
(第3の実施形態例)
本発明の第3の実施形態例を、図7を用いて説明する。なお、第1の実施形態例と同一機能を有する各構成部については同一符号を付して示し、その重複説明は省略する。
【0050】
図7は、本発明の第3の実施形態例に係る光結合器30を示したものである。本第3の実施形態例が第1の実施形態例と異なる特徴的部分は、受光用伝送路として、シングルモード光導波路である受光用光伝送路13を有する点にある。シングルモード光導波路は、コア13aのサイズを、基本モード以外の高次モードがカットオフとなるようなサイズに選択することによって実現できることは周知の事項である。
【0051】
本第3の実施形態例では、受光用光伝送路14は、使用する光の波長に対してシングルモード導波路であるため、マルチモード光導波路4を導波し、反射面4dで反射され、出力部4cから出射する光により、受光用光伝送路14のコア14aには、基本モードのみが誘起され、主としてこの基本モードの光が受光素子2に到達する。このため、光源たる不図示の半導体レーザ素子から受光素子2にまで到達するのに要する時間のモードによるばらつきが低減されることになる。したがって、本第3の実施形態例による光結合器を用いて、伝送容量を向上させることができる。
【0052】
(第4の実施形態例)
本発明の第4の実施形態例を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の第4の実施形態例に係る光結合器40を示したものである。
【0053】
本発明の第4の実施形態に係る光結合器40は、受光素子搭載基板6に搭載された受光素子2と、受光素子2を埋め込むように受光素子搭載基板6上に一体化された受光用光伝送路15と、受光用光伝送路15に接続されたマルチモード光ファイバ(マルチモード光導波路)16とからなる。本第4の実施形態例では、受光用光伝送路15は、第1の実施形態例における受光用光伝送路5と同様、コア15aの径が、信号光の伝送方向に向かって小さくなるよう、たとえばテーパー形状となっている。また、本第4の実施形態例では、受光用光伝送路15とマルチモード光ファイバ16とは、光透過性の接着剤樹脂17によって、コア16aと15aとが調芯された状態で直接接合されている。
【0054】
以上のように構成された本第4の実施形態例に係る光結合器40では、不図示の光源(半導体レーザ素子など)からマルチモード光ファイバ16に光結合し、伝搬する信号光12は、マルチモード光ファイバ16内を複数のモードで伝搬する。これら複数のモードは、コア16aとクラッド16bとの界面で異なった角度での全反射を繰り返しながら伝搬するため、光源たる半導体レーザ素子等から受光素子にまで到達するのに要する時間がそれぞれ異なる。
【0055】
このようなマルチモード光12が受光用光伝送路15に結合するとき、受光用光伝送路15のコア15aの先端部は、光の進行方向に向かってコア径が小さくなるテーパー形状となっているので、伝搬光のうち、高次モードの光12bは、図8に示すようにクラッドに放射され、主として基本モードを含む低次モードの光12aがコア15aを導波伝搬して受光素子2に入射する。このため、コアとクラッドとの間でより多くの全反射を繰り返して伝搬する高次モード光12bが受光素子に到達する強度が低減されるので、光源から受光素子にまで到達するのに要する時間のモードによるばらつきが低減されることになる。よって、伝送容量を向上させることができる。
【0056】
なお、光の伝送方向に向かって径が減少するコア15aを有する受光用光伝送路15に代えて、第2の実施形態例で用いた受光用光伝送路13のように比屈折率差がマルチモード光ファイバ16のものよりも小さい受光用光伝送路を使用してもよいし、第3の実施形態例で用いた受光用光伝送路14のようにシングルモード光導波路である受光用光伝送路を使用してもよい。
【0057】
(第5の実施形態例)
本発明の第5の実施形態例を、図9を用いて説明する。図9は、本発明の第5の実施形態例に係る光結合器50を示したものである。
【0058】
本発明の第5の実施形態に係る光結合器50は、光ファイバ通信に用いられるものであって、受光素子搭載基板51に搭載された受光素子2と、受光素子2を埋め込むように受光素子搭載基板51上に一体化された受光用光伝送路18と、受光素子搭載基板51を支持するベース53と、信号光12を通過させる窓部55を有するケース54と、受光素子搭載基板51とベース53とを貫通して外部に導出されたリードピン52とを有する。受光用光伝送路18は、第1の実施形態例における受光用光伝送路5と同様、コア18aの径が、信号光の伝送方向に向かって小さくなるよう、たとえばテーパー形状となっている。窓部55を有するケース54は、ベース53の周縁部において溶接固定されて受光素子52を気密に封止している。なお、外部に導出されたリードピン52は受光素子2に電気的に接続されている。
【0059】
本第5の実施形態例において、外部から種々のモードで伝搬してきた信号光が、受光用光伝送路18に入射すると、入射した光のうち、高次モードの光はクラッド18bに放出され、主として基本モードを含む低次モードの光がコア18aを伝搬して受光素子2に到達する。したがって、不図示の光源から受光素子にまで到達するのに要する時間のモード、伝搬経路によるばらつきが低減されることになる。よって、伝送容量を向上させることができる。
【0060】
なお、光の伝送方向に向かって径が減少するコア15aを有する受光用光伝送路15に代えて、第3の実施形態例で用いた受光用光伝送路14のようにシングルモードファイバである受光用光伝送路を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の光結合器の第1の実施形態例を示す模式図である。
【図2】受光用光伝送路の作製プロセスを示す図である。
【図3】受光用光伝送路5の別の構成を示す図である。
【図4】本発明の光結合器の第1の実施形態例の第1の変形例を示す模式図である。
【図5】本発明の光結合器の第1の実施形態例の第2の変形例を示す模式図である。
【図6】本発明の光結合器の第2の実施形態例を示す模式図である。
【図7】本発明の光結合器の第3の実施形態例を示す模式図である。
【図8】本発明の光結合器の第4の実施形態例を示す模式図である。
【図9】本発明の光結合器の第5の実施形態例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1,1’,1’’ 光結合器
2 受光素子
3 電気配線基板
3a 絶縁層
3b 導体パターン層
3c 空孔
4 マルチモード光導波路
4a コア層
4b クラッド層
4c 出力部
4d 反射面
5 受光用光伝送路
5a コア
5a1 シングルモード光伝送路部分
5b クラッド
6 受光素子搭載基板
7 半田
8 光透過性樹脂
9 光回路基板
10 型枠
11 型材
12 信号光
12a 基本モードを含む低次モード光
12b 高次モード光
13 受光用光伝送路
13a コア
13b クラッド
14 受光用光伝送路
14a コア
14b クラッド
15 受光用光伝送路
15a コア
15b クラッド
16 マルチモード光ファイバ
16a コア
16b クラッド
17 光透過性接着剤樹脂
18 受光用光伝送路
18a コア
18b クラッド
20 光結合器
30 光結合器
40 光結合器
50 光結合器
51 受光素子搭載基板
52 リードピン
53 ベース
54 ケース
55 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と、
前記受光素子に入力信号光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、
前記光結合手段は、
光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させること
を特徴とする光結合器。
【請求項2】
受光素子と、
前記受光素子に入力信号光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、
前記光結合手段は、
伝送される光の波長に対してシングルモードとなる受光用光伝送路を介して、前記入力信号光を前記受光素子に光結合させること
を特徴とする光結合器。
【請求項3】
受光素子と、
マルチモード光導波路と、
前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、
前記光結合手段は、
光の伝送方向に向かって径が小さくなるコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させること
を特徴とする光結合器。
【請求項4】
受光素子と、
マルチモード光導波路と、
前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、
前記光結合手段は、
前記マルチモード光導波路の比屈折率差よりも小さい比屈折率差を有するコアと該コアを囲むクラッドとからなる受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させること
を特徴とする光結合器。
【請求項5】
受光素子と、
マルチモード光導波路と、
前記受光素子に前記マルチモード光導波路を伝送する光を結合させる光結合手段を有する光結合器であって、
前記光結合手段は、
コアと該コアを囲むクラッドとからなるシングルモード光導波路である受光用光伝送路を介して、前記マルチモード光導波路を導波する光を前記受光素子に光結合させること
を特徴とする光結合器。
【請求項6】
前記マルチモード光導波路を伝搬する光を前記受光素子に向かって反射する反射端面が前記マルチモード光導波路に形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1つに記載の光結合器。
【請求項7】
前記受光用光伝送路が、前記マルチモード光導波路の前記反射端面によって反射された光が入射されるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光結合器。
【請求項8】
前記受光用光伝送路が、前記受光素子を搭載する受光素子搭載基板上に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の光結合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−152064(P2008−152064A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340711(P2006−340711)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】