説明

内燃機関の制御装置

【課題】触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンシステム1は、圧力検出手段と、温度検出手段と、吸入空気量調整手段と、燃料噴射制御手段とを備えることで、排気浄化装置30に供給する燃料を気筒内で適切に気化させて、噴射燃料が気筒内に付着することを抑制することができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、特にディーゼル機関において、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する浄化触媒、および粒子状物質(Particulate Matter,以下、PMと略記する)を捕集するパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter,以下、DPFと略記する)からなる排気浄化装置を排気通路に配置することで低エミッション化を図ることが広く行われている。
【0003】
このような排気浄化装置は、機関の運転に伴って排気ガス中の硫黄酸化物による触媒成分の被毒、PMの堆積によるフィルタの目詰まり等が生じる。そのため、排気浄化装置の温度を通常の運転状態における温度域よりも高温まで昇温させて、排気浄化装置に堆積された硫黄酸化物やPMを分解・除去する再生処理を定期的に実行することが要求される。
【0004】
排気浄化装置の再生処理としては、気筒内への主噴射による燃料の供給後に更に燃料噴射(ポスト噴射)を実行することで、排気ガスの温度を上昇させて、或いは未燃燃料を排気浄化装置に供給し排気浄化装置内で燃焼させて排気浄化装置を昇温させる方法が広く適用されている。
【0005】
このような再生処理について、内燃機関の圧縮行程上死点付近で行われる燃料の主噴射に先立ち適宜パイロット噴射を実行させつつ、前記主噴射に続いて適宜に圧縮上死点より若干遅いタイミングでポスト噴射を実行させることにより、良好な燃焼状態を維持しつつ未燃燃料を適切に排気浄化装置へ供給する技術が特許文献1に開示されている。
【0006】
また、主噴射後にポスト噴射を行うことで排気浄化手段に還元剤の供給を行う内燃機関において、ポスト噴射を排気行程上死点前45°〜20°に実行させることにより、排気浄化手段の再生処理の際に内燃機関のトルク変動やオイル希釈等の発生を防止する技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−083139号公報
【特許文献2】特開2002−371900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなポスト噴射を実行するタイミングでは、気筒内は圧縮行程上死点よりも低温・低圧であるために、ポスト噴射によって噴射された燃料の一部が気化できずに内燃機関の気筒内に付着する場合がある。そのため、特許文献1の技術では、気筒内に付着した燃料が潤滑油(オイル)に混入することで、オイルが希釈されて潤滑性能の低下が生じたり、オイル量が異常に増加したりする場合がある、といった問題点がある。更に、気筒内に付着した燃料によって、再生処理後の通常燃焼の際に煤の発生量が増加してしまう、といった問題点がある。
【0009】
また、特許文献2の技術によれば、排気行程上死点前45°〜20°にポスト噴射を実行することで、気化した燃料を排気弁の開弁中に適切に排気ポートに流出させることができるために、オイル希釈をある程度抑制することができる。しかしながら、特許文献2の技術におけるポスト噴射のタイミングでは、特許文献1の技術におけるポスト噴射のタイミングよりも気筒内が低温・低圧であるために、噴射された燃料は気化しにくく、気化できない燃料が気筒内に付着してしまう。そのため、特許文献2の技術では、再生処理時のオイル希釈および再生処理後の煤発生量の増加を適切に抑制することが困難である、といった問題点がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関の排気ガスを浄化する触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関の制御装置であって、前記排気浄化装置の上流側の圧力を検出する圧力検出手段と、前記排気浄化装置の温度を検出する温度検出手段と、前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記内燃機関の所定の1気筒への吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段と、前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を調整された所定の1気筒へ圧縮行程上死点またはその近傍で燃料を噴射させる第1燃料噴射と、前記内燃機関の1または複数の気筒へ圧縮行程上死点よりも遅い時期に燃料を噴射させる第2燃料噴射と、の実行を制御する燃料噴射制御手段と、を備えることを特徴とする。
上記の構成により、排気浄化触媒上流側の検出圧力および排気浄化触媒の検出温度に基づき第1燃料噴射と第2燃料噴射との実行を制御することで、触媒再生型の排気浄化装置に供給する燃料を気筒内で適切に気化させることができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
【0012】
特に、本発明の内燃機関の制御装置は、前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記排気浄化装置の再生処理時における燃料噴射量を算出する算出手段を備え、前記燃料噴射制御手段が、前記算出手段の算出結果に基づいて、前記第1燃料噴射の燃料噴射量および前記第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する構成とすることができる。
上記の構成により、排気浄化装置の再生処理時における燃料噴射量を算出し、算出結果に基づき第1燃料噴射の燃料噴射量および第2燃料噴射の燃料噴射量を調節することで、排気浄化装置に供給する燃料を気筒内で適切に気化させることができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の内燃機関の制御装置は、前記吸入空気量調整手段が、前記圧力検出手段の検出結果が第1圧力値以上であって、前記温度検出手段の検出結果が第1温度値以下の場合に、前記所定の1気筒への吸入空気量を制限し、前記燃料噴射制御手段が、前記吸入空気量調整手段が前記所定の1気筒への吸入空気量を制限する場合に、前記第1燃料噴射を実行する構成とすることができる。
上記の構成により、排気浄化装置の再生要求がある場合には、所定の1気筒への吸入空気量を制限して第1燃料噴射を実行することで、所定の1気筒内に噴射された燃料を適切に排気浄化装置に供給することができる。よって、排気浄化装置を適切に昇温させることができる。
【0014】
そして、本発明の内燃機関の制御装置は、前記吸入空気量調整手段が、前記圧力検出手段の検出結果が第2圧力値以下の場合に、前記所定の1気筒への吸入空気量の制限を解除する構成とすることができる。
上記の構成により、排気浄化装置の上流側の圧力が所定の圧力(第2圧力値)以下の場合には、所定の1気筒への吸入空気量の制限を解除することで、内燃機関の運転性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の内燃機関の制御装置によれば、排気浄化装置に供給する燃料を気筒内で適切に気化させることができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例のエンジンシステムの一構成例を示した図である。
【図2】エンジン回転数と1気筒当りの吸入空気量との相関を示している。
【図3】吸気絞り弁開度制御の一例を示している。
【図4】エンジンECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】エンジンECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】エンジンECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】エンジンECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の内燃機関の燃料供給装置を搭載したエンジンシステム1の一構成例を示した図である。なお、図1にはエンジンの一部の構成のみを示している。
【0019】
図1に示すエンジンシステム1は、動力源であるエンジン100を備えており、エンジン100の運転動作を総括的に制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)10を備えている。また、エンジンシステム1は、吸気マニホルド11に1番気筒への吸入空気量を調整する吸気絞り弁12を備えている。そして、エンジンシステム1は、排気浄化装置30の上流側に排気ガス圧力を検出する圧力センサ41を備えている。更に、エンジンシステム1は、排気浄化装置30にDPF32の床温度を検出する温度センサ42を備えている。
【0020】
エンジン100は、車両に搭載される多気筒ディーゼルエンジンであって、各気筒は燃焼室を構成するピストンを備えている。各燃焼室のピストンは、エンジン100のシリンダに摺動自在に嵌合されており、それぞれコネクティングロッドを介して出力軸部材であるクランクシャフトに連結されている。
【0021】
エンジンECU10は、エアフロメータからの吸入空気量、クランク角センサからのピストンの位置等の情報に基づき、燃料の噴射量および噴射タイミングを決定しインジェクタ21に信号を送る。インジェクタ21は、エンジンECU10の信号に従って、指示された燃料噴射量および噴射タイミングで燃焼室内に燃料を噴射する。インジェクタ21より噴射された燃料は、燃焼室内で霧化し、吸気弁の開弁に伴って燃焼室内へ流入する吸入空気と混合気を形成する。そして、混合気は、ピストンの上昇運動により燃焼室内で圧縮されて着火することで燃焼し、燃焼室内を膨張させてピストンを下降させる。この下降運動がコネクティングロッドを介してクランクシャフトの軸回転に変更されることにより、エンジン100は動力を得る。この場合、エンジン100は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンが好ましいが、それに限定されない。
なお、エンジン100は、本発明の内燃機関の一構成例である。
【0022】
エンジン100は、インジェクタ21、コモンレール22、低圧燃料ポンプ23、高圧燃料ポンプ24等より構成されるコモンレール式燃料噴射システムを備えている。
【0023】
燃料タンク25より低圧燃料ポンプ23により吸引された燃料は、高圧燃料ポンプ24にてコモンレール22へ高圧で吐出し蓄圧される。
コモンレール22は、インジェクタ21に供給する高圧燃料を蓄圧する容器である。高圧燃料ポンプ24から圧送された燃料は、コモンレール22内で噴射に必要な圧力まで蓄圧され、高圧配管を通じて各燃焼室のインジェクタ21に供給される。また、コモンレール22にはレール圧センサ221および減圧弁222が設けられている。エンジンECU10は、レール圧センサ221から出力されたコモンレール22内部の燃圧が規定値を超えた場合に、減圧弁222を開放するように指示する。そして、減圧弁222より燃料を排出することで、コモンレール圧が常に規定値以下になるよう調整する。減圧弁222より排出された燃料は、リリーフ配管を通って燃料タンク25へと戻される。
【0024】
各燃焼室には、それぞれインジェクタ21が装着されている。コモンレール22より高圧配管を通じて供給された燃料は、エンジンECU10の指示によりインジェクタ21にてエンジン気筒内の燃焼室に噴射供給される。エンジンECU10は、エアフロメータからの吸入空気量、およびクランク角センサからのピストンの位置の情報等に基づき、燃料噴射量と噴射タイミングを決定しインジェクタ21に信号を送る。インジェクタ21はエンジンECU10の信号に従って、指示された燃料噴射量・噴射タイミングにて燃焼室内へ燃料を高圧噴射する。インジェクタ21のリーク燃料は、リリーフ配管を通じて燃料タンク25へと戻される。この場合、インジェクタ21は、エンジン100の仕様に応じて燃焼室の任意の位置に装着することができる。
【0025】
低圧燃料ポンプ23は、バッテリからの電力で駆動する電動式ポンプである。低圧燃料ポンプ23は、エンジンECU10の指示に従って燃料タンク25に貯蔵された燃料を汲み上げて、高圧燃料ポンプ24へと供給する。
高圧燃料ポンプ24は、その内部にシリンダと、シリンダ内を往復運動するプランジャとを備えている。高圧燃料ポンプ24は、エンジン100の回転と同期した吸気カムシャフトと駆動連結され、吸気カムシャフトの回転駆動によって内部のプランジャが往復運動することで高圧の燃料をコモンレール22へ吐出する。この場合、高圧燃料ポンプ24は、コモンレール22へと連通する燃料配管の途中にソレノイド式等の既知の圧力調整弁(リリーフ弁)を設けることで、エンジンECU10の指示に基づいてコモンレール22へ供給する燃料の圧力を調整する構成としてもよい。また、本実施例では低圧燃料ポンプ23と高圧燃料ポンプ24との2つのポンプを用いるが、これに限られず、1または複数の燃料ポンプを用いて燃料供給を行ってもよい。
【0026】
エンジン100の各気筒の燃焼室には、それぞれの燃焼室と連通する吸気マニホルド11が接続されている。吸気マニホルド11は、エアフロメータ、吸気絞り弁12、インタークーラ、ターボチャージャ14のコンプレッサを介してエアクリーナに連結されており、エンジン100の外部から取り込まれた吸入空気を各気筒内へ導入する。
【0027】
エアフロメータは、吸気マニホルド11内を通過する吸入空気量を検出し、検出結果をエンジンECU10に送信する。エンジンECU10は、送信された検出結果に基づいて各気筒内へ導入される吸入空気量を認識し、吸気絞り弁12の開度を調整して1番気筒内に取り込まれる吸入空気量を調整する。
【0028】
吸気絞り弁12は、吸気マニホルド11の1番気筒内の入口部分に設けられて、エンジンECU10の指令に従ってその開度を変更することで1番気筒内への吸入空気量を調整する。吸気絞り弁12は、ステップモータによって開度を調整することで吸入空気量を調節する構成が好ましいが、吸気絞り弁12の開度を任意に変更可能なその他の機構を適用してもよい。
なお、吸気絞り弁12は、本発明の吸入空気量調整手段の一構成例である。
【0029】
更に、エンジン100の各気筒の燃焼室には、それぞれの燃焼室と連通する排気マニホルド13が接続されている。排気マニホルド13は、ターボチャージャ14の排気タービンを介して排気浄化装置30に連結されており、燃焼後の排気ガスをエンジン100の外部へと排出させる。
【0030】
排気マニホルド13は、排気ガス導入通路15によって吸気マニホルド11と連通されている。排気ガス導入通路15へと分岐した排気ガスは、EGRバルブ16にて流量を調節されつつ吸気マニホルド11へ進み、吸入空気とともに燃焼室内へ導入されて噴射燃料と混合される。EGRバルブ16は、エンジンECU10の指令に従ってバルブ開度を調節することで、吸気マニホルド11への排気ガスの還流供給量を適切な量へと調節する。このように、運転状態に応じた適切な量のEGRガスを吸気マニホルド11に還流供給することにより、エンジン100の燃焼温度を低下させてNOx排出量の低減を図ることができる。
【0031】
ターボチャージャ14は、排気ガスの運動エネルギーを利用して排気タービンを回転させ、エアクリーナを通過した吸入空気を圧縮してインタークーラへと送り込む。圧縮された吸入空気は、インタークーラで冷却された後に吸気マニホルド11へと導入される。
ターボチャージャ14は、可変ノズル式ターボチャージャ(Variable Nozzle Turbo,以下、VNTと略記する)であって、排気タービン側に可変ノズルベーン機構141が設けられている。この可変ノズルベーン機構141の開度を調整することにより、タービンインペラ翼への排気ガスの流入角度を制御して、吸気マニホルド11へ導入する吸入空気の過給圧を調整する。例えば、可変ノズルベーン機構141の開度をより小さくすると、より多くの排気ガスがタービンインペラ翼に流入するために過給効率が向上する。また、可変ノズルベーン機構141の開度をより大きくすると、タービンインペラ翼に流入する排気ガス量がより少なくなるために過給効率が低下する。
この場合、ターボチャージャ14はVNTに限られず、ウェイストゲートによって過給圧の調整を行う構成であってもよい。また、エンジン100は、ターボチャージャ14を備える過給機付エンジンに限られず、自然吸気(Natural Aspiration)エンジンであってもよい。
【0032】
排気浄化装置30は、エンジン100の排気ガスを浄化するものであって、排気ガス中のNOx、HCおよびCOを浄化する酸化触媒31と、煤などの粒子状物質(PM)を捕集するDPF32と、で構成される。
【0033】
酸化触媒31は、DPF32の上流側に設けられており、コーディライトセラミックスからなる多孔質のハニカム構造の触媒担体に酸化触媒をコートしたものであって、その内部を排気ガスが通過可能な周知の構成である。酸化触媒31の触媒担体としてはコーディライトに限られず、触媒担体として周知の他のセラミックスやメタルを適用してもよい。
DPF32は、酸化触媒31の下流側に設けられており、多孔質のコーディライトセラミックスからなる周知のウォールフロー型フィルタである。DPF32としてはコーディライトに限られず、炭化ケイ素(SiC)等の他のセラミックスを適用してもよい。
この場合、排気浄化装置30は、上流側にDPF32を設けて下流側に酸化触媒31を設ける構成であってもよい。また、パティキュレートフィルタにNOx吸蔵還元触媒を組み合わせたDPNR(Diesel Particlate NOx Reduction system)を排気浄化装置30として適用してもよい。
【0034】
圧力センサ41は、排気浄化装置30の上流側の入口付近に設けられており、排気浄化装置30の入口の排気ガス圧力を検出し、検出結果をエンジンECU10に送信する。エンジンECU10は、送信された検出結果に基づいて排気浄化装置30の目詰まり度合いを認識し、排気浄化装置30の再生処理が必要であるか否かを判断する。例えば、排気浄化装置30の目詰まり度合いがより高いほど、排気ガスが排気浄化装置30を通過する際の抵抗値が上昇するために、排気浄化装置30の入口圧力が上昇する。また、排気浄化装置30の目詰まり度合いがより低いほど、排気ガスが排気浄化装置30を通過する際の抵抗値が低下するために、排気浄化装置30の入口圧力は低下する。よって、入口圧力の検出結果から排気浄化装置30の目詰まり度合いを認識することができる。この場合、圧力センサ41を排気浄化装置30の上流側のみならず下流側の出口付近にも設けて、排気浄化装置30の入口圧力と出口圧力とを検出し、それらの差圧から目詰まり度合いを認識する構成としてもよい。
【0035】
温度センサ42は、排気浄化装置30のDPF32に設けられており、DPF32の床温度を検出し、検出結果をエンジンECU10に送信する。エンジンECU10は、送信された検出結果に基づいてDPF32の実温度を認識し、DPF32の温度が堆積するPMの燃焼除去に必要な温度に達しているか否かを判断する。例えば、DPFに捕集され堆積したPMは所定の温度(例えば、600℃)以上で燃焼し除去されることから、DPF32の床温度を検出することで、DPF32の温度が再生処理に要する温度に達しているか否かを認識することができる。この場合、DPF32の複数箇所に温度センサを設けて、DPF32の温度を検出してもよい。また、別途、酸化触媒31の床温度を検出するための温度センサを設けてもよい。
【0036】
エンジンECU10は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)やNVRAM(Non Volatile RAM)と、を備えるコンピュータである。エンジンECU10は、エンジン100の各部に備えられた複数のセンサの検出結果を読み込み、それら検出結果に基づいてエンジン100の運転動作を統合的に制御する。
【0037】
更に、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の温度制御(再生処理)を実行する。以下に、エンジンECU10が制御する排気浄化装置30の再生処理について説明する。
【0038】
エンジンECU10は、排気浄化装置30の入口圧力、およびDPF32の温度の検出結果を受信する。そして、エンジンECU10は、受信した排気浄化装置30の入口圧力の検出結果が所定の第1圧力値以上である場合に、排気浄化装置30の再生処理が必要であると判断する。ここで、第1圧力値とは、排気浄化装置30の目詰まり度合いが高く再生処理が必要であると判断できる入口圧力値(例えば、0.2MPa)であって、予め台上試験等にて求めた圧力値を適用することができる。
また、エンジンECU10は、受信したDPF32の温度の検出結果が所定の第1温度値以下である場合に、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していないと判断する。ここで、第1温度値とは、DPF32に堆積するPMが燃焼し除去されるのに充分な温度値(例えば、700℃)であって、予め台上試験等にて求めた温度値を適用することができる。
【0039】
エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理が必要であり、かつ排気浄化装置30の温度が充分に再生処理を実行できる温度でないと判断すると、エンジン100回転数および可変ノズルベーン機構141の開度に基づいて吸気絞り弁12の弁開度を調整することで、1番気筒への吸入空気量を制限する制御を実行する。この制御を実行することで、1番気筒への吸入空気量を減少させて、1番気筒に噴射された燃料が気筒内で燃焼することを抑制することができることから、未燃燃料を適切に排気浄化装置30に供給して昇温させることができる。
【0040】
図2は、エンジン100回転数と1気筒当りの吸入空気量との相関を示している。ターボチャージャ14の可変ノズルベーン機構141の開度が全開の場合、過給効率が低いために、1気筒当りの吸入空気量はエンジン100の回転数の増加に伴ってほぼ線形的に緩やかに増加する。一方、可変ノズルベーン機構141の開度が全閉の場合は、高い過給効率によって、1気筒当りの吸入空気量はエンジン100の回転数の増加に伴って非線形的に大きく増加する。そのため、可変ノズルベーン機構141の開度に基づいて吸気絞り弁12の弁開度を調整することで、1番気筒への吸入空気量を適切に制限することができる。
図3は、吸気絞り弁12開度制御の一例を示している。可変ノズルベーン機構141の開度が全開の場合、エンジン100の回転数増加に伴う吸入空気量の増加を考慮して吸気絞り弁12の弁開度を調整することで、1番気筒への吸入空気量を適切に制限することができる。一方、可変ノズルベーン機構141の開度が全閉の場合は、更にターボによる過給も考慮して吸気絞り弁12の弁開度をより小さく調整することで、1番気筒への吸入空気量を適切に制限することができる。この場合、吸気絞り弁12の弁開度は、予め台上試験等にて作成し、エンジンECU10のROMに記憶したマップに基づいて制御することが好ましい。
【0041】
また、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量、すなわち、再生処理時の機関の1サイクルにおける燃料噴射量を算出する。燃料噴射量の算出は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果から機関の1サイクルにおける燃料噴射量を直接算出してもよいし、排気浄化装置30の再生処理に要する総燃料量を算出し、それに基づき機関の1サイクルにおける燃料噴射量を算出してもよい。この場合、排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量は、予め台上試験等にて作成し、エンジンECU10のROMに記憶したマップに基づいて算出することが好ましい。
【0042】
つづいて、エンジンECU10は、算出した排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量に基づいて、後述する第1燃料噴射の燃料噴射量、および第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する制御を実行する。
燃料噴射量の調整としては、まず、算出した排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量、すなわち、再生処理時の機関の1サイクルにおける燃料噴射量が、第2燃料噴射の最大燃料噴射量を超えるか否かを判断する。ここで、第2燃料噴射の最大燃料噴射量とは、後述する第2燃料噴射の噴射タイミングにおいて噴射された燃料が気筒内で充分に気化できる燃料噴射量(例えば、1気筒当り2mm/st,4気筒で8mm/st)であって、予め台上試験等にて求めた燃料噴射量を適用することができる。再生処理時の機関の1サイクルにおける燃料噴射量が第2燃料噴射の最大燃料噴射量を超えない場合(例えば、4mm/st)は、第2燃料噴射の燃料噴射量を算出した燃料噴射量(1気筒当り1mm/st,4気筒で4mm/st)に調節しつつ、第1燃料噴射の実行を停止する。また、再生処理時の機関の1サイクルにおける燃料噴射量が第2燃料噴射の最大燃料噴射量を超える場合(例えば、33mm/st)は、第2燃料噴射の燃料噴射量を最大燃料噴射量(1気筒当り2mm/st,4気筒で8mm/st)に調節する。そして、第1燃料噴射の燃料噴射量を、再生処理時の機関の1サイクルにおける燃料噴射量(33mm/st)と第2燃料噴射の最大燃料噴射量(1気筒当り2mm/st,4気筒で8mm/st)との差分(25mm/st)に調節する。
この制御を実行することで、排気浄化装置30の再生処理時に、第2燃料噴射(いわゆるポスト噴射)の燃料噴射量を、気筒内で充分に気化できる燃料噴射量に調整することができる。よって、燃料が気筒内に付着することを適切に抑制することができる。
【0043】
そして、エンジンECU10は、調節した第1燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、吸入空気量が制限された1番気筒へ圧縮行程上死点(TDC)で燃料を噴射させる制御、すなわち、第1燃料噴射を実行させる。このように、吸入空気量が制限された気筒内にTDCで燃料を噴射することで、噴射燃料が気筒内で燃焼するのを抑制しつつ、燃料を高温・高圧の気筒内で適切に気化させることができる。よって、未燃燃料を適切に排気浄化装置30に供給して昇温させることができる。この場合、第1燃料噴射の噴射タイミングはTDCが好ましいが、それに限られずTDCの近傍であってもよい。
【0044】
更に、エンジンECU10は、調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の1または複数の気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射させる制御、すなわち、第2燃料噴射を実行させる。この第2燃料噴射は、いわゆるポスト噴射に相当するものであり、エンジン100の1または複数の気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射させることで、1または複数の気筒に噴射された燃料が気筒内で燃焼することを抑制することができる。よって、未燃燃料を適切に排気浄化装置30に供給して昇温させることができる。また、第2燃料噴射の燃料噴射量は、気筒内で適切に気化できる燃料噴射量、すなわち、最大燃料噴射量を超えないように調節されているために、噴射燃料が気筒内に付着することを抑制することができる。この場合、第2燃料噴射の噴射タイミングは、エンジン100の仕様、運転領域等に基づいて第1燃料噴射よりも遅い任意のタイミングに設定することができる。
【0045】
エンジンECU10は、温度センサ42の検出結果が第1温度値を超える場合に、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していると判断し、第1燃料噴射の実行を停止する。この場合、エンジンECU10は、第1燃料噴射の実行を停止するのにあわせて、1番気筒への吸入空気量の制限を解除するよう吸気絞り弁12に指令してもよい。
また、エンジンECU10は、圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下である場合に、排気浄化装置30の再生処理を継続する必要がないと判断し、1番気筒への吸入空気量の制限を解除しつつ、第2燃料噴射の実行を停止する。ここで、第2圧力値とは、排気浄化装置30の目詰まり度合いが低く再生処理が必要でないと判断できる入口圧力値(例えば、0.12MPa)であって、予め台上試験等にて求めた圧力値を適用することができる。
【0046】
上記の制御を実行することにより、排気浄化装置30に供給する燃料を気筒内で適切に気化させることができることから、再生処理時に噴射燃料が気筒内に付着することを抑制することができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
なお、エンジンECU10は、本発明の吸入空気量調整手段、燃料噴射制御手段、算出手段の一構成例である。
【0047】
つづいて、エンジンECU10の制御の流れに沿って、エンジンシステム1の動作を説明する。図4は、エンジンECU10の処理の一例を示すフローチャートである。本実施例のエンジンシステム1は、圧力検出手段と、温度検出手段と、吸入空気量調整手段と、燃料噴射制御手段とを備えることで、エンジン100のオイル希釈を抑制しつつ排気浄化装置30の再生処理を適切に実行する。
【0048】
エンジンECU10の制御は、イグニッションスイッチがONされてエンジン100が始動されると開始し、エンジン100の運転中に以下の制御の処理を繰り返す。また、エンジンECU10は、その制御の処理中、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果を常に受信する。
【0049】
まず、エンジンECU10はステップS1で、受信した圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上であるか否かを判断する。ここで、第1圧力値については前述したために、その詳細な説明は省略する。圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上でない場合(ステップS1/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理が必要でないと判断し、制御の処理を終了する。圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上である場合(ステップS1/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理が必要であると判断し、次のステップS2へ進む。
【0050】
ステップS2で、エンジンECU10は、受信した温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下であるか否かを判断する。ここで、第1温度値については前述したために、その詳細な説明は省略する。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下でない場合(ステップS2/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していると判断し、ステップS6へ進む。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下である場合(ステップS2/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していないと判断し、次のステップS3へ進む。
【0051】
ステップS3で、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU10は、算出した燃料噴射量に基づいて、第1燃料噴射の燃料噴射量、および第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する(燃料噴射量の調整手法については前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS3の処理を終えると、次のステップS4へ進む。
【0052】
ステップS4で、エンジンECU10は、吸気絞り弁12開度マップ(図4参照)に基づいて、弁開度を閉鎖する方向へと調整するよう吸気絞り弁12に指令する。エンジンECU10は、ステップS4の処理を終えると、次のステップS5へ進む。
【0053】
ステップS5で、エンジンECU10は、ステップS3で調節した第1燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、吸気絞り弁12によって吸入空気量が制限された1番気筒へ圧縮行程上死点(TDC)で燃料を噴射する(すなわち、第1燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する。更に、エンジンECU10は、ステップS3で調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の全気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射する(すなわち、第2燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する(第2燃料噴射の噴射タイミングについては前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS5の処理を終えると、図5のAへ進む。
【0054】
ステップS2の判断がNOの場合、エンジンECU10はステップS6へ進む。ステップS6で、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の温度を第1温度値を超える温度に維持するための燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU10は、算出した燃料噴射量に基づいて、第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する(燃料噴射量の調整手法については前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS6の処理を終えると、次のステップS7へ進む。
【0055】
ステップS7で、エンジンECU10は、ステップS6で調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の全気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射する(すなわち、第2燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する(第2燃料噴射の噴射タイミングについては前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS7の処理を終えると、次のステップS8へ進む。
【0056】
ステップS8で、エンジンECU10は、圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下であるか否かを判断する。ここで、第2圧力値については前述したために、その詳細な説明は省略する。圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下でない場合(ステップS8/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理を継続する必要があると判断し、ステップS2へ戻り、上記の処理を繰り返す。圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下である(ステップS8/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理を継続する必要がないと判断し、次のステップS9へ進む。
【0057】
ステップS9で、エンジンECU10は、1番気筒への吸入空気量の制限を解除しつつ、第2燃料噴射の実行を停止する。エンジンECU10は、ステップS9の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0058】
つづいて、図5のA以降の処理について説明する。ステップS5の処理を終えると、エンジンECU10はステップS10へ進む。ステップS10で、エンジンECU10は、受信した温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値を超えているか否かを判断する。ここで、第1温度値については前述したために、その詳細な説明は省略する。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値を超えていない場合(ステップS10/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していないと判断し、温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値を超えるまでステップS10の処理を繰り返す。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値を超えている場合(ステップS10/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していると判断し、次のステップS11へ進む。
【0059】
ステップS11で、エンジンECU10は、第1燃料噴射の実行を停止するようインジェクタ21に指令する。エンジンECU10は、ステップS11の処理を終えると、ステップS8へ戻り、それ以降の制御の処理を実行する。
【0060】
この制御を実行することで、排気浄化装置30に供給する燃料を気筒内で適切に気化させて、噴射燃料が気筒内に付着することを抑制することができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
なお、エンジンECU10は、ステップS3の処理とステップS4の処理との順番を入れ替えて制御してもよい。また、エンジンECU10は、図5のAの処理に代えて、ステップS5の処理の後にステップS2に戻って制御の処理を繰り返してもよい。
【0061】
以上のように、本実施例のエンジンシステムは、圧力検出手段と、温度検出手段と、吸入空気量調整手段と、燃料噴射制御手段とを備えることで、排気浄化装置に供給する燃料を気筒内で適切に気化させて、噴射燃料が気筒内に付着することを抑制することができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
【0062】
また、本実施例のエンジンシステムは、排気浄化装置の再生処理時における燃料噴射量を算出し、算出結果に基づき第1燃料噴射の燃料噴射量および第2燃料噴射の燃料噴射量を調節することで、排気浄化装置に供給する燃料を気筒内で適切に気化させることができる。よって、触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関において、再生処理時のオイル希釈を適切に抑制することができる。
【実施例2】
【0063】
つづいて、本発明の実施例2について説明する。本実施例のエンジンシステム2は、実施例1の制御に加えて、温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値を超える場合に第1燃料噴射の実行を停止させる点でエンジンシステム1と相違している。
【0064】
エンジンECU10の制御の流れに沿って、エンジンシステム2の動作を説明する。図6は、エンジンECU10の処理の一例を示すフローチャートである。
【0065】
実施例1と同様に、エンジンECU10の制御は、イグニッションスイッチがONされてエンジン100が始動されると開始し、エンジン100の運転中に以下の制御の処理を繰り返す。また、エンジンECU10は、その制御の処理中、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果を常に受信する。
【0066】
まず、エンジンECU10はステップS12で、受信した圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上であるか否かを判断する。ここで、第1圧力値については前述したために、その詳細な説明は省略する。圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上でない場合(ステップS12/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理が必要でないと判断し、制御の処理を終了する。圧力センサ41の検出結果が所定の第1圧力値以上である場合(ステップS12/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理が必要であると判断し、次のステップS13へ進む。
【0067】
ステップS13で、エンジンECU10は、受信した温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値以下であるか否かを判断する。ここで、第2温度値とは、DPF32に堆積するPMを燃焼除去することができる第1温度値よりも低い温度値(例えば、600℃)であって、予め台上試験等にて求めた温度値を適用することができる。温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値以下でない場合(ステップS13/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理が可能な温度に達していると判断し、ステップS17へ進む。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下である場合(ステップS13/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していないと判断し、次のステップS14へ進む。
【0068】
ステップS14で、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の再生処理時における燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU10は、算出した燃料噴射量に基づいて、第1燃料噴射の燃料噴射量、および第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する(燃料噴射量の調整手法については前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS14の処理を終えると、次のステップS15へ進む。
【0069】
ステップS15で、エンジンECU10は、吸気絞り弁12開度マップ(図4参照)に基づいて、弁開度を閉鎖する方向へと調整するよう吸気絞り弁12に指令する。エンジンECU10は、ステップS15の処理を終えると、次のステップS16へ進む。
【0070】
ステップS16で、エンジンECU10は、ステップS14で調節した第1燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、吸気絞り弁12によって吸入空気量が制限された1番気筒へ圧縮行程上死点(TDC)で燃料を噴射する(すなわち、第1燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する。更に、エンジンECU10は、ステップS14で調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の全気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射する(すなわち、第2燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する(第2燃料噴射の噴射タイミングについては前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS16の処理を終えると、図7のBへ進む。
【0071】
ステップS2の判断がNOの場合、エンジンECU10はステップS17へ進む。ステップS17で、エンジンECU10は、受信した温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下であるか否かを判断する。ここで、第1温度値については前述したために、その詳細な説明は省略する。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下でない場合(ステップS17/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度に達していると判断し、ステップS20へ進む。温度センサ42の検出結果が所定の第1温度値以下である場合(ステップS17/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理に要求される温度には達していないが、再生処理が可能な温度であると判断し、次のステップS18へ進む。
【0072】
ステップS18で、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の温度を第2温度値を超える温度に維持するための燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU10は、算出した燃料噴射量に基づいて、第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する(燃料噴射量の調整手法については前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS18の処理を終えると、次のステップS19へ進む。
【0073】
ステップS19で、エンジンECU10は、ステップS18で調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の全気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射する(すなわち、第2燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する(第2燃料噴射の噴射タイミングについては前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS19の処理を終えると、ステップS22へ進む。
【0074】
ステップS17の判断がNOの場合、エンジンECU10はステップS20へ進む。ステップS20で、エンジンECU10は、圧力センサ41および温度センサ42の検出結果に基づいて、排気浄化装置30の温度を第2温度値を超える温度に維持するための燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU10は、算出した燃料噴射量に基づいて、第2燃料噴射の燃料噴射量を調節する(燃料噴射量の調整手法については前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS20の処理を終えると、次のステップS21へ進む。
【0075】
ステップS21で、エンジンECU10は、ステップS20で調節した第2燃料噴射の燃料噴射量に基づいて、エンジン100の1番気筒へTDCよりも遅い時期に燃料を噴射する(すなわち、第2燃料噴射を実行する)ようインジェクタ21に指令する(第2燃料噴射の噴射タイミングについては前述したために、その詳細な説明は省略する)。エンジンECU10は、ステップS21の処理を終えると、ステップS22へ進む。
【0076】
ステップS19またはステップS21の処理を終えると、エンジンECU10はステップS22へ進む。ステップS22で、エンジンECU10は、圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下であるか否かを判断する。ここで、第2圧力値については前述したために、その詳細な説明は省略する。圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下でない場合(ステップS22/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理を継続する必要があると判断し、ステップS13へ戻り、上記の処理を繰り返す。圧力センサ41の検出結果が所定の第2圧力値以下である(ステップS22/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の再生処理を継続する必要がないと判断し、次のステップS23へ進む。
【0077】
ステップS23で、エンジンECU10は、1番気筒への吸入空気量の制限を解除しつつ、第2燃料噴射の実行を停止する。エンジンECU10は、ステップS23の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0078】
つづいて、図7のB以降の処理について説明する。ステップS16の処理を終えると、エンジンECU10はステップS24へ進む。ステップS24で、エンジンECU10は、受信した温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値を超えているか否かを判断する。ここで、第2温度値については前述したために、その詳細な説明は省略する。温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値を超えていない場合(ステップS24/NO)、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理が可能な温度に達していないと判断し、温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値を超えるまでステップS24の処理を繰り返す。温度センサ42の検出結果が所定の第2温度値を超えている場合(ステップS24/YES)は、エンジンECU10は、排気浄化装置30の温度が再生処理が可能な温度に達していると判断し、次のステップS25へ進む。
【0079】
ステップS25で、エンジンECU10は、第1燃料噴射の実行を停止するようインジェクタ21に指令する。エンジンECU10は、ステップS25の処理を終えると、ステップS22へ戻り、それ以降の制御の処理を実行する。
【0080】
この制御を実行することにより、排気浄化装置30の再生処理時に第1燃料噴射の実行頻度をより少なくすることができることから、排気浄化装置30の再生処理時のオイル希釈を適切に抑制しつつ、エンジン100の運転性や燃費を向上させることができる。
なお、エンジンECU10は、ステップS14の処理とステップS15の処理との順番を入れ替えて制御してもよい。また、エンジンECU10は、図7のBの処理に代えて、ステップS16の処理の後にステップS13に戻って制御の処理を繰り返してもよい。
【0081】
以上のように、本実施例のエンジンシステムは、温度センサの検出結果が所定の第2温度値を超える場合に第1燃料噴射の実行を停止させることにより、排気浄化装置の再生処理時に第1燃料噴射の実行頻度をより少なくすることができる。よって、排気浄化装置の再生処理時のオイル希釈を適切に抑制しつつ、内燃機関の運転性や燃費を向上させることができる。
【0082】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0083】
例えば、吸気絞り弁12の設置場所は1番気筒の入口に限られず、他の気筒の入口に設けて吸入空気量を調整する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,2 エンジンシステム
10 エンジンECU(吸入空気量調整手段、燃料噴射制御手段、算出手段)
12 吸気絞り弁(吸入空気量調整手段)
14 ターボチャージャ
21 インジェクタ
22 コモンレール
30 排気浄化装置
31 酸化触媒
32 DPF
41 圧力センサ(圧力検出手段)
42 温度センサ(温度検出手段)
100 エンジン
141 可変ノズルベーン機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関の排気ガスを浄化する触媒再生型の排気浄化装置を有する内燃機関の制御装置であって、
前記排気浄化装置の上流側の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記排気浄化装置の温度を検出する温度検出手段と、
前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記内燃機関の所定の1気筒への吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段と、
前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記吸入空気量調整手段により吸入空気量を調整された所定の1気筒へ圧縮行程上死点またはその近傍で燃料を噴射させる第1燃料噴射と、前記内燃機関の1または複数の気筒へ圧縮行程上死点よりも遅い時期に燃料を噴射させる第2燃料噴射と、の実行を制御する燃料噴射制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記圧力検出手段および前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記排気浄化装置の再生処理時における燃料噴射量を算出する算出手段を備え、
前記燃料噴射制御手段は、前記算出手段の算出結果に基づいて、前記第1燃料噴射の燃料噴射量および前記第2燃料噴射の燃料噴射量を調節することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記吸入空気量調整手段は、前記圧力検出手段の検出結果が第1圧力値以上であって、前記温度検出手段の検出結果が第1温度値以下の場合に、前記所定の1気筒への吸入空気量を制限し、
前記燃料噴射制御手段は、前記吸入空気量調整手段が前記所定の1気筒への吸入空気量を制限する場合に、前記第1燃料噴射を実行することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記吸入空気量調整手段は、前記圧力検出手段の検出結果が第2圧力値以下の場合に、前記所定の1気筒への吸入空気量の制限を解除することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140924(P2011−140924A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2746(P2010−2746)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】