説明

内燃機関の制御装置

【課題】失火を抑制し、安定した燃焼を実現することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の制御装置は、車両に搭載され、気筒と、吸気弁と、排気弁と、点火プラグと、排気ガス畜圧手段と、吸排気弁制御手段と、を備える。排気ガス畜圧手段は、気筒から排出された排気ガスを溜める。吸排気弁制御手段は、燃料供給の停止時に吸気弁及び排気弁を閉弁した状態から燃料供給の復帰をする場合、吸気弁を開弁して燃料を含む新気を気筒内に供給する前に、排気弁を開弁して排気ガスを気筒内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を備える車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気通路上に、排気ガスの流れを一時的に遮断するための排気遮断弁を備えた内燃機関が存在する。例えば、特許文献1には、過給機付き筒内噴射エンジンにおいて、排気通路上に排気遮断弁を設けて排気圧力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−214812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フューエルカット中は、吸気系はスロットル弁を閉弁しても漏れにより大気圧となっている。従って、フューエルカットからの復帰時には、EGR通路から適量の排気ガスを循環させることができず、エンジントルクが過剰に大きくなる虞がある。また、加圧装置による加圧その他の方法により排気ガスを筒内へ供給した場合であっても、点火プラグ付近に排気ガスが滞留した場合には失火する虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、失火を抑制し、安定した燃焼を実現することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、内燃機関の制御装置は、少なくとも1の気筒と、前記気筒に設けられた吸気弁と、前記気筒に設けられた排気弁と、前記吸気弁の近傍に設けられた点火プラグと、前記気筒から排出された排気ガスを溜める排気ガス畜圧手段と、燃料供給の停止時に前記吸気弁及び前記排気弁を閉弁した状態から前記燃料供給の復帰をする場合、前記吸気弁を開弁して燃料を含む新気を前記気筒内に供給する前に、前記排気弁を開弁して前記排気ガスを前記気筒内に供給する吸排気弁制御手段と、を備える。
【0007】
上記の内燃機関の制御装置は、車両に搭載され、気筒と、吸気弁と、排気弁と、点火プラグと、排気ガス畜圧手段と、吸排気弁制御手段と、を備える。点火プラグは、吸気弁の近傍に設けられる。ここで、点火プラグが吸気弁と近傍であるとは、例えば点火プラグ及び吸気弁が共に気筒の頭部に設けられる場合が該当する。排気ガス畜圧手段は、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、気筒から排出された排気ガスを溜める。吸排気弁制御手段は、例えばECUであり、燃料供給の停止時に吸気弁及び排気弁を閉弁した状態から燃料供給の復帰をする場合、吸気弁を開弁して燃料を含む新気を気筒内に供給する前に、排気弁を開弁して排気ガスを気筒内に供給する。「燃料供給の復帰」とは、気筒内への燃料供給を再開することを指す。このように、吸排気弁制御手段は、燃料供給の停止時に吸気弁及び排気弁を閉弁する。そして、吸排気弁制御手段は、燃料供給の復帰をする場合、吸気弁の開弁前に排気弁を開弁することで、成層燃焼を実現する。即ち、吸排気弁制御手段は、まず排気弁を開弁することで、気筒内に排気ガスを供給する。また、吸排気弁制御手段は、その後に吸気弁を開弁することで、排気ガスが気筒内に供給された後に新気を気筒内に供給し、点火プラグ付近に新気を集まりやすくする。これにより、内燃機関の制御装置は、希薄燃焼を実現すると共に、失火を抑制することができる。
【0008】
上記の内燃機関の制御装置の一態様では、前記排気ガス畜圧手段は、前記排気ガスの排気圧を大気圧相当値に保持する。ここで、「大気圧相当値」とは、大気圧又は大気圧から所定差以内に属する値を指す。上述の所定差は、例えば燃料供給の復帰時に失火が発生するおそれがない差を指す。このようにすることで、内燃機関の制御装置は、排気弁の開弁時に過剰に排気ガスを気筒内へ供給するのを防ぎ、失火を抑制することができる。
【0009】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記気筒と連通する排気通路と、前記排気通路上に設けられた遮断弁と、をさらに備え、前記排気ガス畜圧手段は、前記排気圧が大気圧相当値以下の場合、前記遮断弁を閉弁し、前記排気圧が前記大気圧相当値より大きい場合、前記遮断弁を開弁する。このようにすることで、排気ガス畜圧手段は、排気ガスの排気圧を大気圧相当値に保持することができ、失火を抑制することができる。
【0010】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記排気ガス畜圧手段は、前記燃料供給の停止後、前記排気圧が大気圧相当値以下になった場合、前記遮断弁を閉弁し、前記復帰後、前記排気圧が前記大気圧相当値より大きくなった場合、前記遮断弁を開弁する。このようにすることで、内燃機関の制御装置は、燃料供給の復帰時での過剰な排気ガスの気筒内への供給を防ぐと共に、燃料供給の復帰後の過剰な排気圧上昇を防ぐ。従って、内燃機関の制御装置は、燃焼を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】内燃機関の概略構成の一例を示す。
【図2】実施形態に係るタイムチャートの一例を示す。
【図3】実施形態における処理手順を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
[内燃機関の概略構成]
図1は、本発明に係る内燃機関の制御装置が適用された内燃機関(エンジン)の概略構成図を示す。図中の実線矢印はガスの流れの一例を示している。
【0014】
内燃機関100は、主に、燃料噴射弁1と、吸気弁2と、点火プラグ3と、排気弁4と、電磁駆動機構(所謂、電磁カム)5、6と、気筒7と、燃焼室8と、ピストン9と、コンロッド10と、吸気通路11と、電子スロットル弁12と、サージタンク13と、吸気圧センサ14と、排気圧センサ15と、排気通路16と、第1触媒20と、第2触媒21と、排気遮断弁22と、ECU50と、を有する。なお、図1においては、説明の便宜上、1つの気筒7のみを示しているが、実際には内燃機関100は複数の気筒7を有するものとする。
【0015】
吸気通路11には外部から導入された吸気(空気)が通過し、電子スロットル弁12は吸気通路11を通過する吸気の流量を調整する。電子スロットル弁12は、ECU50から供給される制御信号S12によって開度(以後、「スロットル開度」と呼ぶ。)が制御される。サージタンク13は、吸気通路11上に設けられ、空気(吸気)を貯蔵するとともに、吸気ポートを介して各気筒の燃焼室8に吸気を分配する。また、サージタンク13内には、吸気圧センサ14が設けられている。吸気圧センサ14は、内燃機関100の吸気圧(以後、「吸気圧Pi」と呼ぶ。)を検出するセンサであり、ECU50にその検出信号S14を供給する。また、燃焼室8には、燃料噴射弁(インジェクタ)1によって噴射された燃料が供給される。
【0016】
更に、燃焼室8には、吸気弁2と排気弁4とが設けられている。吸気弁2は、開閉することによって、吸気通路11と燃焼室8との連通/遮断を制御する。排気弁4は、開閉することによって、排気通路16と燃焼室8との連通/遮断を制御する。吸気弁2及び排気弁4は、それぞれ電磁駆動機構5、6によって開弁時期や閉弁時期やリフト量などが制御される。この場合、電磁駆動機構5、6は、ECU50から供給される制御信号S5、S6によって制御される。
【0017】
燃焼室8では、吸気行程において上記のように供給された吸気と燃料との混合気(以後、「新気」とも呼ぶ。)が、圧縮行程を経た後、点火プラグ3によって点火されることにより爆発行程で燃焼される。この場合、燃焼によってピストン9が往復運動し、当該往復運動がコンロッド10を介してクランク軸(不図示)に伝達され、クランク軸が回転する。燃焼室8での燃焼により発生した排気ガスは、排気行程において排気通路16へ排出される。
【0018】
また、排気通路16上には、燃焼室8から近い順に、排気圧センサ15と、第1触媒20と、第2触媒21と、排気遮断弁22と、がそれぞれ設けられている。排気圧センサ15は、内燃機関100の排気圧(以後、「排気圧Pe」と呼ぶ。)を検出するセンサである。排気圧センサ15は、検出信号S15をECU50に供給する。第1触媒20は、燃焼室8の直下に配置されたスタート触媒であり、例えば、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を低温域から酸化可能な酸化触媒である。第2触媒21は、例えば三元触媒であり、CO、HC及び窒素酸化物(NOx)を二酸化酸素等に変換する。排気遮断弁22は、ECU50からの制御信号S22に基づき、第2触媒21下流の排気通路16の開閉を行う弁である。例えば、排気遮断弁22は、スロットル弁12及び吸気弁2が全閉した場合に形成される吸気系の閉空間の容積(以後、「吸気系容積」と呼ぶ。)と、排気弁4及び排気遮断弁22が全閉した場合に形成される排気系の閉空間の容積(以後、「排気系容積」と呼ぶ。)とが同一になる位置に配置される。このようにすることで、ECU50は、後述する吸気弁2及び排気弁4の制御を実行し、フューエルカット制御からの復帰時でのEGR(Exhaust Gas Recirculation)率を最大50%まで増やすことが可能となる。その他、排気遮断弁22は、制御するEGR率の上限に基づき、排気系容積が適切な容量になる位置に配置される。
【0019】
アクセル開度センサ23は、ドライバによる図示しないアクセルペダルの操作に対応するアクセル開度を検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ23は、検出したアクセル開度に相当する検出信号S23をECU50に供給する。
【0020】
ECU50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、内燃機関100の各構成要素に対して種々の制御を行う。例えば、ECU50は、上記のようにして供給された検出信号に基づいて、燃料噴射弁1、吸気弁2、排気弁4、及び排気遮断弁22等に対する制御を行う。そして、ECU50は、本発明における吸排気弁制御手段及び排気ガス畜圧手段として機能する。
【0021】
なお、図1の構成は、一例であり、本発明が適用可能な構成は、必ずしもこれに限定されない。例えば、内燃機関100は、吸気ポートに燃料噴射弁1が設置されたポート噴射であったが、これに代えて、燃焼室8に直接燃料を噴射する筒内噴射であってもよい。
【0022】
以後では、「フューエルカット制御」とは、気筒7への燃料噴射を停止する制御を指す。また、「フューエルカット制御からの復帰」とは、気筒7への燃料噴射を再開することを指す。
【0023】
[制御方法]
次に、ECU50が実行する吸気弁2、排気弁4、及び排気遮断弁22の制御について具体的に説明する。以後では、まず、吸気弁2及び排気弁4の制御について説明した後、排気遮断弁22の制御について説明する。なお、これらの制御は、組み合わせて適用することができる。
【0024】
(吸気弁及び排気弁の制御)
1.フューエルカット制御からの復帰時の制御
ECU50は、フューエルカット制御からの復帰時の最初の吸気行程において、吸気弁2を開弁する前に排気弁4を開弁して排気ガスを燃焼室8内に吸入する。これにより、ECU50は、点火プラグ3の周辺に新気を集めると共にそれ以外の空間には排気ガスを配置させ、失火の可能性を低減させる。
【0025】
これについて具体的に説明する。ECU50は、まず、搭載車両の減速中に所定条件が成立した場合、フューエルカット制御を実行する。上記の所定条件は、例えば、アクセルがオフになった際に車速が所定値よりも高い場合と設定される。また、ECU50は、フューエルカット制御時には、吸気弁2と排気弁4の両方を全閉密着し、吸気及び排気を停止させる。
【0026】
そして、ECU50は、所定条件が成立した場合、フューエルカット制御から復帰する。即ち、ECU50は、この場合、気筒7への燃料噴射を再開する。上記の所定条件は、例えば、フューエルカット制御中に車速が上述の所定値以下になった場合と設定される。
【0027】
また、ECU50は、フューエルカット制御から復帰する場合、各気筒7について、吸気弁2を開弁する前に排気弁4を開弁する。このように、ECU50は、フューエルカット制御から復帰する場合に、吸気弁2を開弁する前に排気弁4を開弁することで、成層燃焼を実現することができる。即ち、ECU50は、排気弁4を開弁し、その後に排気弁4を閉弁するとともに吸気弁2を開弁することで、最初に燃焼室8に供給された排気ガスを燃焼室8の下部付近、即ち点火プラグ3から離れた位置に滞留させると共に、新気を燃焼室8の上部付近、即ち点火プラグ3の周辺に集める。これにより、ECU50は、燃焼室8内のガスを点火しやすくすると共に燃焼(火炎)伝播しやすくする。従って、ECU50は、希薄燃焼を実現しつつ、失火を抑制することができる。
【0028】
次に、上述の制御を実行する際の、排気弁4及び吸気弁2の開弁期間について説明する。ECU50は、上述の制御実行時の排気弁4及び吸気弁2の開弁期間を、最適なEGR率になるように調整する。具体的には、上述の制御実行時の排気弁4の開弁期間の時間幅(以後、「第1時間幅」と呼ぶ。)は、燃焼室8に還流させる排気ガス量(以後、「EGR量」とも呼ぶ。)を考慮して定められる。即ち、ECU50は、排気弁4の開弁期間とEGR量とが正の相関関係を有することに基づき、フューエルカット制御からの復帰時のEGR量が所定の目標値になるように第1時間幅を設定する。より具体的には、ECU50は、排気圧Peと第1時間幅とを乗じて得た値がEGR量になるという前提に基づき、EGR量の目標値を排気圧Peで除算した値を第1時間幅に設定する。このようにすることで、ECU50は、フューエルカット制御からの復帰時のEGR量が所定の目標値になるように、第1時間幅を設定することができる。
【0029】
同様に、吸気弁2が開弁する時間幅(以後、「第2時間幅」と呼ぶ。)は、エンジントルクの要求値に基づき必要な新気のガス量(新気ガス量)、即ち新気ガス量の所定の目標値を考慮して定められる。即ち、ECU50は、吸気弁2の開弁期間と吸入される新気ガス量とが正の相関関係を有することに基づき、必要な新気ガス量が燃焼室8内に供給されるように第2時間幅を設定する。例えば、ECU50は、吸気圧Piと第2時間幅とを乗じて得た値が新気ガス量になるという前提に基づき、新気ガス量の目標値を吸気圧Piで除算した値を、第2時間幅に設定する。このようにすることで、ECU50は、フューエルカット制御からの復帰時の新気ガス量が所定の目標値になるように、第2時間幅を設定することができる。
【0030】
以上のように、ECU50は、フューエルカット制御の復帰時に、吸気弁2及び排気弁4を制御することで、フューエルカット制御からの復帰時のEGR率を適切に調整すると共に成層燃焼を実現することができる。
【0031】
2.フューエルカット制御の開始時での制御
ここで、ECU50がフューエルカット制御の開始時に吸気弁2及び排気弁4を全閉に固定する(以後、単に「ロックする」とも呼ぶ。)タイミングについて説明する。ECU50は、フューエルカット制御を開始する際、各気筒7について、排気行程が終了した時点で、それぞれ吸気弁2及び排気弁4をロックする。言い換えると、ECU50は、燃料噴射が気筒7ごとに同時噴射される場合又は独立噴射される場合に関わらず、燃焼室8内の燃料を燃焼させ、排気弁4を開弁してその排気ガスを排気通路16に排出させた後、気筒7ごとに吸気弁2及び排気弁4をロックする。これにより、ECU50は、フューエルカット制御中に、新気が燃焼室8に未燃焼のまま滞留するのを防ぐ。そして、ECU50は、フューエルカット制御の復帰時の燃焼を安定化させることができる。
【0032】
(排気遮断弁の制御)
次に、フューエルカット制御開始時及びその復帰時での排気遮断弁22の制御について説明する。
【0033】
1.フューエルカット制御の開始時での制御
ECU50は、フューエルカット制御を開始する場合、排気圧Peが大気圧又はこれに相当する値(以後、「大気圧相当値」と呼ぶ。)になった後、排気遮断弁22を閉弁する。これにより、ECU50は、フューエルカット制御から復帰時での失火を抑制する。ここで、大気圧相当値は、大気圧又は大気圧から所定差の範囲にある値を指す。上述の所定差は、フューエルカット制御から復帰時の失火を抑制可能な差に相当する。
【0034】
具体的には、ECU50は、全気筒でフューエルカット制御かつ吸気弁2及び排気弁4のロックを開始する場合、そのうち最後に燃焼を行う気筒(以後、特に「最終燃焼気筒」と呼ぶ。)の排気行程が終了した後に、排気遮断弁22を閉弁する。これにより、ECU50は、フューエルカット制御時の排気圧Peを大気圧相当値まで下げてから排気遮断弁22を閉弁することができる。
【0035】
このようにすることで、ECU50は、フューエルカット制御から復帰時に過剰な排気圧Peになるのを抑制する。即ち、ECU50は、上述した吸気弁2及び排気弁4の制御を実行した場合に、排気圧Peを大気圧相当値に抑制することで、過剰なEGR量の供給を防ぎ、失火の発生を防ぐことができる。
【0036】
2.フューエルカット制御の復帰時での制御
ECU50は、フューエルカット制御から復帰した場合、排気圧Peが大気圧相当値より大きくなったら排気遮断弁22を開弁する。これにより、ECU50は、内燃機関100での燃焼を円滑に行う。
【0037】
一般的に、フューエルカット制御から復帰した場合、各気筒7内で燃焼が再開される結果、排気圧Peは上昇する。この場合であっても、ECU50は、排気圧Peが大気圧相当値より大きくなった場合に排気遮断弁22を開弁する。このようにすることで、ECU50は、フューエルカット制御から復帰した場合であっても、排気圧Peの過剰な上昇を抑制することができる。
【0038】
[タイムチャート]
図2は、搭載車両の減速時でのフューエルカット制御からフューエルカット制御の復帰時に至るまでの内燃機関100の各要素のタイムチャートの一例を示す。図2は、上から順に、アクセル開度の時間変化を示すグラフB1、スロットル開度の時間変化を示すグラフB2、気筒7のサイクルを示す図、排気遮断弁22の状態の時間変化を示すグラフB3、吸気圧Piの時間変化を示すグラフB4、フューエルカット制御の有無を示すグラフB5、吸気弁2の状態の時間変化を示すグラフB6、排気弁4の状態の時間変化を示すグラフB7、排気圧Peの時間変化を示すグラフB8を示している。なお、気筒7のサイクルを示す図において、「吸」は、吸気行程を示し、「圧」は、圧縮行程を示し、「爆」は、爆発行程を示し、「排」は、排気行程を示す。また、タイムチャート中の気筒7は、最終燃焼気筒であるものとする。
【0039】
まず、タイムチャート開始後の時刻「t1」で、運転者がアクセルをオフにすることに起因して、アクセル開度及びスロットル開度が全閉状態になる(グラフB1、B2参照)。その後、ECU50は、全気筒について順次、吸気行程が終了した後に燃料噴射を停止する。図2では、ECU50は、最終燃焼気筒の吸気行程が終了した時刻「t2」で、フューエルカット制御をオンにしている(グラフB5参照)。なお、スロットル開度が全閉状態になった後、吸気圧Piは、漏れのため徐々に大気圧付近に至る(グラフB4参照)
また、ECU50は、最終燃焼気筒の排気行程が終了した時刻「t3」で、排気遮断弁22を閉弁する(グラフB3参照)。このようにすることで、ECU50は、排気圧Peを大気圧相当値まで下げた上で、排気ガスを排気通路16内に畜圧する。
【0040】
さらに、ECU50は、時刻t3からフューエルカット制御の復帰時である時刻「t4」まで、全ての気筒の吸気弁2及び排気弁4を閉弁にした状態でロックする(グラフB6、B7参照)。即ち、ECU50は、最終燃焼気筒の排気行程が終了し、排気ガスが燃焼室8から排気通路16に排出された時点で吸気弁2及び排気弁4をロックする。このようにすることで、ECU50は、フューエルカット制御中、気筒7内に未燃焼のガスを残留させるのを抑制し、フューエルカット制御からの復帰時に安定した燃焼を実現させる。
【0041】
次に、時刻t4において、ECU50は、フューエルカット制御から復帰し、気筒7の吸気弁2及び排気弁4のロックを解除する(グラフB5、B6、B7参照)。このとき、ECU50は、各気筒7のフューエルカット制御から復帰後の最初の吸気行程で、吸気弁2を開弁する前に排気弁4を第1時間幅だけ開弁する(グラフB7参照)。これにより、ECU50は、最終燃焼気筒の燃焼室8内に適量の排気ガスを供給する。そして、ECU50は、排気弁4の閉弁後の時刻「t5」から、吸気弁2を第2時間幅だけ開弁する(グラフB6参照)。これにより、ECU50は、燃焼室8内に適量の新気を供給すると共に、排気ガスを燃焼室8の下部付近、新気を点火プラグ3付近である燃焼室8の上部付近におよそ配置し、成層燃焼を行うことができる。
【0042】
次に、ECU50は、フューエルカット制御からの復帰後、排気圧Peが大気圧相当値より大きくなった時刻「t6」において、排気遮断弁22を開弁する(グラフB3参照)。これにより、ECU50は、フューエルカット制御からの復帰後に、排気圧Peが過剰に上昇するのを抑制することができる。
【0043】
(処理フロー)
図3は、本実施形態における処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、ECU50により所定の周期に従い繰り返し実行される。
【0044】
まず、ECU50は、フューエルカット制御を開始するか否か判定する(ステップS101)。具体的には、ECU50は、フューエルカット制御を開始するための所定条件が満たされるか否か判定する。
【0045】
そして、ECU50は、フューエルカット制御を開始する場合(ステップS101;Yes)、各気筒7で、排気行程終了後に吸気弁2及び排気弁4のロックを行う(ステップS102)。これにより、ECU50は、各気筒7内に未燃焼の燃料を残留させるのを抑制し、フューエルカット制御からの復帰時に安定した燃焼を実現する。一方、ECU50は、フューエルカット制御を開始しない場合(ステップS101;No)、引き続きフューエルカット制御を開始するか否か判定する。
【0046】
次に、ECU50は、最終燃焼気筒の排気行程が終了したか否か判定する(ステップS103)。そして、最終燃焼気筒の排気行程が終了した場合(ステップS103;Yes)、ECU50は、排気遮断弁22を閉弁させる(ステップS104)。即ち、ECU50は、全ての気筒7について排気行程が終了した時点で排気遮断弁22を閉弁させることで、排気圧Peを大気圧相当値まで下げる。これにより、フューエルカット制御から復帰時に過剰な排気圧Peであることに起因した失火を抑制することができる。一方、最終燃焼気筒の排気行程が終了していない場合(ステップS103;No)、ECU50は、引き続き、各気筒7で、排気行程終了後に吸気弁2及び排気弁4のロックを行う。
【0047】
次に、ECU50は、フューエルカット制御からの復帰要求を検知する(ステップS105)。即ち、ECU50は、フューエルカット制御から復帰するための所定条件が満たされたことを検知する。
【0048】
そして、ECU50は、排気弁4、吸気弁2を順に所定時間開弁する(ステップS106)。具体的には、ECU50は、フューエルカット制御から復帰時に、排気弁4を第1時間幅だけ開弁すると共に、排気弁4の開弁後に吸気弁2を第2時間幅だけ開弁する。これにより、ECU50は、点火プラグ3付近に新気を集めて成層燃焼を実現すると共に、適切なEGR量を燃焼室8内に供給する。従って、ECU50は、希薄燃焼を実現しつつ、失火を抑制することができる。
【0049】
次に、ECU50は、排気圧Peが大気圧相当値より大きいか否か判定する(ステップS107)。そして、排気圧Peが大気圧相当値より大きい場合(ステップS107;Yes)、ECU50は、排気遮断弁22を開弁する(ステップS108)。これにより、ECU50は、過剰な排気圧Peの上昇を抑制し、内燃機関100の燃焼を円滑化する。一方、排気圧Peが大気圧相当値以下の場合(ステップS107;No)、ECU50は、引き続き排気遮断弁22を閉弁状態に保つ。
【0050】
[変形例]
上述の排気遮断弁22の制御では、ECU50は、フューエルカット制御開始時では、最終燃焼気筒の排気行程終了後に排気遮断弁22を閉弁して排気圧Peを大気圧相当値まで下げると共に、フューエルカット制御からの復帰時では、排気圧Peが大気圧相当値より大きくになった場合に排気遮断弁22を閉弁した。しかし、本発明が適用可能な方法は、これに限定されない。
【0051】
これに代えて、またはこれに加えて、ECU50は、排気圧Peが大気圧相当値以下の場合に排気遮断弁22を閉弁し、排気圧Peが大気圧相当値より大きい場合に排気遮断弁22を開弁してもよい。即ち、この場合、ECU50は、フューエルカット制御開始時又はフューエルカット制御からの復帰時であるか否かに関わらず、大気圧相当値に基づき排気遮断弁22を制御する。
【0052】
この制御方法によっても、ECU50は、先の実施形態で説明した制御方法と同様に、排気圧Peの過剰な上昇を抑制することができる。具体的には、ECU50は、フューエルカット制御開始時には排気圧Peが大気圧相当値以下になった時点で排気遮断弁22を閉弁し、適切な排気圧Peの範囲で排気ガスを畜圧する。また、ECU50は、フューエルカット復帰時には排気圧Peが大気圧相当値より大きくなった時点で排気遮断弁22を開弁し、排気圧Peの過剰な上昇を抑制する。
【0053】
以上のように、変形例によっても、ECU50は、内燃機関100での燃焼を円滑に実行することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 燃料噴射弁
2 吸気弁
3 点火プラグ
4 排気弁
5、6 電磁駆動機構
7 気筒
9 ピストン
10 コンロッド
11 吸気通路
12 電子スロットル弁
13 サージタンク
14 吸気圧センサ
15 排気圧センサ
16 排気通路
20 第1触媒
21 第2触媒
22 排気遮断弁
50 ECU
100 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の気筒と、
前記気筒に設けられた吸気弁と、
前記気筒に設けられた排気弁と、
前記吸気弁の近傍に設けられた点火プラグと、
前記気筒から排出された排気ガスを溜める排気ガス畜圧手段と、
燃料供給の停止時に前記吸気弁及び前記排気弁を閉弁した状態から前記燃料供給の復帰をする場合、前記吸気弁を開弁して燃料を含む新気を前記気筒内に供給する前に、前記排気弁を開弁して前記排気ガスを前記気筒内に供給する吸排気弁制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気ガス畜圧手段は、前記排気ガスの排気圧を大気圧相当値に保持する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記気筒と連通する排気通路と、
前記排気通路上に設けられた遮断弁と、をさらに備え、
前記排気ガス畜圧手段は、前記排気圧が大気圧相当値以下の場合、前記遮断弁を閉弁し、前記排気圧が前記大気圧相当値より大きい場合、前記遮断弁を開弁する請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記排気ガス畜圧手段は、前記燃料供給の停止後、前記排気圧が大気圧相当値以下になった場合、前記遮断弁を閉弁し、前記復帰後、前記排気圧が前記大気圧相当値より大きくなった場合、前記遮断弁を開弁する請求項3に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144702(P2011−144702A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4027(P2010−4027)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】