説明

内燃機関の自動停止始動装置およびこれを搭載する自動車並びに自動停止始動装置の制御方法

【課題】停止位置制御を伴う内燃機関の運転停止を迅速に行なう。
【解決手段】車速Vが略値0の車速条件以外の他の自動停止条件が成立した状態で車速Vが所定車速Vref以下となったとき(S110〜S130)、所定時間以内に自動停止条件が成立すると予測し、空調用コンプレッサの駆動を禁止すると共にエンジンの各気筒のいずれかを次回の自動始動に適した角度で停止させるために目標回転数Ne*でエンジン22を制御する停止位置制御を実行し(S150,S160)、車速Vが略値0となって自動停止条件が成立し且つエンジン回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定したとき(S180〜S200)、燃料噴射弁126の燃料噴射を停止してエンジン22の運転を停止させる。これにより、自動停止条件が成立したときに直ちに燃料噴射を停止できるから、停止位置制御を伴うエンジン22の運転停止を迅速に行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する内燃機関の自動停止始動装置およびこれを搭載する自動車並びに自動停止始動装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関の自動停止始動装置としては、自動停止条件が成立したときにはエンジンを自動停止し、自動始動条件が成立したときには自動停止したエンジンを自動始動する自動車に搭載されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、エンジンの自動停止条件が成立したときには、エンジンのクランク軸の回転抵抗を低減するためにオルタネータの発電量を低下すると共にエンジンの回転速度を通常のアイドル回転速度よりも少し高い回転速度で安定させる制御を実行し、エンジンの回転速度が目標速度で安定したときに燃料噴射を停止し、エンジンの回転速度が基準速度まで低下したときにスロットル弁の閉弁やオルタネータの発電量の調整を行なうことにより、エンジンを再始動に適した適正範囲内で停止させることができるとしている。
【特許文献1】特開2005−282434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように自動停止条件が成立したときにエンジンの回転速度を調整するなどの所定の準備を行なった後に内燃機関の燃料噴射を停止する制御を行なう自動停止始動装置では、準備に要する時間が長くなると、自動停止条件が成立してから実際にエンジンの運転が停止されるまでに遅れが生じ、運転者に違和感を感じさせてしまう。
【0004】
本発明の内燃機関の自動停止始動装置およびその制御方法は、内燃機関を自動停止する際に運転者に違和感を与えるのを抑制することを目的の一つとする。また、本発明の内燃機関の自動停止始動装置およびその制御方法は、所定の停止準備制御を伴う内燃機関の自動停止を迅速に行なうことを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の内燃機関の自動停止始動装置およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の内燃機関の自動停止始動装置は、
内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する内燃機関の自動停止始動装置であって、
所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測する停止条件成立予測手段と、
前記所定の停止条件が成立すると予測したとき、前記内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、前記所定の停止条件が成立し且つ前記停止準備制御が完了したとき、前記内燃機関の燃料噴射が停止されて該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する停止制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の内燃機関の自動停止始動装置では、所定時間以内に所定の停止条件が成立するのを予測し、所定の停止条件が成立すると予測したとき内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、所定の停止条件が成立し且つ停止準備制御が完了したとき内燃機関の燃料噴射が停止されて内燃機関の運転が停止されるよう制御する。これにより、停止準備制御の実行に時間を要するものとしても、所定の停止条件が成立したときに迅速に内燃機関の運転を停止させることができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の内燃機関の自動停止始動装置において、前記停止制御手段は、前記停止準備制御として前記内燃機関が所定回転数で安定して回転するよう該内燃機関を制御する手段であるものとすることもできる。内燃機関が所定回転数で安定している状態で燃料噴射を停止させることにより、比較的高い確率をもって内燃機関の停止位置を所望の位置たとえば次回に内燃機関を始動する際に始動性が良好となる位置とすることができる。この場合の、内燃機関からの動力を用いて駆動する機器を備える自動車に搭載された本発明の内燃機関の自動停止始動装置において、前記停止制御手段は、前記停止準備制御として前記内燃機関の負荷変動が抑制されるよう前記機器の駆動を制限する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より短時間で内燃機関を所定回転数で安定させることができる。ここで、「機器の駆動を制限」には、機器の駆動状態を略一定とするものの他、機器の駆動を停止するものも含まれる。また、「機器」には、空調装置のコンプレッサが含まれる。
【0009】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動装置において、前記所定時間は、前記停止準備制御の実行に通常要する時間以上の時間として設定されてなるものとすることもできる。こうすれば、所定の停止条件が成立した直後に燃料噴射を停止できるから、内燃機関の運転をより迅速に停止させることができる。
【0010】
さらに、本発明の内燃機関の自動停止始動装置において、前記所定の停止条件は、車速が略値0である車速条件を含む複数の条件の成立により成立する条件であり、前記停止条件成立予測手段は、前記複数の条件のうち前記車速条件以外の他の条件が成立すると共に車速が所定車速以下であるときに前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立すると予測する手段であるものとすることもできるし、前記所定の停止条件は、車速が略値0である車速条件を含む複数の条件の成立により成立する条件であり、前記停止条件成立予測手段は、前記複数の条件のうち前記車速条件以外の他の条件が成立しているときに車速と車両加速度とに基づいて前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測する手段であるものとすることもできる。
【0011】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動装置において、前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立すると予測したにも拘わらず該所定時間以内に該所定の停止条件が成立しなかったときには前記停止準備制御の実行を解除する実行解除手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、停止条件の成立の予測が外れたときでも適切に対処することができる。
【0012】
本発明の自動車は、
上述した各態様のいずれかの本発明の内燃機関の自動停止始動装置、即ち、基本的には、内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する内燃機関の自動停止始動装置であって、所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測する停止条件成立予測手段と、前記所定の停止条件が成立すると予測したとき、前記内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、前記所定の停止条件が成立し且つ前記停止準備制御が完了したとき、前記内燃機関の燃料噴射が停止されて該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する停止制御手段と、を備える内燃機関の自動停止始動装置を搭載する
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の自動車では、本発明の内燃機関の自動停止始動装置を搭載するから、本発明の自動停止始動装置が奏する効果と同様の効果、例えば、内燃機関を自動停止する際に運転者に違和感を与えるのを抑制することができる効果や所定の停止準備制御を伴う内燃機関の自動停止を迅速に行なうことができる効果などの効果を奏することができる。
【0014】
本発明の自動停止始動装置の制御方法は、
内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する自動停止始動装置の制御方法であって、
(a)所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測し、
(b)前記所定の停止条件が成立すると予測したとき、前記内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、
(c)前記所定の停止条件が成立し且つ前記停止準備制御が完了したとき、前記内燃機関の燃料噴射が停止されて該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する
ことを要旨とする。
【0015】
この本発明の自動停止始動装置の制御方法によれば、所定時間以内に所定の停止条件が成立するのを予測し、所定の停止条件が成立すると予測したとき内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、所定の停止条件が成立し且つ停止準備制御が完了したとき内燃機関の燃料噴射が停止されて内燃機関の運転が停止されるよう制御する。これにより、停止準備制御の実行に時間を要するものとしても、所定の停止条件が成立したときに迅速に内燃機関の運転を停止させることができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としての内燃機関の自動停止始動装置を搭載する自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22からクランクシャフト24に出力された動力を変速してデファレンシャルギヤ32を介して駆動輪34a,34bに伝達するオートマチックトランスミッション26と、エンジン22とオートマチックトランスミッション26とを駆動制御するエンジン変速機用電子制御ユニット(以下、EGATECUという)28と、ベルト35を介してエンジン22に接続されエンジン22からの動力により発電するオルタネータ36と、エンジン22をモータリング可能なスタータモータ(図中、STと表示)37と、オルタネータ36で発電された電力を充電可能でスタータモータ37に電力の供給が可能なバッテリ38と、ベルト35を介してエンジン22に接続され乗員室内の空気調和を行なうエアコンディショナに用いられる空調用コンプレッサ42と、空調用コンプレッサ42を含むエアコンディショナをコントロールする空調用電子制御ユニット(以下、空調ECUという)44と、エンジン22のアイドルストップ制御を司る電子制御ユニット50とを備える。
【0018】
エンジン22は例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な通常の内燃機関として構成されており、オートマチックトランスミッション26はトルクコンバータと複数の遊星歯車機構とブレーキやクラッチなどから構成される有段式の通常の自動変速装置として構成されている。図2にエンジン22の構成の概略を示す。
【0019】
エンジン22は、図示するように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト24の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0020】
EGATECU28は、図示しないCPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶したROMと、データを一時的に記憶するRAMと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。このEGATECU28には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号やオートマチックトランスミッション26の状態を検出する種々のセンサからの信号,イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ここで、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号としては、例えば、クランクシャフト24の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などがある。また、EGATECU28からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号やオートマチックトランスミッション26を駆動するための種々の制御信号が出力ポートを介して出力されている。ここで、エンジン22を駆動するための種々の制御信号としては、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号やスロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などがある。また、オートマチックトランスミッション26を駆動するための種々の制御信号としては、ブレーキやクラッチへの駆動信号などがある。EGATECU28は、電子制御ユニット50と通信しており、各種データや制御信号のやり取りを行なっている。
【0021】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶したROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。この電子制御ユニット50からは、オルタネータ36への駆動信号やスタータモータ37への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50は、EGATECU28や空調ECU44と通信しており、各種データや制御信号のやり取りを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例の自動車20では、停車時(車速Vが略値0のとき)にアクセルペダル63が踏み込まれていないアクセルOFFであると共にブレーキペダル65が踏み込まれたブレーキONの状態でエンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以下であるなどの所定の自動停止条件が成立したときにエンジン22を自動停止し、ブレーキOFFされたりアクセルONされるなどの所定の自動始動条件が成立したときにエンジン22を自動始動するアイドルストップ制御が行なわれている。実施例の内燃機関の自動停止始動装置としては、各種センサと、各種センサからの信号に基づいてエンジン22の自動始動と自動停止とを行なう電子制御ユニット50,EGATECU28などが相当する。
【0023】
こうして構成された実施例の自動車20の動作、特に、エンジン22を自動停止する際の動作について説明する。図3は、実施例の電子制御ユニット50により実行される自動停止制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22が運転されている最中に所定時間毎(例えば数十msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
自動停止制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、車速Vやエンジン22の回転数Ne,アクセル開度Acc,ブレーキペダルポジションBPなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角CAに基づいて演算されたものをEGATECU28から通信により入力するものとした。また、車速Vとアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPは、それぞれ車速センサ68とアクセルペダルポジションセンサ64とブレーキペダルポジションセンサ66により検出されたものをEGATECU28から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力した車速Vが所定車速Vref以下か否か、入力したエンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以下か否か、その他のエンジン22の自動停止条件が成立しているか否かを判定する(ステップS110〜S130)。ここで、所定車速Vrefは、所定時間Tref以内に自動停止条件の成立するかを予測するものとして設定されるものであり、実施例では、ブレーキONにより所定車速Vrefを下回ってから停車(自動停止条件が成立)するまでに要する時間が後述する停止位置制御の実行に通常要する時間又はそれよりも若干長い時間に相当する時間として例えば時速10kmなどのように定めるものとした。車速Vが所定車速Vrefよりも大きいと判定されたり、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nrefよりも大きいと判定されたり、その他のエンジン22の自動停止条件のいずれかが成立していないと判定されたときには、アクセル開度Accや車速Vに基づいてエンジン22やオートマチックトランスミッション26を駆動制御する通常制御をEGATECU28に指示して(ステップS140)、ステップS100に戻る。
【0026】
一方、車速Vが所定車速Vref以下と判定され且つエンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以下でありその他の車速V以外の自動停止条件も成立していると判定されたときには、所定時間Tref以内に自動停止条件が成立すると予測して、エアコンディショナ(空調用コンプレッサ42)の駆動を禁止すると共に(ステップS150)、目標回転数Ne*でエンジン22を回転させる停止位置制御の開始をEGATECU28に指示する(ステップS160)。エアコンディショナの駆動が禁止されると、空調ECU44は、空調用コンプレッサ42を含むエアコンディショナの駆動を停止する。また、停止位置制御の開始の指示を受けたEGATECU28は、エンジン22が目標回転数Ne*で回転するよう吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御を行なう。ここで、停止位置制御は、次回にエンジン22を自動始動する際に始動性を良好にするためにエンジン22の各気筒のいずれかを次回の自動始動に適した角度で停止させる際の準備として行なわれる制御である。
【0027】
こうして停止位置制御を実行すると、前述した所定時間Trefが経過しているか否かを判定し(ステップS170)、所定時間Trefが経過していないと判定されると、車速Vが値0近傍にあるか否か,エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍にあると共に目標回転数Ne*近傍で安定しているか否かを判定する(ステップS180〜S200)。ここで、車速Vが値0近傍にあるか否かの判定は、前述したステップS120,S130で既に車速V以外の自動停止条件は成立していると判定しているから、自動停止条件が成立しているか否かを判定することを意味する。また、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定しているか否かの判定は、前述した停止位置制御が完了したか否かを判定することを意味する。なお、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定しているか否かの判定は、例えば、所定時間に亘って継続してエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍にあるか否かにより判定することができる。所定時間Trefが経過していない状態で、車速Vが値0近傍にないと判定されたり、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍にないと判定されたり、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定していないと判定されたときには、ステップS100に戻ってステップS100〜S200の処理を繰り返す。
【0028】
一方、車速Vが値0近傍にあると判定され且つエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定していると判定されると、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAを入力し(ステップS210)、入力したクランク角CAに基づいて所定の燃料カットタイミングが到来するまで待つ(ステップS220)。ここで、所定の燃料カットタイミングは、目標回転数Ne*で回転しているエンジン22の各気筒のいずれかを次回にエンジン22を自動始動する際の始動に適した角度で停止させるためのタイミングとして実験上で定めたものを用いるものとした。燃料カットタイミングが到来すると、燃料噴射制御と点火制御を停止し(ステップS230)、エンジン22が完全に停止するのを待って(ステップS230)、本ルーチンを終了する。これにより、比較的高い確率をもってエンジン22の各気筒のいずれかを次回の自動始動に適した角度で停止させることができ、次回にエンジン22を自動始動する際の始動性を良好なものとすることができる。
【0029】
ステップS170で所定時間Trefが経過したと判定されると、所定時間Tref以内に自動停止条件が成立すると予測したにも拘わらず自動停止条件が成立していないと判断し、アクセル開度Accや車速Vに基づいてエンジン22やオートマチックトランスミッション26を駆動制御する通常制御をEGATECU28に指示して(ステップS140)、ステップS100に戻る。これにより、停止位置制御の実行が解除されると共にステップS150でエアコンディショナ(空調用コンプレッサ42)の駆動禁止も解除されることになる。
【0030】
図4は、エンジン22を自動停止させる際の比較例における車速Vと空調用コンプレッサ42の状態と自動停止条件の状態とエンジン22の回転数Neの時間変化の様子を示し、図5は、エンジン22の自動停止させる際の実施例における車速Vと空調用コンプレッサ42の状態と自動停止条件の状態とエンジン22の回転数Neの時間変化の様子を示す。比較例では、自動停止条件が成立した時刻t11に、空調用コンプレッサ42の駆動を禁止してエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようエンジン22を制御する停止位置制御を実行し、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定した時刻t12に、燃料噴射弁126の燃料噴射を停止してエンジン22の運転を停止させる(時刻t13)。したがって、停止位置制御の実行に要する時間だけ自動停止条件が成立してからエンジン22の燃料噴射が停止されるまでに遅れが生じるから、エンジン22の運転の停止に遅れが生じる。一方、実施例では、車速V以外の他の自動停止条件が成立した状態で車速Vが所定車速Vref以下となった時刻t21に、所定時間Tref以内に自動停止条件が成立すると予測し、空調用コンプレッサ42の駆動を禁止してエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようエンジン22を制御する停止位置制御を実行し、車速Vが値0近傍となって自動停止条件が成立し且つエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*近傍で安定した時刻t22に、燃料噴射弁126の燃料噴射を停止してエンジン22の運転を停止させる(時刻t23)。このように、自動停止条件の成立を前もって予測して停止位置制御を実行しておくことにより、自動停止条件が成立したときにエンジン22の燃料噴射を速やかに停止することができるから、エンジン22の運転を迅速に停止させることができる。
【0031】
以上説明した実施例の自動車20によれば、自動停止条件の成立を前もって予測して停止位置制御を実行しておくことにより、自動停止条件が成立したときにエンジン22の燃料噴射を速やかに停止することができ、エンジン22の運転を迅速に停止させることができる。この結果、エンジン22の運転の停止に遅れが生じることに起因する違和感を運転者に与えるのを抑制することができる。しかも、停止位置制御を実行している最中には、空調用コンプレッサ42の駆動を禁止するから、エンジン22に負荷変動が生じるのを抑制でき、停止位置制御の際にエンジン22の回転数Neを迅速に目標回転数Ne*で安定させることができる。
【0032】
実施例の自動車20では、停止位置制御の実行時に空調用コンプレッサ42の駆動を禁止するものとしたが、オルタネータ36の駆動を禁止するなどエンジン22に接続された他の補機の駆動を禁止するものとしてもよいし、エンジン22の負荷変動を抑制できれば、こうした駆動の禁止に限られず、エンジン22の動力消費を略一定に保ったままの状態で駆動を許可するものとしても構わない。
【0033】
実施例の自動車20では、車速Vが値0近傍である車速条件以外の自動停止条件が成立した状態で車速Vが所定車速Vref以下となったときに、所定時間Tref以内に自動停止条件が成立すると予測するものとしたが、車両加速度(減速度)を検出する加速度センサを設けて検出された車両加速度と車速Vとに基づいて所定時間Tref以内に自動停止条件が成立するかを予測するものとしてもよい。
【0034】
実施例では、所定時間Tref以内にエンジン22の自動停止条件が成立するのを前もって予測して停止位置制御を実行すると共に自動停止条件が成立し且つ停止位置制御の実行が完了したときに燃料噴射を停止させてエンジン22の運転を停止させる本発明の自動停止始動装置を、トルクコンバータを介してエンジン22から入力される動力をオートマチックトランスミッション26により変速して駆動輪34a,34bに伝達する自動車20に適用するものとしたが、所定の停止条件が成立したときに内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動することができればハイブリッド自動車など他の如何なる自動車に適用するものとしてもよい。
【0035】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例である内燃機関の自動停止始動装置を搭載する自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】実施例の電子制御ユニット50により実行される自動停止制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】エンジン22を自動停止する際の比較例における車速Vと空調用コンプレッサ42の状態と自動停止条件の状態とエンジン22の回転数Neの時間変化の様子を示す説明図である。
【図5】エンジン22を自動停止する際の実施例における車速Vと空調用コンプレッサ42の状態と自動停止条件の状態とエンジン22の回転数Neの時間変化の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
20 自動車、22 エンジン、24 クランクシャフト、26 オートマチックトランスミッション、28 エンジン変速機用電子制御ユニット(EGATECU)、32 デファレンシャルギヤ、34a,34b 駆動輪、35 ベルト、36 オルタネータ、37 スタータモータ、38 バッテリ、42 空調用コンプレッサ、44 空調用電子制御ユニット(空調ECU)、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する内燃機関の自動停止始動装置であって、
所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測する停止条件成立予測手段と、
前記所定の停止条件が成立すると予測したとき、前記内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、前記所定の停止条件が成立し且つ前記停止準備制御が完了したとき、前記内燃機関の燃料噴射が停止されて該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する停止制御手段と、
を備える内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項2】
前記停止制御手段は、前記停止準備制御として前記内燃機関が所定回転数で安定して回転するよう該内燃機関を制御する手段である請求項1記載の内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項3】
内燃機関からの動力を用いて駆動する機器を備える自動車に搭載された請求項2記載の内燃機関の自動停止始動装置であって、
前記停止制御手段は、前記停止準備制御として前記内燃機関の負荷変動が抑制されるよう前記機器の駆動を制限する手段である
内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項4】
前記機器は、空調装置のコンプレッサを含む機器である請求項3記載の内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項5】
前記所定時間は、前記停止準備制御の実行に通常要する時間以上の時間として設定されてなる請求項1ないし4いずれか記載の内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の内燃機関の自動停止始動装置であって、
前記所定の停止条件は、車速が略値0である車速条件を含む複数の条件の成立により成立する条件であり、
前記停止条件成立予測手段は、前記複数の条件のうち前記車速条件以外の他の条件が成立すると共に車速が所定車速以下であるときに前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立すると予測する手段である
内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項7】
請求項1ないし5いずれか記載の内燃機関の自動停止始動装置であって、
前記所定の停止条件は、車速が略値0である車速条件を含む複数の条件の成立により成立する条件であり、
前記停止条件成立予測手段は、前記複数の条件のうち前記車速条件以外の他の条件が成立しているときに車速と車両加速度とに基づいて前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測する手段である
内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項8】
前記所定時間以内に前記所定の停止条件が成立すると予測したにも拘わらず該所定時間以内に該所定の停止条件が成立しなかったときには前記停止準備制御の実行を解除する実行解除手段を備える請求項1ないし7いずれか記載の内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか記載の内燃機関の自動停止始動装置を搭載する自動車。
【請求項10】
内燃機関を備える自動車に搭載され、所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を自動停止し所定の始動条件が成立したときに自動停止した内燃機関を自動始動する自動停止始動装置の制御方法であって、
(a)所定時間以内に前記所定の停止条件が成立するのを予測し、
(b)前記所定の停止条件が成立すると予測したとき、前記内燃機関を自動停止させるための準備としての所定の停止準備制御を実行し、
(c)前記所定の停止条件が成立し且つ前記停止準備制御が完了したとき、前記内燃機関の燃料噴射が停止されて該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する
自動停止始動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−270676(P2007−270676A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95086(P2006−95086)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】