説明

内燃機関用構造体、位置検知機構付き内燃機関、および液体状態検知機構付き内燃機関

【課題】 中空部の状態を基体外部から直接確認することができる内燃機関用構造体を提供する。
【解決手段】 中空部を備え、前記中空部で生じる爆発に応じて前記中空部内を運動する運動体が収容される基体と、前記基体に設けられた、前記基体の外側から前記中空部に入射する光、および前記基体の外側から前記中空部に出射する光を透過する窓部材とを備え、前記窓部材が、サファイア単結晶からなることを特徴とする内燃機関用構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用構造体、位置検知機構付き内燃機関、および液体状態検知機構付き内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるレシプロエンジンや、いわゆるロータリーエンジンといわれる内燃機関が、従来から広く用いられている。例えばレシプロエンジンは、中空部を有する基体に、この中空部の爆発に応じて往復運動するピストンが封入されている。また、ロータリーエンジンは、中空部を有する基体に、この中空部内の爆発に応じて回転運動するローター(回転子)が封入されており、中空部には通常、これらピストンやローターの運動を滑らかにするための潤滑油も封入されている。
【0003】
内燃機関を使用するにつれ、この潤滑油に金属粉が混入したり、潤滑油が組成変化して粘度が高まったりする。これら潤滑油の変化(劣化)は、内燃機関の出力特性の低化につながる。内燃機関の出力特性を維持するには、中空部内の潤滑油の状態を監視し、状態変化に応じた適切なタイミングで、この中空部内の潤滑油を交換することが望まれる。しかしながら、中空部に封入された潤滑油の状態や、中空部内で運動するピストンやローターの動きなどは、基体の外部から直接視認することができない。従来から、これら潤滑油の変化や、ピストンやローターの動きを監視するための装置や方法が提案されている。例えば下記特許文献1には、自動車エンジンのオイルパンに溜まった潤滑油に浸漬する潤滑油汚濁度測定装置の一例が開示されている。下記特許文献1記載の潤滑油汚濁度測定装置は、発光素子と受光素子とを備える光学センサを、基体の内部に溜まった潤滑油に浸漬している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−22458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基体の中空部に溜まった潤滑油は、中空部での爆発によって高温になるため、センサの動作が不安定になる課題がある。中空部の爆発によって高温・高圧となる内燃機関の中空部や、基体自体にセンサを配置する構成では、センサ自体の動作信頼性が確保できないといった課題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、中空部の状態を基体外部から直接確認することができる内燃機関用構造体、ピストンやロータの位置を高精度に検知づることができる位置検知機構付き内燃機関、および内燃機関の中空部に貯留された液体の状態を高精度に検知することができる液体状態検知機構付き内燃機関を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明は、中空部を備え、前記中空部で生じる爆発に応じて前記中空部内を運動する運動体が収容される基体と、前記基体に設けられた、前記基体の外側から前記中空部に入射する光、および前記基体の外側から前記中空部に出射する光を透過する窓部材とを備え、前記窓部材が、サファイア単結晶からなることを特徴とする内燃機関用構造体を提供する。
【0008】
また、上述の内燃機関用構造体と、前記窓部材を透過して前記中空部から前記基体の外側へ出射する光を検知する光検出部と、前記光検出部による検出情報に基づき、前記中空部における前記運動体の位置を検知するピストン位置検知部とを備えることを特徴とする位置検知機構付き内燃機関を併せて提供する。また、上述の内燃機関用構造体と、前記窓部材を透過して前記中空部から前記基体の外側へ出射する光を検知する光検出部と、前記光検出部による検出情報に基づき、前記中空部に封入された潤滑油の状態を検知する検知部とを備えることを特徴とする液体状態検知機構付き内燃機関を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内燃機関用構造体は、基体の強度を比較的高く維持しつつ、基体の中空部の状態を、外部から直接光学的に確認することができる。本発明の位置検知機構付き内燃機関は、基体の中空部で運動する運動体の位置を高精度に検知することができる。本発明の液体状態検知機構は、基体の中空部に貯留された液体の汚濁度等の状態を、高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の内燃機関用構造体の一実施形態を備えて構成されたエンジンについて説明する概略断面図である。
【図2】本発明の内燃機関用構造体の一部を拡大して示す概略断面図である。
【図3】図2の一部をさらに拡大して示す概略断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の内燃機関用構造体の他の実施形態について説明する概略断面図である。
【図5】本発明の位置検知機構付き内燃機関の一実施形態、および、本発明の液体状態検知機構付き内燃機関の一実施形態について説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の内燃機関用構造体の一実施形態であるエンジン部材10を備えて構成された、エンジン1について説明する概略断面図である。
【0012】
エンジン部材10は、中空部12Aを備える基体12と、基体12に備えられた窓部材14と、を備える。窓部材14は板状のサファイア単結晶からなる。エンジン部材10では、基体12に複数の窓部材14(窓部材14a〜14d)が配置されている。基体12は、鋳鉄やアルミニウム合金等からなる。
【0013】
エンジン1は、いわゆるレシプロエンジンであり、エンジン部材10と、基体12の中空部12Aで生じる爆発に応じて中空部12A内を運動する運動体であるピストン22と、コンロッド24と、クランクディスク26、吸気バルブ32と、排気バルブ34と、点火プラグ36とを備える。吸気バルブ32は、基体12に設けられた吸気ポート32aに、排気バルブ34は、基体12に設けられた排気ポート34aに、それぞれ配置されている。基体12は、ピストン22が内部を往復するシリンダ部42と、クランクディスク26が内部に配置されるクランク部44とを有している。窓部材14は、基体12のシリンダ部42に2つ(窓部材14a、14b)、クランク部44に2つ(窓部材14c、14d)、それぞれ設けられている。中空部12Aのうちクランク部44に対応する部分(クランク中空部44A)には、公知のエンジンオイルであるオイル60が貯留されている。
【0014】
中空部12Aのうちシリンダ部42に対応する部分(シリンダ中空部42A)では、吸気ポート32aを介して流入した燃料気体が、点火プラグ36による放電によって爆発する。この爆発の圧力によって、ピストン22が図中の下方向に押し下げられ、爆発のエネ
ルギーが、コンロッド24およびクランクディスク26を介して回転運動に変換される。ピストン22が最下点(下死点)まで下降してしまうと、クランクディスク26の慣性によってピストン22はシリンダ中空部42Aを上昇する。この際、排気バルブ34は開状態とされ、シリンダ中空部42A内の気体は、排気ポート34aを介して排出される。ピストン22が最上点(上死点)まで上昇してしまうと、クランクディスク26の慣性によってピストン22はシリンダ中空部42Aを下降する。この際、吸気バルブ32が開状態とされて、吸気ポート32aを介してシリンダ中空部42Aに燃料気体が流入し、ピストン22の上昇によって、流入した燃料気体がシリンダ中空部42Aにおいて圧縮される。圧縮された燃料気体は、点火プラグ36の放電によって爆発し、爆発のエネルギーによってピストン22が下方向に押し下げられる。エンジン1では、以上の動作が繰り返される。
【0015】
基体12の中空部12、特にシリンダ中空部42Aでは爆発が生じ、基体12は高温に熱せられ、高い圧力を受ける。エンジン部材10では、窓部材14が基体12に設けられているが、この窓部材14はサファイア単結晶からなり、高い熱および高い圧力を受けても、割れや変形等が生じ難い。また、広範囲の波長領域の光を良好に透過するので、基体12の中空部12Aに外部から高い透過率で光を入射し、中空部12Aから基体12の外部へと高い透過率で光を出射させることができる。このため、エンジン部材10では、例えば、窓部材14を介して、シリンダ部42を移動するピストン22や、クランク部44内を移動するコンロッド24やクランクディスク26等の動きを視認することもできる。また、クランク部44に貯留されたエンジンオイル60についても、窓部材14を介して視認することができる。また後述するように、受光素子を備えたセンサを用いて、窓部材14から出射した光を高精度に検出することで、中空部12A内部の状態、例えばピストン22やクランクディスク26の位置や、エンジンオイル60の汚染度等を検知することもできる。
【0016】
図2は、エンジン部材10の一部を拡大して示す概略断面図である。また、図3は図2における窓部材14a付近をさらに拡大して示す断面図である。窓部材14aは、基体1
2に設けられた貫通孔の内周面にロウ付け接合されている。図2および3において、52がロウ材、53はメタライズ層、54は凸部である。図2および3では、複数の窓部材のうち窓部材14aを代表して示しているが、窓部材14b〜窓部材14dも同様の構成とされている。
【0017】
エンジン部材10では、略円板状の窓部材14が、基体12に設けられた貫通孔の内周面にロウ材52を介して接合されている。窓部材14は、側面および一方主面14Aの周縁部にメタライズ層53が被着されている。エンジン部材10では、メタライズ層53が被着される一方主面14Aは、基体14の外側を向いた面となっている。基体12の貫通孔の内周面には凸部54が、貫通孔の周方向全体に連続して設けられている。窓部材14は、貫通孔の内周面および凸部54の側面と、メタライズ層53およびロウ材52を介して接合されている。基体12の貫通孔の内周面や、凸部54の側面(窓部材14の一方主面14Aと対向する側の側面)には、例えばNiメッキ等のメッキ層が被着されている。
【0018】
メタライズ層53は、窓部材14の側面全体と、窓部材14の一方主面14Aの周縁部全体に設けられている。メタライズ層53は、窓部材14の一方主面14Aにおいて、外周端から窓部材14の中心側へ、凸部54よりも突出した位置まで被着されている。メタライズ層53は、一方主面14Aにおいて、凸部54はの厚みWの0.5乃至2倍の長さだけ、凸部54よりも突出した位置まで被着されている。
【0019】
エンジン部材10では、基体12の貫通孔の内周面に凸部54を設け、この凸部54の側面と窓部材14の一方主面14Aの周縁部とをロウ付けすることにより、窓部材14の
側面のみをロウ付けする場合に比べてロウ付け面積を広くし、接合強度を向上させている。
【0020】
エンジン部材10では、上述のように、窓部材14の一方主面14Aにおけるメタライズ層53が、窓部材14の一方主面14Aにおいて、凸部54よりも中心側まで突出した位置に形成されている。これにより、凸部54の窓部材14の中心側の端部からメタライズ層53に連なる、滑らかで大きなロウ材52のメニスカスを形成することができる。このメニスカスに対応する部分(メニスカス部分57)が、窓部材14と基体12との接合部分への応力(機械的応力や熱応力)を緩和する緩衝部として機能する。例えば、ロウ付け時に発生する、窓部材14と基体12との熱膨張係数差による応力や、シリンダ中空部42Aにおける爆発による温度上昇にともなって生じる熱応力や、この爆発の圧力によって生じる機械的応力等が、メニスカス部分57によって緩和される。
【0021】
図4(a)〜(d)は、内燃機関用構造体の他の実施形態について説明する概略断面図である。図4(a)〜(d)では、図1〜3と同様の構造については、同じ符号を付して説明している。図4(a)に示すように、板状の補強部材72を、ロウ材52を介して、基体2および窓部材14の他方主面14bの周縁部に接合してもよい。この形態では、補強部材72と凸部54とで窓部材14の周縁線が挟持される構成となり、窓部材14が強固に基体2と結合される。なお、補強部材72の形状は特に限定されず、例えば14(b)に示すように、一部が突出して窓部材14の他方主面14Bの周縁を押圧するように構成されていてもよい。また、図4(c)に示すように、2つの補強部材72で挟むように、補強部材72が、窓部材14の双方の主面(一方主面14Aと他方主面14B)と接合されていてもよい。図4(c)では、基体2の内周面が凸部54を備えていない例について示している。基体2の内周面が凸部54を備える場合も、2つの補強部材72で窓部材14を挟む構成としてもよい。また、基体2の内周面の凸部54に当接する面は、図3に示す側と反対の側の、基体14の内側(図3および図4における右側)を向いた他方主面14Bであってもよい。
【0022】
エンジン部材10は、例えば以下のように作製することができる。まず、例えば外径30mm、厚さ2mmの円板状の単結晶サファイア製の窓部材14を用意する。また、基体12を構成する複数のパーツ部材を用意する。このパーツ部材は、組み合わされることで基体12を構成する部材である。
【0023】
窓部材14の側面および一主面の外周端から3mmの幅の部位に、Mo粉末とMn粉末と酸化ケイ素(SiO2)粉末とに有機バインダ、溶剤を混合してなる金属ペーストを10μmの厚さとなるように印刷塗布し、乾燥後加湿したフォーミングガス中で1400℃の温度で焼成して、メタライズ層53の下地のメタライズ金属層を形成する。さらに、メタライズ金属層の表面にNiメッキ層を電解メッキ法により約2μmの厚さで被着して、メタライズ層53を形成する。
【0024】
このメタライズ層53が形成された窓部材14を、内周面に凸部54が形成された貫通孔を備える基体12を構成するパーツ部材の、この貫通孔に対応する位置に配置する。窓部材14は、複数のパーツ部材の、基体12の内側に対応する側から貫通孔に嵌め入れるように配置する。パーツ部材の貫通孔内周面に設けられている凸部54は、内側への突出長さが例えば2mm、厚みが例えば1mmとされる。次に、窓部材14のメタライズ層53が形成されていない他方主面の側、すなわち基体12の中空部の内側に対応する側から、パーツ部材の貫通孔の内周面と窓部材14の側面との間隙に沿って、太さの直径が0.8mmでAg−Cu合金からなるロウ材52のプリフォームを設置する。そのロウ材52のプリフォームを820℃に加熱して、窓部材14の側面とパーツ部材の内周面との間の隙間、および窓部材14の一方主面14Aの外周部のメタライズ層53と凸部54との隙
間に、溶融したロウ材12を毛細管現象により侵入させ、窓部材14とパーツ部材とを接合する。内部にピストン22、コンロッド24、クランクディスク26、吸気バルブ33、排気バルブ34等を中空部に配置した状態で、複数のパーツ部材が組み合わせ、複数の窓部材14を備える基体12を作製する。最後に、点火プラグ36等の部材を設置し、エンジン部材10を備えるエンジン1を組み上げる。
【0025】
図5は、本発明の位置検知機構付き内燃機関の一実施形態であり、かつ、本発明の液体状態検知機構付き内燃機関の一実施形態でもある、センサ付きエンジン70について説明する概略構成図である。センサ付きエンジン70は、図示しない自動車本体に搭載されて用いられる。センサ付きエンジン70は、上述のエンジン1と、センサユニット80Aと、センサユニット80Bとを備えて構成されている。
【0026】
センサユニット80Aは、レーザダイオードや発光ダイオードなどの発光素子を備え、所定の波長領域の光を出射する光照射手段82Aと、受光した光を電気信号に変換するフォトダイオードなどの受光素子を備えた光検出手段84A、制御手段86Aとを備えている。制御手段86Aには、光照射手段82Aに電力を供給するとともに光照射手段82Aの光照射動作を制御する光照射制御部92Aと、光検出手段84Aが検出した情報を受け取る情報取得部94Aと、情報取得部94Aが取得した情報を受け取り、この取得した情報に基づいて、シリンダ中空部42Aにおけるピストン22の位置を検知する検知部96Aとを備えている。
【0027】
同様に、センサユニット80Bは、光照射手段82Bと、光検出手段84B、制御手段86Bとを備え、制御手段86Aには、光照射制御部92Bと、情報取得部94Bと、検知部96Bとを備えている。センサユニット80Bの各部位は、検知部96Bが、情報取得部94Bが取得した情報を受け取り、この取得した情報に基づいて、中空部分44B貯留されたオイル60の状態(本実施形態では汚染度)を検知する以外は、センサユニット80Aと同様の機能を有する。
【0028】
まず、センサユニット80Aについて説明する。センサユニット80Aの光照射手段82Aは、基体12のシリンダ部42の上死点側の側面に設けられた窓部材14aの近傍に配置されており、光照射手段82Aから出射した所定の波長領域の光は、窓部材14aを透過して、ピストン22が往復運動するシリンダ中空部42Aに入射する。シリンダ中空部42Aに入射した光は、ピストン22が比較的下死点側に位置している状態では、そのままシリンダ中空部42Aを通過し、シリンダ部42に設けられたもう1つの窓部材14bを透過して基体12の外に出射する。窓部材14bを透過して基体12から出射した光
は、光検出手段84Aに入射する。
【0029】
ピストン22はシリンダ中空部42A内を往復運動しており、センサ付きエンジン70では、ピストン22が上死点のごく近傍に設定された所定位置を通過するタイミングで、光照射手段82Aからの照射光が、ピストン22によって遮られる。このタイミングで、光検出手段84Aに到達する光は極端に減少する。検知部96Aは、光検出手段84Aに到達する光が極端に減少するタイミングでのピストン22の位置を、ピストン22が上死点近傍の所定位置であると検知し、所定の信号を生成する。センサユニット80Aは、内燃機関70が搭載される自動車本体と接続され、検知部96Aで検知した情報は、エンジン1の動作を制御する図示しない制御ユニットに送られる。図示しない制御ユニットでは、検知部96Aから送信される、ピストン22が上死点近傍の所定位置に到達した旨を表す情報を取得し、この情報に基づいて、吸気バルブ32や排気バルブ34、点火プラグ36等の動作タイミングを制御する。センサユニット80Aによる検出情報を用いてエンジン1の動作を制御することで、エンジン1の燃費を低減させ、エンジン1の出力を高くすることができる。
【0030】
ピストン22が往復運動するシリンダ中空部42Aは、内部で爆発が生じる燃焼室に対応する部位であり、内部のピストン位置を外部から確認することは難しい。本実施形態では、熱や圧力に対する耐性が高いサファイア単結晶からなる窓部材14が、基体12のシリンダ部42の、ピストン22の上死点側の側面に設けられており、この窓部材14を介してピストン22の位置を光学的に確認することができる。光照射手段82Aや光検出手段84Bは、基体12の外部に配置されており、温度も比較的低い状態で維持されるので、温度の過度の上昇による機器の動作不良等も抑制されている。なお、光照射手段82Aを用いる以外にも、例えばCCDカメラ等で窓部材14の外側から中空部分44内のピストン22の動きを撮影し、撮影画像からピストン22の位置を確認してもよい。
【0031】
次に、センサユニット80Bについて説明する。センサユニット80Bの光照射手段82Bは、基体12のクランク部44の近傍に配置されており、光照射手段82Bから出射した所定の波長領域の光は、窓部材14cを透過して、オイル60が貯留されたクランク中空部44Aに入射する。クランク中空部44Aに入射した光は、オイル60を透過し、クランク部44に設けられたもう1つの窓部材14dを透過して基体12の外に出射する。窓部材14dを透過して基体12から出射した光は、光検出手段84Bに入射する。
【0032】
オイル60は基体12の内部に貯留されており、エンジン1の動作にともなって劣化する。すなわちオイル60は、エンジン1の動作にともなって、金属紛や炭化物が混入して汚れたり、組成が変化して粘度が高くなる。オイル60は劣化が進行するにつれ、光透過性が悪くなり、視覚的には黒く変色してくる。オイル60の光透過性は、オイル60の劣化度合いを表している。検知部96Bは、光検出手段84Bに到達する光の量を、オイルの劣化程度に換算し、このオイルの劣化程度を表す信号を生成する。センサユニット80Bも、内燃機関70が搭載される自動車本体と接続され、検知部96Aで検知した情報は、運転席近傍に設けられた表示パネル等に表示される構成となっている。センサ付きエンジン70を備える図示しない自動車を運転する運転者は、この自動車の運転中に、オイルの汚染度合いを、リアルタイムで確認することが可能となっている。
【0033】
エンジン1に貯留されるオイルには様々な化学物質が含まれており、例えばポリカーボネート等のプラスチック材料で窓を構成した場合など、オイルによって窓が侵食されて、光透過性が悪化したり、比較的割れ易い状態になる。また、内部で爆発が生じる内燃機関で用いられるオイルは高温となるので、上述のように、例えばポリカーボネート等のプラスチック材料で窓を構成した場合などでは、温度による劣化も比較的大きくなる。本実施形態では、窓部材14が、種々の化学物質に対して高い安定性も有し、熱に対する耐性も高いサファイア単結晶からなり、この窓部材14を介してオイル60の光透過度を高精度に確認することができる。光照射手段82Bや光検出手段84Bは、基体12の外部に配置されており、温度も比較的低い状態で維持されるので、温度の過度の上昇による動作不良等も抑制されている。なお、光照射手段82Bを用いる以外にも、例えばCCDカメラ等で窓部材14の外側からシリンダ中空部42A内のオイル60の映像を撮影し、撮影画像の色情報からオイル60の劣化状態を確認してもよいう。
【0034】
上記実施形態では、運動体の位置情報として、ピストンの位置情報を検知しているが、本発明の位置情報検知機構付き内燃機関は、ピストンの位置のみに限らず、中空部に封入されたクランクディスクやクランクシャフト等、その他の運動体の位置を検出してもよい。また、本発明の液体状態検知機構付き内燃機関は、オイル60の汚染程度のみでなく、クランク部44におけるオイル60の液面位置を検知することもできる。本発明で検知する情報は特に限定されない。また、上記実施形態では、内燃機関として、いわゆるレシプロエンジンを例に説明しているが、内燃機関の種類としては、例えばいわゆる公知のロータリーエンジンなどであってもよく、特に限定されない。
【0035】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
10 エンジン部材
12 基体
12A 中空部
14 窓部材
14a〜14d 窓部材
22 ピストン
24 コンロッド
26 クランクディスク
32 吸気バルブ
34 排気バルブ
36 点火プラグ
42 シリンダ部
42A シリンダ中空部
44 クランク部
44A クランク中空部
52 ロウ材
53 メタライズ層
54 凸部
70 センサ付きエンジン
80A、80B センサユニット
82A、82B 光照射手段
84A、84B 光検出手段
86A、86B 制御手段
92A、92B 光照射制御部
94A、94B 情報取得部
96B、96B 検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を備え、前記中空部で生じる爆発に応じて前記中空部内を運動する運動体が収容される基体と、
前記基体に設けられた、前記基体の外側から前記中空部に入射する光、および前記基体の外側から前記中空部に出射する光を透過する窓部材とを備え、
前記窓部材が、サファイア単結晶からなることを特徴とする内燃機関用構造体。
【請求項2】
前記窓部材は板状体であり、
前記板状体の側面が、前記基体に設けられた貫通孔の内周面にロウ付けによって接合されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用構造体。
【請求項3】
前記基体は、前記貫通孔の前記内周面に、前記貫通孔の前記内周面から前記貫通孔の中心方向に突出した凸部を備え、
前記窓部材の一主面の周縁部が、前記凸部の側面にロウ付けによって接合されていることを特徴とする請求項2記載の内燃機関用構造体。
【請求項4】
前記凸部は、
前記貫通孔の前記内周面の周方向に沿って、前記内周面の全体に連続して設けられていることを特徴とする請求項3記載の内燃機関用構造体。
【請求項5】
前記基体はシリンダー部を備え、
前記シリンダー部内での爆発に応じて前記シリンダー部内を往復運動するピストンを、前記運動体として備えており、
前記窓部材が、前記シリンダー部に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関用構造体。
【請求項6】
前記窓部材が、前記基体に複数配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関用構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関用構造体と、
前記窓部材を透過して前記中空部から前記基体の外側へ出射する光を検知する光検出部と、
前記光検出部による検出情報に基づき、前記中空部における前記運動体の位置を検知するピストン位置検知部と
を備えることを特徴とする位置検知機構付き内燃機関。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関用構造体と、
前記窓部材を透過して前記中空部から前記基体の外側へ出射する光を検知する光検出部と、
前記光検出部による検出情報に基づき、前記中空部に封入された潤滑油の状態を検知する検知部と
を備えることを特徴とする液体状態検知機構付き内燃機関。
【請求項9】
前記窓部材が、前記基体に複数配置されており、
複数の前記窓部材のうち第1の窓部材を介して、所定の波長領域の光を前記中空部に入射させて、前記基体に封入された前記潤滑油に所定の波長領域の光を照射する光照射手段を備え、
前記光検出部が、前記第1の窓部材から前記液体を通過して第2の窓部材を介して前記基体の外部へ出射する前記光を検出することを特徴とする請求項8記載の液体状態検知機構
付き内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72725(P2012−72725A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219085(P2010−219085)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】