説明

内燃機関

【課題】大量のEGRガスを吸気に混入できるようにしつつ、吸気圧センサがススにより汚れて劣化する不具合の発生を効果的に抑制する。
【解決手段】排気通路4に設けられた駆動タービン52と、前記駆動タービンにより駆動されるコンプレッサ51と、前記駆動タービンの下流側と前記コンプレッサの上流側とを接続するEGR通路20上にEGR弁22が設けられてなる低圧ループ式の排気ガス再循環装置たるEGR装置2と、吸気通路3における前記コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁33と、前記吸気通路における前記EGR通路の出口20bの上流側と前記スロットル弁の下流側とを接続する新気バイパス通路7と、前記新気バイパス通路中に設けてなり新気の流量を制御する流量調整弁たるバイパス弁71と、前記新気バイパス通路中の前記バイパス弁と出口7bとの間に設けてなる圧力センサたる吸気圧センサ8とを具備する内燃機関0を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機及び排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気筒内の燃焼温度を低下させ、以て有害物質であるNOxの排出量を削減する排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置が知られている。EGR装置は、燃焼により発生した排気ガスの一部を吸気に混入するものである。
【0003】
このようなEGR装置を備えた内燃機関において、EGR通路を経て吸気通路に導入された排気ガス中のススにより吸気通路中に設けられた吸気圧センサ等のセンサが汚れて劣化する不具合の発生を抑制すべく、種々の構成が考えられてきている。その一例として、吸気通路中のセンサより上流側かつEGR通路の出口よりも下流側に吸気の流通方向を偏向させる偏向部材を設けてススの一部をこの偏向部材に付着させる態様や、吸気通路内においてススの分布密度が小さい箇所にセンサを設ける態様が考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、特許文献1記載の内燃機関では、気筒から排出された直後の高温高圧の排気ガスを吸気通路に還流する高圧ループEGRが採用されているが、これに対し、排気ターボ過給機のタービン及び排気ガス浄化用の触媒を通過した低温低圧の排気ガスを吸気通路に還流する低圧ループEGRは、大量のEGRガスを吸気に混入できる点で有利である。低圧ループEGRでは、大気圧に近いEGRガスを還流させる都合上、EGR通路の出口を排気ターボ過給機のコンプレッサの上流側に接続している。このような低圧ループEGRを採用した内燃機関では、大量のEGRガスを吸気に混入できることから、EGR通路を経て吸気通路に導入された排気ガス中のススの量もより多くなることがある。
【0005】
しかして、特許文献1記載の構成では、確かにセンサ付近を通過する空気に含まれるススの量を抑制することはできるものの、低圧ループEGRを採用した内燃機関においては上述したように吸気通路を通過するススの絶対量が多いので、ススにより吸気通路中に設けられたセンサが汚れて劣化する不具合を十分抑制できないおそれが存在する。
【0006】
さらに、センサが汚れて劣化する不具合の発生を抑制するには、吸気通路中のセンサの上流側にススを除去するためのフィルタを設ける態様が考えられるが、この場合、除去されたススはフィルタに付着しているので、定期的にフィルタの交換作業を行う手間が発生するという別の不具合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−141113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に着目し、大量のEGRガスを吸気に混入できるようにしつつ、吸気圧センサがススにより汚れて劣化する不具合の発生を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る内燃機関は、排気通路に設けられたタービンと、吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、前記排気通路における前記タービンの下流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの上流側とを接続するEGR通路上にEGR弁が設けられてなる低圧ループ式の排気ガス再循環装置と、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁と、前記吸気通路における前記EGR通路の出口の上流側と前記スロットル弁の下流側とを接続する新気バイパス通路と、前記新気バイパス通路中に設けてなり新気の流量を制御する流量調整弁と、前記新気バイパス通路中の前記流量調整弁と出口との間に設けてなる圧力センサとを具備することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、新気バイパス通路中を新気が流通するごとに新気の流れを利用して圧力センサの清掃を行うことができるので、大量のEGRガスを燃焼室に導入するようにしつつ、吸気通路中にフィルタを設けることなく、圧力センサのEGRガスに含まれるスス等による劣化を抑制することができる。また、EGRガスを含む吸気の流れから外れた新気バイパス通路中に圧力センサを設けているので、この点からもEGRガスに含まれるスス等による圧力センサの劣化を抑制できる。
【0011】
さらに、前記流量調整弁の開度を調整することによりアイドル回転数制御を行う制御装置を具備するものであれば、アイドル運転を行うごとに圧力センサの清掃を行うことができるので、より効果的に圧力センサの汚れに伴う劣化を抑制できる。さらに、運転者が運転操作を行っていないアイドル運転時に圧力センサの清掃を行うことにより、運転者の意図に関わらず新気が流入し、これに伴い燃料噴射量及びエンジン回転数が上昇し運転者に違和感を与える不具合の発生も抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大量のEGRガスを吸気に混入できるようにしつつ、吸気圧センサがススにより汚れて劣化する不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び排気ガス再循環装置の構成を示す図。
【図2】同実施形態におけるバイパス弁を示す図。
【図3】本発明の他の実施態様におけるバイパス弁を示す図。
【図4】本発明の他の実施態様におけるバイパス弁を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関0の概要を示す。本実施形態の内燃機関0は、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気通路3と、各気筒1から排気を排出するための排気通路4と、吸気通路3を流通する吸気を過給する排気ターボ過給機5と、排気通路4から吸気通路3に向けてEGRガスを還流させる排気ガス再循環装置(以下、EGR装置2と称する)と、吸気通路3の中途をバイパスする新気バイパス通路7とを備えている。
【0015】
本実施形態における内燃機関0は、二気筒の4サイクルエンジンであり、第一気筒1の行程と第二気筒1の行程との間には360°CA(クランク角度)の位相差が存在する。つまり、第一気筒1のピストン12と第二気筒1のピストン12とは同時に上昇し、また同時に下降する。
【0016】
吸気通路3は、外部から空気を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁35、過給機5のコンプレッサ51、インタクーラ32、電子スロットル弁33、サージタンク34、吸気マニホルド36を、上流からこの順序に配置している。
【0017】
排気ターボ過給機5は、駆動タービン52とコンプレッサ51とを同軸で連結し連動するように構成したものである。そして、駆動タービン52を排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
【0018】
EGR装置2は、いわゆる低圧ループEGRを実現するものである。低圧ループEGR通路の圧力損失は、数百Pa程度と非常に小さい。このEGR装置2は、その入口20aを駆動タービン52の下流側、より詳細には排気通路4における三元触媒41の下流側の所定箇所に接続しているとともにその出口20bを吸気通路3における吸気絞り弁35の下流側、かつコンプレッサ51の上流側の所定箇所に接続しているEGR通路20と、このEGR通路20上に設けてなるEGRクーラ21及びEGR弁22とを備えている。
【0019】
低圧ループEGRでは、大気圧に近い低圧の排気ガスをEGR通路2を通じて吸気通路3に還流する。そのために、EGR通路20の出口20bの上流にある吸気絞り弁35を絞ることで、EGR通路20の出口20bの周囲を負圧化する。なお、吸気通路3における、吸気絞り弁35よりも上流側の圧力は略大気圧、またはコンプレッサ51の稼働によって幾分負圧となる。
【0020】
新気バイパス通路7は、コンプレッサ51やインタクーラ32、スロットル弁33を回避して空気を気筒1の吸気ポートへと導く。新気バイパス通路7の入口7aは、EGR通路20の出口20bの上流側、より詳細には吸気通路3における吸気絞り弁35の上流側の所定箇所に接続している。新気バイパス通路7の出口7bは、吸気通路3におけるスロットル弁33の下流側の所定箇所、より具体的にはサージタンク34に接続している。この新気バイパス通路7上には、新気の流量を制御する流量調整弁たるバイパス弁71を設けてある。本実施形態では、この新気バイパス通路7がアイドル運転時に気筒1に新気を導入するためのバイパス通路としての機能をも有し、バイパス弁71がアイドル運転時に導入される新気の量を調節するためのISCバルブとしての機能をも有する。
【0021】
バイパス弁71は、弁体711と、閉弁時にこの弁体711が着座する弁座712a及び前記弁体711を駆動するステッピングモータ等の駆動装置712bを少なくとも内蔵するとともに上流側に開口する流入ポート712x及び下流側に開口する流出ポート712yを設けてなるハウジング712とを備えている。また、このバイパス弁71は、駆動装置712が後述するECU(電子制御装置)6からの開度操作信号lの入力を受けることにより作動する。より具体的には、このバイパス弁71を通過する空気量の制御は、開度操作信号lとしてソレノイドに入力されるパルス電流(または、電圧)のデューティ比に応じて弁体711の進退の距離を変化させることにより行うようにしている。そして、このバイパス弁71の下流側かつ新気バイパス通路7の出口7bの上流側には、吸気通路3内を流通する空気の圧力を測定する圧力センサである吸気圧センサ8を設けている。
【0022】
内燃機関0の運転制御を司るECU6は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。入力インタフェースには、車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、エンジン回転数を検出する回転数センサから出力される回転数信号b、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサから出力されるアクセル開度要求信号c、吸気圧(過給圧)を検出する吸気圧センサ8から出力される吸気圧信号d、サージタンク34の吸気温を検出する温度センサから出力される吸気温信号e、スロットル弁33の開閉状態を検出するためのアイドルスイッチから出力されるIDL信号f、等が入力される。出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号g、点火プラグ(のイグニッションコイル)に対して点火信号h、EGR弁22に対して開度操作信号i、吸気絞り弁35に対して開度操作信号j、スロットル弁33に対して開度操作信号k、バイパス弁71(の駆動装置712)に対して開度操作信号l等を出力する。このECU6は、請求項中の制御装置としての機能を有する。
【0023】
ECU6のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行して、内燃機関0の運転を制御する。ECU6は、内燃機関0の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、fを入力インタフェースを介して取得し、それらに基づいて吸気量や要求燃料噴射量、点火時期、要求EGR量、目標アイドル回転数等を演算する。そして、演算結果に対応した各種制御信号g、h、i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0024】
ここで、ECU6は、アイドル運転状態において、上述したようにバイパス弁71をISCバルブとして機能させ、回転数を目標アイドル回転数に収束させるアイドル回転数制御を行う。このアイドル回転数制御は、従来周知のアイドル回転数制御と同様の手法で行われる。すなわち、回転数信号bが示すエンジン回転数が目標アイドル回転数を上回る場合にはより多くの混合気を気筒1内に導入させるべく、バイパス弁71の開度を大きくするとともに燃料噴射量を増量し、回転数信号bが示すエンジン回転数が目標アイドル回転数を下回る場合には気筒1内に導入させる混合気の量を減量すべくバイパス弁71の開度を小さくするとともに燃料噴射量を減量する制御を行う。
【0025】
本実施形態の構成によれば、新気バイパス通路7中を新気が流通するごとに新気の流れを利用して吸気圧センサ8の清掃を行うことができるので、大量のEGRガスを気筒1内の燃焼室に導入するようにしつつ、吸気通路3中にフィルタを設けることなく、吸気圧センサ8のEGRガスに含まれるスス等による劣化を抑制することができる。また、EGRガスを含む吸気の流れから外れた新気バイパス通路7中に吸気圧センサ8を設けているので、この点からもEGRガスに含まれるスス等による吸気圧センサ8の劣化を抑制できる。
【0026】
さらに、前記バイパス弁71の開度を調整することによりアイドル回転数制御を行うECU6を備えているので、アイドル運転を行うごとに吸気圧センサ8の清掃を行うことができる。従って、より効果的に吸気圧センサ8の汚れに伴う劣化を抑制できる。さらに、運転者が運転操作を行っていないアイドル運転時に吸気圧センサ8の清掃を行うことにより、運転者の意図に関わらず新気バイパス通路7を経て気筒1内に新気が流入し、これに伴い燃料噴射量及びエンジン回転数が上昇し運転者に違和感を与える不具合の発生も抑制することができる。
【0027】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0028】
例えば、図3に示すように、スロットルバルブ33の下流側に隣接する部位に吸気通路3に設けた孔3aと連通する副室A72を設け、この副室A72に新気バイパス通路7を接続するとともに、この副室内A72の圧力を測定する吸気圧センサ8を設ける態様が考えられる。
【0029】
また、図4に示すように、サージタンク34の外壁にこのサージタンク34に設けた孔を介してこのサージタンク34の内部空間と連通する副室B73を一体に設け、この副室B73に新気バイパス通路7を接続するとともに、この副室B73内の圧力を測定する吸気圧センサ7を設ける態様が考えられる。
【0030】
なお、図3及び図4に係る実施態様の説明において、副室A72、B73以外の各部には上述した実施形態におけるものと同一の名称及び符号を付している。また、図3及び図4を参照しつつ前述した各実施態様の内燃機関は、吸気圧センサ8の取り付け箇所が異なること、及び副室A72、B73を設けていること以外は、上述した実施形態における内燃機関0と同一の構成を有する。
【0031】
これらの態様によっても、副室は吸気通路内のEGRガスを含む空気の流れの外側に位置しているとともに、バイパス弁(流量制御弁)の開弁時には副室内に新気が導入されるので、この副室に設けた吸気圧センサはススにより汚れにくく、しかも新気の流れにより吸気圧センサの清掃を行うことができる。従って、EGRガスに含まれるスス等による吸気圧センサの劣化を抑制できる。
【0032】
加えて、減速要求、すなわちアクセルペダルの操作量が減少に伴う燃料カット制御時に、一時的にバイパス弁を開弁してEGRガスを含まない空気を新気バイパス通路経由で気筒に取り入れるようにしてもよい。減速時にはスロットル弁の開度を絞るので、サージタンク内圧力が負圧となり、このような制御を行うことにより、バイパス弁を開くのみで新気バイパス通路内を空気が高い速度で流通し、より効率よく圧力センサの清掃を行うことが可能となる。
【0033】
そして、新気バイパス通路の入口は、EGR通路の出口の上流側であれば任意の箇所に接続してもよく、また、新気バイパス通路の出口も、吸気通路におけるスロットル弁の下流側であれば任意の箇所に接続してもよい。
【0034】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0035】
0…内燃機関
2…EGR通路
22…EGR弁
3…吸気通路
33…スロットル弁
4…排気通路
51…コンプレッサ
52…駆動タービン(タービン)
7…新気バイパス通路
71…バイパス弁(流量調整弁)
8…吸気圧センサ(圧力センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられたタービンと、
吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、
前記排気通路における前記タービンの下流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの上流側とを接続するEGR通路上にEGR弁が設けられてなる低圧ループ式の排気ガス再循環装置と、
前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁と、
前記吸気通路における前記EGR通路の出口の上流側と前記スロットル弁の下流側とを接続する新気バイパス通路と、
前記新気バイパス通路中に設けてなり新気の流量を制御する流量調整弁と、
前記新気バイパス通路中の前記流量調整弁と出口との間に設けてなる圧力センサと
を具備することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記流量調整弁の開度を調整することによりアイドル回転数制御を行う制御装置を具備する請求項1記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36378(P2013−36378A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172536(P2011−172536)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】