化合物半導体装置及びその製造方法
【課題】縦型構造のHEMTにおけるオン抵抗を低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1と、基板1の上方に形成された電子供給層4及び電子走行層2と、電子供給層4及び電子走行層2の上方に形成されたソース電極21s及びゲート電極21gと、基板1の裏面に形成されたドレイン電極21dと、が設けられている。そして、電子供給層4の少なくとも一部と電子走行層2の少なくとも一部とが、基板1の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接している。
【解決手段】基板1と、基板1の上方に形成された電子供給層4及び電子走行層2と、電子供給層4及び電子走行層2の上方に形成されたソース電極21s及びゲート電極21gと、基板1の裏面に形成されたドレイン電極21dと、が設けられている。そして、電子供給層4の少なくとも一部と電子走行層2の少なくとも一部とが、基板1の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サファイア、SiC、GaN又はSi等からなる基板上にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。GaNのバンドギャップは3.4eVであり、GaAsの1.4eVに比べて大きい。このため、この化合物半導体装置には、高耐圧での動作が期待されている。
【0003】
このような化合物半導体装置として、高周波増幅器に適した高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及び、インバータスイッチ等の電力デバイスに適したGaN系HEMTが挙げられる。また、GaN系HEMTの構造としては、ソース電極とドレイン電極とが基板の表面に平行に配置された横型構造、及びソース電極とドレイン電極とが基板を間に挟んで配置された縦型構造が挙げられる。縦型構造は、横型構造と比較して、チップ面積を小さくすることができ、また、コストを抑制することができる。
【0004】
図1は、従来の縦型構造のGaN系HEMTを示す断面図である。従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n型のn−GaN基板101の裏面にドレイン電極121dが形成されている。また、n−GaN基板101上には、n型のn−GaN層102が縦方向電子走行層として形成されている。n−GaN層102内には、電流が流れる部分を制限する電流狭窄層としてAlN層103が設けられている。n−GaN層102上には、横方向電流供給層としてn型のn−AlGaN層106が形成されている。そして、n−AlGaN層106上には、AlN層103の上方にソース電極121sが形成され、AlN層103の開口部の上方にゲート電極121gが形成されている。ソース電極121sとゲート電極121gとの間には、SiN膜114が形成されている。
【0005】
このように構成された従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n−GaN層102の表層部に2次元電子ガス層(2DEG)が生じ、この2DEGを介してソース電極121sとドレイン電極121dとの間に電流が流れる。
【0006】
しかしながら、従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、オン抵抗が高く、オン時の発熱に伴う電気エネルギの損失が大きいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−165207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、縦型構造のHEMTにおけるオン抵抗を低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
化合物半導体装置の一態様には、基板と、前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、が設けられている。そして、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接している。
【0010】
化合物半導体装置の製造方法の一態様では、基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成し、前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する。また、前記基板の裏面にドレイン電極を形成する。
【発明の効果】
【0011】
上記の化合物半導体装置等によれば、基板の表面に平行な面から傾斜した面内でも2DEGが生じるため、基板の表面に垂直な方向におけるオン抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の縦型構造のGaN系HEMTを示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図3A】第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3C】図3Bに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3D】図3Cに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3E】図3Dに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3F】図3Eに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3G】図3Fに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3H】図3Gに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3I】図3Hに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3J】図3Iに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3K】図3Jに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3L】図3Kに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3M】図3Lに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3N】図3Mに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3O】図3Nに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図5】第3の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図7A】第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図7C】図7Bに引き続き、第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0015】
第1の実施形態では、n型のn−GaN基板1上に、厚さが0.2μm〜10μm程度(例えば1μm)のノンドープのi−GaN層2及びn型のn−AlGaN層4が横方向に交互に配置されている。i−GaN層2は縦方向電子走行層として機能し、n−AlGaN層4は縦方向電子供給層及び電子ブロック層として機能する。n−GaN基板1の表面に垂直な方向は、GaN結晶のc軸方向から傾斜している。n−GaN基板1の表面は、例えばa面、m面又はr面である。n−AlGaN層4の組成は、例えばAl0.25Ga0.75Nで表わされる。また、n−AlGaN層4には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば4×1018cm-3)ドーピングされている。n−AlGaN層4の電子親和力は、i−GaN層2の電子親和力よりも小さい。
【0016】
i−GaN層2及びn−AlGaN層4上に、厚さが0.01μm〜1μm程度(例えば0.1μm)のノンドープのi−GaN層5が横方向電子走行層として形成されている。i−GaN層5上に、厚さが5nm〜30nm程度(例えば10nm)のn型のn−AlGaN層6が横方向電子供給層として形成されている。n−AlGaN層6の組成は、例えばAl0.25Ga0.75Nで表わされる。また、n−AlGaN層6には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば4×1018cm-3)ドーピングされている。n−AlGaN層6の電子親和力は、i−GaN層5の電子親和力よりも小さい。n−AlGaN層6上に、厚さが2nm〜10nm程度(例えば7nm)のn型のn−GaN層7が保護層として形成されている。n−GaN層7には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば5×1018cm-3)ドーピングされている。例えば、i−GaN層5及びi−GaN層2のバンドギャップは、n−AlGaN層4のバンドギャップよりも狭く、また、n−AlGaN層6のバンドギャップは、i−GaN層5のバンドギャップよりも広い。
【0017】
n−GaN層7のn−AlGaN層4の上方に位置する部分には、ソース電極用の開口部7aが形成されており、この開口部7a内に開口部7aの上方まで延びるソース電極21sが形成されている。また、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びn−AlGaN層4には、n−AlGaN層6のソース電極21sとの界面からn−AlGaN層4の途中深さまで延びる素子分離領域11が形成されている。
【0018】
n−GaN層7上に、ソース電極21sを覆うSiN膜(シリコン窒化膜)14が形成されている。SiN膜14の厚さは10nm〜100nm程度(例えば40nm)である。
【0019】
SiN膜14、n−GaN層7、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びi−GaN層2には、SiN膜14の表面からi−GaN層2の途中深さまで延びる孔16が形成されている。そして、この孔16内に孔16の上方まで延びるゲート電極21gが形成されている。
【0020】
SiN膜14上に、ゲート電極21gを覆うSiN膜17が形成されている。SiN膜17の厚さは20nm〜1000nm程度(例えば400nm)である。SiN膜17及びSiN膜14には、ソース電極21sの一部を露出する開口部17sが形成され、SiN膜17には、ゲート電極21gの一部を露出する開口部17gが形成されている。
【0021】
また、n−GaN基板1の裏面にドレイン電極21dが一面にわたって形成されている。
【0022】
このような第1の実施形態では、格子不整合に起因するピエゾ効果により、i−GaN層5のn−AlGaN層6との界面近傍に電子が誘起される。この結果、横方向(n−GaN基板1の表面に平行な方向)に広がる2次元電子ガス層(2DEG)が現れる。また、同様のピエゾ効果により、i−GaN層2のn−AlGaN層4との界面近傍にも電子が誘起される。この結果、縦方向(n−GaN基板1の表面に垂直な方向)に広がる2DEGが現れる。そして、この縦方向に広がる2DEGは、n−GaN基板1に、その表面から傾斜して(直交して)接している。
【0023】
従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n型のGaN層が縦方向の電子供給層として機能しているため、電子の移動度が100cm2/V・s程度と低く、オン抵抗が高くなっている。これに対し、本実施形態では、縦方向に広がる2DEGが存在するため、電子の移動度を向上させることができる。
【0024】
また、ゲート電極21gが、i−GaN層2とn−AlGaN層4との界面の側方にも存在するため、オフ時においては、i−GaN層2とn−AlGaN層4との界面近傍であっても、ゲート電極21gの側方では2DEGは存在しにくい。このため、オフ時のドレインリーク電流が抑制される。
【0025】
実際に、本願発明者がシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表1に示す結果が得られた。この検証では、比較のために図1に示す従来のGaN系HEMTについてのシミュレーションも行った。なお、スイッチング時間のシミュレーションでは、全ゲート幅を40mmとし、ドレイン電極に100Vを印加した状態で、ゲート電極の電圧を制御してオフからオンに変化させた場合の応答時間を検証した。
【0026】
【表1】
【0027】
第1の実施形態によれば1000cm2/V・s程度(従来の10倍)の電子移動度が得られるため、表1に示すように、オン抵抗を著しく低減することができる。また、スイッチング時間を短縮することもできる。スイッチング時間の短縮により、スイッチング回路に用いた場合の動作効率を向上させることが可能となり、また、コイル等の周辺回路を小型することが可能となる
【0028】
なお、第1の実施形態の動作の制御に当たっては、例えば、ソース電極21sは接地しておく。そして、オフ時にはドレイン電極21dに300Vを印加し、ゲート電極21gに0V又は負の電圧を印加する。一方、オン時にはゲート電極21g及びドレイン電極21dに正の電圧を印加する。
【0029】
なお、抵抗体及びキャパシタ等をも実装してモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)としてもよい。後述する第2〜第4の実施形態においても同様である。
【0030】
次に、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図3A乃至図3Oは、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0031】
第1の実施形態では、先ず、図3Aに示すように、n−GaN基板1上にi−GaN層2を、例えば有機金属気相エピタキシ(MOVPE)法により形成する。例えば、Ga原料としてトリメチルガリウム、N原料としてアンモニアを用いる。また、圧力は100Torrとし、成長温度は1050℃とする。
【0032】
次いで、図3Bに示すように、i−GaN層2上にSiO2膜3を、例えば熱化学気相堆積(CVD)法により形成する。その後、SiO2膜3上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に露光及び現像を行って、n−AlGaN層4に対応する部分を開口する開口部51aを備えたレジストパターン51を形成する。
【0033】
続いて、図3Cに示すように、レジストパターン51をマスクとして用いて、SiO2膜3のウェットエッチング、及びi−GaN層2のドライエッチングを行うことにより、n−GaN基板1を露出させる。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。そして、レジストパターン51を除去する。
【0034】
次いで、図3Dに示すように、i−GaN層2の開口部内にn−AlGaN層4をi−GaN層2と同程度の高さになるまで、例えばMOVPE法により形成する。このとき、SiO2膜3がn−AlGaN層4のi−GaN層2上での成長を抑制するマスクとして機能する。例えば、Ga原料としてトリメチルガリウム、N原料としてアンモニア、Al原料としてトリメチルアルミニウムを使用する。そして、SiO2膜3を除去する。
【0035】
その後、図3Eに示すように、i−GaN層2及びn−AlGaN層4上にi−GaN層5、n−AlGaN層6及びn−GaN層7をこの順で形成する。この場合、原料ガスを選択することにより、これらの層を連続して形成することができる。n−AlGaN層6及びn−GaN層7に不純物として含まれるSiの原料としては、例えばシランを使用することができる。
【0036】
続いて、n−GaN層7上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことにより素子分離形成用のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてArをイオン注入する。この結果、図3Fに示すように、素子分離領域11が形成される。そして、レジストパターンを除去する。
【0037】
次いで、n−GaN層7上に新たにレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことによりソース電極形成用のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてn−GaN層7をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。この結果、図3Gに示すように、開口部7aが形成される。なお、開口部7aの深さに関し、n−GaN層7の一部を残してもよく、また、n−AlGaN層6の一部を除去してもよい。つまり、開口部7aの深さがn−GaN層7の厚さと一致している必要はない。そして、レジストパターンを除去する。
【0038】
その後、図3Hに示すように、開口部7a内に、リフトオフ法によりTa膜21a、Al膜21b及びTa膜21cをこの順で形成する。即ち、新たなレジストパターンを形成し、Ta、Al及びTaの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したTa、Al及びTaをレジストパターンごと除去する。Ta膜、Al膜、Ta膜の厚さは、例えば、下から順に10nm程度、280nm程度、10nm程度とする。
【0039】
続いて、ラピッドサーマルアニール(RTA)装置を用いて、窒素雰囲気の下で、400℃〜1000℃、例えば550℃で1分間の熱処理を行う。この熱処理により、Ta膜21aとAl膜21bとの界面、及びAl膜21bとTa膜21cとの界面にTaAl3が生成し、図3Iに示すように、ソース電極21sが形成される。また、この熱処理の結果、オーミック特性が確立する。
【0040】
次いで、図3Jに示すように、プラズマ化学気相成長(PE−CVD)法により、全面にSiN膜14を形成する。その後、SiN膜14上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことによりゲート電極形成用の開口部15aを備えたレジストパターン15を形成する。
【0041】
続いて、図3Kに示すように、レジストパターン15をマスクとしてSiN膜14をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。
【0042】
更に、図3Lに示すように、レジストパターン15をマスクとしてn−GaN層7、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びi−GaN層2をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。また、このドライエッチングの量は、例えば、深さ0.15μm程度分とする。この結果、i−GaN層2の途中深さまで延びる孔16が形成される。
【0043】
次いで、図3Mに示すように、レジストパターン15を除去する。その後、孔16内に、リフトオフ法によりゲート電極21gを形成する。ゲート電極21gの形成では、ゲート電極21gを形成する領域を開口するレジストパターン、例えば2層レジストパターンを形成し、Ni及びAuの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したNi及びAuをレジストパターンごと除去する。Ni膜、Au膜の厚さは、例えば、夫々10nm程度、200nm程度とする。
【0044】
続いて、図3Nに示すように、全面にSiN膜17を、例えばプラズマCVD法により形成する。次いで、SiN膜17及びSiN膜14にソース電極21sの一部を露出する開口部17sを形成し、SiN膜17にゲート電極21gの一部を露出する開口部17gを形成する。
【0045】
その後、図3Oに示すように、n−GaN基板1の裏面を研磨して、n−GaN基板1の厚さを100μm程度とする。このとき、n−GaN基板1を全て取り除いてもよい。n−GaN基板1を電子が走行するとオン抵抗が上昇するためである。続いて、n−GaN基板1の裏面上にドレイン電極21dを形成する。ドレイン電極21dの形成では、n−GaN基板1の裏面上にTa膜、Al膜及びTa膜をこの順で形成する。また、これらの厚さは、例えば、n−GaN基板1側から順に10nm程度、280nm程度、10nm程度とする。続いて、RTA装置を用いて、窒素雰囲気の下で、400℃〜1000℃、例えば550℃で1分間の熱処理を行う。この熱処理により、ドレイン電極21dが形成される。また、この熱処理の結果、オーミック特性が確立する。
【0046】
このような製造方法により、図2に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0047】
なお、ゲート電極21gのゲート長、即ち2つのソース電極21sを結ぶ方向の長さは、0.2μm〜2μm程度(例えば0.5μm)である。また、ユニットゲート幅、即ちゲート電極21gによって2DEGの濃度が制御される領域の幅は、100μm〜4000μm程度(例えば300μm)である。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0049】
第2の実施形態では、孔16の内面に沿ってTa2O5膜(タンタル酸化膜)18が形成されている。Ta2O5膜18の厚さは、2nm〜40nm程度(例えば10nm)である。Ta2O5膜18は、更にSiN膜14及びSiN膜17の間にも介在している。
【0050】
即ち、第1の実施形態のゲートがショットキーゲート構造であるのに対し、第2の実施形態のゲートは絶縁ゲート構造となっている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0051】
このような第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、絶縁ゲート構造が採用されているため、順方向におけるゲートリークが皆無となる。従って、ゲート電圧を5V以上とすることも可能となり、最大電流を増加させることができ、電力デバイスにより好適なものとなる。
【0052】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表2に示す結果が得られた。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、最大電流が第1の実施形態と比較して30%以上高くすることができる。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0055】
なお、第2の実施形態に係るGaN系HEMTを製造する際には、第1の実施形態における孔16の形成の後に、Ta2O5膜18を、例えば原子層堆積(ALD)法により300℃程度で形成すればよい。そして、Ta2O5膜18の形成後に、600℃程度でアニールを1分施すことにより、内部の水素が脱離して内部の電子トラップ密度が減少し、Ta2O5膜18の質が向上する。
【0056】
また、絶縁ゲート構造に用いられる絶縁膜の材料は特に限定されないが、その誘電率は、例えば10以上であることが好ましく、HfO2系絶縁膜、Al2O3系絶縁膜等が良好な性能を示す。また、オキシナイトライド膜としてHfON膜も使用可能である。この場合はNの原料としてNH3又はN2プラズマを用いたALD法で成膜を行えばよい。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0058】
第3の実施形態では、第2の実施形態におけるn−AlGaN層4に代えて、Al及びGaの濃度が深さ方向で変化するn−AlGaN層31が設けられている。n−AlGaN層31内では、n−GaN基板1に近い領域ほどAl濃度が高く、Ga濃度が低くなっている。例えば、n−AlGaN層31のn−GaN基板1との界面近傍では、Al濃度及びGa濃度が50%であり、i−GaN層5との界面近傍では、Al濃度が5%、Ga濃度が95%である。ここでいう、Al濃度及びGa濃度は、Al及びGaの総量に対するAl、Gaの割合である。
【0059】
他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0060】
このような第3の実施形態によっても第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、n−AlGaN層31のi−GaN層5との界面近傍におけるAl濃度が低く、i−GaN層2のこのAl濃度が低い部分との界面には、2DEGがほとんど存在しない。このため、ノーマリーオフ動作がより確実となると共に、閾値電圧を高めることができる。
【0061】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表3に示す結果が得られた。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示すように、+2Vの閾値電圧が得られる。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0064】
なお、第3の実施形態に係るGaN系HEMTを製造する際には、第2の実施形態におけるn−AlGaN層4の形成に代えて、原料ガスの流量を調整しながら、即ちAl濃度を減少させ、Ge濃度を上昇させながら、n−AlGaN層31を形成すればよい。
【0065】
なお、第1の実施形態と同様のショットキーゲート構造が採用されていてもよい。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図6は、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0067】
第4の実施形態では、n型のn−GaN基板1上に、第1の実施形態と同様に、i−GaN層2及びn−AlGaN層4が横方向に交互に配置されている。i−GaN層2には、その界面から途中深さまで延びる素子分離領域11が形成されている。i−GaN層2上に、ソース電極21sが形成されている。i−GaN層2及びn−AlGaN層4上に、ソース電極21sを覆うSiN膜14が形成されている。また、n−AlGaN層4には、その表面から途中深さまで延びる孔16が形成されている。そして、この孔16内に孔16の上方まで延びるゲート電極21gが形成されている。更に、SiN膜14上に、ゲート電極21gを覆うSiN膜17が形成されている。SiN膜17及びSiN膜14には、ソース電極21sの一部を露出する開口部17sが形成され、SiN膜17には、ゲート電極21gの一部を露出する開口部17gが形成されている。
【0068】
また、n−GaN基板1の裏面にドレイン電極21dが一面にわたって形成されている。
【0069】
このような第4の実施形態では、格子不整合に起因するピエゾ効果により、i−GaN層2のn−AlGaN層4との界面近傍にも電子が誘起される。この結果、縦方向に広がる2DEGが現れる。その一方で、第1〜第3の実施形態と異なり、横方向に広がる2DEGは現れない。即ち、電流の経路が簡素化されている。このため、第1〜第3の実施形態よりもオン抵抗が低くなる。
【0070】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表4に示す結果が得られた。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示すように、オン抵抗が著しく低く、最大電流が極めて高い。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0073】
なお、第4の実施形態において、第2、第3の実施形態のように、絶縁ゲート構造を採用してもよい。また、第3の実施形態のように、n−AlGaN層4に代えて、Al及びGaの濃度が変化するn−AlGaN層31を用いてもよい。
【0074】
次に、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図7A乃至図7Cは、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0075】
第4の実施形態では、先ず、図7Aに示すように、第1の実施形態と同様に、n−GaN基板1上にi−GaN層2及びn−AlGaN層4を形成する。次いで、i−GaN層2内に素子分離領域11を形成する。
【0076】
その後、図7Bに示すように、i−GaN層2及び素子分離領域11上にソース電極21sを形成する。
【0077】
続いて、図7Cに示すように、SiN膜14を形成する。次いで、SiN膜14のn−AlGaN層4の上方に開口部14aを形成し、孔16をn−AlGaN層4に形成する。そして、孔16内にゲート電極21gを形成する。
【0078】
その後、第1の実施形態と同様にして、SiN膜17の形成等を行う。
【0079】
このような製造方法により、図6に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0080】
なお、いずれの実施形態においても、基板及び各層の材料、厚さ及び不純物濃度等は特に限定されない。例えば、n−GaN基板1に代えて、導電性シリコン基板、サファイア基板、導電性SiC基板等を用いてもよい。但し、基板の表面は、電子走行層の電子供給層との界面近傍に生じる2DEGの少なくとも一部が基板の表面に平行な面から傾斜した面内で広がり得るものとする。例えば、上記のa面、m面又はr面のn−GaN基板、サファイア基板が挙げられる。従って、電子供給層の一部と電子走行層の一部とが基板の表面に平行な面から傾斜した面を境に接していれば、この面が基板の表面に垂直である必要はなく、2DEGが基板の表面に垂直に広がっている必要もない。また、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板も挙げられる。サファイア基板の場合には、例えばサファイア基板を研磨等で全て剥離してドレイン電極をGaN結晶層に直接形成することにより、上記の本実施形態と同様の効果を得ることができる。他の基板を用いる場合も、基板を全て剥離してもよい。
【0081】
また、電子走行層、電子供給層等の材料として、他の化合物半導体を用いてもよいが、特に窒化物半導体が好ましい。例えば、横方向電子供給層として機能するn−AlGaN層6、並びに縦方向電子供給層及び電子ブロック層として機能するn−AlGaN層4に代えて、AlGaInN層又はInAlN層を用いてもよい。この場合、Inの組成比によってこれらの層のバンドギャップを調整することが可能となり、HEMTのしきい値を変化させることができる。また、Al濃度を第3の実施形態のように、変化させてもよい。
【0082】
また、ゲート電極21g、ソース電極21s及びドレイン電極21dの構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極21s及びドレイン電極21dの形成後の熱処理を省略してもよい。また、ゲート電極21gに対して熱処理を行ってもよい。
【0083】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0084】
(付記1)
基板と、
前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、
前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
を有し、
前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接していることを特徴とする化合物半導体装置。
【0085】
(付記2)
前記基板は、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板であることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0086】
(付記3)
前記基板は、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板であることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0087】
(付記4)
前記電子走行層の前記電子供給層と接する部分に2次元電子ガス層が存在し、
前記2次元電子ガス層は、前記基板に、前記基板の表面に平行な面から傾斜して接していることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0088】
(付記5)
前記電子供給層及び電子走行層の上方に形成され、そのバンドギャップが前記電子供給層及び電子走行層の各バンドギャップの狭い方と同一か、又はそれよりも狭い第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成され、そのバンドギャップが前記第1の化合物半導体層のバンドギャップよりも広い第2の化合物半導体層と、
を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0089】
(付記6)
前記電子供給層はAl及びNを含み、更にGa又はInの少なくとも一方を更に含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0090】
(付記7)
前記ゲート電極は、前記電子走行層に埋め込まれていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0091】
(付記8)
基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成する工程と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する工程と、
前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記9)
前記基板として、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板を用いることを特徴とする付記8に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記10)
前記基板として、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板を用いることを特徴とする付記8に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0094】
1:n−GaN基板
2:i−GaN層
4:n−AlGaN層
5:i−GaN層
6:n−AlGaN層
7:n−GaN層
18:Ta2O5膜
21d:ドレイン電極
21g:ゲート電極
21s:ソース電極
31:n−AlGaN層
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サファイア、SiC、GaN又はSi等からなる基板上にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。GaNのバンドギャップは3.4eVであり、GaAsの1.4eVに比べて大きい。このため、この化合物半導体装置には、高耐圧での動作が期待されている。
【0003】
このような化合物半導体装置として、高周波増幅器に適した高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及び、インバータスイッチ等の電力デバイスに適したGaN系HEMTが挙げられる。また、GaN系HEMTの構造としては、ソース電極とドレイン電極とが基板の表面に平行に配置された横型構造、及びソース電極とドレイン電極とが基板を間に挟んで配置された縦型構造が挙げられる。縦型構造は、横型構造と比較して、チップ面積を小さくすることができ、また、コストを抑制することができる。
【0004】
図1は、従来の縦型構造のGaN系HEMTを示す断面図である。従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n型のn−GaN基板101の裏面にドレイン電極121dが形成されている。また、n−GaN基板101上には、n型のn−GaN層102が縦方向電子走行層として形成されている。n−GaN層102内には、電流が流れる部分を制限する電流狭窄層としてAlN層103が設けられている。n−GaN層102上には、横方向電流供給層としてn型のn−AlGaN層106が形成されている。そして、n−AlGaN層106上には、AlN層103の上方にソース電極121sが形成され、AlN層103の開口部の上方にゲート電極121gが形成されている。ソース電極121sとゲート電極121gとの間には、SiN膜114が形成されている。
【0005】
このように構成された従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n−GaN層102の表層部に2次元電子ガス層(2DEG)が生じ、この2DEGを介してソース電極121sとドレイン電極121dとの間に電流が流れる。
【0006】
しかしながら、従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、オン抵抗が高く、オン時の発熱に伴う電気エネルギの損失が大きいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−165207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、縦型構造のHEMTにおけるオン抵抗を低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
化合物半導体装置の一態様には、基板と、前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、が設けられている。そして、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接している。
【0010】
化合物半導体装置の製造方法の一態様では、基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成し、前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する。また、前記基板の裏面にドレイン電極を形成する。
【発明の効果】
【0011】
上記の化合物半導体装置等によれば、基板の表面に平行な面から傾斜した面内でも2DEGが生じるため、基板の表面に垂直な方向におけるオン抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の縦型構造のGaN系HEMTを示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図3A】第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3C】図3Bに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3D】図3Cに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3E】図3Dに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3F】図3Eに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3G】図3Fに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3H】図3Gに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3I】図3Hに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3J】図3Iに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3K】図3Jに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3L】図3Kに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3M】図3Lに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3N】図3Mに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図3O】図3Nに引き続き、第1の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図5】第3の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【図7A】第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【図7C】図7Bに引き続き、第4の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0015】
第1の実施形態では、n型のn−GaN基板1上に、厚さが0.2μm〜10μm程度(例えば1μm)のノンドープのi−GaN層2及びn型のn−AlGaN層4が横方向に交互に配置されている。i−GaN層2は縦方向電子走行層として機能し、n−AlGaN層4は縦方向電子供給層及び電子ブロック層として機能する。n−GaN基板1の表面に垂直な方向は、GaN結晶のc軸方向から傾斜している。n−GaN基板1の表面は、例えばa面、m面又はr面である。n−AlGaN層4の組成は、例えばAl0.25Ga0.75Nで表わされる。また、n−AlGaN層4には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば4×1018cm-3)ドーピングされている。n−AlGaN層4の電子親和力は、i−GaN層2の電子親和力よりも小さい。
【0016】
i−GaN層2及びn−AlGaN層4上に、厚さが0.01μm〜1μm程度(例えば0.1μm)のノンドープのi−GaN層5が横方向電子走行層として形成されている。i−GaN層5上に、厚さが5nm〜30nm程度(例えば10nm)のn型のn−AlGaN層6が横方向電子供給層として形成されている。n−AlGaN層6の組成は、例えばAl0.25Ga0.75Nで表わされる。また、n−AlGaN層6には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば4×1018cm-3)ドーピングされている。n−AlGaN層6の電子親和力は、i−GaN層5の電子親和力よりも小さい。n−AlGaN層6上に、厚さが2nm〜10nm程度(例えば7nm)のn型のn−GaN層7が保護層として形成されている。n−GaN層7には、例えばSiが5×1017cm-3〜1×1019cm-3程度(例えば5×1018cm-3)ドーピングされている。例えば、i−GaN層5及びi−GaN層2のバンドギャップは、n−AlGaN層4のバンドギャップよりも狭く、また、n−AlGaN層6のバンドギャップは、i−GaN層5のバンドギャップよりも広い。
【0017】
n−GaN層7のn−AlGaN層4の上方に位置する部分には、ソース電極用の開口部7aが形成されており、この開口部7a内に開口部7aの上方まで延びるソース電極21sが形成されている。また、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びn−AlGaN層4には、n−AlGaN層6のソース電極21sとの界面からn−AlGaN層4の途中深さまで延びる素子分離領域11が形成されている。
【0018】
n−GaN層7上に、ソース電極21sを覆うSiN膜(シリコン窒化膜)14が形成されている。SiN膜14の厚さは10nm〜100nm程度(例えば40nm)である。
【0019】
SiN膜14、n−GaN層7、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びi−GaN層2には、SiN膜14の表面からi−GaN層2の途中深さまで延びる孔16が形成されている。そして、この孔16内に孔16の上方まで延びるゲート電極21gが形成されている。
【0020】
SiN膜14上に、ゲート電極21gを覆うSiN膜17が形成されている。SiN膜17の厚さは20nm〜1000nm程度(例えば400nm)である。SiN膜17及びSiN膜14には、ソース電極21sの一部を露出する開口部17sが形成され、SiN膜17には、ゲート電極21gの一部を露出する開口部17gが形成されている。
【0021】
また、n−GaN基板1の裏面にドレイン電極21dが一面にわたって形成されている。
【0022】
このような第1の実施形態では、格子不整合に起因するピエゾ効果により、i−GaN層5のn−AlGaN層6との界面近傍に電子が誘起される。この結果、横方向(n−GaN基板1の表面に平行な方向)に広がる2次元電子ガス層(2DEG)が現れる。また、同様のピエゾ効果により、i−GaN層2のn−AlGaN層4との界面近傍にも電子が誘起される。この結果、縦方向(n−GaN基板1の表面に垂直な方向)に広がる2DEGが現れる。そして、この縦方向に広がる2DEGは、n−GaN基板1に、その表面から傾斜して(直交して)接している。
【0023】
従来の縦型構造のGaN系HEMTでは、n型のGaN層が縦方向の電子供給層として機能しているため、電子の移動度が100cm2/V・s程度と低く、オン抵抗が高くなっている。これに対し、本実施形態では、縦方向に広がる2DEGが存在するため、電子の移動度を向上させることができる。
【0024】
また、ゲート電極21gが、i−GaN層2とn−AlGaN層4との界面の側方にも存在するため、オフ時においては、i−GaN層2とn−AlGaN層4との界面近傍であっても、ゲート電極21gの側方では2DEGは存在しにくい。このため、オフ時のドレインリーク電流が抑制される。
【0025】
実際に、本願発明者がシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表1に示す結果が得られた。この検証では、比較のために図1に示す従来のGaN系HEMTについてのシミュレーションも行った。なお、スイッチング時間のシミュレーションでは、全ゲート幅を40mmとし、ドレイン電極に100Vを印加した状態で、ゲート電極の電圧を制御してオフからオンに変化させた場合の応答時間を検証した。
【0026】
【表1】
【0027】
第1の実施形態によれば1000cm2/V・s程度(従来の10倍)の電子移動度が得られるため、表1に示すように、オン抵抗を著しく低減することができる。また、スイッチング時間を短縮することもできる。スイッチング時間の短縮により、スイッチング回路に用いた場合の動作効率を向上させることが可能となり、また、コイル等の周辺回路を小型することが可能となる
【0028】
なお、第1の実施形態の動作の制御に当たっては、例えば、ソース電極21sは接地しておく。そして、オフ時にはドレイン電極21dに300Vを印加し、ゲート電極21gに0V又は負の電圧を印加する。一方、オン時にはゲート電極21g及びドレイン電極21dに正の電圧を印加する。
【0029】
なお、抵抗体及びキャパシタ等をも実装してモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)としてもよい。後述する第2〜第4の実施形態においても同様である。
【0030】
次に、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図3A乃至図3Oは、第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0031】
第1の実施形態では、先ず、図3Aに示すように、n−GaN基板1上にi−GaN層2を、例えば有機金属気相エピタキシ(MOVPE)法により形成する。例えば、Ga原料としてトリメチルガリウム、N原料としてアンモニアを用いる。また、圧力は100Torrとし、成長温度は1050℃とする。
【0032】
次いで、図3Bに示すように、i−GaN層2上にSiO2膜3を、例えば熱化学気相堆積(CVD)法により形成する。その後、SiO2膜3上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に露光及び現像を行って、n−AlGaN層4に対応する部分を開口する開口部51aを備えたレジストパターン51を形成する。
【0033】
続いて、図3Cに示すように、レジストパターン51をマスクとして用いて、SiO2膜3のウェットエッチング、及びi−GaN層2のドライエッチングを行うことにより、n−GaN基板1を露出させる。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。そして、レジストパターン51を除去する。
【0034】
次いで、図3Dに示すように、i−GaN層2の開口部内にn−AlGaN層4をi−GaN層2と同程度の高さになるまで、例えばMOVPE法により形成する。このとき、SiO2膜3がn−AlGaN層4のi−GaN層2上での成長を抑制するマスクとして機能する。例えば、Ga原料としてトリメチルガリウム、N原料としてアンモニア、Al原料としてトリメチルアルミニウムを使用する。そして、SiO2膜3を除去する。
【0035】
その後、図3Eに示すように、i−GaN層2及びn−AlGaN層4上にi−GaN層5、n−AlGaN層6及びn−GaN層7をこの順で形成する。この場合、原料ガスを選択することにより、これらの層を連続して形成することができる。n−AlGaN層6及びn−GaN層7に不純物として含まれるSiの原料としては、例えばシランを使用することができる。
【0036】
続いて、n−GaN層7上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことにより素子分離形成用のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてArをイオン注入する。この結果、図3Fに示すように、素子分離領域11が形成される。そして、レジストパターンを除去する。
【0037】
次いで、n−GaN層7上に新たにレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことによりソース電極形成用のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてn−GaN層7をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。この結果、図3Gに示すように、開口部7aが形成される。なお、開口部7aの深さに関し、n−GaN層7の一部を残してもよく、また、n−AlGaN層6の一部を除去してもよい。つまり、開口部7aの深さがn−GaN層7の厚さと一致している必要はない。そして、レジストパターンを除去する。
【0038】
その後、図3Hに示すように、開口部7a内に、リフトオフ法によりTa膜21a、Al膜21b及びTa膜21cをこの順で形成する。即ち、新たなレジストパターンを形成し、Ta、Al及びTaの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したTa、Al及びTaをレジストパターンごと除去する。Ta膜、Al膜、Ta膜の厚さは、例えば、下から順に10nm程度、280nm程度、10nm程度とする。
【0039】
続いて、ラピッドサーマルアニール(RTA)装置を用いて、窒素雰囲気の下で、400℃〜1000℃、例えば550℃で1分間の熱処理を行う。この熱処理により、Ta膜21aとAl膜21bとの界面、及びAl膜21bとTa膜21cとの界面にTaAl3が生成し、図3Iに示すように、ソース電極21sが形成される。また、この熱処理の結果、オーミック特性が確立する。
【0040】
次いで、図3Jに示すように、プラズマ化学気相成長(PE−CVD)法により、全面にSiN膜14を形成する。その後、SiN膜14上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して露光及び現像を行うことによりゲート電極形成用の開口部15aを備えたレジストパターン15を形成する。
【0041】
続いて、図3Kに示すように、レジストパターン15をマスクとしてSiN膜14をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。
【0042】
更に、図3Lに示すように、レジストパターン15をマスクとしてn−GaN層7、n−AlGaN層6、i−GaN層5及びi−GaN層2をドライエッチングする。このドライエッチングとしては、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。また、このドライエッチングの量は、例えば、深さ0.15μm程度分とする。この結果、i−GaN層2の途中深さまで延びる孔16が形成される。
【0043】
次いで、図3Mに示すように、レジストパターン15を除去する。その後、孔16内に、リフトオフ法によりゲート電極21gを形成する。ゲート電極21gの形成では、ゲート電極21gを形成する領域を開口するレジストパターン、例えば2層レジストパターンを形成し、Ni及びAuの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したNi及びAuをレジストパターンごと除去する。Ni膜、Au膜の厚さは、例えば、夫々10nm程度、200nm程度とする。
【0044】
続いて、図3Nに示すように、全面にSiN膜17を、例えばプラズマCVD法により形成する。次いで、SiN膜17及びSiN膜14にソース電極21sの一部を露出する開口部17sを形成し、SiN膜17にゲート電極21gの一部を露出する開口部17gを形成する。
【0045】
その後、図3Oに示すように、n−GaN基板1の裏面を研磨して、n−GaN基板1の厚さを100μm程度とする。このとき、n−GaN基板1を全て取り除いてもよい。n−GaN基板1を電子が走行するとオン抵抗が上昇するためである。続いて、n−GaN基板1の裏面上にドレイン電極21dを形成する。ドレイン電極21dの形成では、n−GaN基板1の裏面上にTa膜、Al膜及びTa膜をこの順で形成する。また、これらの厚さは、例えば、n−GaN基板1側から順に10nm程度、280nm程度、10nm程度とする。続いて、RTA装置を用いて、窒素雰囲気の下で、400℃〜1000℃、例えば550℃で1分間の熱処理を行う。この熱処理により、ドレイン電極21dが形成される。また、この熱処理の結果、オーミック特性が確立する。
【0046】
このような製造方法により、図2に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0047】
なお、ゲート電極21gのゲート長、即ち2つのソース電極21sを結ぶ方向の長さは、0.2μm〜2μm程度(例えば0.5μm)である。また、ユニットゲート幅、即ちゲート電極21gによって2DEGの濃度が制御される領域の幅は、100μm〜4000μm程度(例えば300μm)である。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0049】
第2の実施形態では、孔16の内面に沿ってTa2O5膜(タンタル酸化膜)18が形成されている。Ta2O5膜18の厚さは、2nm〜40nm程度(例えば10nm)である。Ta2O5膜18は、更にSiN膜14及びSiN膜17の間にも介在している。
【0050】
即ち、第1の実施形態のゲートがショットキーゲート構造であるのに対し、第2の実施形態のゲートは絶縁ゲート構造となっている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0051】
このような第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、絶縁ゲート構造が採用されているため、順方向におけるゲートリークが皆無となる。従って、ゲート電圧を5V以上とすることも可能となり、最大電流を増加させることができ、電力デバイスにより好適なものとなる。
【0052】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表2に示す結果が得られた。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、最大電流が第1の実施形態と比較して30%以上高くすることができる。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0055】
なお、第2の実施形態に係るGaN系HEMTを製造する際には、第1の実施形態における孔16の形成の後に、Ta2O5膜18を、例えば原子層堆積(ALD)法により300℃程度で形成すればよい。そして、Ta2O5膜18の形成後に、600℃程度でアニールを1分施すことにより、内部の水素が脱離して内部の電子トラップ密度が減少し、Ta2O5膜18の質が向上する。
【0056】
また、絶縁ゲート構造に用いられる絶縁膜の材料は特に限定されないが、その誘電率は、例えば10以上であることが好ましく、HfO2系絶縁膜、Al2O3系絶縁膜等が良好な性能を示す。また、オキシナイトライド膜としてHfON膜も使用可能である。この場合はNの原料としてNH3又はN2プラズマを用いたALD法で成膜を行えばよい。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0058】
第3の実施形態では、第2の実施形態におけるn−AlGaN層4に代えて、Al及びGaの濃度が深さ方向で変化するn−AlGaN層31が設けられている。n−AlGaN層31内では、n−GaN基板1に近い領域ほどAl濃度が高く、Ga濃度が低くなっている。例えば、n−AlGaN層31のn−GaN基板1との界面近傍では、Al濃度及びGa濃度が50%であり、i−GaN層5との界面近傍では、Al濃度が5%、Ga濃度が95%である。ここでいう、Al濃度及びGa濃度は、Al及びGaの総量に対するAl、Gaの割合である。
【0059】
他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0060】
このような第3の実施形態によっても第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、n−AlGaN層31のi−GaN層5との界面近傍におけるAl濃度が低く、i−GaN層2のこのAl濃度が低い部分との界面には、2DEGがほとんど存在しない。このため、ノーマリーオフ動作がより確実となると共に、閾値電圧を高めることができる。
【0061】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表3に示す結果が得られた。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示すように、+2Vの閾値電圧が得られる。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0064】
なお、第3の実施形態に係るGaN系HEMTを製造する際には、第2の実施形態におけるn−AlGaN層4の形成に代えて、原料ガスの流量を調整しながら、即ちAl濃度を減少させ、Ge濃度を上昇させながら、n−AlGaN層31を形成すればよい。
【0065】
なお、第1の実施形態と同様のショットキーゲート構造が採用されていてもよい。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図6は、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す断面図である。
【0067】
第4の実施形態では、n型のn−GaN基板1上に、第1の実施形態と同様に、i−GaN層2及びn−AlGaN層4が横方向に交互に配置されている。i−GaN層2には、その界面から途中深さまで延びる素子分離領域11が形成されている。i−GaN層2上に、ソース電極21sが形成されている。i−GaN層2及びn−AlGaN層4上に、ソース電極21sを覆うSiN膜14が形成されている。また、n−AlGaN層4には、その表面から途中深さまで延びる孔16が形成されている。そして、この孔16内に孔16の上方まで延びるゲート電極21gが形成されている。更に、SiN膜14上に、ゲート電極21gを覆うSiN膜17が形成されている。SiN膜17及びSiN膜14には、ソース電極21sの一部を露出する開口部17sが形成され、SiN膜17には、ゲート電極21gの一部を露出する開口部17gが形成されている。
【0068】
また、n−GaN基板1の裏面にドレイン電極21dが一面にわたって形成されている。
【0069】
このような第4の実施形態では、格子不整合に起因するピエゾ効果により、i−GaN層2のn−AlGaN層4との界面近傍にも電子が誘起される。この結果、縦方向に広がる2DEGが現れる。その一方で、第1〜第3の実施形態と異なり、横方向に広がる2DEGは現れない。即ち、電流の経路が簡素化されている。このため、第1〜第3の実施形態よりもオン抵抗が低くなる。
【0070】
実際に、本願発明者が第1の実施形態と同様のシミュレーションによる検証を行ったところ、下記表4に示す結果が得られた。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示すように、オン抵抗が著しく低く、最大電流が極めて高い。また、スイッチング時間をより短縮することもできる。
【0073】
なお、第4の実施形態において、第2、第3の実施形態のように、絶縁ゲート構造を採用してもよい。また、第3の実施形態のように、n−AlGaN層4に代えて、Al及びGaの濃度が変化するn−AlGaN層31を用いてもよい。
【0074】
次に、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図7A乃至図7Cは、第4の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0075】
第4の実施形態では、先ず、図7Aに示すように、第1の実施形態と同様に、n−GaN基板1上にi−GaN層2及びn−AlGaN層4を形成する。次いで、i−GaN層2内に素子分離領域11を形成する。
【0076】
その後、図7Bに示すように、i−GaN層2及び素子分離領域11上にソース電極21sを形成する。
【0077】
続いて、図7Cに示すように、SiN膜14を形成する。次いで、SiN膜14のn−AlGaN層4の上方に開口部14aを形成し、孔16をn−AlGaN層4に形成する。そして、孔16内にゲート電極21gを形成する。
【0078】
その後、第1の実施形態と同様にして、SiN膜17の形成等を行う。
【0079】
このような製造方法により、図6に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0080】
なお、いずれの実施形態においても、基板及び各層の材料、厚さ及び不純物濃度等は特に限定されない。例えば、n−GaN基板1に代えて、導電性シリコン基板、サファイア基板、導電性SiC基板等を用いてもよい。但し、基板の表面は、電子走行層の電子供給層との界面近傍に生じる2DEGの少なくとも一部が基板の表面に平行な面から傾斜した面内で広がり得るものとする。例えば、上記のa面、m面又はr面のn−GaN基板、サファイア基板が挙げられる。従って、電子供給層の一部と電子走行層の一部とが基板の表面に平行な面から傾斜した面を境に接していれば、この面が基板の表面に垂直である必要はなく、2DEGが基板の表面に垂直に広がっている必要もない。また、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板も挙げられる。サファイア基板の場合には、例えばサファイア基板を研磨等で全て剥離してドレイン電極をGaN結晶層に直接形成することにより、上記の本実施形態と同様の効果を得ることができる。他の基板を用いる場合も、基板を全て剥離してもよい。
【0081】
また、電子走行層、電子供給層等の材料として、他の化合物半導体を用いてもよいが、特に窒化物半導体が好ましい。例えば、横方向電子供給層として機能するn−AlGaN層6、並びに縦方向電子供給層及び電子ブロック層として機能するn−AlGaN層4に代えて、AlGaInN層又はInAlN層を用いてもよい。この場合、Inの組成比によってこれらの層のバンドギャップを調整することが可能となり、HEMTのしきい値を変化させることができる。また、Al濃度を第3の実施形態のように、変化させてもよい。
【0082】
また、ゲート電極21g、ソース電極21s及びドレイン電極21dの構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極21s及びドレイン電極21dの形成後の熱処理を省略してもよい。また、ゲート電極21gに対して熱処理を行ってもよい。
【0083】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0084】
(付記1)
基板と、
前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、
前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
を有し、
前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接していることを特徴とする化合物半導体装置。
【0085】
(付記2)
前記基板は、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板であることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0086】
(付記3)
前記基板は、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板であることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0087】
(付記4)
前記電子走行層の前記電子供給層と接する部分に2次元電子ガス層が存在し、
前記2次元電子ガス層は、前記基板に、前記基板の表面に平行な面から傾斜して接していることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0088】
(付記5)
前記電子供給層及び電子走行層の上方に形成され、そのバンドギャップが前記電子供給層及び電子走行層の各バンドギャップの狭い方と同一か、又はそれよりも狭い第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成され、そのバンドギャップが前記第1の化合物半導体層のバンドギャップよりも広い第2の化合物半導体層と、
を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0089】
(付記6)
前記電子供給層はAl及びNを含み、更にGa又はInの少なくとも一方を更に含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0090】
(付記7)
前記ゲート電極は、前記電子走行層に埋め込まれていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0091】
(付記8)
基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成する工程と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する工程と、
前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記9)
前記基板として、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板を用いることを特徴とする付記8に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記10)
前記基板として、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板を用いることを特徴とする付記8に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0094】
1:n−GaN基板
2:i−GaN層
4:n−AlGaN層
5:i−GaN層
6:n−AlGaN層
7:n−GaN層
18:Ta2O5膜
21d:ドレイン電極
21g:ゲート電極
21s:ソース電極
31:n−AlGaN層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、
前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
を有し、
前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接していることを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記基板は、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記基板は、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記電子走行層の前記電子供給層と接する部分に2次元電子ガス層が存在し、
前記2次元電子ガス層は、前記基板に、前記基板の表面に平行な面から傾斜して接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成する工程と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する工程と、
前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された電子供給層及び電子走行層と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方に形成されたソース電極及びゲート電極と、
前記基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
を有し、
前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接していることを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記基板は、表面がm面、a面又はr面の導電性GaN基板、導電性SiC又はサファイア基板であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記基板は、表面のミラー指数が(100)又は(110)の導電性シリコン基板であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記電子走行層の前記電子供給層と接する部分に2次元電子ガス層が存在し、
前記2次元電子ガス層は、前記基板に、前記基板の表面に平行な面から傾斜して接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
基板の上方に、電子供給層及び電子走行層を、前記電子供給層の少なくとも一部と前記電子走行層の少なくとも一部とが、前記基板の表面に平行な面から傾斜した面を境にして互いに接するように形成する工程と、
前記電子供給層及び前記電子走行層の上方にソース電極及びゲート電極を形成する工程と、
前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公開番号】特開2010−225938(P2010−225938A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72829(P2009−72829)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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