説明

区画線検出装置および区画線検出方法

【課題】電磁波を送受信した結果に基づき区画線の検出を行う装置において、検出精度を向上させる。
【解決手段】近距離スキャンの1ライン分の測定データ(強度データ,距離データ,スキャン角度)を読み込み、読み込んだ強度データ列および距離データ列のそれぞれを微分することで、微分強度データ列および微分距離データ列を求める(S110〜S120)。微分強度データ列において正レベル,負レベルが連続し且つヌルレベルに挟まれた領域を候補範囲として抽出し(S130)、その抽出した候補範囲の中から、微分距離データ列の極性が、候補範囲に対応する部位で正,負,正(第1スキャン領域の場合)、又は負,正,負(第1スキャン領域の場合)と変化するものを、区画線からの反射が得られた対象領域として抽出する(S140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の両端や車線境界,駐車区画等を表すために路面等にペイントされた区画線を検出する区画線検出装置および区画線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーンキーピング等の車両制御のために区画線を検出する装置が知られている。
この種の装置として、例えば特許文献1には、車両前方を撮像したカメラ画像から、レーンマーカー(区画線を含む)と路面との輝度差を利用したり、予め用意されたレーンマーカーの表示/配置パターンとのパターンマッチングを行ったりすることによりレーンマーカーを認識するもの、更には、レーザレーダを併用してレーザ光(電磁波)の反射強度からレーンマーカーの種類を特定し、特定した種類に応じて最適な認識方法を選択するものが記載されている。
【0003】
また、例えば引用文献2には、先行車両との車間距離や相対速度等を検出するために車両に搭載されているレーザレーダを利用して、区画線を検出することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−121546号公報
【特許文献2】特開2004−139338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術では、レーザ光の反射強度から区画線を検出しようとした場合、区画線の位置を検出することは可能であるが、区画線のエッジまで正確に求めることができない。そのためレーンキープ制御等の高い安全性が要求される技術にこの区画線を検出する技術を適用するには更なる検出精度を改善する必要があった。
【0006】
また、特許文献2記載の技術のように、カメラとレーザの二つの技術を併用して区画線のエッジを求めることは可能であるが、カメラとレーザの両装置が必要となり装置全体が大型化する等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するために、電磁波を送受信した結果に基づき路面に示された区画線の検出を行う装置において、カメラを用いることなく、区画線の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の区画線検出装置は、路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを形成するビーム形成手段を備えている。
【0009】
ここで、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域(スキャンエリア)とする。また、区画線とは、路面に破線や実線でペイントされた白線,黄線,ゼブラゾーン,複合線等からなる通路を区画するための線の他、駐車場にて駐車区画を示すために路面にペイントされる各種線のことを意味する。
【0010】
そして、請求項1の区画線検出装置では、データ取得手段が、探査領域に向けてビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線までの距離を表す距離データをビーム毎に取得する。すると、検出手段が、データ取得手段により取得された距離データをビームの配列順に並べたものを距離データ列として、その距離データ列の変化の特徴から路面に示された区画線を検出する。
【0011】
また、請求項2の区画線検出装置では、データ取得手段が、探査領域に向けてビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、受信信号の強度を表す強度データおよび路面に示された区画線までの距離を表す距離データをビーム毎に取得する。すると、検出手段が、データ取得手段により取得された強度データおよび距離データを、それぞれビームの配列順に並べたデータ列を強度データ列および距離データ列として、その強度データ列および距離データ列の変化の特徴から路面に示された区画線を検出する。
【0012】
ここで、図10は、電磁波の送受信タイミングと、電磁波を反射した物標までの距離との関係を示す説明図である。図示されているように、送信タイミングと受信タイミングとの時間差が、電磁波が物標までの距離を往復するのに要した時間、ひいては物標までの距離に比例するため、この時間差の検出結果を距離データとして用いることができる。このように電磁波の往復時間から電磁波を反射した物標までの距離を検出する手法は、Time of Flight 方式と呼ばれる周知のものである。
【0013】
図11は、(a)が区画線と路面照射領域a〜fとが重なり合う様子を例示した模式図、(b)が路面照射領域a〜fに対応する各ビームで検出される受信信号の波形を示したグラフである。
【0014】
図11に示すように、いずれの路面照射領域a〜fでも、路面照射領域の近端までの距離(その距離を電磁波が往復するのに要する時間)から遠端までの距離(その距離を電磁波が往復するのに要する時間)に渡って、受信信号の信号レベルが、無信号レベルより上昇する。
【0015】
但し、区画線との重なり領域がない路面照射領域a,fでは、近端と遠端の中心付近で信号レベルがピークとなり、そのピーク値は、区画線等が描かれていない路面からの反射レベルを表す路面レベルとなる。そして、このピーク値が強度データとなり、電磁波の送信タイミングからピーク値の発生タイミングまでの経過時間が距離データとなる。
【0016】
区画線との重なり領域が存在する路面照射領域b〜eでは、路面レベルより大きなピーク値が得られるだけでなく、路面照射領域b〜e間で異なる重なり領域の位置に応じてピークの位置(即ち、距離データ)が変化すると共に、路面照射領域b〜e間で異なる重なり領域の面積に応じてピーク値(即ち、強度データ)が増減する。
【0017】
具体的には、重なり領域が遠端側に存在する路面照射領域bでは、中心より遠端側で信号レベルがピークとなり、重なり領域が全体に渡って存在する路面照射領域cでは、中心付近で信号レベルがピークとなり、重なり領域が近端側に存在する路面照射領域d,eでは、中心より近端側で信号レベルがピークとなる。そして、信号レベルのピーク値は、重なり領域の面積に従って、路面照射領域cで最大となり、以下、路面照射領域b,d,eの順に小さくなる。
【0018】
このような、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線の重なり領域の路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果から、請求項3に記載の発明は、距離データ列の変化の特徴を判断している。また請求項4に記載の発明は、請求項3のように距離データ列の変化の特徴を判断することに加え、さらに、路面照射領域と区画線の重なり領域の路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果から強度データ列の変化の特徴を判断している。
【0019】
このように本発明の区画線検出装置は、ビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、隣接する各路面照射領域と検出対象の区画線との重なり具合(路面照射領域内においてどのような位置関係でどの程度の面積を有しているか)を判定処理することによって、区画線を検出することができる。要は、各隣接路面照射領域間における、路面照射領域と区画線とが重なる部分の路面照射領域内での位置の変化と重なる部分の面積の変化に基づいて、区画線が検出されることになる。
【0020】
ここで、図4は、(a)が図11(a)に示した路面照射領域上に図11(b)に示した強度データおよび距離データを重ね合わせて示した説明図であり、(b)の上段が路面照射領域の配列方向に沿った位置(スキャン角度)を横軸にして強度データをプロットしたグラフ、下段が同じく路面照射領域の配列方向に沿った位置(スキャン角度)を横軸にして距離データをプロットしたグラフである。
【0021】
また、探査領域の中心を正面方向として、正面方向より右側の探査領域(以下「右半領域」という)内に区画線が存在する状態(即ち、図11(a)に示す状態)で、探査領域の左から右(即ち、図11(a)では領域aから領域f)に向かってスキャンした場合(以下「第1の検出条件」という)を考えると、重なり領域の面積は、一旦増加した後、減少し、重なり領域の位置は、照射面の最遠端側から最近端に向かって移動する。但し、区画線と重なり合う路面照射領域b〜eの近端から遠端に向かう方向(ビームの指向方向)に対して、区画線の配線方向(図11(a)の下か上に向かう方向)は、左に傾斜しているものとする。
【0022】
つまり、強度データは、図4(a)中の実線や、図4(b)の上段のグラフに示すように、路面照射領域と区画線とが交差する前は路面レベルを示し、路面照射領域と区画線とが交差する領域では重なり領域の面積に応じたレベル(路面レベルより大)を示し、路面照射領域と区画線と交差する領域を抜けると路面レベルに戻るという変化を示す。
【0023】
また、距離データは、図4(a)中の点、図4(b)の下段のグラフに示すように、路面照射領域と区画線とが交差する前は、面積路面照射領域の遠端と近端との中間付近の距離に対応した基準レベルを示し、路面照射領域と区画線とが交差する領域では、路面照射領域内での重なり領域の位置の変化に従い、一旦、路面照射領域の遠端付近の距離に対応するレベルまで増大した後、路面照射領域の近端付近の距離に対応するレベルまで減少し、その後、路面照射領域と区画線とが交差する領域を抜けると基準レベルに戻るという変化を示す。
【0024】
なお、正面方向より左側の探査領域(以下「左半領域」という)内に存在する区画線を、探査領域の右から左に向かってスキャンした場合(以下「第2の検出条件」という)、強度データ列や距離データ列の変化は、第1の検出条件の場合と同様になる。但し、区画線と重なり合う路面照射領域b〜eの近端から遠端に向かう方向に対して、区画線の配線方向は、右に傾斜しているものとする。
【0025】
一方、右半領域内に存在する区画線を、探査領域の右から左に向かってスキャンした場合(以下「第3の検出条件」という)、又は、左半領域に存在する区画線を、探査領域の左から右に向かってスキャンした場合(以下「第4の検出条件」という)、強度データ列の変化は、第1および第2の検出条件の場合と同様になるが、距離データ列の変化は、第1および第2の検出条件の場合とは逆に、基準レベルから、一旦、路面照射領域の近端付近の距離に対応するレベルまで減少した後、路面照射領域の遠端付近の距離に対応するレベルまで増大し、その後、基準レベルに戻るという変化を示す。
【0026】
このように、強度データ列および距離データ列は、区画線からの反射光が得られる角度範囲において特徴的な変化を示す。特に、距離データ列の変化は、検出対象である区画線の形状、即ち、帯状に長く延びた形状に特有なものとなる。
【0027】
つまり、請求項1の区画線検出装置によれば、連続する複数の路面照射領域が区画線と重なり合った時に、距離データ列に現れる特徴を利用して区画線を検出するため、区画線のエッジが的確に検出でき、よって路面に示された区画線を精度よく検出することが可能となる。
【0028】
ここで、連続する複数の路面照射領域が区画線と重なり合った時に距離データ列に現れる特徴として、その変化は小さい。そのために、距離データ列に現れる特徴そのものがノイズと判断される恐れがある。これに対し請求項2の区画線検出装置によれば、距離データ列に現れる特徴だけでなく、強度データに現れる特徴も利用して区画線を検出する。これにより、受信信号の反射強度のレベルから区画線が存在する位置を特定することができ、その上で距離データ列を用いて検出対象の区画線のエッジ検出を行うことができるので、より確実に精度よく区画線を検出することが可能となる。
【0029】
従って、請求項1および請求欧2の区画線検出装置によれば、レーンキープアシスト等、安全性を確保するために区画線の位置を精度よく求める必要がある制御に、好適に用いることができる。
【0030】
なお、請求項1の区画線検出装置では、請求項5のように、検出手段を、距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出手段と、抽出手段にて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出手段とで構成してもよい。
【0031】
また、請求項2の区画線検出装置では、請求項6のように、強度データ列の中で、物体の存在を示す大きさの強度データが連続する部分を所要強度連続部分、その所要強度連続部分に対応する探査領域の一部を候補領域として、検出手段を、候補領域で検出された距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出手段と、抽出手段にて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出手段とで構成してもよい。
【0032】
なお、所要強度連続部分は、単純に、強度データ列を構成する各強度データを予め設定された閾値と比較することによって抽出してもよいが、強度データ列を微分した微分強度データ列を用いて抽出してもよい。
【0033】
ここで、図12(a)は、所要強度連続部分における強度データ列(実線)および微分強度データ列(一点鎖線)の値の変化を示すグラフである。
図12(a)に示すように、微分強度データ列を用いる場合は、この微分強度データ列の中で、微分強度データの極性が正になった後、続けて負になる変化が検出された部分を、所要強度連続部分として抽出すればよい。
【0034】
また、請求項1および請求項2の区画線検出装置では、請求項7のように、距離データが予め設定された基準レベルより一旦増大してから基準レベルより減少したあと基準レベルに戻るか、又は、基準レベルより一旦減少してから基準レベルより増大したあと基準レベルに戻るという変化を、特定変化として用いればよい。なお、前者の変化は、第1または第2の検出条件の下で検出され、後者の変化は、第3または第4の検出条件の下で検出される。
【0035】
また、特定変化を抽出する際に、距離データ列をそのまま用いてもよいが、例えば、請求項8のように、距離データ列を微分した微分距離データ列を用いて行ってもよい。
ここで、図12(b)は、区画線が存在する領域における距離データ列(実線)および微分距離データ列(一点鎖線)の値の変化を示すグラフである。
【0036】
図12(b)に示すように、微分距離データ列を用いる場合は、請求項9のように、微分距離データ列の中で、微分距離データの極性が正になり続けて負になり更に続けて正になる変化、又は、微分距離データの極性が負になり続けて正になり更に続けて負になるという変化を、特定変化とすればよい。なお、前者の変化は、第1または第2の検出条件の下で検出され、後者の変化は、第3または第4の検出条件の下で検出される。
【0037】
ここで図12(c)(d)は、路面状態の変化によって強度データや距離データのオフセットレベル(路面レベル/基準レベル)が変動した場合の強度データ列,微分強度データ列、および距離データ列,微分距離データ列の変化を示すグラフである。なお、路面状態の変化とは、例えば、気候(乾燥/湿潤/凍結等)による変化の他、道路の材質(アスファルト/コンクリート)や道路の特性(排水性/非排水性)等による変化が考えられる。
【0038】
図12(c)(d)に示すように、強度データや距離データのオフセットレベルが変動しても、微分強度データ列や微分距離データ列は、その影響を受けない。
従って、本発明の区画線検出装置によれば、このような状況の変化によらず、同一の手順によって、強度データ列や距離データ列に表れる変化を正しく抽出することができ、ひいては区画線の検出精度を更に向上させることができる。
【0039】
ところで、位置算出手段は、具体的には、次のように構成することが考えられる。
例えば、請求項10のように、探査領域の中心に近い側の端部で検出された距離データと、その距離データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度とから算出される位置を、区画線の位置としてもよい。また、請求項11のように、候補領域の両端で検出された距離データと、各距離データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度とから算出される二つの位置の中点を、区画線の位置としてもよい。また、請求項12のように、候補領域の前後で検出される距離データと、その距離データを基準データとして、候補領域内で距離データが基準データのレベルを横切る地点の方向を示す角度とから算出される位置を、区画線の位置としてもよい。また、請求項13のように、候補領域内で最大となる強度データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度と、そのビームに基づいて取得された距離データとから算出される位置を、区画線の位置としてもよい。
【0040】
また、本発明の区画線検出装置は、請求項14のように、位置算出手段での算出結果(即ち、区画線の位置)の時系列から区画線の傾きを算出する傾き算出手段を備えていてもよい。
【0041】
ところで、請求項15のように、ビーム形成手段は、いずれかのビームの指向方向と区画線の配線方向とが一致する場合を除き、隣接する少なくとも二つの路面照射領域が探査領域内に存在する区画線と重なり合うようなビームを形成するように設定されていることが望ましい。
【0042】
ここで、図6は、路面照射領域の幅を(b)の場合を基準として、(a)は1/2に、(c)は2倍にした時の強度データ、距離データの検出結果を、路面照射領域に重ねて示した説明図である。
【0043】
図6に示すように、路面照射領域の幅が狭いほど、区画線との重なり領域がより多くの路面照射領域で生じ易くなるため、強度データや距離データの変化を詳細に検出することができ、ひいては変化の特徴をより的確に把握することができる。但し、距離データや強度データの変化を抽出するには、図7のように少なくとも二つの路面照射領域に区画線との重なり領域が生じるように設定されていればよい。
【0044】
また、請求項16のように、ビーム形成手段は、路面照射領域の近端から遠端に向かう方向(ビームの指向方向)を縦方向、路面照射領域が並ぶ方向を横方向として、路面照射領域が縦長となるようなビームを形成するように設定されていることが望ましい。
【0045】
ここで、図13は、路面照射領域の面積を同じにしたまま、路面照射領域の縦横比を変化させたものであり、縦方向の長さをL、横方向の長さをWとして、(a)に縦長(L>W)の路面照射領域、(b)に横長(L<W)の路面照射領域を示す。
【0046】
図13に示すように、路面照射領域の面積が同じであるならば、路面照射領域が縦長であるほど、多くの路面照射領域で、区画線との重なり領域が発生し易くなるだけでなく、距離データの変化が大きくなるため、距離データの変化の特徴を捉えやすくすることができる。
【0047】
ところで、このようなビーム形成手段の設定は、ビーム形成手段の取り付け状態(路面からの高さ、路面に対する角度)、照射するビームの形状(ビーム幅,最大検知距離)、探査範囲等を、検出対象となる区画線の幅等に基づいて適宜設定すればよい。なお、ここで問題にしているのは、あくまでも路面照射領域の形状であり、照射源でのビームの形状は横長であってもよい。
【0048】
請求項17の区画線検出装置は、探査領域に向けてビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出手段を備え、検出手段は、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果を基に、区画線を検出する。
【0049】
よって、請求項17の区画線検出装置によれば、請求項1の区画線検出装置と同様、区画線のエッジが的確に検出でき、路面に示された区画線を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
また、請求項18の区画線検出装置は、探査領域に向けてビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出手段を備え、検出手段は、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果、および、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果、を基に、区画線を検出する。
【0051】
よって、請求項18の区画線検出装置によれば、請求項2の区画線検出装置と同様、より確実に精度よく路面に示された区画線を検出することが可能となる。
次に、上記目的を達成するためになされた本発明の区画線検出方法は、路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを用い、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域(スキャンエリア)とする。
【0052】
そして、請求項19の区画線検出方法では、探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、ビーム毎に生成される路面に示された区画線までの距離を表す距離データを取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップにより取得された距離データを、ビームの配列順に並べたものを距離データ列として、距離データ列の変化の特徴から路面に示された区画線を検出する検出ステップとを備える。
【0053】
このような請求項19の区画線検出方法は、請求項1の区画線検出装置によって実現されるものである。よって、請求項19の区画線検出方法によれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、請求項20の区画線検出方法では、探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、ビーム毎に生成される受信信号の強度を表す強度データおよび路面に示された区画線までの距離を表す距離データを取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップにより取得された強度データおよび距離データを、それぞれビームの配列順に並べたものを強度データ列および距離データ列として、該強度データ列および距離データ列の変化の特徴から路面に示された区画線を検出する検出ステップとを備える。
【0055】
このような請求項20の区画線検出方法は、請求項2の区画線検出装置によって実現されるものである。よって、請求項20の区画線検出方法によれば、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、検出ステップは、請求項21のように、配列順に並べられた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の位置関係によって変化する受信信号を検出した結果から、距離データ列の変化の特徴を判断するようにしてもよく、また、請求項22のように、配列順に並べられた複数のビームの各々について、距離データ列の変化の特徴を判断することに加え、さらに、路面照射領域と区画線の重なり領域の路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果から強度データ列の変化の特徴を判断するようにしてもよい。
【0057】
また、請求項23、24、26、27のように、検出ステップが構成されていてもよいし、また、請求項25のように、抽出ステップが構成されていてもよい。
請求項28の区画線検出方法は、探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出ステップを備え、検出ステップは、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号を検出した結果を基に、区画線を検出する。
【0058】
このような請求項28の区画線検出方法は、請求項17の区画線検出装置によって実現されるものである。よって、請求項28の区画線検出方法によれば、請求項17と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、請求項29の区画線検出装置は、探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出ステップを備え、検出ステップは、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号を検出した結果、および、路面照射領域と区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号を検出した結果を基に、区画線を検出する。
【0060】
このような請求項29の区画線検出方法は、請求項18の区画線検出装置によって実現されるものである。よって、請求項29の区画線検出方法によれば、請求項18と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明が適用された物体検出装置の全体構成図。
【図2】レーザ光の照射範囲等を示す説明図。
【図3】制御部が実行する区画線検出処理の内容を示すフローチャート。
【図4】区画線が存在する領域(図2中の領域X)での測定結果を表すグラフであり、(b)の上段は強度データの測定結果、(b)の下段は距離データの測定結果、(a)は領域Xの拡大図に強度データおよび距離データの測定結果を重ねて示した説明図である。
【図5】区画線が車両に対して傾きを有する場合の強度データ,距離データの検出結果、区画線位置や区画線傾きの算出方法を示す説明図。
【図6】路面照射領域の幅と検出精度との関係を示す説明図。
【図7】区画線検出が可能となる最低限の条件を示す説明図。
【図8】強度データおよび距離データの実測値を示すグラフ。
【図9】変形例における距離データの実測値を示すグラフ。
【図10】電磁波の送受信タイミングと、電磁波を反射した物標までの距離との関係を示す説明図。
【図11】(a)が区画線と路面照射領域とが重なり合う様子を例示した模式図、(b)が路面照射領域に対応する各ビームで検出される受信信号の波形を示したグラフ。
【図12】(a)が強度データ列,微分強度データ列を例示するグラフ、(b)が距離データ列,微分距離データ列を例示するグラフ、(c)が強度データ列のオフセットレベルが変化した場合の微分強度データ列を示すグラフ、(d)が距離データ列のオフセットレベルが変化した場合の微分距離データ列を示すグラフ。
【図13】縦横比が異なる路面照射領域と区画線との関係を例示する説明図であり、(a)が縦長の路面照射領域、(b)が横長の路面照射領域である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された車載用の物体検出装置1の全体構成を示すブロック図であり、図2は、物体検出装置1の取付位置を示すと共に、レーザ光(電磁波)の照射範囲等を示す説明図である。
【0063】
この物体検出装置1は、車両前方に存在する物体や路面にペイントされた道路標示等を認識し、その物体に関する情報(位置,大きさ,相対速度等)からなる物体パラメータや、走行レーンの境界等を示す区画線に関する情報(位置,傾き等)からなる区画線パラメータを生成する装置である。なお区画線とは、路面に破線や実線でペイントされた白線,黄線,ゼブラゾーン,複合線等からなる通路を区画するための線の他、駐車場にて駐車区画を示すために路面にペイントされる各種線のことを意味する。
【0064】
物体検出装置1で生成された物体パラメータや区画線パラメータは、車両制御装置(図示せず)に供給される。そして、物体パラメータは、例えば、物体パラメータによって示された物体が、予め設定された警報領域に存在する障害物である場合に警報を発生させる警報制御や、その物体が先行車両である場合にその先行車両の状況に応じてブレーキ,スロットル,自動変速器等を動作させることによって車速を制御するいわゆる車間制御等に使用される。また、区画線パラメータは、例えば、区画線パラメータに基づいて特定される走行車線から逸脱しないように警報を発生させたり車両の走行状態を制御したりするいわゆるレーンキープ制御等に使用される。
【0065】
つまり、物体検出装置1において、区画線パラメータを生成するための構成が本発明の区画線検出装置に相当する。
<全体構成>
図1に示すように、物体検出装置1は、車両前方をレーザ光によってスキャンする発光部10と、発光部10から照射されたレーザ光を反射した物体からの反射光を受光する受光部20と、発光部10にてレーザ光が照射されてから受光部20にて反射光が受光されるまでの時間、および受光部20での受光強度を計測して測定を生成する計測回路30と、発光部10を駆動するための信号を出力すると共に、計測回路30にて生成された計測データに基づいて物体パラメータや区画線パラメータを生成する制御部40とを備えている。
【0066】
なお、物体検出装置1は、例えば、車室内のルームミラー周辺など、車両前方の路面を見渡すことが可能な位置に取り付けられる(図2参照)。
<発光部>
発光部10は、レーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)11と、制御部40からのLD駆動信号に従って、LD11にパルス状のレーザ光を発生させるLD駆動回路12と、LD11が発生させたレーザ光のビーム幅を絞る発光レンズ13と、発光レンズ13を介して供給されるビーム状のレーザ光を反射するミラーを有し、ミラーからの反射光の放射方向が車幅方向の一定角度範囲(以下「スキャン角度範囲」という)内で変化させることが可能なように前記ミラーを支持すると共に、ビームの俯角(水平方向に対する下向きの角度)を車高方向に沿って変化させることが可能なように構成されたスキャナ機構部14と、制御部40からのSC駆動信号に従って、スキャナ機構部14を駆動することで、二次元的なビームスキャンを実現するスキャナ駆動回路15とを備えている。
【0067】
制御部40は、ビームの俯角を固定した状態で、水平面内でのレーザ光の照射方向がスキャン角度範囲内で一方向(図では左隅から右隅)に変化するようにスキャナ機構部14を動作させるようなSC駆動信号を出力すると同時に、簡欠的かつ等間隔(等角度)にLD11からレーザ光が照射されるようにLD駆動回路12を動作させるようなLD駆動信号を出力する。
【0068】
以下では、このようなビームの俯角を固定したまま、スキャン角度範囲内で一方向にレーザ光を照射する動作をラインスキャンという。
そして、レーザ光の照射方向がスキャン角度範囲の端まで到達し、1ライン分のラインスキャンが終了すると、ビームの俯角を所定角度だけ変化させて、同様のラインスキャンを繰り返すことにより、所定のスキャンエリアの全体に順次レーザ光を照射する。
【0069】
ここで、図2は、発光部10によって実現される二次元的なビームスキャンの詳細を示す説明図であり、図13(a)は、路面上でのレーザ光の照射面(以下「路面照射領域」という)の形状を示す説明図である。なお、この説明図は、図2中の領域Xを拡大して示した図である。
【0070】
路面照射領域は、図13(a)に示すように、レーザ光の照射方向(ビームの指向方向)である縦方向の長さをL、縦方向に直交し且つ水平面に沿った方向である横方向の長さをWとして、L>W(望ましくは、L>10W)、即ち縦長の形状となり、且つ、横方向の長さWは、検出対象となる区画線の幅と同程度、又は区画線の幅より短くなるように設定されている。以下では、路面照射領域のうち、発光源であるLD11に近い側の端部を近端、LD11から遠い側の端部を遠端という。
【0071】
なお、路面照射領域の調整は、例えば、発光レンズ13の形状を適宜選択したり、発光部10の設置状態(設置高さやレーザ光の光軸方向)を適宜調整したりすることによって行うことができる。
【0072】
次に、図2は、俯角が異なる2種類のビームSB1j,SB2j(j=1,2,…n)と、ビームSB1jによるラインスキャンのスキャンエリアSA1、ビームSB2jによるラインスキャンのスキャンエリアSA2を示したものである。但し、ビームSB1jの俯角α1の方がビームSB2jの俯角α2より大きく設定されているものとする。
【0073】
なお、スキャンエリアSAi(i=1,2,…m)とは、ビームSBi1〜SBinの路面照射領域で構成された一連の領域のことであり、全体のスキャンエリアと区別するために、以下では部分スキャンエリアSAiという。また、各路面照射領域は、互いに隙間無く隣接するようにされている。
【0074】
ここで、後述するように区画線はビームの各路面照射領域と区画線の重なり領域に基づき検出されるが、この場合、各路面照射領域は互いに隙間無く隣接している必要はない。隣り合う路面照射領域が互いに離間していても、各路面照射領域と区画線の重なり領域を基に区画線が検出できればよい。要するに、路面照射領域内における重なり領域の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果や、路面照射領域内における重なり領域の重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果から区画線が検出できるので、必ずしも各路面照射領域が互いに隙間無く隣接している必要はないということである。
【0075】
本実施形態では、各路面照射領域が互いに隙間無く隣接しているものとして以下説明する。
以下では、ビームSBijによる路面照射領域も、単に路面照射領域SBijと表記するものとする。
【0076】
また、ビームSBijは、i番目に俯角αiの大きいビームSBi1〜SBinによるラインスキャンの中で、j番目に照射されたレーザ光のビームであることを意味し、路面照射領域SBijは、探査領域SAiの中で左からj番目に位置する路面照射領域のことを意味する。
【0077】
つまり、ビームSBijの識別子iから、そのビームの俯角αiを特定することができ、ひいては当該装置1の取付位置に関する情報(路面からの高さ等)に基づいて、路面照射領域SBijの近端や遠端までの距離を特定することが可能である。また、ビームSBijの識別子jから、車幅方向への照射角度(以下「スキャン角度」という)θjを特定することができ、ひいては路面照射領域SBijの車幅方向の位置(横位置)を特定することが可能である。
【0078】
ところで、制御部40は、ラインスキャンの実行時に、部分スキャンエリアSAiに路面照射領域SBi1〜SBinが隙間なく並ぶようにLD駆動信号を出力する。
なお、一ライン分のラインスキャンで照射するビーム(路面照射領域)数nは、レーザ光のビーム幅と探査領域の大きさで決まり、レーザ光の送信タイミングは、ビーム幅とスキャン速度で決まるため、LD駆動信号は、これらに基づいて設定されることになる。
【0079】
図2では、2種類のビームSB1j,SB2jによるラインスキャン(以下「近距離スキャン」ともいう)のスキャンエリアSA1,SA2だけを示したが、制御部40では、これらより俯角の小さい1種類以上のビームによるラインスキャン(以下「遠距離スキャン」ともいう)も実行する。この遠距離スキャンによる部分スキャンエリアは、当該装置1から見て、近距離スキャンによる部分スキャンエリアSA1,SA2より遠くに形成されることになる。
【0080】
スキャナ駆動回路15は、一ライン分のラインスキャンが終了する毎に、使用するビームの俯角を大きいものから小さいもの(即ち、部分スキャンエリアが自車両に近いものから遠いもの)に順番に切り替えながら、ラインスキャンを繰り返すように、スキャナ機構部14を駆動することによって、二次元的なビームスキャンを実現する。
【0081】
つまり、各ラインスキャンは連続して、且つ、繰り返し実行される。以下では、ビームSB1j,SB2jによるラインスキャンを近距離スキャン、ビームSB3j〜ビームSBmjによるラインスキャン(図示せず)を遠距離スキャンと呼び、全てのラインスキャンに要する時間、即ち、スキャンエリアの全体にレーザ光が一通り照射されるのに要する時間を、スキャン周期という。
【0082】
なお、このようなスキャナ機構部14の具体的な構成、即ち、二次元的なスキャンを実現するための機構は、周知技術であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、例えば、ミラーの照射方向を二次元的に変化させる機構によって実現してもよいし、各面の倒れ角が異なるポリゴンミラーを回転させる機構によって実現してもよい。
【0083】
<受光部>
受光部20は、レーザ光(水平ビーム)を反射した物体からの反射光を集光する受光レンズ21と、受光レンズ21を介して反射光を受光し、その強度に応じた電圧値を有する受光信号を発生させる受光素子22と、受光素子22からの受光信号を増幅するアンプ23とを備えている。
【0084】
<計測回路>
計測回路30は、制御部40からのLD駆動信号が入力される毎に、そのLD駆動信号と受光部20からの受光信号との位相差(即ち、レーザ光を反射した物体までの往復時間)を計測し、その計測結果を距離に換算した距離データを生成するいわゆるTime of Flight方式(図10参照)による処理を実行すると共に、受光信号の受信強度を表す強度データを生成する。
【0085】
そして、これら距離データ,強度データを、そのデータを取得した時のスキャン角度(1ライン中の何番目のビームか)θjと対応付けたものを、測定データとしてビームの俯角が異なるラインスキャン毎に蓄積すると共に、制御部40からの要求に応じて、蓄積したスキャンデータを制御部40に供給するように構成されている。
【0086】
なお、レーザ光を送受信した結果に基づく距離データや強度データの生成には、具体的には、例えば、特許第4274028号や特許第4375064号等に記載された技術を用いることができる。
【0087】
<制御部>
制御部40は、CPU,ROM,RAM等により構成された周知のマイクロコンピュータからなる。
【0088】
制御部40では、LD駆動信号およびSC駆動信号によって発光部10を駆動して、二次元的なビームスキャンを実行するスキャン実行処理の他、そのスキャンによって得られた測定データ(強度データ,距離データ,スキャン角度)に基づいて、レーザ光を反射した物体に関する物体データを生成する物体認識処理や、区画線パラメータを生成する区画線検出処理を少なくとも実行する。
【0089】
このうち、スキャン実行処理は、スキャン周期毎に起動され、先に図2を用いて説明したように、俯角αiの異なるビームによるラインスキャンが、俯角の種類(m種類)だけ繰り返されるように、LD駆動信号,SC駆動信号を出力する処理を実行する。
【0090】
また、物体認識処理は、本発明の主要部ではなく、周知の処理であるため、ここでは説明を省略する。
<<区画線検出処理>>
次に、区画線検出処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0091】
本処理は、スキャン実行処理が処理を終了する毎に起動される。
本処理が起動すると、まずS110にて、計測回路30から、スキャン実行処理の結果として得られた近距離スキャンに属するラインスキャンの測定データ(強度データ,距離データ,スキャン角度)の中から、1ライン分の測定データの読み込みを行う。
【0092】
S120では、読み込んだ一連の強度データおよび距離データをラインスキャンによって得られた順(図2中の左隅から右隅に向かう順)に並べたものを強度データ列および距離データ列として、これら強度データ列および距離データ列をそれぞれ微分する(一つ前のデータとの差分を求める)ことで算出される一連の微分強度データからなる微分強度データ列、および一連の微分距離データからなる微分距離データ列を生成する。
【0093】
なお、j番目のビームで得られた強度データをR(j)、j番目のビームで得られた距離データをD(j)として、微分強度データDR(j)および微分強度データDD(j)は、次の(1)式および(2)式により求めることができる。
【0094】
【数1】

【0095】
S130では、微分強度データ列の変化に基づいてレーザ光を反射する物体が存在する可能性のある候補範囲を抽出する。
具体的には、微分強度データが予め設定された正極性の強度閾値より大きな値である場合をデータ極性が正、予め設定された負極性の強度閾値より小さな値である場合をデータ極性が負、負極性の強度閾値以上かつ正極性の強度閾値以下の値である場合をデータ極性がヌルとして、微分強度データ列の中で、データ極性が正から負へと変化するヌルに挟まれた領域(スキャン角度範囲)を候補範囲(所要強度連続部分)として抽出する(図12(a)(c)中に一点鎖線で示したグラフ参照)。つまり、候補領域は、少なくとも2ビーム分の幅(候補領域外との境界を含めると少なくとも4ビーム分の幅)を有したものとなる。
【0096】
S140では、S130にて抽出した候補範囲の中から、微分距離データ列の変化に基づいて、区画線からの反射光の特徴があらわれている範囲を対象範囲として特定する。
つまり、S140では、S130で強度データから抽出した白線の特徴が出ている範囲(候補範囲)に対して、距離データの特徴を有しているかどうかをチェックし、特徴を有している場合に白線に当たったビームの範囲(対象範囲)として抽出する。
【0097】
具体的には、微分距離データが予め設定された正極性の測距閾値より大きな値である場合をデータ極性が正、予め設定された負極性の測距閾値より小さな値である場合をデータ極性が負、負極性の測距閾値以上かつ正極性の測距閾値以下の値である場合をデータ極性がヌルとして、微分距離データ列のデータ極性が、候補範囲に対応する部位で、次のような変化を示す場合に、その候補領域を対象領域として抽出する。
【0098】
即ち、車両の中心から離れる方向に向けてスキャンが行われる右半分のスキャン角度範囲(以下「第1のスキャン領域」という)では、微分距離データ列のデータ極性が、候補範囲に対応する部位で正,負,正と変化し、且つ、その部位を挟む領域でヌルとなっている場合に、その候補領域を対象領域として抽出する(図12(b)(d)中に一点鎖線で示したグラフ参照)。また、車両の中心へ接近する方向に向けてスキャンが行われる左半分のスキャン角度範囲(以下「第2のスキャン領域」という)では、微分距離データ列のデータ極性が、候補範囲に対応する部位で負,正,負と変化し、且つ、その部位を挟む領域でヌルとなっている場合に、その候補領域を対象領域として抽出する。
【0099】
S150では、S140にて抽出された対象範囲の左右両端におけるスキャン角度と、そのスキャン角度での距離データ(或いは微分強度データのデータ極性が連続的にヌルとなっているスキャン角度での距離データ)とに基づいて、対象範囲の左右両端における区画線の位置(以下「左端位置Li」「右端位置Ri」という)を算出する(図4(a)参照)。本実施形態では、左端位置Liが開始側端位置、右端位置Riが終了側端位置に相当する。
【0100】
S160では、S150にて算出した左端位置Liと右端位置Riの線分の中点の位置Ciを求める。なお、図4は、(b)の上段のグラフが図2に示した領域Xにおける強度データの測定結果の例、下段のグラフが同じく領域Xにおける距離データの測定結果の例、(a)が境域Xの拡大図に、強度データの測定結果(図中実線で示す)、距離データの測定結果(図中点で示す)を、重ねて示したものである。
【0101】
ビームの各路面照射領域と区画線とが重なる領域は、図4(a)では4つの路面照射領域に対して存在する。これら重なり領域の各路面照射領域内における重なり面積は、図示左の路面照射領域から右の路面照射領域にビームスキャンが行われるに従い、小→大→中→小となっている。この重なり領域の面積の大きさが隣接路面照射領域間で変わることによって受信信号の信号レベルは変化し、強度データは、重なり領域の面積の大きさに応じた信号レベルとして、図4(a)の実線や図4(b)の上段のグラフのように山なり凸形状となるように測定されている。また、図4(a)において、重なり領域の各路面照射領域内における位置関係は、図示左の路面照射領域から右の路面照射領域にビームスキャンが行われるに従い、遠端寄り→路面照射領域略全体→路面照射領域の上半分(遠端側)の一部とほぼ下半分全体(近端側)→近端寄りとなっている。この重なり領域の位置が隣接路面照射領域間で変わることによって受信信号の信号レベルは変化し、距離データは、この重なり領域の位置関係に応じた信号レベルとして、図4(a)の一点鎖線や図4(b)の下段のグラフのように、ビームスキャン方向に(図示左から)凸形状から凹形状となるように測定されている。
【0102】
S170では、必要ライン数(本実施形態では、近距離スキャンに割り当てられたラインスキャンの数であり、具体的には2ライン)だけ上述の処理(S110〜S160)を実行したか否かを判断し、否定判断した場合は、S110に戻って、ビームの俯角αiが異なる近距離スキャンの測定データに対して、同様の処理を繰り返す。
【0103】
必要ライン数分の処理が終了していると判断した場合は、S180にて、ライン毎に算出された左端位置、右端位置、中点位置に基づき、左端位置同士、右端位置同士、中点位置同士をそれぞれ結ぶ各直線の傾き(自車の進行方向に対する)を算出し(図5参照)、その平均値、又は区画線位置を結ぶ直線の傾きの重みを大きくした重み付き平均値、を求め、この平均値を区画線の傾きとする。更に、同一スキャンでの左端位置と右端位置との間隔と、先に算出した区画線の傾きとから、区画線の幅を算出する。
【0104】
なお、図5は、ビームSB1j,SB2jによる近距離スキャン(スキャンエリアSA1,SA2)の測定結果(実線が強度データ、点が距離データ、)や、スキャン毎に算出された左端位置同士,右端位置同士,中心位置同士を結ぶ直線(それぞれ左端、中央、右端として示された一点鎖線)を、区画線が存在する領域付近における区画線と路面照射領域との関係を示した図に重ねて示した説明図である。
【0105】
S190では、区画線が第1のスキャン領域にある場合にはS150で求めた左端位置を、区画線が第2のスキャン領域にある場合にはS150で求めた右端位置を区画線の位置として、この区画線の位置およびS180で求めた区画線の傾きおよび区画線の幅を区画線パラメータとし、この区画線パラメータを外部装置に対して出力して、本処理を終了する。
【0106】
<効果>
以上説明したように、物体検出装置1では、区画線を検出する際に、強度データ列に生じる変化だけでなく、距離データ列に生じる変化に着目して、区画線からの反射光が得られる対象範囲を特定している。つまり、路面照射領域と検出対象の区画線とが重なる領域について、隣接する路面照射領域間で生じる重なり領域の路面照射領域内での位置の変化(距離データ列に生じる変化)と、その隣接する路面照射領域間で生じる重なり領域の路面照射領域内での面積の変化(強度データ列に生じる変化)に基づいて、区画線を検出している。
【0107】
特に、距離データ列の場合、道路に沿って帯状に長く延びた形状に特有な変化に着目した検出を行っているため、区画線のエッジが的確に検出でき、よって路面に示された区画線を精度よく検出することが可能となる。ここで、連続する複数の路面照射領域が区画線と重なり合った時に距離データ列に現れる特徴として、その変化は小さい。そのために、距離データ列に現れる特徴そのものがノイズと判断される恐れがある。そこで、上記実施形態のように強度データに現れる特徴も利用して区画線を検出するようにするとよい。受信信号の反射強度のレベル(強度データ)を基に区画線が存在する位置は特定可能であるので、これを利用すれば、区画線が存在する位置を特定した上で検出対象の区画線のエッジ検出を行うことができるようになる。その結果、より確実に精度よく区画線を検出することが可能となる。
【0108】
これにより、レーンキープアシスト等、安全性を確保するために区画線の位置を精度よく求める必要がある車両制御に、好適に用いることができる。
また、物体検出装置1では、強度データ列や距離データ列に生じる変化を、これらデータ列から直接検出するのではなく、これらデータ列を微分した微分強度データ列や微分距離データ列の極性に着目して検出を行っている。従って、時間帯や気候等によって路面の反射状態が変化したり、車体のピッチング等によってビームの俯角が変化したりすることによって、強度データ列や距離データ列のオフセットレベル(路面からの反射のみを受信している時のレベル)である路面レベルや基準レベルが、図12(c)(d)に示すように変化したとしても、微分強度データ列や微分距離データ列は、そのような状況の変化の影響を受けないため、同一の手順によって、強度データ列や距離データ列に表れる変化を正しく抽出することができ、ひいては区画線の検出精度を更に向上させることができる。
【0109】
その結果、物体検出装置1による区画線の位置の検出結果は、レーンキープ制御等の高い安全性が要求される車両制御にも適用することができる。
なお、物体検出装置1では、図6に示すように、区画線に当たったビームの数が多くなるほど、区画線に関する強度データや距離データをより多く取得することができ、強度データや距離データに現れる区画線の特徴をより的確に捉えることができるため、区画線の位置の検出精度を向上させることができる。但し、図7に示すように、最低でも2本のビームが区画線に当たれば、強度データ列や距離データ列に区画線の特徴が現れるため区画線の位置の検出は可能である。
【0110】
図8は、実際の走行シーンでの測定結果を示したものであり、(a)には、前方の風景を撮影した画像上に、二つのスキャンラインからなる近距離スキャンで得られた強度データを重畳表示した様子を、(b)には、横軸を横位置、縦軸を奥行きとしたグラフ上に測距データをプロットした様子を示す。図8からは、区画線が実際に存在する領域において、図4に示したグラフと同様の特徴が得られることが確認できる。
【0111】
<発明との対応>
上記実施形態において発光部10がビーム形成手段、S110がデータ取得手段およびデータ取得ステップ、S120〜S160が検出手段および検出ステップ、S120〜S140が抽出手段および抽出ステップ、S150〜S160が位置算出手段および位置算出ステップ、S180が傾き算出手段に相当する。
【0112】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0113】
例えば、上記実施形態では、候補範囲を抽出する際に、微分強度データ列を用いているが、強度データ列を用いるようにしてもよい。この場合、何等かの物体が存在することを示すレベルを示す強度データが2ビーム以上連続している領域を候補範囲として抽出することが考えられる。
【0114】
上記実施形態では、候補範囲から対象範囲を抽出する際に、微分距離データ列を用いているが、距離データ列を用いるようにしてもよい。この場合、候補範囲の中で、距離データの値が、路面に反射物体が存在しない時に検出される(ビーム照射面の近端と遠端との中間付近の距離に対応する)レベルを基準レベルとして、第1のスキャン領域では、一旦、ビームの最遠端付近の距離に対応するレベルになった後、ビームの最近端付近の距離に対応するレベルまで減少して、元の基準レベルに戻るという変化を示すものを対象範囲として抽出すればよい。また、第2のスキャン領域では、一旦、ビームの最近端付近の距離に対応するレベルになった後、ビームの最遠端付近の距離に対応するレベルまで増加して、元の基準レベルに戻ると言う変化を示すものを対象範囲として抽出すればよい。
【0115】
上記実施形態では、対象範囲の左端位置(区画線が第1のスキャン領域にある場合)または右端位置(区画線が第2のスキャン領域にある場合)を、区画線の位置としているが、対象範囲の中間位置、又は中間位置から予め設定された区画線幅の1/2だけ、左側(区画線が第1のスキャン領域にある場合)または右側(区画線が第2のスキャン領域にある場合)にシフトさせた位置を区画線の位置としてもよい。
【0116】
上記実施形態では、対象範囲の左端位置Liと右端位置Riとの中間を中点位置Ciとしているが、例えば、対象範囲の中で強度データが最大(図4中のP1参照)となるスキャン角度と、そのスキャン角度での距離データとから算出される位置を中点位置Ciとしてもよいし、対象範囲内で距離データが基準レベルを横切る(図4中のP2参照)スキャン角度と、基準レベル(即ち、ビーム照射面の中間位置付近の距離)とから算出される位置を中点位置Ciとしてもよい。
【0117】
上記実施形態では、俯角の異なったビームによる複数のラインスキャンにより、同一スキャン周期内に得られたデータを用いて区画線検出処理を行っているが、車両の移動中に同じ俯角のビームによるラインスキャンにより、複数のスキャン周期に渡って得られたデータを用いて区画線検出処理を行うようにしてもよい。
【0118】
図9は、ビームの俯角が異なる二つのラインスキャンにより得られた距離データを、過去(図では前回)のスキャン周期で取得された距離データと共に、横軸を横位置、縦軸を車両進行方向の奥行きとしたグラフに示したものである。但し、過去の距離データは、最新の距離データが取得されるまでに車両が移動した分だけ距離を、車両側にシフトさせている。このように、複数のスキャン周期に渡って時間差で取得したデータを用いることで、1スキャン周期中に取得されるライン数より多くのデータを用いて区画線検出処理を実行することができる。なお、図9では、1スキャン周期当たり2回のラインスキャンを実行する場合について示したが、1スキャン周期当たり1回のラインスキャンや3回以上のラインスキャンであってもよい。
【0119】
上記実施形態では、スキャンエリアを左端から右端に向けてスキャンしているが、逆に、スキャンエリアを右端から左端に向けてスキャンしてもよい。この場合、スキャンエリアの左半分が第1のスキャン領域、右半分が第2のスキャン領域となる。
【0120】
また、上記実施形態では、車両前方にレーザ光を照射して区画線等を検知する例を述べているが、車両後方にレーザ光を照射して車両後方の区画線等(例えば、駐車スペースを区画する線)を検知できるように構成し、駐車支援等にも利用してもよい。
【0121】
上記実施形態では、レーザ光を利用しているが、光以外の電磁波を用いてもよい。
上記実施形態では、二次元スキャンを行っているが、一次元スキャンでもよい。
また、スキャンではなく、部分スキャンエリア毎、又はスキャンエリア全体についての距離画像を取得し、水平方向に並ぶ画素から抽出した距離データ列を用いて同様の処理を行うようにしてもよい。
【0122】
上記実施形態の物体検出装置1は、区画線を検出する際に、強度データ列に生じる変化だけでなく、距離データ列に生じる変化に着目して、区画線からの反射光が得られる対象範囲を特定しているが、これに限らず、強度データ列に生じる変化を利用せず距離データ列に現れる特徴を利用して区画線を検出する構成であってもよい。この場合、ビーム状の電磁波を送受信する毎に、隣接する路面照射領域間において、路面照射領域と区画線の重なり領域の路面照射領域内における位置が変化することによって変わる受信信号を距離データ列に現れる特徴として利用することにより行う。つまり、配列順に並べた複数のビームの各々について、路面照射領域と区画線との重なり領域の路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果から、距離データ列の変化の特徴を判断することで、区画線の検出を行う。
【0123】
このように、連続する複数の路面照射領域が区画線と重なり合った時に距離データ列に現れる特徴を用いて区画線の検出を行うことは、その検出精度を確保するという意味で非常に有効である。
【0124】
強度データ列によらず距離データ列を用いて区画線を検出する場合、距離データ列に現れる特徴の変化が小さくノイズと判断される恐れがあるが、これを回避する必要があるときは、区画線が存在する位置の特定を次のような処理にて行うとよい。
【0125】
すなわち、区画線が道路に沿って略一定間隔で平行にペイントされているので、車線に沿って真っ直ぐ走行する車両から見て、各区画線は、車両中心を通る進行方向に伸びる直線に対して車幅方向左右両側に凡そ同じ距離隔てた位置にあると考えることができる。この場合の車両に対する区画線の存在位置は、区画線間隔と車幅方向左右両側の距離を基に容易に算出することができる。こうして、受信した信号の距離データ列に現れる特徴が各区画線の算出存在位置に検出されれば、それら特徴はノイズではないと判断でき、取得した距離データ列の変化の特徴から、その後の区画線の検出処理を実行する。
【0126】
このように、連続する複数の路面照射領域が区画線と重なり合った時に、強度データ列に生じる変化を利用しなくても、距離データ列に生じる変化の特徴から、区画線のエッジが的確に検出でき、よって、精度よく区画線を検出することが可能となる。
【0127】
これにより、レーンキープアシスト等、安全性を確保するために区画線の位置を精度よく求める必要がある制御に、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0128】
1…物体検出装置 10…発光部 12…LD駆動回路 13…発光レンズ 14…スキャナ機構部 15…スキャナ駆動回路 20…受光部 21…受光レンズ 22…受光素子 23…アンプ 30…計測回路 40…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを形成するビーム形成手段と、
個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けて前記ビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線までの距離を表す距離データを前記ビーム毎に取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された前記距離データを前記ビームの配列順に並べたものを距離データ列として、該距離データ列の変化の特徴から前記区画線を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする区画線検出装置。
【請求項2】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを形成するビーム形成手段と、
個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けて前記ビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、受信信号の強度を表す強度データおよび路面に示された区画線までの距離を表す距離データを前記ビーム毎に取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された前記強度データおよび距離データを、それぞれ前記ビームの配列順に並べたものを強度データ列および距離データ列として、該強度データ列および距離データ列の変化の特徴から前記区画線を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする区画線検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果から、前記距離データ列の変化の特徴を判断することを特徴とする請求項1に記載の区画線検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果、および、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果から、前記強度データ列および距離データ列の変化の特徴を判断することを特徴とする請求項2に記載の区画線検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出手段と、
該抽出手段にて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出手段と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の区画線検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、
前記強度データ列の中で、物体の存在を示す大きさの強度データが連続する部分を所要強度連続部分、該所要強度連続部分に対応する前記探査領域の一部を候補領域として、該候補領域で検出された距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出手段と、
該抽出手段にて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出手段と、
からなることを特徴とする請求項2に記載の区画線検出装置。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記距離データが、予め設定された基準レベルより一旦増大してから前記基準レベルより減少したあと前記基準レベルに戻るか、又は、前記基準レベルより一旦減少してから前記基準レベルより増大したあと前記基準レベルに戻るという変化を、前記特定変化とすることを特徴とする請求項5または6に記載の区画線検出装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記強度データ列を微分した微分強度データ列に基づき、該微分強度データ列の中で、微分強度データの極性が正になった後、続けて負になる変化が検出された部分を、前記所要強度連続部分とすることを特徴とする請求項6に記載の区画線検出装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記距離データ列を微分した微分距離データ列に基づき、該微分距離データ列の中で、微分距離データの極性が正になり続けて負になり更に続けて正になる変化、又は、微分距離データの極性が負になり続けて正になり更に続けて負になるという変化を、前記特定変化として検出することを特徴とする請求項5,6,8のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項10】
前記位置算出手段は、前記照射領域の中心に近い側の端部で検出された距離データと、該距離データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度とから算出される位置を、前記区画線の位置とすることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項11】
前記位置算出手段は、前記候補領域の両端で検出された距離データと、該距離データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度とから算出される二つの位置の中点を、前記区画線の位置とすることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項12】
前記位置算出手段は、前記候補領域の前後で検出される距離データと、該距離データを基準データとして、前記候補領域内で距離データが前記基準データのレベルを横切る地点の方向を示す角度とから算出される位置を、前記区画線の位置とすることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項13】
前記位置算出手段は、前記候補領域内で最大となる強度データの取得時に用いられたビームの指向方向を示す角度と、該ビームに基づいて取得された距離データとから算出される位置を、前記区画線の位置とすることを特徴とする請求項6または請求項6に従属する請求項7〜9のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項14】
前記位置算出手段での算出結果の時系列から前記区画線の傾きを算出する傾き算出手段を備えることを特徴とする請求項5,6〜13のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項15】
前記ビーム形成手段は、いずれかのビームの指向方向と前記区画線の配線方向とが一致する場合を除き、隣接する少なくとも二つの路面照射領域が前記探査領域内に存在する区画線と重なり合うようなビームを形成するように設定されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項16】
前記ビーム形成手段は、前記ビームの指向方向を縦方向、前記路面照射領域が並ぶ方向を横方向として、前記路面照射領域が縦長となるようなビームを形成するように設定されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の区画線検出装置。
【請求項17】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを形成するビーム形成手段と、
個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けて前記ビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果を基に、前記区画線を検出することを特徴とする区画線検出装置。
【請求項18】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを形成するビーム形成手段と、
個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けて前記ビーム形成手段を介してビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号の検出結果、および、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号の検出結果、を基に、前記区画線を検出することを特徴とする区画線検出装置。
【請求項19】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを用い、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、前記ビーム毎に生成される路面に示された区画線までの距離を表す距離データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにより取得された前記距離データを、前記ビームの配列順に並べたものを距離データ列として、該距離データ列の変化の特徴から前記区画線を検出する検出ステップと、
を備えることを特徴とする区画線検出方法。
【請求項20】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを用い、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、前記ビーム毎に生成される受信信号の強度を表す強度データおよび路面に示された区画線までの距離を表す距離データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにより取得された前記強度データおよび距離データを、それぞれ前記ビームの配列順に並べたものを強度データ列および距離データ列として、該強度データ列および距離データ列の変化の特徴から前記区画線を検出する検出ステップと、
を備えることを特徴とする区画線検出方法。
【請求項21】
前記検出ステップは、配列順に並べられた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の位置関係によって変化する受信信号を検出した結果から、前記距離データ列の変化の特徴を判断することを特徴とする請求項19に記載の区画線検出方法。
【請求項22】
前記検出ステップは、配列順に並べられた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における面積の大きさが変化することによって変化する受信信号を検出した結果、および、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の位置関係によって変化する受信信号を検出した結果から、前記強度データ列および距離データ列の変化の特徴を判断することを特徴とする請求項20に記載の区画線検出方法。
【請求項23】
前記検出ステップは、
前記距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出ステップと、
からなることを特徴とする請求項19に記載の区画線検出方法。
【請求項24】
前記検出ステップは、
前記強度データ列の中で、物体の存在を示す大きさの強度データが連続する部分を所要強度連続部分、該所要強度連続部分に対応する前記探査領域の一部を候補領域として、該候補領域で検出された距離データ列の中で、予め設定された特定変化が検出された部分の距離データを抽出する抽出ステップと、
該抽出ステップにて抽出された距離データを用いて区画線の位置を算出する位置算出ステップと、
からなることを特徴とする請求項20に記載の区画線検出方法。
【請求項25】
前記抽出ステップは、前記距離データが、予め設定された基準レベルより一旦増大してから前記基準レベルより減少したあと前記基準レベルに戻るか、又は、前記基準レベルより一旦減少してから前記基準レベルより増大したあと前記基準レベルに戻るという変化を、前記特定変化とすることを特徴とする請求項23または24に記載の区画線検出方法。
【請求項26】
前記検出ステップは、前記強度データ列を微分した微分強度データ列に基づき、該微分強度データ列の中で、微分強度データの極性が正になった後、続けて負になる変化が検出された部分を、前記所要強度連続部分とすることを特徴とする請求項24に記載の区画線検出方法。
【請求項27】
前記検出ステップは、前記距離データ列を微分した微分距離データ列に基づき、該微分距離データ列の中で、微分距離データの極性が正になり続けて負になり更に続けて正になる変化、又は、微分距離データの極性が負になり続けて正になり更に続けて負になるという変化を、前記特定変化として検出することを特徴とする請求項23,24,26のいずれか1項に記載の区画線検出方法。
【請求項28】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを用い、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出ステップと、
を備え、
前記検出ステップは、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号を検出した結果を基に、前記区画線を検出することを特徴とする区画線検出方法。
【請求項29】
路面に向き且つ車幅方向に互いに異なった向きを指向する複数のビームを用い、個々のビームの路面への照射面を路面照射領域、全てのビームの路面照射領域を合わせた領域を探査領域として、該探査領域に向けてビーム状の電磁波を送受信した結果に基づき、路面に示された区画線を検出する検出ステップと、
を備え、
前記検出ステップは、配列順に並べた複数の前記ビームの各々について、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内における重なり面積の大きさに応じて変わる受信信号を検出した結果、および、前記路面照射領域と前記区画線との重なり領域の当該路面照射領域内の重なり位置に応じて変わる受信信号を検出した結果、を基に、前記区画線を検出することを特徴とする区画線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−221005(P2011−221005A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21802(P2011−21802)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】