半導体基板の製造方法
【課題】大型であって、かつ半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の炭化珪素基板11の第1の側面S1と、第2の炭化珪素基板12の側面S2とが互いに面するように、処理室60内にベース部30および第1および第2の炭化珪素基板11、12が配置される。処理室60内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部51が設けられる。第1および第2の側面S1、S2を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室60内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部51が炭化される。
【解決手段】第1の炭化珪素基板11の第1の側面S1と、第2の炭化珪素基板12の側面S2とが互いに面するように、処理室60内にベース部30および第1および第2の炭化珪素基板11、12が配置される。処理室60内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部51が設けられる。第1および第2の側面S1、S2を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室60内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部51が炭化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板の製造方法に関し、特に、炭化珪素(SiC)で形成された部分を含む半導体基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造に用いられる半導体基板としてSiC基板の採用が進められつつある。SiCは、より一般的に用いられているSi(シリコン)に比べて大きなバンドギャップを有する。そのためSiC基板を用いた半導体装置は、耐圧が高く、オン抵抗が低く、また高温環境下での特性の低下が小さい、といった利点を有する。
【0003】
半導体装置を効率的に製造するためには、ある程度以上の基板の大きさが求められる。米国特許第7314520号明細書(特許文献1)によれば、76mm(3インチ)以上のSiC基板を製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7314520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SiC基板の大きさは工業的には100mm(4インチ)程度にとどまっており、このため大型の基板を用いて半導体装置を効率よく製造することができないという問題がある。特に六方晶系のSiCにおいて、(0001)面以外の面の特性が利用される場合、上記の問題が特に深刻となる。このことについて、以下に説明する。
【0006】
欠陥の少ないSiC基板は、通常、積層欠陥の生じにくい(0001)面成長で得られたSiCインゴットから切り出されることで製造される。このため(0001)面以外の面方位を有するSiC基板は、成長面に対して非平行に切り出されることになる。このため基板の大きさを十分確保することが困難であったり、インゴットの多くの部分が有効に利用できなかったりする。このため、SiCの(0001)面以外の面を利用した半導体装置は、効率よく製造することが特に困難である。
【0007】
このように困難をともなうSiC基板の大型化に代わって、ベース部と、この上に配置された複数の小さなSiC基板とを有する半導体基板用いることが考えられる。この半導体基板は、SiC基板の枚数を増やすことで、必要に応じて大型化することができる。
【0008】
しかしこの半導体基板においては、隣り合うSiC基板の間に隙間ができてしまう。この隙間には、この半導体基板を用いた半導体装置の製造工程中に異物が溜まりやすい。この異物は、たとえば、半導体装置の製造工程において用いられる洗浄液若しくは研磨剤、または雰囲気中のダストである。このような異物は製造歩留りの低下の原因となり、その結果、半導体装置の製造効率が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型であって、かつ半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体基板の製造方法は、以下の工程を有する。
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0011】
本製造方法によれば、第1および第2の側面が互いに接合されることで、第1および第2の炭化珪素基板の間の隙間が塞がれる。これにより、半導体基板を用いて半導体装置を製造する際に、この隙間に異物が溜まることを防ぐことができる。よってこの異物による歩留り低下を防止できるので、半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板が得られる。また上記接合は、処理室内の温度を高めるという簡便な方法で行うことができる。またこの加熱工程の際に、炭化される吸収部が設けられていることで、処理室中の過剰な炭素元素が吸収されるので、第1および第2の側面を互いにより確実に接合することができる。
【0012】
上記の製造方法において好ましくは、固体材料は、炭化物を形成することができる金属材料である。これにより、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する固体材料を容易に選択することができる。
【0013】
上記の製造方法において好ましくは、金属材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む。これにより、固体材料は、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する。
【0014】
上記の製造方法において好ましくは、温度を高める工程において、第1および第2の炭化珪素基板の各々の温度は、ベース部の温度よりも低くされる。これにより第1および第2の炭化珪素基板の各々とベース部との間が接合された部分であってボイドが形成されている部分を、ベース部の方に移動させることができる。
【0015】
上記の製造方法において好ましくは、温度を高める工程において、第1および第2の裏面の各々と、ベース部とが接合される。これにより、第1および第2の側面を互いに接合すると同時に、第1および第2の炭化珪素基板の各々とベース部とを接合することができる。
【0016】
上記の製造方法において好ましくは、配置する工程は、ベース部上に第1および第2の炭化珪素基板を載置する工程を含む。これにより第1および第2の炭化珪素基板を容易に配置することができる。
【0017】
上記の製造方法において好ましくは、処理室の少なくとも一部はグラファイトによって形成されている。これにより、耐熱性が高い処理室を容易に形成することができる。
【0018】
上記の製造方法において好ましくは、処理室内の温度を高める工程は、処理室内に窒素を含有するガスを導入する工程を含む。これにより第1および第2の側面の間の接合を促進することができる。
【0019】
第1および第2の炭化珪素基板の各々は単結晶構造を有する。これにより単結晶構造を有する半導体基板が得られる。
【0020】
上記の製造方法において好ましくは、第1の炭化珪素基板の{0001}面に対する第1の表面のオフ角は50°以上65°以下であり、かつ第2の炭化珪素基板の{0001}面に対する第2の表面のオフ角は50°以上65°以下である。これにより、第1および第2の炭化珪素基板の表面におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0021】
上記の製造方法において好ましくは、配置する工程は、第1および第2の表面上に吸収部を載置する工程を含む。これにより吸収部が第1および第2の側面の近傍に配置されるので、第1および第2の側面の間をより確実に接合することができる。
【0022】
上記の製造方法において好ましくは、吸収部は処理室の内面の少なくとも一部を覆っている。これにより、処理室の内面が処理室内の雰囲気に与える影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、大型であって、かつ半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体基板の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における半導体基板の製造方法の第1工程を概略的に示す平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿う概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における半導体基板の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における半導体基板の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の概略フロー図である。
【図9】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態の半導体基板80aは、ベース部30と、ベース部30によって支持された基板群10とを有する。ベース部30は炭化珪素からなる。
【0026】
基板群10は、複数のSiC基板であり、SiC基板11(第1の炭化珪素基板)およびSiC基板12(第2の炭化珪素基板)を含む。SiC基板11は、ベース部30に面する裏面B1(第1の裏面)と、裏面B1に対向する表面F1(第1の表面)と、裏面B1および表面F1をつなぐ側面S1(第1の側面)とを有する。SiC基板12は、ベース部30に面する裏面B2(第2の裏面)と、第2の裏面に対向する表面F2(第2の表面)と、裏面B2および表面F2をつなぐ側面S2(第2の側面)とを有する。裏面B1およびB2の各々はベース部30の一の主面に接合されている。また側面S1およびS2は、互いに面しており、かつ互いに接合されている。
【0027】
基板群10の各々は同一平面上において露出した表面を有し、たとえばSiC基板11および12のそれぞれは、表面F1およびF2(図2)を有する。これにより半導体基板80aは、基板群10の各々に比して大きな表面を有する。よって基板群10の各々を単独で用いる場合に比して、半導体基板80aを用いる場合の方が、半導体装置をより効率よく製造することができる。
【0028】
次に本実施の半導体基板80aの製造方法について説明する。なお以下において説明を簡略化するために基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11および12に関してのみ言及する場合があるが、他のSiC基板も同様に扱われる。
【0029】
図3および図4を参照して、SiC基板11、12と、ベース部30とが準備される。次に、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面し、かつ、側面S1およびS2が互いに面するように、ベース部30上にSiC基板11および12の各々が載置される。
【0030】
図5を参照して、側面S1およびS2の間の隙間を上方から覆うように、表面F1およびF2上に、吸収板(吸収部)51が載置される。
【0031】
吸収板51は、炭素元素と化合することができる固体材料からなり、好ましくは炭化物を形成することができる金属材料からなる。この金属材料は、具体的には、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む。たとえば吸収板としてタンタル板を用いることができる。
【0032】
次に、ベース部30が処理室60内に搬送される。これにより、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面し、かつ、側面S1およびS2が互いに面するように、処理室60内にベース部30およびSiC基板11、12が配置される。また吸収板51が処理室60内に設けられる。
【0033】
次に炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室60内の温度を高めるための加熱工程が行われる。この加熱工程は、好ましくは、SiC基板11および12の各々の温度がベース部30の温度よりも低くなるように行われる。
【0034】
この加熱工程により、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面から、炭化珪素の昇華が生じる。すなわちこの隙間内に、SiC2、Si2C、およびSiの分子種が生じる。
【0035】
上記SiC2およびSi2Cに含まれるC元素の一部が吸収板51と反応することで、吸収板51が炭化される。これにより、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間内で、雰囲気中の炭素元素量が低減される。その結果、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面からこの雰囲気中への炭素元素の脱離が促進される。これによりベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面がグラファイト化されにくくなる。その結果、この隙間内における、昇華および再固化の反応が活性化される。その結果、上記隙間を埋めるような側面S1およびS2間の接合が促進される。
【0036】
また上記の側面S1およびS2間の接合と同時に、裏面B1およびB2の各々と、ベース部30とが、炭化珪素の昇華および再固化の反応によって接合される。これにより、半導体基板80a(図2)が得られる。
【0037】
本実施の形態によれば、側面S1およびS2が互いに接合されることで、SiC基板11および12の間の隙間が塞がれる。これにより、半導体基板80aを用いて半導体装置を製造する際に、この隙間に異物が溜まることを防ぐことができる。よってこの異物による歩留り低下を防止できるので、半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板が得られる。
【0038】
また上記接合は、処理室内の温度を高めるという簡便な方法で行うことができる。
またこの加熱工程の際に、吸収板51によって処理室60中の過剰な炭素元素が吸収されるので、側面S1およびS2を互いにより確実に接合することができる。
【0039】
また側面S1およびS2の接合と同時に、ベース部30と、この上に載置された裏面B1およびB2の各々とが接合される。つまり、側面S1およびS2を互いに接合すると同時に、SiC基板11、12の各々とベース部30とを接合することができる。
【0040】
また吸収板51が金属材料から形成されることで、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する固体材料を容易に選択することができる。またこの金属材料が、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む場合、吸収板51は、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する。
【0041】
また上記加熱工程において、SiC基板11および12の各々の温度がベース部30の温度よりも低くされることで、SiC基板11および12の各々とベース部30との間が接合された部分であってボイドが形成されている部分を、ベース部30の方に移動させることができる。
【0042】
また吸収板51は、SiC基板11、12の表面F1、F2上に載置されるので、SiC基板11、12から離れた位置に配置される場合に比して、SiC基板11、12の側面S1、S2の近傍に配置される。よって、側面S1およびS2の間の雰囲気中の炭素元素を吸収する効果が高くなるので、側面S1およびS2の間をより確実に接合することができる。
【0043】
なお、半導体基板80aのベース部30の電気抵抗率は、好ましくは100mΩ・cm以下とされ、より好ましくは50mΩ・cm以下とされる。
【0044】
また好ましくは、処理室60内の温度を高める際に、処理室内に窒素を含有するガスが導入される。これにより側面S1およびS2の間の接合を促進することができる。またベース部30中に不純物としての窒素を導入することができる。
【0045】
また好ましくは、ベース部30の形状は円形とすることができる。この場合、ベース部30の直径は、好ましくは5cm(2インチ)以上であり、より好ましくは15cm(6インチ)以上である。
【0046】
また好ましくは、ベース部30に接合される際に、裏面B1、B2、およびこれらに面するベース部30の面、すなわち接合面は、平坦化処理されている。
【0047】
また好ましくは、SiC基板11、12の結晶構造のポリタイプは4H型である。これにより電力用半導体の製造により適した半導体基板80aを得ることができる。
【0048】
また好ましくは、SiC基板11、12と、ベース部30との各々は、同一の結晶構造を有する。
【0049】
また好ましくは、SiC基板11、12の熱膨張係数と、ベース部30の熱膨張係数との差は、半導体基板80aを用いた半導体装置の製造工程においてこの熱膨張差に起因した割れが生じない程度に小さい。
【0050】
また好ましくは、SiC基板11、12と、ベース部30との各々の厚さのばらつきは10μm程度以下である。
【0051】
また好ましくは、半導体基板80aの厚さは300μm以上である。
また好ましくは、SiC基板11の{0001}面に対する第1の表面F1のオフ角は50°以上65°以下であり、かつSiC基板12の{0001}面に対する第2の表面F2のオフ角は50°以上65°以下である。これにより、第1および第2の表面F1、F2が{0001}面である場合に比して、第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0052】
より好ましくは、第1の表面F1のオフ方位とSiC基板11の<1−100>方向とのなす角は5°以下であり、かつ第2の表面F2のオフ方位とSiC基板12の<1−100>方向とのなす角は5°以下である。これにより第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度をより高めることができる。
【0053】
さらに好ましくは、SiC基板11の<1−100>方向における{03−38}面に対する第1の表面F1のオフ角は−3°以上5°以下であり、SiC基板12の<1−100>方向における{03−38}面に対する第2の表面F2のオフ角は−3°以上5°以下である。これにより第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度をさらに高めることができる。
【0054】
なお上記において、「<1−100>方向における{03−38}面に対する第1の表面F1のオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る射影面への第1の表面F1の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。また「<1−100>方向における{03−38}面に対する第2の表面F2のオフ角」についても同様である。
【0055】
また好ましくは、第1の表面F1のオフ方位とSiC基板11の<11−20>方向とのなす角は5°以下であり、かつ第2の表面F2のオフ方位とSiC基板12の<11−20>方向とのなす角は5°以下である。これにより、第1および第2の表面F1、F2が{0001}面である場合に比して、第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0056】
なお本実施の形態においては、側面S1およびS2間の接合と、裏面B1およびB2の各々とベース部との接合とが同時に行なわれるが、変形例として、予めSiC基板11、12の各々とベース部30とが接合され、その後に本実施の形態と同様の方法によって側面S1およびS2が互いに接合されてもよい。
【0057】
またベース部30は、多結晶構造を有していてもよく、また焼結体であってもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態においても、半導体基板80a(図1、図2)と同様のものが製造される。以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。なお説明を簡略化するために基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11および12に関してのみ言及する場合があるが、他のSiC基板も同様に扱われる。
【0058】
まず実施の形態1と同様に、図3および図4に示す工程までが行われる。
図6を参照して、処理室60の内面の少なくとも一部が、吸収板52によって覆われる。吸収板52の材料は、吸収板51(図5)と同様のものを用いることができる。
【0059】
また処理室60内にベース部30が搬送される。これにより、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面しつつ、かつ、側面S1およびS2が互いに面しつつ、処理室60内にベース部30およびSiC基板11、12が配置される。
【0060】
次に実施の形態1と同様に処理室60内の温度が高められる。これにより半導体基板80a(図2)が得られる。
【0061】
本実施の形態によれば、実施の形態1とほぼ同様の作用効果が得られる。
また吸収板52により処理室60の内面の少なくとも一部が覆われているので、処理室60の内面が処理室60内の雰囲気に与える影響を低減することができる。特に処理室60がグラファイトによって形成されている場合、グラファイトに起因した処理室60内の雰囲気中の炭素元素量の割合の増大を抑制することができる。
【0062】
また吸収板52は、SiC基板11、12の表面F1、F2と直接接触していないので、表面F1、F2と吸収板52との反応に起因して表面F1、F2が荒れてしまうことが防止される。
【0063】
(実施の形態3)
図7を参照して、本実施の形態の半導体装置100は、縦型DiMOSFET(Double Implanted Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であって、半導体基板80a、バッファ層121、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、p+領域125、酸化膜126、ソース電極111、上部ソース電極127、ゲート電極110、およびドレイン電極112を有する。
【0064】
半導体基板80aは、本実施の形態においてはn型の導電型を有し、また実施の形態1で説明したように、ベース部30およびSiC基板11を有する。ドレイン電極112は、SiC基板11との間にベース部30を挟むように、ベース部30上に設けられている。バッファ層121は、ベース部30との間にSiC基板11を挟むように、SiC基板11上に設けられている。
【0065】
バッファ層121は、導電型がn型であり、その厚さはたとえば0.5μmである。またバッファ層121におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3である。
【0066】
耐圧保持層122は、バッファ層121上に形成されており、また導電型がn型の炭化ケイ素からなる。たとえば、耐圧保持層122の厚さは10μmであり、そのn型の導電性不純物の濃度は5×1015cm-3である。
【0067】
この耐圧保持層122の表面には、導電型がp型である複数のp領域123が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域123の内部において、p領域123の表面層にn+領域124が形成されている。また、このn+領域124に隣接する位置には、p+領域125が形成されている。一方のp領域123におけるn+領域124上から、p領域123、2つのp領域123の間において露出する耐圧保持層122、他方のp領域123および当該他方のp領域123におけるn+領域124上にまで延在するように、酸化膜126が形成されている。酸化膜126上にはゲート電極110が形成されている。また、n+領域124およびp+領域125上にはソース電極111が形成されている。このソース電極111上には上部ソース電極127が形成されている。
【0068】
酸化膜126と、半導体層としてのn+領域124、p+領域125、p領域123および耐圧保持層122との界面から10nm以内の領域における窒素原子濃度の最大値は1×1021cm-3以上となっている。これにより、特に酸化膜126下のチャネル領域(酸化膜126に接する部分であって、n+領域124と耐圧保持層122との間のp領域123の部分)の移動度を向上させることができる。
【0069】
次に半導体装置100の製造方法について説明する。なお図9〜図12においては基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11の近傍における工程のみを示すが、他のSiC基板の各々の近傍においても、同様の工程が行なわれる。
【0070】
まず基板準備工程(ステップS110:図8)にて、実施の形態1または2で説明した方法によって、半導体基板80a(図1および図2)が準備される。半導体基板80aの導電型はn型とされる。
【0071】
図9を参照して、エピタキシャル層形成工程(ステップS120:図8)により、バッファ層121および耐圧保持層122が、以下のように形成される。
【0072】
まず半導体基板80aの表面上にバッファ層121が形成される。バッファ層121は、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえば厚さ0.5μmのエピタキシャル層である。またバッファ層121における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3とされる。
【0073】
次にバッファ層121上に耐圧保持層122が形成される。具体的には、導電型がn型の炭化ケイ素からなる層が、エピタキシャル成長法によって形成される。耐圧保持層122の厚さは、たとえば10μmとされる。また耐圧保持層122におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1015cm-3である。
【0074】
図10を参照して、注入工程(ステップS130:図8)により、p領域123と、n+領域124と、p+領域125とが、以下のように形成される。
【0075】
まず導電型がp型の不純物が耐圧保持層122の一部に選択的に注入されることで、p領域123が形成される。次に、n型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってn+領域124が形成され、また導電型がp型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってp+領域125が形成される。なお不純物の選択的な注入は、たとえば酸化膜からなるマスクを用いて行われる。
【0076】
このような注入工程の後、活性化アニール処理が行われる。たとえば、アルゴン雰囲気中、加熱温度1700℃で30分間のアニールが行われる。
【0077】
図11を参照して、ゲート絶縁膜形成工程(ステップS140:図8)が行われる。具体的には、耐圧保持層122と、p領域123と、n+領域124と、p+領域125との上を覆うように、酸化膜126が形成される。この形成はドライ酸化(熱酸化)により行われてもよい。ドライ酸化の条件は、たとえば、加熱温度が1200℃であり、また加熱時間が30分である。
【0078】
その後、窒素アニール工程(ステップS150)が行われる。具体的には、一酸化窒素(NO)雰囲気中でのアニール処理が行われる。この処理の条件は、たとえば加熱温度が1100℃であり、加熱時間が120分である。この結果、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、およびp+領域125の各々と、酸化膜126との界面近傍に、窒素原子が導入される。
【0079】
なおこの一酸化窒素を用いたアニール工程の後、さらに不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いたアニール処理が行われてもよい。この処理の条件は、たとえば、加熱温度が1100℃であり、加熱時間が60分である。
【0080】
図12を参照して、電極形成工程(ステップS160:図8)により、ソース電極111およびドレイン電極112が、以下のように形成される。
【0081】
まず酸化膜126上に、フォトリソグラフィ法を用いて、パターンを有するレジスト膜が形成される。このレジスト膜をマスクとして用いて、酸化膜126のうちn+領域124およびp+領域125上に位置する部分がエッチングにより除去される。これにより酸化膜126に開口部が形成される。次に、この開口部においてn+領域124およびp+領域125の各々と接触するように導電体膜が形成される。次にレジスト膜を除去することにより、上記導体膜のうちレジスト膜上に位置していた部分の除去(リフトオフ)が行われる。この導体膜は、金属膜であってもよく、たとえばニッケル(Ni)からなる。このリフトオフの結果、ソース電極111が形成される。
【0082】
なお、ここでアロイ化のための熱処理が行なわれることが好ましい。たとえば、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスの雰囲気中、加熱温度950℃で2分の熱処理が行なわれる。
【0083】
再び図7を参照して、ソース電極111上に上部ソース電極127が形成される。また、半導体基板80aの裏面上にドレイン電極112が形成される。以上により、半導体装置100が得られる。
【0084】
なお本実施の形態における導電型が入れ替えられた構成、すなわちp型とn型とが入れ替えられた構成を用いることもできる。
【0085】
また縦型DiMOSFETを例示したが、本発明の半導体基板を用いて他の半導体装置が製造されてもよく、たとえばRESURF−JFET(Reduced Surface Field-Junction Field Effect Transistor)またはショットキーダイオードが製造されてもよい。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
上述した実施の形態1の実施例について、以下に説明する。
【0087】
図3および図4を参照して、ベース部30として、直径15cm(6インチ)の単結晶SiC基板が準備された。ポリタイプは4H型、面方位は(03−38)、厚さは400μm、導電型はn型、不純物密度は1×1020cm-3、マイクロパイプ密度は1×104cm-2、積層欠陥密度は1×105cm-1とされた。
【0088】
またSiC基板11および12として、20mm角の複数の単結晶SiC基板が準備された。ポリタイプは4H型、面方位は(03−38)、厚さは400μm、導電型はn型、不純物密度は1×1019cm-3、マイクロパイプ密度は0.2cm-2、積層欠陥密度は1cm-1未満とされた。
【0089】
次にSiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。この載置は、平面視においてSiC基板11および12の間の間隔が100μm以下となるように行われた。
【0090】
図5を参照して、表面F1およびF2上に吸収板51として厚さ500μmのタンタル板が載置された。次にベース部30が、グラファイト製の処理室60内に搬送された。
【0091】
次に処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2は互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃、2200℃、および2300℃以上の場合、側面S1およびS2が互いに十分に接合された。ただし処理温度が2300℃の場合、表面F1、F2に荒れが生じた。
【0092】
また側面S1、S2を観察したところ、グラファイト化されている部分は見られなかった。
【0093】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0094】
(実施例2)
上述した実施の形態2の実施例について、以下に説明する。
【0095】
図6を参照して、グラファイト製の処理室60の内面が、吸収板52としての厚さ500μmのタンタル板によって覆われた。次に実施例1と同様に、SiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。次にベース部30が、処理室60内に搬送された。
【0096】
次に処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃および2200℃の場合、側面S1およびS2が互いに十分に接合された。また処理温度が2300℃の場合、側面S1およびS2の間が部分的にのみ接合された。
【0097】
また側面S1、S2を観察したところ、処理温度が2300℃の場合、部分的なグラファイト化が観察された。この部分的なグラファイト化が、処理温度2300℃における接合が部分的となった原因ではないかと推測される。
【0098】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0099】
(比較例)
上記実施例1および2の各々に対する比較例について、以下に説明する。
【0100】
図3および図4を参照して、実施例1と同様に、SiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。次にベース部30が、処理室60内に搬送された。
【0101】
次に、吸収板51(図5)および52(図6)のいずれも設けられることなく、処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃の場合、側面S1およびS2の間が部分的にのみ接合された。また処理温度が2200℃および2300℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。
【0102】
また側面S1、S2を観察したところ、処理温度が1800℃および2000℃の場合、部分的なグラファイト化が観察され、また処理温度が2200℃および2300℃の場合、全体的なグラファイト化が観察された。この部分的なグラファイト化が、処理温度2000℃における接合が部分的であった原因と推測され、またこの全体的なグラファイト化が、処理温度2200℃および2300℃において接合がなされなかった原因と推測される。
【0103】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0104】
(付記1)
本発明の半導体基板は、以下の製造方法で作製されたものである。
【0105】
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0106】
(付記2)
本発明の半導体装置は、以下の製造方法で作製された半導体基板を用いて作製されたものである。
【0107】
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0108】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の半導体基板の製造方法は、炭化珪素半導体基板の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0110】
10 SiC基板群、11 SiC基板(第1の炭化珪素基板)、12 SiC基板(第2の炭化珪素基板)、30 ベース部、51,52 吸収板(吸収部)、80a 半導体基板、100 半導体装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板の製造方法に関し、特に、炭化珪素(SiC)で形成された部分を含む半導体基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造に用いられる半導体基板としてSiC基板の採用が進められつつある。SiCは、より一般的に用いられているSi(シリコン)に比べて大きなバンドギャップを有する。そのためSiC基板を用いた半導体装置は、耐圧が高く、オン抵抗が低く、また高温環境下での特性の低下が小さい、といった利点を有する。
【0003】
半導体装置を効率的に製造するためには、ある程度以上の基板の大きさが求められる。米国特許第7314520号明細書(特許文献1)によれば、76mm(3インチ)以上のSiC基板を製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7314520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SiC基板の大きさは工業的には100mm(4インチ)程度にとどまっており、このため大型の基板を用いて半導体装置を効率よく製造することができないという問題がある。特に六方晶系のSiCにおいて、(0001)面以外の面の特性が利用される場合、上記の問題が特に深刻となる。このことについて、以下に説明する。
【0006】
欠陥の少ないSiC基板は、通常、積層欠陥の生じにくい(0001)面成長で得られたSiCインゴットから切り出されることで製造される。このため(0001)面以外の面方位を有するSiC基板は、成長面に対して非平行に切り出されることになる。このため基板の大きさを十分確保することが困難であったり、インゴットの多くの部分が有効に利用できなかったりする。このため、SiCの(0001)面以外の面を利用した半導体装置は、効率よく製造することが特に困難である。
【0007】
このように困難をともなうSiC基板の大型化に代わって、ベース部と、この上に配置された複数の小さなSiC基板とを有する半導体基板用いることが考えられる。この半導体基板は、SiC基板の枚数を増やすことで、必要に応じて大型化することができる。
【0008】
しかしこの半導体基板においては、隣り合うSiC基板の間に隙間ができてしまう。この隙間には、この半導体基板を用いた半導体装置の製造工程中に異物が溜まりやすい。この異物は、たとえば、半導体装置の製造工程において用いられる洗浄液若しくは研磨剤、または雰囲気中のダストである。このような異物は製造歩留りの低下の原因となり、その結果、半導体装置の製造効率が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型であって、かつ半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体基板の製造方法は、以下の工程を有する。
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0011】
本製造方法によれば、第1および第2の側面が互いに接合されることで、第1および第2の炭化珪素基板の間の隙間が塞がれる。これにより、半導体基板を用いて半導体装置を製造する際に、この隙間に異物が溜まることを防ぐことができる。よってこの異物による歩留り低下を防止できるので、半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板が得られる。また上記接合は、処理室内の温度を高めるという簡便な方法で行うことができる。またこの加熱工程の際に、炭化される吸収部が設けられていることで、処理室中の過剰な炭素元素が吸収されるので、第1および第2の側面を互いにより確実に接合することができる。
【0012】
上記の製造方法において好ましくは、固体材料は、炭化物を形成することができる金属材料である。これにより、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する固体材料を容易に選択することができる。
【0013】
上記の製造方法において好ましくは、金属材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む。これにより、固体材料は、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する。
【0014】
上記の製造方法において好ましくは、温度を高める工程において、第1および第2の炭化珪素基板の各々の温度は、ベース部の温度よりも低くされる。これにより第1および第2の炭化珪素基板の各々とベース部との間が接合された部分であってボイドが形成されている部分を、ベース部の方に移動させることができる。
【0015】
上記の製造方法において好ましくは、温度を高める工程において、第1および第2の裏面の各々と、ベース部とが接合される。これにより、第1および第2の側面を互いに接合すると同時に、第1および第2の炭化珪素基板の各々とベース部とを接合することができる。
【0016】
上記の製造方法において好ましくは、配置する工程は、ベース部上に第1および第2の炭化珪素基板を載置する工程を含む。これにより第1および第2の炭化珪素基板を容易に配置することができる。
【0017】
上記の製造方法において好ましくは、処理室の少なくとも一部はグラファイトによって形成されている。これにより、耐熱性が高い処理室を容易に形成することができる。
【0018】
上記の製造方法において好ましくは、処理室内の温度を高める工程は、処理室内に窒素を含有するガスを導入する工程を含む。これにより第1および第2の側面の間の接合を促進することができる。
【0019】
第1および第2の炭化珪素基板の各々は単結晶構造を有する。これにより単結晶構造を有する半導体基板が得られる。
【0020】
上記の製造方法において好ましくは、第1の炭化珪素基板の{0001}面に対する第1の表面のオフ角は50°以上65°以下であり、かつ第2の炭化珪素基板の{0001}面に対する第2の表面のオフ角は50°以上65°以下である。これにより、第1および第2の炭化珪素基板の表面におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0021】
上記の製造方法において好ましくは、配置する工程は、第1および第2の表面上に吸収部を載置する工程を含む。これにより吸収部が第1および第2の側面の近傍に配置されるので、第1および第2の側面の間をより確実に接合することができる。
【0022】
上記の製造方法において好ましくは、吸収部は処理室の内面の少なくとも一部を覆っている。これにより、処理室の内面が処理室内の雰囲気に与える影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、大型であって、かつ半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体基板の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における半導体基板の製造方法の第1工程を概略的に示す平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿う概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における半導体基板の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における半導体基板の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の概略フロー図である。
【図9】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態の半導体基板80aは、ベース部30と、ベース部30によって支持された基板群10とを有する。ベース部30は炭化珪素からなる。
【0026】
基板群10は、複数のSiC基板であり、SiC基板11(第1の炭化珪素基板)およびSiC基板12(第2の炭化珪素基板)を含む。SiC基板11は、ベース部30に面する裏面B1(第1の裏面)と、裏面B1に対向する表面F1(第1の表面)と、裏面B1および表面F1をつなぐ側面S1(第1の側面)とを有する。SiC基板12は、ベース部30に面する裏面B2(第2の裏面)と、第2の裏面に対向する表面F2(第2の表面)と、裏面B2および表面F2をつなぐ側面S2(第2の側面)とを有する。裏面B1およびB2の各々はベース部30の一の主面に接合されている。また側面S1およびS2は、互いに面しており、かつ互いに接合されている。
【0027】
基板群10の各々は同一平面上において露出した表面を有し、たとえばSiC基板11および12のそれぞれは、表面F1およびF2(図2)を有する。これにより半導体基板80aは、基板群10の各々に比して大きな表面を有する。よって基板群10の各々を単独で用いる場合に比して、半導体基板80aを用いる場合の方が、半導体装置をより効率よく製造することができる。
【0028】
次に本実施の半導体基板80aの製造方法について説明する。なお以下において説明を簡略化するために基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11および12に関してのみ言及する場合があるが、他のSiC基板も同様に扱われる。
【0029】
図3および図4を参照して、SiC基板11、12と、ベース部30とが準備される。次に、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面し、かつ、側面S1およびS2が互いに面するように、ベース部30上にSiC基板11および12の各々が載置される。
【0030】
図5を参照して、側面S1およびS2の間の隙間を上方から覆うように、表面F1およびF2上に、吸収板(吸収部)51が載置される。
【0031】
吸収板51は、炭素元素と化合することができる固体材料からなり、好ましくは炭化物を形成することができる金属材料からなる。この金属材料は、具体的には、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む。たとえば吸収板としてタンタル板を用いることができる。
【0032】
次に、ベース部30が処理室60内に搬送される。これにより、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面し、かつ、側面S1およびS2が互いに面するように、処理室60内にベース部30およびSiC基板11、12が配置される。また吸収板51が処理室60内に設けられる。
【0033】
次に炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室60内の温度を高めるための加熱工程が行われる。この加熱工程は、好ましくは、SiC基板11および12の各々の温度がベース部30の温度よりも低くなるように行われる。
【0034】
この加熱工程により、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面から、炭化珪素の昇華が生じる。すなわちこの隙間内に、SiC2、Si2C、およびSiの分子種が生じる。
【0035】
上記SiC2およびSi2Cに含まれるC元素の一部が吸収板51と反応することで、吸収板51が炭化される。これにより、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間内で、雰囲気中の炭素元素量が低減される。その結果、ベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面からこの雰囲気中への炭素元素の脱離が促進される。これによりベース部30上における側面S1およびS2の間の隙間の表面がグラファイト化されにくくなる。その結果、この隙間内における、昇華および再固化の反応が活性化される。その結果、上記隙間を埋めるような側面S1およびS2間の接合が促進される。
【0036】
また上記の側面S1およびS2間の接合と同時に、裏面B1およびB2の各々と、ベース部30とが、炭化珪素の昇華および再固化の反応によって接合される。これにより、半導体基板80a(図2)が得られる。
【0037】
本実施の形態によれば、側面S1およびS2が互いに接合されることで、SiC基板11および12の間の隙間が塞がれる。これにより、半導体基板80aを用いて半導体装置を製造する際に、この隙間に異物が溜まることを防ぐことができる。よってこの異物による歩留り低下を防止できるので、半導体装置を高い歩留りで製造することができる半導体基板が得られる。
【0038】
また上記接合は、処理室内の温度を高めるという簡便な方法で行うことができる。
またこの加熱工程の際に、吸収板51によって処理室60中の過剰な炭素元素が吸収されるので、側面S1およびS2を互いにより確実に接合することができる。
【0039】
また側面S1およびS2の接合と同時に、ベース部30と、この上に載置された裏面B1およびB2の各々とが接合される。つまり、側面S1およびS2を互いに接合すると同時に、SiC基板11、12の各々とベース部30とを接合することができる。
【0040】
また吸収板51が金属材料から形成されることで、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する固体材料を容易に選択することができる。またこの金属材料が、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む場合、吸収板51は、炭素元素を効率よく吸収することができ、かつ融点が高いことで高い耐熱性を有する。
【0041】
また上記加熱工程において、SiC基板11および12の各々の温度がベース部30の温度よりも低くされることで、SiC基板11および12の各々とベース部30との間が接合された部分であってボイドが形成されている部分を、ベース部30の方に移動させることができる。
【0042】
また吸収板51は、SiC基板11、12の表面F1、F2上に載置されるので、SiC基板11、12から離れた位置に配置される場合に比して、SiC基板11、12の側面S1、S2の近傍に配置される。よって、側面S1およびS2の間の雰囲気中の炭素元素を吸収する効果が高くなるので、側面S1およびS2の間をより確実に接合することができる。
【0043】
なお、半導体基板80aのベース部30の電気抵抗率は、好ましくは100mΩ・cm以下とされ、より好ましくは50mΩ・cm以下とされる。
【0044】
また好ましくは、処理室60内の温度を高める際に、処理室内に窒素を含有するガスが導入される。これにより側面S1およびS2の間の接合を促進することができる。またベース部30中に不純物としての窒素を導入することができる。
【0045】
また好ましくは、ベース部30の形状は円形とすることができる。この場合、ベース部30の直径は、好ましくは5cm(2インチ)以上であり、より好ましくは15cm(6インチ)以上である。
【0046】
また好ましくは、ベース部30に接合される際に、裏面B1、B2、およびこれらに面するベース部30の面、すなわち接合面は、平坦化処理されている。
【0047】
また好ましくは、SiC基板11、12の結晶構造のポリタイプは4H型である。これにより電力用半導体の製造により適した半導体基板80aを得ることができる。
【0048】
また好ましくは、SiC基板11、12と、ベース部30との各々は、同一の結晶構造を有する。
【0049】
また好ましくは、SiC基板11、12の熱膨張係数と、ベース部30の熱膨張係数との差は、半導体基板80aを用いた半導体装置の製造工程においてこの熱膨張差に起因した割れが生じない程度に小さい。
【0050】
また好ましくは、SiC基板11、12と、ベース部30との各々の厚さのばらつきは10μm程度以下である。
【0051】
また好ましくは、半導体基板80aの厚さは300μm以上である。
また好ましくは、SiC基板11の{0001}面に対する第1の表面F1のオフ角は50°以上65°以下であり、かつSiC基板12の{0001}面に対する第2の表面F2のオフ角は50°以上65°以下である。これにより、第1および第2の表面F1、F2が{0001}面である場合に比して、第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0052】
より好ましくは、第1の表面F1のオフ方位とSiC基板11の<1−100>方向とのなす角は5°以下であり、かつ第2の表面F2のオフ方位とSiC基板12の<1−100>方向とのなす角は5°以下である。これにより第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度をより高めることができる。
【0053】
さらに好ましくは、SiC基板11の<1−100>方向における{03−38}面に対する第1の表面F1のオフ角は−3°以上5°以下であり、SiC基板12の<1−100>方向における{03−38}面に対する第2の表面F2のオフ角は−3°以上5°以下である。これにより第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度をさらに高めることができる。
【0054】
なお上記において、「<1−100>方向における{03−38}面に対する第1の表面F1のオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る射影面への第1の表面F1の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。また「<1−100>方向における{03−38}面に対する第2の表面F2のオフ角」についても同様である。
【0055】
また好ましくは、第1の表面F1のオフ方位とSiC基板11の<11−20>方向とのなす角は5°以下であり、かつ第2の表面F2のオフ方位とSiC基板12の<11−20>方向とのなす角は5°以下である。これにより、第1および第2の表面F1、F2が{0001}面である場合に比して、第1および第2の表面F1、F2におけるチャネル移動度を高めることができる。
【0056】
なお本実施の形態においては、側面S1およびS2間の接合と、裏面B1およびB2の各々とベース部との接合とが同時に行なわれるが、変形例として、予めSiC基板11、12の各々とベース部30とが接合され、その後に本実施の形態と同様の方法によって側面S1およびS2が互いに接合されてもよい。
【0057】
またベース部30は、多結晶構造を有していてもよく、また焼結体であってもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態においても、半導体基板80a(図1、図2)と同様のものが製造される。以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。なお説明を簡略化するために基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11および12に関してのみ言及する場合があるが、他のSiC基板も同様に扱われる。
【0058】
まず実施の形態1と同様に、図3および図4に示す工程までが行われる。
図6を参照して、処理室60の内面の少なくとも一部が、吸収板52によって覆われる。吸収板52の材料は、吸収板51(図5)と同様のものを用いることができる。
【0059】
また処理室60内にベース部30が搬送される。これにより、裏面B1およびB2の各々がベース部30に面しつつ、かつ、側面S1およびS2が互いに面しつつ、処理室60内にベース部30およびSiC基板11、12が配置される。
【0060】
次に実施の形態1と同様に処理室60内の温度が高められる。これにより半導体基板80a(図2)が得られる。
【0061】
本実施の形態によれば、実施の形態1とほぼ同様の作用効果が得られる。
また吸収板52により処理室60の内面の少なくとも一部が覆われているので、処理室60の内面が処理室60内の雰囲気に与える影響を低減することができる。特に処理室60がグラファイトによって形成されている場合、グラファイトに起因した処理室60内の雰囲気中の炭素元素量の割合の増大を抑制することができる。
【0062】
また吸収板52は、SiC基板11、12の表面F1、F2と直接接触していないので、表面F1、F2と吸収板52との反応に起因して表面F1、F2が荒れてしまうことが防止される。
【0063】
(実施の形態3)
図7を参照して、本実施の形態の半導体装置100は、縦型DiMOSFET(Double Implanted Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であって、半導体基板80a、バッファ層121、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、p+領域125、酸化膜126、ソース電極111、上部ソース電極127、ゲート電極110、およびドレイン電極112を有する。
【0064】
半導体基板80aは、本実施の形態においてはn型の導電型を有し、また実施の形態1で説明したように、ベース部30およびSiC基板11を有する。ドレイン電極112は、SiC基板11との間にベース部30を挟むように、ベース部30上に設けられている。バッファ層121は、ベース部30との間にSiC基板11を挟むように、SiC基板11上に設けられている。
【0065】
バッファ層121は、導電型がn型であり、その厚さはたとえば0.5μmである。またバッファ層121におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3である。
【0066】
耐圧保持層122は、バッファ層121上に形成されており、また導電型がn型の炭化ケイ素からなる。たとえば、耐圧保持層122の厚さは10μmであり、そのn型の導電性不純物の濃度は5×1015cm-3である。
【0067】
この耐圧保持層122の表面には、導電型がp型である複数のp領域123が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域123の内部において、p領域123の表面層にn+領域124が形成されている。また、このn+領域124に隣接する位置には、p+領域125が形成されている。一方のp領域123におけるn+領域124上から、p領域123、2つのp領域123の間において露出する耐圧保持層122、他方のp領域123および当該他方のp領域123におけるn+領域124上にまで延在するように、酸化膜126が形成されている。酸化膜126上にはゲート電極110が形成されている。また、n+領域124およびp+領域125上にはソース電極111が形成されている。このソース電極111上には上部ソース電極127が形成されている。
【0068】
酸化膜126と、半導体層としてのn+領域124、p+領域125、p領域123および耐圧保持層122との界面から10nm以内の領域における窒素原子濃度の最大値は1×1021cm-3以上となっている。これにより、特に酸化膜126下のチャネル領域(酸化膜126に接する部分であって、n+領域124と耐圧保持層122との間のp領域123の部分)の移動度を向上させることができる。
【0069】
次に半導体装置100の製造方法について説明する。なお図9〜図12においては基板群10が有する複数のSiC基板のうちSiC基板11の近傍における工程のみを示すが、他のSiC基板の各々の近傍においても、同様の工程が行なわれる。
【0070】
まず基板準備工程(ステップS110:図8)にて、実施の形態1または2で説明した方法によって、半導体基板80a(図1および図2)が準備される。半導体基板80aの導電型はn型とされる。
【0071】
図9を参照して、エピタキシャル層形成工程(ステップS120:図8)により、バッファ層121および耐圧保持層122が、以下のように形成される。
【0072】
まず半導体基板80aの表面上にバッファ層121が形成される。バッファ層121は、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえば厚さ0.5μmのエピタキシャル層である。またバッファ層121における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3とされる。
【0073】
次にバッファ層121上に耐圧保持層122が形成される。具体的には、導電型がn型の炭化ケイ素からなる層が、エピタキシャル成長法によって形成される。耐圧保持層122の厚さは、たとえば10μmとされる。また耐圧保持層122におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1015cm-3である。
【0074】
図10を参照して、注入工程(ステップS130:図8)により、p領域123と、n+領域124と、p+領域125とが、以下のように形成される。
【0075】
まず導電型がp型の不純物が耐圧保持層122の一部に選択的に注入されることで、p領域123が形成される。次に、n型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってn+領域124が形成され、また導電型がp型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってp+領域125が形成される。なお不純物の選択的な注入は、たとえば酸化膜からなるマスクを用いて行われる。
【0076】
このような注入工程の後、活性化アニール処理が行われる。たとえば、アルゴン雰囲気中、加熱温度1700℃で30分間のアニールが行われる。
【0077】
図11を参照して、ゲート絶縁膜形成工程(ステップS140:図8)が行われる。具体的には、耐圧保持層122と、p領域123と、n+領域124と、p+領域125との上を覆うように、酸化膜126が形成される。この形成はドライ酸化(熱酸化)により行われてもよい。ドライ酸化の条件は、たとえば、加熱温度が1200℃であり、また加熱時間が30分である。
【0078】
その後、窒素アニール工程(ステップS150)が行われる。具体的には、一酸化窒素(NO)雰囲気中でのアニール処理が行われる。この処理の条件は、たとえば加熱温度が1100℃であり、加熱時間が120分である。この結果、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、およびp+領域125の各々と、酸化膜126との界面近傍に、窒素原子が導入される。
【0079】
なおこの一酸化窒素を用いたアニール工程の後、さらに不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いたアニール処理が行われてもよい。この処理の条件は、たとえば、加熱温度が1100℃であり、加熱時間が60分である。
【0080】
図12を参照して、電極形成工程(ステップS160:図8)により、ソース電極111およびドレイン電極112が、以下のように形成される。
【0081】
まず酸化膜126上に、フォトリソグラフィ法を用いて、パターンを有するレジスト膜が形成される。このレジスト膜をマスクとして用いて、酸化膜126のうちn+領域124およびp+領域125上に位置する部分がエッチングにより除去される。これにより酸化膜126に開口部が形成される。次に、この開口部においてn+領域124およびp+領域125の各々と接触するように導電体膜が形成される。次にレジスト膜を除去することにより、上記導体膜のうちレジスト膜上に位置していた部分の除去(リフトオフ)が行われる。この導体膜は、金属膜であってもよく、たとえばニッケル(Ni)からなる。このリフトオフの結果、ソース電極111が形成される。
【0082】
なお、ここでアロイ化のための熱処理が行なわれることが好ましい。たとえば、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスの雰囲気中、加熱温度950℃で2分の熱処理が行なわれる。
【0083】
再び図7を参照して、ソース電極111上に上部ソース電極127が形成される。また、半導体基板80aの裏面上にドレイン電極112が形成される。以上により、半導体装置100が得られる。
【0084】
なお本実施の形態における導電型が入れ替えられた構成、すなわちp型とn型とが入れ替えられた構成を用いることもできる。
【0085】
また縦型DiMOSFETを例示したが、本発明の半導体基板を用いて他の半導体装置が製造されてもよく、たとえばRESURF−JFET(Reduced Surface Field-Junction Field Effect Transistor)またはショットキーダイオードが製造されてもよい。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
上述した実施の形態1の実施例について、以下に説明する。
【0087】
図3および図4を参照して、ベース部30として、直径15cm(6インチ)の単結晶SiC基板が準備された。ポリタイプは4H型、面方位は(03−38)、厚さは400μm、導電型はn型、不純物密度は1×1020cm-3、マイクロパイプ密度は1×104cm-2、積層欠陥密度は1×105cm-1とされた。
【0088】
またSiC基板11および12として、20mm角の複数の単結晶SiC基板が準備された。ポリタイプは4H型、面方位は(03−38)、厚さは400μm、導電型はn型、不純物密度は1×1019cm-3、マイクロパイプ密度は0.2cm-2、積層欠陥密度は1cm-1未満とされた。
【0089】
次にSiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。この載置は、平面視においてSiC基板11および12の間の間隔が100μm以下となるように行われた。
【0090】
図5を参照して、表面F1およびF2上に吸収板51として厚さ500μmのタンタル板が載置された。次にベース部30が、グラファイト製の処理室60内に搬送された。
【0091】
次に処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2は互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃、2200℃、および2300℃以上の場合、側面S1およびS2が互いに十分に接合された。ただし処理温度が2300℃の場合、表面F1、F2に荒れが生じた。
【0092】
また側面S1、S2を観察したところ、グラファイト化されている部分は見られなかった。
【0093】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0094】
(実施例2)
上述した実施の形態2の実施例について、以下に説明する。
【0095】
図6を参照して、グラファイト製の処理室60の内面が、吸収板52としての厚さ500μmのタンタル板によって覆われた。次に実施例1と同様に、SiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。次にベース部30が、処理室60内に搬送された。
【0096】
次に処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃および2200℃の場合、側面S1およびS2が互いに十分に接合された。また処理温度が2300℃の場合、側面S1およびS2の間が部分的にのみ接合された。
【0097】
また側面S1、S2を観察したところ、処理温度が2300℃の場合、部分的なグラファイト化が観察された。この部分的なグラファイト化が、処理温度2300℃における接合が部分的となった原因ではないかと推測される。
【0098】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0099】
(比較例)
上記実施例1および2の各々に対する比較例について、以下に説明する。
【0100】
図3および図4を参照して、実施例1と同様に、SiC基板11および12がベース部30上に並ぶように載置された。次にベース部30が、処理室60内に搬送された。
【0101】
次に、吸収板51(図5)および52(図6)のいずれも設けられることなく、処理室60内の温度が処理温度にまで高められた。この処理温度については、1800℃、2000℃、2200℃、および2300℃の4つの温度が検討された。その結果、処理温度が1800℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。また処理温度が2000℃の場合、側面S1およびS2の間が部分的にのみ接合された。また処理温度が2200℃および2300℃の場合、側面S1よびS2が互いに接合されなかった。
【0102】
また側面S1、S2を観察したところ、処理温度が1800℃および2000℃の場合、部分的なグラファイト化が観察され、また処理温度が2200℃および2300℃の場合、全体的なグラファイト化が観察された。この部分的なグラファイト化が、処理温度2000℃における接合が部分的であった原因と推測され、またこの全体的なグラファイト化が、処理温度2200℃および2300℃において接合がなされなかった原因と推測される。
【0103】
なおベース部30が面方位(0001)を有する場合、および多結晶構造を有する場合の各々についても、上記と同様の結果を得た。
【0104】
(付記1)
本発明の半導体基板は、以下の製造方法で作製されたものである。
【0105】
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0106】
(付記2)
本発明の半導体装置は、以下の製造方法で作製された半導体基板を用いて作製されたものである。
【0107】
炭化珪素からなるベース部が準備される。第1および第2の炭化珪素基板が準備される。第1の炭化珪素基板は、ベース部に面する第1の裏面と、第1の裏面に対向する第1の表面と、第1の裏面および第1の表面をつなぐ第1の側面とを有する。第2の炭化珪素基板は、ベース部に面する第2の裏面と、第2の裏面に対向する第2の表面と、第2の裏面および第2の表面をつなぐ第2の側面とを有する。第1および第2の裏面の各々がベース部に面し、かつ、第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内にベース部および第1および第2の炭化珪素基板が配置される。処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部が設けられる。第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に処理室内の温度が高められる。温度を高める工程において吸収部が炭化される。
【0108】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の半導体基板の製造方法は、炭化珪素半導体基板の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0110】
10 SiC基板群、11 SiC基板(第1の炭化珪素基板)、12 SiC基板(第2の炭化珪素基板)、30 ベース部、51,52 吸収板(吸収部)、80a 半導体基板、100 半導体装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなるベース部を準備する工程と、
第1および第2の炭化珪素基板を準備する工程とを備え、前記第1の炭化珪素基板は、前記ベース部に面する第1の裏面と、前記第1の裏面に対向する第1の表面と、前記第1の裏面および前記第1の表面をつなぐ第1の側面とを有し、前記第2の炭化珪素基板は、前記ベース部に面する第2の裏面と、前記第2の裏面に対向する第2の表面と、前記第2の裏面および前記第2の表面をつなぐ第2の側面とを有し、さらに
前記第1および第2の裏面の各々が前記ベース部に面し、かつ、前記第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内に前記ベース部および前記第1および第2の炭化珪素基板を配置する工程と、
前記処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部を設ける工程と、
前記第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に前記処理室内の温度を高める工程を備え、前記温度を高める工程において前記吸収部が炭化される、半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記固体材料は、炭化物を形成することができる金属材料である、請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む、請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記温度を高める工程において、前記第1および第2の炭化珪素基板の各々の温度は、前記ベース部の温度よりも低くされる、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記温度を高める工程において、前記第1および第2の裏面の各々と、前記ベース部とが接合される、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記配置する工程は、前記ベース部上に前記第1および第2の炭化珪素基板を載置する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記処理室の少なくとも一部はグラファイトによって形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記処理室内の温度を高める工程は、前記処理室内に窒素を含有するガスを導入する工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1および第2の炭化珪素基板の各々は単結晶構造を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の炭化珪素基板の{0001}面に対する前記第1の表面のオフ角は50°以上65°以下であり、かつ前記第2の炭化珪素基板の{0001}面に対する前記第2の表面のオフ角は50°以上65°以下である、請求項9に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記配置する工程は、前記第1および第2の表面上に前記吸収部を載置する工程を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記吸収部は前記処理室の内面の少なくとも一部を覆っている、請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項1】
炭化珪素からなるベース部を準備する工程と、
第1および第2の炭化珪素基板を準備する工程とを備え、前記第1の炭化珪素基板は、前記ベース部に面する第1の裏面と、前記第1の裏面に対向する第1の表面と、前記第1の裏面および前記第1の表面をつなぐ第1の側面とを有し、前記第2の炭化珪素基板は、前記ベース部に面する第2の裏面と、前記第2の裏面に対向する第2の表面と、前記第2の裏面および前記第2の表面をつなぐ第2の側面とを有し、さらに
前記第1および第2の裏面の各々が前記ベース部に面し、かつ、前記第1および第2の側面が互いに面するように、処理室内に前記ベース部および前記第1および第2の炭化珪素基板を配置する工程と、
前記処理室内に、炭素元素と化合することができる固体材料からなる吸収部を設ける工程と、
前記第1および第2の側面を互いに接合するために、炭化珪素が昇華し得る温度以上に前記処理室内の温度を高める工程を備え、前記温度を高める工程において前記吸収部が炭化される、半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記固体材料は、炭化物を形成することができる金属材料である、請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムのうち少なくとも1つの元素を含む、請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記温度を高める工程において、前記第1および第2の炭化珪素基板の各々の温度は、前記ベース部の温度よりも低くされる、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記温度を高める工程において、前記第1および第2の裏面の各々と、前記ベース部とが接合される、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記配置する工程は、前記ベース部上に前記第1および第2の炭化珪素基板を載置する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記処理室の少なくとも一部はグラファイトによって形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記処理室内の温度を高める工程は、前記処理室内に窒素を含有するガスを導入する工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1および第2の炭化珪素基板の各々は単結晶構造を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の炭化珪素基板の{0001}面に対する前記第1の表面のオフ角は50°以上65°以下であり、かつ前記第2の炭化珪素基板の{0001}面に対する前記第2の表面のオフ角は50°以上65°以下である、請求項9に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記配置する工程は、前記第1および第2の表面上に前記吸収部を載置する工程を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記吸収部は前記処理室の内面の少なくとも一部を覆っている、請求項1〜10のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−108727(P2011−108727A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259810(P2009−259810)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]