説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】CF膜を層間絶縁膜として有する多層配線構造の半導体装置において、低誘電率であるCF膜の利点を生かすことができ、かつCMP処理による特性の劣化を防止することのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法は、CF膜を成膜する工程(a)と、CF膜に所定パターンの凹部を形成する工程(b)と、凹部を埋めかつCF膜上にわたって配線層を設ける工程(c)と、凹部内以外の前記CF膜上の余剰の配線層をCMP(化学機械研磨)によって除去してCF膜の表面を露出させる工程(d)と、を有し、工程(b)の前または後において、CF膜の表面を窒化する工程(e)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造を備えた半導体装置の製造方法および、その製造方法により得られる半導体装置に関し、特にフルオロカーボン(CF)膜を層間絶縁膜に有する多層配線構造を備えた半導体装置の製造方法および、その製造方法により得られる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置では、高集積化のために多層配線構造を用いている。
このような多層配線構造においてデバイスの動作の高速化を図るためには、配線間の寄生容量および配線抵抗による遅延抵抗を防ぐ必要がある。
そのため、誘電率の低い層間絶縁膜を設ける場合がある。
【0003】
このような層間絶縁膜としては、格段に低い比誘電率(3.0未満)を有するフルオロカーボン(CF)膜が提案されている。
【0004】
この場合、半導体素子が多数形成された半導体基板上に多層の回路層を形成する半導体装置において、各回路層は以下のように製造される。
【0005】
まず、下層側の回路層上にCF膜をプラズマCVDにより形成し、次いで例えばSiCN(炭化窒化シリコン)またはSiCあるいはSiNなどからなるキャップ膜及びフォトレジストマスクを積層する。
【0006】
次いで、フォトレジストマスクを利用してキャップ膜およびCF膜に穴(ビアホール)または凹部を設ける。
【0007】
次いで、凹部内表面を含む露出面を覆うようにバリア層を形成した後、凹部内に配線層の主体である銅等を埋め込む。
【0008】
最後に余剰の(すなわち凹部の内部以外の部分の)銅及びバリア層をCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)加工により除去する。
【0009】
ここで、CMP加工においては、CF膜が機械的負荷を直接受けないようにするために、キャップ膜を残した状態でCMP加工を停止する(特許文献1)。
【0010】
しかしながら、キャップ膜の材料であるSiCN(比誘電率:5程度)、SiC(比誘電率:7程度)あるいはSiN(比誘電率:8程度)などはCFよりも比誘電率が高い。
【0011】
そのため、キャップ膜を設けると、層間絶縁膜の膜厚を薄くすればするほど、キャップも含めた層間絶縁膜について、比誘電率の高いキャップ膜の存在の影響が大きくなる。即ち、キャップ膜が存在することによる比誘電率の上昇の程度が顕著になる。
【0012】
そのため、結果として、せっかく3.0より低い比誘電率を持つCF膜を層間絶縁膜に使用しても、キャップ膜が原因で、CF膜の利点を十分に生かしきれないという問題がある。
【0013】
そこで、このようなキャップ膜を設けずに、CF膜上に直接、配線層を設けることも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−302811号公報
【特許文献2】特開2008−262996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、本発明者等は、特許文献2のようにキャップ膜を設けずに、CF膜上に直接バリア層およびCu等の配線層を設け、凹部内以外の余剰な配線層をCMPで除去する方法により製造した半導体装置は、キャップ膜を設ける場合と比べて配線間リーク電流が増大し、肝心の比誘電率も増大してしまうという問題を発見した。
【0016】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、CF膜を層間絶縁膜として有する多層配線構造の半導体装置において、低誘電率であるCF膜の利点を生かすことができ、かつCMP処理によるCF膜の特性の劣化を防止することのできる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は上記問題に対して鋭意検討の結果、特許文献2の方法では、CMPによってCF膜の組成が変化していることを突き止め、これがリーク電流や比誘電率の増大の原因であるとの知見を得た。
【0018】
上記知見に基づき、本発明者はさらに検討を進めた結果、配線層の形成前にCF膜を窒化することにより、CMPによるCF膜の劣化(リーク電流や比誘電率の増大)を防止可能であることを見出し、本発明をするに至った。
【0019】
即ち、本発明の第1の態様は、CF膜を含み当該CF膜上にキャップ膜を有さない層間絶縁膜を成膜する工程(a)と、前記CF膜に所定パターンの凹部を形成する工程(b)と、前記凹部を埋めかつ前記CF膜上にわたって配線層を設ける工程(c)と、前記凹部内以外の前記CF膜上の余剰の配線層をCMP(化学機械研磨)によって除去して前記CF膜の表面を露出させる工程(d)と、を有し、前記工程(b)の前または後において、前記CF膜の表面を窒化する工程(e)を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0020】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置である。
【0021】
本発明の第3の態様は、第1のCF膜と、前記第1のCF膜に埋め込まれた第1の配線層とを含む下段側の回路層と、前記下段側の回路層上に直接形成され、第2のCF膜と前記第2のCF膜内に埋め込まれた第2の配線層とを含む上段側の回路層とを備え、前記第1のCF膜および前記第2のCF膜はそれぞれ、少なくとも前記第1の配線層および前記第2の配線層と接する部分以外の表面が窒化されていることを特徴とする半導体装置である。
【0022】
本発明の第4の態様は、凹部を有するCF膜と、前記凹部に埋め込まれた配線層と、を有し、前記CF膜は、その表面のうち、少なくとも前記凹部以外の部分に窒化層が設けられていることを特徴とする半導体装置である。
【0023】
上記の半導体装置の製造方法および半導体装置において、前記配線層は、主要配線層と、前記主要配線層の前記CF膜への拡散を防止するために前記主要配線層の裏面に接して形成されたバリア層とを含み、かつ、当該主要配線層の導電率が前記バリア層の導電率よりも高いことが好ましく、また窒化された部分の厚さは1〜5nmであるのが望ましく、より好適には1〜2nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、層間絶縁膜としてCF膜を用いた半導体装置の製造方法において、CF膜の表面を窒化することによって、余剰の配線層を除去するためのCMP処理によるCF膜の劣化を防止する。
【0025】
そのため、層間絶縁膜の比誘電率の上昇を抑えることができ、比誘電率が配線層よりも低いというCF膜の本来の利点を生かすことができる。
【0026】
さらに、本発明ではCF膜表面にキャップ膜が介在していないので、キャップ膜の存在による誘電率上昇も生じることはない。
【0027】
また、本発明ではキャップ膜の成膜工程が不要になるため、キャップ膜のエッチングやそのエッチングに伴う洗浄も不要になり、工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置1の構造を示す断面図である。
【図2】半導体装置1の各製造工程を示す断面図である。
【図3】半導体装置1の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】半導体装置1の製造に用いられるプラズマ処理装置102を示す断面図である。
【図5】半導体装置1の製造に用いられるCMP(化学機械研磨)装置201を示す斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る半導体装置1aの構造を示す断面図である。
【図7】半導体装置1aの各製造工程を示す断面図である。
【図8】半導体装置1aの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る半導体装置1bの構造を示す断面図である。
【図10】半導体装置1bの各製造工程を示す断面図である。
【図11】半導体装置1bの製造工程を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施形態に係る半導体装置1cの構造を示す断面図である。
【図13】配線層7(凹部11)の平面パターン形状および、リーク電流検出の際に配線層7に接続される部品の構成を示す平面図である。
【図14】実施例および比較例の電界とリーク電流の関係を示す図である。
【図15】実施例および比較例の過研磨時間とリーク電流劣化および誘電率劣化の関係を示す図である。
【図16】実施例および比較例のC1s光電子スペクトルを示すグラフである。
【図17】比較例のC1s光電子スペクトルを示すグラフである。
【図18】比較例のF1s光電子スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、第1の実施形態に係る半導体装置1の構造について、図1を参照して説明する。
【0030】
図1に示すように、半導体装置1は、基板3上に形成された層間絶縁膜と、層間絶縁膜に埋め込まれた配線層7を有している。
層間絶縁膜はCF膜5であり、その表面には窒化層9が形成されている。
なお、図1から明らかなように、半導体装置1は層間絶縁膜上にSiCN(炭化窒化シリコン)またはSiCあるいはSiNなどのキャップ膜は設けられていない。
【0031】
次に、図2〜図5を参照して、半導体装置1の製造の手順について説明する。
【0032】
まず、基板3を用意する。基板3としては、半導体基板に多数の半導体素子が形成され、その表面がSiO2、SiCN等で被覆されたものが挙げられる。
【0033】
次に、図2(a)に示すように、基板3上にCF膜5を形成する(図3のS1)。
具体的には、プラズマ処理装置102を用いてプラズマCVDによりCF膜5を形成する。
【0034】
ここで、プラズマ処理装置102の構造の概略および動作について、図4を参照して説明する。
まず、プラズマ処理装置102の構造の概略について説明する。
【0035】
プラズマ処理装置102はマイクロ波励起プラズマ処理装置であり、図4に示すように、外壁10で囲まれた処理室24と、処理室24の上に設けられ、アンテナ12を有し、マイクロ波を発生させるラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)21と、その下に設けられた絶縁体板と、絶縁体板の下に設けられた上段シャワープレート23と、上段シャワープレート23に近接して設けられたガス導入管13を有している。
【0036】
また、プラズマ処理装置102は、処理室24の拡散プラズマ領域に下段シャワープレート22が設置されており、下段シャワープレート22にはガス導入管26が連結されている。
【0037】
また、処理室24の、プラズマが拡散されて直接照射される場所には非処理基板であるウェーハ14が搭載されるステージ31が設けられ、ステージ31にはRF電源25が接続されている。
【0038】
なお、処理室24には、処理の際に生じる排ガスを排出するための図示しない排気ポート、排気ダクト、小型ポンプが設けられている。
【0039】
次に、S1におけるプラズマ処理装置102の動作について、説明する。
【0040】
まず、基板3をステージ31に載置し、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)21を用いてマイクロ波を処理室24内に均一に導入させる。すなわち、マイクロ波を絶縁体板と上段シャワープレート23とを透過させ、プラズマ発生領域に放射する。
【0041】
次に、XeガスまたはArガス等の希ガスをガス導入管13を介して上段シャワープレート23からプラズマ発生領域に均一に吹き出させ、そこに放射されるマイクロ波によってプラズマを励起させる。
【0042】
次に、下段シャワープレート22からフルオロカーボンガスを流し、希ガスのプラズマによるフルオロカーボンガスの分解によって、基板3上に、CF膜5を形成する。
【0043】
フルオロカーボンガスとしては、一般式C2n(但し、nは2〜8の整数)もしくは、C2n−2(nは2〜8の整数)で示される不飽和脂肪族フッ化物を用いることができるが、オクタフルオロペンチン、オクタフルオロベンタジエン、オクタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロメチルブタジエン、オクタフルオロメチルブチン、フルオロシクロプロペンもしくはフルオロシクロプロパンを含むフッ化炭素、フルオロシクロブテンもしくはフルオロシクロブタンを含むフッ化炭素等の一般式Cで示されるフルオロカーボンが好ましい。
以上がS1の説明である。
【0044】
次に、図2(b)に示すように、CF膜5の表面を窒化して窒化層9を形成する(図3のS2)。
【0045】
具体的には、前述した図4のプラズマ処理装置102を用い、S1と同様にマイクロ波を発生させ、さらにN/HまたはNHガス等の窒化性ガスを、上段シャワープレート23から流してAr/Nプラズマ、またはNプラズマを励起させてCF膜5の表面を窒化する。
【0046】
この際、窒化層9の厚さは1〜5nmとするのが望ましく、1〜2nmとするのがより望ましい。
【0047】
詳細は後述するが、このようにCF膜5の表面を窒化することにより、CMP処理によるCF膜5の劣化を防止することができる。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、エッチング等によってCF膜5をパターニングし、表面に凹部11を形成する(図3のS3)。
【0049】
次に、図2(d)に示すように、凹部11を埋めかつCF膜5上にわたってCu、Ti等の金属を有する配線層7を形成する(図3のS4)。
【0050】
次に、図2(e)に示すように、凹部11内以外のCF膜5上の余剰の配線層7をCMP(化学機械研磨)によって除去してCF膜5の窒化層9を露出させる(図3のS5)。
【0051】
具体的には、CMP装置201を用いて配線層7を研磨することにより、CF膜5の窒化層9を露出させる。
【0052】
ここで、CMP装置201の構造および動作の概略について、図5を参照して説明する。
まず、CMP装置201の構造の概略について説明する。
【0053】
図5に示すように、CMP装置201は、回転可能な円板状のプレート41を有し、プレート41の上面には樹脂製例えばウレタン製の研磨用のパッド43が設けられている。
【0054】
また、プレート41の下面にはプレート41を回転させるための軸45が設けられている。軸45は図示しないモータ等の駆動機構に連結されている。
【0055】
一方、CMP装置201は、パッド43に対向するようにして、被研磨物49を保持する円板状のキャリア47が設けられている。
【0056】
キャリア47の下面は、被研磨物49を保持可能な構造になっており、キャリア47の上面にはキャリア47を回転させるための軸51が設けられている。軸51は図示しないモータ等の駆動機構に連結されている。
【0057】
さらに、CMP装置201は、研磨用のスラリ55を供給するための供給管53をパッド43の上方に有している。
【0058】
次に、S5におけるCMP装置201の動作の概略について説明する。
まず、キャリア47の下面に被研磨物49としてのS3で得られた試料を、配線層7がパッド43に対向するように保持させる。
【0059】
次に、パッド43上に供給管53からスラリ55を供給しながらプレート41を図5のAの向きに回転させ、同時にキャリア47に研磨圧(図5のCの向きに加える力)を加えながら図5のBの向きに回転させ、CF膜5の窒化層9が露出するまで研磨を行う。
以上がS5の詳細である。
このようにして、図1に示す半導体装置1が完成する。
【0060】
このように、第1の実施形態によれば、半導体装置1は層間絶縁膜としてCF膜を成膜し、CF膜5の表面を窒化してから配線層7の形成およびCMPを行うことにより製造される。
そのため、CMP処理によるCF膜5の劣化を防止することができる。
【0061】
また、第1の実施形態ではキャップ層を設ける必要がないため、キャップ層に起因する誘電率の上昇は生じない。また、キャップ層を設ける必要がないため、キャップ層を設ける工程が不要となり、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。
【0062】
次に、第2の実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、凹部11を形成した後にCF膜5の表面を窒化するものである。
【0063】
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
まず、第2の実施形態に係る半導体装置1aの構造について、図6を参照して説明する。
【0064】
図6に示すように、半導体装置1は、基板3上に形成されたCF膜5と、CF膜5に埋め込まれた配線層7を有している。
CF膜5の表面には窒化層9が形成されている。
【0065】
なお、図6から明らかなように、半導体装置1aはCF膜5の凹部11内壁および底面、すなわち、配線層7と接する部分にも窒化層9が形成されている。
【0066】
次に、図6〜図8を参照して、半導体装置1aの製造の手順について説明する。
まず、基板3を用意する。
【0067】
次に、図7(a)に示すように、基板3上にCF膜5を形成する(図8のS11)。
具体的には、プラズマ処理装置102を用いてプラズマCVDによりCF膜5を形成する。
【0068】
なお、具体的な装置の構成およびCF膜5の形成方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
次に、図7(b)に示すように、エッチング等によってCF膜5をパターニングし、表面に凹部11を形成する(図8のS12)。
【0070】
次に、図7(c)に示すように、CF膜5の表面を窒化して窒化層9を形成する(図8のS13)。
【0071】
具体的な窒化の方法および窒化層9の厚さは第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
次に、図7(d)に示すように、凹部11を埋めかつCF膜5上にわたってCu等の金属を有する配線層7を形成する(図8のS14)。
【0073】
次に、図7(e)に示すように、凹部11内以外のCF膜5上の余剰の配線層7をCMP(化学機械研磨)によって除去してCF膜5の表面を露出させる(図8のS15)。
【0074】
具体的なCMPの装置およびCMPの方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
このようにして、図6に示す半導体装置1aが完成する。
【0075】
このように、第2の実施形態によれば半導体装置1aは、層間絶縁膜としてCF膜5を成膜し、CF膜5の表面を窒化してから配線層7の形成およびCMPを行うことにより製造される。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0076】
また、第2の実施形態によれば、半導体装置1aは凹部11を形成した後でCF膜5の表面を窒化している。
【0077】
そのため、CF膜5の凹部11内面がエッチングによって損傷を受けた場合でも、その損傷による影響を軽減させることができる。
【0078】
次に、第3の実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態において、配線層7を、主要配線層8aとバリア層8bの2層構造としたものである。
【0079】
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0080】
図9に示すように、第3の実施形態に係る半導体装置1bは、配線層7が、主要配線層8aとバリア層8bの2層構造となっている。
【0081】
具体的には、配線層7は、Cu、Ti等の金属を含む主要配線層8aと、主要配線層8aに接するようにCF膜5上に設けられ、主要配線層8aを構成する材料がCF膜5に拡散するのを防止するバリア層8bが設けられている。
バリア層8bとしては例えばTiN等の金属窒化物が用いられる。
【0082】
次に、図9〜図11を参照して、半導体装置1bの製造の手順について説明する。
まず、基板3を用意する。
【0083】
次に、図10(a)に示すように、基板3上にCF膜5を形成する(図11のS21)。
具体的には、プラズマ処理装置102を用いてプラズマCVDによりCF膜5を形成する。CF膜5の具体的な形成方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
次に、図10(b)に示すように、CF膜5の表面を窒化して窒化層9を形成する(図11のS22)。
【0085】
具体的な窒化の方法および窒化層9の厚さは第1の実施形態と同様である。
【0086】
次に、図10(c)に示すように、エッチング等によってCF膜5をパターニングし、表面に凹部11を形成する(図11のS23)。
【0087】
次に、図10(d)に示すように、CF膜5の表面にバリア層8bを形成する(図11のS24)。
【0088】
次に、図10(e)に示すように、凹部11を埋めかつCF膜5上にわたって主要配線層8aを形成する(図11のS25)。なお、主要配線層8aとしては、前述のようにCu、Tiのような、バリア層8bよりも導電率の高い材料を用いる。
【0089】
次に、図10(e)に示すように、凹部11内以外のCF膜5上の余剰の配線層7をCMP(化学機械研磨)によって除去してCF膜5の表面を露出させる(図11のS26)。
【0090】
具体的なCMPの装置およびCMPの方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
このようにして、図9に示す半導体装置1bが完成する。
【0091】
このように、第3の実施形態によれば、半導体装置1bは層間絶縁膜としてCF膜5を成膜し、CF膜5の表面を窒化してから配線層7の形成およびCMPを行うことにより製造される。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0092】
また、第3の実施形態によれば、半導体装置1bは配線層7が、主要配線層8aとバリア層8bの2層構造となっている。
そのため、主要配線層8aを構成する材料がCF膜5に拡散するのを防止できる。
【0093】
次に、第4の実施形態について、図12を参照して説明する。
第4の実施形態は、第3の実施形態において、半導体装置1cを、配線層と層間絶縁膜(CF膜)を積層させた多層配線構造としたものである。
【0094】
なお、第4の実施形態において、第3の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、第4の実施形態に係る半導体装置1cは、基板3上に形成された第1のCF膜5aと、第1のCF膜5aに埋め込まれた第1の配線層7aを有している。
【0096】
第1の配線層7aは第1のCF膜5aに接するように設けられたバリア層8bと、バリア層に接するように設けられた主要配線層8aを有している。
【0097】
また、第1の配線層7aは、表面に第1の窒化層9aが設けられており、第1の窒化層9a上には第2のCF膜5bが形成され、第2のCF膜5bには第2の配線層7bが埋め込まれている。
【0098】
第2の配線層7bは、第2のCF膜5bに接するように設けられたバリア層8bと、バリア層8bに接するように設けられた主要配線層8aを有している。
また、第2の配線層7bは、表面に第2の窒化層9bが設けられている。
【0099】
ここで、第1のCF膜5aおよび第2のCF膜5bは、第3の実施形態におけるCF膜5と同様の組成、構造を有する膜である。
【0100】
また、第1の配線層7aおよび第2の配線層7bは、第3の実施形態における配線層7と同様の組成、構造を有する膜である。
【0101】
さらに、第1の窒化層9aおよび第2の窒化層9bは、第3の実施形態における窒化層9と同様の組成、構造を有する膜である。
【0102】
即ち、半導体装置1cは、第1のCF膜5a、第1の配線層7a、および第1の窒化層9aを有する下段側回路層4aと、第2のCF膜5b、第2の配線層7b、および第2の窒化層9bを有する上段側回路層4bとを有している。
【0103】
このように、半導体装置1cは配線層と層間絶縁膜を積層させた多層配線構造としてもよい。
なお、半導体装置1cの製造方法は半導体装置1bの製造方法と同様である。
【0104】
即ち、基板3上に図11のS21〜S26の手順に従って第1のCF膜5a、第1の窒化層9a、第1の配線層7aを形成し、その上にさらに図11のS21〜S26の手順に従って第2のCF膜5b、第2の窒化層9b、第2の配線層7bを形成する。
【0105】
このように、第4の実施形態によれば、半導体装置1cは第1のCF膜5aおよび第2のCF膜5bを成膜し、第1のCF膜5aおよび第2のCF膜5bの表面を窒化してから第1の配線層7a、第2の配線層7bの形成およびCMPを行うことにより製造される。
従って、第3の実施形態と同様の効果を奏する。
【実施例】
【0106】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
以下の条件にて図9に示す半導体装置1bを図10および図11に示す手順で作製し、リーク電流、誘電率、およびCF膜5の構造を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
【0107】
<試料の作製>
(実施例1)
まず、基板3としてシリコン基板を用意し、図4に示すプラズマ処理装置102にてCF膜5を成膜した。この際の処理条件は以下の通りである。
処理室内圧力:28mTorr(3.73Pa)
ガス種(流量):Ar(70sccm)およびC(200sccm)
マイクロ波出力:1450W
成膜時間:200秒
成膜温度:365℃
膜厚:150nm
【0108】
次に、図4に示すプラズマ処理装置102にてCF膜5の表面に窒化層9を形成した。この際の処理条件は以下の通りである。
処理室内圧力:100mtorr(13.3Pa)
ガス種(流量):N(80sccm)およびAr(20sccm)
マイクロ波出力:2kW
バイアス電圧: 150V
処理温度:25℃
処理時間:30秒
窒化層厚さ:1〜2nm
【0109】
次に、スパッタ装置を用いて、CF膜5に凹部11として、図13に示すパターン59、61a、61bを形成した。
【0110】
図13を参照してより詳細に説明すると、凹部11の平面形状は、互いに噛み合うように配置された一対の櫛形の形状を有しており、互いに対向するように設けられた長板状のパターン61a、61bが櫛の根元に相当し、パターン61a、61bの長辺から所定の間隔で垂直に延びた長板状のパターン59が櫛の歯に相当する。
【0111】
なお、パターン59は長辺部分が対向するように所定の間隔で設けられており、パターン61aに接続されたものと、パターン61bに接続されたものはそれぞれ接触しておらず、間隔1.0〜1.2μmで配置されている。
【0112】
また、パターン59の長辺部分のうち、隣接する他のパターン59と対向している部分の長さは1.3mmであり、パターン59はパターン61a、61bにそれぞれ200本ずつ形成されており、アスペクト比は1である。
【0113】
次に、配線層7のバリア層8bとしてTiを20nm成膜し、次いで主要配線層8aとしてCuをめっきで形成した。
【0114】
最後に、図5に示すCMP装置201と同様の構成を有する装置(Araca Incorporated製 APD−800)を用いて配線層7を研磨した。この際の研磨条件は以下の通りである。
パッド:Rohm and Haas Electronic Materials製 Politex(登録商標)
スラリ:日立化成製 HS−815−B1
研磨剤比率:スラリ/H=19.6/0.04
研磨剤流量:300mL/min
研磨圧:1.5PSI(10340Pa)
回転数:パッド/ウェーハ=50rpm/50rpm
過研磨時間:15秒
以上の工程により、試料を作製した。
【0115】
(実施例2)
過研磨時間を20秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0116】
(実施例3)
過研磨時間を30秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0117】
(比較例1)
過研磨時間を0秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。即ち、試料をスラリに浸漬するのみで、研磨を行わなかった。
【0118】
(比較例2)
窒化処理を行わなかった他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0119】
(比較例3)
窒化処理を行わず、過研磨時間を20秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0120】
(比較例4)
窒化処理を行わず、過研磨時間を30秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0121】
(比較例5)
窒化処理を行わず、研磨工程を行わなかった他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0122】
(比較例6)
窒化処理を行わず、研磨工程では、試料をスラリに浸漬するのみで、研磨時間を0秒とした他は実施例1と同じ条件で試料を作製した。
【0123】
<リーク電流測定>
次に、試料のリーク電流を測定した。
具体的には、まず、各試料において、図13に示すように、パターン61aをアース67に接続して接地し、パターン61bを電源63に接続した。また、電源63とパターン61bの間にはリーク電流測定装置65を接続した。
【0124】
次に、電源63を用いて電界強度が0〜2.0MV/cmの範囲となるように電圧を印加し、リーク電流を測定した。
【0125】
実施例1、3および比較例2、4、5の結果を図14に示す。
図14から明らかなように、実施例1、3(窒化あり)は研磨をしなかったもの(比較例5)と同程度のリーク電流だったが、比較例4、5(窒化なし)は、過研磨時間が長くなるに従い、リーク電流が大きくなっていた。
【0126】
<リーク電流劣化および誘電率劣化>
次に、実施例1〜3および比較例1〜4の試料について、リーク電流劣化および誘電率劣化を測定した。
なお、リーク電流劣化および誘電率劣化は以下の式で定義した。
リーク電流劣化=I/Iini
ここで、
I: 過研磨後のリーク電流
ini:過研磨時間0秒でのリーク電流
誘電率劣化=(k−kini)/kini
ここで、
k: 過研磨後の誘電率
ini:過研磨時間0秒での誘電率
結果を図15に示す。
【0127】
図15から明らかなように、リーク電流劣化および誘電率劣化は実施例1〜3の方が比較例2〜4よりも小さく、また、この差は過研磨時間が長くなるに従い、より顕著に現れた。
【0128】
<層間絶縁膜の結合状態評価>
次に、以下の手順により、各試料のCF膜5を構成する原子・分子の結合状態を評価した。
まず、試料のC1s光電子スペクトルを取得した。
【0129】
具体的にはXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて実施例1、3および比較例1、2、4、5、6の試料のC1s光電子スペクトルを取得した。
【0130】
実施例1、3および比較例1の結果(即ち、窒化を行ったものの結果)を図16に、比較例2、4、5、6の結果(即ち、窒化を行わなかったものの結果)を図17に示す。
【0131】
図16に示すように、窒化を行った場合は、過研磨の有無や過研磨時間によらず、結合強度のピークの位置や強度に変化が見られなかった。このことは、過研磨によってCF膜5のCF構造が変化しなかったことを意味している。
【0132】
一方、図17に示すように、窒化を行わなかった場合は、過研磨時間が長くなるにつれて、C−Fピークの強度が低下し、C−Cピークの強度が上昇していた。
【0133】
次に、同じXPS装置を用いて比較例2、4、5、6のF1s光電子スペクトルを取得した。
結果を図18に示す。
図18より、過研磨時間が長くなるにつれて、Fピークの強度が低下していた。
【0134】
以上のXPS測定結果より、比較例(窒化しなかった試料)では、過研磨によってCF膜5のC−F結合が分解し、C−C結合が増加したと考えられる。このことは、過研磨による誘電率劣化の原因はC−C結合の増加にあることを示唆していると考えられる。
【0135】
<結論>
以上の評価により、CF膜5を窒化することにより、研磨によるCF膜5の結合状態の変化(組成の変化)を防止でき、リーク電流や誘電率の上昇を防ぐことができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の半導体装置は、多層配線構造を有する半導体装置に適用できる。
【符号の説明】
【0137】
1………半導体装置
1a……半導体装置
1b……半導体装置
1c……半導体装置
3………基板
4a……下段側回路層
4b……上段側回路層
5………CF
5a……第1のCF
5b……第2のCF
7………配線層
7a……第1の配線層
7b……第2の配線層
8a……主要配線層
8b……バリア層
9………窒化層
9a……第1の窒化層
9b……第2の窒化層
10……外壁
11……凹部
12……アンテナ
13……ガス導入管
14……ウェーハ
21……ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)
22……下段シャワープレート
23……上段シャワープレート
24……処理室
25……RF電源
26……ガス導入管
31……ステージ
41……プレート
43……パッド
45……軸
47……キャリア
49……被研磨物
51……軸
53……供給管
55……スラリ
59……パターン
61a…パターン
61b…パターン
63……電源
65……リーク電流測定装置
67……アース
102…プラズマ処理装置
201…CMP装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CF膜を含み当該CF膜上にキャップ膜を有さない層間絶縁膜を成膜する工程(a)と、
前記CF膜に所定パターンの凹部を形成する工程(b)と、
前記凹部を埋めかつ前記CF膜上にわたって配線層を設ける工程(c)と、
前記凹部内以外の前記CF膜上の余剰の配線層をCMP(化学機械研磨)によって除去して前記CF膜の表面を露出させる工程(d)と、
を有し、
前記工程(b)の前または後において、前記CF膜の表面を窒化する工程(e)を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、希ガスを用いて発生させたプラズマを用いてCVDにより前記CF膜を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記配線層は、
主要配線層と、前記主要配線層の前記CF膜への拡散を防止するために前記主要配線層の裏面に接して形成されたバリア層とを有し、
前記主要配線層は、前記バリア層よりも導電率の高い材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)は、
前記CF膜上に前記バリア層を形成し、前記バリア層上に前記主要配線層を形成する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(e)は、前記CF膜の表面を1〜5nm窒化する工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
第1のCF膜と、前記第1のCF膜に埋め込まれた第1の配線層とを含む下段側の回路層と、
前記下段側の回路層上に直接形成され、第2のCF膜と前記第2のCF膜内に埋め込まれた第2の配線層とを含む上段側の回路層とを備え、
前記第1のCF膜および前記第2のCF膜はそれぞれ、少なくとも前記第1の配線層および前記第2の配線層と接する部分以外の表面が窒化されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記第1のCF膜および前記第2のCF膜はそれぞれ、前記第1の配線層および前記第2の配線層と接する部分の表面も窒化されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の配線層および前記第2の配線層は、それぞれ、相対的に導電率の高い材料で構成された第1の主要配線層および第2の主要配線層と、前記第1の主要配線層および第2の主要配線層の前記第1のCF膜および前記第2のCF膜への拡散を防止するために前記第1の主要配線層および第2の主要配線層の裏面に接して形成された第1のバリア層および第2のバリア層とを含むことを特徴とする請求項7又は8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
窒化された部分の厚さが1〜5nmであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
CF膜で構成され、凹部を有する層間絶縁膜と、
前記凹部に埋め込まれた配線層と、
を有し、
前記層間絶縁膜は、その表面のうち、少なくとも前記凹部以外の部分に窒化層が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
前記配線層は、
主要配線層と、前記主要配線層の前記層間絶縁膜への拡散を防止するために、前記主要配線層の表面に接して形成されたバリア層とを有し、
前記主要配線層は、前記バリア層よりも導電率の高い材料で構成されたことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記窒化層は、膜厚が1〜5nmであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−84638(P2012−84638A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228406(P2010−228406)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】