説明

半導体装置の製造方法および半導体製造装置

【課題】Cu−CMP後洗浄におけるパーティクルのウェハへの再付着によるポイゾニング不良発生の課題に対して、その不良を抑制し効率よくCu配線構造を形成することにある。
【解決手段】上層配線と、下層配線と、上層配線と下層配線とを接続するビアとを含む多層配線構造の半導体装置の製造方法において、トレンチの形成後に、低誘電率膜の上面に銅を含む導電性膜を成膜する工程と、上記導電性膜を化学的機械的研磨して上記トレンチに下層配線を形成する工程と、上記化学的機械的研磨後に、上記基板を洗浄する工程と、上記低誘電率膜の上面にアンモニアプラズマによる還元処理を実行し、その上に拡散防止膜を形成する工程とを含み、上記洗浄工程は、少なくとも2段階の洗浄を行ない、第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの製造に関し、詳しくは、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)後のウェハの洗浄方法を改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(半導体デバイス)の高集積化、微細化が進行した結果、その半導体デバイスの多層配線化、配線材料におけるCuと低誘電率(Low−k)材料との導入、配線構造の狭ピッチ化が進行している。
【0003】
以下では、一例として、Cu配線の多層配線工程(デュアルダマシンプロセス)の製造方法について説明する。図13は、90nmデバイス以降の、多層配線構造を備える半導体装置におけるCu配線工程の製造方法の一例を示す。
【0004】
まず、図13(a)に示すように、シリコン基板上に形成された所定の膜厚(例えば、600nm)を有する第1の低誘電率膜1の上面に、所定の深さ(例えば、300nm)を有する第1のトレンチが開口される。低誘電率膜には、例えば、炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)が用いられる。次に、スパッタリング法によってTa、TaNから構成される第1のバリアメタル膜2と、電解メッキ法のためのCu電極膜(Cuシード膜ともいう。図示せず)とが下層から順に成膜される。さらに、電解メッキ法によりCu膜3が、第1のバリアメタル膜2またはCu電極膜から所定の膜厚(例えば、600nm)まで堆積される。
【0005】
その後、Cu−CMP(Cu膜に対する化学的機械的研磨)により、第1のトレンチ以外のCu膜3と第1のバリアメタル膜2とが除去されることで、図13(b)にように、第1のトレンチ内にCuが埋め込まれた第1のトレンチ配線4が形成される。
【0006】
次に、図13(c)に示すように、この第1のトレンチ配線4上に、アンモニアプラズマによる還元処理が施され、さらに、その第1のトレンチ配線4上に所定の膜厚(例えば、50nm)を有する第1の拡散防止膜5が形成される。当該第1の拡散防止膜5は、後述する第2の低誘電率膜6内に第1のトレンチ配線4内のCuが拡散することを防止するための膜であり、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)が用いられる。
【0007】
さらに、図13(d)に示すように、第1の拡散防止膜5上に、所定の膜厚(例えば、600nm)を有する第2の低誘電率膜6が形成される。さらに、当該第2の低誘電率膜6上に、有機系材料からなる反射防止膜7が塗布される。当該反射防止膜7は、第2の低誘電率膜6にビアホールを形成する際に、後述するフォトリソグラフィー工程において下地層となる第1のトレンチ配線4からの反射光を抑制し、ビアホールの形成不良を防止する。さらに、反射防止膜7上に、第1の化学増幅型レジスト8が塗布されて、所定のマスクを用いてフォトリソグラフィーが実行され、第1の化学増幅型レジスト8が解像される。
【0008】
次に、図13(e)に示すように、ドライエッチング法により、第2の低誘電率膜6の上面から第1の拡散防止膜5の上面まで当該第2の低誘電率膜6が除去され、第1のビアホール9が開口される。
【0009】
続いて、図13(f)に示すように、第1のビアホール9が開口された第2の低誘電率膜6上に、有機系材料からなる第2の反射防止膜10が埋め込まれ、さらに、第2の化学増幅型レジスト11が塗布され、所定のマスクを用いたフォトリソグラフィー工程を経て、第2の化学増幅型レジスト11が解像される。
【0010】
次に、図13(g)に示すように、ドライエッチング法により、第2の低誘電率膜6に形成された第1のビアホール9上に、所定の深さ(例えば、300nm)を有する第2のトレンチ12が開口される。
【0011】
その後、図13(h)に示すように、全面エッチバックが行われ、第1のビアホール9の底面に存在する拡散防止膜5が除去され、第1のトレンチ配線4の表面が露出される。
【0012】
さらに、図13(i)に示すように、スパッタリング法によりTa、TaNから構成される第2のバリアメタル膜13と、電解メッキ法のためのCu電極膜(Cuシード膜、図示せず)とが成膜される。次に、電解メッキ法によりCu膜14が第1のビアホール9と、第2のトレンチ12とに埋め込まれる。
【0013】
その後、図13(j)に示すように、Cu−CMPにより第1のビアホール9および第2のトレンチ12以外のCu膜14と、第2のバリアメタル膜13とが除去されることで、第2のトレンチ配線15が形成される。
【0014】
以上のような製造工程を繰り返すことによって、Cu配線の多層配線構造を有する半導体装置を製造することができる。
【0015】
しかしながら、当該製造方法を採用すると、フォトリソグラフィーを実行する際に、ポイゾニング不良が発生するという問題があった。ポイゾニング不良とは、化学増幅型レジストの解像不良(パターン形成不良)が発生することをいう。ポイゾニング不良は、以下の手順によって発生する。上述のように、Cu−CMPによりトレンチ配線を形成した後、低誘電率膜上にアンモニアプラズマによる還元処理を実行するが、その際、低誘電率膜中のメチル基とアンモニアラジカルとが結合し、低誘電率膜上にアミン(塩基)が生成される。アミンが生成された後、上層に新たにCu配線を形成するために新たに低誘電率膜とビアホールとを形成し、化学増幅型レジストを塗布して、フォトリソグラフィーを実行する。この場合、化学増幅型レジストの下方に設けられた下地層ではアミンが残留するため、当該フォトリソグラフィー工程中に、その下地層からアミンが拡散し、化学増幅型レジストに浸入する。浸入したアミンは、露光により化学増幅型レジスト内で発生する酸を中和してしまい、レジストパターンを形成する際の化学増幅作用を弱める。その結果、化学増幅型レジストの解像不良(パターン形成不良)が発生することになる。
【0016】
当該問題の解決を目的として、特開2006−73569号公報(特許文献1)は、基板上にガスを供給することにより、SiとCとNを含む膜を形成する工程についての技術を開示している。当該技術では、上記ガスは少なくとも原料ガスと不活性ガスから構成され、上記原料ガスの一つに有機基と部分的に結合したSiを含むガスを用いる。そして、このSiを含むガスと不活性ガスの流量比を、1:4.2以上にすることで膜を形成している。当該構成により、拡散防止膜(SiCN膜)からのアミンの放出を抑制することができ、ポイゾニング不良の発生を抑制することができるとしている。
【0017】
他方、半導体装置の製造方法を採用すると、半導体装置の動作不良や信頼性の低下を引き起こすという問題があった。当該問題は、以下のような手順にて発生する。
【0018】
当該製造方法では、Cu配線以外の不要なCu膜およびバリアメタル膜を除去する工程であるCu−CMPは必要不可欠な工程である。このCu−CMPの後のウェハ表面には、異物、分子状の有機成分、スラリー残渣、可動イオン、金属等の汚染物質(以下、パーティクルとする)が付着するため、Cu−CMP後に当該パーティクルを洗浄する工程を実行する必要がある。しかしながら、当該洗浄工程を実行したとしても、ウェハ表面にパーティクルが残留することがあり、当該パーティクルが半導体装置の動作不良や信頼性の低下を引き起こす。そのため、Cu−CMP後のウェハの洗浄工程では、ウェハ上のパーティクルを効率よく除去し、ウェハ表面の酸化膜の過剰エッチングやCu配線のマイクロラフネス(薄膜表面に形成されるナノメートルサイズの幾何学的形状)を防止する必要がある。
【0019】
例えば、特開平11−330023号公報(特許文献2)は、層間絶縁膜を含んだウェハの表面に銅を成膜した後、酸化剤を含む研磨剤を用いて化学的機械的研磨処理を加えたものに対し洗浄する工程についての技術を開示している。当該技術では、アルカリもしくは水素還元雰囲気の1段目粒子除去処理と、さらに、酸雰囲気の2段目処理をこの順番に組み合せて行なうことによりウェハを洗浄している。当該構成により、Cu配線、Wプラグやバリアメタル膜にダメージを与えることなく、Cu配線以外へのCuやWの付着をはじめとする各種金属による汚染を効果的に除去しまた防止することが出来るとしている。
【特許文献1】特開2006−73569公報
【特許文献2】特開平11−330023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ポイゾニング不良の発生を防止できるものの、原料ガスと不活性ガスとから構成されるガスを取り扱わなければならず、製造処理の操作が煩雑となり、コスト高となるという問題がある。
【0021】
さらに、特許文献2に記載の技術では、Cu−CMP後の洗浄工程において、Cu配線上のパーティクルを完全に除去しきれない場合があり、Cu配線上に残存するパーティクルに起因してポイゾニング不良が発生するという問題がある。上述したように、ポイゾニング不良の原因となるアミンは、低誘電率膜中及び表面に存在している。そのため、Cu配線上に少量でもパーティクルが残留した状態で、その表面に拡散防止膜を形成すると、パーティクルの部分では、パーティクル上に拡散防止膜が形成されるため、拡散防止膜が浮き上がった状態で形成されることになる。当該拡散防止膜の浮き上がった部分では、拡散防止膜の膜厚が薄くなるため、低誘電率膜に連通する穴が拡散防止膜に形成されることがある。このような穴が拡散防止膜に形成された場合、低誘電率膜中及び表面に存在するアミンが当該穴を通過して化学増幅型レジストに拡散・浸入し、ポイゾニング不良を発生させることになる。
【0022】
さらに、Cu−CMP後の洗浄工程では、例えば、PVAブラシを使用している。PVAブラシとは、ポリビニルアルコール樹脂製のスポンジからなり、表面に円柱状の突起が配置された円柱形状のブラシである。このPVAブラシをウェハ洗浄に使用すると、パーティクルの再付着を引き起こすという問題がある。つまり、洗浄工程中では、PVAブラシを使用すると、ウェハ上に存在するパーティクルがそのPVAブラシに付着し、一時的にはCu配線上から除去される。しかしながら、洗浄工程完了後、ウェハからPVAブラシを脱離する際に、PVAブラシに付着したパーティクルがそのウェハのCu配線上に再付着する。その再付着したパーティクルが、上述した理由によりポイゾニング不良を引き起こすこととなる。
【0023】
そこで、本発明は、Cu−CMP後の洗浄工程におけるCu配線上へのパーティクルの再付着を防止することで、ポイゾニング不良を抑制し、半導体装置の歩留まりを向上させる半導体装置の製造方法および半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、上層配線と、下層配線と、上層配線と下層配線とを接続するビアとを含む多層配線構造を備える半導体装置の製造方法を前提とする。当該製造方法において、基板上に形成された低誘電率膜の上面にトレンチを形成する工程と、上記トレンチの形成後に、上記低誘電率膜の上面に銅を含む導電性膜を成膜する工程と、上記導電性膜を化学的機械的研磨して上記トレンチに下層配線を形成する工程とを実行する。さらに、当該製造方法は、上記化学的機械的研磨後に、上記基板を洗浄する工程と、上記基板の洗浄後に、上記低誘電率膜の上面にアンモニアプラズマによる還元処理を実行し、その上に拡散防止膜を形成する工程と、上記拡散防止膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、上記下層配線の上方で、上記層間絶縁膜に、ビアに対応するビアホールを開口する工程とを実行する。次に、当該製造方法は、上記ビアホールに反射防止膜を埋め込む工程と、上記反射防止膜の上面に化学増幅型レジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより上層配線のトレンチに対応するレジストパターンを形成する工程とを含む。上記洗浄工程は、少なくとも2段階の洗浄を行ない、第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成される。
【0025】
低誘電率膜は、例えば、炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)が該当する。拡散防止膜は、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)が該当する。有機酸洗浄薬液とは、有機酸を用いて作成された洗浄薬液のことである。例えば、シュウ酸やマロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などを使用することができる。有機アルカリ洗浄薬液とは、アルカリ洗浄剤にキレート剤を添加した有機アルカリを用いて作成された洗浄薬液のことである。例えば、グルコン酸塩、EDTA(ethylendiaminetetra
-acetic acid:エチレンジアミン四酢酸)、HEDTA(N−(2−hydroxyethyl)ethylenedinitrilotriacetic acid)、ホスホン酸塩などのキレート剤を添加したアンモニア水を使用することができる。
【0026】
ブラシスクラブ洗浄とは、基板の両表面に当接するように一対の回転ブラシを設けて、その一対の回転ブラシを回転することにより、基板に付着しているパーティクルを除去する洗浄のことである。例えば、基板は略垂直な姿勢に保たれた状態で、ブラシスクラブ洗浄が施される。基板は略水平な姿勢に保たれた状態であっても構わない。
【0027】
また、上記洗浄工程の第1段目は、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、上記洗浄工程の第2段目は、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成することができる。
【0028】
また、上記洗浄工程の第1段目は、ブラシスクラブ洗浄が実行される基板を回転する工程と、上記基板の回転が開始すると、所定の期間毎に、当該基板の回転に対応する回転数を検出する工程と、検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する工程とを実行する。さらに、上記洗浄工程の第1段目は、上記判定の結果、検出した回転数が所定の範囲外である場合、その基板のブラシスクラブ洗浄を停止する工程とを含むよう構成することができる。例えば、基板を回転する回転部の回転数と、その回転部によって回転が伝達された基板の回転に対応する回転数とを測定する構成の場合、所定の範囲は、基板の回転に対応する回転数が回転部の回転数と同等となる回転数の範囲である。
【0029】
一方、他の観点では、本発明は、2段階の洗浄を行なう半導体製造装置を提供することもできる。当該半導体製造装置は、低誘電率膜の上面に銅を含む導電性膜が成膜された基板に対して化学的機械的研磨を実行し、当該導電性膜がトレンチに埋め込まれた下層配線を形成する研磨部と、上記化学的機械的研磨が実行された基板に対して洗浄を実行する洗浄部とを備えた半導体製造装置を前提とする。当該半導体製造装置において、上記洗浄部が、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を実行する第1洗浄ユニットと、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を実行する第2洗浄ユニットとを備えるよう構成することができる。
【0030】
また、上記第1洗浄ユニットは、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、上記第2洗浄ユニットは、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成することができる。
【0031】
また、上記第1洗浄ユニットは、ブラシスクラブ洗浄が実行される基板を回転する回転部と、上記基板の回転が開始すると、所定の期間毎に、当該基板の回転に対応する回転数を検出する検出部と、検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する判定部とを備える。さらに、上記第1洗浄ユニットは、上記判定の結果、検出した回転数が所定の範囲外である場合、その基板のブラシスクラブ洗浄を停止する停止部とを備えるよう構成することができる。上記検出部は、直接、回転している基板の回転数を計測してもよいし、基板の回転によって回転される回転体の回転数を計測してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、上記洗浄工程は、少なくとも2段階の洗浄を行ない、第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成している。
【0033】
これにより、第1段目では、ブラシスクラブ洗浄の際に使用される洗浄薬液が有機酸であることから、銅を含む下層配線もパーティクルもマイナス電位を有することとなる。そのため、パーティクルが下層配線上に付着すること、またはブラシに付着したパーティクルが下層配線上に再付着することを防止することが可能となる。さらに、第2段目では、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうことから、下層配線もパーティクルもマイナス電位を有することとなり、下層配線上に残存するパーティクルを適切に除去することが可能となる。また、有機アルカリ洗浄薬液が下層配線の表面をエッチングするため、仮に下層配線の表面にパーティクルが残存したとしても、そのパーティクルを適切に除去することが可能となる。その結果、洗浄後に、例えば、還元処理やフォトリソグラフィーが実行されても、下層配線上に再付着したパーティクルに起因して発生するポイゾニング不良を適切に防止するとともに、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【0034】
また、上記洗浄工程の第1段目は、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、上記洗浄工程の第2段目は、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成することができる。
【0035】
これにより、第1段目では、銅を含む下層配線もパーティクルも確実にマイナス電位を有する状態でブラシスクラブ洗浄を行なうこととなる。さらに、第2段目でも、下層配線もパーティクルも確実にマイナス電位を有する状態で洗浄を行なうこととなる。そのため、Cu−CMP後の洗浄工程で、下層配線上にパーティクルが残存する可能性を最小限にし、結果として、ポイゾニング不良の発生を最小限に抑え、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【0036】
また、上記洗浄工程の第1段目は、ブラシスクラブ洗浄が実行される基板を回転する工程と、上記基板の回転が開始すると、所定の期間毎に、当該基板の回転に対応する回転数を検出する工程と、検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する工程と、上記判定した結果、検出した回転数が所定の範囲内に含まれない場合、その基板のブラシスクラブ洗浄を停止する工程とを含むよう構成することができる。
【0037】
これにより、第1段目では、ブラシが基板に均一に接触しているか否かを判定するとともに、ブラシが基板に均一に接触していない場合は、基板のブラシスクラブ洗浄を停止することとなる。そのため、ブラシが基板に均一に接触していない場合に多発する下層配線へのパーティクルの再付着を確実に防止することが可能となる。さらに、ブラシが基板に均一に接触していない場合では、基板に対するブラシスクラブ洗浄の実行を停止することが可能となる。その結果、下層配線上に再付着したパーティクルに起因して発生するポイゾニング不良を適切に防止するとともに、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【0038】
もちろん、本発明に係る半導体製造装置においても、同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、ウェハ(基板)上にCu配線の多層配線を有する半導体装置の製造方法により、本発明を具体化している。なお、当該製造方法において、化学的機械的研磨は、標準的な研磨パッドと浮遊砥粒を使用する第1の方式の他に、固定砥粒を使用する第2の方式、または第1の方式と第2の方式との中間的な方式を含むこととする。
【0040】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態におけるCu−CMP装置を示す概略構成図である。なお、以下では、図1の上下方向をCu−CMP装置10の前後方向とし、図1の左右方向をCu−CMP装置10の左右方向として説明する。
【0041】
図1に示すように、本実施形態のCu−CMP装置10は、ウェハの研磨を行なう研磨部2と、研磨部2で研磨されたウェハの洗浄を行なう洗浄部3とを備える。洗浄部3は研磨部2に隣接して設けられており、研磨部2と洗浄部3との間でウェハの搬送を実行するウェットロボットR2が研磨部2および洗浄部3に隣接して配置されている。当該ウェットロボットR2は、後述するドライロボットR1から受け取ったウェハを研磨部2へ搬送するとともに、研磨部2で化学的機械的研磨が施されたウェハを洗浄部3へ搬送する。
【0042】
また、研磨部2と、洗浄部3と、複数のロードポート群(例えば、ロードポートLP1、LP2、LP3、LP4)とが、Cu−CMP装置10の前後方向に対して直列に配置される。各ロードポートLP1、LP2、LP3、LP4は、Cu−CMP装置10の左右方向に対して直列に配置される。複数のロードポートLP1、LP2、LP3、LP4では、複数のウェハを収容したFOUP(Front Opening Unified Pod)等の容器が着脱自在に搬入・配置される。さらに、ウェットロボットR2と複数のロードポートLP1、LP2、LP3、LP4との間、および洗浄部3と複数のロードポートLP1、LP2、LP3、LP4との間でウェハの搬送を行なうドライロボットR1が、ロードポートLP1、LP2、LP3、LP4、ウェットロボットR2および洗浄部3に隣接して備えられている。当該ドライロボットR1は、ロードポートLP1、LP2、LP3、LP4に設置された容器から所定の未処理ウェハを搬出し、当該未処理ウェハをウェットロボットR2へ搬送する。また、ドライロボットR1は、後述の乾燥ユニットD1から乾燥済ウェハを搬出し、当該乾燥済ウェハをロードポートLP1、LP2、LP3、LP4に設置された容器へ搬入する。
【0043】
研磨部2では、ウェハ上に堆積された金属膜(ここでは、TaNからなる密着層、Taからなるバリアメタル膜、およびCu膜)を段階的に研磨するために、3つの研磨プラテン(第1研磨プラテンP1、第2研磨プラテンP2、第3研磨プラテンP3とする)が設けられる。3つの研磨プラテンに被加工体であるウェハが順次搬送・配置され、化学的機械的研磨が施される。例えば、未処理ウェハが第1研磨プラテンP1に搬送されて、ウェハ上のCu膜が所定の深さまで研磨される。次に、所定の深さまで研磨されたウェハが第2研磨プラテンP2に搬送されて、ウェハ上のCu膜が、研磨された面からバリアメタル膜の上面まで研磨される。さらに、バリアメタル膜の上面まで研磨されたウェハが第3研磨プラテンP3に搬送されて、ウェハ上のバリアメタル膜および密着層が研磨される。当該第3研磨プラテンP3では、バリアメタル膜および密着層を完全に除去するために、密着層の下の低誘電率膜が露出する程度まで研磨するオーバー研磨が実行される。
【0044】
また、研磨部2には、3つの研磨プラテンの他に、ウェットロボットR2から搬送された未研磨ウェハ、または第3研磨プラテンP3から搬送された研磨済ウェハが載置されるロードアンロードユニットU1が設けられる。
【0045】
3つの研磨プラテンP1〜P3、ロードアンロードユニットU1の間でのウェハの搬送は、ウェハ回転機構部X1に接続されたヘッドH1〜H4(キャリアともいう)によって実行される。ウェハ回転機構部X1は、中心に対して等角度で放射状に伸びる4本のアームを有した十字形から構成され、その十字型の中心を回転軸として水平面内で回転可能に設けられる。ウェハ回転機構部X1の回転軸は、水平に設置された、研磨部2の機床に対して垂直に構成される。ウェハ回転機構部X1の回転軸を中心とした同一円周上に、3つの研磨プラテンP1〜P3と、ロードアンロードユニットU1とが配置される。また、各ヘッドH1〜H4は、昇降動作と、研磨プラテンP1〜P3と平行な面内での回転動作とが、それぞれ独立して実行可能な構成を有する。
【0046】
洗浄部3は、Cu−CMP後のウェハを段階的に洗浄する複数の洗浄ユニットから構成される。当該洗浄部3は、洗浄部受入ユニットCIN、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行なう第1洗浄ユニットC1、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なう第2洗浄ユニットC2、乾燥を行なう乾燥ユニットD1が、Cu−CMP装置10の左右方向に対して直列に配置されている。また、洗浄部3は、洗浄部受入ユニットCIN、第1洗浄ユニットC1、第2洗浄ユニットC2、乾燥ユニットD1に沿って移動可能に設けられたロボットR3を備えている。
【0047】
ウェットロボットR2がCu−CMP後のウェハを洗浄部受入ユニットCINに搬送すると、ロボットR3が洗浄部受入ユニットCINに収納された当該ウェハを、第1洗浄ユニットC1、第2洗浄ユニットC2、乾燥ユニットD1の順番で搬送する。
【0048】
第1洗浄ユニットC1、第2洗浄ユニットC2は、それぞれ独立したユニットを構成し、別個の洗浄薬液を用いて洗浄処理を実行するとともに、Cu−CMP後のウェハに対して2段階の洗浄を行なう。乾燥ユニットD1では、洗浄後のウェハ(例えば、第1洗浄ユニットC1と第2洗浄ユニットC2とで洗浄処理を実行されたウェハ)の乾燥処理が行われる。
【0049】
Cu−CMP装置10には、制御部100が接続されており、当該制御部100が上述した研磨部2と洗浄部3とを制御する。
【0050】
図2は、本発明の第一の実施形態におけるCu−CMP装置10の洗浄部3のうち、第1洗浄ユニットC1の主要構成を示す図である。なお、図2の第1洗浄ユニットC1の前方向が図1の下方向に対応し、図2の第1洗浄ユニットC1の右方向が図1の右方向に対応する。
【0051】
図2に示すように、第1洗浄ユニットC1は直方体からなり、Cu−CMP後のウェハWが機床に対して略垂直な姿勢に保たれた状態で、かつウェハWが第1洗浄ユニットC1の前面に対して垂直となる状態で、当該ウェハWが第1洗浄ユニットC1の上方から収納されるよう構成される。第1洗浄ユニットC1内部の前後には、収納されるウェハWの直径より狭い間隔で、2個のプーリー(前方のプーリーP1、後方のプーリーP2)が設けられている。当該2個のプーリーP1、P2は、第1洗浄ユニットC1の上方から収納されたウェハWを下方から支持する。また、2個のプーリーP1、P2は、相互に同一の半径を有し、その回転軸P1a、P2aは、ともに、収納されたウェハWの表面に対して直交している。言い換えると、2個のプーリーP1、P2の回転軸P1a、P2aは、第1洗浄ユニットC1の右側面に対して直交している。2個のプーリーP1、P2にはそれぞれモーター(図示せず)が接続され、例えば、回転軸P1a、P2aに対して右側面視で反時計回りに50rpm(revolutions per minute)で回転するよう構成される。2個のプーリーP1、P2がウェハWを支持した状態で、それぞれの回転軸P1a、P2aに対して右側面視で反時計回りに50rpmで回転すると、その回転がウェハWに伝達され、ウェハWが2個のプーリーP1、P2の回転軸P1a、P2aと平行となる回転軸Waに対して右側面視で反時計回りに所定の回転数で回転することとなる。当該所定の回転数は、例えば、ウェハWの直径に対するプーリーの直径の割合にプーリーの回転数を乗算して決定される。具体的には、ウェハWの直径に対するプーリーの直径の割合を1/10とし、プーリーの回転数を500rpmとすると、当該所定の回転数は、50rpmとなる。
【0052】
なお、本発明の第一の実施形態における第1洗浄ユニットC1では、ウェハWに回転を伝達するプーリーを2個備えるよう構成したが、当該プーリーの回転軸P1a、P2aと平行となる回転軸を有するプーリーで、かつ、ウェハWを支持するプーリーを、さらに増加しても構わない。
【0053】
第1洗浄ユニットC1内部の左右には、第1のPVAブラシB1(左側のPVAブラシ)と第2のPVAブラシB2(右側のPVAブラシ)が備えられている。第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2は、2個のプーリーP1、P2に支持された、機床に対して略垂直なウェハWの両面(表裏面)に対してそれぞれ接離可能に構成される。当該接離可能となるよう、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2は、その両端が第1洗浄ユニットC1の左右方向に平行移動可能なスライダ(図示せず)にそれぞれ支持されている。
【0054】
第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2はそれぞれ円柱形状(ロール状)である。第1のPVAブラシB1は、第1のPVAブラシB1の回転軸B1aが収納されたウェハWの表面に対して平行となり、かつ当該ウェハWの中心に接触(当接)する位置に配置される。また、第2のPVAブラシB2は、第2のPVAブラシB2の回転軸B2aがウェハWを挟んで第1のPVAブラシB1の回転軸B1aに対向する位置で、当該ウェハWの表面に対して平行となり、かつ当該ウェハWの中心に接触(当接)する位置に配置される。従って、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とがウェハWを丁度挟み込む状態となる。このような一対の回転ブラシによってウェハを洗浄することをブラシスクラブ洗浄という。
【0055】
2本のPVAブラシB1、B2のうち、一方のPVAブラシ(例えば、第1のPVAブラシB1)がウェハWの表面を、他方のPVAブラシ(例えば、第2のPVAブラシB2)が当該ウェハWの裏面を洗浄する。2本のPVAブラシB1、B2がウェハWを洗浄する際に、2本のPVAブラシB1、B2の回転数は、例えば300rpmと設定される。その回転方向は、機床に対して略垂直なウェハWを下向きに掃き出す方向、言い換えると、ウェハWを2個のプーリーP1、P2に向けて掃き出す方向である。
【0056】
また、2本のPVAブラシB1、B2の外周全面には、それぞれの軸方向全長にわたって複数の洗浄ノズル(ピンスポットタイプ)が設けられている。当該洗浄ノズルは、円柱状の突起から構成される。全ての洗浄ノズルは、PVAブラシB1、B2の内部と連通しており、当該PVAブラシB1、B2の内部に純水(脱イオン水、Distilled Ion Water、以下、DIWとする)が供給(圧入)されると、DIWがPVAブラシB1、B2の洗浄ノズルから軸中心から外周に向かって噴射(吐出)されるよう構成される。DIWは、2本のPVAブラシB1、B2にそれぞれ設けられた所定のポンプ(図示せず)によって供給される。DIWの供給量は、一つのPVAブラシ当たり、例えば2500ml/minと設定される。洗浄ノズルから噴射されたDIWがウェハWの表面上または銅配線上に付着したパーティクルを除去することとなる。
【0057】
ウェハWの洗浄が開始されると、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とがウェハWに接触しながら、そのウェハWを2個のプーリーP1、P2に向けて掃き出す方向にそれぞれ回転するとともに、ウェハWを支持する2個のプーリーP1、P2が回転する。そのため、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とが接触するウェハWの接触面が当該ウェハWの回転により随時変更されることとなる。したがって、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2がウェハWの表面全体を均一に洗浄することとなる。
【0058】
さらに、第1洗浄ユニットC1内部の左右上方には、言い換えると、ウェハWに対して主面上方には、複数のノズルNを有する第1のスプレーバーS1(左側のスプレーバー)と第2のスプレーバーS2(右側のスプレーバー)とが当該ウェハWを挟み込むように配置される。第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2に、ウェハの洗浄用に作成された洗浄薬液(第1洗浄ユニットC1では有機酸洗浄薬液、第2の洗浄ユニットC2では有機アルカリ洗浄薬液)が所定の洗浄薬液ポンプ(図示せず)によって供給され、供給された洗浄薬液が各ノズルNからウェハWの両面に対して噴射されるよう構成される。当該ノズルNの個数は、一つのスプレーバーに対して例えば5個備えられるが、ウェハWの表面に均一に洗浄薬液を噴射(吐出)することが可能であれば、その個数は、適宜変更される。また、一つのスプレーバーに備えられた複数のノズルNから吐出される洗浄薬液の吐出形状は、ウェハWの表面に均一に洗浄薬液が吐出されるように、ウェハWの中心線に対して扇型形状が採用される。当該吐出形状は、他の形状として、フルコーン形状、ストレート形状等を採用しても構わない。
【0059】
第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2には、それぞれ洗浄薬液が供給される供給元に切換バルブ(図示せず)を有しており、当該洗浄薬液とDIWとが切換えて供給される構成になっている。第一の実施形態では、当該切換バルブを有することで、1対のスプレーバー(第1のスプレーバーS1、第2のスプレーバーS2)でも、洗浄薬液とDIWとを切り換えて、噴射(吐出)可能な構成としているが、他の構成でも構わない。例えば、1対のスプレーバーの軸に対して平行な軸を有する新たな1対のスプレーバーを設けて、洗浄薬液とDIWとをそれぞれ独立したスプレーバーから噴射(吐出)するよう構成しても構わない。
【0060】
なお、第一の実施形態では、第1洗浄ユニット内に収納されるウェハの向きを略垂直方向と構成したが、略水平方向に構成しても構わない。その場合、一対のPVAブラシが略水平なウェハを上下から挟み込むように配置される。ウェハが略垂直方向でも略水平方向でも、ウェハとPVAブラシとの接触面は直線状であり、当該PVAブラシがウェハ全面を均一に洗浄するために、PVAブラシの回転軸と、ウェハの表面とが相互に平行となるよう構成される。
【0061】
第1洗浄ユニットC1には、上述の制御部100が接続されている。当該制御部100が上述した2個のプーリーP1、P2の回転、2個のPVAブラシB1、B2の回転、2個のPVAブラシB1、B2に対応する所定のポンプの駆動、第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに対応する所定の洗浄薬液ポンプの駆動、切換バルブの切換等を制御する。
【0062】
以上より、図2を用いて第1洗浄ユニットC1の主要構成について説明したが、第2洗浄ユニットC2の主要構成は、当該第1洗浄ユニットC1の主要構成と同様である。但し、第2洗浄ユニットC2の主要構成では、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とを備えていない。
【0063】
次に、Cu−CMP後の洗浄工程において、PVAブラシに付着したパーティクルが、ウェハの下層配線上に再付着し、そのパーティクルに起因してポイゾニング不良が引き起こされるメカニズムについて説明する。
【0064】
図3は、PVAブラシによるブラシスクラブ洗浄を実行し、フォトリソグラフィーを実行した後におけるウェハ表面上の欠陥の分布図である。また、図3の矢印方向は、ブラシスクラブ洗浄後にウェハを第1の洗浄ユニットC1から取り出した方向を示す。
【0065】
図3に示すように、ウェハ表面上の欠陥の分布が、図3の矢印方向に対して垂直方向に一本の帯状(以下、帯状のパターン形成不良とする)を構成していることが確認される。さらに、上記帯状のパターン形成不良は、ウェハの中心を通過していることが確認される。
【0066】
ここで、第1洗浄ユニットC1内に設置された第1のPVAブラシB1または第2のPVAブラシB2は、ブラシスクラブ洗浄後のウェハを第1の洗浄ユニットC1から取り出す際に、当該ウェハの中心を通過し、図3の矢印方向に対して垂直方向に配置されている。そのため、帯状のパターン形成不良は、PVAブラシ(第1のPVAブラシB1または第2のPVAブラシB2)をウェハ表面から脱離する際に、当該PVAブラシに付着したパーティクルがウェハ表面に再付着したと推定される。
【0067】
次に、図4には、フォトリソグラフィーを実行した後の代表的なパターンのイメージ図を示す。図4(a)には、図3に示した帯状のパターン形成不良が存在しないウェハに対応するイメージ図を示す。図4(b)には、図3に示した帯状のパターン形成不良を有するウェハに対応するイメージ図を示す。なお、図4の矢印方向は、図3の矢印方向と同方向に対応し、ブラシスクラブ洗浄後にPVAブラシを脱離したウェハを第1の洗浄ユニットC1から取り出した方向を示す。
【0068】
図4(a)に示すように、帯状のパターン形成不良が存在しないウェハにフォトリソグラフィーを実行すると、矢印方向に対して垂直方向に所定のラインパターンLが、欠陥が生じることなく形成されることが確認される。一方、図4(b)に示すように、帯状のパターン形成不良を有するウェハにフォトリソグラフィーを実行すると、当該ウェハ表面のビアV(反射防止膜が埋め込まれたビアホール)上に形成されるはずのラインパターンLが形成されず、ライン形成不良(図4(b)では、点線で示された領域)が発生していることが確認される。ライン形成不良が発生していることをCu配線のオープン不良ともいう。
【0069】
これは、ウェハに帯状のパターン形成不良が発生すると、ポイゾニング不良、すなわち、化学増幅型レジストの解像不良が発生し、意図したラインパターンLを形成することが出来ないこと(ライン形成不良が発生したこと)を示す。結果として、ウェハの歩留まりを悪化させることになる。
【0070】
次に、PVAブラシに付着したパーティクルがウェハ表面上に再付着するメカニズムについて説明する。
【0071】
図5は、Cu−CMP後のブラシスクラブ洗浄において存在する部材に対応するゼータ電位と、その部材が存在している洗浄薬液中のpHとの関係を示す図である。当該部材は、例えば、Cu配線または研磨されたCu膜に対応するCu、ウェハの研磨砥粒に対応するSiO2、PVAブラシ由来の有機成分に対応するPVAが挙げられる。当該ゼータ電位は、例えば、JIS Z 8901に準拠して測定される。また、*が付されている部材に対応するゼータ電位は、洗浄薬液として有機酸洗浄薬液を用いて測定した値を示す。*が付されている部材は、Cu*とSiO2*とが該当する。なお、有機酸洗浄薬液を用いて測定した理由は、測定されるCu*とSiO2*とのゼータ電位を、Cu−CMP後のブラシスクラブ洗浄における条件でのCu*とSiO2*とのゼータ電位に近づけるためである。また、*が付されている部材に対応するゼータ電位の変化は、図5において破線で示している。また、*が付されていない部材に対応するゼータ電位は、洗浄薬液として無機洗浄薬液(無機酸洗浄薬液または無機アルカリ洗浄薬液)を用いて測定した値を示す。*が付されていない部材は、CuとSiO2とPVAとが該当する。*が付されていない部材に対応するゼータ電位の変化は、図5において実線で示している。
【0072】
図5に示すように、例えば、pHが酸性領域(pH3〜4)において、有機酸洗浄薬液で測定されたCu*とSiO2*とのゼータ電位と、無機酸洗浄薬液で測定されたPVAのゼータ電位とが全てマイナス電位であることが確認される。そのため、有機酸洗浄薬液(pH3〜4)を用いてブラシスクラブ洗浄を行なうと、静電反発によって、PVAブラシ由来の有機成分や研磨砥粒であるSiO2またはCuは、有機酸洗浄薬液に浸されたウェハのCu配線上に付着しないことが理解される。
【0073】
また、pHが中性領域(pH6〜8)では、無機酸洗浄薬液または無機アルカリ洗浄薬液で測定されたCuのゼータ電位はプラス電位であるものの、無機酸洗浄薬液または無機アルカリ洗浄薬液で測定されたSiO2とPVAとのゼータ電位はマイナス電位であることが確認される。そのため、例えば、中性領域に該当するDIWを用いてブラシスクラブ洗浄を行なうと、静電引力によって、上記有機成分や研磨砥粒は、DIWに浸されたウェハのCu配線上に容易に付着することが理解される。
【0074】
従来の第1洗浄ユニットC1での洗浄工程では、PVAブラシ内部から噴射(吐出)されるDIWにより、当該PVAブラシとウェハとの接触面近傍は、ほぼ中性(pH6〜8)を保持するよう構成されていた。そのため、ブラシスクラブ洗浄終了後に、ウェハからPVAブラシを脱離する場合に、上述した静電引力によって、PVAブラシに付着されたパーティクル(例えば、上述した有機成分や研磨砥粒等)がCu配線上に容易に再付着すると推定される。その結果、図3に示すように、再付着したパーティクルが、ウェハ上に帯状のパターン形成不良を形成する。
【0075】
さらに、pHがアルカリ領域(pH9〜10)では、無機酸洗浄薬液または無機アルカリ洗浄薬液で測定されたCu、SiO2、PVAの全てのゼータ電位がマイナス電位であることが確認される。そのため、アルカリ性洗浄薬液(例えば、pH9〜10である有機アルカリ洗浄薬液)を用いてウェハの洗浄を行なうと、静電反発によって、上記有機成分や研磨砥粒はウェハのCu配線上に付着しないことが理解される。
【0076】
次に、Cu−CMP後に、例えば、Cu配線上に残留するパーティクルがポイゾニング不良を引き起こすメカニズムについて詳細に説明する。
【0077】
図6は、Cu配線上のパーティクルがポイゾニング不良を引き起こすメカニズムとCu配線の多層配線工程(デュアルダマシンプロセス)の製造方法の一例とを関連付けて示した図である。
【0078】
図6(a)は、ダマシン法によりCu配線603が形成された第1の低誘電率膜601を示している(図13(b)に相当する)。なお、第1の低誘電率膜601は、例えば、炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)が該当し、当該第1の低誘電率膜601は、ウェハ上に形成される。当該Cu配線603は、所定の厚み(例えば600nm)を有する低誘電率膜601中に、表面から所定の深さ(例えば、300nm)を有するトレンチが形成され、そのトレンチにTaNからなるバリアメタル膜602が成膜され、さらにバリアメタル膜602上にCu膜が埋め込まれて形成される。当該Cu配線603は、Cu−CMP工程を経て形成されるが、図6(a)には、Cu−CMP後のブラシスクラブ洗浄によって、Cu配線603上にパーティクル604が再付着している様子を示している。
【0079】
図6(b)は、当該パーティクル604がCu配線603上に再付着している状態で、アンモニアプラズマにより還元処理中の状態を示している(図13(c)に相当する)。当該還元処理により、Cu配線603の表面に形成されるCu酸化層を還元するとともに、Cu配線603上または第1の低誘電率膜601上に存在する微小な異物を除去する。当該還元処理が実行されると、第1の低誘電率膜601中のメチル基(−CH3)とアンモニアラジカルとが結合し、アミン605(メチルアミン、すなわち塩基)が生成される。また、Cu配線603上に再付着したパーティクル604が有機系異物である場合、その有機系異物がアンモニアプラズマ中のアンモニアラジカル(NH3ラジカル)と結合することによって、上述したアミンとは異なる塩基性を有するアミンが生成されることもある。従って、還元処理が実行されると、実行されたCu配線603上または第1の低誘電率膜601上に当該アミン605が残留することとなる。
【0080】
次に、図6(c)は、還元処理後の第1の低誘電率膜601上に、所定の厚み(例えば、50nm)を有する拡散防止膜606が形成された状態を示している(図13(c)に相当する)。なお、当該拡散防止膜606は、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)が該当する。Cu配線603上にパーティクル604が付着した状態で、拡散防止膜606を当該Cu配線603上と第1の低誘電率膜601上とに形成すると、パーティクル604の部分だけ浮き上がった拡散防止膜606aが形成される。パーティクル604の部分だけ浮き上がった拡散防止膜606aと拡散防止膜606との間に、第1の低誘電率膜601とCu配線603上面とを連通する穴606bが形成されることが理解される。つまり、Cu配線603上にパーティクル604が付着すると、拡散防止膜606の拡散防止機能が失われる。そのため、Cu配線603上または第1の低誘電率膜601上に残留したアミン605が当該穴606bを通過して、拡散防止膜606の上方に拡散することが可能な状態となる。
【0081】
次に、当該穴606bを有する拡散防止膜606の上に層間絶縁膜である第2の低誘電率膜607が形成され、ドライエッチング法によりCu配線603上にビアホール608が開口される(図13(e)に相当する)。開口されたビアホール608に反射防止膜609が埋め込まれて、その上に第2の化学増幅型レジスト610が塗布される(図13(f)に相当する)。
【0082】
図6(d)は、第2の化学増幅型レジスト610が塗布されて、フォトリソグラフィー工程が実行される状態を示している。
【0083】
図6(d)に示すように、パーティクル604の部分だけ浮き上がった拡散防止膜606aと拡散防止膜606との間に穴606bが形成されているため、第1の低誘電率膜601上に残留するアミン605が、その穴606bを通り抜けることになる。さらに、当該アミン605は、Cu配線603上に形成されたビアホール608を通過し、塗布された第2の化学増幅型レジスト610に吸収(浸入)されることになる。吸収されたアミン605は、露光により第2の化学増幅型レジスト610内で発生した酸と中和することにより、レジストパターンを形成する際の化学増幅作用を弱める。そのため、化学増幅型レジストの解像不良、すなわち、ポイゾニング不良が発生し、結果として、図4で説明したように、フォトリソグラフィーにおいて、意図したラインパターンLをウェハ上に形成することが出来ないことになるのである。
【0084】
次に、洗浄ユニットを二つ備えたCu−CMP装置10を利用して、ポイゾニング不良を引き起こす、ブラシスクラブ洗浄後のパーティクルを適切に除去し、ウェハへのパーティクルの再付着を防止するウェハの洗浄方法について説明する。
【0085】
図7は、第一の実施形態におけるCu−CMP後のウェハに対して2段階の洗浄の手順を示すためのフローチャートである。
【0086】
まず、第1の低誘電率膜上のトレンチにCu膜が埋め込まれたウェハがFOUPに複数枚収納され、そのFOUPが、例えば、Cu−CMP装置10内のロードポートLP1に搬入される。当該FOUPが搬入されると、図1に示すように、Cu−CMP装置10の制御部100が所定の制御信号を受け、ドライロボットR1とウェットロボットR2とを駆動させて、所定のウェハをFOUPから研磨部2のロードアンロードユニットU1まで搬送する。
【0087】
ロードアンロードユニットU1に搬送された所定のウェハは、さらに、ウェハ回転機構部X1に接続されたヘッドH1〜H4を介して、第1研磨プラテンP1から第3研磨プラテンP3まで搬送される。第1研磨プラテンP1から第3研磨プラテンP3まで所定のウェハが搬送される毎に、そのウェハがCMPを実行される。Cu−CMPにより、ウェハ上に存在する余剰のCu膜とバリアメタル膜との研磨が完了すると、再度、ロードアンロードユニットU1に搬送される(図7:S701)。
【0088】
ロードアンロードユニットU1に搬送されたCu−CMP後のウェハは、ウェットロボットR2によって、研磨部2から洗浄部3の洗浄部受入ユニットCINに搬送される。洗浄部受入ユニットCINに搬送されたCu−CMP後のウェハは、さらにロボットR3によって、第1洗浄ユニットC1内に搬入される。搬入されたウェハは、第1洗浄ユニットC1内の前方のプーリーP1と後方のプーリーP2とに支持されて、機床に対して略垂直な状態で収納される(図7:S702)。
【0089】
Cu−CMP後のウェハが第1洗浄ユニットC1に収納されると、制御部100が有機酸洗浄薬液を用いたブラシスクラブ洗浄を実行する(図7:S703)。
【0090】
具体的には、制御部100が、第1洗浄ユニットC1に備えられた第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とをそれぞれウェハの表面に接触させ、その第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2との回転数を300rpmとして回転させる。また、制御部100が、第1洗浄ユニットC1に備えられた前方のプーリーP1と後方のプーリーP2の回転数を50rpmとして回転させ、2個のプーリーP1、P2に支持されるウェハに当該回転を伝達し、ウェハを所定の回転数で回転させる。さらに、制御部100は、所定の洗浄薬液ポンプを駆動し、第1洗浄ユニットC1に備えられた第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに、それぞれpH3〜4を有する有機酸洗浄薬液を供給する。供給される有機酸洗浄薬液の流量は、スプレーバー毎に2000ml/minと設定される。なお、2つのPVAブラシB1、B2にはDIWが供給されない、またはDIWが供給されたとしても、ウェハを浸す有機酸洗浄薬液のpHが3〜4の範囲内に納まる程度の流量で供給される。
【0091】
上述した条件とすると、図5の酸性領域に示すように、pH3〜4の範囲内の有機酸洗浄薬液がウェハ表面を浸した状態、すなわち、PVAブラシ由来の有機成分や研磨砥粒であるSiO2またはCuから構成されるパーティクルがCu配線上に付着し難い状態でブラシスクラブ洗浄を実行することとなる。当該状態では、PVAブラシがパーティクルをCu配線上から最も除去し易い状態に対応する。そのため、当該状態でブラシスクラブ洗浄を実行すると、図6に示したように、パーティクルに起因したポイゾニング不良の発生を抑制することが可能となる。なお、当該条件によるブラシスクラブ洗浄は、例えば50秒間継続して実行される。
【0092】
50秒間経過後、制御部100が、第1洗浄ユニットC1に備えられた2つのPVAブラシB1、B2をウェハ表面からそれぞれ脱離する。当該脱離が実行される場合、ウェハと2つのPVAブラシB1、B2とを浸す有機酸洗浄薬液のpHは、3〜4の範囲内に納まっており、中性領域の範囲(pH6〜8)内に納まることはない。
【0093】
当該脱離後に、制御部100が、例えば、第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに備えられたそれぞれの切換バルブを切り換えて、第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに供給される有機酸洗浄薬液をDIWに変更し、所定の流量でDIWをウェハに噴射し、ウェハにDIW洗浄を実行する。当該DIW洗浄をDIWリンスともいい、DIWリンスは、15秒間継続して実行される(図7:S704)。
【0094】
ウェハのDIWリンスが完了すると、制御部100が、ロボットR3を駆動させて、DIWリンス後のウェハを、第1洗浄ユニットC1から第2洗浄ユニットC2へ搬送する。DIWリンス後のウェハが、第2洗浄ユニットC2内の前方のプーリーP1と後方のプーリーP2とに支持されて、機床に対して略垂直な状態で収納されると、制御部100が有機アルカリ洗浄薬液を用いてウェハの洗浄を実行する(図7:S705)。
【0095】
具体的には、制御部100が、第2洗浄ユニットC2に備えられた前方のプーリーP1と後方のプーリーP2の回転数を50rpmとして回転させ、2個のプーリーP1、P2に支持されるウェハに当該回転を伝達し、ウェハを所定の回転数で回転させる。さらに、第2洗浄ユニットC2に備えられた第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに、それぞれpH9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を供給する。供給される有機アルカリ洗浄薬液の流量は、スプレーバー毎に1500ml/minと設定される。なお、第2洗浄ユニットC2には、2つのPVAブラシB1、B2は設けられていないため、当該洗浄では、ブラシスクラブ洗浄は実行されない。
【0096】
上述した条件とすると、図5のアルカリ領域に示すように、pH9〜10の範囲内の有機アルカリ洗浄薬液がウェハ表面を浸した状態、すなわち、パーティクルがCu配線上に付着し難い状態でウェハの洗浄を実行することとなる。当該状態は、パーティクルをCu配線上から最も除去し易い状態に対応する。そのため、当該状態でウェハの洗浄を実行すると、上述したパーティクルに起因するポイゾニング不良の発生を確実に抑制することとなる。さらに、有機アルカリ洗浄薬液はCu配線の表面をエッチングするため、仮にCu配線上にパーティクルが残存したとしても、適切に除去することが可能となる。なお、当該条件による洗浄は、例えば15秒間継続して実行される。
【0097】
pH9〜10の有機アルカリ洗浄薬液がウェハ上に噴射される初期の段階では、当該ウェハ上に残留するDIWリンス後のDIWにより有機アルカリ洗浄薬液が聊か希釈されるものの、継続して有機アルカリ洗浄薬液がウェハ上に噴射されるため、希釈された洗浄薬液は下方へ流出し、結果として、pH9〜10の範囲内の有機アルカリ洗浄薬液がウェハ表面を浸してウェハを洗浄することとなる。
【0098】
15秒間経過後、制御部100が、第2洗浄ユニットC2の第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに備えられたそれぞれの切換バルブを切り換えて、第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに供給される有機アルカリ洗浄薬液をDIWに変更し、ウェハのDIWリンスを実行する(図7:S706)。当該DIWリンスは、例えば、15秒間継続して実行される。
【0099】
DIWリンスが完了すると、制御部100がロボットR3を駆動させ、DIWリンス完了後のウェハを、第2洗浄ユニットC2から乾燥ユニットD1へ搬送し、DIWリンス後のウェハに乾燥処理を実行する(図7:S707)。
【0100】
乾燥方法としては、ウェハを高速で回転させ遠心力で乾燥させるスピン乾燥方式を採用しても構わないし、気相のIPA(イソプロピルアルコール)をウェハに対して噴霧し、マランゴニ効果を利用してDIWを除去・乾燥するマランゴニ乾燥方式を採用しても構わない。マランゴニ効果とは、異種溶液の濃度勾配によって溶液の流れが発生する効果のことである。マランゴニ乾燥方式では、IPAとDIWとの濃度勾配による溶液の流れを利用し、ウェハ表面に残留したDIWを減少させ、乾燥させる。第一の実施形態のように疎水性の低誘電率膜を層間絶縁膜として使用する場合、ウェハ表面上に残留したDIWが乾燥することにより、当該DIW中に含まれた不純物がウェハ表面上に残留し、当該不純物に基づいて形成されるマークであるウォーターマークが発生しやすい。当該ウォーターマークの発生を防止するために、マランゴニ乾燥方式が好ましく採用される。
【0101】
乾燥が完了すると、制御部100がドライロボットR1を駆動させて、乾燥済ウェハを乾燥ユニットD1から搬出し、当該乾燥済ウェハをロードポートLP1に配置されたFOUPに搬入し、一ウェハに対する一連の処理が完了する(図7:S708)。
【0102】
上述した手順にてCu−CMP後の洗浄処理が施されたウェハに、さらに図6(b)から図6(d)で示した処理、すなわち、還元処理、拡散防止膜の成膜処理、第2の低誘電率膜の成膜処理、ドライエッチング法によるビアホール形成処理、反射防止膜の埋め込み処理、第2の化学増幅型レジストの塗布処理、フォトリソグラフィーが順次施される。
【0103】
フォトリソグラフィーが実行されたウェハを観察すると、図3に示された欠陥(帯状のパターン形成不良)が確認されなかった。観察対象のウェハを数十枚にわたって観察したものの、全てのウェハについて当該欠陥が確認されなかった。この結果は、上述したウェハの洗浄方法を実施することにより、2本のPVAブラシB1、B2に付着したパーティクルがCu配線上に再付着することを防止したことを示している。従って、上述したCu−CMP後の2段階の洗浄を実行することにより、当該パーティクルが引き起こすポイゾニング不良の発生を防止することができることを示している。
【0104】
このように、Cu−CMP後の洗浄工程において、当該洗浄工程は、少なくとも2段階の洗浄を行ない、第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成している。
【0105】
これにより、第1段目では、ブラシスクラブ洗浄の際に使用される洗浄薬液が有機酸であることから、Cu配線もパーティクルもマイナス電位を有することとなる。そのため、パーティクルがCu配線上に付着すること、またはPVAブラシに付着したパーティクルがCu配線上に再付着することを防止することが可能となる。さらに、第2段目では、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうことから、Cu配線もパーティクルもマイナス電位を有することとなり、Cu配線上に残存するパーティクルを適切に除去することが可能となる。また、有機アルカリ洗浄薬液がCu配線の表面をエッチングするため、仮にCu配線の表面にパーティクルが残存したとしても、そのパーティクルを適切に除去することが可能となる。その結果、洗浄後に、例えば、還元処理やフォトリソグラフィーが実行されても、Cu配線上に再付着したパーティクルに起因して発生するポイゾニング不良を適切に防止するとともに、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【0106】
また、上記洗浄工程の第1段目は、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、上記洗浄工程の第2段目は、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうよう構成することができる。
【0107】
これにより、第1段目では、Cu配線もパーティクルも確実にマイナス電位を有する状態でブラシスクラブ洗浄を行なうこととなる。さらに、第2段目でも、Cu配線もパーティクルも確実にマイナス電位を有する状態で洗浄を行なうこととなる。そのため、Cu−CMP後の洗浄工程で、Cu配線上にパーティクルが残存する可能性を最小限にし、結果として、ポイゾニング不良の発生を最小限に抑え、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【0108】
<第二の実施形態>
第一の実施形態では、Cu−CMP後の洗浄工程において、少なくとも2段階の洗浄を行ない、第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なう半導体装置の製造方法を提供した。当該製造方法により、パーティクルがウェハ上に付着すること、またはブラシに付着したパーティクルがウェハ上に再付着することを防止し、ポイゾニング不良の発生を防止することに成功した。
【0109】
しかしながら、第1段目において、2本のPVAブラシB1、B2とウェハの表面とが均一に接触していない状態である接触異常が発生すると、ウェハにパーティクルが過剰に残存し付着することがある。当該接触異常は、例えば、長期使用により発生するPVAブラシの反りや捩じれが原因となって引き起こされる。反りや捩じれが発生したPVAブラシをウェハ表面に押し付けると、押し付けられた箇所(接触面)の押付量が当該PVAブラシの両端で不均一となる。当該押付量とは、PVAブラシB1、B2がウェハWに対して接している状態から所定の量までウェハWに向けて押し付けられた量のことである。当該押付量が大きい場合、ウェハからPVAブラシB1、B2に付着されるパーティクル(PVAブラシに除去されるパーティクル)の数が増加する一方で、PVAブラシB1、B2からウェハに再付着されるパーティクルの数も増加することとなる。そのため、押付量が大きいウェハの箇所では、パーティクルが過剰に残存し付着した状態となる。ウェハにパーティクルが過剰に付着した場合、第一の実施形態に係る製造方法を採用しても、当該パーティクルを全て除去できない場合がある。除去されないパーティクルに起因して上述したポイゾニング不良が発生するため、PVAブラシの接触面とウェハの接触面との間の押し付けられる箇所全てにおいて、当該押付量は均一に保持される必要がある。
【0110】
そこで、第二の実施形態では、PVAブラシのウェハへの接触(押付)状態が不均一になることを検知するよう構成を採用している。接触状態の不均一(接触異常)は、ウェハの回転に対応する回転数が所定の範囲内に含まれるか否かによって判定される。さらに、接触状態の不均一が発生すると、ウェハの洗浄処理を停止させるよう構成される。以下で、第二の実施形態を詳細に説明する。
【0111】
図8は、本発明の第二の実施形態におけるCu−CMP装置を示す概略構成図である。なお、第1の実施形態と同様に、以下では、図8の上下方向をCu−CMP装置10の前後方向とし、図8の左右方向をCu−CMP装置10の左右方向として説明する。
【0112】
第二の実施形態におけるCu−CMP装置10が、第一の実施形態で示したCu−CMP装置10と異なる点は、Cu−CMP装置10内で測定(検出)されるプロセスパラメータを測定される毎に取得するモニタリングツール200(Monitoring Tool:MT)が当該Cu−CMP装置10に通信可能に接続されている点である。さらに、モニタリングツール200によって取得されたプロセスパラメータに基づいて、ウェハの回転に対応する回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する判定部201がモニタリングツール200に接続されている点である。
【0113】
当該モニタリングツール200は、Cu−CMP装置10に備えられた各部(例えば、前方のプーリーP1のモーター、後述するウェハ回転プーリーDの回転数を検出する検出器等)に接続され、各部からプロセスパラメータを取得する。また、当該判定部201は、モニタリングツール200から送信されるプロセスパラメータに基づいて判定した結果を、Cu−CMP装置10の制御部100に送信する。当該制御部100は、当該判定結果に従って、Cu−CMP装置10の制御を実行する。
【0114】
次に、図9を用いて、モニタリングツール200が、例えば、洗浄部3の第1洗浄ユニットC1の主要構成各部からプロセスパラメータを取得する方法について説明する。図9は、本発明の第二の実施形態におけるCu−CMP装置10の洗浄部3のうち、第1洗浄ユニットC1の主要構成とモニタリングツール200とを示す図である。なお、図9の第1洗浄ユニットC1の前方向が図8の下方向に対応し、図9の第1洗浄ユニットC1の右方向が図8の右方向に対応する。また、2個のプーリーP1、P2は、相互に同一の半径を有し、その回転軸P1a、P2aは、ともに、収納されたウェハWの表面に対して直交している。
【0115】
図9に示すように、第1洗浄ユニットC1内部の前後に設けられた2個のプーリー(前方のプーリーP1、後方のプーリーP2)には、それぞれモーター(図示せず)が設けられており、それらのモーターにモニタリングツール200が接続されている。制御部100が当該モーターを駆動すると、当該モニタリングツール200が、それらのモーターの電流値(前方のプーリーP1、後方のプーリーP2の回転数に対応する)をプロセスパラメータとして取得する。なお、取得したモーターの電流値は、所定のメモリに記憶された、電流値とプーリーの回転数とを関連付けたテーブルによって、プーリーの回転数に変換される。
【0116】
また、本実施形態では、機床に対して略垂直なウェハWを支持した2個のプーリーP1、P2の間に、当該ウェハWの下端中央(または下端中央近傍)を支持し、2個のプーリーP1、P2の半径と同一の半径を有するウェハ回転プーリーDが新たに設けられる。なお、ウェハ回転プーリーDには、そのプーリーを駆動するモーターは接続されていない。また、ウェハ回転プーリーDの回転軸Daは、2個のプーリーP1、P2の回転軸P1a、P2aと平行となるよう設計されており、さらに、その回転軸Daには、ウェハ回転プーリーDの回転数を検出する検出器(図示せず)が備えられている。そのため、2個のプーリーP1、P2の回転によりウェハWが回転すると、ウェハWの回転がウェハ回転プーリーDに伝達される。すると、ウェハWの回転に対応する回転数で、ウェハ回転プーリーDが回転することになる。当該ウェハ回転プーリーDの回転数を上記検出器が検出することにより、ウェハWの回転に対応する回転数を検出することが可能となる。また、ウェハ回転プーリーDの半径は、2個のプーリーP1、P2の半径と同一の半径を有していることから、2個のプーリーP1、P2の回転が適切にウェハWに伝達された場合は、ウェハ回転プーリーDの回転数は、2個のプーリーP1、P2の回転数と同等となる。上記検出器にモニタリングツール200が接続されており、当該モニタリングツール200が、当該検出器により検出されたウェハ回転プーリーDの回転数をプロセスパラメータ(ここでは、ウェハの実回転数とする)として取得する。
【0117】
また、第1洗浄ユニットC1内部の左右に設けられた第1のPVAブラシB1(左側のPVAブラシ)と第2のPVAブラシB2(右側のPVAブラシ)には、ブラシの回転数を検出するブラシ回転数検出器(図示せず)と、ブラシを回転させるブラシモーター(図示せず)と、PVAブラシB1、B2内部に供給されるDIWの流量とその圧力(吐出圧力)とを検出するブラシ流量圧力検出器(図示せず)とがそれぞれ備えられている。上記ブラシ回転数検出器とブラシモーターとブラシ流量圧力検出器とにモニタリングツール200が接続されている。制御部100が当該ブラシモーターを駆動し、所定のポンプを用いてPVAブラシB1、B2内部にDIWを供給すると、当該モニタリングツール200が、第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とにそれぞれ対応するプロセスパラメータ(PVAブラシの回転数、モーターの電流値、DIWの流量、圧力)を取得する。
【0118】
また、第1洗浄ユニットC1内部の左右上方に配置された第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とには、それぞれ洗浄薬液(またはDIW)が供給されるよう構成されている。また、その供給される洗浄薬液の流量とその圧力(吐出圧力)とを検出するスプレーバー流量圧力検出器(図示せず)がそれぞれのスプレーバーS1、S2に備えられており、上記スプレーバー流量圧力検出器にモニタリングツールが接続されている。制御部100が所定の洗浄薬液ポンプを用いて第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに洗浄薬液(またはDIW)を供給すると、当該モニタリングツール200が第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とにそれぞれ対応するプロセスパラメータ(洗浄薬液(またはDIW)の流量、圧力)を取得する。
【0119】
上述した構成により、複数の検出器等と接続されたモニタリングツール200が、検出器等から検出されるプロセスパラメータを取得することが可能となる。
【0120】
次に、モニタリングツール200が取得可能な前方のプーリーP1、後方のプーリーP2の回転数と、ウェハの実回転数と、2本のPVAブラシB1、B2とウェハWの表面との接触状態(以下、接触状態とする)との関係について、図10、図11を用いて説明する。
【0121】
図10、図11は、当該接触状態と、その接触状態でブラシスクラブ洗浄を実行した際のウェハの実回転数の経時変化とを示した図である。なお、図10、図11の上下方向は、ウェハWと2本のPVAブラシB1、B2とを備えた第1洗浄ユニットC1の前後方向に対応する。また、図10、図11の矢印方向は、第1洗浄ユニットC1の前方方向を示している。
【0122】
図10(a)には、2本のPVAブラシB1、B2の軸がそれぞれウェハWの表面に対して平行を保持して、2本のPVAブラシB1、B2とウェハWとが接触した状態を示している。なお、PVAブラシB1、B2とウェハWとが接触する場合、PVAブラシB1、B2がウェハWに対して接している状態から所定の量までウェハWに向けて押し付けられ、その押し付けられた量(押付量)だけPVAブラシB1、B2が変形する。図10(a)には、ウェハWが存在しない場合に、PVAブラシB1、B2が所定の押付量だけウェハWに押し付けられている状態を示す。なお、図10(a)に示す実線のウェハWは、仮にウェハWが存在する場合の位置を示している。
【0123】
図10(a)に示すように、第1のPVAブラシがウェハWの表面に、第2のPVAブラシがウェハWの裏面に接触し、2本のPVAブラシB1、B2の接触面全てがウェハWの接触面全てに対して1.0mmの押付量で押付けられる。この状態は、すなわち、接触状態に異常がない、または接触状態が均一であることを示している。
【0124】
また、図10(b)には、前方のプーリーP1、後方のプーリーP2の回転数が50rpmである場合において、図10(a)の接触状態でブラシスクラブ洗浄を実行した際のウェハの実回転数の経時変化を示す。当該ウェハの実回転数の経時変化は、モニタリングツール200が取得したウェハの実回転数を、洗浄開始から洗浄終了までの時間である洗浄時間に対してプロットしたグラフに対応する。なお、図10(b)に示す所定の時間間隔Tは、ブラシスクラブ洗浄を実行した時間間隔(図10(b)では、ほぼ50秒)を示す。
【0125】
また、図11(a)には、2本のPVAブラシB1、B2の軸がそれぞれウェハWに対して傾斜して、2本のPVAブラシB1、B2とウェハWとが接触した状態を示している。当該傾斜状態は、例えば、PVAブラシB1、B2の軸がウェハWの中心に対して所定の角度で傾斜した状態に対応し、2本のPVAブラシB1、B2の軸がそれぞれウェハWの表面に対して平行とならない状態に対応する。
【0126】
図11(a)に示すように、第1のPVAブラシB1がウェハWの表面に接触し、第1のPVAブラシB1の接触面の一端、言い換えると、第1のPVAブラシB1の接触面の前方一端がウェハWの接触面に対して1.5mmの押付量で押し付けられる。また、第1のPVAブラシB1の接触面の他端、言い換えると、第1のPVAブラシB1の接触面の後方一端がウェハWの接触面に対して0.5mmの押付量で押し付けられる。さらに、第2のPVAブラシB2がウェハWの裏面に接触し、第2のPVAブラシB2の接触面の一端、言い換えると、第2のPVAブラシB2の接触面の前方一端がウェハWの接触面の一端に対して1.5mmの押付量で押し付けられる。また、第2のPVAブラシB2の接触面の他端、第2のPVAブラシB2の接触面の後方一端がウェハWの接触面の他端に対して0.5mmの押付量で押し付けられる。当該状態は、すなわち、接触状態に異常がある(接触異常)、または接触状態が不均一であることを示している。
【0127】
また、図11(b)には、前方のプーリーP1、後方のプーリーP2の回転数が50rpmである場合において、図11(a)の接触状態でブラシスクラブ洗浄を実行した際のウェハの実回転数の経時変化を示す。
【0128】
図10(a)、図10(b)に示すように、2本のPVAブラシB1、B2とウェハWとの接触状態が均一である場合、モニタリングツール200により取得されるウェハの実回転数は50rpm、すなわち、前方のプーリーP1、後方のプーリーP2の回転数と同等となることが理解される。
【0129】
一方、図11(a)、図11(b)に示すように、2本のPVAブラシB1、B2とウェハWとの接触状態が不均一である場合、ウェハの実回転数は50rpmよりも小さな値となることが理解される。これは、接触状態が不均一であるため、2つのプーリーP1、P2の回転が適切にウェハWに伝達されたとしても、ウェハWが2本のPVAブラシB1、B2から過剰に押し付けられた状態で回転することとなるからである。すなわち、ウェハWの円滑な回転が阻害されるため、2つのプーリーP1、P2の回転数よりも小さい回転数がウェハWの回転に対応するウェハの実回転数として検出される。また、一方で、ウェハWが2本のPVAブラシB1、B2からほとんど押し付けられない部分も発生しうる。この場合、ウェハWの回転がより加速されるため、2つのプーリーP1、P2の回転数よりも大きい回転数がウェハWの回転に対応するウェハの実回転数として検出される。
【0130】
上述した現象を利用して、第二の実施形態では、接触異常を検出し、その接触異常によって引き起こされるウェハへのパーティクルの再付着を防止する。
【0131】
図12は、第二の実施形態におけるCu−CMP後のウェハに対してブラシスクラブ洗浄の手順を示すためのフローチャートである。
【0132】
まず、第1の低誘電率膜上のトレンチにCu膜が埋め込まれたウェハが複数枚収納されたFOUPが、例えば、Cu−CMP装置10内のロードポートLP1に搬入される。当該FOUPが搬入されると、図8に示すように、Cu−CMP装置10の制御部100が、ドライロボットR1とウェットロボットR2とを駆動させて、所定のウェハをFOUPから研磨部2のロードアンロードユニットU1まで搬送する。
【0133】
ロードアンロードユニットU1に搬送された所定のウェハは、第1研磨プラテンP1から第3研磨プラテンP3まで搬送され、Cu−CMPが実行され、ウェハ上に存在する余剰のCu膜とバリアメタル膜とが除去される(図12:S1201)。
【0134】
Cu−CMP後のウェハは、ウェットロボットR2によって、洗浄部3の洗浄部受入ユニットCINに搬送され、さらにロボットR3によって、第1洗浄ユニットC1内に搬入される。搬入されたウェハは、第1洗浄ユニットC1内の前方のプーリーP1と後方のプーリーP2とに支持されて、機床に対して略垂直な状態で収納される(図12:S1202)。
【0135】
Cu−CMP後のウェハが第1洗浄ユニットC1に収納されると、制御部100が有機酸洗浄薬液を用いたブラシスクラブ洗浄を実行する(図12:S1203)。
【0136】
具体的には、制御部100が、第1洗浄ユニットC1に備えられた第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2とをそれぞれウェハの表面に所定の押付量で接触させ、その第1のPVAブラシB1と第2のPVAブラシB2との回転数を300rpmとして回転させる。また、制御部100が、第1洗浄ユニットC1に備えられた前方のプーリーP1と後方のプーリーP2の回転数を50rpmとして回転させ、2つのプーリーP1、P2に支持されるウェハに当該回転を伝達し、ウェハを所定の回転数で回転させる。さらに、制御部100は、第1洗浄ユニットC1に備えられた第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに、それぞれpH3〜4を有する有機酸洗浄薬液を供給する。供給される有機酸洗浄薬液の流量は、スプレーバー毎に2000ml/minと設定される。
【0137】
ここで、2つのプーリーP1、P2の回転と、ウェハWの回転とが開始されると、モニタリングツール200が、所定の期間(例えば2秒)毎に、ウェハ回転プーリーDに備えられた検出器からウェハの実回転数を取得する(図12:S1204)。また、モニタリングツール200は、2つのプーリーP1、P2のモーターの電流値からそれぞれの回転数(50rpm)を取得し、ウェハWに伝達される回転の回転数が適切か否かを監視する。
【0138】
モニタリングツール200がウェハの実回転数を取得すると、モニタリングツール200は当該ウェハの実回転数を判定部201に送信する。ウェハの実回転数を受信した判定部201は、当該ウェハの実回転数が所定の範囲内に含まれるか否かの判定を実行する(図12:S1205)。所定の範囲は、ユーザまたはCu−CMP装置10に接続された半導体製造装置により予め設定されており、さらに、2つのプーリーP1、P2の回転数に応じて適宜変更される。例えば、2つのプーリーP1、P2の回転数が50rpmであれば、所定の範囲の上限値は52rpm、下限値は48rpmと設定される。
【0139】
当該判定の結果、ウェハの実回転数が所定の範囲内に含まれている場合、判定部201は、接触状態は均一であると確認する(図12:S1205YES)。さらに、判定部201は制御部100と通信し、判定後にブラシスクラブ洗浄を実行する時間が経過したか否かを判定する(図12:S1206)。当該時間は、図10(b)、図11(b)に示す所定の時間間隔Tに対応し、以下、ブラシスクラブ洗浄時間とする。当該ブラシスクラブ洗浄時間は、例えば、50秒と設定される。
【0140】
ブラシスクラブ洗浄時間が経過していない場合、判定部201はモニタリングツール200と通信し、モニタリングツール200は、再度、所定の期間の計時を開始し、上述した同様の判定を繰り返すこととなる(図12:S1206NO→S1204)。
【0141】
なお、接触状態が均一である場合、ブラシスクラブ洗浄時間が経過するまで、制御部100が、継続して有機酸洗浄薬液を用いたブラシスクラブ洗浄を実行することになる。
【0142】
ブラシスクラブ洗浄時間が経過した場合、制御部100がブラシスクラブ洗浄を完了し、第1洗浄ユニットC1に備えられた2つのPVAブラシB1、B2をウェハ表面からそれぞれ脱離する(図12:S1206YES→S1207)。さらに、制御部100が、第1洗浄ユニットC1の第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに備えられたそれぞれの切換バルブを切り換えて、第1のスプレーバーS1と第2のスプレーバーS2とに供給される有機アルカリ洗浄薬液をDIWに変更し、ウェハのDIWリンスを実行する(図12:S1208)。当該DIWリンスは、例えば、15秒間継続して実行される。
【0143】
DIWリンスが完了すると、制御部100が、ロボットR3を駆動させて、DIWリンス後のウェハを、第1洗浄ユニットC1から第2洗浄ユニットC2へ搬送し、第2洗浄ユニットC2でのウェハの洗浄が開始されることになる。
【0144】
一方、ウェハの実回転数が所定の範囲内に含まれるか否かの判定の結果、ウェハの実回転数が所定の範囲外である場合、判定部201は、接触状態は不均一であると確認し、当該制御部100にウェハWのブラシスクラブ洗浄を停止する旨の信号(信号A)を送信する(図12:S1205NO)。なお、ウェハの実回転数が所定の範囲外である場合は、ウェハの実回転数が上限値を超過した場合、またはウェハの実回転数が下限値よりも少なかった場合に対応する。
【0145】
当該信号Aを受信した制御部100は、ウェハWのブラシスクラブ洗浄を停止する(図12:S1209)。当該停止は、制御部100が2つのPVAブラシB1、B2をウェハWから脱離し、それらの回転と2つのプーリーP1、P2の回転とを停止し、2つのスプレーバーS1、S2への有機酸洗浄薬液の供給を停止することが該当する。
【0146】
また、制御部100は、例えば、Cu−CMP装置10に接続されたパーソナルコンピュータ(例えば、製造実行システム(Manufacturing Execution System:MES)が該当する)に、ブラシスクラブ洗浄の洗浄不良が発生した旨のエラーメッセージを表示させる。
【0147】
なお、判定部201が、さらに制御部100に、後続のウェハ(次にブラシスクラブ洗浄を予定されたウェハ)のブラシスクラブ洗浄の実行を停止させる旨の信号(信号B)を送信したり、制御部100に、後続のFOUP(後続のロット)をCu−CMP装置10に搬入しない旨の信号(信号C)を送信したりするよう構成しても構わない。当該信号Bを受信した制御部100は、後続のウェハの搬送を停止し、当該信号Cを受信した制御部100は、上述した製造実行システムと通信し、後続のFOUPの搬入を停止する。
【0148】
上記構成により、2つのPVAブラシB1、B2とウェハWとの接触状態が不均一である場合に多発するウェハへのパーティクルの再付着を後続のウェハ等に発生させることを防止し、歩留まりの低下を防止することが可能となる。
【0149】
また、例えば、判定部201が接触状態は不均一であることを確認した後(接触状態の不均一により、ブラシスクラブ洗浄が停止した後)に、ユーザにより新たなPVAブラシへの交換やPVAブラシの取付状態の調整が実施され、接触状態が均一となると、再度、第一洗浄ユニットC1が復帰し、ウェハWのブラシスクラブ洗浄が実行可能となるよう構成される。
【0150】
このように、上記洗浄工程の第1段目は、ブラシスクラブ洗浄が実行されるウェハを回転する工程と、上記ウェハの回転が開始すると、所定の期間毎に、当該ウェハの回転に対応する回転数を検出する工程と、検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する工程と、上記判定した結果、検出した回転数が所定の範囲内に含まれない場合、そのウェハのブラシスクラブ洗浄を停止する工程とを含むよう構成することができる。
【0151】
これにより、第1段目では、ブラシが基板に均一に接触しているか否かを判定するとともに、ブラシがウェハに均一に接触していない場合は、ウェハのブラシスクラブ洗浄を停止することとなる。そのため、ブラシがウェハに均一に接触していない場合に多発する下層配線へのパーティクルの再付着を確実に防止することが可能となる。さらに、ブラシがウェハに均一に接触していない場合では、ウェハに対するブラシスクラブ洗浄の実行を停止することが可能となる。その結果、Cu配線上に再付着したパーティクルに起因して発生するポイゾニング不良を適切に防止するとともに、半導体製造装置の歩留まりを向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上のように、Cu−CMP後のブラシスクラブ洗浄におけるウェハへのパーティクルの再付着を防止することでポイゾニング不良の発生を抑制し、歩留まりを向上させることが可能な半導体装置の製造方法および半導体製造装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】第一の実施形態におけるCu−CMP装置を示す概略構成図である。
【図2】第一の実施形態におけるCu−CMP装置の洗浄部のうち、第1洗浄ユニットC1の主要構成を示す図である。
【図3】フォトリソグラフィーを実行した後におけるウェハ表面上の欠陥の分布図である。
【図4】帯状のパターン形成不良を有するウェハにフォトリソグラフィーを実行した後の代表的なパターンのイメージ図である。
【図5】Cu−CMP後のブラシスクラブ洗浄において存在する部材に対応するゼータ電位と、その部材が存在している洗浄薬液中のpHとの関係を示す図である。
【図6】Cu配線上のパーティクルがポイゾニング不良を引き起こすメカニズムとCu配線の製造方法の一例とを関連付けて示した図である。
【図7】第一の実施形態におけるCu−CMP後のウェハに対して2段階の洗浄の手順を示すためのフローチャートである。
【図8】第二の実施形態におけるCu−CMP装置を示す概略構成図である。
【図9】第二の実施形態におけるCu−CMP装置の洗浄部のうち、第1洗浄ユニットC1の主要構成とモニタリングツールとを示す図である。
【図10】2本のPVAブラシとウェハの表面との接触状態と、その接触状態でブラシスクラブ洗浄を実行した際のウェハの実回転数の経時変化とを示した第一の図である。
【図11】2本のPVAブラシとウェハの表面との接触状態と、その接触状態でブラシスクラブ洗浄を実行した際のウェハの実回転数の経時変化とを示した第二の図である。
【図12】第二の実施形態におけるCu−CMP後のウェハに対してブラシスクラブ洗浄の手順を示すためのフローチャートである。
【図13】多層配線構造の半導体装置におけるCu配線の多層配線工程の製造方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0154】
10 Cu−CMP装置
100 制御部
2 研磨部
200 モニタリングツール
201 判定部
3 洗浄部
C1 第1洗浄ユニット
C2 第2洗浄ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層配線と、下層配線と、上層配線と下層配線とを接続するビアとを含む多層配線構造を備える半導体装置の製造方法において、
基板上に形成された低誘電率膜の上面にトレンチを形成する工程と、
上記トレンチの形成後に、上記低誘電率膜の上面に銅を含む導電性膜を成膜する工程と、
上記導電性膜を化学的機械的研磨して上記トレンチに下層配線を形成する工程と、
上記化学的機械的研磨後に、上記基板を洗浄する工程と、
上記基板の洗浄後に、上記低誘電率膜の上面にアンモニアプラズマによる還元処理を実行し、その上に拡散防止膜を形成する工程と、
上記拡散防止膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
上記下層配線の上方で、上記層間絶縁膜にビアに対応するビアホールを開口する工程と、
上記ビアホールに反射防止膜を埋め込む工程と、
上記反射防止膜の上面に化学増幅型レジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより上層配線のトレンチに対応するレジストパターンを形成する工程とを含み、
上記洗浄工程は、少なくとも2段階の洗浄を行ない、
第1段目は、有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、
第2段目は、有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記洗浄工程の第1段目は、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、
上記洗浄工程の第2段目は、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記洗浄工程の第1段目は、
ブラシスクラブ洗浄が実行される基板を回転する工程と、
上記基板の回転が開始すると、所定の期間毎に、当該基板の回転に対応する回転数を検出する工程と、
検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する工程と、
上記判定の結果、検出した回転数が所定の範囲外である場合、その基板のブラシスクラブ洗浄を停止する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
低誘電率膜の上面に銅を含む導電性膜が成膜された基板に対して化学的機械的研磨を実行し、当該導電性膜がトレンチに埋め込まれた下層配線を形成する研磨部と、上記化学的機械的研磨が実行された基板に対して洗浄を実行する洗浄部とを備えた半導体製造装置において、
上記洗浄部が、
有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を実行する第1洗浄ユニットと、
有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を実行する第2洗浄ユニットと、
を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項5】
上記第1洗浄ユニットは、pHが3〜4の有機酸洗浄薬液を用いてブラシスクラブ洗浄を行ない、
上記第2洗浄ユニットは、pHが9〜10の有機アルカリ洗浄薬液を用いて洗浄を行なうことを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
上記第1洗浄ユニットは、ブラシスクラブ洗浄が実行される基板を回転する回転部と、
上記基板の回転が開始すると、所定の期間毎に、当該基板の回転に対応する回転数を検出する検出部と、
検出した回転数が所定の範囲内に含まれるか否かを判定する判定部と、
上記判定の結果、検出した回転数が所定の範囲外である場合、その基板のブラシスクラブ洗浄を停止する停止部と、
を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−87338(P2010−87338A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256229(P2008−256229)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】