半導体装置の製造方法
【課題】半導体装置の性能の均一性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】この半導体装置の製造方法は、ガラス基板1上に非晶質シリコン膜4を形成する工程と、非晶質シリコン膜4上に吸収膜6を形成する工程と、吸収膜6の所定領域上に反射抑制膜7を形成する工程と、反射抑制膜7および吸収膜6にレーザーを照射することにより吸収膜6を発熱させ、その熱を利用して非晶質シリコン膜4を結晶化することによって、複数の柱状結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界帯8の位置が制御された結晶シリコン膜4aを形成する工程とを備えている。
【解決手段】この半導体装置の製造方法は、ガラス基板1上に非晶質シリコン膜4を形成する工程と、非晶質シリコン膜4上に吸収膜6を形成する工程と、吸収膜6の所定領域上に反射抑制膜7を形成する工程と、反射抑制膜7および吸収膜6にレーザーを照射することにより吸収膜6を発熱させ、その熱を利用して非晶質シリコン膜4を結晶化することによって、複数の柱状結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界帯8の位置が制御された結晶シリコン膜4aを形成する工程とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などの半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置などの画素駆動用トランジスタとして、結晶シリコン膜を能動層として用いたTFTが採用されている。そして、従来では、連続発振レーザー(CWレーザー)を吸収膜に照射することにより、吸収膜から発生する熱を利用して非晶質シリコン膜を結晶化させることによって、TFTの能動層としての結晶シリコン膜を形成する半導体装置の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された半導体装置の製造方法では、非晶質シリコン膜の全面を覆うように吸収膜を形成するとともに、その吸収膜から発生する熱により非晶質シリコン膜を加熱して溶融させた後、冷却することにより結晶化する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の半導体装置の製造方法では、非晶質シリコン膜の全面を覆うように形成した吸収膜からの熱により非晶質シリコン膜を加熱しているので、基板上の全面または非晶質シリコン膜の全面で、ほぼ同じ温度勾配が生じる。これにより、その後、冷却に伴って非晶質シリコン膜の溶融した領域が結晶化する際に、結晶粒界が結晶シリコン膜中の種々の位置に形成されるという不都合がある。このため、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画素駆動用トランジスタとして多数のTFTを基板上に形成する場合に、そのTFTの能動層としての結晶シリコン膜において、結晶粒界の位置がばらつくという不都合がある。これにより、能動層としての結晶シリコン膜中の結晶粒界の位置のばらつき(たとえば、チャネル領域における結晶粒界の有無)に起因して、TFTの性能の均一性が低下するという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体装置の性能の均一性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における半導体装置の製造方法は、基板上に半導体膜を形成する工程と、半導体膜上に吸収膜を形成する工程と、吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成する工程と、反射抑制膜および吸収膜にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して半導体膜を結晶化することによって、複数の結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程とを備えている。
【0007】
この一の局面による半導体装置の製造方法では、上記のように、吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成するとともに、吸収膜の反射抑制膜の形成された領域、および、吸収膜の反射抑制膜の形成されていない領域にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させることによって、吸収膜の反射抑制膜を形成した所定領域では、レーザーの吸収率が向上するので発熱量が増加する。これにより、半導体膜の吸収膜および反射抑制膜が形成された所定領域に対応する領域を、半導体膜の吸収膜のみが形成された領域に対応する領域よりもより高い温度に加熱することができる。このため、半導体膜の吸収膜のみが形成された領域に対応する領域から、吸収膜および反射抑制膜が形成された所定領域に対応する領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができる。これにより、半導体膜の溶融後に結晶化する場合に、半導体膜の吸収膜および反射抑制膜が形成された領域の端部側から中央部に向かって結晶を成長させることができるので、複数の結晶が会合することにより形成される結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御することができる。このため、結晶膜中の結晶粒界部の位置のばらつきを抑制することができるので、結晶膜を能動層として用いた半導体装置を形成する場合に、半導体装置の性能の均一性を向上させることができる。
【0008】
また、半導体膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の所定の位置において半導体膜の融点よりも高い温度になるようにレーザー照射により半導体膜を加熱すれば、反射抑制膜が形成された所定領域側は、半導体膜の融点よりも高い温度になる。これにより、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も溶融させることができる。このため、その後、冷却に伴って溶融した半導体膜が結晶化する場合に、半導体膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって結晶を成長させることができる。これにより、結晶膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって成長した大きなサイズの結晶を形成することができる。このため、結晶膜の反射抑制膜の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。これにより、吸収膜の反射抑制膜に対応する領域を用いてゲート電極を形成した後、結晶膜のゲート電極下の領域にチャネル領域を形成するとともに、そのチャネル領域を挟むように一対のソース/ドレイン領域を結晶膜に形成してトランジスタを形成する場合に、ゲート電極の端部に対応するチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に微結晶が配置されるのを抑制することができる。このため、微結晶の存在により生じるキャリアトラップ準位がトランジスタのチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に形成されるのを抑制することができる。これにより、キャリアトラップ準位がトランジスタのチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に形成されることによって生じるトランジスタの動作不良を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程は、結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御する工程を含む。このように構成すれば、容易に、結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御することができるので、容易に、結晶膜中の結晶粒界部の位置のばらつきを抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、レーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して半導体膜を結晶化する工程は、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域もレーザーの照射により半導体膜の融点よりも高い温度まで加熱する工程を含む。このように構成すれば、容易に、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も溶融させることができる。これにより、容易に、結晶膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって成長した大きなサイズの結晶を形成することができるので、容易に、結晶膜の反射抑制膜の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、基板上に半導体膜を形成する工程は、半導体膜を島状に形成する工程を含み、吸収膜を形成する工程は、島状の半導体膜の上方を覆うように吸収膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、島状の半導体膜の上方を覆うように吸収膜を形成することによって、反射抑制膜および吸収膜にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して吸収膜に覆われた半導体膜の全体を加熱することができる。これにより、半導体膜の一部の領域の上方のみに吸収膜を形成する場合と異なり、容易に、半導体膜の全領域を結晶化することができる。
【0012】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、吸収膜の結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極を形成する工程をさらに備える。そして、一対のゲート電極を形成した後、結晶膜の結晶粒界部を含む領域を、一対のゲート電極を有するトランジスタの一対のゲート電極間に位置する中間のソース/ドレイン領域として用いる。このように構成すれば、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極を有するトランジスタを形成することができるとともに、そのトランジスタの中間のソース/ドレイン領域に結晶粒界部を配置することができる。これにより、トランジスタのチャネル領域に結晶粒界部が配置されるのを抑制することができるので、トランジスタの駆動時にキャリアがチャネル領域に配置された結晶粒界部を横切って移動するのを抑制することができる。このため、結晶粒界部を横切ってキャリアが移動することに起因したキャリアの移動度の低下を抑制することができる。その結果、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極を有するとともに、優れた性能を有するトランジスタを形成することができる。
【0013】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、吸収膜の結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極を形成する工程と、その後、結晶膜の2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程とをさらに備える。このように構成すれば、2つの結晶膜と、その2つの結晶膜にそれぞれ対応するゲート電極とを有する2つのトランジスタをそれぞれ形成することができる。また、吸収膜の結晶粒界部に対応する領域を除去して、2つのゲート電極を形成することにより、2つのトランジスタのそれぞれのゲート電極に対応するチャネル領域およびその近傍領域に結晶粒界部が含まれないようにすることができる。これにより、2つのトランジスタにおいて、結晶粒界部による影響をなくすことができるので、優れた性能を有する2つのトランジスタを形成することができる。なお、上記の結晶膜の2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程において、結晶膜の結晶粒界部を含む領域を除去すれば、容易に、2つのトランジスタにおいて、結晶粒界部による影響をなくすことができる。
【0014】
なお、本発明では、以下のような構成も考えられる。すなわち、上記一の局面による半導体装置の製造方法において、レーザーは、連続発振レーザーを含んでいてもよい。このように構成すれば、連続発振レーザーは、パルスレーザーと異なり、レーザービームの高速走査を行うことができるので、大きな面積を均一で、かつ、短時間で照射して加熱することができる。これにより、生産性(スループット)を向上させることができる。また、連続発振レーザーは、パルスレーザーのようにビーム強度がばらつくことがないので、加熱を均一に行うことができる。さらに、連続発振レーザーは、パルスレーザーと異なり、連続して照射することができるので、パルスレーザーに比べて加熱時間を増加させることができる。これにより、パルスレーザーを用いる場合に比べて、欠陥の少ない高品質の結晶をより大きなサイズに成長させることができるので、結晶膜の結晶性を向上させることができる。なお、この場合において、連続発振レーザーは、基本波YAGレーザーなどの赤外レーザーを含んでいてもよい。
【0015】
また、上記一の局面による半導体装置の製造方法において、結晶膜は、トランジスタの能動層であり、半導体膜の結晶化後に、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより、トランジスタのゲート電極を形成する工程をさらに備えていてもよい。このように構成すれば、吸収膜をエッチングしてトランジスタのゲート電極を形成する場合に、別途エッチングマスクを形成する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0016】
また、上記トランジスタのゲート電極を形成する工程を含む構成において、反射抑制膜を形成する工程は、ゲート電極の形状に対応する形状に反射抑制膜を形成する工程を含んでいてもよい。このように構成すれば、容易に、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより、ゲート電極を形成することができる。
【0017】
また、上記トランジスタのゲート電極を形成する工程を含む構成において、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることによりトランジスタのゲート電極を形成する工程に先立って、半導体膜の結晶化後に、反射抑制膜をマスクとして結晶膜に不純物を導入した後、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に再度照射することにより不純物を電気的に活性化することによって、結晶膜にソース/ドレイン領域を形成する工程をさらに備えていてもよい。このように構成すれば、非晶質シリコン膜を結晶化させる際に用いたレーザー照射装置を用いて、結晶膜に導入した不純物を電気的に活性化させることができる。これにより、結晶膜に導入した不純物を電気的に活性化させるために、結晶化に用いたレーザー照射装置と異なる加熱装置を別途用いて、結晶膜を加熱する必要がないので、製造プロセスが煩雑になるのを抑制することができる。また、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることによりトランジスタのゲート電極を形成する工程に先立って、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に再度照射することにより不純物を電気的に活性化させることによって、結晶膜の不純物が導入された領域を吸収膜で覆った状態で加熱することができる。これにより、結晶膜の不純物が導入された領域を均一かつ効率的に加熱することができるので、結晶膜に導入された不純物を良好に電気的に活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1〜図9は、本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための図である。以下、図1〜図9を参照して、第1実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、この第1実施形態では、第1実施形態による半導体装置の一例としてのTFT(薄膜トランジスタ)を形成する半導体装置の製造方法について説明する。
【0020】
まず、図1に示すように、プラズマCVD法を用いて、ガラス基板1上に約300nmの厚みを有するSiO2膜2を形成する。なお、ガラス基板1は、本発明の「基板」の一例である。その後、プラズマCVD法を用いて、SiO2膜2上に約20nmの厚みを有するSiNx膜3を形成する。このように形成したSiO2膜2およびSiNx膜3は、ガラス基板1への熱の伝達を緩和するためのバッファ層として機能する。その後、約500℃の窒素(N2)雰囲気中において、約2時間の脱水素アニール処理を行う。
【0021】
そして、減圧CVD法を用いて、SiNx膜3上に約50nmの厚みを有する非晶質シリコン膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、その非晶質シリコン膜(図示せず)をパターニングすることにより複数の島状化された非晶質シリコン膜4を形成する。なお、この非晶質シリコン膜4を島状化する際のエッチングには、SF6をエッチングガスとして用いたRIE(Reactive Ion Etching)法を用いる。なお、図1では、島状化された非晶質シリコン膜4を1つのみ示しているが、実際には、島状化された非晶質シリコン膜4が所定の間隔を隔てて配置されている。この島状化された非晶質シリコン膜4は、後にTFTの能動層(活性層)として用いられる。なお、この非晶質シリコン膜4は、本発明の「半導体膜」の一例である。
【0022】
この後、プラズマCVD法を用いて、非晶質シリコン膜4およびSiNx膜3上に約100nmの厚みを有するSiO2膜からなるゲート絶縁膜5を形成する。この際、ゲート絶縁膜5は、島状化された非晶質シリコン膜4を覆うように形成する。そして、スパッタ法を用いて、ゲート絶縁膜5上に約200nmの厚みを有するMo膜からなる吸収膜6を形成する。
【0023】
この際、第1実施形態では、吸収膜6を、島状化された非晶質シリコン膜4の上方の全体を覆うように形成する。この後、第1実施形態では、プラズマCVD法を用いて、吸収膜6上に約160nmの厚みを有するSiO2膜(図示せず)を形成した後、そのSiO2膜をフォトリソグラフィ技術およびHF水溶液によるエッチング技術を用いて後述するゲート電極6aの形状に対応する形状にパターニングすることにより、吸収膜6の所定領域上にSiO2膜からなる反射抑制膜7を形成する。この際、反射抑制膜7は、非晶質シリコン膜4のチャネル領域となる領域上に形成される。
【0024】
次に、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の結晶化を行う。具体的には、図2に示すように、ArまたはN2などの不活性ガス雰囲気中において、約200℃に加熱しながら、連続発振型の基本波YAGレーザーを上方から反射抑制膜7および吸収膜6に照射する。この場合のレーザーの照射条件は、レーザーパワー:約170W、走査速度:約700mm/s(基板相対速度)である。また、このレーザー照射には、約0.1mm(ビーム長:走査方向に平行な方向の長さ)×約3mm(ビーム幅:走査方向に直交する方向の長さ)の照射範囲を有するレーザービームを用いる。このレーザー照射により、吸収膜6が発熱するので、その熱を利用して、非晶質シリコン膜4を溶融させる。
【0025】
この際、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられていない領域のレーザーの吸収率は、約30%であるのに対して、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、レーザーの反射率が低減されることによりレーザーの吸収率が約60%に向上する。これにより、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて、発熱量が増加する。このため、非晶質シリコン膜4の吸収膜6および反射抑制膜7によって覆われた領域は、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみによって覆われた領域よりもより高温に加熱される。これにより、図3に示すように、非晶質シリコン膜4の両端部側の吸収膜6のみによって覆われた領域から、内側の吸収膜6および反射抑制膜7によって覆われた領域に向かって温度が上昇する温度勾配が形成される。この際、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域は、約1500℃〜約1800℃に加熱される。また、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域は、約1400℃〜約1500℃に加熱されるとともに、さらに外側の領域は、約1000℃〜約1400℃に加熱される。
【0026】
すなわち、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも高い温度まで加熱される。これにより、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も溶融する。なお、非晶質シリコン膜4の溶融した領域のさらに外側の領域は、非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも低い温度(約1000℃〜約1400℃)になるので、溶融しない。そして、この非晶質シリコン膜4の溶融しない領域では、図3および図4に示すように、固相成長により微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。
【0027】
そして、レーザービームが反射抑制膜7および吸収膜6上を通過した後、冷却が行われる。この冷却に伴って、非晶質シリコン膜4の溶融した領域において横方向の結晶成長が行われる。この横方向の結晶成長は、図3に示した温度勾配が形成されることによって行われる。すなわち、結晶は、温度の低い方から高い方へ向かって成長するので、温度が低下する方向(熱流の方向)に逆らって成長する。これにより、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の外側から内側に向かって横方向に結晶が成長する。具体的には、図5および図6に示すように、まず、非晶質シリコン膜4の溶融した領域の非溶融領域との境界部近傍に急冷による微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。なお、この急冷による微結晶シリコンは、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍(ソース/ドレイン領域とチャネル領域との界面になる領域)よりも外側の領域に形成される。
【0028】
そして、急冷による微結晶シリコンを種結晶として、内側に向かって両側からシリコンの柱状結晶が成長する。なお、図6〜図9では、シリコンの柱状結晶が非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚みは非常に小さいので、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向の中間領域に柱状結晶の非晶質シリコン膜4と平行に延びる粒界は形成されない。そして、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部に対応する領域には、柱状結晶が形成されるとともに、微結晶は形成されない。そして、両側から内側に向かって成長したシリコンの柱状結晶は、図7に示すように、最終的に、反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置で会合する。これにより、反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置に、シリコンの複数の柱状結晶の粒界が連続した結晶粒界帯8が形成されるとともに、結晶成長が終了する。なお、この結晶粒界帯8は、本発明の「結晶粒界部」の一例である。また、結晶粒界帯8は、柱状結晶の成長方向に対してほぼ直交する方向に延びるように形成される。上記のようにして、非晶質シリコン膜4が結晶化されることにより、柱状結晶の結晶粒界帯8の位置が反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置に制御された結晶シリコン膜4aが形成される。なお、この結晶シリコン膜4aは、本発明の「結晶膜」の一例である。
【0029】
また、第1実施形態では、反射抑制膜7からの熱に起因する温度勾配とは別に、レーザービームの走査により、レーザービームの走査方向またはビーム形状に応じた温度勾配が形成される。この温度勾配の形成される領域の大きさは、大体レーザービームのビームサイズ程度になる。レーザービームのビーム長(走査方向に平行な方向の長さ、短辺)は、約0.1mm(約100μm)であり、温度勾配の領域の大きさは、約0.1mmである。一方、反射抑制膜7を用いて形成される温度勾配の領域の大きさは、数μm〜数10μmである。すなわち、レーザービームの走査により形成される温度勾配は、反射抑制膜7により形成される温度勾配の1/10程度以下になる。このため、レーザービームの走査により生じる温度勾配によって、シリコン膜に柱状結晶を成長させるための温度勾配に影響を与えるとしても、その影響は1/10程度以下になる。したがって、レーザービームの走査により生じる温度勾配が柱状結晶の成長に与える影響は非常に小さく、無視することが可能である。
【0030】
また、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の結晶化に用いる連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、連続して照射されるので、エキシマレーザーなどのパルスレーザーに比べて加熱時間が増加する。具体的には、上記の連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた方法では、所定の照射領域をレーザービームが通過する時間は、10−4sec程度になる。一方、一般的なエキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた方法では、所定の照射領域に対する1回のパルス照射毎の照射時間は10−8sec程度になる。これにより、上記の連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた方法では、一般的なエキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた方法に比べて、加熱時間が104倍程度になる。また、レーザー照射による平均熱拡散距離xは、一般に、x=(2ατ)1/2(α:温度伝達率、τ:加熱時間≒レーザービームの通過時間)の式で表される。したがって、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた場合には、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた場合に比べて、加熱時間(τ)が104倍程度になるので、上記式から、平均熱拡散距離xが102倍程度になることがわかる。これにより、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた第1実施形態による製造方法では、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた場合に比べて、結晶を横方向に成長させるための温度勾配が発生する領域を102倍程度広げることができるので、より大きな結晶を形成することができることがわかる。
【0031】
以下の表1にガラス基板1および石英基板の熱的物理定数を示す。また、以下の表2に上記の式と、表1に示した温度伝達率αとを用いて計算した平均熱拡散距離xの計算値を示す。
【0032】
【表1】
次に、第1実施形態では、図8に示すように、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることにより、TFTのゲート電極6aを形成する。この際、反射抑制膜7は、予めゲート電極6aの形状と同じ所定の形状にパターニングされているので、ゲート電極6aは、その所定の形状にパターニングされる。そして、ゲート電極6aは、反射抑制膜7と同じ形状に形成されるので、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8は、ゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置に配置される。また、結晶シリコン膜4aの急冷による微結晶シリコン(μc−Si)と、固相成長による微結晶シリコン(μc−Si)とは、ゲート電極6aの端部近傍よりも外側の領域に配置される。
【0033】
次に、図9に示すように、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして、結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、P+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約2×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、nチャネルトランジスタ(TFT)にLDD構造を形成する場合には、フォトマスクにより結晶シリコン膜4aのLDD形成領域(ゲート電極6a近傍)をマスクした上で上記のイオン注入を行い、その後改めて、結晶シリコン膜4aのLDD形成領域にP+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約3×1013cm−2の条件でイオン注入する。ソース/ドレイン領域9をLDD構造にするために、別途、結晶シリコン膜4aにP+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約3×1013ions/cm2の条件下でイオン注入する。一方、pチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、B+(ホウ素イオン)を注入エネルギ:約35keV、ドーズ量:約1.5×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。
【0034】
この後、図示しない層間絶縁膜を形成した後、RTA(Rapid Thermal Annealing)法により結晶シリコン膜4aを加熱することによって、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させる。これにより、結晶シリコン膜4aに一対のソース/ドレイン領域9を形成する。この際、ゲート電極6a下の一対のソース/ドレイン領域9に挟まれた領域にチャネル領域10が形成される。なお、Moからなるゲート電極6aと、SiO2からなるゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10が形成された結晶シリコン膜4aとによって、TFTが形成される。そして、チャネル領域10は、シリコンの柱状結晶によって構成される。また、ソース/ドレイン領域9は、固相成長による微結晶シリコン(μc−Si)と、急冷による微結晶シリコン(μc−Si)と、シリコンの柱状結晶の端部の一部とによって構成される。また、ソース/ドレイン領域9とチャネル領域10との接合界面11は、結晶シリコン膜4aのシリコンの柱状結晶が形成された領域に配置される。この後、結晶シリコン膜4aのソース/ドレイン領域9に接続する配線(図示せず)などを形成する。
【0035】
第1実施形態では、上記のように、非晶質シリコン膜4を覆うように形成された吸収膜6の所定領域上に反射抑制膜7を形成するとともに、吸収膜6の反射抑制膜7が形成された領域および吸収膜6の反射抑制膜7が形成されていない領域に基本波YAGレーザーを照射することにより吸収膜6を発熱させることによって、吸収膜6の反射抑制膜7を形成した所定領域では、基本波YAGレーザーの吸収率が向上するのに伴って発熱量が増加する。これにより、非晶質シリコン膜4の吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた領域を、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた領域よりもより高い温度に加熱することができる。このため、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた外側の領域から、吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた内側の領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができる。これにより、非晶質シリコン膜4の外側から内側に向かって柱状結晶が成長するとともに、両側から成長した柱状結晶が非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置で会合する。このため、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置を反射抑制膜7の中央部近傍の位置に制御することができる。これにより、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するとともに、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして不純物を結晶シリコン膜4aにイオン注入することにより一対のソース/ドレイン領域9とチャネル領域10とを形成することによって、チャネル領域10が柱状結晶で構成され、チャネル領域10内のキャリアの移動方向を横切る粒界は、チャネル領域10の中央部近傍の位置に制御された結晶粒界帯8のみである結晶シリコン膜4aを得ることができる。このため、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置のばらつきを抑制することができる。その結果、ゲート電極6aと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10を含む結晶シリコン膜4aとによって形成されたTFTの性能の均一性を向上させることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた外側の領域から、吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた内側の領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができるので、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の所定の位置において非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも高い温度になるように非晶質シリコン膜4を加熱することによって、その所定の位置よりも内側の領域を非晶質シリコン膜7の融点(約1414℃)よりも高い温度にすることができる。これにより、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も溶融することができる。このため、その後、冷却に伴って溶融した非晶質シリコン膜4が結晶化する際に、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域から内側に向かって大きなサイズの柱状結晶を成長させることができる。これにより、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。このため、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するとともに、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして不純物を結晶シリコン膜4aにイオン注入することにより一対のソース/ドレイン領域9とチャネル領域10とを形成することによって、ゲート電極6aの端部に対応するチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが配置されるのを抑制することができる。これにより、微結晶シリコンの存在により生じるキャリアトラップ準位がTFTのチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面近傍に形成されるのを抑制することができる。このため、キャリアトラップ準位がTFTのチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面近傍に形成されることにより生じるTFTの動作不良を抑制することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いることによって、連続発振レーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、レーザービームの高速走査を行うことができるので、大きな面積を均一で、かつ、短時間で照射して加熱することができる。これにより、生産性(スループット)を向上させることができる。また、連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーのようにビーム強度がばらつくことがないので、加熱を均一に行うことができる。また、連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、連続して照射することができるので、基板内の任意の点における加熱時間を増加させることができる。これにより、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いる場合に比べて、欠陥の少ない高品質の結晶をより大きなサイズに成長させることができるので、結晶シリコン膜4aの結晶性を向上させることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、予め、反射抑制膜7をゲート電極6aの形状に対応する形状に形成するとともに、非晶質シリコン膜4の結晶化後に、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりTFTのゲート電極6aを形成することによって、吸収膜6をエッチングしてTFTのゲート電極6aを形成する際に、別途マスクを形成する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0039】
なお、図10および図11には、第1実施形態による半導体装置の製造プロセスの効果を説明するための比較例が示されている。結晶シリコン膜中の柱状結晶の結晶粒界帯の位置をチャネル領域の中央部近傍の位置に制御するには、以下のような製造プロセスも考えられる。すなわち、図10に示すように、ゲート絶縁膜5上にパターニングされたゲート電極6aを形成するとともに、図3に示した第1実施形態による反射抑制膜7を形成することなく、ゲート電極6aおよびゲート絶縁膜5上に連続発振型の基本波YAGレーザーを照射する。なお、この際のレーザーの照射条件は、レーザーパワーが約340Wであること以外は、上記第1実施形態によるレーザーの照射条件と同様である。これにより、ゲート電極6a(吸収膜)が発熱するので、その熱を利用して、非晶質シリコン膜14を溶融させる。
【0040】
この際、図10に示すように、非晶質シリコン膜14の両端部側のゲート電極6aによって覆われていない領域から、内側のゲート電極6aによって覆われた領域に向かって温度が上昇する温度勾配が形成される。これにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aに対応する領域は、約1000℃〜約1800℃に加熱される。また、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部よりも外側に対応する領域は、約200℃〜約1000℃に加熱される。
【0041】
これにより、この比較例では、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部よりも内側の領域において、非晶質シリコン膜14の融点よりも高い温度(約1400℃〜約1800℃)に加熱された領域が溶融する。一方、非晶質シリコン膜14の溶融された領域の外側の領域は、非晶質シリコン膜14の融点(約1414℃)よりも低い温度(約200℃〜約1400℃)になるので、溶融しない。そして、この非晶質シリコン膜14の溶融しない領域中の約900℃〜約1400℃の温度になる領域では、固相成長により微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。そして、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部に対応する領域は、約1000℃になるので、この領域には、固相成長による微結晶シリコンが形成される。また、固相成長により微結晶シリコンが形成された領域の外側の約200℃〜約900℃になる領域は結晶化されない。これにより、この領域では、非晶質が維持される。
【0042】
そして、レーザービームが通過した後、冷却が行われる。この冷却に伴って、図11に示すように、上記第1実施形態と同様、急冷による微結晶シリコンを種結晶として内側に向かって両側からシリコンの柱状結晶が成長する。そして、両側から内側に向かって成長したシリコンの柱状結晶は、最終的に、ゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置で会合する。これにより、結晶シリコン膜14aのゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置にシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8が形成される。この後、上記第1実施形態と同様、ゲート電極6aをマスクとして不純物をイオン注入することにより、結晶シリコン膜14aに一対のソース/ドレイン領域9と、チャネル領域10とを形成する。これにより、結晶シリコン膜14aのチャネル領域10の中央部近傍にシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8が形成される。
【0043】
上記のように、図10および図11に示した比較例による製造方法でも、上記第1実施形態による製造方法と同様、結晶シリコン膜14a中のシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8の位置をチャネル領域10の中央部近傍の位置に制御することは可能である。しかしながら、この比較例による製造方法では、図11に示すように、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるので、その接合界面11にキャリアトラップ準位が形成される。これにより、TFTの性能が低下したり、TFTの動作不良が発生するという不都合が生じる。しかしながら、図9に示した第1実施形態による結晶シリコン膜4aでは、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンは形成されないので、上記の比較例による不都合は生じない。これにより、第1実施形態による半導体装置の製造方法は、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置をチャネル領域10の中央部近傍に制御してTFTの性能の均一性を向上しながら、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるのを抑制してTFTの動作不良の発生を抑制するのに有効であることが判明した。
【0044】
なお、上記の比較例による構成を用いて、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるのを抑制するために、照射するレーザービームのパワーを増大させて、より加熱するか、または、基板自体を何らかの方法で別途加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍の外側の領域まで溶融させることも考えられる。しかしながら、レーザービームのパワーを増大させて、より加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍よりも外側の領域まで溶融させようとすると、非晶質シリコン膜14の中央部近傍の最も温度が高くなる領域が非晶質シリコン膜14の沸点(約2642℃)付近まで加熱される。この場合には、非晶質シリコン膜14の中央部近傍の領域が蒸発して消失する(アブレーション)という不都合が生じる場合がある。一方、基板自体を何らかの方法で別途加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍の外側の領域までを溶融させる場合には、基板自体を約1000℃付近の温度まで加熱する必要があるため、基板をそのような高温(約1000℃)に加熱するのは実質上困難である。
【0045】
(第2実施形態)
図12〜図14は、本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。次に、図12〜図14を参照して、第2実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、図12〜図14では、シリコンの柱状結晶が結晶シリコン膜4aの厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、結晶シリコン膜4aの厚みは非常に小さいので、結晶シリコン膜4aの厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、結晶シリコン膜4aの厚み方向の中間領域に柱状結晶の結晶シリコン膜4aの表面と平行に延びる粒界は形成されない。
【0046】
この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成した一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)を形成する。この第2実施形態による半導体装置の製造方法では、図1〜図7に示した上記第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様のプロセスを行う。その後、この第2実施形態では、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、反射抑制膜7の柱状結晶の結晶粒界帯8に対応する中央部近傍の所定領域を除去することにより、一対の反射抑制膜7aが所定の間隔を隔てて形成される。
【0047】
そして、第2実施形態では、図13に示すように、反射抑制膜7aをマスクとして、Moからなる吸収膜6をエッチングすることにより、一対の反射抑制膜7aに対応する一対のゲート電極6bを形成する。これにより、一対のゲート電極6bは、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成される。また、一対のゲート電極6bは、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8上には形成されない。
【0048】
次に、図14に示すように、一対の反射抑制膜7aおよび一対のゲート電極6bをマスクとして、結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際の注入条件は、上記第1実施形態による注入条件と同様である。そして、上記第1実施形態と同様、RTA法により結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させることにより、外側の一対のソース/ドレイン領域9aと、中間のソース/ドレイン領域9bとが形成される。そして、この中間のソース/ドレイン領域9bに柱状結晶の結晶粒界帯8が含まれる。また、一対のゲート電極6b下には、それぞれ、外側のソース/ドレイン領域9aと、中間のソース/ドレイン領域9bとに挟まれたチャネル領域10aが形成される。そして、Moからなる一対のゲート電極6bと、SiO2からなる層間絶縁膜(ゲート絶縁膜)5と、一対のソース/ドレイン領域9a、中間のソース/ドレイン領域9bおよび一対のチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4aとによって、デュアルゲートトランジスタ(TFT)が形成される。第2実施形態による上記以外の製造プロセスは、上記第1実施形態による製造プロセスと同様である。
【0049】
第2実施形態では、上記のように、吸収膜6の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置に対応する領域を除去することにより、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極6bを形成した後、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域を、一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の中間のソース/ドレイン領域9bとして用いることによって、一対のゲート電極6bを有するTFTのチャネル領域10aに柱状結晶の結晶粒界帯8が配置されるのを抑制することができる。これにより、そのTFTの駆動時にキャリアがチャネル領域10aに配置された柱状結晶の結晶粒界帯8を介して移動するのを抑制することができる。このため、柱状結晶の結晶粒界帯8を介してキャリアが移動することに起因してキャリアの移動度が低下するのを抑制することができる。これにより、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、第2実施形態では、柱状結晶の結晶粒界帯8の位置を結晶シリコン膜4aに形成された中間のソース/ドレイン領域9b内の所定の位置に制御することができるので、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置のばらつきを抑制することができる。その結果、一対のゲート電極6bと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9a、中間のソース/ドレイン領域9bおよび一対のチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4aとによって形成されたデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能の均一性を向上させることができる。
【0051】
また、第2実施形態では、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、反射抑制膜7の中央部近傍の所定領域を除去する際のフォトマスクの位置ずれなどに起因して、一対の反射抑制膜7aのサイズが異なって形成された場合にも、一対の反射抑制膜7aの合計のサイズは一定になる。これにより、このサイズの異なる一対の反射抑制膜7aをマスクとして吸収膜6をエッチングすることによって、一対のゲート電極6bのゲート長が異なって形成された場合にも、一対のゲート電極6bのゲート長の合計は一定になる。このため、このような場合にも、一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能の均一性は保持される。
【0052】
第2実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0053】
図15は、第2実施形態の変形例による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。この第2実施形態の変形例では、上記第2実施形態と異なり、吸収膜6から形成した2つのゲート電極6bを用いて、2つのTFTを個別に形成する。この第2実施形態の変形例では、図14に示した第2実施形態による製造プロセスによって、結晶シリコン膜4aにイオン注入を行った後、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、図14に示した第2実施形態による結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域と、ゲート絶縁膜5のその結晶粒界帯8を含む領域に対応する領域とを除去する。これにより、ゲート絶縁膜5が2つのゲート絶縁膜5aに分割される。また、能動層(活性層)としての結晶シリコン膜4aが2つの結晶シリコン膜4bに分割される。これに伴って、中間のソース/ドレイン領域9bも2つのソース/ドレイン領域9cに分割される。上記のようにして、ゲート電極6bと、ゲート絶縁膜5aと、ソース/ドレイン領域9a、9cおよびチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4bとをそれぞれ備えた2つのTFTが形成される。なお、この2つのTFTを構成する結晶シリコン膜4bのチャネル領域10aは、柱状結晶の結晶粒界帯8を含むことなく形成される。
【0054】
この第2実施形態の変形例では、上記のように、吸収膜6の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置に対応する領域を除去することにより、結晶シリコン膜4aの上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極6bを形成した後、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域を除去することにより2つの結晶シリコン膜4bを形成することによって、結晶粒界帯8を含まない2つの結晶シリコン膜4aと、その2つの結晶シリコン膜4aにそれぞれ対応する2つのゲート電極6bとを有する2つのTFTを形成することができる。これにより、この2つのTFTでは、柱状結晶の結晶粒界部8による影響がなくなるので、優れた性能を有する2つのTFTを形成することができる。
【0055】
(第3実施形態)
図16〜図18は、本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。次に、図16〜図18を参照して、第3実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、図16〜図18では、シリコンの柱状結晶が結晶シリコン膜4aの厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、結晶シリコン膜4aの厚みは非常に小さいので、結晶シリコン膜4aの厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、結晶シリコン膜4aの厚み方向の中間領域に柱状結晶の結晶シリコン膜4aの表面と平行に延びる粒界は形成されない。
【0056】
この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するのに先立って、結晶シリコン膜4aに不純物を導入するとともに、その導入した不純物をレーザーを用いて電気的に活性化させる。具体的には、この第3実施形態では、図1〜図7に示した上記第1実施形態と同様のプロセスにより、吸収膜6および反射抑制膜7を形成する。その後、図16に示すように、反射抑制膜7をマスクとして結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、P+(リンイオン)を注入エネルギ:約250keV、ドーズ量:約3×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、ソース/ドレイン領域9をLDD構造にするために、別途、結晶シリコン膜4aにP+(リンイオン)を注入エネルギ:約250keV、ドーズ量:約5×1013ions/cm2の条件下でイオン注入する。一方、pチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、B+(ホウ素イオン)を注入エネルギ:約85keV、ドーズ量:約2.5×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、この第3実施形態における不純物のイオン注入工程では、上記第1および第2実施形態と異なり、吸収膜6を突き抜けて不純物を結晶シリコン膜4aまで到達させる必要があるので、第1および第2実施形態のイオン注入工程に比べて、注入エネルギを大きくするとともに、ドーズ量を多く設定している。また、この第3実施形態によるイオン注入の際、同時に、液晶表示装置や有機EL表示装置の各画素に配置される補助容量の電極(図示せず)などに不純物を導入することも可能である。
【0057】
この後、第3実施形態では、図16に示すように、上方から反射抑制膜7および吸収膜6に連続発振型の基本波YAGレーザーを照射する。この際のレーザーの照射条件は、レーザーパワーが約180Wであること以外は、上記第1実施形態による非晶質シリコン膜4の結晶化の際に用いたレーザーの照射条件と同様である。このレーザー照射により、吸収膜6が発熱するので、その熱を利用して、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させる。この際、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて、レーザーの吸収率が向上するので、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて発熱量が増加する。これにより、結晶シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域は、最高で約1350℃まで加熱される一方、反射抑制膜7によって覆われていない領域は、約1100℃以上の温度に加熱される。
【0058】
このため、結晶シリコン膜4aに導入された不純物が電気的に活性化されることによって、結晶シリコン膜4aに一対のソース/ドレイン領域9が形成される。また、結晶シリコン膜4aに、一対のソース/ドレイン領域9に挟まれたチャネル領域10が形成される。なお、結晶シリコン膜4aが加熱される際に、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7に対応する領域(チャネル領域10)は、最高で約1350℃まで加熱されるが、結晶シリコン膜4aの融点(約1414℃)以上の温度まで加熱されないので溶融することはない。また、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7に対応する領域(チャネル領域10)が最高で約1350℃まで加熱されることによって、結晶シリコン膜4aの結晶性が向上する。また、この際、ゲート絶縁膜5の反射抑制膜7に対応する領域も同様に加熱されることにより、SiO2膜からなるゲート絶縁膜5を緻密化することができる。
【0059】
次に、図18に示すように、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによってゲート電極6aを形成する。上記のようにして、ゲート電極6aと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10を含む結晶シリコン膜4aとによって、TFTが形成される。
【0060】
第3実施形態の上記以外の製造プロセスは、上記第1実施形態による製造プロセスと同様である。
【0061】
第3実施形態では、上記のように、結晶シリコン膜4aに不純物を導入した後、レーザーを反射抑制膜7および吸収膜6に再度照射することにより不純物を電気的に活性化することによって、非晶質シリコン膜4を結晶化させる際に用いたレーザー照射装置を用いて、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させることができる。これにより、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させるために、レーザー照射装置と異なる加熱装置を別途用いて、結晶シリコン膜4aを加熱する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0062】
また、第3実施形態では、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりTFTのゲート電極6aを形成するのに先立って、レーザーを反射抑制膜7および吸収膜6に再度照射することにより不純物を電気的に活性化させることによって、結晶シリコン膜4aの不純物が導入された領域を吸収膜6で覆った状態で加熱することができる。これにより、結晶シリコン膜4aの不純物が導入された領域を均一かつ効率的に加熱することができるので、結晶シリコン膜4aに導入された不純物を良好に電気的に活性化することができる。また、結晶シリコン膜4a中の不純物を活性化させる際に、レーザー照射により加熱することによって、RTA法を用いて加熱する場合に比べて、短時間で高温まで加熱することができる。これにより、RTA法を用いる場合に比べて、不純物の活性化率をより向上させることができるとともに、結晶シリコン膜4aの結晶性およびゲート絶縁膜5の緻密さをより向上させることができる。
【0063】
第3実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0064】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
たとえば、上記実施形態では、結晶シリコン膜にソース/ドレイン領域を形成する際に、イオン注入により結晶シリコン膜に不純物を導入したが、本発明はこれに限らず、イオン注入以外の方法により結晶シリコン膜に不純物を導入してよい。たとえば、イオンドーピング法などにより結晶シリコン膜中に不純物を導入してもよい。
【0066】
また、上記第2実施形態では、反射抑制膜の中央部のみをエッチングしたが、本発明はこれに限らず、反射抑制膜の中央部をエッチングする際に、同時に、反射抑制膜の両外側部をエッチングしてもよい。このようにすれば、この後、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより形成した一対のゲート電極の外側の端部を、結晶シリコン膜中の微結晶シリコンの形成領域に対して、より内側に配置することができるので、確実に、チャネル領域およびその近傍領域に微結晶シリコンが含まれないようにすることができる。また、反射抑制膜の両外側部もエッチングすることにより、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングして形成する一対のゲート電極のサイズをより一定にすることができる。
【0067】
また、上記第2実施形態では、吸収膜のエッチング後に結晶化シリコン膜に導入した不純物をRTA法を用いて電気的に活性化したが、本発明はこれに限らず、第2実施形態において、上記第3実施形態と同様のプロセスにより、吸収膜をエッチングするのに先立って結晶シリコン膜に導入した不純物をレーザー照射により電気的に活性化させてもよい。このように構成すれば、上記第2実施形態による半導体装置の製造方法においても、上記第3実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記第3実施形態では、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させたが、本発明はこれに限らず、上記以外の方法を用いて、結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させてもよい。たとえば、RTA法を用いて結晶シリコン膜を加熱することにより、結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させてもよい。
【0069】
また、上記第2実施形態では、2つのゲート電極間に位置する結晶シリコン膜の結晶粒界帯を含む領域を除去することにより、2つの結晶シリコン膜を形成したが、本発明はこれに限らず、2つのゲート電極間に位置する結晶シリコン膜の結晶粒界帯を含まない領域を除去することにより、2つの結晶シリコン膜を形成してもよい。
【0070】
また、上記第2実施形態では、一対のゲート電極を有するデュアルゲートトランジスタを形成したが、本発明はこれに限らず、上記第2実施形態によるプロセスによって形成された2つのTFTをそれぞれ別個のTFTとして用いてもよい。この場合、2つのTFTをそれぞれ異なる導電型に形成してもよい。また、2つのTFTの各々のゲート電極に異なる信号を入力するように構成してもよい。また、上記第2実施形態によるプロセスによって形成した2つのTFTでは、中間のソース/ドレイン領域を共用しているので、2つのTFTを個別に形成する場合と異なり、2つのTFTに個別にソース/ドレイン領域を形成するためのエッチング工程や、2つのTFTの電位が等しくなるソース/ドレイン領域を接続するための配線を省略または共通化することができるため、歩留まりの向上と集積度の向上が期待できる。なお、このような2つのTFTは、nチャネルトランジスタおよびpチャネルトランジスタからなるCMOS回路や、2つのTFTのそれぞれのソース/ドレイン領域の一方が同電位となる種々の回路において有効に適用することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、レーザー照射により加熱して結晶化させる半導体膜として非晶質膜を用いているが、本発明はこれに限らず、結晶化させる前の半導体膜の状態は非晶質でなくてもよい。すなわち、どのような結晶性を有する半導体膜に対しても、本発明のプロセスによるレーザー照射を行えば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本発明を適用する半導体膜として、微結晶膜、等方性結晶膜および異方性結晶膜などの種々の結晶性を有する半導体膜を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させるプロセスを説明するための図である。
【図4】図3に対応する第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させた状態を示した平面図である。
【図5】図4に対応する第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させた後、冷却することにより結晶が成長するプロセスを示した平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法の効果を説明するための比較例による非晶質シリコン膜を溶融させるプロセスを説明するための図である。
【図11】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法の効果を説明するための比較例を説明するための断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態の変形例による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ガラス基板(基板)
4 非晶質シリコン膜(半導体膜)
4a 結晶シリコン膜(結晶膜)
6 吸収膜
6a、6b ゲート電極
7、7a 反射抑制膜
8 結晶粒界帯
9、9a、9b、9c ソース/ドレイン領域
10 チャネル領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などの半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置などの画素駆動用トランジスタとして、結晶シリコン膜を能動層として用いたTFTが採用されている。そして、従来では、連続発振レーザー(CWレーザー)を吸収膜に照射することにより、吸収膜から発生する熱を利用して非晶質シリコン膜を結晶化させることによって、TFTの能動層としての結晶シリコン膜を形成する半導体装置の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された半導体装置の製造方法では、非晶質シリコン膜の全面を覆うように吸収膜を形成するとともに、その吸収膜から発生する熱により非晶質シリコン膜を加熱して溶融させた後、冷却することにより結晶化する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の半導体装置の製造方法では、非晶質シリコン膜の全面を覆うように形成した吸収膜からの熱により非晶質シリコン膜を加熱しているので、基板上の全面または非晶質シリコン膜の全面で、ほぼ同じ温度勾配が生じる。これにより、その後、冷却に伴って非晶質シリコン膜の溶融した領域が結晶化する際に、結晶粒界が結晶シリコン膜中の種々の位置に形成されるという不都合がある。このため、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画素駆動用トランジスタとして多数のTFTを基板上に形成する場合に、そのTFTの能動層としての結晶シリコン膜において、結晶粒界の位置がばらつくという不都合がある。これにより、能動層としての結晶シリコン膜中の結晶粒界の位置のばらつき(たとえば、チャネル領域における結晶粒界の有無)に起因して、TFTの性能の均一性が低下するという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体装置の性能の均一性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における半導体装置の製造方法は、基板上に半導体膜を形成する工程と、半導体膜上に吸収膜を形成する工程と、吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成する工程と、反射抑制膜および吸収膜にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して半導体膜を結晶化することによって、複数の結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程とを備えている。
【0007】
この一の局面による半導体装置の製造方法では、上記のように、吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成するとともに、吸収膜の反射抑制膜の形成された領域、および、吸収膜の反射抑制膜の形成されていない領域にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させることによって、吸収膜の反射抑制膜を形成した所定領域では、レーザーの吸収率が向上するので発熱量が増加する。これにより、半導体膜の吸収膜および反射抑制膜が形成された所定領域に対応する領域を、半導体膜の吸収膜のみが形成された領域に対応する領域よりもより高い温度に加熱することができる。このため、半導体膜の吸収膜のみが形成された領域に対応する領域から、吸収膜および反射抑制膜が形成された所定領域に対応する領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができる。これにより、半導体膜の溶融後に結晶化する場合に、半導体膜の吸収膜および反射抑制膜が形成された領域の端部側から中央部に向かって結晶を成長させることができるので、複数の結晶が会合することにより形成される結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御することができる。このため、結晶膜中の結晶粒界部の位置のばらつきを抑制することができるので、結晶膜を能動層として用いた半導体装置を形成する場合に、半導体装置の性能の均一性を向上させることができる。
【0008】
また、半導体膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の所定の位置において半導体膜の融点よりも高い温度になるようにレーザー照射により半導体膜を加熱すれば、反射抑制膜が形成された所定領域側は、半導体膜の融点よりも高い温度になる。これにより、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も溶融させることができる。このため、その後、冷却に伴って溶融した半導体膜が結晶化する場合に、半導体膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって結晶を成長させることができる。これにより、結晶膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって成長した大きなサイズの結晶を形成することができる。このため、結晶膜の反射抑制膜の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。これにより、吸収膜の反射抑制膜に対応する領域を用いてゲート電極を形成した後、結晶膜のゲート電極下の領域にチャネル領域を形成するとともに、そのチャネル領域を挟むように一対のソース/ドレイン領域を結晶膜に形成してトランジスタを形成する場合に、ゲート電極の端部に対応するチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に微結晶が配置されるのを抑制することができる。このため、微結晶の存在により生じるキャリアトラップ準位がトランジスタのチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に形成されるのを抑制することができる。これにより、キャリアトラップ準位がトランジスタのチャネル領域とソース/ドレイン領域との接合界面近傍に形成されることによって生じるトランジスタの動作不良を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程は、結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御する工程を含む。このように構成すれば、容易に、結晶粒界部の位置を反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御することができるので、容易に、結晶膜中の結晶粒界部の位置のばらつきを抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、レーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して半導体膜を結晶化する工程は、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域もレーザーの照射により半導体膜の融点よりも高い温度まで加熱する工程を含む。このように構成すれば、容易に、半導体膜の反射抑制膜に対応する領域のみならず、反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も溶融させることができる。これにより、容易に、結晶膜の反射抑制膜の端部近傍の外側の領域から反射抑制膜に対応する領域に向かって成長した大きなサイズの結晶を形成することができるので、容易に、結晶膜の反射抑制膜の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、基板上に半導体膜を形成する工程は、半導体膜を島状に形成する工程を含み、吸収膜を形成する工程は、島状の半導体膜の上方を覆うように吸収膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、島状の半導体膜の上方を覆うように吸収膜を形成することによって、反射抑制膜および吸収膜にレーザーを照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して吸収膜に覆われた半導体膜の全体を加熱することができる。これにより、半導体膜の一部の領域の上方のみに吸収膜を形成する場合と異なり、容易に、半導体膜の全領域を結晶化することができる。
【0012】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、吸収膜の結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極を形成する工程をさらに備える。そして、一対のゲート電極を形成した後、結晶膜の結晶粒界部を含む領域を、一対のゲート電極を有するトランジスタの一対のゲート電極間に位置する中間のソース/ドレイン領域として用いる。このように構成すれば、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極を有するトランジスタを形成することができるとともに、そのトランジスタの中間のソース/ドレイン領域に結晶粒界部を配置することができる。これにより、トランジスタのチャネル領域に結晶粒界部が配置されるのを抑制することができるので、トランジスタの駆動時にキャリアがチャネル領域に配置された結晶粒界部を横切って移動するのを抑制することができる。このため、結晶粒界部を横切ってキャリアが移動することに起因したキャリアの移動度の低下を抑制することができる。その結果、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極を有するとともに、優れた性能を有するトランジスタを形成することができる。
【0013】
上記一の局面による半導体装置の製造方法において、好ましくは、吸収膜の結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極を形成する工程と、その後、結晶膜の2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程とをさらに備える。このように構成すれば、2つの結晶膜と、その2つの結晶膜にそれぞれ対応するゲート電極とを有する2つのトランジスタをそれぞれ形成することができる。また、吸収膜の結晶粒界部に対応する領域を除去して、2つのゲート電極を形成することにより、2つのトランジスタのそれぞれのゲート電極に対応するチャネル領域およびその近傍領域に結晶粒界部が含まれないようにすることができる。これにより、2つのトランジスタにおいて、結晶粒界部による影響をなくすことができるので、優れた性能を有する2つのトランジスタを形成することができる。なお、上記の結晶膜の2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程において、結晶膜の結晶粒界部を含む領域を除去すれば、容易に、2つのトランジスタにおいて、結晶粒界部による影響をなくすことができる。
【0014】
なお、本発明では、以下のような構成も考えられる。すなわち、上記一の局面による半導体装置の製造方法において、レーザーは、連続発振レーザーを含んでいてもよい。このように構成すれば、連続発振レーザーは、パルスレーザーと異なり、レーザービームの高速走査を行うことができるので、大きな面積を均一で、かつ、短時間で照射して加熱することができる。これにより、生産性(スループット)を向上させることができる。また、連続発振レーザーは、パルスレーザーのようにビーム強度がばらつくことがないので、加熱を均一に行うことができる。さらに、連続発振レーザーは、パルスレーザーと異なり、連続して照射することができるので、パルスレーザーに比べて加熱時間を増加させることができる。これにより、パルスレーザーを用いる場合に比べて、欠陥の少ない高品質の結晶をより大きなサイズに成長させることができるので、結晶膜の結晶性を向上させることができる。なお、この場合において、連続発振レーザーは、基本波YAGレーザーなどの赤外レーザーを含んでいてもよい。
【0015】
また、上記一の局面による半導体装置の製造方法において、結晶膜は、トランジスタの能動層であり、半導体膜の結晶化後に、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより、トランジスタのゲート電極を形成する工程をさらに備えていてもよい。このように構成すれば、吸収膜をエッチングしてトランジスタのゲート電極を形成する場合に、別途エッチングマスクを形成する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0016】
また、上記トランジスタのゲート電極を形成する工程を含む構成において、反射抑制膜を形成する工程は、ゲート電極の形状に対応する形状に反射抑制膜を形成する工程を含んでいてもよい。このように構成すれば、容易に、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより、ゲート電極を形成することができる。
【0017】
また、上記トランジスタのゲート電極を形成する工程を含む構成において、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることによりトランジスタのゲート電極を形成する工程に先立って、半導体膜の結晶化後に、反射抑制膜をマスクとして結晶膜に不純物を導入した後、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に再度照射することにより不純物を電気的に活性化することによって、結晶膜にソース/ドレイン領域を形成する工程をさらに備えていてもよい。このように構成すれば、非晶質シリコン膜を結晶化させる際に用いたレーザー照射装置を用いて、結晶膜に導入した不純物を電気的に活性化させることができる。これにより、結晶膜に導入した不純物を電気的に活性化させるために、結晶化に用いたレーザー照射装置と異なる加熱装置を別途用いて、結晶膜を加熱する必要がないので、製造プロセスが煩雑になるのを抑制することができる。また、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることによりトランジスタのゲート電極を形成する工程に先立って、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に再度照射することにより不純物を電気的に活性化させることによって、結晶膜の不純物が導入された領域を吸収膜で覆った状態で加熱することができる。これにより、結晶膜の不純物が導入された領域を均一かつ効率的に加熱することができるので、結晶膜に導入された不純物を良好に電気的に活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1〜図9は、本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための図である。以下、図1〜図9を参照して、第1実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、この第1実施形態では、第1実施形態による半導体装置の一例としてのTFT(薄膜トランジスタ)を形成する半導体装置の製造方法について説明する。
【0020】
まず、図1に示すように、プラズマCVD法を用いて、ガラス基板1上に約300nmの厚みを有するSiO2膜2を形成する。なお、ガラス基板1は、本発明の「基板」の一例である。その後、プラズマCVD法を用いて、SiO2膜2上に約20nmの厚みを有するSiNx膜3を形成する。このように形成したSiO2膜2およびSiNx膜3は、ガラス基板1への熱の伝達を緩和するためのバッファ層として機能する。その後、約500℃の窒素(N2)雰囲気中において、約2時間の脱水素アニール処理を行う。
【0021】
そして、減圧CVD法を用いて、SiNx膜3上に約50nmの厚みを有する非晶質シリコン膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、その非晶質シリコン膜(図示せず)をパターニングすることにより複数の島状化された非晶質シリコン膜4を形成する。なお、この非晶質シリコン膜4を島状化する際のエッチングには、SF6をエッチングガスとして用いたRIE(Reactive Ion Etching)法を用いる。なお、図1では、島状化された非晶質シリコン膜4を1つのみ示しているが、実際には、島状化された非晶質シリコン膜4が所定の間隔を隔てて配置されている。この島状化された非晶質シリコン膜4は、後にTFTの能動層(活性層)として用いられる。なお、この非晶質シリコン膜4は、本発明の「半導体膜」の一例である。
【0022】
この後、プラズマCVD法を用いて、非晶質シリコン膜4およびSiNx膜3上に約100nmの厚みを有するSiO2膜からなるゲート絶縁膜5を形成する。この際、ゲート絶縁膜5は、島状化された非晶質シリコン膜4を覆うように形成する。そして、スパッタ法を用いて、ゲート絶縁膜5上に約200nmの厚みを有するMo膜からなる吸収膜6を形成する。
【0023】
この際、第1実施形態では、吸収膜6を、島状化された非晶質シリコン膜4の上方の全体を覆うように形成する。この後、第1実施形態では、プラズマCVD法を用いて、吸収膜6上に約160nmの厚みを有するSiO2膜(図示せず)を形成した後、そのSiO2膜をフォトリソグラフィ技術およびHF水溶液によるエッチング技術を用いて後述するゲート電極6aの形状に対応する形状にパターニングすることにより、吸収膜6の所定領域上にSiO2膜からなる反射抑制膜7を形成する。この際、反射抑制膜7は、非晶質シリコン膜4のチャネル領域となる領域上に形成される。
【0024】
次に、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の結晶化を行う。具体的には、図2に示すように、ArまたはN2などの不活性ガス雰囲気中において、約200℃に加熱しながら、連続発振型の基本波YAGレーザーを上方から反射抑制膜7および吸収膜6に照射する。この場合のレーザーの照射条件は、レーザーパワー:約170W、走査速度:約700mm/s(基板相対速度)である。また、このレーザー照射には、約0.1mm(ビーム長:走査方向に平行な方向の長さ)×約3mm(ビーム幅:走査方向に直交する方向の長さ)の照射範囲を有するレーザービームを用いる。このレーザー照射により、吸収膜6が発熱するので、その熱を利用して、非晶質シリコン膜4を溶融させる。
【0025】
この際、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられていない領域のレーザーの吸収率は、約30%であるのに対して、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、レーザーの反射率が低減されることによりレーザーの吸収率が約60%に向上する。これにより、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて、発熱量が増加する。このため、非晶質シリコン膜4の吸収膜6および反射抑制膜7によって覆われた領域は、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみによって覆われた領域よりもより高温に加熱される。これにより、図3に示すように、非晶質シリコン膜4の両端部側の吸収膜6のみによって覆われた領域から、内側の吸収膜6および反射抑制膜7によって覆われた領域に向かって温度が上昇する温度勾配が形成される。この際、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域は、約1500℃〜約1800℃に加熱される。また、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域は、約1400℃〜約1500℃に加熱されるとともに、さらに外側の領域は、約1000℃〜約1400℃に加熱される。
【0026】
すなわち、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも高い温度まで加熱される。これにより、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も溶融する。なお、非晶質シリコン膜4の溶融した領域のさらに外側の領域は、非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも低い温度(約1000℃〜約1400℃)になるので、溶融しない。そして、この非晶質シリコン膜4の溶融しない領域では、図3および図4に示すように、固相成長により微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。
【0027】
そして、レーザービームが反射抑制膜7および吸収膜6上を通過した後、冷却が行われる。この冷却に伴って、非晶質シリコン膜4の溶融した領域において横方向の結晶成長が行われる。この横方向の結晶成長は、図3に示した温度勾配が形成されることによって行われる。すなわち、結晶は、温度の低い方から高い方へ向かって成長するので、温度が低下する方向(熱流の方向)に逆らって成長する。これにより、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の外側から内側に向かって横方向に結晶が成長する。具体的には、図5および図6に示すように、まず、非晶質シリコン膜4の溶融した領域の非溶融領域との境界部近傍に急冷による微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。なお、この急冷による微結晶シリコンは、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍(ソース/ドレイン領域とチャネル領域との界面になる領域)よりも外側の領域に形成される。
【0028】
そして、急冷による微結晶シリコンを種結晶として、内側に向かって両側からシリコンの柱状結晶が成長する。なお、図6〜図9では、シリコンの柱状結晶が非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚みは非常に小さいので、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、非晶質シリコン膜4(結晶シリコン膜4a)の厚み方向の中間領域に柱状結晶の非晶質シリコン膜4と平行に延びる粒界は形成されない。そして、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部に対応する領域には、柱状結晶が形成されるとともに、微結晶は形成されない。そして、両側から内側に向かって成長したシリコンの柱状結晶は、図7に示すように、最終的に、反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置で会合する。これにより、反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置に、シリコンの複数の柱状結晶の粒界が連続した結晶粒界帯8が形成されるとともに、結晶成長が終了する。なお、この結晶粒界帯8は、本発明の「結晶粒界部」の一例である。また、結晶粒界帯8は、柱状結晶の成長方向に対してほぼ直交する方向に延びるように形成される。上記のようにして、非晶質シリコン膜4が結晶化されることにより、柱状結晶の結晶粒界帯8の位置が反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置に制御された結晶シリコン膜4aが形成される。なお、この結晶シリコン膜4aは、本発明の「結晶膜」の一例である。
【0029】
また、第1実施形態では、反射抑制膜7からの熱に起因する温度勾配とは別に、レーザービームの走査により、レーザービームの走査方向またはビーム形状に応じた温度勾配が形成される。この温度勾配の形成される領域の大きさは、大体レーザービームのビームサイズ程度になる。レーザービームのビーム長(走査方向に平行な方向の長さ、短辺)は、約0.1mm(約100μm)であり、温度勾配の領域の大きさは、約0.1mmである。一方、反射抑制膜7を用いて形成される温度勾配の領域の大きさは、数μm〜数10μmである。すなわち、レーザービームの走査により形成される温度勾配は、反射抑制膜7により形成される温度勾配の1/10程度以下になる。このため、レーザービームの走査により生じる温度勾配によって、シリコン膜に柱状結晶を成長させるための温度勾配に影響を与えるとしても、その影響は1/10程度以下になる。したがって、レーザービームの走査により生じる温度勾配が柱状結晶の成長に与える影響は非常に小さく、無視することが可能である。
【0030】
また、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の結晶化に用いる連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、連続して照射されるので、エキシマレーザーなどのパルスレーザーに比べて加熱時間が増加する。具体的には、上記の連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた方法では、所定の照射領域をレーザービームが通過する時間は、10−4sec程度になる。一方、一般的なエキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた方法では、所定の照射領域に対する1回のパルス照射毎の照射時間は10−8sec程度になる。これにより、上記の連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた方法では、一般的なエキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた方法に比べて、加熱時間が104倍程度になる。また、レーザー照射による平均熱拡散距離xは、一般に、x=(2ατ)1/2(α:温度伝達率、τ:加熱時間≒レーザービームの通過時間)の式で表される。したがって、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた場合には、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた場合に比べて、加熱時間(τ)が104倍程度になるので、上記式から、平均熱拡散距離xが102倍程度になることがわかる。これにより、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いた第1実施形態による製造方法では、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いた場合に比べて、結晶を横方向に成長させるための温度勾配が発生する領域を102倍程度広げることができるので、より大きな結晶を形成することができることがわかる。
【0031】
以下の表1にガラス基板1および石英基板の熱的物理定数を示す。また、以下の表2に上記の式と、表1に示した温度伝達率αとを用いて計算した平均熱拡散距離xの計算値を示す。
【0032】
【表1】
次に、第1実施形態では、図8に示すように、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることにより、TFTのゲート電極6aを形成する。この際、反射抑制膜7は、予めゲート電極6aの形状と同じ所定の形状にパターニングされているので、ゲート電極6aは、その所定の形状にパターニングされる。そして、ゲート電極6aは、反射抑制膜7と同じ形状に形成されるので、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8は、ゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置に配置される。また、結晶シリコン膜4aの急冷による微結晶シリコン(μc−Si)と、固相成長による微結晶シリコン(μc−Si)とは、ゲート電極6aの端部近傍よりも外側の領域に配置される。
【0033】
次に、図9に示すように、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして、結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、P+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約2×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、nチャネルトランジスタ(TFT)にLDD構造を形成する場合には、フォトマスクにより結晶シリコン膜4aのLDD形成領域(ゲート電極6a近傍)をマスクした上で上記のイオン注入を行い、その後改めて、結晶シリコン膜4aのLDD形成領域にP+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約3×1013cm−2の条件でイオン注入する。ソース/ドレイン領域9をLDD構造にするために、別途、結晶シリコン膜4aにP+(リンイオン)を注入エネルギ:約100keV、ドーズ量:約3×1013ions/cm2の条件下でイオン注入する。一方、pチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、B+(ホウ素イオン)を注入エネルギ:約35keV、ドーズ量:約1.5×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。
【0034】
この後、図示しない層間絶縁膜を形成した後、RTA(Rapid Thermal Annealing)法により結晶シリコン膜4aを加熱することによって、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させる。これにより、結晶シリコン膜4aに一対のソース/ドレイン領域9を形成する。この際、ゲート電極6a下の一対のソース/ドレイン領域9に挟まれた領域にチャネル領域10が形成される。なお、Moからなるゲート電極6aと、SiO2からなるゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10が形成された結晶シリコン膜4aとによって、TFTが形成される。そして、チャネル領域10は、シリコンの柱状結晶によって構成される。また、ソース/ドレイン領域9は、固相成長による微結晶シリコン(μc−Si)と、急冷による微結晶シリコン(μc−Si)と、シリコンの柱状結晶の端部の一部とによって構成される。また、ソース/ドレイン領域9とチャネル領域10との接合界面11は、結晶シリコン膜4aのシリコンの柱状結晶が形成された領域に配置される。この後、結晶シリコン膜4aのソース/ドレイン領域9に接続する配線(図示せず)などを形成する。
【0035】
第1実施形態では、上記のように、非晶質シリコン膜4を覆うように形成された吸収膜6の所定領域上に反射抑制膜7を形成するとともに、吸収膜6の反射抑制膜7が形成された領域および吸収膜6の反射抑制膜7が形成されていない領域に基本波YAGレーザーを照射することにより吸収膜6を発熱させることによって、吸収膜6の反射抑制膜7を形成した所定領域では、基本波YAGレーザーの吸収率が向上するのに伴って発熱量が増加する。これにより、非晶質シリコン膜4の吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた領域を、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた領域よりもより高い温度に加熱することができる。このため、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた外側の領域から、吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた内側の領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができる。これにより、非晶質シリコン膜4の外側から内側に向かって柱状結晶が成長するとともに、両側から成長した柱状結晶が非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の中央部近傍に対応する位置で会合する。このため、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置を反射抑制膜7の中央部近傍の位置に制御することができる。これにより、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するとともに、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして不純物を結晶シリコン膜4aにイオン注入することにより一対のソース/ドレイン領域9とチャネル領域10とを形成することによって、チャネル領域10が柱状結晶で構成され、チャネル領域10内のキャリアの移動方向を横切る粒界は、チャネル領域10の中央部近傍の位置に制御された結晶粒界帯8のみである結晶シリコン膜4aを得ることができる。このため、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置のばらつきを抑制することができる。その結果、ゲート電極6aと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10を含む結晶シリコン膜4aとによって形成されたTFTの性能の均一性を向上させることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、非晶質シリコン膜4の吸収膜6のみにより覆われた外側の領域から、吸収膜6および反射抑制膜7により覆われた内側の領域に向かって温度が上昇する温度勾配を形成することができるので、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の所定の位置において非晶質シリコン膜4の融点(約1414℃)よりも高い温度になるように非晶質シリコン膜4を加熱することによって、その所定の位置よりも内側の領域を非晶質シリコン膜7の融点(約1414℃)よりも高い温度にすることができる。これにより、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域のみならず、反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域も溶融することができる。このため、その後、冷却に伴って溶融した非晶質シリコン膜4が結晶化する際に、非晶質シリコン膜4の反射抑制膜7の端部近傍の外側の領域から内側に向かって大きなサイズの柱状結晶を成長させることができる。これにより、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7の端部に対応する領域に微結晶が形成されるのを抑制することができる。このため、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するとともに、反射抑制膜7およびゲート電極6aをマスクとして不純物を結晶シリコン膜4aにイオン注入することにより一対のソース/ドレイン領域9とチャネル領域10とを形成することによって、ゲート電極6aの端部に対応するチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが配置されるのを抑制することができる。これにより、微結晶シリコンの存在により生じるキャリアトラップ準位がTFTのチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面近傍に形成されるのを抑制することができる。このため、キャリアトラップ準位がTFTのチャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面近傍に形成されることにより生じるTFTの動作不良を抑制することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、連続発振型の基本波YAGレーザーを用いることによって、連続発振レーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、レーザービームの高速走査を行うことができるので、大きな面積を均一で、かつ、短時間で照射して加熱することができる。これにより、生産性(スループット)を向上させることができる。また、連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーのようにビーム強度がばらつくことがないので、加熱を均一に行うことができる。また、連続発振型の基本波YAGレーザーは、エキシマレーザーなどのパルスレーザーと異なり、連続して照射することができるので、基板内の任意の点における加熱時間を増加させることができる。これにより、エキシマレーザーなどのパルスレーザーを用いる場合に比べて、欠陥の少ない高品質の結晶をより大きなサイズに成長させることができるので、結晶シリコン膜4aの結晶性を向上させることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、予め、反射抑制膜7をゲート電極6aの形状に対応する形状に形成するとともに、非晶質シリコン膜4の結晶化後に、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりTFTのゲート電極6aを形成することによって、吸収膜6をエッチングしてTFTのゲート電極6aを形成する際に、別途マスクを形成する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0039】
なお、図10および図11には、第1実施形態による半導体装置の製造プロセスの効果を説明するための比較例が示されている。結晶シリコン膜中の柱状結晶の結晶粒界帯の位置をチャネル領域の中央部近傍の位置に制御するには、以下のような製造プロセスも考えられる。すなわち、図10に示すように、ゲート絶縁膜5上にパターニングされたゲート電極6aを形成するとともに、図3に示した第1実施形態による反射抑制膜7を形成することなく、ゲート電極6aおよびゲート絶縁膜5上に連続発振型の基本波YAGレーザーを照射する。なお、この際のレーザーの照射条件は、レーザーパワーが約340Wであること以外は、上記第1実施形態によるレーザーの照射条件と同様である。これにより、ゲート電極6a(吸収膜)が発熱するので、その熱を利用して、非晶質シリコン膜14を溶融させる。
【0040】
この際、図10に示すように、非晶質シリコン膜14の両端部側のゲート電極6aによって覆われていない領域から、内側のゲート電極6aによって覆われた領域に向かって温度が上昇する温度勾配が形成される。これにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aに対応する領域は、約1000℃〜約1800℃に加熱される。また、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部よりも外側に対応する領域は、約200℃〜約1000℃に加熱される。
【0041】
これにより、この比較例では、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部よりも内側の領域において、非晶質シリコン膜14の融点よりも高い温度(約1400℃〜約1800℃)に加熱された領域が溶融する。一方、非晶質シリコン膜14の溶融された領域の外側の領域は、非晶質シリコン膜14の融点(約1414℃)よりも低い温度(約200℃〜約1400℃)になるので、溶融しない。そして、この非晶質シリコン膜14の溶融しない領域中の約900℃〜約1400℃の温度になる領域では、固相成長により微結晶シリコン(μc−Si)が形成される。そして、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部に対応する領域は、約1000℃になるので、この領域には、固相成長による微結晶シリコンが形成される。また、固相成長により微結晶シリコンが形成された領域の外側の約200℃〜約900℃になる領域は結晶化されない。これにより、この領域では、非晶質が維持される。
【0042】
そして、レーザービームが通過した後、冷却が行われる。この冷却に伴って、図11に示すように、上記第1実施形態と同様、急冷による微結晶シリコンを種結晶として内側に向かって両側からシリコンの柱状結晶が成長する。そして、両側から内側に向かって成長したシリコンの柱状結晶は、最終的に、ゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置で会合する。これにより、結晶シリコン膜14aのゲート電極6aの中央部近傍に対応する位置にシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8が形成される。この後、上記第1実施形態と同様、ゲート電極6aをマスクとして不純物をイオン注入することにより、結晶シリコン膜14aに一対のソース/ドレイン領域9と、チャネル領域10とを形成する。これにより、結晶シリコン膜14aのチャネル領域10の中央部近傍にシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8が形成される。
【0043】
上記のように、図10および図11に示した比較例による製造方法でも、上記第1実施形態による製造方法と同様、結晶シリコン膜14a中のシリコンの柱状結晶の結晶粒界帯8の位置をチャネル領域10の中央部近傍の位置に制御することは可能である。しかしながら、この比較例による製造方法では、図11に示すように、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるので、その接合界面11にキャリアトラップ準位が形成される。これにより、TFTの性能が低下したり、TFTの動作不良が発生するという不都合が生じる。しかしながら、図9に示した第1実施形態による結晶シリコン膜4aでは、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンは形成されないので、上記の比較例による不都合は生じない。これにより、第1実施形態による半導体装置の製造方法は、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置をチャネル領域10の中央部近傍に制御してTFTの性能の均一性を向上しながら、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるのを抑制してTFTの動作不良の発生を抑制するのに有効であることが判明した。
【0044】
なお、上記の比較例による構成を用いて、チャネル領域10とソース/ドレイン領域9との接合界面11に微結晶シリコンが形成されるのを抑制するために、照射するレーザービームのパワーを増大させて、より加熱するか、または、基板自体を何らかの方法で別途加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍の外側の領域まで溶融させることも考えられる。しかしながら、レーザービームのパワーを増大させて、より加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍よりも外側の領域まで溶融させようとすると、非晶質シリコン膜14の中央部近傍の最も温度が高くなる領域が非晶質シリコン膜14の沸点(約2642℃)付近まで加熱される。この場合には、非晶質シリコン膜14の中央部近傍の領域が蒸発して消失する(アブレーション)という不都合が生じる場合がある。一方、基板自体を何らかの方法で別途加熱することにより、非晶質シリコン膜14のゲート電極6aの端部近傍の外側の領域までを溶融させる場合には、基板自体を約1000℃付近の温度まで加熱する必要があるため、基板をそのような高温(約1000℃)に加熱するのは実質上困難である。
【0045】
(第2実施形態)
図12〜図14は、本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。次に、図12〜図14を参照して、第2実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、図12〜図14では、シリコンの柱状結晶が結晶シリコン膜4aの厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、結晶シリコン膜4aの厚みは非常に小さいので、結晶シリコン膜4aの厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、結晶シリコン膜4aの厚み方向の中間領域に柱状結晶の結晶シリコン膜4aの表面と平行に延びる粒界は形成されない。
【0046】
この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成した一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)を形成する。この第2実施形態による半導体装置の製造方法では、図1〜図7に示した上記第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様のプロセスを行う。その後、この第2実施形態では、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、反射抑制膜7の柱状結晶の結晶粒界帯8に対応する中央部近傍の所定領域を除去することにより、一対の反射抑制膜7aが所定の間隔を隔てて形成される。
【0047】
そして、第2実施形態では、図13に示すように、反射抑制膜7aをマスクとして、Moからなる吸収膜6をエッチングすることにより、一対の反射抑制膜7aに対応する一対のゲート電極6bを形成する。これにより、一対のゲート電極6bは、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成される。また、一対のゲート電極6bは、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8上には形成されない。
【0048】
次に、図14に示すように、一対の反射抑制膜7aおよび一対のゲート電極6bをマスクとして、結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際の注入条件は、上記第1実施形態による注入条件と同様である。そして、上記第1実施形態と同様、RTA法により結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させることにより、外側の一対のソース/ドレイン領域9aと、中間のソース/ドレイン領域9bとが形成される。そして、この中間のソース/ドレイン領域9bに柱状結晶の結晶粒界帯8が含まれる。また、一対のゲート電極6b下には、それぞれ、外側のソース/ドレイン領域9aと、中間のソース/ドレイン領域9bとに挟まれたチャネル領域10aが形成される。そして、Moからなる一対のゲート電極6bと、SiO2からなる層間絶縁膜(ゲート絶縁膜)5と、一対のソース/ドレイン領域9a、中間のソース/ドレイン領域9bおよび一対のチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4aとによって、デュアルゲートトランジスタ(TFT)が形成される。第2実施形態による上記以外の製造プロセスは、上記第1実施形態による製造プロセスと同様である。
【0049】
第2実施形態では、上記のように、吸収膜6の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置に対応する領域を除去することにより、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極6bを形成した後、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域を、一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の中間のソース/ドレイン領域9bとして用いることによって、一対のゲート電極6bを有するTFTのチャネル領域10aに柱状結晶の結晶粒界帯8が配置されるのを抑制することができる。これにより、そのTFTの駆動時にキャリアがチャネル領域10aに配置された柱状結晶の結晶粒界帯8を介して移動するのを抑制することができる。このため、柱状結晶の結晶粒界帯8を介してキャリアが移動することに起因してキャリアの移動度が低下するのを抑制することができる。これにより、結晶シリコン膜4a上の同じ側に所定の間隔を隔てて形成された一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、第2実施形態では、柱状結晶の結晶粒界帯8の位置を結晶シリコン膜4aに形成された中間のソース/ドレイン領域9b内の所定の位置に制御することができるので、結晶シリコン膜4a中の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置のばらつきを抑制することができる。その結果、一対のゲート電極6bと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9a、中間のソース/ドレイン領域9bおよび一対のチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4aとによって形成されたデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能の均一性を向上させることができる。
【0051】
また、第2実施形態では、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、反射抑制膜7の中央部近傍の所定領域を除去する際のフォトマスクの位置ずれなどに起因して、一対の反射抑制膜7aのサイズが異なって形成された場合にも、一対の反射抑制膜7aの合計のサイズは一定になる。これにより、このサイズの異なる一対の反射抑制膜7aをマスクとして吸収膜6をエッチングすることによって、一対のゲート電極6bのゲート長が異なって形成された場合にも、一対のゲート電極6bのゲート長の合計は一定になる。このため、このような場合にも、一対のゲート電極6bを有するデュアルゲートトランジスタ(TFT)の性能の均一性は保持される。
【0052】
第2実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0053】
図15は、第2実施形態の変形例による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。この第2実施形態の変形例では、上記第2実施形態と異なり、吸収膜6から形成した2つのゲート電極6bを用いて、2つのTFTを個別に形成する。この第2実施形態の変形例では、図14に示した第2実施形態による製造プロセスによって、結晶シリコン膜4aにイオン注入を行った後、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、図14に示した第2実施形態による結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域と、ゲート絶縁膜5のその結晶粒界帯8を含む領域に対応する領域とを除去する。これにより、ゲート絶縁膜5が2つのゲート絶縁膜5aに分割される。また、能動層(活性層)としての結晶シリコン膜4aが2つの結晶シリコン膜4bに分割される。これに伴って、中間のソース/ドレイン領域9bも2つのソース/ドレイン領域9cに分割される。上記のようにして、ゲート電極6bと、ゲート絶縁膜5aと、ソース/ドレイン領域9a、9cおよびチャネル領域10aを含む結晶シリコン膜4bとをそれぞれ備えた2つのTFTが形成される。なお、この2つのTFTを構成する結晶シリコン膜4bのチャネル領域10aは、柱状結晶の結晶粒界帯8を含むことなく形成される。
【0054】
この第2実施形態の変形例では、上記のように、吸収膜6の柱状結晶の結晶粒界帯8の位置に対応する領域を除去することにより、結晶シリコン膜4aの上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極6bを形成した後、結晶シリコン膜4aの柱状結晶の結晶粒界帯8を含む領域を除去することにより2つの結晶シリコン膜4bを形成することによって、結晶粒界帯8を含まない2つの結晶シリコン膜4aと、その2つの結晶シリコン膜4aにそれぞれ対応する2つのゲート電極6bとを有する2つのTFTを形成することができる。これにより、この2つのTFTでは、柱状結晶の結晶粒界部8による影響がなくなるので、優れた性能を有する2つのTFTを形成することができる。
【0055】
(第3実施形態)
図16〜図18は、本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。次に、図16〜図18を参照して、第3実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。なお、図16〜図18では、シリコンの柱状結晶が結晶シリコン膜4aの厚み方向に積み重なって形成されるように図示しているが、これは柱状結晶であることをわかりやすく表すためであり、実際には、結晶シリコン膜4aの厚みは非常に小さいので、結晶シリコン膜4aの厚み方向には1つの柱状結晶が形成される。したがって、結晶シリコン膜4aの厚み方向の中間領域に柱状結晶の結晶シリコン膜4aの表面と平行に延びる粒界は形成されない。
【0056】
この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、吸収膜6をエッチングすることによりゲート電極6aを形成するのに先立って、結晶シリコン膜4aに不純物を導入するとともに、その導入した不純物をレーザーを用いて電気的に活性化させる。具体的には、この第3実施形態では、図1〜図7に示した上記第1実施形態と同様のプロセスにより、吸収膜6および反射抑制膜7を形成する。その後、図16に示すように、反射抑制膜7をマスクとして結晶シリコン膜4aに不純物をイオン注入する。この際、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、P+(リンイオン)を注入エネルギ:約250keV、ドーズ量:約3×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、nチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、ソース/ドレイン領域9をLDD構造にするために、別途、結晶シリコン膜4aにP+(リンイオン)を注入エネルギ:約250keV、ドーズ量:約5×1013ions/cm2の条件下でイオン注入する。一方、pチャネルトランジスタ(TFT)を形成する場合には、B+(ホウ素イオン)を注入エネルギ:約85keV、ドーズ量:約2.5×1015ions/cm2の条件下でイオン注入する。なお、この第3実施形態における不純物のイオン注入工程では、上記第1および第2実施形態と異なり、吸収膜6を突き抜けて不純物を結晶シリコン膜4aまで到達させる必要があるので、第1および第2実施形態のイオン注入工程に比べて、注入エネルギを大きくするとともに、ドーズ量を多く設定している。また、この第3実施形態によるイオン注入の際、同時に、液晶表示装置や有機EL表示装置の各画素に配置される補助容量の電極(図示せず)などに不純物を導入することも可能である。
【0057】
この後、第3実施形態では、図16に示すように、上方から反射抑制膜7および吸収膜6に連続発振型の基本波YAGレーザーを照射する。この際のレーザーの照射条件は、レーザーパワーが約180Wであること以外は、上記第1実施形態による非晶質シリコン膜4の結晶化の際に用いたレーザーの照射条件と同様である。このレーザー照射により、吸収膜6が発熱するので、その熱を利用して、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させる。この際、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて、レーザーの吸収率が向上するので、吸収膜6の反射抑制膜7が設けられた領域では、反射抑制膜7が設けられていない領域に比べて発熱量が増加する。これにより、結晶シリコン膜4の反射抑制膜7に対応する領域は、最高で約1350℃まで加熱される一方、反射抑制膜7によって覆われていない領域は、約1100℃以上の温度に加熱される。
【0058】
このため、結晶シリコン膜4aに導入された不純物が電気的に活性化されることによって、結晶シリコン膜4aに一対のソース/ドレイン領域9が形成される。また、結晶シリコン膜4aに、一対のソース/ドレイン領域9に挟まれたチャネル領域10が形成される。なお、結晶シリコン膜4aが加熱される際に、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7に対応する領域(チャネル領域10)は、最高で約1350℃まで加熱されるが、結晶シリコン膜4aの融点(約1414℃)以上の温度まで加熱されないので溶融することはない。また、結晶シリコン膜4aの反射抑制膜7に対応する領域(チャネル領域10)が最高で約1350℃まで加熱されることによって、結晶シリコン膜4aの結晶性が向上する。また、この際、ゲート絶縁膜5の反射抑制膜7に対応する領域も同様に加熱されることにより、SiO2膜からなるゲート絶縁膜5を緻密化することができる。
【0059】
次に、図18に示すように、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによってゲート電極6aを形成する。上記のようにして、ゲート電極6aと、ゲート絶縁膜5と、一対のソース/ドレイン領域9およびチャネル領域10を含む結晶シリコン膜4aとによって、TFTが形成される。
【0060】
第3実施形態の上記以外の製造プロセスは、上記第1実施形態による製造プロセスと同様である。
【0061】
第3実施形態では、上記のように、結晶シリコン膜4aに不純物を導入した後、レーザーを反射抑制膜7および吸収膜6に再度照射することにより不純物を電気的に活性化することによって、非晶質シリコン膜4を結晶化させる際に用いたレーザー照射装置を用いて、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させることができる。これにより、結晶シリコン膜4aに導入した不純物を電気的に活性化させるために、レーザー照射装置と異なる加熱装置を別途用いて、結晶シリコン膜4aを加熱する必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0062】
また、第3実施形態では、反射抑制膜7をマスクとして吸収膜6をエッチングすることによりTFTのゲート電極6aを形成するのに先立って、レーザーを反射抑制膜7および吸収膜6に再度照射することにより不純物を電気的に活性化させることによって、結晶シリコン膜4aの不純物が導入された領域を吸収膜6で覆った状態で加熱することができる。これにより、結晶シリコン膜4aの不純物が導入された領域を均一かつ効率的に加熱することができるので、結晶シリコン膜4aに導入された不純物を良好に電気的に活性化することができる。また、結晶シリコン膜4a中の不純物を活性化させる際に、レーザー照射により加熱することによって、RTA法を用いて加熱する場合に比べて、短時間で高温まで加熱することができる。これにより、RTA法を用いる場合に比べて、不純物の活性化率をより向上させることができるとともに、結晶シリコン膜4aの結晶性およびゲート絶縁膜5の緻密さをより向上させることができる。
【0063】
第3実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0064】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
たとえば、上記実施形態では、結晶シリコン膜にソース/ドレイン領域を形成する際に、イオン注入により結晶シリコン膜に不純物を導入したが、本発明はこれに限らず、イオン注入以外の方法により結晶シリコン膜に不純物を導入してよい。たとえば、イオンドーピング法などにより結晶シリコン膜中に不純物を導入してもよい。
【0066】
また、上記第2実施形態では、反射抑制膜の中央部のみをエッチングしたが、本発明はこれに限らず、反射抑制膜の中央部をエッチングする際に、同時に、反射抑制膜の両外側部をエッチングしてもよい。このようにすれば、この後、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングすることにより形成した一対のゲート電極の外側の端部を、結晶シリコン膜中の微結晶シリコンの形成領域に対して、より内側に配置することができるので、確実に、チャネル領域およびその近傍領域に微結晶シリコンが含まれないようにすることができる。また、反射抑制膜の両外側部もエッチングすることにより、反射抑制膜をマスクとして吸収膜をエッチングして形成する一対のゲート電極のサイズをより一定にすることができる。
【0067】
また、上記第2実施形態では、吸収膜のエッチング後に結晶化シリコン膜に導入した不純物をRTA法を用いて電気的に活性化したが、本発明はこれに限らず、第2実施形態において、上記第3実施形態と同様のプロセスにより、吸収膜をエッチングするのに先立って結晶シリコン膜に導入した不純物をレーザー照射により電気的に活性化させてもよい。このように構成すれば、上記第2実施形態による半導体装置の製造方法においても、上記第3実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記第3実施形態では、レーザーを反射抑制膜および吸収膜に照射することにより吸収膜を発熱させ、その熱を利用して結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させたが、本発明はこれに限らず、上記以外の方法を用いて、結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させてもよい。たとえば、RTA法を用いて結晶シリコン膜を加熱することにより、結晶シリコン膜中に導入した不純物を電気的に活性化させてもよい。
【0069】
また、上記第2実施形態では、2つのゲート電極間に位置する結晶シリコン膜の結晶粒界帯を含む領域を除去することにより、2つの結晶シリコン膜を形成したが、本発明はこれに限らず、2つのゲート電極間に位置する結晶シリコン膜の結晶粒界帯を含まない領域を除去することにより、2つの結晶シリコン膜を形成してもよい。
【0070】
また、上記第2実施形態では、一対のゲート電極を有するデュアルゲートトランジスタを形成したが、本発明はこれに限らず、上記第2実施形態によるプロセスによって形成された2つのTFTをそれぞれ別個のTFTとして用いてもよい。この場合、2つのTFTをそれぞれ異なる導電型に形成してもよい。また、2つのTFTの各々のゲート電極に異なる信号を入力するように構成してもよい。また、上記第2実施形態によるプロセスによって形成した2つのTFTでは、中間のソース/ドレイン領域を共用しているので、2つのTFTを個別に形成する場合と異なり、2つのTFTに個別にソース/ドレイン領域を形成するためのエッチング工程や、2つのTFTの電位が等しくなるソース/ドレイン領域を接続するための配線を省略または共通化することができるため、歩留まりの向上と集積度の向上が期待できる。なお、このような2つのTFTは、nチャネルトランジスタおよびpチャネルトランジスタからなるCMOS回路や、2つのTFTのそれぞれのソース/ドレイン領域の一方が同電位となる種々の回路において有効に適用することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、レーザー照射により加熱して結晶化させる半導体膜として非晶質膜を用いているが、本発明はこれに限らず、結晶化させる前の半導体膜の状態は非晶質でなくてもよい。すなわち、どのような結晶性を有する半導体膜に対しても、本発明のプロセスによるレーザー照射を行えば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本発明を適用する半導体膜として、微結晶膜、等方性結晶膜および異方性結晶膜などの種々の結晶性を有する半導体膜を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させるプロセスを説明するための図である。
【図4】図3に対応する第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させた状態を示した平面図である。
【図5】図4に対応する第1実施形態による半導体装置の非晶質シリコン膜の所定領域を溶融させた後、冷却することにより結晶が成長するプロセスを示した平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法の効果を説明するための比較例による非晶質シリコン膜を溶融させるプロセスを説明するための図である。
【図11】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法の効果を説明するための比較例を説明するための断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態の変形例による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ガラス基板(基板)
4 非晶質シリコン膜(半導体膜)
4a 結晶シリコン膜(結晶膜)
6 吸収膜
6a、6b ゲート電極
7、7a 反射抑制膜
8 結晶粒界帯
9、9a、9b、9c ソース/ドレイン領域
10 チャネル領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜上に吸収膜を形成する工程と、
前記吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成する工程と、
前記反射抑制膜および前記吸収膜にレーザーを照射することにより前記吸収膜を発熱させ、その熱を利用して前記半導体膜を結晶化することによって、複数の結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程とを備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程は、前記結晶粒界部の位置を前記反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御する工程を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記レーザーを照射することにより前記吸収膜を発熱させ、その熱を利用して前記半導体膜を結晶化する工程は、前記半導体膜の前記反射抑制膜に対応する領域のみならず、前記反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も前記レーザーの照射により前記半導体膜の融点よりも高い温度まで加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板上に前記半導体膜を形成する工程は、前記半導体膜を島状に形成する工程を含み、
前記吸収膜を形成する工程は、前記島状の半導体膜の上方を覆うように前記吸収膜を形成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記吸収膜の前記結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、前記結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極を形成する工程をさらに備え、
前記一対のゲート電極を形成した後、前記結晶膜の前記結晶粒界部を含む領域を、前記一対のゲート電極を有するトランジスタの前記一対のゲート電極間に位置する中間のソース/ドレイン領域として用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記吸収膜の前記結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、前記結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極を形成する工程と、
その後、前記結晶膜の前記2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程とをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜上に吸収膜を形成する工程と、
前記吸収膜の所定領域上に反射抑制膜を形成する工程と、
前記反射抑制膜および前記吸収膜にレーザーを照射することにより前記吸収膜を発熱させ、その熱を利用して前記半導体膜を結晶化することによって、複数の結晶が会合することにより形成される連続した結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程とを備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記結晶粒界部の位置が制御された結晶膜を形成する工程は、前記結晶粒界部の位置を前記反射抑制膜の中央部近傍に対応する位置に制御する工程を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記レーザーを照射することにより前記吸収膜を発熱させ、その熱を利用して前記半導体膜を結晶化する工程は、前記半導体膜の前記反射抑制膜に対応する領域のみならず、前記反射抑制膜の端部近傍の外側の領域も前記レーザーの照射により前記半導体膜の融点よりも高い温度まで加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板上に前記半導体膜を形成する工程は、前記半導体膜を島状に形成する工程を含み、
前記吸収膜を形成する工程は、前記島状の半導体膜の上方を覆うように前記吸収膜を形成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記吸収膜の前記結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、前記結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて一対のゲート電極を形成する工程をさらに備え、
前記一対のゲート電極を形成した後、前記結晶膜の前記結晶粒界部を含む領域を、前記一対のゲート電極を有するトランジスタの前記一対のゲート電極間に位置する中間のソース/ドレイン領域として用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記吸収膜の前記結晶粒界部の位置に対応する領域を除去することにより、前記結晶膜の上側に所定の間隔を隔てて2つのゲート電極を形成する工程と、
その後、前記結晶膜の前記2つのゲート電極間に対応する所定の領域を除去する工程とをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−165463(P2006−165463A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358506(P2004−358506)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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