説明

半導体装置の製造方法

【課題】 ゲート酸化膜を作り分ける際に半導体装置に施されるエッチング回数を削減することで、エッチング処理による半導体装置や半導体基板自体に与える悪影響を低減できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 フラッシュメモリ部、低電圧高駆動性能トランジスタ部及び高耐圧性能トランジスタ部を形成する領域A,B,CにSi基板1を区分けし、領域Aに酸化膜4及びこれを被覆するフローティングゲート5を形成し、領域A,B,Cを被覆するようにONO膜6を形成し、領域A,Bにフォトレジスト7を施して領域Cを被覆するONO膜6をエッチングし、この領域Cにゲート酸化膜8を形成し、領域A,Cにフォトレジスト7aを施して領域Bを被覆するONO膜をエッチングし、この領域Bにゲート酸化膜9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ構造を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ、SRAM混成デバイスのような半導体装置では、高耐圧性能トランジスタ(Input/Output transistor)と低電圧高駆動性能トランジスタ(Core transistor)が共通の半導体基板上に作成される。これらトランジスタは、その用途が異なるために的確に作り分ける必要がある。例えば、高耐圧性能トランジスタは、高電圧に耐えるために低電圧高駆動性能トランジスタより厚いゲート酸化膜を形成しなければならない。
【0003】
このゲート酸化膜の作り分けの観点から従来の混成デバイスの製造方法を説明する。
先ず、半導体(Si)基板に素子分離、ウェルを形成する。このとき、素子分離によってフラッシュメモリ部となる領域、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域及び高耐圧性能トランジスタ部となる領域にSi基板が区分けされる。
【0004】
次に、Si基板のフラッシュメモリ部となる領域にゲート酸化によりトンネルゲート酸化膜、ポリシリコン材によりフローティングゲートを形成する。続いて、フラッシュメモリ部のフローティングゲート、低電圧高駆動性能トランジスタ部及び高耐圧性能トランジスタ部を被覆するようにONO(Oxide Nitride Oxide)膜を形成する。
【0005】
このあと、低電圧高駆動性能トランジスタ部及び高耐圧性能トランジスタ部上のONO膜を除去するため、フォトレジストをフラッシュメモリ部に塗布し、これらのONO膜をエッチングする。
【0006】
ONO膜除去後のSi基板の全面を酸化して、高耐圧性能トランジスタ部にゲート酸化膜を形成する。このとき、ONO膜を残したフラッシュメモリ部には上記ゲート酸化膜が形成されないが、低電圧高駆動性能トランジスタ部ではONO膜を除去しているので、高耐圧性能トランジスタ用のゲート酸化膜が形成される。
【0007】
上述したように、低電圧高駆動性能トランジスタ部には、高耐圧性能トランジスタとは異なる性質のゲート酸化膜を形成する必要があるので、高耐圧性能トランジスタ部のための上記ゲート酸化膜を除去する必要がある。
【0008】
このため、従来では、フラッシュメモリ部及び高耐圧性能トランジスタ部にフォトレジストを塗布してエッチングマスクとし、低電圧高駆動性能トランジスタ部上に形成された高耐圧性能トランジスタ部のための上記ゲート酸化膜をエッチングにより除去する。
【0009】
続いて、フラッシュメモリ部及び高耐圧性能トランジスタ部にレジストを残した状態でSi基板を酸化し、低電圧高駆動性能トランジスタ部に低電圧高駆動性能トランジスタ用のゲート酸化膜を形成する。このあと、フラッシュメモリ部及び高耐圧性能トランジスタ部上のレジストを除去することで、両トランジスタ部に所望のゲート酸化膜が形成されたSi基板を得ることができる。
【0010】
上述した製造方法は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されており、混成デバイスのような半導体装置を製造する一般的な方法として利用されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−23114号公報
【特許文献2】特開2003−46062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の半導体装置の製造方法では、高耐圧性能トランジスタ部にゲート酸化膜を形成する際、低電圧高駆動性能トランジスタ部にも高耐圧性能トランジスタ用のゲート酸化膜が形成されるため、低電圧高駆動性能トランジスタ部から当該ゲート酸化膜を除去するエッチング工程が必要となる。つまり、低電圧高駆動性能トランジスタ部には、ONO膜の除去及び高耐圧性能トランジスタ用のゲート酸化膜の除去の2度のエッチングを施さなければならない。
【0013】
このため、半導体基板上のエッチング処理に敏感な部位に悪影響を与えるという課題があった。例えば、従来のように低電圧高駆動性能トランジスタ部に2度のエッチングが施されると、素子分離の端部が落ち込んでしまい、リーク電流が増加するなどの特性面にも悪影響を与える。また、ウェットエッチングを施す回数が多ければ多いほど、半導体基板全体にもダメージが与えられる。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、メモリ装置と、用途の違いから異なる仕様のゲート酸化膜を形成する必要がある複数の半導体装置を共通の半導体基板上に形成するにあたり、ゲート酸化膜を作り分ける際に半導体装置に施されるエッチング回数を削減することで、エッチング処理による半導体装置や半導体基板自体に与える悪影響を低減できる半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る半導体装置の製造方法は、メモリ装置、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を共通の半導体基板上に形成してなる半導体装置の製造方法において、半導体基板を、メモリ装置、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を形成する領域ごとに区分けし、メモリ装置を形成する領域にトンネル絶縁膜及びこれを被覆する電極膜を形成し、この領域に加え、第1の半導体装置を形成する領域及び第2の半導体装置を形成する領域を被覆するように絶縁膜を形成するステップと、メモリ装置を形成する領域及び第1の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して第2の半導体装置を形成する領域を被覆する絶縁膜をエッチング除去するステップと、絶縁膜を除去した第2の半導体装置を形成する領域に第2の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップと、メモリ装置を形成する領域及び第2の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して第1の半導体装置を形成する領域を被覆する絶縁膜をエッチング除去するステップと、絶縁膜を除去した第1の半導体装置を形成する領域に第1の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、半導体基板を、メモリ装置、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を形成する領域ごとに区分けし、メモリ装置を形成する領域にトンネル絶縁膜及びこれを被覆する電極膜を形成し、この領域に加え、第1の半導体装置を形成する領域及び第2の半導体装置を形成する領域を被覆するように絶縁膜を形成するステップと、メモリ装置を形成する領域及び第1の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して第2の半導体装置を形成する領域を被覆する絶縁膜をエッチング除去するステップと、絶縁膜を除去した第2の半導体装置を形成する領域に第2の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップと、メモリ装置を形成する領域及び第2の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して第1の半導体装置を形成する領域を被覆する絶縁膜をエッチング除去するステップと、絶縁膜を除去した第1の半導体装置を形成する領域に第1の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップとを備えるので、ゲート酸化膜を作り分ける際に半導体装置に施されるエッチング回数を削減することで、エッチング処理による半導体装置や半導体基板自体に与える悪影響を低減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法の各工程における半導体装置を示す断面図である。この図に沿って実施の形態1の製造方法を詳細に説明する。
先ず、Si基板(半導体基板)1に素子分離3、ウェル2を形成する。このとき、素子分離3によってフラッシュメモリ部となる領域(メモリ装置を形成する領域)A、低電圧高駆動性能トランジスタ(Core transistor)部となる領域(第1の半導体装置を形成する領域)B及び高耐圧性能トランジスタ(Input/Output transistor)部となる領域(第2の半導体装置を形成する領域)CにSi基板1が区分けされる。
【0018】
次に、Si基板1のフラッシュメモリ部となる領域Aにゲート酸化によりトンネルゲート酸化膜(トンネル絶縁膜)4、ポリシリコン材によりフローティングゲート(電極膜)5を形成する。続いて、フラッシュメモリ部となる領域Aのフローティングゲート5、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域B及び高耐圧性能トランジスタ部となる領域Cを被覆するようにONO(Oxide Nitride Oxide)膜(絶縁膜)6を形成する。これにより、図1(a)に示すような構成が形成される。
【0019】
このあと、本発明では、従来と異なり高耐圧性能トランジスタ部となる領域CのみからONO膜6を除去する。つまり、図1(b)に示すように、フォトレジスト7をフラッシュメモリ部となる領域A及び低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域Bに塗布してエッチングマスクを形成してから、ONO膜6をエッチングする。
【0020】
これにより、図1(c)に示すように、高耐圧性能トランジスタ部となる領域CのみからONO膜6が除去される。このとき、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域Bでは、フォトレジスト7がエッチングマスクとして機能し、エッチング処理による影響を受けない。従って、従来のように、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域Bで、素子分離3の端部が過度のエッチングにより落ち込んだり、Si基板1自体がダメージを受けたりすることがない。また、素子分離3の端部の落ち込みに起因するリーク電流も低減させることができる。
【0021】
続いて、高耐圧性能トランジスタ部となる領域CのみからONO膜6を除去したSi基板1からフォトレジスト7を除去し、高耐圧性能トランジスタ部のゲート酸化膜の仕様に応じてSi基板1全面を酸化する。これにより、図1(d)に示すように、高耐圧性能トランジスタ部となる領域Cにゲート酸化膜8が形成される。このとき、ONO膜6が残っているフラッシュメモリ部となる領域A及び低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域Bにはゲート酸化膜8が形成されない。
【0022】
次に、フォトレジスト7aをフラッシュメモリ部となる領域A及び高耐圧性能トランジスタ部となる領域Cに塗布してエッチングマスクを形成してから、ONO膜6をエッチングする。これにより、図1(e)に示すように、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域BのONO膜6が除去されるが、低電圧高駆動性能トランジスタ部が被るエッチングは一回である。
【0023】
続いて、フラッシュメモリ部となる領域A及び高耐圧性能トランジスタ部となる領域Cにレジスト7aを残した状態でSi基板1を酸化し、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域Bにゲート酸化膜9を形成する。このあと、フラッシュメモリ部となる領域A及び高耐圧性能トランジスタ部となる領域Cのレジスト7aを除去することで、図1(f)に示すような両トランジスタ部に所望のゲート酸化膜9,8が形成されたSi基板1を得ることができる。
【0024】
以上のように、この実施の形態1によれば、Si基板1を、フラッシュメモリ部、低電圧高駆動性能トランジスタ部及び高耐圧性能トランジスタ部を形成する領域A,B,Cに区分けし、領域Aにトンネルゲート酸化膜4及びこれを被覆するフローティングゲート5を形成し、領域A,B,Cを被覆するようにONO膜6を形成するステップと、領域A,Bにフォトレジスト7を施して領域Cを被覆するONO膜6をエッチング除去するステップと、ONO膜を除去した領域Cに高耐圧性能トランジスタ部の仕様に応じたゲート酸化膜8を形成するステップと、領域A,Cにフォトレジスト7aを施して領域Bを被覆するONO膜をエッチング除去するステップと、ONO膜を除去した領域Bに低電圧高駆動性能トランジスタ部の仕様に応じたゲート酸化膜9を形成するステップとを備えるので、ONO膜6のエッチングにおいて、フラッシュメモリ部となる領域Aに加え、低電圧高駆動性能トランジスタ部となる領域BにもONO膜6が残り、低電圧高駆動性能トランジスタ部に対して施されるエッチング回数を2回から1回に低減することができる。従って、2回のエッチングによって低電圧高駆動性能トランジスタ部の素子分離3の端部が落ち込んでしまうことがなく、これによるリーク電流を低減することができる。また、ONO膜6を除去するウェットエッチングの回数も減るので、Si基板1自体へのダメージも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法の各工程における半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 Si基板(半導体基板)、2 ウェル、3 素子分離、4 トンネルゲート酸化膜(トンネル絶縁膜)、5 フローティングゲート(電極膜)、6 ONO膜(絶縁膜)、7,7a フォトレジスト(エッチングマスク)、8,9 ゲート酸化膜(ゲート酸化膜)、A,B,C 領域(メモリ装置を形成する領域、第1の半導体装置を形成する領域、第2の半導体装置を形成する領域)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ装置、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を共通の半導体基板上に形成してなる半導体装置の製造方法において、
上記半導体基板を、上記メモリ装置、上記第1の半導体装置及び上記第2の半導体装置を形成する領域ごとに区分けし、上記メモリ装置を形成する領域にトンネル絶縁膜及びこれを被覆する電極膜を形成し、この領域に加え、上記第1の半導体装置を形成する領域及び上記第2の半導体装置を形成する領域を被覆するように絶縁膜を形成するステップと、
上記メモリ装置を形成する領域及び上記第1の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して上記第2の半導体装置を形成する領域を被覆する上記絶縁膜をエッチング除去するステップと、
上記絶縁膜を除去した上記第2の半導体装置を形成する領域に上記第2の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップと、
上記メモリ装置を形成する領域及び上記第2の半導体装置を形成する領域にエッチングマスクを施して上記第1の半導体装置を形成する領域を被覆する上記絶縁膜をエッチング除去するステップと、
上記絶縁膜を除去した上記第1の半導体装置を形成する領域に上記第1の半導体装置の仕様に応じたゲート酸化膜を形成するステップと
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−19515(P2006−19515A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195861(P2004−195861)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】