説明

半導体装置の製造方法

【課題】 スタックト構造を有するコンタクトプラグの複数段連結されたコンタクトプラグのうちの下方のものについて、酸化防止を図る。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、半導体基板1上に第1の絶縁膜5を形成する工程(a)と、第1の絶縁膜5中に、バリアメタル膜7及びタングステン膜8からなる第1のプラグ9を形成する工程(b)と、第1のプラグ9Aの上方に、下部電極14、容量絶縁膜15及び上部電極16からなる容量素子17を形成する工程(c)と、第1の絶縁膜5及び第1のプラグ9上に、第2の絶縁膜11を形成する工程(d)と、第2の絶縁膜11中に、第1のプラグ9Bと接続してスタックト構造を構成する第2のプラグ21を形成する工程(e)と、工程(c)の後に、容量素子17に対して酸素雰囲気中で熱処理する工程(f)と、工程(b)と工程(d)との間に、半導体基板に対して熱処理をする工程(g)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグを複数段連結してなるスタックト構造のプラグを有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の素子が混載された半導体装置において、微細化や高集積化が求められている。このような中、コンタクトホールのアスペクト比増大により、2段以上のプラグからなるスタックト構造のコンタクトプラグが採用されている。
【0003】
以下に、従来のスタックト構造のコンタクトホール部を備えた半導体装置の製造方法について説明する(例えば、特許文献1を参照)。図5は、従来の半導体装置の要部断面図である。
【0004】
まず、図5に示すように、半導体基板111の全面に、第1の層間絶縁膜115を形成し、第1の層間絶縁膜115に、不純物拡散領域113に到達する第1のコンタクトホール116を形成する。次に、第1のコンタクトホール116の中に、TiCl4 用いた無機CVD法により第1のバリアメタル膜117を形成し、続いてWF6 を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition )法により第1のタングステン膜118を形成する。この後、第1のコンタクトホール116からはみ出した第1のバリアメタル膜117及び第1のタングステン膜118をCMP(Chemical Mechanical Polishing )法により除去し、第1のタングステンプラグ119を形成する。
【0005】
次に、第1のタングステンプラグ119上に、第2の層間絶縁膜120を形成した後、第1の層間絶縁膜115と第2の層間絶縁膜120とを貫通するストレージノードコンタクト121を形成する。ストレージノードコンタクト121は、下部電極としても機能する。続いて、容量絶縁膜123及び上部電極124を順次形成し、容量素子125を構成する。
【0006】
次に、容量素子125を覆う第3の層間絶縁膜126を形成し、第1のタングステンプラグ119に到達する第2のコンタクトホール127を形成する。第2のコンタクトホール127の中に、有機金属CVD法により第2のバリアメタル膜128を形成し、続いてWF6 を用いたCVD法により第2のタングステン膜129を形成する。この後、第2のコンタクトホール127からはみ出した第2のバリアメタル膜127及び第2のタングステン膜128をCMP法により除去し、第2のタングステンプラグ130を形成する。その後、第2のタングステンプラグ130上に、配線層131を形成する。これにより、スタックト構造のコンタクトプラグ200が形成される。
【0007】
ここで、容量素子125の形成工程では、容量絶縁膜123に生じているダメージの回復又は容量絶縁膜123の結晶化を目的とし、800℃以上の酸素雰囲気中において熱処理を行なっている。そのため、第1のタングステンプラグ119には、耐熱性を確保するために、無機CVD法により形成した第1のバリアメタル117を用いている。
【特許文献1】特開2002−203812号公報(第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の半導体装置では、第1のタングステン膜118の形成時の成膜ガスであるWF6 のフッ素が第1のタングステン膜118の中や表面に分子として残留することがある。また、成膜方法にCVD法を用いることにより、第1のバリアメタル膜117が水分を吸収(吸湿)することもある。この結果、第2の層間絶縁膜120の堆積時や焼結時に、これらの分子が反応してタングステンプラグ中にHFガスが発生していた。そのため、HFガスの発生により、第2の層間絶縁膜120中にボイドが形成されるという問題があった。このように形成されたボイドは、容量素子に対する酸素雰囲気中での高温熱処理工程において酸素の拡散パスとなるため、タングステンプラグが酸化してしまい、スタックト構造のプラグにおけるコンタクト抵抗が高抵抗化するという課題があった。
【0009】
上記課題に鑑みて、本発明は、スタックト構造のコンタクトプラグにおける下方のプラグ形成後に、該プラグ中に発生して残留するガスを除去することにより、コンタクト抵抗の低抵抗化及び安定化を図り、高性能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された絶縁膜中に、バリアメタル膜とタングステン膜とからなる複数のプラグを複数段連結してなるスタックト構造のプラグを有する半導体装置の製造方法において、半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、第1の絶縁膜中に、バリアメタル膜及びタングステン膜からなる第1のプラグを形成する工程(b)と、第1のプラグの上方に、下部電極、容量絶縁膜及び上部電極からなる容量素子を形成する工程(c)と、第1の絶縁膜及び第1のプラグ上に、第2の絶縁膜を形成する工程(d)と、第2の絶縁膜中に、バリアメタル膜とタングステン膜とからなり且つ第1のプラグと接続する第2のプラグを形成する工程(e)と、工程(c)の後、容量素子に対して酸素雰囲気中で熱処理する工程(f)と、工程(b)と工程(d)との間に、半導体基板に対して熱処理をする工程(g)とを備えることに特徴を有する。
【0011】
このように、第1のプラグを形成後で且つ第2の絶縁膜の形成前に、熱処理を行なうことにより、第1のプラグ中に残留している水素、フッ素等のガスを取り除くことができる。したがって、第1のプラグ中の残留ガスに起因して絶縁膜中でのボイド形成を抑制することができ、それにより、容量素子に対する酸素雰囲気中の熱処理工程における第1のプラグの酸化を防止することができる。つまり、スタックト構造のプラグにおけるコンタクト抵抗の低抵抗化及び安定化を実現することができる。
【0012】
尚、工程(c)は、工程(d)の後に行ない、容量素子は第2の絶縁膜上に形成することが好ましい。
【0013】
また、工程(c)は、工程(b)の後に行なうと共に、第1の絶縁膜上に容量素子を形成する工程を含み、工程(d)は、工程(c)の後に行なうと共に、容量素子を覆うように、第1の絶縁膜及び第1のプラグ上に、第2の絶縁膜を形成することも好ましい。
【0014】
また、上述の半導体装置の製造方法において、第1のプラグの形成後で且つ第2の絶縁膜の形成前に行なう熱処理工程(工程(g))は、第2の絶縁膜の成膜温度より高く且つ670℃以下で行なうことが好ましい。
【0015】
このように、第2の絶縁膜の形成以前に、第2の絶縁膜の成膜温度より高い温度で熱処理を行なうことにより、第2の絶縁膜の形成時には、既に該第2の絶縁膜の成膜温度において発生するガスが効率よく除去されている。そのため、第2の絶縁膜の形成時や焼結時に、第1のプラグ中の残留ガスによるボイドの形成を防止することができる。
【0016】
また、上述の熱処理工程は、酸素を含まない雰囲気中で行なわれることが好ましい。さらに、該熱処理工程は、アルゴン、ヘリウム及び窒素のうち少なくともいずれか1つを含むガス雰囲気中で行なわれることが好ましい。このように、第1のプラグ形成後に、酸素を含まない雰囲気中で熱処理を行なうため、該熱処理による第1のプラグの酸化をより抑制することができる。したがって、プラグの酸化によるコンタクト抵抗の上昇を防止することができる。
【0017】
また、上述の半導体装置の製造方法において、第1のプラグにおけるバリアメタル膜は、スパッタ法により形成することが好ましい。このようにして形成されたバリアメタル膜は、CVD法で形成したバリアメタル膜よりも吸湿性が低いため、第1のプラグ中から発生する水素ガスの量が減少する。それにより、第1の絶縁膜中に発生するボイドの起因と考えられる、該水素及びWCVD時(タングステン膜をCVDにより形成する時)の残留フッ素の反応によるHFガスの量を減少することができる。したがって、HFガス量が少ないことから、絶縁膜中へのボイド発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、スタックト構造のコンタクトプラグにおける下方のプラグ形成後に、プラグに残留するガスを除去することにより、プラグの酸化を抑制し、コンタクト抵抗の低抵抗化及び安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1(a)〜(d)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、メモリセル領域Aとその周辺回路領域Bとを示している。
【0020】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板1において素子分離領域(STI:Shallow Trench Insulating)2で区画されたメモリセル領域Aに、ワード線(図示せず)と接続するゲート電極3を形成し、続いて半導体基板1におけるゲート電極3の両側方領域に不純物拡散層4を形成する。ゲート電極3と半導体基板1の間にはゲート層間絶縁膜3Aが形成されている。
【0021】
次に、ゲート電極3を含む半導体基板1の全面に、CVD法により、例えば酸化シリコンからなり且つ膜厚が300nm〜600nm程度の第1の層間絶縁膜5を形成する。続いて、リソグラフィ法とドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜5に、不純物拡散層4に到達する第1のコンタクトホール6を形成する。次に、第1のコンタクトホール6を含む半導体基板1の全面に、スパッタ法又はTiCl4 を用いる無機CVD法により、Ti膜とTiN膜とを下から順に形成し、第1のバリアメタル膜7を形成する。ここで、第1のバリアメタル膜7の膜厚は、15nm〜60nm程度である。続いて、WF6 を用いたブランケットCVD法により、第1のタングステン膜8を第1のコンタクトホール6に充填する。次に、CMP法により、第1のコンタクトホール6からはみ出し、第1の層間絶縁層5の上に露出している第1のバリアメタル膜7と第1のタングステン膜8とを除去し、第1のコンタクトプラグ9を形成する。ここで、図1(a)に示すように、メモリセル領域Aにおいて後述するビット線と接続する第1のコンタクトプラグ9Aと、周辺回路領域Bにおいてスタックト構造のコンタクトプラグの下方プラグとなる第1のコンタクトプラグ9Bとを同時に形成している。
【0022】
続いて、図1(b)に示すように、第1の層間絶縁膜5及び第1のコンタクトプラグ9の上に、スパッタ法により、Ti膜、TiN膜及びW膜を下から順に堆積し、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、メモリセル領域Aの第1のコンタクトプラグ9Aに接続するビット配線10を形成する。
【0023】
次に、Ar、He又はN2等の不活性ガス雰囲気中にて、450〜670℃の温度で熱処理を行なう。ここでの熱処理は酸素を含まない雰囲気中で行なうため、この熱処理によって第1のコンタクトプラグ9が酸化されることはない。また、この熱処理によって、図1(b)に示すように、周辺回路領域Bの第1のコンタクトプラグ9Bの上面には、タングステン化合物からなるキャップメタル膜Xが形成される。
【0024】
次に、図1(c)に示すように、第1の層間絶縁膜5上に、ビット線10を覆うように第2の層間絶縁膜11を形成する。例えば、第2の層間絶縁膜11の堆積温度は、450℃程度である。第2の層間絶縁膜11は、例えば酸化シリコンからなり、且つ膜厚が500nm〜800nm程度である。その後、CMP法により、第2の層間絶縁膜11の表面を平坦化し、第2の層間絶縁膜11上に、例えば窒化シリコンからなり、且つ膜厚が100nm〜200nm程度の絶縁性の下部水素バリア膜12を形成する。なお、下部水素バリア膜12は、窒化シリコンのほかに、TiAlOでもよい。
【0025】
次に、第1の層間絶縁膜5、第2の層間絶縁膜11及び下部水素バリア膜12を貫通し、他の不純物拡散層4に接続するストレージノードコンタクト13を形成する。ここで、ストレージノードコンタクト13は、上述した第1のコンタクトプラグ9と同様の工程により形成することができる。ただし、第1のバリアメタル膜7は、スパッタ法、TiCl4 を用いた無機CVD法又はTDMAT(Ti[N(CH324 、テトラジメチルアミノチタン)を用いた有機金属CVD法により形成される。
【0026】
次に、ストレージノードコンタクト13に接続する下部電極14、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜15及び上部電極16をパターニングして形成する。これにより、下部電極14、容量絶縁膜15及び上部電極16からなる容量素子部17が形成される。
【0027】
ここで、下部電極14は、導電性水素バリア膜、導電性酸素バリア膜及び導電膜よりなる積層構造を有する。導電性酸素バリア膜は、例えば、Ir、IrO2及びTaNのうち少なくともひとつからなる。また、導電性水素バリア膜は、例えば、TiAlN膜、TiN膜のうち少なくともひとつからなる。導電膜は、Pt、Ir等の貴金属からなり、上部電極16は、例えばPtからなる。また、容量絶縁膜15は、一般式SrBi2(TaxNb1-x29、Pb(ZrxTi1-x)O3、(BaxSr1-x)TiO3、(BixLa1-x4Ti312(但し、いずれもxは0≦x≦1である。)又はTa25からなる。
【0028】
次に、容量素子部17を覆う第3の層間絶縁層18を形成し、この後、メモリセル領域Aの端において、第3の層間絶縁膜18を下部水素バリア膜12の下方までパターニングする。これにより、後述する上部水素バリア膜19と下部水素バリア膜12とを接合することができ、メモリセル領域Aの容量素子部へ侵入しようとする水素へのバリア性を向上することができる。
【0029】
次に、図1(d)に示すように、上述した第3の層間絶縁膜18に対するパターニングによって、容量絶縁膜15の結晶化のため、800℃以上の高温で且つ酸素雰囲気において、熱処理を行なう。また、この熱処理により、容量素子部17が受けたダメージを回復させる。
【0030】
続いて、第3の層間絶縁膜18上に、例えばTiAlOからなる絶縁性の上部水素バリア膜19を形成する。これにより、メモリセル領域Aにおける容量素子部17は、下部水素バリア膜12と上部水素バリア膜19とにより覆われるため、外部から侵入する水素による容量絶縁膜15の水素還元を防ぐことができ、特性劣化を低減することができる。
【0031】
続いて、図1(d)に示すように、半導体基板1の全面に、例えば酸化シリコンからなり、膜厚が900nm〜1500nm程度の第4の層間絶縁層20を堆積し、CMP法によって平坦化させる。次に、周辺回路領域Bの第4の層間絶縁膜20、及び第2の層間絶縁膜11の膜中に、第1のコンタクトプラグ9Bに到達し、第1のコンタクトプラグ9Bの上面と接続する第2のコンタクトプラグ21を形成する。ここで、第2のコンタクトプラグ21は、上述した第1のコンタクトプラグ9と同様の工程により形成することができる。ただし、第2のコンタクトプラグ21における第2のバリアメタル膜7’は、スパッタ法、TiCl4 を用いた無機CVD法、又はTDMATを用いた有機金属CVD法により形成される。さらにその後、第2のコンタクトプラグ21に接続する配線層22を形成する。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、第1のコンタクトプラグ9の上に第2の層間絶縁膜11を形成する直前に、第2の層間絶縁膜11の成膜温度付近若しくはそれ以上の温度で熱処理を施すため、コンタクトプラグ形成工程における洗浄又は各工程間における大気中への放置により第1のバリアメタル膜7が吸湿した水分を除去することができる。さらに、第1のタングステン膜8に残留するタングステン膜形成時の成膜ガスの成分をも効果的に除去することができる。従って、第2の層間絶縁膜11を形成する際に、第1のコンタクトプラグ9中に存在する水分やガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0033】
ここで、図2に、層間絶縁膜の形成前に行なう熱処理工程の有無によるコンタクトプラグからの脱ガス量を比較した図を示す。なお、図2は、試料片に徐々に温度をかけて、その温度において検出した脱ガス量をプロットした図である。図2(a)はHF+ の脱ガス量を示し、図2(b)はF+ の脱ガス量を示し、図2(c)はH2 Oの脱ガス量を示す。但し、図2(c)において、従来例1と従来例2とはグラフがほぼ重なっている。
【0034】
尚、各図において、実施例とは本実施形態のような熱処理工程を伴う場合の一例を示す。また、従来例1とはバリアメタル膜をスパッタ法で形成し且つ熱処理を施さなかった場合を示し、従来例2とはバリアメタル膜を有機CVD法で形成し且つ熱処理を施さなかった場合を示している。
【0035】
また、図2に示しているのは、N2 雰囲気中において、約650℃で約2分間の熱処理を行った場合の結果である。
【0036】
図2(a)〜(c)の各図に示すように、コンタクトプラグからは、水分(H2 O)、F+ ガス、及びHF+ ガスが脱ガスしていることがわかった。図2(a)〜(c)からわかるように、本発明の熱処理を行なうことにより、コンタクトプラグからの脱ガス量が熱処理を行なわない従来例と比較し、大幅に減少している。特に、図2(c)に示すように、例えば層間絶縁膜の堆積温度(450℃)よりも高い温度で熱処理を行なうと、H2 Oガスの脱ガス量が更に減少していることがわかる。従って、コンタクトプラグ上に層間絶縁膜を形成する直前に、熱処理をすることによって、層間絶縁膜の堆積時や焼結時に、コンタクトプラグから発生するガスが減少し、層間絶縁膜中へのボイド形成を抑制することができる。これにより、層間絶縁膜中において酸素拡散のパスとなるボイドが減少し、周辺回路領域Bのコンタクトプラグの酸化を防止することができると共に、スタックト構造のコンタクトプラグの安定化を図ることができる。さらに、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0037】
次に、図3に、各種の成膜方法で形成したバリアメタル膜の吸湿性を比較したグラフを示す。図3に示すように、本実施形態によれば、スタックト構造のコンタクトプラグの下方のプラグのバリアメタル膜の形成に、TiCl4 による無機CVD法を用いることにより、従来のTDMATによる有機金属CVD法よりも、バリアメタル膜の吸湿性を最大35%低減することができる。さらに、バリアメタル膜の形成にスパッタ法を用いることにより、TiCl4 による無機CVD法よりもさらにバリアメタル膜の吸湿性を低減することができ、従来のTDMATによる有機金属CVD法よりも最大50%低減することができる。つまり、バリアメタル膜(コンタクトプラグ)に含まれる水分量が低減できるため、層間絶縁膜の堆積時や焼結時に発生する脱ガス量が減少し、層間絶縁膜中へのボイド形成をより低減することができる。
【0038】
尚、本実施形態において、層間絶縁膜の堆積前に実施する熱処理工程は、絶縁膜堆積装置と異なる別の熱処理専用装置にて行なっても良いし、絶縁膜堆積装置内にて行なっても構わない。
【0039】
本発明の熱処理を絶縁膜堆積装置とは異なる他の熱処理専用装置内にて行なう場合、該熱処理の温度を層間絶縁膜の堆積温度より高い温度に設定することができる。このため、コンタクトプラグに残留するガスを効率よく、効果的に除去することができると共に、層間絶縁膜中へのボイド形成をより低減させることができる。
【0040】
一方、絶縁膜堆積装置内にて本発明の熱処理を行なう場合、該熱処理の温度が層間絶縁膜の堆積温度と同一温度となるが、図2の脱ガス量のグラフからも明らかなように、絶縁膜の成膜温度付近よりHF+ の脱ガス量が減少し始めている温度であり、また、熱処理と絶縁膜の堆積が連続して行なえるため、熱処理したバリアメタル膜を大気中に放置することがなく、大気暴露による再吸湿がない。従って、再吸湿による脱ガス効果の減少を防ぐことができる。
【0041】
ただし、絶縁膜堆積装置内で該熱処理を行なう場合は、装置内のガス雰囲気を制御する必要がある。図4は、絶縁膜堆積装置内における成膜ステップを示す。図4(a)に示すように、従来は、装置内に絶縁膜用の成膜ガスを封入して成膜を開始するステップ(C)の前に、半導体基板を所定の温度となるまで昇温し、且つ装置内の雰囲気を安定化するステップ(B)があった。このステップ(B)における装置内は、成膜ステップ(C)にて成膜ガスとの反応ガスとして酸素ガスが必要なため、酸素雰囲気に保たれている。
【0042】
一方、図4(b)に示すように、本実施形態においては、従来と比較し、ステップ(B)の前に、コンタクトプラグの酸化を防止するための脱ガスを行なう熱処理ステップ(A)を新たに設けていることが最大の特徴である。さらに、この熱処理ステップ(A)は、ステップ(B)と異なり、酸素を含まない、例えばヘリウム雰囲気において行なうことが特徴である。これにより、ここでの熱処理は酸素を含まない雰囲気中で行なうため、この熱処理によってコンタクトプラグが酸化されることがない。従って、コンタクトプラグの酸化をより効果的に防止することができると共に、コンタクトプラグの安定化を図ることができる。ここで、ステップ(A)に要する時間Rtは、ステップ(B)に要する時間tよりも短くても長くてもよく、ステップ(A)を備えていない従来よりも、脱ガス量の減少という効果を得ることができる。また、時間Rtは、時間tの半分以上の時間に設定するとより効果的である。
【0043】
尚、本実施形態では、容量素子部を形成する前に、ビット線を容量素子部の下方に設ける構成について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、第1のプラグ形成後に、第1の絶縁膜上に容量素子を形成し、容量素子部の上方にビット線を設けるような場合でもよい。このような場合にも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、プラグを複数段連結してなるスタックト構造を有する半導体装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図2】本発明に係る熱処理工程の有無に対する脱ガス量を示す図
【図3】バリアメタル膜の各種形成方法に対する吸湿性を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法における成膜ステップ図
【図5】従来の半導体装置の要部断面図
【符号の説明】
【0046】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 ゲート電極
4 不純物拡散層
5 第1の層間絶縁膜
6 第1のコンタクトホール
7 第1のバリアメタル膜
8 第1のタングステン膜
9 第1のコンタクトプラグ
10 ビット線
11 第2の層間絶縁膜
12 下部水素バリア膜
13 ストレージコンタクト
14 下部電極
15 容量絶縁膜
16 上部電極
17 容量素子部
18 第3の層間絶縁膜
19 上部水素バリア膜
20 容量素子部
21 第2のコンタクトプラグ
22 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁膜中に、バリアメタル膜とタングステン膜とからなる複数のプラグを複数段連結してなるスタックト構造のプラグを有する半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1の絶縁膜中に、前記バリアメタル膜及び前記タングステン膜からなる第1のプラグを形成する工程(b)と、
前記第1のプラグの上方に、下部電極、容量絶縁膜及び上部電極からなる容量素子を形成する工程(c)と、
前記第1の絶縁膜及び前記第1のプラグ上に、第2の絶縁膜を形成する工程(d)と、
前記第2の絶縁膜中に、前記バリアメタル膜と前記タングステン膜とからなり且つ前記第1のプラグと接続する第2のプラグを形成する工程(e)と、
前記工程(c)の後、前記容量素子に対して酸素雰囲気中で熱処理する工程(f)と、
前記工程(b)と前記工程(d)との間に、前記半導体基板に対して熱処理をする工程(g)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(c)は、前記工程(d)の後に行ない、
前記容量素子は、前記第2の絶縁膜上に形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記工程(c)は、前記工程(b)の後に行なうと共に、前記第1の絶縁膜上に前記容量素子を形成する工程を含み、
前記工程(d)は、前記工程(c)の後に行なうと共に、前記容量素子を覆うように、前記第1の絶縁膜及び前記第1のプラグ上に、前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つにおいて、
前記工程(g)は、前記工程(d)における前記第2の絶縁膜の成膜温度よりも高く且つ670℃以下の温度で熱処理を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は4において、
前記工程(g)は、酸素を含まない雰囲気中で行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記工程(g)は、アルゴン、ヘリウム及び窒素のうち少なくともいずれか1つを含むガス雰囲気中で行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1のプラグにおける前記バリアメタル膜は、スパッタ法により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−67289(P2007−67289A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253806(P2005−253806)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】