説明

半導体装置及びその製造方法、並びに処理液

【課題】 例えば酸素や銅に対する拡散防止効果を有する必要最小限の膜厚の合金膜を、配線パターンへの依存性を軽減しつつ、基板の全域に亘ってより均一な膜厚で形成した合金膜で配線を保護する。
【解決手段】 基板上の絶縁体内に形成した配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した埋込み配線の周囲の少なくとも一部に、タングステンまたはモリブデンを1〜9atomic%、リンまたはボロンを3〜12atomic%含有する合金膜を無電解めっきで形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に係り、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けた配線用凹部に、銅や銀等の配線材料(導電体)を埋め込んで構成した埋込み配線の底面及び側面、または露出表面に、配線材料の層間絶縁膜中への熱的拡散を防止する機能あるいは配線と層間絶縁膜の密着性を向上させる機能を有する導電膜や、配線を覆う磁性膜等の配線保護膜を形成した半導体装置及びその製造方法に関する。
更に、本発明は、このような半導体装置の製造に使用される処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線溝及びビアホール等の配線用凹部に配線材料(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成した配線溝やビアホール(配線用凹部)に、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属ないしその合金を埋め込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
従来この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、信頼性向上のため、層間絶縁膜への配線(銅)の熱的拡散を防止しかつエレクトロマイグレーション耐性を向上させるためのバリア膜を配線の底面及び側面に形成したり、その後絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る際の酸化性雰囲気における配線(銅)の酸化を防止したりするため酸化防止膜を形成するなどの方法が採用されている。従来、この種のバリア膜としては、タンタル、チタン、タングステンまたはルテニウムなどの金属あるいはその窒化物が一般に採用されており、また酸化防止膜としては、シリコンの窒化物や炭化物などが一般に採用されていた。
【0004】
銅配線の微細配線化及び電流密度の上昇が進むにつれ、現状の酸化防止膜では充分な信頼性が得られない場合が有る。このため、これに代わるもの、あるいはこれに付加するものとして、コバルト合金やニッケル合金等からなる配線保護膜で埋込み配線の底面及び側面、または露出表面を選択的に覆って、配線の熱拡散、エレクトロマイグレーション及び酸化を防止することが検討されている。また、不揮発磁気メモリにおいては、メモリセルが高密度化し設計ルールが小さくなると銅配線の電流密度が増大しエレクトロマイグレーションの問題が生じる。さらに、この書込みには、セルが小さくなると書込み電流は増大することに加え、セルが接近し、クロストークさせないことが課題となる。これを解決するために、銅配線の周囲にコバルト合金やニッケル合金等の磁性膜を付与したYOKE構造が有効であると考えられている。この磁性膜は例えば無電解めっきによって得られる。
【0005】
例えば、図1に示すように、半導体ウエハ等の基板Wの表面に堆積したSiO等からなる絶縁膜2の内部に配線用凹部4を形成し、表面にTaN等からなるバリア層6を形成した後、例えば、銅めっきを施して、基板Wの表面に銅膜を成膜して配線用凹部4の内部に銅を埋め込む。しかる後、基板Wの表面にCMP(化学機械的研磨)を施して平坦化することで、絶縁膜2の内部に銅膜からなる配線8を形成する。そして、この配線(銅膜)8の表面に、例えば無電解めっきによって得られる、CoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0006】
一般的な無電解めっきによって、このようなCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)9を配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウエハ等の基板Wを、例えば常温の希硫酸中に1分程度浸漬させて、配線の被処理上に形成する配線金属の酸化膜等を除去する。そして、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄した後、例えば常温のPdCl/HCl混合溶液中に基板Wを1分間程度浸漬させ、これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。次に、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっきを施し、しかる後、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄する。これによって、配線8の露出表面に、CoWP合金膜からなる配線保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、無電解めっきによって形成されるCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)には、前述のように、酸化防止膜としての機能や、銅の拡散防止膜としての機能が求められることがある。このような機能を得るためには、配線保護膜の膜厚をある程度厚くする必要があるが、この膜厚が厚くなりすぎると、銅配線の採用による低抵抗化の阻害要因になる。また、無電解めっきは、物質の供給速度とめっき速度に相関があり、配線パターンの幅の大小や分布の粗密等にめっき速度が依存して、例えば配線パターンが粗の場所の方が密の場所よりめっき膜(合金膜)が厚くなる傾向がある。このため、配線パターンの粗密等に依存することなく、基板等の全域に亘ってより均一な膜厚のめっき膜(合金膜)を形成して配線を保護することが求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、例えば酸素や銅に対する拡散防止効果を有する必要最小限の膜厚の合金膜を、配線パターンへの依存性を軽減しつつ、基板の全域に亘ってより均一な膜厚で形成した合金膜で配線を保護した半導体装置及びその製造方法、並びにこの半導体装置の製造に使用される処理液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板上の絶縁体内に形成した配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した埋込み配線の周囲の少なくとも一部に、タングステンまたはモリブデンを1〜9atomic%、リンまたはボロンを3〜12atomic%含有する合金膜を無電解めっきで形成したことを特徴とする半導体装置である。
【0010】
W(タングステン)またはMo(モリブデン)を1〜9atomic%含む合金膜は、反応の際に配線パターンの粗密等に依存して供給速度に差が発生し、成膜速度に差が出ることを抑制しつつ、無電解めっきよって、基板等の全域により均一な膜厚で成膜される。これによって、配線パターンへの依存性を軽減しつつ、基板等の全域に亘ってより均一な膜厚で成膜した合金膜で配線を保護することができる。しかも、合金膜中にWまたはMoを含むことで、合金膜の熱的安定性が増加し、酸素や銅等の不純物が合金膜を透過して拡散するのを防止することができる。
【0011】
また、合金膜中にP(リン)またはB(ボロン)を3〜12atomic%含有することで、合金膜がアモルファスまたは微結晶化する。このため、下地の配向性の影響を殆ど受けることなく、表面粗さの良好な合金膜を無電解めっきで成膜することができる。更には、他の不純物が合金膜中を移動しづらくしたり、また、Pが不純物や配線金属、たとえば銅と結合して安定化したりする場合も有り、これによって、不純物や配線金属が拡散するのを防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記合金膜は、前記埋込み配線の露出表面に選択的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置である。
配線の露出表面を合金膜で覆って該配線を保護することで、配線が大気中に曝され酸化等により変質されるのを防止し、しかも、合金膜を介して、配線とその上に積層される酸化防止膜等の絶縁膜との密着性を向上させることができる。現状の酸化防止膜は、一般に誘電率が4〜7とやや高めのSiNやSiC等で形成されているが、配線の露出表面に合金膜を選択的に形成することで、SiNやSiC等の代わりに、酸化防止能力が多少低いが誘電率の低い材料を酸化防止膜として使用することが可能となり、場合によっては、酸化防止膜を排除して、合金膜の上に直接、層間絶縁膜を積層することができる。これにより、配線間の実効誘電率を更に低下させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記合金膜は、前記埋込み配線の底面及び側面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置である。
配線の底面及び側面の形成される熱拡散防止膜は、PVD、CVD、ALD法によって形成されるTi,Ta,W,Ruまたはその窒化物、または珪窒化物が主流になっている。この熱拡散防止膜を、ウェット処理である無電解めっき法を用いて形成した合金膜で構成することで、真空排気設備等を不要なして設備投資を低減することができる。また、埋込み配線の形成における配線材料の埋込み工程をウェット処理(湿式)で行う場合、連続しての処理が可能となり、これによって、工程の管理が容易になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記配線材料は、銅、銅合金、銀、銀合金、金または金合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置である。
配線金属としては様々なものが考えられるが、無電解めっきによる合金膜で配線を保護することが要求される半導体装置は、一般に高集積化されたものに限られる。このように高集積化された半導体装置の配線材料として、銅、銅合金、銀、銀合金、金または金合金を使用することで、半導体装置の高速化、高密度化を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、下地表面にめっき前処理を施し、前記めっき前処理後の下地表面に、ニッケルまたはコバルトのモル濃度を1とした場合に、タングステンまたはモリブデンのモル濃度を0.5〜4.0、リンまたはボロンを含む還元剤のモル濃度を1〜15とした成分濃度比を有し、pHを8.0〜9.5とした無電解めっき用の処理液を接触させて合金膜を成膜する特徴とすることを半導体装置の製造方法である。
【0016】
これにより、めっき反応によって析出した合金膜内に、WまたはMoを1〜9atomic%含有させて、めっき反応の際に配線パターンの粗密等に依存する供給速度に差が発生し、結果としてめっきの成膜速度に差がでることを抑制するとともに、合金膜の熱的安定性を増加させ、酸素や銅等の不純物が合金膜を透過して拡散するのを防止することができる。
また、めっき反応によって析出した合金膜内に、PまたはBを3〜12atomic%含有させ、CoまたはNiの周りにPまたはBを存在させることによって、不純物の合金膜外への拡散を抑え、合金膜に、酸化防止膜や配線金属の拡散防止膜として機能を持たせることができる。なお、合金膜と不純物とで化合物を作る場合もあり、これによって、合金膜の酸化防止膜等としての機能を助長させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、基板上の絶縁体内に形成した配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した埋込み配線を下地として、この表面にめっき前処理を施すことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記処理液中のナトリウムの含有量が、1g/L以下であることを特徴とする請求項5または6記載の半導体装置の製造方法である。
一般に、無電解めっき液の各成分にはアルカリ金属塩やアンミン塩が使われ、pH調整剤にはKOH、NaOH、Ca(OH)、アンモニアまたはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を代表とした有機アルカリの水溶液が用いられる。しかし、ナトリウムは、半導体素子中に拡散すると、半導体素子の特性を変えてしまう。またナトリウムは、例えばカリウムに比べて対イオンと安定な錯体を形成しやすく、液温を下げた際に析出物を生成しやすい(溶解度が低い)。このため、無電解めっきに使用される処理液中のナトリウムの含有量を1g/L以下とし、替わりにカリウム等を導入することによって、安定したプロセスを提供することが可能になる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記処理液中のアンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量が、0.1mol/L以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法である。
一般に、無電解めっき液の各成分にはアルカリ金属塩やアンミン塩が使われ、pH調整剤にはKOH、NaOH、Ca(OH)、アンモニアまたはTMAHを代表とした有機アルカリの水溶液が用いられる。しかし、アンモニアは、めっき液中の金属と安定な錯体を形成して反応の開始を妨げてしまい、結果としてめっき液の寿命が短くする。また、アンモニアは、揮発しやすい為、液管理を煩雑にすることもある。このため、無電解めっきに使用される処理液中のアンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量を0.1mol/L以下とし、対イオンとして、カリウム等を導入することによって、安定したプロセスを提供することが可能になる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記処理液の前記下地表面に接触する際の温度が50〜90度であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法である。
このように、下地表面に接触する際における処理液の温度を50〜90度とすることで、処理液の反応性を一定にして、膜厚の面内均一性に優れた合金膜(めっき膜)を得ることができる。この処理液の温度は、60〜75度とすることが更に好ましい。
【0021】
請求項10に記載の発明は、ニッケルまたはコバルトのモル濃度を1とした場合に、タングステンまたはモリブデンのモル濃度を0.5〜4.0、リンまたはボロンを含む還元剤のモル濃度を1〜15とした成分濃度比を有し、pHを8.0〜9.5としたことを特徴とする処理液である。
【0022】
請求項11に記載の発明は、ナトリウムの含有量が1g/L以下であることを特徴とする請求項10記載の処理液である。
請求項12に記載の発明は、アンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量が0.1mol/L以下であることを特徴とする請求項10または11記載の処理液である。
【0023】
請求項13に記載の発明は、クエン酸塩または酒石酸塩、及びホウ酸または4ホウ酸塩を含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の処理液である。
金属の錯化剤として、クエン酸や酒石酸等のカルボン酸を含み、アンモニアを多く含まないクエン酸塩または酒石酸塩を使用することで、連続して加熱した時に錯体の形が変化することを防止して、安定した析出を行うことができる。また、ホウ酸、4ホウ酸塩はアンモニアが殆ど存在しない浴では反応界面でのpH緩衝作用を示すので、ホウ酸または4ホウ酸塩を含むことで、安定しためっき反応を得ることができる。
【0024】
請求項14に記載の発明は、前記クエン酸塩または前記酒石酸塩は、対イオンとしてカリウムを有し、前記4ホウ酸塩も、対イオンとしてカリウムを有することを特徴とする請求項13記載の処理液である。
対イオンとしてナトリウムを有するクエン酸塩等は、一般に溶解度が低く、処理液中で結晶化する可能性がある。また、対イオンとしてアンモニアを有するクエン酸塩等は、沸点が一般に低く、このため、加温時に揮発して液管理が煩雑になる。これに対して、クエン酸塩等の対イオンとしてカリウムを選択することで、安定しためっき処理を再現性良く行うことができる。
【0025】
請求項15に記載の発明は、ホスフィン酸塩を更に含むことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の処理液である。
無電解めっき液中において、ホスフィン酸(次亜リン酸)は、主に還元剤として作用する。無電解めっきの還元剤としては、DMAB(ジメチルアミンボラン)やヒドラジン等が一般に知られている。しかし、DMAB(ジメチルアミンボラン)やヒドラジン等は、液中における安定性が一般に乏しく、液の寿命が短くなる。これに対して、ホスフィン酸は、比較的安定であり、これを還元剤とすることで、液の寿命を長することができる。
【0026】
請求項16に記載の発明は、前記ホスフィン酸塩は、対イオンが水素イオンであるホスフィン酸の水溶液であることを特徴とする請求項15記載の処理液である。
ホスフィン酸(次亜リン酸)イオンの供給塩としては、ホスフィン酸ナトリウムやホスフィン酸アンモニウムが一般に知られている。これらの塩にあっては、前記の通り、溶解度と半導体汚染の問題(ナトリウム)や、浴の寿命の問題(アンモニア)がある。そこで、対イオンを含まない(対イオンが水素イオンである)ホスフィン酸(次亜リン酸):HPOの水溶液を使用することで、上記の問題に対応できる浴を作ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、配線パターンへの依存性を軽減しつつ、基板の全域に亘ってより均一な膜厚で形成した、例えば酸素や銅に対する拡散防止効果を有する必要最小限の膜厚の合金膜で配線を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。この例では、金属下地としての銅からなる配線の露出表面を、CoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)で選択的に覆って、配線(金属下地)を配線保護膜(合金膜)で保護するようにした例を示す。
【0029】
図2は、半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す。先ず、図2(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材41上の導電層41aの上に、例えばSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等の絶縁膜(層間絶縁膜)42を堆積し、この絶縁膜42の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのビアホール43と配線溝44を形成し、その上にTaN等からなるバリア層45、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層46をスパッタリング等により形成する。
【0030】
そして、図2(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wのビアホール43及び配線溝44内に銅を充填させるとともに、絶縁膜42上に銅層47を堆積させる。その後、化学的機械研磨(CMP)などにより、絶縁膜42上のバリア層45,シード層46及び銅層47を除去して、ビアホール43及び配線溝44内に充填させた銅層47の表面と絶縁膜42の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図2(c)に示すように、絶縁膜42の内部にシード層46と銅層47からなる配線(銅配線)48を形成する。
【0031】
本発明の半導体装置は、上記のようにして基板Wに形成した配線48の露出表面を、図3(a)に示すように、CoWP合金からなる配線保護膜50で選択的に覆って保護し、更に、基板Wの表面に、図3(b)に示すように、SiNやSiC等の酸化防止膜52を形成する。そして、図3(c)に示すように、この酸化防止膜52の表面に、例えばSiOやSiOF等の絶縁膜(層間絶縁膜)54を積層して、多層配線構造を構成するようにしている。
【0032】
ここで、配線保護膜50は、この例では、W(タングステン)を1〜9atomic%、P(リン)を3〜12atomic%含有するCoWP合金から構成されている。このように、Wが1〜9atomic%含有するCoWP合金膜は、反応の際に配線パターンの粗密等に依存して供給速度に差が発生し、成膜速度に差が出ることを抑制しつつ、無電解めっきよって、基板Wの全域に渡ってより均一な膜厚で成膜される。これによって、配線パターンへの依存性を軽減しつつ、基板Wの全域に亘ってより均一な膜厚で成膜した配線保護膜(合金膜)50で配線48の露出表面を覆って該配線48を保護することができる。しかも、配線保護膜50中にWを含むことで、配線保護膜50の熱的安定性が増加し、酸素や銅等の不純物が配線保護膜50を透過して拡散するのを防止することができる。
合金膜の組成分析には、例えばICP−発光分光分析法が用いられる。
【0033】
また、CoWP合金膜中にPを3〜12atomic%含有することで、合金膜がアモルファスまたは微結晶化する。このため、下地となる配線48の配向性の影響を殆ど受けることなく、表面粗さの良好な配線保護膜50を無電解めっきで成膜することができる。更には、他の不純物が配線保護膜50中を移動しづらくしたり、また、Pが不純物や配線金属、たとえば銅と結合して安定化したりする場合も有り、これによって、不純物や配線金属が拡散するのを防止することができる。
【0034】
このように、配線48の露出表面をCoWP合金からなる配線保護膜50で選択的に覆って該配線48を保護することで、配線48が大気中に曝され酸化等により変質されるのを防止し、しかも、配線保護膜50を介して、配線48とその上に積層される酸化防止膜52等の絶縁膜との密着性を向上させることができる。この例では、酸化防止膜52は、一般に誘電率が4〜7とやや高めのSiNやSiC等で形成されているが、配線48の露出表面に配線保護膜(合金膜)50を選択的に形成することで、SiNやSiC等の代わりに、酸化防止能力が多少低いが誘電率の低い材料を酸化防止膜52として使用することが可能となり、場合によっては、酸化防止膜52を排除して、合金膜50の上に直接、絶縁膜(層間絶縁膜)54を積層することができる。これにより、配線48間の実効誘電率を更に低下させることができる。
【0035】
なお、この例では、配線保護膜50をCoWP合金で構成しているが、Coの代わりにNiを、Wの代わりにMo(モリブデン)を、Pの代わりにB(ボロン)をそれぞれ使用してもよい。
【0036】
また、この例では、配線48の底面及び側面に、TaN等からなるバリア層45を形成した例を示している。このバリア層45を、前述と同様な、無電解めっきで成膜されるCoPW合金で構成するようにしてもよい。このように、熱拡散防止膜としてのバリア層45を、ウェット処理である無電解めっき法を用いて形成したCoWP合金膜で構成することで、真空排気設備等を不要なして設備投資を低減することができる。また、埋込み配線の形成における配線材料の埋込み工程を、例えば電解めっき等のウェット処理(湿式)で行う場合、連続しての処理が可能となり、これによって、工程の管理が容易になる。
【0037】
配線材料としては、銅の他に、例えば銅合金、銀、銀合金、金または金合金が使用される。配線金属としては様々なものが考えられるが、無電解めっきによる合金膜で配線を保護することが要求される半導体装置は、一般に高集積化されたものに限られる。このように高集積化された半導体装置の配線材料として、銅、銅合金、銀、銀合金、金または金合金を使用することで、半導体装置の高速化、高密度化を図ることができる。
【0038】
図4は、図3(a)に示すように、配線48の露出表面に配線保護膜(合金膜)50を選択的に形成するのに使用される半導体製造装置の一例を示す。図4に示すように、この半導体製造装置には、配線48を形成した基板を収容した基板カセット10を載置収容するロード・アンロードユニット12が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状ハウジング16の一方の長辺側に沿った位置に、基板のめっき前処理、すなわち基板の表面を清浄化する第1前処理ユニット18、同じく清浄化後の配線48の表面に触媒を付与して活性化させる第2前処理ユニット20及び基板Wの表面(被処理面)に無電解めっき処理を行って配線保護膜(合金膜)50を成膜する無電解めっきユニット22が直列に配置されている。
【0039】
また、ハウジング16の他方の長辺側に沿った位置に、無電解めっきによって基板の表面に形成された配線保護膜50の選択性を向上させるための基板の後処理を行う後処理ユニット24、後処理後の基板を乾燥させる乾燥ユニット26、乾燥後の基板Wに熱処理(アニール)を施す熱処理ユニット28及び配線保護膜50の膜厚を測定する膜厚測定ユニット30が直列に配置されている。更に、ハウジング16の長辺と平行にレール32に沿って走行自在で、これらの各ユニット及びロード・アンロードユニット12に搭載された基板カセット10との間で基板の受渡しを行う搬送ロボット34が、直線状に配置された各ユニットに挟まれた位置に配置されている。
【0040】
ここで、ハウジング16には遮光処理が施され、これによって、このハウジング16内での以下の各工程を遮光状態で、つまり、配線に照明光等の光が当たることなく行えるようになっている。このように、配線に光を当たることを防止することで、例えば銅からなる配線に光が当たって光電位差が生じ、この光電位差によって配線が腐食してしまうことを防止することができる。
【0041】
次に、この半導体製造装置による一連の処理について説明する。
先ず、図2(c)に示す、表面に配線48を形成し乾燥させた基板Wを該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納してロード・アンロードユニット12に搭載した基板カセット10から、1枚の基板Wを搬送ロボット34で取り出して第1前処理ユニット18に搬送する。この第1前処理ユニット18では、基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に、めっき前処理としての清浄化処理(薬液洗浄)を行う。つまり、例えば液温が25℃で、希釈蓚酸等の薬液を基板Wの表面に向けて噴射して、絶縁膜42の表面に残った銅等のCMP残さや配線膜上の酸化物等を除去し、しかる後、基板Wの表面に残った洗浄楽液を純水等のリンス液でリンス(洗浄)する。
【0042】
ここで使われる薬液としては、pHが2以下のふっ酸、硫酸、塩酸等の無機酸や、蟻酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、サリチル酸等のpH5以下のキレート能力を有する酸、pH5以下の酸であってハロゲン化物、カルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸ならびにその水溶性塩等のキレート剤が添加されているもの等があげられる。これらの薬液を使用した清浄化処理を施すことによって、絶縁膜42上に残った銅等からなるCMP残さやめっき下地表面の酸化物を除去し、めっきの選択性や下地との密着性を向上させることができる。
【0043】
次に、この清浄化処理及びリンス処理後の基板Wを搬送ロボット34で第2前処理ユニット20に搬送し、ここで基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に触媒付与処理を行う。つまり、例えば、液温が25℃で、PdCl/HCl等の混合溶液を基板Wの表面に向けて噴射し、これにより、配線48の表面に触媒としてのPdを付着させ、つまり配線48の表面に触媒核(シード)としてのPd核を形成して、配線48の表面配線の露出表面を活性化させ、しかる後、基板Wの表面に残った触媒薬液を純水等のリンス液でリンス(洗浄)する。
【0044】
このように、基板Wの表面に触媒を付与することによって、無電解めっきの選択性を高めることができる。ここで、触媒金属としては、様々な物質があるが、反応速度、その他制御のし易さなどの点からPdを使うことが好ましい。
【0045】
そして、この触媒を付与しリンス処理した基板Wを搬送ロボット34で無電解めっきユニット22に搬送し、ここで基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に無電解めっき処理を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液(処理液)中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線48の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施して、配線保護膜(合金膜)50を選択的に形成する。
【0046】
この無電解めっきには、Coのモル濃度を1とした場合に、Wのモル濃度を0.5〜4.0、Pを含む還元剤のモル濃度を1〜15とした成分濃度比を有し、pHを8.0〜9.5とした処理液(無電解めっき液)が使用される。
【0047】
これにより、めっき反応によって析出した配線保護膜(合金膜)50内に、Wを1〜9atomic%含有させて、めっき反応の際に配線パターンの粗密等に依存する供給速度に差が発生し、結果としてめっきの成膜速度に差がでることを抑制するとともに、配線保護膜50の熱的安定性を増加させ、酸素や銅等の不純物が配線保護膜50を透過して拡散するのを防止することができる。また、めっき反応によって析出した配線保護膜50内に、Pを3〜12atomic%含有させ、Coの周りにPを存在させることによって、不純物の配線保護膜50外への拡散を抑え、配線保護膜50に、酸化防止膜や配線金属の拡散防止膜として機能を持たせることができる。なお、配線保護膜50と不純物とで化合物を作る場合もあり、これによって、配線保護膜50の酸化防止膜等としての機能を助長させることができる。
【0048】
処理液中のナトリウムの含有量は、1g/L以下であることが好ましく、また、アンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量は、0.1mol/L以下であることが好ましい。
【0049】
一般に、無電解めっき液の各成分にはアルカリ金属塩やアンミン塩が使われ、pH調整剤にはKOH、NaOH、Ca(OH)、アンモニアまたはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を代表とした有機アルカリの水溶液が用いられる。しかし、ナトリウムは、半導体素子中に拡散すると、半導体素子の特性を変えてしまうばかりでなく、例えばカリウムに比べて対イオンと安定な錯体を形成しやすく、液温を下げた際に析出物を生成しやすい(溶解度が低い)。一方、アンモニアは、めっき液中の金属と安定な錯体を形成して反応の開始を妨げてしまい、結果としてめっき液の寿命が短くするばかりでなく、揮発しやすい為、液管理を煩雑にすることもある。
【0050】
このため、処理液中のナトリウムの含有量を1g/L以下とし、替わりにカリウム等を導入することによって、また、アンモニア塩及び/または水酸化テトラメチルアンモニウムの含有量を0.1mol/L以下とし、対イオンとしてカリウム等を導入することによって、安定したプロセスを提供することが可能になる。
【0051】
処理液には、好ましくは、クエン酸塩または酒石酸塩、及びホウ酸または4ホウ酸塩が含まれている。金属の錯化剤として、クエン酸や酒石酸等のカルボン酸を含み、アンモニアを多く含まないクエン酸塩または酒石酸塩を使用することで、連続して加熱した時に錯体の形が変化することを防止して、安定した析出を行うことができる。また、ホウ酸、4ホウ酸塩はアンモニアが殆ど存在しない浴では反応界面でのpH緩衝作用を示すので、ホウ酸または4ホウ酸塩を含むことで、安定しためっき反応を得ることができる。
【0052】
クエン酸塩または酒石酸塩は、対イオンとしてカリウムを有し、前記4ホウ酸塩も、対イオンとしてカリウムを有することが好ましい。対イオンとしてナトリウムを有するクエン酸塩等は、一般に溶解度が低く、処理液中で結晶化する可能性がある。また、対イオンとしてアンモニアを有するクエン酸塩等は、沸点が一般に低く、このため、加温時に揮発して液管理が煩雑になる。これに対して、クエン酸塩等の対イオンとしてカリウムを選択することで、安定しためっき処理を再現性良く行うことができる。
【0053】
処理液には、好ましくは、ホスフィン酸塩が更に含まれている。無電解めっき液中において、ホスフィン酸(次亜リン酸)は、主に還元剤として作用する。無電解めっきの還元剤としては、DMAB(ジメチルアミンボラン)やヒドラジン等が一般に知られている。しかし、DMAB(ジメチルアミンボラン)やヒドラジン等は、液中における安定性が一般に乏しく、液の寿命が短くなる。これに対して、ホスフィン酸は、比較的安定であり、これを還元剤とすることで、液の寿命を長することができる。また、積極的に液の寿命を延ばす場合には、安定化剤とよばれる、有機物を液に導入する場合がある。具体的には、チオジプロピオン酸、チオジグリコール酸、チオ尿素、2−アミノチアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等の含硫黄有機物を100ppm以下で導入したり、ビピリジル、フェナントロリン等の含窒素有機物を導入したりすることで、Co、Ni、Cu等を主な金属イオン種とした無電解めっき液の寿命を延ばすことができる。
【0054】
ホスフィン酸塩は、対イオンが水素イオンであるホスフィン酸の水溶液であることが好ましい。ホスフィン酸(次亜リン酸)イオンの供給塩としては、ホスフィン酸ナトリウムやホスフィン酸アンモニウムが一般に知られている。これらの塩にあっては、前記の通り、溶解度と半導体汚染の問題(ナトリウム)や、浴の寿命の問題(アンモニア)がある。そこで、対イオンを含まない(対イオンが水素イオンである)ホスフィン酸(次亜リン酸):HPOの水溶液を使用することで、上記の問題に対応できる浴を作ることができる。
【0055】
ここで、無電解めっきによる配線保護膜(合金膜)50の成膜速度を、毎分1〜40nmとすることが好ましい。成膜速度は生産性に直結するため、あまり遅くすることが出来ないが、一方であまり早過ぎると、配線保護膜50の均一性及び再現性を確保できなくなる。配線保護膜50は、その目的からして、少なくとも5nm程度の膜厚を必要とし、かつ配線抵抗の上昇を最小限に抑える観点から、50nm程度以下の膜厚以下であることが求められる。この場合、成膜速度は、一般には毎分1〜40nm、好ましくは毎分2〜10nmであることが好適である。
【0056】
処理液の液温については、処理液が金属下地である配線48の表面に接触する際の温度が50〜90度であることが好ましく、これにより、処理液の反応性を一定にして、膜厚の面内均一性に優れた配線保護膜(合金膜)50を得ることができる。この処理液の温度は、60〜75度とすることが更に好ましい。
【0057】
例えば、配線48の露出表面を覆って該配線48を保護する配線保護膜50を成膜するのに用いる無電解めっき液には各種のものがあり、いずれも加温を必要とするが、液温が50℃以下のめっき液を使用すると充分な成膜速度が得られず、また液温が90℃以上のめっき液を使用すると成膜速度が速すぎかつ水分の蒸発が著しいなどのため安定した成膜が行い難くなる。このため、基板の温度として50〜90℃の液温に設定しためっき液に基板を接触させて無電解めっきによる成膜を行うことで、再現性の良い成膜を行うことができる。
【0058】
そして、基板Wをめっき液から引き上げた後、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液を基板Wの表面に接触させて、無電解めっき処理を停止させる。これにより、基板Wをめっき液から引き上げた直後にめっき反応を迅速に停止させて、めっき膜にめっきむらが発生することを防止することができる。この処理時間は、例えば1〜5秒であることが好ましい。この停止液としては、純水、水素ガス溶解水、または電解カソード水が挙げられる。前述と同様に、表面の材料構成によっては配線材料が局部電池作用などにより腐食することがあり、このような場合に、還元性を持たせた超純水でめっきを停止させることで、このような弊害を回避することができる。
【0059】
しかる後、基板の表面に残っためっき液を純水等のリンス液でリンス(洗浄)する。これによって、配線48の表面に、CoWP合金膜からなる配線保護膜50を選択的に形成して配線48を保護する。
【0060】
次に、この無電解めっき処理後の基板Wを搬送ロボット34で後処理ユニット24に搬送し、ここで、基板Wの表面に形成された配線保護膜(合金膜)50の選択性を向上させて歩留りを高めるための基板後処理を施す。つまり、基板Wの表面に、例えばロールスクラブ洗浄やペンシル洗浄による物理的な力を加えつつ、界面活性剤、有機アルカリ及びキレート剤のいずれか一種または二種以上を含む薬液に基板Wの表面に供給し、これにより、層間絶縁膜42上の金属微粒子等のめっき残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。これらの薬液を用いることで、無電解めっきの選択性を一層効率良く向上させることができる。なお、界面活性剤としては非イオン性のものが、有機アルカリとしては第4級アンモニウムないしアミン類が、またキレート剤としてはエチレンジアミン類または有機酸類が好ましい。
【0061】
そして、このように薬液を使用した場合には、基板Wの表面に残った薬液を純水等のリンス液でリンス(洗浄)する。このリンス液としては、純水、水素ガス溶解水、または電解カソード水が挙げられる。前述と同様に、表面の材料構成によっては配線材料が局部電池作用などにより腐食することがあるが、このような場合に、還元性を持たせた超純水でリンスすることで、このような弊害を回避することができる。
【0062】
なお、前述の、例えばロールスクラブ洗浄やペンシル洗浄による物理的な力による洗浄の他に、錯化剤による洗浄、更にはエッチング液による均一エッチングバック等により、更にはこれらを任意に組み合わせて層間絶縁膜上の残留物を完全に取り除くようにしてもよい。
そして、この後処理後の基板Wを搬送ロボット34で乾燥ユニット26に搬送し、ここで必要に応じてリンス処理を行う、しかる後、基板Wを高速で回転させてスピン乾燥させる。
【0063】
これにより、基板Wの表面に形成した埋込み配線48の露出表面に、無電解めっきによって配線保護膜50を形成する一連の処理を連続して行うことができ、しかも乾燥状態まで基板を仕上げるので、そのまま次工程に搬送することが可能となるばかりでなく、次工程にかかるまでの間での配線保護膜(合金膜)50の劣化を抑えることができる。
【0064】
この基板Wを乾燥状態にする乾燥処理(スピン乾燥)を行う際に、乾燥空気または乾燥不活性ガスを用いて基板の周囲における雰囲気の湿度を制御することが好ましい。通常の雰囲気下で乾燥を行うと、基板上の水分が雰囲気中に飛散して湿度が高まり、乾燥処理をしたとはいえ基板表面には多量の水分が吸着ししており、このままでは、吸着水分によって配線部分が酸化されるなど新たな問題を引き起こす可能性がある。またスピンドライヤでのミストバックによる、ウォータ・マーク発生などの問題も想定される。このため、乾燥時の雰囲気湿度を乾燥空気または乾燥窒素を用いて制御することで、このような弊害を回避することができる。
【0065】
このスピン乾燥後の基板Wを搬送ロボット34で熱処理ユニット28に搬送し、ここで、後処理後の基板Wに配線保護膜50を改質する熱処理(アニール)を施す。配線保護膜50の改質に必要な温度としては、処理時間の現実性も含めて考えると、少なくとも120℃以上であり、かつデバイスを構成する材料の耐熱性を考慮すると450℃を超えないことが望ましい。このため、この熱処理(アニール)の温度は、例えば120〜450℃である。このように基板Wに熱処理を施すことで、配線の露出表面に形成した配線保護膜50のバリア性及び配線48との密着性を向上させることができる。
【0066】
次に、熱処理後の基板Wを搬送ロボット34で、例えば光学式、AFM、EDX等の膜厚測定ユニット30に搬送し、この膜厚測定ユニット30で配線48の表面に形成された配線保護膜50の膜厚を測定し、この膜厚測定後の基板Wを搬送ロボット34でロード・アンロードユニット12に搭載された基板カセット10に戻す。
【0067】
そして、この配線48の露出表面に形成した配線保護膜50の膜厚をオンラインまたはオフラインで測定した測定結果を無電解めっき処理の前にフィードバックし、これにより、この膜厚の変動に応じて、例えば次の基板に対するめっき処理の処理時間を調整する。このように、配線48の露出表面に形成した配線保護膜50の膜厚を測定し、この膜厚の変動に応じて、例えば次の基板に対するめっき処理の処理時間を調整することで、配線48の露出表面に形成される配線保護膜50の膜厚を一定に制御することができる。
【0068】
なお、配線48の露出表面に配線保護膜50を選択的に形成するに際して、配線48の露出表面を清浄化する工程に先だって、化学機械的研磨、電気化学的研磨または複合電気化学的研磨のいずれかにより配線48の露出表面の平坦化を行うことが好ましく、これによって、配線保護膜50のより平坦化を図ることができる。
また、この例では、CoWP無電解めっき用の処理液を用いて、CoWP合金膜を形成するようにした例を示しているが、Coの代わりにNiを、Wの代わりにMoを、Pの代わりにBをそれぞれ使用しても良い。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
図5(a)に示す、配線幅0.25μmでパッド60,60間を直線状に繋ぐ長さ約3mmの銅からなる孤立配線62と、図5(b)に示す、配線幅0.25μm、間隔0.25μmで平行に配置されパッド64,64間を繋ぐ長さ約300mmの銅からなる密集配線66が混在する200mmウエハを試料として用意した。これらの配線62,66は、Taからなるバリア層及び銅シード層をスパッタリングにより形成し、銅を電解めっきで埋込んだ後、CMP処理を施し平坦化して形成した。
【0070】
先ず、試料を割断し、該試料を室温の蓚酸(2wt%)に1分間浸漬させた後、純水にて洗浄し、触媒処理として、0.1g/L:PdClと0.1M:HCLの混合液中に30秒間浸漬させた。その後、純水にて洗浄し、下記の組成の昇温させためっき液(処理液)中に2分間浸漬させて、配線の表面に合金膜(配線保護膜)を形成した。しかる後、純水にて洗浄し、乾燥処理を行った。この処理後の試料の断面観察をSEMにて行って評価した。合金膜の膜厚は層間絶縁膜の表面より突出した部分を成膜した膜厚として計算した。合金膜の組成は、試料を王水にて溶解させた後、ICP−発光分析法を用いて測定した。
【0071】
めっき液組成(mol/L)
CoSO・7HO 0.05
・HO 0.3
BO 0.55
WO 0.002
PO(水溶液) 0.1
pH 9.0
【0072】
この結果、孤立配線62にあっては、図6(a)に示すように、この表面に膜厚tが40nmの合金膜68が形成され、密集配線66にあっては、図6(b)に示すように、この表面に表面に膜厚tが20nmの合金膜70が形成され、この膜厚比t:tは、2:1(t:t=2:1)であった。この膜厚比は、従来例(例えば、6.5:1程度)に比べ、遙かに改善された値である。この時、合金膜の組成Co:W:P(atomic%)は、89:4:7(Co:W:P(atomic%)=89:4:7)であった。
【0073】
(実施例2)
実施例1と同様な試料を用意し、下記の組成のめっき液(処理液)を用い、その他の条件を実施例1と同様にして配線の表面に合金膜(配線保護膜)を形成して、合金膜の膜厚及び合金膜の組成を求めた。
めっき液組成(mol/L)
CoSO・7HO 0.05
・HO 0.3
BO 0.55
WO 0.002
PO(水溶液) 0.2
pH 9.0
【0074】
この結果、図6(a)に示す、孤立配線62の表面に形成された合金膜68の膜厚tは100nmで、図6(b)に示す、密集配線66の表面に形成された合金膜70の膜厚tは20nmで、この膜厚比t:tは、5:1(t:t=5:1)であった。この膜厚比は、従来例(例えば、6.5:1程度)に比べ、改善された値である。この時、合金膜の組成Co:W:P(atomic%)は、88:2:10(Co:W:P(atomic%)=88:2:10)であった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】無電解めっきによって配線保護膜を形成した状態を示す断面図である。
【図2】半導体装置における銅配線形成例のCMP処理までを工程順に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の半導体装置における銅配線形成例のCMP処理後を工程順に示す図である。
【図4】半導体製造装置の一例を示す平面配置図である。
【図5】実施例における試料に形成される孤立配線と密集配線を示す平面図である。
【図6】実施例における孤立配線と密集配線の表面に形成される合金膜を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
18,20 前処理ユニット
22 無電解めっきユニット
24 後処理ユニット
26 乾燥ユニット
28 熱処理ユニット
30 膜厚測定ユニット
41 半導体基材
42 絶縁膜
43 ビアホール(配線用凹部)
44 配線溝(配線用凹部)
45 バリア層
46 シード層
47 銅層
48 配線
50 配線保護膜(合金膜)
52 酸化防止膜
54 絶縁膜
62 孤立配線
66 密集配線
68,70 合金膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の絶縁体内に形成した配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した埋込み配線の周囲の少なくとも一部に、タングステンまたはモリブデンを1〜9atomic%、リンまたはボロンを3〜12atomic%含有するニッケルまたはコバルトの合金膜を無電解めっきで形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記合金膜は、前記埋込み配線の露出表面に選択的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記合金膜は、前記埋込み配線の底面及び側面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線材料は、銅、銅合金、銀、銀合金、金または金合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
下地表面にめっき前処理を施し、
前記めっき前処理後の下地表面に、ニッケルまたはコバルトのモル濃度を1とした場合に、タングステンまたはモリブデンのモル濃度を0.5〜4.0、リンまたはボロンを含む還元剤のモル濃度を1〜15とした成分濃度比を有し、pHを8.0〜9.5とした無電解めっき用の処理液を接触させて合金膜を成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板上の絶縁体内に形成した配線用凹部内に配線材料を埋込んで形成した埋込み配線を下地として、この表面にめっき前処理を施すことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記処理液中のナトリウムの含有量が、1g/L以下であることを特徴とする請求項5または6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記処理液中のアンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量が、0.1mol/L以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記処理液の前記下地表面に接触する際の温度が50〜90度であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
ニッケルまたはコバルトのモル濃度を1とした場合に、タングステンまたはモリブデンのモル濃度を0.5〜4.0、リンまたはボロンを含む還元剤のモル濃度を1〜15とした成分濃度比を有し、pHを8.0〜9.5としたことを特徴とする処理液。
【請求項11】
ナトリウムの含有量が1g/L以下であることを特徴とする請求項10記載の処理液。
【請求項12】
アンモニアもしくはその塩及び/または有機アルカリもしくはその塩の含有量が0.1mol/L以下であることを特徴とする請求項10または11記載の処理液。
【請求項13】
クエン酸塩または酒石酸塩、及びホウ酸または4ホウ酸塩を含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の処理液。
【請求項14】
前記クエン酸塩または前記酒石酸塩は、対イオンとしてカリウムを有し、前記4ホウ酸塩も、対イオンとしてカリウムを有することを特徴とする請求項13記載の処理液。
【請求項15】
ホスフィン酸塩を更に含むことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の処理液。
【請求項16】
前記ホスフィン酸塩は、対イオンが水素イオンであるホスフィン酸であることを特徴とする請求項15記載の処理液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−93357(P2006−93357A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276109(P2004−276109)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】