説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 半導体装置及びその製造方法に関し、ダマシン構造を有する銅多層配線を構成するトレンチのCMP工程後に露出した低誘電率膜表面のダメージを回避して配線信頼性を確保するとともに、直列抵抗の増大を抑制する。
【解決手段】 ポーラス絶縁膜に設けた凹部に埋め込まれた第1の金属膜の少なくとも頂面を、前記ポーラス絶縁膜の頂面と整合する高さまでZr及びBを含む第2の金属膜で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びその製造方法に関するものであり、特に、シングル・ダマシンまたはデュアル・ダマシン型の埋込ビア及び/又は埋込配線層を形成する際にポーラスシリカ系塗布膜の受けるダメージを回避し、配線信頼性を確保するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の電極材料、配線材料としては、アルミニウムが広く実用されてきたが、近年の半導体装置の微細化や処理の高速化の要求に伴い、電極や配線の形成をアルミニウムで対応することは困難になってきている。
そのため、アルミニウムの次世代材料として、エレクトロマイグレーションに強く、比抵抗がアルミニウムより小さな銅を利用する試みが進められている。
【0003】
電極材料や配線材料として銅を用いる場合、銅が選択エッチングの困難な材料であることから、電極や配線はダマシン法により埋込電極或いは埋込配線として形成されることになるが、この場合は、形成される電極や配線のアスペクト比を高くすることによって、半導体装置の微細化、高速化を実現することが可能になる。
【0004】
一方、半導体装置の高速化のためには、配線・電極の低抵抗化とともに、寄生容量を低減するためには層間絶縁膜の低誘電率化が必要となり、低誘電率の層間絶縁膜としてポリアエーテル等の低誘電率の有機絶縁材料(例えば、ダウケミカル社登録商標SiLK)やポーラスシリカの採用が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ダマシン法により多層配線構造を形成する場合には、絶縁膜に配線溝を形成し、その配線溝の底面および側面上を含む絶縁膜上に導電性バリア膜と銅の主導体膜を形成し、CMP法により不要な部分を除去して埋込Cu配線を形成する。
このような工程を繰り返すことによって、多層配線構造を形成している。
【0006】
近年の配線の微細化にともない、信号遅延を回避するため層間絶縁膜としてk値の低い所謂Low−k材料が適用されている。
Low−k材料は一般には空孔を有することでk値を下げているが、空孔があるが故にバルク強度は低くプラズマに対する耐性も脆弱になっている。
【0007】
そこで、この様なダマシン工程では、埋込Cu配線の頂面が露出した状態で、次層のポーラスLow−k膜からなる層間絶縁膜を堆積することになるため、Cuの拡散を防止することを目的に、まず、k値が3以上の高密度のバリア絶縁膜を形成したのち、低誘電率膜を形成している。
【0008】
しかし、ポーラスLow−k膜上に高密度のバリア絶縁膜を成膜すると成膜時のプラズマにより、ポーラスLow−k膜表面がダメージを受けたり高密度化が起こり、k値が上昇する。
また、バリア絶縁膜を成膜することで工程数が増えるとともに、バリア絶縁膜の誘電率が低誘電率化の妨げになり、そのため、ポーラスLow−k膜の本来の低いk値を活かした埋込Cu多層配線の形成のメリットを発揮出来なくなるという問題が発生している。
【0009】
近年、配線全体のk値、所謂keff を下げることが求められていることから、埋込Cu配線を形成する際、Cu研磨後に空孔を有するポーラスLow−k材料が表面に露出する構造をとるようになってきた。
【0010】
そこで、埋込Cu配線の頂面からのCuの拡散を防止するために、埋込Cu配線の頂面をバリア性の或るダングステン等からなる金属キャップ層で覆うことが提案されている(例えば、特許文献2或いは特許文献3参照)。
例えば、特許文献2においては、CMP法による埋込Cu配線を平坦化したのち、埋込Cu配線の一部をリセスして、そのリセス部に金属キャップ層を形成している。
この場合、埋込Cu配線のリセス工程において、低誘電率膜からなる層間絶縁膜の表面がエッチング雰囲気に晒されるため、低誘電率膜にダメージが入るという問題がある。
【0011】
また、特許文献3の場合には、低誘電率膜からなる層間絶縁膜の表面にバリアメタル層が残存する条件でCMP法により過剰研磨を行ってリセス部を形成し、このリセス部に金属キャップ層を形成している。
この場合には、リセス工程において、低誘電率膜の表面はバリアメタル層で覆われているので、低誘電率膜にダメージが入ることはない。
【0012】
一方、バリアメタル層として、従来のTa、TaN、TiN等に代えてZrB2 を用いることも提案されており、例えば、トレンチを形成した絶縁膜の表面にZr(BH4 4 ガスを利用してZr(BH4 4 を吸着させたのち、励起されたH2 ガス及び/又はNH3 ガスを導入して、吸着させたZr(BH4 4 と反応させてZrB2 膜或いはZrBN膜を低温プロセスにより形成している(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−071705号公報
【特許文献2】特開2007−042662号公報
【特許文献3】特開2007−035734号公報
【特許文献4】特開2006−057162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記の特許文献3においては、過剰研磨によりリセス部を形成しているので、時間管理に高い精度が要求されるとともに、パターンに疎密間差等が発生する可能性があり制御性が悪いという問題がある。
【0014】
また、従来の金属キャップ層を設ける方法の場合には、金属キャップに用いるバリアメタルの比抵抗が大きいため、耐拡散性を高めるために金属キャップ層を厚くすると、次層のビアと接続する部分の直列抵抗が大きくなり、高速化の妨げになるという問題がある。
【0015】
したがって、本発明は、ダマシン構造を有する銅多層配線において、トレンチのCMP後に露出した低誘電率膜表面のダメージを回避して配線信頼性を確保するとともに、直列抵抗の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、ポーラス絶縁膜に設けた凹部に埋め込まれた第1の金属膜の少なくとも頂面を、前記ポーラス絶縁膜の頂面と整合する高さまでZr及びBを含む第2の金属膜で覆った半導体装置が提供される。
【0017】
また、本発明の別の観点からは、半導体基板上にトランジスタを形成する工程と、前記半導体基板の上方にポーラス絶縁膜を形成する工程と、前記ポーラス絶縁膜に凹部を形成する工程と、前記ポーラス絶縁膜の上面及び前記凹部の内壁にバリア膜を形成する工程と、前記凹部を第1の金属膜で埋める工程と、前記第1の金属膜を前記ポーラス絶縁膜の上面の高さより低くなるようにリセスさせる工程と、前記リセスさせた部分と前記バリア膜の表面にZr及びBを含む第2の金属膜の形成工程と、前記凹部内の上部に前記第2の金属膜を残すように平坦化する工程とを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、Cu埋込層の表面をメタルキャップ層で覆っているのでポーラス絶縁膜上にバリア絶縁膜を介することなく、ポーラス絶縁層を直接成膜してもCuがポーラス絶縁膜中に拡散することがない。
また、メタルキャップ層としてZr及びBを含む金属を用いることによって低抵抗性と耐Cuバリア性を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)に示すように、まず、プラグ12を形成した下地絶縁膜11上にエッチングストッパ膜13を介してポーラスLow−k膜からなる層間絶縁膜14を設ける。
なお、この場合の層間絶縁膜14は、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、ポーラスHSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン)或いはポーラスMHSQ(メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン)等を塗布して、k値が2.4以下のポーラスLow−k膜で構成する。
なお、ポーラスLow−k膜は塗布型に限られるものでなく、CVD成長膜でも良い。
【0020】
次いで、図1(b)に示すように、配線用トレンチ15を形成したのち、バリアメタル膜16を堆積させたのち、Cuシード層を介して電解メッキによってCu膜17を配線用トレンチ15を完全に埋めるように堆積させる。
バリアメタル膜16の厚さは1〜20nm程度とする。
なお、バリアメタル膜16としては、CoWP、CoWB、WN、CoW、Ta、TaN、TiN、NiW、或いは、ZrB2 またはZrBN等を用いる。
次いで、図1(c)に示すように、CMP法を用いて平坦化を行い、Cu膜17を配線用トレンチ15内に埋め込む。
【0021】
次いで、図1(d)に示すように、バリアメタル膜16が残存した状態で、ウェット・エッチングによりCu膜17を選択的にエッチングバックして凹部18を形成する。
この時の凹部18の深さ、即ち、リセス深さは配線用トレンチ15の深さの0.05〜30%程度が望ましい。
【0022】
また、リセスの制御性に関しては、過酸化水素と塩酸の混合液或いはフッ酸過水等で制御された条件でリセスをウェットエッチすることで、CMPによる過剰研磨によりリセスを形成する場合に比べて、面内均一性良くリセスを形成することができる。
また、エッチング工程において、層間絶縁膜14の表面はバリアメタル膜16で被覆されているので、層間絶縁膜14の表面がダメージを受けることがない。
【0023】
次いで、図2(e)に示すように、凹部18を完全に埋め込むようにZrとBとを含む導電膜19を堆積させる。
この導電膜19は、典型的には、ZrB2 膜であるが、化学量論比から組成がずれたZrBx 或いはZrBN膜を用いても良い。
【0024】
本発明者は、ZrB2 (二硼化ジルコニウム)が低抵抗で且つCuのキャップバリア性に優れる材料であることを見出した。
例えば、バルクのTaNの比抵抗は135μΩcmであるのに対し、ZrB2 の比抵抗は10μΩcmである。
また、ZrB2 は、上記の特許文献4に記載されているような各種の方法で成膜するものであり、CVD法、PVD法、或いは、スパッタ法等を利用して成膜する。
【0025】
次いで、図2(f)に示すように、再びCMP法により凹部18に埋め込まれた導電膜19の厚さが5〜15nmになるように研磨して平坦化してバリアキャップ膜20とする。
この時、層間絶縁膜14の表面が露出することになる。
【0026】
次いで、図2(g)に示すように、全面にポーラスLow−k膜からなる第2の層間絶縁膜21を成長させる。
この時、Cu膜17の表面にはバリアキャップ膜20が設けられているので、第2の層間絶縁膜21中へのCuの拡散が抑制される。
なお、この場合の第2の層間絶縁膜21も、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、ポーラスHSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン)或いはポーラスMHSQ(メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン)等を塗布して、k値が2.4以下のポーラスLow−k膜で構成する。
【0027】
このようなMSQ等は、塗布型のSOG膜であるため、従来Cu表面のリークを防ぐために成膜していたプラズマSiCやSiCNのバリア絶縁膜の成膜に伴うプラズマダメージをポーラスLow−k膜からなる下層の層間絶縁膜14が受けることない。
【0028】
なお、層間絶縁膜14及び第2の層間絶縁膜21を構成するポーラス膜としてCVD法膜を選択することも可能である。
この場合も、第2の層間絶縁膜21の成膜の際、下地の層間絶縁膜14と同じポーラス膜が成膜されるため層間絶縁膜14上にダメージは入らない。
【0029】
以降は、シングルダマシン法の場合には、この第2の層間絶縁膜に上述の工程を経て表面がZrとBからなる導電膜19でキャップされたプラグを形成する。
或いは、デュアルダマシン法の場合には、第2の層間絶縁膜上に、ミドルストッパ膜及び第3の層間絶縁膜を順次堆積させ、第2の層間絶縁膜にビアホールを形成するとともに、第3の層間絶縁膜に配線用トレンチを形成して、表面がZrとBからなる導電膜19でキャップされたCu埋込配線とプラグとを同時に形成する。
【0030】
この時、プラグは、バリアキャップ膜20を介してCu膜17と接続することになるが、本発明においてはバリアキャップ膜20はZrとBからなる導電材料からなるので、直列抵抗が不所望に増大することはない。
なお、更に配線の微細化にともないビア径が縮小した場合には、例え低抵抗といえども、ZrB2 キャップの抵抗が影響してくるため、第2の配線におけるビア内のバリアメタル成膜の際にZrB2 キャップを除去して、下層の配線のCu膜17と直接プラグを接続させる構造をとっても差し支えない。
なお、ビア底のZrB2 キャップは、Arスパッタ等で容易に除去できる。
【0031】
さらに、上層の配線のバリアメタル成膜後にめっきでCuを析出させるために必要なCuシードを成膜するが、この際、バリアメタルがビア底に存在する状態で成膜しても良いが、ビアの接続抵抗を低減するためにCuシード成膜前にビア底のバリアメタルを除去してからCuシードを成膜しても良い。
【0032】
また、導電膜19を凹部18内に成膜する際、トレンチ側壁が逆テーパ形状になっていると、側壁と導電膜19の間に隙間が発生する可能性があるので、トレンチ開口部の側壁は順テーパ形状であることが望ましい。
【0033】
即ち、絶縁膜上などの不要箇所に堆積した導電膜19をCMPで除去する際、トレンチ上部のバリアキャップ膜20に第2のリセスが形成されることがある。
この場合、第2のリセス上に第2の層間絶縁膜21を構成するポーラスLow−k膜が成膜されるが、ポーラスLow−k膜が塗布型の場合はトレンチ側壁が逆テーパになっていても表面張力などの影響で第2のリセス内に塗布液が充填し、第2のリセス内に隙間なく上層のCu配線を形成することができる。
【0034】
しかし、ポーラスLow−k膜がCVD膜の場合、第2のリセス部のトレンチ側壁が逆テーパ形状を呈していると、コンフォーマルな成膜が出来ないために、上層の配線形成のためのポーラスLow−k膜成膜の際、逆テーパ部に隙間が発生する。
そのため、下層の配線上部に隙間が存在した状態で配線が形成されるため、配線間リークの発生にともなう信頼性の低下が起こるので、トレンチの上部側壁はテーパ形状であることが望ましいことになる。
【実施例1】
【0035】
以上を前提として、次に、図3を参照して、本発明の実施例1の半導体装置の製造工程を説明する。
図3は、本発明の実施例1による方法で作製した半導体装置の概略的断面図であり、まず、例えば、直径が300mmのシリコン基板31の表面に、シャロートレンチアイソレーション(STI)による素子分離絶縁膜32を形成し、この素子分離絶縁膜32で囲まれた活性領域内に、MOSFET33を形成する。
【0036】
このMOSFET33は、ゲート絶縁膜34、ゲート電極35、ソース領域36、及び、ドレイン領域37で構成され、ゲート電極35の両側にはサイドウォール38が設けられており、ソース領域36及びドレイン領域37のゲート電極寄りにはエクステンション領域が形成されている。
【0037】
次いで、全面にリンガラス(PSG)からなる厚さが、例えば、1.5μmの層間絶縁膜39を堆積させたのち、層間絶縁膜39を貫通するとともにソース領域36及びドレイン領域37に達する2本のビアホールを形成し、このビアホール内をCMP法を用いてタングステン(W)からなる導電性プラグ40,41で充填する。
【0038】
次いで、例えば、原料ガスとしてテトラメチルシランならびに炭酸ガスを用いたCVD法により、層間絶縁膜39上に比誘電率3.6のシリコンオキシカーバイド膜からなる厚さが、例えば、30nmのエッチングストッパ膜42を形成する。
この時の成膜条件は、例えば、
テトラメチルシランの流量:500sccm
炭酸ガスの流量:150sccm
圧力:約600Pa(4.5Torr)
13.56MHzのRF電力:600W
400kHzのRF電力:10W
基板温度:400℃
とする。
なお、RF電力を投入するための平行平板電極の面積は、シリコン基板31の面積とほぼ等しい。
【0039】
次いで、エッチングストッパ膜42の上に、塗布法により、水を含む液状シリカ系組成物、例えば、NCS(触媒化成工業株式会社製商品名)を塗布し、塗布後に、400℃で60分のキュアを行うことによって、MSQを主成分とするk値が2.4以下のポーラスシリカからなるトレンチ形成層43を形成する。
【0040】
次いで、トレンチ形成層43及びエッチングストッパ膜42に、複数の配線用トレンチを形成したのち、Taからなる厚さが、例えば、15nmのバリアメタル層44及びCu膜で埋め込んだのち、バリアメタル層44が残存する程度に研磨することによって、Cu配線45,46を形成する。
なお、Cu膜は、無電解Cuメッキ膜と電解Cuメッキ膜とからなる。
【0041】
次いで、配線用トレンチに埋め込まれたCu配線45,46の表面側を選択的にエッチングするために、希釈過酸化水素水と希釈塩酸の混合液に一定時間浸漬しトレンチ内に30nmのリセスを形成する。
このときポーラスシリカからなるトレンチ形成層43はバリアメタル層44で被覆されているため、エッチングされない。
【0042】
次いで、リセス部を完全に埋め込むようにZrB2 膜を成膜したのち、再び、CMP法により研磨し、ZrB2 膜の5〜15nmの厚さになるように残してバリアキャップ層47とする。
この時、トレンチ形成層43の上面に成膜しているバリアメタル層44は除去されて、トレンチ形成層43の表面が露出した状態となる。
なお、バリアキャップ層44の厚さが5nm未満であるとピンホール等の膜欠陥が問題になり、また、15nmを超えると直列抵抗の増大が問題になる。
【0043】
このZrB2 膜の成膜条件としては、例えば、基板温度を150℃とし、雰囲気を3×10-1Torrとして、原料ガスであるZr(BH4 4 ガスを導入してバリアメタル層44及びCu配線45,46の露出表面に吸着させる。
【0044】
次いで、基板温度を450℃とし、雰囲気を2×10-5Torrとして、励起されたHラジカルを導入することによって、表面に吸着しているZr(BH4 4 と反応させ、ZrB2 膜を形成する。
この吸着及び反応の工程を所定回数繰り返すことによって、所望の膜厚のZrB2 膜を成膜する。
【0045】
また、研磨工程においては、ZrB2 とTaからなるバリアメタルを同一のスラリーで研磨できるように、メカニカル研磨性能の高い砥粒入り研磨スラリーを用いた。
例えば、砥粒としては、アルミナ、コロイダルシリカ、セリウム、ヒュームドシリカ等が選択可能であるが、ここでは、アルミナ砥粒が添加されたスラリーを用いて研磨を行った。
研磨は、エンドポイントディテクタを用いモニターを行い、研磨がバリアメタルとトレンチ形成層43の界面に達した時点からさらに20nm程度、トレンチ形成層を削り込む時間の研磨を行った。
【0046】
次いで、トレンチ形成層43の表面を含む全面に、塗布法により、水を含む液状シリカ系組成物、例えば、NCS(触媒化成工業株式会社製商品名)を塗布し、塗布後に、400℃で60分のキュアを行うことによって、MSQを主成分とするk値が2.4以下のポーラスシリカからなる厚さが、例えば、150nmのビア形成層48を形成する。
この時、Cu配線45,46の表面はバリアキャップ層47で覆われているので、Cuがビア形成層48に拡散することはない。
また、ビア形成層48とトレンチ形成層43は同じ材料であるので、密着性も良好になる。
【0047】
次いで、ビア形成層48上に、比誘電率3.6のシリコンオキシカーバイドからなる厚さが、例えば、30nmのミドルストッパ膜49を成膜したのち、密着性を改善するためにNH3 プラズマ処理を行い、次いで、上述の同じMSQを主成分とするポーラスシリカからなる厚さが、例えば、150nmのトレンチ形成層50を形成する。
【0048】
次いで、トレンチ形成層50に配線用トレンチを形成するとともに、ミドルストッパ膜49、及び、ビア形成層48にビアホールを形成したのち、Taからなる厚さが、例えば、15nmのバリアメタル層51及びCu膜で埋め込んだのち、バリアメタル層51程度に研磨することによって、Cu配線52とビアプラグ53を同時形成する。
なお、Cu膜は、無電解Cuメッキ膜と電解Cuメッキ膜とからなる。
【0049】
次いで、再び、配線用トレンチに埋め込まれたCu配線52の表面側を選択的にエッチングするために、希釈過酸化水素水と希釈塩酸の混合液に一定時間浸漬しトレンチ内に30nmのリセスを形成する。
このときもポーラスシリカからなるトレンチ形成層50はバリアメタル層51で被覆されているため、エッチングされない。
【0050】
次いで、再び、リセス部を完全に埋め込むようにZrB2 膜を成膜したのち、再び、CMP法により研磨し、ZrB2 膜の5〜15nmの厚さになるように残してバリアキャップ層54とする。
ここでも、ZrB2 とTaからなるバリアメタルを同一のスラリーで研磨できるように、メカニカル研磨性能の高い砥粒入り研磨スラリーを用いた。
【0051】
次いで、必要とする多層配線構造の数に応じてデュアルダマシン工程を繰り返したのち、最も上の埋込配線55を含む配線層の上に、比誘電率3.6のシリコンオキシカーバイドからなる厚さが、例えば、30nmのエッチングストッパ膜56を成膜したのち、NH3 プラズマ処理を行い、次いで、上述の同じMSQを主成分とするポーラスシリカからなるビア形成層となる層間絶縁膜57を形成する。
【0052】
次いで、層間絶縁膜57及びエッチングストッパ膜56を貫通するとともに、下層の埋込配線55に達するビアホールが形成され、その内部にタングステンからなる導電性プラグ58を充填する。
【0053】
次いで、層間絶縁膜57の上に、導電性プラグ58に接続されるアルミニウムからなるパッド59を形成したのち、パッド59及び層間絶縁膜57を、SiNからなる保護膜60で覆い、最後に、保護膜60にパッド59の表面を露出させる開口を形成することによって、本発明の実施例1の半導体装置の基本構成が完成する。
【0054】
本発明の実施例1においては、バリアキャップ層として、耐Cu拡散性に優れるとともに、低抵抗のZrB2 を用いているので、ビアとの直列抵抗の増大を抑制することができる。
また、リセス工程がバリアメタル層を残した状態でのウェット・エッチング工程であるので、CMPによる過剰研磨に比べてウェハ面内均一な処理が可能になるともに、ポーラスシリカからなるトレンチ形成層がエッチングダメージを受けることがない。
【0055】
また、トレンチ形成層上に、ビア形成層を成膜する際に、Cu配線がバリアキャップ層で被覆されているので、エッチングストッパを兼ねるバリア絶縁膜を成膜する必要がないため、バリア絶縁膜の成膜に伴うプラズマダメージを受けることがなく、且つ、トレンチ形成層とビア形成層の密着性も良好になる。
【実施例2】
【0056】
次に、図4を参照して、本発明の実施例2の半導体装置を説明するが、この実施例2はバリアメタルもZrB2 で形成したものであり、基本的製造工程は上記の実施例1の全く同じであるので、構造のみ説明する。
図4は、本発明の実施例2の半導体装置の概略的断面図であり、Cu配線45,46、ビアプラグ53、Cu配線52、及び、埋込配線55の底面及び側面を覆うバリアメタル層61,62,63として、ZrB2 膜を用いたものである。
このバリアメタル層61〜63となるZrB2 膜の成膜工程も、バリアキャップ層54を構成するZrB2 膜の成膜工程と全く同様である。
【0057】
本発明の実施例2においては、バリアメタルとしても耐Cu拡散性に優れるとともに、低抵抗のZrB2 を用いているので、直列抵抗をより低減することができるとともに、原料ガスとして、Zr(BH4 4 ガスを容易するだけで良くなる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態及び各実施例を説明してきたが、本発明は実施の形態及び各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、エッチングストッパ膜及びミドルストッパ膜として非誘電率が3.6のシリコンオキシカーバイド膜を用いているが、このような非誘電率に限られるものではなく、成膜時のテトラメチルシランおよび炭酸ガスの流量を適宜変化させて、比誘電率を3.6乃至4.6としても良いものであり、Si−CH2 −Si構造を10〜90重量%含有するシリコンオキシカーバイドであれば良い。
【0059】
また、上記の各実施例においては、ポーラスSiO2 膜を成膜するための液状シリカ系組成物としてNCS(触媒化成工業株式会社製商品名)を用いているが、NCS(触媒化成工業株式会社製商品名)に限られるものではなく、比誘電率が2.7以下のポーラスシリカが得られるものであれば良く、例えば、他のMQS(メチルシルセスキオキサン)、HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン)或いはMHSQ(メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン)、さらに、MQSとHSQの混合物からなる組成物等を用いても良いものである。
【0060】
また、上記の各実施例においては、ビア及び埋込配線をCuによって形成しているが、Cuに限られるものではなく、Cu−AlやCu−Si等のCuを主成分とする合金にも適用されるものであり、さらには、AlやAg等のCu以外の金属、或いは、TiNやTaN等の金属窒化物にも適用されるものである。
【0061】
また、上記の実施例においては、デュアルダマシン工程においてミドルストッパ膜を用いているが、ミドルストッパ膜は必須ではなく、一層のポーラスシリカ膜にトレンチとビアとを形成しても良い。
【0062】
上記の実施例1及び実施例2を含む本発明の実施の形態に関し、下記の付記を開示する。
(付記1) ポーラス絶縁膜に設けた凹部に埋め込まれた第1の金属膜の少なくとも頂面を、前記ポーラス絶縁膜の頂面と整合する高さまでZr及びBを含む第2の金属膜で覆った半導体装置。
(付記2) 前記第2の金属膜が、前記第1の金属膜の両側面及び底面も覆っている付記1記載の半導体装置。
(付記3) 前記第1の金属膜が、Cuからなる付記1または付記2記載の半導体装置。
(付記4) 前記第2の金属膜が、ZrB2 からなる付記1乃至付記4のいずれか1に記載の半導体装置。
(付記5) 前記第1の金属膜を積層方向に複数箇所に設けて多層配線構造を構成するとともに、前記各第1の金属膜を埋め込む前記各ポーラス絶縁膜が前記積層方向において互いに直接接している付記1乃至4のいずれか1に記載の半導体装置。
(付記6) 半導体基板上にトランジスタを形成する工程と、
前記半導体基板の上方にポーラス絶縁膜を形成する工程と、
前記ポーラス絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記ポーラス絶縁膜の上面及び前記凹部の内壁にバリア膜を形成する工程と、
前記凹部を第1の金属膜で埋める工程と、
前記第1の金属膜を前記ポーラス絶縁膜の上面の高さより低くなるようにリセスさせる工程と、
前記リセスさせた部分と前記バリア膜の表面にZr及びBを含む第2の金属膜を形成する工程と、
前記凹部内の上部に前記第2の金属膜を残すように平坦化する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
(付記7) さらに、前記平坦化する工程の後に、次層を構成するポーラス絶縁膜を直接成膜する工程を有することを特徴とする付記6記載の半導体装置の製造方法。
(付記8) 前記バリア膜も、前記第2の金属膜からなる付記6または7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記第1の金属膜が、Cuからなる付記6乃至8のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10) 前記第2の金属膜が、ZrB2 からなる付記6乃至9のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11) 前記平坦化する工程が化学機械研磨工程であり、前記化学機械研磨工程で用いるスラリーが、砥粒系スラリーである付記6乃至10のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記12) 前記砥粒系スラリーが、コロイダルシリカあるいはアルミナのいずれかを含む付記6乃至11のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記13) 前記ポーラス絶縁膜は、メチルシルセスキオキサンを塗布して形成する付記6乃至12のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態の途中までの製造工程の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の図1以降の製造工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1による方法で作製した半導体装置の概略的断面図である。
【図4】本発明の実施例2の半導体装置の概略的断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11 下地絶縁膜
12 プラグ
13 エッチングストッパ膜
14 層間絶縁膜
15 配線用トレンチ
16 バリアメタル膜
17 Cu膜
18 凹部
19 導電膜
20 バリアキャップ膜
21 第2の層間絶縁膜
31 シリコン基板
32 素子分離絶縁膜
33 MOSFET
34 ゲート絶縁膜
35 ゲート電極
36 ソース領域
37 ドレイン領域
38 サイドウォール
39 層間絶縁膜
40,41 導電性プラグ
42 エッチングストッパ膜
43 トレンチ形成層
44 バリアメタル層
45,46 Cu配線
47 バリアキャップ層
48 ビア形成層
49 ミドルストッパ膜
50 トレンチ形成層
51 バリアメタル層
52 Cu配線
53 ビアプラグ
54 バリアキャップ層
55 埋込配線
56 エッチングストッパ膜
57 層間絶縁膜
58 導電性プラグ
59 パッド
60 保護膜
61〜63 バリアメタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス絶縁膜に設けた凹部に埋め込まれた第1の金属膜の少なくとも頂面を、前記ポーラス絶縁膜の頂面と整合する高さまでZr及びBを含む第2の金属膜で覆った半導体装置。
【請求項2】
前記第2の金属膜が、前記第1の金属膜の両側面及び底面も覆っている請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の金属膜を積層方向に複数箇所に設けて多層配線構造を構成するとともに、隣接する前記各第1の金属膜を埋め込む前記各ポーラス絶縁膜が前記積層方向において互いに直接接している請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上にトランジスタを形成する工程と、
前記半導体基板の上方にポーラス絶縁膜を形成する工程と、
前記ポーラス絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記ポーラス絶縁膜の上面及び前記凹部の内壁にバリア膜を形成する工程と、
前記凹部を第1の金属膜で埋める工程と、
前記第1の金属膜を前記ポーラス絶縁膜の上面の高さより低くなるようにリセスさせる工程と、
前記リセスさせた部分と前記バリア膜の上面にZr及びBを含む第2の金属膜を形成工程と、
前記凹部内の上部に前記第2の金属膜を残すように平坦化する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記平坦化する工程の後に、次層を構成するポーラス絶縁膜を直接成膜する請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記平坦化工程が化学機械研磨工程であり、前記化学機械研磨工程で用いるスラリーが、砥粒系スラリーである請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−188101(P2009−188101A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25177(P2008−25177)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】