説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 銅配線を備えた半導体装置において、高歩留り又は高信頼性を実現する。
【解決手段】半導体装置は、基板100上に形成された空孔率が低い低空孔率領域である絶縁膜105と低空孔率領域よりも空孔率が高い高空孔率領域107とを有し、絶縁膜105における配線溝105bに形成された銅配線109bとを備える。絶縁膜105は、配線溝105bの下部に形成されており、絶縁膜107は、配線溝105bの側壁の周辺部に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示する技術は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、多孔質絶縁膜に銅配線を形成する配線技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の高集積化に伴う配線寸法の減少により、配線間容量が増加し、その結果、配線のRC遅延が問題となっている。これに対し、層間絶縁膜の低誘電率化が要求されている。低誘電率化された層間絶縁膜としては、絶縁膜中に空孔が形成された多孔質絶縁膜が有効とされている。しかしならが、多孔質絶縁膜は、空孔の存在によってドライエッチング時又はアッシング時のプラズマダメージを受けやすく、また、洗浄時において膜中に洗浄液が染み込み易い。その結果、多孔質絶縁膜の特性が低下することにより、半導体装置の電気的特性又は信頼性が低下するという問題があった。
【0003】
上記問題に対しては、次のような方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、シリコンウェハ上に空孔形成材料を含む非多孔質絶縁膜を堆積した後、該非多孔質絶縁膜上に形成したレジストパターンをマスクに用いたドライエッチングにより、非多孔質絶縁膜に配線溝及びビア孔を形成する。続いて、不要となったレジストパターンをアッシングにより除去した後、非多孔質絶縁膜表面の洗浄を行う。続いて、加熱処理により、非多孔質絶縁膜から空孔形成材料を除去して多孔質絶縁膜を形成する。その後、配線溝及びビア孔に、バリアメタル膜を介して銅配線及びビアを形成する。
【特許文献1】特開2005−142473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本件発明者は、鋭意検討を重ねた結果、上記背景技術によると、配線直下の絶縁膜が多孔質絶縁膜で構成されてしまう。このため、多孔質絶縁膜と該多孔質絶縁膜の下層に形成されている絶縁膜との膜剥がれが生じてしまうという課題が発生することを見出した。
【0005】
前記に鑑み、本発明は、銅配線を備えた半導体装置及びその製造方法において、高歩留り又は高信頼性を実現し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記に鑑み、本発明の例示的手段を以下に挙げる。
【0007】
半導体装置は、本発明の例示基板上に形成された絶縁膜と、絶縁膜に設けた配線溝に形成された銅からなる配線とを備え、絶縁膜は、空孔率が低い低空孔率領域と、低空孔率領域よりも空孔率が高い高空孔率領域とを有しており、低空孔率領域は、配線溝の下部に形成されており、高空孔率領域は、配線溝の側壁の周辺部に形成されている。
【0008】
半導体装置において、低空孔率領域の上面は、配線溝の底部に接していてもよい。
【0009】
半導体装置において、低空孔率領域の上面は、配線溝の底部全体と実質的に接していてもよい。
【0010】
半導体装置において、低空孔率領域の下面の幅は、低空孔率領域の上面の幅及び配線溝の底部の幅と実質的に等しくてもよい。
【0011】
半導体装置において、低空孔率領域の下面の位置は、絶縁膜の下面の位置と一致していてもよい。
【0012】
半導体装置において、低空孔率領域は、配線溝の側壁と高空孔率領域との間にさらに形成されていてもよい。
【0013】
半導体装置において、絶縁膜における配線溝の底部に設けられたビア孔に形成され、配線と電気的に接続するビアをさらに備えており、低空孔率領域は、ビアの周縁部を覆っていてもよい。
【0014】
半導体装置において、高空孔率領域の上面の位置は、絶縁膜の上面の位置と一致しており、高空孔率領域の下面の位置は、絶縁膜の下面の位置と一致していてもよい。
【0015】
半導体装置において、低空孔率領域の空孔率が10%未満であり、高空孔率領域の空孔率が10%以上であってもよい。
【0016】
半導体装置において、低空孔率領域の炭素濃度が20%以上であり、高空孔率領域の炭素濃度が20%未満であってもよい。
【0017】
半導体装置において、低空孔率領域に存在する空孔の空孔径が0.8nm未満であり、高空孔率領域に存在する空孔の空孔径が0.8nm以上であって且つ3.0nm未満であってもよい。
【0018】
半導体装置において、低空孔率領域の比誘電率が2.8以上であり、高空孔率領域の比誘電率が2.8未満であってもよい。
【0019】
半導体装置において、低空孔率領域の弾性率が10GPa以上であり、高空孔率領域の弾性率が10GPa未満であってもよい。
【0020】
半導体装置において、絶縁膜は、空孔形成材料を含んでいてもよい。
【0021】
半導体装置において、空孔形成材料は、ポロジェンであってもよい。
【0022】
半導体装置において、配線は、複数形成されており、隣り合う配線間には、高空孔率領域のみが形成されている場合であってもよい。
【0023】
半導体装置の製造方法は、基板上に、空孔形成材料を含み、第1の領域及び第2の領域を有する絶縁膜を形成する工程(a)と、第1の領域に含まれる空孔形成材料を除去することにより、第1の領域を空孔率が高い高空孔率領域とすると共に、第2の領域を高空孔率領域よりも空孔率が低い低空孔率領域とする工程(b)と、低空孔率領域中に、銅からなる配線を形成する工程(c)とを備える。
【0024】
半導体装置の製造方法において、工程(c)の後に、低空孔率領域における配線の側壁の周辺に存在している部分に含まれる空孔形成材料を除去する工程(d)をさらに備えてもよい。
【0025】
半導体装置の製造方法において、工程(d)は、電子線又は紫外線を照射することにより、空孔形成材料を除去する工程であってもよい。
【0026】
半導体装置の製造方法において、工程(b)は、第1の領域上を開口する開口部を有する一方で第2の領域上を覆うマスクを形成した後に、第1の領域に含まれる空孔形成材料を除去する工程であってもよい。
【0027】
半導体装置の製造方法において、工程(b)は、開口部に、電子線又は紫外線を照射することにより、第1の領域に含まれる空孔形成材料を除去する工程であってもよい。
【0028】
半導体装置の製造方法において、マスクは、メタルハードマスクであってもよい。
【0029】
半導体装置の製造方法において、空孔形成材料は、ポロジェンであってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の上記例示的形態によると、銅配線を備えた半導体装置及びその製造方法において、空孔を有する絶縁膜中への銅の拡散による配線間ショート又は配線間耐圧の劣化を抑制して、高歩留り又は高信頼性を実現し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、図面及び詳細な説明をもって本発明の技術的思想を明確に説明するものであり、当該技術分野におけるいずれの当業者であれば、本発明の好ましい実施例を理解した後に、本発明が開示する技術により、変更及び付加を加えることが可能であり、これは本発明の技術的思想及び範囲を逸脱するものではない。
【0032】
図1は、本発明の例示的一実施形態における半導体装置の構造を示している。
【0033】
図1に示すように、例えばシリコン基板などからなる基板100の上に形成された例えば膜厚80〜150nmのSiOC膜又はSiO膜などからなる絶縁膜101には、配線溝101aが形成されている。配線溝101aの底部及び側壁には、例えば膜厚5〜15nmのTiN膜、TaN膜、又はTa/TaN膜などからなるバリアメタル膜102が形成されている。バリアメタル膜102の上には、配線溝101aを埋め込む銅膜からなる銅配線103が形成されている。絶縁膜101、バリアメタル膜102及び銅配線103の上には、例えば膜厚30〜60nmのSiOC膜、SiCN膜、及びSiCO膜のうちから選択される1種類からなる単層膜又は複数種類からなる積層膜などからなるライナー膜104が形成されている。
【0034】
ライナー膜104の上には、例えば膜厚150〜250nmのSiOC膜などからなり、空孔形成材料として例えばポロジェンを含む絶縁膜105(非多孔質絶縁膜:低空孔率領域に相当する)と、例えば膜厚150〜250nmのSiOC膜などからなり、多数の空孔を有する絶縁膜107(多孔質絶縁膜:高空孔率領域に相当する)とを有している。ライナー膜104及び絶縁膜105には、底部に銅配線103の表面を露出するビア孔105aが形成されていると共に、絶縁膜105には、該ビア孔105aに連通する配線溝105bとが形成されている。ビア孔105a及び配線溝105bの各々の底部及び側壁の各々には、例えば膜厚5〜15nmのTiN膜、TaN膜、又はTa/TaN膜などからなるバリアメタル膜108が形成されている。ビア孔105aでは、バリアメタル膜108の上にビア孔105aを埋め込む銅膜からなるビア109aが形成されており、配線溝105bでは、バリアメタル膜108の上に配線溝105bを埋め込む銅膜からなる銅配線109bが形成されている。
【0035】
ここで、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)は、空孔率が10%未満、炭素濃度が20%以上、空孔径が0.8nm未満、比誘電率が2.8以上、及び、弾性率が10GPa以上、のうちのいずれかを満たすものである。また、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)は、空孔率が10%以上、炭素濃度が20%未満、空孔径が0.8nm以上であって且つ3.0nm未満、比誘電率が2.8未満、弾性率が10GPa未満、のうちのいずれかを満たすものである。
【0036】
図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)は、本発明の例示的一実施形態における半導体装置の製造方法を工程順に示している。
【0037】
まず、図2(a)に示すように、例えばシリコン基板などからなる基板100の上に、例えばプラズマCVD法を用いて、例えば膜厚80〜150nmのSiOC膜、又はSiO膜などからなる絶縁膜101を形成する。続いて、通常のフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて、絶縁膜101に配線溝101aを形成する。続いて、絶縁膜101の上と配線溝101aの底部及び側壁とに、例えば膜厚5〜15nmのTiN膜、TaN膜、又はTa/TaN膜などの導電膜を成膜した後、シード層(図示せず)を堆積し、電解メッキ法により銅膜を堆積する。続いて、CMP法を用いて、配線溝101aの外部にはみ出している上記導電膜及び銅膜を研磨除去して表面を平坦化することにより、配線溝101aの底部及び側壁とに、上記導電膜からなるバリアメタル膜102、並びにシード層及び銅膜からなる銅配線103を形成する。続いて、絶縁膜101、バリアメタル膜102及び銅配線103の上に、例えば膜厚30〜60nmのSiOC膜、SiCN膜、及びSiCO膜のうちから選択される1種類からなる単層膜又は複数種類からなる積層膜などからなるライナー膜104を堆積する。
【0038】
続いて、プラズマCVD法を用いて、ライナー膜104の上に、例えば膜厚200〜350nmのSiOC膜などからなり、空孔形成材料として例えばポロジェンを含む絶縁膜105(非多孔質絶縁膜:低空孔率領域に相当する)を堆積する。ここで、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)は、上述のように、空孔率が10%未満、炭素濃度が20%以上、空孔径が0.8nm未満、比誘電率が2.8以上、及び、弾性率が10GPa以上、のうちのいずれかを満たすものである。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)上に例えば膜厚5〜20nmのTiN膜を堆積した後、通常のフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて、後に形成されるビア孔105a及び配線溝105b上の領域を覆うように、例えばTiN膜からなるメタルハードマスク106を形成する。
【0040】
次に、図2(c)に示すように、メタルハードマスク106をマスクとして電子線又は紫外線を照射することにより、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)におけるメタルハードマスク106に覆われていない部分に含まれるポロジェンを除去する。これにより、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)におけるメタルハードマスク106に覆われていない部分(メタルハードマスクの開口部分)、すなわち、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)における後に形成される配線溝間の領域となる部分を、上記ポロジェンが除去されて生じる多数の空孔を有する絶縁膜107(多孔質絶縁膜:高空孔率領域に相当する)とする。
【0041】
次に、図2(d)に示すように、CMP法により、メタルハードマスク106を除去すると共に、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)及び絶縁膜107(多孔質絶縁膜)の膜厚を150〜250nmとする。このとき、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)によって挟まれた絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)の幅(基板100の主面に水平な方向における幅)は、70〜110nmである。また、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)によって挟まれた絶縁膜107(多孔質絶縁膜)の幅(基板100の主面に水平な方向における幅)は、40〜80nmである。さらに、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)は、空孔率が10%以上、炭素濃度が20%未満、空孔径が0.8nm以上であって且つ3.0nm未満、比誘電率が2.8未満、弾性率が10GPa未満、のうちのいずれかを満たすものである。
【0042】
次に、図3(a)に示すように、通常のマスク材形成工程、リソグラフィー工程、及びドライエッチング工程を経ることにより、ライナー膜104及び絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)に、底部に銅配線103の表面を露出するビア孔105aを形成すると共に、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)に、ビア孔105aに連通する配線溝105bを形成する。ここで、ビア孔10a及び配線溝105を形成する手法としては、レジストマスクを用いたプロセス、絶縁膜からなるハードマスクを用いたプロセス、及びメタルからなるハードマスクを用いたプロセスのうちのいずれかのプロセスを用いることができる。また、このとき、配線溝105bの幅(同図の平面図部分における幅Aに相当する)は、60〜90nmである。また、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)における配線溝105bの側壁と絶縁膜107との間に存在する部分の幅(同図の平面図部分における幅Bに相当する)は、5〜10nmである。よって、上記空孔径(0.8nm以上であって且つ3.0nm未満)に対する幅Bの割合は、約1.5〜12.5倍であることが好ましい。
【0043】
次に、図3(b)に示すように、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)及び絶縁膜107(多孔質絶縁膜)の上と、ビア孔105a並びに配線溝105bの底部及び側壁とに、例えば膜厚5〜15nmのTaN膜及びTa膜の積層膜からなる導電膜108aを成膜する。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、シード層(図示せず)を堆積した後に、電解メッキ法により銅膜を成膜し、アニール処理を行う。続いて、CMP法を用いて、配線溝101aの外部にはみ出している導電膜108a及び銅膜を研磨除去して表面を平坦化することにより、ビア孔105a並びに配線溝105bの底部及び側壁に、上記導電膜108aからなるバリアメタル膜108を形成する。同時に、ビア孔105aを埋め込むように、バリアメタル膜108の上に銅膜からなるビア109aを形成すると共に、配線溝105bを埋め込むように、バリアメタル膜108の上に銅膜からなる銅配線109bを形成する。
【0045】
以上の本発明の例示的一実施形態における半導体装置の製造方法によると、上記図3(a)に示す工程にて形成されるビア孔105a及び配線溝105bは、多数の空孔を有する絶縁膜107(多孔質絶縁膜)に形成されたものではなく、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)に形成されたものであるため、ビア孔105aの側壁並びに配線溝105bの底部及び側壁の表面には空孔が露出することがない。
【0046】
この点、上記背景技術によると、多孔質絶縁膜に形成された配線溝の側壁及び底部並びにビア孔の側壁の表面には、空孔形成材料が除去されて生じる空孔が露出してしまう。このため、配線を構成する銅は、バリアメタル膜を介し、配線溝の表面に露出する上記空孔部分を通じて、多孔質絶縁膜中へ拡散しやすくなる。このことは、近年の微細化傾向又は配線間容量の抑制とのトレードオフからバリアメタル膜が薄膜化され、バリア性が十分ではない場合により顕著である。その上、配線溝及びビア孔にバリアメタル膜を形成する際、上記露出した空孔の影響により、バリアメタル膜のカバレッジ率が低下する。このため、配線溝の側壁及びビア孔の側壁の表面に露出する空孔部分では、バリアメタル膜が薄膜化して堆積されたり、バリアメタル膜が形成されない場合も出てくる。その結果、特に配線溝の側壁の表面に露出する空孔部分において、バリアメタル膜が有する銅に対するバリア性が低下して、多孔質絶縁膜中への銅の拡散が生じやすくなる。以上のように、上記背景技術によると、配線溝に露出する空孔部分を通じて、配線中の銅が多孔質絶縁膜へ拡散しやすい構成となっており、これにより、銅の拡散による配線間ショートが発生するため、半導体装置の歩留り又は信頼性が大きく低下するという問題があった。
【0047】
これに対し、本発明の例示的一実施形態における半導体装置の製造方法によると、上記のように、ビア孔105aの側壁並びに配線溝105bの底部及び側壁の表面には空孔が露出していない。これにより、配線溝105bの表面に露出する空孔部分を通じて絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)及び絶縁膜107(多孔質絶縁膜)中へ銅が拡散しやすくなるという事態が防止される。さらに、バリアメタル膜108は、ビア孔105aの底部及び側壁並びに配線溝105bの底部及び側壁の全体に、カバレッジ良く形成される。このため、配線溝105bの表面に露出する空孔部分においてバリアメタル膜108の薄膜化が防止される。その結果、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)及び絶縁膜107(多孔質絶縁膜)中への銅配線109b及びビア109aを構成する銅の拡散を抑制できる。以上により、配線間ショートの劣化及び配線間耐圧の劣化が防止されるため、半導体装置の歩留り及び信頼性が向上する。
【0048】
また、配線溝105bの底部の全体には、膜強度に優れた絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)が存在しているため、下層のライナー膜104との膜剥がれの発生を抑制できる。さらに、ビア孔105aの周辺部にも、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)ではなく絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)が存在しているため、空孔中に包含された水分などがビアに付着して酸化するという事態を抑制できる。一方で、配線109b間の大部分には、誘電率の低い絶縁膜107(多孔質絶縁膜)が存在しているため、寄生容量の増加を抑制できる。さらに、配線109bと絶縁膜107(多孔質絶縁膜)との間には、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)が存在している。このため、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)に形成するような空孔部分を通じた銅の拡散という事態をより抑制できると共に、配線109b間の距離が長い場合など配線109bの側壁の膜強度を高めておきたい場合に有効である。
【0049】
−本発明の例示的一実施形態の変形例−
図4は、本発明の例示的一実施形態の変形例における半導体装置の構造及び製造方法を示している。
【0050】
図4に示すように、本発明の例示的一実施形態の変形例における半導体装置の構造は、バリアメタル膜108における配線溝10bの側壁に形成されている部分と絶縁膜107(多孔質絶縁膜)とが隣接して形成されている点で、上記図1に示した半導体装置の構造と異なっているがその他の構造は同様である。より具体的には、図4に示した半導体装置の構造では、図1の半導体装置の構造に示したバリアメタル膜108における配線溝10bの側壁に形成されている部分と絶縁膜107(多孔質絶縁膜)との間に存在する絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)の領域がなく、その代わりに、該領域が絶縁膜107(多孔質絶縁膜)の一部分となっている。加えて、該領域の膜厚分だけ、絶縁膜105におけるビア孔15aの側壁に形成されている部分の膜厚が、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)に隣接する部分において薄くなるように形成されている。すなわち、図4に示した半導体装置の構造では、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)の上部から下部にわたって配線溝10bの側壁の外側に存在している部分も、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)を構成するように形成されている。
【0051】
本発明の例示的一実施形態の変形例における半導体装置の製造方法では、上記図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)に示した工程を行った後に、電子線又は紫外線を用いて、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)の上部から下部にわたって配線溝105bの側壁よりも外側に存在している部分に含まれるポロジェンを除去することにより、該部分も絶縁膜107の一部とする。このようにして、図4に示した半導体装置の構造が形成される。ここで、電子線又は紫外線の照射により絶縁膜105から絶縁膜107へとなる部分は、配線溝10bの側壁のバリアメタル膜108の上部から下部にわたって外側に存在している部分だけに限られず、ビア孔105a周辺の絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)における配線溝10bの側壁の内側に存在している部分についても絶縁膜107の一部となる場合があることは言うまでもない。よって、本発明の例示的一実施形態の変形例における半導体装置の構造及びその製造方法において、ビア孔105aの側壁に残存する絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)の幅(基板100の主面に水平な方向の幅)は、0〜10nmの範囲にあることが好ましい。
【0052】
以上の本発明の例示的一実施形態における半導体装置の構造及びその製造方法によると、上記図1〜図3(c)を用いて説明した効果を同様に奏することができる。
【0053】
さらに、隣り合う銅配線109b間には、絶縁膜105(非多孔質絶縁膜)は形成されておらず、絶縁膜107(多孔質絶縁膜)のみが存在しているので、図1に示した半導体装置の構造の場合と比較して配線間容量がより低減され、より高性能な半導体装置が実現される。
【0054】
なお、以上の例示的一実施形態では、デュアルダマシンプロセスを用いてビア109a及び銅配線109bを形成する場合について説明したが、シングルダマシンプロセスを用いる場合であっても、上述した効果は同様に実現される。
【0055】
また、以上の例示的一実施形態で記述した材料及び数値は好ましい例としてあげたものであり、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、半導体装置における銅配線を形成する方法などにとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の例示的一実施形態における半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の例示的一実施形態における半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の例示的一実施形態における半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図であり、(a)においては対応する平面図も合わせて示している。
【図4】本発明の例示的一実施形態の変形例における半導体装置の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
100 基板
101 絶縁膜
101a 配線溝
102 バリアメタル膜
103 銅配線
104 ライナー膜
105 絶縁膜(非多孔質絶縁膜)
105a ビア孔
105b 配線溝
106 メタルハードマスク
107 絶縁膜(多孔質絶縁膜)
108 バリアメタル膜
108a 導電膜
109a ビア
109b 銅配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けた配線溝に形成された銅からなる配線とを備え、
前記絶縁膜は、空孔率が低い低空孔率領域と、前記低空孔率領域よりも空孔率が高い高空孔率領域とを有しており、
前記低空孔率領域は、前記配線溝の下部に形成されており、
前記高空孔率領域は、前記配線溝の側壁の周辺部に形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記低空孔率領域の上面は、前記配線溝の底部に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低空孔率領域の上面は、前記配線溝の底部全体と実質的に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記低空孔率領域の下面の幅は、前記低空孔率領域の上面の幅及び前記配線溝の底部の幅と実質的に等しい、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記低空孔率領域の下面の位置は、前記絶縁膜の下面の位置と一致している、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記低空孔率領域は、前記配線溝の側壁と前記高空孔率領域との間にさらに形成されている、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜における前記配線溝の底部に設けられたビア孔に形成され、前記配線と電気的に接続するビアをさらに備えており、
前記低空孔率領域は、前記ビアの周縁部を覆っている、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記高空孔率領域の上面の位置は、前記絶縁膜の上面の位置と一致しており、
前記高空孔率領域の下面の位置は、前記絶縁膜の下面の位置と一致している、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記低空孔率領域の空孔率が10%未満であり、
前記高空孔率領域の空孔率が10%以上である、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記低空孔率領域の炭素濃度が20%以上であり、
前記高空孔率領域の炭素濃度が20%未満である、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記低空孔率領域に存在する空孔の空孔径が0.8nm未満であり、
前記高空孔率領域に存在する空孔の空孔径が0.8nm以上であって且つ3.0nm未満である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記低空孔率領域の比誘電率が2.8以上であり、
前記高空孔率領域の比誘電率が2.8未満である、請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記低空孔率領域の弾性率が10GPa以上であり、
前記高空孔率領域の弾性率が10GPa未満である、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記絶縁膜は、空孔形成材料を含んでいる、請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記空孔形成材料は、ポロジェンである、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記配線は、複数形成されており、
隣り合う前記配線間には、前記高空孔率領域のみが形成されている、請求項1〜5に記載の半導体装置。
【請求項17】
基板上に、空孔形成材料を含み、第1の領域及び第2の領域を有する絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1の領域に含まれる前記空孔形成材料を除去することにより、前記第1の領域を空孔率が高い高空孔率領域とすると共に、前記第2の領域を前記高空孔率領域よりも空孔率が低い低空孔率領域とする工程(b)と、
前記低空孔率領域中に、銅からなる配線を形成する工程(c)とを備える、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記工程(c)の後に、
前記低空孔率領域における前記配線の側壁の周辺に存在している部分に含まれる前記空孔形成材料を除去する工程(d)をさらに備える、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記工程(d)は、電子線又は紫外線を照射することにより、前記空孔形成材料を除去する工程である、請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記工程(b)は、前記第1の領域上を開口する開口部を有する一方で前記第2の領域上を覆うマスクを形成した後に、前記第1の領域に含まれる前記空孔形成材料を除去する工程である、請求項17〜19のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記工程(b)は、前記開口部に、電子線又は紫外線を照射することにより、前記第1の領域に含まれる前記空孔形成材料を除去する工程である、請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記マスクは、メタルハードマスクである、請求項20又は21に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記空孔形成材料は、ポロジェンである、請求項17〜22のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−182946(P2010−182946A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26384(P2009−26384)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】