説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】デバイス特性及びプロセスのばらつきを低減できる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、基板10と、下部ゲート層BGと、積層体と、ダミー電極層DWLと、絶縁膜30と、チャネルボディ20,45とを備えた。下部ゲート層BGは、基板10上に設けられた。積層体は、下部ゲート層BG上にそれぞれ交互に積層された複数の絶縁層と複数の電極層WLとを有する。ダミー電極層DWLは、下部ゲート層BGと積層体との間に設けられ、電極層WLと同じ材料からなり、各々の電極層WLよりも厚い。絶縁膜30は、積層体及びダミー電極層を貫通して形成されたホールMHの側壁に設けられた電荷蓄積膜を含む。チャネルボディ20,45は、ホールMH内における絶縁膜30の内側に設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリセルにおけるコントロールゲートとして機能する電極層と、絶縁層とを交互に複数積層した積層体にメモリホールを形成し、そのメモリホールの側壁に電荷蓄積膜を形成した後、メモリホール内にシリコンを設けることでメモリセルを3次元配列する技術が提案されている。このような構造において、特に積層体における積層数が増大すると、メモリホールの加工が難しくなり、また加工難易度の上昇はデバイス特性のばらつきを生じさせる原因になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイス特性及びプロセスのばらつきを低減できる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、基板と、下部ゲート層と、積層体と、ダミー電極層と、絶縁膜と、チャネルボディと、を備えた。前記下部ゲート層は、前記基板上に設けられた。前記積層体は、前記下部ゲート層上にそれぞれ交互に積層された複数の絶縁層と複数の電極層とを有する。前記ダミー電極層は、前記下部ゲート層と前記積層体との間に設けられ、前記電極層と同じ材料からなり、各々の前記電極層よりも厚い。前記絶縁膜は、前記積層体及び前記ダミー電極層を貫通して形成されたホールの側壁に設けられた電荷蓄積膜を含む。前記チャネルボディは、前記ホール内における前記絶縁膜の内側に設けられた。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの模式斜視図。
【図2】図1における要部の拡大断面図。
【図3】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式断面図。
【図4】図3に続く工程を示す模式断面図。
【図5】図4に続く工程を示す模式断面図。
【図6】図5に続く工程を示す模式断面図。
【図7】図6に続く工程を示す模式断面図。
【図8】他の実施形態に係る半導体装置におけるメモリストリングの模式斜視図。
【図9】バックゲート直上の最下層メモリセルと、その最下層メモリセルより上のメモリセルの消去特性を比較するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では半導体としてシリコンを例示するが、シリコン以外の半導体を用いてもよい。
【0008】
図1は、実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの模式斜視図であり、図7(b)は、同メモリセルアレイにおける1つのメモリストリングMSの模式断面図である。
【0009】
なお、図1においては、図を見易くするために、メモリホールMHの内壁に形成された絶縁膜以外の絶縁部分については図示を省略している。
図2は、図1におけるメモリセルMCが設けられた部分の拡大断面図である。
【0010】
また、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、基板10の主面に対して平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向の双方に対して直交する方向をZ方向とする。また、図7(b)に示すY方向及びZ方向は、図1におけるY方向及びZ方向と対応する。
【0011】
基板10上には、図7(b)に示す絶縁層11を介して、下部ゲート層としてバックゲートBGが設けられている。バックゲートBGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0012】
バックゲートBG上には、絶縁層14を介して、ダミー電極層DWLが設けられている。ダミー電極層DWLは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0013】
ダミー電極層DWL上には、複数の絶縁層25と、複数の電極層WLとがそれぞれ交互に積層されている。それらの層数は任意である。最下層の電極層WLとダミー電極層DWLとの間には絶縁層25が介在している。また、図7(b)では、上記積層体における最上層が電極層WLであるが、最上層が絶縁層25であってもよい。
【0014】
電極層WLは、ダミー電極層WLと同じ材料であり、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。絶縁層25は、例えばシリコン酸化物を含むTEOS(tetraethoxysilane)層である。
【0015】
各電極層WLは略同じ厚さである。各々の電極層WLの厚さよりも、ダミー電極層DWLの厚さは厚い。
【0016】
メモリセルアレイ領域における電極層WL、絶縁層25及びダミー電極層DWLを含む積層体は、Y方向に複数のブロックに分断され、各ブロック間には絶縁物41が埋め込まれている。
【0017】
あるブロックにおける最上層の電極層WL上には、絶縁層42を介して、ドレイン側選択ゲートDSGが設けられている。ドレイン側選択ゲートDSGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。そのブロックに隣接するブロックにおける最上層の電極層WL上には、絶縁層42を介して、ソース側選択ゲートSSGが設けられている。ソース側選択ゲートSSGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。ドレイン側選択ゲートDSGとソース側選択ゲートSSGとの間には、絶縁層43が介在している。
【0018】
ドレイン側選択ゲートDSG及びソース側選択ゲートSSG上には、絶縁層44が設けられている。ソース側選択ゲートSSG上には、その絶縁層44を介して、図1に示すソース線SLが設けられている。ソース線SLは、金属層、または不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。ソース線SL上には、図示しない絶縁層を介して、複数本のビット線BLが設けられている。各ビット線BLはY方向に延在している。
【0019】
バックゲートBG及びこのバックゲートBG上の積層体には、U字状のメモリホールMHが複数形成されている。ドレイン側選択ゲートDSGを含むブロックには、絶縁層44、ドレイン側選択ゲートDSG、絶縁層42、複数の電極層WL、複数の絶縁層25、ダミー電極層DWLおよび絶縁層14を貫通しZ方向に延在するホールが形成されている。ソース側選択ゲートSSGを含むブロックには、絶縁層44、ソース側選択ゲートSSG、絶縁層42、複数の電極層WL、複数の絶縁層25、ダミー電極層DWLおよび絶縁層14を貫通しZ方向に延在するホールが形成されている。それら一対のホールは、後述するように、バックゲートBG内に形成された凹部を介してつながり、U字状のメモリホールMHが得られる。
【0020】
メモリホールMHの内部には、U字状にチャネルボディ20、45が設けられている。チャネルボディ20、45は、例えばシリコン膜である。複数の電極層WL、複数の絶縁層25、ダミー電極層DWL及び絶縁層14を貫通する部分、およびバックゲートBG内にはチャネルボディ20が設けられている。そのチャネルボディ20と、メモリホールMHの内壁との間には絶縁膜30が設けられている。
【0021】
ドレイン側選択ゲートDSGを貫通する部分、およびソース側選択ゲートSSGを貫通する部分には、チャネルボディ45が設けられている。チャネルボディ45とドレイン側選択ゲートDSGとの間には、ゲート絶縁膜35が設けられている。チャネルボディ45とソース側選択ゲートSSGとの間には、ゲート絶縁膜36が設けられている。
【0022】
なお、メモリホールMH内のすべてをチャネルボディ20、45で埋める構造に限らず、メモリホールMHの中心軸側に空洞部が残るようにチャネルボディ20、45を形成し、その内側の空洞部に絶縁物を埋め込んだ構造であってもよい。
【0023】
絶縁膜30は、例えば一対のシリコン酸化膜でシリコン窒化膜を挟んだONO(Oxide-Nitride-Oxide)構造を有する。図2に示すように、各電極層WLとチャネルボディ20との間には、電極層WL側から順に第1の絶縁膜31、電荷蓄積膜32及び第2の絶縁膜33が設けられている。第1の絶縁膜31は電極層WLに接し、第2の絶縁膜33はチャネルボディ20に接し、第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜33との間に電荷蓄積膜32が設けられている。ダミー電極層DWLとチャネルボディ20との間の絶縁膜30も同様な構成である。
【0024】
チャネルボディ20は、メモリセルを構成するトランジスタにおけるチャネルとして機能し、電極層WLはコントロールゲートとして機能し、電荷蓄積膜32はチャネルボディ20から注入される電荷を蓄積するデータ記憶層として機能する。すなわち、チャネルボディ20と各電極層WLとの交差部分に、チャネルの周囲をコントロールゲートが囲んだ構造のメモリセルが形成されている。
【0025】
本実施形態に係る半導体装置は、データの消去・書き込みを電気的に自由に行うことができ、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。例えば、メモリセルはチャージトラップ構造のメモリセルである。電荷蓄積膜32は、電荷(電子)を閉じこめるトラップを多数有し、例えばシリコン窒化膜である。第2の絶縁膜33は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜32にチャネルボディ20から電荷が注入される際、または電荷蓄積膜32に蓄積された電荷がチャネルボディ20へ拡散する際に電位障壁となる。第1の絶縁膜31は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜32に蓄積された電荷が、電極層WLへ拡散するのを防止する。
【0026】
ドレイン側選択ゲートDSG、チャネルボディ45及びそれらの間のゲート絶縁膜35は、ドレイン側選択トランジスタDSTを構成する。ドレイン側選択トランジスタDSTを含むブロックのチャネルボディ20とチャネルボディ45は電気的に接続され、そのチャネルボディ45の上端部は、図1に示すビット線BLと接続されている。
【0027】
ソース側選択ゲートSSG、チャネルボディ45及びそれらの間のゲート絶縁膜36は、ソース側選択トランジスタSSTを構成する。ソース側選択トランジスタSSTを含むブロックのチャネルボディ20とチャネルボディ45は電気的に接続され、そのチャネルボディ45の上端部は、図1に示すソース線SLと接続されている。
【0028】
バックゲートBG、このバックゲートBG内に設けられたチャネルボディ20及び絶縁膜30は、バックゲートトランジスタBGTを構成する。
【0029】
ドレイン側選択トランジスタDSTとバックゲートトランジスタBGTとの間には、各電極層WLをコントロールゲートとするメモリセルMCが、電極層WLの層数に対応して複数設けられている。同様に、バックゲートトランジスタBGTとソース側選択トランジスタSSTの間にも、各電極層WLをコントロールゲートとするメモリセルMCが、電極層WLの層数に対応して複数設けられている。
【0030】
それらメモリセルMC、ドレイン側選択トランジスタDST、バックゲートトランジスタBGTおよびソース側選択トランジスタSSTは直列接続され、U字状の1つのメモリストリングMSを構成する。1つのメモリストリングMSは、複数の電極層WLを含む積層体の積層方向に延びる一対の柱状部CLと、バックゲートBGに埋め込まれ、一対の柱状部CLをつなぐ連結部JPとを有する。このメモリストリングMSがX方向及びY方向に複数配列されていることにより、複数のメモリセルMCがX方向、Y方向及びZ方向に3次元的に設けられている。
【0031】
ダミー電極層DWLは、電荷蓄積膜32を含む絶縁膜30を介してチャネルボディ20を囲むトランジスタ(ダミーセルとする)のコントロールゲートとして機能する。ただし、このダミーセルにおける電荷蓄積膜32にはデータの書き込みが行われず、ダミーセルはデータの記憶・保持を行うメモリセルとしては機能しない。
【0032】
メモリセルにデータを書き込む場合、書き込み対象のメモリセルの電極層WLには書き込み電位Vprog(例えば20V程)が与えられる。書き込み対象でないメモリセルの電極層WLには、Vprogよりも低いパス電位(もしくは中間電位)Vpass(例えば10V程)が与えられる。これにより、書き込み対象のメモリセルにおいてのみ電荷蓄積膜32に印加される電界強度が強くなる。
【0033】
例えば、データ“0”の書き込み時には、ビット線BLを通じて0Vが与えられたチャネルボディ20と、Vprogが与えられた電極層WLとの電位差により、書き込み対象のメモリセルの電荷蓄積膜32に電子が注入され、メモリセルを構成するトランジスタ(メモリトランジスタ)の閾値電圧Vthが正の方向にシフトする。Vpassが電極層WLに与えられたメモリセルの電荷蓄積膜32には電子が注入されず、書き込みが行われない。
【0034】
また、データ“1”を書き込む場合、すなわちメモリトランジスタの閾値電圧Vthを消去状態から上げない(電荷蓄積膜32に電子を注入しない)場合も、書き込み対象のメモリセルの電極層WLにはVprogが与えられ、その他のメモリセルの電極層WLにはVpassが与えられる。このデータ“1”の書き込み時、ドレイン側選択トランジスタDSTのゲート電位とビット線BLの電位とが同電位とされ、チャネルボディ20と、Vprogが与えられた電極層WLとの電位差が低減するため、その電荷蓄積膜32には電子が注入されない。Vpassが電極層WLに与えられたメモリセルの電荷蓄積膜32にも電子は注入されない。
【0035】
上記データ書き込み時、ダミー電極層DWLには、書き込み対象でないメモリセルと同じVpassが与えられ、ダミーセルにはデータが書き込まれない。
【0036】
データの読み出し時、ダミー電極層DWLには、読み出し対象でないメモリセルの電極層WLに与えられる電位Vread、もしくはダミーセルを構成するトランジスタをオンにする電位が与えられる。
【0037】
データの消去はブロックごとに行われる。データの消去時、選択ブロックにおける電極層WLには例えば0V(グランド電位)が与えられ、チャネルボディ20は例えば20V程度にブーストされる。これにより、メモリセルの電荷蓄積膜32に蓄積された電子は引き抜かれデータの消去が行われる。
データの消去時、選択ブロックにおけるダミー電極層DWLには、Vera_passが与えられる。Vera_passは、ダミーセルの閾値電圧の変動を抑える電位であり、例えば5Vほどである。あるいは、ダミーセルの閾値電圧が低くシフトしてもメモリセルの読み出し動作には影響しないため、データの消去時、ダミー電極層DWLの電位を0V(グランド電位)にしてもよい。
非選択ブロックにおける電極層WL及びダミー電極層DWLはフローティング状態にされる。これにより、チャネルボディ20の電位の上昇に伴い、カップリングによって電極層WLの電位も上昇しメモリセルの電荷蓄積層32から電子は引き抜かれない。
【0038】
ここで、図9は、バックゲートBGのすぐ上に設けられた最下層のメモリセルの消去特性(破線)と、それより上の層のメモリセルの消去特性(実線)とを比較するグラフである。横軸は時間を、縦軸は閾値電圧Vthを表す。消去動作は、電荷蓄積膜32に蓄積された電子を引き抜く動作であり、すなわちメモリトランジスタの閾値電圧Vthを低下させる動作である。
【0039】
複数のメモリセルが積層された構造において、バックゲートBGのすぐ上に位置する最下層のメモリセルは、消去時に電子の引き抜きが進みにくい傾向があり、これは異なる階層のメモリセル間で特性がばらつく原因となり得る。積層方向で隣り合う電極層間の絶縁層の厚みはほぼ一定である。これに対して、バックゲートBGと最下層の電極層との間の絶縁層の厚みは、電極層間の絶縁層の厚みとは異なる場合がある。これが、最下層のメモリセルの消去特性が他のメモリセルと違ってくる原因の一つと考えられる。
【0040】
そこで、本実施形態では、バックゲートBGの上にダミー電極層DWLを設け、このダミー電極層DWLをコントロールゲートとするトランジスタ(ダミーセル)には、データの記憶・保持を行うメモリセルとしての機能は担わせない。この結果、異なる階層のメモリセル間での特性のばらつきを抑制できる。
【0041】
ダミー電極層DWLは、電極層WLと同じ材料で、且つ形状等の構造的な差異がなく形成されるため、ダミー電極層DWLを形成するために電極層WLとは異なる特別な工程の追加はない。なお、ダミー電極層DWLはメモリセルとして使わないため、ダミー電極層DWLの厚みを、他のメモリセルの電極層WLの厚みに揃えて設計する必要がない。そこで、本実施形態では、後述するように、プロセス上の理由から、ダミー電極層DWLを、メモリセルの電極層WLよりも厚くしている。
【0042】
次に、図3(a)〜図7(b)を参照して、実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。なお、これらの図は、前述した図7(b)と同じY−Z断面を表す。
【0043】
まず、図3(a)に示すように、基板10上に絶縁層11を介してバックゲートBGを形成し、この後、図3(b)に示すように、バックゲートBGに凹部12を形成する。次に、その凹部12内に、図3(c)に示すように、犠牲膜13を埋め込む。犠牲膜13として、例えばシリコン窒化膜、あるいはカーボン膜を用いることができる。
【0044】
次に、図4(a)に示すように、バックゲートBG及び犠牲膜13上に、絶縁層14を介してダミー電極層DWLを形成する。さらに、ダミー電極層DWL上に、絶縁層25と電極層WLとをそれぞれ交互に複数積層する。
【0045】
絶縁層14、25、ダミー電極層DWLおよび電極層WLは、例えばCVD(chemical vapor deposition)法で形成される。ダミー電極層DWLは犠牲膜13とは異なる材料からなる。また、ダミー電極層DWLと各電極層WLは、同じ材料(例えば多結晶シリコン)で形成される。また、各電極層WLは略同じ厚さに形成され、ダミー電極層DWLは、各々の電極層WLの厚さよりも厚く形成される。
【0046】
また、上記積層体の上には、さらにマスク層15、中間膜16およびレジスト膜17が順に形成される。マスク層15は、例えばカーボン層である。中間膜16は、例えばシリコン酸化膜である。
【0047】
次に、レジスト膜17に選択的に開口を形成するパターニングを行った後、そのパターニングされたレジスト膜17をマスクにして、中間膜16及びマスク層15を例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で選択的にエッチングする。これにより、図4(b)に示すように、マスク層15にホール18が形成される。ホール18はマスク層15を貫通して最上層の電極層WLに達する。なお、複数の電極層WLと複数の絶縁層25を含む積層体における最上層は電極層WLに限らず、絶縁層25であってもよい。
【0048】
レジスト膜17及び中間膜16を除去した後、ホール18が形成されたマスク層15をマスクにして、その下の積層体を例えばRIE法で選択的にエッチングする。これにより、図5(a)に示すように、複数の電極層WL及び複数の絶縁層25を貫通してダミー電極層DWLに達するホール21が形成される。
【0049】
上記積層体における面方向の複数箇所に対して同時にエッチングを進め、複数のホール21を同時に形成する。また、電極層WLのエッチング時と絶縁層25のエッチング時とでガスは切り替えず、複数の電極層WLと複数の絶縁層25とを同じガスを用いた同じ条件で続けて一括してエッチングする。これにより、効率的なプロセスとなりコスト低減を図れる。
【0050】
このときのRIEに用いられるガスとしては、電極層WLの主成分であるシリコンと、絶縁層25の主成分であるシリコン酸化物の両方を効率よくエッチングできるガスが用いられる。例えば、Br(臭素)を含むガスと、F(フッ素)を含むガスとの混合ガスを用いることができる。
【0051】
基板10及びその上の積層物を含む構造体はウェーハ状態で処理室内に収容され、処理室内に設けられた保持部に保持される。そして、処理室内に例えばHBrガスとNFガス、またはHBrガスとSFガスを導入して所望の減圧雰囲気にした後、処理室内にプラズマを生起させてRIEを行う。
【0052】
このとき、ホール21の孔径が小さく、また複数の電極層WLの層数が多く積層体が厚い場合、すなわちホール21のアスペクト比(孔径に対する深さの比)が高くなると、孔径の変化(ばらつき)に対してエッチングレートの変化が敏感になる。例えば、ホール21の孔径が50nm程度で、ホール21が形成される積層体の厚さが1〜2μmで、ホール21のアスペクト比が20〜40程度では、孔径が10〜20%程度ずれただけで、深さ方向に1〜2μm程度加工した間に、200〜400nm程度の深さのばらつきが生じることがある。
【0053】
ホール21の下方にはバックゲートBG内に埋め込まれた犠牲膜13が存在し、その犠牲膜13は、厚さが例えば100nm程度の薄い膜である。犠牲膜13を構成するシリコン窒化膜またはカーボン膜は、電極層WL及び絶縁層25の両方を効率よくエッチングできる前述したガスに対するエッチング耐性がそれほど高くない。したがって、複数の電極層WL及び複数の絶縁層25を一括してエッチングする条件で、そのままホール21の加工を続けると、エッチングを犠牲膜13でストップさせることができず、また犠牲膜13が薄いこともあって、ホール21が犠牲膜13を突き抜けてしまう加工不良が起こり得る。
【0054】
特に、ホール21のアスペクト比が高い場合で、複数のホール21間で孔径がばらつくと、それら孔径差がわずかであっても、複数のホール21間のエッチングレートに差が生じ、相対的にエッチングレートが遅いホール21が犠牲膜13に達したときには、相対的にエッチングレートが速いホール21がすでに犠牲膜13を突き抜けているということも起こり得る。
【0055】
しかし、本実施形態では、電極層WLと絶縁層25とが交互に積層された積層体と、バックゲートBGとの間に、ダミー電極層WLを設けている。そして、複数のホール21がダミー電極層DWLに達すると、エッチングガスを切り替えてダミー電極層DWLをRIE法でエッチングする。具体的には、処理室内に導入するガスをHBrガスとOガスとの混合ガスに切り替えて、ダミー電極層DWLのエッチングを行う。
【0056】
このときのエッチングは、同じ材料からなる単一層であるダミー電極層DWLのエッチングであって、電極層WLと絶縁層25という異なる材料の層を両方エッチング可能なガスを用いなくてよい。そして、ダミー電極層DWLは例えばシリコン層であり、犠牲膜13として用いられたシリコン窒化膜またはカーボン膜は、シリコン層をエッチングするガス(例えば、前述したHBrガスとOガスとの混合ガス)に対して高いエッチング耐性を有する。したがって、ダミー電極層DWLをエッチングする条件でホール21の加工を続けても、犠牲膜13で確実にエッチングをストップさせることが可能である。
【0057】
なお、ダミー電極層DWLのエッチング時、Oガスは含まれなくてもよいが、HBrガスに対してOガスを加えることで、シリコン層以外の材料に対してエッチングがより進行しにくくなり、犠牲膜13のエッチング耐性がより高まる。
【0058】
ダミー電極層WLは電極層WLと同じ材料であり、電極層WL及び絶縁層25を一括してエッチングするガスによってもエッチングされる。したがって、複数のホール21がダミー電極層DWLに達したとき、図5(a)に示すように、複数のホール21間で深さのばらつきが生じていることがあり得る。
【0059】
そこで、ダミー電極層DWLを各々の電極層WLよりも厚く形成し、さらにダミー電極層DWLとバックゲートBGとの間に、ダミー電極層DWL及び犠牲膜13とは異なる材料(例えばシリコン酸化物)の絶縁層14を設けることで、犠牲膜13に達するまでに、複数のホール21間でのエッチングレートのばらつきを低減することができる。
【0060】
絶縁層14は、バックゲートBGとダミー電極層DWLとの絶縁を確保するだけではなく、ダミー電極層DWLエッチング時のエッチングストッパーとして機能する。すなわち、ダミー電極層DWLに達するホール21を形成した後、前述したようにガスを切り替えて、ダミー電極層DWLにおけるホール21の底部の下の部分を絶縁層14に達するまでエッチングする。この後、ガスを例えばF(フッ素)を含むガスに切り替えて絶縁層14を例えばRIE法でエッチングする。これにより、図5(b)に示すように、複数の電極層WL、複数の絶縁層25、ダミー電極層DWL及び絶縁層14を貫通して犠牲膜13に達するホール22が形成される。この時点で、複数のホール22間のエッチングレートのばらつきは低減され、ホール22が犠牲膜13を突き抜けてしまうのを回避できる。
【0061】
また、バックゲートBGがダミー電極層DWLと同じ例えばシリコン層である場合に、ホール底部の一部が犠牲膜13上からバックゲートBG上にずれても、ダミー電極層DWLとバックゲートBGとの間に絶縁層14が介在されていることで、ホール形成時のバックゲートBGのエッチングを抑制できる。
【0062】
前述した各層のRIE時、基板10側、具体的にはこれを保持する保持部側にはバイアスパワーが印加され、基板10側に向けて加速されたイオンの衝突によるエッチング作用も生じている。複数の電極層WLと複数の絶縁層25とを一括してエッチングするときには、ホール加工レートを高めるために基板10側へのバイアスパワーが相対的に大きい方が望ましく、ダミー電極層DWLのエッチング時及び絶縁層14のエッチング時には、犠牲膜13に対するエッチングを抑えるためにバイアスパワーは相対的に小さい方が望ましい。
【0063】
なお、電極層WL、絶縁層25及び犠牲膜13とは異なる材料の層をダミー層として、バックゲートBGの上に設けることも考えられるが、ホール加工後の後処理や、後述する犠牲膜13の除去工程などで、そのダミー層に対するエッチング選択性を考慮しなければならず、プロセス難易度の上昇をまねく。さらにそのダミー層の材料によっては、バックゲートBGと、メモリセルが形成される積層体との間の誘電率を増大させ、デバイス特性を低下させる懸念がある。また、メタルを含む材料をダミー層として用いた場合には、メタル元素によるホール加工面の汚染の懸念もある。したがって、デバイス特性、プロセスインテグレーションの点から、電極層WLと同じ例えばシリコンをダミー電極層DWLとして用いるのが望ましい。
【0064】
ホール22は犠牲膜13に達し、ホール22の底部に犠牲膜13が露出する。そのホール22の形成後、ホール22を通じて犠牲膜13を除去する。これにより、図6(a)に示すように、隣接する一対のホール22とその下の凹部12とがつながり、U字状のメモリホールMHが得られる。
【0065】
メモリホールMHの形成後、図6(b)に示すように、メモリホールMHの内壁に絶縁膜30を例えばCVD法で形成する。その後、メモリホールMH内における絶縁膜30の内側に例えばCVD法でチャネルボディ20を形成する。
【0066】
その後、ダミー電極層DWL、複数の電極層WL及び複数の絶縁層25を含む積層体を複数のブロックに分断し、各ブロック間に絶縁物41を埋め込む。
【0067】
次に、前述までの工程で得られた積層体上に、図7(a)に示すように、絶縁層42を介して上部ゲート層SGを形成する。その後、上部ゲート層SGはパターニングされ、ドレイン側選択ゲートDSGとソース側選択ゲートSSGに分断される。ドレイン側選択ゲートDSGとソース側選択ゲートSSGとの間には、絶縁層43が設けられる。その後、ドレイン側選択ゲートDSG及びソース側選択ゲートSSG上に絶縁層44が形成される。
【0068】
次に、図7(b)に示すように、絶縁層44、ドレイン側選択ゲートDSG及び絶縁層42を貫通し、U字状のチャネルボディ20における一方の上端部に達するホールを形成した後、そのホールの側壁にゲート絶縁膜35を形成し、さらにその内側にチャネルボディ45を形成する。同様に、絶縁層44、ソース側選択ゲートSSG及び絶縁層42を貫通し、U字状のチャネルボディ20における他方の上端部に達するホールを形成した後、そのホールの側壁にゲート絶縁膜36を形成し、さらにその内側にチャネルボディ45を形成する。その後、ソース線SL、ビット線BL、その他の上層配線などの形成が行われる。
【0069】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、メモリストリングの構成はU字状に限らず、図8に示すようにI字状であってもよい。図8には導電部分のみを示し、絶縁部分の図示は省略している。この構造では、基板10上にソース線SLが設けられ、その上に下部ゲート層としてソース側選択ゲートSSGが設けられ、その上にダミー電極層DWLが設けられ、その上に複数層の電極層WLが設けられ、最上層の電極層WLとビット線BLとの間に上部ゲート層としてドレイン側選択ゲートDSGが設けられている。この構造においても、ダミー電極層DWLは、各々の電極層WLよりも厚い。
【符号の説明】
【0071】
10…基板、12…凹部、13…犠牲膜、15…マスク層、16…中間膜、17…レジスト膜、20…チャネルボディ、25…絶縁層、32…電荷蓄積膜、WL…電極層、DWL…ダミー電極層、BG…バックゲート、DSG…ドレイン側選択ゲート、SSG…ソース側選択ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた下部ゲート層と、
前記下部ゲート層上にそれぞれ交互に積層された複数の絶縁層と複数の電極層とを有する積層体と、
前記下部ゲート層と前記積層体との間に設けられ、前記電極層と同じ材料からなり、各々の前記電極層よりも厚いダミー電極層と、
前記積層体及び前記ダミー電極層を貫通して形成されたホールの側壁に設けられた電荷蓄積膜を含む絶縁膜と、
前記ホール内における前記絶縁膜の内側に設けられたチャネルボディと、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記チャネルボディは、前記積層体の積層方向に延びる一対の柱状部と、前記下部ゲート層に埋め込まれ、前記一対の柱状部をつなぐ連結部とを有するU字状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
基板上に、下部ゲート層を形成する工程と、
前記下部ゲート層上に、ダミー電極層を形成する工程と、
前記ダミー電極層上に、複数の絶縁層と、前記ダミー電極層と同じ材料の複数の電極層とをそれぞれ交互に積層して積層体を形成する工程と、
前記複数の絶縁層及び前記複数の電極層を同じガスを用いて一括してエッチングし、前記積層体を貫通して前記ダミー電極層に達する第1のホールを形成する工程と、
前記ダミー電極層における前記第1のホールの底部の下の部分を、前記第1のホールを形成するときとは異なるガスを用いてエッチングし、前記ダミー電極層に第2のホールを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ダミー電極層を、各々の前記電極層よりも厚くすることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ダミー電極層及び前記積層体を形成する前に、前記下部ゲート層に凹部を形成する工程と、
前記ダミー電極層及び前記積層体を形成する前に、前記凹部を前記ダミー電極層と異なる材料の犠牲膜で埋める工程と、
前記第1のホール及び前記第2のホールを形成した後、前記第1のホール及び前記第2のホールを通じて前記犠牲膜を除去し、前記第1のホール、前記第2のホール及び前記凹部をつなげる工程と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−249559(P2011−249559A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121238(P2010−121238)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】