説明

半導体装置

【課題】回路ブロックを構成するMOS型トランジスタを同一構造にしたまま駆動電圧を下げ、消費電力を低くすることができる複数の回路ブロックから構成される半導体装置の提供。
【解決手段】本半導体装置の構造は、消費電力を低くしたい回路ブロック11が設けられている半導体基板14の厚さ19を薄くすることにより、MOS型トランジスタの閾値を小さくでき、駆動電圧を下げ、所望の回路ブロックの消費電力を下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造に関する。特に、回路ブロックを構成する半導体素子の下部に空隙を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、腕時計等をはじめとする携帯用電子機器は、近年、急速な多機能化により高い消費電力を有するようになり、電池寿命延命の要求が高まっている。その手法の1つに、携帯用電子機器に搭載される半導体装置の低消費電力化が挙げられる。
【0003】
そこで、従来用いられていたシリコン基板にMOS型トランジスタを形成する構成に対し、低オフリーク電流及び低S値等の多くのメリットを持つ、SOI(Silicon On Insulator)基板にMOS型トランジスタを構成する半導体装置が注目されている。
【0004】
まず、SOI基板にMOS型トランジスタを構成する構成がより低消費電力化に優位である点を図13を用いて説明する。
図13は、MOS型トランジスタのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの関係を模式的に示すグラフであって、Id−Vg特性と呼ばれるものである。図13において、横軸はゲート電圧Vgを示し、縦軸はドレイン電流IdをLogスケールで表している。
【0005】
図13は、ゲート電圧Vgの印加に対して、流れるドレイン電流Idを示すものであるが、符号60はシリコン基板に形成されたMOS型トランジスタの特性を示すものである。これをドレイン電流Id1とする。符号61はSOI基板に形成されたMOS型トランジスタの特性を示すものであり、同じくドレイン電流Id2とする。
【0006】
Vth1はシリコン基板に形成されたMOS型トランジスタの閾値を示している。同じくVth2はSOI基板に形成されたMOS型トランジスタの閾値を示している。なお、MOS型トランジスタにおける閾値とは、MOS型トランジスタのソースとドレインとの間に電流が流れ始めるときのゲート電極印加電圧そのものを言う。したがって、閾値Vth1は、ドレイン電流Id1が流れ始めたときにゲート電極に印加している電圧を指している。
62はゲート電圧Vgが閾値Vth1又はVth2以下のとき、いわゆるサブスレッショルド特性領域を示している。
【0007】
S値は、サブスレッショルド特性領域62におけるドレイン電流Id1(符号60)又はId2(符号61)の傾きを示すものであり、次に示す式1で表すことができる。
【0008】
[式1]
S=Ln10(kT/q)((1+(Cd/Cox))
【0009】
ここで、kはボルツマン係数、Tは絶対温度、qは電荷素量、Cdは半導体基板空乏層容量、Coxはゲート容量である。
【0010】
ゲート容量Coxは、次に示す式2で表すことができる。
【0011】
[式2]
Cox=ε×(A/d)
【0012】
ここで、εは絶縁膜の誘電率、dは絶縁膜厚、Aは絶縁膜の面積である。
【0013】
半導体基板空乏層容量Cdは、次に示す式3で表すことができる。
【0014】
[式3]
Cd=Ks×(ε0/W)
【0015】
ここで、Ksはシリコンの誘電率、ε0は真空の誘電率、Wは空乏層の厚さである。
【0016】
SOI基板を用いたMOS型トランジスタの場合、空乏層の厚さWは、半導体基板の基板厚さで決まり、半導体基板の基板厚さ以上には空乏層の厚さWは伸びないため、CdはSOI基板の方がシリコン基板より小さくなり、S値もSOI基板の方がシリコン基板よりも低くなる。
【0017】
S値が低くなるということは、MOS型トランジスタのサブスレショルド特性領域62におけるドレイン電流Id2(符号61)の傾きがドレイン電流Id1(符号60)よりも急峻となる。このため、SOI基板に形成したMOS型トランジスタの閾値Vth2が、シリコン基板に形成したMOS型トランジスタの閾値Vth1より低くなり、MOS型トランジスタの動作電圧を下げることができ、消費電力を低減することができる。
【0018】
ところで、半導体装置は多くのMOS型トランジスタを備えているが、構成するすべてのMOS型トランジスタの閾値が同じではない場合がある。例えば、高速動作する回路や低電圧で駆動する回路や、外部の装置を駆動するためにより大きな電流を流す回路や高電圧で駆動する回路が混載している場合である。
このようなとき、前者の回路ブロックに用いるMOS型トランジスタの閾値は小さく、後者の回路ブロックに用いるMOS型トランジスタの閾値は大きくするなどの工夫が施される。
【0019】
このように、回路ブロックごとに適する閾値とすれば、半導体装置を低消費電力化することもでき、回路ブロックごとの閾値の変更には、例えば、同一の半導体基板に完全空乏型と部分空乏型とのMOS型トランジスタを混載する技術を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0020】
また、もう1つの低消費電力化技術として、SOI基板を用いずシリコン基板を用い、MOS型トランジスタのソース領域とドレイン領域とチャネル領域との下部の半導体基板に空隙を設ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0021】
式1に示すように、S値は半導体基板空乏層容量Cdに依存し、半導体基板空乏層容量Cdが大きくなるとS値も大きくなる。S値を小さくするためには、半導体基板空乏層容量Cdを小さくすればよい。
【0022】
式3に示すように、半導体基板空乏層容量Cdはシリコンの誘電率Ksに比例する。Ksの値は11.7である。それに対し、半導体基板に空隙を設ける技術では、シリコンの代わりに空隙には空気が存在し、その誘電率は1.0である。これにより、半導体基板空乏層容量Cdを小さくでき、S値を低くすることができる。その結果、閾値を低くでき、MOS型トランジスタの動作電圧を下げ、消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−19859号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特開平3−145737号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、発明者が検討したところによると、特許文献1に示した従来技術は、MOS型トランジスタを設ける半導体基板の膜厚のばらつきが発生し、それに伴ってS値のばらつきが発生しやすいという問題があることがわかった。
ここでいう半導体基板とは、特許文献1に示した従来技術がSOI基板を用いていることから、MOS型トランジスタのソース領域やドレイン領域やチャネル領域を形成する半導体膜を指すものである。この半導体層は、支持基板上に絶縁膜を介して設けており、この半導体膜の膜厚が、完全空乏型と部分空乏型とで異ならせるために、ばらつきの影響を受けやすいのである。
また、SOI基板は高価であり、MOS型トランジスタを作成する工程も複雑になることから、コストが高くなるという問題もある。
【0025】
特許文献2に示した従来技術を用いた場合、空隙が半導体層及び半導体基板に囲まれ密閉された状態になっており、半導体装置に熱を加えた場合、空隙内の空気が膨張し、半導体装置が破壊されてしまう問題がある。
半導体装置は、その製造途中に高温で熱処理等を行なう工程がある。また、半導体装置が電子機器に組み込まれた後、その電子機器が高温環境で使用される場合もある。したがって、上述の半導体装置が破壊されてしまう問題は、半導体装置の製造途中でも完成後でも発生する可能性があり、この技術を用いる限り避けられない。
【0026】
また、特許文献2に示した従来技術は、1つのMOS型トランジスタに1つの空隙を設けるため、半導体装置にMOS型トランジスタが増えるほど空隙の数も多くなり、半導体装置の強度が低下するという問題がある。もちろん、MOS型トランジスタと平面的に重なる位置に精度よく空隙を設ける製造技術も必要であって、製造工程が長く複雑になるという問題もある。
【0027】
本発明は、このような問題を解決するためになされるものである。従来よりも消費電力を低くできる半導体装置を提供することができ、高温環境下でも破壊されず、また、強度も低下せず精密で複雑な製造工程がなくとも製造できる半導体装置を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記した目的を達するため、本発明の半導体装置の構造は、以下に記した構成を採用するものである。
【0029】
少なくとも1つのMOS型トランジスタからなる回路ブロックを1つの半導体基板上に複数配置してなる半導体装置であって、回路ブロックを構成する複数のMOS型トランジスタは、ゲート絶縁膜の膜厚と、ソース領域及びドレイン領域の拡散深さと、チャネル部分の不純物濃度と、をそれぞれ同一とする構造であり、第1の回路ブロックが第2の回路ブロックよりも消費電流が多いとき、MOS型トランジスタのソース領域とドレイン領域との下部の半導体基板の厚さは、第1の回路ブロックの方が第2の回路ブロックよりも薄いことを特徴とする。
【0030】
このような構成にすることで、S値はばらつかず、高価なSOI基板を用いなくとも、従来よりも消費電力を低くできる。
さらに、MOS型トランジスタごとではなく、回路ブロックごとに半導体基板の厚さを変えるから、精密な製造工程ではなくても製造することができる。
【0031】
回路ブロック内では、半導体基板の基板厚さが等しいようにしてもよい。
【0032】
このような構成にすれば、半導体装置を製造しやすく、製造工程短縮によりコストダウンを行うことができる。
【0033】
第1の回路ブロックを構成するMOS型トランジスタの閾値の方が、第2の回路ブロックを構成するMOS型トランジスタの閾値よりも低いようにしてもよい。
【0034】
第1の回路ブロックを動作させる第1の駆動電圧の方が、第2の回路ブロックを動作させる第2の駆動電圧よりも低いようにしてもよい。
【0035】
このように、MOS型トランジスタの閾値を小さくしたり、駆動電圧を低くすることで、より低消費電力化できる。
【0036】
前記第1の回路ブロックは、前記ソース領域と前記ドレイン領域と前記チャネル領域との下部の前記半導体基板の底面から、前記第2の回路ブロックの前記半導体基板の底面まで空隙になっているようにしてもよい。
【0037】
このような構成にすれば、空隙部分の誘電率は空気と同じになるから、S値を低くすることができ、MOS型トランジスタの閾値を低くすることができる。そうすると、半導体装置をより低消費電力化することができる。
【0038】
半導体基板は、補強基板と接着又は結合しているようにしてもよい。
【0039】
このような構成にすれば、製造も容易であり、半導体装置のコストアップを抑えることができる。
【0040】
補強基板は、空隙部分に嵌り込むようにしてもよい。
【0041】
このような構成にすれば、半導体基板と補強基板との距離を選択することができたり、また、半導体基板と補強基板との接触面積を増やすこともできる。
【0042】
補強基板は、第1の回路ブロックと平面的に重なる位置に貫通穴を設けてもよい。
【0043】
このような構成にすれば、半導体装置に熱が印加されても、空隙部分に熱がこもらず、半導体装置が破壊されてしまうことはない。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、消費電流の多い回路ブロックを構成するMOS型トランジスタのチャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域の下部の半導体基板の基板膜厚を薄くし、半導体基板空乏層容量Cdを小さくする。
このような構造にすることによりS値を低くし、閾値を低くすることができ、MOS型トランジスタの動作電圧を下げ、回路ブロックの消費電力を低減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の半導体装置の第1の実施形態を説明する斜傾図であって、第1の回路ブロックの半導体基板を裏面からくり抜いている構造を説明する図である。
【図2】本発明の半導体装置の第1の実施形態を説明する端面図であって、第1の回路ブロックの半導体基板の厚さが、第2の回路ブロックの半導体基板の厚さより薄い構造を説明する図である。
【図3】本発明の半導体装置の第2の実施形態を説明する斜傾図であって、複数の第1の回路ブロックの半導体基板を裏面からくり抜いている構造を説明する図である。
【図4】本発明の半導体装置の第3の実施形態を説明する斜傾図であって、補強基板を半導体基板に接合する構造を説明する図である。
【図5】本発明の半導体装置の第3の実施形態を説明する端面図であって、補強基板と半導体基板を接合する方法を説明する図である。
【図6】本発明の半導体装置の第4の実施形態を説明する斜傾図であって、補強基板を空隙内に接合する構造を説明する図である。
【図7】本発明の半導体装置の第4の実施形態を説明する端面図であって、補強基板の空隙内の位置関係を説明する図である。
【図8】本発明の半導体装置の第5の実施形態を説明する斜傾図であって、補強基板と半導体基板を接合する構造を説明する図である。
【図9】本発明の半導体装置の第5の実施形態を説明する端面図であって、補強基板と半導体基板を接合する方法を説明する図である。
【図10】本発明の半導体装置の第6の実施形態を説明する斜傾図であって、補強基板を空隙内に接合する構造を説明する図である。
【図11】本発明の半導体装置の第6の実施形態を説明する端面図であって、補強基板の空隙内の位置関係を説明する図である。
【図12】本発明の半導体装置の第7の実施形態を説明する端面図であって、第1の回路ブロック及び第2の回路ブロックの半導体基板厚さの位置関係を説明する図である。
【図13】SOI基板にMOS型トランジスタを構成する構成が低消費電力化に優位である点を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、半導体基板に設けた複数の回路ブロックのうち、所定の回路ブロックの下部の半導体基板の基板厚さを薄くするものである。以下、本発明の半導体装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0047】
[第1の発明形態の構成の説明:図1、図2]
以下、第1の実施形態を図1、図2を参照して説明する。図1は第1の実施形態を説明する斜傾図、図2は図1に示す切断線X−X’に沿った端面図である。
第1の実施形態の特徴は、半導体基板に設ける所定の回路ブロックの下部の半導体基板のみ、その基板厚さを薄くするものである。このとき、半導体基板をくり抜き加工することで半導体基板に空隙を形成している。
【0048】
まず、図1及び図2を用いて半導体装置の構成を説明する。
図1及び図2において、10は半導体基板、10aは半導体基板10の上面、10bは半導体基板10の下面である。この上面10aと下面10bとの間が、半導体基板10のそもそもの基板厚さとなっている。
10cは半導体基板10をくり抜き加工して形成した空隙20に面した半導体基板10の縦端面であり、くり抜き側面部と呼ぶ。
なお、特に限定するものではないが、実施形態の説明にあっては、半導体基板10は、シリコン半導体基板を用いる例で説明する。
【0049】
図1及び図2において、11は第1の回路ブロック、12は第2の回路ブロック、13は第1の回路ブロック11の半導体基板底面部、14は第2の回路ブロック12の半導体基板底面部、15はゲート電極、16はゲート絶縁膜、17はチャネル領域、17bはチ
ャネル領域底面部、18はソース領域、18bはソース領域底面部、19はドレイン領域、19bはドレイン領域底面部、19cはドレイン領域側面部、20は空隙である。
また、100は第1のMOS型トランジスタ、101は第2のMOS型トランジスタ、102は第3のMOS型トランジスタ、103は第4のMOS型トランジスタ、L1は第1の回路ブロックの半導体基板厚さ、L2は第2の回路ブロックの半導体基板厚さである。
【0050】
図1に示す例では、半導体基板10上に、1つの第1の回路ブロック11と4つの第2の回路ブロック12とを配置する例を示している。また、図2に示す例では、第1の回路ブロック11に第1のMOS型トランジスタ100と第2のMOS型トランジスタ101との2つのMOS型トランジスタを備え、第2の回路ブロック12に第3のMOS型トランジスタ102と第4のMOS型トランジスタ103との2つのMOS型トランジスタを備える例を示している。
【0051】
図1及び図2に示す例では、MOS型トランジスタを構成する金属配線や層間絶縁膜などの要素は、図を見やすくするために省略している。
第1の回路ブロック11と第2の回路ブロック12との内部に設ける各MOS型トランジスタ間を金属配線などで接続することにより、所定の回路を構成する。もちろん、その回路には、抵抗素子や容量素子などを備えることもあるが、図面にあってはそれを省略している。
【0052】
第1の回路ブロック11と第2の回路ブロック12との、双方の回路ブロック内に構成される回路は、それぞれ異なる動作を行なう回路であったり、異なる電位レベルの信号をやり取りする回路であったりする。
本発明の半導体装置を電子腕時計に搭載したとき、例えば、第1の回路ブロック11は、所定の発振周波数の信号を発生させる発振回路の回路ブロックとすることができる。第2の回路ブロック12は、レギュレータなどの定電圧発生回路の回路ブロックとすることができる。
【0053】
第1の回路ブロック11が第2の回路ブロック12よりも消費電流が多いとき、第1の回路ブロック11の半導体基板底面部13は、第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14とは同一面にはならず、すなわち、第1の回路ブロック11の半導体基板厚さL1が、第2の回路ブロック12の半導体基板厚さL2よりも小さくしている。このような構造にすることで、第1の回路ブロック11の半導体基板底面部13の下に、空隙20を設けている。
【0054】
このような半導体基板10の構造にするためには、特に限定するものではないが、知られている反応性イオンガスやプラズマガスを用いるドライエッチング技術を用いることができる。例えば、RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いた異方性エッチング技術を用いることで、容易に形成できる。この場合、半導体基板10の裏面、つまり、半導体基板10の下面10b側から研削加工する。
【0055】
第1の回路ブロック11の半導体基板厚さL1は、MOS型トランジスタを構成する要素の下部にあっては、同一としている。つまり、半導体基板底面部13とチャネル領域底面部17bとソース領域底面部18bとドレイン領域底面部19bとは、同一平面にある。
【0056】
このような構造は、本発明の半導体装置の特徴的な部分である。半導体基板厚さL1を半導体基板厚さL2よりも小さくすることで、第1の回路ブロック11におけるMOS型トランジスタの半導体基板空乏層Cdが小さくなる。すでに式1から式3を用いて説明し
たように、空乏層の厚さは半導体基板の基板厚さで決まり、半導体基板の基板厚さ以上には空乏層の厚さは伸びないためである。このため、S値も低くなるのである。
【0057】
S値が低くなるということは、すでに説明したように、MOS型トランジスタのサブスレショルド特性領域におけるドレイン電流の傾きが急峻となり、MOS型トランジスタの閾値を低くすることができる。閾値が低くなると、そのMOS型トランジスタの動作電圧を下げることができるから、結果として第1の回路ブロック11の第消費電力を低減することができる。
【0058】
また、このような構造は、半導体基板10をドライエッチング技術などで研削加工する際に、その加工がし易くなるという効果もある。
従来技術のようにMOS型トランジスタの下部の半導体基板のみの半導体基板厚さを薄くすると、すなわち空隙を形成すると、その空隙と平面的なMOS型トランジスタとの重ね合わせ精度を有する加工が必要になり、製造工程もより複雑化してしまう。そして、MOS型トランジスタの数だけ空隙が必要になるため、半導体基板の裏面には空隙だらけになってしまい、結果として、半導体基板の強度も不足してしまう。
しかし、本発明は、回路ブロック内の半導体基板10を同じ基板厚さとしているので、加工精度を多少落としても何らの問題もなく、半導体装置の製造がし易くなる。また、回路ブロックごとに空隙を有しているから、半導体基板の裏面には空隙だらけになることはない。さらに、半導体装置を設計するときに回路ブロックの配置を考慮し、例えば、第1の回路ブロック11を半導体基板10に均等に配置するなどすれば、半導体基板の強度を落とすこともない。
【0059】
ところで、図2における第1の回路ブロック11や第2の回路ブロック12の左右の幅に関しては、厳密に規定するものでもないため、回路ブロックの境界は、半導体基板10のくり抜き側面部10cと考えてよい。
その半導体基板10のくり抜き側面部10cは、図2に示す例では、ドレイン領域側面部19cと平面的に一致していない例となっているが、もちろん、同一平面としてもよい。
【0060】
[消費電流低減に関する説明]
次に、具体的な数値を例示してMOS型トランジスタの消費電力が低減できることを説明する。説明にあっては、上述のように、本発明の半導体装置を電子腕時計に搭載したときを鑑みて、第1の回路ブロック11を発振回路の回路ブロックとし、第2の回路ブロック12を定電圧発生回路の回路ブロックとして説明する。
ここで、消費電流は、発振回路で20nA、定電圧発生回路で4nAと仮定する。発振回路及び定電圧発生回路を構成するMOS型トランジスタの閾値は、まずは同じ0.7Vと仮定する。
【0061】
定電圧発生回路を駆動させる電圧は、外部の電池などから供給され、例えば3.3V程度の電圧である。それに対して発振回路の駆動電圧は、定電圧発生回路から発生された、例えば1.0V程度の電圧である。つまり、第2の回路ブロック12は、3.3Vの電圧で駆動して、1.0Vの定電圧を出力し、この電圧を第1の回路ブロック11に供給している。
【0062】
第1の回路ブロック11の半導体基板厚さL1は、第2の回路ブロック12の半導体基板厚さL2よりも小さいため、発振回路を構成するMOS型トランジスタ100やMOS型トランジスタ101の半導体基板空乏層容量Cdを小さくでき、S値を低くできるから、その閾値を、0.7Vではなく、例えば0.5V程度に下げることができる。
【0063】
閾値を0.5V程度に下げることができると、発振回路の駆動電圧も下げることができ、1.0Vではなく、例えば0.8V程度に下げることができる。
【0064】
ここで半導体回路の消費電力は、次に示す式4で表すことができる。
【0065】
[式4]
P∝f×Cload×Vdd
【0066】
ここで、Pは消費電力、fは周波数、Cloadは寄生容量、Vddは駆動電圧である。
【0067】
式4に示すように、消費電力Pは、駆動電圧Vddの2乗に比例するため、駆動電圧が1.0Vから0.8Vに下がる場合、消費電力Pは約36%低くすることができる。
【0068】
[MOS型トランジスタの説明]
本発明の半導体装置の特徴的な部分は、以上説明したような回路ブロック間でその下部の半導体基板の基板厚さが異なっているという点である。そして、そのような構造であると共に、第1の回路ブロックと第2の回路ブロックとに設けるMOS型トランジスタの構造が同じであるという点である。
MOS型トランジスタの構造が同じであるということは、ゲート絶縁膜の膜厚、ソース領域及びドレイン領域の拡散深さ、チャネル領域部分の不純物濃度、がそれぞれ同一である。
そして、そのような構造にしたうえで、MOS型トランジスタ下部の半導体基板の基板厚さを薄くすることで、閾値を下げるというものである。
【0069】
ただし、そのような回路ブロックに搭載するMOS型トランジスタの構造そのものは、半導体基板の基板厚さが薄いことを除けば、特殊な構造を有するものではない。次に、そのMOS型トランジスタの構造を説明する。
【0070】
第1の回路ブロック11を構成する第1のMOS型トランジスタ100と第2のMOS型トランジスタ101とは、半導体基板10にソース領域18及びドレイン領域19を設けており、それら挟まれる領域をチャネル領域17とし、このチャネル領域17の上部にゲート絶縁膜16を介してゲート電極15を設けている。
第2の回路ブロックを構成する第3のMOS型トランジスタ102と第4のMOS型トランジスタ102とも同様な構成である。
【0071】
ゲート絶縁膜16は、材質は特に限定しないが、絶縁物として例えばシリコン酸化膜を用いることができる。なお、その膜厚は、特に限定しないが、例えば100Å程度である。ゲート絶縁膜16は、同じ回路ブロック内であれば、同じ膜厚である方が好ましい。これは、加工のし易さを鑑みたものであるが、もちろん、MOS型トランジスタの電気特性に応じてその膜厚を適宜変更してよいことは無論である。なお、ゲート絶縁膜16の成膜は、知られている酸化方法で形成することができる。
【0072】
ゲート絶縁膜16は、もちろん単層の膜でなくてもかまわない。例えば、シリコン酸化膜と窒化膜との積層膜であってもよい。
第1の回路ブロック11又は第2の回路ブロック12に搭載するMOS型トランジスタが、メモリ素子であったとすると、ゲート絶縁膜16は、メモリゲート絶縁膜と考えればよい。このときの構造は、絶縁膜と電荷蓄積膜とを積層した構造となるのである。
【0073】
ソース領域18及びドレイン領域19とチャネル領域17とは、逆の導電型である。不
純物を選択的に導入することで容易に形成できる。その製造方法は、知られているイオン注入技術を用いることができる。例えば、第1のMOS型トランジスタ100がNチャネル型の場合、ソース領域18及びドレイン領域19には、砒素を5×1015atoms/cmで、チャネル領域17には、ボロンを2×1013atoms/cmでイオン注入して形成する。
【0074】
また、第1のMOS型トランジスタ100が、Nチャネル型と異なる極性を有する、Pチャネル型の場合、ソース領域18及びドレイン領域19には、2弗化ボロンを5×1015atoms/cmで、チャネル領域17には燐を2×1013atoms/cmでイオン注入して形成する。
【0075】
ゲート電極15は、材質は特に限定しないが、導電物として例えばポリシリコンを用い、知られているCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成する。膜厚は、例えば3500Å程度であるが、MOS型トランジスタの性能により変更が可能であり、これに限定するものではない。
【0076】
第1の回路ブロック11を構成する、第1のMOS型トランジスタ100と第2のMOS型トランジスタ101とは、別の極性を持つMOS型トランジスタで形成してもよい。
例えば、第1のMOS型トランジスタ100をNチャネル型で、第2のMOS型トランジスタ101をPチャネル型で形成して、CMOSを構成してもよい。もちろん、第2の回路ブロック12を構成する、第3のMOS型トランジスタ102と第3のMOS型トランジスタ103とを、別の極性を持つMOS型トランジスタで形成してもよい。
【0077】
以上の説明で明らかなように、第1の回路ブロック11及び第2の回路ブロック12を構成する複数のMOS型トランジスタは、ゲート絶縁膜16の膜厚と、ソース領域18及びドレイン領域19の拡散深さと、チャネル領域17部分の不純物濃度と、をそれぞれ同一とする構造である。
【実施例2】
【0078】
[第2の発明形態の構成の説明:図3]
次に、第2の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した図面も適宜参照して行なう。
図3は斜傾図であり、半導体基板10に2つの第1の回路ブロック11と、2つの第2の回路ブロック12とを配置している例を示すものである。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0079】
図3を用いて本発明の半導体装置の構成を説明する。30は半導体基板10の一方の側面部、31は半導体基板10の他方の側面部である。
図1に示す第1の実施形態と異なるのは、第1の回路ブロック11及び第2の回路ブロック12が、それぞれ半導体基板上面部10aに対して並列に配置されており、空隙20を半導体基板10の一方の側面部30と、他方の側面部31とまで貫通するようにしている点である。
【0080】
このようにすることで、例えば、半導体装置の製造中や、半導体装置を電子機器に搭載した後に高温に晒されることがあっても、第1の回路ブロック11の下部の空隙20内の空気は、半導体基板10の一方の側面部30又は他方の側面部31から排出されるため、空気の滞留が少なくなる。その結果、半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【実施例3】
【0081】
[第3の発明形態の構成の説明:図4、図5(a)、図5(b)]
次に、第3の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した図面も適宜参照して行なう。
図4は斜傾図であり、半導体基板10に1つの第1の回路ブロック11と、4つの第2の回路ブロック12とを配置している例を示すものである。図5は、図2と同じ方向からみた端面図であるが、第1の回路ブロック11の部分を拡大した図である。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0082】
図4において、40は補強基板、40aは補強基板40の上面部、41は補強基板40の貫通孔、11´は第1の回路ブロック11を、仮想的に補強基板40の上面部40aに投影したエリアである。図5(a)及び(b)において、45は接着剤、46は表面活性化接合面である。
【0083】
第3の実施形態の特徴は、半導体基板10の強度をさらに向上させる構造を有しているという点である。半導体基板10の底部に補強基板40を接着又は接合して一体化することにより、強度を向上させるのである。
【0084】
図4に示すように、補強基板40の上面部40aには、第1の回路ブロック11の領域を仮想的に投影したエリア11´がある。半導体基板10と補強基板40とを重ねると、このエリア11´と第1の回路ブロック11とも同じく重なるようになっている。このエリア11´には、補強基板40を貫通する貫通孔41が設けてある。
【0085】
補強基板40の大きさは特に限定しないが、補強基板の上面部40aと半導体基板10の下面10bとが重なり合うような大きさ、つまり半導体装置を平面でみたときに双方が重なり合うような大きさであれば、半導体装置の底部は補強基板40にて平らになるため、半導体装置を取り扱うときに便利である。この場合、第2の回路ブロック12の底部も補強基板40が覆うことになり、図2に示す半導体基板底面部14にも接着剤45が接するか、表面活性化接合面46を有するようになる。
【0086】
図5(a)は、半導体基板10と補強基板40とを接着剤45にて接着した構造を示すものである。半導体基板10の下面10bと補強基板40の上面部40aとは、接着剤45にて接着している構造である。
なお、図示はしないが、半導体基板底面部14や半導体基板10の下面10bの表面、又は補強基板40の上面部40aを粗く加工してもよい。こうすることで接着剤45による接着強度が増すのである。
接着剤45は、特に限定しないが、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を組成物とするものを用いることができる。
【0087】
図5(b)は、半導体基板10の下面10bと補強基板40の上面部40aとを表面活性化接合面46で接合した構造を示すものである。表面活性化接合とは、接合する表面をアルゴンビームなどでクリーニングし表面エネルギーを増加させ、接触後加圧して接合する技術である。
【0088】
このようにすることで、半導体装置全体の強度を向上させることができる。また、貫通孔41を設けていることにより空隙20内の空気の滞留を防ぎ、半導体装置に熱が印加されたとしても補強基板40で空隙20を塞ぐことによる空気の膨張を抑制することができ、半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【実施例4】
【0089】
[第4の発明形態の構成の説明:図6、図7(a)、図7(b)、図2]
次に、第4の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した
図面も適宜参照して行なう。
図6は斜傾図であり、半導体基板10に1つの第1の回路ブロック11と、4つの第2の回路ブロック12とを配置している例を示すものである。図7は、図2と同じ方向からみた端面図であるが、第1の回路ブロック11の部分を拡大した図である。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0090】
図6において、50は補強基板、50aは補強基板50の上面部、50bは補強基板50の底面部、50cは補強基板50の側面部、60は補強基板50の貫通孔である。
図7(a)及び(b)において、47は表面活性化接合面である。S1及びS2は第1の回路ブロック11の半導体基板底面部13と補強基板50の上面部50aとの距離、S3は第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14と補強基板50の底面部50bとの距離である。
【0091】
第4の実施形態の特徴は、半導体基板10の空隙20に補強基板50をはめ込んだ構造を有しているという点である。目的は半導体基板10の強度を向上ではあるが、このような構成にすれば、空隙20の大きさを任意に変えることができる。
【0092】
図6に示すように、補強基板50には、これを貫通する貫通孔60が設けてある。第1の回路ブロック11には、図2に示すように、くり抜き側面部10cがあり、これと補強基板50の側面部50cとが接する。この接する面が表面活性化接合面47となる。これにより、半導体基板10と補強基板50とは強固に接合することができる。
【0093】
図7(a)に示す例は、空隙20に補強基板50をはめ込んだときに、補強基板50の底面部50bと半導体基板10の下面10bと第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14とが同一平面となるようにしたものである。このとき、半導体基板底面部13と補強基板50の上面部50aとは、距離S1となっている。
【0094】
図7(b)に示す例は、空隙20に補強基板50をはめ込んだときに、補強基板50の底面部50bと半導体基板10の下面10bと第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14とが同一平面とはならず、距離S3だけ半導体基板底面部13の方向に入り込んだ構造となっている。このとき、半導体基板底面部13と補強基板50の上面部50aとは、距離S1から距離S2に変わる。
【0095】
このとき、距離S2がゼロにならないようにすることは言うまでもないことである。距離S2がゼロになるということは、補強基板50の上面部50aと、チャネル領域底面部17b、ソース領域底面部18b、ドレイン領域底面部19b(それぞれ図2を参照)、半導体基板底面部13とが接触するということである。この接触が、MOS型トランジスタ下部の半導体基板10の基板厚さが増えることと同じ意味とはならないものの、先に説明したように、半導体基板空乏層容量Cdは、シリコンの誘電率Ksの11.7に対し、空隙20による空気の誘電率が1.0となるため、半導体基板空乏層容量Cdを小さくするという意味においては、その影響を受けにくくする必要を鑑みて、距離S2がゼロとはならないようにすることが望ましいのである。
【0096】
図7(a)に示すような構成にするか図7(b)に示すような構成にするかは、任意に決めることができる。例えば、半導体基板10の基板厚さや求める強度によって決めてもよい。また、図示はしないが、補強基板50を半導体基板10の底面より突出するようにしてもよい。
いずれにしても、このようにすることで、半導体装置全体の強度を向上させることができる。また、貫通孔60を設けていることにより空隙20内の空気の滞留を防ぎ、半導体装置に熱が印加されたとしても補強基板50で空隙20を塞ぐことによる空気の膨張を抑
制することができ、半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【実施例5】
【0097】
[第5の発明形態の構成の説明:図8、図9]
次に、第5の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した図面も適宜参照して行なう。
図8は斜傾図であり、半導体基板10に1つの第1の回路ブロック11と、4つの第2の回路ブロック12とを配置している例を示すものである。図9は、図2と同じ方向からみた端面図であるが、第1の回路ブロック11の部分を拡大した図である。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0098】
図8及び図9において、70は補強基板、70aは補強基板70の上面部、80は補強基板70の上面部70aに設ける突起部、80aは突起部80の上面部、81は補強基板70を貫く貫通孔である。
【0099】
第5の実施形態の特徴は、すでに説明した実施形態の補強基板のように平板形状の補強基板を用いるのではなく、その断面が凸形状の補強基板70を用い、突起部80を半導体基板10の空隙20にはめ込んだ構造を有しているという点である。目的は半導体基板10の強度を向上ではあるが、このような構成にすれば、半導体基板10と補強基板70との接触面積が増し、半導体装置の強度をさらに向上させることができるのである。
【0100】
第1の回路ブロック11には、すでに説明したように、くり抜き側面部10cがあり、これと補強基板70の突起部80とが接する。補強基板70の上面部70aは、半導体基板10の下面10bや第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14と接する。この接する面が表面活性化接合面47となる。これにより、半導体基板10と補強基板50とは立体的に接合されるので、より強固に接合することができる。
【0101】
図8及び図9に示すように、補強基板70には、これを貫通する貫通孔81が設けてある。このようにすれば、空隙20内の空気の滞留を防ぎ、半導体装置に熱が印加されたとしても補強基板70で空隙20を塞ぐことによる空気の膨張を抑制することができ、半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【実施例6】
【0102】
[第6の発明形態の構成の説明:図10、図11(a)、図11(b)]
次に、第6の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した図面も適宜参照して行なう。
図10は斜傾図であり、半導体基板10に2つの第1の回路ブロック11と、2つの第2の回路ブロック12とを配置している例を示すものである。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0103】
図10及び図11において、90は補強基板、90aは補強基板90の上面部、90bは補強基板90の底面部、90cは補強基板90の側面部である。S4及びS5は第1の回路ブロック11の半導体基板底面部13と補強基板90の上面部90aとの距離、S6は第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14と補強基板90の底面部90bとの距離である。
【0104】
第6の実施形態の特徴は、すでに説明した第2の実施形態に第4の実施形態を応用したものである。すでに説明した実施形態の補強基板と同様な平板形状の補強基板を用い、補強基板90を半導体基板10の空隙20にはめ込んだ構造を有しているという点である。
【0105】
第1の回路ブロック11には、図2に示すように、くり抜き側面部10cがあり、これと補強基板90の側面部90cとが接する。この接する面が表面活性化接合面47となる。これにより、半導体基板10と補強基板90とは強固に接合することができる。なお、図10及び図11に示す半導体基板10には、図3に示す例と同様に、一方の側面部30と他方の側面部31とを貫通するように空隙20が設けてあるため、補強基板90に貫通孔は不要である。
【0106】
図11(a)に示す例は、空隙20に補強基板90をはめ込んだときに、補強基板90の底面部90bと半導体基板10の下面10bと第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14とが同一平面となるようにしたものである。このとき、半導体基板底面部13と補強基板90の上面部90aとは、距離S4となっている。
【0107】
図11(b)に示す例は、空隙20に補強基板90をはめ込んだときに、補強基板90の底面部90bと半導体基板10の下面10bと第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14とが同一平面とはならず、距離S6だけ半導体基板底面部13の方向に入り込んだ構造となっている。このとき、半導体基板底面部13と補強基板90の上面部90aとは、距離S4から距離S5に変わる。なお、このとき、距離S5がゼロにならないようにすることは言うまでもないことである。
【実施例7】
【0108】
[第7の発明形態の構成の説明:図12]
次に、第7の実施形態を図面を参照しつつ説明する。説明にあっては、すでに説明した図面も適宜参照して行なう。
図12は端面図であり、図1に示す切断線X−X’に沿った端面図である図2に相当する。図12において、L2´は第2の回路ブロック12の半導体基板厚さである。なお、すでに説明した構成と同じ構成には同じ番号を付与している。
【0109】
第7の実施形態の特徴は、第2の回路ブロック12の下部の半導体基板10の基板厚さも変更したという点である。空隙20を第1の回路ブロック11の下部にのみ設けるのではない場合を説明するものである。
【0110】
図12に示すように、第2の回路ブロック12の半導体基板底面部14は、半導体基板10の半導体基板10の下面10bよりも薄くなるように、すなわち、第2の回路ブロック12の半導体基板厚さL2´が、半導体基板10のそもそもの厚さよりも小さくなるように、半導体基板10を知られているエッチング技術で半導体基板10の裏面から研削し、第2の回路ブロックの半導体基板底面部14の下に、空隙20を設ける。
【0111】
図12に示すような形状に半導体基板10を加工することは、すでに説明したようにRIE装置を用いた異方性エッチング技術を用いることで容易に形成できる。この場合、半導体基板10の裏面、つまり、半導体基板10の下面10b側から研削加工するのであるが、エッチングで除去する半導体基板の量は、エッチング時間でコントロールすることが容易にできる。
【0112】
特に限定しないが、次のような製造工程を行うことができる。
半導体基板10の裏面からエッチングを行ない、第2の回路ブロック12の半導体基板厚さL2´が所定の値になったところでエッチングを止める。このとき、第1の回路ブロック11の半導体基板厚さL1は、L2´と同じ値となっている。
第1の回路ブロック11の半導体基板厚さL1を所定の値まで研削するため、知られているホトリソ技術を用いて第1の回路ブロック11の下部以外をホトレジストで覆い、第1の回路ブロック11の半導体基板10をエッチングし、半導体基板10の厚さを半導体
基板厚さL1までにする。つまり、半導体基板10を裏面からエッチングする工程を2回行うのである。
【0113】
図12に示すようにすれば、第2の回路ブロック12に設けるMOS型トランジスタの電気特性(特にその閾値)に応じて、半導体基板10の厚さを変えることができるので、本発明の半導体装置を搭載する電子機器の仕様に応じて、第1の回路ブロック11と第2の回路ブロック12とに設けるMOS型トランジスタの閾値を自由に設定することができる。
【0114】
本発明の半導体装置は、以上説明した実施形態に限定するものではない。例えば、第7の実施形態に他の実施形態で説明した補強基板を設けてもよいのである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の半導体装置は、低消費電力化を行うことができるため、小型電子機器や電子腕時計に搭載する、低消費電力化が求められる半導体装置に好適である。
【符号の説明】
【0116】
10 半導体基板
10a 半導体基板の上面
10b 半導体基板の下面
10c 半導体基板のくり抜き側面部
11 第1の回路ブロック
12 第2の回路ブロック
13 第1の回路ブロックの半導体基板底面部
14 第2の回路ブロックの半導体基板底面部
15 ゲート電極
16 ゲート絶縁膜
17 チャネル領域
17b チャネル領域底面部
18 ソース領域
18b ソース領域底面部
19 ドレイン領域
19b ドレイン領域底面部
19c ドレイン領域側面部
20 空隙
100 第1のMOS型トランジスタ
101 第2のMOS型トランジスタ
102 第3のMOS型トランジスタ
103 第4のMOS型トランジスタ
L1 第1の回路ブロックの半導体基板厚さ
L2 第2の回路ブロックの半導体基板厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのMOS型トランジスタからなる回路ブロックを1つの半導体基板上に複数配置してなる半導体装置であって、
前記回路ブロックを構成する複数の前記MOS型トランジスタは、ゲート絶縁膜の膜厚と、ソース領域及びドレイン領域の拡散深さと、チャネル部分の不純物濃度と、をそれぞれ同一とする構造であり、
第1の回路ブロックが第2の回路ブロックよりも消費電流が多いとき、
前記MOS型トランジスタの前記ソース領域と前記ドレイン領域と前記チャネル領域との下部の前記半導体基板の基板厚さは、前記第1の回路ブロックの方が前記第2の回路ブロックよりも薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記回路ブロック内では、前記半導体基板の基板厚さが等しいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の回路ブロックを構成する前記MOS型トランジスタの閾値の方が、前記第2の回路ブロックを構成する前記MOS型トランジスタの閾値よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の回路ブロックを動作させる第1の駆動電圧の方が、前記第2の回路ブロックを動作させる第2の駆動電圧のよりも低いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の回路ブロックは、前記ソース領域と前記ドレイン領域と前記チャネル領域との下部の前記半導体基板の底面から、前記第2の回路ブロックの前記半導体基板の底面まで空隙部分となっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板は、補強基板と接着又は結合していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記補強基板は、前記空隙部分に嵌り込むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記補強基板は、前記第1の回路ブロックと平面的に重なる位置に貫通穴を設けていることを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−204837(P2011−204837A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69699(P2010−69699)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】