半導体装置
【課題】従来よりも低消費電力かつ小面積であるとともに設計性のよいパワーオンリセット回路またはスタートアップ回路を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、出力部10と、第1および第2の電位設定部8,9とを備える。出力部10は、電源投入時に、中間電位ノードN1の電位に応じた制御信号RSを内部回路3に出力する。第1の電位設定部8は、第1の基準電位ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタEPを含む。第2の電位設定部9は、第2の基準電位ノードGNDと中間電位ノードN1との間に直列接続された第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタDN1_〜DN_nを含む。複数の第2のMOSトランジスタDN1_〜DN_nの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される。
【解決手段】半導体装置1は、出力部10と、第1および第2の電位設定部8,9とを備える。出力部10は、電源投入時に、中間電位ノードN1の電位に応じた制御信号RSを内部回路3に出力する。第1の電位設定部8は、第1の基準電位ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタEPを含む。第2の電位設定部9は、第2の基準電位ノードGNDと中間電位ノードN1との間に直列接続された第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタDN1_〜DN_nを含む。複数の第2のMOSトランジスタDN1_〜DN_nの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーオンリセット回路やスタートアップ回路など、電源投入時にシステムを正常動作させるのに必要な制御信号を発生する回路を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーオンリセット回路は、電源投入時にシステムが誤動作するのを防止するために、電源電圧が所定の値になったときにリセット信号を出力する回路である。パワーオンリセット回路には種々の形態があるが、最も基本的な形態のものは抵抗またはダイオードとコンデンサとからなる遅延回路を備えたものである。遅延回路の出力が所定の閾値電圧を超えたときリセット信号が出力される。しかしながら、この回路は、電源電圧が非常に緩やかに上昇する場合にシステムが動作可能な電圧に電源電圧が達する前にリセット信号が出力されてしまうという問題がある。
【0003】
特開2007−272429号公報(特許文献1)は、電源電圧が緩やかに上昇する場合にも動作可能なように改良されたパワーオンリセット回路の一例を開示する。具体的には、この文献に記載のパワーオンリセット回路は、電圧検出回路と、インバータと、トランジスタと、キャパシタとを備える。電圧検出回路は、電源電圧を分圧する複数の抵抗素子からなる分圧回路と、分圧回路で分圧された電圧に基づいて電源電圧が所定値以上か否かを検出する回路とからなる。インバータには、電圧検出回路の出力信号が入力される。トランジスタは、前記インバータの入力ノードと接地との間に接続される。キャパシタは、インバータの出力により充電されるとともに、充電電圧をトランジスタのゲート電圧として供給する。
【0004】
特開2003−32088号公報(特許文献2)は、抵抗素子を使用しないパワーオンリセット回路の一例を開示する。この文献のパワーオンリセット回路は、PMOS(Positive-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとディプレッション型のNMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタからなる動作電圧設定回路と、2個のPMOSトランジスタおよびコンデンサからなる充電回路と、縦続接続されたインバータ回路とを含む。インバータ回路の出力がパワーオンリセットのための信号である。なお、特開2008−243329号公報(特許文献3)の図13にもディプレッション型のMOSトランジスタを用いたパワーオンリセット回路の例が開示されている。
【0005】
スタートアップ回路は、電源投入時に内部回路を速やかに安定動作させるために、内部回路に強制的に電圧を与える回路である。内部回路は、強制的電圧を入力するための第1のノードと、内部回路の電位を検出するための第2ノードとを含む。電源電圧が定常電圧に近づくことによって第2のノードの電位が閾値を超えると、スタートアップ回路は、第1のノードとの間を非接続の状態にするので強制的な電圧の印加が停止される。
【0006】
スタートアップ回路にも種々の形態がある。たとえば、特開2006−50437号公報(特許文献4)に開示されるスタートアップ回路は、第1および第2のPMOSトランジスタと、第1および第2の容量素子と、抵抗素子とを含む。第1のPMOSトランジスタのドレインは内部回路の上記の第1のノードと接続され、第1のPMOSトランジスタのソースと電源ノードとの間に第1の容量素子が接続される。第2のPMOSトランジスタのゲートは内部回路の上記の第2のノードに接続され、第2のPMOSトランジスタのドレインは第1のPMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースは電源ノードに接続される。第2のPMOSトランジスタのドレインと接地ノードとの間に第2の容量素子と抵抗素子とが並列に接続される。素子面積を縮小するために抵抗素子に代えてディプレッション型のNMOSトランジスタを用いてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−272429号公報
【特許文献2】特開2003−32088号公報
【特許文献3】特開2008−243329号公報
【特許文献4】特開2006−50437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワーオンリセット回路およびスタートアップ回路では、電源電圧が定常状態に立ち上がった後に回路を常時流れる電流による消費電力が問題となる。抵抗素子を用いた回路の場合には、抵抗素子の値を増大させることによって消費電力を抑えることができるが、抵抗値の増大に伴って回路面積が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
抵抗素子に代えてMOSトランジスタを用いた場合には、抵抗素子を用いる回路に比べて小面積化が可能である。さらにこの場合、特開2008−243329号公報(特許文献3)の図13のように複数個のMOSトランジスタを直列に接続することによって消費電力の抑制も期待できる。しかしながら、この文献の例の場合には、基板バイアス効果によってドレイン−ソース間を流れる電流や基板電流が個々のMOSトランジスタでばらばらになる。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果とを一致させるのが困難になるので、回路が確実に動作しない場合が生じることになり、回路設計が困難である。
【0010】
この発明の目的は、低消費電力性と小面積化とを両立させるとともに従来よりも設計性のよいパワーオンリセット回路またはスタートアップ回路を備えた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の実施の一形態による半導体装置は、第1および第2の基準電位ノードと、中間電位ノードと、出力部と、第1および第2の電位設定部とを備える。第1および第2の基準電位ノード間には電源電圧が印加される。出力部は、電源投入時に、中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号を電源電圧によって動作する内部回路に出力する。第1の電位設定部は、第1の基準電位ノードと中間電位ノードとの間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタを含む。第2の電位設定部は、第2の基準電位ノードと中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含む。第1のMOSトランジスタおよび複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において第1のMOSトランジスタの電流駆動力が複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられる。複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられる。複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される。
【発明の効果】
【0012】
上記の実施の形態の半導体装置によれば、直列接続された複数の第2のMOSトランジスタが互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられるとともに、これらのトランジスタにおいてソースとウェルとが互いに接続される。これによって、低消費電力かつ小面積であるとともに従来よりも設計性のよいパワーオンリセット回路およびスタートアップ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1によるパワーオンリセット回路2を含む半導体装置1の構成を示す回路図である。
【図2】図1のパワーオンリセット回路2を簡略化したパワーオンリセット回路2Aの構成を示す回路図である。
【図3】図2の各部の電圧波形を示すタイミング図である。
【図4】図2のパワーオンリセット回路2Aの比較例としてのパワーオンリセット回路102Aの構成を示す回路図である。
【図5】図1の電位設定部8,9の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】図1のパワーオンリセット回路2の比較例としてのパワーオンリセット回路102Bの構成を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるパワーオンリセット回路2Bの構成を示す回路図である。
【図8】図7の電位設定部8A,9Aの構造を模式的に示す断面図である。
【図9】図7のパワーオンリセット回路2Bの比較例としてのパワーオンリセット回路102Cの構成を示す回路図である。
【図10】実施の形態2の変形例としてのパワーオンリセット回路2Cの構成を示す回路図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるパワーオンリセット回路2Dの構成を示す回路図である。
【図12】この発明の実施の形態4によるパワーオンリセット回路2Eの構成を示す回路図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるパワーオンリセット回路2Fの構成を示す回路図である。
【図14】図13のパワーオンリセット回路2Fの変形例としてのパワーオンリセット回路2Gの構成を示す回路図である。
【図15】この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30を含む半導体装置5の構成を示す回路図である。
【図16】図15のスタートアップ回路30の効果を説明するための図である。
【図17】図15のスタートアップ回路30の比較例としてのスタートアップ回路130を含む半導体装置105の構成を示す回路図である。
【図18】この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30をバンドギャップリファレンス回路50に適用した例を示す回路図である。
【図19】この発明の実施の形態7によるスタートアップ回路30Aを含む半導体装置5Bの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。実施の形態1〜5では、パワーオンリセット回路の例について説明し、実施の形態6,7ではスタートアップ回路の例について説明する。以下の説明において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、この発明の実施の形態1によるパワーオンリセット回路2を含む半導体装置1の構成を示す回路図である。図1を参照して、パワーオンリセット回路2は、電位設定部8,9と、出力部10と、容量素子13とを含む。パワーオンリセット回路2は、電源投入時や、電源電圧が一時的に低下したときなどに電源電圧の値に応じてリセット信号RSを内部回路3に出力する。
【0016】
電位設定部8は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタEPを含む。PMOSトランジスタEPのソースは、電源電位が与えられる電源ノードVDDに接続され、PMOSトランジスタEPのドレインは中間電位ノードN1に接続され、PMOSトランジスタEPのゲートは、接地電位(0V)が与えられる接地ノードGNDに接続される。
【0017】
電位設定部9は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを含む。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。
【0018】
出力部10は、中間電位ノードN1の電位を受けるインバータ11と、インバータ11の出力を受けるインバータ12とを含む。インバータ12の出力がリセット信号RSとして内部回路3に出力される。インバータ11,12および内部回路3は、電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間の電源電圧によって駆動される。
【0019】
容量素子13は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続される。容量素子13は、電源電圧が短い期間だけ一時的に変動しても中間電位ノードN1の電位が変動しないようにするために設けられている。
【0020】
図2は、図1のパワーオンリセット回路2を簡略化したパワーオンリセット回路2Aの構成を示す回路図である。図2の電位設定部9Aは、1個のディプレッション型のNMOSトランジスタDNによって構成される点で図1の電位設定部9と異なる。図2のその他の点は図1の場合と同じである。以下、図2を参照してパワーオンリセット回路2Aの動作および作用効果を説明するが、その内容は図1のパワーオンリセット回路2の場合と共通する。
【0021】
ディプレッション型のNMOSトランジスタDNは、閾値電圧がマイナスの値であるので電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれ、容量素子13の電圧は0Vに初期化されている。電源投入後、PMOSトランジスタEPのゲート・ソース間電圧がトランジスタの閾値電圧以下の間は、中間電位ノードN1の電位は0Vに保たれる。この状態がリセット状態である。その後、電源電圧が上昇し、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えるとリセットが解除される。
【0022】
リセット解除後もPMOSトランジスタEPからNMOSトランジスタDNへ常時電流が流れるが、この電流パスはMOSトランジスタのみで構成されているため、電源電圧が変動しても電流パスを流れる電流値はほぼ一定に保たれる。このため、広い電源電圧に対応したシステムであっても、低電流を維持することが容易である。また、この電流パスを流れる電流の大きさは、主にNMOSトランジスタDNの駆動力に依存する。このため、電流を小さくするには、NMOSトランジスタDNのトランジスタのチャネル長Lを長くする、チャネル幅Wを狭くする、さらには図1のように直列接続(「縦積み」または「カスコード接続」とも称する)にするなどの方法が有効である。これらの方法は、抵抗素子を用いた場合と比較して、面積へのインパクトは小さい。このため、小面積化と低消費電力化の両立が容易である。
【0023】
図2では、PMOSトランジスタEPのゲートおよびNMOSトランジスタDNのゲートは接地ノードGNDに接続されているが、必ずしもゲートに接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力よりも大きくなるような電位が各ゲートに与えられればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲート電位として用いることもできる。
【0024】
図3は、図2の各部の電圧波形を示すタイミング図である。図3では、上から順に電源ノードVDDの電位の時間変化、中間電位ノードN1の電位の時間変化、インバータ11の出力電圧波形、およびインバータ12の出力電圧波形(リセット信号RSの波形)が示される。
【0025】
図2、図3を参照して、時刻t0で電源が投入され電源ノードVDDの電位が上昇を開始する。これに伴って中間電位ノードN1の電位も上昇する。時刻t1で、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位Vthに達すると、インバータ11の出力電圧がハイレベル(電源ノードVDDの電位)からローレベル(接地電位:0V)に変化し、インバータ12の出力電圧(リセット信号RS)がローレベル(接地電位:0V)からハイレベル(電源ノードVDDの電位)に変化する。時刻t2で電源ノードVDDの電位が定常状態に達する。
【0026】
図4は、図2のパワーオンリセット回路2Aの比較例としてのパワーオンリセット回路102Aの構成を示す回路図である。以下、図4の比較例と対比することによって、図2のパワーオンリセット回路2Aの効果についてさらに説明する。
【0027】
図4のパワーオンリセット回路102Aは、図2のPMOSトランジスタEPに代えてダイオード接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENが設けられている点、および図2のディプレッション型のNMOSトランジスタDNが設けられていない点で、図2のパワーオンリセット回路2Aと異なる。図4において電源電圧が0Vのとき、中間電位ノードN1の電位は0Vである。この状態がリセット状態である。電源電圧の上昇とともにNMOSトランジスタPNを流れる電流によって容量素子13に電荷が蓄積される。中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えたときにリセットが解除される。
【0028】
図4のパワーオンリセット回路102Aでは、電源電圧が緩やかに上昇する場合、電源電圧が内部回路の動作可能電圧に達する前にリセットが解除されるという問題がある。NMOSトランジスタENは、ゲート・ソース間電圧が閾値電圧を超えていない場合でも電流が少し流れる。これによって容量素子13が充電されるので、電源上昇が緩やかな場合、電源ノードVDDの電位が内部回路3の動作可能な範囲に達する前に、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を越えてしまう。
【0029】
さらに、図4のパワーオンリセット回路102Aでは、容量素子13をディスチャージするには容量素子13およびNMOSトランジスタENのリークによる電流パスしかないため、中間電位ノードN1の電位を0Vに戻すのに時間がかかるという問題がある。中間電位ノードN1に残留電荷が残っている場合には、リセット状態にならなかったり、すぐにリセットが解除されてしまう場合がある。
【0030】
これに対して、図2のパワーオンリセット回路2Aでは、容量素子13の残留電荷は、ディプレッション型のNMOSトランジスタDNを介して接地ノードGNDに流れる。このため、パワーオンリセット回路2Aの中間電位ノードN1の電位は、インバータ11の閾値電圧より必ず低くなり、リセット状態が実現できる。リセット状態は、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力を上回ると解除される。
【0031】
前述した特開2007−272429号公報(特許文献1)に記載のパワーオンリセット回路の場合には、抵抗素子によって電源電圧を分圧した電圧とNMOSトランジスタの閾値電圧との大小関係によってリセット状態が解除される。このため、電源電圧の上昇が緩やかな場合でも正常に動作する。しかしながら、電源電圧の分圧用の抵抗素子には、リセット解除後にも電流が常時流れるので、電源電圧が大きくなると、抵抗素子に流れる電流も大きくなる。このため、広い電源電圧の範囲に対応したシステムでは低消費電力化は困難である。さらに、抵抗素子を流れる電流を小さくするには、抵抗素子の抵抗値を大きくする必要があるが、そうすると大きなレイアウト面積が必要になってしまう。以上の理由で、消費電力の低減と小面積化の両立が困難である。これに対して、図2のパワーオンリセット回路2Aの場合には、既に説明したように小面積化と低消費電力化とを両立できる。
【0032】
再び図1を参照して、パワーオンリセット回路2では、電位設定部8,9の消費電力をさらに抑制するために、n個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nが直列接続される。この場合、基板バイアス効果が生じないように、n個のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとP型ウェルとが接続される。以下、図5を参照して具体的に説明する。
【0033】
図5は、図1の電位設定部8,9の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図5を参照して、P型半導体基板20にN型ウェル21とN型埋込層22とが設けられ、N型埋込層22にはn個のP型ウェル23_1〜23_nが設けられる。すなわち、P型ウェル23_1〜23_nはトリプルウェル構造となっている。P型半導体基板20は接地ノードGNDに接続され、N型ウェル21およびN型埋込層22は電源ノードVDDに接続される。PMOSトランジスタEPはN型ウェル21に形成され、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nはP型ウェル23_1〜23_nにそれぞれ形成される。各NMOSトランジスタはディプレッション型であるので、ドレイン・ソース間に高濃度のN型不純物層24が設けられる。
【0034】
PMOSトランジスタEPにおいて、ドレインDは中間電位ノードN1に接続され、ソースSは電源ノードVDDに接続され、ゲートは接地ノードGNDに接続される。
【0035】
NMOSトランジスタDN_1〜DN_nにおいて、第i番目(iは1以上n−1以下の整数)のNMOSトランジスタDN_iのソースSは第i+1番目のNMOSトランジスタDN_i+1のドレインDと接続される。第1番目のNMOSトランジスタDN_1のドレインDは中間電位ノードN1に接続され、第n番目のNMOSトランジスタDN_nのソースSは接地ノードGNDに接続される。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートGはいずれも接地ノードGNDに接続される。さらに、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各々において、ソースSとP型ウェルとが互いに接続される。
【0036】
図1、図5のように、各NMOSトランジスタにおいてソースとウェルとを接続する効果を、次の図6の比較例と対比して説明する。
【0037】
図6は、図1のパワーオンリセット回路2の比較例としてのパワーオンリセット回路102Bの構成を示す回路図である。図6の電位設定部109は、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図1の電位設定部9と異なる。したがって、図5の断面図において、図6の電位設定部109の場合には、N型埋込層22およびP型ウェル23_1〜23_nが設けられておらず、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nはP型半導体基板20に形成される。
【0038】
図1、図6のいずれの場合も、NMOSトランジスタを何段もスタックすることでパワーオンリセット回路の消費電流を抑制できる。特に、図6のように各NMOSトランジスタのゲートとボディ(バックゲート)とを接地ノードGNDに接続した場合には、各NMOSトランジスタにおいてソースの電位とボディ(基板)の電位とが異なり、ソース・基板間に逆バイアスが印加される。このため、NMOSトランジスタが多段になるほど基板バイアス効果によってドレイン・ソース間の電流値が小さくなるので、図1の電位設定部9の場合に比べて少ない段数で、すなわち、小面積で消費電流を抑えることができる。
【0039】
しかしながら、図6の場合には、ソース・ボディ間の電圧がNMOSトランジスタごとにばらばらになるために、ドレイン・ソース間を流れるドレイン電流やドレイン・基板間の基板電流が個々のNMOSトランジスタで異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難であり、回路が確実に動作しない場合が生じるので設計が容易でない。たとえば、シミュレーションで得られたNMOSトランジスタの電流値よりも実際の電流値が小さい場合は、容量素子13に蓄積された電荷を引き抜くことができず正常に動作しない可能性がある。逆に、シミュレーションで得られたNMOSトランジスタの電流値よりも実際の電流値が大きい場合は、PMOSトランジスタEPの電流駆動力が不足するために中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えない可能性がある。
【0040】
一方、図1および図5に示すように、各NMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とを接続するようにすれば、ソースの電位とボディ(ウェル)の電位とが等しくなるため、ソース・ボディ間には逆バイアスは印加されない。ドレイン電流を抑制するためには図6の場合よりも多くの段数が必要になるが実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなる。
【0041】
図1では、PMOSトランジスタEPのゲートおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力が各NMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0042】
<実施の形態2>
図7は、この発明の実施の形態2によるパワーオンリセット回路2Bの構成を示す回路図である。図7のパワーオンリセット回路2Bは、電位設定部8,9に代えて電位設定部8A,9Aを含む点で、図1のパワーオンリセット回路2と異なる。図7のその他の点は図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0043】
電位設定部8Aは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のPMOSトランジスタEP_1〜EP_mを含む。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。m個のPMOSトランジスタEP_1〜EP_mは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0044】
電位設定部9Aは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたディプレッション型のNMOSトランジスタDNを含む。NMOSトランジスタDNのゲートは接地ノードGNDに接続される。
【0045】
図8は、図7の電位設定部8A,9Aの構造を模式的に示す断面図である。
図8を参照して、接地ノードGNDに接続されたP型半導体基板20にm個のN型ウェル21_1〜21_mが設けられる。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mは、N型ウェル21_1〜21_mにそれぞれ形成され、NMOSトランジスタDNはP型半導体基板20に形成される。NMOSトランジスタDNはディプレッション型であるので、ドレイン・ソース間に高濃度のN型不純物層24が設けられる。
【0046】
PMOSトランジスタEP_1〜EP_mにおいて、第i番目(iは1以上m−1以下の整数)のPMOSトランジスタEP_iのドレインDは第i+1番目のPMOSトランジスタEP_i+1のソースSと接続される。第1番目のPMOSトランジスタEP_1のソースSは電源ノードVDDに接続され、第m番目のPMOSトランジスタEP_mのドレインDは中間電位ノードN1に接続される。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートGはいずれも接地ノードGNDに接続される。さらに、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各々において、ソースSとN型ウェルとが互いに接続される。
【0047】
NMOSトランジスタDNにおいて、ドレインDは中間電位ノードN1に接続され、ソースSおよびゲートGは接地ノードGNDに接続される。
【0048】
図7、図8に示すパワーオンリセット回路2Bによれば、直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mを設けることによってリセット解除後に定常的に流れる電流量を低減することができ、かつ、抵抗素子を用いた回路に比べて小面積化を実現できる。中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間にディプレッション型のNMOSトランジスタDNを設けることによって、電源電圧が0Vのときに中間電位ノードN1の電位を確実に0Vにすることができる。電源電圧の上昇に伴って、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各々の電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が閾値電位を超えるので、リセット状態が解除される。このとき、直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mの個数mによって、リセットが解除されるまでの時間を調整することができる。
【0049】
図9は、図7のパワーオンリセット回路2Bの比較例としてのパワーオンリセット回路102Cの構成を示す回路図である。図9の電位設定部108は、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図7の電位設定部8Aと異なる。したがって、図9の電位設定部108の場合には、図8の断面図において、N型ウェル21_1〜21_mが分離されず、共通化されている。
【0050】
図7、図9のいずれの場合も、PMOSトランジスタEPを複数段スタックすることによってパワーオンリセット回路の消費電流を抑制できる。しかしながら、図9のように各PMOSトランジスタのゲートを接地ノードGNDに接続し、ボディ(バックゲート)を電源ノードVDDに接続した場合には、基板バイアス効果によってドレイン電流や基板電流が個々のPMOSトランジスタによって異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難になるので設計が容易でない。これに対して、図7、図8に示すように各PMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とを接続するようにすれば、ソース・ボディ間には逆バイアスが印加されない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなる。
【0051】
図7では、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートおよびNMOSトランジスタDNのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態において各PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0052】
図10は、実施の形態2の変形例としてのパワーオンリセット回路2Cの構成を示す回路図である。図10のパワーオンリセット回路2Cは、図1の電位設定部8を図7に示す電位設定部8Aに置換した点で図1のパワーオンリセット回路2と異なる。すなわち、図10のパワーオンリセット回路2Cは、図1のパワーオンリセット回路2と図7のパワーオンリセット回路2Bとを組み合わせたものと考えることができる。直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを設けることによって、リセット状態の解除後に定常的に流れる電流を低減することができる。さらに、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの個数mおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの個数nを調整することによってリセット状態が解除されるまでの時間を調整することができる。
【0053】
図10では、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態において各PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0054】
<実施の形態3>
図11は、この発明の実施の形態3によるパワーオンリセット回路2Dの構成を示す回路図である。図11の出力部10Aは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続されたエンハンスメント型のPMOSトランジスタ14をさらに含む点で図1の出力部10と異なる。PMOSトランジスタ14のゲートはインバータ11の出力ノードに接続される。図11のパワーオンリセット回路2Dのその他の点は、図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0055】
図11において、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えたとき、インバータ11の出力がハイレベル(Hレベル)からローレベル(Lレベル)に変化するので、PMOSトランジスタ14がオン状態になる。これによって、中間電位ノードN1の電位が電源電位(Hレベル)に等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0056】
図11で示したNMOSトランジスタ14を含む出力部10Aは、すでに説明した図1、図2、図7、図10のパワーオンリセット回路2,2A,2B,2Cのいずれにも適用することができる。
【0057】
<実施の形態4>
図12は、この発明の実施の形態4によるパワーオンリセット回路2Eの構成を示す回路図である。図12のパワーオンリセット回路2Bは、電位設定部8,9に代えて電位設定部8B,9Bを含む点で、図1のパワーオンリセット回路2と異なる。
【0058】
電位設定部8Bは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを含む。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。n個のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0059】
電位設定部9Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENを含む。NMOSトランジスタENのゲートは電源ノードVDDに接続される。
【0060】
図12のパワーオンリセット回路2Eのその他の点は、図1のパワーオンリセット回路2と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0061】
図1のパワーオンリセット回路2では、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続された複数のディプレッション型のNMOSトランジスタが設けられていた。これに対して、図12のパワーオンリセット回路2Eでは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続された複数のディプレッション型のPMOSトランジスタが設けられる。電源電圧が0Vのとき、ディプレッション型のPMOSトランジスタは動作が可能なため、中間電位ノードN1の電位は0Vになる。電源電圧が0Vから上昇したとき、NMOSトランジスタENのゲート・ソース間電圧がトランジスタの閾値電圧を超える前では、ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを通して容量素子13は電源電圧近くまでチャージされる。この状態がリセット状態となる。さらに電源電圧が上昇すると、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nの電流駆動力より、NMOSトランジスタENの電流駆動力が大きくなるため、次第に容量素子13はディスチャージされていく。そして中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を下回った時にリセットが解除される。
【0062】
図12のパワーオンリセット回路2Eによれば、ディプレッション型のPMOSトランジスタを直列接続することによってリセット解除後の定常電流を低減することができるとともに、抵抗素子を用いた回路に比べて小面積化を実現できる。さらに、電源電圧が0Vのときに中間電位ノードN1の電位を確実に0Vにすることができるので、残留電荷による誤動作が生じない。各PMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とが接続されているので、基板バイアス効果が生じない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果とが一致性が良くなる。
【0063】
図12では、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートおよびNMOSトランジスタENのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0064】
実施の形態2の場合と同様に、電位設定部9Bに代えて、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを含む電位設定部を設けてもよい。NMOSトランジスタEN_1〜EN_mのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。m個のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0065】
直列接続されたPMOSトランジスタDP_1〜DP_nおよびNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを設けることによって、リセット状態の解除後に定常的に流れる電流をさらに低減することができる。これらのトランジスタの個数を調整することによってリセット状態が解除されるまでの時間を調整することができる。
【0066】
<実施の形態5>
図13は、この発明の実施の形態5によるパワーオンリセット回路2Fの構成を示す回路図である。図13の出力部10Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタ15をさらに含む点で図12の出力部10と異なる。NMOSトランジスタ15のゲートはインバータ11の出力ノードに接続される。図13のパワーオンリセット回路2Fのその他の点は、図12の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0067】
図13において、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位より低くなったとき、インバータ11の出力がLレベルからHレベルに変化するので、NMOSトランジスタ15がオン状態になる。これによって、中間電位ノードN1の電位が接地電位(Lレベル)に等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0068】
図14は、図13のパワーオンリセット回路2Fの変形例としてのパワーオンリセット回路2Gの構成を示す回路図である。図13のパワーオンリセット回路2Fでは、容量素子13が中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に設けられていた。これに対して、図14のパワーオンリセット回路2Gでは、容量素子13がインバータ11の出力ノードと接地ノードGNDとの間に設けられている。図14のその他の点は図13の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0069】
図14のパワーオンリセット回路2Gにおいて、リセット解除後の定常状態では、容量素子13の充電電圧が電源電圧と等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0070】
図13、図14において、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートおよびNMOSトランジスタENのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0071】
実施の形態2の場合と同様に、電位設定部9Bに代えて、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを含む電位設定部を設けてもよい。NMOSトランジスタEN_1〜EN_mのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。m個のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0072】
<実施の形態6>
図15は、この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30を含む半導体装置5の構成を示す回路図である。
【0073】
図15を参照して、半導体装置5は、スタートアップ回路30と、内部回路としての自己バイアス回路40(基準電圧発生回路)とを含む。スタートアップ回路30は、電源投入時または一時的に電源電圧が低下したときに、自己バイアス回路40を速やかに安定動作させるために自己バイアス回路40に対して強制的に電源電圧を与える。すなわち、スタートアップ回路30は、内部回路の起動時に内部回路に対して電流を注入する。まず、自己バイアス回路40の構成および動作を簡単に説明する。
【0074】
自己バイアス回路40は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタ41,42と、エンハンスメント型のNMOSトランジスタ43,44と、抵抗素子45とを含む。PMOSトランジスタ41、抵抗素子45、およびNMOSトランジスタ43は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列接続される。PMOSトランジスタ42およびNMOSトランジスタ44は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列接続される。PMOSトランジスタ42のゲートは、PMOSトランジスタ41のドレインに接続され、PMOSトランジスタ41のゲートは、NMOSトランジスタ43のドレイン(ノードN3)に接続される。NMOSトランジスタ44のゲートは、NMOSトランジスタ43のゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタ44のドレイン(ノードN2)に接続される。NMOSトランジスタ43,44のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/L)および閾値電圧は互いに等しい。
【0075】
自己バイアス回路40において、カレントミラーを構成するNMOSトランジスタ43,44を流れる電流をIoとし、抵抗素子45の抵抗値をRsとし、PMOSトランジスタ41,42のソース・ゲート間電圧をそれぞれVgs1,Vgs2とすると、
Vgs1=Vgs2+Io×Rs …(1)
が成立する。したがって、電流Ioは、抵抗素子45の抵抗値RsおよびPMOSトランジスタ41,42のサイズによって決定され、電源電圧の大きさによらない。自己バイアス回路40の出力電圧Voutは、NMOSトランジスタ44のゲート・ソース間電圧Vgs4に等しく、その大きさは電流Ioに応じて決まる。
【0076】
次に、スタートアップ回路30の構成および動作について説明する。スタートアップ回路30は、電位設定部8,9と、出力部31とを含む。
【0077】
電位設定部8は、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続されたエンハンスメント型のPMOSトランジスタEPを含む。PMOSトランジスタEPのゲートは、自己バイアス回路40のノードN3に接続される。
【0078】
電位設定部9は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを含む。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。n個のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは、互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0079】
出力部31は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタ32を含む。PMOSトランジスタ32のソースは電源ノードに接続され、ゲートは中間電位ノードN1に接続され、ドレインは自己バイアス回路40のノードN2に接続される。
【0080】
ディプレッション型のNMOSトランジスタDNは、閾値電圧がマイナスの値のため電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれる。電源投入後、中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値以下の間は、PMOSトランジスタ32はオン状態にある。したがって、自己バイアス回路40のノードN2に電源電圧(スタートアップ信号SU)が印加される。すなわち、スタートアップ回路30から自己バイアス回路40に電流が注入される。その後、電源電圧が上昇し、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値を超えると、PMOSトランジスタ32がオフ状態になって、自己バイアス回路40への電流の注入が停止する。すなわち、スタートアップ信号SUはハイ・インピーダンス状態になる。
【0081】
上記の構成のスタートアップ回路30によれば、ディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nが用いられているので、電源投入時の電源電圧が低いときでもNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは導通状態である。したがって、内部回路に確実に電流を注入することができるとともに、中間電位ノードN1の残留電荷による回路の誤動作を防止できる。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nを直列に接続することによって、スタートアップ回路の消費電流を抑制するとともに、素子作製プロセスに起因したMOSトランジスタのばらつきの影響を抑制することができる。さらに、抵抗素子を用いた回路に比べて回路面積を小さくすることができる。電源電圧が変動してもMOSトランジスタを流れる電流値はほぼ一定に保たれるので、広い電源電圧に対応したシステムであっても低電流を維持することができる。
【0082】
図16は、図15のスタートアップ回路30の効果を説明するための図である。
図15、図16を参照して、図16の横軸はNMOSトランジスタ43,44のゲート電圧Vinを示し、縦軸は自己バイアス回路40の出力電圧Voutを示す。破線のグラフ47は、スタートアップ回路30を用いないときの自己バイアス回路40の特性であり、実線のグラフ48は、スタートアップ回路30を用いたときの自己バイアス回路40の特性である。
【0083】
安定点が2つ以上存在する回路の場合、電源電圧を立ち上げるときと立ち下げるときとで異なった電圧状態になるため、回路は安定に動作しない。電源電圧の立上げ時にスタートアップ回路によって電流を注入して安定点を1つにすることで安定な回路動作を実現できる。
【0084】
図15の自己バイアス回路では安定点(図16の参照符号49A,49B)が2つ存在する。電源立上げ時(電圧Vinが低電圧のとき)にスタートアップ回路30が電流を注入し、安定点49Aの状態を取らないようにする。安定点49Aを越える電圧になったところでスタートアップ回路30からの電流注入を止めて、自己バイアス回路40のみの動作に戻し安定点49Bで動作させる。スタートアップ回路30を用いることによって、どのような値の電源電圧であっても安定点49Bの状態しかならず自己バイアス回路40の出力電圧値を望ましい値にすることができる。
【0085】
図17は、図15のスタートアップ回路30の比較例としてのスタートアップ回路130を含む半導体装置105の構成を示す回路図である。図17の電位設定部109は、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図15の電位設定部9と異なる。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのボディ(ウェルまたは基板)は分離されていない。この場合、基板バイアス効果によって、ドレイン・ソース間を流れるドレイン電流やドレイン・基板間の基板電流が個々のNMOSトランジスタで異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難であり、回路が確実に動作しない場合が生じるので、設計が容易でない。
【0086】
これに対して図15のスタートアップ回路30では、各NMOSトランジスタにおいてソースの電位とボディ(ウェル)の電位とが等しくなり、ソース・ボディ間には逆バイアスは印加されない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなり、回路を確実に動作させることができる。
【0087】
図15では、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしもゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力が各NMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるようにすればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0088】
図18は、この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30をバンドギャップリファレンス回路50に適用した例を示す回路図である。
【0089】
図18を参照して、半導体装置5Aは、スタートアップ回路30と、内部回路としてのバンドギャップリファレンス(BGR)回路50とを含む。スタートアップ回路30の構成は、図15と同じであるので説明を繰返さない。BGR回路50は、公知文献(Y.Okuda他、"A Trimming-Free CMOS Bandgap-Reference Circuit with Sub-1-V-Supply Voltage Operation"、2007 Symposium on VLSI Cirucuits of Technical Papers、p.96-97)に開示されているものである。以下、BGR回路50の構成および動作を簡単に説明する。
【0090】
BGR回路50は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタM0〜M3と、NPN型のバイポーラトランジスタTr0〜Tr3と、抵抗素子51,52と、オペアンプA1,A2とを含む。バイポーラトランジスタTr2はk個のNPN型のバイポーラトランジスタが並列接続されたものである。PMOSトランジスタM3およびバイポーラトランジスタTr3は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM0およびバイポーラトランジスタTr1は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM1、バイポーラトランジスタTr2、および抵抗素子51は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM2、バイポーラトランジスタTr0、および抵抗素子52は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。バイポーラトランジスタTr0は、ベースとコレクタとが接続されたダイオード接続のトランジスタである。オペアンプA1の非反転入力端子はPMOSトランジスタM3のドレインに接続され、反転入力端子はPMOSトランジスタM0のドレインに接続され、出力端子はバイポーラトランジスタTr1〜Tr3のベースに接続される。オペアンプA2の非反転入力端子はPMOSトランジスタM1のドレインに接続され、反転入力端子はPMOSトランジスタM3のドレインに接続され、出力端子はPMOSトランジスタM0〜M3のゲートに接続される。出力電圧Voutは、バイポーラトランジスタTr0のコレクタ(ノードN4)から取り出される。
【0091】
BGR回路50において、PMOSトランジスタM0〜M3のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/L)が等しいとすると、各PMOSトランジスタに流れる電流Ioは等しい。さらに、オペアンプA2のオフセットが無視できる場合には、オペアンプA2によってPMOSトランジスタM1,M3のドレインの電位は等しくなる。この場合、電流Ioは、抵抗素子51の抵抗値R1と、バイポーラトランジスタTr2,Tr3のベース・エミッタ間電圧Vbe2,Vbe3とによって表わすことができる。最終的な出力電圧Voutは、抵抗素子52の抵抗値Raによる電圧降下(Io×Ra)と、バイポーラトランジスタTr0のベース・エミッタ間電圧Vbe0との和によって与えられる。抵抗素子51の抵抗値R1および個数kを適切に設定することによって、出力電圧Voutの絶対温度に対する依存性を小さくすることができる。オペアンプA1は、オペアンプのオフセットVosによる出力電圧Voutの変動を抑制するために設けられている。
【0092】
次にスタートアップ回路30の動作について説明する。
低消費電圧化のため自己消費電流を抑えた回路の場合、起動時(電源投入時)の電流が小さいので設定出力電圧に到達するまでの時間が長くなる。そのため、スタートアップ回路によって起動時に電流を注入し、一時的に電流を増加させ高速に起動させる。出力設定値に近づくと電流注入を止めて安定状態にする。
【0093】
図18のBGR回路50の場合、消費電流が小さく起動に時間がかかる。起動時にスタートアップ回路30から電流を注入し、BGR回路50の起動時間を短縮させる。BGR回路の各部の電圧が設定電圧になったら注入を止めてBGR回路のみ駆動させる。
【0094】
具体的には、スタートアップ回路30に設けられたPMOSトランジスタEPのゲートは、オペアンプA2の出力端子に接続され、PMOSトランジスタ32のドレインはPMOSトランジスタM0のドレイン(ノードN5)に接続される。起動時(低電圧時)にNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを通して中間電位ノードN1の電荷が引き抜かれ、PMOSトランジスタ32が導通状態になる。これによって、BGR回路50のノードN5に電流が注入され、一時的にBGR回路50の消費電流を増加させる。この結果、バイポーラトランジスタTr1〜Tr3がオン状態になって電流を流し始める。オペアンプA1は、PMOSトランジスタM0,M3のドレインの電位が同じになるように、バイポーラトランジスタTr1〜Tr3のベースに電圧を印加するので、PMOSトランジスタM1のドレインの電位よりPMOSトランジスタM3のドレインの電位が高くなる。この結果、オペアンプA2の出力が低下する。こうして、BGR回路50が起動するのに必要な電流が得られるので、BGR回路50を高速に起動させることができる。電源ノードVDDの電位が上昇したことによって、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値を超えると、PMOSトランジスタ32がオフ状態になって、BGR回路50への電流の注入が停止する。
【0095】
<実施の形態7>
図19は、この発明の実施の形態7によるスタートアップ回路30Aを含む半導体装置5Bの構成を示す回路図である。
【0096】
図19を参照して、半導体装置5Bは、スタートアップ回路30Aと、内部回路6とを含む。スタートアップ回路30Aは、電源投入時または一時的に電源電圧が低下したときに、内部回路6を速やかに安定動作させるために内部回路6に対して強制的に接地電圧を与える。すなわち、スタートアップ回路30Aは、内部回路6の起動時に内部回路6から電流を引き抜く。
【0097】
スタートアップ回路30Aは、電位設定部8B,9Bと、出力部33とを含む。
電位設定部8Bは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを含む。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。n個のPMOSトランジスタEP_1〜EP_nは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0098】
電位設定部9Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENを含む。NMOSトランジスタENのゲートは内部回路6に接続される。
【0099】
出力部33は、エンハンスメント型のNMOSトランジスタ34を含む。NMOSトランジスタ34のソースは接地ノードGNDに接続され、ゲートは中間電位ノードN1に接続され、ドレインは内部回路6に接続される。
【0100】
ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは、閾値電圧がマイナスの値のため電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれる。電源投入後、中間電位ノードN1の電位がNMOSトランジスタ34の閾値以上の間は、NMOSトランジスタ34はオン状態である。したがって、内部回路6に接地電圧(スタートアップ信号SU)が印加される。すなわち、スタートアップ回路30Aによって内部回路6から電流が引き抜かれる。その後、電源電圧が上昇し、NMOSトランジスタENの電流駆動力がPMOSトランジスタDP_1〜DP_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が低下する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ34の閾値未満になると、NMOSトランジスタ34がオフ状態になって、内部回路6からの電流の引き出しが停止する。すなわち、スタートアップ信号SUはハイ・インピーダンス状態になる。
【0101】
上記の構成のスタートアップ回路30によれば、ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nが用いられているので、電源投入時の電源電圧が低いときでもPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは導通状態である。したがって、内部回路から確実に電流を引き抜くことができるとともに、中間電位ノードN1の残留電荷によって回路が誤動作することを防止できる。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nを直列に接続することによって、スタートアップ回路の消費電流を抑制するとともに、素子作製プロセスに起因したMOSトランジスタの特性のばらつきの影響を抑制することができる。さらに、抵抗素子を用いた回路に比べて回路面積を小さくすることができる。電源電圧が変動してもMOSトランジスタを流れる電流値はほぼ一定に保たれるので、広い電源電圧に対応したシステムであっても低電流を維持することができる。各NMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とが接続されているために、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が良くなるので、設計性が容易であり、回路を確実に動作させることができる。
【0102】
図19では、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0103】
上記の実施の形態1〜7では、電源ノードの電位は正であるとしたが、電源ノードの電位を負にしてもよい。すなわち、正電源に代えて負電源を用いてもよい。この場合、上記の説明で、トランジスタの導電型が逆になる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1,5,5A,5B 半導体装置、2,2A〜2G パワーオンリセット回路、3,6 内部回路、8,9,8A,9A,9A,9B 電位設定部、10,10A,10B,31,33 出力部、11,12 インバータ、13 容量素子、20 P型半導体基板、21 N型ウェル、22 N型埋込層、23 P型ウェル、24 N型不純物層、30,30A スタートアップ回路、40 自己バイアス回路、50 バンドギャップリファレンス回路(BGR回路)、GND 接地ノード、N1 中間電位ノード、RS リセット信号、SU スタートアップ信号、VDD 電源ノード。
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーオンリセット回路やスタートアップ回路など、電源投入時にシステムを正常動作させるのに必要な制御信号を発生する回路を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーオンリセット回路は、電源投入時にシステムが誤動作するのを防止するために、電源電圧が所定の値になったときにリセット信号を出力する回路である。パワーオンリセット回路には種々の形態があるが、最も基本的な形態のものは抵抗またはダイオードとコンデンサとからなる遅延回路を備えたものである。遅延回路の出力が所定の閾値電圧を超えたときリセット信号が出力される。しかしながら、この回路は、電源電圧が非常に緩やかに上昇する場合にシステムが動作可能な電圧に電源電圧が達する前にリセット信号が出力されてしまうという問題がある。
【0003】
特開2007−272429号公報(特許文献1)は、電源電圧が緩やかに上昇する場合にも動作可能なように改良されたパワーオンリセット回路の一例を開示する。具体的には、この文献に記載のパワーオンリセット回路は、電圧検出回路と、インバータと、トランジスタと、キャパシタとを備える。電圧検出回路は、電源電圧を分圧する複数の抵抗素子からなる分圧回路と、分圧回路で分圧された電圧に基づいて電源電圧が所定値以上か否かを検出する回路とからなる。インバータには、電圧検出回路の出力信号が入力される。トランジスタは、前記インバータの入力ノードと接地との間に接続される。キャパシタは、インバータの出力により充電されるとともに、充電電圧をトランジスタのゲート電圧として供給する。
【0004】
特開2003−32088号公報(特許文献2)は、抵抗素子を使用しないパワーオンリセット回路の一例を開示する。この文献のパワーオンリセット回路は、PMOS(Positive-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとディプレッション型のNMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタからなる動作電圧設定回路と、2個のPMOSトランジスタおよびコンデンサからなる充電回路と、縦続接続されたインバータ回路とを含む。インバータ回路の出力がパワーオンリセットのための信号である。なお、特開2008−243329号公報(特許文献3)の図13にもディプレッション型のMOSトランジスタを用いたパワーオンリセット回路の例が開示されている。
【0005】
スタートアップ回路は、電源投入時に内部回路を速やかに安定動作させるために、内部回路に強制的に電圧を与える回路である。内部回路は、強制的電圧を入力するための第1のノードと、内部回路の電位を検出するための第2ノードとを含む。電源電圧が定常電圧に近づくことによって第2のノードの電位が閾値を超えると、スタートアップ回路は、第1のノードとの間を非接続の状態にするので強制的な電圧の印加が停止される。
【0006】
スタートアップ回路にも種々の形態がある。たとえば、特開2006−50437号公報(特許文献4)に開示されるスタートアップ回路は、第1および第2のPMOSトランジスタと、第1および第2の容量素子と、抵抗素子とを含む。第1のPMOSトランジスタのドレインは内部回路の上記の第1のノードと接続され、第1のPMOSトランジスタのソースと電源ノードとの間に第1の容量素子が接続される。第2のPMOSトランジスタのゲートは内部回路の上記の第2のノードに接続され、第2のPMOSトランジスタのドレインは第1のPMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースは電源ノードに接続される。第2のPMOSトランジスタのドレインと接地ノードとの間に第2の容量素子と抵抗素子とが並列に接続される。素子面積を縮小するために抵抗素子に代えてディプレッション型のNMOSトランジスタを用いてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−272429号公報
【特許文献2】特開2003−32088号公報
【特許文献3】特開2008−243329号公報
【特許文献4】特開2006−50437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワーオンリセット回路およびスタートアップ回路では、電源電圧が定常状態に立ち上がった後に回路を常時流れる電流による消費電力が問題となる。抵抗素子を用いた回路の場合には、抵抗素子の値を増大させることによって消費電力を抑えることができるが、抵抗値の増大に伴って回路面積が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
抵抗素子に代えてMOSトランジスタを用いた場合には、抵抗素子を用いる回路に比べて小面積化が可能である。さらにこの場合、特開2008−243329号公報(特許文献3)の図13のように複数個のMOSトランジスタを直列に接続することによって消費電力の抑制も期待できる。しかしながら、この文献の例の場合には、基板バイアス効果によってドレイン−ソース間を流れる電流や基板電流が個々のMOSトランジスタでばらばらになる。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果とを一致させるのが困難になるので、回路が確実に動作しない場合が生じることになり、回路設計が困難である。
【0010】
この発明の目的は、低消費電力性と小面積化とを両立させるとともに従来よりも設計性のよいパワーオンリセット回路またはスタートアップ回路を備えた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の実施の一形態による半導体装置は、第1および第2の基準電位ノードと、中間電位ノードと、出力部と、第1および第2の電位設定部とを備える。第1および第2の基準電位ノード間には電源電圧が印加される。出力部は、電源投入時に、中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号を電源電圧によって動作する内部回路に出力する。第1の電位設定部は、第1の基準電位ノードと中間電位ノードとの間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタを含む。第2の電位設定部は、第2の基準電位ノードと中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含む。第1のMOSトランジスタおよび複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において第1のMOSトランジスタの電流駆動力が複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられる。複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられる。複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される。
【発明の効果】
【0012】
上記の実施の形態の半導体装置によれば、直列接続された複数の第2のMOSトランジスタが互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられるとともに、これらのトランジスタにおいてソースとウェルとが互いに接続される。これによって、低消費電力かつ小面積であるとともに従来よりも設計性のよいパワーオンリセット回路およびスタートアップ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1によるパワーオンリセット回路2を含む半導体装置1の構成を示す回路図である。
【図2】図1のパワーオンリセット回路2を簡略化したパワーオンリセット回路2Aの構成を示す回路図である。
【図3】図2の各部の電圧波形を示すタイミング図である。
【図4】図2のパワーオンリセット回路2Aの比較例としてのパワーオンリセット回路102Aの構成を示す回路図である。
【図5】図1の電位設定部8,9の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】図1のパワーオンリセット回路2の比較例としてのパワーオンリセット回路102Bの構成を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるパワーオンリセット回路2Bの構成を示す回路図である。
【図8】図7の電位設定部8A,9Aの構造を模式的に示す断面図である。
【図9】図7のパワーオンリセット回路2Bの比較例としてのパワーオンリセット回路102Cの構成を示す回路図である。
【図10】実施の形態2の変形例としてのパワーオンリセット回路2Cの構成を示す回路図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるパワーオンリセット回路2Dの構成を示す回路図である。
【図12】この発明の実施の形態4によるパワーオンリセット回路2Eの構成を示す回路図である。
【図13】この発明の実施の形態5によるパワーオンリセット回路2Fの構成を示す回路図である。
【図14】図13のパワーオンリセット回路2Fの変形例としてのパワーオンリセット回路2Gの構成を示す回路図である。
【図15】この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30を含む半導体装置5の構成を示す回路図である。
【図16】図15のスタートアップ回路30の効果を説明するための図である。
【図17】図15のスタートアップ回路30の比較例としてのスタートアップ回路130を含む半導体装置105の構成を示す回路図である。
【図18】この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30をバンドギャップリファレンス回路50に適用した例を示す回路図である。
【図19】この発明の実施の形態7によるスタートアップ回路30Aを含む半導体装置5Bの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。実施の形態1〜5では、パワーオンリセット回路の例について説明し、実施の形態6,7ではスタートアップ回路の例について説明する。以下の説明において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、この発明の実施の形態1によるパワーオンリセット回路2を含む半導体装置1の構成を示す回路図である。図1を参照して、パワーオンリセット回路2は、電位設定部8,9と、出力部10と、容量素子13とを含む。パワーオンリセット回路2は、電源投入時や、電源電圧が一時的に低下したときなどに電源電圧の値に応じてリセット信号RSを内部回路3に出力する。
【0016】
電位設定部8は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタEPを含む。PMOSトランジスタEPのソースは、電源電位が与えられる電源ノードVDDに接続され、PMOSトランジスタEPのドレインは中間電位ノードN1に接続され、PMOSトランジスタEPのゲートは、接地電位(0V)が与えられる接地ノードGNDに接続される。
【0017】
電位設定部9は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを含む。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。
【0018】
出力部10は、中間電位ノードN1の電位を受けるインバータ11と、インバータ11の出力を受けるインバータ12とを含む。インバータ12の出力がリセット信号RSとして内部回路3に出力される。インバータ11,12および内部回路3は、電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間の電源電圧によって駆動される。
【0019】
容量素子13は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続される。容量素子13は、電源電圧が短い期間だけ一時的に変動しても中間電位ノードN1の電位が変動しないようにするために設けられている。
【0020】
図2は、図1のパワーオンリセット回路2を簡略化したパワーオンリセット回路2Aの構成を示す回路図である。図2の電位設定部9Aは、1個のディプレッション型のNMOSトランジスタDNによって構成される点で図1の電位設定部9と異なる。図2のその他の点は図1の場合と同じである。以下、図2を参照してパワーオンリセット回路2Aの動作および作用効果を説明するが、その内容は図1のパワーオンリセット回路2の場合と共通する。
【0021】
ディプレッション型のNMOSトランジスタDNは、閾値電圧がマイナスの値であるので電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれ、容量素子13の電圧は0Vに初期化されている。電源投入後、PMOSトランジスタEPのゲート・ソース間電圧がトランジスタの閾値電圧以下の間は、中間電位ノードN1の電位は0Vに保たれる。この状態がリセット状態である。その後、電源電圧が上昇し、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えるとリセットが解除される。
【0022】
リセット解除後もPMOSトランジスタEPからNMOSトランジスタDNへ常時電流が流れるが、この電流パスはMOSトランジスタのみで構成されているため、電源電圧が変動しても電流パスを流れる電流値はほぼ一定に保たれる。このため、広い電源電圧に対応したシステムであっても、低電流を維持することが容易である。また、この電流パスを流れる電流の大きさは、主にNMOSトランジスタDNの駆動力に依存する。このため、電流を小さくするには、NMOSトランジスタDNのトランジスタのチャネル長Lを長くする、チャネル幅Wを狭くする、さらには図1のように直列接続(「縦積み」または「カスコード接続」とも称する)にするなどの方法が有効である。これらの方法は、抵抗素子を用いた場合と比較して、面積へのインパクトは小さい。このため、小面積化と低消費電力化の両立が容易である。
【0023】
図2では、PMOSトランジスタEPのゲートおよびNMOSトランジスタDNのゲートは接地ノードGNDに接続されているが、必ずしもゲートに接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力よりも大きくなるような電位が各ゲートに与えられればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲート電位として用いることもできる。
【0024】
図3は、図2の各部の電圧波形を示すタイミング図である。図3では、上から順に電源ノードVDDの電位の時間変化、中間電位ノードN1の電位の時間変化、インバータ11の出力電圧波形、およびインバータ12の出力電圧波形(リセット信号RSの波形)が示される。
【0025】
図2、図3を参照して、時刻t0で電源が投入され電源ノードVDDの電位が上昇を開始する。これに伴って中間電位ノードN1の電位も上昇する。時刻t1で、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位Vthに達すると、インバータ11の出力電圧がハイレベル(電源ノードVDDの電位)からローレベル(接地電位:0V)に変化し、インバータ12の出力電圧(リセット信号RS)がローレベル(接地電位:0V)からハイレベル(電源ノードVDDの電位)に変化する。時刻t2で電源ノードVDDの電位が定常状態に達する。
【0026】
図4は、図2のパワーオンリセット回路2Aの比較例としてのパワーオンリセット回路102Aの構成を示す回路図である。以下、図4の比較例と対比することによって、図2のパワーオンリセット回路2Aの効果についてさらに説明する。
【0027】
図4のパワーオンリセット回路102Aは、図2のPMOSトランジスタEPに代えてダイオード接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENが設けられている点、および図2のディプレッション型のNMOSトランジスタDNが設けられていない点で、図2のパワーオンリセット回路2Aと異なる。図4において電源電圧が0Vのとき、中間電位ノードN1の電位は0Vである。この状態がリセット状態である。電源電圧の上昇とともにNMOSトランジスタPNを流れる電流によって容量素子13に電荷が蓄積される。中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えたときにリセットが解除される。
【0028】
図4のパワーオンリセット回路102Aでは、電源電圧が緩やかに上昇する場合、電源電圧が内部回路の動作可能電圧に達する前にリセットが解除されるという問題がある。NMOSトランジスタENは、ゲート・ソース間電圧が閾値電圧を超えていない場合でも電流が少し流れる。これによって容量素子13が充電されるので、電源上昇が緩やかな場合、電源ノードVDDの電位が内部回路3の動作可能な範囲に達する前に、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を越えてしまう。
【0029】
さらに、図4のパワーオンリセット回路102Aでは、容量素子13をディスチャージするには容量素子13およびNMOSトランジスタENのリークによる電流パスしかないため、中間電位ノードN1の電位を0Vに戻すのに時間がかかるという問題がある。中間電位ノードN1に残留電荷が残っている場合には、リセット状態にならなかったり、すぐにリセットが解除されてしまう場合がある。
【0030】
これに対して、図2のパワーオンリセット回路2Aでは、容量素子13の残留電荷は、ディプレッション型のNMOSトランジスタDNを介して接地ノードGNDに流れる。このため、パワーオンリセット回路2Aの中間電位ノードN1の電位は、インバータ11の閾値電圧より必ず低くなり、リセット状態が実現できる。リセット状態は、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力を上回ると解除される。
【0031】
前述した特開2007−272429号公報(特許文献1)に記載のパワーオンリセット回路の場合には、抵抗素子によって電源電圧を分圧した電圧とNMOSトランジスタの閾値電圧との大小関係によってリセット状態が解除される。このため、電源電圧の上昇が緩やかな場合でも正常に動作する。しかしながら、電源電圧の分圧用の抵抗素子には、リセット解除後にも電流が常時流れるので、電源電圧が大きくなると、抵抗素子に流れる電流も大きくなる。このため、広い電源電圧の範囲に対応したシステムでは低消費電力化は困難である。さらに、抵抗素子を流れる電流を小さくするには、抵抗素子の抵抗値を大きくする必要があるが、そうすると大きなレイアウト面積が必要になってしまう。以上の理由で、消費電力の低減と小面積化の両立が困難である。これに対して、図2のパワーオンリセット回路2Aの場合には、既に説明したように小面積化と低消費電力化とを両立できる。
【0032】
再び図1を参照して、パワーオンリセット回路2では、電位設定部8,9の消費電力をさらに抑制するために、n個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nが直列接続される。この場合、基板バイアス効果が生じないように、n個のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとP型ウェルとが接続される。以下、図5を参照して具体的に説明する。
【0033】
図5は、図1の電位設定部8,9の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図5を参照して、P型半導体基板20にN型ウェル21とN型埋込層22とが設けられ、N型埋込層22にはn個のP型ウェル23_1〜23_nが設けられる。すなわち、P型ウェル23_1〜23_nはトリプルウェル構造となっている。P型半導体基板20は接地ノードGNDに接続され、N型ウェル21およびN型埋込層22は電源ノードVDDに接続される。PMOSトランジスタEPはN型ウェル21に形成され、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nはP型ウェル23_1〜23_nにそれぞれ形成される。各NMOSトランジスタはディプレッション型であるので、ドレイン・ソース間に高濃度のN型不純物層24が設けられる。
【0034】
PMOSトランジスタEPにおいて、ドレインDは中間電位ノードN1に接続され、ソースSは電源ノードVDDに接続され、ゲートは接地ノードGNDに接続される。
【0035】
NMOSトランジスタDN_1〜DN_nにおいて、第i番目(iは1以上n−1以下の整数)のNMOSトランジスタDN_iのソースSは第i+1番目のNMOSトランジスタDN_i+1のドレインDと接続される。第1番目のNMOSトランジスタDN_1のドレインDは中間電位ノードN1に接続され、第n番目のNMOSトランジスタDN_nのソースSは接地ノードGNDに接続される。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートGはいずれも接地ノードGNDに接続される。さらに、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各々において、ソースSとP型ウェルとが互いに接続される。
【0036】
図1、図5のように、各NMOSトランジスタにおいてソースとウェルとを接続する効果を、次の図6の比較例と対比して説明する。
【0037】
図6は、図1のパワーオンリセット回路2の比較例としてのパワーオンリセット回路102Bの構成を示す回路図である。図6の電位設定部109は、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図1の電位設定部9と異なる。したがって、図5の断面図において、図6の電位設定部109の場合には、N型埋込層22およびP型ウェル23_1〜23_nが設けられておらず、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nはP型半導体基板20に形成される。
【0038】
図1、図6のいずれの場合も、NMOSトランジスタを何段もスタックすることでパワーオンリセット回路の消費電流を抑制できる。特に、図6のように各NMOSトランジスタのゲートとボディ(バックゲート)とを接地ノードGNDに接続した場合には、各NMOSトランジスタにおいてソースの電位とボディ(基板)の電位とが異なり、ソース・基板間に逆バイアスが印加される。このため、NMOSトランジスタが多段になるほど基板バイアス効果によってドレイン・ソース間の電流値が小さくなるので、図1の電位設定部9の場合に比べて少ない段数で、すなわち、小面積で消費電流を抑えることができる。
【0039】
しかしながら、図6の場合には、ソース・ボディ間の電圧がNMOSトランジスタごとにばらばらになるために、ドレイン・ソース間を流れるドレイン電流やドレイン・基板間の基板電流が個々のNMOSトランジスタで異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難であり、回路が確実に動作しない場合が生じるので設計が容易でない。たとえば、シミュレーションで得られたNMOSトランジスタの電流値よりも実際の電流値が小さい場合は、容量素子13に蓄積された電荷を引き抜くことができず正常に動作しない可能性がある。逆に、シミュレーションで得られたNMOSトランジスタの電流値よりも実際の電流値が大きい場合は、PMOSトランジスタEPの電流駆動力が不足するために中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えない可能性がある。
【0040】
一方、図1および図5に示すように、各NMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とを接続するようにすれば、ソースの電位とボディ(ウェル)の電位とが等しくなるため、ソース・ボディ間には逆バイアスは印加されない。ドレイン電流を抑制するためには図6の場合よりも多くの段数が必要になるが実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなる。
【0041】
図1では、PMOSトランジスタEPのゲートおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力が各NMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0042】
<実施の形態2>
図7は、この発明の実施の形態2によるパワーオンリセット回路2Bの構成を示す回路図である。図7のパワーオンリセット回路2Bは、電位設定部8,9に代えて電位設定部8A,9Aを含む点で、図1のパワーオンリセット回路2と異なる。図7のその他の点は図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0043】
電位設定部8Aは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のPMOSトランジスタEP_1〜EP_mを含む。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。m個のPMOSトランジスタEP_1〜EP_mは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0044】
電位設定部9Aは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたディプレッション型のNMOSトランジスタDNを含む。NMOSトランジスタDNのゲートは接地ノードGNDに接続される。
【0045】
図8は、図7の電位設定部8A,9Aの構造を模式的に示す断面図である。
図8を参照して、接地ノードGNDに接続されたP型半導体基板20にm個のN型ウェル21_1〜21_mが設けられる。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mは、N型ウェル21_1〜21_mにそれぞれ形成され、NMOSトランジスタDNはP型半導体基板20に形成される。NMOSトランジスタDNはディプレッション型であるので、ドレイン・ソース間に高濃度のN型不純物層24が設けられる。
【0046】
PMOSトランジスタEP_1〜EP_mにおいて、第i番目(iは1以上m−1以下の整数)のPMOSトランジスタEP_iのドレインDは第i+1番目のPMOSトランジスタEP_i+1のソースSと接続される。第1番目のPMOSトランジスタEP_1のソースSは電源ノードVDDに接続され、第m番目のPMOSトランジスタEP_mのドレインDは中間電位ノードN1に接続される。PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートGはいずれも接地ノードGNDに接続される。さらに、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各々において、ソースSとN型ウェルとが互いに接続される。
【0047】
NMOSトランジスタDNにおいて、ドレインDは中間電位ノードN1に接続され、ソースSおよびゲートGは接地ノードGNDに接続される。
【0048】
図7、図8に示すパワーオンリセット回路2Bによれば、直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mを設けることによってリセット解除後に定常的に流れる電流量を低減することができ、かつ、抵抗素子を用いた回路に比べて小面積化を実現できる。中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間にディプレッション型のNMOSトランジスタDNを設けることによって、電源電圧が0Vのときに中間電位ノードN1の電位を確実に0Vにすることができる。電源電圧の上昇に伴って、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各々の電流駆動力がNMOSトランジスタDNの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が閾値電位を超えるので、リセット状態が解除される。このとき、直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mの個数mによって、リセットが解除されるまでの時間を調整することができる。
【0049】
図9は、図7のパワーオンリセット回路2Bの比較例としてのパワーオンリセット回路102Cの構成を示す回路図である。図9の電位設定部108は、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図7の電位設定部8Aと異なる。したがって、図9の電位設定部108の場合には、図8の断面図において、N型ウェル21_1〜21_mが分離されず、共通化されている。
【0050】
図7、図9のいずれの場合も、PMOSトランジスタEPを複数段スタックすることによってパワーオンリセット回路の消費電流を抑制できる。しかしながら、図9のように各PMOSトランジスタのゲートを接地ノードGNDに接続し、ボディ(バックゲート)を電源ノードVDDに接続した場合には、基板バイアス効果によってドレイン電流や基板電流が個々のPMOSトランジスタによって異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難になるので設計が容易でない。これに対して、図7、図8に示すように各PMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とを接続するようにすれば、ソース・ボディ間には逆バイアスが印加されない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなる。
【0051】
図7では、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートおよびNMOSトランジスタDNのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態において各PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0052】
図10は、実施の形態2の変形例としてのパワーオンリセット回路2Cの構成を示す回路図である。図10のパワーオンリセット回路2Cは、図1の電位設定部8を図7に示す電位設定部8Aに置換した点で図1のパワーオンリセット回路2と異なる。すなわち、図10のパワーオンリセット回路2Cは、図1のパワーオンリセット回路2と図7のパワーオンリセット回路2Bとを組み合わせたものと考えることができる。直列接続されたPMOSトランジスタEP_1〜EP_mおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを設けることによって、リセット状態の解除後に定常的に流れる電流を低減することができる。さらに、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mの個数mおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの個数nを調整することによってリセット状態が解除されるまでの時間を調整することができる。
【0053】
図10では、PMOSトランジスタEP_1〜EP_mのゲートおよびNMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態において各PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0054】
<実施の形態3>
図11は、この発明の実施の形態3によるパワーオンリセット回路2Dの構成を示す回路図である。図11の出力部10Aは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続されたエンハンスメント型のPMOSトランジスタ14をさらに含む点で図1の出力部10と異なる。PMOSトランジスタ14のゲートはインバータ11の出力ノードに接続される。図11のパワーオンリセット回路2Dのその他の点は、図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0055】
図11において、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を超えたとき、インバータ11の出力がハイレベル(Hレベル)からローレベル(Lレベル)に変化するので、PMOSトランジスタ14がオン状態になる。これによって、中間電位ノードN1の電位が電源電位(Hレベル)に等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0056】
図11で示したNMOSトランジスタ14を含む出力部10Aは、すでに説明した図1、図2、図7、図10のパワーオンリセット回路2,2A,2B,2Cのいずれにも適用することができる。
【0057】
<実施の形態4>
図12は、この発明の実施の形態4によるパワーオンリセット回路2Eの構成を示す回路図である。図12のパワーオンリセット回路2Bは、電位設定部8,9に代えて電位設定部8B,9Bを含む点で、図1のパワーオンリセット回路2と異なる。
【0058】
電位設定部8Bは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを含む。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。n個のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0059】
電位設定部9Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENを含む。NMOSトランジスタENのゲートは電源ノードVDDに接続される。
【0060】
図12のパワーオンリセット回路2Eのその他の点は、図1のパワーオンリセット回路2と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0061】
図1のパワーオンリセット回路2では、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続された複数のディプレッション型のNMOSトランジスタが設けられていた。これに対して、図12のパワーオンリセット回路2Eでは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続された複数のディプレッション型のPMOSトランジスタが設けられる。電源電圧が0Vのとき、ディプレッション型のPMOSトランジスタは動作が可能なため、中間電位ノードN1の電位は0Vになる。電源電圧が0Vから上昇したとき、NMOSトランジスタENのゲート・ソース間電圧がトランジスタの閾値電圧を超える前では、ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを通して容量素子13は電源電圧近くまでチャージされる。この状態がリセット状態となる。さらに電源電圧が上昇すると、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nの電流駆動力より、NMOSトランジスタENの電流駆動力が大きくなるため、次第に容量素子13はディスチャージされていく。そして中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位を下回った時にリセットが解除される。
【0062】
図12のパワーオンリセット回路2Eによれば、ディプレッション型のPMOSトランジスタを直列接続することによってリセット解除後の定常電流を低減することができるとともに、抵抗素子を用いた回路に比べて小面積化を実現できる。さらに、電源電圧が0Vのときに中間電位ノードN1の電位を確実に0Vにすることができるので、残留電荷による誤動作が生じない。各PMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とが接続されているので、基板バイアス効果が生じない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果とが一致性が良くなる。
【0063】
図12では、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートおよびNMOSトランジスタENのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0064】
実施の形態2の場合と同様に、電位設定部9Bに代えて、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを含む電位設定部を設けてもよい。NMOSトランジスタEN_1〜EN_mのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。m個のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0065】
直列接続されたPMOSトランジスタDP_1〜DP_nおよびNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを設けることによって、リセット状態の解除後に定常的に流れる電流をさらに低減することができる。これらのトランジスタの個数を調整することによってリセット状態が解除されるまでの時間を調整することができる。
【0066】
<実施の形態5>
図13は、この発明の実施の形態5によるパワーオンリセット回路2Fの構成を示す回路図である。図13の出力部10Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタ15をさらに含む点で図12の出力部10と異なる。NMOSトランジスタ15のゲートはインバータ11の出力ノードに接続される。図13のパワーオンリセット回路2Fのその他の点は、図12の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0067】
図13において、中間電位ノードN1の電位がインバータ11の閾値電位より低くなったとき、インバータ11の出力がLレベルからHレベルに変化するので、NMOSトランジスタ15がオン状態になる。これによって、中間電位ノードN1の電位が接地電位(Lレベル)に等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0068】
図14は、図13のパワーオンリセット回路2Fの変形例としてのパワーオンリセット回路2Gの構成を示す回路図である。図13のパワーオンリセット回路2Fでは、容量素子13が中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に設けられていた。これに対して、図14のパワーオンリセット回路2Gでは、容量素子13がインバータ11の出力ノードと接地ノードGNDとの間に設けられている。図14のその他の点は図13の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0069】
図14のパワーオンリセット回路2Gにおいて、リセット解除後の定常状態では、容量素子13の充電電圧が電源電圧と等しくなった状態で保持されるので(いわゆるラッチ状態)、電源電位がノイズなどで揺らいだとしても再びリセットがかかり難くなる。
【0070】
図13、図14において、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートおよびNMOSトランジスタENのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0071】
実施の形態2の場合と同様に、電位設定部9Bに代えて、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたm個(mは2以上の整数)のエンハンスメント型のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mを含む電位設定部を設けてもよい。NMOSトランジスタEN_1〜EN_mのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。m個のNMOSトランジスタEN_1〜EN_mは、半導体基板上で互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0072】
<実施の形態6>
図15は、この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30を含む半導体装置5の構成を示す回路図である。
【0073】
図15を参照して、半導体装置5は、スタートアップ回路30と、内部回路としての自己バイアス回路40(基準電圧発生回路)とを含む。スタートアップ回路30は、電源投入時または一時的に電源電圧が低下したときに、自己バイアス回路40を速やかに安定動作させるために自己バイアス回路40に対して強制的に電源電圧を与える。すなわち、スタートアップ回路30は、内部回路の起動時に内部回路に対して電流を注入する。まず、自己バイアス回路40の構成および動作を簡単に説明する。
【0074】
自己バイアス回路40は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタ41,42と、エンハンスメント型のNMOSトランジスタ43,44と、抵抗素子45とを含む。PMOSトランジスタ41、抵抗素子45、およびNMOSトランジスタ43は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列接続される。PMOSトランジスタ42およびNMOSトランジスタ44は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列接続される。PMOSトランジスタ42のゲートは、PMOSトランジスタ41のドレインに接続され、PMOSトランジスタ41のゲートは、NMOSトランジスタ43のドレイン(ノードN3)に接続される。NMOSトランジスタ44のゲートは、NMOSトランジスタ43のゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタ44のドレイン(ノードN2)に接続される。NMOSトランジスタ43,44のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/L)および閾値電圧は互いに等しい。
【0075】
自己バイアス回路40において、カレントミラーを構成するNMOSトランジスタ43,44を流れる電流をIoとし、抵抗素子45の抵抗値をRsとし、PMOSトランジスタ41,42のソース・ゲート間電圧をそれぞれVgs1,Vgs2とすると、
Vgs1=Vgs2+Io×Rs …(1)
が成立する。したがって、電流Ioは、抵抗素子45の抵抗値RsおよびPMOSトランジスタ41,42のサイズによって決定され、電源電圧の大きさによらない。自己バイアス回路40の出力電圧Voutは、NMOSトランジスタ44のゲート・ソース間電圧Vgs4に等しく、その大きさは電流Ioに応じて決まる。
【0076】
次に、スタートアップ回路30の構成および動作について説明する。スタートアップ回路30は、電位設定部8,9と、出力部31とを含む。
【0077】
電位設定部8は、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に接続されたエンハンスメント型のPMOSトランジスタEPを含む。PMOSトランジスタEPのゲートは、自己バイアス回路40のノードN3に接続される。
【0078】
電位設定部9は、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを含む。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートは、いずれも接地ノードGNDに接続される。n個のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは、互いに分離された複数のP型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各NMOSトランジスタにおいて、ソースとウェルとが接続される。
【0079】
出力部31は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタ32を含む。PMOSトランジスタ32のソースは電源ノードに接続され、ゲートは中間電位ノードN1に接続され、ドレインは自己バイアス回路40のノードN2に接続される。
【0080】
ディプレッション型のNMOSトランジスタDNは、閾値電圧がマイナスの値のため電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれる。電源投入後、中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値以下の間は、PMOSトランジスタ32はオン状態にある。したがって、自己バイアス回路40のノードN2に電源電圧(スタートアップ信号SU)が印加される。すなわち、スタートアップ回路30から自己バイアス回路40に電流が注入される。その後、電源電圧が上昇し、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値を超えると、PMOSトランジスタ32がオフ状態になって、自己バイアス回路40への電流の注入が停止する。すなわち、スタートアップ信号SUはハイ・インピーダンス状態になる。
【0081】
上記の構成のスタートアップ回路30によれば、ディプレッション型のNMOSトランジスタDN_1〜DN_nが用いられているので、電源投入時の電源電圧が低いときでもNMOSトランジスタDN_1〜DN_nは導通状態である。したがって、内部回路に確実に電流を注入することができるとともに、中間電位ノードN1の残留電荷による回路の誤動作を防止できる。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nを直列に接続することによって、スタートアップ回路の消費電流を抑制するとともに、素子作製プロセスに起因したMOSトランジスタのばらつきの影響を抑制することができる。さらに、抵抗素子を用いた回路に比べて回路面積を小さくすることができる。電源電圧が変動してもMOSトランジスタを流れる電流値はほぼ一定に保たれるので、広い電源電圧に対応したシステムであっても低電流を維持することができる。
【0082】
図16は、図15のスタートアップ回路30の効果を説明するための図である。
図15、図16を参照して、図16の横軸はNMOSトランジスタ43,44のゲート電圧Vinを示し、縦軸は自己バイアス回路40の出力電圧Voutを示す。破線のグラフ47は、スタートアップ回路30を用いないときの自己バイアス回路40の特性であり、実線のグラフ48は、スタートアップ回路30を用いたときの自己バイアス回路40の特性である。
【0083】
安定点が2つ以上存在する回路の場合、電源電圧を立ち上げるときと立ち下げるときとで異なった電圧状態になるため、回路は安定に動作しない。電源電圧の立上げ時にスタートアップ回路によって電流を注入して安定点を1つにすることで安定な回路動作を実現できる。
【0084】
図15の自己バイアス回路では安定点(図16の参照符号49A,49B)が2つ存在する。電源立上げ時(電圧Vinが低電圧のとき)にスタートアップ回路30が電流を注入し、安定点49Aの状態を取らないようにする。安定点49Aを越える電圧になったところでスタートアップ回路30からの電流注入を止めて、自己バイアス回路40のみの動作に戻し安定点49Bで動作させる。スタートアップ回路30を用いることによって、どのような値の電源電圧であっても安定点49Bの状態しかならず自己バイアス回路40の出力電圧値を望ましい値にすることができる。
【0085】
図17は、図15のスタートアップ回路30の比較例としてのスタートアップ回路130を含む半導体装置105の構成を示す回路図である。図17の電位設定部109は、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nの各ボディ(バックゲート)が接地ノードGNDに接続され、各ソースには接続されていない点で図15の電位設定部9と異なる。NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのボディ(ウェルまたは基板)は分離されていない。この場合、基板バイアス効果によって、ドレイン・ソース間を流れるドレイン電流やドレイン・基板間の基板電流が個々のNMOSトランジスタで異なる。このため、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション結果に一致させるのが困難であり、回路が確実に動作しない場合が生じるので、設計が容易でない。
【0086】
これに対して図15のスタートアップ回路30では、各NMOSトランジスタにおいてソースの電位とボディ(ウェル)の電位とが等しくなり、ソース・ボディ間には逆バイアスは印加されない。このため、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が改善され設計性がよくなり、回路を確実に動作させることができる。
【0087】
図15では、NMOSトランジスタDN_1〜DN_nのゲートはいずれも接地ノードGNDに接続されているが、必ずしもゲートに対して接地電位(0V)を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてPMOSトランジスタEPの電流駆動力が各NMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるようにすればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0088】
図18は、この発明の実施の形態6によるスタートアップ回路30をバンドギャップリファレンス回路50に適用した例を示す回路図である。
【0089】
図18を参照して、半導体装置5Aは、スタートアップ回路30と、内部回路としてのバンドギャップリファレンス(BGR)回路50とを含む。スタートアップ回路30の構成は、図15と同じであるので説明を繰返さない。BGR回路50は、公知文献(Y.Okuda他、"A Trimming-Free CMOS Bandgap-Reference Circuit with Sub-1-V-Supply Voltage Operation"、2007 Symposium on VLSI Cirucuits of Technical Papers、p.96-97)に開示されているものである。以下、BGR回路50の構成および動作を簡単に説明する。
【0090】
BGR回路50は、エンハンスメント型のPMOSトランジスタM0〜M3と、NPN型のバイポーラトランジスタTr0〜Tr3と、抵抗素子51,52と、オペアンプA1,A2とを含む。バイポーラトランジスタTr2はk個のNPN型のバイポーラトランジスタが並列接続されたものである。PMOSトランジスタM3およびバイポーラトランジスタTr3は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM0およびバイポーラトランジスタTr1は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM1、バイポーラトランジスタTr2、および抵抗素子51は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。PMOSトランジスタM2、バイポーラトランジスタTr0、および抵抗素子52は、この順で電源ノードVDDと接地ノードGNDとの間に直列に接続される。バイポーラトランジスタTr0は、ベースとコレクタとが接続されたダイオード接続のトランジスタである。オペアンプA1の非反転入力端子はPMOSトランジスタM3のドレインに接続され、反転入力端子はPMOSトランジスタM0のドレインに接続され、出力端子はバイポーラトランジスタTr1〜Tr3のベースに接続される。オペアンプA2の非反転入力端子はPMOSトランジスタM1のドレインに接続され、反転入力端子はPMOSトランジスタM3のドレインに接続され、出力端子はPMOSトランジスタM0〜M3のゲートに接続される。出力電圧Voutは、バイポーラトランジスタTr0のコレクタ(ノードN4)から取り出される。
【0091】
BGR回路50において、PMOSトランジスタM0〜M3のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/L)が等しいとすると、各PMOSトランジスタに流れる電流Ioは等しい。さらに、オペアンプA2のオフセットが無視できる場合には、オペアンプA2によってPMOSトランジスタM1,M3のドレインの電位は等しくなる。この場合、電流Ioは、抵抗素子51の抵抗値R1と、バイポーラトランジスタTr2,Tr3のベース・エミッタ間電圧Vbe2,Vbe3とによって表わすことができる。最終的な出力電圧Voutは、抵抗素子52の抵抗値Raによる電圧降下(Io×Ra)と、バイポーラトランジスタTr0のベース・エミッタ間電圧Vbe0との和によって与えられる。抵抗素子51の抵抗値R1および個数kを適切に設定することによって、出力電圧Voutの絶対温度に対する依存性を小さくすることができる。オペアンプA1は、オペアンプのオフセットVosによる出力電圧Voutの変動を抑制するために設けられている。
【0092】
次にスタートアップ回路30の動作について説明する。
低消費電圧化のため自己消費電流を抑えた回路の場合、起動時(電源投入時)の電流が小さいので設定出力電圧に到達するまでの時間が長くなる。そのため、スタートアップ回路によって起動時に電流を注入し、一時的に電流を増加させ高速に起動させる。出力設定値に近づくと電流注入を止めて安定状態にする。
【0093】
図18のBGR回路50の場合、消費電流が小さく起動に時間がかかる。起動時にスタートアップ回路30から電流を注入し、BGR回路50の起動時間を短縮させる。BGR回路の各部の電圧が設定電圧になったら注入を止めてBGR回路のみ駆動させる。
【0094】
具体的には、スタートアップ回路30に設けられたPMOSトランジスタEPのゲートは、オペアンプA2の出力端子に接続され、PMOSトランジスタ32のドレインはPMOSトランジスタM0のドレイン(ノードN5)に接続される。起動時(低電圧時)にNMOSトランジスタDN_1〜DN_nを通して中間電位ノードN1の電荷が引き抜かれ、PMOSトランジスタ32が導通状態になる。これによって、BGR回路50のノードN5に電流が注入され、一時的にBGR回路50の消費電流を増加させる。この結果、バイポーラトランジスタTr1〜Tr3がオン状態になって電流を流し始める。オペアンプA1は、PMOSトランジスタM0,M3のドレインの電位が同じになるように、バイポーラトランジスタTr1〜Tr3のベースに電圧を印加するので、PMOSトランジスタM1のドレインの電位よりPMOSトランジスタM3のドレインの電位が高くなる。この結果、オペアンプA2の出力が低下する。こうして、BGR回路50が起動するのに必要な電流が得られるので、BGR回路50を高速に起動させることができる。電源ノードVDDの電位が上昇したことによって、PMOSトランジスタEPの電流駆動力がNMOSトランジスタDN_1〜DN_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が上昇する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ32の閾値を超えると、PMOSトランジスタ32がオフ状態になって、BGR回路50への電流の注入が停止する。
【0095】
<実施の形態7>
図19は、この発明の実施の形態7によるスタートアップ回路30Aを含む半導体装置5Bの構成を示す回路図である。
【0096】
図19を参照して、半導体装置5Bは、スタートアップ回路30Aと、内部回路6とを含む。スタートアップ回路30Aは、電源投入時または一時的に電源電圧が低下したときに、内部回路6を速やかに安定動作させるために内部回路6に対して強制的に接地電圧を与える。すなわち、スタートアップ回路30Aは、内部回路6の起動時に内部回路6から電流を引き抜く。
【0097】
スタートアップ回路30Aは、電位設定部8B,9Bと、出力部33とを含む。
電位設定部8Bは、電源ノードVDDと中間電位ノードN1との間に直列接続されたn個(nは2以上の整数)のディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nを含む。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートは、いずれも電源ノードVDDに接続される。n個のPMOSトランジスタEP_1〜EP_nは、互いに分離された複数のN型ウェルにそれぞれ形成されるとともに、各PMOSトランジスタにおいてソースとウェルとが接続される。
【0098】
電位設定部9Bは、中間電位ノードN1と接地ノードGNDとの間に接続されたエンハンスメント型のNMOSトランジスタENを含む。NMOSトランジスタENのゲートは内部回路6に接続される。
【0099】
出力部33は、エンハンスメント型のNMOSトランジスタ34を含む。NMOSトランジスタ34のソースは接地ノードGNDに接続され、ゲートは中間電位ノードN1に接続され、ドレインは内部回路6に接続される。
【0100】
ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは、閾値電圧がマイナスの値のため電源電圧が0Vであっても動作可能である。したがって、電源電圧が0Vのときは中間電位ノードN1は0Vに保たれる。電源投入後、中間電位ノードN1の電位がNMOSトランジスタ34の閾値以上の間は、NMOSトランジスタ34はオン状態である。したがって、内部回路6に接地電圧(スタートアップ信号SU)が印加される。すなわち、スタートアップ回路30Aによって内部回路6から電流が引き抜かれる。その後、電源電圧が上昇し、NMOSトランジスタENの電流駆動力がPMOSトランジスタDP_1〜DP_nの電流駆動力より大きくなると、中間電位ノードN1の電位が低下する。中間電位ノードN1の電位がPMOSトランジスタ34の閾値未満になると、NMOSトランジスタ34がオフ状態になって、内部回路6からの電流の引き出しが停止する。すなわち、スタートアップ信号SUはハイ・インピーダンス状態になる。
【0101】
上記の構成のスタートアップ回路30によれば、ディプレッション型のPMOSトランジスタDP_1〜DP_nが用いられているので、電源投入時の電源電圧が低いときでもPMOSトランジスタDP_1〜DP_nは導通状態である。したがって、内部回路から確実に電流を引き抜くことができるとともに、中間電位ノードN1の残留電荷によって回路が誤動作することを防止できる。PMOSトランジスタDP_1〜DP_nを直列に接続することによって、スタートアップ回路の消費電流を抑制するとともに、素子作製プロセスに起因したMOSトランジスタの特性のばらつきの影響を抑制することができる。さらに、抵抗素子を用いた回路に比べて回路面積を小さくすることができる。電源電圧が変動してもMOSトランジスタを流れる電流値はほぼ一定に保たれるので、広い電源電圧に対応したシステムであっても低電流を維持することができる。各NMOSトランジスタにおいてソースとボディ(ウェル)とが接続されているために、実際のトランジスタの電気特性とシミュレーション結果との一致性が良くなるので、設計性が容易であり、回路を確実に動作させることができる。
【0102】
図19では、PMOSトランジスタDP_1〜DP_nのゲートはいずれも電源ノードVDDに接続されているが、必ずしも各ゲートに対して電源電位を与えなくてもよい。電源投入後の定常状態においてNMOSトランジスタENの電流駆動力が各PMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位を各トランジスタのゲートに与えればよいので、電源電圧を抵抗素子によって分圧した電圧をゲートに与えることもできる。
【0103】
上記の実施の形態1〜7では、電源ノードの電位は正であるとしたが、電源ノードの電位を負にしてもよい。すなわち、正電源に代えて負電源を用いてもよい。この場合、上記の説明で、トランジスタの導電型が逆になる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1,5,5A,5B 半導体装置、2,2A〜2G パワーオンリセット回路、3,6 内部回路、8,9,8A,9A,9A,9B 電位設定部、10,10A,10B,31,33 出力部、11,12 インバータ、13 容量素子、20 P型半導体基板、21 N型ウェル、22 N型埋込層、23 P型ウェル、24 N型不純物層、30,30A スタートアップ回路、40 自己バイアス回路、50 バンドギャップリファレンス回路(BGR回路)、GND 接地ノード、N1 中間電位ノード、RS リセット信号、SU スタートアップ信号、VDD 電源ノード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の電位設定部は、前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含み、
前記第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記第1のMOSトランジスタの電流駆動力が前記複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1の基準電位ノードと前記制御信号を出力するためのノードとの間に接続され、ゲートが前記中間電位ノードに接続される、前記第1の導電型を有するエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタを含み、
電源投入時に前記中間電位ノードの電位に応じて前記第3のMOSトランジスタがオン状態からオフ状態に切替わることによって、前記制御信号は、前記第1の基準電位ノードの電位を示す状態からハイインピーダンス状態に切替わる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートは、前記第2の基準電位ノードに接続され、
前記第1のMOSトランジスタのゲートには、前記内部回路から電位が与えられる、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の複数の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の第2のMOSトランジスタを含み、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記複数の第1のMOSトランジスタの各々の電流駆動力が前記第2のMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項5】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の複数の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の電位設定部は、前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含み、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記複数の第1のMOSトランジスタの各々の電流駆動力が前記複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記中間電位ノードの電位が入力される論理回路を含み、
電源投入時に前記中間電位ノードの電位が前記論理回路の閾値電位を通過したことに応じて、前記制御信号の論理状態が変化する、請求項1,4,5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記論理回路はインバータであり、
前記出力部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に、前記第1の電位設定部と並列に接続され、ゲートが前記論理回路の出力ノードに接続される、前記第1の導電型を有するエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタをさらに含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1および第2の基準電位ノードの一方は電源電位が与えられる電源ノードであり、他方は接地電位が与えられる接地ノードであり、
前記中間電位ノードと前記接地ノードとの間に接続された容量素子をさらに備える、請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の基準電位ノードは接地電位が与えられる接地ノードであり、
前記第2の基準電位ノードは電源電位が与えられる電源ノードであり、
前記論理回路の出力ノードと前記接地ノードとの間に接続された容量素子をさらに備える、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の電位設定部を構成する第1のMOSトランジスタのゲートおよび前記第2の電位設定部を構成する第2のMOSトランジスタのゲートは、いずれも前記第2の基準電位ノードに接続される、請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項1】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の電位設定部は、前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含み、
前記第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記第1のMOSトランジスタの電流駆動力が前記複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1の基準電位ノードと前記制御信号を出力するためのノードとの間に接続され、ゲートが前記中間電位ノードに接続される、前記第1の導電型を有するエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタを含み、
電源投入時に前記中間電位ノードの電位に応じて前記第3のMOSトランジスタがオン状態からオフ状態に切替わることによって、前記制御信号は、前記第1の基準電位ノードの電位を示す状態からハイインピーダンス状態に切替わる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートは、前記第2の基準電位ノードに接続され、
前記第1のMOSトランジスタのゲートには、前記内部回路から電位が与えられる、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の複数の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の第2のMOSトランジスタを含み、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記複数の第1のMOSトランジスタの各々の電流駆動力が前記第2のMOSトランジスタの電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項5】
第1の基準電位ノードと、
前記第1の基準電位ノードとの間に電源電圧が印加される第2の基準電位ノードと、
中間電位ノードと、
電源投入時に、前記中間電位ノードの電位に応じた制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記電源電圧によって動作する内部回路に出力する出力部と、
第1および第2の電位設定部とを備え、
前記第1の電位設定部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に直列接続された第1の導電型を有するエンハンスメント型の複数の第1のMOSトランジスタを含み、
前記第2の電位設定部は、前記第2の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に接続された前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有するディプレッション型の複数の第2のMOSトランジスタを含み、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各ゲートには、電源投入後の定常状態において前記複数の第1のMOSトランジスタの各々の電流駆動力が前記複数の第2のMOSトランジスタの各々の電流駆動力よりも大きくなるような電位がそれぞれ与えられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタは、互いに分離された複数のウェルにそれぞれ設けられ、
前記複数の第1のMOSトランジスタおよび前記複数の第2のMOSトランジスタの各々において、ソースとウェルとが互いに接続される、半導体装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記中間電位ノードの電位が入力される論理回路を含み、
電源投入時に前記中間電位ノードの電位が前記論理回路の閾値電位を通過したことに応じて、前記制御信号の論理状態が変化する、請求項1,4,5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記論理回路はインバータであり、
前記出力部は、前記第1の基準電位ノードと前記中間電位ノードとの間に、前記第1の電位設定部と並列に接続され、ゲートが前記論理回路の出力ノードに接続される、前記第1の導電型を有するエンハンスメント型の第3のMOSトランジスタをさらに含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1および第2の基準電位ノードの一方は電源電位が与えられる電源ノードであり、他方は接地電位が与えられる接地ノードであり、
前記中間電位ノードと前記接地ノードとの間に接続された容量素子をさらに備える、請求項1,4〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の基準電位ノードは接地電位が与えられる接地ノードであり、
前記第2の基準電位ノードは電源電位が与えられる電源ノードであり、
前記論理回路の出力ノードと前記接地ノードとの間に接続された容量素子をさらに備える、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の電位設定部を構成する第1のMOSトランジスタのゲートおよび前記第2の電位設定部を構成する第2のMOSトランジスタのゲートは、いずれも前記第2の基準電位ノードに接続される、請求項1,4〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−34101(P2012−34101A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170722(P2010−170722)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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