半導体製造装置及び半導体製造方法
【課題】酸化反応の進行度合いを経時追跡することができ、これにより酸化反応を適切に制御することができる半導体製造装置及び半導体製造方法を提供する。
【解決手段】酸化炉10内の半導体前駆体12に白色光源14から光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体12からの反射光を反射光検出手段16により検出し、検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率をコンピュータ18により演算し、演算結果をモニター20に表示すると共に、演算結果に基づいて酸化反応を制御し、半導体前駆体12の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する。
【解決手段】酸化炉10内の半導体前駆体12に白色光源14から光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体12からの反射光を反射光検出手段16により検出し、検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率をコンピュータ18により演算し、演算結果をモニター20に表示すると共に、演算結果に基づいて酸化反応を制御し、半導体前駆体12の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置及び半導体製造方法に係り、詳しくは、半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、端面発光型にくらべて、製造コストが低いこと、製造の歩留まりが高いこと、2次元集積化が容易なこと、等の多くの利点を有していることから、光通信、光情報処理、光記録など、多くの分野で用いることが期待されている。
【0003】
VCSELは、その基本構造から数種類のタイプに分類されるが、しきい電流値、応答速度、消費電力等、レーザ特性の観点から最も有望視されているのは、選択酸化型VCSELと呼ばれているものである。例えば、K. D. Choquette et al. "Low threshold voltage vertical-cavity lasers fabricated by selective oxidation" Electron. Lett., Vol.30, pp.2033-2044, 1994等の文献に記載されているように、AlAs選択酸化型VCSELは以下のようにして製造される。
【0004】
まず、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型GaAs基板上にGaAsとAl0.9Ga0.1Asをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に38周期積層した下部n型DBR(Distributed Bragg Reflector)層、InGaAs量子井戸活性層3層とGaAsスぺーサー層で構成された膜厚が媒質内波長となるアンドープ活性領域、膜厚が媒質内波長の1/4のAl0.98Ga0.02As電流狭窄層、GaAsとAl0.9Ga0.1Asをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に25周期積層した下部n型DBR層、を積層する。
【0005】
次に、上記結晶層を反応性イオンエッチングにより、深さ5μm、一辺が105μmのメサ形状にすると、Al0.98Ga0.02As電流狭窄層の側面が露出する。この露出面からAl0.98Ga0.02As電流狭窄層を、中心の数μmを残して選択的に酸化する。最後に、電極としてTi/AuとAuGe/Ni/Auを上面と下面にそれぞれ蒸着し、選択酸化型VCSELが完成する。
【0006】
以上の通り、選択酸化型VCSELは、結晶成長後にAlAsあるいはAlGaAsの選択酸化プロセスを用いて電流狭窄構造を作りこむ特徴を持っている。その結果、結晶成長はすべて平坦面上で行われ、特性の良い結晶層を用いることができる。また、インプラ型で発生する活性層に与えるダメージの心配はない。
【0007】
また、例えば、上記方法で作製されたVCSELに両面の電極を通して電流を注入すると、注入された電流は、酸化されなかったメサ形状の中心数μmだけに狭窄され、900μAという低しきい電流値を示すなど、選択酸化型VCSELは優れたレーザ特性を有している。
【0008】
選択酸化型VCSELでは、酸化されずに残ったAlAsあるいはAlGaAs層をアパーチャ(開口)と称している。選択酸化型VCSELは、低しきい電流値など、優れたレーザ特性を有しているが、各種レーザ特性はアパーチャ径に大きく左右される。
【0009】
例えば、D.L.Huffaker et al. "Multiwavelength, Densely-Packed 2x2 Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser Array Fabricated Using Selective Oxidation", IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.8, pp.858-860, 1996には、図11に示すように、アパーチャー径が2、2.5、3、3.5μmの選択酸化型VCSELの電流−光出力特性が報告されている。図11から分かるように、しきい電流値、効率がアパーチャー径に依存して大きく異なるデータとなっている。また、図には示されていないが、最大光出力もアパーチャー径に依存する。また、選択酸化型VCSELのシングルモード最大光出力あるいは横モードはアパーチャー径に大きく依存するという報告もある。
【0010】
アパーチャーを形成する酸化プロセスには、USP5262360号明細書等に記載されているようなウェット酸化法を用いるのが一般的である。この方法は、窒素をキャリアガスに用いて、80〜100℃に加熱された純水をバブリングし、その水蒸気を炉に輸送してAlAsあるいはAlGaAs層の一部だけを選択的に酸化する方法で、酸化炉の温度は通常400から500℃である。従来は、実際に使用する酸化炉を用いて種々の条件でこの酸化プロセスによる酸化実験を繰り返し行い、得られた結果を元に最適化した条件で酸化を行い、選択酸化型VCSELを作製していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、K.M.Geib et. al. "Fabfication issues of oxide-confined
VCSELs", SPIE Vol.3003, pp.69-74, 1997をはじめ多くの報告が示すように、酸化されるAlAsあるいはAlGaAsの酸化レートは、サンプル温度、純水バブラー温度、窒素ガス輸送量、AlGaAs中のAlAs濃度、更にはAlAsあるいはAlGaAs層側面に付着する自然酸化膜の膜厚等、幾つもの因子により影響される。
【0012】
このため、1度設定した条件下で酸化を行うだけでは、メサ側面からの酸化距離をプロセス毎に再現性良く制御し、アパーチャー径を設計値通りに形成することは困難であり、その結果、VCSELのレーザ特性は作製毎に異なり、製造歩留まりの低下を引き起こす、という問題があった。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができ、これにより酸化反応を適切に制御することができる半導体製造装置及び半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の半導体製造装置は、酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と、酸化反応中の被測定物からの反射光を検出する反射光検出手段と、該反射光検出手段の検出信号に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の発明では、酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と反射光検出手段とを備えることにより、酸化反応中の被測定物からの反射光を検出することができ、演算手段により反射光検出手段の検出信号に基づいて反射率等を演算することにより、酸化反応中の被酸化物の反射率から酸化反応の進行度合いを知ることができる。すなわち、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができる。また、これにより酸化反応を適切に制御することができる。
【0016】
AlAs(あるいはAlGaAs)が酸化された部分にはAlOxが形成されて絶縁化されると共に、光学的な特性に影響する屈折率ならびに膜厚が変化する。例えば、図12に示すように、酸化反応が進行するに従いVCSELの共振器の反射スペクトルも変化する。酸化されていないAlAs層を持つ共振器の反射スペクトルを実線で示し、AlAs層が総て酸化されて形成されたAlOx層を持つ共振器の反射スペクトルを破線で示す。
【0017】
共振器の構造は、アルミニウムガリウム砒素(Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7As)からなる下部DBRと、Al0.6Ga0.4Asからなる下部スペーサ層、Al0.11Ga0.89As量子井戸層およびAl0.3Ga0.7As障壁層からなる量子井戸活性層、Al0.6Ga0.4Asからなる上部スペーサ層とを含む活性領域、Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asからなる上部DBR、GaAsコンタクト層とを順次積層したものである。ただし、Al0.9Ga0.1Asの入るべき上部DBR内の最下層にはAlAs層が挿入されている。AlAs層、AlOx層は、共にその膜厚が媒質内波長の1/4であり、AlOxの屈折率は1.7である。
【0018】
両反射スペクトルは、中心波長である780nm付近にディップを持ち、750nm付近から820nm付近まで高い反射率を示す。このグラフのスケールでは、この波長帯域の両者のスペクトルに大きな違いは見られない。一方、それ以外の波長帯域には、周期的に振動するサイドローブが現れる。このサイドローブが現れる波長では、AlAs層を持つ場合とAlOx層を持つ場合とで反射率が大きく異なることがわかる。例えば、800〜1000nmの波長帯域での平均反射率は、AlAs層を持つ場合には約0.45、AlOx層を持つ場合には約0.58である。従って、酸化反応中の被酸化物の平均反射率を測定することができれば、酸化反応の進行度合いを経時追跡することが可能となる。
【0019】
なお、酸化された部分の膜厚変化を図13に示すが、膜厚が±20%変化しても反射スペクトルには大きく影響しないことがわかる。
【0020】
請求項2記載の半導体製造装置は、請求項1の発明において、前記被測定物は、半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルであることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の半導体製造装置は、請求項1または2の発明において、前記演算手段での演算結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。表示手段を設けることで、オペレータは視覚的に酸化反応の進行度合いを知ることができる。
【0022】
請求項4に記載の半導体製造装置は、請求項1〜3のいずれか1項の発明において、前記演算手段での演算結果に基づいて、反応を制御する反応制御手段を備えたことを特徴とする。反応制御手段を設けることで、酸化反応の進行度合いの追跡と酸化反応の制御とを1つの装置で行うことができる。
【0023】
請求項5に記載の半導体製造装置は、請求項2〜4のいずれか1項の発明において、前記モニター用サンプルは、反射率が酸化時間に比例して増加または減少するように形成されていることを特徴とする。モニター用サンプルの反射率が酸化時間に比例して増加または減少する場合には、反射率の経時変化を追跡すると、酸化可能領域が消失した時点が特異点となって現れるので、オペレータが視覚的に反応の終点を認識し易い。
【0024】
請求項6に記載の半導体製造方法は、半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造方法であって、酸化炉内の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルに光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルからの反射光を検出し、検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算し、演算結果に基づいて、酸化反応を制御して半導体を製造することを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の半導体製造方法は、請求項6に記載の発明において、前記モニター用サンプルの酸化可能領域消失時の反射率の変化率がゼロになることに基づいて、酸化反応を制御することを特徴とする。半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに、酸化可能領域が消失するように設計されたモニター用サンプルを用い、モニター用サンプルの反射率の変化率がゼロになる時点で酸化反応が終了するように制御すれば、所望の面積の未酸化領域を有する半導体前駆体を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができ、これにより酸化反応を適切に制御することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法を実施の形態に基づき詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体製造装置は、水蒸気酸化を行うための装置であり、図1に示すように、酸化炉10、図2に示す被測定物である正方形(矩形)形状の酸化可能領域12A(白抜き部分)を有する半導体前駆体12、酸化炉10内に配置された半導体前駆体12に光を照射する白色光源14、半導体前駆体12からの反射光を検出する反射光検出手段16、コンピュータ18、及びコンピュータ18に接続された表示手段としてのモニター20から構成されている。
【0028】
酸化炉10には、ヒータ22と水蒸気を導入するためのバルブ24を備えた導入管とが設けられており、ヒータ22の駆動回路とバルブ24の駆動装置(図示せず)は、それぞれコンピュータ18に接続されている。光源14は、チョッパー26を介して耐熱性・耐湿性の光ファイバー28の一端に光結合され、光ファイバー28の他端は、酸化炉10内の半導体前駆体12上方に固定配置され、半導体前駆体12に光を照射する。
【0029】
反射光検出手段16は、異なる波長帯域の光を透過する複数(n個)のフィルタ(図示せず)と、該フィルタの光透過側に各々配置されたフォトディテクター29と、から構成されている。各フォトディテクター29は、耐熱性・耐湿性の光ファイバー30の一端に光結合され、光ファイバー30の他端は、酸化炉10内の半導体前駆体12上方に固定配置されており、半導体前駆体12からの反射光を検出し、検出信号を出力する。また、フォトディテクター29は、A/D変換器(図示せず)を介してコンピュータ18に接続されており、フォトディテクター29から出力された検出信号は、A/D変換器によりデジタル信号に変換されてコンピュータ18に入力される。なお、検出信号のS/N比が低い場合には、フォトディテクター29とA/D変換器との間にロックインアンプ等の増幅器を挿入してもよい。
【0030】
コンピュータ18は、CPU32、ROM34、及びRAM36を含んで構成されており、CPU32は、ROM34に記憶された以下に説明する制御ルーチンのプログラムに基づき処理を行う。
【0031】
コンピュータ18で実行される制御ルーチンを、図3を参照して説明する。
【0032】
ステップ100において、n個のフィルタに対応して設けられた各フォトディテクター29からの信号を取り込み、各フォトディテクター29で受光した光量Ikを、予めROMに記憶された光源からの入射光量I0で除算して、各波長帯域での反射率Ik/I0を求め、n個のフォトディテクターについての反射率Ik/I0を加算した加算値を個数nで除算することにより、ステップ102で所定波長帯域での平均反射率r(=Σ(Ik/I0)/n)を演算する。
【0033】
次に、ステップ104で演算した平均反射率rをモニター20に表示し、ステップ106で反応停止条件が成立しているか否かを判別する。図2に示すような正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有する半導体前駆体では、酸化可能領域は各辺から中心に向かって酸化されていき、このとき酸化速度は一定であるので酸化領域は時間の二乗に比例して増加する。酸化領域の反射率と非酸化領域の反射率は各々一定であるので、平均反射率rは酸化領域が増加するに従って変化し(具体的には、時間tの二乗に比例して増加する(r∝t2))、半導体前駆体の酸化可能領域12Aの総てが酸化されると一定になる。従って、予めROMに記憶しておいた平均反射率rと未酸化領域の面積sとの相関関係を表す図4に示すマップを用いて、所望の未酸化領域の面積s。に対応する平均反射率rxを求め、平均反射率rが平均反射率rxと一致したときに反応停止条件が成立したと判断する。
【0034】
または、オペレータによって停止信号がコンピュータ18に入力されたときに反応停止条件が成立したと判断するようにしてもよい。すなわち、モニター20に表示された平均反射率rの値を見て、オペレータが反応を停止するか否かを判断し、マニュアル操作で反応を停止させるようにしてもよい。ここで、反応停止条件が成立していれば、ステップ108で図示しない搬送装置により半導体前駆体12を酸化炉10外に搬出して、酸化反応を停止させる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体製造装置は、被測定物として、酸化の進行度合いの追跡のためだけに半導体前駆体12の近傍に配置されたモニター用サンプル13を用いた以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるので、同様の部分については説明を省略する。
【0036】
モニター用サンプル13は、図5に示すストライプ形状の酸化可能領域13A(白抜き部分)を有し、半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに酸化可能領域13Aが消失するように設計されている。図5に示すストライプ形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプル13では、酸化可能領域は対向する2辺から中心に向かって酸化されていき、このとき酸化速度は一定であるので酸化領域は時間に比例して増加する。酸化領域の反射率と非酸化領域の反射率は各々一定であるので、平均反射率rは、酸化領域が増加するに従って変化し(具体的には、時間tに比例して増加する(r∝t))、酸化可能領域13Aの総てが酸化されると一定になる。
【0037】
第2の実施の形態において、コンピュータ18で実行される制御ルーチンを、図6を参照して説明する。
【0038】
ステップ200において、n個のフィルタに対応して設けられた各フォトディテクター29からの信号を取り込み、各フォトディテクター29で受光した光量Ikを、予めROMに記憶された光源からの入射光量I0で除算して、各波長帯域での現時刻の反射率Ik/I0を求め、n個のフォトディテクターについての反射率Ik/I0を加算した加算値を個数nで除算することにより、現時刻における所定波長帯域での平均反射率rnew(=Σ(Ik/I0)/n)を求める。同様にして求められRAMに記憶された前回の所定波長帯域での平均反射率roldから現時刻における所定波長帯域での平均反射率rnewを減算して、ステップ202で平均反射率の変化率Δr(=rold−rnew)を演算する。
【0039】
次に、ステップ204で演算した平均反射率の変化率Δrをモニター20に表示し、ステップ206で反応停止条件が成立しているか否かを判別する。ストライプ形状の酸化可能領域13Aを有するモニター用サンプル13では、平均反射率の変化率Δrは、酸化可能領域13Aが消失するまでは一定であり、酸化可能領域13Aが消失した時点で0となる。従って、平均反射率の変化率Δr=0となったときに反応停止条件が成立したと判断することができる。
【0040】
または、オペレータが表示装置に表示されたΔrの値を目視し、Δr=0となったときにスイッチの操作により停止信号を入力するようにし、オペレータによって停止信号がコンピュータ18に入力されたときに反応停止条件が成立したと判断するようにしてもよい。ここで、反応停止条件が成立していれば、ステップ208で図示しない搬送装置により半導体前駆体12を酸化炉10外に搬出して、酸化反応を停止させる。
【0041】
第1の実施の形態では、半導体前駆体の平均反射率を演算し、演算した平均反射率に基づいて酸化反応を制御したが、第2の実施の形態のように、平均反射率の変化率を演算し、演算した平均反射率の変化率に基づいて酸化反応を制御してもよい。また、第2の実施の形態では、平均反射率の変化率を用いたが、第1の実施の形態のように、反射光検出手段の検出信号に基づいて平均反射率を演算し、演算した平均反射率に基づいて酸化反応を制御してもよい。
【0042】
第2の実施の形態では、被測定物として、図5に示すストライプ形状の酸化可能領域を有し、半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに酸化可能領域が消失するように設計されたモニター用サンプル13を用いたが、ストライプ形状に限られず、矩形、円、楕円等の半導体前駆体と同様の酸化可能領域を有するモニター用サンプルを用いてもよい。
【0043】
例えば、被測定物として、半導体前駆体と同様の正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルを用いた場合には、平均反射率は時間の二乗に比例して増加するので、平均反射率の変化率Δrは被測定物の酸化の度合いが進むにつれて低下し、酸化可能領域が消失した時点で0となる。従って、予めROMに記憶しておいた平均反射率の変化率Δrと未酸化領域の面積との相関関係を表す図7に示すマップを用いて、所望の未酸化領域の面積s0に対応する平均反射率の変化率Δr0を求め、平均反射率の変化率Δrが平均反射率の変化率Δr0と一致したときに反応停止条件が成立したと判断することができる。
【0044】
第1及び第2の実施の形態では、光源として白色光源を用いフィルターで分光して特定のスペクトル範囲での平均反射率を測定したが、光源はLEDでもよく、また、レーザ光源を用い特定の波長での反射率を測定することもできる。
【0045】
第1及び第2の実施の形態では、水蒸気酸化を行う装置について説明したが、その他の酸化方法にもこの発明が適用できることは言うまでもない。
【0046】
第1及び第2の実施の形態では、搬送装置により半導体前駆体を酸化炉外に搬出して酸化反応を停止させたが、酸化炉に備えられたヒータの駆動回路をオフにする、または水蒸気を導入するためのバルブを閉じる等の操作により、酸化反応を停止させてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態の半導体製造装置を、図8に示す選択酸化型の面発光型半導体レーザの製造に適用した例を示す。
【0048】
n型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファー層2と、n型のアルミニウムガリウム砒素(Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7As)からなる下部n型DBR3と、アンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる下部スペーサ層4、アンドープのAl0.11Ga0.89As量子井戸層およびアンドープのAl0.3Ga0.7As障壁層からなる量子井戸活性層5、アンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる上部スペーサ層6とを含む活性領域7と、p型のAl0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asからなる上部DBR8と、同じくp型のGaAsコンタクト層9とを順次積層し積層体を得た。ただし、上部DBR8内の最下層のAl0.9Ga0.1Asの入るべき周期の所には、p型のAlAs層10を挿入した。この積層体の活性層5までを、三塩化ホウ素と塩素(BCl3+Cl2)ガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去してメサ形状とした。これにより、AlAs層10の側面が露出した。
【0049】
メサ形状とされた積層体を、95℃に加熱された純水をバブリングして得られた水蒸気を、窒素をキャリアガスに用いて酸化炉に輸送する導入管、該導入管を開閉するためのバルブ、及びヒータを備えた本発明の半導体製造装置の酸化炉内に戴置して400℃に加熱し、加熱水蒸気によりAlAs層10の一部を露出面から選択的に酸化した。
【0050】
ここで、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を予め定量的に求めておくことは容易で、またそうすることでより正確なアパーチャ径の制御が可能となる。例えば、以下のようにして、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を実験により求めることができる。
【0051】
上述のVCSEL積層構造を持ち、ストライプ状にエッチングされたモニター用サンプルを作製した。ストライプ幅は約15μm、ストライプ周期は約100μmで、反射スペクトルを測定するエリア(〜5mm角)全体に周期的にストライプが形成されている。処理時間を変えて酸化反応を行い、ストライプ幅に対して酸化された部分の割合が異なるサンプルを作製し、各サンプルを赤外線顕微鏡で観察して未酸化領域の幅(VCSELのアパーチャ径に相当する)を測定し、各サンプルの波長920nmの光に対する反射率を測定した。未酸化領域の幅は処理時間に正比例して狭くなり、反射率は処理時間に正比例して増加した。
【0052】
また、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を、計算により予測することもできる。被測定物として、図9Aに示すような正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルAと、図9Bに示すストライプ形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルBとを想定し、AlAs層全てが酸化されるまでの波長920nmの光に対する反射率とアパーチャ径の経時変化を計算した。反射率は、1)メサ底部、2)酸化部(メサ内)、3)未酸化部(メサ内)の3箇所について測定し、各部の面積比率を考慮した下記式に基づいて算出したトータルの反射率である。
【0053】
R(トータルの反射率)=R1S1+R2S2+R3S3
R1:メサ底部の反射率
R2:酸化部の反射率
R3:未酸化部の反射率
S1:メサ底部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S1=1−(B/L)2
モニター用サンプルBでは、S1=1−B/L
S2:酸化部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S2=(B2−A2)/L2
モニター用サンプルBでは、S2=(B−A)/L
S3:未酸化部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S3=A2/L2
モニター用サンプルBでは、S3=A/L
なお、モニター用サンプルAでは、A=B−2vtの関係が成立する。
【0054】
図10からも分かるように、時間に比例してアパーチャー径(線Cで表す)は小さくなり、モニター用サンプルの反射率(線Aで表す)は放物線を描いて増加し、モニター用サンプルの反射率(線Bで表す)は直線的に増加する。また、この結果は、実験により求めたデータともよく一致した。
【0055】
上記関係に基づいて、モニター用サンプルの反射率が所望のアパーチャー径に対応する値になったときに、積層体を酸化炉から搬出し、酸化反応を終了した。
【0056】
酸化反応終了後は、さらに、前記メサを覆うように、250℃でのプラズマ支援化学気層成長法にてシリコン酸窒化膜11を約1μmの厚さで着膜し、前記メサ上部に、出射口を除いてTi/Auの積層膜からなるp型電極12を形成し、p型GaAsコンタクト層9と接続した。基板裏面には、裏面全体を覆うようにn型電極13を形成した。
【0057】
ここで、下部DBR3はn型のAl0.9Ga0.1As層と同Al0.3Ga0.7As層とを各々厚さλ/(4nr)(λ:発振波長,nr:媒質の屈折率)づつ交互に40.5周期積層して形成されたもので、ドーパントのシリコン濃度は2×1018cm-3である。p型のAlAs層10は厚さλ/(4nr)で、ドーパントのカーボン濃度は3×1018cm-3である。上部DBR8はp型のAl0.9Ga0.1As層と同Al0.3Ga0.7As層とを各々厚さλ/(4nr)づつ交互に30周期積層して形成されたもので、ドーパントのカーボン濃度は3×1018cm-3である。最後にp型のGaAsコンタクト層9は膜厚20nmで、カーボン濃度は1×1020cm-3である。上部DBR8の周期数(層数)を下部DBR3のそれよりも少なくしているのは、反射率に差をつけて出射光を基板上面より取り出すためである。ドーパントの種類についてはここに挙げたものに限らず、n型ならばセレン、p型ならば亜鉛やマグネシウムなどを用いることも可能である。また詳しくは述べないが素子の直列抵抗を下げるため、半導体多層膜中にはAl0.9Ga0.1As層とAl0.3Ga0.7As層の間に、その中間のアルミ組成比を有するいわゆる遷移領域を挟んでいる。メサを覆う絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜なども用いることができる。
【0058】
得られた選択酸化型VCSELは、以上のように構成され、n型電極13とp型電極間12に電流を流すことによりレーザ発振を行うことができ、発振波長λ:780nmのレーザ光を基板表面から取り出すことができる。
【0059】
上記では、活性層にAlGaAsを用いた近赤外波長のVCSELを例に説明したが、GaAsもしくはInGaAsを用いた赤外用、InGaPもしくはAlGaInPを用いた赤色用の面発光レーザにも適用できる。更には、GaN系やZnSe系等の青色もしくは紫外線面発光レーザ、InGaAsP系等の1.3〜1.5μm帯面発光レーザにも利用できることはもちろんである。DBR層として半導体材料に限定されることなく、絶縁膜を用いることも可能である。
また、AlAs層を酸化する例について説明したが、AlGaAsを酸化する場合、さらにはその他の半導体層でも酸化現象が発生する材料にはすべて同様に利用できる。
【0060】
また、AlAs層が活性層直上に1層だけ挿入されている例について説明したが、挿入位置は活性層直上に限らず、また、AlAs層の数は複数であっても本発明は利用できる。
【0061】
また、酸化型VCSELにはメサ形状を用いず、例えば、基板に酸化用穴を設けて酸化アパーチャーを形成する構造も提案されているが、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、すべての酸化型VCSELに有効に利用できる。
【0062】
また、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、酸化型VCSELのアパーチャー径を形成するときの制御性向上策として利用することのみならず、VCSELのDBRミラーを酸化工程を用いて作製する時などにも利用できる。
【0063】
以上の通り、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法を選択酸化型VCSELの製造に適用すれば、VCSEL共振器の反射率を経時観察することで、酸化距離すなわちアパーチャー径を酸化反応中に測定することが可能となり、アパーチャー径を設計値通りに形成し、レーザ特性にばらつきのないVCSELを歩留まり良く製造することができるなど、選択酸化型VCSELの製造プロセスの再現性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体製造装置における被測定物の概略図である。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体製造装置で行われる制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】未酸化領域の面積と平均反射率との相関関係を表すグラフである。
【図5】第2の実施の形態に係る半導体製造装置における被測定物の概略図である。
【図6】第2の実施の形態に係る半導体製造装置で行われる制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】未酸化領域の面積と平均反射率の変化率との相関関係を表すグラフである。
【図8】本発明を適用することができる選択酸化型VCSELの構成を示す概略断面図である。
【図9】VCSELのアパーチャ径と反射率の時間変化を計算するために用いた被測定物のモデルを表す概略図である。
【図10】計算により求めたVCSELのアパーチャ径と反射率の時間変化を表すグラフである。
【図11】選択酸化型VCSELの電流−光出力特性のアパーチャ径依存性を示すグラフである。
【図12】AlAsとAlOxの反射スペクトルの相違を比較するためのスペクトル図である。
【図13】AlAsの酸化による膜厚変化が反射スペクトルに与える影響を示すためのスペクトル図である。
【符号の説明】
【0065】
10 酸化炉
12 半導体前駆体
13 モニター用サンプル
14 白色光源
16 反射光検出手段
18 コンピュータ
20 モニター
22 ヒータ
24 バルブ
26 チョッパー
28、30 光ファイバー
29 フォトディテクター
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置及び半導体製造方法に係り、詳しくは、半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、端面発光型にくらべて、製造コストが低いこと、製造の歩留まりが高いこと、2次元集積化が容易なこと、等の多くの利点を有していることから、光通信、光情報処理、光記録など、多くの分野で用いることが期待されている。
【0003】
VCSELは、その基本構造から数種類のタイプに分類されるが、しきい電流値、応答速度、消費電力等、レーザ特性の観点から最も有望視されているのは、選択酸化型VCSELと呼ばれているものである。例えば、K. D. Choquette et al. "Low threshold voltage vertical-cavity lasers fabricated by selective oxidation" Electron. Lett., Vol.30, pp.2033-2044, 1994等の文献に記載されているように、AlAs選択酸化型VCSELは以下のようにして製造される。
【0004】
まず、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型GaAs基板上にGaAsとAl0.9Ga0.1Asをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に38周期積層した下部n型DBR(Distributed Bragg Reflector)層、InGaAs量子井戸活性層3層とGaAsスぺーサー層で構成された膜厚が媒質内波長となるアンドープ活性領域、膜厚が媒質内波長の1/4のAl0.98Ga0.02As電流狭窄層、GaAsとAl0.9Ga0.1Asをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に25周期積層した下部n型DBR層、を積層する。
【0005】
次に、上記結晶層を反応性イオンエッチングにより、深さ5μm、一辺が105μmのメサ形状にすると、Al0.98Ga0.02As電流狭窄層の側面が露出する。この露出面からAl0.98Ga0.02As電流狭窄層を、中心の数μmを残して選択的に酸化する。最後に、電極としてTi/AuとAuGe/Ni/Auを上面と下面にそれぞれ蒸着し、選択酸化型VCSELが完成する。
【0006】
以上の通り、選択酸化型VCSELは、結晶成長後にAlAsあるいはAlGaAsの選択酸化プロセスを用いて電流狭窄構造を作りこむ特徴を持っている。その結果、結晶成長はすべて平坦面上で行われ、特性の良い結晶層を用いることができる。また、インプラ型で発生する活性層に与えるダメージの心配はない。
【0007】
また、例えば、上記方法で作製されたVCSELに両面の電極を通して電流を注入すると、注入された電流は、酸化されなかったメサ形状の中心数μmだけに狭窄され、900μAという低しきい電流値を示すなど、選択酸化型VCSELは優れたレーザ特性を有している。
【0008】
選択酸化型VCSELでは、酸化されずに残ったAlAsあるいはAlGaAs層をアパーチャ(開口)と称している。選択酸化型VCSELは、低しきい電流値など、優れたレーザ特性を有しているが、各種レーザ特性はアパーチャ径に大きく左右される。
【0009】
例えば、D.L.Huffaker et al. "Multiwavelength, Densely-Packed 2x2 Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser Array Fabricated Using Selective Oxidation", IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.8, pp.858-860, 1996には、図11に示すように、アパーチャー径が2、2.5、3、3.5μmの選択酸化型VCSELの電流−光出力特性が報告されている。図11から分かるように、しきい電流値、効率がアパーチャー径に依存して大きく異なるデータとなっている。また、図には示されていないが、最大光出力もアパーチャー径に依存する。また、選択酸化型VCSELのシングルモード最大光出力あるいは横モードはアパーチャー径に大きく依存するという報告もある。
【0010】
アパーチャーを形成する酸化プロセスには、USP5262360号明細書等に記載されているようなウェット酸化法を用いるのが一般的である。この方法は、窒素をキャリアガスに用いて、80〜100℃に加熱された純水をバブリングし、その水蒸気を炉に輸送してAlAsあるいはAlGaAs層の一部だけを選択的に酸化する方法で、酸化炉の温度は通常400から500℃である。従来は、実際に使用する酸化炉を用いて種々の条件でこの酸化プロセスによる酸化実験を繰り返し行い、得られた結果を元に最適化した条件で酸化を行い、選択酸化型VCSELを作製していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、K.M.Geib et. al. "Fabfication issues of oxide-confined
VCSELs", SPIE Vol.3003, pp.69-74, 1997をはじめ多くの報告が示すように、酸化されるAlAsあるいはAlGaAsの酸化レートは、サンプル温度、純水バブラー温度、窒素ガス輸送量、AlGaAs中のAlAs濃度、更にはAlAsあるいはAlGaAs層側面に付着する自然酸化膜の膜厚等、幾つもの因子により影響される。
【0012】
このため、1度設定した条件下で酸化を行うだけでは、メサ側面からの酸化距離をプロセス毎に再現性良く制御し、アパーチャー径を設計値通りに形成することは困難であり、その結果、VCSELのレーザ特性は作製毎に異なり、製造歩留まりの低下を引き起こす、という問題があった。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができ、これにより酸化反応を適切に制御することができる半導体製造装置及び半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の半導体製造装置は、酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と、酸化反応中の被測定物からの反射光を検出する反射光検出手段と、該反射光検出手段の検出信号に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の発明では、酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と反射光検出手段とを備えることにより、酸化反応中の被測定物からの反射光を検出することができ、演算手段により反射光検出手段の検出信号に基づいて反射率等を演算することにより、酸化反応中の被酸化物の反射率から酸化反応の進行度合いを知ることができる。すなわち、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができる。また、これにより酸化反応を適切に制御することができる。
【0016】
AlAs(あるいはAlGaAs)が酸化された部分にはAlOxが形成されて絶縁化されると共に、光学的な特性に影響する屈折率ならびに膜厚が変化する。例えば、図12に示すように、酸化反応が進行するに従いVCSELの共振器の反射スペクトルも変化する。酸化されていないAlAs層を持つ共振器の反射スペクトルを実線で示し、AlAs層が総て酸化されて形成されたAlOx層を持つ共振器の反射スペクトルを破線で示す。
【0017】
共振器の構造は、アルミニウムガリウム砒素(Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7As)からなる下部DBRと、Al0.6Ga0.4Asからなる下部スペーサ層、Al0.11Ga0.89As量子井戸層およびAl0.3Ga0.7As障壁層からなる量子井戸活性層、Al0.6Ga0.4Asからなる上部スペーサ層とを含む活性領域、Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asからなる上部DBR、GaAsコンタクト層とを順次積層したものである。ただし、Al0.9Ga0.1Asの入るべき上部DBR内の最下層にはAlAs層が挿入されている。AlAs層、AlOx層は、共にその膜厚が媒質内波長の1/4であり、AlOxの屈折率は1.7である。
【0018】
両反射スペクトルは、中心波長である780nm付近にディップを持ち、750nm付近から820nm付近まで高い反射率を示す。このグラフのスケールでは、この波長帯域の両者のスペクトルに大きな違いは見られない。一方、それ以外の波長帯域には、周期的に振動するサイドローブが現れる。このサイドローブが現れる波長では、AlAs層を持つ場合とAlOx層を持つ場合とで反射率が大きく異なることがわかる。例えば、800〜1000nmの波長帯域での平均反射率は、AlAs層を持つ場合には約0.45、AlOx層を持つ場合には約0.58である。従って、酸化反応中の被酸化物の平均反射率を測定することができれば、酸化反応の進行度合いを経時追跡することが可能となる。
【0019】
なお、酸化された部分の膜厚変化を図13に示すが、膜厚が±20%変化しても反射スペクトルには大きく影響しないことがわかる。
【0020】
請求項2記載の半導体製造装置は、請求項1の発明において、前記被測定物は、半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルであることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の半導体製造装置は、請求項1または2の発明において、前記演算手段での演算結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。表示手段を設けることで、オペレータは視覚的に酸化反応の進行度合いを知ることができる。
【0022】
請求項4に記載の半導体製造装置は、請求項1〜3のいずれか1項の発明において、前記演算手段での演算結果に基づいて、反応を制御する反応制御手段を備えたことを特徴とする。反応制御手段を設けることで、酸化反応の進行度合いの追跡と酸化反応の制御とを1つの装置で行うことができる。
【0023】
請求項5に記載の半導体製造装置は、請求項2〜4のいずれか1項の発明において、前記モニター用サンプルは、反射率が酸化時間に比例して増加または減少するように形成されていることを特徴とする。モニター用サンプルの反射率が酸化時間に比例して増加または減少する場合には、反射率の経時変化を追跡すると、酸化可能領域が消失した時点が特異点となって現れるので、オペレータが視覚的に反応の終点を認識し易い。
【0024】
請求項6に記載の半導体製造方法は、半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造方法であって、酸化炉内の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルに光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルからの反射光を検出し、検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算し、演算結果に基づいて、酸化反応を制御して半導体を製造することを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の半導体製造方法は、請求項6に記載の発明において、前記モニター用サンプルの酸化可能領域消失時の反射率の変化率がゼロになることに基づいて、酸化反応を制御することを特徴とする。半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに、酸化可能領域が消失するように設計されたモニター用サンプルを用い、モニター用サンプルの反射率の変化率がゼロになる時点で酸化反応が終了するように制御すれば、所望の面積の未酸化領域を有する半導体前駆体を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、酸化反応の進行度合いを経時追跡することができ、これにより酸化反応を適切に制御することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法を実施の形態に基づき詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体製造装置は、水蒸気酸化を行うための装置であり、図1に示すように、酸化炉10、図2に示す被測定物である正方形(矩形)形状の酸化可能領域12A(白抜き部分)を有する半導体前駆体12、酸化炉10内に配置された半導体前駆体12に光を照射する白色光源14、半導体前駆体12からの反射光を検出する反射光検出手段16、コンピュータ18、及びコンピュータ18に接続された表示手段としてのモニター20から構成されている。
【0028】
酸化炉10には、ヒータ22と水蒸気を導入するためのバルブ24を備えた導入管とが設けられており、ヒータ22の駆動回路とバルブ24の駆動装置(図示せず)は、それぞれコンピュータ18に接続されている。光源14は、チョッパー26を介して耐熱性・耐湿性の光ファイバー28の一端に光結合され、光ファイバー28の他端は、酸化炉10内の半導体前駆体12上方に固定配置され、半導体前駆体12に光を照射する。
【0029】
反射光検出手段16は、異なる波長帯域の光を透過する複数(n個)のフィルタ(図示せず)と、該フィルタの光透過側に各々配置されたフォトディテクター29と、から構成されている。各フォトディテクター29は、耐熱性・耐湿性の光ファイバー30の一端に光結合され、光ファイバー30の他端は、酸化炉10内の半導体前駆体12上方に固定配置されており、半導体前駆体12からの反射光を検出し、検出信号を出力する。また、フォトディテクター29は、A/D変換器(図示せず)を介してコンピュータ18に接続されており、フォトディテクター29から出力された検出信号は、A/D変換器によりデジタル信号に変換されてコンピュータ18に入力される。なお、検出信号のS/N比が低い場合には、フォトディテクター29とA/D変換器との間にロックインアンプ等の増幅器を挿入してもよい。
【0030】
コンピュータ18は、CPU32、ROM34、及びRAM36を含んで構成されており、CPU32は、ROM34に記憶された以下に説明する制御ルーチンのプログラムに基づき処理を行う。
【0031】
コンピュータ18で実行される制御ルーチンを、図3を参照して説明する。
【0032】
ステップ100において、n個のフィルタに対応して設けられた各フォトディテクター29からの信号を取り込み、各フォトディテクター29で受光した光量Ikを、予めROMに記憶された光源からの入射光量I0で除算して、各波長帯域での反射率Ik/I0を求め、n個のフォトディテクターについての反射率Ik/I0を加算した加算値を個数nで除算することにより、ステップ102で所定波長帯域での平均反射率r(=Σ(Ik/I0)/n)を演算する。
【0033】
次に、ステップ104で演算した平均反射率rをモニター20に表示し、ステップ106で反応停止条件が成立しているか否かを判別する。図2に示すような正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有する半導体前駆体では、酸化可能領域は各辺から中心に向かって酸化されていき、このとき酸化速度は一定であるので酸化領域は時間の二乗に比例して増加する。酸化領域の反射率と非酸化領域の反射率は各々一定であるので、平均反射率rは酸化領域が増加するに従って変化し(具体的には、時間tの二乗に比例して増加する(r∝t2))、半導体前駆体の酸化可能領域12Aの総てが酸化されると一定になる。従って、予めROMに記憶しておいた平均反射率rと未酸化領域の面積sとの相関関係を表す図4に示すマップを用いて、所望の未酸化領域の面積s。に対応する平均反射率rxを求め、平均反射率rが平均反射率rxと一致したときに反応停止条件が成立したと判断する。
【0034】
または、オペレータによって停止信号がコンピュータ18に入力されたときに反応停止条件が成立したと判断するようにしてもよい。すなわち、モニター20に表示された平均反射率rの値を見て、オペレータが反応を停止するか否かを判断し、マニュアル操作で反応を停止させるようにしてもよい。ここで、反応停止条件が成立していれば、ステップ108で図示しない搬送装置により半導体前駆体12を酸化炉10外に搬出して、酸化反応を停止させる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体製造装置は、被測定物として、酸化の進行度合いの追跡のためだけに半導体前駆体12の近傍に配置されたモニター用サンプル13を用いた以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるので、同様の部分については説明を省略する。
【0036】
モニター用サンプル13は、図5に示すストライプ形状の酸化可能領域13A(白抜き部分)を有し、半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに酸化可能領域13Aが消失するように設計されている。図5に示すストライプ形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプル13では、酸化可能領域は対向する2辺から中心に向かって酸化されていき、このとき酸化速度は一定であるので酸化領域は時間に比例して増加する。酸化領域の反射率と非酸化領域の反射率は各々一定であるので、平均反射率rは、酸化領域が増加するに従って変化し(具体的には、時間tに比例して増加する(r∝t))、酸化可能領域13Aの総てが酸化されると一定になる。
【0037】
第2の実施の形態において、コンピュータ18で実行される制御ルーチンを、図6を参照して説明する。
【0038】
ステップ200において、n個のフィルタに対応して設けられた各フォトディテクター29からの信号を取り込み、各フォトディテクター29で受光した光量Ikを、予めROMに記憶された光源からの入射光量I0で除算して、各波長帯域での現時刻の反射率Ik/I0を求め、n個のフォトディテクターについての反射率Ik/I0を加算した加算値を個数nで除算することにより、現時刻における所定波長帯域での平均反射率rnew(=Σ(Ik/I0)/n)を求める。同様にして求められRAMに記憶された前回の所定波長帯域での平均反射率roldから現時刻における所定波長帯域での平均反射率rnewを減算して、ステップ202で平均反射率の変化率Δr(=rold−rnew)を演算する。
【0039】
次に、ステップ204で演算した平均反射率の変化率Δrをモニター20に表示し、ステップ206で反応停止条件が成立しているか否かを判別する。ストライプ形状の酸化可能領域13Aを有するモニター用サンプル13では、平均反射率の変化率Δrは、酸化可能領域13Aが消失するまでは一定であり、酸化可能領域13Aが消失した時点で0となる。従って、平均反射率の変化率Δr=0となったときに反応停止条件が成立したと判断することができる。
【0040】
または、オペレータが表示装置に表示されたΔrの値を目視し、Δr=0となったときにスイッチの操作により停止信号を入力するようにし、オペレータによって停止信号がコンピュータ18に入力されたときに反応停止条件が成立したと判断するようにしてもよい。ここで、反応停止条件が成立していれば、ステップ208で図示しない搬送装置により半導体前駆体12を酸化炉10外に搬出して、酸化反応を停止させる。
【0041】
第1の実施の形態では、半導体前駆体の平均反射率を演算し、演算した平均反射率に基づいて酸化反応を制御したが、第2の実施の形態のように、平均反射率の変化率を演算し、演算した平均反射率の変化率に基づいて酸化反応を制御してもよい。また、第2の実施の形態では、平均反射率の変化率を用いたが、第1の実施の形態のように、反射光検出手段の検出信号に基づいて平均反射率を演算し、演算した平均反射率に基づいて酸化反応を制御してもよい。
【0042】
第2の実施の形態では、被測定物として、図5に示すストライプ形状の酸化可能領域を有し、半導体前駆体の未酸化領域の面積が所望の値になったときに酸化可能領域が消失するように設計されたモニター用サンプル13を用いたが、ストライプ形状に限られず、矩形、円、楕円等の半導体前駆体と同様の酸化可能領域を有するモニター用サンプルを用いてもよい。
【0043】
例えば、被測定物として、半導体前駆体と同様の正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルを用いた場合には、平均反射率は時間の二乗に比例して増加するので、平均反射率の変化率Δrは被測定物の酸化の度合いが進むにつれて低下し、酸化可能領域が消失した時点で0となる。従って、予めROMに記憶しておいた平均反射率の変化率Δrと未酸化領域の面積との相関関係を表す図7に示すマップを用いて、所望の未酸化領域の面積s0に対応する平均反射率の変化率Δr0を求め、平均反射率の変化率Δrが平均反射率の変化率Δr0と一致したときに反応停止条件が成立したと判断することができる。
【0044】
第1及び第2の実施の形態では、光源として白色光源を用いフィルターで分光して特定のスペクトル範囲での平均反射率を測定したが、光源はLEDでもよく、また、レーザ光源を用い特定の波長での反射率を測定することもできる。
【0045】
第1及び第2の実施の形態では、水蒸気酸化を行う装置について説明したが、その他の酸化方法にもこの発明が適用できることは言うまでもない。
【0046】
第1及び第2の実施の形態では、搬送装置により半導体前駆体を酸化炉外に搬出して酸化反応を停止させたが、酸化炉に備えられたヒータの駆動回路をオフにする、または水蒸気を導入するためのバルブを閉じる等の操作により、酸化反応を停止させてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態の半導体製造装置を、図8に示す選択酸化型の面発光型半導体レーザの製造に適用した例を示す。
【0048】
n型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファー層2と、n型のアルミニウムガリウム砒素(Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7As)からなる下部n型DBR3と、アンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる下部スペーサ層4、アンドープのAl0.11Ga0.89As量子井戸層およびアンドープのAl0.3Ga0.7As障壁層からなる量子井戸活性層5、アンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる上部スペーサ層6とを含む活性領域7と、p型のAl0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asからなる上部DBR8と、同じくp型のGaAsコンタクト層9とを順次積層し積層体を得た。ただし、上部DBR8内の最下層のAl0.9Ga0.1Asの入るべき周期の所には、p型のAlAs層10を挿入した。この積層体の活性層5までを、三塩化ホウ素と塩素(BCl3+Cl2)ガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去してメサ形状とした。これにより、AlAs層10の側面が露出した。
【0049】
メサ形状とされた積層体を、95℃に加熱された純水をバブリングして得られた水蒸気を、窒素をキャリアガスに用いて酸化炉に輸送する導入管、該導入管を開閉するためのバルブ、及びヒータを備えた本発明の半導体製造装置の酸化炉内に戴置して400℃に加熱し、加熱水蒸気によりAlAs層10の一部を露出面から選択的に酸化した。
【0050】
ここで、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を予め定量的に求めておくことは容易で、またそうすることでより正確なアパーチャ径の制御が可能となる。例えば、以下のようにして、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を実験により求めることができる。
【0051】
上述のVCSEL積層構造を持ち、ストライプ状にエッチングされたモニター用サンプルを作製した。ストライプ幅は約15μm、ストライプ周期は約100μmで、反射スペクトルを測定するエリア(〜5mm角)全体に周期的にストライプが形成されている。処理時間を変えて酸化反応を行い、ストライプ幅に対して酸化された部分の割合が異なるサンプルを作製し、各サンプルを赤外線顕微鏡で観察して未酸化領域の幅(VCSELのアパーチャ径に相当する)を測定し、各サンプルの波長920nmの光に対する反射率を測定した。未酸化領域の幅は処理時間に正比例して狭くなり、反射率は処理時間に正比例して増加した。
【0052】
また、実際に作製したいVCSELにおけるアパーチャ径とモニター用サンプルの反射率との関係を、計算により予測することもできる。被測定物として、図9Aに示すような正方形(矩形)形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルAと、図9Bに示すストライプ形状の酸化可能領域を有するモニター用サンプルBとを想定し、AlAs層全てが酸化されるまでの波長920nmの光に対する反射率とアパーチャ径の経時変化を計算した。反射率は、1)メサ底部、2)酸化部(メサ内)、3)未酸化部(メサ内)の3箇所について測定し、各部の面積比率を考慮した下記式に基づいて算出したトータルの反射率である。
【0053】
R(トータルの反射率)=R1S1+R2S2+R3S3
R1:メサ底部の反射率
R2:酸化部の反射率
R3:未酸化部の反射率
S1:メサ底部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S1=1−(B/L)2
モニター用サンプルBでは、S1=1−B/L
S2:酸化部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S2=(B2−A2)/L2
モニター用サンプルBでは、S2=(B−A)/L
S3:未酸化部の面積比率
モニター用サンプルAでは、S3=A2/L2
モニター用サンプルBでは、S3=A/L
なお、モニター用サンプルAでは、A=B−2vtの関係が成立する。
【0054】
図10からも分かるように、時間に比例してアパーチャー径(線Cで表す)は小さくなり、モニター用サンプルの反射率(線Aで表す)は放物線を描いて増加し、モニター用サンプルの反射率(線Bで表す)は直線的に増加する。また、この結果は、実験により求めたデータともよく一致した。
【0055】
上記関係に基づいて、モニター用サンプルの反射率が所望のアパーチャー径に対応する値になったときに、積層体を酸化炉から搬出し、酸化反応を終了した。
【0056】
酸化反応終了後は、さらに、前記メサを覆うように、250℃でのプラズマ支援化学気層成長法にてシリコン酸窒化膜11を約1μmの厚さで着膜し、前記メサ上部に、出射口を除いてTi/Auの積層膜からなるp型電極12を形成し、p型GaAsコンタクト層9と接続した。基板裏面には、裏面全体を覆うようにn型電極13を形成した。
【0057】
ここで、下部DBR3はn型のAl0.9Ga0.1As層と同Al0.3Ga0.7As層とを各々厚さλ/(4nr)(λ:発振波長,nr:媒質の屈折率)づつ交互に40.5周期積層して形成されたもので、ドーパントのシリコン濃度は2×1018cm-3である。p型のAlAs層10は厚さλ/(4nr)で、ドーパントのカーボン濃度は3×1018cm-3である。上部DBR8はp型のAl0.9Ga0.1As層と同Al0.3Ga0.7As層とを各々厚さλ/(4nr)づつ交互に30周期積層して形成されたもので、ドーパントのカーボン濃度は3×1018cm-3である。最後にp型のGaAsコンタクト層9は膜厚20nmで、カーボン濃度は1×1020cm-3である。上部DBR8の周期数(層数)を下部DBR3のそれよりも少なくしているのは、反射率に差をつけて出射光を基板上面より取り出すためである。ドーパントの種類についてはここに挙げたものに限らず、n型ならばセレン、p型ならば亜鉛やマグネシウムなどを用いることも可能である。また詳しくは述べないが素子の直列抵抗を下げるため、半導体多層膜中にはAl0.9Ga0.1As層とAl0.3Ga0.7As層の間に、その中間のアルミ組成比を有するいわゆる遷移領域を挟んでいる。メサを覆う絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜なども用いることができる。
【0058】
得られた選択酸化型VCSELは、以上のように構成され、n型電極13とp型電極間12に電流を流すことによりレーザ発振を行うことができ、発振波長λ:780nmのレーザ光を基板表面から取り出すことができる。
【0059】
上記では、活性層にAlGaAsを用いた近赤外波長のVCSELを例に説明したが、GaAsもしくはInGaAsを用いた赤外用、InGaPもしくはAlGaInPを用いた赤色用の面発光レーザにも適用できる。更には、GaN系やZnSe系等の青色もしくは紫外線面発光レーザ、InGaAsP系等の1.3〜1.5μm帯面発光レーザにも利用できることはもちろんである。DBR層として半導体材料に限定されることなく、絶縁膜を用いることも可能である。
また、AlAs層を酸化する例について説明したが、AlGaAsを酸化する場合、さらにはその他の半導体層でも酸化現象が発生する材料にはすべて同様に利用できる。
【0060】
また、AlAs層が活性層直上に1層だけ挿入されている例について説明したが、挿入位置は活性層直上に限らず、また、AlAs層の数は複数であっても本発明は利用できる。
【0061】
また、酸化型VCSELにはメサ形状を用いず、例えば、基板に酸化用穴を設けて酸化アパーチャーを形成する構造も提案されているが、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、すべての酸化型VCSELに有効に利用できる。
【0062】
また、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、酸化型VCSELのアパーチャー径を形成するときの制御性向上策として利用することのみならず、VCSELのDBRミラーを酸化工程を用いて作製する時などにも利用できる。
【0063】
以上の通り、本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法を選択酸化型VCSELの製造に適用すれば、VCSEL共振器の反射率を経時観察することで、酸化距離すなわちアパーチャー径を酸化反応中に測定することが可能となり、アパーチャー径を設計値通りに形成し、レーザ特性にばらつきのないVCSELを歩留まり良く製造することができるなど、選択酸化型VCSELの製造プロセスの再現性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体製造装置における被測定物の概略図である。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体製造装置で行われる制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】未酸化領域の面積と平均反射率との相関関係を表すグラフである。
【図5】第2の実施の形態に係る半導体製造装置における被測定物の概略図である。
【図6】第2の実施の形態に係る半導体製造装置で行われる制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】未酸化領域の面積と平均反射率の変化率との相関関係を表すグラフである。
【図8】本発明を適用することができる選択酸化型VCSELの構成を示す概略断面図である。
【図9】VCSELのアパーチャ径と反射率の時間変化を計算するために用いた被測定物のモデルを表す概略図である。
【図10】計算により求めたVCSELのアパーチャ径と反射率の時間変化を表すグラフである。
【図11】選択酸化型VCSELの電流−光出力特性のアパーチャ径依存性を示すグラフである。
【図12】AlAsとAlOxの反射スペクトルの相違を比較するためのスペクトル図である。
【図13】AlAsの酸化による膜厚変化が反射スペクトルに与える影響を示すためのスペクトル図である。
【符号の説明】
【0065】
10 酸化炉
12 半導体前駆体
13 モニター用サンプル
14 白色光源
16 反射光検出手段
18 コンピュータ
20 モニター
22 ヒータ
24 バルブ
26 チョッパー
28、30 光ファイバー
29 フォトディテクター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と、
酸化反応中の被測定物からの反射光を検出する反射光検出手段と、
該反射光検出手段の検出信号に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算する演算手段と、
を備えた半導体製造装置。
【請求項2】
前記被測定物は、半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルである請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記演算手段での演算結果を表示する表示手段を備えた請求項1または2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記演算手段での演算結果に基づいて、反応を制御する反応制御手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記モニター用サンプルは、反射率が酸化時間に比例して増加または減少するように形成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造方法であって、
酸化炉内の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルに光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルからの反射光を検出し、
検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算し、
演算結果に基づいて、酸化反応を制御して半導体を製造する半導体製造方法。
【請求項7】
前記モニター用サンプルの酸化可能領域消失時の反射率の変化率がゼロになることに基づいて、酸化反応を制御する請求項6に記載の半導体製造方法。
【請求項1】
酸化炉内の被測定物に光を照射する光源と、
酸化反応中の被測定物からの反射光を検出する反射光検出手段と、
該反射光検出手段の検出信号に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算する演算手段と、
を備えた半導体製造装置。
【請求項2】
前記被測定物は、半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルである請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記演算手段での演算結果を表示する表示手段を備えた請求項1または2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記演算手段での演算結果に基づいて、反応を制御する反応制御手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記モニター用サンプルは、反射率が酸化時間に比例して増加または減少するように形成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
半導体前駆体の酸化可能領域の一部を選択的に酸化して半導体を製造する半導体製造方法であって、
酸化炉内の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルに光を照射して、酸化反応中の半導体前駆体または半導体前駆体の近傍に配置されたモニター用サンプルからの反射光を検出し、
検出した反射光に基づいて、反射率、平均反射率、反射率の変化率、または平均反射率の変化率を演算し、
演算結果に基づいて、酸化反応を制御して半導体を製造する半導体製造方法。
【請求項7】
前記モニター用サンプルの酸化可能領域消失時の反射率の変化率がゼロになることに基づいて、酸化反応を制御する請求項6に記載の半導体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−135358(P2006−135358A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21559(P2006−21559)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【分割の表示】特願平11−272559の分割
【原出願日】平成11年9月27日(1999.9.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【分割の表示】特願平11−272559の分割
【原出願日】平成11年9月27日(1999.9.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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