説明

反力補償システム

【課題】半導体ウェハ搬送および/または加工装置で用いられる反力補償システムを提供する。
【解決手段】レーザビームが、ビーム軸に沿って伝播して、支持部に置かれた加工表面に入射する。支持部は、加工表面上の選択した位置にあるレーザビームの位置まで、レーザビームと目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動させる位置決めシステムに動作可能に接続されている。少なくとも1つの反力補償モータは、対応するステージモータの共通力面、およびそれに出来るだけ近く位置している。補償モータと対応するステージモータの間のモーメントアームは、低減または除去されて、補償モータが、実施的ステージ力に直接結合し、実質的にゼモモーメントアームでステージ力と反応することができる。各補償モータが、対応するステージモータに直接結合し、一列に整列しているので、4つのモータのみで6自由度を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ搬送および/または加工システムで用いられる反力補償システム(force reaction compensation)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハレベル加工で用いられるように構成されたウェハ搬送システムは、通常、加工のためにウェハを固定するチャックを有するステージを備えている。このステージは、ときとして固定であるか、またはときとして移動可能である。用途によっては、このステージは、回転しまたは回転せずに、1次元、2次元、または3次元デカルト座標で直線的に移動することが要求される。ウェハの整列と搬送にかなりの量の総加工時間が費やされた場合に、このステージ移動の速度は、全ウェハ加工プラットフォームのスループットに影響し得る。
【0003】
光学加工を含む用途の場合には、移動自在光学アッセンブリをウェハ表面上に搭載することができ、これにより必要なウェハ搬送距離を最小化することができる。ステージ移動の主方向を「主軸」と呼び、主方向に垂直なステージ移動方向を「副軸」と呼んでいる。加工される試料、ここではウェハ、を保持するチャックは、主軸ステージに搭載されて主軸に沿って移動し得、副軸ステージに搭載されて副軸ステージに沿って移動し得、あるいは主軸と副軸の下方の静止位置にあってよい。主軸ステージは副軸ステージを支承し得、またはこれらは互いに独立であってよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
レーザ加工システムの改良の実施形態をここで説明する。レーザ加工システムにおいて、レーザビームは、ビーム軸に沿って伝播して、支持部の表面上に置かれた目標試料の加工表面に入射する。支持部は、少なくとも1つのステージモータを有する位置決めシステムに動作可能に接続されている。ステージモータは、加工表面の選択した位置にあるレーザビームの位置まで、レーザビームと目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動する、レーザビームシステムの改良には、対応するステージモータと共通の力面に配設された少なくとも1つの反力補償システムが含まれ、少なくとも1つの反力補償モータと対応するステージモータの間のいかなるモーメントアームも低減し、反力補償モータが、ステージ力に直接結合および実質的にゼロモーメントアームで反応することができる。
【0005】
レーザ加工システムの改良の別の実施形態もここで説明する。レーザ加工システムにおいて、レーザビームは、ビーム軸に沿って伝播して、支持部の表面上に置かれた目標試料の加工表面に入射する。支持部は、少なくとも1つの平面ステージと、レーザビームと目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動してレーザビームを加工表面(work surface)上の選択された位置に位置決めする少なくとも1つのステージモータとを有する位置決めシステムに動作可能に接続されている。この改良は、平面ステージを移動させる少なくとも1つのステージモータにより少なくとも1つの平面ステージに加えられる力を相殺する少なくとも1つの外乱減衰機構を備えている。少なくとも1つの機構は、対応するステージモータと共通の力面に配設され、対応するステージモータに出来るだけ近いので、これにより、少なくとも1つの機構と対応するステージモータの間のいかなるモーメントアームも低減して、少なくとも1つの機構をステージ力と直接結合し、実質的にゼロモーメントアームでステージ力と反応することがきる。
【0006】
レーザ加工方法の改良の実施形態もここで説明する。レーザ加工方法において、レーザビームは、ビーム軸に沿って伝播して、支持部の表面上に置かれた目標試料の加工表面に入射する。支持部は、レーザビームと目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動してレーザビームを加工表面の選択された位置に位置決めする少なくとも1つのステージモータを有する位置決めシステムに動作可能に接続している。レーザ加工方法の改良は、対応するステージモータとして、少なくとも1つの反力補償モータを共通力面に配設することを含み、これにより少なくとも1つの反力補償モータと対応するステージモータの間のいかなるモーメントアームも低減して、少なくとも1つの反力補償モータをステージ力と直接結合および実質的にゼロモーメントアームで反応させることができる。
【0007】
本発明のこれらと他の実施形態の詳細と変更例を、以下の説明と添付図面にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
ここで行う説明は、添付図面に言及するものであり、各図面を通して、同一の参照番号は同一の部品を示す。
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る反力補償システムの等長図である。
【0010】
【図2】システムが組み立てられたとき、基板上に搭載される上部と下部ステージを示す、図1の反力補償システムの部分展開等長図である。
【0011】
【図3】本発明の別の実施形態に係る反力システムの簡略平面図である。
【0012】
【図4】図3の反力補償システムの簡略側面図である。
【0013】
【図5】図3,4の反力補償システムの簡略透視図である。
【0014】
【図6A】図3〜5の反力補償システムの一部の簡略平面図である。
【0015】
【図6B】図3〜5の反力補償システムの一部の簡略側面図である。
【0016】
【図7】市販のステージ設計上の反力補償モータ位置を示す。
【0017】
【図8】システム外乱減衰のテストデータを、スイッチを入れた本願の位置実施形態に係るフレーム補償移動およびスイッチを切ったフレーム移動補償と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電子回路寸法が小さくなる従い、光学系のステージ設計はより重要になってきている。1つのステージ設計の考慮事項が、ウェハチャンクと光学アッセンブリの振動と熱安定性に起因する加工品質への影響である。レーザビームの位置が、連続的に調節される場合、最新の構造は、レーザアッセンブリを支承して、必要なレベルの精度を維持する。回路の寸法が小さくなるに伴い、粒子汚染は重要な関心事になる。
【0019】
公知の反力補償システムは、ステージフレームの底部に設置された6つ以上のモータを用いて、ステージによりシステムフレームに加えられた力を相殺する。このため、複雑で高価な構造アッセンブリになり、その結果、メンテナンス費用が高くなる。
【0020】
レーザ光学アッセンブリと、レーザビームが入射して、レーザ加工する表面を有する加工物を支承する多段位置決めシステムとして、スプリット軸ステージアーキテクチャを実装できる。多段位置決めシステムは、高速かつ加速度を付けて、振動と熱安定材料搬送が可能である。スプリット軸設計は、別の平行な面にある2つの垂直軸に沿った被駆動ステージ移動を分離する。一実施例において、水平面の移動は、互いに直交して移動する試料(主軸または下部)ステージと、走査光学アッセンブリ(副軸または上部)ステージに分割される。
【0021】
花崗岩、あるいは石板(stone slab)、あるいはセラミック材料のスラブ、鋳鉄、あるいはAnocast(登録商標)などの高分子複合材料の形状の寸法安定な基板が、上部および下部ステージの基部(base)として用いられる。スラブとステージは、好適には、類似の熱膨張係数を持つ材料から製造され、システムを、一貫した温度変化に好都合に反応させる。基板の上部と下部ステージ面の部分が平坦で互いに平行になるように、基板が正確に切断(「粗研磨される(lapped)」)される。好適な一実施形態において、試料保持チャックを坦持している下部ステージを案内する下部ガイドトラックアッセンブリが、基板の下部面に結合される。レーザビーム焦点域制御サブシステムを坦持している上部ステージを案内する上部ガイドトラックアッセンブリが、基板の上面に結合している。ガイドトラックアッセンブリの隣接レールに沿って位置しているリニアモータは、上部と下部ステージの移動を制御する。
【0022】
大きく構造的に硬い基板は、レーザ光学アッセンブリと試料の移動を孤立および安定させ、振動を吸収して、支持構造が本質的に硬いので、よりスムースな加速と減速を可能にする。基板の剛性とステージ移動軸の接近分離により、周波数共振がより高くなり、全3軸に沿った移動の誤差がより小さくなる。ヒートシンクとして動作することで、基板もまた熱安定性を提供する。また、コンパクトな構成に設計されているので、システムは、より少ない材料から構成され、そのため、加熱されたとき、膨張の影響をより受けにくい。基板の中央から切断された長円状のスロットが、下方の試料にレーザビームを照射させ、基板を介してレーザ光学アッセンブリの垂直移動を可能にする。そうでなければ、レーザ加工を受ける局所領域を除き、オーバーヘッド運動により生成された粒子から基板により試料が遮蔽される。
【0023】
レーザビーム焦点域制御サブシステムは、下部ステージの上に支持され、支持構造により上部ステージに搭載された少なくとも1つのたわみ部(flexure)に対して位置する垂直方向に調整可能な光学アッセンブリを備えている。支持構造の剛性により、ビーム軸に沿ったより高速でより正確な垂直移動を可能にする。スリーブを支持しているレンズは、レーザビームの焦点域の垂直移動を案内するたわみ部へ接続する支持部として機能する。スリーブの上端部にあるレンズフォーサ(lens forcer)により垂直移動が開始され、これが、光学アッセンブリに推進力(motive force)を与えて、下部チャック上の加工物(workpiece)に対してその高さを調節し、そのようにすることで、加工表面に対するレーザの焦点域を調整する。ビーム軸に沿って硬く、水平面で弾性を有する(compliant) 分離たわみ装置(isolation flexure device)が、光学アッセンブリからのレンズフォーサの過度の移動を緩衝する。
【0024】
スプリット軸ステージ設計は、ダイシング、部品トリミング(trimming)、溶融加工(fuse processing)、インク(inking)、および、窄孔、加工順序(routing)、検品、および測定(metrology)を経たPWB(プリント配線基板)を含む半導体加工に用いられる多くのプラットフォームに適用可能である。この設計により与えられる利点は、機械加工工具の全ての種類にとって役立つ。
【0025】
スプリット軸ステージ設計と対照的に、平面位置決めシステムが用いられており、これにより工具をほぼ固定位置に保持しつつ、2つ以上のアクチュエータにより移動可能な単一のステージ上で加工物が坦持される。これらのシステムは、アクチュエータの進行力(efforts)を調和して動かすことで、加工物を2次元移動させる。
【0026】
ステージを移動させるステージモータにより、構造に加えられる力を相殺して、スプリット軸ステージまたは平面ステージの外乱(disturbances)を低減するのが望ましいだろう。ここで述べた反力補償、またはフレーム移動補償は、ステージモータと同じ力面、およびステージ力面と反力補償力面の間に大きなモーメントアームが存在する、システムフレームの基部にモータを配設するのではなく、ステージモータと同じ力面およびステージモータに出来るだけ近づけて反力補償モータを配設して、システムフレーム上のステージ力を相殺する課題にアプローチする。この反力補償モータ配設戦略により、反力補償モータとステージモータの間のモーメントアームを除去して、反力補償モータが、ステージ力と直接結合し、実質的にゼロモーメノトアームでステージ力と反応することができる。反力補償とステージモータの間のモーメントアームを除去することで、ステージモータと反力補償モータの間の距離により発生された寄生力を実質的に低減させる。この寄生「残り(leftover)」力は、システムに不要な外乱をもたらす。反力補償モータが、ステージモータと直接結合し、一列に整列するので、この反力補償機構も4つのモータのみにより、6段階の自由度の制御を可能にする。反力補償システムで用いられるモータは、三相または単相構成いずれかの無鉄心リニアモータを含み得る。
【0027】
図1、2は、多段位置決めシステム10を示す。これは一実施形態において、レーザビームが伝播して、目標試料上に入射するレーザ加工システム部品を支持する。多段位置決めシステム10は、好適には、花崗岩、またはセラミック材料スラブ、鋳鉄、Anocast(登録商標)などの高分子化合物材料で形成された石板(stone slab)から成る寸法安定基板(dimensionally stable substrate)12を備えている。基板12は、第1または上部平坦主平面14と、段形凹部(stepped recess)18を有する第2または下部平坦主平面16とを備えている。主平面14,16は、互いに平行に延び、例えば約10ミクロンの許容誤差内において平坦性と平行性を示す条件にある平面である表面部を有している。
【0028】
上部主表面14の一部と第1の案内トラックアッセンブリ20は、第1の軸に沿って、レーザ光学アッセンブリステージなどの第1のステージ22の案内移動に結合している。下部主表面16の表面と第2の案内トラックアッセンブリ24は、第1の軸を横断する第2の軸に沿って、試料ステージなどの第2のステージ26の案内移動に結合している。もちろん、第1のステージ22と第2のステージ26は、任意の他の適切なステージでよく、レーザ光学アッセンブリと試料ステージの案内移動に制限されない。第1のステージ22は、レーザビーム焦点域制御サブシステム28を支承しており、これは基板12の下部主表面16の下に下方に垂下している走査レンズ30を備えている。第2のステージ26は、試料保持チャック32を支承している。ステージ22,26の案内移動は、チャック32により保持された試料の表面上の多様なレーザビーム加工位置に対して、走査レンズ30を移動させる。
【0029】
主平面14,16が、離間した水平面を画定するように、基板12は所定の場所に配設される。第1と第2の軸が、互いに垂直になり、各Y軸及びX軸を規定するように、案内トラックアッセンブリ20,24が位置している。このスプリット軸アーキテクチャにより、X軸及びY軸に沿った移動を分離して、許容されるより小さな自由度で、レーザビームとチャック32の位置決め制御を簡略化する。他の実施形態において、Z軸のスプリット軸アーキテクチャは、第1と第2の軸を横断する第3の軸に沿って、第3のステージを移動させる第3の案内トラックアッセンブリを備えている。
【0030】
第1の案内トラックアッセンブリ20は、上部主平面14の部分に固定された2つの離間した案内レール40と、第1のステージ22の底面44上に支承された2つのU字状案内ブロック42とを備えている。ガイドブロック42の各々は、嵌め合わされて(fits over)、加えられた推進力(motive force)に応じて、レール40の対応する1つに沿って摺動する。第1のステージ22のモータ駆動装置は、上部主表面22上に搭載され、各案内レール40の長さに沿った少なくとも1つのステージまたはリニアモータ46を備えている。各リニアモータ46は、推進力を加えて、その案内ブロック42を前進させて、その案内レール40に沿って移動させる。各リニアモータ46は、案内レール40の長さに沿って配設された、多数の磁石50の離間した直線配列を保持するU字状磁石トラック48を備えている。磁石50の直線配列の間に位置するフォーサコイルアッセンブリ52は、第1のステージ22の下部表面44に接続され、第1のステージ22を移動できるリニアモータ46の可動部材を構成している。好適なリニアモータ46としては、ペンシルベニア州ピッツバーグのAerotech社から入手可能なMTH480モデルがある。
【0031】
一対の第1の案内トラックアッセンブリ20の各レール案内40案内ブロック42は、転動体軸受アッセンブリであってもよい。案内トラックアッセンブリ20の代替物としては、平面空気軸受または真空予圧空気軸受がある。いずれかの空気軸受を用いる場合は、各案内レール42を取り外し、上部表面14の表面部を露出させて、案内表面を形成し、案内ブロック42の代わりに第1ステージ22の下部表面44に装着された、案内表面または置換する必要がある。真空予圧空気軸受は、軸受を案内面に押さえ付け、同様に、案内面から持ち上げる圧力口と吸引口とを有している。真空予圧軸受を用いるには、1つの平坦な案内表面が必要であり、一方、対向した軸受予圧空気軸受を用いるには、2つの平坦で平行な案内表面が必要である。適切な空気軸受としては、ピッツバーグのAstonのNew Way Machine Components社から入手可能な軸受がある。そのため、用いる案内トラックアッセンブリの種類に応じて、上部主表面14の表面部は、案内レール取付接触表面または軸受面非接触案内表面になり得る。
【0032】
第1のステージ22の底表面44に固定され、ガイドブロック42の隣接する異なる案内ブロックに位置する一対のエンコーダヘッド60は、ヨー(偏揺れ)角(yaw angle)と光学アッセンブリステージ22が移動した距離とを測定できる位置センサを有している。ガイドレール40、ガイドブロック42、およびステージ22,26の各々を駆動するリニアモータ46に近接して位置センサを配置することで、最小の共振効果で効率的なクローズドループフィードバック制御を可能にする。一対の停止部62は、基板12に装着された磁石(図示せず)により始動(tripped)されるエンコーダヘッド60に含まれるリミットスイッチに応じて、案内ブロック42の移動距離を制限する。一対のダッシュポット64は、光学アッセンブリステージ22の移動を制動、停止して、光学アッセンブリステージ22がガイドレール40を外れて行き過ぎることを防ぐ。
【0033】
ガイドレール40の間およびその長さに沿って基板12に形成された長円状スロット66は、第1のステージ22がガイドレール40に沿って移動するのに伴い、走査レンズ30が移動可能な開口を形成する。基板12の段形凹部(stepped recess)18領域に形成された一対の貫通穴(through hole)68は、上部平面14からエンコーダヘッド60へのサービスアクセスをオペレータに提供して、それらの整列を維持する。
【0034】
第2の案内トラックアッセンブリ24は、案内レール40、U字状の案内ブロック42、リニアモータ46、U字状の磁石トラック48、磁石50、フォーサコイルアッセンブリ52、および第1の案内トラックアッセンブリ20に関して上述したものに対応するエンコーダヘッド60を備えている。第2の案内トラックアッセンブリ24により支承されたリニアモータ46と部品は、ステージベッド72の表面70上に搭載されている。
【0035】
ステージ22,26とモータ46の機械的配置により、ステージ22,26の縦揺れ(pitch)と横揺れ(roll)が低減し、高速移動の精度を向上させることができる。ステージ22,26の反対側にモータ46を対称的に配置すると、ヨーの制御が改善される。ステージ22,26の側面に沿ってモータ46を配置すると、重要な部品と位置センサの熱分布を最小にできる。
【0036】
第2のガイドトラックアッセンブリ24と第2のステージ26は、段形凹部18に嵌合および固定されるチャック32を支承する。第2のステージ26は、所望または必要により、他のクランプ部品または装置を支承できる。ステージベッド72の表面70は、段形凹部18に隣接する下部主平面16の表面部74に抗して固定されている。チャック32は、下部主平面16の段形凹部18の一番奥の部分の下に位置し、第2のガイドトラックアッセンブリ24に沿って、第2のステージ26を移動させるリニアモータ46により加えられる推進力に応じてその下方に移動する。その他の適切な方法で、チャック32も第2のステージ26上に位置してよい。一対の停止部材76は、基板12に装着された磁石(図示せず)により始動(tripped)されるエンコーダヘッド60に含まれるリミットスイッチに応じて、案内ブロック42の移動距離を制限する。一対のダッシュポット78は、第2のステージ26の移動を制動(dampens)、停止して、ガイドレール40を外れて行き過ぎることを防ぐ。
【0037】
ガイドトラックアッセンブリ24の代替物は、軸受ランドまたは案内面(guideway)として、試料ステージヘッド72を用いる磁気予圧空気軸受である。上記で追加説明したように、磁気予圧空気軸受を用いることで、各ガイドレール40の取り外しを必要とし、ステージベッド72の表面部を露出させる。また、各ガイドブロック42を取り外し、その(多孔性(porous))軸受面を露出表面部の反対側に位置し、空気軸受けを搭載するスペースを第2のステージ26の底表面上に設ける。
【0038】
さらに図1,2を参照して説明する。2つのFRC(反力補償)モータ、または外乱減衰機構(disturbance attenuation mechanism)446は、第1の案内トラックアッセンブリ20のステージモータ46と同じ力面(force plane)に位置し、第1のステージ22を移動させるステージモータ46により第1のステージ22に加えられた力を相殺する。特に、FRCモニタ446は、Y軸力面と整列されている。2つのFRCモータまたは外乱減衰機構448も、第2の案内トラックアッセンブリ24のステージモータ46と同じ力面に位置し、第2のステージ26を移動させるステージモータ46により第2のステージ26上に加えられる力を相殺する。従って、FRCモータ448は、X軸力面と整列されている。FRCモータ446,448のモータ磁石450は、基板12に取り付けられている。動作時、FRCモータ446,448のモータコイル452は、システムフレーム(図示せず)に装着できる。モータコイル453は、システムフレームを介して地面に設置されている。
【0039】
FRCモータ446,448は、第1の案内トラックアッセンブリ20と第2のトラックアッセンブリ24のステージモータ46にそれぞれ可能な限り近く位置している。この配置戦略により、FRCモータ446,448とステージモータ46の間の各モーメントアームを低減または不要にできる。この配置により、各FRCモータ446,448を、対応するステージ力に直接結合および実質的または文字どおりゼロモーメーメントアームで反応することができる。この低減と除去により、個々のステージモータ46と対応するFRCモータ446,448の間の距離により発生された寄生力(parasitic forces)を低減できる。寄生力は、システムに不要な外乱を発生させることがある。FRCモータ446,448が、ステージモータ46に直接結合し、整列されているので、フォーサリアクション補償システムは、6自由度(six degrees of freedom)で、4つのFRCモータ(2つのFRCモータ446と2つのFRCモータ448)のみにより制御できる。FRCモータ446,448は、単相または三相構成のいずれか無鉄心(ironless)リニアモータでもよく、FRCモータ446,448の配置と用いた特別なステージ設計に基づいて、当業者がプログラム可能な制御アルゴリズムに従い、ステージモータ46に関して述べたのと同様に制御される。
【0040】
また、4つの振動絶縁装置454が、基板12の下部主平面16の4つの隅に装着され、システムフレームに取り付けることができる。振動絶縁装置454は、周囲振動と外乱からステージ22,26と絶縁する。
【0041】
図3〜5は、本願の別の実施形態に係る位置決めシステム200を示す。位置決めシステム200は、図1の基板12に関して説明したものと類似した材料(例えば、花崗岩)から成る基板212を備えている。基板212は、第1または上部表面214と第2または平坦面216を有している。表面214,216は、互いに平行に延在する平面である表面部を有している。
【0042】
位置決めシステム200は、主軸224と副軸226に沿って移動可能な単一のステージ222上に、加工物(図示せず)が坦持されている平面位置決めシステムである。上記のシステムは、主軸224と副軸226の進行力を調和して動かして、加工物を2次元に移動させることができる。そうすることが必要または望ましくないけれども、上記の平面位置決めシステムによっては、加工物を回転させることをもできる。
【0043】
この実施形態において、副軸226は、主軸224に装着されている。別の実施形態において、副軸226を引き離して、主軸224から独立させることができる。主軸224は、長部227と短部228を備えるL字状の構造(図3の点線で示す略図参照)である。
【0044】
図6A,6Bを参照して説明する。2つの離間した真空予圧空気軸受320a,320bが、L字状構造の底面306に固定されている。特に、この実施形態において、空気軸受320a,320bは、主軸224の長部227に固定される。空気軸受320a,320bは、上部表面214の軸受案内面314,315に自分自身を押し付け、軸受案内面314,315から自分自身をそれぞれ持ち上げる。
【0045】
空気軸受320aは、離間したランド部322a,322bに分割された圧縮ランド(pressure land)を有している。真空領域324は、ランド部322a,322bの各々の間に位置している。空気圧と真空圧を同時に加え、分散させることで、空気軸受320aの圧縮ランド322a,322bと、表面214の軸受案内面314のと間のスペースに空気薄膜を形成する。同様に、空気軸受320bは、離間したランド部323a,323bに分割された圧縮ランドを有している。ランド部323a,323bの各々の間に真空領域325が位置している。空気圧と真空圧を同時に加え、分散させることで、空気軸受320aの圧縮ランド部323a,323bと、表面214の軸受案内面315との間のスペースに空気薄膜を形成する。
【0046】
2つの離間した真空予圧空気軸受330a,330bも、L字状構造の短部228の内表面380に固定されている。空気軸受330a,330bは、基板212の垂直側面390上の軸受案内面338,339に自分自身を押し付け、軸受案内面338,339からそれぞれ自分自身を持ち上げる。空気軸受320a,320bと同様に、空気軸受330aは、離間したランド部332a,332bに分割された圧縮ランドを有している。真空領域334は、ランド部332a,332bの各々の間に位置している。空気圧と真空圧を同時に加え、分散させることで、空気軸受330aの圧縮ランド部332a,332bと、側面390の軸受案内面338との間のスペースに空気薄膜を形成する。また、空気軸受330bは、離間したランド部333a,333bに分割された圧縮ランドを有している。真空領域335は、ランド部333a,333bの各々の間に位置している。空気圧と真空圧を同時に加え、分散させることで、空気軸受330bの圧縮ランド333a,333bと、側面390の軸受案内面339との間のスペースに空気薄膜を形成する。従って、空気軸受330a,330bは、その移動の軸(「X軸」)に沿って、主軸224を案内する。
【0047】
図3を参照して説明する。ステージモータ、ここでは、リニアモータ232,234は、推進力を加え、その結果、軸受案内面の長さに沿って、主軸224の長部228と短部227両方の摩擦移動をほぼゼロにする。各リニアモータ232,234は、磁石の離間した直線配列を保持し、基板212に装着された磁石トラックを備え得る。磁石の直線配列の間に位置するリアモータ232の銅コイル部は、主軸224の短部228に接続できる。磁石の直線配列の間に位置するリニアモータ234の銅コイル部は、主軸234の長部227に接続できる。同時に、リアモータ232,234の銅コイル部は、主軸224を移動できる移動可能部材を構成する。適切なリニアモータ232,234としては、ペンシルベニア州ピッツバーグのAerotech社から入手可能なMTH480モデルがある。
【0048】
図6Aを参照して説明する。副軸226は、真空予圧空気軸受340を介して主軸224に装着されている。空気軸受340は、副軸226の垂直側面342に沿って位置しており、長部227の垂直側面344と接続している。同様に主軸224と副軸226も、ステージモータ240、この場合、リニアモータ(図3参照)により駆動される。空気軸受340は、垂直側面344の軸受案内面348に自分自身を押し付け、軸受案内面348から自分自身を持ち上げる。空気軸受340は、離間したランド部343a,343bに分割された圧縮ランドを有している。真空領域345が、ランド部343a,343bの間に位置している。空気圧と真空圧を同時に加え、分散させることで、空気軸受340aの圧縮ランド343a,343bと、垂直側面344の軸受案内面314との間のスペースに空気薄膜を形成する。
【0049】
空気軸受320a,320b,330a,330bおよび340用の好適な空気軸受は、ピッツバーグASTONのNew Way Machine Companies社から入手可能な真空予圧空気軸受製品系列番号S20xxxxである。もちろん、別の実施形態において、空気軸受320a,320b,330a,330bおよび340は、平面空気軸受、転動体軸受アッセンブリ、磁石予圧空気軸受、または任意の他の適切な代替物と置換可能である。
【0050】
ステージモータ240は、長軸224に装着された磁石の離間した直線配列を保持する磁石トラックを備え得る。特に、この実施形態において、リニアモータは、主軸224の短部227と長部228の両方に取り付けられる。磁石の直線配列の間に位置するステージモータ240の銅コイル部を、副軸226に接続できる。ステージモータ240の銅コイル部は、副軸226を移動可能な移動可能部材を構成する。
【0051】
図3〜5から最もよく分かるように、レーザ干渉計252が、鏡256からレーザビーム254を反射している間に、チャック250が加工物を支承する。上述したように、システム200が、主軸224と副軸226の進行力を調和して動かして、システム200が、チャック250を2次元移動させながら、レーザビーム254は、しっかりと固定位置に保持される。別の実施形態において、レーザビーム254を移動している間に、主軸と副軸224,226を保持できる。
【0052】
2つのFRCモータまたは外乱減衰機構546は、ステージモータ232,234と同じ力面に位置して、主軸224を移動させるステージモータ232,234によりステージ222に加えられる力を相殺する。特に、FRCモータ546は、X軸力面と整列している。また、2つのFRCモータまたは外乱減衰機構548も、ステージモータ240と同じ力面に位置して、モータ軸226を移動させるステージモータ240によりステージ222に加えられる力を相殺する。FRCモータ548は、Y軸力面と整列される。FRCモータ546は、ステージモータ252,254の出来るだけ近くに位置し、FRCモータ548は、ステージモータ240の出来るだけ近くに位置している。この配置戦略により、FRCモータ548とステージモータ232,234の間、およびFRCモータ548とステージモータ240の間のモーメントアームを低減または除去できる。また、この配置により、各FRCモータ546,548を対応するステージ力に直接結合および実質的または文字どおりゼロモーメントアームで反応することができる。モーメントアームを実質的に低減させることで、個別のステージモータ232,234と対応するFRCモータ546、および個別のステージモータ240と対応するFRCモータ546の間の距離により発生された寄生力を低減させる。寄生力は、システムに不要な外乱を発生させることがある。FRCモータ546が、ステージモータ232,234に直接結合し、整列し、反力補償システムは、4つのFRCモータ546,548のみによって、6自由度を制御でき、また、FRCモータ548が、ステージモータ240と直接結合し、整列しているので、FRCモータ546,548は、システムフレーム150の基部148から離間している。FRCモータ546,548は、単相または三相構成いずれかの無鉄心リニアモータでもよい。
【0053】
位置決めシステム10ないし200、または本願の他の実施形態を搭載可能な、レーザ加工システムの可能な種類のいくつかの実施例は、半導体ウェハまたは他の試料微細加工、ダイシング、および溶融加工システムを含む。ウェハダイシングシステムにおいて、ウェハ表面のスクライブ位置に沿ってレーザビームが移動する。ウェハ溶融加工システムにおいて、パルスレーザビームは、溶融のウェハ位置表面に対して移動して、レーザパルスが、溶融材料を部分的または完全に除去するように、ウェハ表面位置を照射する。
【0054】
本開示の精神と範囲から逸脱することなく、単段構成、二段構成、または三段構成で本発明の実施形態を実施できることを認識すべきである。またさらに、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、1つ以上のステージ、つまり、全ステージまたは単一ステージの全ステージ以下、二重ステージまたは三段構成で実施できることを認識すべきである。
【0055】
図7を参照して説明する。市販のステージ設計上の反力補償モータ位置を示す。この図示は、市販のステージ設計で用いられる個別のステージモータ(MS)に対して、補償モータ(CM)の非平面配置を説明するものである。この市販のステージ設計の配置により、寄生力を発生する可能性がある。この寄生力は、個々のステージの移動の対応する面から離間して位置した補償モータMCと個々のステージを駆動する対応するステージモータMSの間のモーメントアームの存在により、システム中に不要な外乱を発生させる。この構成は、6自由度の移動を制御して、ステージを結合させる追加の補償モータを通常必要とするが、コストが高くなり、メンテナンス費用が増加し、システムの複雑性が増大する結果になる。
【0056】
図8を参照して説明する。システムの外乱減衰と本発明の一実施形態に係る反力補償とを比較するテストデータを示す。グラフの線100は、反力補償を行った(turned on)テストデータを示し、グラフの線102は、反力補償を行わなかった(turned off)テストデータを示す。
【0057】
いくつかの実施形態に関して本発明を説明したが、本発明は、開示した実施例に制限されておらず、それどころか、各種変更例と添付クレームの範囲に含まれる等価な構成の包含を意図することを理解すべきである。この範囲は、法律で許されている上記の全ての変更例と等価な構成を包合するように、最も広い解釈に一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームが、ビーム軸に沿って伝播して、支持部に置かれた目標試料に入射し、前記支持部が、前記レーザビームと前記目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動させて前記目標試料上の選択された位置に前記レーザビームを位置決めする少なくとも1つのステージモータを有する位置決めシステムに動作可能に接続したレーザ加工システムであって、
対応するステージモータと共通の力面に位置する反力補償モータを備え、
これにより、前記少なくとも1つの反力補償モータと前記対応するステージモータの間のモーメントアームを低減させ、前記反力補償モータをステージ力に直接結合し、実質的にゼロモーメントアームで前記ステージ力と反応することができる
ことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反力補償モータは、前記対応するステージモータの出来るだけ近くに位置すること特徴とする請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反力補償モータは、システムフレーム基部から離間していること特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反力補償モータは、
前記反力補償モータが、前記ステージモータに直接結合し整列するように、6自由度を制御する4つの反力補償モータのみをさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの反力補償モータは、無鉄心モータであることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの反力補償モータが、リニアモータであることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工システム。
【請求項7】
レーザビームが、ビーム軸に沿って伝播して、支持部に置かれた目標試料に入射し、前記支持部が、少なくとも1つの平面ステージと、前記レーザビームと前記目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動させて加工表面上の選択された位置に前記レーザビームを位置決めする少なくとも1つのステージモータとを有する位置決めシステムに動作可能に接続したレーザ加工システムであって、
前記平面ステージを移動させる前記少なくとも1つのステージモータにより前記少なくとも1つの平面ステージに加えられる力を相殺する少なくとも1つの外乱軽減機構を備え、
前記少なくとも1つの機構が、対応するステージモータと共通の力面、および前記対応するステージモータの出来るだけ近くに位置しており、
これにより、前記少なくとも1つの機構と前記対応するステージモータとの間のモーメントアームを低減させ、前記少なくとも1つの機構をステージ力に直接結合し、実質的にゼロモーメントアームで前記ステージ力と反応することができることを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項8】
前記外乱減衰機構のそれぞれは、システムフレームの基部から離間していることを特徴とする請求項7に記載のレーザ加工システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの外乱減衰機構は、
前記反力補償モータが、前記ステージモータと直接結合し整列するように、6自由度を制御する4つの反力補償モータのみをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工システム。
【請求項10】
前記外乱減衰機構のそれぞれが、無鉄心モータ、リニアモータ、無鉄心リニアモータ、単相モータ、三相モータ、無鉄心単相モータ、無鉄心三相モータ、リニア単相モータ、リニア三相モータ、無鉄心リニア単相モータ、および無鉄心リニア三相モータから成るグループから選択される反力補償モータを備えることを特徴とする請求項7または8に記載のレーザ加工システム。
【請求項11】
レーザビームが、ビーム軸に沿って伝播して、支持部に置かれた目標試料に入射し、前記支持部が、前記レーザビームと前記目標試料の少なくとも1つを互いに対して移動させて前記目標試料上の選択された位置に前記レーザビームを位置決めする少なくとも1つのステージモータを有する位置決めシステムに動作可能に接続したレーザ加工方法であって、
ステージモータを用いて、前記目標試料に対して前記レーザビームを位置決めることと、
前記ステージモータとの共通面上の前記少なくとも1つの反力補償モータの位置により、前記少なくとも1つの反力補償モータをステージ力と直接結合し、実質的にゼロモーメントアームで前記ステージ力と反応できることで、前記少なくとも1つの反力補償モータと前記ステージモータの間のモーメントアームを低減させることと
を含むことを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−522373(P2012−522373A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502068(P2012−502068)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025591
【国際公開番号】WO2010/110990
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】