説明

反射体付基板の製造方法及び製造装置

【課題】反射体付基板を製造する際に環境に与える負荷を抑制して、反射体付基板を安価に製造する。
【解決手段】上型46の下面に基板本体2を固定し、キャビティ50を流動性樹脂51によって満たされた状態にし、上型46と下型47とを型締めして基板本体2の所定の面を流動性樹脂51に浸漬し、流動性樹脂51を硬化させて硬化樹脂53を形成し、上型46と下型47とを型開きし、成形済基板52を上型46から取り外す。下型47には基板本体2の領域4にそれぞれ対応する領域が設けられ、キャビティ50には複数の凹部48と複数の凹部48同士を連通する空間49とが設けられる。複数の凹部48において硬化樹脂53からなる反射体54を形成するとともに空間49において硬化樹脂53からなる薄肉部55を形成し、成形済基板52から薄肉部55を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子部品を製造する際に使用される反射体付基板を製造する、反射体付基板の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願書類を通じて、「光電子部品」という用語は、発光又は受光という機能の少なくともいずれかを有し製品として取り扱われる電子部品を意味する。製品としての電子部品はしばしばパッケージと呼ばれる。光電子部品の例として、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)等のパッケージが挙げられる。「光素子」という用語は、基板(反射体付基板を含む)に装着されるチップ状の電子部品を意味する。光素子には、LEDチップ、LDチップ等が含まれる。以下、光素子としてLEDチップを、光電子部品としてLEDパッケージをそれぞれ例に挙げて説明する。
【0003】
図1(1)は反射体付基板の第1の例を示す断面図、図1(2)〜(4)はその反射体付基板を使用して光電子部品を製造する工程を順に示す部分断面図である。本出願書類に含まれるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0004】
図1(1)に示されるように、反射体付基板1は基板本体2を有する。基板本体2としては、リードフレームのように金属を基材とするもの、合成樹脂とガラス布との複合材を基材とするもの、セラミックスを基材とするもの等が使用される。基板本体2は、直交する仮想的な境界線3によって複数の格子状の領域4に区切られている。各領域4は、長方形(正方形を含む。以下同じ。)の平面形状を有する。反射体付基板1は、それぞれ図の手前〜奥の方向に沿って延びる5本の境界線3によって、図の左右方向に並ぶ4つの列に区切られている。また、反射体付基板1は、それぞれ図の左右方向に沿って延びる5本の境界線(図示なし)によって、図の手前〜奥の方向に並ぶ4つの列に区切られている。したがって、反射体付基板1は、16(=4×4)個の領域4を有する。
【0005】
各境界線3において、樹脂材料からなる反射体5が形成されている。反射体5は台形の断面形状を有する。各領域4において、反射体5は、長方形から円を切り抜いた後の形の平面形状を有する。各領域4において、反射体5に囲まれた凹部6における基板本体2の表面7に、光素子(図示なし)が装着される。反射体5の内壁面である斜面8は、光素子(図示なし)が生成した光を上方に向かって反射する反射面として機能する。
【0006】
なお、反射体付基板1を各境界線3に沿って切断して、各領域4に相当する16個の反射体付基板を製造することもできる。各領域4に相当する16個の反射体付基板は、光電子部品の大型のパッケージを製造する場合に適している。
【0007】
以下、図1(2)〜(4)を参照して、光電子部品を製造する一般的な工程を順に説明する。図1(2)には、凹部6における基板本体2の表面7に装着された光素子9を有する封止前基板10が示されている。まず、ダイボンダを使用して、各領域4の凹部6における基板本体2の表面7に光素子9を装着する。次に、ワイヤボンダ又はフリップチップボンダを使用して、光素子9の電極と基板本体2の電極とを導体(図示なし)によって電気的に接続して、封止前基板10を製作する。
【0008】
次に、図1(2)に示されているように、上型11と下型12とを少なくとも有する成形型を準備する。吸着、クランプ等の周知の手段によって上型11の下面に封止前基板10を固定する。下型12には、流動性樹脂によって充填される空間であるキャビティ13が設けられている。キャビティ13には、各領域4にそれぞれ対応する窪み14が設けられている。
【0009】
次に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の透光性を有する熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂(図1(3)の流動性樹脂15参照)によって、図1(2)に示されたキャビティ13を満たされた状態にする。この工程においては、粒状、粉状、塊状、シート状等の固体の樹脂材料をキャビティ13に供給する。成形型に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、固体の樹脂材料を加熱して溶融させる。これにより、溶融樹脂からなる流動性樹脂(図示なし)によってキャビティ13を満たされた状態にする。この工程では、ディスペンサを使用して、常温で液状である樹脂材料(液状樹脂)をキャビティ13に供給することもできる。更に、蛍光体の微小な粒が混入された樹脂材料を使用することもできる。
【0010】
次に、図1(3)に示されているように、上型11と下型12とを相対的に移動させて上型11と下型12とを型締めする。このことによって、キャビティ13に満たされた流動性樹脂15に反射体5と光素子9とを浸漬する(漬ける)。引き続き流動性樹脂15に圧力(型締め圧)と熱とを加えることによって、流動性樹脂15を硬化させる。このことによって、図1(4)に示された硬化樹脂16が圧縮成形によって形成される。なお、トランスファ成形、射出成形を使用して硬化樹脂16を形成することもできる。図1(3)には、上型11を下降させる例が示されている。上型11と下型12との型締めはこの例に限定されない。例えば、下型12を上昇させることもできる。
【0011】
次に、図1(4)に示されているように、上型11と下型12とを型開きする。この状態で、上型11の下面には封止済基板17が固定されている。硬化樹脂16は、光素子9を完全に覆う平板部18と、凸レンズとして機能するレンズ部19とを有する。封止済基板17は、それぞれ基板本体2の領域4に対応するとともに光電子部品に対応する領域20と、領域20の集合体の外に位置する不要部21とを有する。
【0012】
次に、図1(4)に示された状態において上型11から封止済基板17を取り外す。次に、ダイサ、レーザ加工機、ウォータージェット加工機等の周知の切断手段を使用して、各境界線3に沿って封止済基板17を切断する。このことにより、封止済基板17を、各領域20にそれぞれ相当する個々の光電子部品と不要部21とに分割する。個々の光電子部品は、図2(1)及び図2(2)に示された光電子部品22に相当する。
【0013】
図2(1)、(2)は光電子部品の第1の例を示す断面図及び平面図、図2(3)、(4)は光電子部品の第2の例を示す断面図及び平面図である。図2(1)、(3)は、それぞれ図(2)、(4)のA−A断面図である。図2(1)、(2)に示された光電子部品22は、図1(4)に示された各領域20を単位として封止済基板17を切断することによって、製造される。この場合には、封止済基板17(図1(4)参照)を、図の左右方向に沿って並ぶ4つの部分と図の手前〜奥の方向に沿って並ぶ4つの部分とに分割する。したがって、図1(4)に示された封止済基板17から、16(=4×4)個の光電子部品が製造される。
【0014】
図2(3)、(4)に示された光電子部品23は、図2(4)のX方向とY方向とに沿ってそれぞれ2個ずつ並ぶ4個の領域20を単位として、図1(4)に示された封止済基板17を境界線3に沿って切断することによって製造される。この場合には、封止済基板17(図1(4)参照)を、図の左右方向に沿って並ぶ2つの部分と図の手前〜奥の方向に沿って並ぶ2つの部分とに分割する。したがって、図1(4)に示された封止済基板17から、4(=2×2)個の光電子部品が製造される。
【0015】
製品としての光電子部品22、23は、次の構成要素を有する。それらの構成要素は、基板24と、反射体25と、光素子9と、硬化樹脂26とである。硬化樹脂26は平板部27とレンズ部28とを有する。光電子部品22、23の側面は、図1(4)に示された封止済基板17を切断した際の切断面29によって構成される。
【0016】
図1(4)において最も外側に位置する4本の境界線3に沿って、封止済基板17を切断することもできる。図1(4)においてこれらの4本の境界線3は、両端に描かれ図の手前〜奥の方向に沿って延びる2本と、図の最も手前と最も奥とにおいてそれぞれ左右方向に沿って延びる2本(図示なし)とによって構成される。これら4本の境界線3に沿って封止済基板17を切断して、封止済基板17から各不要部21を除去する。このことによって、光電子部品の第3の例として、16(=4×4)個の領域20を有する1個の光電子部品(図示なし)を製造することができる。
【0017】
本出願書類においては、封止済基板17を境界線3に沿って切断することによって1個又は複数個の光電子部品を製造することを、個片化(singulation)と呼ぶ。また、反射体付基板1を境界線3に沿って切断することによって1個又は複数個の反射体付基板を製造することも、個片化と呼ぶ。
【0018】
さて、従来の方法によれば、反射体付基板は、金型に設けられたキャビティに対して白色エポキシ樹脂等の樹脂を金型の注入孔から注入し、その樹脂を硬化させることによって製造される(特許文献1参照)。したがって、注入孔と注入孔に至るまでの樹脂流路(通常、ランナ、スプルー等と呼ばれる)とにおいて硬化した樹脂は、製品である電子部品には何ら寄与することなく廃棄される。従来の別の方法によれば、反射体付基板は、リードフレームの第1面をエッチングして凹凸形状を形成し、その凹凸形状に樹脂モールド加工によって樹脂を充填し、その後にリードフレームの第2面をエッチングするという工程によって製造される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−188422号(第7頁、第7図)
【特許文献2】特開2011−77366号(第8〜9頁、第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
注入孔からキャビティに注入した樹脂を硬化させる方法は次の問題を有する。第1に、廃棄される硬化樹脂が相当な量存在するので、環境に与える負荷が大きい。第2に、廃棄される硬化樹脂が相当な量存在することから、光電子部品を安価に製造することが困難である。
【0021】
リードフレームをエッチングする方法は次の問題を有する。第1に、エッチングにおいてエッチャント(エッチング液)を使用することによって廃液が発生するので、環境に与える負荷が大きい。第2に、フォトレジストの塗布、露光、エッチングという工程を繰り返すこと、及び、樹脂モールド加工を行うことによって多くの工数を必要とするので、光電子部品を安価に製造することが困難である。
【0022】
解決しようとする第1の課題は、反射体付基板を製造する際に環境に与える負荷が大きいことである。第2の課題は、反射体付基板を安価に製造することが困難であることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題を解決するために、本発明に係る反射体付基板の製造方法は、上型と複数の凹部からなるキャビティが設けられた下型とを有する成形型を使用して、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造方法であって、上型の下面に基板本体を固定する工程と、キャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にする工程と、上型と下型とを型締めすることによって所定の部分を流動性樹脂に浸漬する工程と、流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、上型と下型とを型開きする工程と、硬化樹脂からなる反射体が形成された基板本体からなる成形済基板を上型から取り外す工程とを備えるとともに、下型には第1の領域にそれぞれ対応する第2の領域が設けられており、第2の領域のそれぞれには凹部が設けられており、第2の領域における凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、凹部のそれぞれは第2の領域同士の境界線において連通しており、浸漬する工程では、下型においてキャビティの外側に設けられた樹脂溜まりに流動性樹脂のうち余分な量を流し込み、かつ、互いに連通している凹部のそれぞれに流動性樹脂を均等に満たし、硬化樹脂を形成する工程では、樹脂溜まりにおいて硬化樹脂からなる不要樹脂を形成し、かつ、第1の領域における所定の面のそれぞれにおいて所定の部分以外の部分を露出させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る反射体付基板の製造方法は、上述の製造方法において、取り外す工程の後に成形済基板から不要樹脂を除去する工程を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る反射体付基板の製造方法は、上型とキャビティが設けられた下型とを有する成形型を使用して、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造方法であって、上型の下面に基板本体を固定する工程と、キャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にする工程と、上型と下型とを型締めすることによって所定の面を流動性樹脂に浸漬する工程と、流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、上型と下型とを型開きする工程と、硬化樹脂からなる反射体が形成された基板本体からなる成形済基板を上型から取り外す工程とを備えるとともに、下型には第1の領域にそれぞれ対応する第2の領域が設けられており、キャビティは、複数の凹部と複数の第2の領域のすべてを平面視して含みかつ複数の凹部同士を連通する連通部とを有し、第2の領域のそれぞれには凹部が設けられており、第2の領域における凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、硬化樹脂を形成する工程では、複数の凹部において硬化樹脂からなる反射体を形成するとともに連通部において硬化樹脂からなる薄肉部を形成し、取り外す工程の後に成形済基板から薄肉部を除去することによって第1の領域のそれぞれにおいて所定の部分以外の部分を露出させる工程を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る反射体付基板の製造方法は、上述の製造方法において、上型と下型との間に離型フィルムを配置する工程と、平面視して下型の外側において離型フィルムを挟む工程と、離型フィルムを挟んだ状態で下型の上面に離型フィルムを密着させる工程と、下型に設けられた吸引路を使用して離型フィルムを吸引することによって離型フィルムをキャビティにおける型面に密着させる工程とを備え、満たされた状態にする工程では、離型フィルムがキャビティにおける型面に密着した状態でキャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にすることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る反射体付基板の製造方法は、上述の製造方法において、少なくともキャビティを含む空間を成形型の外部から遮断することによって閉空間を形成する工程と、満たされた状態にする工程から浸漬する工程までの過程の少なくとも一部分において閉空間を減圧する工程とを備えることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る反射体付基板の製造装置は、上型と複数の凹部からなるキャビティが設けられた下型とを含む成形型を有し、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造装置であって、上型の下面に基板本体を固定する固定手段と、上型と下型とを相対的に移動させることによって上型と下型とを型締め及び型開きする駆動手段と、下型において第1の領域のそれぞれに対応して設けられた第2の領域と、下型においてキャビティの外側に設けられた樹脂溜まりとを備えるとともに、凹部のそれぞれは第2の領域のそれぞれにおいて設けられ、第2の領域における凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、凹部のそれぞれは第2の領域同士の境界線において連通し、上型と下型とが型締めされることによって、上型と下型とが型開きされた状態において互いに連通している凹部のそれぞれに均等に満たされた流動性樹脂に所定の部分が浸漬され、かつ、流動性樹脂のうち余分な量が樹脂溜まりに流れ込み、上型と下型とが型締めした状態において流動性樹脂が硬化することによって形成された硬化樹脂のうち凹部のそれぞれにおいて硬化した硬化樹脂が反射体のそれぞれを構成し、第1の領域のそれぞれにおいて所定の部分以外の部分が露出することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る反射体付基板の製造装置は、上述の製造装置において、樹脂溜まりにおいて硬化した硬化樹脂からなる不要樹脂を除去する除去手段を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る反射体付基板の製造装置は、上型とキャビティが設けられた下型とを含む成形型を有し、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造装置であって、上型の下面に基板本体を固定する固定手段と、上型と下型とを相対的に移動させることによって上型と下型とを型締め及び型開きする駆動手段と、下型において第1の領域のそれぞれに対応して設けられた第2の領域と、第2の領域のそれぞれに設けられた凹部と、複数の第2の領域のすべてを平面視して含みかつ複数の凹部同士を連通する連通部とを備えるとともに、キャビティは凹部と連通部とを含み、凹部のそれぞれの平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、上型と下型とが型締めされることによって、上型と下型とが型開きされた状態においてキャビティに満たされた流動性樹脂に所定の面が浸漬され、上型と下型とが型締めされた状態において流動性樹脂が硬化することによって形成された硬化樹脂のうち複数の凹部において硬化した硬化樹脂が反射体を構成し、かつ、複数の凹部同士の間における連通部において硬化した硬化樹脂が薄肉部を構成し、薄肉部を除去する除去手段を備え、薄肉部が除去された後に第1の領域のそれぞれにおいて所定の部分以外の部分が露出することを特徴とする。
【0031】
本発明に係る反射体付基板の製造装置は、上述の製造装置において、上型と下型との間に離型フィルムを配置する配置手段と、離型フィルムを挟む挟持手段と、挟まれた離型フィルムを下型の上面に密着させる密着手段と、下型の上面に密着した離型フィルムを吸引することによって離型フィルムをキャビティにおける型面に密着させる吸引手段とを備えるとともに、離型フィルムをキャビティにおける型面に密着させた状態でキャビティに流動性樹脂が満たされることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る反射体付基板の製造装置は、上述の製造装置において、少なくともキャビティを含む空間を成形型の外部から遮断された閉空間にする遮断手段と、閉空間を減圧する減圧手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、キャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にして、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面をキャビティにおける流動性樹脂に浸漬し、所定の面における所定の部分に硬化樹脂からなる反射体を形成する。これにより、第1に、キャビティに至るまで流動性樹脂が流動する樹脂流路を必要としないので、廃棄する硬化樹脂の量を低減することができる。第2に、フォトレジストの塗布、露光、エッチングという工程を繰り返すことなく、かつ、エッチング液を使用することなく、樹脂成形によって反射体を形成する。したがって、環境に与える負荷を低減するとともに、反射体付基板を安価に製造することができる。
【0034】
また、本発明によれば、下型において複数の凹部からなるキャビティの外側に設けられた樹脂溜まりに流動性樹脂のうち余分な量を流し込み、かつ、互いに連通している凹部のそれぞれに流動性樹脂を均等に満たした状態で、流動性樹脂を硬化させる。これにより、基板本体に設けられた複数の第1の領域における所定の面のそれぞれにおいて、所定の部分以外の部分を露出させる。したがって、反射体以外の部分が確実に露出した反射体付基板を製造することができる。
【0035】
また、本発明によれば、キャビティが有する複数の凹部において硬化樹脂からなる反射体を形成するとともに、キャビティが有する連通部において硬化樹脂からなる薄肉部を形成する。成形済基板から薄肉部を除去することによって、基板本体に設けられた複数の第1の領域のそれぞれにおいて所定の部分以外の部分を露出させる。したがって、反射体以外の部分が確実に露出した反射体付基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1(1)は反射体付基板の第1の例を示す断面図、図1(2)〜(4)はその反射体付基板を使用して光電子部品を製造する工程を示す部分断面図である。
【図2】図2(1)、(2)は光電子部品の第1の例を示す断面図及び平面図であり、図2(3)、(4)は光電子部品の第2の例を示す断面図及び平面図である。
【図3】図3(1)〜(3)は基板本体に硬化樹脂からなる反射体を形成して成形済基板を製作するまでの工程を示す部分断面図、図3(4)は成形済基板を個片化して製造された反射体付基板の第2の例を示す断面図である。
【図4】図4(1)〜(3)は基板本体に硬化樹脂を形成して薄肉部付の成形済基板を製作するまでの工程を示す部分断面図、図3(4)は薄肉部付の成形済基板を示す断面図である。
【図5】図5(1)、(2)は、成形型を型開きした状態から、挟んだ離型フィルムを下型の上面に密着させる状態までを示す部分断面図である。
【図6】図6(1)、(2)は、離型フィルムを吸引して離型フィルムによって下型の型面を覆った後にキャビティに流動性樹脂を供給した状態と、成形型を型締めした状態とをそれぞれ示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
圧縮成形を使用して、基板本体の表面に硬化樹脂からなる反射体を形成する。第1の実施例としては、型締めすることによって、キャビティに供給した流動性樹脂のうち余分な量を、下型に形成された樹脂溜まりに流し込む。第2の実施例としては、それぞれ硬化樹脂からなる反射体と反射体同士を連通する薄肉部とを成形して成形済基板を製作し、成形済基板から薄肉部を除去する。第3の実施例としては、離型フィルムと真空成形(減圧成形)とを併用して、基板本体の表面に硬化樹脂からなる反射体を形成する。
【0038】
(実施例1)
図3を参照して、反射体付基板を製造する製造装置を説明する。図3(1)に示されているように、製造装置には、上型30と下型31とを少なくとも有する成形型が設けられている。下型31の上面側には、基板本体2の各領域4にそれぞれ対応する領域32において、凹部からなるキャビティ33が設けられている。各領域32において、各キャビティ33の凹部は、台形の断面形状を有する。各領域32において、各キャビティ33の凹部は、長方形の内側から円を切り抜いた後の形の平面形状を有する。隣接するキャビティ33の凹部同士は、基板本体2の境界線3に対応する部分において直接連通している(直接つながっている)。下型31の上面側において、各領域32の集合体の外に、最も外側のキャビティ33に連通する凹部からなる樹脂溜まり34が形成されている。
【0039】
各キャビティ33の凹部の平面形状は、長方形の内側から閉じた図形を切り抜いた後の形であればよい。閉じた図形としては、楕円、多角形、複数の曲線によって構成された図形等が挙げられる。
【0040】
図3を参照して、反射体付基板を製造する製造工程を説明する。まず、図3(1)に示されているように、上型30と下型31とを少なくとも有する成形型と、複数の領域4を有する基板本体2とを準備する。吸着、クランプ等の周知の手段によって、上型30の下面に基板本体2を固定する。基板本体2が貫通孔を有する場合(例えば、基板本体2がリードフレームである場合)には、基板本体2における非封止面(図では上面)に、樹脂ばりを防止するための粘着テープを貼ってもよい。
【0041】
次に、熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂(図3(2)の流動性樹脂35参照)によって各キャビティ33を満たされた状態にする。この工程においては、粒状、粉状、塊状、シート状等の固体の樹脂材料をキャビティ33に供給する。成形型に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、固体の樹脂材料を加熱して溶融させる。これにより、溶融樹脂からなる流動性樹脂(図示なし)によってキャビティ33を満たされた状態にする。この工程では、ディスペンサを使用して、常温で液状である樹脂材料(液状樹脂)をキャビティ33に供給することもできる。更に、反射体の反射性能を向上させるために、酸化チタン等の微小な粒が混入された樹脂材料を使用することもできる。
【0042】
次に、図3(2)に示されているように、上型30と下型31とを相対的に移動させて上型30と下型31とを型締めする。このことによって、キャビティ33(図3(1)参照)に満たされた流動性樹脂35に、基板本体2の表面(図では下面)における所定の部分を浸漬する(漬ける)。また、上型30と下型31とを型締めすることによって、キャビティ33に供給した流動性樹脂35のうち余分な量を、下型31に形成された樹脂溜まり34に流し込む。引き続き流動性樹脂35に圧力(型締め圧)と熱とを加えることによって、流動性樹脂35を硬化させる。このことによって、図3(3)に示されているように、基板本体2の表面(図では下面)に硬化樹脂36を形成して成形済基板37を製作する。
【0043】
次に、図3(3)に示されているように、上型30と下型31(図3(2)参照)とを型開きする。この状態で、上型30の下面には成形済基板37が固定されている。基板本体2の表面(図では下面)には、いずれも硬化樹脂36からなる反射体38と不要樹脂39とが形成されている。成形済基板37における各領域40は、境界線41によって区切られており、基板本体2における各領域4(図3(1)参照)にそれぞれ対応する。
【0044】
次に、図3(3)に示された状態において上型30から成形済基板37を取り外す。その後に、研磨、剥離等の適当な手段を使用して成形済基板37から不要樹脂39を除去する。このことによって、図1(1)に示された反射体付基板1が完成する。不要樹脂39を除去する手段を製造装置に内蔵することもできる。
【0045】
以下、本実施例の変形例を、図3(3)、(4)を参照して説明する。図3(4)における符号の一部は、図1(1)及び図2(1)における符号に対応する。第1の変形例として、取り外された成形済基板37を、すべての境界線41に沿って切断する。このことにより、図3(4)に示すように、1個の領域40に相当する反射体付基板42を合計16(=4×4)個製造することができる。この場合には、図3(3)の封止済基板37において、図3(4)の反射体付基板42に対応する領域40が、図の左右方向と手前〜奥の方向とに沿ってそれぞれ4つずつ並ぶ。1個の領域40に相当する1個の反射体付基板42は、光電子部品の大型のパッケージを製造する場合に適する。
【0046】
第2の変形例として、取り外された成形済基板37の1辺とこれに隣接する辺とにおいて、それぞれ両端と真ん中との3本の境界線41に沿って、成形済基板37を2列に切断する。このことによって、4(=2×2)個の領域40に相当する反射体付基板を合計4(=2×2)個製造することができる。
【0047】
第3の変形例として、取り外された成形済基板37を、最も外側に位置する4本の境界線41に沿って切断する。これら4本の境界線41に沿って成形済基板37を切断して、成形済基板37から不要部43(図3(3)参照)を除去する。このことによって、16(=4×4)個の領域40に相当する1個の反射体付基板(図示なし)を製造することができる。
【0048】
本実施例によれば、圧縮成形によって、基板本体2の表面(図では下面)に硬化樹脂36からなる反射体38を形成する。このことによって、硬化樹脂36のうち廃棄される量を、不要樹脂39に相当するごく少量に減らすことができる。したがって、第1に、環境に与える負荷を抑制することができる。第2に、供給した樹脂材料の大部分が反射体38として使用されるので、反射体付基板1(図1(1)参照)を安価に製造することができる。
【0049】
加えて、キャビティ33に供給した流動性樹脂35のうち余分な量を、下型31に形成された樹脂溜まり34に流し込む。このことにより、反射体38に囲まれた凹部44における基板本体2の表面45において、硬化樹脂36からなるばりの発生を抑制するので、表面45を確実に露出させることができる。表面45にばりが発生した場合には、そのばりを除去する必要がある。したがって、ばりの発生を抑制することによって、硬化樹脂36のうち廃棄される部分をいっそう減らすことができる。
【0050】
なお、成形済基板37から不要樹脂39を除去する実施例を説明した。また、第3の変形例として、図3(3)に示された成形済基板37から、不要樹脂39が形成された不要部43を除去する例を説明した。これに限らず、不要樹脂39の寸法・形状が許容できるものであれば、図3(3)に示された成形済基板37を1個の反射体付基板として使用することもできる。
【0051】
(実施例2)
図4を参照して、反射体付基板を製造する製造装置を説明する。図4(1)に示されているように、製造装置には、上型46と下型47とを少なくとも有する成形型が設けられている。下型47の上面の側には、基板本体2の各領域4にそれぞれ対応する凹部48が形成されている。隣接する凹部48同士は、基板本体2の境界線3に対応する部分において直接連通している(直接つながっている)。凹部48は、図3(1)に示されたキャビティ33と同様の形状を有する。加えて、下型47の上面の側には、上型46と下型47とが型締めした状態において流動性樹脂がごく薄く存在することができる空間49が、各凹部48を連通するようにして形成されている。空間49は、平面視して、下型47において基板本体2の各領域4にそれぞれ対応する部分のすべてを含む。キャビティ50は各凹部48と空間49とを含む。
【0052】
図4を参照して、反射体付基板を製造する製造工程を説明する。以下の説明では、実施例1と共通する部分については適宜説明を省略する。まず、図4(1)に示すように、上型46の下面に基板本体2を固定する。
【0053】
次に、熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂(図4(2)の流動性樹脂51参照)によってキャビティ50を満たされた状態にする。この工程においては、粒状、粉状、塊状、シート状等の固体の樹脂材料、又は、液状樹脂をキャビティ50に供給する。本実施例では、下型47の各凹部48と各凹部48以外の型面とに対して樹脂材料を供給する。したがって、各凹部48以外の型面の上にも樹脂材料を薄く供給する。
【0054】
次に、図4(2)に示すように、上型46と下型47とを型締めする。その後に、流動性樹脂51に圧力(型締め圧)と熱とを加えることによって、流動性樹脂51を硬化させる。連通路として機能する空間49によって、各凹部48と空間49とを含むキャビティ50に流動性樹脂51を均等に満たすことができる。
【0055】
次に、図4(3)に示すように、上型46と下型47(図4(2)参照)とを型開きする。この状態で、上型46の下面には成形済基板52が固定されている。基板本体2の表面(図では下面)には、いずれも硬化樹脂53からなる、反射体54と薄肉部55とが形成されている。薄肉部55は、基板本体2が有する領域4のすべてを平面視して含み、かつ、複数の反射体54同士を連通する。本実施例では、薄肉部55が確実に形成される範囲内において薄肉部55ができるだけ薄くなるようにして、下型47における空間49の深さを決定する。言い換えれば、薄肉部55が確実に形成されかつできるだけ薄くなるようにして、下型47における空間49はできるだけ浅く形成される。
【0056】
次に、図4(3)に示された状態において上型46から成形済基板52を取り外す。図4(4)に、取り外された成形済基板52、すなわち薄肉部55付の成形済基板52を示す。
【0057】
次に、図4(4)に示された成形済基板52から薄肉部55を除去する。薄肉部55を除去するには、高圧水による加工、レーザによる加工、電解法、乾式ブラスト加工、湿式ブラスト加工等の周知の加工を使用することができる。これらの加工によって、薄肉部55が除去されるまで、平面視して硬化樹脂53の全面において同じ除去率でもって硬化樹脂53を除去する。薄肉部55を除去することによって、図1(1)に示された反射体付基板1が完成する。なお、マスキング治具を使用して反射体54を覆った状態で、薄肉部55のみを除去することもできる。薄肉部55を除去する手段を製造装置に内蔵することもできる。
【0058】
本実施例によれば、実施例1と同じ効果が得られる。加えて、硬化樹脂53からなる薄肉部55を除去することによって、反射体54に囲まれた部分において基板本体2の表面(図3(3)の表面45参照)を確実に露出させることができる。なお、実施例1に比較すると、硬化樹脂53からなる薄肉部55が除去されるので、廃棄される硬化樹脂53の量が増える。しかし、薄肉部55をできるだけ薄く意図的に形成するので、廃棄される硬化樹脂53の増加を最小限にとどめることができる。
【0059】
本実施例は、複数の凹部48を含むキャビティ50の全体に樹脂材料を供給する。一方で、実施例1によれば、複数の凹部からなるキャビティ33のそれぞれに樹脂材料を供給する(図3(1)、(2)を参照)。したがって、本実施例は、次の場合に有効である。第1に、基板本体2に多数の領域4が設けられ、各領域4の平面積が小さい場合である。第2に、各領域4に対応する反射体54の体積が小さく、各領域4単位において必要な樹脂材料の量が少ない場合である。これらの場合において、本実施例によれば、キャビティ50に供給する樹脂材料の供給量を高精度に制御する必要がなくなる。したがって、本実施例によれば、樹脂材料の供給量の制御を簡略化することができる。
【0060】
本実施例では、下型47における基板本体2の境界線3に対応する部分において、隣接する凹部48同士が直接つながっている例を示した。これに代えて、下型47における基板本体2の各領域4に対応する部分を単位として各凹部48が独立して設けられ、隣接する凹部48同士が境界線3に対応する部分において直接つながっていない構成を採用することもできる。この構成においては、隣接する凹部48同士は、連通路として機能する空間49によって連通する。
【0061】
(実施例3)
図5と図6とを参照して、反射体付基板を製造する製造装置を説明する。本実施例の特徴は、反射体を成形する際に、圧縮成形に離型フィルムと真空成形(減圧成形)とを併用することである。真空成形(減圧成形)とは、成形型を型締めする過程において、流動性樹脂が充填された空間を減圧して、その減圧した状態において成形することである。
【0062】
図5に示されているように、本実施例に係る製造装置は、上型56と下型57とを有する。下型57には、基板本体2の各領域4にそれぞれ対応する、凹部からなるキャビティ58が形成されている。キャビティ58は、上方以外をキャビティ面59によって囲まれた空間である。各キャビティ58の内底面には吸引路60が連通する。各吸引路60は、配管を介して吸引ポンプ、減圧タンク(いずれも図示なし)等の減圧手段に接続されている。実施例1と同様に、下型57の上面側において、基板本体2の各領域4の集合体の外に対応する位置に、最も外側のキャビティ58に連通する凹部からなる樹脂溜まり61が形成されている。
【0063】
上型56と下型57との間には、平面視して下型57を取り囲むようにして、枠状のフィルム押え部材62が設けられている。フィルム押え部材62は、駆動手段(図示なし)によって昇降可能になるようにして設けられている。フィルム押え部材62の下面と下型57の上面との間に、離型フィルム63が配置される。フィルム押え部材62が下型57の型面よりも下方にまで下降すると、枠状のフィルム押え部材62の内側の空間に下型57の上部が入り込む。
【0064】
平面視して下型57を取り囲むようにして、枠状のフィルム受け部材64が設けられている。フィルム受け部材64は、枠状の上板65と、枠状の下板66と、上板65と下板66とを接続する複数の棒状部材67とを有する。フィルム受け部材64は、コイルばね等の弾性部材68によって支持される。フィルム押え部材62とフィルム受け部材64の上板65とは、平面視して重なるようにして設けられている。
【0065】
上型56の下面には、フィルム押え部材62の枠状の部分に重なる位置に、Oリング等からなるシール部材69が設けられている。上型56の下面において、基板本体2が配置される部分の外に吸引路70が連通する。各吸引路70は、配管を介して吸引ポンプ、減圧タンク(いずれも図示なし)等の減圧手段に接続されている。
【0066】
図5と図6とを参照して、反射体付基板を製造する製造方法を説明する。図5(1)に示すように、まず、上型56の下面に基板本体2を固定する。フィルム押え部材62の下面と下型57の上面との間に、離型フィルム63を供給する。離型フィルム63はロール状で供給されてもよく、短冊状で供給されてもよい。離型フィルム63としては、流動性樹脂及び硬化樹脂に対する低密着性を有するフッ素樹脂を使用することが好ましい。
【0067】
次に、図5(1)に示す状態からフィルム押え部材62を下降させて、フィルム押え部材62の下面とフィルム受け部材64の上面とによって離型フィルム63を挟む。
【0068】
次に、図5(2)に示すように、引き続きフィルム押え部材62を下降させる。これにより、下型57の上面に離型フィルム63を密着させる。下型57の上面は、下型57においてキャビティ58同士の間に存在する面を意味する。
【0069】
離型フィルム63は、少なくとも下型57に設けられたヒータ(図示なし)によって加熱されることにより、軟化して伸びる。更にフィルム押え部材62を下降させることによって、離型フィルム63を引き伸ばす。
【0070】
次に、軟化した離型フィルム63を下型57の上面に密着させた状態で、吸引路60を経由して離型フィルム63を吸引する。これにより、図6(1)に示すように、凹部からなるキャビティ58(図5(2)参照)におけるキャビティ面59に、軟化した離型フィルム63を密着させる。
【0071】
本実施例においては、下型57に設けられた凹部からなる空間、すなわち、上方以外をキャビティ面59によって囲まれた凹部からなる空間をキャビティ58と呼ぶ。加えて、キャビティ面59に離型フィルム63を密着させた状態において上方以外を離型フィルム63によって囲まれた凹部からなる空間、すなわち、離型フィルム63によって囲まれ樹脂材料が供給される空間についても、便宜的にキャビティと呼ぶ。
【0072】
次に、図6(1)に示すように、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂71によって、各キャビティ58(図5(2)参照)を満たされた状態にする。この工程では、表面張力を利用して、流動性樹脂71の表面が下型57の上面よりもわずかに盛り上がる程度に、各キャビティ57に流動性樹脂71を満たすことが好ましい。
【0073】
次に、図6(2)に示すように、上型56を下降させる。上型56を下降させることによって、上型56の下面に設けられたシール部材69がフィルム押え部材62の上面に接触して変形する。このことによって、上型56の下面と、枠状のフィルム押え部材62の内側面と、離型フィルム63の上面と、流動性樹脂71の上面と、基板本体2の表面(図では下面及び側面)とによって囲まれた空間を、成形型の外部から遮断された閉空間72にする。その後に、上型56に設けられた吸引路70を経由して閉空間72を吸引する。このことによって、閉空間72に含まれる水分、流動性樹脂に含まれる気体の成分等を、閉空間72の外部に排出する。
【0074】
次に、図6(2)に示すように、引き続き上型56を下降させて、上型56と下型57とを完全に型締めする。このことによって、キャビティに満たされた流動性樹脂71に、基板本体2の表面(図では下面)における所定の部分を浸漬する(漬ける)。その後に、流動性樹脂71に圧力(型締め圧)と熱とを加えることによって、流動性樹脂71を硬化させる。このことによって、基板本体2の表面(図では下面)に硬化樹脂(図3(3)の硬化樹脂36参照)を形成する。
【0075】
次に、実施例1と同様にして、上型56と下型57とを型開きした後に、上型56から成形済基板(図3(3)の成形済基板37参照)を取り外す。その後に、成形済基板から不要樹脂(図3(3)の不要樹脂39参照)を除去する。このことによって、図1(1)に示された反射体付基板1が完成する。
【0076】
本実施例によれば、実施例1と同じ効果に加えて次の効果が得られる。離型フィルム63を使用することに起因する効果として、第1に、離型フィルム63の表面が硬化樹脂に転写されることによって、滑らかな表面を有する反射体が得られる。第2に、流動性樹脂及び硬化樹脂に対する低密着性を有する離型フィルム63を使用することによって、反射体に囲まれた部分において基板本体2の表面(図3(3)の表面45参照)をいっそう確実に露出させることができる。第3に、硬化後の高温の状態において柔らかい樹脂材料を使用した場合に、上型56から成形済基板(図3(3)の成形済基板37参照)を容易に取り外すことができる。従来は、硬化後の高温の状態において柔らかい樹脂材料を使用した場合には、成形型の表面から硬化樹脂を離型しにくいので、数ショット毎に成形型の表面に離型剤を塗布する必要がある。本実施例によれば、成形型の表面に離型剤を塗布する工程を省略することができる。
【0077】
真空成形(減圧成形)を使用することに起因する効果として、反射体に気泡が形成されることを防止することができる。光電子部品においては、反射体に気泡が形成されることは光の反射を妨げるので不良の原因になる。したがって、本実施例によれば、光電子部品を製造する際の良品率を向上させることができる。
【0078】
なお、フィルム押え部材62は、枠状ではなく枠の一部を切り欠いた平面形状を有していてもよい。枠の一部を切り欠いて形成された複数の部材の下面が高さ方向において同一面に存在し、同時に昇降することができれば、それらの部材はフィルム押え部材62として機能する。同様に、フィルム受け部材64についても、枠の一部を切り欠いて形成された複数の部材の上面が高さ方向において同一面に存在し、均等に弾性支持されていれば、それらの部材はフィルム受け部材64として機能する。
【0079】
また、凹部からなるキャビティ58の深さ、平面的な大きさ、数によっては、フィルム押え部材62の下面とフィルム受け部材64の上面とによって離型フィルム63を挟む強さを調整することが好ましい。例えば、深くて平面的に大きいキャビティ58が多数設けられている場合には、離型フィルム63を挟む強さを抑制することが好ましい。これにより、吸引路60によって吸引された離型フィルム63が、フィルム押え部材62の下面とフィルム受け部材64の上面との間において滑って動く。したがって、深くて平面的に大きいキャビティ58の底面に、離型フィルム63を確実に密着させることができる。
【0080】
また、本実施例では離型フィルムと真空成形とを併用した。これに限らず、離型フィルムと真空成形とのうちいずれか一方を使用してもよい。
【0081】
なお、上述した各実施例においては、各領域4は直交する仮想的な境界線3によって格子状に形成され、各領域4の平面形状は長方形である。これに限らず、各領域4の平面形状を長方形以外の四辺形又は四辺形以外の多角形(例えば、正六角形)にしてもよい。下型31、57、又は47において基板本体2の各領域4に対応する部分におけるキャビティ33、58、又は凹部48の平面形状は、1つの閉じた図形からその図形に完全に含まれる別の閉じた図形を切り抜いた後の形状である
【0082】
更に、境界線を折れ線又は曲線にしてもよい。各領域4の平面形状を正六角形にした場合、又は、境界線を折れ線若しくは曲線にした場合には、レーザ加工機、ウォータージェット加工機等を使用して、境界線に沿って反射体付基板又は封止済基板を切断することができる。
【0083】
また、実施例2において、基板本体2の表面(図4(1)〜(3)では下面)にいずれも硬化樹脂53からなる反射体54と反射体54同士を連通する薄肉部55とを形成し、成形済基板52から薄肉部55を除去する例を説明した。この例に、離型フィルムと真空成形とのうちいずれか一方又は双方を併用してもよい。
【0084】
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0085】
1、42 反射体付基板
2 基板本体
3、41 境界線
4 領域(第1の領域)
5、25、38、54 反射体
6、44、48 凹部
7、45 表面
8 斜面
9 光素子
10 封止前基板
11、30、46、56 上型
12、31、47、57 下型
13、33、50、58 キャビティ
14 窪み
15、35、51、71 流動性樹脂
16、26、36、53 硬化樹脂
17 封止済基板
18、27 平板部
19、28 レンズ部
20、40 領域
21、43 不要部
22、23 光電子部品
24 基板
29 切断面
32 領域(第2の領域)
34、61 樹脂溜まり
37、52 成形済基板
39 不要樹脂
49 空間(連通部)
55 薄肉部
59 キャビティ面
60、70 吸引路
62 フィルム押え部材
63 離型フィルム
64 フィルム受け部材
65 上板
66 下板
67 棒状部材
68 弾性部材
69 シール部材
72 閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と複数の凹部からなるキャビティが設けられた下型とを有する成形型を使用して、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造方法であって、
前記上型の下面に前記基板本体を固定する工程と、
前記キャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にする工程と、
前記上型と前記下型とを型締めすることによって前記所定の部分を前記流動性樹脂に浸漬する工程と、
前記流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、
前記上型と前記下型とを型開きする工程と、
前記硬化樹脂からなる前記反射体が形成された前記基板本体からなる成形済基板を前記上型から取り外す工程とを備えるとともに、
前記下型には前記第1の領域にそれぞれ対応する第2の領域が設けられており、
前記第2の領域のそれぞれには前記凹部が設けられており、
前記第2の領域における前記凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、
前記凹部のそれぞれは前記第2の領域同士の境界線において連通しており、
前記浸漬する工程では、前記下型において前記キャビティの外側に設けられた樹脂溜まりに前記流動性樹脂のうち余分な量を流し込み、かつ、互いに連通している前記凹部のそれぞれに前記流動性樹脂を均等に満たし、
前記硬化樹脂を形成する工程では、前記樹脂溜まりにおいて前記硬化樹脂からなる不要樹脂を形成し、かつ、前記第1の領域における前記所定の面のそれぞれにおいて前記所定の部分以外の部分を露出させることを特徴とする反射体付基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された反射体付基板の製造方法において、
前記取り外す工程の後に前記成形済基板から前記不要樹脂を除去する工程を備えることを特徴とする反射体付基板の製造方法。
【請求項3】
上型とキャビティが設けられた下型とを有する成形型を使用して、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造方法であって、
前記上型の下面に前記基板本体を固定する工程と、
前記キャビティを流動性樹脂によって満たされた状態にする工程と、
前記上型と前記下型とを型締めすることによって前記所定の面を前記流動性樹脂に浸漬する工程と、
前記流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、
前記上型と前記下型とを型開きする工程と、
前記硬化樹脂からなる前記反射体が形成された前記基板本体からなる成形済基板を前記上型から取り外す工程とを備えるとともに、
前記下型には前記第1の領域にそれぞれ対応する第2の領域が設けられており、
前記キャビティは、複数の凹部と複数の前記第2の領域のすべてを平面視して含みかつ前記複数の凹部同士を連通する連通部とを有し、
前記第2の領域のそれぞれには前記凹部が設けられており、
前記第2の領域における前記凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、
前記硬化樹脂を形成する工程では、前記複数の凹部において前記硬化樹脂からなる前記反射体を形成するとともに前記連通部において前記硬化樹脂からなる薄肉部を形成し、
前記取り外す工程の後に前記成形済基板から前記薄肉部を除去することによって前記第1の領域のそれぞれにおいて前記所定の部分以外の部分を露出させる工程を備えることを特徴とする反射体付基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は3に記載された反射体付基板の製造方法において、
前記上型と前記下型との間に離型フィルムを配置する工程と、
平面視して前記下型の外側において前記離型フィルムを挟む工程と、
前記離型フィルムを挟んだ状態で前記下型の上面に前記離型フィルムを密着させる工程と、
前記下型に設けられた吸引路を使用して前記離型フィルムを吸引することによって前記離型フィルムを前記キャビティにおける型面に密着させる工程とを備え、
前記満たされた状態にする工程では、前記離型フィルムが前記キャビティにおける型面に密着した状態で前記キャビティを前記流動性樹脂によって満たされた状態にすることを特徴とする反射体付基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1、3、又は4のいずれかに記載された反射体付基板の製造方法において、
少なくとも前記キャビティを含む空間を前記成形型の外部から遮断することによって閉空間を形成する工程と、
前記満たされた状態にする工程から前記浸漬する工程までの過程の少なくとも一部分において前記閉空間を減圧する工程とを備えることを特徴とする反射体付基板の製造方法。
【請求項6】
上型と複数の凹部からなるキャビティが設けられた下型とを含む成形型を有し、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造装置であって、
前記上型の下面に前記基板本体を固定する固定手段と、
前記上型と前記下型とを相対的に移動させることによって前記上型と前記下型とを型締め及び型開きする駆動手段と、
前記下型において前記第1の領域のそれぞれに対応して設けられた第2の領域と、
前記下型において前記キャビティの外側に設けられた樹脂溜まりとを備えるとともに、
前記凹部のそれぞれは前記第2の領域のそれぞれにおいて設けられ、
前記第2の領域における前記凹部の平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、
前記凹部のそれぞれは前記第2の領域同士の境界線において連通し、
前記上型と前記下型とが型締めされることによって、前記上型と前記下型とが型開きされた状態において互いに連通している前記凹部のそれぞれに均等に満たされた流動性樹脂に前記所定の部分が浸漬され、かつ、前記流動性樹脂のうち余分な量が前記樹脂溜まりに流れ込み、
前記上型と前記下型とが型締めした状態において前記流動性樹脂が硬化することによって形成された硬化樹脂のうち前記凹部のそれぞれにおいて硬化した前記硬化樹脂が前記反射体のそれぞれを構成し、
前記第1の領域のそれぞれにおいて前記所定の部分以外の部分が露出することを特徴とする反射体付基板の製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載された反射体付基板の製造装置において、
前記樹脂溜まりにおいて硬化した前記硬化樹脂からなる不要樹脂を除去する除去手段を備えることを特徴とする反射体付基板の製造装置。
【請求項8】
上型とキャビティが設けられた下型とを含む成形型を有し、基板本体に設けられた複数の第1の領域の所定の面における所定の部分に反射体を形成して反射体付基板を製造する反射体付基板の製造装置であって、
前記上型の下面に前記基板本体を固定する固定手段と、
前記上型と前記下型とを相対的に移動させることによって前記上型と前記下型とを型締め及び型開きする駆動手段と、
前記下型において前記第1の領域のそれぞれに対応して設けられた第2の領域と、
前記第2の領域のそれぞれに設けられた凹部と、
複数の前記第2の領域のすべてを平面視して含みかつ複数の前記凹部同士を連通する連通部とを備えるとともに、
前記キャビティは前記凹部と前記連通部とを含み、
前記凹部のそれぞれの平面形状は1つの閉じた図形から別の閉じた図形を切り抜いた後の形であり、
前記上型と前記下型とが型締めされることによって、前記上型と前記下型とが型開きされた状態において前記キャビティに満たされた流動性樹脂に前記所定の面が浸漬され、
前記上型と前記下型とが型締めされた状態において前記流動性樹脂が硬化することによって形成された硬化樹脂のうち複数の前記凹部において硬化した前記硬化樹脂が前記反射体を構成し、かつ、複数の前記凹部同士の間における前記連通部において硬化した前記硬化樹脂が薄肉部を構成し、
前記薄肉部を除去する除去手段を備え、
前記薄肉部が除去された後に前記第1の領域のそれぞれにおいて前記所定の部分以外の部分が露出することを特徴とする反射体付基板の製造装置。
【請求項9】
請求項6又は8に記載された反射体付基板の製造装置において、
前記上型と前記下型との間に離型フィルムを配置する配置手段と、
前記離型フィルムを挟む挟持手段と、
挟まれた前記離型フィルムを前記下型の上面に密着させる密着手段と、
前記下型の上面に密着した前記離型フィルムを吸引することによって前記離型フィルムを前記キャビティにおける型面に密着させる吸引手段とを備えるとともに、
前記離型フィルムを前記キャビティにおける型面に密着させた状態で前記キャビティに前記流動性樹脂が満たされることを特徴とする反射体付基板の製造装置。
【請求項10】
請求項6、8、又は9のいずれかに記載された反射体付基板の製造装置において、
少なくとも前記キャビティを含む空間を前記成形型の外部から遮断された閉空間にする遮断手段と、
前記閉空間を減圧する減圧手段とを備えることを特徴とする反射体付基板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43329(P2013−43329A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181782(P2011−181782)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】