説明

回路接続材料、フィルム状接着剤、接着剤リール及び回路接続構造体

【課題】フィルム状とした場合に十分に優れたスリット性と耐ブロッキング性とを兼ね備えており、回路接続構造体の形成に用いられた場合に十分に低い接続抵抗を実現できる回路接続材料を提供すること。
【解決手段】本発明の回路接続材料は、対向配置された一対の回路電極の間に介在させて、一対の回路電極を対向する方向に加圧することによって一対の回路電極を電気的に接続する回路接続材料20であって、接着剤組成物21と接着剤組成物21中に分散された充填剤22とを含有し、充填剤22の含有量が1〜25体積%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料、並びにこれを用いたフィルム状接着剤、接着剤リール及び回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、各々の素子中における種々の部材を接合するために、従来から回路接続材料が使用されている。回路接続材料に対しては、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等、多岐に渡る特性を有することが求められている。
【0003】
一方で、回路接続材料によって接着される被着体は、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等の多種多様な材質からなる基材が用いられている。このため、被着体の表面の材質にあわせた分子設計が必要である。
【0004】
従来から、半導体素子や液晶表示素子接続用の回路接続材料としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。回路接続材料の構成成分としては、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。これらのうち、熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度との観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程での硬化条件は、170〜250℃の温度で1〜3時間硬化することにより、所望の接着を得ていた。
【0005】
しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱が、周辺部材に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0006】
さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、より低温でかつ短時間で硬化するという、いわゆる低温速硬化性能を備える回路接続材料が求められている。低温速硬化で信頼性の高い接続を実現するためには、低温かつ短時間で回路電極間の樹脂を流動・排除して電極間を電気的に接続する必要がある。かかる要求に応えるために、回路接続材料に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度を低下させたり、液状成分を増量したりして回路接続材料を低弾性化させる改良が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平01−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の回路接続材料は、支持体(基材フィルム)の一方面上に層状に形成されたフィルム状接着剤を巻芯に巻き取ることによって、接着剤リールとして保管及び使用される。この接着剤リールは、PETなどの基材上に回路接続材料からなる接着剤層を有するフィルム状接着剤を、幅10〜50cm程度に裁断するスリット工程を経た後、一旦巻き取って原反を作製して、これを巻き出しながら連続的に幅0.5〜5mm程度の細幅に裁断し、再度巻芯に巻き取ることによって作製される。
【0009】
上述のスリット工程においては、フィルム状接着剤の切断が円滑に行われるとともに、フィルム状接着剤の切断面が十分に平滑で巻き取りが容易であるという、良好なスリット性を有することが求められる。また、接着剤リールから、フィルム状接着剤を繰り出す際に、基材フィルムからフィルム状接着剤が容易に剥がれないという、良好な耐ブロッキング性を有することが求められる。
【0010】
ところが、基材フィルムの一方面上に層状に形成される回路接続材料を低弾性化させると、スリット刃に接着剤組成物が付着しやすくなってスリット端面が乱れ、良好なスリット性を維持することができなくなってしまう。また、フィルム状接着剤の巻芯に巻き重ねて接着剤リールとした場合、巻き圧で回路接続材料が染み出して、基材フィルムから回路接着剤材料が剥がれやすくなり、耐ブロッキング性が悪化してしまうことが懸念される。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルム状とした場合に十分に優れたスリット性と耐ブロッキング性とを兼ね備えるとともに、回路接続構造体の形成に用いられた場合に十分に低い接続抵抗を実現できる回路接続材料を提供することを目的とする。また、上述の回路接続材料を用いることによって、十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明では、上述の回路接続材料からなる接着剤層を有することによって優れたスリット性を有し、接着剤リールとした場合に十分に優れた耐ブロッキング性を有するフィルム状接着剤及び係るフィルム状接着剤を備える接着剤リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明では、対向配置された一対の回路電極の間に介在させて、一対の回路電極を対向する方向に加圧することによって一対の回路電極を電気的に接続する回路接続材料であって、接着剤組成物と接着剤組成物中に分散された充填剤とを含有し、充填剤の含有量が1〜25体積%である回路接続材料を提供する。
【0014】
本発明の回路接続材料は、接着剤組成物中に分散された特定量の充填剤を含有しているため、フィルム状とした場合に十分に優れたスリット性を有し、且つ接着剤リールとした場合に十分に優れた耐ブロッキング性を有している。また、この回路接続材料を用いることによって、十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体を形成することができる。このような効果が得られる要因としては、特定量の充填剤を含有することによって、導電性を維持しつつ接着剤組成物の流動が適度に抑制され、また、スリット刃への接着剤組成物の付着が十分に抑制されることが挙げられる。また、接着剤組成物の流動が抑制されるのは、接着剤組成物と充填剤との界面において、摩擦が発生することに起因するものと考えている。ただし、本発明の効果が得られる要因は上述のものに限定されない。
【0015】
本発明の回路接続材料における充填剤の平均粒径は、0.1〜30μmであることが好ましい。このような平均粒径を有する充填剤を含有することによって、導電性を良好にすることができる。
【0016】
本発明の回路接続材料における充填剤は熱可塑性樹脂を含有しており、該充填剤のガラス転移温度(Tg)は、50〜120℃であることが好ましい。これによって、優れた耐熱性と優れた異方導電性とを有する回路接続材料とすることができる。
【0017】
本発明の回路接続材料における充填剤は球状粒子であることが好ましい。これによって、回路接続材料における充填材の分散性を一層均一にすることができる。
【0018】
本発明の回路接続材料における接着剤組成物は、(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤と、(2)ラジカル重合性物質と、を含有することが好ましい。また、接着剤組成物は、(3)導電性粒子を含有することがより好ましい。導電性粒子を含有することによって、一層導電性に優れた回路接続材料とすることができる。
【0019】
本発明の回路接続材料に含有される充填剤はプラスチック粒子を含むことが好ましい。また、回路接続材料における充填剤の含有量は3〜20体積%であることが好ましく、5〜15体積%であることがより好ましく、5〜9.5体積%であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明ではまた、基材フィルムと、該基材フィルムの一方面上に設けられ、上述の回路接続材料からなる接着剤層と、を備えるフィルム状接着剤を提供する。
【0021】
このようなフィルム状接着剤は、取り扱い性に優れるとともに、上記特徴を有する回路接続材料からなる接着剤層を備えるため、十分に優れたスリット性を有し、且つ接着剤リールとした場合に十分に優れた耐ブロッキング性を有している。
【0022】
本発明ではまた、上述のフィルム状接着剤と、該フィルム状接着剤が外面上に巻かれた巻芯と、を備える接着剤リールを提供する。
【0023】
このフィルム状接着剤は、上記特徴を有するフィルム状接着剤を備えるため、耐ブロッキング性に十分に優れている。
【0024】
本発明の接着剤リールにおける巻芯の直径は30〜150mmであることが好ましい。また、フィルム状接着剤の幅及び長さは、それぞれ、0.3〜10mm及び50〜500mであることが好ましい。巻芯又はフィルム状接着剤を上述のサイズにすることによって、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。
【0025】
本発明ではまた、対向配置され、電気的に接続された一対の回路電極と、一対の回路電極の間に設けられ、一対の回路電極を接続する回路接続部と、を備える回路接続構造体であって、回路接続部が上述の回路接続材料の硬化物を有する回路接続構造体を提供する。
【0026】
この回路接続構造体は、上記回路接続材料を用いて形成されるものであるため、互いに対向する回路電極間の導電性を良好に維持しつつ、隣接する電極間の絶縁性をも良好に維持することができる。すなわち、本発明の回路接続構造体は優れた異方導電性を有している。
【0027】
本発明の回路接続構造体は、上記一対の回路電極の一方が半導体素子の回路電極であり、上記一対の回路電極の他方が半導体素子を搭載する搭載用基板の回路電極であることが好ましい。これによって、半導体素子と、搭載用基板と、半導体素子及び搭載用基板の間に設けられ、上記硬化物を有する回路接続部と、を備える回路接続構造体とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、フィルム状とした場合に十分に優れたスリット性と耐ブロッキング性とを兼ね備えるとともに、回路接続構造体の形成に用いられた場合に十分に低い接続抵抗を実現できる回路接続材料を提供することができる。また、上述の回路接続材料を用いることによって、十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体を提供することができる。
【0029】
さらに、本発明によれば、上述の回路接続材料からなる接着剤層を有することによって優れたスリット性を有し、接着剤リールとした場合に十分に優れた耐ブロッキング性を有するフィルム状接着剤及び係るフィルム状接着剤を備える接着剤リールを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好適な実施形態に係るフィルム状接着剤の長手方向及び厚さ方向に平行な断面を示す模式断面図である。
【図2】本発明の接着剤リールの好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の好適な実施形態に係る回路接続構造体の模式断面図である。
【図4】上記実施形態に係る回路接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るフィルム状接着剤の長手方向及び厚さ方向に平行な断面を示す模式断面図である。フィルム状接着剤5は、基材フィルム6とその一方面上に設けられた接着剤層20とを有する。
【0033】
基材フィルム6はフィルム状の形状を有する。基材フィルム6は、好ましくは、長さが1〜200m程度であり、厚さが4〜200μm程度であり、幅が0.5〜30mm程度である。基材フィルム6の長さ、厚さ及び幅は上記の範囲に限定されるものではない。基材フィルム6の幅は、その上に付設されるフィルム状の回路接続材料(接着剤層)20の幅よりも広いことが好ましい。
【0034】
基材フィルム6は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂フィルム、合成ゴム系及び液晶ポリマー等から群より選ばれる各種フィルムを使用することが可能である。また、離型紙や不織布であってもよい。
【0035】
回路接続材料20は、接着剤組成物21と充填剤22とを含有する。充填剤22としては、絶縁性を有する絶縁性粒子や繊維を用いることができる。具体的には、金属酸化物、アエロジル、炭酸カルシウム、珪砂、カーボン繊維、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂などからなるプラスチック粒子、応力緩和粒子などが挙げられる。これらの充填剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
充填剤22は、分散性の観点から球状粒子であることが好ましい。充填剤22の含有量は、回路接続材料20全体を基準(100体積%)として、1〜25体積%であり、好ましくは3〜20体積%であり、より好ましくは5〜15体積%であり、さらに好ましくは5〜9.5体積%である。当該含有量を5体積%以上とすることによって、良好なスリット性と良好な耐ブロッキング性とを一層高水準で両立することが可能となる。一方、当該含有量を15体積%以下とすることによって、一層十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体を形成することが可能となる。
【0037】
本明細書において、充填剤の含有量を示す「体積%」は23℃における硬化前の回路接続材料20の体積を基準にして算出される割合である。回路接続材料20に含まれる各成分の体積は、比重を用いて質量から換算して求めることができる。また、換算の他の方法として、溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等に、換算対象の成分を投入し、増加した体積を元に該成分の体積を求めて換算する方法が挙げられる。この場合、用いる溶媒は、当該成分を溶解したり膨潤させたりしないものであって、該成分をよく濡らすものを選択する必要がある。
【0038】
充填剤22の平均粒径は、好ましくは0.1〜30μmであり、より好ましくは1〜15μmである。該平均粒径が、0.1μm未満の場合、接着剤組成物21中への分散性が低下する傾向がある。一方、該平均粒径が30μmを超えると相対向する回路電極間の導通が妨げられ易くなって、十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体が得られ難くなる傾向がある。
【0039】
本明細書における充填剤22や後述する導電性粒子の平均粒径は、次のようにして算出される。まず、走査電子顕微鏡(SEM:例えば、日立製作所社製、商品名「S800」)により3000倍の粒子像を観察して、複数個の粒子を任意に選択する。このとき、正確を期するために30個以上の粒子を選択するが、粒子が30個に満たない場合はこれに限らない。次いで、選択した複数個の粒子それぞれについて、最大粒径と最小粒径とを測定する。そして、それら最大粒径及び最小粒径の積の平方根を算出し、これを粒子1個の粒径とする。選択した複数個の粒子全てについて、こうして粒子1個の粒径を求めた後、それらの粒径の和を、測定した粒子の個数で除して導出したものを平均粒径とする。
【0040】
充填剤22は、主成分として熱可塑性樹脂を含有する絶縁性粒子であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ASB樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート樹脂類、ポリイミド樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリビニルブチラール樹脂類等を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上述の熱可塑性樹脂のうち、導通をより確実に確保する観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステルが好ましい。
【0042】
充填剤22のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは80〜100℃である。当該ガラス転移温度が50℃未満の場合、回路接続材料20の耐熱性が低下する傾向があり、当該ガラス転移温度が120℃を超える場合、相対向する回路電極間の導通が妨げられ易くなって、十分に低い接続抵抗を有する回路接続構造体が得られ難くなる傾向がある。
【0043】
本実施形態において、接着剤組成物21は、樹脂組成物24と導電性粒子26とを含有する。
【0044】
樹脂組成物24は、(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤と(2)ラジカル重合性物質とを必須成分として含有することが好ましい。
【0045】
(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤(ラジカル重合開始剤)としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等の公知の化合物を用いることができる。これらのうち、安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1,000である過酸化物が好ましい。
【0046】
ここで、「1分間半減期温度」とは、半減期が1分間になる温度をいい、「半減期」とは、化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
【0047】
具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3−メチルベンゾイルパーオキサイド、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
硬化剤としては、150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、公知の化合物を使用することができる。これらのうち、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年)、p17〜p35に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体は、光照射に対する感度が高いためより好ましい。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上述の過酸化物やアゾ化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0049】
回路接続材料20における硬化剤の含有量は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。硬化剤の含有量が多くなりすぎると、回路接続材料20の接着性が低下する傾向がある。一方、硬化剤の含有量が少なくなりすぎると、接着剤組成物の硬化が円滑に進みにくくなる傾向がある。
【0050】
(2)ラジカル重合性物質(ラジカル重合性化合物)としては、公知のものを用いることができる。ラジカル重合性物質は、モノマー又はオリゴマーの状態で使用することができ、モノマーとオリゴマーを混合して使用することもできる。
【0051】
ラジカル重合性物質の具体的としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(A)及び(B)で示される化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
【化1】

【0053】
上記一般式(A)中、R及びRは、各々独立に水素又はメチル基を示し、k及びlは各々独立に1〜8の整数を示す。
【0054】
【化2】

【0055】
上記一般式(B)中、R及びRは、各々独立に水素又はメチル基を示し、m及びnは、各々独立に0〜8の整数を示す。
【0056】
回路接続材料20におけるラジカル重合性物質の含有量は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
【0057】
導電性粒子26としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。導電性粒子26は、非導電性のガラス粒子、セラミック粒子、又はプラスチック粒子等を核とし、この核に上記金属やカーボンを被覆したものであってもよい。
【0058】
プラスチック粒子を核とし、この核に上記金属やカーボンを被覆した被覆粒子、及びはんだのような熱溶融金属粒子は、回路電極の接続を行う際の加熱加圧時に変形する。このように変形性を有する導電性粒子26を用いると、回路電極の接続時に回路電極と導電性粒子26との接触面積が増加するので接続信頼性を向上させることができる。
【0059】
導電性粒子26の平均粒径は、良好な分散性と良好な導電性とを両立させる観点から1〜18μmであることが好ましい。回路接続材料20における導電性粒子26の含有量は、好ましくは0.1〜30体積%であり、より好ましくは0.1〜10体積%である。当該含有量が0.1体積%未満の場合、回路接続構造体を形成した場合に、対向配置された電極間の優れた導電性が損なわれる傾向がある。一方、該含有量が30体積%を超える場合、回路接続構造体を形成した場合に、隣接する回路電極間の短絡が発生し易くなる傾向がある。
【0060】
なお、導電性粒子26の含有量は、充填剤22の含有量と同様にして求めることができる。
【0061】
回路接続材料20における導電性粒子26と充填剤22との合計の含有量は、好ましくは1〜30体積%であり、より好ましくは5〜20体積%であり、さらに好ましくは10〜18体積%である。該含有量を1〜30体積%とすることによって、一層優れたスリット性と耐ブロッキング性とを両立することが可能となる。
【0062】
回路接続材料20は、接着剤組成物21中に、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート樹脂類、ポリイミド樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリビニルブチラール樹脂類などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらの熱可塑性樹脂は、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、又はミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば、好適に用いることができる。
【0063】
接着剤組成物21中に含まれる熱可塑性樹脂と、充填剤22に含まれる熱可塑性樹脂は同一樹脂成分であることが好ましい。これによって、接着剤組成物21中における充填剤22の分散性を一層均一にすることが可能となり、一層優れたスリット性と耐ブロッキング性とを両立することが可能となる。
【0064】
接着剤組成物21に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量は大きいほど、回路接続材料のフィルム形成性を良好にすることができる。また、回路接続材料の組成を選定するにあたり、流動性に影響する溶融粘度の選択範囲をより広範囲にすることができる。
【0065】
接着剤組成物21に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜150,000であり、より好ましくは10,000〜80,000である。該重量平均分子量が、5,000未満の場合、回路接続材料の良好なフィルム形成性が損なわれる傾向がある。一方、該重量平均分子量が、150,000を超える場合、接着剤組成物の他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0066】
回路接続材料20は、接着剤組成物21中に、硬化速度を制御すること、又は貯蔵安定性を向上させることを目的として、安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。例えば、好ましい安定化剤として、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が挙げられる。
【0067】
安定化剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜30質量部であり、より好ましくは0.05〜10質量部である。該含有量が0.01質量部未満の場合、添加効果が低下する傾向があり、30質量部を超える場合、他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0068】
回路接続材料20は、接着剤組成物21中に、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤、密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を含んでいてもよい。これらの接着助剤のうち、下記一般式(C)で示される化合物を含むことが好ましい。また、上述の接着助剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0069】
【化3】

【0070】
上記一般式(C)中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基又はアリール基を示し、R13は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基又はグリシジル基を示す。また、pは1〜10の整数を示す。
【0071】
回路接続材料20は、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を含有していてもよい。ゴム成分の具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0072】
ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖又は末端に含むものが好ましい。具体的には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられる。アクリロニトリル−ブタジエンゴムにおいて、極性基であるアクリロニトリルの含有量は10〜60mol%であることが好ましい。これらの化合物は1種の化合物を単独で又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0073】
次に、フィルム状接着剤5の製造方法について以下に説明する。
【0074】
回路接続材料の原料となる各成分を、溶剤中に溶解、又は分散させてワニスを作製する。得られたワニスを基材フィルム6の一方面上に塗工し、溶剤を揮発させることによって基材フィルム6上に接着剤層20を形成する。
【0075】
使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものを用いる。このような溶剤のうち、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温(25℃)で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される傾向がある。一方、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが困難となり、係る溶剤を用いて得られた回路接続材料によって回路接続構造体を形成した場合に、優れた接続信頼性が損なわれる傾向がある。
【0076】
(接着剤リール)
図2は、本発明の接着剤リールの好適な一実施形態を示す斜視図である。図2に示す接着剤リール10は、筒状の巻芯1及び巻芯1の軸方向の両端面にそれぞれ設けられ、中心部に貫通孔2aを有する円形の側板2を備える。
【0077】
巻芯1の外面F1上にはフィルム状接着剤5が巻かれ、巻重体を構成している。また、接着剤リール10は、通常の圧着装置の回転軸が挿入される軸穴10aを有している。接着剤リール10は、軸穴10aが圧着装置の回転軸に挿入されるようにしてセットされ、フィルム状接着剤5を矢印E方向に繰り出すことができる。繰り出されたフィルム状接着剤5は、対向するように配置された一対の回路電極の接続に用いることができる。
【0078】
接着剤リール10は、上述の回路接続材料20を有するフィルム状接着剤5が巻かれた巻重体を有するため、接着剤成分の染み出しが十分に抑制されており、耐ブロッキング性に十分に優れている。このため、接着剤リール10は、フィルム状接着剤5を円滑に繰り出すことができる。これによって、回路接続構造体の製造プロセスにおける歩留まりを十分に向上させることができる。
【0079】
巻芯1の直径は、好ましくは30〜150mmであり、より好ましくは50〜120mmである。巻芯1の直径をこのような範囲とすれば、本発明の効果が一層得られやすくなる。また、リールに巻かれるフィルム状接着剤5の幅は、好ましくは0.3〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmであり、その長さは好ましくは50〜500m、より好ましくは100〜300mmである。フィルム状接着剤5を上記サイズとすれば、本発明の効果が一層得られやすくなる。
【0080】
(回路接続構造体)
次に、上述の回路接続材料を有するフィルム状接着剤5を用いて製造される回路接続構造体の好適な実施形態について説明する。
【0081】
図3は、本発明の好適な実施形態に係る回路接続構造体の模式断面図である。回路接続構造体100は、対向配置された第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50が設けられている。
【0082】
第1の回路部材30は、回路基板31と、回路基板31の一方面(主面)31a上に形成された第1の回路電極32とを備えている。第2の回路部材40は、回路基板41と、回路基板41の一方面(主面)41a上に形成された第2の回路電極42とを備えている。
【0083】
一方の回路部材30(40)の具体例としては、半導体チップ(ICチップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品などが挙げられる。これらの回路部材30(40)は、多数の回路電極を備えている。上記回路部材30(40)が接続される、他方の回路部材40(30)の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。
【0084】
回路基板31,41の具体例としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機材料、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機材料、及びガラス/エポキシ等の複合材料が挙げられる。
【0085】
第1の回路電極32及び第2の回路電極42は、接続部50を介して、互いに対向するように配置されている。第1の回路電極32及び第2の回路電極42は、それぞれ、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。また、第1の回路電極32及び第2の回路電極42の表面の材質は、すべての回路電極において同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
接続部50は、上述の回路接続材料20の硬化物から構成されており、回路接続材料に含まれていた導電性粒子26と充填剤22と樹脂組成物24の硬化物28とを含有している。
【0087】
回路接続構造体100においては、対向配置された第1の回路電極32と第2の回路電極42とが、導電性粒子26を介して電気的に接続されている。すなわち、導電性粒子26が、第1の回路電極32及び第2の回路電極42の双方に直接接触している。また、接続部50には、硬化物28中に充填剤22が均一に分散されている。
【0088】
上述の構造を有する回路接続構造体100においては、第1の回路部材30と第2の回路部材40とが、良好な接着性を有する接続部50によって固定されている。したがって、第1の回路電極32と第2の回路電極42との間の接続抵抗が十分に低減され、第1の回路電極32と第2の回路電極42との間の接続信頼性が極めて良好となる。
【0089】
また、硬化物28と硬化物28中に分散された充填剤22は、電気絶縁性を有するものであるため、互いに隣接する回路電極同士、すなわち第1の回路電極32同士、及び第2の回路電極42同士の絶縁性が良好に保たれる。したがって、本実施形態の回路接続構造体100は、十分に優れた異方導電性を有している。
【0090】
(回路接続構造体の製造方法)
次に、回路接続構造体100の製造方法について説明する。
【0091】
図4(a)〜図4(d)は、上記実施形態に係る回路接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す工程断面図である。ここで説明する製造方法では、回路接続材料20に含まれる樹脂組成物24を熱硬化させて回路接続構造体100を製造する。
【0092】
まず、接着剤リール10から繰り出されたフィルム状接着剤5を、所定の長さに切断するとともに、回路接続材料20が第1の回路基板31上に設けられた第1の回路電極32と向き合うようにして、当該フィルム状接着剤5を第1の回路部材30上に載せる。そして、基材フィルム6を回路接続材料20から剥離する(図4(a))。
【0093】
次に、図4(b)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続材料20を第1の回路部材30に仮接続する(図4(c))。このときの圧力は回路部材30に損傷を与えない範囲であれば特に制限されず、一般的には0.1〜30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は回路接続材料20の樹脂組成物24が実質的に硬化しない温度とすることが好ましい。加熱温度は一般的には50〜190℃にすることが好ましい。加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0094】
次いで、図4(d)に示すように、第2の回路部材40を、第2の回路電極42が第1の回路部材30と向き合うようにして、回路接続材料20上に載せる。そして、回路接続材料20を加熱しながら、図4(d)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、回路接続材料20の樹脂組成物24が硬化可能な温度とする。加熱温度は、100〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱温度が100℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、250℃を超えると副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.5〜120秒の範囲とすることが好ましい。加熱と加圧とを並行して行う加熱加圧は、150〜200℃、3MPa、10秒間とすることがより好ましい。
【0095】
上述の加熱及び加圧によって、樹脂組成物24が硬化して接続部50が形成され、図3に示すような回路接続構造体100が得られる。接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。
【0096】
回路接続材料20の成分として、光によって硬化するものを使用した場合には、回路接続材料20に対して活性光線やエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
[原材料の調製]
フィルム状接着剤を作製するため、以下の原材料を準備した。
【0099】
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名:PKHC、重量平均分子量:45,000)50gを、トルエン(沸点110.6℃)と酢酸エチル(沸点77.1℃)とを1:1(質量比)で混合した混合溶剤に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を調製した。
【0100】
ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート、重量平均分子量:20,000)、及びリン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルP−2M、重量平均分子量:322)を準備した。
【0101】
遊離ラジカルを発生する硬化剤(ラジカル発生剤)として、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、商品名:パーヘキサTMH、重量平均分子量:358)を準備した。
【0102】
導電性粒子を次の通りにして調製した。市販のポリスチレン粒子の表面に、電解ニッケルめっきを施すことによって、厚み0.2μmのニッケル層を設けた。このニッケル層の外側に、無電解金めっきを施すことによって、厚み0.04μmの金層を設け、ポリスチレン粒子の表面にニッケル層と金層とが順次積層された平均粒径5μmの導電性粒子を得た。
【0103】
充填剤として、熱可塑性樹脂(ポリスチレン)を主成分とする球状のプラスチック粒子(平均粒径:5μm)を準備した。
【0104】
[フィルム状接着剤の作製]
上述の通り準備した原材料を用いて、フィルム状接着剤を以下の通り作製した。
【0105】
フェノキシ樹脂溶液35質量部に対して、ウレタンアクリレートを65質量部、リン酸エステルジメタクリレートを10質量部、ラジカル発生剤を5質量部配合して混合液を得た。当該混合液(100体積%)に対して、プラスチック粒子を15体積%、導電性粒子を1.5体積%配合して、混合液中に該プラスチック粒子及び該導電性粒子が分散した分散液(塗布液)を得た。
【0106】
当該塗布液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム(基材フィルム)に塗工装置を用いて塗布し、70℃の熱風で10分間乾燥させる熱風乾燥を行って、基材フィルムとその表面上に形成された接着剤層(厚み:40μm)とを有するフィルム状接着剤を得た。
【0107】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)における充填剤の含有量は15体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0108】
[スリット性の評価]
上述の通り作製したフィルム状接着剤を用いて、以下の通り、スリット性の評価を行った。
【0109】
フィルム状接着剤の基材フィルム側とは反対側の面に対して垂直にスリット刃を入れ、フィルム状接着剤を切断しながら、0.1m/sの速度で該フィルム状接着剤を巻き取って、リール状製品(接着剤リール)を得た。
【0110】
スリット性(切断性及び巻取り性)が良好であったものを「A(良好)」、スリット端面の乱れ等、スリット性に問題があったものを「B(やや不良)」、スリットできなかったものを「C(不良)」と評価した。
【0111】
[耐ブロッキング性の評価]
上述の通り作製したフィルム状接着剤を用いて、以下の通り、耐ブロッキング性の評価を行った。スリット性の評価と同様にして接着剤リールを作製した。接着剤リールが回転しないように固定し、この接着剤リールから引き出したフィルム状接着剤の先端に75gfの荷重を加えたまま状態で、35℃の恒温槽中に保持した。2時間保持後、接着剤リールが回転できるようにして、該接着剤リールからフィルム状接着剤を0.1m/sの速度で100m引き出し、基材フィルムと接着剤層との間に剥離が発生したものを「ブロッキング発生」、基材フィルムと接着剤層の剥離が発生しなかったものを「ブロッキングなし」と判定した。なお、判定は目視によって行った。
【0112】
評価は5つの試料(接着剤リール)を用いて行った。5個の接着剤リールのうち、「ブロッキング発生」と判定されたものが1個以下の場合を「A(良好)」、「ブロッキング発生」と判定されたものが2〜3個の場合を「B(やや不良)」、「ブロッキング発生」と判定されたものが4〜5個の場合を「C(不良)」と評価した。
【0113】
[接続抵抗の評価]
上述の通り作製したフィルム状接着剤を用いて、以下の通り、接続抵抗の評価を行った。まず、銅回路(ライン幅250μm、ピッチ500μm、厚み8μm)付きフレキシブルプリント配線板(FPC基板、PI厚み:38μm)と、銅回路(ライン幅250μm、ピッチ500μm、厚み35μm)付きプリント配線板(PCB基板、厚み:0.7mm)とを準備した。
【0114】
次に、上記の通り作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(2mm×40mm)に切断し、FPC基板の銅回路とフィルム状接着剤の接着剤層とが向き合うようにして、65℃、0.98MPa(10kgf/cm)の条件で、フィルム状接着剤とFPC基板とを貼り合わせた。その後、フィルム状接着剤から基材フィルムを剥離し、PCB基板の銅回路と接着剤層とが向き合うようにして、FPC基板の銅回路とPCB基板の銅回路との位置合わせを行った。そして、回路接続材料を介在させた状態で、160℃、3MPaの条件で、FPC基板の銅回路とPCB基板の銅回路が対向する方向に加圧しながら加熱して、回路接続材料による接続を行い、回路接続構造体を得た(加熱加圧時間:20秒間)。
【0115】
得られた回路接続構造体において、FPC基板及びPCB基板のそれぞれについて、隣接回路間の抵抗値をマルチメータで測定することによって、FPC基板とPCB基板とが対向する方向における接続抵抗値を測定した。測定は、異なる隣接回路間で45点行い、平均値を求めた。接続抵抗値の平均値が0.5Ω以下の場合を「A(良好)」、0.5Ωを超える場合を「B(不良)」と評価した。評価結果は表1に示すとおりであった。
【0116】
(実施例2)
混合液に対するプラスチック粒子の配合量を5体積%としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0117】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)におけるプラスチック粒子の含有量は5体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0118】
(実施例3)
[原材料の調製]
フィルム状接着剤を作製するため、以下の原材料を準備した。
【0119】
フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂、重量平均分子量:50,000)と、アクリルゴム(重量平均分子量:100,000)とを、トルエン(沸点110.6℃)と酢酸エチル(沸点77.1℃)とを1:1(質量比)で混合した混合溶剤にそれぞれ溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液と固形分40質量%のアクリルゴム溶液とを調製した。
【0120】
硬化剤(潜在性硬化促進剤)として、ノバキュアHX−3941HP(旭化成工業株式会社製、商品名)を準備した。このノバキュアHX−3941HPは、イミダゾール変性体を核とし、その表面を架橋ポリウレタンで被覆して得られるマイクロカプセル化した粒子(平均粒径2.5μm)を、液状エポキシ樹脂中に分散したものである。
【0121】
導電性粒子を次の通りにして調製した。可撓性エポキシ硬化球の表面に、無電解ニッケルめっきを施すことによって、厚み0.1μmのニッケル層を設けた。これによって、粒径5.2μmの導電性粒子を得た。
【0122】
充填剤として、熱可塑性樹脂(ポリスチレン)を主成分とするプラスチック粒子(平均粒径:5μm)を準備した。
【0123】
[フィルム状接着剤の作製]
上述の通り準備した原材料を用いて、フィルム状接着剤を以下の通り作製した。
【0124】
フェノキシ樹脂溶液25質量部に対して、アクリルゴム溶液を45質量部、潜在性硬化剤を30質量部配合して混合液を得た。当該混合液(100体積%)に対して、プラスチック粒子を15体積%、導電性粒子を1.5体積%配合して、混合液中に該プラスチック粒子及び該導電性粒子が分散した分散液(塗布液)を得た。
【0125】
当該塗布液を、厚み50μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)に塗工装置を用いて塗布し、90℃の熱風で15分間乾燥させる熱風乾燥を行って、基材フィルムとその表面上に形成された接着剤層(厚み:25μm)とを有するフィルム状接着剤を得た。
【0126】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)における充填剤の含有量は15体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0127】
得られたフィルム状接着剤を用いて、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0128】
(実施例4)
混合液に対するプラスチック粒子の配合量を5体積%としたこと以外は、実施例3と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0129】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)における充填剤の含有量は5体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0130】
(比較例1)
プラスチック粒子を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0131】
(比較例2)
混合液に対するプラスチック粒子の配合量を0.1体積%としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0132】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)におけるプラスチック粒子の含有量は0.1体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0133】
(比較例3)
混合液に対するプラスチック粒子の添加量を50体積%としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0134】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)におけるプラスチック粒子の含有量は50体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0135】
(比較例4)
混合液に対するプラスチック粒子の添加量を0.1体積%としたこと以外は実施例3と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果は表1に示す通りであった。
【0136】
フィルム状接着剤の接着剤層(回路接続材料)におけるプラスチック粒子の含有量は0.1体積%であり、導電性粒子の含有量は1.5体積%であった。
【0137】
【表1】

【0138】
実施例1〜4で作製したフィルム状接着剤及び接着剤リールは、スリット性及び耐ブロッキング性が良好であった。また、実施例1〜4の回路接続材料を用いて形成された回路接続構造体の接続抵抗も十分に低かった。
【0139】
一方、プラスチック粒子(充填剤)の含有量が0.1体積%以下である比較例1、2、4では、スリット性及び耐ブロッキング性が良くなかった。比較例1では、スリット不可のため、耐ブロッキング性の評価ができなかった。また、プラスチック粒子(充填剤)の含有量が50体積%と大きすぎる比較例3では、スリット性、耐ブロッキング性は良好であるが、接続抵抗が上昇する結果となった。
【符号の説明】
【0140】
1…巻芯、2…側板、2a…貫通孔、5…フィルム状接着剤、6…基材フィルム、10…接着剤リール、10a…軸穴、20…接着剤層(回路接続材料)、21…接着剤組成物、22…充填剤、24…樹脂組成物、26…導電性粒子、28…硬化物、30…第1の回路部材(回路部材)、31…第1の回路基板(回路基板)、32…第1の回路電極(回路電極)、40…第2の回路部材(回路部材)、41…第1の回路基板(回路基板)、42…第1の回路電極(回路電極)、50…接続部、100…回路接続構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の回路電極の間に介在させて、前記一対の回路電極を対向する方向に加圧することによって前記一対の回路電極を電気的に接続する回路接続材料であって、
接着剤組成物と前記接着剤組成物中に分散された充填剤とを含有し、
前記充填剤の含有量が1〜25体積%である回路接続材料。
【請求項2】
前記充填剤の平均粒径が0.1〜30μmである請求項1記載の回路接続材料。
【請求項3】
前記充填剤が熱可塑性樹脂を含有し、該充填剤のガラス転移温度(Tg)が50〜120℃である請求項1又は2記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記充填剤が球状粒子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記接着剤組成物が、(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤と、(2)ラジカル重合性物質と、を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記接着剤組成物が、(3)導電性粒子を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記充填剤がプラスチック粒子を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記充填剤の含有量が3〜20体積%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項9】
前記充填剤の含有量が5〜15体積%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項10】
前記充填剤の含有量が5〜9.5体積%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項11】
基材フィルムと、
該基材フィルムの一方面上に設けられ、請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料からなる接着剤層と、を備えるフィルム状接着剤。
【請求項12】
請求項11記載のフィルム状接着剤と、該フィルム状接着剤が外面上に巻かれた巻芯と、を備える接着剤リール。
【請求項13】
前記巻芯の直径が30〜150mmである請求項12記載の接着剤リール。
【請求項14】
前記フィルム状接着剤の幅が0.3〜10mmである請求項12又は13記載の接着剤リール。
【請求項15】
前記フィルム状接着剤の長さが50〜500mである請求項12〜14のいずれか一項に記載の接着剤リール。
【請求項16】
対向配置され、電気的に接続された一対の回路電極と、
前記一対の回路電極の間に設けられ、前記一対の回路電極を接続する回路接続部と、を備える回路接続構造体であって、
前記回路接続部が請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料の硬化物を有する回路接続構造体。
【請求項17】
前記一対の回路電極の一方が半導体素子の回路電極であり、
前記一対の回路電極の他方が前記半導体素子を搭載する搭載用基板の回路電極である、請求項16記載の回路接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−183049(P2010−183049A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109705(P2009−109705)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】