説明

圧電振動子、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計

【課題】圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすること。
【解決手段】互いに重ね合わせられて接合されたベース基板2およびリッド基板3と、これらの両基板2、3の間に形成されたキャビティCと、を有するパッケージ9と、同一のキャビティC内に収容された圧電振動片4およびゲッター材27と、を備え、キャビティC内に、圧電振動片4とゲッター材27との間を遮蔽する遮蔽壁21が設けられ、遮蔽壁21は、ベース基板2およびリッド基板3の両方に接続されている圧電振動子1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等の圧電材料からなる圧電振動片を利用した圧電振動子が用いられている。圧電振動片としては、例えば一対の振動腕部を備えた音叉型の圧電振動片が採用されている。
【0003】
この種の圧電振動子として、表面実装型(SMD、Surface Mount Device)の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子としては、例えば、ベース基板とリッド基板とでパッケージを形成し、パッケージの内部に形成されたキャビティに圧電振動片を収容したものが提案されている。
【0004】
ところで、一般に圧電振動子は、等価抵抗値(実効抵抗値、Re)を低く抑えることが望まれている。等価抵抗値が低い圧電振動子は、低電力で圧電振動片を振動させることが可能であるため、エネルギー効率のよい圧電振動子になる。
等価抵抗値を抑えるための一般的な方法の一つとして、キャビティ内を真空に近づけて、等価抵抗値と比例関係にある直列共振抵抗値(R1)を低下させる方法が知られている。そして、キャビティ内を真空に近づける方法として、キャビティ内にゲッター材を収容し、外部よりレーザを照射してゲッター材を活性化させる方法(ゲッタリング)が知られている(下記特許文献1参照)。この方法によれば、活性化状態になったゲッター材によって、ゲッター材の周囲のガス(例えば酸素)を吸収することができるので、キャビティ内を真空に近づけることができる。
【0005】
また、一般的な圧電振動子の製造方法では、前述したゲッタリングの前に圧電振動片の周波数の粗調工程が行われており、目標とする周波数(公称周波数)の近くに圧電振動片の周波数が収まるように周波数調整が行われている。そして、ゲッタリングによって直列共振抵抗値を調整した後、圧電振動片の周波数の微調工程を行って、圧電振動片の周波数を最終的に公称周波数の範囲内に追い込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−86585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の圧電振動子では、まだ以下の課題が残されていた。
すなわち、ゲッター材を、レーザ照射などにより活性化したときに、蒸発したゲッター材が飛散して圧電振動片に付着する可能性が高い。そして、圧電振動片にゲッター材が付着してしまうと、圧電振動片の周波数が変化してしまうという問題がある。この周波数の変化は、ゲッター材が付着する位置に応じて異なるものであり、例えば圧電振動片が音叉型である場合、振動腕部の先端部に付着すると周波数が低くなり、振動腕部の基端部に付着すると周波数が高くなる傾向がある。
なお、ゲッタリングの前後で圧電振動片の周波数が変化してしまうと、粗調工程で公称周波数の近くまで追い込んだ周波数が微調工程前に変化してしまい、微調工程で公称周波数の範囲内に追い込むことが困難になってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる圧電振動子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る圧電振動子は、互いに重ね合わせられて接合されたベース基板およびリッド基板と、これらの両基板の間に形成されたキャビティと、を有するパッケージと、同一の前記キャビティ内に収容された圧電振動片およびゲッター材と、を備える圧電振動子であって、前記キャビティ内に、前記圧電振動片と前記ゲッター材との間を遮蔽する遮蔽壁が設けられ、前記遮蔽壁は、前記ベース基板および前記リッド基板の両方に接続されていることを特徴とする。
また、前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側において、前記ゲッター材にレーザ照射痕が形成されていても良い。
【0010】
この発明によれば、キャビティ内に、圧電振動片とゲッター材との間を遮蔽する遮蔽壁が設けられているので、遮蔽壁を挟んで圧電振動片の反対側において、ゲッター材をレーザ照射により活性化したときに、蒸発したゲッター材が圧電振動片側に向けて飛散したとしても、遮蔽壁に付着することとなる。したがって、ゲッター材が圧電振動片に付着するのを抑制することができる。
しかも、遮蔽壁が、ベース基板およびリッド基板の両方に接続されているので、例えば遮蔽壁とベース基板またはリッド基板との間に隙間があいている場合に比べて、ゲッター材が圧電振動片に付着するのを確実に抑制することができる。
【0011】
以上より、圧電振動片にゲッター材が付着するのを確実に抑制することが可能になり、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる。
なお、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることで、ゲッタリング後の圧電振動片の周波数の微調が容易になることから、当該圧電振動子を容易に製造することが可能になり、当該圧電振動子の低コスト化も図ることができる。
【0012】
また、前記キャビティの少なくとも一部は、前記リッド基板に形成された凹部で構成され、前記遮蔽壁は、前記凹部の底面から前記ベース基板側に向けて、前記リッド基板と一体に形成されていても良い。
【0013】
この場合、遮蔽壁が、凹部の底面からベース基板側に向けて、リッド基板と一体に形成されているので、当該圧電振動子を製造する際に凹部と遮蔽壁とを同時に形成することが可能になり、当該圧電振動子の製造の簡素化を図ることができる。
【0014】
また、前記リッド基板の内面全体に金属膜が形成され、前記金属膜は、前記ベース基板との当接部に形成された部分において、前記ベース基板との接合膜として機能するとともに、前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側に形成された部分において、前記ゲッター材として機能しても良い。
【0015】
この場合、金属膜が、ベース基板との当接部に形成された部分において、ベース基板との接合膜として機能するとともに、遮蔽壁を挟んで圧電振動片の反対側に形成された部分において、ゲッター材として機能する。したがって、接合膜とゲッター材とを各別に形成する場合に比べて、当該圧電振動子の製造の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、前記圧電振動片は、一対の振動腕部を有する音叉型とされ、前記遮蔽壁は、前記一対の振動腕部の並列方向の両外側に形成され、前記振動腕部の長手方向に沿って延設されていても良い。
【0017】
この場合、遮蔽壁が、一対の振動腕部の並列方向の両外側に形成され、振動腕部の長手方向に沿って延設されているので、ゲッター材の形成領域を広く確保することができる。
【0018】
また、前記振動腕部の長手方向における前記遮蔽壁の長さは、前記振動腕部の長手方向における前記ゲッター材の長さより長くなっていても良い。
【0019】
この場合、振動腕部の長手方向における遮蔽壁の長さが、振動腕部の長手方向におけるゲッター材の長さより長くなっているので、蒸発したゲッター材が遮蔽壁を挟んで圧電振動片側に飛散するのではなく、仮に、遮蔽壁を回り込むように圧電振動片側に飛散した場合であっても、ゲッター材が遮蔽壁に付着することとなる。したがって、ゲッター材が圧電振動片に付着するのをより一層確実に抑制することが可能になり、圧電振動片の周波数の変化を確実に抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、互いに重ね合わせられて接合されたベース基板およびリッド基板と、これらの両基板の間に形成されたキャビティと、を有するパッケージと、同一の前記キャビティ内に収容された圧電振動片およびゲッター材と、を備える圧電振動子であって、前記キャビティ内に、前記圧電振動片と前記ゲッター材との間を遮蔽する遮蔽壁が設けられ、前記遮蔽壁は、前記ベース基板および前記リッド基板の両方に接続された圧電振動子の製造方法であって、前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側において、前記ゲッター材にレーザを照射して前記ゲッター材を活性化するゲッタリング工程を備えていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、ゲッタリング工程時に、遮蔽壁を挟んで圧電振動片の反対側において、ゲッター材にレーザを照射してゲッター材を活性化するので、蒸発したゲッター材が圧電振動片側に向けて飛散したとしても、遮蔽壁に付着することとなる。したがって、ゲッター材が圧電振動片に付着するのを抑制することができる。
しかも、遮蔽壁が、ベース基板およびリッド基板の両方に接続されているので、例えば遮蔽壁とベース基板またはリッド基板との間に隙間があいている場合に比べて、ゲッター材が圧電振動片に付着するのを確実に抑制することができる。
【0022】
以上より、圧電振動片にゲッター材が付着するのを確実に抑制することが可能になり、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる。
なお、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることで、ゲッタリング工程後の圧電振動片の周波数の微調工程が容易になることから、圧電振動子を容易に製造することが可能になり、圧電振動子の低コスト化も図ることができる。
【0023】
また、前記キャビティの少なくとも一部を構成する凹部を前記リッド基板に形成する凹部形成工程を備え、前記凹部形成工程の際、前記遮蔽壁を、前記凹部の底面から前記ベース基板側に向けて、前記リッド基板と一体に形成しても良い。
【0024】
この場合、凹部形成工程の際、遮蔽壁を、凹部の底面からベース基板側に向けて、リッド基板と一体に形成するので、凹部と遮蔽壁とを同時に形成することが可能になり、当該製造方法の簡素化を図ることができる。
【0025】
また、本発明に係る発振器は、前記本発明に係る圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、前記本発明に係る圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、前記本発明に係る圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0026】
これらの発明によれば、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングされることで低コスト化が図られた圧電振動子を備えているので、同様に低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、圧電振動片の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図であって、圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の横断面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図2に示すB−B線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図5】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図6】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図7】図6に示す圧電振動片の下面図である。
【図8】図6に示す断面矢視C−C図である。
【図9】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図10】図9に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態を示す圧電振動子の横断面図である。
【図12】図11に示すD−D線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図13】図11に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図15】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図16】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る圧電振動子を説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図5に示すように、互いに重ね合わせられて接合されたベース基板2およびリッド基板3と、これらの両基板2、3の間に形成されたキャビティCと、を有するパッケージ9と、キャビティC内に収容された圧電振動片4と、を備える表面実装型の圧電振動子である。
なお、図5においては、図面を見易くするために後述する励振電極13、引き出し電極16、マウント電極14及び重り金属膜17の図示を省略している。
【0030】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、図6から図8に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、この一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる励振電極13と、この励振電極13に電気的に接続されたマウント電極14とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、この振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部15を備えている。この溝部15は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0031】
上記励振電極13は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図8に示すように、一方の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部15上と、他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、他方の励振電極13が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部15上とに主に形成されている。
【0032】
また、励振電極13は、図6及び図7に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極16を介してマウント電極14に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極14を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極13、マウント電極14及び引き出し電極16は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0033】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜17が被膜されている。なお、この重り金属膜17は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜17aと、微小に調整する際に使用される微調膜17bとに分かれている。これら粗調膜17a及び微調膜17bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0034】
このように構成された圧電振動片4は、図2、図3及び図5に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2側にバンプ接合されている。より具体的には、後述する引き回し電極28上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極14がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の内面(上面)から浮いた状態で支持されると共に、マウント電極14と引き回し電極28とがそれぞれ電気的に接続される。
【0035】
(ベース基板)
図1から図5に示すように、上記ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、板状に形成されている。
図2および図3に示すように、ベース基板2には、このベース基板2を貫通する一対のスルーホール25が形成されている。一対のスルーホール25は、キャビティCの対角線の両端部に形成されている。そして、これら一対のスルーホール25には、このスルーホール25を埋めるように形成された一対の貫通電極26が形成されている。この貫通電極26は、スルーホール25を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持すると共に、後述する外部電極29と引き回し電極28とを導通させる役割を担っている。
【0036】
なお本実施形態では、図3に示すように、ベース基板2を真っ直ぐに貫通したスルーホール25を例に挙げて説明するが、この場合に限られず、例えばベース基板2の外面(下面)に向かって漸次径が縮径又は拡径するテーパー状に形成しても構わない。いずれにしても、ベース基板2を貫通していれば良い。
【0037】
図5に示すように、ベース基板2の内面には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、一対の引き回し電極28がパターニングされている。
一対の引き回し電極28は、一対の貫通電極26のうち、一方の貫通電極26と圧電振動片4の一方のマウント電極14とを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極26と圧電振動片4の他方のマウント電極14とを電気的に接続するようにパターニングされている。
【0038】
そして、これら一対の引き回し電極28上にバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極14が、一方の引き回し電極28を介して一方の貫通電極26に導通し、他方のマウント電極14が、他方の引き回し電極28を介して他方の貫通電極26に導通している。
【0039】
また、ベース基板2の外面には、図1、図3及び図5に示すように、一対の貫通電極26に対してそれぞれ電気的に接続される一対の外部電極29が形成されている。つまり、一方の外部電極29は、一方の貫通電極26及び一方の引き回し電極28を介して圧電振動片4の一方の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極29は、他方の貫通電極26及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片4の他方の励振電極13に電気的に接続されている。
【0040】
(リッド基板)
上記リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1、図3、図4及び図5に示すように、ベース基板2に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
図3に示すように、リッド基板3のベース基板2側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で、ベース基板2に陽極接合されている。本実施形態では、リッド基板3において、凹部3aの外周縁に全周にわたって外側から連なりベース基板2と当接する当接面(当接部)が、ベース基板2に陽極接合されている。
【0041】
また、図2および図4に示すように、リッド基板3には、凹部3aの底面からベース基板2側に向けて延びる遮蔽壁21が、リッド基板3と一体に形成されている。本実施形態では、遮蔽壁21は、一対の振動腕部10、11の並列方向の両外側に形成され、振動腕部10、11の長手方向に沿って延設されている。
また図4に示すように、遮蔽壁21は、ベース基板2およびリッド基板3の両方に接続されている。図示の例では、遮蔽壁21は、その端面がベース基板2に当接するまで、凹部3aの底面から延びている。
【0042】
また、図3および図4に示すように、リッド基板3の内面全体、つまり凹部3aの内面および前記当接面には、金属膜27が形成されている。本実施形態では、金属膜27は、リッド基板3の内面全体と、遮蔽壁21の表面全体と、に形成されている。そして、金属膜27は、ベース基板2との前記当接面に形成された部分において、ベース基板2との接合膜として機能するとともに、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に形成された部分において、ゲッター材として機能する。
【0043】
本実施形態では、金属膜27は、陽極接合可能で、かつレーザ照射により活性化して周囲のガス(例えば酸素)を吸着しうる材料(例えばアルミニウム)で形成されている。
そして図4に示すように、金属膜27は、リッド基板3の前記当接面に形成された部分においてベース基板2と陽極接合されている。なお図示の例では、金属膜27は、遮蔽壁21の端面に形成された部分においてもベース基板2と陽極接合されている。
【0044】
また、金属膜27が、前述のようにレーザ照射により活性化して周囲のガスを吸着しうる材料で形成されていることから、キャビティC内に形成された金属膜27は、レーザ照射により活性化してキャビティC内のガスを吸着するゲッター材として機能する。
また本実施形態では、図4に示すように、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側において、金属膜27にレーザ照射痕30が形成されている。レーザ照射痕30は、後述するゲッタリング工程時に、金属膜27がレーザ照射されて除去されることで形成される。例えば、金属膜27の一点にレーザを照射(点照射)すると、レーザ照射痕30は椀状に形成される。またレーザを走査しながら点照射を短距離間隔で繰り返すと、レーザ照射痕30は溝状に形成される。
【0045】
このように構成された圧電振動子1において、圧電振動片4とゲッター材(キャビティC内に形成された金属膜27)は、同一キャビティC内に収容されるとともに、遮蔽壁21は、圧電振動片4とゲッター材(遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に形成された金属膜27)との間を遮蔽することとなる。
【0046】
そして、前記圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極29に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の励振電極13に電流を流すことができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0047】
(圧電振動子の製造方法)
次に、前述した圧電振動子1を製造する方法について、図9および図10を参照して説明する。なお、図10に示す点線Mは、後述する切断工程で切断する切断線を図示している。また本実施形態では、ウエハ状の基板を利用して圧電振動子1を一度に複数製造するが、これに限られたものではなく、例えば予めベース基板2及びリッド基板3の外形に寸法を合わせたものを加工して、一度に一つのみ製造する等しても構わない。
【0048】
はじめに、圧電振動片作製工程を行って図6から図8に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後、ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、このウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングすると共に、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極13、引き出し電極16、マウント電極14及び重り金属膜17を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0049】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調(粗調工程)を行っておく。これは、重り金属膜17の粗調膜17aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。これにより、目標とする周波数(公称周波数)の近くに圧電振動片4の周波数(共振周波数)を収めることができる。なお、圧電振動片4の周波数をより高精度に調整して、周波数を最終的に公称周波数の範囲内に追い込む微調工程に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0050】
次に図10に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50のベース基板用ウエハ40側に、行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
【0051】
ここで本実施形態では、この凹部形成工程の際、遮蔽壁21を、凹部3aの底面からベース基板2側に向けて、リッド基板3と一体に形成する。この際、リッド基板用ウエハ50をエッチング加工することで、凹部3aと遮蔽壁21とを同時に形成しても構わない。また、治具を利用して、リッド基板用ウエハ50を加熱しながら上下からプレスすることで、凹部3aと遮蔽壁21とを同時に形成しても構わない。更には、リッド基板用ウエハ50上の必要箇所にガラスペーストをスクリーン印刷することで、凹部3aと遮蔽壁21とを同時に形成しても構わない。いずれの方法であっても構わない。
【0052】
次いで、凹部3aが形成されたリッド基板用ウエハ50の内面全体にわたって金属膜27を形成する金属膜形成工程を行う(S23)。この際、例えば蒸着やスパッタリング等により金属膜27を形成する。
この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0053】
次に図10に示すように、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0054】
次いで図5に示すように、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対のスルーホール25を複数形成する貫通孔形成工程(S32)を行う。次いで、複数の一対のスルーホール25を図示しない導電体で埋めて、一対の貫通電極26を形成する貫通電極形成工程を行う(S33)。次に、ベース基板用ウエハ40の内面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極26にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極28を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。
この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0055】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極28を介してベース基板用ウエハ40の内面にバンプ接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極28上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4がバンプBに機械的に支持されてベース基板用ウエハ40の内面から浮いた状態となり、またマウント電極14と引き回し電極28とが電気的に接続された状態となる。
【0056】
圧電振動片4のマウントが終了した後、図10に示すように、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に形成されるキャビティC内に収容される。さらに、遮蔽壁21の端面(金属膜27)とベース基板用ウエハ40とが当接し、遮蔽壁21が両ウエハ40、50に接続される。
【0057】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、金属膜27とベース基板用ウエハ40との間に所定の電圧を印加する。すると、金属膜27とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、リッド基板用ウエハ50の前記当接面および遮蔽壁21の端面とベース基板用ウエハ40とがそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、リッド基板用ウエハ50および遮蔽壁21とベース基板用ウエハ40とがそれぞれ接合され、キャビティC内に圧電振動片4が封止された図10に示すウエハ体60を得ることができる。
【0058】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の外面に導電性材料をパターニングして、一対の外部電極29を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極29を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができるようになる。
【0059】
次に、キャビティC内の真空度を向上させるゲッタリング工程を行う。ここで本実施形態では、ゲッタリング工程時に、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側において、金属膜27にレーザを照射して金属膜27を活性化する。具体的には、ベース基板用ウエハ40側からレーザ光を複数回照射して、金属膜27を活性化する。すると、活性化した金属膜27が蒸発し、キャビティC内のガス(例えば酸素)を吸収するので真空度が向上する。この結果、圧電振動片4の直列共振抵抗値(R1)を調整することができる。なおこの際、図4に示すように、金属膜27においてレーザが照射された部分にレーザ照射痕30が形成される。
【0060】
ここで図4に示すように、キャビティC内に前記遮蔽壁21が設けられているので、蒸発した金属膜27が圧電振動片4側に向けて飛散したとしても、遮蔽壁21に付着することとなる。したがって、金属膜27が圧電振動片4に付着するのを抑制することができる。しかも、遮蔽壁21が、ベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ50の両方に接続されているので、例えば遮蔽壁21とベース基板用ウエハ40またはリッド基板用ウエハ50との間に隙間があいている場合に比べて、金属膜27が圧電振動片4に付着するのを確実に抑制することができる。
【0061】
次に、図10に示すウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動片4の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S90)。具体的に説明すると、外部電極29に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、例えば周波数を計測しながらリッド基板用ウエハ50を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜17の微調膜17bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10、11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0062】
周波数の微調が終了した後、図10に示すウエハ体60を切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S100)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
なお、切断工程(S100)を行って個々の圧電振動子1に小片化した後に、微調工程(S90)を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程(S90)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので、より好ましい。
【0063】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電振動子1によれば、ゲッタリング工程時に圧電振動片4に金属膜27が付着するのを確実に抑制することが可能になり、圧電振動片4の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる。
またこれにより、微調工程において、圧電振動片4の周波数を公称周波数の範囲内に容易に追い込むことができることから、当該圧電振動子1を容易に製造することが可能になり、当該圧電振動子1の低コスト化を図ることができる。
【0065】
また、遮蔽壁21が、凹部3aの底面からベース基板2側に向けて、リッド基板3と一体に形成されているので、当該圧電振動子1を製造する際に凹部3aと遮蔽壁21とを同時に形成することが可能になり、当該圧電振動子1の製造の簡素化を図ることができる。
また、金属膜27が、ベース基板2との当接面に形成された部分において、ベース基板2との接合膜として機能するとともに、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に形成された部分において、ゲッター材として機能する。したがって、接合膜とゲッター材とを各別に形成する場合に比べて、当該圧電振動子1の製造の簡素化を図ることができる。
【0066】
なお本実施形態では、ゲッタリング工程時、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に位置する金属膜27にのみレーザを照射するものとしたが、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に位置する金属膜27を照射し終えた後、キャビティC内に位置する他部分の金属膜27をレーザ照射することも可能である。この場合、キャビティC内の真空度をさらに向上させることができる。なおその結果、前記レーザ照射痕30が、金属膜27において、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側以外にも形成されることとなる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る圧電振動子を、図11から図13を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11および図12に示すように、本実施形態の圧電振動子70では、リッド基板3の内面全体には、前記金属膜27ではなく、非金属材料(例えばシリコン)からなる接合膜71が形成されている。接合膜71は、リッド基板3の前記当接面に形成された部分、および遮蔽壁21の端面に形成された部分においてベース基板2と陽極接合されている。
【0068】
また図11に示すように、キャビティC内には、ゲッター材72が形成されている。ゲッター材72は、一対の振動腕部10、11の並列方向の両外側に形成され、振動腕部10、11の長手方向に沿って延設されている。図示の例では、ゲッター材72は、ベース基板2の内面におけるリッド基板3との当接部に隣接する領域に形成されている。
【0069】
そして図12に示すように、前記遮蔽壁21は、圧電振動片4とゲッター材72との間を遮蔽している。遮蔽壁21は、リッド基板3の法線方向からの平面視で、ゲッター材72と圧電振動片4との間に配設されている。
また、振動腕部10、11の長手方向における遮蔽壁21の長さは、振動腕部10、11の長手方向におけるゲッター材72の長さより長くなっている。さらに、ゲッター材72は、前記長手方向において遮蔽壁21の内側に配設されている。つまり、ゲッター材72は全長にわたって、キャビティC内において遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に形成されている。
なおゲッター材72には、前記レーザ照射痕30が形成されている。
【0070】
次に、前述した圧電振動子70を製造する方法について、図13を参照して説明する。
本実施形態では、第1のウエハ作製工程(S20)において、金属膜形成工程(S23)に代えて、凹部3aが形成されたリッド基板用ウエハ50の内面全体にわたって接合膜71を形成する接合膜形成工程を行う(S23A)。
【0071】
また第2のウエハ作製工程(S30)において、ゲッター材72を形成するゲッター材形成工程(S35)を行う。なお、引き回し電極形成工程(S34)およびゲッター材形成工程(S35)は、どちらの工程を先に行っても良く、さらに、引き回し電極28およびゲッター材72を同一材料で形成する場合には、同時に行っても良い。
【0072】
そして、ゲッタリング工程(S80)において、ゲッター材72をレーザ照射してゲッター材72を活性化する。すると、活性化したゲッター材72が蒸発し、キャビティC内のガス(例えば酸素)を吸収するので真空度が向上する。この結果、圧電振動片4の直列共振抵抗値(R1)を調整することができる。なおこの際、ゲッター材72においてレーザを照射された部分にレーザ照射痕30が形成される。
【0073】
ここで、キャビティC内に前記遮蔽壁21が設けられているので、蒸発したゲッター材72が圧電振動片4側に向けて飛散したとしても、遮蔽壁21に付着することとなる。したがって、ゲッター材72が圧電振動片4に付着するのを抑制することができる。しかも、遮蔽壁21が、ベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ50の両方に接続されているので、例えば遮蔽壁21とベース基板用ウエハ40またはリッド基板用ウエハ50との間に隙間があいている場合に比べて、ゲッター材72が圧電振動片4に付着するのを確実に抑制することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電振動子70によれば、圧電振動片4にゲッター材72が付着するのを確実に抑制することが可能になり、圧電振動片4の周波数の変化を抑制した上でゲッタリングすることができる。
またこれにより、微調工程において、圧電振動片4の周波数を公称周波数の範囲内に容易に追い込むことができることから、当該圧電振動子70を容易に製造することが可能になり、当該圧電振動子70の低コスト化を図ることができる。
【0075】
また、遮蔽壁21が、一対の振動腕部10、11の並列方向の両外側に形成され、振動腕部10、11の長手方向に沿って延設されているので、ゲッター材72の形成領域を広く確保することができる。
さらに、振動腕部10、11の長手方向における遮蔽壁21の長さが、振動腕部10、11の長手方向におけるゲッター材72の長さより長くなっているので、蒸発したゲッター材72が遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4側に飛散するのではなく、仮に、遮蔽壁21を回り込むように圧電振動片4側に飛散した場合であっても、ゲッター材72が遮蔽壁21に付着することとなる。したがって、ゲッター材72が圧電振動片4に付着するのをより一層確実に抑制することが可能になり、圧電振動片4の周波数の変化を確実に抑制することができる。
【0076】
なお本実施形態では、振動腕部10、11の長手方向における遮蔽壁21の長さは、振動腕部10、11の長手方向におけるゲッター材72の長さより長くなっているものとしたが、これに限られるものではなく、短くなっていても良い。
この場合、ゲッタリング工程において、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に位置するゲッター材72をレーザ照射することで、飛散したゲッター材72を遮蔽壁21に付着させることができる。なおこの結果、前記レーザ照射痕30が、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側のゲッター材72に形成されることとなる。
またこの場合、遮蔽壁21を挟んで圧電振動片4の反対側に位置するゲッター材72をレーザ照射した後、前記長手方向で遮蔽壁21の外側に位置するゲッター材72をさらにレーザ照射することで、キャビティC内の真空度をさらに向上させることも可能である。
【0077】
また本実施形態では、接合膜71は、非金属材料で形成されているものとしたが、金属材料で形成されていても良い。
【0078】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図14を参照しながら説明する。
なお、以下に示す各実施形態では、圧電振動子として第1実施形態に係る圧電振動子1を用いる場合を示しているが、第2実施形態に係る圧電振動子70を用いても同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
本実施形態の発振器100は、図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0080】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0081】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、低コスト化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に低コスト化することができる。
【0082】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図15を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0083】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図15に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0084】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0085】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0086】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0087】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0088】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0089】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0090】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、低コスト化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体も同様に低コスト化することができる。
【0091】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図16を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図16に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0092】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部(圧電振動片)138、139をそれぞれ備えている。
【0093】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0094】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0095】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、低コスト化された圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体も同様に低コスト化することができる。
【0096】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記各実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10、11の両面に溝部15が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部15がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部15を形成することで、一対の励振電極13に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極13間における電界効率を上げることができるため、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部15を形成する方が好ましい。
【0097】
また、前記各実施形態では、ベース基板2とリッド基板3とを金属膜27もしくは接合膜71を介して陽極接合したが、陽極接合に限定されるものではない。但し、陽極接合することで、両基板2、3を強固に接合できるため好ましい。
また、前記各実施形態では、圧電振動片4をバンプ接合したが、バンプ接合に限定されるものではない。例えば、導電性接着剤により圧電振動片4を接合しても構わない。但し、バンプ接合することで、圧電振動片4をベース基板2の内面から浮かすことができ、振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、バンプ接合することが好ましい。
【0098】
また前記各実施形態では、遮蔽壁21は、リッド基板3と一体に形成されているものとしたが、キャビティC内においてベース基板2およびリッド基板3の両方に接続され、圧電振動片4とゲッター材72(金属膜27)との間を遮蔽すれば、これに限られるものではない。例えば、遮蔽壁は、ベース基板2と一体に形成されるとともに、その端面がリッド基板3に当接、接合されていていても良い。また、遮蔽壁は、ベース基板2およびリッド基板3の双方と異なる部材で形成され、両端面がベース基板2およびリッド基板3に各別に当接、接合されていても良い。
【0099】
また前記各実施形態では、キャビティCが、リッド基板3に形成された凹部3aによって構成されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ベース基板2にキャビティ用の凹部が形成されていても良く、ベース基板2およびリッド基板3の双方に凹部が形成されていても良い。
【0100】
また前記各実施形態では、遮蔽壁21は、一対の振動腕部10、11の並列方向の両外側に形成され、振動腕部10、11の長手方向に沿って延設されているものとしたが、圧電振動片4とゲッター材72(金属膜27)との間を遮蔽するものであれば、これに限られるものではない。例えば、遮蔽壁21は、振動腕部10、11の先端縁よりも前記長手方向の外側に形成されていても良い。
【0101】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1、70 圧電振動子
2 ベース基板
3 リッド基板
3a 凹部
4 圧電振動片
9 パッケージ
10、11 振動腕部
21 遮蔽壁
27 金属膜
30 レーザ照射痕
40 ベース基板用ウエハ(ベース基板)
50 リッド基板用ウエハ(リッド基板)
72 ゲッター材
100 発振器
101 発振器の集積回路
110 携帯情報機器(電子機器)
113 電子機器の計時部
130 電波時計
131 電波時計のフィルタ部
C キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わせられて接合されたベース基板およびリッド基板と、これらの両基板の間に形成されたキャビティと、を有するパッケージと、
同一の前記キャビティ内に収容された圧電振動片およびゲッター材と、を備える圧電振動子であって、
前記キャビティ内に、前記圧電振動片と前記ゲッター材との間を遮蔽する遮蔽壁が設けられ、
前記遮蔽壁は、前記ベース基板および前記リッド基板の両方に接続されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
請求項1記載の圧電振動子であって、
前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側において、前記ゲッター材にレーザ照射痕が形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の圧電振動子であって、
前記キャビティの少なくとも一部は、前記リッド基板に形成された凹部で構成され、
前記遮蔽壁は、前記凹部の底面から前記ベース基板側に向けて、前記リッド基板と一体に形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の圧電振動子であって、
前記リッド基板の内面全体に金属膜が形成され、
前記金属膜は、前記ベース基板との当接部に形成された部分において、前記ベース基板との接合膜として機能するとともに、前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側に形成された部分において、前記ゲッター材として機能することを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項1から3いずれか1項に記載の圧電振動子であって、
前記圧電振動片は、一対の振動腕部を有する音叉型とされ、
前記遮蔽壁は、前記一対の振動腕部の並列方向の両外側に形成され、前記振動腕部の長手方向に沿って延設されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の圧電振動子であって、
前記振動腕部の長手方向における前記遮蔽壁の長さは、前記振動腕部の長手方向における前記ゲッター材の長さより長くなっていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
互いに重ね合わせられて接合されたベース基板およびリッド基板と、これらの両基板の間に形成されたキャビティと、を有するパッケージと、
同一の前記キャビティ内に収容された圧電振動片およびゲッター材と、を備える圧電振動子であって、
前記キャビティ内に、前記圧電振動片と前記ゲッター材との間を遮蔽する遮蔽壁が設けられ、
前記遮蔽壁は、前記ベース基板および前記リッド基板の両方に接続された圧電振動子の製造方法であって、
前記遮蔽壁を挟んで前記圧電振動片の反対側において、前記ゲッター材にレーザを照射して前記ゲッター材を活性化するゲッタリング工程を備えていることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の圧電振動子の製造方法であって、
前記キャビティの少なくとも一部を構成する凹部を前記リッド基板に形成する凹部形成工程を備え、
前記凹部形成工程の際、前記遮蔽壁を、前記凹部の底面から前記ベース基板側に向けて、前記リッド基板と一体に形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6いずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項1から6いずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1から6いずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−49665(P2011−49665A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194475(P2009−194475)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】