圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び電子機器
【課題】基本波で高周波、且つ小型であり、主振動のCI値が小さく、スプリアスのCI値比の大きな圧電振動素子を得る。
【解決手段】圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12の一辺を除いた三辺に沿って一体化されたコ字状の厚肉支持部を有する圧電基板10と、振動領域12の表面及び裏面に夫々配置された励振電極25a、25bと、リード電極27a、27bと、を備えている。厚肉支持部は、振動領域12を挟んで対向配置された第1の支持部14、及び第2の支持部16と、第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部18と、を備えている。第2の支持部14は、振動領域12の一辺に連設し第2の傾斜部14bと、第2の傾斜部14bの他端縁に連設する厚肉の第2の支持部本体14aと、を備え、第2の支持部14には、少なくとも一つの応力緩和用のスリット20が貫通形成されている。
【解決手段】圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12の一辺を除いた三辺に沿って一体化されたコ字状の厚肉支持部を有する圧電基板10と、振動領域12の表面及び裏面に夫々配置された励振電極25a、25bと、リード電極27a、27bと、を備えている。厚肉支持部は、振動領域12を挟んで対向配置された第1の支持部14、及び第2の支持部16と、第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部18と、を備えている。第2の支持部14は、振動領域12の一辺に連設し第2の傾斜部14bと、第2の傾斜部14bの他端縁に連設する厚肉の第2の支持部本体14aと、を備え、第2の支持部14には、少なくとも一つの応力緩和用のスリット20が貫通形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みすべり振動モードを励振する圧電振動子に関し、特に所謂逆メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明に係る圧電振動子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、励振する主振動の振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、圧電発振器、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った、所謂逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板のZ’軸方向の長さが、X軸方向の長さより長い、所謂Z’ロング基板を用いている。
特許文献2には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉支持部が連設され、コ字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。更に、水晶振動片は、ATカット水晶基板のX軸とZ’軸を、夫々Y’軸を中心に−120°〜+60°の範囲で回転させてなる面内回転ATカット水晶基板であり、振動領域を確保し、且つ量産性に優れた(多数個取り)構造であるという。
【0003】
特許文献3、4には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉支持部が連設され、コ字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されており、水晶振動片は水晶基板のX軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロング基板が用いられている。
特許文献5には、矩形状の薄肉の振動部の隣接する二辺に各々厚肉支持部が連設され、L字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板にはZ’ロング基板が用いられている。
しかしながら、特許文献5においては、
L字状の厚肉部を得るために、特許文献5の図1(c)、(d)に記載されているように線分αと、線分βに沿って厚肉部を削除しているが、当該削除はダイシング等の機械加工で削除することを前提としているため、切断面にチッピングやクラック等のダメージを負い、超薄部が破損してしまう問題がある。また、振動領域にスプリアスの原因となる不要振動の発生やCI値の増加等の問題が発生する。
特許文献6には、薄肉の振動部の一辺のみに厚肉支持部が連設された逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献7には、水晶基板の両主面であって表裏面で対向するように凹陥部を形成することにより、高周波化を図った逆メサ構造のATカット振動子が開示されている。水晶基板にはXロング基板が用いられ、凹陥部に形成された振動領域の平坦性が確保された領域に励振電極が設けられ構造が提案されている。
ところで、ATカット水晶振動子の振動領域に励振される厚み滑り振動モードは、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状になることが知られている。特許文献8には、圧電基板の表裏両面に表裏対称に配置された一対のリング状電極を有する厚みすべり振動を励振する圧電振動子が開示されている。リング状電極が対称零次モードのみを励起し、それ以外の非調和高次モードをほとんど励起しないように、リング状電極の外周の径と内周の径との差を設定したものである。
【0005】
特許文献9には、圧電基板、及び圧電基板の表裏に設ける励振電極の形状を、共に長円形状にした圧電振動子が開示されている。
特許文献10には、水晶基板の長手方向(X軸方向)の両端部、及び電極のX軸方向の両端部の形状を共に半楕円状とし、且つ楕円の長軸対短軸の比(長軸/短軸)を、ほぼ1.26とした水晶振動子が開示されている。
特許文献11には、楕円の水晶基板上に楕円の励振電極を形成した水晶振動子が開示されている。長軸対短軸の比は、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮すると、1.14〜1.39:1の範囲程度が実用的であるという。
【0006】
特許文献12には、厚みすべり圧電振動子のエネルギー閉じ込め効果をより改善するために、振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた構造の圧電振動子が開示されている。
ところで、圧電振動子の小型化を図る際に、接着剤に起因する残留応力により、電気的特性の劣化や周波数エージング不良が生じる。特許文献13には、矩形平板状のATカット水晶振動子の振動部と支持部との間に、切り欠きやスリットを設けた水晶振動子が開示されている。このような構造を用いることにより、残留応力が振動領域へ広がるのを抑制できるという。
特許文献14には、マウント歪(応力)を改善(緩和)するために、逆メサ型圧電振動子の振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた振動子が開示されている。特許文献15には、逆メサ型圧電振動子の支持部にスリット(貫通孔)を設けることにより、表裏面の電極の導通を確保した圧電振動子が開示されている。
【0007】
特許文献16には、厚みすべり振動モードのATカット水晶振動子の支持部に、スリットを設けることにより、高次輪郭系の不要モードを抑圧した水晶振動子が開示されている。
また、特許文献17には、逆メサ型ATカット水晶振動子の薄肉の振動部と、厚肉の保持部との連設部、即ち傾斜面を有する残渣部に、スリットを設けることにより、スプリアスを抑圧する振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−165743公報
【特許文献2】特開2009−164824公報
【特許文献3】特開2006−203700公報
【特許文献4】特開2002−198772公報
【特許文献5】特開2002−033640公報
【特許文献6】特開2001−144578公報
【特許文献7】特開2003−264446公報
【特許文献8】特開平2−079508号公報
【特許文献9】特開平9−246903号公報
【特許文献10】特開2007−158486公報
【特許文献11】特開2007−214941公報
【特許文献12】実開昭61−187116号公報
【特許文献13】特開平9−326667号公報
【特許文献14】特開2009−158999公報
【特許文献15】特開2004−260695公報
【特許文献16】特開2009−188483公報
【特許文献17】特開2003−087087公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、圧電デバイスの小型化、高周波化、並びに高性能化に対する要求は強い。しかしながら、前述のごとき構造の圧電振動子は、主振動のCI値、近接するスプリアスCI値比(=CIs/CIm、ここでCImは主振動のCI値、CIsはスプリアスのCI値で、規格の1例は1.8以上)等が要求を満たせないという問題があることが判明した。
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、高周波化(100〜500MHz帯)を図ると共に、主振動のCI値を低減し、スプリアスCI値比等の電気的要求を満たした圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明の圧電振動子を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、矩形の振動領域、及び該振動領域と一体化された前記振動領域の厚みよりも厚い支持部を有する圧電基板と、前記振動領域の表面及び裏面に夫々配置された励振電極と、該各励振電極から前記支持部上に夫々延在して設けられたリード電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記支持部は、前記振動領域の四辺のうち1辺を開放するように、前記振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、該第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、を備え、前記第2の支持部は、前記振動領域の一辺に連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を備え、前記第2の支持部には、少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
高周波の基本波圧電振動素子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0014】
圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0016】
スリットの形成が容易になり、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、及びCI温度特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、を備えていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0018】
圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]また、圧電振動素子は、前記振動領域の一方の主面と、前記第1、第2及び第3の支持部の夫々の一方の面とは、同一面であることを特徴とする適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0020】
圧電基板を一方の面からのみエッチングして振動領域を形成することにより、元の基板の切断角度を保持した振動領域を形成することが可能となり、周波数温度特性の優れた、高周波の基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例6]また、圧電振動素子は、前記圧電基板は、水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記X軸に平行な辺を長辺とし、前記Z’軸に平行な辺を短辺とした水晶基板であることを特徴とする適用例1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動素子ある。
【0022】
温度特性の良好な圧電振動素子が得られるという効果がる。
【0023】
[適用例7]前記水晶基板がATカット水晶基板であることを特徴とする適用例6に記載の圧電振動素子である。
【0024】
圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、フォトリソグラフィー及びエッチングに関する永年の実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度のエッチングができ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
【0025】
[適用例8]本発明の圧電振動子は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子ことを特徴とする厚みすべり振動圧電振動子である。
【0026】
高周波の基本波圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動子が得られ、且つ容量比の小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例9]本発明の電子デバイスは、請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスことを特徴とする電子デバイスである。
【0028】
上記のように圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、周波数可変幅の広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例10]また、電子デバイスは、前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする電子デバイスことを特徴とする電子デバイスである。
【0030】
上記のように圧電デバイスを構成することにより、圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等の圧電デバイスを構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0031】
[適用例11]
また、電子デバイスは、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0032】
上記のように圧電デバイスを構成することにより、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0033】
[適用例12]本発明の電子機器は、適用例7に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器ことを特徴とする電子機器である。
【0034】
本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図。
【図2】ATカット水晶基板と結晶軸との関係を説明する図。
【図3】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図4】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図5】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図6】第2の実施形態例の圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図。
【図7】第3の実施形態例の圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図、(d)は平面図、(e)は他の構成例の平面図。
【図8】本発明の圧電基板の製作工程を示す説明図。
【図9】本発明の圧電振動素子の励振電極及びリード電極の製作工程を示す説明図。
【図10】(a)は圧電ウエハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部のX軸方向の断面図。
【図11】(a)は圧電ウエハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部のZ’軸方向の断面図。
【図12】(a)(b)は、本発明に係る実施形態の圧電振動子の構成を示す断面図、及び平面図である。
【図13】圧電振動子の、(a)は周波数温度特性を示す図であり、(b)はCI温度特性を示す図。
【図14】(a)、(b)は容量比の分布特性を示す図。
【図15】(a)、(b)は静電容量の分布特性を示す図。
【図16】(a)、(b)はCI値比の分布特性を示す図。
【図17】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る圧電振動子の斜視図、(c)は縦断面図である。
【図18】(a)及び(b)は本発明に係る圧電デバイスの縦断面図、及び平面図。
【図19】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの特性説明図である。
【図20】(a)及び(b)は本発明の圧電デバイスの縦断面図、及び平面図である。
【図21】圧電デバイスの縦断面図。
【図22】圧電デバイスの縦断面図。
【図23】圧電デバイスの縦断面図。
【図24】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る圧電基板の構成説明図。
【図25】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る圧電基板の構成説明図。
【図26】(a)及び(b)はマウント部の構成例を示す要部平面図、及び断面図である。
【図27】電子機器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略図である。図1(a)は圧電振動素子1の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図、(d)と(e)は外観斜視図、(f)はO−O断面図である。
圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12に連設された厚肉の支持部14、16、18を有する圧電基板10と、振動領域12の両主面に夫々表裏で対向するようにして形成された励振電極25a、25bと、励振電極25a、25bから夫々厚肉部に設けられたパッド電極29a、29bに向けて延出されて形成されたリード電極27a、27bと、を備えている。
【0037】
圧電基板10は、略四角形で矩形状をなし、且つ薄肉で平板状の振動領域12と、振動領域12の一辺を除いた三辺に沿って一体化されたコ字状の厚肉支持部(支持部)13(14、16、18)と、を備えている。厚肉支持部13は、振動領域12を挟んで対向配置された第1の支持部14、及び第2の支持部16と、第1及び第2の支持部14、16の基端部間を連設する第3の支持部18と、を備えたコ字状の構成を備えている。
つまり、厚肉支持部は、振動領域の四辺のうち1辺を開放する
ように、振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、を備える。ここで、「開放する」とは、一辺が露出している場合と、一部が露出しているのではなく完全に露出している場合を含む。
なお、本明細書では凹陥部11側を表面とし、フラット面を裏面とする。
第1の支持部14は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12aに連設し、振動領域12の一辺12aに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第1の傾斜部14bと、第1の傾斜部14bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第1の支持部本体14aと、を備えている。同様に、第2の支持部16は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12bに連設し、振動領域12の一辺12bに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第2の傾斜部16bと、第2の傾斜部16bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第2の支持部本体16aと、を備えている。
尚、前記支持部本体とは、前記Y’軸に平行な厚みが一定の領域をいう。
【0038】
第3の支持部18は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12cに連設し、振動領域12の一辺12cに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第3の傾斜部18bと、第3の傾斜部18bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第3の支持部本体16aと、を備えている。つまり、薄肉の振動領域12は、三辺を第1、第2、及び第3の支持部14、16、18に囲まれ、且つ他の一辺が開放された凹陥部11となっている。
なお、振動領域12の一方の主面と、第1、第2及び第3の支持部14、16、18の夫々の一方の面とは、同一平面上、即ち図1に示す座標軸のX−Z’平面上にあり、この面(図1(b)の下面側)を平坦面といい、反対側の面(図1(b)の上面側)を凹陥面という。
更に、圧電基板10は、第2の支持部16に少なくとも一つの応力緩和用のスリットが貫通形成されている。図1に示した実施形態例では、スリット20は第2の傾斜部16bと第2の支持部本体16aとの連接部に沿って第2の支持部本体16aの面内に形成されている。
【0039】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。そして水晶基板は、XZ面をX軸の回りに所定の角度θだけ回転させた平面に沿って、水晶から切り出された平板が圧電振動素子として用いられる。例えば、ATカット水晶基板101の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板101は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板101は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。このATカット水晶基板101を加工して、圧電基板10を得ることができる。
即ち、圧電基板10は、図2に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板からなる。
尚、本発明に係る圧電基板は、前記角度θが略35°15′のATカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動を励振するBTカット、等の圧電基板にも広く適用できるのは言うまでもない。
【0040】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。
圧電基板10を駆動する励振電極25a、25bは、図1に示す実施形態例では四角形状であり、振動領域12のほぼ中央部の表裏両面に対向して形成されている。この際、平坦面側(図1(b)の裏面側)の励振電極25bの大きさは、凹陥面側(図1(b)の上面側)の励振電極25aの大きさに対し、十分に大きく設定する。これは、励振電極の質量効果によるエネルギー閉じ込め係数を、必要以上に大きくしないためである。つまり、平坦面側の励振電極25bを十分に大きくすることにより、プレートバック量Δ(=(fs−fe)/fs、ここでfsは圧電基板のカットオフ周波数、feは圧電基板全面に励振電極を付着した場合の周波数)は、凹陥面側の励振電極25aの質量効果のみに依存する。
【0041】
励振電極25a、25bは、蒸着装置、あるいはスパッター装置等を用いて、例えば、下地にニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を重ねて成膜する。金(Au)の厚さは、オーミックロスが大きくならない範囲で、主振動のみを閉じ込めモード(S0)とし、斜対称インハーモニックモード(A0、A1・・)及び対称インハーモニックモード(S1、S3・・)を、閉じ込めモードとしないことが望ましい。しかし、例えば、490MHz帯の圧電振動素子では、電極膜厚のオーミックロスを避けるように成膜すると、低次のインハーモニックモードがある程度、閉じ込められることは避けられない。
凹陥面側に形成した励振電極25aは、振動領域12上から第3の傾斜部18bと、第3の支持部本体18aとを経由するように励振電極25aから延出して配置されたリード電極27aにより、第2の支持部本体16aの上面に形成されたパッド電極29aに導通接続されている。また、平坦面側に形成された励振電極25bは、圧電基板10の端縁部を経由するリード電極27bにより、第2の支持部本体16aの裏面(下面)に形成されたパッド電極29bと導通接続されている。
【0042】
図1(a)に示した実施形態例は、リード電極27a、27bの引出し構造の一例であり、リード電極27aは他の支持部を経由してもよい。ただ、リード電極27a、27bの長さは最短であることが望ましく、リード電極27a、27b同志が圧電基板10を挟んで交差しないように配慮することにより静電容量の増加を抑えることが望ましい。
また、図1の実施形態例では、圧電基板10の表裏(上下)面に夫々パッド電極29a、29bを形成する例を示したが、圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、図X(下図)に示すように圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aとパッケージの端子電極Aとを導電性接着剤で機械的に固定・電気的に接続し、パッド電極29bとパッケージの端子電極Bとをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
更に、下図に示すように、前記パッケージの内部に、圧電振動素子1を駆動するための発振回路、例えばICチップを搭載し、当該ICチップと電気的に接続された電極パッドと前記端子電極AやBと電気的に接続することにより圧電発振器を構成するようにしてもよい。導電性接着剤で固定・接続し、パッド電極29bとパッケージに搭載する前記ICチップの接続端子とをボンディングワイヤーで接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
また、圧電基板10の裏面側に間隔をあけて夫々パッド電極29a、29bを併置してもよい。下図に示すように、導電性接着剤を用いてパッド電極29a、29bと、圧電振動素子1を収容するパッケージの端子電極との導通接続を図る場合は、パッド電極29a、29bが圧電基板の裏面側に間隔をあけて併置されている構成の方が望ましい。
【0043】
振動領域12と、圧電振動素子1の支持部であるパッド電極29a、29bとの間にスリット20を設ける理由は、導電性接着剤の硬化時に発生する応力の広がりを防止することにある。
即ち、圧電振動素子をパッケージに導電性接着剤により支持する場合には、まず第2の支持部本体16aの被支持部(パッド電極)29aに導電性接着剤を塗布し、これをパッケージ等の端子電極に載置し、少し押さえる。導電性接着剤を硬化させるために高温で所定の時間保持する。高温状態では第2の支持部本体16a、及びパッケージも共に膨張し、接着剤も一時的に軟化するので、第2の支持部本体16aには応力は生じない。導電性接着剤が硬化した後、第2の支持部本体16a、及びパッケージが冷却してその温度が常温(25℃)に戻ると、導電性接着剤、パッケージ、及び第2の支持部本体16aの各線膨張係数との差により、硬化した道電性接着剤から生じる応力が、第2の支持部本体16aから第1及び第3の支持部14、18、振動領域12へと広がる。この応力の広がりを防止するために、応力緩和用のスリット20を設けている。
【0044】
圧電基板10に生じる応力(∝歪)分布を求めるために、有限要素法を用いてシミュレーションを行うのが一般的である。振動領域12における応力が少ない程、周波数温度特性、周波数再現性、周波数エージング特性の優れた圧電振動素子が得られる。
導電性接着剤としては、シリコン系、エポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイミド系等があるが、圧電振動素子1の脱ガスによる周波数経年変化を考慮に入れて、ポリイミド系の導電性接着剤を用いる。ポリイミド系の導電性接着剤は硬いので、離れた二カ所を支持するよりも一カ所支持の方が発生する応力の大きさを低減できるので、100〜500MHzの高周波数帯のうち、例えば490MHz帯の電圧制御型圧電発振器(VCXO)用の圧電振動素子1には、一カ所での支持する構造を用いた。つまり、パッド電極29bは導電性接着を用いてパッケージの端子電極Aに機械的に固定すると共に電気的にも接続し、他方のパッド電極29aはパッケージの端子電極Bとボンディングワイヤーを用いて電気的に接続することにした。
また、図1に示した圧電基板10は、X軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとした。これは、圧電基板10が導電性接着剤等で固定・接続される際に応力が生じるが、周知のように、ATカット水晶基板のX軸方向に沿った両端に力を加えたときの周波周変化と、Z’軸方向に沿った両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方が、周波数変化が小さい。つまり、支持点はZ’軸方向に沿って設ける方が応力による周波数変化は小さくなり、好ましい。
【0045】
図3は、図1に示した実施形態に係る圧電振動素子の変形例であり、ここでは平面図のみを示す。図1に示した実施形態例では、薄肉の振動領域12は文字通り四角形(矩形状)をしているが、図3に示す実施形態例では、薄肉の振動領域12の第3の支持部18に対応する一辺12cの両端部に相当する両角隅部が面取りされている点が異なる。このように、薄肉の振動領域12が文字通り四角形の圧電基板10に対して、図3に記載された実施形態例のように、振動領域12の角部が面取りされた構造の圧電基板10については、略四角形の概念の中に含まれるものとする。
【0046】
図1、図3の実施形態例では、励振電極25a、25bの形状として四角形、つまり正方形、または矩形(X軸方向を長辺とする)の例を示したが、これに限定する必要はない。図4に示す実施形態例は、凹陥面側(表面側)の励振電極25aが円形であり、平坦面側(裏面側)の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。なお、平坦面側(裏面側)の励振電極25bも十分に大きな円形であってもよい。
図5に示す実施形態例は、凹陥面側(表面側)の励振電極25aが楕円形であり、平坦面側(裏面側)の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。弾性定数の異方性によりX軸方向の変位分布と、Z’軸方向の変位分が異なり、変位分布をX−Z’平面に平行な面で切った切断面は、楕円形になる。そのため、楕円形状の励振電極25aを用いた場合が最も効率よく、圧電振動素子1を駆動できる。即ち、圧電振動素子1の容量比γ(=C0/C1、ここで、C0は静電容量、C1は直列共振容量)を最小にできる。また、励振電極25aは長円形であってもよい。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係る圧電振動素子2の構成を示す概略図である。図6(a)は圧電振動素子2の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図である。
圧電振動素子2が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、応力緩和用のスリット20を設ける位置である。本例では、スリット20は、薄肉の振動領域12の一辺12bの端縁より離間した第2の傾斜部16b内に形成されている。振動領域12の一辺12bに沿って、スリット20の一方の端縁が一辺12bに接するように第2の傾斜部16b内にスリット20を形成するのではなく、第2の傾斜部16bの両端縁より離間してスリット20を設けている。つまり第2の傾斜部16bには、振動領域12の一辺12bの端縁と連接する極細の傾斜部16bbが残されている。換言すれば、一辺12aとスリット20との間に極細の傾斜部16bbが形成されている。
【0048】
極細の傾斜部16bbを残した理由は次の通りである。即ち、振動領域12に配置された励振電極25a、25bに高周波電圧を印加することにより振動領域12を励振すると、主振動(S0)の他にインハーモニックモード(A0、S1、A1、S2・)が励振される。望ましいのは主振動(S0)モードのみを閉じ込めモードとし、他のインハーモニックモードは伝搬モード(非閉じ込めモード)とすることであるが、振動領域12が薄く成り、その基本波周波数が数百MHzとなると、電極膜のオーミックロスを避けるため、励振電極は所定の厚さ以上にする必要がある。このため、前記励振電極の厚みを前記所定の厚さ以上とした場合に、主振動に近接した低次のインハーモニックモードが励振されることになる。本願発明者は、この低次のインハーモニックモードの振幅の大きさを抑制するには、インハーモニックモードの定在波が成り立つ条件を妨げるようにすればよいことに思い至った。つまり、図6の振動領域12のZ’軸方向の両端縁の形状は非対称であり、またX軸方向の両端縁の形状も細片16bbを残したことにより非対称となり、低次のインハーモニックモード定在波の振幅は抑えられることを実現した。
【0049】
図7は、第3の実施形態に係る圧電振動素子3の構成を示す概略図である。図7(a)は圧電振動素子3の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図であり、同図(d)は平面図である。
圧電振動素子3が、図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、第2の支持部本体16aの面内に第1のスリット20aを設けると共に、第2の傾斜部16bの面内に第2のスリット20bを形成して、2個の応力緩和用のスリットを設けた点である。第2の支持部本体16aの面内、及び第2の傾斜部16bの面内に夫々個別のスリットを形成する目的は、前述の通り既に説明しているので、ここでは省略する。
第1のスリット20a、及び第2のスリット20bを、図7(a)に示す平面図のようにX軸方向に並置するのではなく、図7(d)に示す如くZ’軸方向に互いに離れるように段差状に配置してもよい
。2個のスリット20a、20bを設けた方が、導電性接着剤に起因して生じる応力を、振動領域12まで広げないようにすることが可能である。
【0050】
図8、図9は、圧電基板10の凹陥部11、外形及びスリット20の形成に係る製造工程を示すフローチャートである。ここでは、圧電ウエハーとして水晶ウエハーを例にして説明する。工程S1では、両面がポリッシュ加工された所定の厚さ、例えば80μmの水晶ウエハー10Wを、十分に洗浄し、乾燥した後、表裏面にスパッタリング等により、クロム(Cr)を下地にし、その上に金(Au)を積層した金属膜(耐蝕膜)Mを夫々成膜する。
工程S2では、表裏の金属膜Mの上に夫々フォトレジスト膜(レジスト膜と称す)Rを全面に塗布する。工程S3では、マスクパターンと露光装置を用いて、凹陥部に相当する位置のレジスト膜Rを露光する。感光したレジスト膜Rを現像して感光したレジスト膜を剥離すると、凹陥部に相当する位置の金属膜Mが露出する。レジスト膜Rから露出した金層膜Mを王水等の溶液を用いて溶かして除去すると、凹陥部に相当する位置の水晶面が露出する。
【0051】
工程S4では、露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いて所望の厚さまでエッチングする。工程S5では所定の溶液を用いてレジスト膜Rを剥離し、更に露出した金属膜Mを、王水等を用いて除去する。この段階で水晶ウエハー10Wは、一方の面に凹陥部11が格子状に規則的に並んだ状態となる。工程S6では、工程S5で得られた水晶ウエハー10Wの両面に金属膜(Cr+Au)Mを成膜する。工程S7では工程S6で形成された金属膜(Cr+Au)Mの両面にレジスト膜Rを塗布する。
工程S8では、所定のマスクパターンと露光装置を用いて、圧電基板10の外形とスリット20に相当する位置のレジスト膜Rを両面から感光し、現像して剥離する。更に、露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。
【0052】
工程S9では露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いてエッチングし、圧電基板10の外形とスリット20を形成する。工程S10では、残ったレジスト膜Rを剥離し、露出した余分の金属膜Mを溶かして除去する。この段階では水晶ウエハー10Wは、圧電基板10が支持細片で連接し、格子状に並んだ状態となる。本発明の特徴は、工程S8とS9に示すように、凹陥部11の振動領域12一部と、振動領域12に連設された第4の支持部19とをエッチングにより取り除いたことである。これにより、圧電基板の小型化が図られる。詳細については後述する。
工程S10が終了した後、水晶ウエハー10Wに格子状に規則的に並んだ各圧電基板10の振動領域12の厚さを、例えば光学的に計測する。計測した各振動領域12の厚さが所定の厚さより厚い場合には、夫々厚さの微調整を行って所定の厚さの範囲に入るようにする。
【0053】
水晶ウエハー10Wに形成された各圧電基板10の振動領域12の厚さを、所定の厚さの範囲内に調整した後、各圧電基板10に励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bを形成する手順を、図9を用いて説明する。工程S11では、水晶ウエハー10Wの表裏全面にスパッタリング等でニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を積層して金属膜Mを成膜する。次に工程S12では、金属膜Mの上にレジストを塗布しレジスト膜Rを成膜する。工程S13では、マスクパターンMkを用いて励振電極25a、25b、リード電極27a、27bに相当する位置のレジスト膜Rを露光する。工程S14では、感光したレジスト膜Rを現像して不要のレジスト膜Rを、溶液を用いて剥離する。次に、レジスト膜Rが剥離して露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。工程S15では、金属膜Mに残った不要のレジスト膜Rを剥離すると、各圧電基板10上には励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27b等が形成されている。水晶ウエハー10Wに連接するハーフエッチングされた支持細片を折り取りすることにより、分割された圧電振動素子1が得られる。
【0054】
ところで、水晶をウェットエッチングすると、Z軸に沿ってエッチングが進行していくが、各結晶軸の方向に応じてエッチングの速度が変わってくるという水晶特有のエッチング異方性を有している。従って、当該エッチングの異方性により現出するエッチング面は、各結晶軸の方向に応じて違いが現れることは、これまでエッチング異方性を研究テーマにした数多くの学術論文や先行特許文献において論じられてきた。しかしながら、このような背景があるにもかかわらず、水晶のエッチング異方性について明確に系統立てられた資料がなく、ナノ加工技術的側面が非常に強いためにエッチングの諸条件(エッチング溶液の種類や、エッチングレート、エッチング温度、等)の違いによるものなのか、文献によっては、現出する結晶面に相異があるものも多々見受けられるのが現状である。
そこで、本願発明者は、本発明に係る圧電振動素子をフォトリソグラフィー技法とウェットエッチング技法を用いて製造するに当たり、エッチングシミュレーションと試作実験、並びにナノレベルでの表面分析と観察を繰り返し、本発明に係る圧電振動子は以下の態様をなることが判明したので、以下詳細に説明をする。
【0055】
図10、図11は、エッチングにより形成される、ATカット水晶ウエハー10W上の凹陥部11の断面形状を説明する図である。
図10(a)は、図10の工程S5における水晶ウエハー10Wの平面図である。この段階では、水晶ウエハー10Wの一方の面に凹陥部11が格子状で且つ規則的に形成されている。図10(b)は、X軸方向の断面図であり、凹陥部11の各壁面は垂直の壁面ではなく傾斜面を呈している。つまり、−X軸方向の壁面は傾斜面X1を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜面X2を形成している。X軸に直交する溝を形成すると、溝の断面の壁面X3は楔型を呈する。図10(c)〜(e)は凹陥部11の壁面X1、X2、及び溝部の壁面X3の拡大図である。−X軸方向の壁面は、図10(c)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し略62度の傾斜でエッチングされる。+X軸方向の壁面は、図10(d)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し直交(90度)して少しエッチングが進むが、その後は緩やかな傾斜でエッチングが進行する。X軸方向に沿う凹陥部11の底面は、水晶ウエハーの元の平面と平行にエッチングされる。つまり、振動領域12は表裏面が平行の平板状となる。
図10(e)は、水晶ウエハー10Wに形成した折り取り用の溝部の断面図である。X軸に直交して形成された溝部の断面は楔型を呈している。これは溝部の壁面X3が、−X軸方向の壁面X1と、+X軸方向の壁面X2とで形成されるために、楔型となるのである。
凹陥部11が形成された面に電極を設ける場合は、+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面に注意する必要がある。電極膜の断裂が起り易いので避ける方が望ましい。
【0056】
図11は圧電基板10に形成された凹陥部11の、特にZ’軸方向の断面図の壁面を説明する図である。図11(a)は、水晶ウエハー10Wの平面図である。図11(b)は、水晶ウエハー10WのZ’軸方向の断面図であり、−Z’軸方向の壁面は傾斜面Z1を形成し、+Z’軸方向の壁面は傾斜面Z2を形成する。Z’軸に直交する溝部を形成すると、溝部の断面の壁面Z3は楔型を呈する。
図11(c)〜(e)は凹陥部11の壁面Z1、Z2、及ぶ溝部の壁面Z3の拡大図である。−Z’軸方向の壁面は、図11(c)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し比較的緩やかな傾斜でエッチングされる。+Z’軸方向の壁面Z2は、図11(d)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し急な傾斜面Z2aでエッチングされるが、その後は緩やかな傾斜面Z2bでエッチングが進行し、その後はより緩やかな傾斜面Z2cとなる。図11(e)はZ’軸方向に直交して形成した溝部の断面図で、楔型断面Z3となる。この溝部は、水晶ウエハー10Wに折り取り用の溝部である。この溝部の壁面Z3が、−Z’軸方向の壁面Z1と、+Z’軸方向の壁面Z2の中、壁面Z2aと壁面Z2bとで形成されるために、ほぼ楔型の断面を呈するのである。X軸方向、Z’軸方向に折り取り用溝部を形成すると、その断面形状は楔型となり、折り取りが容易である。
本発明の特徴の1つは、図11(d)に示すように、振動領域11うちZcで示す一点鎖線の図中右側の、元の平面と平行でない緩やかな傾斜面Z2cを、第4の支持部19と共にエッチングにより取り去ることにより、圧電基板の小型化を図ったことである。
更に、前記緩やかな傾斜面Z2cを前記第4の支持部19と共に削除することを前提として製造方法を確立しているので、振動領域となる平坦な超薄部の面積を、先行技術として掲げた従来の如きX軸に沿って振動領域の両端に存在する厚肉部を備えた構造に比べて大きく確保することを実現したので、振動領域に励振される厚み滑り振動モードにおいて、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状となることを十分に考慮して、設計することが可能となるため、長軸対短軸の比を、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮して、1.14〜1.39:1の範囲程度となるように十分設計可能となった。
更に、図17に示すように、圧電振動素子1の外形において、X軸に交わる端面にも傾斜面が現出し、X軸の(−)側の端面には傾斜面(1)が現出し、(+)側の単面には傾斜面(2)が現出することが判明し、傾斜面(1)と傾斜面(2)のXY’平面に平行な断面において、その形状は異なっていることも判明した。
また、傾斜面(1)、(2)共に、圧電基板の主表面と交わる付近には、図10(b)、(e)に示すような+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面は現出していない。この理由は、凹陥部11を形成するのに必要なエッチング時間に比べて、傾斜面(1)と傾斜面(2)の形成時間は圧電基板(水晶基板)を表裏からエッチングを開始し、表裏が貫通するまでエッチングするので、エッチング時間が十分に長いためにオーバーエッチングの作用により、垂直の壁面が現出しないのである。
傾斜面(1)を構成する傾斜面a1、a2は、X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。
傾斜面(2)を構成する傾斜面b1、b2、b3、b4においては、b1とb4、b2とb3とが、各々X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。
更に、傾斜面a1、a2のX軸に対する傾斜角度αは、傾斜面b1、a4のX軸に対する傾斜角度βに比べて、
β<α
の関係にあることが分かった。
【0057】
図12(a)(b)は、本発明に係る実施形態の圧電振動子5の構成を示す断面図である。圧電振動子5は、例えば上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、金属、セラミック、ガラス等から成る蓋部材49とから成る。
パッケージ本体40は、図13に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
【0058】
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。
素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に第2の支持部本体14aに形成したパッド電極29aに対応するように配置されている。
【0059】
圧電振動子5の構成は、パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤30、例えば脱ガスの少ないポリイミド系接着剤を適量塗布し、その上に圧電振動素子1のパッド電極29aとパッケージの端子電極A(パッド47)とを1点支持にて載置して荷重をかけて機械的に固定すると共に電気的に接続する。導電性接着剤30の特性として、接着剤30に起因する応力(∝歪)の大きさは、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤の順で大きくなる。また、脱ガスは、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコン系接着剤の順で大きくなる。
そして、パッド電極29bとパッケージの端子電極Bとをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
【0060】
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤30を硬化させるために所定の温度の高温炉に所定の時間入れる必要がある。アニール処理を施した後、励振電極25a、25bに質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。蓋部材49を、パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44上にシーム溶接して密封する。または、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。パッケージのキャビティ内は真空にするか、窒素N2等の不活性ガスを充填して、圧電振動子5を完成する。
以上の圧電振動子5の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて圧電振動子を構成してもよい。
【0061】
図13(a)(b)は、本発明に係る圧電振動子5の電気的特性の一例を示す図である。共振周波数は、一例として基本波モードで共振周波数を123MHz帯とした。この周波数帯は、電圧制御型圧電発振器(Voltage Controlled Crystal Oscillator:VCXO)用の水晶振動子を意図して開発されたものである。図13(a)は温度範囲が−40℃〜85℃における圧電振動子5の周波数温度特性であり、同図(b)同温度範囲の圧電振動子5のCI(クリスタルインピーダンス)温度特性である。図13(a)の周波数温度特性は、滑らかな三次曲線を呈しており、要求された規格を満たしている。また、図13(b)のCI温度特性も全温度範囲に亘って、CIディップ等もなく良好な特性を呈している。
【0062】
図14(a)は、本発明の圧電振動子5の容量比γの分布を表わしており、γの平均値は273、標準偏差σは18という値が得られた。図14(b)は従来の圧電振動子の容量比γの分布を表わし、γの平均値は296、標準偏差σは26という値であった。
図15(a)は、本発明の圧電振動子5の静電容量C0の分布を表わし、C0の平均値は1.80(pF)、標準偏差σは0.01という値が得られた。図15(b)は従来の圧電振動子の静電容量C0の分布を表わし、C0の平均値は1.88、標準偏差σは0.02という値であった。
図16(a)は、本発明の圧電振動子5のスプリアスCI値比(=CIs/CIm、CImは主振動のCI値、CIsは主振動に近接した最も大きなスプリアスのCI値)の分布を表わし、図16(b)は、従来の圧電振動子のスプリアスCI値比の分布を表わしている。
図14、図15、及び図16より明らかなように、容量比γ、静電容量C0、及びスプリアスCI値比とも、従来の如き圧電振動子より、本発明に係る圧電振動子5の方が優れていることが分かった。しかも、本発明に係る圧電振動子5は小型化も実現されている。
【0063】
図1に示すように、高周波の基本波圧電振動素子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電基板を一方の面からのみエッチングして振動領域を形成することにより、元の基板の切断角度を保持した振動領域を形成することが可能となり、周波数温度特性の優れた高周波の基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。また、図4に示すように第2の傾斜部14bにスリット20を形成すると、容易にスリットが貫通できるという効果もある。
【0064】
圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、永年のフォトリソグラフィー技法及びエッチング技法に関する実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度のエッチングができ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
図13に示すように圧電振動子を構成すると、高周波の基本波圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比γの小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0065】
次に、共振周波数について更に高周波化を試み、491(MHz)帯の圧電振動子を試作し、評価を行った。
下表は491(MHz)の圧電振動子のサンプルを3個製作し、それぞれのサンプルについて等価回路定数を測定した値である。容量比γ、静電容量C0、等、十分良好な電気的特性が得られていることが確認された。
【表1】
本発明に係る491(MHz)の圧電振動子を用いてVCXOを製作した。図18は、そのVCXOの周波数温度特性の評価結果である。滑らかな三次曲線を呈しており、要求された規格を満たしており、全温度範囲に亘ってディップ等もなく良好な特性が得られている。
【0066】
図20は、本発明の実施の形態の電子デバイスの一種である圧電発振器6の構成を示す断面図である。圧電発振器6は、パッケージ本体40及び蓋部材49と、圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品51と、電圧により容量が変化する可変容量素子、温度より抵抗が変化するサーミスタ、インダクタ等の電子部品52と、を備えている。
パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤(ポリイミド系)30を塗布し、この上に圧電振動素子1を載置してパッド電極29aとの導通を図る。他方のパッド電極29bは、パッケージ本体40の他の端子パッドにボンディングワイヤーにて接続し、IC部品51の1つの端子との導通を図る。IC部品51及び電子部品52をパッケージ本体40上の所定の位置に固定・接続する。パッケージ本体40を真空、あるいは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体40を蓋部材49で密封して圧電発振器6を完成する。
【0067】
図20の実施形態に示した圧電発振器6は同一圧電基板上に圧電振動素子1、IC部品51及び電子部品を配置したが、図21の実施形態の圧電発振器7は、H型のパッケージ本体60を用い、上部に圧電振動素子1を収容し、キャビティ内部を真空、又は窒素N2ガスで満たし、蓋部材49で封止する。図21において、下部の収納部には圧電振動素子1を励振する発振回路、増幅回路等を搭載したIC部品51と、可変容量素子、及び必要に応じてインダクタ、サーミスタ、コンデンサー等の電子部品52と、を金属バンプ(Auバンプ)68等の接続手段を介して、パッケージ本体60の端子67に導通・接続する。本発明に係る圧電発振器7は、圧電振動素子1と、IC部品51及び電子部品52とを分離しているために、圧電発振器7の周波数エージングに優れている。
更に、図22においては、下部の収納部には少なくとも一以上の電子部品を備える構造としても良い。例えば、前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動素子を周波数発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【0068】
図20、図21、図22に示すように、圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、周波数可変幅の広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
また、圧電デバイスとして圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等を構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
また、図24は、圧電基板の厚肉支持部の外周側面に傾斜面を形成した構成例である。
【0069】
[変形実施形態]
図24(a)の実施形態における圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、当該薄肉部よりも厚い厚肉部とを備えた圧電基板10であって、圧電基板においては、厚肉支持部13には、縁辺の方向に緩衝部Sを介してマウント部Mが横並びで接続され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、面取り部21を有していることを特徴とする。
図24(b)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられ、薄肉部よりも厚い厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部には、緩衝部Sを介してマウント部Mが横並びで接続され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に切欠き部22を有し、スリットの長手方向は直交方向と平行であり、マウント部の直交方向の幅を、スリットの長手方向の幅より狭く、スリットの長手方向の両端部は、マウント部の両端部よりも緩衝部の直交方向の外周寄りにあることを特徴とする。
図24(c)の圧電基板は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられた厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sとマウント部Mが順に連結され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部22を有していることを特徴とする。
【0070】
図25は、図24の構造に対し、2点支持の形態をとることを特徴としている。
なお、図24、図25においては、厚肉支持部13の各支持部14、16、18の内壁に傾斜部が図示されておらず、また厚肉支持部13の外側の側壁面には図13に示した如き傾斜面が図示されていないが、これらの傾斜部、傾斜面は対応する部位に形成される。
なお、図24、図25中の各符号は、上記各実施形態の同じ符号が示す部位と対応している。
【0071】
[変形実施例 その2]
更に、図26(a)(b)の実施形態はマウント部の構成を示しており、このマウント部Mにおいては、接着強度を向上させるために凹凸状とすることによって面積を稼いでいる。
図27は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器8は上記の圧電振動子6を備えている。圧電振動子6を用いた電子機器8として、伝送機器等が挙げられる。これらの電子機器8において圧電振動子6は、基準信号源、あるいは電圧可変型圧電発振器(VCXO)等として用いられ、小型で、特性の良好な電子機器を提供できる。
本発明の圧電振動子を電子機器に用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある
【符号の説明】
【0072】
1、2、3…圧電振動素子、6、7…圧電デバイス、8…電子機器、10…圧電基板、10W…水晶ウエハー、11…凹陥部、12…振動領域、12a、12b、12c…振動領域の一辺、13…厚肉支持部、14…第1の支持部、14a…第1の支持部本体、14b…第1の傾斜部、16…第2の支持部、16a…第2の支持部本体、16bb …細片、16b…第2の傾斜部、18…第3の支持部、18a…第3の支持部本体、18b…第3の傾斜部、19…第4の支持部、20…スリット、20a…第1のスリット、20b…第2のスリット、25a、25b…励振電極、27a、27b…リード電極、29a、29b…パッド電極、30…導電性接着剤、40…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、49…蓋部材、51…IC部品、52電子部品、60…パッケージ本体、61…蓋部材、65…実装端子、66…導体、67…部品端子、68…金属バンプ(Auバンプ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みすべり振動モードを励振する圧電振動子に関し、特に所謂逆メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明に係る圧電振動子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、励振する主振動の振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、圧電発振器、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った、所謂逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板のZ’軸方向の長さが、X軸方向の長さより長い、所謂Z’ロング基板を用いている。
特許文献2には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉支持部が連設され、コ字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。更に、水晶振動片は、ATカット水晶基板のX軸とZ’軸を、夫々Y’軸を中心に−120°〜+60°の範囲で回転させてなる面内回転ATカット水晶基板であり、振動領域を確保し、且つ量産性に優れた(多数個取り)構造であるという。
【0003】
特許文献3、4には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉支持部が連設され、コ字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されており、水晶振動片は水晶基板のX軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロング基板が用いられている。
特許文献5には、矩形状の薄肉の振動部の隣接する二辺に各々厚肉支持部が連設され、L字状に厚肉部が設けられた逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板にはZ’ロング基板が用いられている。
しかしながら、特許文献5においては、
L字状の厚肉部を得るために、特許文献5の図1(c)、(d)に記載されているように線分αと、線分βに沿って厚肉部を削除しているが、当該削除はダイシング等の機械加工で削除することを前提としているため、切断面にチッピングやクラック等のダメージを負い、超薄部が破損してしまう問題がある。また、振動領域にスプリアスの原因となる不要振動の発生やCI値の増加等の問題が発生する。
特許文献6には、薄肉の振動部の一辺のみに厚肉支持部が連設された逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献7には、水晶基板の両主面であって表裏面で対向するように凹陥部を形成することにより、高周波化を図った逆メサ構造のATカット振動子が開示されている。水晶基板にはXロング基板が用いられ、凹陥部に形成された振動領域の平坦性が確保された領域に励振電極が設けられ構造が提案されている。
ところで、ATカット水晶振動子の振動領域に励振される厚み滑り振動モードは、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状になることが知られている。特許文献8には、圧電基板の表裏両面に表裏対称に配置された一対のリング状電極を有する厚みすべり振動を励振する圧電振動子が開示されている。リング状電極が対称零次モードのみを励起し、それ以外の非調和高次モードをほとんど励起しないように、リング状電極の外周の径と内周の径との差を設定したものである。
【0005】
特許文献9には、圧電基板、及び圧電基板の表裏に設ける励振電極の形状を、共に長円形状にした圧電振動子が開示されている。
特許文献10には、水晶基板の長手方向(X軸方向)の両端部、及び電極のX軸方向の両端部の形状を共に半楕円状とし、且つ楕円の長軸対短軸の比(長軸/短軸)を、ほぼ1.26とした水晶振動子が開示されている。
特許文献11には、楕円の水晶基板上に楕円の励振電極を形成した水晶振動子が開示されている。長軸対短軸の比は、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮すると、1.14〜1.39:1の範囲程度が実用的であるという。
【0006】
特許文献12には、厚みすべり圧電振動子のエネルギー閉じ込め効果をより改善するために、振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた構造の圧電振動子が開示されている。
ところで、圧電振動子の小型化を図る際に、接着剤に起因する残留応力により、電気的特性の劣化や周波数エージング不良が生じる。特許文献13には、矩形平板状のATカット水晶振動子の振動部と支持部との間に、切り欠きやスリットを設けた水晶振動子が開示されている。このような構造を用いることにより、残留応力が振動領域へ広がるのを抑制できるという。
特許文献14には、マウント歪(応力)を改善(緩和)するために、逆メサ型圧電振動子の振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた振動子が開示されている。特許文献15には、逆メサ型圧電振動子の支持部にスリット(貫通孔)を設けることにより、表裏面の電極の導通を確保した圧電振動子が開示されている。
【0007】
特許文献16には、厚みすべり振動モードのATカット水晶振動子の支持部に、スリットを設けることにより、高次輪郭系の不要モードを抑圧した水晶振動子が開示されている。
また、特許文献17には、逆メサ型ATカット水晶振動子の薄肉の振動部と、厚肉の保持部との連設部、即ち傾斜面を有する残渣部に、スリットを設けることにより、スプリアスを抑圧する振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−165743公報
【特許文献2】特開2009−164824公報
【特許文献3】特開2006−203700公報
【特許文献4】特開2002−198772公報
【特許文献5】特開2002−033640公報
【特許文献6】特開2001−144578公報
【特許文献7】特開2003−264446公報
【特許文献8】特開平2−079508号公報
【特許文献9】特開平9−246903号公報
【特許文献10】特開2007−158486公報
【特許文献11】特開2007−214941公報
【特許文献12】実開昭61−187116号公報
【特許文献13】特開平9−326667号公報
【特許文献14】特開2009−158999公報
【特許文献15】特開2004−260695公報
【特許文献16】特開2009−188483公報
【特許文献17】特開2003−087087公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、圧電デバイスの小型化、高周波化、並びに高性能化に対する要求は強い。しかしながら、前述のごとき構造の圧電振動子は、主振動のCI値、近接するスプリアスCI値比(=CIs/CIm、ここでCImは主振動のCI値、CIsはスプリアスのCI値で、規格の1例は1.8以上)等が要求を満たせないという問題があることが判明した。
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、高周波化(100〜500MHz帯)を図ると共に、主振動のCI値を低減し、スプリアスCI値比等の電気的要求を満たした圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明の圧電振動子を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、矩形の振動領域、及び該振動領域と一体化された前記振動領域の厚みよりも厚い支持部を有する圧電基板と、前記振動領域の表面及び裏面に夫々配置された励振電極と、該各励振電極から前記支持部上に夫々延在して設けられたリード電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記支持部は、前記振動領域の四辺のうち1辺を開放するように、前記振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、該第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、を備え、前記第2の支持部は、前記振動領域の一辺に連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を備え、前記第2の支持部には、少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
高周波の基本波圧電振動素子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0014】
圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0016】
スリットの形成が容易になり、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、及びCI温度特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また、圧電振動素子は、前記スリットは、前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、を備えていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0018】
圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]また、圧電振動素子は、前記振動領域の一方の主面と、前記第1、第2及び第3の支持部の夫々の一方の面とは、同一面であることを特徴とする適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0020】
圧電基板を一方の面からのみエッチングして振動領域を形成することにより、元の基板の切断角度を保持した振動領域を形成することが可能となり、周波数温度特性の優れた、高周波の基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例6]また、圧電振動素子は、前記圧電基板は、水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、前記X軸に平行な辺を長辺とし、前記Z’軸に平行な辺を短辺とした水晶基板であることを特徴とする適用例1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動素子ある。
【0022】
温度特性の良好な圧電振動素子が得られるという効果がる。
【0023】
[適用例7]前記水晶基板がATカット水晶基板であることを特徴とする適用例6に記載の圧電振動素子である。
【0024】
圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、フォトリソグラフィー及びエッチングに関する永年の実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度のエッチングができ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
【0025】
[適用例8]本発明の圧電振動子は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子ことを特徴とする厚みすべり振動圧電振動子である。
【0026】
高周波の基本波圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動子が得られ、且つ容量比の小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例9]本発明の電子デバイスは、請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスことを特徴とする電子デバイスである。
【0028】
上記のように圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、周波数可変幅の広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例10]また、電子デバイスは、前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする電子デバイスことを特徴とする電子デバイスである。
【0030】
上記のように圧電デバイスを構成することにより、圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等の圧電デバイスを構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0031】
[適用例11]
また、電子デバイスは、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0032】
上記のように圧電デバイスを構成することにより、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0033】
[適用例12]本発明の電子機器は、適用例7に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器ことを特徴とする電子機器である。
【0034】
本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図。
【図2】ATカット水晶基板と結晶軸との関係を説明する図。
【図3】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図4】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図5】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図6】第2の実施形態例の圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図。
【図7】第3の実施形態例の圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面図、(c)はQ−Q断面図、(d)は平面図、(e)は他の構成例の平面図。
【図8】本発明の圧電基板の製作工程を示す説明図。
【図9】本発明の圧電振動素子の励振電極及びリード電極の製作工程を示す説明図。
【図10】(a)は圧電ウエハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部のX軸方向の断面図。
【図11】(a)は圧電ウエハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部のZ’軸方向の断面図。
【図12】(a)(b)は、本発明に係る実施形態の圧電振動子の構成を示す断面図、及び平面図である。
【図13】圧電振動子の、(a)は周波数温度特性を示す図であり、(b)はCI温度特性を示す図。
【図14】(a)、(b)は容量比の分布特性を示す図。
【図15】(a)、(b)は静電容量の分布特性を示す図。
【図16】(a)、(b)はCI値比の分布特性を示す図。
【図17】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る圧電振動子の斜視図、(c)は縦断面図である。
【図18】(a)及び(b)は本発明に係る圧電デバイスの縦断面図、及び平面図。
【図19】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの特性説明図である。
【図20】(a)及び(b)は本発明の圧電デバイスの縦断面図、及び平面図である。
【図21】圧電デバイスの縦断面図。
【図22】圧電デバイスの縦断面図。
【図23】圧電デバイスの縦断面図。
【図24】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る圧電基板の構成説明図。
【図25】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る圧電基板の構成説明図。
【図26】(a)及び(b)はマウント部の構成例を示す要部平面図、及び断面図である。
【図27】電子機器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略図である。図1(a)は圧電振動素子1の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図、(d)と(e)は外観斜視図、(f)はO−O断面図である。
圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12に連設された厚肉の支持部14、16、18を有する圧電基板10と、振動領域12の両主面に夫々表裏で対向するようにして形成された励振電極25a、25bと、励振電極25a、25bから夫々厚肉部に設けられたパッド電極29a、29bに向けて延出されて形成されたリード電極27a、27bと、を備えている。
【0037】
圧電基板10は、略四角形で矩形状をなし、且つ薄肉で平板状の振動領域12と、振動領域12の一辺を除いた三辺に沿って一体化されたコ字状の厚肉支持部(支持部)13(14、16、18)と、を備えている。厚肉支持部13は、振動領域12を挟んで対向配置された第1の支持部14、及び第2の支持部16と、第1及び第2の支持部14、16の基端部間を連設する第3の支持部18と、を備えたコ字状の構成を備えている。
つまり、厚肉支持部は、振動領域の四辺のうち1辺を開放する
ように、振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、を備える。ここで、「開放する」とは、一辺が露出している場合と、一部が露出しているのではなく完全に露出している場合を含む。
なお、本明細書では凹陥部11側を表面とし、フラット面を裏面とする。
第1の支持部14は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12aに連設し、振動領域12の一辺12aに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第1の傾斜部14bと、第1の傾斜部14bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第1の支持部本体14aと、を備えている。同様に、第2の支持部16は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12bに連設し、振動領域12の一辺12bに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第2の傾斜部16bと、第2の傾斜部16bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第2の支持部本体16aと、を備えている。
尚、前記支持部本体とは、前記Y’軸に平行な厚みが一定の領域をいう。
【0038】
第3の支持部18は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12cに連設し、振動領域12の一辺12cに連接する一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが漸増する第3の傾斜部18bと、第3の傾斜部18bの前記他方の端縁に連設する厚肉四角柱状の第3の支持部本体16aと、を備えている。つまり、薄肉の振動領域12は、三辺を第1、第2、及び第3の支持部14、16、18に囲まれ、且つ他の一辺が開放された凹陥部11となっている。
なお、振動領域12の一方の主面と、第1、第2及び第3の支持部14、16、18の夫々の一方の面とは、同一平面上、即ち図1に示す座標軸のX−Z’平面上にあり、この面(図1(b)の下面側)を平坦面といい、反対側の面(図1(b)の上面側)を凹陥面という。
更に、圧電基板10は、第2の支持部16に少なくとも一つの応力緩和用のスリットが貫通形成されている。図1に示した実施形態例では、スリット20は第2の傾斜部16bと第2の支持部本体16aとの連接部に沿って第2の支持部本体16aの面内に形成されている。
【0039】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。そして水晶基板は、XZ面をX軸の回りに所定の角度θだけ回転させた平面に沿って、水晶から切り出された平板が圧電振動素子として用いられる。例えば、ATカット水晶基板101の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板101は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板101は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。このATカット水晶基板101を加工して、圧電基板10を得ることができる。
即ち、圧電基板10は、図2に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板からなる。
尚、本発明に係る圧電基板は、前記角度θが略35°15′のATカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動を励振するBTカット、等の圧電基板にも広く適用できるのは言うまでもない。
【0040】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。
圧電基板10を駆動する励振電極25a、25bは、図1に示す実施形態例では四角形状であり、振動領域12のほぼ中央部の表裏両面に対向して形成されている。この際、平坦面側(図1(b)の裏面側)の励振電極25bの大きさは、凹陥面側(図1(b)の上面側)の励振電極25aの大きさに対し、十分に大きく設定する。これは、励振電極の質量効果によるエネルギー閉じ込め係数を、必要以上に大きくしないためである。つまり、平坦面側の励振電極25bを十分に大きくすることにより、プレートバック量Δ(=(fs−fe)/fs、ここでfsは圧電基板のカットオフ周波数、feは圧電基板全面に励振電極を付着した場合の周波数)は、凹陥面側の励振電極25aの質量効果のみに依存する。
【0041】
励振電極25a、25bは、蒸着装置、あるいはスパッター装置等を用いて、例えば、下地にニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を重ねて成膜する。金(Au)の厚さは、オーミックロスが大きくならない範囲で、主振動のみを閉じ込めモード(S0)とし、斜対称インハーモニックモード(A0、A1・・)及び対称インハーモニックモード(S1、S3・・)を、閉じ込めモードとしないことが望ましい。しかし、例えば、490MHz帯の圧電振動素子では、電極膜厚のオーミックロスを避けるように成膜すると、低次のインハーモニックモードがある程度、閉じ込められることは避けられない。
凹陥面側に形成した励振電極25aは、振動領域12上から第3の傾斜部18bと、第3の支持部本体18aとを経由するように励振電極25aから延出して配置されたリード電極27aにより、第2の支持部本体16aの上面に形成されたパッド電極29aに導通接続されている。また、平坦面側に形成された励振電極25bは、圧電基板10の端縁部を経由するリード電極27bにより、第2の支持部本体16aの裏面(下面)に形成されたパッド電極29bと導通接続されている。
【0042】
図1(a)に示した実施形態例は、リード電極27a、27bの引出し構造の一例であり、リード電極27aは他の支持部を経由してもよい。ただ、リード電極27a、27bの長さは最短であることが望ましく、リード電極27a、27b同志が圧電基板10を挟んで交差しないように配慮することにより静電容量の増加を抑えることが望ましい。
また、図1の実施形態例では、圧電基板10の表裏(上下)面に夫々パッド電極29a、29bを形成する例を示したが、圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、図X(下図)に示すように圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aとパッケージの端子電極Aとを導電性接着剤で機械的に固定・電気的に接続し、パッド電極29bとパッケージの端子電極Bとをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
更に、下図に示すように、前記パッケージの内部に、圧電振動素子1を駆動するための発振回路、例えばICチップを搭載し、当該ICチップと電気的に接続された電極パッドと前記端子電極AやBと電気的に接続することにより圧電発振器を構成するようにしてもよい。導電性接着剤で固定・接続し、パッド電極29bとパッケージに搭載する前記ICチップの接続端子とをボンディングワイヤーで接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
また、圧電基板10の裏面側に間隔をあけて夫々パッド電極29a、29bを併置してもよい。下図に示すように、導電性接着剤を用いてパッド電極29a、29bと、圧電振動素子1を収容するパッケージの端子電極との導通接続を図る場合は、パッド電極29a、29bが圧電基板の裏面側に間隔をあけて併置されている構成の方が望ましい。
【0043】
振動領域12と、圧電振動素子1の支持部であるパッド電極29a、29bとの間にスリット20を設ける理由は、導電性接着剤の硬化時に発生する応力の広がりを防止することにある。
即ち、圧電振動素子をパッケージに導電性接着剤により支持する場合には、まず第2の支持部本体16aの被支持部(パッド電極)29aに導電性接着剤を塗布し、これをパッケージ等の端子電極に載置し、少し押さえる。導電性接着剤を硬化させるために高温で所定の時間保持する。高温状態では第2の支持部本体16a、及びパッケージも共に膨張し、接着剤も一時的に軟化するので、第2の支持部本体16aには応力は生じない。導電性接着剤が硬化した後、第2の支持部本体16a、及びパッケージが冷却してその温度が常温(25℃)に戻ると、導電性接着剤、パッケージ、及び第2の支持部本体16aの各線膨張係数との差により、硬化した道電性接着剤から生じる応力が、第2の支持部本体16aから第1及び第3の支持部14、18、振動領域12へと広がる。この応力の広がりを防止するために、応力緩和用のスリット20を設けている。
【0044】
圧電基板10に生じる応力(∝歪)分布を求めるために、有限要素法を用いてシミュレーションを行うのが一般的である。振動領域12における応力が少ない程、周波数温度特性、周波数再現性、周波数エージング特性の優れた圧電振動素子が得られる。
導電性接着剤としては、シリコン系、エポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイミド系等があるが、圧電振動素子1の脱ガスによる周波数経年変化を考慮に入れて、ポリイミド系の導電性接着剤を用いる。ポリイミド系の導電性接着剤は硬いので、離れた二カ所を支持するよりも一カ所支持の方が発生する応力の大きさを低減できるので、100〜500MHzの高周波数帯のうち、例えば490MHz帯の電圧制御型圧電発振器(VCXO)用の圧電振動素子1には、一カ所での支持する構造を用いた。つまり、パッド電極29bは導電性接着を用いてパッケージの端子電極Aに機械的に固定すると共に電気的にも接続し、他方のパッド電極29aはパッケージの端子電極Bとボンディングワイヤーを用いて電気的に接続することにした。
また、図1に示した圧電基板10は、X軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとした。これは、圧電基板10が導電性接着剤等で固定・接続される際に応力が生じるが、周知のように、ATカット水晶基板のX軸方向に沿った両端に力を加えたときの周波周変化と、Z’軸方向に沿った両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方が、周波数変化が小さい。つまり、支持点はZ’軸方向に沿って設ける方が応力による周波数変化は小さくなり、好ましい。
【0045】
図3は、図1に示した実施形態に係る圧電振動素子の変形例であり、ここでは平面図のみを示す。図1に示した実施形態例では、薄肉の振動領域12は文字通り四角形(矩形状)をしているが、図3に示す実施形態例では、薄肉の振動領域12の第3の支持部18に対応する一辺12cの両端部に相当する両角隅部が面取りされている点が異なる。このように、薄肉の振動領域12が文字通り四角形の圧電基板10に対して、図3に記載された実施形態例のように、振動領域12の角部が面取りされた構造の圧電基板10については、略四角形の概念の中に含まれるものとする。
【0046】
図1、図3の実施形態例では、励振電極25a、25bの形状として四角形、つまり正方形、または矩形(X軸方向を長辺とする)の例を示したが、これに限定する必要はない。図4に示す実施形態例は、凹陥面側(表面側)の励振電極25aが円形であり、平坦面側(裏面側)の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。なお、平坦面側(裏面側)の励振電極25bも十分に大きな円形であってもよい。
図5に示す実施形態例は、凹陥面側(表面側)の励振電極25aが楕円形であり、平坦面側(裏面側)の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。弾性定数の異方性によりX軸方向の変位分布と、Z’軸方向の変位分が異なり、変位分布をX−Z’平面に平行な面で切った切断面は、楕円形になる。そのため、楕円形状の励振電極25aを用いた場合が最も効率よく、圧電振動素子1を駆動できる。即ち、圧電振動素子1の容量比γ(=C0/C1、ここで、C0は静電容量、C1は直列共振容量)を最小にできる。また、励振電極25aは長円形であってもよい。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係る圧電振動素子2の構成を示す概略図である。図6(a)は圧電振動素子2の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図である。
圧電振動素子2が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、応力緩和用のスリット20を設ける位置である。本例では、スリット20は、薄肉の振動領域12の一辺12bの端縁より離間した第2の傾斜部16b内に形成されている。振動領域12の一辺12bに沿って、スリット20の一方の端縁が一辺12bに接するように第2の傾斜部16b内にスリット20を形成するのではなく、第2の傾斜部16bの両端縁より離間してスリット20を設けている。つまり第2の傾斜部16bには、振動領域12の一辺12bの端縁と連接する極細の傾斜部16bbが残されている。換言すれば、一辺12aとスリット20との間に極細の傾斜部16bbが形成されている。
【0048】
極細の傾斜部16bbを残した理由は次の通りである。即ち、振動領域12に配置された励振電極25a、25bに高周波電圧を印加することにより振動領域12を励振すると、主振動(S0)の他にインハーモニックモード(A0、S1、A1、S2・)が励振される。望ましいのは主振動(S0)モードのみを閉じ込めモードとし、他のインハーモニックモードは伝搬モード(非閉じ込めモード)とすることであるが、振動領域12が薄く成り、その基本波周波数が数百MHzとなると、電極膜のオーミックロスを避けるため、励振電極は所定の厚さ以上にする必要がある。このため、前記励振電極の厚みを前記所定の厚さ以上とした場合に、主振動に近接した低次のインハーモニックモードが励振されることになる。本願発明者は、この低次のインハーモニックモードの振幅の大きさを抑制するには、インハーモニックモードの定在波が成り立つ条件を妨げるようにすればよいことに思い至った。つまり、図6の振動領域12のZ’軸方向の両端縁の形状は非対称であり、またX軸方向の両端縁の形状も細片16bbを残したことにより非対称となり、低次のインハーモニックモード定在波の振幅は抑えられることを実現した。
【0049】
図7は、第3の実施形態に係る圧電振動素子3の構成を示す概略図である。図7(a)は圧電振動素子3の平面図であり、同図(b)はP−P断面図であり、同図(c)はQ−Q断面図であり、同図(d)は平面図である。
圧電振動素子3が、図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、第2の支持部本体16aの面内に第1のスリット20aを設けると共に、第2の傾斜部16bの面内に第2のスリット20bを形成して、2個の応力緩和用のスリットを設けた点である。第2の支持部本体16aの面内、及び第2の傾斜部16bの面内に夫々個別のスリットを形成する目的は、前述の通り既に説明しているので、ここでは省略する。
第1のスリット20a、及び第2のスリット20bを、図7(a)に示す平面図のようにX軸方向に並置するのではなく、図7(d)に示す如くZ’軸方向に互いに離れるように段差状に配置してもよい
。2個のスリット20a、20bを設けた方が、導電性接着剤に起因して生じる応力を、振動領域12まで広げないようにすることが可能である。
【0050】
図8、図9は、圧電基板10の凹陥部11、外形及びスリット20の形成に係る製造工程を示すフローチャートである。ここでは、圧電ウエハーとして水晶ウエハーを例にして説明する。工程S1では、両面がポリッシュ加工された所定の厚さ、例えば80μmの水晶ウエハー10Wを、十分に洗浄し、乾燥した後、表裏面にスパッタリング等により、クロム(Cr)を下地にし、その上に金(Au)を積層した金属膜(耐蝕膜)Mを夫々成膜する。
工程S2では、表裏の金属膜Mの上に夫々フォトレジスト膜(レジスト膜と称す)Rを全面に塗布する。工程S3では、マスクパターンと露光装置を用いて、凹陥部に相当する位置のレジスト膜Rを露光する。感光したレジスト膜Rを現像して感光したレジスト膜を剥離すると、凹陥部に相当する位置の金属膜Mが露出する。レジスト膜Rから露出した金層膜Mを王水等の溶液を用いて溶かして除去すると、凹陥部に相当する位置の水晶面が露出する。
【0051】
工程S4では、露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いて所望の厚さまでエッチングする。工程S5では所定の溶液を用いてレジスト膜Rを剥離し、更に露出した金属膜Mを、王水等を用いて除去する。この段階で水晶ウエハー10Wは、一方の面に凹陥部11が格子状に規則的に並んだ状態となる。工程S6では、工程S5で得られた水晶ウエハー10Wの両面に金属膜(Cr+Au)Mを成膜する。工程S7では工程S6で形成された金属膜(Cr+Au)Mの両面にレジスト膜Rを塗布する。
工程S8では、所定のマスクパターンと露光装置を用いて、圧電基板10の外形とスリット20に相当する位置のレジスト膜Rを両面から感光し、現像して剥離する。更に、露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。
【0052】
工程S9では露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いてエッチングし、圧電基板10の外形とスリット20を形成する。工程S10では、残ったレジスト膜Rを剥離し、露出した余分の金属膜Mを溶かして除去する。この段階では水晶ウエハー10Wは、圧電基板10が支持細片で連接し、格子状に並んだ状態となる。本発明の特徴は、工程S8とS9に示すように、凹陥部11の振動領域12一部と、振動領域12に連設された第4の支持部19とをエッチングにより取り除いたことである。これにより、圧電基板の小型化が図られる。詳細については後述する。
工程S10が終了した後、水晶ウエハー10Wに格子状に規則的に並んだ各圧電基板10の振動領域12の厚さを、例えば光学的に計測する。計測した各振動領域12の厚さが所定の厚さより厚い場合には、夫々厚さの微調整を行って所定の厚さの範囲に入るようにする。
【0053】
水晶ウエハー10Wに形成された各圧電基板10の振動領域12の厚さを、所定の厚さの範囲内に調整した後、各圧電基板10に励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bを形成する手順を、図9を用いて説明する。工程S11では、水晶ウエハー10Wの表裏全面にスパッタリング等でニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を積層して金属膜Mを成膜する。次に工程S12では、金属膜Mの上にレジストを塗布しレジスト膜Rを成膜する。工程S13では、マスクパターンMkを用いて励振電極25a、25b、リード電極27a、27bに相当する位置のレジスト膜Rを露光する。工程S14では、感光したレジスト膜Rを現像して不要のレジスト膜Rを、溶液を用いて剥離する。次に、レジスト膜Rが剥離して露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。工程S15では、金属膜Mに残った不要のレジスト膜Rを剥離すると、各圧電基板10上には励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27b等が形成されている。水晶ウエハー10Wに連接するハーフエッチングされた支持細片を折り取りすることにより、分割された圧電振動素子1が得られる。
【0054】
ところで、水晶をウェットエッチングすると、Z軸に沿ってエッチングが進行していくが、各結晶軸の方向に応じてエッチングの速度が変わってくるという水晶特有のエッチング異方性を有している。従って、当該エッチングの異方性により現出するエッチング面は、各結晶軸の方向に応じて違いが現れることは、これまでエッチング異方性を研究テーマにした数多くの学術論文や先行特許文献において論じられてきた。しかしながら、このような背景があるにもかかわらず、水晶のエッチング異方性について明確に系統立てられた資料がなく、ナノ加工技術的側面が非常に強いためにエッチングの諸条件(エッチング溶液の種類や、エッチングレート、エッチング温度、等)の違いによるものなのか、文献によっては、現出する結晶面に相異があるものも多々見受けられるのが現状である。
そこで、本願発明者は、本発明に係る圧電振動素子をフォトリソグラフィー技法とウェットエッチング技法を用いて製造するに当たり、エッチングシミュレーションと試作実験、並びにナノレベルでの表面分析と観察を繰り返し、本発明に係る圧電振動子は以下の態様をなることが判明したので、以下詳細に説明をする。
【0055】
図10、図11は、エッチングにより形成される、ATカット水晶ウエハー10W上の凹陥部11の断面形状を説明する図である。
図10(a)は、図10の工程S5における水晶ウエハー10Wの平面図である。この段階では、水晶ウエハー10Wの一方の面に凹陥部11が格子状で且つ規則的に形成されている。図10(b)は、X軸方向の断面図であり、凹陥部11の各壁面は垂直の壁面ではなく傾斜面を呈している。つまり、−X軸方向の壁面は傾斜面X1を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜面X2を形成している。X軸に直交する溝を形成すると、溝の断面の壁面X3は楔型を呈する。図10(c)〜(e)は凹陥部11の壁面X1、X2、及び溝部の壁面X3の拡大図である。−X軸方向の壁面は、図10(c)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し略62度の傾斜でエッチングされる。+X軸方向の壁面は、図10(d)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し直交(90度)して少しエッチングが進むが、その後は緩やかな傾斜でエッチングが進行する。X軸方向に沿う凹陥部11の底面は、水晶ウエハーの元の平面と平行にエッチングされる。つまり、振動領域12は表裏面が平行の平板状となる。
図10(e)は、水晶ウエハー10Wに形成した折り取り用の溝部の断面図である。X軸に直交して形成された溝部の断面は楔型を呈している。これは溝部の壁面X3が、−X軸方向の壁面X1と、+X軸方向の壁面X2とで形成されるために、楔型となるのである。
凹陥部11が形成された面に電極を設ける場合は、+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面に注意する必要がある。電極膜の断裂が起り易いので避ける方が望ましい。
【0056】
図11は圧電基板10に形成された凹陥部11の、特にZ’軸方向の断面図の壁面を説明する図である。図11(a)は、水晶ウエハー10Wの平面図である。図11(b)は、水晶ウエハー10WのZ’軸方向の断面図であり、−Z’軸方向の壁面は傾斜面Z1を形成し、+Z’軸方向の壁面は傾斜面Z2を形成する。Z’軸に直交する溝部を形成すると、溝部の断面の壁面Z3は楔型を呈する。
図11(c)〜(e)は凹陥部11の壁面Z1、Z2、及ぶ溝部の壁面Z3の拡大図である。−Z’軸方向の壁面は、図11(c)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し比較的緩やかな傾斜でエッチングされる。+Z’軸方向の壁面Z2は、図11(d)に示すように、水晶ウエハー10Wの平面に対し急な傾斜面Z2aでエッチングされるが、その後は緩やかな傾斜面Z2bでエッチングが進行し、その後はより緩やかな傾斜面Z2cとなる。図11(e)はZ’軸方向に直交して形成した溝部の断面図で、楔型断面Z3となる。この溝部は、水晶ウエハー10Wに折り取り用の溝部である。この溝部の壁面Z3が、−Z’軸方向の壁面Z1と、+Z’軸方向の壁面Z2の中、壁面Z2aと壁面Z2bとで形成されるために、ほぼ楔型の断面を呈するのである。X軸方向、Z’軸方向に折り取り用溝部を形成すると、その断面形状は楔型となり、折り取りが容易である。
本発明の特徴の1つは、図11(d)に示すように、振動領域11うちZcで示す一点鎖線の図中右側の、元の平面と平行でない緩やかな傾斜面Z2cを、第4の支持部19と共にエッチングにより取り去ることにより、圧電基板の小型化を図ったことである。
更に、前記緩やかな傾斜面Z2cを前記第4の支持部19と共に削除することを前提として製造方法を確立しているので、振動領域となる平坦な超薄部の面積を、先行技術として掲げた従来の如きX軸に沿って振動領域の両端に存在する厚肉部を備えた構造に比べて大きく確保することを実現したので、振動領域に励振される厚み滑り振動モードにおいて、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状となることを十分に考慮して、設計することが可能となるため、長軸対短軸の比を、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮して、1.14〜1.39:1の範囲程度となるように十分設計可能となった。
更に、図17に示すように、圧電振動素子1の外形において、X軸に交わる端面にも傾斜面が現出し、X軸の(−)側の端面には傾斜面(1)が現出し、(+)側の単面には傾斜面(2)が現出することが判明し、傾斜面(1)と傾斜面(2)のXY’平面に平行な断面において、その形状は異なっていることも判明した。
また、傾斜面(1)、(2)共に、圧電基板の主表面と交わる付近には、図10(b)、(e)に示すような+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面は現出していない。この理由は、凹陥部11を形成するのに必要なエッチング時間に比べて、傾斜面(1)と傾斜面(2)の形成時間は圧電基板(水晶基板)を表裏からエッチングを開始し、表裏が貫通するまでエッチングするので、エッチング時間が十分に長いためにオーバーエッチングの作用により、垂直の壁面が現出しないのである。
傾斜面(1)を構成する傾斜面a1、a2は、X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。
傾斜面(2)を構成する傾斜面b1、b2、b3、b4においては、b1とb4、b2とb3とが、各々X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。
更に、傾斜面a1、a2のX軸に対する傾斜角度αは、傾斜面b1、a4のX軸に対する傾斜角度βに比べて、
β<α
の関係にあることが分かった。
【0057】
図12(a)(b)は、本発明に係る実施形態の圧電振動子5の構成を示す断面図である。圧電振動子5は、例えば上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、金属、セラミック、ガラス等から成る蓋部材49とから成る。
パッケージ本体40は、図13に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
【0058】
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。
素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に第2の支持部本体14aに形成したパッド電極29aに対応するように配置されている。
【0059】
圧電振動子5の構成は、パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤30、例えば脱ガスの少ないポリイミド系接着剤を適量塗布し、その上に圧電振動素子1のパッド電極29aとパッケージの端子電極A(パッド47)とを1点支持にて載置して荷重をかけて機械的に固定すると共に電気的に接続する。導電性接着剤30の特性として、接着剤30に起因する応力(∝歪)の大きさは、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤の順で大きくなる。また、脱ガスは、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコン系接着剤の順で大きくなる。
そして、パッド電極29bとパッケージの端子電極Bとをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続するとよい。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
【0060】
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤30を硬化させるために所定の温度の高温炉に所定の時間入れる必要がある。アニール処理を施した後、励振電極25a、25bに質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。蓋部材49を、パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44上にシーム溶接して密封する。または、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。パッケージのキャビティ内は真空にするか、窒素N2等の不活性ガスを充填して、圧電振動子5を完成する。
以上の圧電振動子5の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて圧電振動子を構成してもよい。
【0061】
図13(a)(b)は、本発明に係る圧電振動子5の電気的特性の一例を示す図である。共振周波数は、一例として基本波モードで共振周波数を123MHz帯とした。この周波数帯は、電圧制御型圧電発振器(Voltage Controlled Crystal Oscillator:VCXO)用の水晶振動子を意図して開発されたものである。図13(a)は温度範囲が−40℃〜85℃における圧電振動子5の周波数温度特性であり、同図(b)同温度範囲の圧電振動子5のCI(クリスタルインピーダンス)温度特性である。図13(a)の周波数温度特性は、滑らかな三次曲線を呈しており、要求された規格を満たしている。また、図13(b)のCI温度特性も全温度範囲に亘って、CIディップ等もなく良好な特性を呈している。
【0062】
図14(a)は、本発明の圧電振動子5の容量比γの分布を表わしており、γの平均値は273、標準偏差σは18という値が得られた。図14(b)は従来の圧電振動子の容量比γの分布を表わし、γの平均値は296、標準偏差σは26という値であった。
図15(a)は、本発明の圧電振動子5の静電容量C0の分布を表わし、C0の平均値は1.80(pF)、標準偏差σは0.01という値が得られた。図15(b)は従来の圧電振動子の静電容量C0の分布を表わし、C0の平均値は1.88、標準偏差σは0.02という値であった。
図16(a)は、本発明の圧電振動子5のスプリアスCI値比(=CIs/CIm、CImは主振動のCI値、CIsは主振動に近接した最も大きなスプリアスのCI値)の分布を表わし、図16(b)は、従来の圧電振動子のスプリアスCI値比の分布を表わしている。
図14、図15、及び図16より明らかなように、容量比γ、静電容量C0、及びスプリアスCI値比とも、従来の如き圧電振動子より、本発明に係る圧電振動子5の方が優れていることが分かった。しかも、本発明に係る圧電振動子5は小型化も実現されている。
【0063】
図1に示すように、高周波の基本波圧電振動素子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電基板を一方の面からのみエッチングして振動領域を形成することにより、元の基板の切断角度を保持した振動領域を形成することが可能となり、周波数温度特性の優れた高周波の基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。また、図4に示すように第2の傾斜部14bにスリット20を形成すると、容易にスリットが貫通できるという効果もある。
【0064】
圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、永年のフォトリソグラフィー技法及びエッチング技法に関する実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度のエッチングができ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
図13に示すように圧電振動子を構成すると、高周波の基本波圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比γの小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0065】
次に、共振周波数について更に高周波化を試み、491(MHz)帯の圧電振動子を試作し、評価を行った。
下表は491(MHz)の圧電振動子のサンプルを3個製作し、それぞれのサンプルについて等価回路定数を測定した値である。容量比γ、静電容量C0、等、十分良好な電気的特性が得られていることが確認された。
【表1】
本発明に係る491(MHz)の圧電振動子を用いてVCXOを製作した。図18は、そのVCXOの周波数温度特性の評価結果である。滑らかな三次曲線を呈しており、要求された規格を満たしており、全温度範囲に亘ってディップ等もなく良好な特性が得られている。
【0066】
図20は、本発明の実施の形態の電子デバイスの一種である圧電発振器6の構成を示す断面図である。圧電発振器6は、パッケージ本体40及び蓋部材49と、圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品51と、電圧により容量が変化する可変容量素子、温度より抵抗が変化するサーミスタ、インダクタ等の電子部品52と、を備えている。
パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤(ポリイミド系)30を塗布し、この上に圧電振動素子1を載置してパッド電極29aとの導通を図る。他方のパッド電極29bは、パッケージ本体40の他の端子パッドにボンディングワイヤーにて接続し、IC部品51の1つの端子との導通を図る。IC部品51及び電子部品52をパッケージ本体40上の所定の位置に固定・接続する。パッケージ本体40を真空、あるいは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体40を蓋部材49で密封して圧電発振器6を完成する。
【0067】
図20の実施形態に示した圧電発振器6は同一圧電基板上に圧電振動素子1、IC部品51及び電子部品を配置したが、図21の実施形態の圧電発振器7は、H型のパッケージ本体60を用い、上部に圧電振動素子1を収容し、キャビティ内部を真空、又は窒素N2ガスで満たし、蓋部材49で封止する。図21において、下部の収納部には圧電振動素子1を励振する発振回路、増幅回路等を搭載したIC部品51と、可変容量素子、及び必要に応じてインダクタ、サーミスタ、コンデンサー等の電子部品52と、を金属バンプ(Auバンプ)68等の接続手段を介して、パッケージ本体60の端子67に導通・接続する。本発明に係る圧電発振器7は、圧電振動素子1と、IC部品51及び電子部品52とを分離しているために、圧電発振器7の周波数エージングに優れている。
更に、図22においては、下部の収納部には少なくとも一以上の電子部品を備える構造としても良い。例えば、前記電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子等を適用することができ、圧電振動素子を周波数発振源として用いた電子デバイスを構築することができる。
【0068】
図20、図21、図22に示すように、圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、周波数可変幅の広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
また、圧電デバイスとして圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等を構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
また、図24は、圧電基板の厚肉支持部の外周側面に傾斜面を形成した構成例である。
【0069】
[変形実施形態]
図24(a)の実施形態における圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、当該薄肉部よりも厚い厚肉部とを備えた圧電基板10であって、圧電基板においては、厚肉支持部13には、縁辺の方向に緩衝部Sを介してマウント部Mが横並びで接続され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、面取り部21を有していることを特徴とする。
図24(b)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられ、薄肉部よりも厚い厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部には、緩衝部Sを介してマウント部Mが横並びで接続され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に切欠き部22を有し、スリットの長手方向は直交方向と平行であり、マウント部の直交方向の幅を、スリットの長手方向の幅より狭く、スリットの長手方向の両端部は、マウント部の両端部よりも緩衝部の直交方向の外周寄りにあることを特徴とする。
図24(c)の圧電基板は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられた厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sとマウント部Mが順に連結され、緩衝部は、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部と緩衝部と厚肉支持部との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部22を有していることを特徴とする。
【0070】
図25は、図24の構造に対し、2点支持の形態をとることを特徴としている。
なお、図24、図25においては、厚肉支持部13の各支持部14、16、18の内壁に傾斜部が図示されておらず、また厚肉支持部13の外側の側壁面には図13に示した如き傾斜面が図示されていないが、これらの傾斜部、傾斜面は対応する部位に形成される。
なお、図24、図25中の各符号は、上記各実施形態の同じ符号が示す部位と対応している。
【0071】
[変形実施例 その2]
更に、図26(a)(b)の実施形態はマウント部の構成を示しており、このマウント部Mにおいては、接着強度を向上させるために凹凸状とすることによって面積を稼いでいる。
図27は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器8は上記の圧電振動子6を備えている。圧電振動子6を用いた電子機器8として、伝送機器等が挙げられる。これらの電子機器8において圧電振動子6は、基準信号源、あるいは電圧可変型圧電発振器(VCXO)等として用いられ、小型で、特性の良好な電子機器を提供できる。
本発明の圧電振動子を電子機器に用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある
【符号の説明】
【0072】
1、2、3…圧電振動素子、6、7…圧電デバイス、8…電子機器、10…圧電基板、10W…水晶ウエハー、11…凹陥部、12…振動領域、12a、12b、12c…振動領域の一辺、13…厚肉支持部、14…第1の支持部、14a…第1の支持部本体、14b…第1の傾斜部、16…第2の支持部、16a…第2の支持部本体、16bb …細片、16b…第2の傾斜部、18…第3の支持部、18a…第3の支持部本体、18b…第3の傾斜部、19…第4の支持部、20…スリット、20a…第1のスリット、20b…第2のスリット、25a、25b…励振電極、27a、27b…リード電極、29a、29b…パッド電極、30…導電性接着剤、40…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、49…蓋部材、51…IC部品、52電子部品、60…パッケージ本体、61…蓋部材、65…実装端子、66…導体、67…部品端子、68…金属バンプ(Auバンプ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の振動領域、及び該振動領域と一体化された前記振動領域の厚みよりも厚い支持部を有する圧電基板と、
前記振動領域の表面及び裏面に夫々配置された励振電極と、
該各励振電極から前記支持部上に夫々延在して設けられたリード電極と、
を備えた圧電振動素子であって、
前記支持部は、
前記振動領域の四辺のうち1辺を開放する
ように、
前記振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、
該第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、
を備え、
前記第2の支持部は、
前記振動領域の一辺に連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、
該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を備え、
前記第2の支持部には、
少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記スリットは、
前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記振動領域の一方の主面と、
前記第1、第2及び第3の支持部の夫々の一方の面とは、
同一面であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記圧電基板は、
水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、
前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、
前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、
前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、
前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記X軸に平行な辺を長辺とし、
前記Z’軸に平行な辺を短辺とした水晶基板であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記水晶基板がATカット水晶基板であることを特徴とする請求項6に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を収容するパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
電子部品と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を励振する発振回路と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項7に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
矩形の振動領域、及び該振動領域と一体化された前記振動領域の厚みよりも厚い支持部を有する圧電基板と、
前記振動領域の表面及び裏面に夫々配置された励振電極と、
該各励振電極から前記支持部上に夫々延在して設けられたリード電極と、
を備えた圧電振動素子であって、
前記支持部は、
前記振動領域の四辺のうち1辺を開放する
ように、
前記振動領域を挟んで対向配置された第1の支持部、及び第2の支持部と、
該第1及び第2の支持部の基端部間を連設する第3の支持部と、
を備え、
前記第2の支持部は、
前記振動領域の一辺に連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、
該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を備え、
前記第2の支持部には、
少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記スリットは、
前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記振動領域の一方の主面と、
前記第1、第2及び第3の支持部の夫々の一方の面とは、
同一面であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記圧電基板は、
水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、
前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、
前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、
前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、
前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であり、
前記X軸に平行な辺を長辺とし、
前記Z’軸に平行な辺を短辺とした水晶基板であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記水晶基板がATカット水晶基板であることを特徴とする請求項6に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を収容するパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
電子部品と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を励振する発振回路と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項7に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−253630(P2012−253630A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125806(P2011−125806)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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