説明

基板クランプ機構及び描画システム

【課題】基板の中心とステージの中心が一致しない場合であっても、基板を確実にクランプすることができる基板クランプ機構を提供すること。
【解決手段】基板クランプ機構を、4本のクランプバー41A〜41Dと、各クランプバーに対応した移動ユニット42A〜42Dとから構成する。移動ユニット42Aは、クランプバー41Aを上下移動させるエアシリンダ52と、クランプバー41AをX方向に移動させるタイミングベルトと、クランプバー41Aと共に移動して基板端縁を検出するフォトセンサ59とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板をステージにクランプする基板クランプ機構、及びこのステージを移動させながら基板に描画を行う描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステージに基板(例えば、プリント配線基板用の材料基板)を固定し、このステージを移動させながら基板の露光面に光ビームを照射し、基板に配線パターンを形成する露光システム(描画システム)が知られている。ステージの移動経路上には、基板に形成されたアライメントマーク(基板位置検出用マーク)を撮影するためのCCDカメラが設けられており、この撮影により得られた画像データに基づいて基板位置を算出して基板に露光が行われる。
【0003】
このような露光システムでは、基板をステージに固定するときには、基板の中心とステージの中心とが一致するように基板を載置した上で、ステージ表面に形成された微小な孔からエアを吸引して基板を吸着保持するとともに、基板に反りや歪みが生じている場合に対処するために基板の各辺を基板クランプ機構のクランプバーによってクランプしている。露光システムには、予め基板サイズが入力され、この入力された基板サイズに基づいてクランプバーが水平及び鉛直方向に移動して基板を上から押さえるように構成されている。しかし、入力された基板サイズと実際の基板サイズとには誤差があり、この誤差が大きい場合には基板の適切な位置でクランプを行うことができなかった。
【0004】
特許文献1記載の露光システムでは、基板をステージに載置する前に基板サイズを測定し、入力基板サイズと測定基板サイズとの誤差を算出し、この誤差に基づいてステージに対する基板の載置位置を調整することにより、基板の適切な位置でクランプを行うことを試みている。
【特許文献1】特願2006−264371号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の露光システムでは、基板サイズを測定する複雑な測定機構が必要であり、露光システムの製造コストが上昇するという問題がある。
【0006】
また、特許文献1記載の露光システムでは、基板の中心とステージの中心とが一致するように基板をステージに載置しているが、アライメントマークは基板の中心に対して位置が決まっているわけではないことから、アライメントマークがCCDカメラの撮影領域の中央から外れてしまうことがあり、この場合にはアライメントマークの読取りを正確に行うことができないという問題があった。これに対処するためには、アライメントマークの位置を考慮して基板をステージに載置する(すなわち、基板の中心とステージの中心とは必ずしも一致しない)必要があるが、上記の基板クランプ機構はステージ上の決められた位置でクランプを行うだけであり、これに対応することができなかった。
【0007】
本発明は、基板の中心とステージの中心が一致しない場合であっても基板を確実にクランプすることができる基板クランプ機構、及びこの基板クランプ機構を備えた描画システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ステージ上に載置された矩形の基板を前記ステージに保持固定する基板クランプ機構に関し、前記基板の各辺に略平行になるように前記ステージに配置され、前記基板の各辺を前記ステージに押えて前記ステージとの間で前記基板を挟持するクランプ部材と、前記クランプ部材を前記ステージに押し付けて前記基板を挟持する閉位置、及び前記クランプ部材を前記ステージから離間させて前記基板の挟持を解除する開位置の間で移動させるクランプ部材開閉部と、前記基板が載置されるエリアから前記クランプ部材を退避させた退避位置、及び前記クランプ部材を用いて前記基板をクランプするクランプ位置の間で、前記開位置とされた前記クランプ部材を移動させるクランプ部材移動部と、前記クランプ部材と共に移動し、前記基板の端縁を検出する基板端縁センサと、前記基板端縁センサの基板端縁検出信号に基づき前記クランプ部材移動部を制御し、前記クランプ部材を前記クランプ位置に位置決めする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記制御部は、前記クランプ部材移動部により前記クランプ部材を前記退避位置から前記クランプ位置に向かって移動させ、この移動途中で前記基板端縁センサから基板端縁検出信号に基づき前記クランプ部材を停止させ、この後に前記クランプ部材開閉部により前記クランプ部材を閉位置にすることが好ましい。
【0010】
前記制御部は、前記クランプ部材移動部による前記退避位置から前記クランプ位置への移動速度を、初期の高速移動とこれに続く低速移動との二段階に切り替え、前記高速移動から前記低速移動への切替点を、予め取得される基板サイズ情報及び前記ステージ上の基板載置位置情報に基づいて設定することが好ましい。これにより、クランプ動作に要する時間を短縮することができ、また、低速移動時に基板端縁を検出することから基板端縁を確実に検出することができる。
【0011】
前記切替点以前に前記基板端縁センサから基板端縁検出信号が発せられたときに、前記ステージに載置された基板が大きいと判定してエラー処理を行うことが好ましい。前記切替点から一定時間を経過しても前記基板端縁センサから基板端縁検出信号が発せられないときに、前記ステージに載置された基板が小さいと判定してエラー処理を行うことが好ましい。
【0012】
本発明の描画システムは、上記の基板クランプ機構によって前記基板を前記ステージに保持固定して前記ステージを所定経路で移動させるステージ移動部と、前記所定経路上に設けられ、移動する前記基板に対して、画像データに基づき順次に描画を行う描画部と、前記基板の被描画面の少なくとも周縁部を吸着する吸着手段、及び前記基板を前記ステージに押し付ける押付手段を有し、前記基板を前記ステージ上に搬送する基板搬送部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の描画システムは、前記所定経路上に設けられ、前記基板に形成されたアライメントマークを読み取る撮像部と、前記撮像部の撮影領域の中央部を前記アライメントマークが通過するように、前記基板の前記ステージに対する載置位置を決定する載置位置決定部とを備え、前記基板搬送部は決定された載置位置に前記基板を搬送することが好ましい。この決定された載置位置においては、基板の中心とステージの中心とが一致するとは限らない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基板クランプ機構によれば、ステージに載置された基板の中心とステージの中心が一致しない場合であっても、基板の端部を確実にクランプし、基板の反り及び歪みを確実に矯正することができる。基板検出センサはクランプ部材と共に移動する構成であることから、基板検出センサ用の移動機構は必要なく製造コストが抑えられる。
【0015】
本発明の描画システムによれば、基板の中心とステージの中心が一致しない場合であっても基板を確実にクランプすることが可能であり、基板サイズを測定する測定機構が必要ないことから、製造コストを抑えることができる。また、基板の中心とステージの中心が一致しなくてもよい構成であるため、アライメントマークが撮像部の撮影領域の中心を通過するようにして基板をステージに固定することが可能になり、アライメントマークを良好に読み取ることができ、露光処理を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1において、露光システム(描画システム)10は、デジタル露光装置11と、基板搬送装置12とから構成される。デジタル露光装置11は、基板13をステージ14に固定し、このステージ14を移動させながら基板13に光ビームを照射して基板13に配線パターンを形成するものである。基板搬送装置12は、図示しない前処理工程から搬入された基板13をステージ14に搬入し、また、ステージ14から基板13を搬出するものである。以下では、ステージ14が移動する方向をY方向と定め、このY方向に対して水平面で直交する方向をX方向と定め、Y方向に鉛直面で直交する方向をZ方向と定め、さらにZ軸を中心とする回転方向をθ方向と定める。
【0017】
基板搬送装置12は、搬入部15と、排出部16と、オートキャリアハンド(以下、ACハンド)17とを有する。ACハンド17が基板搬送部を構成している。搬入部15には、前処理工程から搬入された基板13が位置決めして載置される。ACハンド17の下面には、エアを吸引することにより基板13を吸着保持する吸着部7を有する吸着機構(吸着手段)と、基板13を下方に向けて押し付ける上下移動自在な押付部材8を有する押付機構とが設けられており、ACハンド17はX方向及びZ方向に移動する。ACハンド17は、搬入部15に載置された未露光の基板13を吸着機構により吸着保持し、この吸着保持した基板13をステージ14に位置決め載置する。また、ACハンド17は、ステージ14上の露光済みの基板13を吸着機構により吸着保持し、この吸着保持した基板13を排出部16に位置決めして載置する。搬入部15及び排出部16には例えばコンベア機構を用いる。
【0018】
デジタル露光装置11は、基板13が固定される平板状のステージ14を備えている。基板13は、プリント基板やフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であり、表面に感光材料が塗布または貼着されている。4本の脚部18に支持された平板状の基体19の上面には、その長手方向(Y方向)に沿って2本のガイドレール20が互いに平行となるように延設されている。
【0019】
基台9は、ガイドレール20によってY方向に往復移動自在に支持されており、モータ等により構成されたステージ駆動部(ステージ移動部)21(図5参照)によって駆動される。ステージ14は、この基台9に支持されている。
【0020】
基体19上のY方向に関する中央部には、ガイドレール20を跨ぐように門型のゲート22が立設されており、このゲート22には、露光部(描画部)23が取り付けられている。露光部23は、計16個の露光ヘッド24からなり、ステージ14の移動経路上に固定配置されている。
【0021】
露光部23には、光源ユニット25から引き出された光ファイバ26と、画像処理ユニット27から引き出された信号ケーブル28とがそれぞれ接続されている。各露光ヘッド24は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有し、画像処理ユニット27から入力される画像データに基づいてDMDを制御して光源ユニット25からの光ビームを変調し、この光ビームを基板13に照射して露光を行う。
【0022】
基体19上にはさらに、ゲート22に対してY方向の奥側に、ガイドレール20を跨ぐようにしてゲート29が設けられている。ゲート29には4個のCCDカメラ(撮像部)30が取り付けられている。これらのCCDカメラ30は、ステージ14の移動経路上に固定配置されており、1回の発光時間が極めて短いストロボを内蔵している。これらのCCDカメラ30は基板13上に設けられた図示しないアライメントマーク(基板位置検出用マーク)を読み取るものであり、読み取ったアライメントマークの実際位置と、予め設定されているアライメントマークの適正位置とを比較してそのずれ量(X,Y,θ方向のずれ量)を検出するためのものである。アライメントマークの位置ずれ量を検出することはアライメントマーク計測と称されている。アライメントマークの位置ずれ量の情報は、露光画像データの補正に用いられる。なお、CCDカメラ30は、アライメントマークに応じた数を設けることが一般的である。
【0023】
図2において、ステージ14には、基板13をクランプするための基板クランプ機構40が設けられている。基板クランプ機構40は、基板13のX方向における両端部を上方からクランプする一対のクランプバー41A,41Bと、基板13のY方向における両端部を上方からクランプする一対のクランプバー41C,41Dと、これらのクランプバー41A〜41Dをそれぞれスライド移動させる移動ユニット(クランプ部材開閉部及びクランプ部材移動部)42A〜42Dとを有している。クランプバー41A〜41Dはそれぞれステージ14の上方に配置されており、移動ユニット42A〜42Dはステージ14の下方に配置されている。
【0024】
クランプバー41A,41Bは、Y方向に長尺であってX方向で対向しており、クランプバー41C,41Dは、X方向に長尺であってY方向で対向している。クランプバー41A,41Bは、クランプバー41C,41Dよりも長さが短くなっており、サイズの小さい基板をクランプするときであっても、互いに干渉しないよう構成されている。
【0025】
クランプバー41Aは、金属製(例えばアルミニウム)のクランプホルダ43と、クランプホルダ43の下面の内側領域(ステージ14の中心側領域)に固定され、基板13の表面に接触する樹脂製のクランプブレード44と、クランプホルダ43の下面の外側領域(ステージ14の外側領域)に設けられた2本の支持柱45とからなる。ステージ14には、上下に貫通し、端部から中央に向かうようにしてY方向またはX方向に延ばされた挿通孔47が各辺に所定間隔で2つずつ(計8つ)形成されており、クランプバー41Aの2本の支持柱45は、対応する2つの挿通孔47に挿通される。クランプバー41B,41C,41Dは、クランプバー41Aと同様の構成である。
【0026】
移動ユニット42Aは、2本の支持柱45を支持する支持板50と、この支持板50をZ方向にスライド移動させるエアシリンダ51とを有する。エアシリンダ51のピストンロッド52の先端は、支持板50の下面に固定されている。エアシリンダ51は、システム制御部53(図5参照)によって駆動が制御されており、システム制御部53からの駆動信号に基づいてピストンロッド52を下降及び上昇させる。ピストンロッド52の可動範囲は制限されており、下降したときも上昇したときも所定位置で停止する。
【0027】
ピストンロッド52が下降したときには、ピストンロッド52と共にクランプバー41Aが下降し、クランプバー41Aがステージ14に押し付けられる。ここで、ステージ14に基板13が載置されている場合には、基板13がクランプバー41Aによってクランプされる。一方、ピストンロッド52が上昇したときには、ピストンロッド52と共にクランプバー41Aが上昇し、クランプバーがステージ14からZ方向に離れる。クランプバー41Aがステージ14から離れる距離は基板13の厚みよりも大きくなっている。クランプバー41Aがステージ14に押し付けられるときのクランプバー41Aの状態を閉状態(閉位置)と称し、ステージ14から離れるときのクランプバー41Aの状態を開状態(開位置)と称する。
【0028】
移動ユニット42Aは、さらに、X方向に並べられた駆動プーリ54及び従動プーリ55と、これらのプーリ54,55に掛け渡されたタイミングベルト56と、駆動プーリ54を回転させるベルト駆動モータ57とを有する。ベルト駆動モータ57は正転及び逆転が可能であってシステム制御部53によって駆動が制御される。タイミングベルト56には取付部58を介してエアシリンダ51が取り付けられており、タイミングベルト56が駆動すると、エアシリンダ51及び支持板50がX方向に移動し、これによりクランプバー41AがX方向に移動する。クランプバー41Aは、支持柱45を挿通孔47に沿わせながらスライド移動し、支持柱45が挿通孔47の外側の端部に位置する退避位置と、支持柱45が挿通孔47の内側の端部に位置する中央位置との間で移動する。なお、クランプバー41Aが基板13の周縁部をクランプするときのクランプバー41Aの位置(退避位置と中央位置との間のいずれかの位置)をクランプ位置と称する。
【0029】
移動ユニット42B,42C,42Dは、移動ユニット42Aと同様の構成である。ただし、移動ユニット42Bは、クランプバー41BをZ方向及びX方向で移動させ、移動ユニット42Cは、クランプバー41CをZ方向及びY方向で移動させ、移動ユニットD42は、クランプバー41DをZ方向及びY方向で移動させる。
【0030】
図2及び図3において、移動ユニット42Aの支持板50には、基板13の有無を検出するための反射型のフォトセンサ(基板端縁センサ)59が設けられている。フォトセンサ59は、支持板50に取り付けられており、挿通孔47に対応する位置、すなわち、上から見てフォトセンサ59が挿通孔47から露呈する位置に設けられている。フォトセンサ59は、上に向けて検査光を発する投光部と、基板13の裏面に反射した検査光を受光する受光部とを有し、受光部が検査光を受光した場合には基板有り信号を出力し、受光部が検査光を受光しなかった場合には基板無し信号を出力する。
【0031】
フォトセンサ59の上方にはクランプバー41Aのクランプブレード44が位置するが、フォトセンサ59からの検査光がクランプブレード44に反射してフォトセンサ59に向かって戻ることを防ぐために、クランプブレード44の挿通孔47に対応する部位には傾斜面60が形成されている。各移動ユニット42B,42C,42Dの支持板50にも、移動ユニット42Aと同様のフォトセンサ59が設けられている。
【0032】
図4において、ステージ14の裏面には、ステージ14を補強するための金属製の補強部材61が設けられている。補強部材61は、ロ字形状の中央部62と、この中央部62の角部から放射状に延びる4本の腕部63とからなる。中央部62及び4本の腕部63は、挿通孔47を避けるようにして設けられており、ステージ14下に設けられた移動ユニット42A〜42Dが干渉することはない。この補強部材61によりステージ14の平面性が高く保たれ、基板13への露光処理を高精度に行うことができる。
【0033】
露光システム10の電気的構成を示す図5において、露光システム10には、デジタル露光装置11及び基板搬送装置12の各部にそれぞれ電気的に接続されるシステム制御部53が設けられており、このシステム制御部53が各部を統括的に制御している。システム制御部53は、ACハンド17を制御して基板13のステージ14への搬入動作及び排出動作を行わせる。また、システム制御部53は、ステージ駆動部21を制御してステージ14の移動を行わせながら、CCDカメラ30を駆動してアライメントマークの撮影を行うとともに、光源ユニット25及び画像処理ユニット27を制御して露光ヘッド24に露光処理を行わせる。操作装置70は、表示部と入力部とを有し、例えば、露光処理する基板13の外形サイズを入力するときに操作される。
【0034】
基板載置位置決定部71は、ステージ移動時に基板13のアライメントマークがCCDカメラ30の撮影領域の中央を通過するように、ステージ14に対する基板13の載置位置(この載置位置を適正載置位置と称する)を決定するものである。ステージ14上での基板13の適正載置位置を決定することは、言い換えると、ステージ14上でのアライメントマークの適正位置を決定することである。なお、Y方向においてはCCDカメラ30の撮像タイミングを調整することによりアライメントマークを撮影領域の中央に位置させることができるため、Y方向における適正載置位置はステージ14上のいずれの位置に設定してもよく、本実施形態ではY方向における適正載置位置は基板13の中心とステージ14の中心が一致する位置に設定している。
【0035】
基板載置位置決定部71では、基板13への露光動作を行う前に行われる準備動作によって得た情報に基づいて、X方向における基板の適正載置位置(アライメントマークの適正位置)を算出している。この準備動作では、X方向において基板13をステージ14の適当な位置に載置(なお、Y方向においては基板13の中心とステージ14の中心を一致させて載置)した上でCCDカメラ30によってアライメントマークを撮像して、X方向における撮影領域の中心位置とアライメントマークの位置とのずれ量を算出し、このずれ量に基づいてX方向における基板の適正載置位置を算出している。準備動作では、複数枚(例えば5枚)の基板に対してこの処理を行うことで、適正な載置位置をより正確に求めることができる。なお、この準備動作では、CCDカメラ30の撮影タイミングも決定している。算出された基板の適正載置位置情報、及び撮影タイミング情報は、システム制御部53に送られてシステム制御部53に記憶される。
【0036】
移動制御部(制御部)72は、システム制御部53の指示に基づいて、移動ユニット42A〜42Dの駆動をそれぞれ制御している。移動制御部72は、移動ユニット42A〜42Dのフォトセンサ59からの信号(基板有り信号または基板無し信号)を監視しており、この信号に基づいて移動ユニット42A〜42Dのエアシリンダ51及びベルト駆動モータ57の駆動を制御して、クランプバー41A〜41Dにクランプ動作を行わせる。
【0037】
移動制御部72では、操作装置70から入力された基板サイズ情報、及び準備動作によって算出された基板の適正載置位置情報に基づいて、ステージ14上の領域のうち基板13が載置されている領域を推測し、この推測した領域に基づいてクランプバー41Aの移動速度を高速/低速の間で切り替えている。具体的には、ステージ14上において、基板13の周縁から距離L1(例えば40mm)離れた位置(図3参照)よりも外側では高速移動に設定し、その位置よりも内側では低速移動に設定している。これにより、低速移動時に基板13の検出が行われるため、基板13を確実に検出することができる。なお、基板13の周縁から距離L1離れた位置を減速位置(切替点)と称する。クランプバー41Aは、基板13を検出した位置から内側に所定距離(例えば5mm)入り込んだクランプ位置に停止し、このクランプ位置でクランプを行う。このクランプ位置は、クランプバー41Aの支持柱45が基板13の端縁に当接しない位置になっている。
【0038】
移動制御部72は、クランプバー41Aが高速移動しているときに基板13が検出された場合には、入力された基板サイズよりも実際の基板サイズが大きいと判断して、クランプバー41Aの移動を即停止するとともにシステム制御部53に異常信号を出力する。システム制御部53は異常信号を受けて、操作装置70の表示部に、基板サイズが大きい旨のエラーを表示する。なお、エラー表示の替わりに、警告音を発してもよい。
【0039】
また、移動制御部72は、クランプバー41Aが低速移動し、基板13が検出されずに低速移動が所定時間継続された場合には、入力された基板サイズよりも実際の基板サイズが小さい、または、基板が載置されていないと判断して、クランプバー41Aの移動を即停止するとともにシステム制御部53に異常信号を出力する。システム制御部53は異常信号を受けて、操作装置70の表示部に、基板サイズが小さい、または、基板が載置されていない旨のエラーを表示する。移動制御部72は、移動ユニット42B,42C,42Dについても、移動ユニット42Aと同様の制御を行う。
【0040】
以下、上記構成による作用について説明する。操作装置70が操作されて基板サイズが入力されると、この基板サイズ情報がシステム制御部53に記憶される。また、基板13への露光動作を行う前に準備動作が行われて、ステージ14に対する基板の適正載置位置が算出され、この基板の適正載置位置情報がシステム制御部53に記憶される。
【0041】
準備動作の終了後、ACハンド17が搬入部15に位置決め載置された未露光の基板13を吸着機構の吸着部7で保持し、この基板13を適正載置位置情報に基づいてステージ14上に位置決め載置してから、吸着部7による吸着を解除するとともに押付機構の押付部材8によって基板13をステージ14に押し付ける。基板13がステージ14に押し付けられた状態で載置されると、システム制御部53からクランプ開始信号が発され、移動制御部72が移動ユニット42A〜42Dの駆動を制御してクランプ動作が開始される。
【0042】
以下、図6のフローチャートの流れに沿ってクランプ動作について説明する。移動制御部72は、クランプ開始信号を受けて、移動ユニット42A〜42Dのエアシリンダ51を駆動しクランプバー41A〜41Dをそれぞれ開状態にする。また、移動制御部72では、クランプ開始信号を受けて、基板サイズ情報と基板の適正載置位置情報に基づいて、ステージ14上の高速移動領域と低速移動領域とを算出する。各移動ユニット42A〜42Dのフォトセンサ59は全て基板無し信号を出力している。
【0043】
移動制御部72は、クランプ開始信号受信時にクランプバー41Aが高速移動領域内にある場合には、移動ユニット42Aのベルト駆動モータ57を高速回転させて、クランプバー41Aを中央位置に向かって高速移動させる。クランプバー41Aが移動途中で減速位置に到達したときには、ベルト駆動モータ57が低速回転に変更されクランプバー41Aが低速移動する。一方、クランプバー41Aが高速移動する途中で、フォトセンサ59が基板有り信号を出力したときには、操作装置70の表示部に基板サイズが大きい旨のエラー表示がなされる。
【0044】
移動制御部72は、クランプ開始信号受信時にクランプバー41Aが低速移動領域内にある場合には、ベルト駆動モータ57を低速回転させて、クランプバー41Aを中央位置に向かって低速移動させる。
【0045】
クランプバー41Aが低速移動する途中で、フォトセンサ59が基板有り信号を出力したときには、その検出位置から所定距離入り込んだクランプ位置でクランプバー41Aを停止する。図7のグラフは、時間とクランプバー41Aの移動速度との関係を示している。一方、クランプバー41Aが低速移動し、フォトセンサ59が所定時間継続して基板無し信号を出力し続けたときには、操作装置70の表示部に、基板サイズが小さい旨、または、基板が載置されていない旨のエラー表示がなされる。クランプバー41B,41C,41Dは、クランプバー41Aと同時に同様の動作を行う。
【0046】
クランプバー41A〜41Dの全てがクランプ位置で停止すると、移動ユニット42A〜42Dのエアシリンダ51が駆動し、クランプバー41A〜41Dが同時に閉状態になる。X方向においては基板13の中心とステージ14の中心とが一致していないため、クランプバー41Aとクランプバー41Bの移動量は互いに異なる。基板13の四辺はクランプバー41A〜41Dによってクランプされ、基板13に反りや歪みがある場合であってもこれが矯正される。基板13がクランプされると、ACハンド17の押付部材8による押付動作が解除されてACハンド17が基板13から離れる。
【0047】
基板クランプ機構40によるクランプ動作と同時に、ステージ14の表面に形成された孔からエアが吸引されて基板13がステージ14に吸着保持される。
【0048】
この後、ステージ14が後方(Y方向)に移動し、このステージ14に固定された基板13のアライメントマークがCCDカメラ30によって撮像される。アライメントマークはCCDカメラ30の撮影領域の中央で確実に撮像される。CCDカメラ30の撮影画像データは画像処理ユニット27へと送られ、この撮影画像データからアライメントマークの実際位置が算出され、さらに、このアライメントマークの実際位置と基板の適正載置位置(すなわち、アライメントマークの適正位置)とが比較されてその位置ずれ量が算出され、この位置ずれ量情報が露光画像データの補正に用いられる。
【0049】
CCDカメラ30による撮像後、ステージ14が前方(Y方向)に移動し、このステージ14の移動に合わせて、補正後の露光画像データに基づいて光源ユニット25及び画像処理ユニット27が制御されて基板13に露光処理が行われる。
【0050】
ステージ14が最も前方に移動すると、移動ユニット42A〜42Dのエアシリンダ51が駆動して、クランプバー41A〜41Dがそれぞれ閉状態から開状態になり、さらに、ステージ14の孔からのエア吸引が停止されて吸着保持が解除される。クランプバー41A〜41Dは、クランプ位置から退避位置まで移動させてもよいし、クランプ位置から少しだけ離れた位置まで移動させてもよい。露光済みの基板13はACハンド17によってステージ14上から排出部16へと搬送される。以降、上述した搬入動作、クランプ動作、露光動作、搬出動作が繰り返される。
【0051】
本発明の基板クランプ機構40によれば、基板13の中心とステージ14の中心とが一致しない場合であっても、基板13の周縁部を確実にクランプして、基板13の反り及び歪みを確実に矯正することができる。フォトセンサ(基板端縁センサ)59はクランプバー41A〜41Dと共に移動する構成であり、フォトセンサ59のための移動機構が必要ないことから基板クランプ機構40の製造コストを抑えることができる。
【0052】
また、本発明のデジタル露光装置11によれば、基板13の中心とステージ14の中心が一致しない場合であっても基板13を確実にクランプすることができることから、従来では必要とされていた基板サイズを測定する測定機構を設けなくてもよくなり、製造コストを抑えることができる。また、アライメントマークがCCDカメラ30の撮影領域の中心を通過するようにして基板13をステージ14に固定することが可能になるため、アライメントマークを正確に読み取ることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、クランプバー41C,41Dはそれぞれ独立して移動したが、Y方向において基板13の中心とステージ14の中心とを一致させる場合には、対称的に移動させることができれば独立でなくてもよく、タイミングベルト56及びベルト駆動モータ57を共通化してもよい。タイミングベルト及びベルト駆動モータが一組不要になることから製造コストを削減することができる。
【0054】
移動ユニットの構成は上記実施形態に限るものではなく、それぞれクランプバーをスライド移動させることができれば他の構成であってもよい。上記実施形態で説明したエアシリンダ機構やベルト機構以外にも、ボールネジ機構など他の機構を用いることもできる。
【0055】
上記実施形態では、クランプバーを4本用いたが、3本以下であってもよい。上記実施形態では、クランプバーの形状はI字状であったが、例えばL字状やコ字状など他の形状にしてもよい。
【0056】
上記実施形態で説明した基板クランプ機構は、露光システム以外のシステム、例えば基板の外観を光学的に検査する基板検査システムなどにも適用することができる。また、上記実施形態では、画像データに基づいて変調した光ビームを照射して基板に露光を施す露光システムで説明したが、画像データに基づいてドット状のインクを射出して基板に描画を行うインクジェット式描画システムにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】露光システムの外観斜視図である。
【図2】ステージ及び基板クランプ機構の分解斜視図である。
【図3】ステージ及び補強部材を示す図である。
【図4】クランプバー付近の構成を示す断面図である。
【図5】露光システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】クランプ動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】クランプバーの移動速度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
10 露光システム
11 デジタル露光装置
12 基板搬送装置
13 基板
14 ステージ
17 ACハンド
21 ステージ駆動部
30 CCDカメラ
40 基板クランプ機構
41A,41B,41C,41D クランプバー
42A,42B,42C,42D 移動ユニット
59 フォトセンサ
53 システム制御部
71 基板載置位置決定部
72 移動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置された矩形の基板を前記ステージに保持固定する基板クランプ機構において、
前記基板の各辺に略平行になるように前記ステージに配置され、前記基板の各辺を前記ステージに押えて前記ステージとの間で前記基板を挟持するクランプ部材と、
前記クランプ部材を前記ステージに押し付けて前記基板を挟持する閉位置、及び前記クランプ部材を前記ステージから離間させて前記基板の挟持を解除する開位置の間で移動させるクランプ部材開閉部と、
前記基板が載置されるエリアから前記クランプ部材を退避させた退避位置、及び前記クランプ部材を用いて前記基板をクランプするクランプ位置の間で、前記開位置とされた前記クランプ部材を移動させるクランプ部材移動部と、
前記クランプ部材と共に移動し、前記基板の端縁を検出する基板端縁センサと、
前記基板端縁センサの基板端縁検出信号に基づき前記クランプ部材移動部を制御し、前記クランプ部材を前記クランプ位置に位置決めする制御部と、
を備えることを特徴とする基板クランプ機構。
【請求項2】
前記制御部は、前記クランプ部材移動部により前記クランプ部材を前記退避位置から前記クランプ位置に向かって移動させ、この移動途中で前記基板端縁センサから基板端縁検出信号に基づき前記クランプ部材を停止させ、この後に前記クランプ部材開閉部により前記クランプ部材を閉位置にすることを特徴とする請求項1記載の基板クランプ機構。
【請求項3】
前記制御部は、前記クランプ部材移動部による前記退避位置から前記クランプ位置への移動速度を、初期の高速移動とこれに続く低速移動との二段階に切り替え、前記高速移動から前記低速移動への切替点を、予め取得される基板サイズ情報及び前記ステージ上の基板載置位置情報に基づいて設定することを特徴とする請求項2記載の基板クランプ機構。
【請求項4】
前記切替点以前に前記基板端縁センサから基板端縁検出信号が発せられたときに、前記ステージに載置された基板が大きいと判定してエラー処理を行うことを特徴とする請求項3記載の基板クランプ機構。
【請求項5】
前記切替点から一定時間を経過しても前記基板端縁センサから基板端縁検出信号が発せられないときに、前記ステージに載置された基板が小さい、または基板が載置されていないと判定してエラー処理を行うことを特徴とする請求項3または4記載の基板クランプ機構。
【請求項6】
請求項1から5いずれか一項記載の基板クランプ機構によって前記基板を前記ステージに保持固定して前記ステージを所定経路で移動させるステージ移動部と、
前記所定経路上に設けられ、移動する前記基板に対して、画像データに基づき順次に描画を行う描画部と、
前記基板の被描画面の少なくとも周縁部を吸着する吸着手段、及び前記基板を前記ステージに押し付ける押付手段を有し、前記基板を前記ステージ上に搬送する基板搬送部と、
を備えることを特徴とする描画システム。
【請求項7】
前記所定経路上に設けられ、前記基板に形成されたアライメントマークを読み取る撮像部と、
前記撮像部の撮影領域の中央部を前記アライメントマークが通過するように、前記基板の前記ステージに対する載置位置を決定する載置位置決定部とを備え、
前記基板搬送部は決定された載置位置に前記基板を搬送することを特徴とする描画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−277478(P2008−277478A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118126(P2007−118126)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】