説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の液膜を基板上から除去して基板を乾燥させるときに、乾燥不良が発生することを抑制または防止することができる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。
【解決手段】水平に保持された基板Wの上面に純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の一例であるIPA(イソプロピルアルコール)を供給して、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜を形成する。そして、基板W上にIPAの液膜を保持させた状態で基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに基板Wを回転させて基板W上からIPAの液膜を除去する。このとき、基板Wの上面中央部に不活性ガスの一例である窒素ガスを吹き付けながら、基板Wの上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置P1にIPAを着液させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理するための基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに基板を回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板の上面に薬液やリンス液などの処理液を供給するためのノズルを備えている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係る基板の処理では、たとえば、回転状態の基板の上面に薬液および純水が順次供給され、薬液処理およびリンス処理が順次行われる。その後、基板の上面にIPA(イソプロピルアルコール)が供給される。これにより、基板上の純水がIPAに置換され、基板の上面全域を覆うIPAの液膜が形成される。そして、基板を回転させて基板を乾燥させる乾燥処理が行われる。特許文献1では、基板の上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら基板を回転させる乾燥方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-38595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の上面全域を覆うIPAの液膜を基板上に保持させた状態で基板の上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら基板を回転させた場合、窒素ガスの供給圧によって基板の上面中央部からIPAが除去される。したがって、基板上に保持されたIPAの液膜の中央部に穴が形成されて、IPAの液膜が環状になる。また、基板上のIPAに遠心力が作用するため、IPAが外方(基板の回転軸線から離れる方向)に移動して、環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらに、基板に吹き付けられた窒素ガスは、基板の上面中央部から上面周縁部に向って放射状に広がるので、窒素ガスによって押されて環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらにまた、IPAの液膜に窒素ガスが吹き付けられるのでIPAが蒸発していく。したがって、環状になったIPAの液膜は、遠心力や窒素ガスの供給圧によって外方に押し出されるとともに、IPAの蒸発によって内径が大きくなっていく。
【0006】
一方、基板上に保持されたIPAに作用する遠心力は、基板の回転軸線から離れるほど大きくなる。したがって、基板の上面周縁部に保持されたIPAは、その内側のIPAよりも大きな速度で外方に移動していく。そのため、基板の上面周縁部よりも内側の領域にIPAが残っている状態で基板の上面周縁部からIPAがなくなる場合がある。また、基板上に残ったIPA(基板の上面において周縁部よりも内側の領域に保持されたIPA)に作用する遠心力は比較的小さいから、基板上のIPAが遠心力によって外方に移動する速度は比較的小さい。すなわち、基板の上面全域を覆うIPAの液膜は、環状になった後、窒素ガスの供給圧やIPAの蒸発によって内径が大きくなっていくのに対し、その外径は、作用する遠心力が小さいから大きくなる速度が比較的小さい。したがって、IPAの液膜の外径が広がる速度よりも、内径が広がる速度の方が大きくなる場合がある。
【0007】
このように、基板の上面全域を覆うIPAの液膜を基板上に保持させた状態で基板の上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら基板を回転させると、基板上に保持されたIPAの液膜は、環状になった後、内径が大きくなっていく。したがって、基板の上面は、中央部から外方に向かって乾燥していく。また、前述のように、内側にIPAが残っている状態で基板の上面周縁部からIPAがなくなる場合があるので、基板の上面において周縁部よりも内側の領域が完全に乾燥していない状態で基板の上面周縁部が乾燥する場合がある。さらに、環状になったIPAの液膜の外径が広がる速度よりも内径が広がる速度の方が大きくなる場合があるので、基板の上面中央部と上面周縁部との間の環状の領域(以下では、「中間領域」という。)にIPAが最終的に残って、基板上面における最終的な乾燥位置が中間領域になる場合がある。すなわち、中間領域が乾燥することにより、基板の上面全域の乾燥が終了する場合がある。
【0008】
しかしながら、最終的な乾燥位置が中間領域になると、ウォーターマークやパターン倒れなどの乾燥不良が中間領域に発生する場合がある。すなわち、IPAは、純水よりも揮発性が高く、純水を容易に溶け込ませることができる有機溶剤である。したがって、前述の特許文献1に係る基板の処理において、IPAによって置換されずに基板上に純水が残ると、残った純水は、基板上に形成されたIPAの液膜に溶け込んでいく。そのため、IPAの液膜中に純水が溶け込んでいる状態で基板の上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら基板を回転させると、環状になったIPAの液膜は、IPAの蒸発によって純水の濃度が高まりながら内径が大きくなっていく。その結果、純水の濃度が高いIPAが中間領域に残り、当該IPA中の純水に起因する乾燥不良が中間領域に発生する場合がある。また、このような問題は、基板の上面中央部に窒素ガスを吹き付けながらIPAの液膜を基板上から除去する場合に限らず、基板の上面中央部に不活性ガスを吹き付けながら、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の液膜を基板上から除去する場合に同様に生じうる。
【0009】
そこで、この発明の目的は、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の液膜を基板上から除去して基板を乾燥させるときに、乾燥不良が発生することを抑制または防止することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、水平に保持された基板(W)の上面に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、基板上に揮発性処理液の液膜を保持させた状態で基板の中央部を通る鉛直な回転軸線(L1)まわりに基板を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程と並行して、基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給工程と、前記基板回転工程および前記ガス供給工程と並行して、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置(P1)に揮発性処理液を着液させる揮発性処理液供給工程とを含む、基板処理方法である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
【0011】
この発明によれば、水平に保持された基板の上面に純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成する。そして、基板上に揮発性処理液の液膜を保持させた状態で基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに基板を回転させる。このとき、基板の上面中央部にガスを吹き付けながら、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液を着液させる。
【0012】
基板の上面中央部にガスを吹き付けることにより、ガスの供給圧によって基板の上面中央部から揮発性処理液が除去される。したがって、基板上に保持された揮発性処理液の液膜の中央部に穴が形成されて、揮発性処理液の液膜が環状になる。また、基板の回転によって基板上の揮発性処理液に遠心力が作用するため、揮発性処理液が外方(基板の回転軸線から離れる方向)に移動して、環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらに、基板に吹き付けられたガスは、基板の上面中央部から上面周縁部に向って放射状に広がるので、ガスによって押されて環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらにまた、揮発性処理液の液膜にガスが吹き付けられるので揮発性処理液が蒸発していく。したがって、環状になった揮発性処理液の液膜は、遠心力やガスの供給圧によって外方に押し出されるとともに、揮発性処理液の蒸発によって内径が大きくなっていく。
【0013】
また、基板上に保持された揮発性処理液に作用する遠心力は、基板の回転軸線から離れるほど大きくなる。したがって、基板の上面周縁部に保持された揮発性処理液は、その内側の揮発性処理液よりも大きな速度で外方に移動していく。一方、基板の所定位置に着液した揮発性処理液は、基板の回転による遠心力を受けて外方に移動していく。したがって、基板の上面周縁部に保持された揮発性処理液がその内側の揮発性処理液よりも大きな速度で外方に移動するものの、前記所定位置に着液した揮発性処理液が基板の上面周縁部に供給されるので、基板の上面周縁部から揮発性処理液が完全になくならず、基板の上面周縁部に揮発性処理液が保持された状態が維持される。そのため、基板の上面において周縁部よりも内側の領域が完全に乾燥していない状態で基板の上面周縁部が乾燥することが抑制または防止される。
【0014】
このように、この発明によれば、基板の上面周縁部に揮発性処理液が保持された状態を維持しながら、環状になった揮発性処理液の液膜の内径を拡大させていくことができる。したがって、基板上の揮発性処理液は、基板の上面周縁部から周囲に排出されながら、基板の上面中央部から外方に向かって広がっていく。そのため、基板の上面は、中央部から外方に向かって乾燥していき、周縁部が最終的な乾燥位置となる。これにより、基板上の揮発性処理液に純水が溶け込んでいる場合でも、ウォーターマークやパターン倒れなどの乾燥不良が中間領域(基板の上面中央部と上面周縁部との間の環状の領域)に発生することを抑制または防止することができる。また、基板の上面周縁部から周囲に揮発性処理液を排出させながら全ての揮発性処理液を基板上から除去するので、純水が混じった揮発性処理液を基板上に残さずに除去することができる。これにより、純水に起因する乾燥不良が基板の上面に発生することを抑制または防止することができる。
【0015】
しかも、この発明によれば、基板の上面中央部にガスを吹き付けながら、基板上から揮発性処理液を除去するので、基板の乾燥を進行させているときに、基板上面の露出した部分(揮発性処理液が除去された部分)の全域をガスによって覆い続けることができる。したがって、基板の乾燥を進行させているときに、パーティクルなどの異物や処理液のミストが基板上面の露出した部分に付着することを抑制または防止することができる。これにより、基板の上面を速やかに乾燥させることができ、さらに、異物やミストの付着による基板の汚染を抑制または防止することができる。
【0016】
基板の上面周縁部に揮発性処理液が保持された状態を維持するには、たとえば、基板を回転させながら、基板上面への揮発性処理液の着液位置を中央部から周縁部に移動させることにより(揮発性処理液によって基板の上面をスキャンすることにより)、基板の上面周縁部に揮発性処理液を供給することが考えられる。しかしながら、揮発性処理液によって基板の上面をスキャンする場合には、基板に着液する揮発性処理液の流量を比較的大きくしないと、揮発性処理液の着液位置が基板の上面中央部付近にあるときに、基板の上面周縁部に揮発性処理液が十分に供給されず、基板の上面周縁部に揮発性処理液が保持された状態を維持することができない場合がある。一方、この発明によれば、揮発性処理液によって基板の上面をスキャンする場合に比べて少ない流量で、基板の上面周縁部に揮発性処理液が保持された状態を維持することができる。また、基板上面への揮発性処理液の着液位置(前記所定位置)が適切に設定されれば、中間領域などの基板上面の乾燥不良が発生し易い領域に揮発性処理液を確実に供給し続けることができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記揮発性処理液供給工程は、基板の上面中央部に保持された揮発性処理液が前記回転軸線から離れる方向に移動して揮発性処理液の着液位置付近に達するまで継続される工程である、請求項1記載の基板処理方法である。
この発明によれば、環状になった揮発性処理液の液膜の内径が広がって、当該液膜の内周が、揮発性処理液の着液位置である前記所定位置付近に達するまで、基板の上面に対する揮発性処理液の供給が継続される。したがって、基板上面の揮発性処理液が除去された領域に着液した揮発性処理液が入り込んで、基板の乾燥が妨げられることを抑制または防止することができる。これにより、基板を速やかに乾燥させることができる。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記基板回転工程は、少なくとも基板上から揮発性処理液の液膜がなくなるまで継続される工程であり、前記ガス供給工程は、少なくとも基板上から揮発性処理液の液膜がなくなるまで継続される工程である、請求項1または2記載の基板処理方法である。
この発明によれば、少なくとも基板上から揮発性処理液がなくなるまで基板の回転および基板上面へのガスの供給が継続される。これにより、基板の上面全域をガスによって覆いながら、基板の上面全域を乾燥させることができる。したがって、基板の上面全域を速やかに乾燥させることができ、さらに、異物やミストの付着による基板の汚染を確実に抑制または防止することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、前記ガス供給工程は、前記基板回転工程が終了するまで継続される工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、基板の上面に対するガスの供給が、基板の回転が停止されるまで継続される。すなわち、基板の回転により生じた乱気流などの気流が消滅または弱まるまで、基板の上面がガスによって覆われ続ける。したがって、基板の回転に伴う気流によって基板側へ運ばれた異物や処理液のミストから基板を保護することができる。これにより、異物やミストの付着による基板の汚染を確実に抑制または防止することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、基板(W)を水平に保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板を当該基板の中央部を通る鉛直な回転軸線(L1)まわりに回転させる基板回転手段(11)と、前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給手段(4,16,17,13,14,15;104)と、前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部を含む基板上面の複数個所に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を着液させることができる揮発性処理液供給手段(6,7,18,19,20,25,26,27,28;29,30,31,32,33,34)と、前記基板保持手段、基板回転手段、ガス供給手段および揮発性処理液供給手段を制御することにより、水平に保持された基板の上面に揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、基板上に揮発性処理液の液膜を保持させた状態で前記回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程と並行して、基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給工程と、前記基板回転工程および前記ガス供給工程と並行して、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液を着液させる揮発性処理液供給工程とを実行する制御手段(12)とを含む、基板処理装置(1,101)である。
【0021】
この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項6記載の発明は、前記揮発性処理液供給手段は、固定された状態で揮発性処理液を吐出するように設けられた第1固定ノズル(6)および第2固定ノズル(7)を有するものであり、前記第1固定ノズルは、前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部に揮発性処理液が着液するように設けられたものであり、前記第2固定ノズルは、前記基板保持手段に保持された基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液が着液するように設けられたものである、請求項5記載の基板処理装置である。
【0022】
この発明によれば、第1固定ノズルから揮発性処理液を吐出させて、基板の上面中央部に揮発性処理液を着液させることができる。基板の上面中央部に着液した揮発性処理液は、後続の揮発性処理液によって押されて基板上を外方に広がっていく。これにより、基板の上面全域に揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成することができる(液膜形成工程)。
【0023】
また、この発明によれば、基板保持手段に保持された基板を基板回転手段によって回転させながら、第2固定ノズルから揮発性処理液を吐出させて、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液を着液させることができる。基板の所定位置に着液した揮発性処理液は、基板の回転による遠心力を受けて外方に移動していく。これにより、基板の上面に揮発性処理液を供給することができる(揮発性処理液供給工程)。
【0024】
請求項7記載の発明は、前記揮発性処理液供給手段は、揮発性処理液を吐出する移動ノズル(29)と、前記基板保持手段に保持された基板に対する移動ノズルからの揮発性処理液の着液位置が、基板の上面中央部と前記所定位置との間で移動するように前記移動ノズルを移動させるノズル移動手段(32)と、前記移動ノズルに対する揮発性処理液の供給および供給停止を切り替える切替手段(33)とを有するものであり、前記制御手段は、前記ノズル移動手段および切替手段を制御して、前記移動ノズルからの揮発性処理液の吐出を停止させた状態で当該移動ノズルを移動させるノズル移動工程を実行するものである、請求項5記載の基板処理装置である。
【0025】
この発明によれば、制御手段によってノズル移動手段と切替手段を制御することにより、移動ノズルから吐出させた揮発性処理液を基板の上面中央部に着液させることができる。基板の上面中央部に着液した揮発性処理液は、後続の揮発性処理液によって押されて基板上を外方に広がっていく。これにより、基板の上面全域に揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成することができる(液膜形成工程)。
【0026】
また、この発明によれば、制御手段によってノズル移動手段と切替手段を制御して、移動ノズルからの揮発性処理液の吐出を停止させた状態で当該移動ノズルを移動させることができる(ノズル移動工程)。したがって、揮発性処理液の使用量を減少させて、基板の処理に要するコストを抑制することができる。また、液膜形成工程を実行させた後にノズル移動工程を実行させ、さらに、制御手段によって切替手段を再び制御することにより、回転状態の基板の前記所定位置に揮発性処理液を着液させることができる。これにより、基板の上面に揮発性処理液を供給することができる(揮発性処理液供給工程)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図解図である。
【図2(a)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(b)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(c)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(d)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(e)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(f)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図2(g)】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図解図である。
【図4(a)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(b)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(c)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(d)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(e)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(f)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(g)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図4(h)】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理の一例を説明するための工程図である。
【図5】気体ノズルの変形例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す図解図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に気体を供給するための気体ノズル4と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための複数の処理液ノズル(この実施形態では、第1〜第3処理液ノズル5,6,7)とを備えている。
【0029】
スピンチャック3は、鉛直な方向に延びる回転軸8と、回転軸8の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース9と、スピンベース9上に配置された複数個の挟持部材10と、回転軸8に連結されたスピンモータ11(基板回転手段)とを備えている。複数個の挟持部材10は、スピンベース9の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。スピンチャック3は、各挟持部材10を基板Wの周端面に当接させることにより、スピンベース9の上方で水平な姿勢で基板Wを挟持することができる。複数個の挟持部材10によって基板Wを挟持した状態で、スピンモータ11の駆動力を回転軸8に入力させることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに基板Wを回転させることができる。スピンモータ11は、制御部12(制御手段)によって制御されるようになっている。
【0030】
なお、スピンチャック3としては、このような構成のものに限らず、たとえば、基板Wの下面(裏面)を真空吸着することにより基板Wを水平な姿勢で保持して、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持した基板Wを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
気体ノズル4は、吐出口を下方に向けた状態で、スピンチャック3よりも上方に配置されている。気体ノズル4は、たとえば、鉛直下方に向けて気体を吐出することができる。この実施形態では、たとえば、内径が10mm程度のチューブ状の部材が気体ノズル4として用いられている。気体ノズル4は、水平に延びるノズルアーム13の先端部に取り付けられている。ノズルアーム13は、鉛直に延びる支持軸14によって支持されている。支持軸14は、スピンチャック3の周囲に配置されており、その中心軸線まわりに揺動可能にされている。支持軸14を中心軸線まわりに揺動させることにより、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方を通る円弧状の軌跡に沿って気体ノズル4を水平移動させることができる。
【0031】
また、支持軸14は、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動機構15に結合されている。ノズル揺動機構15の駆動力を支持軸14に入力させることにより、気体ノズル4およびノズルアーム13を支持軸14の中心軸線まわりに一体的に水平移動させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に気体ノズル4を配置したり、スピンチャック3の上方から気体ノズル4を退避させたりすることができる。
【0032】
気体ノズル4には、気体バルブ16が介装された気体供給管17を介して図示しない気体供給源からの気体が供給される。気体ノズル4に供給される気体としては、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガス、あるいはドライエアー(低湿度に調整された空気)を例示することができる。気体バルブ16の開閉は、制御部12によって制御される。また、ノズル揺動機構15は、制御部12によって制御される。制御部12は、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に気体ノズル4を位置させた状態で、気体ノズル4から基板Wの上面中央部に向けて気体を吐出させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に気体を吹き付けることができる。
【0033】
この実施形態では、気体ノズル4、気体バルブ16、気体供給管17、ノズルアーム13、支持軸14、ノズル揺動機構15によってガス供給手段が構成されている。気体ノズル4は、前述のように、ノズル揺動機構15によって水平移動されるように構成されたものであってもよいし、吐出した気体がスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に吹き付けられるように一定位置に固定されたものであってもよい。
【0034】
各処理液ノズル5,6,7は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルである。各処理液ノズル5,6,7は、吐出口を下方に向けた状態で、スピンチャック3よりも上方に配置されている。各処理液ノズル5,6,7は、たとえば、鉛直下方に向けて処理液を吐出することができる。各処理液ノズル5,6,7は、処理液ノズル5,6,7毎に設けられた水平に延びるノズルアーム18の先端部に取り付けられている。また、各ノズルアーム18は、ノズルアーム18毎に設けられた鉛直に延びる支持軸19に支持されている(図1では、第1および第2処理液ノズル5,6に対応する支持軸の図示を省略している。)。各支持軸19は、スピンチャック3の周囲に配置されており、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。各支持軸19を中心軸線まわりに揺動させることにより、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方を通る円弧状の軌跡に沿って対応する処理液ノズル5,6,7を水平移動させることができる。
【0035】
また、各支持軸19は、支持軸19毎に設けられたノズル揺動機構20に結合されている(図1では、第1および第2処理液ノズル5,6に対応するノズル揺動機構の図示を省略している。)。ノズル揺動機構20の駆動力を支持軸19に入力させることにより、対応する処理液ノズル5,6,7およびノズルアーム18を支持軸19の中心軸線まわりに一体的に水平移動させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に各処理液ノズル5,6,7を配置したり、スピンチャック3の上方から各処理液ノズル5,6,7を退避させたりすることができる。
【0036】
第1処理液ノズル5には、薬液バルブ21が介装された薬液供給管22、およびリンス液バルブ23が介装されたリンス液供給管24が接続されている。第1処理液ノズル5には、薬液供給管22を介して図示しない薬液供給源からの薬液が供給される。また、第1処理液ノズル5には、リンス液供給管24を介して図示しないリンス液供給源からのリンス液が供給される。第1処理液ノズル5には、薬液およびリンス液が選択的に供給されるようになっている。
【0037】
第1処理液ノズル5に供給される薬液としては、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。また、第1処理液ノズル5に供給されるリンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0038】
また、第2処理液ノズル6には、第2処理液バルブ25が介装された第2処理液供給管26を介して、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液が図示しない処理液供給源から供給される。同様に、第3処理液ノズル7には、第3処理液バルブ27が介装された第3処理液供給管28を介して、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液が図示しない処理液供給源から供給される。
【0039】
第2および第3処理液ノズル6,7に供給される揮発性処理液としては、IPA(イソプロピルアルコール)、HFE(ハイドロフロロエーテル)、メタノール、エタノール、およびアセトンのうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。すなわち、揮発性処理液は、単体成分のみからなるものであってもよいし、他の成分と混合されたものであってもよい。たとえば、IPAと純水の混合液であってもよいし、IPAとHFEの混合液であってもよい。IPA、HFE、メタノール、エタノール、およびアセトンは、純水よりも揮発性が高く、純水を容易に溶け込ませることができる有機溶剤である。また、第2および第3処理液ノズル6,7に供給される揮発性処理液は、同種の揮発性処理液であってもよいし、異なる種の揮発性処理液であってもよい。
【0040】
薬液バルブ21およびリンス液バルブ23の開閉は、制御部12によって制御される。また、第1処理液ノズル5に対応するノズル揺動機構は、制御部12によって制御される。制御部12は、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に第1処理液ノズル5を位置させた状態で、第1処理液ノズル5から基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に処理液を着液させて、基板Wの上面に処理液を供給することができる。
【0041】
この実施形態では、第1処理液ノズル5、薬液バルブ21、薬液供給管22、リンス液バルブ23、リンス液供給管24、ノズルアーム18、支持軸19、ノズル揺動機構20によって基板Wに処理液を供給する処理液供給手段が構成されている。第1処理液ノズル5は、前述のように、ノズル揺動機構20によって水平移動されるように構成されたものであってもよいし、吐出した処理液がスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に着液するように一定位置に固定されたものであってもよい。
【0042】
また、第2および第3処理液バルブ25,27の開閉は、制御部12によって制御される。また、第2処理液ノズル6に対応するノズル揺動機構、および第3処理液ノズル7に対応するノズル揺動機構20は、制御部12によって制御される。制御部12は、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に第2処理液ノズル6を位置させた状態で、第2処理液ノズル6から基板Wの上面中央部に向けて揮発性処理液を吐出させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に揮発性処理液を着液させて、基板Wの上面に揮発性処理液を供給することができる。また、制御部12は、スピンチャック3に保持された基板Wの上面において中央部を除く基板Wの回転軸線L1から一定距離離れた所定位置P1の上方に第3処理液ノズル7を位置させた状態で、第3処理液ノズル7から基板Wの所定位置P1に向けて揮発性処理液を吐出させることができる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの所定位置P1に揮発性処理液を着液させて、基板Wの上面に揮発性処理液を供給することができる。
【0043】
この実施形態では、第2および第3処理液ノズル6,7、第2および第3処理液バルブ25,27、第2および第3処理液供給管26,28、ノズルアーム18、支持軸19、ノズル揺動機構20によって揮発性処理液供給手段が構成されている。また、この実施形態では、第2処理液ノズル6が第1固定ノズルとして機能し、第3処理液ノズル7が第2固定ノズルとして機能する。第2および第3処理液ノズル6,7は、前述のように、ノズル揺動機構20によって水平移動されるように構成されたものであってもよいし、吐出した処理液がそれぞれ基板Wの上面中央部および所定位置P1に着液するように一定位置に固定されたものであってもよい。
【0044】
図2(a)〜図2(g)は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1による基板Wの処理の一例を説明するための工程図である。以下では図1を参照して、基板処理装置1による基板Wの処理の一例について説明する。また、この処理例の各工程において、図2(a)〜図2(g)を適宜参照する。
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック3に渡される。基板Wが処理室2に搬入されるとき、気体ノズル4などの処理室2内の構成は、スピンチャック3の上方から退避させられており、搬送ロボットや基板Wに衝突しないようにされている。
【0045】
次に、薬液の一例であるフッ酸によって基板Wを処理する薬液処理が行われる。具体的には、制御部12により第1処理液ノズル5に対応するノズル揺動機構が制御されて、第1処理液ノズル5がスピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に配置される。また、基板Wがスピンチャック3に保持された後、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば800rpm)で回転させられる。その後、制御部12により薬液バルブ21が開かれて、第1処理液ノズル5から基板Wの上面中央部に向けてフッ酸が吐出される。
【0046】
第1処理液ノズル5から吐出されたフッ酸は、図2(a)に示すように、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方(回転軸線L1から離れる方向)に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にフッ酸が供給され、基板Wの上面全域にフッ酸による薬液処理が施される。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部12により薬液バルブ21が閉じられて、第1処理液ノズル5からのフッ酸の吐出が停止される。
【0047】
次に、リンス液の一例である純水によって基板Wを洗い流すリンス処理が行われる。具体的には、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wの回転速度が変更される(たとえば1200rpmに変更される)。その後、制御部12によりリンス液バルブ23が開かれて、第1処理液ノズル5から回転状態の基板Wの上面中央部に向けて純水が吐出される。
【0048】
第1処理液ノズル5から吐出された純水は、図2(b)に示すように、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、基板W上のフッ酸が純水によって洗い流される。このようにして、基板W上からフッ酸が除去され、基板Wの上面に純水によるリンス処理が行われる。
【0049】
次に、純水の液膜を基板W上に保持させた状態で処理を進める純水によるパドル処理が行われる。具体的には、第1処理液ノズル5からの純水の吐出が継続された状態で、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wが低速回転状態(たとえば10rpm程度の回転速度で回転している状態)にされる。これにより、基板W上の純水に作用する遠心力が弱まって、基板Wの周囲に排出される純水の量が減少する。したがって、基板Wの上面には、第1処理液ノズル5から供給された純水が溜まり、純水による液盛りが行われる。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。
【0050】
純水の液膜が基板W上に形成された後は、制御部12によりリンス液バルブ23が閉じられて、図2(c)に示すように、第1処理液ノズル5からの純水の吐出が停止される。そして、基板W上で純水の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、純水による液膜を基板W上に保持させた状態で処理を進める純水によるパドル処理が基板Wの上面に行われる。そして、純水によるパドル処理が所定時間にわたって行われると、制御部12により第1処理液ノズル5に対応するノズル揺動機構が制御されて、第1処理液ノズル5が基板Wの上方から退避させられる。
【0051】
次に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の一例であるIPAによって基板W上の純水の液膜を置換するIPA置換処理が行われる。具体的には、制御部12により第2処理液ノズル6に対応するノズル揺動機構が制御されて、第2処理液ノズル6がスピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に配置される。その後、制御部12により第2処理液バルブ25が開かれて、第2処理液ノズル6からIPAが所定の吐出流量(たとえば100mL/min)で基板Wの上面中央部に向けて吐出される。また、第2処理液ノズル6からIPAが吐出されている間、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、低速回転状態の基板Wが所定の回転速度まで加速される。この基板Wの処理例におけるIPA置換処理では、たとえば、10rpm、50rpm、75rpm、100rpm、500rpmの順に基板Wの回転が段階的に加速され、基板Wの回転速度が500rpmに維持される。
【0052】
第2処理液ノズル6から吐出されたIPAは、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。また、基板Wの上面中央部に着液したIPAは、次々と供給されるIPAによって外方に押し流される。したがって、基板W上に保持された純水の液膜は、図2(d)に示すように、基板Wの上面中央部から外方に向けて徐々にIPAに置換されていく。また、IPAは、この基板Wの処理の一例でリンス液として用いられている純水を容易に溶け込ませることができる有機溶剤であるから、基板W上の純水がIPAに溶け込みつつ、基板W上の純水がIPAよって置換されていく。さらに、この基板Wの処理例におけるIPA置換処理では、基板Wの回転が段階的に加速させられるので、基板W上の純水およびIPAに作用する遠心力が段階的に大きくなり、基板W上に保持された純水の液膜が基板Wの上面中央部から外方に向かって確実にIPAに置換されていく。このようにして、基板W上の純水の液膜をIPAの液膜に置換するIPA置換処理が所定時間(たとえば60sec)にわたって行われ、基板Wの上面全域がIPAの液膜によって覆われる(液膜形成工程)。
【0053】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御部12により気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15が制御されて、基板Wの中央部上方に位置する第2処理液ノズル6の近傍に気体ノズル4が配置される。また、制御部12により第3処理液ノズル7に対応するノズル揺動機構20が制御されて、第3処理液ノズル7がスピンチャック3に保持された基板Wの所定位置P1の上方に配置される。より具体的には、直径が300mmの円形基板を処理するときには、たとえば、基板Wの上面外周縁から40mm内側に入った位置が所定位置P1に設定され、第3処理液ノズル7から吐出された揮発性処理液がこの所定位置P1に着液するように第3処理液ノズル7が配置される。
【0054】
気体ノズル4が第2処理液ノズル6の近傍に配置された後は、制御部12により第2処理液バルブ25が閉じられて、第2処理液ノズル6からのIPAの吐出が停止される。また、第2処理液ノズル6からのIPAの吐出が停止されるのとほぼ同時に、制御部12により第2処理液ノズル6に対応するノズル揺動機構が制御されて、第2処理液ノズル6がスピンチャック3に保持された基板Wの上方から退避させられる。さらに、第2処理液ノズル6が基板Wの上方から退避するのとほぼ同時に、制御部12により気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15が制御されて、基板Wの中央部上方に気体ノズル4が配置される。制御部12は、基板Wの中央部上方に気体ノズル4が配置された直後に気体バルブ16を開いて、図2(e)に示すように、気体の一例である窒素ガスを所定の吐出流量(たとえば20L/min)で回転状態の基板Wの上面中央部に向けて気体ノズル4から吐出させる(ガス供給工程)。したがって、基板Wの上面中央部には、第2処理液ノズル6からのIPAの供給が停止されるのとほぼ同時に、気体ノズル4から吐出された窒素ガスが吹き付けられる。また、このとき制御部12は、スピンモータ11を制御することにより、基板Wの回転速度を所定の回転速度(たとえば700rpm)に変更させて、基板W上にIPAの液膜を保持させた状態で基板Wを回転させている(基板回転工程)。
【0055】
一方、第3処理液ノズル7がスピンチャック3に保持された基板Wの所定位置P1の上方に配置された後は、制御部12により第3処理液バルブ27が開かれて、図2(e)に示すように、回転状態の基板Wの所定位置P1に向けて純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の一例であるIPAが第3処理液ノズル7から吐出される。第3処理液ノズル7から吐出されたIPAは、基板Wの所定位置P1に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく(揮発性処理液供給工程)。これにより、第3処理液ノズル7から吐出されたIPAが基板Wの上面に供給される。
【0056】
第3処理液ノズル7からIPAを吐出させるタイミングは、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させるのと同時であってもよいし、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させる前であってもよい。たとえば、第2処理液ノズル6からIPAを吐出させているときに第3処理液ノズル7からIPAを吐出させてもよい。また、第3処理液ノズル7からIPAを吐出させるタイミングは、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させた後であってもよいが、この場合には、後述するように、環状になったIPAの液膜の内周が所定位置P1に達する前に、第3処理液ノズル7からのIPAの吐出が開始されていることが好ましい。さらにまた、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させた後に第3処理液ノズル7からIPAを吐出させる場合には、少なくとも基板Wの上面周縁部からIPAが除去されて基板Wの上面周縁部が乾燥し始めるまでに、第3処理液ノズル7からIPAを吐出させることが好ましい。
【0057】
前述のように、気体ノズル4から吐出された窒素ガスは、基板Wの上面中央部に吹き付けられる。基板Wの上面中央部に窒素ガスを吹き付けることにより、窒素ガスの供給圧によって基板Wの上面中央部からIPAが除去される。したがって、図2(e)に示すように、基板W上に保持されたIPAの液膜の中央部に穴が形成されて、IPAの液膜が環状になる。また、基板Wの回転によって基板W上のIPAに遠心力が作用するため、IPAが外方に移動して、環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらに、基板Wに吹き付けられた窒素ガスは、基板Wの上面中央部から上面周縁部に向って放射状に広がるので、窒素ガスによって押されて環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらにまた、IPAの液膜に窒素ガスが吹き付けられてIPAが蒸発していく。したがって、環状になったIPAの液膜は、遠心力や窒素ガスの供給圧によって外方に押し出されるとともに、IPAの蒸発によって内径が大きくなっていく。
【0058】
また、基板W上に保持されたIPAに作用する遠心力は、基板Wの回転軸線L1から離れるほど大きくなる。したがって、基板Wの上面周縁部に保持されたIPAは、その内側のIPAよりも大きな速度で外方に移動していく。一方、基板Wの所定位置P1に着液したIPAは、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に移動していく。したがって、基板Wの上面周縁部に保持されたIPAがその内側のIPAよりも大きな速度で外方に移動するものの、所定位置P1に着液したIPAが基板Wの上面周縁部に供給されるので、基板Wの上面周縁部からIPAが完全になくならず、基板Wの上面周縁部にIPAが保持された状態が維持される。そのため、基板Wの上面において周縁部よりも内側の領域が完全に乾燥していない状態で基板Wの上面周縁部が先に乾燥することが抑制または防止される。
【0059】
このように、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの上面周縁部にIPAが保持された状態が維持されながら、環状になったIPAの液膜の内径が広がっていく。そして、環状になったIPAの液膜の内周が、IPAの着液位置である所定位置P1の手前に達すると、制御部12により第3処理液バルブ27が閉じられて、図2(f)に示すように、第3処理液ノズル7からのIPAの吐出が停止される。これにより、基板W上面のIPAが除去された領域に第3処理液ノズル7から吐出されたIPAが入り込んで、基板Wの乾燥が妨げられることを抑制または防止することができる。これにより、基板Wを速やかに乾燥させることができる。
【0060】
第3処理液ノズル7からのIPAの吐出が停止された後は、引き続き、回転状態の基板Wの上面中央部に窒素ガスが吹き付けられた状態で、基板W上のIPAが、外方に広がりながら基板Wの上面周縁部から周囲に排出される。これにより、図2(g)に示すように、基板W上からIPAがなくなって、全てのIPAが除去される。そして、基板W上から全てのIPAが除去されると、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、スピンチャック3による基板Wの回転が停止される。その後、制御部12により気体バルブ16が閉じられて、気体ノズル4からの窒素ガスの吐出が停止される。さらに、気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15、および第3処理液ノズル7に対応するノズル揺動機構20が制御部12により制御されて、気体ノズル4および第3処理液ノズル7が基板Wの上方から退避させられる。そして、処理済みの基板Wが搬送ロボットによって処理室2から搬出される。
【0061】
このように、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板W上のIPAが、基板Wの上面中央部から外方に向かって広がっていき、基板Wの上面周縁部から周囲に排出される。そのため、基板Wの上面は、中央部から外方に向かって乾燥していき、周縁部が最終的な乾燥位置となる。これにより、基板W上のIPAに純水が溶け込んでいる場合でも、ウォーターマークやパターン倒れなどの乾燥不良が中間領域(基板Wの上面中央部と上面周縁部との間の環状の領域)に発生することを抑制または防止することができる。また、基板Wの上面周縁部から周囲にIPAを排出させながら基板W上からIPAを除去するので、純水が混じったIPAを基板W上に残さずに除去することができる。これにより、純水に起因する乾燥不良が基板Wの上面に発生することを抑制または防止することができる。
【0062】
しかも、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら、基板W上のIPAを除去するので、基板Wの乾燥を進行させているときに、基板W上面の露出した部分(IPAが除去された部分)の全域を窒素ガスによって覆い続けることができる。さらに、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板W上から全てのIPAがなくなるまで基板W上面への窒素ガスの供給が継続されるので、基板Wの上面全域を窒素ガスによって覆うことができる。これにより、基板Wの乾燥を進行させているときに、パーティクルなどの異物や処理液のミストが基板W上面の露出した部分に付着することを抑制または防止することができる。したがって、基板Wの上面全域を速やかに乾燥させることができ、さらに、異物やミストの付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。さらにまた、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの回転が停止されるまで基板W上面への窒素ガスの供給が継続されるので、基板Wの回転に伴う乱気流によって運ばれた異物やミストが基板Wに付着することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの汚染を一層抑制または防止することができる。
【0063】
図3は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置101の概略構成を示す図解図である。この図3において、前述の図1等に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、第1実施形態に係る基板処理装置1に設けられた第2および第3処理液ノズル6,7に代えて、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を供給するための第4処理液ノズル29(移動ノズル)が設けられていることにある。第4処理液ノズル29は、たとえば、連続流の状態で揮発性処理液を吐出するストレートノズルであり、吐出口を下方に向けた状態でスピンチャック3よりも上方に配置されている。第4処理液ノズル29は、たとえば、鉛直下方に向けて揮発性処理液を吐出することができる。
【0064】
第4処理液ノズル29は、水平に延びるノズルアーム30の先端部に取り付けられている。また、ノズルアーム30は、鉛直に延びる支持軸31に支持されている。支持軸31は、スピンチャック3の周囲に配置されており、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸31を中心軸線まわりに揺動させることにより、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方を通る円弧状の軌跡に沿って第4処理液ノズル29を水平移動させることができる。支持軸31は、ノズル揺動機構32(ノズル移動手段)によって揺動させられるようになっている。また、第4処理液ノズル29には、第4処理液バルブ33(切替手段)が介装された第4処理液供給管34を介して、揮発性処理液が図示しない処理液供給源から供給される。
【0065】
第4処理液バルブ33の開閉は、制御部12によって制御される。また、第4処理液ノズル29に対応するノズル揺動機構32は、制御部12によって制御される。制御部12は、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に第4処理液ノズル29を位置させた状態で、第4処理液ノズル29から基板Wの上面に向けて揮発性処理液を吐出させることができる。また、制御部12は、第4処理液ノズル29からの揮発性処理液の吐出を停止させた状態で第4処理液ノズル29を水平移動させることができる。さらに、制御部12は、第4処理液ノズル29を水平移動させて、基板Wの上面に対する第4処理液ノズル29からの揮発性処理液の着液位置を基板Wの上面中央部と上面周縁部との間で移動させることができる。この実施形態では、第4処理液ノズル29、第4処理液バルブ33、第4処理液供給管34、ノズルアーム30、支持軸31、ノズル揺動機構32によって揮発性処理液供給手段が構成されている。
【0066】
図4(a)〜図4(h)は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置101による基板Wの処理の一例を説明するための工程図である。以下では図3を参照して、基板処理装置101による基板Wの処理の一例について説明する。また、この処理例の各工程において、図4(a)〜図4(h)を適宜参照する。
以下に説明する基板Wの処理例と、前述の基板処理装置1による基板Wの処理の一例との相違点は、基板処理装置1による基板Wの処理例では、2つの処理液ノズル(第2および第3処理液ノズル6,7)を用いて基板Wの上面に揮発性処理液を供給するのに対し、この基板Wの処理例では、1つの処理液ノズル(第4処理液ノズル29)を用いて基板Wの上面に揮発性処理液を供給することにある。
【0067】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック3に渡される。基板Wが処理室2に搬入されるとき、気体ノズル4などの処理室2内の構成は、スピンチャック3の上方から退避させられており、搬送ロボットや基板Wに衝突しないようにされている。
次に、薬液の一例であるフッ酸によって基板Wを処理する薬液処理が行われる。具体的には、制御部12により第1処理液ノズル5に対応するノズル揺動機構が制御されて、第1処理液ノズル5がスピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に配置される。また、基板Wがスピンチャック3に保持された後、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば800rpm)で回転させられる。その後、制御部12により薬液バルブ21が開かれて、第1処理液ノズル5から基板Wの上面中央部に向けてフッ酸が吐出される。
【0068】
第1処理液ノズル5から吐出されたフッ酸は、図4(a)に示すように、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方(回転軸線L1から離れる方向)に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にフッ酸が供給され、基板Wの上面全域にフッ酸による薬液処理が施される。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部12により薬液バルブ21が閉じられて、第1処理液ノズル5からのフッ酸の吐出が停止される。
【0069】
次に、リンス液の一例である純水によって基板Wを洗い流すリンス処理が行われる。具体的には、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wの回転速度が変更される(たとえば1200rpmに変更される)。その後、制御部12によりリンス液バルブ23が開かれて、第1処理液ノズル5から回転状態の基板Wの上面中央部に向けて純水が吐出される。
【0070】
第1処理液ノズル5から吐出された純水は、図4(b)に示すように、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、基板W上のフッ酸が純水によって洗い流される。このようにして、基板W上からフッ酸が除去され、基板Wの上面に純水によるリンス処理が行われる。
【0071】
次に、純水の液膜を基板W上に保持させた状態で処理を進める純水によるパドル処理が行われる。具体的には、第1処理液ノズル5からの純水の吐出が継続された状態で、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、基板Wが低速回転状態(たとえば10rpm程度の回転速度で回転している状態)にされる。これにより、基板W上の純水に作用する遠心力が弱まって、基板Wの周囲に排出される純水の量が減少する。したがって、基板Wの上面には、第1処理液ノズル5から供給された純水が溜まり、純水による液盛りが行われる。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。
【0072】
純水の液膜が基板W上に形成された後は、制御部12によりリンス液バルブ23が閉じられて、図4(c)に示すように、第1処理液ノズル5からの純水の吐出が停止される。そして、基板W上で純水の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、純水による液膜を基板W上に保持させた状態で処理を進める純水によるパドル処理が基板Wの上面に行われる。そして、純水によるパドル処理が所定時間にわたって行われると、制御部12により第1処理液ノズル5に対応するノズル揺動機構が制御されて、第1処理液ノズル5が基板Wの上方から退避させられる。
【0073】
次に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液の一例であるIPAによって基板W上の純水の液膜を置換するIPA置換処理が行われる。具体的には、制御部12により第4処理液ノズル29に対応するノズル揺動機構32が制御されて、第4処理液ノズル29がスピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に配置される。その後、制御部12により第4処理液バルブ33が開かれて、第4処理液ノズル29からIPAが所定の吐出流量(たとえば100mL/min)で基板Wの上面中央部に向けて吐出される。また、第4処理液ノズル29からIPAが吐出されている間、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、低速回転状態の基板Wが所定の回転速度まで加速される。この基板Wの処理例におけるIPA置換処理では、たとえば、10rpm、50rpm、75rpm、100rpm、500rpmの順に基板Wの回転が段階的に加速され、基板Wの回転速度が500rpmに維持される。
【0074】
第4処理液ノズル29から吐出されたIPAは、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。また、基板Wの上面中央部に着液したIPAは、次々と供給されるIPAによって外方に押し流される。したがって、基板W上に保持された純水の液膜は、図4(d)に示すように、基板Wの上面中央部から外方に向けて徐々にIPAに置換されていく。また、IPAは、この基板Wの処理の一例でリンス液として用いられている純水を容易に溶け込ませることができる有機溶剤であるから、基板W上の純水がIPAに溶け込みつつ、基板W上の純水がIPAよって置換されていく。さらに、この基板Wの処理例におけるIPA置換処理では、基板Wの回転が段階的に加速させられるので、基板W上の純水およびIPAに作用する遠心力が段階的に大きくなり、基板W上に保持された純水の液膜が基板Wの上面中央部から外方に向かって確実にIPAに置換されていく。このようにして、基板W上の純水の液膜をIPAの液膜に置換するIPA置換処理が所定時間(たとえば60sec)にわたって行われ、基板Wの上面全域がIPAの液膜によって覆われる(液膜形成工程)。
【0075】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御部12により気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wの上方において、基板Wの中央部上方に位置する第4処理液ノズル29に近接した位置に気体ノズル4が配置される。その後、制御部12により第4処理液バルブ33が閉じられて、第4処理液ノズル29からのIPAの吐出が停止される。また、第4処理液ノズル29からのIPAの吐出が停止されるのとほぼ同時に、制御部12により第4処理液ノズル29に対応するノズル揺動機構32が制御されて、図4(e)に示すように、第4処理液ノズル29が、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方から所定位置P1の上方に水平移動させられる(ノズル移動工程)。このとき、スピンチャック3に保持された基板Wは、回転が停止、または回転速度が低速にされていることが好ましい。基板Wの回転を停止、または基板Wの回転速度を低速にすることにより、基板Wの上面周縁部からIPAがこぼれ落ちて、基板Wの上面周縁部が露出することを抑制または防止することができる。
【0076】
基板Wの中央部上方から第4処理液ノズル29が移動すると、それとほぼ同時に、制御部12により気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wの中央部上方に気体ノズル4が配置される。そして、制御部12は、基板Wの中央部上方に気体ノズル4が配置された直後に気体バルブ16を開いて、気体の一例である窒素ガスを所定の吐出流量(たとえば20L/min)で回転状態の基板Wの上面中央部に向けて気体ノズル4から吐出させる(ガス供給工程)。したがって、基板Wの上面中央部には、第4処理液ノズル29からのIPAの供給が停止されるのとほぼ同時に、気体ノズル4から吐出された窒素ガスが吹き付けられる。また、このとき制御部12は、スピンモータ11を制御することにより、基板Wの回転速度を所定の回転速度(たとえば700rpm)に変更させて、基板W上にIPAの液膜を保持させた状態で基板Wを回転させている(基板回転工程)。
【0077】
一方、第4処理液ノズル29がスピンチャック3に保持された基板Wの所定位置P1の上方に配置された後は、制御部12により第4処理液バルブ33が開かれて、図4(f)に示すように、回転状態の基板Wの所定位置P1に向けてIPAが第4処理液ノズル29から吐出される。第4処理液ノズル29から吐出されたIPAは、基板Wの所定位置P1に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく(揮発性処理液供給工程)。これにより、第4処理液ノズル29から吐出されたIPAが基板Wの上面に供給される。
【0078】
第4処理液ノズル29からIPAを吐出させるタイミングは、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させるのと同時であってもよいし、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させる前であってもよい。また、第4処理液ノズル29からIPAを吐出させるタイミングは、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させた後であってもよいが、この場合には、後述するように、環状になったIPAの液膜の内周が所定位置P1に達する前に、第4処理液ノズル29からのIPAの吐出が開始されていることが好ましい。さらにまた、気体ノズル4から窒素ガスを吐出させた後に第4処理液ノズル29からIPAを吐出させる場合には、少なくとも基板Wの上面周縁部からIPAが除去されて基板Wの上面周縁部が乾燥し始めるまでに、第4処理液ノズル29からIPAを吐出させることが好ましい。
【0079】
前述のように、気体ノズル4から吐出された窒素ガスは、基板Wの上面中央部に吹き付けられる。基板Wの上面中央部に窒素ガスを吹き付けることにより、窒素ガスの供給圧によって基板Wの上面中央部からIPAが除去される。したがって、図4(f)に示すように、基板W上に保持されたIPAの液膜の中央部に穴が形成されて、IPAの液膜が環状になる。また、基板Wの回転によって基板W上のIPAに遠心力が作用するため、IPAが外方に移動して、環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらに、基板Wに吹き付けられた窒素ガスは、基板Wの上面中央部から上面周縁部に向って放射状に広がるので、窒素ガスによって押されて環状になった液膜の内径が大きくなっていく。さらにまた、IPAの液膜に窒素ガスが吹き付けられてIPAが蒸発していく。したがって、環状になったIPAの液膜は、遠心力や窒素ガスの供給圧によって外方に押し出されるとともに、IPAの蒸発によって内径が大きくなっていく。
【0080】
また、基板W上に保持されたIPAに作用する遠心力は、基板Wの回転軸線L1から離れるほど大きくなる。したがって、基板Wの上面周縁部に保持されたIPAは、その内側のIPAよりも大きな速度で外方に移動していく。一方、基板Wの所定位置P1に着液したIPAは、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に移動していく。したがって、基板Wの上面周縁部に保持されたIPAがその内側のIPAよりも大きな速度で外方に移動するものの、所定位置P1に着液したIPAが基板Wの上面周縁部に供給されるので、基板Wの上面周縁部からIPAが完全になくならず、基板Wの上面周縁部にIPAが保持された状態が維持される。そのため、基板Wの上面において周縁部よりも内側の領域が完全に乾燥していない状態で基板Wの上面周縁部が乾燥することが抑制または防止される。
【0081】
このように、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの上面周縁部にIPAが保持された状態が維持されながら、環状になったIPAの液膜の内径が広がっていく。そして、環状になったIPAの液膜の内周が、IPAの着液位置である所定位置P1の手前に達すると、制御部12により第4処理液バルブ33が閉じられて、図4(g)に示すように、第4処理液ノズル29からのIPAの吐出が停止される。これにより、基板W上面のIPAが除去された領域に第4処理液ノズル29から吐出されたIPAが入り込んで、基板Wの乾燥が妨げられることを抑制または防止することができる。これにより、基板Wを速やかに乾燥させることができる。
【0082】
第4処理液ノズル29からのIPAの吐出が停止された後は、引き続き、回転状態の基板Wの上面中央部に窒素ガスが吹き付けられた状態で、基板W上のIPAが、外方に広がりながら基板Wの上面周縁部から周囲に排出される。これにより、図4(h)に示すように、基板W上からIPAがなくなって、全てのIPAが除去される。そして、基板W上から全てのIPAが除去されると、制御部12によりスピンモータ11が制御されて、スピンチャック3による基板Wの回転が停止される。その後、制御部12により気体バルブ16が閉じられて、気体ノズル4からの窒素ガスの吐出が停止される。さらに、気体ノズル4に対応するノズル揺動機構15、および第4処理液ノズル29に対応するノズル揺動機構20が制御部12により制御されて、気体ノズル4および第4処理液ノズル29が基板Wの上方から退避させられる。そして、処理済みの基板Wが搬送ロボットによって処理室2から搬出される。
【0083】
このように、この基板Wの処理例における乾燥処理では、前述の第1実施形態に係る基板Wの処理例と同様に、基板W上のIPAが、基板Wの上面中央部から外方に向かって広がっていき、基板Wの上面周縁部から周囲に排出される。そのため、基板Wの上面は、中央部から外方に向かって乾燥していき、周縁部が最終的な乾燥位置となる。これにより、基板W上のIPAに純水が溶け込んでいる場合でも、ウォーターマークやパターン倒れなどの乾燥不良が中間領域(基板Wの上面中央部と上面周縁部との間の環状の領域)に発生することを抑制または防止することができる。また、基板Wの上面周縁部から周囲にIPAを排出させながら基板W上からIPAを除去するので、純水が混じったIPAを基板W上に残さずに除去することができる。これにより、純水に起因する乾燥不良が基板Wの上面に発生することを抑制または防止することができる。
【0084】
しかも、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの上面中央部に窒素ガスを吹き付けながら、基板W上のIPAを除去するので、基板Wの乾燥を進行させているときに、基板W上面の露出した部分(IPAが除去された部分)の全域を窒素ガスによって覆い続けることができる。さらに、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板W上から全てのIPAがなくなるまで基板W上面への窒素ガスの供給が継続されるので、基板Wの上面全域を窒素ガスによって覆うことができる。これにより、基板Wの乾燥を進行させているときに、パーティクルなどの異物や処理液のミストが基板W上面の露出した部分に付着することを抑制または防止することができる。したがって、基板Wの上面全域を速やかに乾燥させることができ、さらに、異物やミストの付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。さらにまた、この基板Wの処理例における乾燥処理では、基板Wの回転が停止されるまで基板W上面への窒素ガスの供給が継続されるので、基板Wの回転に伴う乱気流によって運ばれた異物やミストが基板Wに付着することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの汚染を一層抑制または防止することができる。
【0085】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1および第2実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1および第2実施形態では、内径が10mm程度のチューブ状の部材が気体ノズル4として用いられている場合について説明したが、気体ノズル4は、このような形態のものに限られない。たとえば、図5に示すように、筒状のハウジング35と、拡散板36(図5では、2つの拡散板36)とからなる気体ノズル104を用いてもよい。
【0086】
ハウジング35は、内径がたとえば34mm程度の円筒状の部材であり、気体供給管17を介して一端(図5では上端)からその内部に気体が供給される。気体を吐出するための気体吐出口37は、ハウジング35の他端(図5では下端)に形成されている。ハウジング35の内部は、拡散板36によって軸方向に仕切られている。また、拡散板36には、厚み方向(図5では上下方向)に気体を流通させる複数の流通孔38が全域にわたって形成されている。
【0087】
ハウジング35の内部に供給された気体は、拡散板36に当たってハウジング35の内部に拡散する。また、ハウジング35の内部に供給された気体は、拡散板36に形成された流通孔38を流通しながら、ハウジング35の一端側から他端側に流れていく。ハウジング35の内部に供給された気体は、供給されたときよりも圧力が弱まって気体吐出口37から吐出される。したがって、気体ノズル104を前述の基板Wの処理例において用いれば、基板Wの上面に吹き付けられる気体の圧力を弱めることができる。
【0088】
また、前述の第1および第2実施形態では、第1処理液ノズル5から薬液およびリンス液が選択的に吐出される場合について説明したが、薬液およびリンス液にそれぞれ対応する2つの処理液ノズルを設けてもよい。また、前述の第1および第2実施形態に係る基板Wの処理例では、IPA置換処理において、基板Wの回転を段階的に加速させる場合について説明したが、これに限らず、最終的な回転速度まで基板Wの回転を連続的に加速させてもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
4 気体ノズル
6 第2処理液ノズル
7 第3処理液ノズル
11 スピンモータ
12 制御部
13 ノズルアーム
14 支持軸
15 ノズル揺動機構
16 気体バルブ
17 気体供給管
18 ノズルアーム
19 支持軸
20 ノズル揺動機構
25 第2処理液バルブ
26 第2処理液供給管
27 第3処理液バルブ
28 第3処理液供給管
29 第4処理液ノズル
30 ノズルアーム
31 支持軸
32 ノズル揺動機構
33 第4処理液バルブ
34 第4処理液供給管
101 基板処理装置
104 気体ノズル
L1 回転軸線
P1 所定位置
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に保持された基板の上面に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
基板上に揮発性処理液の液膜を保持させた状態で基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、
前記基板回転工程と並行して、基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給工程と、
前記基板回転工程および前記ガス供給工程と並行して、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液を着液させる揮発性処理液供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記揮発性処理液供給工程は、基板の上面中央部に保持された揮発性処理液が前記回転軸線から離れる方向に移動して揮発性処理液の着液位置付近に達するまで継続される工程である、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板回転工程は、少なくとも基板上から揮発性処理液の液膜がなくなるまで継続される工程であり、
前記ガス供給工程は、少なくとも基板上から揮発性処理液の液膜がなくなるまで継続される工程である、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記ガス供給工程は、前記基板回転工程が終了するまで継続される工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を当該基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部を含む基板上面の複数個所に、純水よりも揮発性の高い揮発性処理液を着液させることができる揮発性処理液供給手段と、
前記基板保持手段、基板回転手段、ガス供給手段および揮発性処理液供給手段を制御することにより、水平に保持された基板の上面に揮発性処理液を供給して、基板の上面全域を覆う揮発性処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、基板上に揮発性処理液の液膜を保持させた状態で前記回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程と並行して、基板の上面中央部にガスを吹き付けるガス供給工程と、前記基板回転工程および前記ガス供給工程と並行して、基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液を着液させる揮発性処理液供給工程とを実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項6】
前記揮発性処理液供給手段は、固定された状態で揮発性処理液を吐出するように設けられた第1固定ノズルおよび第2固定ノズルを有するものであり、
前記第1固定ノズルは、前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部に揮発性処理液が着液するように設けられたものであり、
前記第2固定ノズルは、前記基板保持手段に保持された基板の上面における中央部以外の前記回転軸線から一定距離離れた所定位置に揮発性処理液が着液するように設けられたものである、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記揮発性処理液供給手段は、揮発性処理液を吐出する移動ノズルと、前記基板保持手段に保持された基板に対する移動ノズルからの揮発性処理液の着液位置が、基板の上面中央部と前記所定位置との間で移動するように前記移動ノズルを移動させるノズル移動手段と、前記移動ノズルに対する揮発性処理液の供給および供給停止を切り替える切替手段とを有するものであり、
前記制御手段は、前記ノズル移動手段および切替手段を制御して、前記移動ノズルからの揮発性処理液の吐出を停止させた状態で当該移動ノズルを移動させるノズル移動工程を実行するものである、請求項5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図2(g)】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図4(g)】
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【図4(h)】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−177371(P2010−177371A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17116(P2009−17116)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】