基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
【課題】パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】処理容器31内では、被処理基板Wが縦向きの状態で液体内に浸漬されており、この液体を超臨界状態の置換流体により押し出して処理容器31より排出する。しかる後、液体と置換された後の置換流体を処理容器31から排出して当該処理容器31内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体に遷移させることにより被処理基板Wを乾燥する。
【解決手段】処理容器31内では、被処理基板Wが縦向きの状態で液体内に浸漬されており、この液体を超臨界状態の置換流体により押し出して処理容器31より排出する。しかる後、液体と置換された後の置換流体を処理容器31から排出して当該処理容器31内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体に遷移させることにより被処理基板Wを乾燥する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を、超臨界流体を利用して乾燥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などによるリンス洗浄によりに残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、被処理基板を搬送室に搬入して搬送用のロボットに受け渡し、しかる後、乾燥処理室に移送してから超臨界流体による乾燥を実行するので、処理が開始されるまでの間に被処理基板表面は気体の雰囲気中に晒された状態となっている。このため、超臨界流体による処理が開始されるまでの間に被処理基板の表面の液体が乾燥してしまいパターン倒れが発生してしまうおそれがある。また、搬送用のロボットは被処理基板を横向きに保持しているので、被処理基板に付着したパーティクルなどのごみが超臨界流体により巻き上げられた後、被処理基板表面に落下し、半導体装置の形成領域を汚染してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、被処理基板を浸漬した液体を超臨界状態の置換流体と置換して、当該被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器内にて前記被処理基板を縦向きの状態で保持する基板保持部と、
前記処理容器に、液状態または超臨界状態で前記置換流体を供給する置換流体供給部と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持するエネルギー供給部と、
前記液体を処理容器から排出して超臨界状態の置換流体と置換するために、前記基板保持部に保持された被処理基板の下方側に設けられた排液部と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥するための排気部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記液体に被処理基板を浸漬した状態で前記処理容器内に配置されると共に、前記排液部が設けられた液槽を備えたこと。
(b)前記液槽は、前記処理容器の内部と外部との間を移動可能に構成されたこと。
(c)前記置換流体供給部は、前記処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に置換流体を供給すること。
(d)前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理基板を浸漬した液体を、直接、超臨界状態の流体に置換して当該被処理基板を乾燥する処理を行うので、超臨界流体による処理を開始するまでの被処理基板の表面の自然乾燥が抑えられ、パターン倒れの発生を抑制することができる。また、処理容器内では被処理基板が縦向きに保持されているので、例えば被処理基板に付着していたごみが液体や超臨界状態の流体によって飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置に被処理基板の表面が存在しないことから被処理基板の再汚染が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の洗浄システムの平面図である。
【図2】前記洗浄システム内の洗浄装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理装置及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理装置の外観構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】前記超臨界処理装置に設けられている内チャンバーの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記超臨界処理装置への各種の処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図10】他の実施の形態に係る超臨界処理装置を示す説明図である。
【図11】前記他の実施の形態係る超臨界処理装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、超臨界流体を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP7が載置される載置部11と、FOUP7と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出部12と、搬入出部12と後段のウエハ処理部14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡し部13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0014】
載置部11は、例えば4個のFOUP7を載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP7を搬入出部12に接続する。搬入出部12では、各FOUP7との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP7の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、鉛直軸周りに回転自在、及び昇降自在に構成された第1の搬送機構121によって、FOUP7内と受け渡し部13との間でウエハWが搬送される。搬入出部12とウエハ処理部14とに前後を挟まれた受け渡し部13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介してウエハWが搬入出部12とウエハ処理部14との間を搬送される。
【0015】
ウエハ処理部14には、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば2台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、鉛直軸周りに回転可能、そして昇降可能に構成された第2の搬送機構141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理部14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択される。また洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0016】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0017】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0018】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたそしてウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0019】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは、表面にIPAの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図6を参照しながら説明する。図3〜図9においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0020】
図3は、各超臨界処理装置3が格納されている筐体401内の様子を示す一部破断斜視図である。超臨界処理装置3は各筐体401内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間は、超臨界処理装置3と既述の第2の搬送機構141との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が設けられている。本例では、この受け渡し機構として、ウエハWを保持して搬送する受け渡しアーム41と、超臨界処理装置3へと搬入される処理前のウエハWが専用に載置される搬入棚42と、超臨界処理装置3から搬出された処理後のウエハWが専用に載置される搬出棚43と、が設けられている。
【0021】
受け渡しアーム41は、例えば筐体401内の底部に配置されている超臨界処理装置3の上方側、後方寄りの位置に配置されており、先端部に設けられたフォーク411によってウエハWの側周面を把持することなどにより、当該ウエハWを1枚ずつ保持することが可能な、例えば6軸の多関節アームである。また受け渡しアーム41は、仕切板406によって仕切られた空間内に設置されており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へ進入しにくくなるようにしている。図中、405はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム41を進入させるためのアクセス口である。
【0022】
搬入棚42及び搬出棚43は、例えば超臨界処理装置3の上方側、前方寄りの位置に2つの棚42、43が上下に並ぶように設けられており、本例では処理前のウエハWが置かれる搬入棚42を下方側に、処理後のウエハWが置かれる搬出棚43を上方側に配置した構成となっている。これらの搬入、搬出棚42、43は、ウエハWを1枚ずつ水平に保持することが可能な載置棚として構成され、例えば各棚42、43に設けられた3本の昇降ピンを介して第2の搬送機構141及び受け渡しアーム41との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0023】
また搬入棚42は、液体を満たすことが可能な皿形状に構成され、当該搬入棚42上に載置されたウエハWを、不図示のIPA供給部から供給されたIPA中に浸漬した状態で保持することにより、ウエハW表面の自然乾燥を防いで、超臨界処理前のパターン倒れの発生を防いでいる。
また搬入棚42及び搬出棚43の配置位置を手前側から見ると、これらの棚42、43は、ウエハWの受け渡し位置にて上面に向かって開口する、後述の内チャンバー32の上方側、側方寄りの位置に配置されている。この配置によりウエハWを上下方向に搬送するための搬送経路が確保され、搬入棚42や搬出棚43と干渉することなく迅速にウエハWを内チャンバー32から搬入出することができる。
【0024】
図3中、403は洗浄装置2にて洗浄処理を終えたウエハWが搬入される搬入口、404は超臨界処理を終えたウエハWが搬出される搬出口であり、第2の搬送機構141は、これらの搬入、搬出口403、404を介して筐体401内に進入する。また図3中、402は筐体401内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、407は当該ダウンフローの排気口である。
【0025】
各筐体401内に設けられた例えば超臨界処理装置3は、互いにほぼ同様の構成を備えており、超臨界流体を利用することによりウエハW表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥することができる。図4、図5に示すように超臨界処理装置3は、超臨界処理が行われる処理容器である外チャンバー31と、ウエハWをIPA中に浸漬した状態で外チャンバー31内に搬入される内チャンバー32とを備えている。内チャンバー32は、本実施の形態の液槽に相当している。
【0026】
図4の各図に示すように外チャンバー31は、例えば縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、図6に示すように、その内部には内チャンバー32を格納することが可能な処理空間310が形成されている。図1に示すように外チャンバー31は幅の狭い面をウエハ搬送路142側に向けて配置されており、その前面には内チャンバー32を搬入出するための開口部311が設けられている(図4(a))。
【0027】
また図6に示すように外チャンバー31には例えば抵抗発熱体からなるヒーター312が設けられていて、電源部313からの給電により、外チャンバー31の本体を加熱し、これにより置換流体である例えば液体CO2を、処理空間310内で超臨界状態にすることができる。ヒーター312は本実施の形態のエネルギー供給部に相当する。
【0028】
さらに図4(a)、図4(b)に示すように、例えば外チャンバー31の本体側面の底部寄りの位置にはCO2供給ライン511が接続されていて、このCO2供給ライン511は、図6に示すようにバルブV1、フィルター及びポンプからなる送液機構512を介してCO2貯留部51に接続されている。CO2貯留部51には例えば液体CO2が貯留されており、これらCO2供給ライン511、送液機構512及びCO2貯留部51は、外チャンバー31の処理空間310内に置換流体である液体CO2を供給するための置換流体供給部を構成している。
【0029】
また図4、図6に示す、例えば外チャンバー31本体の天井面に設けられた531は、処理空間310内に液体CO2を供給する際に処理空間310内の雰囲気を排気し、また超臨界処理を終えた後の超臨界状態のCO2を排気して処理容器320内を減圧するための排気ラインであり、バルブV4の開閉により処理空間310内を排気、密閉することができる。ここでバルブV4は圧力調整弁の役割も果たしており、処理空間310内の圧力を調整しながら処理空間310内の雰囲気を排気することが可能である。処理後の超臨界状態のCO2を排気するという観点において、排気ライン531は本実施の形態の排気部に相当している。
【0030】
図4(a)、図5に示すように内チャンバー32は例えば2枚のウエハWを縦向きに格納することが可能に形成された容器であり、乾燥防止用の液体であるIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持することができる。内チャンバー32は、処理空間310より幅の狭い、縦方向に扁平な形状となっており、内チャンバー32を処理空間内310に配置したとき、外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間には、処理空間310に供給された液体や超臨界状態のCO2を通流させるための空間が形成されるうになっている。本例に係る内チャンバー32は、超臨界流体を扱う処理空間310の容積をできるだけ小さくする必要性と、洗浄処理システム1全体のウエハWの処理スピードとの兼ね合いから、例えば2枚のウエハWを格納できる構成とした。但し、内チャンバー32に格納可能なウエハWの枚数はこれに限られるものではなく、1枚のみまたは3枚以上のウエハWを格納する構成としてもよい。また、内チャンバー32に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、内チャンバー32の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0031】
図5に示すように内チャンバー32の上面は開口しており、受け渡しアーム41に保持されたウエハWはこの開口部を介して内チャンバー32内に搬入される。また内チャンバー32の開口部には例えば鋸歯状の切り欠き部322が形成されており、処理空間310内の超臨界流体が内チャンバー32内へと均一に流れ込みやすくなるようにしている。但し図示の便宜上、図4〜図6以外の図では内チャンバー32の切り欠き部322の記載は省略してある。
【0032】
また内チャンバー32の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、その内部側の底面には2枚のウエハWを保持するためのウエハ保持部材323が設けられている。ウエハ保持部材323には、ウエハWの形状に沿った溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させることによりウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材323は、内チャンバー32に供給されたIPAが各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク411が内チャンバー32内に進入しても、ウエハWやフォーク411が他のウエハWや内チャンバー32本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。このウエハ保持部材323は本実施の形態の基板保持部に相当する。
【0033】
図5に示すように例えば内チャンバー32の底面には、ウエハ保持部材323の形成されていない領域が設けられており、ここには内チャンバー32内にIPAを供給し、またIPAを排出するための排液部である開口部324が設けられている。この開口部324はIPAの供給・排液ライン524と接続されており、当該供給・排液ライン524は後述の蓋部材321の内部を通って切替弁525に接続されている(図6)。後述するように内チャンバー32は前後方向に移動可能となっているので、供給・排液ライン524は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、内チャンバー32の移動に伴って変形することができる。図6中、V3はバルブである。
【0034】
切替弁525は、内チャンバー32にIPAを供給するためのIPA供給ライン521、内チャンバー32から排出されたIPAを回収するための回収ライン523及び上述の供給・排液ライン524と接続されている。IPA供給ライン521は、開閉バルブV2、フィルター及びポンプからなる送液機構522を介してIPAを貯留したIPA貯留部52に接続されている。一方、回収ライン523は内チャンバー32から排出されたIPAを回収可能なように、直接IPA貯留部52に接続されている。
【0035】
図5に示すように内チャンバー32は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の蓋部材321に固定されている。そしてこの蓋部材321を横方向に前後に移動させることによって、受け渡しアーム41との間でのウエハWの受け渡しが行われる、外チャンバー31の外部の受け渡し位置と、処理空間310内の処理位置との間で内チャンバー32を搬送することができる。また図6に破線で示すように、処理位置に内チャンバー32を搬送した蓋部材321は外チャンバー31の開口部311を塞ぐ役割も果たしている。外チャンバー31の開口部311の周囲には、当該開口部311を取り囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材321は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉することができる。
【0036】
図4(a)、図4(b)に示すように蓋部材321は台座部35に支持されており、例えばこの台座部35には内チャンバー32を搬送する方向に沿って当該台座部35を切り抜いた走行軌道351が形成されている。一方、蓋部材321の下端部には、当該走行軌道351内に向けて下方側に伸びだした走行部材325が設けられている。そして図4(a)、図6に示すように、この走行部材325には走行軌道351に沿って掛け渡されたボールネジ353が貫通していて、これら走行部材325とボールネジ353とはボールネジ機構を構成している。
【0037】
そしてボールネジ353の一端に設けられた駆動部352により当該ボールネジ353を左右いずれかの方向に回転させることにより、走行軌道351内で走行部材325が走行し、これにより蓋部材321を移動させて、内チャンバー32を受け渡し位置から処理位置まで搬送することができる。そしてこれとは反対に、ボールネジ353を反対方向に回転させることにより、内チャンバー32を処理位置から受け渡し位置まで搬送することができる。但し蓋部材321を移動させる機構は、上述したボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いてもよい。
【0038】
また図4(a)、図4(b)に示すように超臨界処理装置3には、蓋部材321や内チャンバー32が移動する領域を側面から覆うように、周囲壁33が設けられている。周囲壁33は蓋部材321の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材331と、外チャンバー31の開口部311と対向するように設けられた前方壁部材332とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材331の奥手側の一端は、外チャンバー31の側壁面に強固に固定されており、これにより周囲壁33は外チャンバー31と一体になっている。
【0039】
また超臨界処理装置3は、処理空間310内でCO2を超臨界状態とすることなどにより蓋部材321が受ける内圧に抗して、当該蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて押さえつけるための固定板34を備えている。この固定板34は、内チャンバー32及び蓋部材321が移動する領域から退避した位置と、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて手前側から押さえる位置との間を、不図示の駆動機構により左右方向に移動可能に構成されている。
【0040】
一方、各側壁部材331には、左右方向に移動する前記固定板34を貫通させることが可能な嵌入孔333が形成されており、周囲壁33(側壁部材331)の外方の待機位置で待機している固定板34は、一方側の側壁部材331の嵌入孔333を通り抜けて固定位置へと移動することができる。また固定位置まで移動した固定板34は、その左右両端部が各側壁部材331の嵌入孔333に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板34がかんぬきのように側壁部材331に係止され、処理空間310内の圧力に抗して蓋部材321を外チャンバー31に向けて押さえつけることができる(図1の超臨界処理装置3及び図4(b)参照)。
【0041】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3を含む洗浄処理システム1は、図1、図6に示すように制御部6と接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP7からウエハWを取り出して洗浄装置2に搬送し洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP7内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0042】
特に超臨界処理装置3について制御部6は、図6に示すようにCO2供給ライン511及びIPA供給ライン521の各送液機構512、522に接続されて液体CO2やIPAの供給タイミングを調節し、また外チャンバー31に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて送液機構512の吐出圧を調節することができるようになっている。さらに制御部6は各バルブV1〜V4の開閉タイミングの調節や、駆動部352よるボールネジ353の回転タイミングや回転方向、回転量の調節、切替弁525に接続されるライン(IPA供給ライン521、回収ライン523)の切り替えなども行うことができる。これらに加えて制御部6は、不図示の温度計からの処理空間310内の温度の検出結果に基づいて、電源部313からヒーター312へ供給される電力を増減し処理空間310内の温度を予め設定した温度に調節する役割も果たしている。
【0043】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWが第2の搬送機構141に受け渡されたら、第2の搬送機構141は、いずれか一方の筐体401内に搬入口403を介して進入し、当該ウエハWを搬入棚42の昇降ピンに受け渡す。
【0044】
超臨界処理装置3の内チャンバー32へと直ちにウエハWを搬入することが可能な場合には、搬入棚42ではウエハWを受け取った状態のままウエハWの下方に受け渡しアーム41のフォーク411を進入させ、次いで昇降ピンを降下させることによりウエハWをフォーク411に受け渡す。内チャンバー32にウエハWを搬入するまでに待ち時間が発生する場合には、昇降ピンを降下させてウエハWを皿状の搬入棚42内に載置し、ウエハWの表面にIPAを供給して乾燥を防ぐ。そして内チャンバー32側の準備が整ったら昇降ピンを上昇させてフォーク411にウエハWを受け渡す。
【0045】
一方、ウエハWの搬入が可能になった内チャンバー32は、図7(a)に示すように内チャンバー32内にIPAを満たした状態で受け渡し位置にて待機している。搬入棚42からウエハWを受け取った受け渡しアーム41は、ウエハWを縦向きに起こすと共にフォーク411の先端が内チャンバー32の開口部に向くように各回転軸を回転させた後、フォーク411を降下させてウエハWを内チャンバー32内に搬入する。
【0046】
この搬入動作を迅速に実行することにより、ウエハWを縦向きに起こす際に、ウエハW表面に液盛りされているIPAの一部がこぼれ落ちたとしても、短時間の間であればウエハWの表面にはIPAの液膜が残っている。そこでこの液膜が残っており、ウエハWに形成されたパターンの凹部内のIPAが乾燥しないうちに内チャンバー32内にウエハWを搬入してしまうことによって、パターン倒れの発生を抑えつつウエハWを内チャンバー32に受け渡してIPA中に浸漬することができる。
【0047】
フォーク411をさらに降下させ、ウエハWの下端部がウエハ保持部材323の溝の内側に嵌って保持されたら、ウエハWの保持を解除して受け渡しアーム41を上昇させ、フォーク411を内チャンバー32から退避させる。そして2枚のウエハWに対して上述の受け渡し動作を繰り返し、図7(b)に模式的に示すように2枚のウエハWを内チャンバー32に格納して、IPAに浸漬した状態とする。次いで、駆動部352によりボールネジ353を駆動させて内チャンバー32を処理位置まで移動させる(図7(c))。このとき内チャンバー32からIPAが排出されないように供給・排液ライン524のバルブV3は閉となっており(図7(a)中に「S」と記してある。以下同じ)、また外チャンバー31側においてもCO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4は閉となっている。
【0048】
そして図4(b)に示すように固定板34を待機位置から固定位置まで移動させたら、CO2供給ライン511側の送液機構512のバルブV1を開とし(図8(a)中に「O」と記してある。以下同じ)、ポンプを作動させて処理空間310内に液体CO2を供給する。例えば大気圧雰囲気となっている処理空間310内に液体CO2が供給されると、液体CO2の一部が気化して処理空間310内の圧力が上昇し、気相側の雰囲気が液体CO2と平衡状態になる。
【0049】
しかる後、処理空間310内の雰囲気が例えば6MPa〜9MPaの範囲内の例えば7.5MPaとなるように開度を調節しながらバルブV4を開くと、CO2供給ライン511から供給されるCO2の液体の状態が保たれたまま気相側の雰囲気が追い出され、処理空間310内が液体CO2で置換されていく(図8(a))。そして液体CO2の液面の位置が、図5に示した内チャンバー32の切り欠き部322の下端程度の位置まで到達し、液体CO2が内チャンバー32に流れ込むことが可能な状態となったら、CO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4を閉じて外チャンバー31を密閉する(図8(b))。
【0050】
次に、図8(c)に示すように電源部313よりヒーター312に電力を供給し、処理空間310内の温度が例えば30℃〜90℃の範囲の40℃となるように加熱を行う。CO2の臨界点は、7.38MPa、31.1℃であるので、この加熱操作により液体CO2が超臨界状態に変化し、CO2の気液界面が消失して処理空間310内が超臨界状態のCO2で満たされた状態となる。
【0051】
ここで大気圧におけるIPAの沸点は82.4℃であるので、7.5MPa、40℃の処理空間310内においては内チャンバー32内のIPAは液体の状態を保っており、IPAに浸漬されたウエハWの表面も濡れた状態となっている。このとき図9(a)に示すように供給・排液ライン524のバルブV3を開くと、内チャンバー32内のIPAは内チャンバー32の開口部を介して超臨界状態のCO2によって押し出され、また重力が働いて供給・排液ライン524に向けて流れていく。この際に図6に示した切替弁525を回収ライン523側に切り替えておくことにより、内チャンバー32から流れ出たIPAはIPA貯留部52に回収される。
【0052】
内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524からIPAが流出していくと、処理空間310内の超臨界状態のCO2が膨張し、上面側の開口部を介して内チャンバー32内へと進入する。この結果、内チャンバー32内のIPAが上方側から下方側へ向けて超臨界状態のCO2へと置換されていくことになるが、超臨界状態のCO2は表面張力が働かないため、パターン倒れを引き起こすことなくウエハW表面の雰囲気を液体のIPAから超臨界状態のCO2に置換することができる。
【0053】
ここで既述のように内チャンバー32は2枚のウエハWを格納することが可能な程度の大きさであるので、その容積は比較的小さい。このため、超臨界状態のCO2の温度及び圧力を臨界点よりも十分に高い状態としておき、膨張に伴う温度や圧力低下を見越した量のCO2を処理空間310内に予め供給しておけば、CO2の超臨界状態を十分に維持することができる。また例えば、内チャンバー32内のIPAが押し出され、超臨界状態のCO2が膨張してもその超臨界状態が維持されるようにヒーター312の出力を増加させてもよい。
【0054】
こうして内チャンバー32内のIPAが排出され、処理空間310の系内の雰囲気が全て超臨界状態のCO2に置換されたら、供給・排液ライン524のバルブV3を閉じ(図9(b))、排気ライン531のバルブV4を開いて処理空間310内を大気圧まで脱圧する。この結果、超臨界状態のCO2が気体の状態に変化することになるが、超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる(図9(c))。
【0055】
ここで図9(c)に示した例では、液体CO2の供給時に外チャンバー31内の雰囲気を排気する既述の排気ライン531を利用して処理空間310内の脱圧を行う例を示したが、この脱圧操作時に処理空間310内にCO2の上昇流が形成されることに起因するごみの巻上げを抑えるため、例えば外チャンバー31の底部側に脱圧時専用の排気ラインを設けて処理空間310内に下降流が形成されるようにしながら脱圧を行ってもよい。また、内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524を利用して脱圧を行ってもよい。そして処理空間310内を脱圧する際には、CO2の膨張により処理空間310内の温度が低下して超臨界状態のCO2中に溶解していたIPAがウエハW表面で凝縮したりしないように、ヒーター312によって処理空間310内部の温度を上げるようにしてもよい。
【0056】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、固定板34を退避位置まで退避させ、蓋部材321を前方側へ移動させて内チャンバー32を受け渡し位置まで引き出し、内チャンバー32内にフォーク411を進入させて処理を終えたウエハWを一枚ずつ取り出す。
【0057】
内チャンバー32からウエハWが取り出されると、切替弁525の接続先をIPA供給ライン521側に切り替えて送液機構522を作動させてIPA貯留部52よりIPAを供給し、内チャンバー32にIPAが満たされた状態で次のウエハWが搬入されるまで待機する。
一方、取り出されたウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP7内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0058】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。ウエハWを浸漬した乾燥防止用の液体であるIPAを、直接、超臨界状態のCO2に置換して当該ウエハWを乾燥する処理を行うので、超臨界状態のCO2による処理を開始するまでのウエハWの表面の自然乾燥が抑えられ、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0059】
また、外チャンバー31内では内チャンバー32にウエハWが縦向きに保持されているので、例えばウエハWに付着していたパーティクルなどのごみがIPAや超臨界状態のCO2に流れに乗って飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置にウエハWの表面が存在しないことからウエハWの再汚染が発生しにくい。さらに内チャンバー32の上方側から下方側へ向けてIPAを超臨界状態のCO2へと置換していくことにより、IPAの排出時にウエハWから飛散したごみを内チャンバー32の底部側の開口部324へ向けてIPAと共に押し流していくので、これらのごみの巻き上げを抑制し、ウエハWへの再付着をさらに低減することができる。
【0060】
ここで図4〜図9などでは、内チャンバー32に満たされたIPA内にウエハWを浸漬し、この内チャンバー32を外チャンバー31内に搬入してから超臨界処理を行う、いわば2重容器型の超臨界処理装置3の例について説明したが、本発明を適用可能な超臨界処理装置はこの例に限られない。例えば図10(a)、図10(b)に示すように、外チャンバー31に供給したIPA中にウエハWを縦向きに保持する、いわば単体容器型の超臨界処理装置3aであってもよい。
【0061】
この図10(a)、図10(b)に示した例では、例えば超臨界流体供給ライン591の上流側にCO2を液体の状態または超臨界状態で貯留する不図示のCO2貯留部を設けておき、これらの流体CO2を加熱または加圧の少なくとも一方を行いながら、液体CO2を超臨界状態に変化させ、またはCO2の超臨界状態を維持しながら超臨界流体供給ライン591を介して処理空間310に供給される構成となっている。この結果、処理空間310内のIPAが超臨界流体供給ライン591へ向けて排出され、上方側から下方側へ向けてウエハWの周囲のIPAが超臨界状態のCO2へと置換されることになる。そして置換操作を終えたら外チャンバー31内を脱圧することにより、乾燥した状態のウエハWが得られる。
【0062】
このほか、超臨界処理装置3が2重容器型である場合において、内チャンバー32を外チャンバー31の内部と外部との間で移動させる移動機構を設けずに、内チャンバー32を外チャンバー31内に固定してもよい。この場合にも外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間に形成される空間に液体のCO2などの置換流体を供給することにより、IPAと交じり合うことなく超臨界流体となる前の置換流体を処理空間30内に供給することができる。
【0063】
また上述の各実施の形態では、ウエハWが浸漬される液体としてIPA、この液体と置換される超臨界状態の置換流体としてCO2を採用した例について説明したが、各流体の例はこれに限定されるものではない。例えば洗浄処理後のウエハWに乾燥防止用のIPAを供給する場合に替えて、ウエハWをリンス液(洗浄液)であるDIWに浸漬したまま超臨界流体と置換してもよい。また例えば超臨界流体としてHFE(Hydro FluoroEther)を利用する場合などに、液体のHFE中に浸漬した状態で外チャンバー31内にウエハWを配置し、この液体HFEを超臨界状態のHFEと置換してもよい。また超臨界状態の置換流体としてはIPAなども利用することができる。
【0064】
さらにウエハWを浸漬する液体の比重が、これと置換される超臨界状態の流体の比重よりも軽い場合などには、図11(a)、図11(b)に示す超臨界処理装置3bのように、超臨界流体を外チャンバー31の下方側から供給し、上方側へ向けて液体との置換を行ってもよい。この場合であってもウエハWが縦向きに保持されていることにより、巻き上げられたごみの再付着を抑えつつウエハWの乾燥を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3、3a、3b
超臨界処理装置
31 外チャンバー
310 処理空間
32 内チャンバー
323 ウエハ保持部材
511 CO2供給ライン
521 IPA供給ライン
524 供給・排液ライン
531 排気ライン
591 超臨界流体供給ライン
592 液体排出ライン
6 制御部
7 FOUP
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を、超臨界流体を利用して乾燥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などによるリンス洗浄によりに残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、被処理基板を搬送室に搬入して搬送用のロボットに受け渡し、しかる後、乾燥処理室に移送してから超臨界流体による乾燥を実行するので、処理が開始されるまでの間に被処理基板表面は気体の雰囲気中に晒された状態となっている。このため、超臨界流体による処理が開始されるまでの間に被処理基板の表面の液体が乾燥してしまいパターン倒れが発生してしまうおそれがある。また、搬送用のロボットは被処理基板を横向きに保持しているので、被処理基板に付着したパーティクルなどのごみが超臨界流体により巻き上げられた後、被処理基板表面に落下し、半導体装置の形成領域を汚染してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、被処理基板を浸漬した液体を超臨界状態の置換流体と置換して、当該被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器内にて前記被処理基板を縦向きの状態で保持する基板保持部と、
前記処理容器に、液状態または超臨界状態で前記置換流体を供給する置換流体供給部と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持するエネルギー供給部と、
前記液体を処理容器から排出して超臨界状態の置換流体と置換するために、前記基板保持部に保持された被処理基板の下方側に設けられた排液部と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥するための排気部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記液体に被処理基板を浸漬した状態で前記処理容器内に配置されると共に、前記排液部が設けられた液槽を備えたこと。
(b)前記液槽は、前記処理容器の内部と外部との間を移動可能に構成されたこと。
(c)前記置換流体供給部は、前記処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に置換流体を供給すること。
(d)前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理基板を浸漬した液体を、直接、超臨界状態の流体に置換して当該被処理基板を乾燥する処理を行うので、超臨界流体による処理を開始するまでの被処理基板の表面の自然乾燥が抑えられ、パターン倒れの発生を抑制することができる。また、処理容器内では被処理基板が縦向きに保持されているので、例えば被処理基板に付着していたごみが液体や超臨界状態の流体によって飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置に被処理基板の表面が存在しないことから被処理基板の再汚染が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の洗浄システムの平面図である。
【図2】前記洗浄システム内の洗浄装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理装置及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理装置の外観構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】前記超臨界処理装置に設けられている内チャンバーの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記超臨界処理装置への各種の処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図10】他の実施の形態に係る超臨界処理装置を示す説明図である。
【図11】前記他の実施の形態係る超臨界処理装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、超臨界流体を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP7が載置される載置部11と、FOUP7と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出部12と、搬入出部12と後段のウエハ処理部14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡し部13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0014】
載置部11は、例えば4個のFOUP7を載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP7を搬入出部12に接続する。搬入出部12では、各FOUP7との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP7の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、鉛直軸周りに回転自在、及び昇降自在に構成された第1の搬送機構121によって、FOUP7内と受け渡し部13との間でウエハWが搬送される。搬入出部12とウエハ処理部14とに前後を挟まれた受け渡し部13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介してウエハWが搬入出部12とウエハ処理部14との間を搬送される。
【0015】
ウエハ処理部14には、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば2台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、鉛直軸周りに回転可能、そして昇降可能に構成された第2の搬送機構141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理部14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択される。また洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0016】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0017】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0018】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたそしてウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0019】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは、表面にIPAの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図6を参照しながら説明する。図3〜図9においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0020】
図3は、各超臨界処理装置3が格納されている筐体401内の様子を示す一部破断斜視図である。超臨界処理装置3は各筐体401内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間は、超臨界処理装置3と既述の第2の搬送機構141との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が設けられている。本例では、この受け渡し機構として、ウエハWを保持して搬送する受け渡しアーム41と、超臨界処理装置3へと搬入される処理前のウエハWが専用に載置される搬入棚42と、超臨界処理装置3から搬出された処理後のウエハWが専用に載置される搬出棚43と、が設けられている。
【0021】
受け渡しアーム41は、例えば筐体401内の底部に配置されている超臨界処理装置3の上方側、後方寄りの位置に配置されており、先端部に設けられたフォーク411によってウエハWの側周面を把持することなどにより、当該ウエハWを1枚ずつ保持することが可能な、例えば6軸の多関節アームである。また受け渡しアーム41は、仕切板406によって仕切られた空間内に設置されており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へ進入しにくくなるようにしている。図中、405はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム41を進入させるためのアクセス口である。
【0022】
搬入棚42及び搬出棚43は、例えば超臨界処理装置3の上方側、前方寄りの位置に2つの棚42、43が上下に並ぶように設けられており、本例では処理前のウエハWが置かれる搬入棚42を下方側に、処理後のウエハWが置かれる搬出棚43を上方側に配置した構成となっている。これらの搬入、搬出棚42、43は、ウエハWを1枚ずつ水平に保持することが可能な載置棚として構成され、例えば各棚42、43に設けられた3本の昇降ピンを介して第2の搬送機構141及び受け渡しアーム41との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0023】
また搬入棚42は、液体を満たすことが可能な皿形状に構成され、当該搬入棚42上に載置されたウエハWを、不図示のIPA供給部から供給されたIPA中に浸漬した状態で保持することにより、ウエハW表面の自然乾燥を防いで、超臨界処理前のパターン倒れの発生を防いでいる。
また搬入棚42及び搬出棚43の配置位置を手前側から見ると、これらの棚42、43は、ウエハWの受け渡し位置にて上面に向かって開口する、後述の内チャンバー32の上方側、側方寄りの位置に配置されている。この配置によりウエハWを上下方向に搬送するための搬送経路が確保され、搬入棚42や搬出棚43と干渉することなく迅速にウエハWを内チャンバー32から搬入出することができる。
【0024】
図3中、403は洗浄装置2にて洗浄処理を終えたウエハWが搬入される搬入口、404は超臨界処理を終えたウエハWが搬出される搬出口であり、第2の搬送機構141は、これらの搬入、搬出口403、404を介して筐体401内に進入する。また図3中、402は筐体401内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、407は当該ダウンフローの排気口である。
【0025】
各筐体401内に設けられた例えば超臨界処理装置3は、互いにほぼ同様の構成を備えており、超臨界流体を利用することによりウエハW表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥することができる。図4、図5に示すように超臨界処理装置3は、超臨界処理が行われる処理容器である外チャンバー31と、ウエハWをIPA中に浸漬した状態で外チャンバー31内に搬入される内チャンバー32とを備えている。内チャンバー32は、本実施の形態の液槽に相当している。
【0026】
図4の各図に示すように外チャンバー31は、例えば縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、図6に示すように、その内部には内チャンバー32を格納することが可能な処理空間310が形成されている。図1に示すように外チャンバー31は幅の狭い面をウエハ搬送路142側に向けて配置されており、その前面には内チャンバー32を搬入出するための開口部311が設けられている(図4(a))。
【0027】
また図6に示すように外チャンバー31には例えば抵抗発熱体からなるヒーター312が設けられていて、電源部313からの給電により、外チャンバー31の本体を加熱し、これにより置換流体である例えば液体CO2を、処理空間310内で超臨界状態にすることができる。ヒーター312は本実施の形態のエネルギー供給部に相当する。
【0028】
さらに図4(a)、図4(b)に示すように、例えば外チャンバー31の本体側面の底部寄りの位置にはCO2供給ライン511が接続されていて、このCO2供給ライン511は、図6に示すようにバルブV1、フィルター及びポンプからなる送液機構512を介してCO2貯留部51に接続されている。CO2貯留部51には例えば液体CO2が貯留されており、これらCO2供給ライン511、送液機構512及びCO2貯留部51は、外チャンバー31の処理空間310内に置換流体である液体CO2を供給するための置換流体供給部を構成している。
【0029】
また図4、図6に示す、例えば外チャンバー31本体の天井面に設けられた531は、処理空間310内に液体CO2を供給する際に処理空間310内の雰囲気を排気し、また超臨界処理を終えた後の超臨界状態のCO2を排気して処理容器320内を減圧するための排気ラインであり、バルブV4の開閉により処理空間310内を排気、密閉することができる。ここでバルブV4は圧力調整弁の役割も果たしており、処理空間310内の圧力を調整しながら処理空間310内の雰囲気を排気することが可能である。処理後の超臨界状態のCO2を排気するという観点において、排気ライン531は本実施の形態の排気部に相当している。
【0030】
図4(a)、図5に示すように内チャンバー32は例えば2枚のウエハWを縦向きに格納することが可能に形成された容器であり、乾燥防止用の液体であるIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持することができる。内チャンバー32は、処理空間310より幅の狭い、縦方向に扁平な形状となっており、内チャンバー32を処理空間内310に配置したとき、外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間には、処理空間310に供給された液体や超臨界状態のCO2を通流させるための空間が形成されるうになっている。本例に係る内チャンバー32は、超臨界流体を扱う処理空間310の容積をできるだけ小さくする必要性と、洗浄処理システム1全体のウエハWの処理スピードとの兼ね合いから、例えば2枚のウエハWを格納できる構成とした。但し、内チャンバー32に格納可能なウエハWの枚数はこれに限られるものではなく、1枚のみまたは3枚以上のウエハWを格納する構成としてもよい。また、内チャンバー32に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、内チャンバー32の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0031】
図5に示すように内チャンバー32の上面は開口しており、受け渡しアーム41に保持されたウエハWはこの開口部を介して内チャンバー32内に搬入される。また内チャンバー32の開口部には例えば鋸歯状の切り欠き部322が形成されており、処理空間310内の超臨界流体が内チャンバー32内へと均一に流れ込みやすくなるようにしている。但し図示の便宜上、図4〜図6以外の図では内チャンバー32の切り欠き部322の記載は省略してある。
【0032】
また内チャンバー32の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、その内部側の底面には2枚のウエハWを保持するためのウエハ保持部材323が設けられている。ウエハ保持部材323には、ウエハWの形状に沿った溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させることによりウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材323は、内チャンバー32に供給されたIPAが各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク411が内チャンバー32内に進入しても、ウエハWやフォーク411が他のウエハWや内チャンバー32本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。このウエハ保持部材323は本実施の形態の基板保持部に相当する。
【0033】
図5に示すように例えば内チャンバー32の底面には、ウエハ保持部材323の形成されていない領域が設けられており、ここには内チャンバー32内にIPAを供給し、またIPAを排出するための排液部である開口部324が設けられている。この開口部324はIPAの供給・排液ライン524と接続されており、当該供給・排液ライン524は後述の蓋部材321の内部を通って切替弁525に接続されている(図6)。後述するように内チャンバー32は前後方向に移動可能となっているので、供給・排液ライン524は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、内チャンバー32の移動に伴って変形することができる。図6中、V3はバルブである。
【0034】
切替弁525は、内チャンバー32にIPAを供給するためのIPA供給ライン521、内チャンバー32から排出されたIPAを回収するための回収ライン523及び上述の供給・排液ライン524と接続されている。IPA供給ライン521は、開閉バルブV2、フィルター及びポンプからなる送液機構522を介してIPAを貯留したIPA貯留部52に接続されている。一方、回収ライン523は内チャンバー32から排出されたIPAを回収可能なように、直接IPA貯留部52に接続されている。
【0035】
図5に示すように内チャンバー32は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の蓋部材321に固定されている。そしてこの蓋部材321を横方向に前後に移動させることによって、受け渡しアーム41との間でのウエハWの受け渡しが行われる、外チャンバー31の外部の受け渡し位置と、処理空間310内の処理位置との間で内チャンバー32を搬送することができる。また図6に破線で示すように、処理位置に内チャンバー32を搬送した蓋部材321は外チャンバー31の開口部311を塞ぐ役割も果たしている。外チャンバー31の開口部311の周囲には、当該開口部311を取り囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材321は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉することができる。
【0036】
図4(a)、図4(b)に示すように蓋部材321は台座部35に支持されており、例えばこの台座部35には内チャンバー32を搬送する方向に沿って当該台座部35を切り抜いた走行軌道351が形成されている。一方、蓋部材321の下端部には、当該走行軌道351内に向けて下方側に伸びだした走行部材325が設けられている。そして図4(a)、図6に示すように、この走行部材325には走行軌道351に沿って掛け渡されたボールネジ353が貫通していて、これら走行部材325とボールネジ353とはボールネジ機構を構成している。
【0037】
そしてボールネジ353の一端に設けられた駆動部352により当該ボールネジ353を左右いずれかの方向に回転させることにより、走行軌道351内で走行部材325が走行し、これにより蓋部材321を移動させて、内チャンバー32を受け渡し位置から処理位置まで搬送することができる。そしてこれとは反対に、ボールネジ353を反対方向に回転させることにより、内チャンバー32を処理位置から受け渡し位置まで搬送することができる。但し蓋部材321を移動させる機構は、上述したボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いてもよい。
【0038】
また図4(a)、図4(b)に示すように超臨界処理装置3には、蓋部材321や内チャンバー32が移動する領域を側面から覆うように、周囲壁33が設けられている。周囲壁33は蓋部材321の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材331と、外チャンバー31の開口部311と対向するように設けられた前方壁部材332とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材331の奥手側の一端は、外チャンバー31の側壁面に強固に固定されており、これにより周囲壁33は外チャンバー31と一体になっている。
【0039】
また超臨界処理装置3は、処理空間310内でCO2を超臨界状態とすることなどにより蓋部材321が受ける内圧に抗して、当該蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて押さえつけるための固定板34を備えている。この固定板34は、内チャンバー32及び蓋部材321が移動する領域から退避した位置と、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて手前側から押さえる位置との間を、不図示の駆動機構により左右方向に移動可能に構成されている。
【0040】
一方、各側壁部材331には、左右方向に移動する前記固定板34を貫通させることが可能な嵌入孔333が形成されており、周囲壁33(側壁部材331)の外方の待機位置で待機している固定板34は、一方側の側壁部材331の嵌入孔333を通り抜けて固定位置へと移動することができる。また固定位置まで移動した固定板34は、その左右両端部が各側壁部材331の嵌入孔333に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板34がかんぬきのように側壁部材331に係止され、処理空間310内の圧力に抗して蓋部材321を外チャンバー31に向けて押さえつけることができる(図1の超臨界処理装置3及び図4(b)参照)。
【0041】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3を含む洗浄処理システム1は、図1、図6に示すように制御部6と接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP7からウエハWを取り出して洗浄装置2に搬送し洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP7内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0042】
特に超臨界処理装置3について制御部6は、図6に示すようにCO2供給ライン511及びIPA供給ライン521の各送液機構512、522に接続されて液体CO2やIPAの供給タイミングを調節し、また外チャンバー31に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて送液機構512の吐出圧を調節することができるようになっている。さらに制御部6は各バルブV1〜V4の開閉タイミングの調節や、駆動部352よるボールネジ353の回転タイミングや回転方向、回転量の調節、切替弁525に接続されるライン(IPA供給ライン521、回収ライン523)の切り替えなども行うことができる。これらに加えて制御部6は、不図示の温度計からの処理空間310内の温度の検出結果に基づいて、電源部313からヒーター312へ供給される電力を増減し処理空間310内の温度を予め設定した温度に調節する役割も果たしている。
【0043】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWが第2の搬送機構141に受け渡されたら、第2の搬送機構141は、いずれか一方の筐体401内に搬入口403を介して進入し、当該ウエハWを搬入棚42の昇降ピンに受け渡す。
【0044】
超臨界処理装置3の内チャンバー32へと直ちにウエハWを搬入することが可能な場合には、搬入棚42ではウエハWを受け取った状態のままウエハWの下方に受け渡しアーム41のフォーク411を進入させ、次いで昇降ピンを降下させることによりウエハWをフォーク411に受け渡す。内チャンバー32にウエハWを搬入するまでに待ち時間が発生する場合には、昇降ピンを降下させてウエハWを皿状の搬入棚42内に載置し、ウエハWの表面にIPAを供給して乾燥を防ぐ。そして内チャンバー32側の準備が整ったら昇降ピンを上昇させてフォーク411にウエハWを受け渡す。
【0045】
一方、ウエハWの搬入が可能になった内チャンバー32は、図7(a)に示すように内チャンバー32内にIPAを満たした状態で受け渡し位置にて待機している。搬入棚42からウエハWを受け取った受け渡しアーム41は、ウエハWを縦向きに起こすと共にフォーク411の先端が内チャンバー32の開口部に向くように各回転軸を回転させた後、フォーク411を降下させてウエハWを内チャンバー32内に搬入する。
【0046】
この搬入動作を迅速に実行することにより、ウエハWを縦向きに起こす際に、ウエハW表面に液盛りされているIPAの一部がこぼれ落ちたとしても、短時間の間であればウエハWの表面にはIPAの液膜が残っている。そこでこの液膜が残っており、ウエハWに形成されたパターンの凹部内のIPAが乾燥しないうちに内チャンバー32内にウエハWを搬入してしまうことによって、パターン倒れの発生を抑えつつウエハWを内チャンバー32に受け渡してIPA中に浸漬することができる。
【0047】
フォーク411をさらに降下させ、ウエハWの下端部がウエハ保持部材323の溝の内側に嵌って保持されたら、ウエハWの保持を解除して受け渡しアーム41を上昇させ、フォーク411を内チャンバー32から退避させる。そして2枚のウエハWに対して上述の受け渡し動作を繰り返し、図7(b)に模式的に示すように2枚のウエハWを内チャンバー32に格納して、IPAに浸漬した状態とする。次いで、駆動部352によりボールネジ353を駆動させて内チャンバー32を処理位置まで移動させる(図7(c))。このとき内チャンバー32からIPAが排出されないように供給・排液ライン524のバルブV3は閉となっており(図7(a)中に「S」と記してある。以下同じ)、また外チャンバー31側においてもCO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4は閉となっている。
【0048】
そして図4(b)に示すように固定板34を待機位置から固定位置まで移動させたら、CO2供給ライン511側の送液機構512のバルブV1を開とし(図8(a)中に「O」と記してある。以下同じ)、ポンプを作動させて処理空間310内に液体CO2を供給する。例えば大気圧雰囲気となっている処理空間310内に液体CO2が供給されると、液体CO2の一部が気化して処理空間310内の圧力が上昇し、気相側の雰囲気が液体CO2と平衡状態になる。
【0049】
しかる後、処理空間310内の雰囲気が例えば6MPa〜9MPaの範囲内の例えば7.5MPaとなるように開度を調節しながらバルブV4を開くと、CO2供給ライン511から供給されるCO2の液体の状態が保たれたまま気相側の雰囲気が追い出され、処理空間310内が液体CO2で置換されていく(図8(a))。そして液体CO2の液面の位置が、図5に示した内チャンバー32の切り欠き部322の下端程度の位置まで到達し、液体CO2が内チャンバー32に流れ込むことが可能な状態となったら、CO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4を閉じて外チャンバー31を密閉する(図8(b))。
【0050】
次に、図8(c)に示すように電源部313よりヒーター312に電力を供給し、処理空間310内の温度が例えば30℃〜90℃の範囲の40℃となるように加熱を行う。CO2の臨界点は、7.38MPa、31.1℃であるので、この加熱操作により液体CO2が超臨界状態に変化し、CO2の気液界面が消失して処理空間310内が超臨界状態のCO2で満たされた状態となる。
【0051】
ここで大気圧におけるIPAの沸点は82.4℃であるので、7.5MPa、40℃の処理空間310内においては内チャンバー32内のIPAは液体の状態を保っており、IPAに浸漬されたウエハWの表面も濡れた状態となっている。このとき図9(a)に示すように供給・排液ライン524のバルブV3を開くと、内チャンバー32内のIPAは内チャンバー32の開口部を介して超臨界状態のCO2によって押し出され、また重力が働いて供給・排液ライン524に向けて流れていく。この際に図6に示した切替弁525を回収ライン523側に切り替えておくことにより、内チャンバー32から流れ出たIPAはIPA貯留部52に回収される。
【0052】
内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524からIPAが流出していくと、処理空間310内の超臨界状態のCO2が膨張し、上面側の開口部を介して内チャンバー32内へと進入する。この結果、内チャンバー32内のIPAが上方側から下方側へ向けて超臨界状態のCO2へと置換されていくことになるが、超臨界状態のCO2は表面張力が働かないため、パターン倒れを引き起こすことなくウエハW表面の雰囲気を液体のIPAから超臨界状態のCO2に置換することができる。
【0053】
ここで既述のように内チャンバー32は2枚のウエハWを格納することが可能な程度の大きさであるので、その容積は比較的小さい。このため、超臨界状態のCO2の温度及び圧力を臨界点よりも十分に高い状態としておき、膨張に伴う温度や圧力低下を見越した量のCO2を処理空間310内に予め供給しておけば、CO2の超臨界状態を十分に維持することができる。また例えば、内チャンバー32内のIPAが押し出され、超臨界状態のCO2が膨張してもその超臨界状態が維持されるようにヒーター312の出力を増加させてもよい。
【0054】
こうして内チャンバー32内のIPAが排出され、処理空間310の系内の雰囲気が全て超臨界状態のCO2に置換されたら、供給・排液ライン524のバルブV3を閉じ(図9(b))、排気ライン531のバルブV4を開いて処理空間310内を大気圧まで脱圧する。この結果、超臨界状態のCO2が気体の状態に変化することになるが、超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる(図9(c))。
【0055】
ここで図9(c)に示した例では、液体CO2の供給時に外チャンバー31内の雰囲気を排気する既述の排気ライン531を利用して処理空間310内の脱圧を行う例を示したが、この脱圧操作時に処理空間310内にCO2の上昇流が形成されることに起因するごみの巻上げを抑えるため、例えば外チャンバー31の底部側に脱圧時専用の排気ラインを設けて処理空間310内に下降流が形成されるようにしながら脱圧を行ってもよい。また、内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524を利用して脱圧を行ってもよい。そして処理空間310内を脱圧する際には、CO2の膨張により処理空間310内の温度が低下して超臨界状態のCO2中に溶解していたIPAがウエハW表面で凝縮したりしないように、ヒーター312によって処理空間310内部の温度を上げるようにしてもよい。
【0056】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、固定板34を退避位置まで退避させ、蓋部材321を前方側へ移動させて内チャンバー32を受け渡し位置まで引き出し、内チャンバー32内にフォーク411を進入させて処理を終えたウエハWを一枚ずつ取り出す。
【0057】
内チャンバー32からウエハWが取り出されると、切替弁525の接続先をIPA供給ライン521側に切り替えて送液機構522を作動させてIPA貯留部52よりIPAを供給し、内チャンバー32にIPAが満たされた状態で次のウエハWが搬入されるまで待機する。
一方、取り出されたウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP7内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0058】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。ウエハWを浸漬した乾燥防止用の液体であるIPAを、直接、超臨界状態のCO2に置換して当該ウエハWを乾燥する処理を行うので、超臨界状態のCO2による処理を開始するまでのウエハWの表面の自然乾燥が抑えられ、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0059】
また、外チャンバー31内では内チャンバー32にウエハWが縦向きに保持されているので、例えばウエハWに付着していたパーティクルなどのごみがIPAや超臨界状態のCO2に流れに乗って飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置にウエハWの表面が存在しないことからウエハWの再汚染が発生しにくい。さらに内チャンバー32の上方側から下方側へ向けてIPAを超臨界状態のCO2へと置換していくことにより、IPAの排出時にウエハWから飛散したごみを内チャンバー32の底部側の開口部324へ向けてIPAと共に押し流していくので、これらのごみの巻き上げを抑制し、ウエハWへの再付着をさらに低減することができる。
【0060】
ここで図4〜図9などでは、内チャンバー32に満たされたIPA内にウエハWを浸漬し、この内チャンバー32を外チャンバー31内に搬入してから超臨界処理を行う、いわば2重容器型の超臨界処理装置3の例について説明したが、本発明を適用可能な超臨界処理装置はこの例に限られない。例えば図10(a)、図10(b)に示すように、外チャンバー31に供給したIPA中にウエハWを縦向きに保持する、いわば単体容器型の超臨界処理装置3aであってもよい。
【0061】
この図10(a)、図10(b)に示した例では、例えば超臨界流体供給ライン591の上流側にCO2を液体の状態または超臨界状態で貯留する不図示のCO2貯留部を設けておき、これらの流体CO2を加熱または加圧の少なくとも一方を行いながら、液体CO2を超臨界状態に変化させ、またはCO2の超臨界状態を維持しながら超臨界流体供給ライン591を介して処理空間310に供給される構成となっている。この結果、処理空間310内のIPAが超臨界流体供給ライン591へ向けて排出され、上方側から下方側へ向けてウエハWの周囲のIPAが超臨界状態のCO2へと置換されることになる。そして置換操作を終えたら外チャンバー31内を脱圧することにより、乾燥した状態のウエハWが得られる。
【0062】
このほか、超臨界処理装置3が2重容器型である場合において、内チャンバー32を外チャンバー31の内部と外部との間で移動させる移動機構を設けずに、内チャンバー32を外チャンバー31内に固定してもよい。この場合にも外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間に形成される空間に液体のCO2などの置換流体を供給することにより、IPAと交じり合うことなく超臨界流体となる前の置換流体を処理空間30内に供給することができる。
【0063】
また上述の各実施の形態では、ウエハWが浸漬される液体としてIPA、この液体と置換される超臨界状態の置換流体としてCO2を採用した例について説明したが、各流体の例はこれに限定されるものではない。例えば洗浄処理後のウエハWに乾燥防止用のIPAを供給する場合に替えて、ウエハWをリンス液(洗浄液)であるDIWに浸漬したまま超臨界流体と置換してもよい。また例えば超臨界流体としてHFE(Hydro FluoroEther)を利用する場合などに、液体のHFE中に浸漬した状態で外チャンバー31内にウエハWを配置し、この液体HFEを超臨界状態のHFEと置換してもよい。また超臨界状態の置換流体としてはIPAなども利用することができる。
【0064】
さらにウエハWを浸漬する液体の比重が、これと置換される超臨界状態の流体の比重よりも軽い場合などには、図11(a)、図11(b)に示す超臨界処理装置3bのように、超臨界流体を外チャンバー31の下方側から供給し、上方側へ向けて液体との置換を行ってもよい。この場合であってもウエハWが縦向きに保持されていることにより、巻き上げられたごみの再付着を抑えつつウエハWの乾燥を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3、3a、3b
超臨界処理装置
31 外チャンバー
310 処理空間
32 内チャンバー
323 ウエハ保持部材
511 CO2供給ライン
521 IPA供給ライン
524 供給・排液ライン
531 排気ライン
591 超臨界流体供給ライン
592 液体排出ライン
6 制御部
7 FOUP
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を浸漬した液体を超臨界状態の置換流体と置換して、当該被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器内にて前記被処理基板を縦向きの状態で保持する基板保持部と、
前記処理容器に、液状態または超臨界状態で前記置換流体を供給する置換流体供給部と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持するエネルギー供給部と、
前記液体を処理容器から排出して超臨界状態の置換流体と置換するために、前記基板保持部に保持された被処理基板の下方側に設けられた排液部と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥するための排気部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液体に被処理基板を浸漬した状態で前記処理容器内に配置されると共に、前記排液部が設けられた液槽を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液槽は、前記処理容器の内部と外部との間を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記置換流体供給部は、前記処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に置換流体を供給することを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
被処理基板が縦向きの状態で液体内に浸漬されるように、処理容器内に被処理基板を配置する工程と、
前記処理容器に液状態または超臨界状態の置換流体を供給する工程と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持する工程と、
前記液体を超臨界状態の置換流体と置換するために、前記被処理基板の下方側の位置から当該液体を排出する工程と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記処理容器内に配置される液槽に前記液体を満たす工程と、
前記液槽に被処理基板を受け渡し、当該被処理基板を縦向きの状態で前記液体内に浸漬する工程と、を含み、
前記液体を超臨界状態の置換流体に置換する工程では、液体に浸漬された被処理基板の上方から前記液槽内に超臨界状態の置換流体を受け入れ、当該液槽を介して処理容器の外部へと当該液体を排出することを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理容器の外部にて、前記液槽に被処理基板を受け渡す工程と、
次いで、前記処理容器に設けられた搬入出口を介して前記液槽を当該処理容器の内部に移動させ、前記搬入出口を閉じる工程と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理容器に液状態または超臨界状態の置換流体を供給する工程では、当該処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に前記置換流体を供給することを特徴とする請求項7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項11】
液体に浸漬された被処理基板を乾燥する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項6ないし10のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
被処理基板を浸漬した液体を超臨界状態の置換流体と置換して、当該被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器内にて前記被処理基板を縦向きの状態で保持する基板保持部と、
前記処理容器に、液状態または超臨界状態で前記置換流体を供給する置換流体供給部と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持するエネルギー供給部と、
前記液体を処理容器から排出して超臨界状態の置換流体と置換するために、前記基板保持部に保持された被処理基板の下方側に設けられた排液部と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥するための排気部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液体に被処理基板を浸漬した状態で前記処理容器内に配置されると共に、前記排液部が設けられた液槽を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液槽は、前記処理容器の内部と外部との間を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記置換流体供給部は、前記処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に置換流体を供給することを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
被処理基板が縦向きの状態で液体内に浸漬されるように、処理容器内に被処理基板を配置する工程と、
前記処理容器に液状態または超臨界状態の置換流体を供給する工程と、
前記置換流体に対して加熱または加圧の少なくとも一方を行うことにより、前記処理容器内にて前記置換流体を液状態から超臨界状態にし、または当該置換流体の超臨界状態を維持する工程と、
前記液体を超臨界状態の置換流体と置換するために、前記被処理基板の下方側の位置から当該液体を排出する工程と、
前記液体と置換された後の超臨界状態の置換流体を前記処理容器から排出して当該処理容器内を減圧し、この置換流体を超臨界状態から気体にして前記被処理基板を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記処理容器内に配置される液槽に前記液体を満たす工程と、
前記液槽に被処理基板を受け渡し、当該被処理基板を縦向きの状態で前記液体内に浸漬する工程と、を含み、
前記液体を超臨界状態の置換流体に置換する工程では、液体に浸漬された被処理基板の上方から前記液槽内に超臨界状態の置換流体を受け入れ、当該液槽を介して処理容器の外部へと当該液体を排出することを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理容器の外部にて、前記液槽に被処理基板を受け渡す工程と、
次いで、前記処理容器に設けられた搬入出口を介して前記液槽を当該処理容器の内部に移動させ、前記搬入出口を閉じる工程と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理容器に液状態または超臨界状態の置換流体を供給する工程では、当該処理容器の内面と液槽の外面との間に形成される空間に前記置換流体を供給することを特徴とする請求項7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記液体は、被処理基板の表面の乾燥を防止するための液体であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項11】
液体に浸漬された被処理基板を乾燥する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項6ないし10のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−222595(P2011−222595A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87248(P2010−87248)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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