説明

基板処理装置、成膜方法、電子デバイスの生産方法

【課題】 真空中で基板全体の温度を正確に測定しその測定結果に基づいて、基板全面で均一な温度分布を与えるための温度分布の管理と、基板の温度制御と、が可能な基板処理技術を提供すること。
【解決手段】 基板処理装置は、第1の処理室内で、基板を加熱するための複数のヒータを有する加熱部と、第1の処理室から第2の処理室に基板を搬送する間に、加熱部により加熱された基板の温度を測定する複数の温度測定部と、第2の処理室内で、基板を再加熱するための複数のヒータを有する再加熱部と、温度測定部の測定結果に基づき、再加熱部の出力を制御する出力制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、成膜方法、電子デバイスの生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成膜装置におけるプロセス温度を正確に測定し、加熱温度を制御することは、良く制御された膜質の成膜を実現するために重要である。
【0003】
加熱された基板の温度を測定する方法として、熱電対を基板に点接触させることによって基板の温度を測定することが試みられている。この測定方法では、熱電対を基板に点接触させた状態で基板の温度を測定するため、熱電対の接触状態を一定に安定させることが困難となり、測定温度の再現性が乏しいという欠点がある。また、赤外線の輻射によって基板を加熱する場合、赤外領域の広い範囲で基板はほとんど透明であるため、熱電対に基板からの熱伝導によってのみ熱が伝わるのではなく、熱電対自身がランプヒータによって加熱されてしまう場合もある。このため、熱電対を用いた正確な基板の温度測定は困難なものとなる。
【0004】
真空中にて非接触で基板の温度を測定する方法の一つとして、赤外線温度計を用いて赤外領域の基板からの輻射強度を測定する方法が提案されている。この方法は、ステージに基板を置載して、基板を加熱しながら、基板に対向して設置されたターゲットにあけた貫通孔を通じて赤外線温度計によって基板の温度を測定するものである。この方法では、予め校正用試料によって特定の温度での基板の赤外線輻射率を測定しておき、その測定値を基準として、成膜中の基板温度を測定し、その測定結果を用いて温度制御を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−150353号公報
【特許文献2】特開平1−129966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、赤外線温度計を用いた測定方法は、基板サイズの大型化に対応することが困難である問題がある。例えば、フラットパネルディスプレイや薄膜太陽電池では、1mを超える大面積基板に必要な性能を持つ電子デバイスを集積化することが要求される。ランプヒータの設置が単一の箇所であると大面積基板を均一に加熱することができない。そのために、大面積基板を均一に加熱するために、ランプヒータを複数箇所に配置する必要がある。大面積基板の正確な温度計測を行うためには、大面積基板上を、赤外線温度計を動かしながら測定しなければならないが、かかる構成は装置が複雑化するという問題がる。
【0007】
従来用いられてきた基板を加熱処理する装置では、大面積基板の一部の温度を測定して、その測定結果に基づいて全体のランプヒータの加熱を制御しており、大面積基板の全体的な温度を正確に測定して温度制御をしていない。そのため、大面積基板に対して、良く制御された膜質の成膜を実現することは困難なものになっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の問題点を鑑み、真空中で基板全体の温度を正確に測定しその測定結果に基づいて、基板全面で均一な温度分布を与えるための温度分布の管理と、基板の温度制御と、が可能な基板処理技術の提供を目的とする。
【0009】
上記の目的を達成する本発明にかかる基板処理装置は、第1の処理室と、第2の処理室と、基板を搬送するための搬送手段と、を有する基板処理装置であって、
前記第1の処理室内で、前記基板を加熱するための複数のヒータを有する加熱手段と、
前記第1の処理室から前記第2の処理室に前記搬送手段を用いて前記基板を搬送する間に、前記加熱手段により加熱された前記基板の温度を測定する温度ラインセンサと、
前記第2の処理室内で、前記基板を再加熱するための複数のヒータを有する再加熱手段と、
前記温度ラインセンサの測定結果に基づき、前記再加熱手段の出力を制御する第1出力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空中で基板全体の温度を正確に測定しその測定結果に基づいて、基板全面で均一な温度分布を与えるための温度分布の管理と、基板の温度制御と、が可能な基板処理技術の提供が可能になる。
【0011】
基板の正確な温度制御の可能な基板処理装置を提供すると共に、それを成膜装置に応用することにより正確な温度測定に基づく温度分布の管理と、温度制御とができるので、高品質な膜の形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる真空処理成膜装置の概略的な構成を示す平面図である。
【図2】真空処理成膜装置が備える加熱処理室2と成膜室3との断面図である。
【図3】成膜室3におけるランプヒータ5の配置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる真空処理成膜装置の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図5】コントローラ201の機能構成を示すブロック図である。
【図6】基板温度マップ601を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0014】
(真空処理成膜装置の構成)
図1は本発明の実施形態にかかる真空処理成膜装置1(以下、「基板処理装置」ともいう。)の概略的な構成を示す平面図である。図2は真空処理成膜装置1が備える加熱処理室2(第1の処理室)と、成膜室3(第2の処理室)と、の断面図である。ロードロック室8と加熱処理室2との間にはゲートバルブ4aが設けられており、加熱処理室2と成膜室3との間にはゲートバルブ4bが設けられている。成膜室3とアンロードロック室10との間にはゲートバルブ4cが設けられている。ゲートバルブ4aを開くことにより、ロードロック室8と加熱処理室2とが連通し、ゲートバルブ4bを開くことにより、加熱処理室2と成膜室3とが連通する。また、ゲートバルブ4cを開くことにより、成膜室3とアンロードロック室10とが連通する。ゲートバルブ4a、4b、4cを閉じると、ロードロック室8、加熱処理室2、成膜室3及びアンロードロック室10はそれぞれ独立したチャンバになる。
【0015】
また、ロードロック室8、加熱処理室2、及び成膜室3には、チャンバ内を所定の真空状態に保持するために、排気系(不図示)が接続されている。また、成膜室3においてはプロセスガスを導入して所定の放電によりプラズマを発生させるプラズマ発生機構(不図示)が設けられている。
【0016】
加熱処理室2内(第1の処理室内)において、5は加熱手段として機能するランプヒータである。また、成膜室3内(第2の処理室内)において、ランプヒータ5は再加熱手段として機能する。
【0017】
加熱処理室2内(第1の処理室内)のランプヒータ5は、基板7の全体を均一に加熱するために、基板の搬送方向(第1の方向)にピッチP1の間隔(第1の間隔)でN列分(Nは自然数、図2の場合は5列)設けられている。また、ランプヒータ5は、基板7の搬送方向に対して直交する方向(第2の方向)にピッチP2の間隔(第2の間隔)でM行分(Mは自然数、図2の場合は5行)設けられている。ランプヒータ5は、M行xN列のマトリックス状に配置され、各ランプヒータ5は基板7を加熱する。
【0018】
6は温度測定手段(温度ラインセンサ)として機能する赤外線輻射温度計である。赤外線輻射温度計6は、ピッチP2の間隔と同じピッチで、基板7の搬送方向に対して直交する方向(第2の方向)に複数配置されている。
【0019】
不図示の搬送機構により、基板7は加熱処理室2と成膜室3との間を搬送される。複数の赤外線輻射温度計6は、基板7の搬送経路上に配置されており、基板7が加熱処理室2から成膜室3に搬送される間に、複数の赤外線輻射温度計6は、各ランプヒータ5により加熱された基板7からの輻射強度を測定する。ここで、赤外線輻射温度計6は、直線状に並べられることが多い。その場合には、それら一群の赤外線輻射温度計6を温度ラインセンサと記載することもある。
【0020】
成膜をおこなう前に、加熱処理室2内の各ランプヒータでの加熱による基板温度の均一性を確認するために基板温度マップを作成する。例えば、ランプヒータが図2のように5列設けられている場合、次のように基板7を5枚準備して温度測定を実施する。先ず1枚目の基板7を加熱処理室2に搬入して、第1のランプヒータ列21のみを点灯し加熱をおこなう。一定時間加熱後、基板7が搬送機構により成膜室へと搬送されると、第1のランプヒータ列21により加熱された基板7からの輻射強度が赤外線輻射温度計6によりそれぞれ測定される。赤外線輻射温度計6の中心と成膜室側の基板端部との距離をD、基板の搬送速度をVとして、成膜室への搬送を開始してからD/Vだけ経過したときに温度測定を開始する。測定時間は、基板の搬送方向長さをLとして、L/5Vとする。この測定結果の平均値を、第1のランプヒータ列21直上の基板端からL/5の範囲の温度とする。次に2枚目の基板7を加熱処理室2に搬入して、第2のランプヒータ22のみを点灯し加熱をおこなう。1枚目と同じ一定時間加熱後、基板を成膜室へと搬送する。成膜室への搬送を開始してからD/V+L/5Vだけ経過したときに温度測定を開始する。測定時間はL/5Vとする。この測定結果の平均値を、基板端よりL/5Vから2L/5Vまでの範囲の温度とする。そして、3枚目の基板7を加熱処理室2に搬入して、第3のランプヒータ23のみを点灯し加熱をおこなう。1枚目と同じ一定時間加熱後、基板を成膜室へと搬送する。成膜室への搬送を開始してからD/V+2L/5Vだけ経過したときに温度測定を開始する。測定時間はL/5Vとする。この測定結果の平均値を、基板端より2L/5Vから3L/5Vまでの範囲の温度とする。以下、同様に各ランプヒータ列により加熱された基板7の温度が赤外線輻射温度計6によりそれぞれ測定される。1つのランプヒータ列にランプヒータ5が5つ含まれる場合、5列分のランプヒータ列の測定により、25個の輻射強度の測定結果が得られる。測定結果は、制御手段として機能するコントローラ201に入力される。
【0021】
図5は、コントローラ201の機能構成を示すブロック図である。輻射強度の測定結果は、順次、演算部501に入力される。演算部501は、予め測定した基板の輻射率を用いて、入力された輻射強度の測定結果に基づき基板7面内の温度を算出する。
【0022】
搬送速度・基板サイズ設定部502は、搬送機構の搬送速度と、基板7のサイズと、を設定する処理部である。
【0023】
基板温度マップ作成部503は、演算部501により計測された赤外線輻射温度計6による温度測定のタイミングと、搬送速度・基板サイズ設定部502により設定された搬送速度と基板7のサイズと、に基づいて、基板7上の温度測定箇所を算出する。
【0024】
また、基板温度マップ作成部503は、設定された基板7のサイズに基づき各ランプヒータ列内で測定に使用するべき、有効な測定データを出力する赤外線輻射温度計6を特定する。例えば、大面積基板の場合には、基板温度マップ作成部503は、赤外線輻射温度計6の全て(図2の場合は5つ)の測定結果を有効な測定データとして使用する。また、小形の基板の場合には、基板温度マップ作成部503は、中央部の3つの赤外線輻射温度計6を使用する。
【0025】
基板温度マップ作成部503は、基板7上の温度測定箇所と、設定された基板7のサイズと、演算部501により算出された温度と、を対応づけて、基板7の温度分布を示す基板温度マップ(図6)を作成する。
【0026】
図6は、基板温度マップ601を例示する図である。第1のランプヒータ列21により加熱された基板7の温度分布は、T1a、T1b、T1c、T1d及びT1eとなる。第2のランプヒータ列22により加熱された基板7の温度分布は、T2a、T2b、T2c、T2d及びT2eとなる。同様に、第3のランプヒータ列23により加熱された基板7の温度分布は、T3a、T3b、T3c、T3d及びT3eとなる。基板温度マップ601は、マトリックス状のデータ構造を有しており、基板温度マップ601を参照することにより、基板7の温度の分布を把握することができる。
【0027】
加熱温度判定部504は、予め定められている基準温度と、基板温度マップ601に格納されている各温度との差分が所定の誤差範囲内にあるか否かを判定する。すなわち、加熱温度判定部504は、基板温度マップ601を参照し、予め定められている基準温度に対して基板7の温度が低い加熱箇所があるか否か、あるいは、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所があるか否かを判定する。また、加熱温度判定部504は、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の高い箇所があるか否かを判定する。
【0028】
出力制御部505(第2出力制御手段)は、加熱処理室2内に配置されている各ランプヒータ5の加熱温度を、加熱温度判定部504の判定結果に基づいて、基準温度よりも低くなっている、あるいは、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所に対応するランプヒータの加熱温度を上昇させるように制御する。図6の例で、加熱温度判定部504が基板温度マップ601の温度T1c602が基準温度よりも低いと判定した場合、この判定結果に基づいて、出力制御部505は、温度T1cの温度測定箇所に対応するランプヒータ510(図5)を特定し、ランプヒータ510のヒータの出力を上昇させるように制御する。
【0029】
また、出力制御部505は、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の高い箇所に対応するランプヒータの加熱温度を低下させるように加熱条件の設定を変えることも可能である。
【0030】
基板温度マップ601に基づく出力制御部505の制御により、加熱処理室2に配置されているランプヒータ5の個々の出力設定を変更し、次に加熱処理される基板7の温度分布の均一化を図ることが可能になる。
【0031】
出力制御部506(第1出力制御手段)は、成膜室3内に配置されている各ランプヒータ5(図2、図5)の加熱温度を、加熱温度判定部504の判定結果に基づいて、基準温度よりも低くなっている箇所、あるいは、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所の温度を上昇させるようにランプヒータの動作を制御する。加熱温度判定部504の判定結果に基づき、誤差範囲を超えて温度が低い箇所を再加熱するために、成膜室3内に配置されている各ランプヒータ5(再加熱手段)のうち対応するヒータを作動させる。
【0032】
基板7が成膜室3に搬送されて、ランプヒータ5の下を通過する際に、基準温度に達していない箇所、または、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所に対応するランプヒータ5が所定時間、点灯して基板7を加熱する。基準温度まで加熱を行う場合の出力制御部506によるランプヒータ5の点灯制御は、(基準温度―基板温度マップ601の温度T1c)により求められる差分を補償するものである。
【0033】
成膜室3に配置されているランプヒータ5の構成は、図2及び図5の例に限定されず、例えば、図3に示すように、加熱処理室2と同様に所定の間隔をもって、ランプヒータ5を配置してもよい。図3の場合では、成膜室3に基板7が収納された時点で、出力制御部506は、温度の低い箇所を選択的にランプヒータ5で加熱するように制御することも可能である。
【0034】
出力制御部506の制御に基づき、ランプヒータ5で基板7を再加熱することにより、基板7の面内の温度分布の均一化を図ることが可能になる。
【0035】
(真空処理成膜装置を用いた成膜方法)
図4は、本発明の実施形態にかかる真空処理成膜装置1の動作の流れを説明するフローチャートである。
【0036】
ステップS401において、不図示の搬送機構により基板7をロードロック室8に搬入する。ステップS402において、不図示の搬送機構により基板7を加熱処理室2に搬入する。ステップS403において、出力制御部505により加熱処理室2に配置されているランプヒータ5により基板7を加熱する。コントローラ201の出力制御部505は、基板温度マップ601に基づき、加熱処理室2に配置されているランプヒータ5の個々の出力設定を変更し、加熱処理される基板7の温度分布の均一化を図る。
【0037】
ステップS404において、加熱された基板7を成膜室3に搬送する搬送時に基板温度を、赤外線輻射温度計6により測定する。コントローラ201の基板温度マップ作成部503は、基板7上の温度測定箇所と、設定された基板7のサイズと、演算部501により算出された温度と、を対応づける演算を行い、基板7の基板温度分布を示す基板温度マップを作成する。
【0038】
ステップS405において、温度分布を確認する。加熱温度判定部504は、基板温度マップ601を参照し、基準温度に対して基板7の温度が低い加熱箇所があるか否か、あるいは、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所があるか否かを判定する。また、加熱温度判定部504は、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の高い箇所があるか否かを判定する。基板7の温度分布が基準温度に対して所定の誤差範囲を超える場合、加熱温度判定部504は「NG」と判定し、処理をステップS406に進める。
【0039】
ステップS406では、成膜室3において選択的に基板7の加熱(再加熱)を行う。出力制御部506は、成膜室3内に配置されている各ランプヒータ5の出力調整を行い、基準温度よりも低くなっている箇所、あるいは、他の加熱箇所より相対的に加熱温度の低い箇所の温度を上昇させるようにランプヒータの動作を制御する。
【0040】
一方、ステップS405の判定で、基準温度に対して、所定の誤差範囲内に基板7の温度分布が収まる場合、加熱温度判定部504は「OK」と判定し、処理をステップS410に進める。ステップS410において、成膜室3において、基板7は成膜処理がスタートするまで保温される。ステップS407において、基板7への成膜処理が開始する。
【0041】
ステップS408において、成膜処理が終了した基板7は、成膜室3からアンロードロック室10に搬入され、所定時間、冷却される。冷却された基板は、アンロードロック室10から排出されることにより、基板処理装置の一連の処理が終了する。
【0042】
尚、ランプヒータの光が赤外線輻射温度計に迷光として入る場合があるので、例えば、赤外線輻射温度計の測定波長がランプヒータの輻射する波長とは異なった波長域であることなど、ランプヒータの影響を受けない温度計を用いることが好ましい。
【0043】
(真空処理成膜装置を用いた電子デバイスの生産方法)
先に説明した真空処理成膜装置1は、例えば、フラットパネルディスプレイや薄膜太陽電池用の基板、その他半導体デバイス等の電子デバイスの生産方法に提供することが可能である。
【0044】
本実施形態によれば、真空中で基板全体の温度を正確に測定しその測定結果に基づいて、基板全面で均一な温度分布を与えるための温度分布の管理と、基板の温度制御とが可能になる。
【0045】
基板の正確な温度制御の可能な基板処理装置を提供すると共に、それを成膜装置に応用することにより正確な温度測定に基づく温度分布の管理と、温度制御とができるので、高品質な膜の形成が可能になる。
【0046】
例えば、スパッタリング法により基板に成膜をおこなう場合、基板温度による熱エネルギーの大きさによって基板に到達したスパッタリング原子のエネルギー損失は異なるため、高密度な膜を形成させるためには、基板温度の制御が重要となる。基板に到達したスパッタリング原子のエネルギーが高いほど表面拡散は大きくなり、増加したエネルギのスパッタリング原子の照射により、高密度な膜が得られる。また、基板に達するまでの移動中にスパッタリング原子の損失を抑制するために、適切な温度が維持されるべきである。従って、高密度な膜を得るために、適切な温度に基板を維持することは極めて重要なことである。特に高融点金属材料は、基板温度依存性が大きいため、本実施形態にかかる基板処理装置により、正確な温度測定に基づく温度分布の管理により、成膜前の基板温度を制御することにより、高密度な膜を形成することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の処理室と、第2の処理室と、基板を搬送するための搬送手段と、を有する基板処理装置であって、
前記第1の処理室内で、前記基板を加熱するための複数のヒータを有する加熱手段と、
前記第1の処理室から前記第2の処理室に前記搬送手段を用いて前記基板を搬送する間に、前記加熱手段により加熱された前記基板の温度を測定する温度ラインセンサと、
前記第2の処理室内で、前記基板を再加熱するための複数のヒータを有する再加熱手段と、
前記温度ラインセンサの測定結果に基づき、前記再加熱手段の出力を制御する第1出力制御手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記温度ラインセンサの測定結果に基づき、前記加熱手段の出力を制御する第2出力制御手段を更に備えるこことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
予め設定された前記搬送手段の搬送速度及び前記基板のサイズに基づいて求められる前記基板の温度測定箇所と、前記温度ラインセンサの測定結果に基づく温度と、を対応づけて、前記基板の温度分布を示す基板温度マップを作成する基板温度マップ作成手段と、
予め定められている基準温度と、前記基板温度マップに格納されている各温度との差分が所定の誤差範囲内にあるか否かを判定する加熱温度判定手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1出力制御手段は、前記加熱温度判定手段の判定結果に基づき、前記誤差範囲を超えて温度が低い箇所を再加熱するために、前記再加熱手段のうち対応するヒータを作動させることを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2出力制御手段は、前記加熱温度判定手段の判定結果に基づき、前記誤差範囲を超えて温度が低い箇所または高い箇所に対応する前記加熱手段のヒータの出力を制御することを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記加熱手段の複数のヒータのそれぞれは、前記基板の搬送方向に沿って第1の間隔で配置され、かつ、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って第2の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記温度ラインセンサを構成する測定手段のそれぞれは、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って前記第2の間隔で配置されていることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記再加熱手段の複数のヒータのそれぞれは、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って前記第2の間隔で配置されていることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記再加熱手段の複数のヒータのそれぞれは、前記基板の搬送方向に沿って第1の間隔で配置され、かつ、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って第2の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
第1の処理室と、第2の処理室と、基板を搬送するための搬送手段と、を有する基板処理装置を用いて前記基板に成膜する成膜方法であって、
前記第1の処理室内で、複数のヒータで前記基板を加熱する加熱工程と、
前記第1の処理室から前記第2の処理室に前記搬送手段を用いて前記基板を搬送する間に、加熱された前記基板の温度を温度ラインセンサで測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果に基づき、前記第2の処理室内で、再加熱するための複数のヒータにより前記基板を再加熱する再加熱工程と、
前記第2の処理室内で、前記再加熱工程で再加熱された前記基板に成膜する成膜工程と、
を有することをと特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板処理装置を用いて基板を処理する工程を有することを特徴とする電子デバイスの生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168649(P2010−168649A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283428(P2009−283428)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】