説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】高周波電力の印加に伴って発生するノイズを低減することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、ウエハが搬入される処理室と、この処理室内にガスを供給するガス供給部と、処理室内を排気する排気部と、処理室内に高周波電力を印加する高周波印加部と、高周波印加部から発生するノイズを検出するノイズ検出部と、ノイズ検出部の検出結果に基づいて、前記高周波印加部から発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置として、高周波電力を印加して生じるプラズマ放電を利用するものがある。高周波電力の印加に伴って発生するノイズは、装置内に配設されたケーブル等を伝わって装置全体に伝達し、装置内の信号ラインに影響を及ぼす場合がある。また、近年の基板処理装置で用いられる高周波電力の増大により、発生するノイズが増大している。
これにより、装置内の信号ラインが正常に認識できなくなる事態が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高周波電力の印加に伴って発生するノイズを低減することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の特徴とするところは、基板が搬入される処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、前記処理室内を排気する排気部と、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波印加部と、前記高周波印加部から発生するノイズを検出するノイズ検出部と、前記ノイズ検出部の検出結果に基づいて、前記高周波印加部から発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力部と、を有する基板処理装置にある。
【0005】
本発明の第2の特徴とするところは、処理室内に基板を搬入する搬入工程と、処理室内にガスを供給するガス供給工程と、処理室内を排気する排気工程と、処理室内に高周波電力を印加する高周波印加工程と、前記高周波印加工程において発生するノイズを検出する検出工程と、前記検出工程の検出結果に基づいて、前記高周波印加工程において発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力工程と、を有する半導体装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高周波電力の印加に伴って発生するノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係るMMT装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る逆位相生成装置の機能構成及び動作を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るMMT装置による基板処理工程のフローである。
【図4】第二実施形態に係るICP装置の断面図である。
【図5】第三実施形態に係るECR装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置(Modified Magnetron Typed Plasma;以下、「MMT装置10」と称す)の断面図を示す。
【0009】
第一実施形態における基板処理装置としてのMMT装置10は、電界と磁界とにより高密度プラズマを生成する変形マグネトロン型プラズマ源を用いて、シリコン(Si)等で形成される基板(以下、「ウエハ2」と称す)をプラズマ処理する基板処理装置として構成される。
【0010】
MMT装置10は、ウエハ2が搬入される処理炉12を備え、この処理炉12に供給される処理ガスに、一定の圧力下で高周波電圧を印加してマグネトロン放電を発生させるように構成されている。MMT装置10は、処理ガスを励起させ、例えば、ウエハ2を酸化処理、窒化処理等したり、ウエハ2に薄膜を形成したり、あるいはウエハ2の表面をエッチングしたり、各種プラズマ処理を施すようになっている。
【0011】
処理炉12は処理容器14を備え、この処理容器14は、ドーム型に形成された第一の容器16と、椀型に形成された第二の容器18とにより構成される。第一の容器16は、第二の容器18に被さるようにして配置されている。
第一の容器16は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)あるいは石英(SiO2)等の非金属材料で形成されている。第二の容器18は、例えばアルミニウム(Al)等で形成されている。
処理容器14内に、ウエハ2を処理する処理室20が形成される。
【0012】
第二の容器18の側壁には、ゲートバルブ22が設けられており、このゲートバルブ22は、ウエハ2を処理室20内外に搬入出する際に開閉される。ゲートバルブ22が閉じられると、処理室20が気密に保持されるようになっている。
第二の容器18は、接地部24により接地されている。接地部24と接続する第二の容器18の接続部分は導電塗装されており、導電塗装されていない場合と比較して処理容器14のアース状態が強化されている。
【0013】
処理室20の略中央には、ウエハ2を支持する基板支持部30が設けられている。基板支持部30は、第二の容器18とは電気的に絶縁されている。基板支持部30は、例えば石英(SiO2)等の非金属材料から形成されている。
【0014】
基板支持部30の内部には、ウエハ2を加熱する加熱部としてのヒータ32と、調整電極34とが配設されている。
【0015】
ヒータ32は、基板支持部30に支持されたウエハ2を加熱(例えば25 ℃〜700 ℃程度)するようになっている。ヒータ32は、温度制御部36により加熱する温度を制御されるように構成されている。本実施形態において温度制御部36は、後述するコントローラ4の一部として構成されている。
【0016】
ヒータ32と温度制御部36とは、ヒータ32の温度を検出しその情報を伝達する第一の接続線(温度モニタTCケーブルライン)38と、ヒータ32が所定の温度となるように調整された電力を供給する第二の接続線(ヒータ電力ケーブルライン)40とにより接続されている。
第一の接続線38及び第二の接続線40には、これらを伝わるノイズを低減する逆位相生成装置42が設けられている。そのようなノイズとしては、例えば、後述する高周波電源62から発生する高周波ノイズが挙げられる。
【0017】
調整電極34は、インピーダンスを調整する調整機構44を介して接地されている。
調整機構44は、コイルや可変コンデンサ等から構成されており、コイルのインダクタンスや抵抗、可変コンデンサの容量値等を調整することにより、ウエハ2に印加する電圧を制御するように構成されている。
調整電極34と調整機構44との間には、電圧を測定する電圧測定部46がケーブル等の測定接続線48を介して設置されている。
【0018】
基板支持部30には、第二の容器18の底面に設けられたピン50に対向するように貫通孔52が形成されている。ピン50及び貫通孔52はそれぞれ少なくとも、三か所に配置されている。貫通孔52は、ウエハ2と基板支持部30との間の気体を逃がす流路としても機能する。
基板支持部30の下方には、この基板支持部30を昇降・回転させる昇降回転機構54が設けられている。
【0019】
昇降回転機構54により基板支持部30が下降されると、ピン50は基板支持部30と接触せずに貫通孔52を通過し、ウエハ2を保持するようになっている。
昇降回転機構54により基板支持部30が上昇されると、ピン50に支持されたウエハ2は基板支持部30の上面に載置される。
【0020】
昇降回転機構54により基板支持部30が回転されると、これに従って基板支持部30に載置されたウエハ2が回転するようになっている。
ウエハ2の処理中において、昇降回転機構54により基板支持部30を介してウエハ2を回転させることで、回転させない場合と比較してウエハ2面内における処理の均一性を向上することができる。
【0021】
第一の容器16の外周には、処理室20を囲うように例えば筒状に形成された電極60が配置されている。電極60は、高周波電力を印加する高周波電源62とケーブル等の電源接続線64により接続されている。電源接続線64には、インピーダンスを整合する整合器66が設けられている。
プラズマ生成に際して、電極60が第一の電極、調整電極34が第二の電極として機能する。
【0022】
電極60の外側には、第一の磁石68と第二の磁石70とが上下に配置されている。第一の磁石68及び第二の磁石70はそれぞれ、例えば筒状に形成された永久磁石により構成されている。
第一の磁石68と第二の磁石70とは、処理室20に対向する側とその反対側とに磁極を有するように配置されており、これら第一の磁石68と第二の磁石70とは、磁極の向きが逆向きとなるようになっている。
すなわち、第一の磁石68と第二の磁石70との処理室20に対向する側の磁極は互いに異なっており、これにより、電極60の内側表面に沿って磁力線が形成される。
【0023】
第一の磁石68及び第二の磁石70により磁界を発生させ、処理室20内に処理ガスを供給した後、電極60に高周波電力を供給して電界を形成することで、処理室20内のプラズマ生成領域にマグネトロン放電プラズマが生成される。
放出された電子を電界と磁界が周回運動させることによって、プラズマの電離生成率が向上し、長寿命かつ高密度のプラズマが生成される。
【0024】
電極60、第一の磁石68、及び第二の磁石70の周囲には、これらによって形成される電界、磁界及び電磁波を遮断する遮断板72が設けられており、この遮断板72は、形成された電界、磁界及び電磁波が外部の装置や環境に影響を与えるのを防止する。
【0025】
本実施形態においては、主に、電極60、高周波電源62、整合器66、第一の磁石68、及び第二の磁石70によりプラズマ生成部が構成されている。
【0026】
第一の容器16の上部には光透過部74が設けられ、この光透過部74の上方にはランプ加熱装置76が設けられている。
ランプ加熱装置76は、基板支持部30と対向するようにして設けられており、この基板支持部30に載置されたウエハ2を上方から加熱するようになっている。ランプ加熱装置76を用いた場合、これを用いない場合と比較して短時間でウエハ2が加熱される。ランプ加熱装置76とヒータ32とを併用する場合、ウエハ2表面の温度をより高温(例えば900 ℃程度)とすることができる。
【0027】
また、第一の容器16の上部には、シャワーヘッド部80が設けられている。
シャワーヘッド部80は、キャップ状の蓋体82と、ガス導入口84と、バッファ室86と、開口88と、遮蔽プレート90と、ガス吹出口92とを備え、処理ガス等の各種ガスを処理室20内に供給するように構成されている。
バッファ室86は、ガス導入口84から導入される各種ガスを分散する分散空間として機能する。
【0028】
ガス導入口84には、ガス供給管102が接続されている。
ガス供給管102は、ガスケット104、バルブ106を介してその上流側で第一の供給管102a及び第二の供給管102bに分岐している。
【0029】
第一の供給管102aには上流側から順に、第一のガス(例えば水素(H2)ガス)の供給源である第一のガス供給源110a、流量を制御するマスフローコントローラ(MFC)112a、開閉弁としてのバルブ114aが設けられている。
第二の供給管102bには上流側から順に、第二のガス(例えば窒素(N2)ガス)の供給源である第二の供給源110b、流量を制御するMFC112b、開閉弁としてのバルブ114bが設けられている。
【0030】
バルブ106、バルブ114a、バルブ114bこれらを開くことで、MFC112a、MFC112bそれぞれにより流量を調整された第一のガス、第二のガスこれらが、ガス供給管102を通りシャワーヘッド部80を介して処理室20内に供給されるようになっている。
【0031】
本実施形態においては、主にバルブ106、バルブ114a、バルブ114b、シャワーヘッド部80、第一のガス供給管102a、第二のガス供給管102b、第一のガス供給源110a、第二のガス供給源110b、MFC112a、及びMFC112bにより、ガス供給部が構成されている。
【0032】
第二の容器18の側壁には、処理室20内のガスを排気するガス排気口120が設けられており、このガス排気口120には、ガス排気管122が接続されている。
ガス排気管122には上流側から順に、圧力調整部としてのAPC(Auto Pressure Controller)124、開閉弁としてのバルブ126、真空排気する真空排気装置128が設けられている。
【0033】
本実施形態においては、主に、ガス排気口120、ガス排気管122、APC124、バルブ126、及び真空排気装置128により、ガス排気部が構成されている。
【0034】
MMT装置10には、制御部としてのコントローラ4が設けられている。
コントローラ4は、信号線Aを通じてゲートバルブ22と、信号線Bを通じて調整機構44と、信号線Cを通じて電圧測定部46と、信号線Dを通じて昇降回転機構54と、信号線Eを通じて高周波電源62及び整合器66と、信号線Fを通じてランプ加熱装置76と、信号線Gを通じてバルブ106、バルブ114a、バルブ114b、MFC112a、及びMFC112bと、信号線Hを通じてAPC124、バルブ126、及び真空排気装置128と、それぞれ電気的に接続されており、コントローラ4はこれらの構成部を制御するようになっている。
【0035】
次に、逆位相生成装置42の詳細について説明する。
【0036】
まず、逆位相生成装置42の動作の概略について説明する。
高周波電源62から発生する高周波ノイズは、この高周波電源62から空間を介して、あるいは、電源接続線64及び測定接続線48から空間を介して、第一の接続線38及び第二の接続線40に伝達する。このように伝達された高周波ノイズは、さらに第一の接続線38及び第二の接続線40を伝わり、空間を介して信号線A〜H等、他の構成部を制御する信号線に伝達する。
【0037】
このように、高周波ノイズは、プラズマ生成に用いられる電極の一つの近傍に配置されたヒータ32に接続された第一の接続線38及び第二の接続線40を伝わって、装置全体に伝達し、装置内の信号線に影響を与える場合がある。これに対し、逆位相生成装置42は、第一の接続線38及び第二の接続線40を伝わる高周波ノイズを低減するように機能する。
ここで、第一の接続線38及び第二の接続線40を伝わる高周波ノイズの主成分の周波数は、高周波電源62等から発生する高周波ノイズと同様の周波数である。
【0038】
また、高周波ノイズは、空間を介して接地部24へ伝達する。このため、高周波ノイズNを接地部24へ伝達し易くすることで、この高周波ノイズの伝達が分散し、第一の接続線38及び第二の接続線40への伝達が抑制される。
本実施形態においては、導電塗装により接地部24のアース状態が強化されており、本構成を有さない場合と比較して、高周波ノイズの伝達が分散され易くなっている。
【0039】
次いで、逆位相生成装置42の機能構成及び動作について説明する。
図2は、逆位相生成装置42の機能構成及び動作を説明する説明図を示す。なお、第一の接続線38及び第二の接続線40に対する逆位相生成装置42の動作は同様となっているため、以下、第一の接続線38に対する動作を例に説明する。
【0040】
逆位相生成装置42は、周波数選別部150と、逆位相生成部152と、電圧検出部154と、電圧調整部156とを備える。
【0041】
周波数選別部150は、第一の接続線38を伝わる高周波ノイズNを検出し、この高周波ノイズNから、高周波電源62が印加する高周波電力の周波数(例えば、13 MHz)を有する高周波Wを選別する。
逆位相生成部152は、周波数選別部150が選別した高周波Wを逆位相に変換し、高周波Wと逆位相の高周波Wを生成する。
電圧検出部154は、周波数選別部150が選別した高周波Wの電圧値を検出する。
電圧調整部156は、電圧検出部154の検出した電圧値に基づいて、逆位相生成部152の生成した高周波Wを高周波Wと同一の電圧となるように調整して高周波Wを生成する。そして、電圧を調整した高周波Wを第一の接続線38に出力する。
【0042】
電圧調整部156から出力される高周波Wは、第一の接続線38を伝わる高周波ノイズNと相互に打ち消し合う。これにより、高周波ノイズNよりもノイズの強度が弱められた高周波ノイズNが生成される。
【0043】
このようにして、逆位相生成装置42は、第一の接続線38を伝わる高周波ノイズNのノイズの強度を低減する。高周波ノイズNは、高周波ノイズNと比較して装置内の信号線に与える影響が小さい。
【0044】
次に、基板処理工程について説明する。
図3は、MMT装置10による基板処理工程のフローを示す。
【0045】
本実施形態に係る基板処理工程は、例えば半導体製造装置の製造工程の一工程として行われる。以下、第一のガスとしてH2ガス、第二のガスとしてN2ガスを用い、ウエハ2を窒化処理する場合を例に説明する。
MMT装置10を構成する各部は、コントローラ4によって制御される。
【0046】
ステップ10(S10)において、基板搬入工程を行う。
まず、昇降回転機構54により基板支持部30を下降させ、貫通孔52にピン50を貫通させる。これにより、ピン50は、基板支持部30上面から所定の高さ突出した状態となる。
続いて、ゲートバルブ22を開き、搬送機構(非図示)により処理室20内にウエハ2を搬入し、ピン50に支持されるように載置する。搬送機構を処理室20から退避した後、ゲートバルブ22を閉じ処理室20内を密閉する。
【0047】
この際、バルブ126を開き、真空排気装置128により処理室20内を排気しつつ、バルブ106、バルブ114aを開き、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室20内に供給するようにしてもよい。このように処理室20内をN2ガス雰囲気で置換することで、この処理室20内の酸素濃度が低減される。
【0048】
ステップ12(S12)において、加熱工程を行う。
ヒータ32によって予め加熱された基板支持部30とランプ加熱装置76とにより、ウエハ2を所定の温度(例えば25 ℃〜900 ℃程度)となるように加熱する。この際、ウエハ2を基板支持部30から所定の距離離した状態で保持し、ヒータ32からの熱輻射によりウエハ2を予備加熱する。
なお、処理室20内にN2等の不活性ガスを昇圧ガスとして供給し、この処理室20内の圧力を高めることで、ヒータ32からウエハ2への熱の伝導性が向上し、ウエハ2の昇温速度が速くなる。
【0049】
ステップ14(S14)において、載置工程を行う。
ウエハ2を所定温度まで昇温させた後、昇降回転機構54により基板支持部30を上昇させる。これにより、ウエハ2は基板支持部30の上面に載置される。ウエハ2が基板支持部30に載置された後、ウエハ2を所定の温度(例えば25 ℃〜900 ℃程度)となるように加熱する。
基板支持部30を所定の位置まで上昇させた後、基板支持部30を回転させ、ウエハ2を回転させた状態としてもよい。後述するウエハ搬出工程(S22)まで、ウエハ2を継続して回転させることで、ウエハ2面内における処理の均一性が向上する。
【0050】
ステップ16(S16)において、反応ガス供給工程を行う。
バルブ106、バルブ114a、バルブ114bを開き、第一の供給源110aからH2ガスを、第二の供給源110bからN2ガスを、反応ガスとして処理室20内に供給する。この際、H2ガス、N2ガスそれぞれの流量は、MFC112a、MFC112bによって所定の値となるように調整される。
【0051】
H2ガスの流量は、例えば0 sccmより多く600 sccmよりも少ない範囲とする。また、N2ガスの流量は、例えば0 sccmより多く600 sccmよりも少ない範囲とする。
処理室20内にH2ガス、N2ガスの供給に際し、真空排気装置128及びAPC124により、処理室20内の圧力を調整する。処理室20内の圧力は、例えば0.1〜300 Paの範囲とする。
【0052】
ステップ18(S18)において、プラズマ生成工程を行う。
H2ガス及びN2ガスを供給後、高周波電源62により整合器66を介して電極60に高周波電力を印加する。高周波電源62により印加する高周波電力は、例えば150 W〜200 Wの範囲とする。この際、調整機構44は、予め定められた値となるように設定する。
これにより、処理室20内でプラズマ放電が発生しN2ガスが励起する。N2ガスは励起されると、窒素(N)を含む活性種を生成し、この活性種がウエハ2を窒化処理する。ウエハ2をN2ガスに晒す時間は、例えば10〜300秒間の範囲とする。
所定の所持離間の経過後、高周波電源62からの高周波電力の印加を停止する。これにより、処理室20内のプラズマ放電が停止される。
【0053】
この際、高周波電源62から発生して第一の接続線38及び第二の接続線40に伝達する高周波ノイズNは、逆位相生成装置42によりそのノイズの強度を低減された高周波ノイズNに変換される。
【0054】
ステップ20(S20)において、排気工程を行う。
プラズマ放電の停止後、バルブ106、バルブ114a、バルブ114bを閉じ、H2ガス及びN2ガスの供給を停止し、処理室20内を排気する。
この際、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室20内に供給し、処理室20内に残留する反応ガスや反応生成物の排出を促すようにしてもよい。
【0055】
ステップ22(S22)において、ウエハ排出工程を行う。
処理室20内の圧力が大気圧に復帰した後、昇降回転機構54により基板支持部30を下降させ、ピン50にウエハ2が支持される状態とする。
続いて、ゲートバルブ22を開き、搬送機構により処理室20内にあるウエハ2を処理室20外に搬出する。
このようにして、本実施形態に係る基板処理工程が終了する。
【0056】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
第二実施形態においては、基板処理装置としてICP方式プラズマ装置(Inductive Coupled Plasma;以下、「ICP装置200」と称す)が用いられている。ICP装置200は、主にプラズマ生成部の構成が第一実施形態のMMT装置10と異なっている。
図4は、ICP装置200の断面図を示す。
【0057】
ICP装置200において、第一の容器16の上方には第一の誘電コイル202aが設けられており、第一の容器16の側壁の外側には第二の誘電コイル202bが設けられている。
【0058】
第一の誘電コイル202aは、高周波電力を印加する高周波電源204aとケーブル等の電源接続線206aにより接続されている。電源接続線206aには、インピーダンスを整合する整合器208aが設けられている。
第二の誘電コイル202bは、高周波電力を印加する高周波電源204bとケーブル等の電源接続線206bにより接続されている。電源接続線206bには、インピーダンスを整合する整合器208bが設けられている。
【0059】
ICP装置200においては、第一の誘導コイル202a及び第二の誘導コイル202bに高周波電力を印加すると、電磁誘導によりウエハ2の表面に対して略水平方向の電界が発生するようになっている。処理室20内に供給された各種ガスは、このようにして発生した電界によって生じるプラズマ放電により励起され、反応種を生成する。
【0060】
第二実施形態においては、主に、第一の誘導コイル202a、第二の誘導コイル202b、高周波電源204a、高周波電源204b、整合器208a、及び整合器208bによりプラズマ生成部が構成されている。
【0061】
逆位相生成装置42は、高周波電源204a、高周波電源204b等から発生する高周波ノイズの強度を低減するように機能する。
【0062】
ICP装置200においてコントローラ4は、信号線Eを通じて高周波電源204a、高周波電源204b、整合器208a、及び整合器208bそれぞれと電気的に接続されており、コントローラ4はこれらの構成部を制御するようになっている。
【0063】
第二実施形態においては、第一の誘導コイル202a及び第二の誘導コイル202bに印加する高周波電力と、調整機構44のインピーダンスとを制御することによって、処理室20内に発生する電界の垂直方向成分及び水平方向成分の強度が調整されるようになっている。
第二の誘導コイル202bが設けられた構成の場合、本構成を有さない場合と比較して、水平方向成分の電界の調整が容易となる。
第二の誘電コイル202bに替えて、円筒形状の電極や、平行平板型の電極等を用いるようにしてもよい。
【0064】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。
第三実施形態においては、基板処理装置としてECR方式プラズマ装置(Electron Cyclotron Resonance;以下、「ECR装置300」と称す)が用いられている。ECR装置300は、主にプラズマ生成部の構成が第一実施形態のMMT装置10と異なっている。
図5は、ECR装置300の断面図を示す。
【0065】
ECR装置300において、第一の容器16の上方には永久磁石により構成される磁石302が設けられており、第一の容器16の側壁の外側には誘導コイル304が設けられている。
また、第一の容器16の上部には、マイクロ波導入管306が設けられており、このマイクロ波導入管306から処理室20内にマイクロ波306aが導入されるようになっている。
【0066】
誘導コイル304は、高周波電力を印加する高周波電源314とケーブル等の電源接続線316により接続されている。電源接続線316には、インピーダンスを整合する整合器318が設けられている。
【0067】
ECR装置300においては、誘導コイル304に高周波電力を印加すると、電磁誘導によりウエハ2の表面に対して略水平方向の電界が発生するようになっている。
また、マイクロ波導入管306からマイクロ波306aを導入すると、マイクロ波306aの進行方向に対して略垂直方向(すなわちウエハ2表面に対して略水平方向)の電界が発生するようになっている。
処理室20内に供給された各種ガスは、このようにして発生した電界によって生じるプラズマ放電により励起され、反応種を生成する。
【0068】
第三実施形態においては、主に、磁石302、誘導コイル304、マイクロ波導入管306、高周波電源314、整合器318によりプラズマ生成部が構成されている。
【0069】
逆位相生成装置42は、高周波電源314等から発生する高周波ノイズの強度を低減するように機能する。
【0070】
ICP装置200においてコントローラ4は、信号線Eを通じて高周波電源314及び整合器318それぞれと電気的に接続されており、コントローラ4はこれらの構成部を制御するようになっている。
【0071】
第三実施形態においては、誘導コイル304に印加する高周波電力と、導入するマイクロ波306aの強度と、調整機構44のインピーダンスとを制御することによって、処理室20内に発生する電界の垂直方向成分及び水平方向成分の強度が調整されるようになっている。
誘導コイル304が設けられた構成の場合、本構成を有さない場合と比較して、水平方向成分の電界の調整が容易となる。
誘導コイル304に替えて、円筒形状の電極や、平行平板型の電極等を用いるようにしてもよい。
【0072】
なお、マイクロ波導入管306を第一の容器16の側壁に設け、マイクロ波306をウエハ2に対して略水平方向から導入するようにしてもよい。このような構成の場合、本構成を有さない場合と比較して、電界のウエハ2に対して垂直方向成分の強度の調整が容易となる。
【0073】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0074】
本発明の一態様によれば、基板が搬入される処理室と、前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、前記処理室内を排気する排気部と、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波印加部と、前記高周波印加部から発生するノイズを検出するノイズ検出部と、前記ノイズ検出部の検出結果に基づいて、前記高周波印加部から発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力部と、を有する基板処理装置が提供される。
【0075】
本発明の他の態様によれば、処理室内に基板を搬入する搬入工程と、処理室内にガスを供給するガス供給工程と、処理室内を排気する排気工程と、処理室内に高周波電力を印加する高周波印加工程と、前記高周波印加工程において発生するノイズを検出する検出工程と、前記検出工程の検出結果に基づいて、前記高周波印加工程において発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0076】
本発明の他の態様によれば、プラズマ放電により装置ケーブルラインを伝わる高周波ノイズに対して同周波数で同電圧の値で逆位相の高周波を印加することにより高周波ノイズを打ち消す方法が提供される。
【0077】
好ましくは、プラズマ放電している処理室内部から出ているヒータ電源ケーブルライン及び温度測定用TC信号ケーブルラインの両ラインを伝わる高周波用ノイズに対して同周波数で同電圧値で逆位相の高周波を印加することにより高周波ノイズを打ち消す。
温度測定用TC信号ケーブルラインは、微小な信号を扱うケーブルラインである。
【符号の説明】
【0078】
2 ウエハ
4 コントローラ
10 MMT装置
12 処理炉
14 処理容器
20 処理室
24 接地部
30 基板支持部
32 ヒータ
34 調整電極
36 温度制御部
38 第一の接続線
40 第二の接続線
42 逆位相生成装置
44 調整機構
46 電圧測定部
48 測定接続線
54 昇降回転機構
60 電極
62 高周波電源
64 電源接続線
66 整合器
80 シャワーヘッド部
102 ガス供給管
122 ガス排気管
124 APC
128 真空排気装置
150 周波数選別部
152 逆位相生成部
154 電圧検出部
156 電圧調整部
200 ICP装置
300 ECR装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が搬入される処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内を排気する排気部と、
前記処理室内に高周波電力を印加する高周波印加部と、
前記高周波印加部から発生するノイズを検出するノイズ検出部と、
前記ノイズ検出部の検出結果に基づいて、前記高周波印加部から発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
処理室内に基板を搬入する搬入工程と、
処理室内にガスを供給するガス供給工程と、
処理室内を排気する排気工程と、
処理室内に高周波電力を印加する高周波印加工程と、
前記高周波印加工程において発生するノイズを検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて、前記高周波印加工程において発生するノイズの逆位相の高周波を出力する逆位相出力工程と、
を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42061(P2013−42061A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179424(P2011−179424)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】