説明

基板処理装置

【課題】回収溝に回収される処理液への他の種類の処理液の混入を防止することができる基板処理装置、高さ方向における小型化を図ることができる基板処理装置、大幅なコストアップを招くことなく、回収される処理液の種類の増加に対応できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】内構成部材19は、スピンチャック1の周囲を取り囲むように設けられ、第1案内部25、廃棄溝26、内側回収溝27および外側回収溝52を一体的に有している。中構成部材20は、内構成部材19の外側においてスピンチャック1の周囲を取り囲むように設けられ、第2案内部48を有している。外構成部材21は、中構成部材20の第2案内部48の外側においてスピンチャック1の周囲を取り囲むように設けられている。そして、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21は、互いに独立して昇降可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理するための基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板等の基板に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この種の基板処理装置の中には、処理液の消費量の低減を図るために、基板の処理に用いた後の処理液を回収して、その回収した処理液を以降の処理に再利用するように構成されたものがある。
【0003】
処理液を再利用可能な構成の基板処理装置は、たとえば、基板をほぼ水平な姿勢で挟持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックを収容した有底円筒形状のカップと、カップに対して昇降可能に設けられたスプラッシュガードとを備えている。
カップには、スピンチャックの周囲を取り囲むように、円環状の廃棄溝が形成されており、さらに、この廃棄溝を取り囲むように、同心円環状の回収溝が3重に形成されている。廃棄溝は、処理液を廃棄するための廃棄ドレンに接続されており、各回収溝は、処理液を回収タンクに導くための回収ドレンに接続されている。
【0004】
スプラッシュガードは、4つのガードを上下および内外に重ね合わせた構成を有している。各ガードは、基板の回転軸線に対してほぼ回転対称な形状に形成され、上端部が上方ほど基板の回転軸線に近づくように傾斜している。そして、各ガードの上端縁は、基板の回転軸線を中心軸線とする同一円筒面上に、各上端縁間に所定の間隔を空けて配置されている。また、各ガードは、回収溝または廃棄溝に対応づけられており、各ガードの下端部は、それぞれ対応する回収溝または廃棄溝に入り込んでいる。すなわち、最上の第1のガードは、最外周の第1の回収溝に対応づけられて設けられ、その下端部が第1の回収溝に入り込んでいる。第1のガードの直下の第2のガードは、第1の回収溝の内側に隣接する第2の回収溝に対応づけられ、その下端部が第2の回収溝に入り込んでいる。第2のガードの直下の第3のガードは、最内周の第3の回収溝(第2の回収溝の内側に隣接する回収溝)に対応づけられ、その下端部が第3の回収溝に入り込んでいる。最下の第4のガードは、廃棄溝に対応づけられており、その下端部が廃棄溝に入り込んでいる。
【0005】
第1のガードの上端縁と第2のガードの上端縁との間は、基板から飛散する処理液を第1の回収溝に導くための第1の回収口とされている。また、第2のガードの上端縁と第3のガードの上端縁との間は、基板から飛散する処理液を第2の回収溝に導くための第2の回収口とされ、第3のガードの上端縁と第4のガードの上端縁との間は、基板から飛散する処理液を第3の回収溝に導くための第3の回収口とされている。さらに、第4のガードとカップの底面との間は、基板から飛散する処理液を廃棄溝に導くための廃棄口とされている。
【0006】
また、スプラッシュガードには、たとえば、ボールねじ機構などを含む昇降駆動機構が結合されており、この昇降駆動機構によって、4つのガードを一体的に昇降させることができるようになっている。
このような構成の基板処理装置では、基板の表面に複数種の処理液を順次に供給して、その基板の表面に対して複数種の処理液による処理を順次に施すことができ、また、処理に用いた複数種の処理液を分別して回収することができる。
【0007】
すなわち、スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に第1の処理液を供給することにより、基板の表面に第1の処理液による処理を施すことができる。基板の表面に供給された第1の処理液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の周縁から側方へ飛散する。したがって、このとき、スプラッシュガードを昇降させて、第1の回収口を基板の端面に対向させておけば、基板の周縁から飛散する第1の処理液を、第1の回収口へ飛入させることができ、さらに第1の回収溝から回収ドレンを通して回収タンクに回収することができる。また同様に、基板の表面に第2の処理液を供給するときに、第2の回収口を基板の端面に対向させておけば、基板から飛散する第2の処理液を回収することができ、基板の表面に第3の処理液を供給するときに、第3の回収口を基板の端面に対向させておけば、基板から飛散する第3の処理液を回収することができる。
【0008】
また、スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に純水(処理液)を供給することにより、基板の表面を純水で洗い流すリンス処理を行うことができる。このとき、廃棄口を基板の端面に対向させておけば、その基板の表面を洗い流した純水を、廃棄溝に集めることができ、廃棄溝から廃棄ドレンを通して廃棄することができる。
【特許文献1】特開2004−153078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、各回収口が常に開放されているため、所定の回収口または廃棄口を基板の端面に対向させていても、基板から飛散する処理液が所定の回収口または廃棄口以外の回収口(とくに、所定の回収口または廃棄口に隣接する回収口)に飛入し、各回収溝に回収される処理液に他の種類の処理液が混入するおそれがある。たとえば、第1の処理液による処理時に、第1の回収口を基板の端面に対向させていても、第1の処理液の飛沫の一部が第2の回収口に飛入し、第2の回収溝に回収される第2の処理液に第1の処理液が混入するおそれがある。
【0010】
さらに、最下段の廃棄口を基板の端面に対向させるときには、スプラッシュガードを大きく上昇させなければならないため、カップの上方に大きなスペースを確保する必要があり、装置の高さ方向のサイズが大きいという問題もある。
また、回収される処理液の種類を増やす場合には、既存のスプラッシュガードをより多くのガードからなるスプラッシュガードに交換しなければならないため、大幅なコストアップを余儀なくされる。しかも、スプラッシュガードの高さ方向の寸法が大きくなり、これに伴って、スプラッシュガードの昇降量がさらに大きくなるため、高さ方向における装置の大型化も招いてしまう。
【0011】
そこで、この発明の目的は、回収溝に回収される処理液への他の種類の処理液(回収溝に回収されるべきでない処理液)の混入を防止することができる基板処理装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、高さ方向における小型化を図ることができる基板処理装置を提供することである。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、大幅なコストアップを招くことなく、回収される処理液の種類の増加に対応することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)をほぼ水平に保持して、その基板をほぼ鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板保持手段(1)と、前記基板保持手段に保持された基板に対して、処理液を供給するための処理液供給手段(3,8)と、前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第1案内部(25)と、前記第1案内部の外側において前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、その上端部が前記第1案内部の上端部と上下方向に重なるように設けられ、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第2案内部(48)と、前記第2案内部の外側において前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、その上端部が前記第2案内部の上端部と上下方向に重なるように設けられ、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第3案内部(21)と、前記第1案内部の外側に前記第1案内部と一体的に設けられ、前記第2案内部に案内される処理液を回収するための第1回収溝(27)と、この第1回収溝の外側に前記第1案内部と一体的に設けられ、前記第3案内部に案内される処理液を回収するための第2回収溝(52)と、前記第1、第2および第3案内部をそれぞれ独立して昇降させるための駆動機構(66,67,68)とを含むことを特徴とする基板処理装置である。
【0014】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、第1案内部、第2案内部および第3案内部が、基板保持手段の周囲を3重に取り囲んでいる。そして、第2案内部は、第1案内部の外側において、その上端部が第1案内部の上端部と上下方向に重なるように配置されている。また、第3案内部は、第2案内部の外側において、その上端部が第2案内部の上端部と上下方向に重なるように配置されている。さらに、第1案内部の外側には、第2案内部に案内される処理液を回収するための第1回収溝と、第3案内部に案内される処理液を回収するための第2回収溝とが、第1案内部と一体的に設けられている。
【0015】
第1、第2および第3案内部は、駆動機構によって、それぞれ独立に昇降させることができる。これにより、まず、第1〜第3案内部の各上端部を基板よりも下方に位置させて、第1〜第3案内部いずれによっても基板からの処理液が受けられない状態とすることができる。また、第1〜第3案内部の上端部を基板よりも上方に位置させ、第1案内部によって処理液を受ける状態とすることができる。さらにまた、第1案内部の上端を基板よりも下方に位置させるとともに、第2および第3案内部の各上端部を基板よりも上方に位置させることにより、第2案内部によって処理液を受ける状態(第1回収状態)とすることができる。さらに、第1および第2案内部の各上端部を基板よりも下方に位置させるとともに、第3案内部の上端部を基板よりも上方に位置させ、この第3案内部によって基板からの処理液を受ける状態(第2回収状態)とすることができる。
【0016】
前記第1回収状態では、第1案内部の上端部と第2案内部の上端部との間に、基板の端面に対向する開口が形成される。そのため、基板から飛散する処理液を、第1案内部の上端部と第2案内部の上端部との間に飛入させることができ、その飛入した処理液を第2案内部の案内によって第1回収溝に回収することができる。また、その状態から、第2および第3案内部を動かさずに、第1案内部を上昇させて、第1〜第3案内部の各上端部を基板よりも上方に位置させれば、第1案内部を基板の端面に対向させることができ、基板から飛散する処理液を第1案内部によって案内して流下させることができる。
【0017】
また、前記第2回収状態では、第2案内部の上端部と第3案内部の上端部との間に、基板の端面に対向する開口が形成される。そのため、基板から飛散する処理液を、第2案内部の上端部と第3案内部の上端部との間に飛入させることができ、その飛入した処理液を第3案内部の案内によって第2回収溝に回収することができる。また、その状態から、第第3案内部を動かさずに、第1および第2案内部を(好ましくは同期状態で)上昇させて、第1〜第3案内部の各上端部を基板よりも上方に位置させれば、第1案内部を基板の端面に対向させることができ、基板から飛散する処理液を第1案内部によって案内して流下させることができる。
【0018】
前記第1回収状態と第2回収状態との切り換えは、第1および第3案内部を動かさず、第2案内部を上昇または下降させることによって行える。
第1案内部によって処理液が案内されるときは、この第1案内部をその上端部が第2案内部の上端部に対して微小な隙間を形成して近接する位置まで上昇させ、また、第2および第3案内部の各上端部同士を微小な間隔を形成して近接させれば、基板から飛散する処理液が第1および第2案内部の各上端部間や、第2および第3案内部の各上端部間に飛入することを防止しながら、その基板から飛散する処理液を第1案内部の案内によって流下させることができる。同様に、第2案内部によって処理液が案内されるときは、第2および第3案内部の各上端部同士を微小な間隔を形成して近接させれば、基板から飛散する処理液が第2および第3案内部の各上端部間に飛入することを防止しながら、その飛散する処理液を第2案内部によって案内して回収できる。さらに、第3案内部によって処理液が案内されるときは、第1および第2案内部の各上端部同士を微小な間隔を形成して近接させれば、基板から飛散する処理液が第1および第2案内部に飛入することを防止しながら、その飛散する処理液を第3案内部によって案内して回収できる。さらにまた、いずれの案内部によっても基板からの処理液を受けないときには、第1〜第3案内部の上端部を基板よりも下方に位置させるとともに、第1および第2案内部の各上端部同士を微小な間隔を形成して近接させ、第2および第3案内部の各上端部同士を微小な間隔を形成して近接させれば、とくに、第1または第2回収溝に不所望な処理液が入り込むことを抑制または防止できる。これにより、各回収溝に回収される処理液の純度を向上させることができる。しかも、上述のようにすれば、第1、第2および第3案内部の間での接触を回避できるから、それらの接触によるパーティクルの発生の問題を招くこともない。
【0019】
また、第1案内部によって処理液が案内されるときに、第2および第3案内部をとくに上昇させる必要はなく、第2および第3案内部の位置は、これらの第2、第3案内部によって処理液が案内されるときの位置と同じでよい。同様に、第2案内部によって処理液が案内されるときに、第3案内部をとくに上昇させる必要はなく、この第3案内部の位置は、この第3案内部によって処理液が案内されるときの位置と同じでよい。そのため、回収溝の上方に大きなスペースを必要としないので、その分、装置の高さ方向の小型化を図ることができる。
【0020】
また、回収される処理液の種類を増やす場合には、第3案内部のさらに外側に、第3案内部を取り囲むように新たな案内部を追加するとともに、その新たな案内部に案内される処理液を回収するための回収溝を、第1案内部と一体的に設けて前記第2回収溝の外側に配置すればよく、第2および第3案内部は既存のものを利用することができる。そのため、大幅なコストアップを回避することができる。すなわち、大幅なコストアップを招くことなく、回収される処理液の種類の増加に対応することができる。さらに、その新たな案内部よりも内側の案内部によって処理液が案内されるときに、その新たな案内部をとくに上昇させる必要がないので、高さ方向における装置の大型化も回避することができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、前記第2案内部に一体的に設けられ、前記第2案内部の上端部と前記第3案内部の上端部との間に導かれた処理液が前記第1回収溝へと入り込むことを防ぎ、その処理液を前記第2回収溝へと案内する処理液分離壁(50)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
この構成により、第1および第2案内部の各上端部間を近接させるとともに、第2および第3案内部間に開口を形成し、第3案内部で基板からの処理液を受けて第2回収溝に導くときに、その処理液が第1回収溝へと混入することを抑制または防止できる。
【0022】
請求項3記載の発明は、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液が前記第1案内部によって案内されるときに、前記第1案内部と前記第2案内部との間、および前記第2案内部と前記第3案内部との間に処理液が進入することをそれぞれ防止するための第1進入防止部(48c)および第2進入防止部(21c)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0023】
この構成によれば、第1および第2進入防止部が備えられているので、基板から飛散する処理液が第1および第2案内部間または第2および第3案内部間に進入することを確実に防止しながら、その基板から飛散する処理液を第1案内部の案内によって流下させることができる。そのため、回収溝に回収されるべき処理液と異なる種類の処理液が回収溝に混入することを確実に防止でき、回収溝に回収される処理液の純度をさらに向上させることができる。また、第1および第2案内部の上端部間に開口を形成して基板からの処理液を第2案内部で受けるときに、前記第2進入防止部は第2および第3案内部の上端部間を塞ぎ、第2回収溝への処理液の混入を防ぐ。さらに、第2および第3案内部の上端部間に開口を形成して基板からの処理液を第2案内部で受けるときに、前記第1進入防止部は前記第1および第2案内部の上端部間を塞ぎ、第1回収溝への処理液の混入を防ぐ。
【0024】
請求項4記載の発明は、前記第1進入防止部は前記第2案内部の上端部を下方に折り返して形成されており、前記第2進入防止部は前記第3案内部の上端部を下方に折り返して形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置である。
この構成によれば、第1進入防止部が第2案内部の上端部から下方に向けて延びるので、基板から飛散する処理液が、その第1進入防止部を回り込んで、第1案内部と第2案内部との間に進入することを防止することができる。同様に、第2進入防止部が第3案内部の上端部から下方に向けて延びるので、基板から飛散する処理液が、その第2進入防止部を回り込んで、第2案内部と第3案内部との間に進入することを防止することができる。そのため、第2または第3案内部によって案内される処理液を回収する場合に、その処理液に他の種類の処理液が混入するのを確実に防止することができる。その結果、回収される処理液の純度をさらに向上させることができる。そのうえ、第1および第2進入防止部を第2および第3案内部にそれぞれ一体的に設けることができ、装置の構成の簡素化を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す断面図である。この基板処理装置は、基板の一例であるウエハWに処理液としての第1薬液、第2薬液および純水(脱イオン化された水)を所定の順序で供給して、そのウエハWに洗浄処理を施すための装置であり、ウエハWをほぼ水平に保持して、そのウエハWをほぼ鉛直な回転軸線Cまわりに回転させるためのスピンチャック1と、このスピンチャック1を収容するカップ2と、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面(上面)に第1薬液、第2薬液および純水を選択的に供給するためのノズル3とを備えている。図1には、前記回転軸線Cに対して右側と左側とに、異なる切断面でとった断面が示されている。
【0026】
ノズル3は、たとえば、スピンチャック1の斜め上方に固定的に配置されて、ウエハWの表面に対して斜め上方から処理液を供給する構成であってもよく、また、ノズル3がスピンチャック1によるウエハWの回転軸線上に固定的に配置されて、ウエハWの表面に対して鉛直上方から処理液を供給する構成であってもよい。また、スピンチャック1(カップ2)の上方において水平面内で揺動可能なアームにノズル3が取り付けられて、アームの揺動によりウエハWの表面における処理液の供給位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。さらにまた、後述する乾燥工程時においてウエハWの表面に近接して対向配置される遮断板が備えられる場合には、遮断板の中央部に処理液供給口が形成されて、この処理液供給口からウエハWの表面に処理液が供給されるようにしてもよい。
【0027】
スピンチャック1は、ほぼ鉛直に配置された回転軸4と、この回転軸4の上端に固定された円盤状のスピンベース5と、スピンベース5の下方に配置されたモータ6とを備えている。
回転軸4は、モータ6の駆動軸と一体化された中空軸であり、その内部には、裏面処理液供給管7が挿通されている。この裏面処理液供給管7には、第1薬液、第2薬液および純水が選択的に供給されるようになっている。また、裏面処理液供給管7の上端部には、裏面処理液供給管7に選択的に供給される処理液(第1薬液、第2薬液および純水)を吐出する裏面ノズル8が形成されている。この裏面ノズル8は、処理液をほぼ鉛直上向きに吐出し、裏面ノズル8から吐出された処理液は、スピンチャック1に保持されたウエハWの裏面中央に対してほぼ垂直に入射する。
【0028】
スピンベース5は、平面視円板状の上カバー9と、同じく平面視円板状の下カバー10とを備えている。上カバー9と下カバー10とは、ボルトを用いて互いに固定されており、それらの間に後述するリンク機構を収容するための収容空間11を形成している。また、スピンベース5の中央部(上カバー9および下カバー10の各中央部)には、回転軸4の内径とほぼ同じ径を有する挿通孔12が形成されており、この挿通孔12の周囲に、回転軸4の上端が結合されることによって、回転軸4の内面と挿通孔12の周面とが段差なく連続している。そして、回転軸4の上端から裏面処理液供給管7が突出し、その裏面処理液供給管7の突出した部分が挿通孔12に挿通されている。
【0029】
スピンベース5の上面には、その周縁部にほぼ等角度間隔で複数(たとえば3つ)の挟持部材13が配置されている。各挟持部材13は、ウエハWを下方から支持する支持部14と、ウエハWの端面を規制するための規制部15とを備えている。これらの挟持部材13は、スピンベース5内に収容されたリンク機構(図示せず)によって連動され、各支持部14に支持されたウエハWの周縁部に各規制部15を当接させて、ウエハWを協働して挟持し、また、各規制部15をウエハWの周縁部から退避させて、そのウエハWの挟持を解除する。
【0030】
モータ6は、水平に延びるベース16上に配置され、筒状のカバー部材17によって包囲されている。カバー部材17は、その下端がベース16に固定され、上端がスピンベース5の下カバー10の近傍にまで及んでいる。カバー部材17の上端部には、カバー部材17から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材18が取り付けられている。
【0031】
カップ2は、互いに独立して昇降可能な内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21を備えている。
内構成部材19は、スピンチャック1の周囲を取り囲み、スピンチャック1によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。この内構成部材19は、平面視円環状の底部22と、この底部22の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部23と、底部22の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部51と、内壁部23と外壁部51との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部25と、第1案内部25と外壁部51との間から上方に立ち上がった円筒状の中壁部24とを一体的に備えている。
【0032】
内壁部23は、内構成部材19が最も上昇された状態(図4示す状態)で、カバー部材17と鍔状部材18との間に隙間を保って、そのカバー部材17と鍔状部材18との間に収容されるような長さに形成されている。
中壁部24は、内構成部材19と中構成部材20とが最も近接した状態で、中構成部材20の後述する第2案内部48および処理液分離壁50との間に隙間を保って、その第2案内部48(下端部48a)と処理液分離壁50との間に収容されるような長さに形成されている。
【0033】
第1案内部25は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる上端部25bを有している。また、内壁部23と第1案内部25との間は、ウエハWの処理に使用された処理液を集めて廃棄するための廃棄溝26とされている。また、第1案内部25と中壁部24との間は、ウエハWの処理に使用された処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝27(第1回収溝)とされている。さらに、中壁部24と外壁部51との間は、ウエハWの処理に使用された別の種類の処理液を回収するための円環状の外側回収溝52(第2回収溝)とされている。なお、内側回収溝27および外側回収溝52の底部は、水平に対して微小角度だけ傾斜しており、後述の第1回収機構35および第2回収機構53が接続される箇所が最も低くなるように設けられている。これにより内側回収溝27および外側回収溝52に流下した処理液がスムーズに回収されるようになっている。
【0034】
廃棄溝26には、この廃棄溝26に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝26内を強制的に排気するための排気液機構28が接続されている。この排気液機構28は、たとえば、廃棄溝26の周方向に関して等間隔で4つ設けられている。
各排気液機構28は、ベース16に挿通された固定筒部材29と、この固定筒部材29の上端に固定された円環状のスペーサ30と、上端部が内構成部材19の底部22に結合されるとともに、下端部がスペーサ30および固定筒部材29内に挿入された移動筒部材31と、この移動筒部材31内と廃棄溝26とを連通する連通孔32と、上端部が内構成部材19の底部22に固定されるとともに、下端部がスペーサ30に固定され、移動筒部材31の外周を被覆するベローズ33とを備えている。
【0035】
固定筒部材29の下端部には、図示しない負圧源から延びる配管34が接続されている。負圧源が発生する負圧によって、配管34を介して固定筒部材29内が排気されると、廃棄溝26内の雰囲気が移動筒部材31を介して固定筒部材29に吸い込まれ、これにより廃棄溝26内の排気が達成される。また、ウエハWの処理に使用された処理液が廃棄溝26に集められるときには、この廃棄溝26に集められた処理液が、廃棄溝26内の雰囲気とともに、連通孔32、移動筒部材31、固定筒部材29および配管34を介して排出される。雰囲気とともに排出される処理液は、配管34の途中部に介装された気液分離器(図示せず)によって雰囲気から分離され、たとえば、この基板処理装置が設置される工場の廃棄ラインに廃棄される。
【0036】
内側回収溝27の底部の最も低い箇所には、この内側回収溝27に集められた処理液を図示しない第1回収タンクに回収するための第1回収機構35が接続されている。
各第1回収機構35は、ベース16に挿通された円筒状の挿通部材36と、この挿通部材36の上端に固定された円環状のスペーサ37と、スペーサ37の上面に上端部が固定されて、挿通部材36およびスペーサ37に挿通して下方へ延びる固定筒部材38と、内構成部材19の底部22に固定された保持部材39と、この保持部材39に上端部が保持されて、下端部が固定筒部材38内に挿入された移動筒部材40と、この移動筒部材40内と内側回収溝27とを連通する連通孔41と、上端部が保持部材39に固定されるとともに、下端部が固定筒部材38に固定され、移動筒部材40の外周を被覆するベローズ42と、固定筒部材38の下端部にねじ込まれた継手43と、挿通部材36の下端部から下方に延び、継手43の周囲を取り囲む筒状の接続部包囲部材44と、この接続部包囲部材44の下端開口を閉鎖するように設けられた閉鎖部材45とを備えている。
【0037】
閉鎖部材45には、接続口46が形成されており、この接続口46を介して、第1回収タンクから延びる回収配管47が継手43に接続されている。内側回収溝27に集められる処理液は、連通孔41、移動筒部材40、固定筒部材38、継手43および回収配管47を介して第1回収タンクに回収される。
外側回収溝52の底部の最も低い箇所にも同様に、この外側回収溝52に集められた処理液を図示しない第2回収タンクに回収するための第2回収機構53が接続されている。第2回収機構53の構成は、第1回収機構35の構成と実質的に同様であるので、図1には図解的にのみ示し、詳細な説明は省略する。
【0038】
中構成部材20は、スピンチャック1の周囲を取り囲み、スピンチャック1によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。この中構成部材20は、第2案内部48と、この第2案内部48に連結された円筒状の処理液分離壁50とを一体的に備えている。
第2案内部48は、内構成部材19の第1案内部25の外側において、第1案内部25の下端部と同軸円筒状をなす下端部48aと、この下端部48aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる上端部48bと、上端部48bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部48cとを有している。下端部48aは、内側回収溝27上に位置し、内構成部材19と中構成部材20とが最も近接した状態で、内側回収溝27の底部49、中壁部24および第1案内部25との間に隙間を保って、内側回収溝27に収容される。一方、上端部48bは、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bと上下方向に重なるように設けられ、内構成部材19と中構成部材20とが最も近接した状態で、第1案内部25の上端部25bに対してごく微小な隙間を保って近接する。また、上端部48bの先端には、折返し部48cがその先端部を下方に折り返すことにより形成されており、内構成部材19と中構成部材20とが最も近接した状態で、その折返し部48cが第1案内部25の上端部25bと水平方向において重なるようになっている。
【0039】
また、第2案内部48の上端部48bは、下方ほど厚肉に形成されており、処理液分離壁50は、その上端部48bの外周縁部に連結されて円筒状をなしている。そして、処理液分離壁50は、外側回収溝52上に位置し、内構成部材19と中構成部材20とが最も近接した状態で、外側回収溝52の底部、中壁部24および外構成部材21との間に隙間を保って、外側回収溝52に収容される。
【0040】
外構成部材21は、中構成部材20の第2案内部48の外側において、スピンチャック1の周囲を取り囲み、スピンチャック1によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有し、第3案内部としての働きを有する。この外構成部材21は、第2案内部48の下端部48aと同軸円筒状をなす下端部21aと、下端部21aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる上端部21bと、上端部21bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部21cとを有している。
【0041】
下端部21aは、外側回収溝52上に位置し、内構成部材19と外構成部材21とが最も近接した状態で、中構成部材20の処理液分離壁50および外壁部51ならびに外側回収溝52の底部との間に隙間を保って、当該外側回収溝52に収容されるような長さに形成されている。
上端部21bは、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと上下方向に重なるように設けられ、中構成部材20と外構成部材21とが最も近接した状態で、第2案内部48の上端部48bに対してごく微小な隙間を保って近接するように形成されている。
【0042】
折返し部21cは、中構成部材20と外構成部材21とが最も近接した状態で、第2案内部48の上端部48bと水平方向において重なるように形成されている。
また、内構成部材19を昇降させるための第1昇降機構66と、中構成部材20を昇降させるための第2昇降機構67と、外構成部材21を昇降させるための第3昇降機構68とが備えられている。
【0043】
第1昇降機構66は、たとえば、ベース16に取り付けられたボールねじ機構と、このボールねじ機構の駆動部を内構成部材19の底部22に結合する連結部材とを含む。第2昇降機構67および第3昇降機構68も同様の構成で実現できる。第2昇降機構67と中構成部材20とを結合するために、たとえば、処理液分離壁50の下端縁の適所(1箇所または周方向に間隔を開けた複数箇所)から外構成部材21の下端部21aの下側を通って当該下端部21aの外側に至る連結部と、この連結部に連設された取り付けブロックとを、中構成部材20と一体的に形成しておくようにしてもよい。この場合に、内構成部材19の外壁部51には、前記取り付けブロックを収容できるように外方に膨出した膨出部を形成しておくことが好ましい。
【0044】
この基板処理装置には、マイクロコンピュータを含む構成の制御部80が備えられている。制御部80は、ウエハWに対する処理の各工程において、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21がそれぞれ適切な位置に配置されるように、第1、第2および第3昇降機構66,67,68を制御する。
図2ないし図5は、ウエハWに対する処理の各工程における内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21の位置を図解的に示す断面図である。ウエハWの搬入前は、図2に示すように、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が最も下方まで下げられることにより、内構成部材19の第1案内部25の上端部25b、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bおよび外構成部材21の上端部21bがいずれも、スピンチャック1によるウエハWの保持位置よりも下方に位置している。
【0045】
ウエハWが搬入されてきて、そのウエハWがスピンチャック1に保持されると、図3に示すように、外構成部材21のみが上昇されて、外構成部材21の上端部21bがスピンチャック1に保持されたウエハWの上方に配置される。これにより、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと外構成部材21の上端部21bとの間に、ウエハWの端面に対向する開口が形成される。
【0046】
その後、ウエハW(スピンチャック1)が回転されて、その回転しているウエハWの表面および裏面に対して、それぞれノズル3および裏面ノズル8から第1薬液が供給される。ウエハWの表面および裏面に供給される第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面および裏面を伝って流れ、ウエハWの周縁から側方へと飛散する。これにより、ウエハWの表面および裏面に第1薬液が行き渡り、ウエハWの表面および裏面に対する第1薬液による処理が達成される。
【0047】
ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する第1薬液は、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと外構成部材21の上端部21bとの間に飛入する。そして、外構成部材21の内面を伝って流下し、外側回収溝52に集められ、外側回収溝52から第2回収機構53を通して第2回収タンクに回収される。このとき、内構成部材19および中構成部材20が内構成部材19の第1案内部25の上端部25bと中構成部材20の第2案内部48の上端部48bとの間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、第2案内部48の折返し部48cが第1案内部25の上端部25bと水平方向において重なることにより、第1案内部25と第2案内部48との間への処理液の進入が防止される。また、中構成部材20に備えられた処理液分離壁50は、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと外構成部材21の上端部21bとの間に飛入した第1薬液が内側回収溝27に入り込むことを防ぎ、その第1薬液を外側回収溝52へと案内する。
【0048】
ウエハWへの第1薬液の供給が所定時間にわたって行われると、内構成部材19および中構成部材20が上昇されて、図4に示すように、内構成部材19の第1案内部25の上端部25b、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bおよび外構成部材21の上端部21bが、スピンチャック1に保持されたウエハWよりも上方に配置される。このとき、内構成部材19および中構成部材20は、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bと中構成部材20の第2案内部48の上端部48bとの間にごく微小な隙間を保った状態(内構成部材19と中構成部材20の相対的な位置関係を保った状態)で、同期をとって上昇される。これにより、スピンチャック1によるウエハWの回転および第1薬液の供給が継続されていても、ウエハWから飛散する処理液が第1案内部25と第2案内部48との間に進入することを防止することができる。
【0049】
その後、ノズル3および裏面ノズル8からの第1薬液の供給が停止される。そして、ウエハWの表面および裏面に対して、それぞれノズル3および裏面ノズル8から純水が供給されることにより、ウエハWの表面および裏面を水洗するためのリンス工程が行われる。ウエハWの表面および裏面に供給される純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面および裏面を伝って流れ、このときウエハWの表面および裏面に付着している第1薬液を洗い流す。そして、第1薬液を含む純水は、ウエハWの周縁から振り切られて飛散する。
【0050】
ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する純水(第1薬液を含む純水)は、内構成部材19の第1案内部25の内面に捕獲される。そして、内構成部材19の内面を伝って流下し、廃棄溝26に集められ、排気液機構28によって、廃棄溝26内の雰囲気とともに排出される。このとき、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が各上端部間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、外構成部材21の折返し部21cが第2案内部48の上端部48bと水平方向において重なり、第2案内部48の折返し部48cが第1案内部25の上端部25bと水平方向において重なることによって、第1案内部25と第2案内部48との間および第2案内部48と外構成部材21との間への処理液の進入が防止される。
【0051】
ウエハWへの純水の供給が所定時間にわたって行われると、ノズル3および裏面ノズル8からの純水の供給が停止される。そして、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が最も下方まで下げられることにより、図2に示すように、内構成部材19の第1案内部25の上端部25b、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bおよび外構成部材21の上端部21bが、ウエハWよりも下方に配置される。この後、ウエハW(スピンチャック1)の回転速度が予め定める高回転速度に上げられて、リンス工程後のウエハWの表面に付着しているリンス液を遠心力で振り切って乾燥させる乾燥工程が所定時間にわたって行われる。乾燥工程が終了すると、スピンチャック1によるウエハWの回転が止められて、スピンチャック1から処理後のウエハWが搬出されていく。
【0052】
また、第1薬液による処理後のリンス工程に引き続いて、ウエハWに対して第2薬液による処理が行われる場合には、ノズル3および裏面ノズル8からの純水の供給が停止された後、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が最上方に位置している状態から、内構成部材19が下降されて、図5に示すように、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bのみが、スピンチャック1に保持されたウエハWよりも下方に配置される。これにより、内構成部材19の上端部と中構成部材20の第2案内部48の上端部48bとの間に、ウエハWの端面に対向する開口が形成される。
【0053】
そして、リンス工程時から引き続いて回転しているウエハWの表面および裏面に対して、それぞれノズル3および裏面ノズル8から第2薬液が供給される。ウエハWの表面および裏面に供給される第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面および裏面を伝って流れ、ウエハWの周縁から側方へと飛散する。これにより、ウエハWの表面および裏面に第2薬液が行き渡り、ウエハWの表面および裏面に対する第2薬液による処理が達成される。
【0054】
ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する第2薬液は、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bと中構成部材20の第2案内部48の上端部48bとの間に飛入する。そして、第2案内部48の内面を伝って流下し、内側回収溝27に集められ、内側回収溝27から第1回収機構35を通して第1回収タンクに回収される。このとき、中構成部材20および外構成部材21が中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと外構成部材21の上端部21bとの間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、外構成部材21の折返し部21cが第2案内部48の上端部48bと水平方向において重なることにより、第2案内部48と外構成部材21との間への処理液の進入が防止される。
【0055】
ウエハWへの第2薬液の供給が所定時間にわたって行われると、内構成部材19が上昇されて、図4に示すように、再び、内構成部材19の第1案内部25の上端部25b、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bおよび外構成部材21の上端部21bが、スピンチャック1に保持されたウエハWよりも上方に配置される。
その後、ノズル3および裏面ノズル8からの第2薬液の供給が停止される。そして、ウエハWの表面および裏面に対して、それぞれノズル3および裏面ノズル8から純水が供給され、ウエハWの表面および裏面に付着した第2薬液を洗い流すためのリンス工程が行われる。このリンス工程では、第1薬液による処理後に行われるリンス工程の場合と同様に、ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する純水(第2薬液を含む純水)は、廃棄溝26に集められて排出される。また、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21は、各上端部間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、外構成部材21の折返し部21cが第2案内部48の上端部48bと水平方向において重なり、第2案内部48の折返し部48cが第1案内部25の上端部25bと水平方向において重なることにより、第1案内部25と第2案内部48との間および第2案内部48と外構成部材21との間への処理液の進入が防止される。
【0056】
ウエハWへの純水の供給が所定時間にわたって行われると、ノズル3および裏面ノズル8からの純水の供給が停止される。そして、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が最も下方まで下げられることにより、図2に示すように、内構成部材19の第1案内部25の上端部25b、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bおよび外構成部材21の上端部21bが、ウエハWよりも下方に配置される。この後、ウエハW(スピンチャック1)の回転速度が予め定める高回転速度に上げられて、リンス工程後のウエハWの表面に付着しているリンス液を遠心力で振り切って乾燥させる乾燥工程が所定時間にわたって行われる。乾燥工程が終了すると、スピンチャック1によるウエハWの回転が止められて、スピンチャック1から処理後のウエハWが搬出されていく。
【0057】
以上のように、この基板処理装置では、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21を、それぞれ独立に昇降させることができる。これにより、これらを昇降させて、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21の各上端部をスピンチャック1に保持されたウエハWの上方に位置させたり、外構成部材21の上端部21bのみをスピンチャック1に保持されたウエハWの上方に位置させたり、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bのみをスピンチャック1に保持されたウエハWの下方に位置させたり、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21の各上端部をスピンチャック1に保持されたウエハWの下方に位置させたりすることができる。
【0058】
ウエハWに対する第1薬液の供給時に、外構成部材21の上端部21bのみをスピンチャック1に保持されたウエハWの上方に位置させることによって、中構成部材20の第2案内部48の上端部48bと外構成部材21の上端部21bとの間に、ウエハWの端面に対向する開口を形成することができ、ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する第1薬液を中構成部材20と外構成部材21との間に飛入させることができる。そして、その飛入した第1薬液を、外構成部材21の案内によって外側回収溝52に集めることができ、外側回収溝52から第2回収機構53を通して第2回収タンクに回収することができる。
【0059】
また、ウエハWに対する第2薬液の供給時に、内構成部材19の第1案内部25の上端部25bのみをスピンチャック1に保持されたウエハWの下方に位置させることによって、内構成部材19の上端部と中構成部材20の第2案内部48の上端部48bとの間に、ウエハWの端面に対向する開口を形成することができ、ウエハWの周縁から振り切られて側方に飛散する第2薬液を内構成部材19と中構成部材20との間に飛入させることができる。そして、その飛入した第2薬液を、中構成部材20の案内によって内側回収溝27に集めることができ、内側回収溝27から第1回収機構35を通して第1回収タンクに回収することができる。
【0060】
さらに、ウエハWに対する純水の供給時に、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21の各上端部をスピンチャック1に保持されたウエハWの上方に位置させることによって、ウエハWの側方に飛散する純水を、内構成部材19の第1案内部25の内面に捕獲し、この第1案内部25の案内によって廃棄溝26に集めることができる。このとき、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21は、各上端部間にごく微小な隙間を保った状態で近接することにより、第1案内部25と第2案内部48との間および第2案内部48と外構成部材21との間に処理液が進入することを防止することができる。また、内構成部材19、中構成部材20および外構成部材21が相互に接触しないので、それらの接触によるパーティクルの発生(接触による部材の削れ等によるパーティクルの発生)の問題を招くことはない。
【0061】
また、ウエハWに対する第2薬液の供給時および純水の供給時に、外構成部材21をとくに上昇させる必要はなく、外構成部材21の位置は、外構成部材21の案内によって第1薬液を回収するときの位置と同じでよい。そのため、スピンチャック1の上方に大きなスペースを必要としないので、その分、装置の高さ方向の小型化を図ることができる。
さらには、中構成部材20の第2案内部48の折返し部48cによって、第2案内部48と外構成部材21との間に第1薬液と異なる種類の処理液が進入することを防止することができる。また、外構成部材21の折返し部21cによって、第1案内部25と第2案内部48との間に第2薬液と異なる種類の処理液が進入することを防止することができる。そのため、外側回収溝52に回収される第1薬液の純度および内側回収溝27に回収される第2薬液の純度をさらに向上させることができる。しかも、折返し部21cおよび折返し部48cは、それぞれ外構成部材21および中構成部材20に一体的に形成されているので、部品点数の増加を招くことを防止することができ、装置の構成を簡素化することができる。
【0062】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することも可能である。たとえば、上記の実施形態では、第1薬液、第2薬液および純水を用いた処理を例にとったが、第1薬液および第2薬液とは種類の異なる第3薬液をさらに追加して用いて、ウエハWに対して第3薬液を用いた処理を行い、この処理に用いられた後の第3薬液を回収するようにしてもよい。この場合、外構成部材21のさらに外側に、外構成部材21と同様な構成を有する新たな構成部材を追加するとともに、その新たな構成部材に案内される第3薬液を回収するための回収溝を内構成部材19に一体的に設ければよく、既存の中構成部材20および外構成部材21を利用することができる。そのため、大幅なコストアップを回避することができる。これと同様に、4種以上の薬液をウエハWの処理に用いて、各薬液を回収する場合についても、大幅なコストアップを回避することができる。すなわち、大幅なコストアップを招くことなく、回収される処理液の種類の増加に対応することができる。さらに、内構成部材19や中構成部材20によって処理液が案内されるときに、新たに設けた最外側の構成部材をとくに上昇させる必要がないので、高さ方向における装置の大型化も回避することができる。
【0063】
また、上記の実施形態では、ウエハWに対して洗浄処理を行う装置を例にとったが、この発明は、洗浄処理に限らず、たとえば、ウエハWの表面から不要な薄膜をエッチング液を用いて除去するエッチング処理装置、ウエハWの表面から不要なポリマー残渣をポリマー除去液を用いて除去するポリマー除去装置、ウエハWの表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置、あるいはウエハWの表面に現像液を供給してレジスト膜を現像する現像装置などに適用することもできる。
【0064】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す断面図である。
【図2】ウエハの搬入時および乾燥工程時における内構成部材、中構成部材および外構成部材の位置を図解的に示す断面図である。
【図3】ウエハに対する第1薬液による処理時における内構成部材、中構成部材および外構成部材の位置を図解的に示す断面図である。
【図4】リンス工程時における内構成部材、中構成部材および外構成部材の位置を図解的に示す断面図である。
【図5】ウエハに対する第2薬液による処理時における内構成部材、中構成部材および外構成部材の位置を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
C 回転軸線
W ウエハ
1 スピンチャック
2 カップ
3 ノズル
4 回転軸
5 スピンベース
6 モータ
7 裏面処理液供給管
8 裏面ノズル
19 内構成部材
20 中構成部材
21 外構成部材
21a 下端部
21b 上端部
21c 折返し部
23 内壁部
24 中壁部
25 第1案内部
25b 上端部
26 廃棄溝
27 内側回収溝
28 排気液機構
35 第1回収機構
48 第2案内部
48a 下端部
48b 上端部
48c 折返し部
50 処理液分離壁
51 外壁部
52 外側回収溝
53 第2回収機構
66 第1昇降機構
67 第2昇降機構
68 第3昇降機構
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をほぼ水平に保持して、その基板をほぼ鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に対して、処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第1案内部と、
前記第1案内部の外側において前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、その上端部が前記第1案内部の上端部と上下方向に重なるように設けられ、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第2案内部と、
前記第2案内部の外側において前記基板保持手段の周囲を取り囲み、上記回転軸線に向けて延びる上端部を有し、その上端部が前記第2案内部の上端部と上下方向に重なるように設けられ、前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液を当該処理液が流下するように案内するための第3案内部と、
前記第1案内部の外側に前記第1案内部と一体的に設けられ、前記第2案内部に案内される処理液を回収するための第1回収溝と、
この第1回収溝の外側に前記第1案内部と一体的に設けられ、前記第3案内部に案内される処理液を回収するための第2回収溝と、
前記第1、第2および第3案内部をそれぞれ独立して昇降させるための駆動機構とを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2案内部に一体的に設けられ、前記第2案内部の上端部と前記第3案内部の上端部との間に導かれた処理液が前記第1回収溝へと入り込むことを防ぎ、その処理液を前記第2回収溝へと案内する処理液分離壁をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持手段によって回転されている基板から飛散する処理液が前記第1案内部によって案内されるときに、前記第1案内部と前記第2案内部との間、および前記第2案内部と前記第3案内部との間に処理液が進入することをそれぞれ防止するための第1進入防止部および第2進入防止部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1進入防止部は前記第2案内部の上端部を下方に折り返して形成されており、前記第2進入防止部は前記第3案内部の上端部を下方に折り返して形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−91717(P2008−91717A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272147(P2006−272147)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】