説明

基板処理装置

【課題】基板表面の高湿酸素雰囲気の曝露時間を短縮化することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】インデクサ部内には、Nガスチャンバ12が複数個配置されている。Nガスチャンバ12は、天板13に固定された対向部材16と、対向部材16に対して基板Wを昇降させるための複数本のリフトピン17とを備えている。対向部材16の基板対向面20には、1つの中央部吐出口21および複数個の周縁部吐出口22が設けられている。各吐出口21,22から吐出されるNガスが、基板Wの表面と基板対向面20との間に供給される。
【効果】基板Wの表面と基板対向面20との間がNガスで充満される。インデクサ部内の高湿酸素雰囲気から基板Wの表面を遮断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板に対して処理を施す基板処理装置である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において用いられる枚葉型の基板処理装置は、処理部と、インデクサ部と、基板収容器を保持する収容器保持部とを備えている。処理部は、基板を収容し、その基板に対して処理を施すための複数個(たとえば8つ)の処理チャンバと、これらの処理チャンバに対して基板の搬入/搬出を行う主搬送ロボットとを備えている。インデクサ部は、基板収容器と主搬送ロボットとの間で基板を搬送するインデクサロボットとを備えている。
【0003】
基板収容器は、その内部空間に複数枚の基板を収容可能である。基板収容器の側面には基板を取り出すための開口が形成されており、その開口が基板収容器の側面の蓋によって開閉される。基板の搬送効率を向上させるため、基板収容器内への基板の収納可能枚数は多数枚(たとえば25枚)であることが望ましい。
基板収容器が収容器保持部に保持されると、蓋が開状態にされて開口が開放されて、インデクサロボットのハンドが開口を通して進入されて、基板収容器から未処理の基板が取り出される。基板収容器から取り出された未処理の基板は、主搬送ロボットのハンドに受け渡されて、主搬送ロボットによって処理チャンバ内に搬入される。その後、処理チャンバ内で、基板に対して所定の処理が施される。
【0004】
一方、処理チャンバ内で処理された処理済の基板は、主搬送ロボットのハンドによって搬出された後、インデクサロボットに受け渡されて、インデクサロボットによって基板収容器内に収納される。基板収容器に収容されていた全ての基板に対して処理が施され、最後の基板が基板収容器内に収納された後、基板収容器の開口が閉塞される。
【特許文献1】特開2007−95831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最初に所定の処理が施された処理済の基板が基板収容器内に収納された後、多数枚(たとえば24枚)の処理が完了するまで、基板収容器の開口の閉塞を待つ必要がある。
ところが、基板の出し入れのために基板収容器の開口が開放されることにより、基板収容器内にインデクサ部内の雰囲気が充満する。インデクサ部内の雰囲気は酸素や水分が比較的多量に含まれているので(たとえば、一般の大気中では、酸素濃度20%以上であり、かつ湿度20%以上)、この雰囲気に長時間、たとえば10分以上晒されると、基板の表面が酸化されるなど基板に悪影響を与えるおそれがある。
【0006】
基板収容器内の雰囲気の酸素濃度および湿度を下げるために、開口が開放状態にある基板収容器内を、低湿低酸素ガス(Nガス)でパージすることも考えられるが、かかるNパージを行っても、基板収容器内の雰囲気の酸素濃度または湿度が一定量以下(好ましくは、酸素濃度が1%以下、湿度が5%以下)に低下しないという問題がある。
また、この方法に代えて、基板の出し入れの際以外は基板収容器の開口を閉塞し、基板収容器内をNパージすることも検討されているが基板収容器の開口の閉塞の開始から次の開放までの時間が短いので、かかる方法を採用しても基板収容器内をNガスで充満させることができなかった。したがって、基板の表面の湿度が高く酸素の多い雰囲気(以下、高湿酸素雰囲気という)の曝露時間が長時間化していた。
【0007】
この発明は、かかる背景の下でなされたものであり、基板表面の高湿酸素雰囲気の曝露時間を短縮化することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を収容して、当該基板に対して処理を施すための処理チャンバ(10A〜10H)と、複数枚の基板を収容可能な基板収容器(C)と前記処理チャンバとの間を搬送される基板が通過する搬送室(3;9)と、前記搬送室内に設けられ、基板を保持するための基板保持部材(17)と、前記基板保持部材に保持された基板の表面に対向する基板対向面(20;20A;13A)を有する対向部材(16;16A)と、前記基板保持部材に保持された基板の表面と前記基板対向面との間に低湿低酸素ガスを供給する低湿低酸素ガス供給機構(27,28,29,30)とを含む、基板処理装置(1;1B)である。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、基板保持部材に保持された基板の表面と対向部材の基板対向面との間に低湿低酸素ガスが供給される。したがって、基板の表面と基板対向面との間が低湿低酸素ガスで充満する。これにより、搬送室内に高湿酸素雰囲気が存在する場合であっても、その高湿酸素雰囲気から基板の表面を遮断することができる。
【0010】
したがって、基板を基板保持部に保持させて、当該基板の表面を搬送室内の高湿酸素雰囲気から遮断しておき、その間に処理チャンバで他の基板に処理を施すことにより、当該基板の表面が高湿酸素雰囲気に晒される時間(曝露時間)を短縮化することができる。これにより、基板の表面に与える悪影響を最低限に抑えることができる。なお、低湿低酸素ガスは、その酸素濃度が1%以下で、かつ湿度が5%以下が好ましい。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記基板保持部材および前記対向部材の少なくとも一方を相対的に移動させて、前記基板の表面と前記基板対向面とを接近/離反させる移動機構(34)をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の表面と基板対向面とを接近させた状態で、基板の表面に低湿低酸素ガスを供給することができる。このため、比較的小流量の低湿低酸素ガスで、基板の表面と基板対向面との間を充満させることができ、基板の表面を搬送室内の高湿酸素雰囲気から遮断しておくことができる。これにより、低湿低酸素ガスの使用量を低減し、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0012】
また、基板の表面と基板対向面とを離反させた状態で、基板を搬入/搬出することができる。これにより、基板を良好に搬入/搬出することができる。
請求項3記載の発明は、前記移動機構は、前記対向部材に対して前記基板保持部材を移動させる保持部材移動機構(34)を含む、請求項2記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板保持部材を移動させることにより、基板の表面と基板対向面とを、相対的に接近/離反させることができる。
【0013】
基板処理装置は、基板を保持して、前記基板保持部材に対して基板を受け渡すハンド(6A)をさらに含むものであってもよい。基板保持部材を、基板の表面に交差する方向に移動させるとともに、ハンドを基板の表面に沿う方向に移動させることにより、基板保持部材とハンドとの間で基板を受け渡すことが可能である。このため、基板の受け渡しの際にハンドを、基板に交差する方向に移動させる必要がない。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記対向部材は、前記基板対向面に対向する所定の近接位置に基板の表面が配置された状態で、基板の側方を包囲する包囲部(19)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の表面が基板対向面に近接している。また、基板の側方が包囲部によって包囲されている。このため、基板の側方にある雰囲気が、対向部材と基板の表面との間に進入することを阻止することができる。これにより、基板の表面を高湿酸素雰囲気から一層遮断することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記搬送室は、前記基板収容器の配置位置に隣接して設けられたインデクサ部(3)を含み、当該インデクサ部に、前記基板保持部材および前記対向部材が配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板収容器の配置位置に隣接するインデクサ部に、基板保持部材および対向部材が配置されている。したがって、基板保持部材および対向部材と基板収容器とを近接して配置しておくことにより、基板保持部材から基板収容器までの基板の搬送時間を短縮することが可能である。これにより、基板の表面が高湿酸素雰囲気に晒される時間を、より一層短縮化させることができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記基板対向面には、前記低湿低酸素ガス供給機構からの低湿低酸素ガスが吐出される吐出口(21,22)が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、比較的簡単な構成で、基板対向面と基板の表面との間に低湿低酸素ガスを供給することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記吐出口が、基板の表面の中央部に対向する中央部吐出口(21)と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の周縁部に対向する周縁部吐出口(22)とを含み、前記低湿低酸素ガス供給機構が、前記中央部吐出口からの低湿低酸素ガスの吐出および吐出停止を切り換えるための中央部用バルブ(30)と、前記周縁部吐出口からの低湿低酸素ガスの吐出および吐出停止を切り換えるための周縁部用バルブ(29)とを含み、前記基板処理装置は、前記中央部吐出口および前記周縁部吐出口から低湿低酸素ガスを吐出させるときに、前記周縁部用バルブの開成に先立ち、前記中央部用バルブを開成させるバルブ制御手段(35)をさらに含む、請求項6記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、周縁部吐出口からの低湿低酸素ガスの吐出に先立って、中央部吐出口から低湿低酸素ガスが吐出される。したがって、基板の中央部上の雰囲気を低湿低酸素ガスに置換した後に、基板の全域に低湿低酸素ガスが供給される。これにより、基板の表面全域に低湿低酸素ガスを円滑に充満させることができる。
請求項8記載の発明は、前記基板保持部材は、前記基板収容器に収容可能な基板の枚数よりも少ない複数個設けられており、前記各基板保持部材は、基板を一枚ずつ保持可能であり、前記基板処理装置は、前記処理チャンバ、前記基板収容器および前記各基板保持部材間を基板を搬送する基板搬送機構(6,7,11)と、前記基板搬送機構を制御して、前記基板収容器から前記処理チャンバへ基板を一枚ずつ順に搬送させ、前記処理チャンバで処理済の基板を前記複数の基板保持部材へ順に搬送させて、前記複数の基板保持部材に前記複数の基板が保持された後は、前記処理チャンバで処理済の基板を前記基板収容器へ搬送させ、前記基板収容器から最後に搬出された基板が前記基板収容器に戻される直前に、前記複数の基板保持部材に保持されている複数の基板が全て前記基板収容器に戻されるように、前記基板保持部材から基板収容器へ基板を搬送させる搬送制御手段(35)とをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0019】
この構成によれば、基板収容器から最後に搬出された基板が基板収容器に戻される直前に、基板保持部材に保持されている基板が基板収容器に戻される。このため、基板収容器内が閉塞される直前まで、基板を高湿酸素雰囲気から遮断しておくことができる。これにより、基板の高湿酸素雰囲気の曝露時間をより一層短縮化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の図解的な斜視図であり、図2は、その平面図である。この基板処理装置1は、クリーンルーム内に設置され、半導体ウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
基板処理装置1は、基板Wに対して処理を施す処理部2と、この処理部2の一方側に結合されたインデクサ部(搬送室)3と、インデクサ部3の処理部2と反対側に並べて配置された複数個(図2では3つ)の収容器保持部4とを備えている。収容器保持部4は、基板収容器Cを保持するためのものであり、所定の水平方向(図1に示すY方向)に沿って配列されている。
【0021】
基板収容器Cは、たとえば25枚の基板Wを密閉状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)である。基板収容器Cの一側面には基板Wを取り出すための開口(図示しない)が形成されており、基板収容器Cの一側面の蓋(図示しない)によって開口が開閉されるようになっている。
インデクサ部3には、収容器保持部4の配列方向に長手を有するインデクサ搬送路5が形成されている。このインデクサ搬送路5には、インデクサロボット6が配置されている。
【0022】
インデクサロボット6は、インデクサ搬送路5に沿って往復移動可能に設けられており、各収容器保持部4に保持された基板収容器Cに対向することができる。また、インデクサロボット6は、アームと、アームの先端に結合されて、基板Wを保持するためのハンド6A(図6(a)参照)とを備えており、基板収容器Cに対向した状態で、その基板収容器Cにハンド6Aをアクセスさせて、基板収容器Cから未処理の基板Wを取り出したり、処理済の基板Wを基板収容器Cに収納したりすることができる。このインデクサロボット6は、上ハンドおよび下ハンドを備えたダブルアーム型のものである。さらに、インデクサロボット6はインデクサ搬送路5の中央部に位置した状態で、処理部2に対してハンド6Aをアクセスさせて、後述するシャトル搬送部7に未処理の基板Wを受け渡したり、シャトル搬送部7から処理済の基板Wを受け取ったりすることができる。
【0023】
処理部2には、インデクサ部3のインデクサ搬送路5の中央部から、このインデクサ搬送路5と直交する水平方向(図1に示すX方向)に延びて、インデクサ部3の内部空間に連通する搬送路(搬送室)9が形成されている。搬送路9の中央には、上ハンドおよび下ハンドを備えたダブルアーム型の主搬送ロボット11が配置されている。処理部2には、8つの処理チャンバ10A〜10Hが、主搬送ロボット11を取り囲むように配置されている。この8つの処理チャンバ10A〜10Hは、搬送路9を挟む両側に、当該搬送路2に沿って2つずつ2段に積み重ねられている。各処理チャンバ10A〜10Hは、基板Wに対して共通の処理(たとえば薬液を用いた洗浄処理)を施すためのものである。搬送路9には、インデクサロボット6と主搬送ロボット11との間の基板Wの受け渡しを仲介するシャトル搬送部7が設けられている。シャトル搬送部7は、インデクサロボット6から未処理の基板Wを受け取ることができ、かつ処理済の基板Wをインデクサロボット6に受け渡すことができる。
【0024】
主搬送ロボット11は、基板Wを保持するための搬送ハンド(図示しない)を備えており、シャトル搬送部7に搬送ハンドをアクセスさせて、シャトル搬送部7から未処理の基板Wを受け取ったり、処理済の基板Wをシャトル搬送部7に受け渡したりすることができる。また、主搬送ロボット11は、複数の処理チャンバ10A〜10Hに搬送ハンドをアクセスさせることができ、各処理チャンバ10A〜10Hとの間で相互に基板Wの受け渡しを行うことができるようになっている。
【0025】
なお、図1では、収容器保持部4、インデクサロボット6、主搬送ロボット11およびシャトル搬送部7を省略している。
この実施形態の特徴は、基板Wの表面に低湿低酸素ガスとしてのNガスを供給し、当該基板Wの表面を高湿酸素雰囲気から遮断しておくためのNガスチャンバ12を8つ(処理チャンバ10A〜10Hの個数に応じた数)設けた点にある。ここで、低湿低酸素ガスはその酸素濃度が1%以下でかつ湿度が5%以下であることが好ましく、この低湿低酸素ガスをNガスチャンバ12内に供給することで、Nガスチャンバ12内の酸素濃度を1%以下でかつ湿度を5%以下の雰囲気にすることが好ましい。これら8つのNガスチャンバ12は、インデクサ部3のインデクサ搬送路5の長手方向端部の天面付近に、上下方向に積層されて配置されている。各Nガスチャンバ12は、同一の構成を有している。
【0026】
図3は、Nガスチャンバ12の構成を図解的に示す縦断面図である。各Nガスチャンバ12は、水平な平板からなる天板13および底板14を備えている。天板13および底板14は、たとえば矩形状に形成されており、その4つの角部同士が連結杆(図示しない)によって連結されている。Nガスチャンバ12の4つの側面は開放されている。これらNガスチャンバ12の各側面に、Nガスチャンバ12内に基板Wを搬入/搬出される基板Wが通過するための通過口15(図3では、2つのみ図示)が形成されている。通過口15がNガスチャンバ12の4つの側面の全てに形成されているので、Nガスチャンバ12内にインデクサロボット6のハンド6A水平方向の4方向からアクセス可能である。したがって、Nガスチャンバ12に対する基板Wの搬送効率を向上させることができる。
【0027】
ガスチャンバ12は、天板13に固定された対向部材16と、対向部材16に対して基板Wを昇降させるための複数本(たとえば、4つ)のリフトピン(基板保持部材)17とを備えている。
対向部材16は、基板Wよりもやや大径の円板状に形成された平板部18と、平板部18の周縁から垂れ下がって、基板Wの側方を包囲する包囲部19とを備えている。平板部18は、天板13の下面に固定されている。平板部18の下面には、複数本のリフトピン17に保持された基板Wの表面と対向する基板対向面20が形成されている。基板対向面20は、Nガスを吐出するための吐出口21,22が形成された水平面である。
【0028】
図4は、対向部材16の底面図である。
基板対向面20の中央部には、複数のリフトピン17に保持された基板Wの中央部(中心)に対向する位置に1つの中央部吐出口21が形成されている。また、基板対向面20の周縁部には、複数個(たとえば8つ)の周縁部吐出口22が等角度間隔に設けられている。この周縁部吐出口22は、複数のリフトピン17に保持された基板Wの周縁部に対向するように形成されている。この実施形態では、周縁部吐出口22は、基板Wの周縁の直上位置よりもやや内方に寄せて配置されている。
【0029】
再び図3を参照して説明する。天板13および対向部材16の平板部18には、NガスをNガスチャンバ12内に導入するための中央部供給管23が貫通して設けられている。中央部供給管23は、対向部材16の基板対向面20まで延びて中央部吐出口21と連通している。
また、天板13および対向部材16の平板部18には、NガスをNガスチャンバ12内に導入するための複数の周縁部供給管24が貫通して設けられている。周縁部供給管24の断面積は、中央部供給管23の断面積とほぼ等しく設定されている。各周縁部供給管24は、対向部材16の基板対向面20まで延びて各周縁部吐出口22と連通している。各吐出口21,22には、供給機構25によってNガスを供給することができるように構成されている。
【0030】
供給機構25は、Nガス供給源26に接続された第1供給管(低湿低酸素ガス供給機構)27と、第1供給管27の途中部から分岐した第2供給管(低湿低酸素ガス供給機構)28とを備えている。第1供給管27の途中部には、第2供給管28の分岐位置よりも下流側に、この第1供給管27を開閉するための周縁部用Nバルブ(周縁部用バルブ)29が介装されている。第1供給管27には、周縁部用Nバルブ29の下流側で複数本(たとえば8つ)の分岐供給管31が分岐している。各分岐供給管31の先端は各周縁部供給管24に接続されている。第2供給管28の途中部には、この第2供給管28を開閉するための中央部用Nバルブ(中央部用バルブ)30が介装されている。第2供給管28の先端は中央部供給管23に接続されている。
【0031】
これにより、周縁部用Nバルブ29を閉じて中央部用Nバルブ30を開くことによって、Nガス供給源26からのNガスを、第1供給管27および第2供給管28を順に通じて、中央部吐出口21に供給することができる。
一方、周縁部用Nバルブ29および中央部用Nバルブ30の双方を開くことによって、Nガス供給源26から第1供給管27まで供給されたNガスを、第2供給管28を介して中央部吐出口21に供給することができ、また、分岐供給管31を介して各周縁部吐出口22に供給することができる。前述のように、全ての吐出口21,22から吐出されるNガスが第1供給管27を経ているとともに、中央部供給管23と周縁部供給管24との断面積がほぼ等しいので、各吐出口21,22は、ほぼ同流量のNガスが吐出される。各吐出口21,22から吐出されるNガスの流量は、中央部吐出口21だけからNガスを吐出させる場合と比較して約1/9になる。
【0032】
各リフトピン17は、底板14を上下に貫通して形成された貫通孔32に挿通されて、底板14に対して昇降可能に設けられている。また、各リフトピン17は、共通の支持部材33に支持されており、この支持部材33にリフトピン昇降機構(保持部材移動機構)34が結合されている。このリフトピン昇降機構34により、複数のリフトピン17を、その先端が対向部材16の平板部18に近接する近接位置(図3で二点鎖線で示す位置)と、その先端が、基板受け渡し位置(図3で基板Wを二点鎖線で示す位置)よりも下方に退避する退避位置(図3で実線で示す位置)との間で一括して昇降させることができるようになっている。
【0033】
図5は、基板処理装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置35を備えている。この制御装置35が、インデクサロボット6および主搬送ロボット11と接続されている。制御装置35は、インデクサロボット6および主搬送ロボット11による基板Wの搬送動作を制御する。また、この制御装置35には、リフトピン昇降機構34、周縁部用Nバルブ29および中央部用Nバルブ30などが制御対象として接続されている。
【0034】
インデクサロボット6のハンド6Aが基板収容器Cにアクセスされて、基板収容器Cから基板Wが取り出される。そして、基板収容器Cから取り出された基板Wは、インデクサロボット6により主搬送ロボット11に受け渡された後、この主搬送ロボット11によって処理チャンバ10A〜10Hに搬入される。そして、処理チャンバ10A〜10Hで、基板Wに対して処理(たとえば、処理液や処理ガスを用いた洗浄処理)が施される。
【0035】
基板Wに対する処理の完了後、主搬送ロボット11の搬送ハンドが処理チャンバ10A〜10H内に進入されて、処理チャンバ10A〜10Hから基板Wが搬出される。処理チャンバ10A〜10Hによって搬出された基板Wは、主搬送ロボット11からインデクサロボット6によって受け渡された後、インデクサロボット6によってNガスチャンバ12内に搬入される。
【0036】
図6は、Nガスチャンバ12における基板WのNガスの供給の様子を図解的に示す縦断面図である。インデクサロボット6による基板Wの搬入の際には、リフトピン17は図6(a)に示す退避位置にあり、周縁部用Nバルブ29および中央部用Nバルブ30は閉じられている。
基板Wを保持するインデクサロボット6のハンド6Aが、水平方向に移動して、通過口15を介してNガスチャンバ12内に進入される。そして、このハンド6Aの進入に併せて、図6(b)に示すようにリフトピン昇降機構34によってリフトピン17が上昇される。リフトピン17の上昇により基板Wがハンド6Aから離脱して、基板Wがインデクサロボット6からリフトピン17に受け渡される。
【0037】
基板Wがリフトピン17に受け渡された後、リフトピン昇降機構34によってリフトピン17が、図6(c)に示すように、対向部材16の基板対向面20に近接する近接位置まで上昇される。この際、基板Wの上面(表面)と基板対向面20との隙間は、たとえば0.3mm〜5mmに設定される。
リフトピン17が近接位置に達すると同時に、あるいは、その直前又は直後、図6(c)および図6(d)に示すように、周縁部用Nバルブ29および中央部用Nバルブ30が開かれる。これにより、吐出口21,22から、リフトピン17に保持された基板Wの表面と対向部材16の基板対向面10との間にNガスが供給される。これにより、基板Wの上面(表面)と基板対向面10との隙間がNガスで充満され、酸素濃度が1%以下、湿度が5%以下の雰囲気とされる。したがって、基板Wの表面をインデクサ部3内の高湿酸素雰囲気から遮断しておくことができる。
【0038】
図6(c)および図6(d)に示すNガスの供給状態では、基板Wの表面が基板対向面20に近接している。また、基板Wの側方が包囲部19によって包囲されている。このため、基板Wの側方の雰囲気が、対向部材16と基板Wの表面との間に進入することをより効果的に阻止することができる。なお、後述のように、包囲部19は必須の構成ではなく、この包囲部19がない場合であっても(図13参照)、基板Wの上面(表面)と基板対向面20とが所定隙間をもって近接されているので、基板Wの側方の雰囲気が、上記所定隙間に進入することを阻止することができる。
【0039】
また、リフトピン17を対向部材16に近接する近接位置に移動させた状態で、基板Wの表面にNガスが供給される。このため、比較的小流量のNガスによって、基板Wの表面と基板対向面20との間を充満させることができる。したがって、Nガスの使用量を低減し、ランニングコストの低減を図ることができる。
さらに、リフトピン17を対向部材16から離反する退避位置に移動させた状態で、基板Wが搬入/搬出される。これにより、基板Wを良好に搬入/搬出することができる。
【0040】
また、リフトピン17を昇降させるとともに、ハンド6Aを水平方向に移動させることで、リフトピン17とハンド6Aとの間で基板Wを受け渡すことが可能である。このため、基板Wの受け渡しの際にハンド6Aを昇降させる必要がない。
図6(c)および図6(d)に示すように、Nガスの吐出開始時において、周縁部吐出口22からのNガスの吐出に先立って、中央部吐出口21からNガスが吐出される。
【0041】
図7は、Nガスの吐出時における中央部吐出口21および周縁部吐出口22からの吐出流量を示すタイムチャートである。
ガスの吐出タイミングになると、周縁部用Nバルブ29を閉じたまま中央部用Nバルブ30が開かれて、中央部吐出口21から比較的高流量のNガスが吐出される(図6(c)参照)。中央部用Nバルブ30が開かれた後、たとえば3秒が経過すると、中央部用Nバルブ30が開かれたまま、周縁部用Nバルブ29が開かれる(図6(d)参照)。この周縁部用Nバルブ29の吐出動作により、8つの周縁部吐出口22から比較的低流量のNガスが吐出されるとともに、中央部吐出口21からのNガスの吐出流量が、周縁部吐出口22からの吐出流量と同等程度まで低下する。
【0042】
中央部吐出口21からNガスが吐出されて、基板Wの中央部における雰囲気がNガスに置換された後に、中央部吐出口21および周縁部吐出口22から基板Wの全域にNガスが吐出される。これにより、基板Wの表面と基板対向面20との間に、円滑にNガスで充満させることができる。
その後、基板Wの搬出タイミングになると、図6(e)に示すように、リフトピン昇降機構34によってリフトピン17が下降される。その後、インデクサロボット6のハンド6Aが、Nガスチャンバ12内に進入し、基板Wを下方から保持するようになる。リフトピン昇降機構34によってリフトピン17が下降されることにより、処理済の基板Wがハンド6Aに受け取られる。その後、ハンド6Aは、Nガスチャンバ12外に退避される。
【0043】
図8は、基板処理装置1における基板Wの搬送状態を示すタイムチャートである。この実施形態では、基板収容器Cは25枚の基板Wを収容可能である。この図8では、1つの基板収容器Cに収容される最大枚数、すなわち25枚の基板Wを処理する場合を例に挙げて説明する。
各処理チャンバ10A〜10Hでは、基板Wに対して一枚ずつ処理が施される。これら8個の処理チャンバ10A〜10
Hによる基板Wの処理は並行して実施される。8つの処理チャンバ10A〜10Hを用いて25枚の基板Wに対して処理を施すので、8つの処理チャンバ10A〜10Hで基板Wに対して処理を3回続けて施され、残った1枚の基板Wに対して処理チャンバ10Aで処理が施される。各処理チャンバ10A〜10Hにおける処理の処理時間はたとえば3分である。
【0044】
基板収容器Cからインデクサロボット6によって取り出された未処理の基板Wは、8つの処理チャンバ10A〜10
Hに、主搬送ロボット11を介して一枚ずつ順に搬入されていく。
以下の説明では、処理チャンバ10A〜10Hにおける処理が施される順に、基板Wに番号(「1」〜「25」)を付して説明する。
【0045】
最初(1巡目)の8枚の基板W(「1」〜「8」)の処理では、図8に示すように処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が開始され、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く開始される。予め定める処理時間が経過すると、各処理チャンバ10A〜10Hで処理が順に終了していく。前述のように、各処理チャンバ10A〜10Hの処理時間は共通しているので、処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が終了し、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く終了する。
【0046】
そして、処理チャンバ10A〜10Hによる洗浄処理が終了すると、処理済の基板Wが主搬送ロボット11によって処理チャンバ10A〜10Hから搬出される。この処理済の基板Wの搬出は、処理が完了した順で、すなわち、処理チャンバ10A、処理チャンバ10B、処理チャンバ10C、・・・、処理チャンバ10Gおよび処理チャンバ10Hの順で行われる。各処理チャンバ10A〜10Hでは、ダブルアーム型の主搬送ロボット11により、処理済の基板Wが搬出されると同時に次の2巡目の未処理の基板Wが搬入される。基板Wの搬入後、当該未処理の基板Wに対する処理が開始される。
【0047】
各処理チャンバ10A〜10Hから搬出された基板Wはインデクサロボット6に受け渡された後、このインデクサロボット6によって、予め定められたNガスチャンバ12内に搬入される。図8には、8枚の基板W(「1」〜「8」)が、Nガスチャンバ12内に搬入される様子が示されている。そして、Nガスチャンバ12内で基板Wの表面と基板対向面10との間にNガスが供給される。これにより、基板Wの表面と基板対向面10との間がNガスで充満されて、基板Wの表面をインデクサ部3内の高湿酸素雰囲気から遮断しておくことができる。
【0048】
次(2巡目)の8枚の基板W(「9」〜「16」)の処理では、1巡目の処理と同様、処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が開始され、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く開始される。予め定める処理時間が経過すると、各処理チャンバ10A〜10Hで処理が順に終了していく。また、処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が終了し、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く終了する。
【0049】
そして、処理チャンバ10A〜10Hによる処理が完了した処理済の基板Wは、主搬送ロボット11によって処理チャンバ10A〜10Hから搬出される。この処理済の基板Wの搬出は、処理が完了した順で、すなわち、処理チャンバ10A、処理チャンバ10B、処理チャンバ10C、・・・、処理チャンバ10Gおよび処理チャンバ10Hの順で行われる。各処理チャンバ10A〜10Hでは、ダブルアーム型の主搬送ロボット11により、処理済の基板Wが搬出されると同時に次の3巡目の未処理の基板Wが搬入される。基板Wの搬入後、当該未処理の基板Wに対する処理が開始される。
【0050】
この2巡目の処理では、処理チャンバ10A〜10Hから搬出された基板Wは、Nガスチャンバ12を経ることなく基板収容器Cに直接収納される。具体的には、各処理チャンバ10A〜10Hから搬出された基板Wは、インデクサロボット6に受け渡された後、このインデクサロボット6により、基板収容器Cに収納される。図8には、8枚の基板W(「9」〜「16」)が、基板収容器C内に搬入される様子が示されている。
【0051】
さらに、その次(3巡目)の8枚の基板W(「17」〜「24」)の処理では、1巡目及び2巡面の処理と同様、処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が開始され、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く開始される。予め定める処理時間が経過すると、各処理チャンバ10A〜10Hで処理が順に終了していく。また、処理チャンバ10A、処理チャンバ10Bおよび処理チャンバ10Cの順で処理が終了し、処理チャンバ10Hの処理が最も遅く終了する。
【0052】
そして、処理チャンバ10A〜10Hによる処理が完了した処理済の基板Wは、主搬送ロボット11によって処理チャンバ10A〜10Hから搬出される。この処理済の基板Wの搬出は、処理が完了した順で、すなわち、処理チャンバ10A、処理チャンバ10B、処理チャンバ10C、・・・、処理チャンバ10Gおよび処理チャンバ10Hの順で行われる。8つの処理チャンバ10A〜10Hのうち処理チャンバ10Aでは、ダブルアーム型の主搬送ロボット11により、処理済の基板Wが搬出されると同時に次の4巡目の未処理の基板Wが搬入される。基板Wの搬入後、当該未処理の基板Wに対する処理が開始される。
【0053】
この3巡目の処理でも、前述した2巡目の処理と同様、処理チャンバ10A〜10Hから搬出された基板Wは、Nガスチャンバ12を経ることなく基板収容器Cに直接収納される。具体的には、各処理チャンバ10A〜10Hから搬出された基板Wは、インデクサロボット6に受け渡された後、このインデクサロボット6により、基板収容器Cに収納される。図8には、8枚の基板W(「17」〜「24」)が、基板収容器C内に搬入される様子が示されている。
【0054】
また、この3巡目の処理における基板W(「17」〜「24」)の収納と並行して、Nガスチャンバ12に収容されている基板W(「1」〜「8」)が基板収容器Cに向けて搬送される。
ガスチャンバ12からインデクサロボット6によって順に基板Wが搬出されて、基板収容器Cへと収納される。Nガスチャンバ12から基板収容器Cへの基板Wの搬送は、処理チャンバ10A〜10Hで8枚の基板Wに処理が施された順に行われる。この8枚の基板Wの搬送タイミングは、次に述べる4巡目の基板W(「25」)が基板収容器Cに収容されるタイミングに基づいて決定されている。そして、4巡目の基板W(「25」)が基板収容器Cに収容される直前に、この8枚の基板Wのうち最後に基板収容器に収容される基板W(「8」)が基板収容器Cに収容されるようになる。
【0055】
次の4巡目の処理では、処理チャンバ10Aで基板W(「25」)について処理が施される。処理後には、処理チャンバ10Aから搬出された基板Wは、インデクサロボット6に受け渡された後、このインデクサロボット6により基板収容器Cに収納される。図8には、基板W(「25」)が、基板収容器C内に収納される様子が示されている。
この4巡目の基板Wが、基板収容器Cに収納された後、基板収容器Cの開口が閉塞されて、基板収容器CにNガスが供給される。そして、基板収容器Cの開口が閉塞後90秒後、基板収容器C内にNガスが充満する。
【0056】
ガスチャンバ12を採用しない構成では、処理チャンバ10Aにおいて2巡目の処理が開始されてから4回目の処理が終了するまでの時間(たとえば、3分×3)、最後の基板Wが処理チャンバAから搬出されてから基板収納器Cに収納されるまでの時間(たとえば20秒)および基板収容器Cの開口が閉塞されてから基板収容器C内にNガスが充満するまでのパージ時間e(たとえば90秒)を合計した時間(たとえば10分50秒)である。基板Wの表面の酸素曝露時間の上限は10分を基準としており、Nガスチャンバ12を採用しない構成ではこの基準時間を超過することになる。
【0057】
これに対して、この実施形態では、1巡目に処理チャンバ10Aで処理が施された基板W(「1」)の表面の高湿酸素雰囲気の曝露時間は、処理チャンバ10AからNガスチャンバ12までの搬送時間a(たとえば20秒)、Nガスチャンバ12内に基板Wが搬入されてから、基板対向面20と基板Wとの間にNガスが充満するまでのパージ時間b(たとえば5秒)、Nガスチャンバ12から基板収容器Cまでの搬送時間c(たとえば20秒)、残りの7枚の基板W(「2」〜「8」)がNガスチャンバ12から基板収容器Cまで搬送される時間と、最後に処理された基板W(「25」)が処理チャンバ10Aから基板収容器Cまで搬送される時間との合計時間d(たとえば、12秒×7+12秒)、および基板収容器Cの開口が閉塞されてから基板収容器C内にNガスが充満するまでのパージ時間e(たとえば90秒)を合計した時間(たとえば、3分41秒)である。したがって、酸素曝露時間の基準時間(10分)を超過しない。
【0058】
また、2巡目に処理チャンバ10Aで処理が施された基板W(「9」)の表面の高湿酸素雰囲気の曝露時間は、処理チャンバ10Aから基板収容器Cまでの搬送時間f(たとえば20秒)、処理チャンバ10Aにおいて3巡目の処理が開始されてから4回目の処理が終了するまでの時間(たとえば、3分×2+20秒)、および基板収容器Cの開口が閉塞されてから基板収容器C内にNガスが充満するまでのパージ時間e(たとえば90秒)を合計した時間(たとえば、8分10秒)である。したがって、酸素曝露時間の基準時間(10分)を超過しない。
【0059】
以上のようにこの実施形態によれば、Nガスチャンバ12では、基板Wの表面と基板対向面20との間がNガスで充満されて、基板Wの表面がインデクサ部3内の高湿酸素雰囲気から遮断されている。
したがって、基板Wをリフトピン17に保持させて、当該基板Wの表面をインデクサ部3内の高湿酸素雰囲気から遮断しておき、その間に処理チャンバ10で他の基板Wに処理を施すことにより、当該基板Wの表面が高湿酸素雰囲気に晒される時間(曝露時間)を短縮化することができる。これにより、基板Wの表面に与える悪影響を最低限に抑えることができる。
【0060】
また、Nガスチャンバ12がインデクサ部3内に配置されるので、Nガスチャンバ12から基板収容器Cまでの距離が比較的近い。このため、Nガスチャンバ12から基板収容器Cまでの基板の搬送時間を短縮することができる。
さらに、基板収容器Cから最後に搬出された基板W(4巡目の基板W(「25」))が基板収容器Cに戻される直前に、Nガスチャンバ12内に保持されている基板Wが基板収容器Cに戻される。このため、基板収容器C内が閉塞される直前まで、基板Wを高湿酸素雰囲気から遮断しておくことができる。これにより、基板Wの高湿酸素雰囲気の曝露時間をより一層短縮化させることができる。
【0061】
また、Nガスチャンバ12で高湿酸素雰囲気から遮断されていた8枚の基板Wが、4巡目の基板W(「25」)よりも前に基板収容器Cに収容されるので、基板収容器Cに収容されている他の基板Wの高湿酸素雰囲気の曝露時間が長くなることを防止することができる。
図9は、本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置のNガスチャンバ12Aの構成を図解的に示す正面図である。図10は、図9に示す対向部材16Aの底面図である。
【0062】
この第2実施形態において、前述の第1実施形態(図1〜図8に示す実施形態)に示された各部に対応する部分には、図1〜図8と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この第2実施形態に係るNガスチャンバ12Aが、前述の第1実施形態のNガスチャンバ12と大きく相違する点は、各周縁部吐出口22Aの吐出方向が鉛直下向きではなく、鉛直方向に対して所定角度だけ傾斜している点である。
【0063】
具体的に説明すると、Nガスチャンバ12Aは、略円板状に形成された対向部材16Aを備えている。対向部材16Aの下面には、複数本のリフトピン17に保持された基板Wの表面と対向する水平な基板対向面20が形成されている。対向部材16Aの周縁部には、複数のリフトピン17に保持された基板Wの周縁部に対向する複数個(たとえば8つ)の周縁部吐出口22Aが形成されている。複数個の周縁部吐出口22Aは、等角度間隔に設けられている。各周縁部吐出口22Aの吐出方向は、平面視で接線方向に沿っており、鉛直方向に対して所定角度(たとえば60°)傾斜している。これら各周縁部吐出口22Aの吐出方向は周方向一方向を向いている。この実施形態では、周縁部吐出口22Aは、第1実施形態の周縁部吐出口22とは異なり、基板Wの周縁の直上位置に配置されている。
【0064】
各周縁部吐出口22BからNガスが吐出されることにより、基板Wの側方を包囲する気流が形成される。この気流により、基板Wの表面上の空間が、気流の外側の空間から遮断される。その結果、気流の外側の空間の雰囲気が基板Wの表面上の空間に流入することを防止することができる。
また、各周縁部吐出口22Bの吐出方向が鉛直方向からその接線方向に傾斜しているので、吐出方向が鉛直方向である場合と比較して、各周縁部吐出口22Bから吐出される気流同士の間隔が狭い。したがって、基板Wの側方の空間の雰囲気が基板Wの表面上の空間に流入することを、より効果的に防止できる。
【0065】
図11は、本発明のさらに他の実施形態(第3実施形態)に係る基板処理装置1Bの図解的な斜視図であり、図12は、その平面図である。
この第3実施形態において、前述の第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図8と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この第3実施形態が、前述の第1実施形態と相違する点は、8つのNガスチャンバ12Bのうち、2つのNガスチャンバ12Bだけがインデクサ部3に配置されており、他の6つのNガスチャンバ12Bは処理部2に収容されている点である。
【0066】
具体的に説明すると、インデクサ部3の天面には、2つのNガスチャンバ12Bがインデクサ部3の長手方向に沿って並んで配置されている。また、処理部2の搬送路9の天面には、3つのNガスチャンバ12Cが上下方向に積層されてシャトル搬送部7の周辺に配置されている。搬送路9上において、主搬送ロボット11に対してインデクサ部と反対側には、3つのNガスチャンバ12Dが上下方向に積層されている。これら3つのNガスチャンバ12Bは、搬送路9の天面ではなく、搬送路9の底面上に配置されている。
【0067】
ガスチャンバ12BおよびNガスチャンバ12C内には、インデクサロボット6がハンドを進入させることができるようになっており、インデクサロボット6は、Nガスチャンバ12B,12Cとの間で基板Wの搬出/搬入を行うことができる。
ガスチャンバ12D内には、主搬送ロボット11がハンドを進入させることができるようになっており、主搬送ロボット11は、Nガスチャンバ12Dとの間で基板Wの搬出/搬入を行うことができる。
【0068】
処理チャンバ10A〜10Hにおける基板Wの処理が終了すると、処理済の基板Wが主搬送ロボット11によって、各処理チャンバ10A〜10Hから搬出される。これら処理チャンバ10A〜10Hから搬出された8枚の処理済の基板Wのうち3枚の基板Wは、主搬送ロボット11によってNガスチャンバ12D内に搬入される。また、8枚の処理済の基板Wのうちその他の5枚は、インデクサロボット6に受け渡されて、そのうちの3枚の基板WがNガスチャンバ12B内に搬入され、他の2枚の基板WがNガスチャンバ12C内に搬入される。
【0069】
基板Wの搬出タイミングになると、各Nガスチャンバ12B〜12Dに収容されている基板Wが、基板収容器Cに向けて一枚ずつ順に搬送されていく。具体的には、基板収容器Cから最も遠いNガスチャンバ12D、Nガスチャンバ12CおよびNガスチャンバ12Bの順で、基板Wの基板収容器Cへの移動動作が行われる。
ガスチャンバ12Dに収容されていた基板Wは、主搬送ロボット11によってNガスチャンバ12Dから搬出されるとともに、インデクサロボット6に受け渡された後、このインデクサロボット6により、基板収容器Cに収納される。
【0070】
また、Nガスチャンバ12Cで、高湿酸素雰囲気から遮断されていた基板Wは、インデクサロボット6によって、Nガスチャンバ12Cから搬出されて、この基板収容器Cに収納される。
さらに、Nガスチャンバ12Bで高湿酸素雰囲気から遮断されていた基板Wも、インデクサロボット6によって、Nガスチャンバ12Bから搬出されて、この基板収容器Cに収納される。
【0071】
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
前述の第1実施形態では、Nガスチャンバ12は、平板部18の周縁から垂れ下がって基板Wの側方を包囲する包囲部19を備えているが、図13に示すようにこの包囲部19を備えていなくてもよい。この場合、天板13の下面13aが基板対向面となり、また、この天板13の天面に、Nガスを吐出するための吐出口21,22が形成される。
【0072】
また、前述の第3実施形態では、複数個のNガスチャンバ12B〜12Dの一部だけを、処理部2の搬送路9上に配置する構成を例にとって説明したが、複数個のNガスチャンバの全てを処理部2の搬送路9上に配置する構成であってもよい。
また、前述の各実施形態では、基板収容器Cから未処理の基板Wを取り出すとともに、その取り出した基板Wの処理の後に、その処理済の基板を元の基板収容器Cに収納する(戻す)場合を例にとって示したが、他の基板収容器Cに処理済の基板Wを収納する構成であってもよい。
【0073】
さらに、8つの処理チャンバ10A〜10Hを備える基板処理装置1,1Bを例に挙げて説明したが、処理チャンバ数は4つであってもよいし、12つであってもよい。
また、前述の各実施形態では、搬送路9上にシャトル搬送部7を配置する構成を例に挙げて説明したが、このシャトル搬送部7が省略された構成であってもよい。
さらにまた、前述の各実施形態では、基板収容器Cとして、基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を例示しているが、これ以外にも、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)等の他の形態の基板収容器を用いることもできる。
【0074】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の図解的な斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の図解的な平面図である。
【図3】Nガスチャンバの構成を図解的に示す縦断面図である。
【図4】図3に示す対向部材の底面図である。
【図5】基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】Nガスチャンバにおける基板WのNガスの供給の様子を図解的に示す縦断面図である。
【図7】Nガスの吐出時における中央部吐出口および周縁部吐出口からの吐出流量を示すタイムチャートである。
【図8】基板処理装置における基板Wの搬送状態を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のNガスチャンバの構成を図解的に示す正面図である。
【図10】図9に示す対向部材の底面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の図解的な斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の図解的な平面図である。
【図13】Nガスチャンバの変形例を図解的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1,1B 基板処理装置
3 インデクサ部(搬送室)
6 インデクサロボット
6A ハンド
7 シャトル搬送部
9 搬送路(搬送室)
10A〜10H 処理チャンバ
11 主搬送ロボット
13a 下面(基板対向面)
16;16A 対向部材
17 リフトピン(基板保持部材)
19 包囲部
20,20A 基板対向面
21 中央部吐出口
22 周縁部吐出口
27 第1供給管(低湿低酸素ガス供給機構)
28 第2供給管(低湿低酸素ガス供給機構)
29 周縁部用Nバルブ(周縁部用バルブ)
30 中央部用Nバルブ(中央部用バルブ)
34 リフトピン昇降機構(保持部材移動機構)
35 制御装置(制御手段)
C 基板収容器
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容して、当該基板に対して処理を施すための処理チャンバと、
複数枚の基板を収容可能な基板収容器と前記処理チャンバとの間を搬送される基板が通過する搬送室と、
前記搬送室内に設けられ、基板を保持するための基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面に対向する基板対向面を有する対向部材と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面と前記基板対向面との間に低湿低酸素ガスを供給する低湿低酸素ガス供給機構とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持部材および前記対向部材の少なくとも一方を相対的に移動させて、前記基板の表面と前記基板対向面とを接近/離反させる移動機構をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記対向部材に対して前記基板保持部材を移動させる保持部材移動機構を含む、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記基板対向面に対向する所定の近接位置に基板の表面が配置された状態で、基板の側方を包囲する包囲部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記搬送室は、前記基板収容器の配置位置に隣接して設けられたインデクサ部を含み、
当該インデクサ部に、前記基板保持部材および前記対向部材が配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板対向面には、前記低湿低酸素ガス供給機構からの低湿低酸素ガスが吐出される吐出口が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記吐出口が、基板の表面の中央部に対向する中央部吐出口と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の周縁部に対向する周縁部吐出口とを含み、
前記低湿低酸素ガス供給機構が、前記中央部吐出口からの低湿低酸素ガスの吐出および吐出停止を切り換えるための中央部用バルブと、前記周縁部吐出口からの低湿低酸素ガスの吐出および吐出停止を切り換えるための周縁部用バルブとを含み、
前記基板処理装置は、前記中央部吐出口および前記周縁部吐出口から低湿低酸素ガスを吐出させるときに、前記周縁部用バルブの開成に先立ち、前記中央部用バルブを開成させるバルブ制御手段をさらに含む、請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部材は、前記基板収容器に収容可能な基板の枚数よりも少ない複数個設けられており、
前記各基板保持部材は、基板を一枚ずつ保持可能であり、
前記基板処理装置は、前記処理チャンバ、前記基板収容器および前記各基板保持部材間を基板を搬送する基板搬送機構と、
前記基板搬送機構を制御して、前記基板収容器から前記処理チャンバへ基板を一枚ずつ順に搬送させ、前記処理チャンバで処理済の基板を前記複数の基板保持部材へ順に搬送させて、前記複数の基板保持部材に前記複数の基板が保持された後は、前記処理チャンバで処理済の基板を前記基板収容器へ搬送させ、前記基板収容器から最後に搬出された基板が前記基板収容器に戻される直前に、前記複数の基板保持部材に保持されている複数の基板が全て前記基板収容器に戻されるように、前記基板保持部材から基板収容器へ基板を搬送させる搬送制御手段とをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−45299(P2010−45299A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209811(P2008−209811)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】