説明

多気筒エンジンの吸排気装置

【課題】簡単な構成で吸気効率を高めてエンジントルクおよび燃費性能を高めることのできる多気筒エンジンの吸排気装置を提供する。
【解決手段】独立排気通路52と合流部58との間に介在する絞り部53と、絞り部53内に形成された各ガス通路の流路面積を変更可能な流路面積変更手段55fとを設け、各ガス通路を、その流路面積が最大面積よりも小さい状態において、下流側の方が流路面積が小さくなる形状とし、高速高負荷領域A1において、各ガス通路の流路面積を最大面積にする一方、低速低負荷領域を含む第2運転領域A2において、各ガス通路の流路面積を最大面積よりも小さい面積にするとともに、吸排気弁をオーバーラップさせ、かつ、排気順序が連続する気筒どうしで一方の排気弁の開弁時に他方の吸排気弁をオーバーラップさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ形成されるとともに前記吸気ポートを開閉可能な吸気弁と前記排気ポートを開閉可能な排気弁とが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの吸排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンにおいて、エンジントルクを高めることを目的とした吸排気装置の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ターボ過給機を有する装置であって、各気筒の排気ポートに接続されて互いに独立する複数の独立通路と、ターボ過給機の上流に設けられてこれら独立通路が集合する集合部と、この集合部に設けられて各独立通路の流路面積を変更可能なバルブとを備えたものが開示されている。この装置では、前記バルブによって前記独立排気通路の流路面積を縮小することで、排気行程にある気筒の排気を所定の独立通路から前記集合部に比較的高速で流入させ、この高速の排気の周囲に生成された負圧を前記集合部において他の独立通路に作用させるいわゆるエゼクタ効果によってこの他の独立通路内の排気を下流側に吸い出すことで、ターボ過給機に供給されるガス量を増大させてエンジントルクを向上させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等のエンジンにおいて、エンジントルクの向上要求は依然として高く、簡単な構成でより一層エンジントルクを高めることが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成で吸気効率を高めてエンジントルクを高めることができる多気筒エンジンの吸排気装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ形成されるとともに前記吸気ポートを開閉可能な吸気弁と前記排気ポートを開閉可能な排気弁とが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの吸排気装置であって、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される独立排気通路と、前記各独立排気通路よりも下流側に設けられて、当該各独立排気通路を通過した排気が内側で集合する集合部と、前記各独立排気通路と前記集合部との間に介在して、前記各独立排気通路から排出された排気がそれぞれ独立して流入する複数のガス通路が内側に形成された絞り部と、前記絞り部内の各ガス通路の流路面積を変更可能な流路面積変更手段と、前記各気筒の吸気弁および排気弁を駆動可能なバルブ駆動手段と、前記流路面積変更手段および前記バルブ駆動手段を制御可能な制御手段とを備え、前記制御手段は、エンジンの回転数が予め設定された基準回転数よりも高くエンジンの負荷が予め設定された所定の負荷よりも高い高速高負荷領域を少なくとも含む第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記各ガス通路の流路面積を最大面積にさせる一方、エンジンの回転数が前記基準回転数よりも低くエンジンの負荷が予め設定された所定の負荷よりも高い低速高負荷領域を少なくとも含む第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記各ガス通路の流路面積を前記最大面積よりも小さい面積にさせるとともに、前記各気筒の吸気弁の開弁期間と排気弁の開弁期間とが所定のオーバーラップ期間重複し、かつ、排気順序が連続する気筒間において一方の気筒の前記オーバーラップ期間が他方の気筒の排気弁が開弁している時期に重複するように、前記バルブ駆動手段により前記各気筒の吸気弁および排気弁を駆動させ、前記各ガス通路は、排気順序が連続する気筒に接続された前記独立排気通路に対応するガス通路が互いに近接するように配置されているとともに、エンジンが前記第2運転領域で運転されて当該ガス通路の流路面積が前記最大面積よりも小さい面積とされた状態において、前記各気筒の排気ポートから当該各ガス通路を通って前記集合部に排気が排出されるのに伴い他のガス通路およびこのガス通路と連通する排気ポート内にエゼクタ効果によって負圧が生成されるように、当該各ガス通路の下流側の流路面積の方がその上流側の流路面積よりも小さくなる形状を呈することを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置を提供する(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、低速高負荷領域を含む第2運転領域においてエゼクタ効果を効果的に利用して気筒内の掃気を促進することができ、これにより高いエンジントルクを得ることができるとともに、高速高負荷領域を含む第2運転領域において排気抵抗を小さく抑えることができ、これにより高いエンジントルク、また、高い熱効率を得ることができ、第1運転領域と第2運転領域とを含むより広い運転領域においてエンジントルク、熱効率ひいては燃費性能を高めることができる。特に、独立排気通路と集合部との間に介在する絞り部内のガス通路の流路面積を変更するという簡単な構成で、この効果を実現することができる。
【0009】
具体的には、この構成では、前記第2運転領域において、所定の気筒のオーバーラップ期間が他の気筒の排気弁が開弁している時期に重複するように制御され、絞り部内の各ガス通路の流路面積が最大面積よりも小さい面積に制御されるとともに、所定の気筒から排気が排出されるのに伴い近接する他のガス通路につながる排気順序が連続する他の気筒の排気ポート(オーバーラップ期間中の排気ポート)内にエゼクタ効果によって負圧が生成されるように、各ガス通路の形状が、その下流側の流路面積の方がその上流側の流路面積よりも小さくなるように構成されている。そのため、前記第2運転領域において、オーバーラップ期間にある気筒の排気ポートに負圧を生成させてこの負圧により気筒内の残留ガスをより多く排気ポート側に吸い出すことができる。すなわち、掃気性能を高めることができ、この掃気性能の向上に伴い、吸気効率の増大、および、残留ガスの低減に伴うノッキングの抑制を実現して、高いエンジントルクを得ることができる。
【0010】
ここで、エンジン回転数および負荷が高くなり排気流量が増大した場合において、前記各ガス通路の流路面積が小さいと、排気抵抗が増大してかえって掃気性能が悪化するおそれがある。これに対して、本構成では、高速高負荷領域を含む第1運転領域において、ガス通路が最大面積とされて、各独立排気通路から排出された排気が絞り部内においてより抵抗の小さい状態で通過するように制御される。そのため、この第1運転領域において、排気流量の増大に伴い増大する排気抵抗を小さく抑えて、排気のポンピングロスを小さく、また、吸気効率を高くすることができ、これにより、この第1運転領域においても、高いエンジントルク、また、高い熱効率を得ることができる。
【0011】
本発明において、前記各ガス通路は、前記各独立排気通路の下流端から前記集合部まで延びて前記各独立排気通路とそれぞれ個別に連通するとともに前記集合部と連通する第1通路と、当該各第1通路と前記集合部とに連通する第2通路とを含み、前記流路面積変更手段は、前記第2通路の流路面積を変更することで前記各ガス通路の流路面積を変更し、前記制御手段は、前記第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第2通路の流路面積を最大面積にさせる一方、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第2通路の流路面積を前記最大面積よりも小さくさせるのが好ましい(請求項2)。
【0012】
このようにすれば、前記絞り部内に第1通路と第2通路とを形成し、第2通路の流路面積を変更するという簡単な構成で、前記各ガス通路の流路面積を容易に変更することができる。
【0013】
前記構成において、前記絞り部は、上下流方向に延びて内側に前記各第1通路が形成された内管と、上下流方向に延びて前記内管を内側に収容する外管とを有し、前記第2通路は、前記外管の内周面と前記内管の外周面との間に区画されており、前記内管には、前記各第1通路と前記第2通路とをそれぞれ連通する連通口が形成されており、前記内管の外周面は、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って当該内管の軸に近づく方向に傾斜する内管側傾斜部を有し、前記外管の内周面は、前記内管側傾斜部と略平行に延びる外管側傾斜部を有し、前記流路面積変更手段は、前記外管を前記内管に対して上下流方向に移動させて前記外管側傾斜部と前記内管側傾斜部との離間量を変更することで、前記第2通路の流路面積を変更するのが好ましい(請求項3)。
【0014】
このようにすれば、絞り部を外管と内管とからなる二重管構造にするという簡単な構成で、絞り部内に第1通路と第2通路とを容易に区画形成することができる。また、内管を内側に収容する外管を上下流方向にスライドさせるという簡単な構成で、第2通路の流路面積を容易に変更することができる。
【0015】
前記構成において、前記連通口は、前記内管側傾斜部に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0016】
このようにすれば、排気を、下流向きのままで第1通路から第2通路に流入させることができ、より抵抗の少ない状態で流下させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記各ガス通路は、前記各独立排気通路の下流端から前記集合部まで延びて前記各独立排気通路とそれぞれ個別に連通するとともに前記集合部と連通する第1通路と、当該各第1通路と前記集合部とに連通する第2通路とを含み、前記流路面積変更手段は、前記第1通路と第2通路との連通量を変更可能であり、前記制御手段は、前記第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第1通路と第2通路との連通量を最大にさせる一方、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第1通路と第2通路との連通量を前記最大量よりも小さくさせるのが好ましい(請求項5)。
【0018】
このようにすれば、前記絞り部内に第1通路と第2通路とを形成し、第1通路と第2通路との連通量を変更するという簡単な構成で、前記各ガス通路の流路面積を容易に変更することができる。
【0019】
前記構成において、前記絞り部は、内側に前記各第1通路が形成された内管と、当該内管を内側に収容する外管とを有し、前記第2通路は、前記外管の内周面と前記内管の外周面との間に区画されており、前記内管には、前記各第1通路と前記第2通路とをそれぞれ連通する連通口が形成されており、前記流路面積変更手段は、前記連通口の開口量を変更可能であり、この連通口の開口量を変更することで前記第1通路と前記第2通路との連通量を変更するのが好ましい(請求項6)。
【0020】
このようにすれば、絞り部を外管と内管とからなる二重管構造にするという簡単な構成で、絞り部内に第1通路と第2通路とを容易に区画形成することができる。また、これら連通口の開口量を変更するという簡単な構成で、各ガス通路の流路面積を変更することができる。ここで、第2通路は、第1通路と連通して当該第1通路内の排気の一部が流入するように構成されている。すなわち、前記連通口が開口して第1通路と第2通路とが連通している状態において、各独立排気通路から排出された排気は、第1通路に流入した後、その一部が連通口を通って第2通路に流入する。そのため、これら第1通路と第2通路とからなる各ガス通路の流路面積すなわち独立排気通路から排出された排気が集合部に到達するまでに通過する領域の面積は、第1通路の流路面積と連通口の開口量とで決定される。そして、ここでいう各ガス通路の流路面積とは、この第1通路の流路面積と連通口の開口量とで決定されて、前記連通口の開口量に応じて変化する面積のことをいう。
【0021】
前記構成において、前記内管のうち前記連通口が形成された部分の外周面は、上下流方向に延びる軸を中心とする略円周面状を呈し、前記各連通口は、前記内管の外周面において周方向に互いに離間した位置にそれぞれ形成されており、前記流路面積変更手段は、前記内管の外周面に沿って延びる形状を有し、前記各連通口をそれぞれ塞ぐことが可能であるとともに、前記内管の外周面を周方向に移動することで前記各連通口を塞ぐ位置と当該連通口を開口させる位置との間で変位可能な蓋部を含み、当該各蓋部を前記内管の外周面の周方向に移動させることで前記連通口の開口量を変更するのが好ましい(請求項7)。
【0022】
このようにすれば、前記蓋部を内管の外周面に沿って周方向に移動させる、すなわち、蓋部を上下流方向に延びる軸周りに回転させるという簡単な構成で、前記連通口の開口量を容易に変更することができる。また、蓋部は、その位置によらず内管の外周面に沿って延びており、当該蓋部によって排気の流れが阻害されるのを抑制することができる。
【0023】
また、本発明において、前記制御手段は、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により、エンジンの回転数が高いほど前記各ガス通路の流路面積を大きくさせるのが好ましい(請求項8)。
【0024】
このようにすれば、第2運転領域においても、エンジンの回転数が高くなるのに従って増加する排気抵抗を適正に抑制しつつエゼクタ効果による掃気性能を得ることができる。そのため、エンジントルクをより効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、より広い運転領域においてエンジントルクおよび熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の概略構成図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【図4】吸気弁および排気弁のバルブタイミングを説明するための図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】外管が流路面積最小位置にある状態における絞り部周辺の断面図である。
【図7】(a)図6をVII−VII線で切断した切断面の図である。(b)(a)の図のうち内管のみを示した図である。(c)(a)の図のうち外管のみを示した図である。
【図8】(a)図6をVIII−VIII線で切断した切断面の図である。(b)(a)の図のうち内管のみを示した図である。(c)(a)の図のうち外管のみを示した図である。
【図9】をIX−IX線で切断した切断面の図である。
【図10】外管が流路面積最小位置よりも下流側にある状態における絞り部周辺の断面図である。
【図11】図10をXI−XI線で切断した切断面の図である。
【図12】外管の一部を示す概略斜視図である。
【図13】外管が流路面積最大位置にある状態における絞り部周辺の断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置で用いられる制御マップを示した図である。
【図15】ガス通路の流路面積および外管の位置の制御例を示した図である。
【図16】全負荷におけるガス通路の流路面積および外管の位置の制御例を示した図である。
【図17】吸気弁および排気弁の開弁時期および閉弁時期を説明するための図である。
【図18】本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の効果を示す図である。
【図19】本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の効果を示す図である。
【図20】発明の第1実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置と比較する装置を示した図である。
【図21】(a)発明の第3実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の絞り部を上流から見た図である。(b)発明の第3実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の絞り部の断面図である。
【図22】発明の第4実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置の絞り部を上流から見た図である。
【図23】(a)発明の第4実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置において蓋部が全閉位置にある状態の内管の概略斜視図である。(b)発明の第4実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置において蓋部が全開位置にある状態の内管の概略斜視図である。
【図24】(a)図23の(a)に対応する絞り部の断面図である。(b)図23の(b)に対応する絞り部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る多気筒エンジンの吸排気装置100の概略構成図である。図2は、図1の一部の概略側面図である。図3は、この多気筒エンジンの吸排気装置100の制御系を示すブロック図である。この装置100は、シリンダヘッド9およびシリンダブロック10(図2参照)を有するエンジン本体1と、ECU(制御手段、図3参照)90と、エンジン本体1に接続される排気マニホールド50と、排気マニホールド50に接続される触媒装置60とを備えている。
【0028】
シリンダヘッド9およびシリンダブロック10の内部にはピストンがそれぞれ嵌挿された複数の気筒12が形成されている。本実施形態では、エンジン本体1は、直列4気筒のエンジンであって、シリンダヘッド9およびシリンダブロック10の内部には4つの気筒12が直列に並んだ状態で形成されている。具体的には、図1の右から順に第1気筒12a,第2気筒12b,第3気筒12c,第4気筒12dが形成されている。シリンダヘッド9には、ピストンの上方に区画された燃焼室内に臨むようにそれぞれ点火プラグ15が設置されている。
【0029】
エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、図4に示すように、各気筒12a〜12dにおいて、180℃Aずつずれたタイミングで点火プラグ15による点火が行われて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がそれぞれ180℃Aずつずれるように構成されている。本実施形態では、第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に点火が行われてこの順に排気行程等が実施される。
【0030】
シリンダヘッド9には、それぞれ燃焼室に向かって開口する2つの吸気ポート17および2つの排気ポート18が設けられている。吸気ポート17は、各気筒12内に吸気を導入するためのものである。排気ポート18は、各気筒12内から排気を排出するためのものである。各吸気ポート17には、これら吸気ポート17を開閉して吸気ポート17と気筒12内部とを連通あるいは遮断するための吸気弁19が設けられている。各排気ポート18には、これら排気ポート18を開閉してこれら排気ポート18と気筒12内部とを連通あるいは遮断するための排気弁20が設けられている。吸気弁19は吸気弁駆動機構(バルブ駆動手段)30により駆動されることで、所定のタイミングで吸気ポート17を開閉する。また、排気弁20は、排気弁駆動機構(バルブ駆動手段)40により駆動されて、所定のタイミングで排気ポート18を開閉する。
【0031】
吸気弁駆動機構30は、吸気弁19に連結された吸気カムシャフト31と吸気VVT32とを有している。吸気カムシャフト31は、周知のチェーン/スプロケット機構等の動力伝達機構を介してクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴い回転して、吸気弁19を開閉駆動する。
【0032】
吸気VVT32は、吸気弁19のバルブタイミングを変更するためのものである。この吸気VVT32は、吸気カムシャフト31と同軸に配置されてクランクシャフトにより直接駆動される所定の被駆動軸と吸気カムシャフト31との間の位相差を変更して、これによりクランクシャフトと前記吸気カムシャフト31との間の位相差を変更することで、吸気弁19のバルブタイミングを変更する。吸気VVT32の具体的構成としては、例えば、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に周方向に並ぶ複数の液室を有し、これら液室間に圧力差を設けることで前記位相差を変更する液圧式機構や、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に設けられた電磁石を有し、前記電磁石に電力を付与することで前記位相差を変更する電磁式機構等が挙げられる。この吸気VVT32は、ECU90で算出された吸気弁19の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。
【0033】
排気弁駆動機構40は、吸気弁駆動機構30と同様の構造を有している。すなわち、排気弁駆動機構40は、排気弁20およびクランクシャフトに連結された排気カムシャフト41と、この排気カムシャフト41とクランクシャフトとの位相差を変更することで排気弁20のバルブタイミングを変更する排気VVT42とを有している。排気VVT42は、ECU90で算出された排気弁20の目標バルブタイミングに基づいて、前記位相差を変更する。そして、排気カムシャフト41は、この位相差の下でクランクシャフトの回転に伴って回転して排気弁20を前記目標バルブタイミングで開閉駆動する。
【0034】
なお、本実施形態では、吸気VVT32および排気VVT42は、吸気弁19および排気弁20の開弁期間及びリフト量つまりバルブ・プロファイルをそれぞれ一定に保ったまま、吸気弁19および排気弁20の開弁時期と閉弁時期とをそれぞれ変更する。
【0035】
(2)排気系の構成
排気マニホールド50と触媒装置60とを含む排気系の詳細について次に説明する。排気マニホールド50は、上流側から順に、3つの独立排気通路52と、可動部51とを備えている。
【0036】
(2−1)独立排気通路52の構成
図1に示すように、前記各独立排気通路52は、シリンダヘッド9に形成された前記各気筒12の排気ポート18に接続されている。具体的には、前記気筒12のうち第1気筒12aの排気ポート18と第4気筒12dの排気ポート18とは、それぞれ個別に独立排気通路52,52に接続されている。一方、排気行程が隣り合わず排気順序が連続しない第2気筒12bと第3気筒12cの排気ポート18は、これら各気筒12b,12cから同時に排気が排出されることがないため、構造を簡素化する観点から、二股状に形成された1つの独立排気通路52に接続されている。詳細には、この第2気筒12bと第3気筒12cの排気ポート18に接続されている独立排気通路52は、その上流側において2つの通路に分離しており、その一方に第2気筒12bの排気ポート18が接続され、他方に第3気筒12cの排気ポート18が接続されている。
【0037】
本実施形態では、第2気筒12bおよび第3気筒12cの排気ポート18に対応する独立排気通路52は、これら気筒12b,12cの中間位置すなわちエンジン本体1の略中央部分と対向して直線的に延びており、他の気筒12a,12dの排気ポート18に対応する独立排気通路52は、対応する各排気ポート18と対向する位置から前記第2気筒12bおよび第3気筒12cに対応する独立排気通路52に向かって湾曲して延びている。また、図2に示すように、各独立排気通路52は、シリンダヘッド9から水平方向に延びた後、車両前後方向の後ろ斜め下方に延びている。
【0038】
図5は、図1のV−V線断面図である。この図5に示されるように、各独立排気通路52の下流端52aの断面形状(開口形状)は円形である。これら円形の下流端52aは、後ろ斜め下方に延びる軸L(図2参照)上の点O1を中心とする円の円周上に、互いに等間隔に配列されている。
【0039】
(2−2)可動部51の構成
図1および図2等に示すように、可動部51は、二重管構造であって、円筒状の収容管51aの内側に絞り部53と合流部58とが収容された構造を有している。絞り部53と合流部58とは、上流側からこの順序で並んでいる。収容管51aは、各独立排気通路52の下流端52aが並ぶ円周の中心点O1を通る軸Lを中心軸とする円筒であり、後ろ斜め下方に延びている。
【0040】
(2−2−1)絞り部53の構成
図6は、後述する外管55が最も上流に位置する状態(以下、この最上流位置を流路面積最小位置という)における可動部51付近を拡大して示した断面図である。図7(a)は、図6のVII−VII線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。図7(b)は、図7(a)のうち後述する内管54のみを示した図である。図7(c)は、図7(b)のうち外管55のみを示した図である。図8(a)は、図6のVIII−VIII線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。図8(b)は、図8(a)のうち内管54のみを示した図である。図8(c)は、図8(b)のうち外管55のみを示した図である。図9は、図6のIX−IX線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。
【0041】
図10は、図6に対応する図であって、外管55が前記流路面積最小位置よりも下流側にスライドした状態における可動部51付近を拡大して示した断面図である。図11は、図9に対応する図であって、図10のXI−XI線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。
【0042】
絞り部53は、内管54と外管55とを有する。
【0043】
内管54は、上下流方向に延びる管状部材である。この内管54の内側には、上下流方向に延びて、各独立排気通路52にそれぞれ対応する第1通路54aが形成されている。本実施形態では、3つの第1通路54aが形成されている。内管54は、上流側部分が前記収容管51aの軸Lを中心軸とする円筒形をなし、そ流側部分が軸Lを中心として下流に向かうに従って縮径する略円錐台形状をなす外形を有している。すなわち、内管54の外周面54gは、その上流側部分に設けられて中心軸Lと平行に延びる円筒面状の円筒面54g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って中心軸L側に傾斜する略円錐台面状の内管側傾斜面54g_2(内管側傾斜部)とからなる。内管54の外周面54gの下流端の径は、例えば、内管54の外周面54gの上流端の径の約半分に設定されている。
【0044】
前記各第1通路54aは、軸Lを中心とする円の円周上に互いに等間隔に並んでいる。各第1通路54aは、その内周面のうち軸L側の部分がこの軸Lに沿って延びる一方、その内周面のうち軸Lから離間した側の部分が、内管54の外周面54gに沿って延びる形状を有している。この形状に伴い、各第1通路54aの流路面積は、下流側の方が上流側よりも小さくなっている。
【0045】
具体的には、各第1通路54aの上流端54bは、図7(a)、(b)に示すように、それぞれ円形を有している。一方、各第1通路54aの下流端54cは、図8(a)、(b)に示すように、1つの円を三分割した略扇形であって、その開口面積(流路面積)が各第1通路54aの円形の上流端54bの開口面積よりも小さくなるように構成されている。そして、各第1通路54aは、その円形の上流端54bから下流側に、同一流路面積で延びた後、この上流端54bよりも流路面積の小さい下流端54cに向かって徐々に流路面積を小さくしつつ、すなわち、縮径しつつ、延びている。本実施形態では、3つの第1通路54aの下流端54cで形成される円の直径と、1つの第1通路54aの上流端54bの円の直径とはほぼ同じ寸法に設定されている。
【0046】
内管54は、各第1通路54aの円形の上流端54bが、それぞれ前記各独立排気通路52の下流端52aと一致するように配置されている。そのため、各独立排気通路52の下流端52aから排出された排気は、対応する各第1通路54a内に個別に(独立して)流入する。
【0047】
内管54の管壁には、各第1通路54aにそれぞれ対応する位置に、各第1通路54aと内管54の外側とをそれぞれ連通する連通口54dが形成されている。各連通口54dは、内管54の外周面54gのうち前記内管側傾斜面54g_2に開口しており、上下流方向すなわち軸Lと平行な方向に開口している。本実施形態では、各連通口54dは、略円形である。
【0048】
また、内管54の管壁には、各第1通路54a間に対応する位置に、それぞれ内管54の外周面54gから軸Lに向かって延びるとともに上下流方向に延びる溝54eが形成されている。
【0049】
外管55は、上下流方向に延びる管状部材である。外管55の内側には1つの通路が形成されており、この通路内に前記内管54が収容されている。外管55の内周面55gは、外管55が前記流路面積最小位置にある状態において、内管54の外周面54gに沿って延びている。すなわち、外管55の内周面55gは、その上流側部分に設けられて前記軸Lと平行に延びる円筒面状の円筒面55g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って軸L側に傾斜する略円錐台面状の外管側傾斜面55g_2(外管側傾斜部)とからなる。外管55の外管側傾斜面55g_2は、外管55が流路面積最小位置にある状態において、内管54の内管側傾斜面54g_2に接触しており、この状態において、前記各連通口54dを塞ぐように構成されている。
【0050】
図12に、外管55の一部の斜視図を示す。この図12および図7(a)等に示すように、外管55には、前記各溝54eに対応して、その内周面55gから軸Lに向かって延びるとともに上下流方向に延びる複数の区画壁55eが形成されている。これら区画壁55eは、前記各溝54e内に挿入されている。
【0051】
外管55は、内管54に対して上下流方向に相対移動可能である。本実施形態では、内管54は動かず、外管55が軸Lと平行に上下流方向にスライドする。なお、本実施形態では、外管55は、前記合流部58と一体に形成されており、合流部58とともに上下流方向にスライドする。
【0052】
具体的には、図1に示すように、外管55の外周面には、スライドアクチュエータ55fが取り付けられている。スライドアクチュエータ55fは、ECU90の指令を受けて、外管55を、軸Lと平行に、図6に示す位置(流路面積最小位置)と図13に示す最も下流側の位置(以下、この最下流位置を流路面積最大位置という)との間でスライドさせる。このとき、前記外管55の各区画壁55eは、内管54の各溝54e内をスライドする。スライドアクチュエータ55fは、外管55の位置を、流路面積最小位置と流路面積最大位置との間で連続的に変更させる。
【0053】
図6に示す流路面積最小位置において、外管55は、内管54の上流端から下流端まで延びる。前述のように、この状態において、外管55の内周面55gは、内管54の外周面54gと接触して、連通口54dを塞ぐ。連通口54dが塞がれると、各独立排気通路52から排出された排気は、絞り部53のうち第1通路54aのみを通過して流下する。このように、外管55が流路面積最小位置にある状態では、絞り部53内に形成されて排気が通過可能なガス通路は、第1通路54aのみで構成され、ガス通路の流路面積は最小面積となる。
【0054】
一方、図10に示すように、外管55が図6に示す流路面積最小位置から下流側にスライドすると、外管55の内周面55gは内管54の外周面54gから下流側および径方向外側(中心軸Lから離れる方向)に離間する。この離間に伴い、前記各連通口54dは開口し、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの間には第2通路55aが出現する。
【0055】
図11に示されるように、前記外管55の各区画壁55eが内管54の各溝54e内に挿入されている。そのため、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの間には、区画壁55eによって、3つの第2通路55aが区画される。各第2通路55aは、各第1通路54aの径方向外側にそれぞれ位置して、各連通口54dを介して第1通路54aと連通する。
【0056】
このように外管55が図6に示す流路面積最小位置から下流側にスライドした状態において、絞り部53内に形成されるガス通路は、第1通路54aと第2通路55aとによって構成され、各ガス通路の流路面積は、図6に示す最小面積よりも大きくなる。そして、各独立排気通路52から排出された排気は、第1通路54aに流入した後、その一部が前記連通口54dを介して第2通路55a内にも流入する。
【0057】
外管55の内周面55gおよび内管54の外周面54gは、いずれも、上流側の円筒面55g_1,54g_1と、下流側に向かうに従って軸L側に傾斜する円錐台面状の傾斜面と55g_2,54g_2で構成されている。そのため、これら外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとで区画される第2通路55aの流路面積は、下流側の方が上流側よりも小さくなる。従って、絞り部54内のガス通路の流路面積は、ガス通路が第1通路54aと第2通路55aとで構成される場合においても、第1通路54aのみで構成される場合と同様に、下流側の方が上流側よりも小さくなる。
【0058】
本実施形態では、前述のように、各第1通路54aは、互いに区画された第2通路55aとそれぞれ個別に連通している。そのため、各第1通路54aに流入した排気は、他の第2通路55aおよび他の第1通路54aに流入することなく、流下する。また、本実施形態では、連通口54dは、前記内管側傾斜面54g_2に形成されており、上下流方向に開口している。そのため、第1通路54a内の排気は、その向きを変化させることなく第2通路55aに流入し、抵抗、速度の低下が小さく抑えられた状態で流下する。
【0059】
第2通路55aの流路面積ひいては絞り部53内のガス通路の流路面積は、外管55の下流側へのスライド量が大きくなるほど大きくなる。具体的には、外管55が下流側へスライドするほど、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの径方向の離間量は大きくなり、それに応じて第2通路55aおよびガス通路の流路面積が大きくなる。
【0060】
前記外管55が図13に示す流路面積最大位置まで下流側にスライドした状態において、第2通路55aひいてはガス通路の流路面積は最大面積となる。図13に示す状態では、外管55の上流端は、内管54のうち円筒状を有する上流側部分の下流端に位置しており、外管55は、この位置から下流側に延びている。
【0061】
(2―2−2)合流部58の構成
合流部58は、各独立排気通路52から排出されて絞り部53を通過した排気が合流する部分である。外管55の位置に関わらず、各独立排気通路52から排出されて絞り部53の各ガス通路に流入した排気は、この合流部58内に流入する。
【0062】
なお、図10および図13に示すように、外管55が流路面積最小位置から下流側にスライドした状態では、外管55は内管54よりも下流側に延びており、第1通路54aを通過した排気は、外管55の内側に流入して第2通路55aを通過した排気と合流した後、合流部58内に流入する。
【0063】
合流部58は、図6等に示すように、上流側から順に、集合部58a、混合部58b、ディフューザー部58cを備えている。前記集合部58aは、外管55の下流端から下流に延びている。本実施形態では、前述のように、合流部58は外管55と一体にスライド可能に連結されている。
【0064】
後述するように、本装置では、所定の運転領域(第2運転領域A2)において、所定の気筒12から排出された排気を、絞り部53から集合部58a内に高速で排出させて、エゼクタ効果を発揮させ、他の気筒12の排気ポート18内に負圧を生じさせて、この気筒12の掃気性能を高めるよう構成されている。そのため、集合部58aは、絞り部53から排出された排気が、高い速度を維持したまま流下するように、下流側ほどその流路面積が小さくなる形状に設定されている。本実施形態では、集合部58aは、下流に向かうに従って縮径する略円錐台形状を有している。また、集合部58aの内周面は、絞り部53から流出した排気がこの内周面に沿って円滑に流下するように、外管55の下流側部分の内周面すなわち外管側傾斜面55g_2に連続して、下流に向かうに従って中心軸Lに近づく方向に傾斜している。そして、この集合部58aの中心軸Lに対する傾斜角度は、前記外管55の外管側傾斜面55g_2の傾斜角度とほぼ同じに設定されている。
【0065】
混合部58bは、集合部58aの下流端から下流側に延びる円筒形状を有しており、集合部58aの下流端の流路面積と同じ流路面積のまま下流側に延びている。ディフューザー部58cは、この混合部58bの下流端から下流に向かうに従って流路面積が拡大する略円錐台形状を有している。
【0066】
このように集合部58aおよび混合部58bでは、上流側の流路面積の方が下流側よりも大きい。そのため、排気はこの集合部58aと混合部58bとを高速で通過する。この通過時に、排気の圧力・温度は低下する。そのため、この集合部58aおよび混合部58bにおいて、排気の外部への放熱量は小さく抑えられる。そして、この混合部58bを通過した排気は、下流に向かうに従って流路面積が拡大するディフューザー部58cに流入することで、その圧力・温度が回復され、高い温度を維持したまま下流側に排出される。
【0067】
また、前述のように、本実施形態では、合流部58および絞り部53は、中空の収容管51a内に挿入されている。そのため、これら合流部58および絞り部53の通過時における排気の外部への放熱はより一層抑制され、合流部58からは高い温度の排気が下流側に排出される。
【0068】
(2−3)触媒装置60の構成
図1に示すように、触媒装置60は、エンジン本体1から排出された排気を浄化するための装置である。この触媒装置60は、触媒本体(触媒)64とこの触媒本体64を収容するケーシング62とを備えている。ケーシング62は排気の流れ方向と平行に延びる略円筒状を有している。触媒本体64は、排気中の有害成分を浄化するためのものである。この触媒本体64は、例えば、理論空燃比の雰囲気下で三元触媒機能を有し、三元触媒を含有する。
【0069】
触媒本体64は、ケーシング62の上下流方向の中央部分に収容されており、このケーシング62の上流端61には所定の空間が形成されている。合流部58の下流端、詳細には、ディフューザー部58cの下流端はこのケーシング62の上流端61に接続されており、ディフューザー部58cから排出された排気は、ケーシング62の上流端61に流入した後、触媒本体64側へ進行する。
【0070】
前述のように、合流部58からは、高い温度の排気が下流側に排出される。そのため、このように合流部58に直接触媒装置60が接続されていることで、触媒装置60内には高温の排気が流入し、これにより、触媒本体64は早期活性化される、また、触媒本体64の活性状態が確実に維持される。
【0071】
(3)制御系
図3に示されるECU90は、エンジンの各部を統括的に制御するための装置(制御手段)であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
【0072】
ECU90には、エンジンに設けられた各種センサから種々の情報が入力される。具体的には、ECU90は、エンジンに設けられたクランク角センサSW2、吸気量センサSW4と電気的に接続されており、これら各センサSW2、SW4からの入力信号に基づいて、エンジン回転数Ne、吸気量ひいてはエンジン負荷Tといった種々の情報を取得する。
【0073】
ECU90は、その主な機能的要素として、判定手段91、吸排気制御手段92、アクチュエータ制御手段94を有している。
【0074】
判定手段91は、エンジン回転数Neとエンジン負荷Tとに基づいて、エンジンをどのような態様で制御すべきかを都度判定する。図14は、エンジン回転数Neおよび負荷Tに基づき決定される制御の種類を区分けして示す設定図(制御マップ)である。エンジンの運転中、判定手段91は、この図14の制御マップに従うようにエンジンの制御内容を決定する。
【0075】
図14の制御マップにおいて、エンジンの回転数Neが基準回転数N1以下の低速領域のうちエンジン負荷Tが基準負荷T1以上の低速高負荷領域には第2運転領域A2が設定されており、それ以外の領域には、第1運転領域A1が設定されている。本実施形態では、基準負荷T1は、エンジン回転数Neが高くなるほど大きくなるように設定されている。また、基準回転数N1は、例えば、4000rpm付近に設定されている
判定手段91は、エンジンの運転中において、エンジンの運転点(負荷Tおよび回転数Neの各値から特定される制御マップ上でのポイント)が第1運転領域A1であるか第2運転領域A2であるかを常に判断する。
【0076】
再び図3に戻って、吸排気制御手段93は、吸気VVT32を駆動することにより、吸気弁19の開閉タイミングを変更する。
【0077】
アクチュエータ制御手段94は、スライドアクチュエータ55fを駆動して外管55の位置を変更し、これにより、絞り部53内の各ガス通路の流路面積を変更する。
【0078】
ECU90は、その他、点火プラグ15等を運転状態に応じて適正に制御する。
【0079】
(4)制御内容
ECU90により実施される各運転領域(第1運転領域A1,第2運転領域)での制御内容について説明する。
【0080】
ECU90は、クランク角センサSW2および吸気量センサSW4の各検出値に基づいて、エンジンの運転点(負荷Tおよび回転数Ne)が図14の制御マップにおけるどの運転領域に該当するかを逐次判定する。そして、判定された運転領域が、図14中の第1運転領域A1と第2運転領域A2のいずれであるかに応じて、それぞれ以下のような制御を実行する。
【0081】
(i)第2運転領域A2
低速高負荷領域からなる第2運転領域A2では、図4に示すように、排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが、吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気弁20が他の気筒12のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように調整される。詳細には、第1気筒12aの吸気弁19と排気弁20とがオーバーラップしている期間中に第3気筒12cの排気弁20が開弁し、第3気筒12cの吸気弁19と排気弁20とがオーバーラップしている期間中に第4気筒12dの排気弁20が開弁し、第4気筒12dの吸気弁19と排気弁20とがオーバーラップしている期間中に第2気筒12bの排気弁20が開弁し、第2気筒12bの吸気弁19と排気弁20とがオーバーラップしている期間中に第1気筒12aの排気弁20が開弁するよう調整される。
【0082】
また、この第2運転領域A2では、外管55の位置が流路面積最大位置よりも上流側とされて、絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最大面積よりも小さい面積とされる。また、各ガス通路の流路面積が最大面積よりも小さいという範囲内で、エンジン回転数Neに応じて外管55の位置が変更される。
【0083】
具体的には、運転領域毎のガス通路の流路面積を示した図15、および、エンジン回転数に対する流路面積の変化を示した図16に示すように、エンジン回転数Neが大きくなるほど外管55の位置は下流側に変更されて、ガス通路の流路面積が大きくされる。すなわち、第2運転領域A2において、負荷が一定の場合、外管55の位置は、流路面積最小位置から流路面積最大位置の直前位置まで、エンジン回転数Neの増大に伴って徐々に下流側に変更される
後述するように、第2運転領域A2よりも高回転側の第1運転領域A1では、外管55の位置は流路面積最大位置に設定されている。そのため、前記のように外管55の位置が変更されることで、第2運転領域A2と第1運転領域A1の境界において外管55の位置は円滑に切り替わる。なお、図16は、全負荷Tmax(図14参照)でのエンジン回転数Neと外管55の位置とを示したものである。
【0084】
このようにして、第2運転領域A2では、絞り部53内のガス通路の流路面積は最大面積よりも小さい面積に制御される。その結果、第2運転領域A2では、各独立排気通路52から排出された排気は、高速で絞り部53を通過して集合部58a内に流入する。特に、エンジン回転数Neが高く排気流量が大きくなるほどガス通路の流路面積が大きくされており、排気流量の増大に伴う背圧の増大が抑制されるため、排気の速度が適正に高められる。そして、このように絞り部53内のガス通路から合流部58に排気が高速で排出されることで、隣接する他のガス通路にはエゼクタ効果により負圧が生成される。
【0085】
ここで、第2運転領域A2では、前述のように、排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが、吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気弁20が他の気筒12のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように調整されている。そのため、所定の気筒(排気行程気筒)12の排気弁20が開弁してこの排気行程気筒12から所定のガス通路を通って前記合流部58に排気が高速で排出されると、排気順序がこの排気行程気筒12の1つ前に設定された他の気筒(吸気行程気筒)に対応するガス通路およびこの吸気行程気筒12に接続される排気ポート18内にエゼクタ効果により負圧が生成される。そして、排気行程気筒12の排気弁20開弁時に、前記吸気行程気筒がオーバーラップ期間中にあることから、この吸気行程気筒12内の残留ガスが排気ポート18側に吸い出され、吸気行程気筒12内の掃気が促進される。特に、排気弁20の開弁開始直後は気筒12から非常に高速で排気(いわゆるブローダウンガス)が排出されるため、このブローダウンガスが排出された直後は、吸気行程気筒12内の残留ガスの多くが排気ポート18側に吸い出される。掃気が促進されると、吸気効率が増大するため、高いエンジントルクを得ることが可能となる。また、気筒12内の残留ガス量が少なくなりノッキングが抑制されるのに伴って点火時期の進角化が可能となることによっても、高いエンジントルクを得ることが可能となる。
【0086】
なお、本装置において、吸気弁19および排気弁20の開弁時期、閉弁時期とは、それぞれ、図17に示すように、各弁19,20のリフトカーブにおいてリフトが急峻に立ち上がるあるいは立ち下がる時期(ランプ部の終わり、または、開始の時期)であり、例えば0.4mmリフトの時期をいう。
【0087】
(ii)第1運転領域A1の高速領域A1_1
第1運転領域A1のうちエンジン回転数Neが基準回転数N1以上の高速領域A1_1では、排気流量が大きい。そのため、この高速領域A1_1において、前記第2運転領域A2と同様に、各ガス通路の流路面積を小さくしたのでは、エゼクタ効果による掃気性能向上効果よりも背圧が高くなることによる掃気性能の悪化が大きくなる。そこで、この高速領域A1_1では、次のような制御を実施する。
【0088】
高速領域A1_1では、排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが、オーバーラップしないように調整される。そして、高速領域A1_1では、外管55の位置が流路面積最大位置とされて、絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最大面積とされる。
【0089】
このように制御されることで、第1運転領域A2のうちの高速領域A1_1では、各独立排気通路52から排出された排気は、抵抗を小さく抑えられた状態で絞り部53を通過する。そのため、この高速領域A1_1では、排気抵抗が小さく抑えられ、排気のポンピングロスが小さく抑えられるとともに吸気効率が高められ、これにより高いエンジントルク、高い熱効率が実現される。
【0090】
(iii)第1運転領域A1の低速低負荷領域A1_2
第1運転領域A1のうちエンジン回転数Neが基準回転数N1よりも低く、かつ、エンジン負荷Tが基準負荷T1よりも低い低速低負荷領域A1_2では、吸気圧が低く筒内ガス量が少ない。そのため、エゼクタ効果により高い掃気が行われて、これに伴い、気筒12内の残留ガス量が少なくなると、吸気のポンピングロスが増大する、また、燃焼温度が増大して冷却損失が増大する、という熱効率に対して好ましくない作用が生じる。また、そもそも、低速低負荷領域A1_2では、要求新気量が少なく、エゼクタ効果に伴う高い吸気効率を得る必要が小さい。
【0091】
そこで、低速低負荷領域A1_2では、高速領域A1_1と同様に、エゼクタ効果が小さく抑えられるよう、すなわち、排気が絞り部53から合流部58に流入する速度が小さく抑えられよう、外管55の位置を最大流路面積位置として絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最大面積とされる。
【0092】
ただし、低速低負荷領域A1_2では、前述のように残留ガスが多い方が望ましいことから、残留ガスがより多く得られるように、排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とは、オーバーラップするように調整される。
【0093】
このように制御されることで、第1運転領域A1の低速低負荷領域A1_2では、各独立排気通路52から排出された排気は、絞り部53において、流路面積のより大きい空間を通過し、エゼクタ効果ひいては掃気が抑制される。掃気が抑制されることで、気筒12内にはより多くの残留ガスが残存する。そのため、吸気のポンピングロスおよび冷却損失は低減し、高い熱効率すなわち燃費性能が実現される。
【0094】
(5)作用効果
以上のように、本実施形態に係る装置では、各独立排気通路52からの排気がそれぞれ独立して流入する絞り部53内の各ガス通路の流路面積を変更するという簡単な構成で、第2運転領域A2において、エゼクタ効果を利用して高いエンジントルクを得つつ、第1運転領域A1の高速領域A1_1において排気抵抗を抑制して高いエンジントルクおよび燃費性能を得ることができるともに、第1運転領域A1の低速低負荷領域A1_2において掃気を抑制して残留ガスを確保し、高い燃費性能を得ることができる。
【0095】
特に、本実施形態では、第2運転領域A2においてエンジン回転数Neが増大するほど各ガス通路の流路面積が増大されている。そのため、第2運転領域A2において、エンジン回転数ひいては排気流量の増大に伴って増大する排気抵抗すなわちポンプロスを適正に抑制して効果的にエゼクタ効果を得ることができる。
【0096】
前記の効果について調べた結果を図18および図19に示す。図18は、外管55の位置すなわち絞り部53内の各ガス通路の流路面積に対する、エンジン回転数Neと体積効率ηvとの関係を調べた結果である。図19は、外管55の位置すなわち絞り部53内の各ガス通路の流路面積に対する、エンジン回転数Neとポンプロスとの関係を調べた結果である。これらの図において、ラインY1は、本実施形態における結果、すなわち、第2運転領域A2においてガス通路の流路面積を最大面積よりも小さく、かつ、エンジン回転数の増大に伴って増大させる一方、第1運転領域A1において前記流路面積を最大位置とした場合の結果である。これに対して、ラインX1〜X4は、外管55の位置すなわちガス通路の流路面積を一定とした際の結果である。具体的には、ラインX1は、外管55を流路面積最小位置としてガス通路の流路面積を最小面積とした際の結果である。ラインX4は、外管55を流路面積最大位置としてガス通路の流路面積を最大面積とした際の結果である。ラインX2,X3は、外管55を流路面積最小位置と流路面積最大位置との間の位置としてガス通路の流路面積を最小面積と最大面積との間の面積とした際の結果である。ラインX2の方がラインX3よりも、外管55の位置が上流側であって、ガス通路の流路面積は小さい。より詳細には、ラインX1〜X4は、図10の長さd1すなわち第1通路54aの上流端の径を30mmとした絞り部53に対して、それぞれ図10の長さd2すなわち第1通路54aの下流端におけるガス通路の径を、15mm、20mm、25mm、30mmmとしたときの結果である。なお、各図は、全負荷での結果である。
【0097】
図18のX1〜X4に示されるように、外管55の位置を固定してガス通路の流路面積を一定とした場合では、特定の速度領域において体積効率ηvが高い値を示す一方、その他の速度領域では体積効率ηvが低い値となっている。また、この図18に示されるように、ガス通路の流路面積が大きくなるほど、エンジン回転数Neの高い領域で高い体積効率ηvが得られるようになっている。また、図19に示されるように、外管55の位置を固定してガス通路の流路面積を一定とした場合では、エンジン回転数が増大して排気流量が増大するほどポンプロスは増大し、この増大量すなわち悪化量は、ガス通路の流路面積が大きいほど大きくなっている。
【0098】
このように、外管55の位置を固定してガス通路の流路面積を一定とした場合では、全速度領域において高い体積効率とポンプロスの低減とを実現することが困難となる。例えば、ガス通路の流路面積を最小面積に固定した場合、すなわち、ラインX1の場合では、比較的低い回転数N2(例えば1500rpm付近)において非常に高い体積効率が得られる一方、それ以上の高速領域では高い体積効率を実現することが不可能であるとともにポンプロスが非常に大きくなる。一方、ガス通路の流路面積を最大面積に固定した場合、ラインX4の場合では、比較的高い回転数N1(例えば4000rpm付近)以上の高速領域において高い体積効率の実現およびポンプロスの抑制を実現できる一方、それ以下の低速領域において高い体積効率を得ることができない。
【0099】
これに対して、図18のY1および図19のY1に示すように、本実施形態では、エンジン回転数Neに応じて外管55の位置を変更してガス通路の流路面積を増大させることで、各速度領域においてポンプロスの抑制と高い体積効率とが両立されている。
【0100】
ここで、エゼクタ効果とポンプロスとの調整を行うために、排気が通過する空間の流路面積を変更する構成として、例えば、図20に示すようなバイパス構造を採用することが考えられる。しかしながら、本実施形態のように、独立排気通路52と合流部58との間に介在する絞り部53内に形成された各ガス通路の流路面積を変更することで、前記流路面積の変更を実現すれば、バイパス構造よりも安定した性能を得ることができる。
【0101】
具体的には、バイパス構造では、各独立排気通路52の下流端552aが下流ほど流路面積が小さくなる形状とされる。また、この構造では、各下流端552aに下流ほど流路面積が小さくなる集合部558aが接続される。また、この構造では、各独立排気通路の下流端552aよりも上流の部分と前記集合部558aよりも下流の部分とを接続して、排気の一部を、下流ほど流路面積が小さくなる部分(独立排気通路52の下流端552aと集合部558a)をバイパスさせるバイパス通路510と、このバイパス通路510の開口量を変更可能な制御弁512とが設けられる。
【0102】
ここで、バイパス構造における制御弁512や、本実施形態に係る外管55は、これらを確実に駆動できるように、所定のクリアランスを有するように構成される。すなわち、制御弁512は、全閉に制御された状態で、バイパス通路510との間に所定の隙間が生じるように構成される。また、外管55は、流路面積最小位置に制御された状態で、内管54との間に所定の隙間が生じるように構成される。そのため、高いエゼクタ効果ひいては高い吸気効率を得るべく制御弁512を全閉、あるいは、外管55を流路面積最小位置に制御した場合であっても、制御弁512とバイパス通路510との間の隙間、あるいは、外管55と内管54との隙間から少量の排気が漏洩することがある。
【0103】
このように、本実施形態とバイパス構造のいずれにおいても排気の漏洩が生じるおそれはある。しかしながら、本実施形態では、外管55と内管54との隙間に漏洩した排気は、下流ほど流路面積が縮小された第2通路55aに流入して、下流ほど流路面積が縮小された集合部58aに流入する。そのため、この漏洩した排気が第1通路54aのみを通過して集合部58aに流入する場合に対して、集合部58a内の排気流速の差ひいてはエゼクタ効果および吸気効率の差を小さく抑えることができる。これに対して、バイパス構造では、漏洩した排気は、下流ほど流路面積が縮小された独立排気通路52の下流端552aおよび集合部558aを通らずに流下する。そのため、排気がこれら下流端552aおよび集合部558aのみを通過した場合に対する、集合部558a内の排気流速の差ひいてはエゼクタ効果および吸気効率の差は大きくなる。
【0104】
以上のように、本実施形態では、流路面積を変更するための手段(外管55あるいは制御弁512)のクリアランスに対して、排気流速ひいては吸気効率のロバスト性を高くすることができ、安定した吸気性能を得ることができる。
【0105】
また、本実施形態では、絞り部53を、内側に第1通路54aが形成された内管54とこの内管54を収容する外管55とで構成し、これら外管55と内管54との間に第2通路55aを区画するとともに、この第2通路55aの流路面積を変更するという簡単な構成で、絞り部53内の各ガス通路の流路面積を変更しており、絞り部53の構造ひいては装置全体の構造を簡素化することができる。特に、外管55を上下流方向にスライドさせるだけでよく、外管55の駆動構造を簡素化することができる。
【0106】
また、本実施形態では、外管55と内管54との連通口54dが内管側傾斜面54g_2に形成されている。そして、各連通口54dが、上下流方向に開口している。そのため、第2運転領域A2において、内管54と外管55とを連通させてガス通路の流路面積を大きくしつつ、連通口54dの通過時の排気抵抗を小さく抑えて排気の流速を高く維持することができ、高いエゼクタ効果ひいては高い吸気効率を得ることができる。
【0107】
(6)他の実施形態
(6−1)第2実施形態
前記第1実施形態では、第2運転領域A2においてエンジン回転数Neが大きくなるほどガス通路の流路面積を増大させる場合について示したが、第2運転領域A2においてガス通路の流路面積を、第1運転領域A1における流路面積(最大面積)よりも小さい面積(例えば、最小面積)に固定するよう制御してもよい。具体的には、スライドアクチュエータ55fを、外管55の位置を2つの流路面積最小位置と流路面積最大位置とで切替えるよう構成し、第2運転領域A2において外管55を流路面積最小位置にして第1通路54aと第2通路55aとを連通させない状態とする一方、第1運転領域A1において外管55を流路面積最大位置として第1通路54aと第2通路55aとを連通させる状態としてもよい。この場合であっても、第2運転領域A2においてガス通路の流路面積を小さい面積としてエゼクタ効果を発揮させ、これにより吸気効率およびエンジントルクを高めつつ、第1運転領域A1においてガス通路の流路面積を大きくして排気抵抗、ポンプロスを抑制し、これによりエンジントルクを高めることができる。
【0108】
ただし、前述のように、第2運転領域A2において、エンジン回転数Neの増大に伴いガス通路の流路面積を増大させるよう構成すれば、エンジン回転数Neの増大に伴うポンプロスの増大を適正に抑制して、より効果的にエンジントルクを高めることができる。
【0109】
(6−2)第3実施形態
前記第1実施形態では、外管55に複数の第2通路55aを区画するための区画壁55eを設けるとともに、内管54にこれら区画壁55eがスライド移動可能な溝54eを設けたが、これら区画壁55eおよび溝54eは省略してもよい。
【0110】
これら区画壁55e等を省略した第3実施形態に係る絞り部53の構成を、図21(a)および図21(b)に示す。図21(a)は、第1実施形態の図7(a)に対応する図である。図21(b)は、第1実施形態の図11に対応する図である。図21(a)、(b)に示すように、この第3実施形態では、区画壁55eが省略されることに伴い、外管55と内管54との間に複数の第1通路54aと連通する1つの第2通路55aが形成される。第3実施形態の他の構成、すなわち、区画壁55eおよび溝54eに関する構成以外の構成は、第1実施形態と同様であり、各第1通路54aと第2通路55aとを連通する連通口54dは、内管54の内管側傾斜面54g_2に形成されている。
【0111】
この第3実施形態によれば、区画壁55e等が省略されるため、絞り部53ひいては装置全体の構造をより一層簡素化することができる。
【0112】
ここで、第2運転領域A2において第1通路54aと第2通路55aとを連通させつつ高いエゼクタ効果を得るためには、第2通路55aに流入した排気が膨張して排気の速度が低下するのを回避するのが好ましい。これに対して、この第3実施形態では、前記区画壁55eが省略されて、第2通路55aが複数の第1通路54aにわたって延びており、その流路面積が比較的大きくなる。しかしながら、この第3実施形態においても、前述のように、第1通路54aと第2通路55aとを連通する連通口54dが内管側傾斜面54g_2に形成されている。そして、各連通口54dが、上下流方向に開口している。そのため、第2通路55a内での排気の膨張は抑制され、高いエゼクタ効果を得ることができる。すなわち、所定の第1通路54aから第2通路55aに流入した排気は、その向きを下流向きに維持し、他の第1通路54a側に向かうことなく第2通路55aを流下する。そのため、第2通路55a内での排気の膨張は抑制され、高いエゼクタ効果が発揮される。
【0113】
(6−3)第4実施形態
前記第1実施形態では、絞り部53内のガス通路の流路面積を変更するための構成として、第2通路55aの流路面積を変更するものを挙げたが、第1通路54aと第2通路55aとの連通量を変更することでガス通路の流路面積を変更するようにしてもよい。例えば、図22、図23(a)(b)、図24(a)(b)に示すような構成としてもよい。図22(a)は、第1実施形態の図7(a)に対応する図である。図23(a)、(b)は、外管155を省略した状態の絞り部153の斜視図であり、(a)が連通口154dを全閉とした状態、(b)が連通口154dを全開とした状態である。図24(a)、(b)は、絞り部153の断面図であり、(a)が図23(a)と対応する図、(b)が図23(b)と対応する図である。
【0114】
図22〜図24に示す第4実施形態は、第1実施形態と同様に、内管154と外管155とを有する絞り部153を有している。内管154の外周面154gは、第1実施形態と同様に、その上流側部分に設けられて中心軸Lと平行に延びる円筒面154g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って中心軸L側に傾斜する内管側傾斜面154g_2とで構成されている。内管154の内側には、第1実施形態と同様に、下流側ほど流路面積が縮小する複数の第1通路154aが形成されている。
【0115】
一方、この第4実施形態に係る外管155は、内管154に対して相対移動不能に固定されている。外管155は、その内周面155gが、内管154の外周面154gから径方向外側に離間して、これら内周面155gと外周面154gとの間に第2通路155aが区画された状態で固定されている。外管155の内周面155gは、内管154の外周面154gと平行に延びている。内管154の外周面154gのうち第1通路155a間に対応する位置には、径方向外側に向かって突出して外管155の内周面155gと当接する位置まで延びる区画壁154eが設けられている。これら区画壁154eにより、外管155の内周面155gと内管154の外周面154gとの間には、第1通路155aと対応する位置にそれぞれ第2通路155aが区画されている。この実施形態では、3つの第1通路155aに対応して3つの第2通路155aが形成されている。内管154の管壁には、第1通路154aと第2通路155aとをそれぞれ連通する連通口154dが形成されている。各連通口154dは、内管154の外周面154gのうち円筒面154g_1に開口している。
【0116】
この第4実施形態に係る絞り部153には、各連通口154dをそれぞれ開閉可能な蓋部159と、これら蓋部159を駆動可能な回動アクチュエータ155f(図示省略)が設けられている。
【0117】
各蓋部159は、内管154の外周面154gに沿って延びている。前記回動アクチュエータ155fは、各蓋部159を、内管154の外周面154gに沿って周方向に移動させる。すなわち、回動アクチュエータ155fは、各蓋部159を、絞り部153の中心軸Lを中心として回動させる。そして、この回動アクチュエータ155fは、図23(a)および図24(a)に示す各連通口154dを全閉にする位置と、図23(b)および図24(b)に示す各連通口154dを全開にする位置との間で移動させる。この移動により連通口154dの開口量は変化し、この開口量の変化に伴って、第1通路154aと第2通路155aとの連通量は変化する。そして、絞り部153のうち排気が通過するガス通路の流路面積は変化する。ここで、第1通路154aに流入した排気は、この連通量に応じた量だけ第2通路155a内に流入する。そのため、絞り部153のうち排気が通過するガス通路の流路面積は、この連通量と第1通路154aの流路面積により規定される。すなわち、ここでは、第1通路154aの流路面積と前記連通口154dの開口面積との合計面積をガス通路の流路面積という。
【0118】
このようにして、第4実施形態では、第1通路154aと第2通路155aとの連通量が変更されることで、絞り部153内のガス通路の流路面積が変更される。そして、この第4実施形態では、第2運転領域A2において、蓋部159の位置が、連通口154dを全閉にする位置と連通口154dを全開にする位置との間の位置に、かつ、エンジン回転数Neが増大するほど連通口154dの開口量すなわち第1通路154aと第2通路155aとの連通量であってガス通路の流路面積が増大するように制御される。また、第1運転領域A1において、蓋部159の位置が、連通口154dを全開にする位置に制御されて、第1通路154aと第2通路155aとの連通量すなわちガス通路の流路面積が最大とされる。このようにして、この第4実施形態においても、各運転領域において、ガス通路の流路面積が適正に調整されて、吸気効率とポンプロスとが適正に調整される。
【0119】
ここで、この第4実施形態では、連通口154dの開口量の変更を、各蓋部159を中心軸Lを中心として回動させるという構成で実現しており、蓋部159の駆動構造を簡素化することができる。
【0120】
なお、この第4実施形態においても、第1運転領域において、蓋部159を、エンジン回転数Neによらず、連通口154dを全閉にする位置で固定してもよい。
【符号の説明】
【0121】
12 気筒
18排気ポート
19 吸気弁
20 排気弁
52 独立排気通路
53 絞り部
54 内管
54a 第1通路
55 外管
55a 第2通路
55f スライドアクチュエータ(流路面積変更手段)
90 ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ形成されるとともに前記吸気ポートを開閉可能な吸気弁と前記排気ポートを開閉可能な排気弁とが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの吸排気装置であって、
1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される独立排気通路と、
前記各独立排気通路よりも下流側に設けられて、当該各独立排気通路を通過した排気が内側で集合する集合部と、
前記各独立排気通路と前記集合部との間に介在して、前記各独立排気通路から排出された排気がそれぞれ独立して流入する複数のガス通路が内側に形成された絞り部と、
前記絞り部内の各ガス通路の流路面積を変更可能な流路面積変更手段と、
前記各気筒の吸気弁および排気弁を駆動可能なバルブ駆動手段と、
前記流路面積変更手段および前記バルブ駆動手段を制御可能な制御手段とを備え、
前記制御手段は、
エンジンの回転数が予め設定された基準回転数よりも高くエンジンの負荷が予め設定された所定の負荷よりも高い高速高負荷領域を少なくとも含む第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記各ガス通路の流路面積を最大面積にさせる一方、
エンジンの回転数が前記基準回転数よりも低くエンジンの負荷が予め設定された所定の負荷よりも高い低速高負荷領域を少なくとも含む第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記各ガス通路の流路面積を前記最大面積よりも小さい面積にさせるとともに、前記各気筒の吸気弁の開弁期間と排気弁の開弁期間とが所定のオーバーラップ期間重複し、かつ、排気順序が連続する気筒間において一方の気筒の前記オーバーラップ期間が他方の気筒の排気弁が開弁している時期に重複するように、前記バルブ駆動手段により前記各気筒の吸気弁および排気弁を駆動させ、
前記各ガス通路は、排気順序が連続する気筒に接続された前記独立排気通路に対応するガス通路が互いに近接するように配置されているとともに、エンジンが前記第2運転領域で運転されて当該ガス通路の流路面積が前記最大面積よりも小さい面積とされた状態において、前記各気筒の排気ポートから当該各ガス通路を通って前記集合部に排気が排出されるのに伴い他のガス通路およびこのガス通路と連通する排気ポート内にエゼクタ効果によって負圧が生成されるように、当該各ガス通路の下流側の流路面積の方が当該各ガス通路の上流側の流路面積よりも小さくなる形状を呈することを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記各ガス通路は、前記各独立排気通路の下流端から前記集合部まで延びて前記各独立排気通路とそれぞれ個別に連通するとともに前記集合部と連通する第1通路と、当該各第1通路と前記集合部とに連通する第2通路とを含み、
前記流路面積変更手段は、前記第2通路の流路面積を変更することで前記各ガス通路の流路面積を変更し、
前記制御手段は、前記第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第2通路の流路面積を最大面積にさせる一方、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第2通路の流路面積を前記最大面積よりも小さくさせることを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記絞り部は、上下流方向に延びて内側に前記各第1通路が形成された内管と、上下流方向に延びて前記内管を内側に収容する外管とを有し、
前記第2通路は、前記外管の内周面と前記内管の外周面との間に区画されており、
前記内管には、前記各第1通路と前記第2通路とをそれぞれ連通する連通口が形成されており、
前記内管の外周面は、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って当該内管の軸に近づく方向に傾斜する内管側傾斜部を有し、
前記外管の内周面は、前記内管側傾斜部と略平行に延びる外管側傾斜部を有し、
前記流路面積変更手段は、前記外管を前記内管に対して上下流方向に移動させて前記外管側傾斜部と前記内管側傾斜部との離間量を変更することで、前記第2通路の流路面積を変更することを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項4】
請求項3に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記連通口は、前記内管側傾斜部に形成されていることを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項5】
請求項1に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記各ガス通路は、前記各独立排気通路の下流端から前記集合部まで延びて前記各独立排気通路とそれぞれ個別に連通するとともに前記集合部と連通する第1通路と、当該各第1通路と前記集合部とに連通する第2通路とを含み、
前記流路面積変更手段は、前記第1通路と第2通路との連通量を変更可能であり、
前記制御手段は、前記第1運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第1通路と第2通路との連通量を最大にさせる一方、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により前記第1通路と第2通路との連通量を前記最大量よりも小さくさせることを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項6】
請求項5に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記絞り部は、内側に前記各第1通路が形成された内管と、当該内管を内側に収容する外管とを有し、
前記第2通路は、前記外管の内周面と前記内管の外周面との間に区画されており、
前記内管には、前記各第1通路と前記第2通路とをそれぞれ連通する連通口が形成されており、
前記流路面積変更手段は、前記連通口の開口量を変更可能であり、この連通口の開口量を変更することで前記第1通路と前記第2通路との連通量を変更することを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項7】
請求項6に記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記内管のうち前記連通口が形成された部分の外周面は、上下流方向に延びる軸を中心とする略円周面状を呈し、
前記各連通口は、前記内管の外周面において周方向に互いに離間した位置にそれぞれ形成されており、
前記流路面積変更手段は、前記内管の外周面に沿って延びる形状を有し、前記各連通口をそれぞれ塞ぐことが可能であるとともに、前記内管の外周面を周方向に移動することで前記各連通口を塞ぐ位置と当該連通口を開口させる位置との間で変位可能な蓋部を含み、当該各蓋部を前記内管の外周面の周方向に移動させることで前記連通口の開口量を変更することを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の多気筒エンジンの吸排気装置において、
前記制御手段は、前記第2運転領域において、前記流路面積変更手段により、エンジンの回転数が高いほど前記各ガス通路の流路面積を大きくさせることを特徴とする多気筒エンジンの吸排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−57255(P2013−57255A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194710(P2011−194710)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】