説明

密着強化層形成用材料、密着強化層、半導体装置及びその製造方法

【課題】低誘電率膜及び他の部材、特に無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材どうしの密着性を強化することができる密着強化層形成用材料、該密着強化層形成用材料を用いて形成され密着性に優れた密着強化層、高速で信頼性の高い半導体装置及びその効率的な製造方法の提供。
【解決手段】本発明の密着強化層形成用材料は、塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランの少なくともいずれかを含むことを特徴とする。本発明の密着強化層は本発明の密着強化層形成用材料を用いて形成される。本発明の半導体装置の製造方法は、被加工基材上に低誘電率膜を形成する低誘電率膜形成工程と、該低誘電率膜形成工程の前及び後の少なくともいずれかに、前記密着強化層形成用材料を用いて密着強化層を形成する密着強化層形成工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率膜及び他の部材、特に無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材どうしの密着性を強化することができる密着強化層形成用材料、該密着強化層形成用材料を用いて形成され密着性に優れた密着強化層、該密着強化層を有する高速で信頼性の高い半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置を微細化することにより、スケーリング則に沿った動作速度の高速化が図られている。一方、最近の高密度半導体集積回路装置では、個々の半導体装置間を配線する際、一般に多層配線構造が使用されるが、かかる多層配線構造においては、半導体装置が非常に微細化されるため、多層配線構造中の配線パターンどうしが近接し、配線パターン間の寄生容量による配線遅延の問題が生じる。該寄生容量は、配線パターン間の距離に反比例し、配線パターン間に位置する絶縁物の誘電率に比例する。
【0003】
そこで、前記配線遅延の問題を改善するため、多層配線構造中の層間絶縁膜(前記絶縁膜)に誘電率の低い材料を使用し、寄生容量を低下させることが検討されている。
前記層間絶縁膜の誘電率としては、従来より使用されてきたCVD−SiO膜の誘電率は4程度であり、該CVD−SiO膜にフッ素を添加して誘電率を更に低下させたSiOF膜でも3.3〜3.5程度が限界である。この他、有機絶縁材料としてポリアリルエーテル系材料が検討されているが、この場合でも、誘電率は2.6〜2.9程度が限界である。したがって、いずれの材料を用いても、近年の高密度半導体集積回路においては、寄生容量の低減効果が充分ではなく、必要な動作速度が得られないことがあるという問題があった。
このため、更に誘電率の低い所謂低誘電率層間絶縁膜として、多孔質化された絶縁膜(多孔質絶縁膜)の使用が着目されている。該多孔質絶縁膜は、加熱により蒸発又は分解する有機樹脂などを塗布材料に添加し、該塗布材料をスピンコート法により塗布した後加熱し、有機樹脂などを蒸発又は分解させて絶縁膜を多孔質化することにより形成される。この場合、誘電率を2.5以下に低下させることができるため、低誘電率層間絶縁膜として半導体装置への適用が検討されている。
【0004】
ところで、前記配線遅延は、配線間の寄生容量と配線抵抗との積に比例するため、配線材料としては、従来より用いられてきたAlに代えて、抵抗値の低いCuを用いることにより配線自体の低抵抗化が図られている。この場合、配線中の銅原子が層間絶縁膜中に拡散することを防止することが必要となり、主にシリコンカーバイド(SiC)やシリコンオキシカーバイド(SiOC)を用いて形成した銅拡散防止膜を配置することが試みられている。
しかし、前記銅拡散防止膜上に前記多孔質絶縁膜を形成すると、該多孔質絶縁膜は空隙を多く含むため、従来の絶縁膜に比して前記銅拡散防止膜との接触面積が狭くなり、密着性が低下するという問題がある。このように密着性が低下すると、多層配線を形成した場合、低誘電率絶縁膜と銅拡散防止膜との間で界面剥がれが生じ、配線層数の増加に伴って、該界面剥がれの問題が顕著となる。また、前記銅拡散防止膜に限らず、他の膜を積層する場合にも、密着性の低下による界面剥がれの問題が生じる。
【0005】
前記絶縁膜と前記銅拡散防止膜との密着性を向上させる方法としては、例えば、シランカップリング剤により銅拡散防止膜に表面処理を施すことが知られている(特許文献1〜4参照)。しかし、これらの場合、銅拡散防止膜と有機絶縁膜との組合せのように、無機材料と有機材料との密着性の向上に極めて高い効果を発揮するものの、銅拡散防止膜と多孔質絶縁膜との組合せのように、無機材料どうしの密着性向上については、効果が殆ど観られない。また、シランカップリング剤に含まれるアルコキシシランは、水と容易に反応して加水分解反応を生じるため、溶液の保存安定性が極めて低く、半導体装置の製造への適用が困難であった。
【0006】
したがって、無機材料からなる膜どうしに優れた密着性を付与し、低誘電率膜と他の部材との密着性を強化することができる密着強化層形成用材料及びこれを用いた関連技術は、未だ提供されていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−345317号公報
【特許文献2】特開2002−40673号公報
【特許文献3】特開2002−38081号公報
【特許文献4】特開2004−532514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低誘電率膜及び他の部材、特に無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材どうしの密着性を強化することができる密着強化層形成用材料、該密着強化層形成用材料を用いて形成され密着性に優れた密着強化層、該密着強化層を有し高速で信頼性の高い半導体装置及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。即ち、塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランのいずれかを少なくとも含む密着強化層形成用材料を用いると、無機材料どうしに優れた密着性を付与し、無機材料で形成された低誘電率膜と他の部材との密着性を強化することができる密着強化層が得られることを知見した。また、前記密着強化層形成用材料は、塩基性を示すので保存安定性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明の密着強化層形成用材料は、塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする。該密着強化層形成用材料においては、オルガノアルコキシシランを少なくとも含み、かつ塩基性を示すので、無機材料どうしに優れた密着性が付与され、無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材どうしの密着性が強化される。このため、例えば、多孔質化された低誘電率膜と銅拡散防止膜とを容易に密着させることができ、多層配線の形成に好適に使用可能であり、各種半導体装置などに好適である。
【0011】
本発明の密着強化層は、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする。該密着強化層においては、本発明の前記密着強化層形成用材料により形成されるので、優れた密着性を有し、無機材料どうしを強固に密着させることが可能である。このため、例えば、多孔質化された低誘電率膜と銅拡散防止膜との間に配置され、多層配線の形成に好適に使用可能である。また、前記低誘電率膜の剥がれを防止し、信号伝播速度の高速化が可能であるため、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等に特に好適である。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法は、低誘電率膜形成工程と、密着強化層形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
該半導体装置の製造方法では、まず、前記低誘電率膜形成工程において、多層配線が形成される対象である被加工基材上に低誘電率膜が形成される。次に、前記密着強化層形成工程において、前記低誘電率膜形成工程の前及び後の少なくともいずれかに、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて密着強化層が形成される。ここで、該密着強化層形成工程が前記低誘電率膜形成工程の前に行われる場合には、前記被加工基材上に前記密着強化層が形成され、更にその上に前記低誘電率膜が形成される。一方、前記密着強化層形成工程が、前記低誘電率膜形成工程の後に行われる場合には、前記低誘電率膜上に前記密着強化層が形成される。更に、前記密着強化層形成工程が、前記低誘電率膜形成工程の前及び後に行われる場合には、前記被加工基材上に、前記密着強化層、前記低誘電率膜、前記密着強化層が、この順に積層される。その結果、前記低誘電率膜の剥がれが防止される。また、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、信号伝播速度の高速化が可能で高性能な半導体装置が効率よく製造される。該半導体装置の製造方法は、本発明の半導体装置の製造に特に好適である。
【0013】
本発明の半導体装置は、本発明の前記半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする。該半導体装置は、本発明の前記密着強化層を有するので、前記低誘電率膜の剥がれが防止され、しかも、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とが達成されるので、高速で信頼性の高いフラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、低誘電率膜及び他の部材、特に無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材どうしの密着性を強化することができる密着強化層形成用材料、該密着強化層形成用材料を用いて形成され密着性に優れた密着強化層、該密着強化層を有し高速で信頼性の高い半導体装置及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(密着強化層形成用材料)
本発明の密着強化層形成用材料は、塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランのいずれかを少なくとも含んでなり、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
本発明の前記密着強化層形成用材料においては、前記オルガノアルコキシシランに塩基性官能基を導入し、該塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシランを使用する、あるいは、前記オルガノアルコキシシランと共に塩基性添加剤を使用することにより、前記密着強化層形成用材料を塩基性に保つことができ、密着性及び保存安定性を付与することができる。
【0016】
−オルガノアルコキシシラン−
前記オルガノアルコキシシランとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラトルイロキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のアルケニルアルコキシシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン等のアリールアルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0017】
前記塩基性官能基としては、前記密着強化層形成用材料に塩基性を付与するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記オルガノアルコキシシランとの親和性が高い点で、窒素含有塩基性官能基が好ましい。
前記窒素含有塩基性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンなどが挙げられる。
前記窒素含有塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシランとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記オルガノアルコキシシランは、アルコキシ基を加水分解及び縮合させてなるオリゴマーであるのが好ましい。この場合、前記密着強化層形成用材料の密着性、塗布性、保存安定性などが向上する。
前記オリゴマーの存在を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分析することができる。
前記オリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜100,000が好ましく、200〜100,000がより好ましい。
前記重量平均分子量が、100未満、あるいは100,000を超えると、均一な膜形成が困難となることがある。
【0019】
前記オリゴマーは、それ自体で原液として用いてもよいし、溶媒に溶解させて用いてもよい。
前記オリゴマーを前記溶媒に溶解させて使用する場合、前記オリゴマーの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%以下が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
前記オリゴマーの濃度が、0.1質量%を超えると、前記オリゴマーが縮合して形成される密着強化層が厚膜化し、密着性が低下するとともに、層間絶縁膜(前記低誘電率膜)全体の誘電率が上昇することがある。
【0020】
−塩基性添加剤−
前記塩基性添加剤としては、前記密着強化層形成用材料に塩基性を付与するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリメチルイミジン、1−アミノ−3−メチルブタン、ジメチルグリシン、3−アミノ−3−メチルアミンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記被加工基材への密着性に優れる点で、有機アミン、例えばアミノアルコールが特に好ましい。
【0021】
前記塩基性添加剤は、それ自体で原液として用いてもよいし、溶媒に溶解させて用いてもよい。
前記塩基性添加剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
前記添加量が、0.5質量%未満、あるいは20質量%を超えると、充分な密着性及び保存安定性を得ることができないことがある。
【0022】
前記オリゴマー及び前記塩基性添加剤を溶解させる溶媒としては、該オリゴマー及び該塩基性添加剤を溶解させることができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール系;フェノール、クレゾール、ジエチルフェノール、トリエチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系;ヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素系;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系、などの溶媒が挙げられる。これらの中でも、加水分解反応の進行を制御することができ、前記密着強化層形成用材料の安定性を高めることができる点で、前記オルガノアルコキシシランのアルコキシ基を加水分解して得られる生成物と同一成分の溶媒が特に好ましく、例えば、前記アルコキシ基がメチル基である場合、前記溶媒としては、メチルアルコールが好ましい。
【0023】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の各種添加剤などが挙げられる。
前記その他の成分の前記密着強化層形成用材料における含有量としては、前記オルガノアルコキシシラン、前記塩基性添加剤等の種類や含有量などに応じて適宜決定することができる。
【0024】
本発明の密着強化層形成用材料は、オルガノアルコキシシランを少なくとも含み、塩基性を示し、保存安定性が良好であるので、無機材料どうしに優れた密着性を付与し、無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材の密着性を強化することができる。このため、低誘電率膜に密着性を付与する密着強化層の形成に好適に使用することができ、以下の本発明の密着強化層、本発明の半導体装置の製造などに好適に使用することができる。
【0025】
(密着強化層)
本発明の密着強化層は、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて形成される。
前記密着強化層の形状、構造、大きさなどの諸物性については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体装置に好適に使用可能な以下の厚み、窒素含有量などを有しているのが好ましい。
【0026】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被加工基材の全面に形成されたベタの膜形状、パターン状などが挙げられる。
前記ベタの膜形状を有する密着強化層の形成方法としては、例えば、本発明の前記密着強化層形成用材料に前記被加工基材を浸漬し、該被加工基材表面の全面にベタの密着強化層を形成する方法、などが挙げられる。
前記パターン状の密着強化層の形成方法としては、例えば、前記被加工基材の表面にレジストでパターン(例えば、ライン状)を形成して前記密着強化層形成用材料を塗布し、パターン状の密着強化層を形成する方法、ベタ膜の密着強化層を形成後にレジストを塗布し所望のパターンを形成した後に、ウェット又はドライでエッチングする方法などが挙げられる。
【0027】
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記密着強化層が、前記パターン状である場合、及び前記積層構造を有する場合、各パターン及び各層における窒素含有量は、同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記密着強化層を半導体装置における低誘電率膜の密着性を強化する目的で使用する場合には、既存の半導体装置及び低誘電率膜の大きさに対応した大きさが好ましい。
【0028】
前記厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記密着強化層を低誘電率膜の密着性を強化する層として用いる場合、その構造上、0.5〜50nmが好ましく、1〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、0.5nm未満、あるいは50nmを超えると、密着性が低下することがある。
【0029】
前記密着強化層における窒素含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
前記窒素含有量が、20質量%を超えると、誘電率が上昇し、信号伝播速度の高速化の妨げとなることがある。
前記窒素含有量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SEM−EDX、TEM−EDXなどを用いて測定することができる。
【0030】
前記密着強化層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法、例えば塗布などにより形成することができる。該塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、スピンコート法などが好適に挙げられる。該スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、1〜90秒間が好ましい。
【0031】
前記密着強化層の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記低誘電率膜に優れた密着性を付与する点で、多層配線が形成される対象である前記被加工基材と前記低誘電率膜との間、前記低誘電率膜と該低誘電率膜上に形成される他の部材(例えば、前記銅拡散防止膜)との間、などが好ましい。これらの場合、前記低誘電率膜が多孔質化された接触面積の狭いものであっても、該低誘電率膜と前記被加工基材あるいは他の部材との密着性を強化することができ、前記低誘電率膜の界面剥がれの発生を抑制することができる。
【0032】
本発明の密着強化層は、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて形成されたので、優れた密着性を有し、無機材料どうしを強固に密着させることが可能である。このため、例えば、多孔質化された前記低誘電率膜と前記銅拡散防止膜との間に配置して多層配線を形成するのに好適に使用可能である。また、前記低誘電率膜の剥がれを防止し、信号電波速度の高速化が可能であるため、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等に特に好適である。
【0033】
(半導体装置及びその製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、低誘電率膜形成工程と、密着強化層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0034】
<低誘電率膜形成工程>
前記低誘電率膜形成工程は、前記被加工基材上に低誘電率膜を形成する工程である。
前記低誘電率膜形成工程は、前記低誘電率膜を形成することができる限り、該低誘電率膜の材料、前記低誘電率膜の形成方法などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗布工程と加熱工程と焼成工程とを少なくとも含むのが好ましい。
【0035】
−塗布工程−
前記塗布工程は、低誘電率膜形成材料を前記被加工基材上に塗布する工程である。
前記低誘電率膜形成材料は、誘電率の低い膜、例えば絶縁膜を形成可能な材料であり、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)を、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下にて加水分解して得られる有機ケイ素化合物を含む液状組成物である。
【0036】
【化2】

前記一般式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、及びビニル基のいずれかを表す。nは0〜3の整数である。
【0037】
前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトライソプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケートなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低誘電率かつ高強度な被膜を得ることができる点で、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)、及びこれらの混合物が好ましい。
【0038】
前記アルコキシシラン(AS)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロジメチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低誘電率かつ高強度な被膜を得ることができる点で、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)及びこれらの混合物が好ましい。
【0039】
前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラn−オクチルアンモニウムハイドロオキサイド、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低誘電率かつ高強度な被膜を得ることができる点で、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBAOH)、及びこれらの混合物が好ましい。
【0040】
前記テトラアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)は、適宜合成してもよいし、市販品であってもよいが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素の化合物からなる不純物の含有量が、それぞれ元素基準で50質量ppb以下であり、臭素、塩素等のハロゲン元素の化合物からなる不純物の含有量が、それぞれ元素基準で1質量ppm以下であるのが好ましい。
前記アルカリ金属元素の化合物からなる不純物の含有量が、50質量ppbを超えると、これらの元素が、半導体基板上に配設されたトランジスタ部分へ拡散し、該トランジスタの劣化を引き起こすことがあり、前記ハロゲン元素の化合物からなる不純物の含有量が、1質量ppmを超えると、半導体基板上に配設されたアルミニウム配線や銅配線などが腐食することがある。
【0041】
また、前記アルカリ金属元素の化合物からなる不純物の含有量が50質量ppmを超えると、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)を前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下にて加水分解する際に、前記不純物が触媒として作用し、得られる有機ケイ素化合物が、ゼオライト状の結晶性シリカとなる。このため、前記被加工基材上に形成される低誘電率膜がゼオライト結晶質となり、その被膜表面に凹凸が発生し、平滑な表面が得られないことがある。
そこで、前記含有量を超える不純物を含むテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)を使用する場合には、該不純物の含有量が前記範囲内となるように、該不純物を予め除去するのが好ましい。
前記不純物の除去の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販の前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)を、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を用いて処理することにより、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素の化合物、及び臭素、塩素等のハロゲン元素の化合物からなる不純物を除去し、高純度化を図ることができる。
【0042】
前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)と前記アルコキシシラン(AS)とのモル比(TAOS/AS)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SiO換算基準で、6/4〜2/8が好ましく、5/5〜3/7がより好ましい。
前記モル比(TAOS/AS)が、2/8未満であると、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)によるテンプレート効果が小さくなり、被膜中に形成される細孔(細孔容積)が少なくなり、2.5以下の比誘電率が得られないことがあり、6/4を超えると、得られる低誘電率膜の疎水性が悪くなることがある。
【0043】
前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)と、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物(前記低誘電率膜形成成分;TAOS+AS)とのモル比(TAAOH/(TAOS+AS))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SiO換算基準で1/10〜7/10が好ましく、1/10〜6/10がより好ましい。
前記モル比(TAAOH/(TAOS+AS))が、1/10未満であると、テンプレート材としての機能が弱いため、前記被膜中に形成される細孔(細孔容積)が少なくなり、2.5以下の比誘電率が得られないことがあり、7/10を超えると、テンプレート材としての機能が強いため、前記被膜中に形成される細孔(細孔容積)が多くなり、5.0GPa以上の弾性率を有する高膜強度の低誘電率膜が得られないことがある。
【0044】
次に、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物の調製方法の一例を具体的に説明する。
まず、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)を有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで、100〜200rpmの速度で攪拌する。
次いで、攪拌下にある混合溶液中に前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液を5〜20分間にわたって滴下した後、更に10〜30℃の温度にて30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
更に、30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら1〜72時間にわたって100〜200rpmの速度で攪拌することにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TOAS)及び前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物である有機ケイ素化合物を含む液状組成物を調製することができる。
なお、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)の混合溶液中への前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の滴下に代えて、前記TAAOH中に、前記TAOS及び前記ASの混合溶液を滴下してもよい。
【0045】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、グリコール類、ケトン類、セロソロブ類、エーテル類、エステル類、炭化水素類などが挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
前記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記セロソロブ類としては、例えば、メチルセロソロブ、エチルセロソロブなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類などが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
前記炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどが挙げられ、このほか、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類も使用することができる。
前記有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。該有機溶媒の中でも、TAOSあるいはASの溶解性が高いアルコール類が特に好ましい。
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物(TAOS+AS)に対する質量混合比(有機溶媒/(TAOS+AS))が、1/1〜3/1が好ましく、1/1〜2.5/1がより好ましい。
【0046】
前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液は、蒸留水または超純水中にテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)を5〜40質量%含んでいるのが好ましく、10〜30質量%含んでいるのがより好ましい。なお、該テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液中に含まれる水は、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及びアルコキシシラン(AS)の加水分解反応を生じさせるのに使用されるので、該加水分解反応に必要な量を含むことが必要である。
また、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)は、前記加水分解反応を促進させるための触媒としての機能を有しているので、他の触媒(例えば、アンモニアなど)を外部から添加する必要はない。
【0047】
前記加水分解の反応条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応温度としては、例えば、30〜80℃が好ましく、35〜60℃がより好ましい。前記攪拌時間としては、例えば、1〜72時間が好ましく、10〜48時間がより好ましい。
【0048】
前記調製方法により得られた液状組成物に含まれる有機ケイ素化合物(TAOS及びASの加水分解物)の数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリスチレン換算で例えば、500〜1,000,000が好ましく、1,000〜100,000がより好ましい。
前記数平均分子量が、500〜1,000,000であると、優れた経時安定性と良好な塗布性とを有する前記液状組成物を得ることができる。
【0049】
また、前記液状組成物の調製においては、必要に応じて、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン及び下記一般式(2)で表されるハロゲン化シランから選択される少なくとも1種の有機ケイ素化合物乃至これらの加水分解物と、5〜50nmの粒径を有するシリカ系微粒子との反応物であるポリシロキサン(PS)を含有させてもよい。
【0050】
【化3】

【化4】

前記一般式(1)及び一般式(2)中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基及びビニル基の少なくともいずれかを表し、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基及びビニル基の少なくともいずれかを表し、X’はハロゲン原子を表す。nは0〜3の整数である。
【0051】
前記シリカ系微粒子は、前記一般式(1)のアルコキシシランの少なくとも1種を前記有機溶媒に混合し、水及びアンモニアの存在下にて加水分解及び縮重合させることによって得ることができる。
なお、前記シリカ系微粒子の表面に前記のアルコキシシラン及びハロゲン化シランの加水分解物を反応させて得られるポリシロキサン(PS)を含む液状組成物を前記被加工基材に塗布すると、比誘電率が3.0以下と小さく、しかも比較的疎水性に優れた被膜が得られることが知られている(特開平9−315812号公報など参照)。
前記ポリシロキサン(PS)の含有量としては、前記液状組成物(低誘電率膜形成成分;TAOS+AS)に対する質量混合比(PS/(TAOS+AS))が、SiO換算基準で1/3以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。
前記質量混合比(PS/(TAOS+AS))が1/3を超えると、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の量が少なくなり、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)によるテンプレート効果が小さくなるため、形成される低誘電率膜の膜強度が弱くなり、5.0GPa以上の弾性率からなる被膜強度が得られないことがあるほか、比誘電率が増加して、2.5以下の比誘電率を得ることが難しくなることがある。
【0052】
前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及びアルコキシシラン(AS)の加水分解物である有機ケイ素化合物を含む液状組成物、又は前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及びアルコキシシラン(AS)の加水分解物である有機ケイ素化合物とポリシロキサン(PS)とを含む液状組成物を使用する場合、該液状組成物における前記低誘電率膜形成成分(前記有機ケイ素化合物、又は前記有機ケイ素化合物及びPS)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SiO換算基準で、2〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
前記含有量が、2質量%未満であると、均一な被膜を形成することが難しくなることがあり、40質量%を超えると、塗布液の経時安定性が悪くなることがある。
【0053】
なお、前記液状組成物は、そのまま使用してもよいが、該液状組成物中に含まれる前記有機溶媒成分を、ロータリーエバポレーターなどを用い、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)等から選択される有機溶媒と溶媒置換した後、前記低誘電率膜形成成分の濃度を上記レベルに調整して使用することが好ましい。該溶媒置換においては、前記液状組成物中に含まれる有機溶媒及び水分、更にはアルコキシシラン(AS)などの加水分解で副生されるアルコール類などが分離及び除去されるが、この際、該液状組成物には、前記溶媒置換前に含有する前記有機溶媒及び水分を、それぞれ1〜30質量%程度、残存させておくのが好ましい。その結果、高い膜強度を有し、疎水性に優れた平滑な前記低誘電率膜を形成可能な液状組成物が得られる。
【0054】
また、前記液状組成物としては、前記液状組成物として、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)を前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下にて加水分解又は部分加水分解した後、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)、該アルコキシシランの加水分解物、該アルコキシシランの部分加水分解物などと混合し、更に必要に応じて、これらの少なくとも一部を加水分解して得られる有機ケイ素化合物を用いてもよい。
【0055】
【化5】

前記一般式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基及びビニル基の少なくともいずれかを表し、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、及びビニル基の少なくともいずれかを表す。nは0〜3の整数である。
なお、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)、前記アルコキシシラン(AS)、及び前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の詳細については、上述した通りである。
【0056】
次に、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物の調製方法の他の例を具体的に説明する。
まず、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)を前記有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで、100〜200rpmの速度で攪拌する。
次いで、攪拌下にある混合溶液中に前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液を5〜20分間にわたって滴下した後、更に10〜30℃の温度にて30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
更に、30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら0.5〜72時間にわたって100〜200rpmの速度で撹拌することにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解物乃至部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。該混合溶液と、前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)又はこれを前記有機溶媒と混合したものとを混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌し、攪拌下にある該混合溶液中に前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液を5〜20分間にわたって滴下した後、更に10〜30℃の温度にて30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌し、得られた混合溶液を30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら10〜30時間、100〜200rpmの速度で撹拌することにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物である有機ケイ素化合物を含む液状組成物を調製することができる。
なお、前記TAOS及び前記有機溶媒からなる混合溶液中への前記TAAOHの水溶液の滴下に代えて、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前期有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下で、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液中に30〜90分間にわたってゆっくりと滴下してもよい。
【0057】
更に、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物の調製方法の他の例を具体的に説明する。
まず、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)を前記有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで、100〜200rpmの速度で攪拌する。
次いで、攪拌下にある該混合溶液中に前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液を5〜20分間にわたって滴下した後、更に10〜30℃の温度にて30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
更に、30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら0.5〜72時間にわたって100〜200rpmの速度で撹拌することにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解物乃至部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。
一方、前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(AS)を前記有機溶媒と混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで100〜200rpmの速度で攪拌する。
次いで、攪拌下にある混合溶液中に前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液を5〜20分間にわたって滴下した後、更に10〜30℃の温度にて30〜90分間、100〜200rpmの速度で攪拌する。
更に、30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら0.5〜72時間にわたって100〜200rpmの速度で撹拌することにより、前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物乃至部分加水分解物を含む混合溶液を調製する。
そして、得られた前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)の加水分解物乃至部分加水分解物を含む混合溶液と、前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物乃至部分加水分解物を含む混合溶液とを混合した後、10〜30℃の温度にて、これらの成分が充分に混合するまで、100〜200rpmの速度で攪拌する。
更に、必要に応じて、30〜80℃の温度に加熱した後、該温度に保持しながら10〜30時間にわたって、100〜200rpmの速度で撹拌することにより、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記アルコキシシラン(AS)の加水分解物である有機ケイ素化合物を含む液状組成物を調製することができる。
なお、前記TAOS及び前記有機溶媒からなる混合溶液中への前記TAAOHの水溶液の滴下や、前記AS及び前記有機溶媒からなる混合溶液中への前記TAAOHの水溶液の滴下に代えて、前記テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)及び前記有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下で、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液中に30〜90分間にわたってゆっくりと滴下したり、前記アルコキシシラン(AS)及び前記有機溶媒からなる混合溶液を、上記と同様な条件下で、前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の水溶液中に30〜90分間にわたってゆっくりと滴下してもよい。
【0058】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、転写法などが挙げられる。これらの中でも、半導体基板などに塗布する場合には、塗布膜厚の均一性に優れ、発塵性が低い点で、スピンコート法が好ましい。該スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒〜10分間程度であり、1〜90秒間が好ましい。
なお、大口径の半導体基板などに塗布する場合には、前記転写法を使用してもよい。
【0059】
前記塗布の際の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。
前記厚みが10nm未満であると、ピンホールなどの欠陥が生じることがある。
前記塗布の際乃至その後で、塗布した前記レジスト組成物をベーク(加温及び乾燥)するのが好ましく、その条件、方法などとしては、前記レジスト膜を軟化させない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その温度としては、40〜150℃程度が好ましく、80〜120℃がより好ましく、また、その時間としては、10秒〜5分間程度が好ましく、30〜90秒間がより好ましい。
【0060】
前記被加工基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記低誘電率膜が半導体装置に形成される場合には、該被加工基材としては、半導体基板が挙げられ、具体的には、シリコンウェハー等の基板、各種酸化膜などが好適に挙げられる。
以上の工程により、前記低誘電率膜形成材料が前記被加工基材上に塗布される。
【0061】
−加熱工程−
前記加熱工程は、前記塗布工程により前記被加工基材上に塗布された前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物からなる被膜を80℃以上350℃以下の温度で加熱する工程である。
【0062】
前記液状組成物からなる被膜の加熱温度としては、80℃以上350℃以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜350℃が好ましい。
前記加熱温度が、80℃未満であると、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物からなる被膜中の前記有機溶媒がほとんど蒸発しないで該被膜中に残存し、該被膜を多孔質化させることができないほか、該被膜の膜厚にムラが生ずることがあり、350℃を超えると、前記被膜中の前記有機溶媒が急激に蒸発し、該被膜中に比較的大口径の細孔や空隙を形成し、被膜強度が大幅に低下してしまうことがある。
前記加熱工程における加熱時間としては、前記被膜の膜厚などにより異なるが、例えば、1〜10分程度であり、2〜5分が好ましい。
なお、前記加熱工程は、前記塗布工程により被膜が形成された前記被加工基材を、例えば、枚葉式のホットプレート上に載置して行うのが好ましい。
【0063】
前記加熱工程は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、などの条件で行うことができるが、空気雰囲気下で行うのが好ましい。この場合、微量の酸素が前記被膜中に取り込まれる可能性が高まり、後述する焼成工程において、Si−O−Si結合の架橋の進んだシリカ系被膜が形成され、耐吸湿性(疎水性)と高被膜強度とを有する低誘電率非晶質シリカ系被膜を容易に形成することができる。なお、前記加熱工程が、350℃以下の低温度条件下にて短時間で行われるので、酸素を比較的多量に含んでいる前記空気雰囲気下でも、半導体基板上に配設された金属配線に対し、金属酸化などの悪影響を与えることはない。
【0064】
以上の工程により、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物からなる被膜が加熱されて、該被膜中に含まれる前記有機溶媒が蒸発すると共に、該被膜中に含まれるテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)が分解して脱離する。また、固形成分であるシリカ系被膜形成成分の重合反応が進んで硬化すると共に、加熱により重合体の溶融粘度が低下して、前記被膜のリフロー性が増大し、得られる被膜の平坦性が向上する。
【0065】
−焼成工程−
前記焼成工程は、前記加熱工程により加熱された前記被膜を350℃より高く450℃以下の温度で焼成する工程である。
前記焼成工程における焼成の温度としては、前記有機ケイ素化合物を含む液状組成物の時に使用される前記テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の種類や量、あるいは前記液状組成物中に含まれる有機ケイ素化合物の性状により異なるが、耐吸湿性(疎水性)及び高被膜強度を有する低誘電率非晶質シリカ系被膜が得られる点で、350℃より高く、450℃以下であることが必要であり、370〜450℃が好ましい。
前記焼成の温度が、350℃以下であると、シリカ系被膜形成成分の前駆体の架橋反応が進みにくくなり、充分な被膜強度が得られないことがあり、450℃を超えると、半導体基板上に配設されたアルミニウム配線や銅配線などが酸化あるいは溶融され、これらの配線層に損傷を与えることがある。
前記焼成工程における焼成時間としては、前記有機ケイ素化合物の種類、前記被膜の膜厚などにより異なるが、例えば、5〜90分程度であり、10〜60分が好ましい。
なお、前記焼成工程は、前記加熱工程同様、前記被膜が形成された前記被加工基材を、例えば、枚葉式のホットプレート上に載置して行うのが好ましい。
【0066】
前記焼成工程は、不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。
前記不活性ガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前駆体及び焼成物との反応性が低い点で、窒素ガスが好ましい。また、該窒素ガスに、更に必要に応じて、酸素ガス、空気等を加えて、少量の酸素(例えば、500〜10,000容量ppm程度の酸素)を含む不活性ガス(例えば、国際出願公開WO01/48806号公報参照)を使用してもよい。
【0067】
以上の工程により、前記被膜が焼成されて、低誘電率膜が形成される。
前記低誘電率膜の比誘電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記配線間の寄生容量を低下し、信号伝播速度の高速化が可能な点で、2.5以下であるのが好ましい。
前記低誘電率膜の弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、応力集中による配線の変形や断線、あるいは絶縁膜の破壊を抑制することができる点で、5.0GPa以上が好ましく、6.0GPa以上がより好ましい。
前記低誘電率膜の硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、応力集中による配線の変形や断線、あるいは絶縁膜の破壊を抑制することができる点で、0.6GPa以上が好ましく、0.7GPa以上がより好ましい。
なお、前記弾性率及び前記硬度は、例えば、押し込み強度測定器(「ナノインデンタXP」;ナノインスツルメンツ社製)を用いて測定することができる。
また、前記被膜中に含まれる細孔の平均細孔径が3nm以下であり、しかも2nm以下のミクロポアの細孔含有率が70%以上である。
前記低誘電率膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、半導体装置におけるシリコンウェハー上では、通常、100〜600nmであり、多層配線の配線層間では通常、100〜1,000nmである。
【0068】
<密着強化層形成工程>
前記密着強化層形成工程は、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて密着強化層を形成する工程である。
前記密着強化層形成工程は、前記低誘電率膜形成工程の前及び後の少なくともいずれかに行うことが必要である。この場合、該低誘電率膜形成工程の前のみ、後のみ、及び前後両方のいずれの態様で行ってもよい。
前記密着強化層形成工程が、前記低誘電率膜形成工程の前に行われる場合には、前記被加工基材上に前記密着強化層が形成され、更にその上に前記低誘電率膜が形成される。一方、前記密着強化層形成工程が、前記低誘電率膜形成工程の後に行われる場合には、前記低誘電率膜上に前記密着強化層が形成される。更に前記密着強化層形成工程が、前記低誘電率膜形成工程の前後両方に行われる場合には、前記被加工基材上に、前記密着強化層、前記低誘電率膜、前記密着強化層、他の部材(前記銅拡散防止膜)が、この順に積層される。その結果、前記低誘電率膜の剥がれを防止することができ、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、信号伝播速度の高速化が可能で高性能な半導体装置を効率よく製造することができる。
【0069】
前記密着強化層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記密着強化層形成用材料を前記被加工基材上に塗布した後、加温(ベーク)することにより行われるのが好ましい。
なお、前記密着強化層形成用材料、前記被加工基材、及び前記塗布の詳細については、上述した通りである。
【0070】
前記加温(ベーク)は、150〜250℃で行われるのが好ましく、150〜230℃がより好ましい。
前記加温(ベーク)の際の温度が150℃未満であると、前記アルコキシ基を加水分解及び縮合してなるオリゴマーを含む本発明の前記密着強化層形成用材料中の溶剤が充分に揮発しないとともに、前記オリゴマー成分の縮合が充分に進行せず、密着性向上の効果が得られないことがあり、250℃を超えると、前記密着強化層の熱分解が生じ、密着性向上の効果が得られないことがある。
なお、前記加温(ベーク)は、前記密着強化層用形成材料の塗布直後に行ってもよいし、前記低誘電率膜形成工程における前記塗布工程後に行ってもよい。
【0071】
前記密着強化層形成工程は、前記被加工基材を洗浄することを含むのが好ましい。
前記洗浄の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水及び有機溶剤のいずれかを用いるのが好ましく、前記密着強化層形成用材料のベーク後に行うのが好ましい。この場合、前記ベーク後に未反応のオリゴマー成分を除去し、より密着性を向上させることができる。
前記有機溶剤としては、前記オリゴマー成分を溶解可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系;フェノール、クレゾール、ジエチルフェノール、トリエチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール等のフェノール系;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系;ヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素系;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、オリゴマー成分の溶解性が優れる点で、アルコール系が好ましい。
【0072】
以上の工程により、前記密着強化層形成用材料を用いて前記密着強化層が形成される。
本発明の前記半導体装置の製造方法を用いて、多層配線を有する半導体装置を製造する場合、前記低誘電率膜を、前記密着強化層を介して下層乃至上層と接触配置させるのが好ましい。この場合、前記密着強化層が前記低誘電率膜に優れた密着性を付与するため、該低誘電率膜と該低誘電率膜の下層乃至上層との密着性が強化され、該低誘電率膜が多孔質化された接触面積の狭いものであっても、他層との剥がれを抑制することができる。
前記低誘電率膜が前記密着強化層を介して接触する下層乃至上層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、極めて高い密着性向上効果が得られる点で、例えば、SiO膜、SiN膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜などが好適に挙げられる。
【0073】
本発明の前記半導体装置の製造方法によれば、前記密着強化層が前記低誘電率膜と接触するように形成されるので、前記低誘電率膜が多孔質化されており接触面積が狭くても、該低誘電率膜に優れた密着性を付与し、該低誘電率膜と他の層(膜)との密着性を強化し、前記低誘電率膜の剥がれを抑制することができる。このため、多層配線を有する半導体装置の製造に好適に使用することができ、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成し、信号伝播速度の高速化が可能で高性能な半導体装置が効率よく製造される。該半導体装置の製造方法は、本発明の半導体装置の製造に特に好適である。
【0074】
本発明の半導体装置は、本発明の前記密着強化層形成用材料を用いて形成された本発明の前記密着強化層を有するので、前記低誘電率膜の剥がれを防止し、しかも、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができるので、高速で信頼性の高い半導体装置、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(調製例1)
−密着強化層形成用材料の調製−
前記オルガノアルコキシシランとしてのメチルトリエトキシシラン1.78g(0.01mol)、前記塩基性添加剤としてのモノエタノールアミン0.061g(0.001mol)、及びエタノールを反応容器に仕込み、溶液温度を56℃に安定させた後、イオン交換水0.18g(0.01mol)を30分間にわたって滴下し、滴下終了後2時間の熱成反応を行い密着強化層形成用塗布液(密着強化層形成用材料)を調製した。なお、密着強化層形成用塗布液において、メチルトリエトキシシランのアルコキシ基が加水分解及び縮合されてなるオリゴマーの存在が、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により確認された。また、該オリゴマーの濃度は、エタノールの添加量を適宜変更することにより調整した。
また、密着強化層形成用塗布液における、前記オリゴマー(加水分解生成物)を、THF(テトラヒドロフラン)を用いて1質量%濃度に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(装置「HLC−8020」;東ソー社製)により重量平均分子量を測定したところ、1,400であった。
【0077】
(調製例2)
−密着強化層形成用材料の調製−
前記窒素含有塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシランとしての3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.21g(0.01mol)及びエタノールを反応容器に仕込み、溶液温度を56℃に安定させた後、イオン交換水0.18g(0.01mol)を30分間にわたって滴下し、滴下終了後2時間の熱成反応を行い、密着強化層形成用塗布液(密着強化層形成用材料)を調製した。なお、密着強化層形成用塗布液において、3−アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシ基が加水分解及び縮合されてなるオリゴマーの存在が、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により確認された。また、該オリゴマーの濃度は、エタノールの添加量を適宜変更することにより調整した。
密着強化層形成用塗布液における、前記オリゴマー(加水分解生成物)を、THF(テトラヒドロフラン)を用いて1質量%濃度に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(装置「HLC−8020」;東ソー社製)により重量平均分子量を測定したところ、1,850であった。
【0078】
(調製例3)
−密着強化層形成用材料の調製−
調製例1において、モノエタノールアミンを添加しなかった以外は、調製例1と同様にして、密着強化層形成用塗布液(密着強化層形成用材料)を調製した。
得られた密着強化層形成用塗布液における前記オリゴマーの重量平均分子量は、650であった。
【0079】
(調製例4)
−密着強化層形成用材料の調製−
調製例2において、エタノールをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに代えた以外は、調製例2と同様にして密着強化層形成用塗布液(密着強化層形成用材料)を調製した。
得られた密着強化層形成用塗布液における前記オリゴマーの重量平均分子量は、1,950であった。
【0080】
(調製例5)
−密着強化層形成用材料の調製−
調製例2において、溶液温度を室温に変えた以外は、調製例2と同様にして密着強化層形成用塗布液(密着強化層形成用材料)を調製した。
得られた密着強化層形成用塗布液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりオリゴマーの存在を確認したところ、オリゴマーの存在は確認されなかった(加水分解及び縮合反応が殆ど進行しなかった)。また、重量平均分子量は、160であり、オリゴマーは殆ど含まれていなかった。
【0081】
(実施例1)
−半導体装置の製造−
前記低誘電率膜形成工程及び前記密着強化層形成工程を行った以外は、通常の半導体装置の製造工程を用いて半導体装置を製造した。
【0082】
−低誘電率膜形成材料の調製−
テトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン17.8g(0.1mol)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.1mol)、及びメチルイソブチルケトン39.6gを、容積200mlの反応容器に仕込み、1質量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液16.2g(0.9mol)を10分間にわたって滴下し、滴下終了後2時間の熟成反応を行った。次いで、硫酸マグネシウム5gを添加し、過剰の水分を除去した後、ロータリーエバポレーターを用いて熟成反応により生成したエタノールを、反応溶液が50mlになるまで除去した。得られた反応溶液にメチルイソブチルケトン20mlを添加し、配線分離層用多孔質シリカ前駆体塗布溶液(低誘電率膜形成材料)を調製した。
【0083】
得られた多孔質シリカ前駆体塗布溶液をSi基板上にスピンコート法により塗布し、250℃にて3分間、プリベークを行った後、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)装置を用いて950cm−1付近のSiOHの吸収強度から算出したところ、架橋率は75%であった。
次に、Nガス雰囲気の電気炉にて400℃、30分間焼成を行い、多孔質シリカ膜(低誘電率膜)を得た。
【0084】
得られた多孔質シリカ膜(低誘電率膜)の誘電率を、水銀プローバを用いて測定した容量から算出したところ、2.24であった。また、多孔質シリカ膜に対し、押し込み強度測定器(「ナノインデンタXP」;ナノインスツルメンツ社製)を用いて弾性率及び硬度を測定したところ、弾性率は9GPaであり、硬度は1GPaであった。
【0085】
<密着強化層形成工程>
前記被加工基材としてのSi基板上に化学気相成長法により、厚み50nmのSiC膜を形成した。
次いで、該SiC膜上に、調製例1〜5で得られた密着強化層形成用塗布液をスピンコート法により塗布した後、それぞれ表1に示す温度にて1分間ベークを行い、密着強化層を形成した。また、調製例1及び調製例2の密着強化層形成用材料を用いた密着強化層については、ベーク後にエタノールを用いて表面洗浄を行った。
【0086】
<低誘電率膜形成工程>
前記低誘電率膜形成材料の調製により得られた多孔質シリカ前駆体塗布溶液(低誘電率膜形成材料)を、前記密着強化層上に、スピンコート法により塗布した(前記塗布工程)後、250℃にて3分間ベークを行い(前記加熱工程)、Nガス雰囲気の電気炉にて400℃、30分間の条件で焼成し(前記焼成工程)、低誘電率膜を形成した。
更にその上に、化学気相成長法により、厚みが50nmとなるようにSiC膜を形成した。
【0087】
次に、前記密着強化層及び前記低誘電率膜が積層されたSi基板を、100℃の水蒸気中に1時間放置した後、該Si基板上を25分割して切断することにより、前記密着強化層及び前記低誘電率膜が積層されたSi基板のサンプルを合計25個作製した。
得られたサンプルのそれぞれについて、最表面のSiC膜上に直径2mmのスタッドピンをエポキシ樹脂を用いて貼り付け、セバスチャン測定器を用いて引張試験を行い、前記低誘電率膜の密着性を評価した。また、前記密着強化層を設けない態様についても評価した。結果を表1に示す。なお、密着強化層形成用塗布液について、オリゴマーの濃度、ベーク温度、及び表面洗浄の有無を、密着強化層について膜厚をそれぞれ表1に併せて示す。
更に、調製例1〜5で得られた密着強化層形成用塗布液を、室温で保存したところ、調製例4及び調製例5の密着強化層形成用塗布液は、1ヶ月放置後にゲル化が生じ、他の調製例に比して保存安定性が低かったものの、調製例1〜3の密着強化層形成用塗布液は、保存安定性が良好であることが判った。
【0088】
【表1】

【0089】
表1より、本発明の密着強化層を有しない場合には、全サンプル25個において、前記低誘電率膜と前記SiC膜との間で界面剥がれが生じ、密着性に劣っていたのに対し、本発明の密着強化層形成用材料を用いて形成した本発明の密着強化層を有する場合には、低誘電率膜の密着性が強化され、前記密着強化層が接していた前記低誘電率膜と前記SiC膜との間での界面剥がれが防止されることが判った。
【0090】
(実施例2)
−半導体装置の製造−
本発明の半導体装置を以下のようにして製造した。まず、図1に示すように、素子間分離膜2で分離され、ソース拡散層5aとドレイン拡散層5b、サイドウォール絶縁膜3を有するゲート電極4を形成したトランンジスタ層が形成されたシリコンウェハー1に、層間絶縁膜6(リンガラス)及びストッパー膜7(SiC)を形成した後、電極取り出し用のコンタクトホールを形成した。スパッタ法によりこのコンタクトホールにバリア膜8(TiN)を厚みが50nmとなるように形成した後、WFと水素とを混合し、還元することにより、Wによる導体プラグ9(ブランケット)を該コンタクトホールに埋め込み、ビアを形成すると共に、化学的機械研磨法(CMP)により該ビア以外の部分を除去した。
【0091】
続いて、前記ビアが形成されたストッパー膜7上に、本発明の前記密着強化層形成用塗布液を用いて、密着強化層100を厚みが2.0nmとなるように形成した後、前記低誘電率膜形成用塗布液を用いて、低誘電率膜(配線分離絶縁膜)10を厚みが250nmとなるように成膜形成し、低誘電率膜10の表面にキャップ膜(保護膜)11としてのTEOS−SiOを厚みが50nmとなるように積層した。ここで、低誘電率膜10に対し、配線パターンに施したレジスト層をマスクとして用い、CF/CHFガスを原料としたFプラズマ法にて加工を行い、配線溝を形成した。そして、形成した配線溝に、スパッタ法により、配線材料(銅)が低誘電率膜10へ拡散するのを防ぐバリア膜8(TiN)を厚みが50nmとなるように形成した。続いて、前記配線溝に形成したバリア膜8の表面に、電解メッキの際に電極として機能するシード層(Cu)を厚みが50nmとなるように形成した。次に、電解メッキ法により、銅配線17(Cu)を厚み600nm程度積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外の銅を除去し、第1層目の配線層(銅)を形成した。
【0092】
次に、デュアルダマシン法により、ビアと配線層とを同時に形成した。
まず、前記第1層目の配線層(銅)上に、ストッパー膜(拡散防止膜)12としてのSiC膜を厚みが50nmとなるように形成した。ストッパー膜(拡散防止膜)12は、配線材料(銅)が低誘電率膜10へ拡散するのを防ぐ目的で、シランとアンモニアガスとを用いてプラズマCVD法により形成した。次に、ストッパー膜(拡散防止膜)12上に、前記低誘電率膜形成用塗布液を用いて低誘電率膜(配線分離絶縁膜;SiOC膜)13を厚みが250nmとなるように積層した。低誘電率膜13上に、シランとアンモニアガスとを用い、プラズマCVD法により、ストッパー膜14としてのSiC膜を厚みが50nmとなるように形成した。更にその上に、本発明の前記密着強化層形成用塗布液を用いて密着強化層200を厚みが2.0nmとなるように形成した後、前記低誘電率膜用組成物を用いて低誘電率膜15を厚みが400nmとなるように形成し、キャップ膜(保護膜)16としてのTEOS−SiOを厚みが50nmとなるように積層した。
ここで、低誘電率膜15に対し、ビアパターンを形成したレジスト層をマスクとして用い、CF/CHFガスを原料としたFプラズマ法にてガス組成を変えることにより、キャップ膜16、低誘電率膜15、ストッパー膜14、低誘電率膜13、及びストッパー膜12の順に加工を行いビアを形成した。次いで、低誘電率膜15に対し、配線パターンに施したレジスト層をマスクとして用い、CF/CHFガスを原料としたFプラズマ法にて加工を行い、配線溝を形成した。形成したビアと配線溝とに対し、スパッタ法により、配線材料(銅)が低誘電率膜15へ拡散するのを防ぐバリア膜8(TiN)を厚みが50nmとなるように形成した。続いて、前記配線溝に形成したバリア膜8の表面に、電解メッキの際に電極として機能するシード層(Cu)を厚みが50nmとなるように形成した。次に、電解メッキ法により、銅配線18(Cu)を厚み1,400nm程度積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外の銅を除去し、第2層目のビア及び配線層(銅)を形成した。
以下、前記第2層目のビア及び配線層(銅)の形成を再度行うことにより、3層目のビア及び配線層(銅)を有する3層構造の銅配線を有する半導体装置を製造した。以上のようにして、ビアと銅配線とが連続した連続ビアを有する半導体装置を100万個製造したところ、該連続ビアの歩留まりは95%以上であった。また、ワイヤボンディングを行ったところ、ボンディング圧力による破壊は観られなかった。
また、得られた多層配線の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)により分析したところ、ストッパー膜7及び拡散防止膜13上に、Si、C、及びNからなる層が観測され、本発明の密着強化層の存在が確認された。該密着強化層における窒素含有量をTEM−EDXにより測定したところ、9質量%であった。
【0093】
(比較例1)
実施例2において、前記低誘電率膜10を形成する際に、本発明の密着強化層を形成しなかった以外は、実施例2と同様にして多層配線を有する半導体装置を製造した。該半導体装置を100万個製造したところ、連増ビアの歩留まりは95%以上であった。また、ワイヤボンディングを行ったところ、ボンディング圧力により、低誘電率膜の界面で膜剥がれが発生した。
【0094】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする密着強化層形成用材料。
(付記2) 塩基性官能基が窒素含有塩基性官能基である付記1に記載の密着強化層形成用材料。
(付記3) オルガノアルコキシシランが、アルコキシ基を加水分解及び縮合させてなるオリゴマーである付記1から2のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
(付記4) オリゴマーの平均重量分子量が、100〜100,000である付記3に記載の密着強化層形成用材料。
(付記5) オリゴマーの濃度が、0.1質量%以下である付記3から4のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
(付記6) アルコキシ基を加水分解して得られる生成物と同一成分の溶媒を含む付記1から5のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
(付記7) 塩基性添加剤の添加量が、0.5〜20質量%である付記1から6のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
(付記8) 付記1から7のいずれかに記載の密着強化層形成用材料を用いて形成されたことを特徴とする密着強化層。
(付記9) 厚みが0.5〜50nmである付記8に記載の密着強化層。
(付記10) 窒素含有量が、20質量%である付記8から9のいずれかに記載の密着強化層。
(付記11) 被加工基材上に低誘電率膜を形成する低誘電率膜形成工程と、該低誘電率膜形成工程の前及び後の少なくともいずれかに、付記1から7のいずれかに記載の密着強化層形成用材料を用いて密着強化層を形成する密着強化層形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記12) 密着強化層形成工程が、密着強化層形成用材料を被加工基材に塗布した後、加温することにより行われる付記11に記載の半導体装置の製造方法。
(付記13) 加温が、150〜250℃で行われる付記12に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14) 密着強化層形成工程が、水及び有機溶剤のいずれかを用いて被加工基材を洗浄することを含む付記11から13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記15) 低誘電率膜形成工程が、テトラアルキルオルソシリケート及び下記一般式(1)で表されるアルコキシシランをテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドの存在下にて加水分解して得られる有機ケイ素化合物を含む液状組成物を、被加工基材上に塗布する塗布工程、該被加工基材上に塗布された液状組成物からなる被膜を80℃以上350℃以下の温度で加熱処理する加熱工程と、該加熱工程により加熱された前記被膜を350℃より高く450℃以下の温度で焼成する焼成工程とを含み、誘電率が2.5以下の低誘電率膜を形成する付記11から14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【化6】

前記一般式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、及びビニル基のいずれかを表す。nは0〜3の整数である。
(付記16) 焼成工程が、酸素濃度100ppm以下の不活性ガス雰囲気中で行われる付記15に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17) 低誘電率膜を、密着強化層を介して、SiO膜、SiN膜、SiC膜、SiOC膜、及びSiCN膜から選択される少なくとも1種と接触配置させる付記11から16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記18) 低誘電率膜の弾性率が5GPa以上であり、かつ硬度が0.6GPa以上である付記11から17のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記19) 付記11から18のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の密着強化層形成用材料は、無機材料どうしに優れた密着性を付与し、無機材料で形成された低誘電率膜及び他の部材の密着性を強化することができ、低誘電率膜に密着性を付与する密着強化層の形成に好適に使用することができ、特に本発明の密着強化層、本発明の半導体装置の製造に好適に使用することができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ等を初めとする各種半導体装置、特に本発明の半導体装置の製造に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置は、本発明の前記密着強化層を有するので、低誘電率膜の剥がれが防止され、高速で信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の密着強化層を有する本発明の半導体装置の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0097】
1 シリコンウェハー
2 素子間分離膜
3 サイドウォール絶縁膜
4 ゲート電極
5a ソース拡散層
5b ドレイン拡散層
6 層間絶縁膜(リンガラス)
7,12,14 ストッパー膜
8 バリア膜
9 導体プラグ(W)
10,13,15 低誘電率膜(配線分離絶縁膜)
11,16 キャップ膜(保護膜)
17,18 銅配線
100,200 密着強化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性官能基を有するオルガノアルコキシシラン、並びに、塩基性添加剤及びオルガノアルコキシシランのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする密着強化層形成用材料。
【請求項2】
塩基性官能基が窒素含有塩基性官能基である請求項1に記載の密着強化層形成用材料。
【請求項3】
オルガノアルコキシシランが、アルコキシ基を加水分解及び縮合させてなるオリゴマーである請求項1から2のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
【請求項4】
オリゴマーの濃度が、0.1質量%以下である請求項3に記載の密着強化層形成用材料。
【請求項5】
アルコキシ基を加水分解して得られる生成物と同一成分の溶媒を含む請求項1から4のいずれかに記載の密着強化層形成用材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の密着強化層形成用材料を用いて形成され、厚みが0.5〜50nmであることを特徴とする密着強化層。
【請求項7】
被加工基材上に低誘電率膜を形成する低誘電率膜形成工程と、該低誘電率膜形成工程の前及び後の少なくともいずれかに、請求項1から6のいずれかに記載の密着強化層形成用材料を用いて密着強化層を形成する密着強化層形成工程とを少なくとも含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
密着強化層形成工程が、水及び有機溶剤のいずれかを用いて被加工基材を洗浄することを含む請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
低誘電率膜形成工程が、テトラアルキルオルソシリケート及び下記一般式(1)で表されるアルコキシシランをテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドの存在下にて加水分解して得られる有機ケイ素化合物を含む液状組成物を、被加工基材上に塗布する塗布工程、該被加工基材上に塗布された液状組成物からなる被膜を80℃以上350℃以下の温度で加熱処理する加熱工程と、該加熱工程により加熱された前記被膜を350℃より高く450℃以下の温度で焼成する焼成工程とを含み、誘電率が2.5以下の低誘電率膜を形成する請求項7から8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【化1】

前記一般式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、及びビニル基のいずれかを表す。nは0〜3の整数である。
【請求項10】
低誘電率膜を、密着強化層を介して、SiO膜、SiN膜、SiC膜、SiOC膜、及びSiCN膜から選択される少なくとも1種と接触配置させる請求項7から9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−141875(P2007−141875A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329088(P2005−329088)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】