説明

寸法測定装置および寸法測定装置を備えた荷搬送ロボット

【目的】寸法測定装置および荷搬送ロボットの提供。
【解決手段】荷搬送ロボットの本体16には、エリアセンサ26と左右一対のアーム17を設け、アーム17の先端付近には対向する内側に向けて突設された手先部30が傾動可能に設けられる。手先部30を荷の基端面W1の左右端面に当接可能な位置でアーム17を伸縮させることで、荷Wの側面に当接し傾動した状態の手先部30は荷の遠端面W2において傾動状態から復帰し、そのときのアーム17の伸長量から遠端面W2の位置を算出する。荷Wの奥行寸法は、エリアセンサ26により測定した本体16からの基端面W1の位置と、手先部30が傾動復帰したときの遠端面W2の位置から演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寸法測定装置および寸法測定装置を備えた荷搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
荷の搬送においては搬送対象となる荷の寸法や重量、また搬送用途に合わせて搬送機器や搬送形態が選定されている。荷が大きく重量物である場合にはフォークリフトやハンドリフトが使用されおり、一方、所定の倉庫内において荷を棚に保管する場合などは自動倉庫が用いられている。搬送対象の荷の大きさや重量が画一である場合は、予め登録されたデータを使用し荷役搬送を行うことができるが、多種の荷を扱う場合には、無人フォークリフトや自動倉庫のスタッカクレーンでは、センサを用いて荷の寸法を測定し、測定した寸法に合わせて荷役搬送作業が行われている。
【0003】
荷の寸法測定には、センサや画像処理技術が用いられており、搬送機器が荷の正面に位置した後、荷の高さや幅を検出している。また、荷に荷の寸法情報を登録したマーカー等を貼り付けて、搬送機器にてマーカーを読み取ることも行われている。
なお、特許文献1には自動倉庫において荷の奥行寸法や位置を検知するための装置が開示されている。棚内の荷に対し、進退動自在な移動フレームの両端寄り部位に荷物を検知するためのセンサを設け移動フレームと一緒に移動させることにより、荷の奥行寸法を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−142617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサや画像処理により荷の正面から荷の高さや幅を検出する場合には、荷の奥行方向の寸法測定ができなかった。荷の寸法情報を登録したマーカー等を用いる場合には、事前に各荷の寸法情報の登録が必要であり、またマーカーや読み取り器などにコストがかかるという問題もある。また、特許文献1の奥行寸法検知では、センサに光電式センサを用いており、部品コストがかかるという問題がある。さらに、投光部および受光部による検出であり、半透明樹脂を使用した箱などは光電式センサでは検出されないこともあった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、簡単な構造で確実に荷の寸法を測定することができる寸法測定装置および寸法測定装置を備えた荷搬送ロボットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷の寸法を測定する寸法測定装置において、 伸縮可能なアームと、アームを支持する本体と、荷の本体から最も近い端面である基端面の位置を測定する基端面検出手段と、アームより突出して荷の側面もしくは上面に当接可能な当接部と、アームを伸縮させる駆動手段と、当接部が荷に当接していることを検出する当接検出手段と、アームの伸長量を検出する伸長量検出手段と、当接部を荷の側面もしくは上面に当接させつつ当接部が荷の基端面とは反対側の遠端面に至るようにアームを伸長させ、当接部が遠端面に至り接触検出手段により荷に当接しなくなった状態を検出した時点において、伸長量検出手段で検出されたアームの伸長量を算出し、基端面検出手段により検出された荷の基端面の位置と算出されたアームの伸長量とから荷の奥行寸法を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、当接部を荷に当接させつつ遠端面に至るまでアームを伸長させて当接しなくなることを検出し荷の奥行寸法を算出するので、荷の寸法を確実に演算できる。
【0009】
また、本発明の当接部は、アームより側方または下方に突出し弾性部材により弾性復帰
するよう変位可能に設けられ、当接検出手段は、当接部が荷の遠端面にて変位状態から弾性復帰した状態を前記荷に当接しなくなった状態として検出しても良い。これにより、当接部は弾性部材による変位自在に設けた簡単な構成で達成できる。
【0010】
また、当接部はアームの伸長方向に垂直な方向に対して傾倒可能であり、当接検出手段は、当接アームに対し傾倒することで当接部が荷に当接している状態を検出しても良い。また、基端面検出手段は、駆動手段によりアームとともに伸長させて当接部を荷の基端面に当接させることで基端面の位置を測定しても良い。
【0011】
また本発明の本体は荷搬送ロボットの本体であり、アームは荷を支持する機能を有し、荷搬送ロボットの本体に互いに間隔を空けて一対に前記アームを並設した寸法測定装置を荷搬送ロボットに適用しても良い。これにより、左右一対のアームで荷の寸法を検出することができ算出精度をより向上させることができる。
【0012】
また、当接部は、荷の奥行寸法の算出後は、アームの縮短によって荷の遠端面に当接しつつ荷を搬送ロボット本体側に引寄せても良い。また、基端面検出手段は、更に基端面の幅を測定可能であり、一対のアームは基端面検出手段によって測定された基端面の幅に基づいて一対のアームが近接又は離間するように移動しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造で確実に荷の寸法を測定することができる寸法測定装置および寸法測定装置を備えた荷搬送ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る荷搬送ロボットの概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアームの概要を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る手先部の概要を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る作用の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る作用の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る手先部の概要を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る作用の説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る作用の説明図である。
【図9】本発明の変更例に係る手先部の概要を示す平面図である。
【図10】本発明の変更例に係る手先部の概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る寸法測定装置および荷搬送ロボットを図1に基づいて説明する。
荷搬送ロボットは、車体10の下面に設けられた複数の車輪11により走行可能となっており、車体10の後部の中には図示しない走行モータやコントローラ12が備えられている。コントローラ12は、車両の走行を制御するため走行モータを駆動するとともに荷搬送ロボット全体の制御を行うものであり、後で説明する寸法測定の演算手段としても用いられる。車体10の前方には、荷役を行うための荷役部15が設けられ、荷役部15の下端が車体10に対して軸支され前後に傾動可能となっている。荷役部15は、車体10の前部から上方へ延設された本体16(荷搬送ロボットの本体)と本体16から前方へ突設されたアーム17からなる。
【0016】
本体16の後面にはレール16Aが設けられており、レール16Aに沿って本体16およびアーム17が昇降可能となっている。レール16Aの後面には、車体10の後部上方から斜め前方に延びた油圧シリンダ18のシリンダロッドが接続されており、油圧シリンダ18の伸縮にともないレール16Aおよび本体16が傾動する。なお、油圧シリンダ18は車体10内に設けられた図示しない油圧ポンプにより駆動されるものである。また、本体16はレール16Aに沿って昇降可能に設けられているが、レール16Aと本体16とに接続された図示しない昇降油圧シリンダが設けられており、油圧ポンプから油を供給されて本体16を昇降する構成となっている。
【0017】
本体16の前面下方には、前方に水平に突出する台座部25が設けられており、アーム17により荷を抱えるとともに台座部25にて荷を支持することができる。台座部25は本体16の前面を下方から上方に中央付近まで油圧駆動により昇降可能となっている。なお、台座部25の上面は水平面となっており、例えば10cm×20cmの矩形となっている。台座部25は前方に向かい次第に厚さを薄く形成しているが、搬送する荷を支持する強度が有れば良く、この形状に限定されるものではない。
【0018】
本体16の前面上端には、基端面検出手段としてエリアセンサ26が設けられており、本体16の前方を下方から水平方向までを、さらに左右方向に所定範囲内をレーザーにより検査することができる。エリアセンサ26により車体10の前方に位置する荷までの距離や荷の横幅などを検出できる。本実施形態では、本体16の前端上面の中央に1つのエリアセンサ26を設けている。
【0019】
本体16は全体として略T字形状であり、左右に延出した肩部分の直下に、一対のアーム17が左右に互いに間隔をあけて並設されており、夫々のアーム17は、本体16から左右に延出された接続部16Bにより支持されている。接続部16Bは内部の油圧シリンダ19(図2参照)により左右方向に伸縮可能であり、左右一対のアーム17の間隔を所定の範囲内で調整することができる。左右一対のアーム17は、接続部16Bに固設された固定部17Aと固定部17Aに伸縮可能に設けられた可動部17Bからなる。なお、一対のアーム17は夫々同じ構造のアームが並列に配置されているものである。
【0020】
固定部17Aは矩形断面を有する形状であり、固定部17Aより一回り小さい矩形断面を有した可動部17Bが伸縮可能に嵌め込まれている。図2に示すように、固定部17Aおよび可動部17Bの内部には油圧シリンダ20(駆動手段)が収められており伸縮駆動される。なお、コントローラ12により油圧回路が駆動されアーム17の伸縮量が制御されている。また、固定部17Aおよび可動部17Bの内部には可動部17Bの伸縮量(伸長量)を計測するためポテンショメータ21(伸長量計測手段)も備えられており、固定部17Aおよび可動部17Bの長さと伸縮量からアーム17の長さはコントローラ12により制御されている。
【0021】
図2、図3に示すように可動部17Bの先端付近には、一対のアーム17が対向する内側(側方)の面に軸支持部材17Cが設けられており、両可動部17Bの内側に上下に所定の隙間を空けて複数配置されている。さらに軸支持部材17Cには夫々上下方向に同軸に貫通する孔が形成されており、孔にはピン31が挿入されて当接部としての手先部30が傾動可能に保持されている。また、ピン31には上下の軸支持部材17Cの間に弾性部材としてねじりコイルバネ35が手先部30を前方に回動するよう付勢して配置されている。
【0022】
手先部30は内側(側方)に突出するように設けられた板状部材であり、その先端面の角部は上下方向に大きく面取りされるとともに板厚方向にも面取りがされている。手先部30は可動部17Bに接する基端の後方中央が切り欠かれ軸支持部材17Cが嵌め込まれるとともに、軸支持部材17Cの孔に合わせて上下にピン31を挿入可能な孔が形成されている。手先部30の可動部17Bへ接する基端は、基端端面から後方側平面にかけて図2に示すようにピン31を中心とした曲面に加工されているが基端端面と前方側平面との間には角部が残されており、可動部17B側面に当接可能となっている。これにより手先部30は後方へ回動する場合は可動部17B内側面に干渉することなく容易に傾動可能であり、ねじりコイルバネ35により前方へ復帰できるが、基端の角部がやがて可動部17B内側面に当接して回動が規制されるため、内側へ垂直に突出する図2、図3の位置を越えて前方へ傾動することはない。
【0023】
図2に示すように可動部17Bの先端付近には、内側の手先部30に面した位置に当接検出手段としてリミットスイッチ36が設けられている。リミットスイッチ36は、可動部17Bの内側にドッグが露出し、手先部30の基端端面が可動部17Bの内側に接触しているか否かを検出するスイッチである。手先部30が傾動せずリミットスイッチ36のドッグに接触している場合にはON信号を、傾動してリミットスイッチ36のドッグが接触していない場合にはOFF信号をコントローラ12へ出力し、手先部30の傾動状態を判別することができる。なお、本実施形態ではリミットスイッチ36は一対のアーム17の片方のみに設けられている。
【0024】
本実施形態の作用について図4、図5を用いて説明する。
荷搬送ロボットにて荷役を行う場合、搬送指示がコントローラ12に入力され、対象の荷Wが載置された棚Rの位置へと走行していく。このとき、荷搬送ロボットは作業者が走行操作しても良いし、荷搬送ロボットに走行経路測定用のセンサを別途設け、場内における自己位置推定を行い自動で走行させても良い。図4(a)に示すように、予め規定された棚Rの前の停車位置に到着すると、エリアセンサ26にて棚Rの高さを測定するとともに、荷Wの手前側、つまり荷搬送ロボットに最も近い側面である基端面W1について測定を行う。エリアセンサ26により前方のおよび荷Wの高さ、荷Wの幅、荷Wまでの距離を測定し、測定結果をコントローラ12へと送る。
【0025】
次に、コントローラ12は、エリアセンサ26による測定で得た棚Rの高さ、荷Wの高さに合わせて本体16をレール16Aに沿って昇降させる。このとき、アーム17が荷Wの側面に位置するように各油圧回路を昇降制御するとともに、台座部25の上面が棚Rの高さと同じ高さ位置(もしくはわずかに低い高さ位置)になるように台座部25も昇降制御する。また同時に荷Wの幅に合わせて接続部16Bを伸縮させて、左右一対のアーム17の間隔を調整する。アーム17の間隔は、荷Wの側面位置にアーム17が夫々位置するとともに、アーム17に設けられた手先部30が荷Wの左右端部に当接可能な距離に位置するように調整する。
【0026】
アーム17の間隔を調整し終えたら、図4(a)に示すように台座部25が棚Rに隙間を残して接近する位置まで荷搬送ロボットを前進させる。そして、図4(b)に示すように、アーム17の油圧シリンダ20にて可動部17Bを伸長させていき、手先部30を荷Wの基端面W1の左右端部に当接させる。このとき、可動部17Bに設けたリミットスイッチ36は、手先部30が荷Wに当接しねじりコイルバネ35の付勢力に反する力を受けて傾動することを検出し、コントローラ12に信号を送る。
【0027】
コントローラ12は、手先部30が荷Wに当接し傾動した検出信号を受けても可動部17Bを伸長し続けて、図5(a)に示すように荷搬送ロボットから最も遠い、荷Wの基端面W1の反対側である遠端面W2に手先部30を到達させる。遠端面W2を越えると手先部30は、当接するものが無くなるため、ねじりコイルバネ35の付勢力により可動部17Bの内側に垂直に突出する位置に復帰する。このとき、リミットスイッチ36により手先部30の復帰が検出される。
【0028】
リミットスイッチ36により手先部30の復帰が検出されると、コントローラ12はアーム17の油圧回路の駆動を停止し可動部17Bの伸長を止めるとともに、荷Wの奥行寸法を演算する。そして次に油圧シリンダ20を駆動して可動部17Bを縮短させて、図5(b)に示すように手先部30が本体16の前面から演算された荷Wの奥行寸法の長さ位置になるまで可動部17Bを収縮させる。このとき、荷Wの遠端面W2に手先部30の後方側の面が当接するが手先部30の角部が可動部17B内側面に当接して回動が規制されるため、荷Wを引寄せることができる。やがて荷Wの基端面側が台座部25を通り本体16の前面に当接して縮短動作は停止される。
【0029】
次に、本体16の前面と手先部30とで荷Wを挟み込むと、台座部25にて荷Wの下面を支持しつつ本体16を上昇させて荷Wを持上げて、荷搬送ロボットを後退(走行)させて搬送指示先へと荷Wを搬送する。なお、荷Wを持上げた後に油圧シリンダ18を縮めて本体16を後傾させて、台座部25と本体16の前面にて荷Wの荷重を受けるように支持して搬送しても良い。
【0030】
ここで奥行寸法の演算について詳細を説明する。
コントローラ12は、荷役作業においてエリアセンサ26により測定された本体16から基端面W1までの距離を記録する。
【0031】
次に、アーム17が伸長されて手先部30が遠端面W2まで到達した瞬間をリミットスイッチ36により検出してポテンショメータの数値から伸長量を得て、遠端面W2の位置をコントローラ12にて算出する。そして、エリアセンサ26により測定された本体16から基端面W1の位置と、手先部30が荷Wに当接しなくなったときに得られた遠端面W2の位置との差をコントローラ12にて演算して、荷Wの奥行寸法を演算する。
【0032】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)荷Wに手先部30を当接させて、遠端面W2の位置を測定し奥行寸法を演算するため確実に寸法を得ることができる。
(2)手先部30は、アーム17の内側に突出し、ねじりコイルバネ35により付勢されるとともに、後方に傾動可能に設けられており、簡単な構成で寸法測定が可能である。
【0033】
(3)リミットスイッチ30は左右一対のアーム17の一方のみに設けられており、荷Wの奥行寸法測定における部品点数を抑えることができ、コストを低減できる。
(4)手先部30は、内側に突出した位置から後方に傾動可能であるとともに、前方へは傾動不可に設けてあるため、寸法測定装置として遠端面W2にて傾動復帰により位置測定が可能であるとともに、荷Wの遠端面W2に手先部30を当接させて荷Wを引寄せることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図6に基づき説明する。
本実施形態では、左右一対のアーム17の可動部17Bに設けた手先部40は、可動部17Bに内側に突出した状態で固定されて傾動することはない。また、ねじりコイルバネ35やリミットスイッチ36が無い代わりに接続部16Bの伸縮による変位を検出する当接検知手段としてのポテンショメータ41が設けられている。その他の構造は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0035】
本実施形態の作用について図7、図8に基づき説明する。
荷搬送ロボットにて荷役を行う場合、搬送指示がコントローラ12に入力され、対象の荷Wが載置された棚Rの位置へと走行していく。図7(a)に示すように、荷Wの手前に到着すると、エリアセンサ26により前方の棚Rの高さおよび荷Wの高さ、荷Wの幅、荷Wまでの距離を測定する。このとき、エリアセンサ26では、荷Wの手前側、つまり荷搬送ロボットに最も近い側面である基端面W1について測定を行う。
【0036】
次に、基端面W1の測定で得た棚Rの高さ、荷Wの高さに合わせて本体16をレール16Aに沿って昇降させる。このとき、アーム17が荷Wの側面に位置するようにコントローラ12にて昇降制御、油圧駆動を行う。また同時に荷Wの幅に合わせ、左右一対のアーム17の間隔を調整する。アーム17の間隔は、アーム17に設けられた手先部40の内側端面が荷Wの左右端面に若干の隙間を有する位置に調整する。
【0037】
アーム17の間隔を調整し終えたら、図7(b)に示すように、アーム17の油圧シリンダ20にて可動部17Bを伸長させていき、手先部40がエリアセンサ26にて検出した基端面W1の位置よりわずかに前方に伸長させて停止する。次に図8(a)に示すように、一対のアーム17の間隔を手先部40の内側端面が荷Wの側面に当接するように接続部16Bを縮短させて幅を調整する。このとき、アーム17は手先部40が荷Wの側面に当接し、さらに荷Wの側面を内側にわずかに押付けるような小さな力を荷Wに対し与え続ける。ここでは、荷Wが破損しない程度の力を加えるとともに、アーム17の間隔が変位しないことを確認する。
【0038】
可動部17Bは手先部40が荷Wに当接した状態で伸長を再開し、図8(b)に示すように荷Wの基端面W1の反対側である遠端面W2まで手先部40を到達させる。遠端面W2を越えると手先部40は当接するものが無くなり、アーム17は内側に加え続けた小さな力により内側へ変位する。このとき、一対のアーム17の間隔が変化したことを接続部16Bのポテンショメータ41からコントローラ12にて検出するとともに、油圧シリンダ19を制御しアーム17を内側へ押付ける小さな力を加えることを止める。また、アーム17の変位により手先部40の当接がなくなったと判断し、可動部17Bの伸長量を検出する。
【0039】
次に、コントローラ12は荷Wの奥行寸法を演算するとともに、油圧回路を駆動して可動部17Bを縮短させて、図8(b)の状態から手先部40にて荷Wを本体16の前面まで引き寄せる。このとき、演算された荷Wの奥行寸法を用いて本体16の前面から手先部40を引寄せ停止させる位置を演算するとともに油圧シリンダ20を制御する。そして、本体16の前面および手先部40にて荷Wを挟み込み、台座部25にて荷Wの下面を支持しつつ本体16を上昇させ荷Wを持上げ搬送する。なお、荷Wを持上げた後に油圧シリンダ18を縮めて本体16を後傾させて、台座部25と本体16の前面にて荷Wの荷重を受けるように支持して搬送しても良い。
【0040】
ここで奥行寸法の演算について詳細を説明する。
コントローラ12は、荷役作業において、エリアセンサ26により荷Wの基端面W1までの距離を測定する。そしてアーム17を伸長させて手先部40を荷Wの側面に当接させて再度伸長させ、当接が終わったときに、遠端面W2まで手先部40を伸長させたと判断し、その時点での可動部17Bの伸長量をポテンショメータより測定する。
【0041】
エリアセンサ26により得た基端面W1の位置と、手先部40が荷Wに当接しなくなったときに得られた遠端面W2の位置との差をコントローラ12にて演算し、荷Wの奥行寸法を演算する。
【0042】
本実施形態では第1の実施形態の効果(1)に加えて以下の効果を有する。
(5)手先部40はアーム17の内側に突出した状態で固定したので、第1の実施形態の構成に比べてより簡易な構成で荷Wの寸法を測定することができる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、以下に、本発明の変更例について説明する。
○第1の実施形態では、左右一対のアーム17の片方のみにリミットスイッチ36を設けたが、左右両方のアーム17にリミットスイッチ36を設けても良い。両方のアーム17にて遠端面W2を検出することで、どちらか一方が故障しても寸法を測定することができる。また、左右に設けたリミットスイッチ36にて荷Wの左右の側面にて寸法を測定できるので、左右で奥行が異なる荷でも測定が可能である。
【0044】
○第2の実施形態では、可動部17Bの先端付近の内側に手先部30を固定して設けたが、図9に示すように手先部50をバネ51などの弾性部材による内側に向かい出没可能な構造としても良い。また、手先部50の出没をリミットスイッチ52等により検出しても良い。これにより、荷Wに対し手先部50をより優しく当接することができる。また、手先部50は可動部17Bの長手方向に垂直な方向にのみ出没変位するため、手先部50は基端面側も先端面側も可動部17Bの長手方向おいて常に一定の位置であるため、荷Wの奥行寸法測定においてより正確度を向上させることができる。
【0045】
○手先部30は、図10に示すように感圧センサ(力覚センサ)56を用いても良い。また感圧センサ56は手先部55の基端や先端のどちらに設けても良い。これにより、センサ自体が弾性変形するとともに変位の瞬間を直接検出できるため、より正確な寸法測定ができる。なお、感圧センサは左右一対のアーム17において一方のアーム17に設けても良いし、両アーム17に設けても良い。
【0046】
○手先部30の形状は実施形態の形状に限定されない。手先部30の当接面を曲面に形成し、荷Wに対し滑らかに接触させても良いし、当接面にローラを設けても良い。これにより荷Wが傷つくことがより低減される。また、左右一対のアーム17において、左右で手先部30の形状が異なっても良い。
○本実施形態では、一対のアーム17にて荷Wの寸法を測定したが、1つのアームのみで測定しても良い。また、1つのアームで寸法を測定するときは、荷Wの上面にアームの下方に突出させた手先部を当接させると良い。これにより、構成部材を半分にしコストを低減することができる。
【0047】
○アーム17は伸縮アームとして実施形態の形状のみに限定されない。固定部17Aを接続部16Bに回転可能に接続し、さらに固定部17Aの先端部に可動部17Bを固定部17Aの長手方向を含む平面内で回転可能に保持し、屈曲により伸縮可能なアームとしても良い。手先部30の位置を制御しながら固定部17Aに対し可動部17Bを回転させることで荷Wの寸法を測定できる。また、車体10の前後だけでなく上下、左右にも伸縮可能な多回転軸を有したアームを使用しても良い。
○荷Wは直方体のみに限定されるものではなく、傾斜面や曲面を有していても良い。さらに、荷Wは外形が円柱状であるドラム缶やロール紙などであっても良い。荷Wの傾斜面や曲面も基端面W1、遠端面W2、側面、上面に含まれ、多回転軸を備えたアームにて面形状に合わせて当接させ変位させれば本発明と同様に荷Wの寸法測定が可能である。
【0048】
○第1の実施形態では、エリアセンサ26が基端面検出手段として機能し、荷Wの基端面W1の幅と本体16から基端面W1の位置を検出したが、アーム17の伸長によって当接部30を基端面W1に当接させることで基端面検出手段として機能させても良い。この場合、エリアセンサ26は荷Wの幅方向の位置のみを検出し、検出値に基づきアーム17の間隔を調整すれば良い。
【0049】
○本発明では、荷の基端面および遠端面の位置を測定および算出し、その差を荷の奥行寸法を演算しているが、基端面の位置を基準としてアーム17の伸長量を荷の奥行寸法としても良い。この場合、手先部30が基端面に位置する時点から遠端面に位置するまでにアームが伸長した量が奥行寸法であり、コントローラ12により伸長量のみで演算できる。なお、この場合の伸長量を検出することも、基端面および遠端面の位置を検出することに含まれる。
【0050】
○エリアセンサ26に代えてTOFカメラや測距センサなどを用いても良い。
○実施形態においては、アーム17および台座部26は油圧駆動としたが、電動モータとギヤを用いて駆動させても良い。
○左右のアーム17は同期駆動させても、夫々別々に駆動させても良い。
【符号の説明】
【0051】
12 コントローラ
15 荷役部
16 本体
17 アーム
17A 固定部
17B 可動部
20 油圧シリンダ
21 ポテンショメータ
26 エリアセンサ
30 手先部
35 コイルバネ
36 リミットスイッチ
W 荷
W1 基端面
W2 遠端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷の寸法を測定する寸法測定装置において、
伸縮可能なアームと、
当該アームを支持する本体と、
前記荷の前記本体から最も近い端面である基端面の位置を測定する基端面検出手段と、
前記アームより突出して前記荷の側面もしくは上面に当接可能な当接部と、
前記アームを伸縮させる駆動手段と、
前記当接部が前記荷に当接していることを検出する当接検出手段と、
前記アームの伸長量を検出する伸長量検出手段と、
前記当接部を前記荷の側面もしくは上面に当接させつつ前記当接部が前記荷の基端面とは反対側の遠端面に至るように前記アームを伸長させ、前記当接部が前記遠端面に至り前記接触検出手段により前記荷に当接しなくなった状態を検出した時点において、前記伸長量検出手段で検出された前記アームの伸長量を算出し、前記基端面検出手段により検出された前記荷の基端面の位置と算出された前記アームの伸長量とから前記荷の奥行寸法を算出する演算手段とを有することを特徴とする寸法測定装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記アームより側方または下方に突出し弾性部材により弾性復帰するよ
う変位可能に設けられ、
前記当接検出手段は、前記当接部が前記荷の遠端面にて変位状態から弾性復帰した状態を前記荷に当接しなくなった状態として検出することを特徴とする請求項1記載の寸法測定装置。
【請求項3】
前記変位可能とは、前記当接部は前記アームの伸長方向に垂直な方向に対して傾倒可能なことであり、
前記当接検出手段は、前記当接部が前記傾倒することで、前記当接部が前記荷に当接していることを検出することを特徴とする請求項2に記載の寸法測定装置。
【請求項4】
前記基端面検出手段は、前記駆動手段により前記アームとともに伸長させて前記当接部を前記荷の基端面に当接させることで基端面の位置を測定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の寸法測定装置。
【請求項5】
前記本体は荷搬送ロボットの本体であり、
前記アームは前記荷を支持する機能を有し、前記荷搬送ロボットの本体に互いに間隔を空けて一対に前記アームが並設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の寸法測定装置を備えた荷搬送ロボット。
【請求項6】
前記当接部は、前記荷の奥行寸法の算出後は、前記アームの縮短によって前記荷の遠端面に当接しつつ前記荷を前記搬送ロボット本体側に引寄せるものであることを特徴とする請求項5に記載の荷搬送ロボット。
【請求項7】
前記基端面検出手段は、更に前記基端面の幅を測定可能であり、
前記一対のアームは前記基端面検出手段によって測定された前記基端面の幅に基づいて前記一対のアームが近接又は離間するように移動されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の荷搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93278(P2012−93278A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241879(P2010−241879)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】