説明

平面表示装置の製造方法および平面表示装置

【課題】炉などによるアニール(脱水素)工程を経ることなく、水素化非晶質シリコン膜の所望の領域のみを、ダメージが生じることなくレーザ照射により微結晶化することにより、同一基板内に水素化非晶質シリコンTFTと多結晶(微結晶)シリコンTFTを形成する。
【解決手段】水素化非晶質シリコン膜の所望の領域(駆動回路形成領域)のみに、連続発振レーザ光を矩形状で均一なパワー密度分布を有するビームに整形し、連続発振レーザ光の照射時間が5ミリ秒以上となる条件で定速走査しながら照射する。これにより、レーザ未照射領域は水素化非晶質シリコン膜のまま残り、レーザ照射部は脱水素に伴うダメージを生じることなく多結晶シリコン膜に変換される。この基板から製造される平面表示装置は画素部トランジスタのチャネル部は水素化非晶質シリコン膜で、駆動回路部トランジスタのチャネル部は脱水素化多結晶(微結晶)シリコン膜で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置の製造方法に関し、特に、TFT素子を有する画素の集合からなる表示領域の外側に半導体素子を有する駆動回路を形成する製造方法および平面表示装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の間に液晶材料を封入した液晶表示パネルを有する液晶表示装置には、アクティブマトリクス型のTFT液晶表示装置がある。アクティブマトリクス型のTFT液晶表示装置は、たとえば、テレビ受像器やパーソナル・コンピュータ(PC)のディスプレイ、携帯電話端末や携帯情報端末(PDA)の表示部などに広く用いられている。
【0003】
アクティブマトリクス型のTFT液晶表示装置で用いられる液晶表示パネルは、一方の基板に、複数本の走査信号線、複数本の映像信号線、TFT素子、画素電極などが設けられている。従来の液晶表示装置は、たとえば、複数本の映像信号線に映像信号(階調データと呼ぶこともある)を入力するためのドライバICや、複数本の走査信号線に走査信号を入力するためのドライバICが実装されたTCPやCOFなどのフレキシブル回路基板を液晶表示パネルに接続したり、前記各ドライバICを直接液晶表示パネル上に実装しているのが一般的である。また、近年は、たとえば、前記走査信号線などが形成された基板(以下、TFT基板と呼ぶ)の表示領域の外側に、前記ドライバICと同等の機能を有する駆動回路(周辺回路)を形成した液晶表示パネルが提案されている。
【0004】
前記TFT基板の表示領域の外側に形成される前記駆動回路は、主に、トランジスタやダイオードなどの半導体素子で構成されており、前記走査信号線や前記映像信号線を形成する際に各半導体素子の電極を形成し、表示領域のTFT素子の半導体層(チャネル層)を形成する際に半導体素子の半導体層を形成する。TFT基板の表示領域に形成するTFT素子の半導体層は、アモルファスシリコン(a−Si)で性能的には十分であるが、駆動回路を形成するには動特性の面で不十分である。このため、駆動回路を形成する領域のアモルファスシリコンを局所的に結晶化する必要がある。
【0005】
近年、アモルファスシリコン膜にレーザを照射して結晶化させる技術が確立され、製品に適用されている。一般的には、電気炉などでの450度、数時間の熱処理によりアモルファスシリコンを脱水素化し、脱水素化したアモルファスシリコンに対してエキシマレーザなどのパルスレーザを1箇所に対して複数回照射されるように少しずつステップ移動させながら照射することで、基板上のアモルファスシリコン膜を多結晶化する方法が採用されている。中でも、連続発振レーザ光を線状あるいは矩形状に整形・集光し、ビームの短軸幅方向に走査することで得られる帯状多結晶膜で構成したTFTは、パルスレーザで形成された結晶で構成されたTFTより動特性の面で格段に優れている。
【0006】
しかし、電気炉などでの熱処理による脱水素化を行なうと、基板全面のアモルファスシリコンが脱水素されてしまい、画素領域のTFT素子を形成するには不都合である。(アモルファスシリコンに水素が多量に含まれていないと、電極とのコンタクトが困難である。)
一方、電気炉などでの熱処理(脱水素)を行なわずにレーザ照射による多結晶化を行なうと、レーザ光照射時にアモルファスシリコン膜中から急激に水素が放出され、水素放出に伴うシリコン膜の損傷、具体的にはシリコン膜の剥離や飛散などを生じる問題点があった。
【0007】
このため、画素領域のTFT素子をアモルファスシリコンで、駆動回路領域のTFTを結晶化シリコンで構成する場合、それぞれ別な工程で作成する必要があるため、多くの工程が必要で、価格増大の原因になっていた。
【0008】
この問題に対処する方法として、電気炉などによる熱処理の代わりに、レーザビームを用いてアモルファスシリコンを脱水素化する方法が、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されている。
【0009】
特許文献1は、第1のエキシマレーザで脱水素化を行い、第2のエキシマレーザで多結晶化を行なう方法を開示している。
【0010】
特許文献2は、パルスレーザビームを2分割し、先行するビームで脱水素化を行い、それに続くビームで多結晶化を行なう方法を開示している。
【0011】
特許文献3は、アモルファスシリコン膜の全面を多結晶化するのではなく、駆動回路部のみを多結晶化する方法、すなわち、画素を水素化アモルファスシリコン、駆動回路を多結晶シリコンで構成するために、駆動回路部のみにパルスレーザを照射し、レーザ光のパルスのエネルギを段階的に増大させて水素化非晶質半導体の脱水素化を行い、最後に結晶化エネルギより大きなエネルギで照射して結晶化を行なう方法を開示している。
【0012】
また、特許文献4は10μm程度に集光したレーザ光を移動させながら連続照射することで半導体膜中の水素ガスを膨張させることなく除去する方法を開示している。
【0013】
【特許文献1】特開2002−158173号公報
【特許文献2】特開2002−64060号公報
【特許文献3】特開平8−129189号公報
【特許文献4】特開2006−100661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術を改良するものである。即ち、特許文献1、2、3に記載された方法は、いずれもエキシマレーザを代表とするパルスレーザを照射することで脱水素を行なうもので、レーザ用ガス処理設備などを含めると装置価格が極めて大きくなる。また、エキシマレーザはパルスごとのエネルギバラツキが大きく、プロセスウインドウが小さい問題がある。更に、パルスレーザで結晶化を行なうと、得られた多結晶膜表面の凹凸が大きく、多結晶膜上にゲート絶縁膜を形成する場合(トップゲートの場合)、耐圧を低下させる原因になるなどの問題があった。
【0015】
また、特許文献4に記載された方法は、10μm以下に集光したレーザスポットを走査して脱水素および結晶化を行なう方法が開示されているが、加熱時間が短いためレーザ出力条件範囲(プトセスウインド)が狭く、更にトランジスタ個々の領域を順次アニールするため、スループットが低い問題がある。
【0016】
本発明の目的は、基板の画素領域(表示領域)の外側、駆動回路を形成する領域のアモルファスシリコン膜のみを、局所的な脱水素化と多結晶シリコン膜への変換を行なうに際し、安定かつ安価に、高スループットで行なうことが可能な技術を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、表示領域のTFT素子の半導体層にはアモルファスシリコンを用い、表示領域の外側にある駆動回路の半導体素子の半導体層には多結晶(微結晶)シリコン、必要に応じて帯状多結晶シリコンを用いたTFT基板を製造することが可能な技術を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の平面表示装置の製造方法は脱水素と多結晶化の両方を、所望の領域を一括でCWレーザを走査しながら照射する。その際、レーザ照射で脱水素に必要な加熱時間を達成するために、レーザ光の走査方向の幅と走査速度を調整してCWレーザを走査しながら照射する。更に脱水素・多結晶化された領域の結晶粒を拡大する必要がある場合には、線状に整形・集光されたCWレーザ光を走査することで、シリコン膜に損傷を生じることなく安定に帯状多結晶膜に変換する。本発明で得られる脱水素・多結晶シリコン膜、および帯状多結晶シリコン膜はともに表面が平坦である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、エキシマレーザを用いた場合より低コストで、画素部はアモルファスシリコンで、駆動回路部は表面が平坦な多結晶シリコン、必要に応じて帯状多結晶シリコン膜で構成されたTFTを有する平面表示装置を安定に製造することができる。また、本発明により同一基板内に非晶質シリコンTFTと多結晶シリコンTFTが混在する平面表示装置を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の最良の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明である平面表示装置の製造方法を実施するに好適なレーザ脱水素・多結晶化(微結晶化)装置の光学系構成を示す図である。励起用LD(レーザダイオード)1とファイバ2で結合された連続発振レーザ光3を発生するレーザ発振器4、レーザ光3の必要時以外の遮蔽を行なうシャッタ5、レーザ光3のエネルギを調整するための透過率連続可変NDフィルタ6、レーザ光3を振幅変調してパルス化およびエネルギの時間的な変調を実現するための変調器7、レーザ光3のビーム径を調整するためのビームエキスパンダ(あるいはビームリデューサ)9、レーザ光3をトップフラットな矩形状ビームに整形するビーム整形器10、整形されたレーザ光3の寸法を調整するための矩形スリット11、ビーム整形器10および矩形スリット11で矩形状に整形されたレーザビームをXYステージ12上に載置された基板13上に縮小投影する結像レンズ14、基板13の観察あるいはアライメントマーク検出などを行なうためのダイクロイックミラー15、結像レンズ16、CCDカメラ17、画像処理装置18、励起用LD1のON/OFF、シャッタ5の開閉、透過率連続可変NDフィルタ6の透過率調整、変調器7のON/OFF、ステージ12の駆動、画像処理装置18によるアライメントマークの検出、および必要に応じてビーム整形器10、20の切り替えなどを制御する制御装置19から構成されている。
【0023】
次に、各部の動作・機能について詳細に説明する。連続発振レーザ光3は脱水素の対象である水素化非晶質シリコン薄膜に対して吸収のある波長、即ち紫外波長から可視波長が望ましく、より具体的には可視波長を発振するLD(レーザダイオード)、ArレーザあるいはKrレーザとその第二高調波、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザの第二高調波及び第三高調波などが適用可能である。これらの中で、出力の大きさ及び安定性を考慮すると、LD(レーザダイオード)励起Nd:YAGレーザの第二高調波(波長532nm)あるいはNd:YVO4レーザの第二高調波(波長532nm)あるいは可視波長を発振するLD(レーザダイオード)が最も望ましい。以後の説明では主にLD励起Nd:YVOレーザの第二高調波を使用した場合について説明する。
【0024】
レーザ発振器4から発振されたレーザ光3はシャッタ5によりレーザが必要なとき以外は遮蔽される。即ち、レーザ発振器4は常に一定出力でレーザ光3を発振した状態におかれ、シャッタ5は通常にはOFF状態として、レーザ光3はシャッタ5で遮られている。レーザ光3を照射する場合のみ、このシャッタ5を開く(ON状態にする)ことで、レーザ光3を出力させる。励起用レーザダイオード1をON/OFFすることで、レーザ光3のON/OFFを行なうことは可能だが、レーザ出力の安定性を確保するためには望ましくない。このほか、安全上の観点から緊急にレーザ光3の照射を停止したい場合にも、シャッタ5を閉じればよい。
【0025】
シャッタ5を通過したレーザ光3は出力調整に使用する透過率連続可変NDフィルタ6を透過して変調器7に入射される。透過率連続可変NDフィルタ6としてはレーザ光が透過することで偏光方向が回転しないものが望ましい。ただし、後述するように変調器7として偏光方向の影響を受けないAOモジュレータを採用する場合には、その限りではない。EOモジュレータ7aはドライバ(図示せず)を介してポッケルス・セル(結晶)(図ではこれを符号7aとして図示した)に電圧を印加することで、結晶を透過するレーザ光3の偏光方向を回転させ、結晶の後方に置いた偏光ビームスプリッタ8でP偏光成分のみを通過、S偏光成分を90度偏向させることでレーザ光3のON/OFFおよび出力の調整を行なうことができる。
【0026】
偏光ビームスプリッタ8に対してP偏光で入射するようにレーザ光3の偏光方向を回転させるための電圧V1と、S偏光で入射するようにレーザ光3の偏光方向を回転させるための電圧V2を交互に、あるいはV1とV2の間の任意に変化する電圧を印加することでレーザ光3を振幅変調する。なお、図1ではEOモジュレータ7aとして、ポッケルス・セルと偏光ビームスプリッタ8を組み合わせることで説明したが、偏光ビームスプリッタ8の代替として各種偏光素子を用いることができる。また、図1ではポッケルス・セルの部分までをEOモジュレータ7aとして説明しているが、各種偏光素子まで含めた状態でEOモジュレータとして市販されている場合もあるので、ポッケルス・セルと偏光ビームスプリッタ8(または各種偏光素子)を組み合わせたもの全体をEOモジュレータと称する場合もある。
【0027】
また、変調器7の他の実施例として、AO(音響光学)モジュレータを使用することができる。一般的に、AOモジュレータはEOモジュレータと比較して、駆動周波数が低く、また回折効率も70〜90%とEOモジュレータと比較して効率が悪いが、レーザ光が直線偏光でない場合でもON/OFFを行なえる特徴があり、透過率連続可変NDフィルタ6として透過レーザ光の偏光方向が回転するものを使用した場合でも問題は生じない。このようにEOモジュレータ7a(及び偏光ビームスプリッタ8)あるいはAOモジュレータなどの変調器7を用いることにより、連続発振レーザ光から任意のタイミングで任意の波形(時間的なエネルギ変化)を有するレーザ光を得ることができる。即ち、所望の振幅変調を行なうことができる。
【0028】
振幅変調されたレーザ光3は、ビーム径を調整するためのビームエキスパンダ(あるいはビームリデューサ)9でビーム径を調整されてビーム整形器10に入射する。ビーム整形器10はレーザ光3をトップフラットな矩形状のビームに整形するための光学素子である。通常、ガスレーザや固体レーザは、ガウス形のエネルギ分布を持っているため、そのままでは本発明のレーザ脱水素に使用することはできない。発振器出力が十分に大きければ、ビーム径を十分に広げ、中心部分の比較的均一な部分のみを切り出すことで、ほぼ均一なエネルギ分布を得ることができるが、ビームの周辺部分を捨てることになり、エネルギの大部分が無駄になる。この欠点を解決して、ガウス形の分布を所望の分布に変換するために、ビーム整形器10を用いる。
【0029】
ビーム整形器10として回折光学素子を使用することができる。回折光学素子は石英などの基板にフォトエッチング工程により微細な段差を形成し、それぞれの段差部分を透過するレーザ光が形成する回折パターンを結像面(矩形開口スリット11面)で合成し、結果的に結像面(矩形開口スリット11面)上で所望のエネルギ分布が得られるように作成されている。回折光学素子を使用した場合には±3%程度の均一な分布が得られる。
【0030】
必要に応じて、周辺部を矩形開口スリット11により遮光することで、立ち上がりが急で任意の寸法の矩形ビームが得られる。
【0031】
振幅変調され、それぞれ所望の大きさの矩形ビーム形状に整形された連続発振レーザ光を走査させながら照射した場合の、非晶質シリコン薄膜の様子を図2に従って説明する。ここで対象とする基板は、ガラスなどの透明基板31上にSiO膜および/あるいはSiN膜からなる下地絶縁膜32を介して非晶質シリコン膜33が形成されている。あるいは、ガラスなどの透明基板31上にSiO膜および/あるいはSiN膜からなる下地絶縁膜32を介してパターニングされたゲート電極膜(図示せず)、基板全面に形成されたゲート絶縁膜(図示せず)上に非晶質シリコン薄膜33が形成されている。この時の非晶質シリコン膜厚は30〜150nmである。以下に前者の基板を用いた場合について説明する。
【0032】
上記基板13はステージ12上に載置・固定され、レーザ光36が照射されながら基板が図中に示した矢印の方向に走査される。レーザ光3が照射されることで、非晶質シリコン薄膜33は融点近傍まで加熱され、非晶質シリコン薄膜33中の水素が脱離すると同時に多結晶化し、脱水素多結晶シリコン薄膜34となる。この脱水素多結晶シリコン薄膜34は結晶粒が小さく、表面は非晶質シリコン薄膜と同程度の平坦な所謂微結晶が得られるが、非晶質シリコン薄膜と比較すると、キャリア移動度で非晶質の0.1cm/Vsに対して100倍程度であり、このままTFTを形成しても良い。更に高移動度(100cm/Vs以上、典型的には300cm/Vs)のシリコン膜が必要な場合には、図3に示すように非晶質シリコン薄膜33が脱水素多結晶シリコン薄膜34に変化した部分に、走査方向のビーム幅が10μm以下(典型的には5μm程度)に集束された線状レーザ光38を照射する。これにより、レーザ光の走査方向にラテラル成長した結晶で構成される帯状多結晶シリコン膜35に変換される。ここで得られる帯状多結晶シリコン膜も表面は極めて平坦である。この帯状多結晶化を実施するに好適な装置としては、図1に示した装置のビーム整形器10を線状のビームに変換するビーム整形器20に交換したものでよい。即ち、1台の装置でビーム整形器を切り替えながら、脱水素・多結晶化(微結晶化)と帯状多結晶化を行なってもよいし、脱水素・多結晶化(微結晶化)装置と帯状多結晶化装置を個別に用意して、順次脱水素・多結晶化と帯状結晶化を行っても良い。
【0033】
レーザ照射による脱水素・多結晶化(微結晶化)において、レーザ光36のパワー密度が小さすぎると、図4に示すようにレーザ光36の照射領域41のシリコン薄膜は不完全脱水素・多結晶シリコン膜42となる。パワー密度を増加あるいは走査速度を低下させると、一定の条件範囲では照射領域41全体が良好に脱水素・多結晶化(微結晶化)され、図5に示すように脱水素多結晶シリコン膜34となる。
【0034】
更にパワー密度を増加させると、図6に示すように、大部分は脱水素・多結晶シリコン薄膜34として残留するが、部分的に、特に照射開始部に近い領域でシリコン膜が円形に剥離する円形剥離44が発生する。剥離したシリコン膜(図示せず)は周辺に飛散・付着する。更にレーザ光36のパワー密度を増加させると、急激な水素脱離に伴い、図7に示すようにレーザ光36の照射領域41全体のシリコン膜が剥離飛散し、下地膜絶縁膜46あるいはゲート絶縁膜47が露出する。図6および図7に示した状態は不良となる。
【0035】
脱水素・多結晶化(微結晶化)の後、必要に応じて帯状多結晶化のためのレーザ光38が照射される。レーザ光38の照射領域50は、脱水素領域41より狭く設定され、図5に示した良好に脱水素されたシリコン膜は図8に示すように、溶融再凝固の過程を経て帯状多結晶シリコン膜51に変換される。脱水素・多結晶化(微結晶化)時のレーザパワー密度が低すぎたり、走査速度が大きすぎたりして不完全な脱水素状態でレーザ光38を照射すると、残留していた水素が急激に脱離し、それに伴ってシリコン膜が剥離飛散する。このため、レーザ光38の照射領域は下地絶縁膜46、あるいはゲート絶縁膜47が露出し、不良となる。
【0036】
以下に、図1に構成を示した製造装置を用いた平面表示装置の製造方法の実施例1について、図に従い詳細に説明する。ここではボトムゲート構造を対象とした場合について説明するが、トップゲート構造の場合も基本的には同様の工程で製造することができる。
【0037】
基板は図10に示すように、ガラスなどの透明基板61上にSiO2膜および/あるいはSiN膜からなる絶縁膜が形成された上にゲート電極がパターニングされた後、ゲート絶縁膜および非晶質シリコン膜62が形成されている。非晶質シリコン膜はプラズマCVDなどの手法により成膜されるが、多量の水素が、典型的には8〜15原子%の濃度で含まれており、水素化非晶質シリコン膜とも称される。非晶質シリコン膜厚は30〜150nmの範囲でTFT作成に使用されるが、ここでは非晶質シリコン膜厚50nmの場合について説明する。この基板61は図1に示した装置のステージ12上に載置・固定される。
【0038】
まず、ゲート電極形成時に同時に形成された複数箇所のアライメントマーク63をCCDカメラ17で撮像して画像処理装置18で検出し、ステージ12の移動、あるいは座標の変換により、基板61の位置決めを行なう。アライメントマーク位置を基準に設計座標に従い、順次、所望の(駆動回路を形成する)領域の脱水素を行なう。図10において、画素領域64、および駆動回路領域65を破線で示している。レーザ光はビーム整形器10によりトップフラットで矩形状のビームに整形される。通常、駆動回路領域65は幅が0.5〜1mm、長さが画素領域64と同程度に設計される。ここでは一例として駆動回路領域の幅を0.8mmとし、レーザ光を走査する方向に1mm、走査方向と直交する方向に1mmの矩形(正方形)とし、パワー密度分布を±5%以下の均一な分布のビーム形状に整形する。
【0039】
基板が位置決めされた後、ステージ12が100mm/sの速度で走査を開始し、ビーム中心が駆動回路領域の1.5〜2mm程度手前の位置から連続発振レーザ光3の照射を開始する。駆動回路領域65、66、67、68、69を通過した後、ビーム中心が1.5〜2mm程度過ぎた時点でレーザ照射を停止する。これにより、図11に示すように駆動回路領域65、66、67、68、69を含む領域70が脱水素・多結晶化(微結晶化)される。次いで、ステージ12をレーザ光の走査方向と直交する方向に移動して、領域70’が脱水素される。駆動回路領域65の幅がレーザ光の走査する方向に直交する方向の寸法より大きい場合には、複数回の走査で脱水素・多結晶化(微結晶化)すればよい。
【0040】
この脱水素・多結晶化(微結晶化)により、非晶質シリコン膜中の水素の大部分は脱離する。レーザ照射前後のシリコン膜をSIM分析で水素濃度を測定すると、適正な条件のレーザ光を照射することで水素濃度は1/10以下に減少することが確認できた。この処理により、基板内のシリコン薄膜は、画素部は8〜15原子%の水素を含む非晶質シリコン膜として残り、レーザを照射した部分は水素濃度が1.5%以下の多結晶(微結晶)シリコン膜に変換される。この多結晶(微結晶)シリコン膜は非晶質シリコン膜と同程度の表面平坦度を有する。
【0041】
必要な部分を脱水素・微結晶化した後、必要に応じてビーム整形器10をビーム整形器20に切り替え、走査方向(短軸方向)が5μm、走査方向に直交する方向(長軸方向)に0.9mmの線状ビームに整形し、溶融再凝固を起こすに足りるパワー密度で短軸方向に500mm/sの走査速度で走査しつつ、各パネルに相当する駆動回路領域65、66、67、68、69に連続発振レーザ光をON/OFFしながら照射し、照射部分を溶融再結晶させることにより、結晶をレーザ光の走査方向に横方向成長させ、帯状多結晶膜に変換する。同様に、脱水素領域70’についても駆動回路領域を帯状多結晶膜に変換する。これら、帯状多結晶膜の表面も凹凸が10nm程度の平坦な膜である。
【0042】
上記手順により、図11に示すようにガラス基板61上に形成された非晶質シリコン薄膜62のうち、駆動回路が形成される領域のみレーザ照射により脱水素・多結晶(あるいは微結晶)シリコン薄膜70、70’に変換される。更に必要に応じて、線状に整形されたレーザ光を照射しながら走査することで、図12に示すように、走査方向にラテラル成長した多結晶シリコン薄膜、即ち帯状多結晶シリコン薄膜65、65’に変換される。
【0043】
一方、画素領域64はレーザが照射されずに非晶質シリコン薄膜のまま残される。この工程の後、非晶質シリコン薄膜および帯状多結晶シリコン膜は所望の形状にパターニングされ、ソースドレイン電極を形成してそれぞれTFTを形成することで、画素のスイッチングトランジスタは非晶質シリコン膜で、駆動回路トランジスタは帯状多結晶シリコン膜で構成される液晶表示装置が形成される。ここで、画素のスイッチングトランジスタのチャネル部分は水素濃度が8〜15原子%の非晶質シリコンであり、駆動回路トランジスタのチャネル部分は水素濃度1.5%以下の多結晶シリコンであることは言うまでもない。
【0044】
なお、図10〜図12においては、基板内を2行5列の10パネルで構成したが、基板の大きさおよびパネルの大きさにより数パネル〜数百パネルを製造することができる。また、図10〜図12においては、駆動回路をパネルの一辺に形成する構成としたが、必要に応じて、2辺に配置することも可能である。その場合には、基板を90度回転させてレーザを上述の走査と直交する方向に走査させ、脱水素・多結晶化(微結晶化)と必要に応じて帯状多結晶化を行なえばよい。
【0045】
レーザ照射により良好な脱水素・多結晶化(微結晶化)が可能な条件は、照射するレーザ光のパワー密度と照射時間で規定することができる。膜厚50nmの非晶質シリコン薄膜を対象とした実験の結果、図13にハッチングで示す範囲で脱水素・多結晶化(微結晶化)が可能であった。図13において太い実線は脱水素・多結晶化(微結晶化)の上限を示し、太い実線より上の条件ではシリコン膜にダメージが発生する。太い破線は脱水素・多結晶化(微結晶化)の下限を示し、破線より上の条件で適正な脱水素が実現でき、破線より下の条件では脱水素が不十分である。即ち、太い実線と破線で囲まれた条件範囲で、適正な脱水素・多結晶化(微結晶化)が実現できた。太い一点鎖線で示したのは多結晶化の閾値で、一点鎖線より上の条件では、非晶質シリコン薄膜が多結晶(微結晶)に変換される。即ち、脱水素が実現できる条件では、シリコン膜が溶融するか融点に近い温度まで上昇していると推定される。ただし、ここで得られる多結晶は結晶粒の大きさが10〜100nmと極めて小さく、表面はレーザ照射前と変化が見られない程度の平坦性を保っている。
【0046】
図13から明らかなように、連続発振レーザ光の照射時間(任意の点に矩形のビームが到達してから通過し終わるまでの時間)が5ms以上、望ましくは10ms以上であれば、照射パワー密度の条件範囲が広く、十分に実用的なプロセスウインドウが確保できる。ここでのレーザの照射時間10msは、例えば走査方向に1mm幅に整形されたビームを相対パワー密度が1.2になるようにレーザ出力を調整して100mm/sで走査することに相当する。走査方向に0.5mmに整形されたビームを照射した場合に、50mm/sで走査しても同じ結果が得られた。また、走査方向に0.5mmに整形されたビームを照射した場合に、100mm/sで2回走査してもほぼ同じ結果が得られた。
【0047】
図13に太い実線で示した脱水素・多結晶化(微結晶化)上限のすぐ上方の条件では、図6に示すように照射開始部分で円形のシリコン膜剥離が発生する。これは、EOモジュレータによるレーザ光ONの立ち上がりが100ns以下にため、照射開始部分で急激に加熱される(レーザパワーが0から設定値まで急激に増加する)ことによる。これに続く部分はレーザ加熱された部分からの熱伝導により予熱され、その後でレーザが照射されるため、照射開始部分と比較すると緩やかな温度上昇となり、それに応じて水素の脱離も緩やかに発生する。このため、照射開始部分以外ではシリコン膜が円形に剥離することはなく、図13に示した脱水素上限は図13中に細い実線で示した条件までシフトする。即ち、適正に脱水素できる条件が拡大される。当然、レーザパワー密度をより増加させると(あるいは走査速度をより低速にすると)、熱伝導による予熱があってもシリコン膜はダメージを受け、剥離飛散する。
【0048】
上述のように円形の剥離を防ぎ、かつ適正な脱水素・多結晶化(微結晶化)条件範囲を拡大するには、脱水素・多結晶化(微結晶化)を必要とする領域にレーザ光が到達する前に低パワー密度で照射を開始し、パワー密度を徐々に増加させて脱水素・多結晶化(微結晶化)を必要とする領域では所定のパワー密度になるように、照射するレーザ光のパワー密度を調整すればよい。即ち、図14にレーザ光の走査方向位置とビーム中心におけるパワー密度の関係を示すように、脱水素・多結晶化(微結晶化)を必要とする領域より手前から徐々にパワー密度を増加させ、脱水素・多結晶化(微結晶化)を必要とする領域に到達した時点、正確にはビーム中心がビーム幅の1/2以上手前に到達した時点で所望のパワー密度で固定する。脱水素・多結晶化(微結晶化)を必要とする領域は一定パワー密度のまま保持し、レーザ照射領域を通過した時点、正確にはビーム中心がビーム幅の1/2を通過した時点からパワー密度を徐々に減少させ、最終的には照射を停止する。この間、走査速度は一定に保たれる。パワー密度の増加領域、減少領域の大きさは適宜設定可能であるが、走査方向のビーム幅程度で十分な効果が得られる。なお、レーザ光がレーザ照射領域を通過した後にパワー密度を徐々に減少させる手順は、必ずしも必要ではない。
【0049】
パワー密度の増減は、透過率可変フィルタ6の透過率を連続的に調整することで、あるいは変調器7に印加する電圧を連続的に変化させることで実現できる。当然、励起用LDの出力を連続的に変化させることでも可能であるが、レーザ出力の安定化を図る観点から、望ましくない。
【0050】
上記した方法により、所望の領域のみに安定でかつ安価な脱水素・多結晶化(微結晶化)を行い、かつ必要に応じて高品質な帯状多結晶シリコンを得ることができた。また、画素領域と駆動回路領域を別な工程で作るなどの余分な工程を経ることなく、表示領域のTFT素子の半導体層には高水素濃度非晶質シリコンを用い、表示領域の外側にある駆動回路の半導体素子の半導体層には低水素濃度多結晶シリコンを、あるいは必要に応じて帯状結晶シリコンを用いたTFT基板を製造することができる。
【0051】
次に、本発明である平面表示装置の製造方法を実施するに好適な別なレーザ脱水素装置の光学系構成を図15に示す。筐体101に納められた複数のLDで発光したレーザ光はそれぞれ光ファイバ102、102’、102”・・・を介してカライドスコープ103に入射する。入射した各々のレーザ光はカライドスコープ103内で混合され、レーザ光104として安全シャッタ105、結像レンズ106、矩形スリット107、投影レンズ108を透過して、XYステージ112上に載置された基板113上に縮小投影される。また、基板113上の観察あるいはアライメントマーク検出などを行なうためのダイクロイックミラー115、結像レンズ116、CCDカメラ117、画像処理装置118を備え、制御装置114はLDのON/OFF、ステージ112の駆動、アライメントマークの検出などを制御する。
【0052】
ここで、LDの発振波長として、アモルファスシリコン膜で吸収されるUV〜可視波長が望ましい。カライドスコープ103に入射された複数のLDからのレーザ光は混合され、かつ出口でのエネルギ密度が均一になるように、カライドスコープ103の光軸に垂直な断面形状は連続的に変化し、最終的に基板上に照射される形状になる。材質としてはレーザ光104に対して透明な材質、例えば石英などで形成されてもよいし、レーザ光104に対して高反射率の内面を有する中空構造でも良い。出口の形状を1辺が10mmの正方形とすると、結像レンズ106で等倍(1倍)でスリット107面上に投影し、更にスリット像を投影レンズ108で基板113上に1/10に縮小投影することで、照射領域を1辺が1mmの正方形とすることができ、図1に示した光学系によるものと同一の脱水素・多結晶化(微結晶化)を行なうことができる。
【0053】
次に、各部の動作・機能について詳細に説明する。LDとしては発振波長445nm、発振出力1Wの青色半導体レーザを使用することができる。50個のLD出力を各々ファイバでカライドスコープ103内に入力することにより、総合出力として50Wが得られる。更に出力が必要な場合には、LDを増設すればよい。レーザ光のON/OFFはLDを直接制御して行なう。
【0054】
レーザ光は通常はシャッタ105で遮られており、レーザ光を照射する場合のみ、このシャッタ105を開く(ON状態にする)ことで、レーザ光を出力させる。このほか、安全上の観点から緊急にレーザ光の照射を停止したい場合にも、シャッタ105を閉じればよい。
【0055】
シャッタ105を通過したレーザ光は結像レンズ106により矩形スリット107上に、例えば1対1で投影される。これにより、矩形スリット107上ではカライドスコープ103出口でのパワー密度分布が保存される。ビームの周辺部はパワー密度が低下しているので、矩形スリット107で切り取ることで、透過するビームとしてほぼ均一なパワー密度分布のビームを得る。このビームを投影レンズ108で、基板113上に1/10に縮小投影する。なお、ここでは結像レンズ106を1/1、投影レンズ108を1/10とし、総合で1/10に縮小投影する説明をしたが、必要に応じて倍率を変更しても差し支えない。基板上で必要とする寸法とカライドスコープ103出口の寸法に応じて、倍率を選択すればよい。
【0056】
以下に、図15に構成を示した製造装置を用いた平面表示装置の製造方法の実施例2について、図に従い詳細に説明する。ここでもボトムゲート構造を対象とした場合について説明するが、トップゲート構造の場合も基本的には同様の工程で製造することができる。
【0057】
基板は図10に示すように、ガラスなどの透明基板61上にSiO膜および/あるいはSiN膜からなる絶縁膜が形成された上にゲート電極がパターニングされた後、ゲート絶縁膜および非晶質シリコン膜62が形成されている。非晶質シリコン膜はプラズマCVDなどの手法により成膜されるが、多量の水素が、典型的には8〜15原子%の濃度で含まれており、水素化非晶質シリコン膜とも称される。非晶質シリコン膜厚は30〜150nmの範囲でTFT作成に使用されるが、ここでは非晶質シリコン膜厚50nmの場合について説明する。この基板61は図15に示した装置のステージ112上に載置・固定される。
【0058】
まず、ゲート電極形成時に同時に形成された複数箇所のアライメントマーク63をCCDカメラ117で撮像して画像処理装置118で検出し、ステージ112の移動、あるいは座標の変換により、基板61の位置決めを行なう。アライメントマーク位置を基準に設計座標に従い、順次、所望の(駆動回路を形成する)領域の脱水素を行なう。図10において、画素領域64、および駆動回路領域65を破線で示している。レーザ光はカライドスコープ103によりトップフラットで矩形状のビームに整形される。通常、駆動回路領域65は幅が0.5〜1mm、長さが画素領域64と同程度に設計される。ここでは一例として駆動回路領域の幅を0.8mmとし、レーザ光を走査する方向に1mm、走査方向と直交する方向に1mmの矩形(正方形)とし、パワー密度分布を±5%以下の均一な分布のビーム形状に整形する。
【0059】
基板が位置決めされた後、ステージ112が100mm/sの速度で走査を開始し、ビーム中心が駆動回路領域の1.5〜2mm程度手前の位置から連続発振レーザ光3の照射を開始する。駆動回路領域65、66、67、68、69を通過した後、ビーム中心が1.5〜2mm程度過ぎた時点でレーザ照射を停止する。これにより、図11に示すように駆動回路領域65、66、67、68、69を含む領域70が脱水素・多結晶化(微結晶化)される。次いで、ステージ112をレーザ光の走査方向と直交する方向に移動して、領域70’が脱水素される。駆動回路領域65の幅がレーザ光の走査する方向に直交する方向の寸法より大きい場合には、複数回の走査で脱水素・多結晶化(微結晶化)すればよい。
【0060】
この脱水素・多結晶化(微結晶化)により、非晶質シリコン膜中の水素の大部分は脱離する。レーザ照射前後のシリコン膜をSIM分析で水素濃度を測定すると、適正な条件のレーザ光を照射することで水素濃度は1/10以下に減少することが確認できる。この処理により、基板内のシリコン薄膜のうち、画素部は8〜15原子%の水素を含む非晶質シリコン膜として残り、レーザを照射した部分は水素濃度が1.5%以下の多結晶(微結晶)シリコン膜に変換される。この多結晶(微結晶)シリコン膜は非晶質シリコン膜と同程度の表面平坦度を有する。
【0061】
必要な部分を脱水素・微結晶化した後、必要に応じて図1に構成を示した装置によりビーム整形器20に切り替え、走査方向(短軸方向)が5μm、走査方向に直交する方向(長軸方向)に0.9mmの線状ビームに整形し、溶融再凝固を起こすに足りるパワー密度で短軸方向に500mm/sの走査速度で走査しつつ、各パネルに相当する駆動回路領域65、66、67、68、69に連続発振レーザ光をON/OFFしながら照射し、照射部分を溶融再結晶させることにより、結晶をレーザ光の走査方向に横方向成長させ、帯状多結晶膜に変換する。同様に、脱水素領域70’についても駆動回路領域を帯状多結晶膜に変換する。なお、図15に示した装置では、連続発振レーザ光のON/OFFはLDを直接駆動することで行なう。
【0062】
上記手順により、図11に示すようにガラス基板61上に形成された非晶質シリコン薄膜62のうち、駆動回路が形成される領域のみレーザ照射により脱水素・多結晶(微結晶)シリコン薄膜70、70’に変換される。更に必要に応じて、線状に整形されたレーザ光を照射しながら走査することで、図12に示すように、走査方向にラテラル成長した多結晶シリコン薄膜、即ち帯状多結晶シリコン薄膜65、65’に変換される。
【0063】
一方、画素領域64はレーザが照射されずに非晶質シリコン薄膜のまま残される。この工程の後、非晶質シリコン薄膜および帯状多結晶シリコン膜は所望の形状にパターニングされ、ソースド−レイン電極を形成してそれぞれTFTを形成する。これにより、画素のスイッチングトランジスタは非晶質シリコン膜で、駆動回路トランジスタは多結晶(微結晶)シリコン膜で、あるいは帯状多結晶シリコン膜で構成される液晶表示装置が形成される。ここで、画素のスイッチングトランジスタのチャネル部分は水素濃度が8〜15原子%の非晶質シリコンであり、駆動回路トランジスタのチャネル部分は水素濃度1.5%以下の多結晶シリコンであることは言うまでもない。
【0064】
なお、図10〜図12においては、基板内を2行5列の10パネルで構成したが、基板の大きさおよびパネルの大きさにより数パネル〜数百パネルを製造することができる。また、図10〜図12においては、駆動回路をパネルの一辺に形成する構成としたが、必要に応じて、2辺に配置することも可能である。その場合には、基板を90度回転させてレーザを上述の走査と直交する方向に走査させ、脱水素・多結晶化(微結晶化)と必要に応じて帯状多結晶化を行なえばよい。
【0065】
上記した実施例の説明から明らかなように、本発明の趣旨はレーザ照射により所望の領域のみに脱水素と微結晶化を同時に行なうに際し、安定なプロセスで高歩留まりに実現できる方法を提供するものである。また、必要に応じて、脱水素・微結晶化された領域を帯状多結晶化することで、画素部をアモルファスシリコン膜で、駆動回路部を微結晶あるいは帯状多結晶シリコン膜で形成されたTFTで構成される平面表示装置およびその製造方法を提供するものである。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で工程順を変更することができることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の平面表示装置の製造方法は、液晶表示装置あるいは有機EL表示装置などの平面表示装置の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明である平面表示装置の製造方法を実施するに好適な装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例である平面表示装置の製造装置で脱水素・多結晶化を行なう様子を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例である平面表示装置の製造装置で脱水素・多結晶化を行なった後、帯状多結晶に変換する様子を示す斜視図である。
【図4】図1に示す平面表示装置の製造装置で不完全な脱水素・多結晶化を行なった基板表面を示す図である。
【図5】図1に示す平面表示装置の製造装置で良好な脱水素・多結晶化を行なった基板表面を示す図である。
【図6】図1に示す平面表示装置の製造装置でレーザパワー密度がやや過剰な条件で脱水素・多結晶化を行なった基板表面を示す図である。
【図7】図1に示す平面表示装置の製造装置でレーザパワー密度が過剰な条件で脱水素・多結晶化を行なった基板表面を示す図である。
【図8】図1に示す平面表示装置の製造装置で良好な脱水素・多結晶化を行なった後、帯状多結晶に変換するためのレーザを照射した後の基板表面を示す図である。
【図9】図1に示す平面表示装置の製造装置で不完全な脱水素・多結晶化を行なった後、帯状多結晶に変換するためのレーザを照射した後の基板表面を示す図である。
【図10】本発明である平面表示装置の製造方法を実施する基板の平面図である。
【図11】本発明である平面表示装置の製造方法を実施し、駆動回路領域のみを脱水素・多結晶化した基板の平面図である。
【図12】本発明である平面表示装置の製造方法を実施し、駆動回路領域のみを脱水素・多結晶化した後、帯状多結晶に変換するためのレーザを照射した基板の平面図である。
【図13】レーザ照射条件として照射時間と照射パワー密度に対して得られる脱水素・多結晶化の状態を示す図である。
【図14】本発明の平面表示装置の製造方法の別な実施例におけるレーザ光の走査方向位置と相対パワー密度の関係を示す図である。
【図15】本発明である平面表示装置の製造方法を実施するに好適な別の装置の構成を示す図である。
【0068】
1・・・レーザダイオード、2・・・光ファイバ、3・・・レーザ光、4・・・レーザ発振器、6・・・透過率連続可変フィルタ、7・・・変調器、9・・・ビーム径調整器、10・・・ビーム整形器、14・・・対物レンズ、13・・・基板、12・・・ステージ、17・・・CCDカメラ、18・・・画像処理装置、19・・・制御装置、33・・・非晶質シリコン膜、34・・・脱水素・多結晶(微結晶)シリコン膜、35・・・帯状多結晶シリコン膜、42・・・不完全脱水素・多結晶膜、44・・・円形剥離部、47・・・アブレーション剥離部、51・・・帯状多結晶シリコン膜、63・・・アライメントマーク、64・・・画素領域、65、66、67、68、69・・・駆動回路領域、70・・・脱水素・多結晶化領域、101・・・LD、102・・・光ファイバ、103・・・カライドスコープ、105・・・シャッタ、117・・・CCDカメラ、114・・・制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化非晶質半導体薄膜にレーザ光を照射することにより所望の領域の当該半導体薄膜を結晶化するアニール工程を備えた平面表示装置の製造方法において、
レーザ源として連続発振レーザを用い、前記レーザ光を矩形でパワー密度が均一な形状に整形し、前記水素化非晶質半導体薄膜に対して一定速度で照射位置を移動させながら照射することで、前記水素化非晶質半導体薄膜の脱水素と多結晶化(微結晶化)を同時に行なうことを特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の平面表示装置の製造方法において、
前記矩形でパワー密度が均一な形状に整形したレーザ光を、前記水素化非晶質半導体薄膜に対して一定速度で照射位置を移動させながら照射するに際し、前記レーザ光の照射時間(通過時間)が5ミリ秒以上となる条件で照射することで、前記水素化非晶質半導体薄膜の脱水素と多結晶化(微結晶化)を同時に行なうことを特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の平面表示装置の製造方法において、
前記矩形でパワー密度が均一な形状に整形したレーザ光を、所望のレーザ照射領域に到達する前にレーザパワー密度を漸増させ、所望のレーザ領域内では一定パワー密度で照射することで、前記水素化非晶質半導体薄膜の脱水素と多結晶化(微結晶化)を同時に行なうことを特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の平面表示装置の製造方法において、
脱水素と多結晶化(微結晶化)を同時に行なった領域に、線状に整形した連続発振レーザ光を走査して帯状多結晶膜を形成することを特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項5】
シリコン薄膜で構成されたトランジスタを有する平面表示装置であって、
画素部トランジスタのチャネル部が水素化非晶質シリコン膜で構成され、駆動回路部トランジスタのチャネル部が、前記水素化非晶質シリコン膜に矩形に整形した均一パワー密度の連続発振レーザ光を、一定速度で照射位置を移動させながら照射することで、脱水素と同時に結晶化された微結晶シリコン膜で構成されたことを特徴とする平面表示装置。
【請求項6】
シリコン薄膜で構成されたトランジスタを有する平面表示装置であって、
画素部と駆動回路部のトランジスタのチャネル部が同一工程で成膜されたシリコン薄膜であり、画素部トランジスタのチャネル部の水素濃度が8〜15原子%の水素化非晶質シリコン膜で構成され、駆動回路部トランジスタのチャネル部の水素濃度が1.5原子%以下の多結晶シリコン膜で構成されたことを特徴とする平面表示装置。
【請求項7】
シリコン薄膜で構成されたトランジスタを有する平面表示装置であって、
画素部と駆動回路部のトランジスタのチャネル部が同一工程で成膜されたシリコン薄膜であり、画素部トランジスタのチャネル部の水素濃度が8〜15原子%の水素化非晶質シリコン膜で構成され、駆動回路部トランジスタのチャネル部の水素濃度が1.5原子%以下の帯状多結晶シリコン膜で構成されたことを特徴とする平面表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−218524(P2009−218524A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63550(P2008−63550)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】