強磁性層の垂直磁化を用いた磁気トンネル接合デバイスの製造方法
【課題】垂直異方性をもつMgOベースの磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを提供すること。垂直異方性をもつMgOベースの磁気トンネル接合(MTJ)デバイスは、MgOトンネル障壁によって分離された垂直磁化をもつ強磁性ピンおよび自由層を本質的に含む。金属Mg堆積とその後の酸化処理によってまたは反応性スパッタリングによって作製されるMgOトンネル障壁の微細構造はアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質である。
【解決手段】本発明では、少なくとも強磁性ピン層のみまたは強磁性ピンおよび自由層の両方が、トンネル障壁と強磁性ピン層のみとの間に、またはトンネル障壁とピンおよび自由層の両方との間に位置する結晶好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層を有する構造とすることが提案される。この結晶PGGPシード層は、堆積後アニーリングに際してMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長を誘起する。
【解決手段】本発明では、少なくとも強磁性ピン層のみまたは強磁性ピンおよび自由層の両方が、トンネル障壁と強磁性ピン層のみとの間に、またはトンネル障壁とピンおよび自由層の両方との間に位置する結晶好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層を有する構造とすることが提案される。この結晶PGGPシード層は、堆積後アニーリングに際してMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長を誘起する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネリング磁気抵抗を使用する、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)に特に関連する磁気トンネル接合(MTJ)デバイスの分野に関する。より詳細には、本発明は、酸化法または反応性スパッタリング法によって作製されたMgOトンネル障壁を備え、微細構造がアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織の微晶質であるMTJデバイスに関する。より詳細には、本発明は、垂直異方性をもつ強磁性層を備えたMTJデバイスに関する。より詳細には、本発明は、堆積後アニーリング中にMgOトンネル障壁の結晶性を高めるためにMgOトンネル障壁に隣接し、好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層である結晶強磁性層を挿入したMTJデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気トンネル接合(MTJ)デバイスのコア要素は、「強磁性層/トンネル障壁/強磁性層」の3層構造である。MTJデバイスの抵抗の変化は、2つの強磁性層の磁化の相対的方位に応じた、デバイスの両端のバイアス電圧によりトンネル障壁を通るスピン偏極電子のトンネリング確率の差に起因する。
【0003】
トンネル障壁を挟む2つの強磁性層の磁化の相対的方位は2つの強磁性層の磁化反転の性質の違いによって実現され、一方の強磁性層の磁化は動作中に外部磁界によって反転されないが、他方の強磁性層の磁化は外部磁界に反応する。したがって、デバイス動作中のトンネル障壁を挟む2つの強磁性層の磁化の平行または逆平行アライメントは実現される。
【0004】
トンネル障壁は一般に誘電体材料であり、極端に薄くなければならず、厚さならびに組成が極めて均一でなければならない。化学量論的組成または厚さに関するいかなる不整合もデバイス性能を著しく低下させる。
【0005】
MTJデバイスの最も典型的に使用される構造が図1Aに概略的に示され、それは反強磁性ピニング層103、合成反強磁性(SAF)ピン層104、105及び106、トンネル障壁107、および強磁性自由層108からなる。合成反強磁性(SAF)ピン層は強磁性ピン層104、非磁性スペーサ105、および強磁性基準層106を含む。スピン・トルク・トランスファMRAM(STT−MRAM)への適用に成功するために対処される重要な問題は、拡張性と、自由層の磁化を反転させるのに必要とされる電流(Jc)の低減とである。しかし、面内磁化を使用するSTT−MRAMは、それぞれ、面内一軸異方性を誘起するためのオバール(卵形)異方性および打ち勝つための非常に強い反磁界のために拡張性およびJc低減に対して限界を示している。図1Bは、図1Aのものとは異なる種類のMTJデバイスを示す。図1Bに示されたMTJデバイスの構造は、垂直異方性をもつ強磁性ピン層203、トンネル障壁204、および垂直異方性をもつ強磁性自由層205からなる。また、強磁性自由層205の磁化が強磁性ピン層203の磁化よりも容易に切り替えることができるように、強磁性自由層205は強磁性ピン層203よりも低い保磁力を有する。垂直異方性をもつこのMTJスタックを備えたSTT−MRAMは、それぞれ、面内一軸異方性を誘起するための卵形、および自由層の磁化反転を実際に支援する反磁界を有する必要がないため非常に改善された拡張性および効果的に低減されたJcを示すと予想される。
【0006】
その発見以来、室温での高TMRは、不揮発性磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)などのスピントロニクス用途およびハードディスク・ドライブの記録用読取りヘッドなどの磁気センサのために産業界の最新トピックのうちの1つとなっている。従来の磁界スイッチングMRAM用途では、300×600nm2のビットサイズをもつ1Mbit MRAMは、MTJが約1k〜2kΩμm2の抵抗−面積(R×A)積で40%の磁気抵抗(MR)比をもたらすことを必要とする。250Mbitsの高密度では、ビットサイズは200×400nm2まで縮小し、約0.5kΩμm2のR×A積で40%よりも高いMR比を必要とする。さらなる縮小はスピン・トランスファ・トルクによる磁化反転の適用によってMRAMで達成することができるが、MTJは10〜30Ωμm2のR×A積範囲で150%を超えるMR比をもたらすことが必要とされる。
【0007】
アモルファスAlOxトンネル障壁および高スピン偏極をもつ強磁性電極になされた初期の取組みは上述の要求事項に対して十分ではなかった。最近、単結晶Fe/MgO/Feが理論計算によって示唆されており(Butlerら、Phys.Rev.B 63、(2001)p054416)、MgOの優れたスピン・フィルタ処理効果のために6000%もの高い室温TMRを得ることができると予測されている。このスピン・フィルタ処理効果、すなわちMTJのMgOトンネル障壁を挟む2つの強磁性層の逆平行磁化アライメントにおける少数スピンダウン電子の全反射は、フェルミ面でΔl対称をもつ少数スピンダウン・スピン・チャネルにブロッホ固有状態がないことから本質的なものである。これによりコヒーレント・トンネリングが可能になり、さらに巨大TMR比が可能になる。このコヒーレント・トンネリングを可能にするために微細構造必要条件があるが、それはFe(001)/MgO(001)/Fe(001)のエピタキシャル成長であり、それはトンネリング電子がFeおよびMgOの(001)原子面を通過するからである。分子線エピタキシを使用する単結晶(Fe/MgO/CoFe)成長に基づいてこの巨大TMRを達成するための実験的試みは180%までの室温TMRを実証した。(Yuasaら、Appl.Phys.Lett.87(2005)p222508)多結晶CoFe強磁性電極をもつMgOトンネル障壁を使用して、220%の室温TMRが報告されているが(Parkinら、Nat.Mater.3(2004)p862)、さらに高いTMRが、アモルファスCoFeB強磁性電極を使用し、熱酸化Siウェハ上に実用的なマグネトロン・スパッタリングによって作製されたMTJで報告された。(Djayaprawiraら、Appl.Phys.Lett.86(2005)p092502)
【0008】
極端に薄く、厚さならびに組成が極めて均一であるMTJ中にMgOトンネル障壁を形成するために多大な努力がなされてきた。さらに、(001)面垂直方向組織をもつMgOトンネル障壁の結晶性を達成するための同様の多大な努力が、理論計算によって与えられ、微細構造および薄膜化学の研究によって確認された、bcc構造のサンドウィッチ用強磁性層とともに(001)面垂直方向エピタキシであるという微細構造必要条件を満たすためになされてきた。(Y.S.Choiら、Appl.Phys.Lett.90(2007)p012505、Y.S.Choiら、J.Appl.Phys.101(2007)p013907)
【0009】
MRAMまたは記録用読取りヘッドの大量生産のためのMTJデバイスを作製する一般的な方法では、MgOトンネル障壁の堆積は、直接堆積と、金属堆積とその後の酸化処理とに分類される。セラミック・ターゲットを使用するrf−スパッタリングによるかまたは酸素および不活性ガスのガス混合の雰囲気中での金属ターゲットの反応性スパッタリングによるトンネル障壁の堆積は第1の群の直接堆積に分類される。金属堆積とその後の様々な種類の酸化処理、例えば自然酸化、プラズマ酸化、ラジカル酸化、またはオゾン酸化は、第2の群に分類される。
【0010】
MTJ開発の重大なボトルネックの1つは、非常に薄い厚さにおいてトンネル障壁を均一の厚さに制御することである。トンネル障壁の厚さが薄すぎる場合、ピンホールを含む恐れが高く、リーク電流がスピン依存トンネリングなしで通過する。これは信号対雑音比(S/N)を著しく低下させる。別のボトルネックはトンネル障壁の化学的不均一性であり、それは、過剰な酸化または不完全な酸化、および下地強磁性層の酸化をもたらす。これらは、表面酸化した下地強磁性層でのスピン散乱によるトンネル障壁厚さの増加のために、印加バイアスの符号に対する非対称電気特性、R×A積の異常な増加、およびTMR比の減少をもたらす。(Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230(2001)p926)
【0011】
極めて薄いMgOトンネル障壁の均一な厚さ制御およびMgOトンネル障壁の端から端までの化学的均一性の問題に加えて、MgOベースのMTJのR×A積が低い状態で巨大TMR比を達成するための最も切迫した問題は、MgOトンネル障壁の(001)面垂直方向組織および高い結晶性である。図2は、MgOの組織と結晶性との関係およびCoFeB/MgO/CoFeB MTJの磁気輸送特性を示し、ここで、MgOはrfスパッタリングによって堆積されている。高度に結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によってCoFeの対応する(001)組織を誘起し、したがって、CoFeB/MgO/CoFeBの全体的な(001)組織が実現されることが図2Aおよび図2Bに明確に示されている。したがって、図2C示されるように、低いR×A積で著しく増大したMR比を得ることが可能である。しかし、さらに図2Cで分かるように、不完全な結晶性をもつMgOトンネル障壁を備えたMTJは極端に高いR×A積とともに非常に低いMR比を示している。
【0012】
rfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁は処理最適化により大きな前進を示したにもかかわらず、MR比およびR×A積がrf−スパッタリングに固有のチャンバ状態およびパーティクル生成に応じて非常に敏感に変化するという大量生産に向けて克服することが困難である重大な問題がある(Ohら、IEEE Trans.Magn.、42(2006)p2642)。さらに、rf−スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJデバイスの最終的なR×A積均一性(1σ)は10%を超えているが、Mg堆積とその後の酸化処理によって作製されたMgOトンネル障壁のものは3%未満であることが報告された。(Zhaoら、米国特許出願第2007/0111332号)
【0013】
MgOトンネル障壁作製の代替方法は、Mg堆積とその後の様々な酸化処理、または酸素および不活性ガスのガス混合の雰囲気中での反応性Mgスパッタリングである。プラズマ酸化がAlOxトンネル障壁の作製で使用されているが、反応性が高いため、極めて薄い金属層を酸化することは格別に困難であり、特にMgO形成のためのMgの酸化の速度は非常に速く、確実に下地強磁性層の界面まで酸化される。このようにして、AlOxトンネル障壁を備えたMTJから、10000Ωμm2/45%のR×A積およびMR比がプラズマ酸化処理によって得られており(Tehraniら、IEEE Trans.Magn.、91(2003)P703)、一方、1000Ωμm2/30%のR×A積およびMR比がオゾン酸化によって得られている。(Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230(2001)p926)
【0014】
そのため、エネルギーの少ない酸化処理が提案されており、それはMgOトンネル障壁を形成するためのラジカル酸化および自然酸化である。さらに、ArおよびO2の雰囲気中でMgOトンネル障壁を形成するためにMg金属ターゲットの反応性スパッタリングが提案されている。図3は、MgOトンネル障壁堆積の様々な方法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られた磁気輸送特性測定結果を示す。MTJ構造はMgOトンネル障壁部分以外は同一であり、下部層/PtMn(15)/CoFe(2.5)/Ru(0.9)/CoFeB(3)/MgO(x)/CoFeB(3)/キャップ層である。括弧内の厚さはナノメートル尺度である。rfスパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、酸化法および反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJのMR比は著しく低いことが明確に示されている。10Ωμm2の所与のR×A積では、rfスパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJは180%のMR比を与えるが、ラジカル酸化法によって堆積されたMgOは100%を与え、自然酸化は60%を与え、反応性スパッタリングによって作製されたMgOは135%を与える。
【0015】
微細構造解析が、高分解透過顕微鏡(HREM)、X線回折(XRD)、およびX線光電子分光法(XPS)で行われた。図4Aおよび図4Bに示されるように、磁気輸送特性の差は、MgOトンネル障壁の結晶性の差およびCoFeB/MgO/CoFeB層中のエピタキシの不足に起因することが明確に比較される。図4Aおよび図4Bは、それぞれ、rf−スパッタリングおよびラジカル酸化によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから撮られた断面HEEM画像である。ChoiらによってJ.Appl.Phys.101(2007)p013907で報告されたように、rfスパッタリングによって作製されたCoFeB/MgO/CoFeBベースのMTJは、MgOが高度な結晶性でCoFe層との良好な結晶粒間エピタキシであるという、Butlerらによる理論計算で与えられた微細構造必要条件を満たしている。CoFe層は、結晶化テンプレートとしての結晶性MgOに基づいた堆積後アニーリングによって結晶化され、このようにして、結晶粒間エピタキシがCoFe/MgO/CoFe層で実現される。しかし、ラジカル酸化によって作製されたMgOトンネル障壁はアモルファスと混合された不完全な結晶性を示し、CoFe層との界面での擬エピタキシを確認するのは困難である。
【0016】
図4Cは、堆積方法、すなわちrf−スパッタリングおよび自然酸化に関してMgOの結晶性および組織の明白な比較を示す。面垂直方向シータ−2・シータ・スキャンにより、rf−スパッタリングによりアモルファスCoFeB層に堆積されたMgOトンネル障壁は、成長時の状態で高度な結晶性であり、2シータ=42.4°での明白なMgO(002)ピークによって(001)面垂直方向の好適方位で高度に組織化されていることが確認される。しかし、金属堆積とその後の自然酸化によって作製されたMgOは明白なピークを示さず、それはMgO層がほとんどアモルファスであることを示している。
【0017】
図4Dおよび図4Eは、それぞれ、rf−スパッタリングおよび反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られたXPSスペクトルである。ChoiらによってAppl.Phys.Lett.90(2007)p012505で報告されたように、MgOの結晶性、MTJのより高いMR比およびより低いR×A積にとって、NaCl構造のMgOの格子点に支配的数量の酸素イオンを有することが肝要である。図4Dに示されるように、NaCl構造のMgOの格子点を占める酸素イオン(その結合エネルギーは約531eVである)の数量は、rfスパッタリングによって堆積されたMgOにおいて非常に高いが、反応性スパッタリングによって堆積されたMgOでは、図4Eに示されるように、格子点における酸素イオンの数量のほとんど1/3であるかなりの数量の不純物酸素イオン(その結合エネルギーは約533.3eVである)があることが明らかである。したがって、MgO障壁中のこの高密度の不純物酸素イオンが、MgOの不完全な結晶性に関連しており、不完全なMR比の原因であると推測することができる。
【0018】
酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁の良好な結晶性を達成するために、2層ではなく単層の結晶強磁性基準層が使用されており、MTJの構造は下部層/PtMn(15)/CoFe(2.5)/Ru(0.9)/CoFe(3)/MgO(x)/CoFeB(3)/キャップ層である。図5Aに示されるように、完全結晶CoFe単一基準層をもつMTJは、MR比をCoFeBアモルファス基準層による130%から35%まで顕著に低下させる。また、360℃で、2時間、10kOeの磁界の下で堆積直後のアニーリングの後の完全結晶CoFe単一基準層をもつMTJからの図5Bの全ヒステリシス・ループの形状は、不十分または破壊されたSAF構造を示しているが、一方、同じ条件での堆積後アニーリングの後のアモルファスCoFeB単一基準層をもつ図5Cに示されたMTJの全ヒステリシス・ループの形状は、円のマーク内に明瞭なSAF結合を示している。体心立方CoFeは、六方最密Ru(0001)底面との格子整合のためにRuとの界面と平行な(110)原子面を順番に成長させる傾向がある。強磁性基準層の(110)面垂直方向組織は、MgOベースのMTJに関するButlerらによる理論計算からの巨大TMRにとって好ましくない。さらに、SAF(CoFeB/Ru/CoFe)の熱安定性はSAF(CoFeB/Ru/CoFeB)よりも非常に悪く、したがって、MTJが、高温での堆積後、アニーリングの後のCoFeB/Ru/CoFe SAF構造で構成される場合、構成要素強磁性層間の磁化分離の明確な区分けを保証することができない。したがって、結晶CoFe単一基準層はMgOトンネル障壁の良好な結晶性を達成するのに効果的でないことが分かる。
【0019】
したがって、酸化法または反応性スパッタリングによって堆積されたMgOトンネル障壁の不完全な結晶性は、CoFeB/MgO界面でアモルファスCoFeBをCoFeに結晶させるための結晶化テンプレートの役割を果たすことができないことを理解することができる。したがって、結晶粒間擬エピタキシをCoFe/MgO/CoFe層において期待することができず、それは不完全な磁気輸送特性をもたらす。
【0020】
強磁性層の面内磁化を用いたMTJデバイスと異なり、強磁性層の垂直磁化を用いたMTJデバイスは、スピン・トランスファ・トルクによる反転の間磁化の歳差運動の問題がなく、それによってJcの大幅な減少を期待することができる。さらに、垂直異方性を使用するSTT−MRAMでは一軸性軸に対する面内形状異方性を必要としないので、さらなる拡張性が可能になり、したがってそれの密度が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】T.Zhaoら、米国特許出願第2007/0111332号
【特許文献2】S.Miuraら、米国特許出願第 号
【特許文献3】K.Nishimuraら、特許出願第2008−103661号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】W.H.Butlerら、Phys.Rev.B 63、054416(2001)
【非特許文献2】S.Yuasaら、Appl.Phys.Lett.87、222508(2005)
【非特許文献3】S.S.P.Parkinら、Nat.Mater.3、862(2004)
【非特許文献4】D.Djayaprawiraら、Appl.Phys.Lett.86、092502(2005)
【非特許文献5】Y.S.Choiら、Appl.Phys.Lett.90、012505(2007)
【非特許文献6】Y.S.Choiら、J.Appl.Phys.101、013907(2007)
【非特許文献7】B.Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230、926(2001)
【非特許文献8】S.C.Ohら、IEEE Trans.Magn.、42、2642(2006)
【非特許文献9】S.Tehraniら、IEEE Trans.Magn.、91、703(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、強磁性層の垂直磁化を用いたMgOベースのMTJをスピン・トランスファ・トルクMRAMに適用するために低いR×A積で十分に高いMR比を提供することであり、MgOは金属堆積とその後の様々な酸化法によって作製されるか、または反応性スパッタリングによって作製され、その微細構造はアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質トンネル障壁である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、金属堆積とその後の様々な酸化法によって作製されたかまたは反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を結晶化させるか、またはそれの好適結晶粒成長を誘起することが肝要である。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、成長直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁の結晶化または好適結晶粒成長は、MgOトンネル障壁の下にあるかまたはそれを挟んでいる体心立方構造の結晶強磁性PGGPシード層を使用することによって堆積後アニーリング中に達成することができる。
【0026】
結晶強磁性ピンまたは自由層を使用する場合、成長直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁の結晶化または好適結晶粒成長は、MgOトンネル障壁の下にあるかまたはそれを挟んでいる体心立方構造の結晶強磁性PGGPシード層を使用することによって堆積後アニーリング中に達成することができる。
【0027】
結晶強磁性PGGPシード層が存在すると、図6に概略的に示されるように、堆積後アニーリングの後で、堆積直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のトンネル障壁であるMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長が引き起こされる。
【0028】
したがって、本発明のこの得られたMTJの微細構造により、図6に示されるように、MR比の著しい増加ならびにR×A積の顕著な低減を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】磁気トンネル接合の典型的な構造の概略図である。
【図1B】強磁性層の垂直磁化を用いた磁気トンネル接合の典型的な構造の概略図である。
【図2A】高度な結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によりCoFeの対応する(001)組織を含むことを示す図である。
【図2B】高度な結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によりCoFeの対応する(001)組織を含むことを示す図である。
【図2C】不完全な結晶性をもつMgOトンネル障壁を備えたMTJは極めて高いR×A積とともに非常に低いMR比を示すことを示す図である。
【図3】MgOトンネル障壁堆積の様々な方法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られた磁気輸送特性測定結果を示す図である。
【図4A】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJからの断面HREM画像の写真である。
【図4B】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、ラジカル酸化によって作製されたMgOをもつMTJからの断面HREM画像の写真である。
【図4C】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングおよび自然酸化によって作製されたMgOトンネル障壁の結晶性および構造を比較するXRDシータ−2・シータ・スキャンである。
【図4D】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングによって作製されたMgOから得られたXPS 0 1sスペクトルである。
【図4E】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、反応性スパッタリングによって作製されたMgOから得られたXPS 0 1sスペクトルである。
【図5A】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFeまたはCoFeB基準層をもつMTJからのMR比対R×A積である。
【図5B】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFe基準層をもつMTJからの全ヒステリシス・ループである。
【図5C】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFeB基準層をもつMTJからの全ヒステリシス・ループである。
【図6】堆積後アニーリングの後のMTJの結晶化および好適結晶粒成長処理の概略的な比較の図である。
【図7】MTJデバイス製造装置を例示する図である。
【図8A】本発明のMTJの概略図である。
【図8B】本発明の第1の実施形態のMTJの概略図である。
【図8C】本発明の第2の実施形態のMTJの概略図である。
【図8D】本発明の第3の実施形態のMTJの概略図である。
【図9A】本発明のPGGPシード層の磁気モーメントの概略図である。
【図9B】垂直異方性の強磁性層への厚いPGGP層の磁気モーメントの影響の概略図である。
【図9C】PGGPシード層厚さと異方性との関係を示す図である。
【図10A】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、MgOトンネル障壁およびCoFeB層によって挟まれたCoFe PGGPシード層である。
【図10B】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、(001)面垂直方向をもつCoFe PGGPシード層の成長を表わすものである。
【図10C】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、(011)面垂直方向をもつCoFe PGGPシード層の成長を表わすものである。
【図11】第2の実施形態の成長直後のMTJの断面HREM画像を示す図である。
【図12A】第2の実施形態のアニールされたMTJの断面HREM画像を示す図である。
【図12B】図12Aの断面HREM画像の枠で囲まれた領域からの選択された領域の回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施形態が図面を参照しながら具体的に説明される。合金が元素比を意味する数なしで記述される場合、それは、本文書において、合金が同じ比ではなく任意の比で各元素を含むことを意味する。図7は、好ましい実施形態におけるMTJデバイス製造装置を例示する。図7は、磁気トンネル接合デバイスを製作するための真空処理システム700の概略平面図である。図7に示された真空処理システムは、物理気相堆積技法を使用する複数の薄膜堆積チャンバを備えるクラスタ型システムである。前記真空処理システム中の複数の堆積チャンバは、中央位置にロボット・ローダーを備えた真空搬送チャンバ701(図示せず)に取り付けられる。前記真空処理システム700は、基板をロード/アンロードするために2つのロードロック・チャンバ702および703を備えている。前記真空処理システムは、脱ガス・チャンバ704およびプレエッチング/エッチング・チャンバ705を備えている。真空処理システムは、酸化チャンバ706と、複数の金属堆積チャンバ707、708、および709とを備えている。真空処理システムのチャンバの各々は、チャンバ間の通路を開閉するためにゲート・バルブを介して接続される。真空処理システムの各々のチャンバはポンプ・システム、ガス導入システム、および電源システムを備えていることに留意されたい。さらに、ガス導入システムは流量調整手段を含み、ポンプ・システムは圧力調整手段を含む。流量調整手段および圧力調整手段の各操作により、一定期間の間チャンバの圧力を一定に制御することができる。さらに、流量調整手段および圧力調整手段の組合せに基づいた操作により、一定期間の間チャンバの圧力を一定に制御することができる。
【0031】
前記真空処理システム700の金属堆積チャンバ707、708、および709の各々において、磁性層および非磁性金属層の各々がスパッタリング方法によって1つずつ基板に堆積される。金属堆積チャンバ707、708、および709では、例えば、ターゲットの材料は「CoFe」であり、ターゲットの材料は「CoFeB」であり、ターゲットの材料は「Mg」である。さらに、ターゲットの材料は「下層材料」であり、ターゲットの材料は「キャップ材料」である。プレエッチングおよびエッチングはプレエッチング/エッチング・チャンバで行われる。酸化は酸化チャンバ706で行われる。さらに、各金属堆積チャンバはdc−スパッタリングを行うことができるスパッタ装置を含む。各チャンバへのガス導入、バルブの切替え、電源のON/OFF、ガスの排気、および基板搬送などの手順は、システム・コントローラ(図示せず)によって行われる。
【0032】
図8Dは、トンネル磁気抵抗(TMR)メモリ・セル用の強磁性層の垂直磁化を用いたMTJのスタック構造100を示す。最も有利には、下層120およびSiウェハ110上に、MTJは、垂直異方性をもつ強磁性ピン層130、第1の強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層140、トンネル障壁150、第2の強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層160、および垂直異方性をもつ強磁性自由層170からなる。上部電極が取り付けられるキャプ層180(Ptなど)は自由層170上に形成される。
【0033】
本発明のMTJデバイスは、MTJデバイス中にコア要素を作製することによって形成され、コアは「垂直異方性をもつ結晶強磁性ピン層130/第1の結晶強磁性PGGPシード層140/トンネル障壁150/強磁性PGGPシード層160/垂直異方性をもつ強磁性自由層170」の多層構造を含み、好ましい実施形態では以下の群から選択した材料の組合せを使用する。
【0034】
群1:
強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層に対する選択
a.結晶単層
b.2層化アモルファス層/結晶層
群2:
MgOトンネル障壁堆積の方法
c.Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ
d.Mg xÅ/酸素界面活性物質/Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ
e.Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ/酸化処理*/Mg zÅ
f.反応性スパッタリングMgOx/酸化処理*/Mg yÅ
g.Mg xÅ/反応性スパッタリングMgOx/酸化処理*/Mg yÅ
酸化処理*はプラズマ、自然、ラジカル、およびオゾン酸化を含む。
群3:
強磁性PGGPシード層の位置
h.ピン層のみ
i.自由層のみ
j.基準および自由層
群4:
垂直異方性をもつ強磁性ピンまたは自由層の選択
k.アモルファス強磁性層
l.結晶強磁性層
m.多層(2層の多数の繰り返し)
群5:
結晶強磁性PGGPシード層または2層化強磁性PGGPシード層の結晶層に対する材料選択
n.CoxFe100−x、ここで、0<x原子%<90
o.(CoxFe100−x)yB100−y、ここで、0<x原子%<90、および90<y原子%<100
p.Fe
【0035】
第1の実施形態
第1の実施形態のスタックの構成を示す図8Aを参照すると、第1の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつアモルファス強磁性ピンおよび自由層133、173の使用である。また、第1の実施形態の別の重要な態様は、MgOトンネル障壁153の下にあるかまたはそれを挟んでいる結晶強磁性PGGPシード層の挿入である。図8Aから8Cは、アニーリング・ステップの前のMgOトンネル障壁を示す。アニーリング・ステップによって、強磁性PGGPシード層に挟まれた層は、全体的な(001)面垂直方向組織をもつMgOトンネル障壁153に変化する。
【0036】
垂直異方性をもつ強磁性ピン層133および自由層173はアモルファス希土類/遷移金属合金(RExTM1−x)とすることができ、ここで、RE=Y、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、およびLu、ならびにTM=Co、Fe、およびCoFe合金である。または、垂直異方性をもつ強磁性ピン層133および自由層173は、希土類/遷移金属/耐食性元素合金(RExTM1−x)yCR1−yとすることができ、ここで、CR=Crである。これらの層は、合金ターゲットのスパッタリングまたはマルチ金属ターゲットの同時スパッタリングで形成することができる。他の気相堆積法を使用することができる。また、強磁性自由層173は強磁性ピン層133よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層133と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0037】
第1および第2の結晶強磁性PGGPシード層143、163はbcc構造をもつ結晶層とすることができる。したがって、第1および第2の結晶強磁性PGGP層143、163は、CoxFe1−x(0≦x≦0.9)、(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦y<1)、Feなどとすることができる。さらに、それは0.5nm≦t≦2nmの厚さ(t)で堆積することができる。垂直異方性をもつ強磁性のピンまたは自由層によって強磁性PGGPシード層に誘起される異方性は、一軸異方性場が形状異方性と競合するので関連するエネルギーを考慮することによって決定することができる。
一軸異方性=2Ku/Ms
形状異方性=4πMs、
ここで、Kuは異方性定数であり、Msは飽和磁化である。図9Cに示されるように、結晶強磁性PGGPシード層の厚さが厚くなるとき、形状異方性が一軸異方性に打ち勝つ移行厚さがある。したがって、結晶強磁性PGGPシード層のこの移行厚さ未満では、強磁性PGGPシード層の垂直異方性が誘起されて、図9Aに示されるようにすべての磁気モーメントが膜面に垂直に整列する。しかし、強磁性PGGPシード層の移行厚さを超えると、形状異方性が支配的となり、したがって、磁気モーメントはすべて膜面に整列し、それにより、次に、強磁性ピンまたは自由層の界面磁気モーメントが誘起され、図9Bに示されるように、垂直異方性が垂直軸から傾く。したがって、強磁性PGGPシード層の厚さは、限界移行厚さより小さくなるように注意深く制御する必要がある。一方、厚さが0.5nm未満である場合、それは薄すぎてPGGPとなりえない。
【0038】
例えば、図8Aの第1の実施形態は、下層120/TbCoFe133/CoFe(1.5)143)/Mg(1.1)/R−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)163/GdCoFe173/キャップ層180であり、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さであり、「R−Ox x秒」はx秒のラジカル酸化処理を意味する。この例では、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(a+c+i+k+n)または(a+c+j+k+n)の組合せによって形成される。
【0039】
MgOトンネル障壁153を形成する方法は、
第1の結晶強磁性PGGPシード層143上への1.1nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
酸化チャンバ内で行われるラジカル酸化による第1の金属層の酸化とであり、酸化チャンバ内には電気的に接地された「シャワー・プレート」が上部イオン化電極と基板との間に配置される。酸素プラズマが、700sccmの酸素流量を用い、イオン化電極に300Wのrf電力を印加することによって生成される。酸素ラジカル・シャワーはシャワー・プレートを通って流れるが、イオン化種および電子などの電荷をもつパーティクルはシャワー・プレートの電気接地のために通過することができず、ラジカル酸化によって酸化された第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップが堆積される。
【0040】
さらに、第2の結晶強磁性Co(70原子%)Fe(30原子%)PGGPシード層163が金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。
【0041】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁153の好適結晶粒成長である。この結晶化および好適結晶粒成長は、第1および第2の結晶CoFe強磁性PGGPシード層143、163を使用して、アニール中に隣接結晶化または好適結晶粒成長として、このようにして最終的にMgOトンネル障壁153の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0042】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJはMR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0043】
第2の実施形態
第2の実施形態のスタックの構成を示す図8Bを参照すると、第2の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつ結晶強磁性ピンおよび自由層131、171の使用である。さらに、第2の実施形態の別の重要な態様は、MgOトンネル障壁151の下にあるかまたはそれを挟んでいる2層化強磁性PGGPシード層の挿入である。
【0044】
垂直異方性をもつ結晶強磁性ピンおよび自由層131、171は、化学的秩序をもつ結晶遷移金属/耐熱性金属合金(TMxRM1−x)とすることができ、ここで、TM=CoまたはFe、およびRM=PtまたはPdである。また、垂直異方性をもつ強磁性自由層171は強磁性ピン層131よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層131と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0045】
第1の2層化強磁性PGGPシード層141は2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層であり、ここで、アモルファス層は強磁性ピン層131とbcc構造の結晶PGGP層とを分離する。同様の方法で、第2の2層化強磁性PGGPシード層161は2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層であり、ここで、アモルファス層は強磁性自由層171とbcc構造の結晶PGGP層とを分離する。
【0046】
2層化強磁性PGGPシード層141、161のアモルファス層は、CoFeB(B>10原子%)で製作することができる。Bの代わりにまたはBに加えて、結晶強磁性材料をアモルファス材料に変化させることができる材料、例えばZr、Hf、Nb、Ta、Ti、Si、またはPを使用することができる。2層化強磁性PGGPシード層141のアモルファス層は、結晶強磁性ピン層131から2層化強磁性PGGPシード層141の結晶層まで結晶構造が伝達するのを妨げ、したがって、2層化強磁性PGGPシード層141の結晶層は好ましいbcc構造で形成することができる。同様の方法で、結晶層上の第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層を形成することによって、強磁性自由層は好ましい結晶構造で形成することができる。
【0047】
第1および第2の強磁性PGGPシード層141、161におけるbcc構造をもつ結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)は、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる。
【0048】
例えば、図8Bの第2の実施形態は、下層120/CoPt131/CoFeB(1.5)/CoFe(1.5)/Mg(1.1)/N−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)/CoFeB(1.5)/FePt171/キャップ層180とすることができ、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さであり、「N−Ox x秒」はx秒の自然酸化処理を意味する。この例では、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(b+c+i+l+n)または(b+c+j+l+n)の組合せによって形成される。
【0049】
MgOトンネル障壁151を形成する方法は、
強磁性PGGPシード層141上への1.1nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
【0050】
酸化チャンバ内で行われる自然酸化による第1の金属Mg層の酸化とである。薄く形成された金属Mg層に有利に適用される自然酸化処理は、約6.5×10−1Paの圧力の酸素ガスで酸化チャンバを浄化することと、700sccmの流量で酸素ガスを流すことと、次に、堆積直後の金属Mg層を所与の曝露時間の間酸素ガス流に接触したままにすることと、自然酸化によって酸化された第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップ層を堆積することとを必要とする。
【0051】
さらに図8Bを参照すると、Co(70原子%)Fe(30原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層161の結晶層は金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、Co(60原子%)Fe(20原子%)B(20原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層が結晶層上に1.5nmの厚さで堆積される。
【0052】
図10Aから10Cおよび図11を参照すると、第1のPGGP層141のアモルファスCoFeB層上の成長直後の結晶CoFe層の微細構造は、体心立方構造で(001)面垂直方向組織の結晶であることが明らかである。図10Aから10Cは、強磁性PGGPシード層141の結晶CoFe層が(001)面垂直方向で成長するかまたは(011)面垂直方向で成長するかを確認するために高分解透過電子顕微鏡によって得られた断面画像を分析する方法を示す。第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層上に堆積された結晶CoFe層が図10Bに示されるように(001)面垂直方向で成長する場合、図10Aにおいて、MgOトンネル障壁と第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層とによって挟まれた第1の強磁性PGGPシード層141の結晶CoFe層の原子間間隔(d)はd110であるが、第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層上に堆積された結晶CoFe層が図10C示されるように(011)面垂直方向で成長される場合、原子間間隔(d)はd200である。体心立方構造のCoFeの(110)原子面の原子間間隔(d110)は2.02Åであり、d200は1.41Åである。図11に関して、強磁性PGGP層141、161の結晶CoFe層の全体的な結晶性が確認される。強磁性PGGPシード層141、161の結晶CoFe層の原子間間隔は、長さ基準のために基準としてCu層の2.08Åのd111を使用して測定される(ここでは図示せず)。この基準を使用して、PGGPシード層141、161の結晶CoFe層の原子間間隔は6つの原子面を平均することによって測定されたが、それによれば原子間間隔は2.02Åである。したがって、強磁性PGGPシード層141、161のアモルファスCoFeB層上の結晶CoFe層は(001)面垂直方向で成長することを確認することができる。さらに、強磁性PGGP層141、161のアモルファスCoFeB層および結晶CoFe層の明瞭な境界を確認することができる。
【0053】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、第1の強磁性PGGP層141のアモルファス層および/または第2の強磁性PGGP層161のアモルファス層の結晶化、および前記アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁151の好適結晶粒成長である。この結晶化および好適結晶粒成長は、第1の強磁性PGGP層141の結晶CoFe層および/または強磁性PGGP層161の結晶CaFe層を使用して、アニーリング中に隣接結晶化または好適結晶粒成長として、このようにして最終的に強磁性PGGP層の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0054】
図12Aおよび図12Bを参照すると、2層化アモルファス層(CoFeB)/結晶(CoFe)強磁性PGGPシード層の微細構造は、体心立方構造で(001)面垂直方向組織の単層構造の完全結晶CoFe PGGPシード層を形成することが明らかである。高分解透過電子顕微鏡によって得られた断面画像(図10Aから10C)を分析する同じ論拠が、アニーリング後の単層構造CoFe PGGPシード層が(001)面垂直方向の結晶であるかまたは(011)面垂直方向の結晶であるかを確認するために適用される。図12Aに関して、強磁性PGGPシード層151の単層構造は、結晶CoFe層およびアモルファスCoFeB層を組み合わせることによって形成されることが確認される。単層構造強磁性PGGPシード層のこの形成は、好適結晶粒成長促進シード層としての結晶CoFeに基づいたアモルファスCoFeB層の結晶化によって説明される。図11で使用された同じ長さ基準を使用して、アニーリング後の単層構造強磁性PGGPシード層の原子間間隔が図12Bの枠で囲まれた領域から7つの原子面を平均することによって測定されたが、それによれば原子間間隔は2.0Åである。さらに、MgOトンネル障壁の原子間間隔が測定され、長さ基準に基づいて2.13Åであった。アニーリング後の単層構造強磁性PGGPシード層およびMgOトンネル障壁からのそれらの原子間間隔により、MgOトンネル障壁および強磁性PGGPシード層が両方とも(001)面垂直方向組織をもつ完全結晶であることが確認される。さらに、Gatan Digital micrographを使用する高速フーリエ変換による図12Aの枠で囲まれた領域からの図12Bに示された選択領域の回折パターンにより、単層CoFe強磁性PGGPシード層の[001]結晶軸がMgOトンネル障壁の[011]結晶軸と平行であるので、MgOトンネル障壁と強磁性PGGPシード層との間の45°回転エピタキシの結晶粒間擬エピタキシが確認される。アンダーラインで示された回折パターンは単層構造CoFe強磁性PGGPシード層からのものであり、アンダーラインのない回折パターンはMgOトンネル障壁からのものである。CoFe/Mg0/CoFeベースの磁気トンネル接合のこの結晶粒間擬エピタキシは、ChoiらによってJ.Appl.Phys.101、013907(2007)に説明されているように巨大TMRを得るための決定的な必要条件である。
【0055】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJは、MR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0056】
第3の実施形態
第3の実施形態のスタックの構成を示す図8Cを参照すると、第3の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつ多層(2層の多数の繰り返し)強磁性ピンおよび自由層132、172の使用である。さらに、第3の実施形態の重要な態様の別のものは、MgOトンネル障壁152の下にあるかまたはそれを挟んでいる2層化強磁性PGGPシード層の挿入である。
【0057】
垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層132、172は、化学的秩序の有無にかかわらず磁性金属層/非磁性金属層(M/NM)の繰り返しにより多層化することができ、ここで、M=Co、Fe、CoFeまたはCoPt、およびNM=Pt、Pd、AgまたはAuである。また、垂直異方性をもつ強磁性自由層172は強磁性ピン層132よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層132と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0058】
例えば、図8Cの第3の実施形態は、下層120/Co/Pt132/CoFeB(1.5)/CoFe(1.5)/Mg(0.43)/酸素界面活性物質層30ラングミュア/Mg(0.67)/R−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)/CoFeB(1.5)/Co/Pt172/キャップ層180とすることができ、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さである。この例は、界面活性物質層の使用およびその後のラジカル酸化法によってMTJデバイスのトンネル障壁を形成する方法である。また、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(a+d+j+m+n)の組合せによって形成される。
【0059】
MgOトンネル障壁152を形成する方法は、
強磁性PGGPシード層141の結晶層上への0.43nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
0.43nmの金属Mg層を酸素雰囲気に曝露することによる真空チャンバ内での酸素界面活性物質層の形成であって、その曝露が曝露時間およびチャンバを通る酸素流量によって30ラングミュアとなるように制御される形成と、
【0060】
酸素界面活性物質層上への0.67nmの厚さをもつ第2の金属Mg層の堆積と、
酸化チャンバ内で行われるラジカル酸化による第1および第2の金属層の酸化であって、酸化チャンバ内には電気的に接地された「シャワー・プレート」が上部イオン化電極と基板との間に配置される酸化とである。酸素プラズマは、700sccmの酸素流量で、イオン化電極に300Wのrf電力を印加することによって生成される。酸素ラジカル・シャワーはシャワー・プレートを通って流れるが、イオン化種および電子などの電荷をもつパーティクルはシャワー・プレートの電気接地のために通過することができず、
【0061】
ラジカル酸化によって酸化された第1および第2の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップが堆積される。
【0062】
図8Cを参照すると、Co(70原子%)Fe(30原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層161の結晶層が金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、Co(60原子%)Fe(20原子%)B(20原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層が結晶層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、垂直異方性をもつ強磁性自由層172が第2の強磁性PGGPシード層161のアモルファス層上に堆積される。
【0063】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、強磁性PGGPシード層141、161のアモルファス層の結晶化と、前記アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁152の好適結晶粒成長とである。この結晶化および好適結晶粒成長は、強磁性PGGPシード層141、161の結晶CoFe層を使用して、アニール中に隣接結晶化または好適結晶粒成長シード層として、このようにして最終的に強磁性PGGPシード層141、161、MgOトンネル障壁152の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0064】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJは、MR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0065】
再び、MTJの磁気輸送特性ならびに結晶性および擬エピタキシに関連する前の研究に基づいて、アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁に隣接して強磁性PGGPシード層を挿入すると、堆積後アニーリング中にMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長が誘起されることが直観的に推測され得る。
【0066】
MgOトンネル障壁を形成する他の方法として反応性スパッタリングを使用することができる。例えば、それは、
強磁性PGGPシード層上への0.6nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
40sccmの流量でアルゴンをおよび4sccmの流量で酸素を流すことによるアルゴンおよび酸素の混合ガス中でのMgの反応性スパッタリングによる第1の金属Mg層上への0.6nmの厚さをもつMgO層の形成と、
【0067】
酸化チャンバ内で行われる自然酸化による第1の金属層およびMgO層の酸化とである。有利には、薄く形成された金属Mg層およびMgO層に適用される自然酸化処理は、約6.5×10−1Paの圧力の酸素ガスで酸化チャンバを浄化することと、700sccmの流量で酸素を流すことと、次に、堆積直後の金属Mg層およびMgO層を所与の曝露時間の間酸素ガス流に接触したままにすることと、自然酸化によって酸化されたMgO層および第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップ層を堆積することとを必要とする。
【0068】
別の実施形態では、2層化強磁性PGGPシード層の結晶層としてCoFeB(B<10原子%)を使用することができる。5.1原子%および2.9原子%のホウ素含有量をもつCoFeBの微細構造は堆積直後の状態で結晶であるが、20原子%のホウ素含有量をもつCoFeBの微細構造はアモルファスであり、それは、熱酸化Siウェハ上に堆積されたCoFeB単層からのXRDシータ−2・シータ・スキャンによって確認されることが明らかである。強度はCoFeB単一膜の厚さによって正規化される。Sherrerの式を使用して計算された結晶粒サイズは、CoFeB(B:2.9原子%)の結晶粒サイズがCoFeB(B:5.1原子%)よりも大きいことを示しており、それは抵抗率の著しい減少によって再確認することができる。CoFeBの抵抗率は、ホウ素含有量に対応して結晶性とともに顕著に変化する。さらに、CoFeB(B:2.9原子%)の45.35°からCoFeB(B:5.1原子%)の45.02°へのXRDピークのシフトは、体心立方構造の格子間位置にホウ素を含有することによるCoFeの格子拡大を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネリング磁気抵抗を使用する、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)に特に関連する磁気トンネル接合(MTJ)デバイスの分野に関する。より詳細には、本発明は、酸化法または反応性スパッタリング法によって作製されたMgOトンネル障壁を備え、微細構造がアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織の微晶質であるMTJデバイスに関する。より詳細には、本発明は、垂直異方性をもつ強磁性層を備えたMTJデバイスに関する。より詳細には、本発明は、堆積後アニーリング中にMgOトンネル障壁の結晶性を高めるためにMgOトンネル障壁に隣接し、好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層である結晶強磁性層を挿入したMTJデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気トンネル接合(MTJ)デバイスのコア要素は、「強磁性層/トンネル障壁/強磁性層」の3層構造である。MTJデバイスの抵抗の変化は、2つの強磁性層の磁化の相対的方位に応じた、デバイスの両端のバイアス電圧によりトンネル障壁を通るスピン偏極電子のトンネリング確率の差に起因する。
【0003】
トンネル障壁を挟む2つの強磁性層の磁化の相対的方位は2つの強磁性層の磁化反転の性質の違いによって実現され、一方の強磁性層の磁化は動作中に外部磁界によって反転されないが、他方の強磁性層の磁化は外部磁界に反応する。したがって、デバイス動作中のトンネル障壁を挟む2つの強磁性層の磁化の平行または逆平行アライメントは実現される。
【0004】
トンネル障壁は一般に誘電体材料であり、極端に薄くなければならず、厚さならびに組成が極めて均一でなければならない。化学量論的組成または厚さに関するいかなる不整合もデバイス性能を著しく低下させる。
【0005】
MTJデバイスの最も典型的に使用される構造が図1Aに概略的に示され、それは反強磁性ピニング層103、合成反強磁性(SAF)ピン層104、105及び106、トンネル障壁107、および強磁性自由層108からなる。合成反強磁性(SAF)ピン層は強磁性ピン層104、非磁性スペーサ105、および強磁性基準層106を含む。スピン・トルク・トランスファMRAM(STT−MRAM)への適用に成功するために対処される重要な問題は、拡張性と、自由層の磁化を反転させるのに必要とされる電流(Jc)の低減とである。しかし、面内磁化を使用するSTT−MRAMは、それぞれ、面内一軸異方性を誘起するためのオバール(卵形)異方性および打ち勝つための非常に強い反磁界のために拡張性およびJc低減に対して限界を示している。図1Bは、図1Aのものとは異なる種類のMTJデバイスを示す。図1Bに示されたMTJデバイスの構造は、垂直異方性をもつ強磁性ピン層203、トンネル障壁204、および垂直異方性をもつ強磁性自由層205からなる。また、強磁性自由層205の磁化が強磁性ピン層203の磁化よりも容易に切り替えることができるように、強磁性自由層205は強磁性ピン層203よりも低い保磁力を有する。垂直異方性をもつこのMTJスタックを備えたSTT−MRAMは、それぞれ、面内一軸異方性を誘起するための卵形、および自由層の磁化反転を実際に支援する反磁界を有する必要がないため非常に改善された拡張性および効果的に低減されたJcを示すと予想される。
【0006】
その発見以来、室温での高TMRは、不揮発性磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)などのスピントロニクス用途およびハードディスク・ドライブの記録用読取りヘッドなどの磁気センサのために産業界の最新トピックのうちの1つとなっている。従来の磁界スイッチングMRAM用途では、300×600nm2のビットサイズをもつ1Mbit MRAMは、MTJが約1k〜2kΩμm2の抵抗−面積(R×A)積で40%の磁気抵抗(MR)比をもたらすことを必要とする。250Mbitsの高密度では、ビットサイズは200×400nm2まで縮小し、約0.5kΩμm2のR×A積で40%よりも高いMR比を必要とする。さらなる縮小はスピン・トランスファ・トルクによる磁化反転の適用によってMRAMで達成することができるが、MTJは10〜30Ωμm2のR×A積範囲で150%を超えるMR比をもたらすことが必要とされる。
【0007】
アモルファスAlOxトンネル障壁および高スピン偏極をもつ強磁性電極になされた初期の取組みは上述の要求事項に対して十分ではなかった。最近、単結晶Fe/MgO/Feが理論計算によって示唆されており(Butlerら、Phys.Rev.B 63、(2001)p054416)、MgOの優れたスピン・フィルタ処理効果のために6000%もの高い室温TMRを得ることができると予測されている。このスピン・フィルタ処理効果、すなわちMTJのMgOトンネル障壁を挟む2つの強磁性層の逆平行磁化アライメントにおける少数スピンダウン電子の全反射は、フェルミ面でΔl対称をもつ少数スピンダウン・スピン・チャネルにブロッホ固有状態がないことから本質的なものである。これによりコヒーレント・トンネリングが可能になり、さらに巨大TMR比が可能になる。このコヒーレント・トンネリングを可能にするために微細構造必要条件があるが、それはFe(001)/MgO(001)/Fe(001)のエピタキシャル成長であり、それはトンネリング電子がFeおよびMgOの(001)原子面を通過するからである。分子線エピタキシを使用する単結晶(Fe/MgO/CoFe)成長に基づいてこの巨大TMRを達成するための実験的試みは180%までの室温TMRを実証した。(Yuasaら、Appl.Phys.Lett.87(2005)p222508)多結晶CoFe強磁性電極をもつMgOトンネル障壁を使用して、220%の室温TMRが報告されているが(Parkinら、Nat.Mater.3(2004)p862)、さらに高いTMRが、アモルファスCoFeB強磁性電極を使用し、熱酸化Siウェハ上に実用的なマグネトロン・スパッタリングによって作製されたMTJで報告された。(Djayaprawiraら、Appl.Phys.Lett.86(2005)p092502)
【0008】
極端に薄く、厚さならびに組成が極めて均一であるMTJ中にMgOトンネル障壁を形成するために多大な努力がなされてきた。さらに、(001)面垂直方向組織をもつMgOトンネル障壁の結晶性を達成するための同様の多大な努力が、理論計算によって与えられ、微細構造および薄膜化学の研究によって確認された、bcc構造のサンドウィッチ用強磁性層とともに(001)面垂直方向エピタキシであるという微細構造必要条件を満たすためになされてきた。(Y.S.Choiら、Appl.Phys.Lett.90(2007)p012505、Y.S.Choiら、J.Appl.Phys.101(2007)p013907)
【0009】
MRAMまたは記録用読取りヘッドの大量生産のためのMTJデバイスを作製する一般的な方法では、MgOトンネル障壁の堆積は、直接堆積と、金属堆積とその後の酸化処理とに分類される。セラミック・ターゲットを使用するrf−スパッタリングによるかまたは酸素および不活性ガスのガス混合の雰囲気中での金属ターゲットの反応性スパッタリングによるトンネル障壁の堆積は第1の群の直接堆積に分類される。金属堆積とその後の様々な種類の酸化処理、例えば自然酸化、プラズマ酸化、ラジカル酸化、またはオゾン酸化は、第2の群に分類される。
【0010】
MTJ開発の重大なボトルネックの1つは、非常に薄い厚さにおいてトンネル障壁を均一の厚さに制御することである。トンネル障壁の厚さが薄すぎる場合、ピンホールを含む恐れが高く、リーク電流がスピン依存トンネリングなしで通過する。これは信号対雑音比(S/N)を著しく低下させる。別のボトルネックはトンネル障壁の化学的不均一性であり、それは、過剰な酸化または不完全な酸化、および下地強磁性層の酸化をもたらす。これらは、表面酸化した下地強磁性層でのスピン散乱によるトンネル障壁厚さの増加のために、印加バイアスの符号に対する非対称電気特性、R×A積の異常な増加、およびTMR比の減少をもたらす。(Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230(2001)p926)
【0011】
極めて薄いMgOトンネル障壁の均一な厚さ制御およびMgOトンネル障壁の端から端までの化学的均一性の問題に加えて、MgOベースのMTJのR×A積が低い状態で巨大TMR比を達成するための最も切迫した問題は、MgOトンネル障壁の(001)面垂直方向組織および高い結晶性である。図2は、MgOの組織と結晶性との関係およびCoFeB/MgO/CoFeB MTJの磁気輸送特性を示し、ここで、MgOはrfスパッタリングによって堆積されている。高度に結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によってCoFeの対応する(001)組織を誘起し、したがって、CoFeB/MgO/CoFeBの全体的な(001)組織が実現されることが図2Aおよび図2Bに明確に示されている。したがって、図2C示されるように、低いR×A積で著しく増大したMR比を得ることが可能である。しかし、さらに図2Cで分かるように、不完全な結晶性をもつMgOトンネル障壁を備えたMTJは極端に高いR×A積とともに非常に低いMR比を示している。
【0012】
rfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁は処理最適化により大きな前進を示したにもかかわらず、MR比およびR×A積がrf−スパッタリングに固有のチャンバ状態およびパーティクル生成に応じて非常に敏感に変化するという大量生産に向けて克服することが困難である重大な問題がある(Ohら、IEEE Trans.Magn.、42(2006)p2642)。さらに、rf−スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJデバイスの最終的なR×A積均一性(1σ)は10%を超えているが、Mg堆積とその後の酸化処理によって作製されたMgOトンネル障壁のものは3%未満であることが報告された。(Zhaoら、米国特許出願第2007/0111332号)
【0013】
MgOトンネル障壁作製の代替方法は、Mg堆積とその後の様々な酸化処理、または酸素および不活性ガスのガス混合の雰囲気中での反応性Mgスパッタリングである。プラズマ酸化がAlOxトンネル障壁の作製で使用されているが、反応性が高いため、極めて薄い金属層を酸化することは格別に困難であり、特にMgO形成のためのMgの酸化の速度は非常に速く、確実に下地強磁性層の界面まで酸化される。このようにして、AlOxトンネル障壁を備えたMTJから、10000Ωμm2/45%のR×A積およびMR比がプラズマ酸化処理によって得られており(Tehraniら、IEEE Trans.Magn.、91(2003)P703)、一方、1000Ωμm2/30%のR×A積およびMR比がオゾン酸化によって得られている。(Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230(2001)p926)
【0014】
そのため、エネルギーの少ない酸化処理が提案されており、それはMgOトンネル障壁を形成するためのラジカル酸化および自然酸化である。さらに、ArおよびO2の雰囲気中でMgOトンネル障壁を形成するためにMg金属ターゲットの反応性スパッタリングが提案されている。図3は、MgOトンネル障壁堆積の様々な方法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られた磁気輸送特性測定結果を示す。MTJ構造はMgOトンネル障壁部分以外は同一であり、下部層/PtMn(15)/CoFe(2.5)/Ru(0.9)/CoFeB(3)/MgO(x)/CoFeB(3)/キャップ層である。括弧内の厚さはナノメートル尺度である。rfスパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、酸化法および反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJのMR比は著しく低いことが明確に示されている。10Ωμm2の所与のR×A積では、rfスパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJは180%のMR比を与えるが、ラジカル酸化法によって堆積されたMgOは100%を与え、自然酸化は60%を与え、反応性スパッタリングによって作製されたMgOは135%を与える。
【0015】
微細構造解析が、高分解透過顕微鏡(HREM)、X線回折(XRD)、およびX線光電子分光法(XPS)で行われた。図4Aおよび図4Bに示されるように、磁気輸送特性の差は、MgOトンネル障壁の結晶性の差およびCoFeB/MgO/CoFeB層中のエピタキシの不足に起因することが明確に比較される。図4Aおよび図4Bは、それぞれ、rf−スパッタリングおよびラジカル酸化によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから撮られた断面HEEM画像である。ChoiらによってJ.Appl.Phys.101(2007)p013907で報告されたように、rfスパッタリングによって作製されたCoFeB/MgO/CoFeBベースのMTJは、MgOが高度な結晶性でCoFe層との良好な結晶粒間エピタキシであるという、Butlerらによる理論計算で与えられた微細構造必要条件を満たしている。CoFe層は、結晶化テンプレートとしての結晶性MgOに基づいた堆積後アニーリングによって結晶化され、このようにして、結晶粒間エピタキシがCoFe/MgO/CoFe層で実現される。しかし、ラジカル酸化によって作製されたMgOトンネル障壁はアモルファスと混合された不完全な結晶性を示し、CoFe層との界面での擬エピタキシを確認するのは困難である。
【0016】
図4Cは、堆積方法、すなわちrf−スパッタリングおよび自然酸化に関してMgOの結晶性および組織の明白な比較を示す。面垂直方向シータ−2・シータ・スキャンにより、rf−スパッタリングによりアモルファスCoFeB層に堆積されたMgOトンネル障壁は、成長時の状態で高度な結晶性であり、2シータ=42.4°での明白なMgO(002)ピークによって(001)面垂直方向の好適方位で高度に組織化されていることが確認される。しかし、金属堆積とその後の自然酸化によって作製されたMgOは明白なピークを示さず、それはMgO層がほとんどアモルファスであることを示している。
【0017】
図4Dおよび図4Eは、それぞれ、rf−スパッタリングおよび反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られたXPSスペクトルである。ChoiらによってAppl.Phys.Lett.90(2007)p012505で報告されたように、MgOの結晶性、MTJのより高いMR比およびより低いR×A積にとって、NaCl構造のMgOの格子点に支配的数量の酸素イオンを有することが肝要である。図4Dに示されるように、NaCl構造のMgOの格子点を占める酸素イオン(その結合エネルギーは約531eVである)の数量は、rfスパッタリングによって堆積されたMgOにおいて非常に高いが、反応性スパッタリングによって堆積されたMgOでは、図4Eに示されるように、格子点における酸素イオンの数量のほとんど1/3であるかなりの数量の不純物酸素イオン(その結合エネルギーは約533.3eVである)があることが明らかである。したがって、MgO障壁中のこの高密度の不純物酸素イオンが、MgOの不完全な結晶性に関連しており、不完全なMR比の原因であると推測することができる。
【0018】
酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁の良好な結晶性を達成するために、2層ではなく単層の結晶強磁性基準層が使用されており、MTJの構造は下部層/PtMn(15)/CoFe(2.5)/Ru(0.9)/CoFe(3)/MgO(x)/CoFeB(3)/キャップ層である。図5Aに示されるように、完全結晶CoFe単一基準層をもつMTJは、MR比をCoFeBアモルファス基準層による130%から35%まで顕著に低下させる。また、360℃で、2時間、10kOeの磁界の下で堆積直後のアニーリングの後の完全結晶CoFe単一基準層をもつMTJからの図5Bの全ヒステリシス・ループの形状は、不十分または破壊されたSAF構造を示しているが、一方、同じ条件での堆積後アニーリングの後のアモルファスCoFeB単一基準層をもつ図5Cに示されたMTJの全ヒステリシス・ループの形状は、円のマーク内に明瞭なSAF結合を示している。体心立方CoFeは、六方最密Ru(0001)底面との格子整合のためにRuとの界面と平行な(110)原子面を順番に成長させる傾向がある。強磁性基準層の(110)面垂直方向組織は、MgOベースのMTJに関するButlerらによる理論計算からの巨大TMRにとって好ましくない。さらに、SAF(CoFeB/Ru/CoFe)の熱安定性はSAF(CoFeB/Ru/CoFeB)よりも非常に悪く、したがって、MTJが、高温での堆積後、アニーリングの後のCoFeB/Ru/CoFe SAF構造で構成される場合、構成要素強磁性層間の磁化分離の明確な区分けを保証することができない。したがって、結晶CoFe単一基準層はMgOトンネル障壁の良好な結晶性を達成するのに効果的でないことが分かる。
【0019】
したがって、酸化法または反応性スパッタリングによって堆積されたMgOトンネル障壁の不完全な結晶性は、CoFeB/MgO界面でアモルファスCoFeBをCoFeに結晶させるための結晶化テンプレートの役割を果たすことができないことを理解することができる。したがって、結晶粒間擬エピタキシをCoFe/MgO/CoFe層において期待することができず、それは不完全な磁気輸送特性をもたらす。
【0020】
強磁性層の面内磁化を用いたMTJデバイスと異なり、強磁性層の垂直磁化を用いたMTJデバイスは、スピン・トランスファ・トルクによる反転の間磁化の歳差運動の問題がなく、それによってJcの大幅な減少を期待することができる。さらに、垂直異方性を使用するSTT−MRAMでは一軸性軸に対する面内形状異方性を必要としないので、さらなる拡張性が可能になり、したがってそれの密度が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】T.Zhaoら、米国特許出願第2007/0111332号
【特許文献2】S.Miuraら、米国特許出願第 号
【特許文献3】K.Nishimuraら、特許出願第2008−103661号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】W.H.Butlerら、Phys.Rev.B 63、054416(2001)
【非特許文献2】S.Yuasaら、Appl.Phys.Lett.87、222508(2005)
【非特許文献3】S.S.P.Parkinら、Nat.Mater.3、862(2004)
【非特許文献4】D.Djayaprawiraら、Appl.Phys.Lett.86、092502(2005)
【非特許文献5】Y.S.Choiら、Appl.Phys.Lett.90、012505(2007)
【非特許文献6】Y.S.Choiら、J.Appl.Phys.101、013907(2007)
【非特許文献7】B.Parkら、J.Magn.Magn.Mat.、226〜230、926(2001)
【非特許文献8】S.C.Ohら、IEEE Trans.Magn.、42、2642(2006)
【非特許文献9】S.Tehraniら、IEEE Trans.Magn.、91、703(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、強磁性層の垂直磁化を用いたMgOベースのMTJをスピン・トランスファ・トルクMRAMに適用するために低いR×A積で十分に高いMR比を提供することであり、MgOは金属堆積とその後の様々な酸化法によって作製されるか、または反応性スパッタリングによって作製され、その微細構造はアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質トンネル障壁である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、金属堆積とその後の様々な酸化法によって作製されたかまたは反応性スパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を結晶化させるか、またはそれの好適結晶粒成長を誘起することが肝要である。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、成長直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁の結晶化または好適結晶粒成長は、MgOトンネル障壁の下にあるかまたはそれを挟んでいる体心立方構造の結晶強磁性PGGPシード層を使用することによって堆積後アニーリング中に達成することができる。
【0026】
結晶強磁性ピンまたは自由層を使用する場合、成長直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁の結晶化または好適結晶粒成長は、MgOトンネル障壁の下にあるかまたはそれを挟んでいる体心立方構造の結晶強磁性PGGPシード層を使用することによって堆積後アニーリング中に達成することができる。
【0027】
結晶強磁性PGGPシード層が存在すると、図6に概略的に示されるように、堆積後アニーリングの後で、堆積直後の状態でアモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のトンネル障壁であるMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長が引き起こされる。
【0028】
したがって、本発明のこの得られたMTJの微細構造により、図6に示されるように、MR比の著しい増加ならびにR×A積の顕著な低減を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】磁気トンネル接合の典型的な構造の概略図である。
【図1B】強磁性層の垂直磁化を用いた磁気トンネル接合の典型的な構造の概略図である。
【図2A】高度な結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によりCoFeの対応する(001)組織を含むことを示す図である。
【図2B】高度な結晶性で(001)組織のMgOトンネル障壁を用いて作製されたMTJは、アニーリングによるCoFeBアモルファス層の結晶化によりCoFeの対応する(001)組織を含むことを示す図である。
【図2C】不完全な結晶性をもつMgOトンネル障壁を備えたMTJは極めて高いR×A積とともに非常に低いMR比を示すことを示す図である。
【図3】MgOトンネル障壁堆積の様々な方法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJから得られた磁気輸送特性測定結果を示す図である。
【図4A】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングによって作製されたMgOをもつMTJからの断面HREM画像の写真である。
【図4B】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、ラジカル酸化によって作製されたMgOをもつMTJからの断面HREM画像の写真である。
【図4C】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングおよび自然酸化によって作製されたMgOトンネル障壁の結晶性および構造を比較するXRDシータ−2・シータ・スキャンである。
【図4D】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、rf−スパッタリングによって作製されたMgOから得られたXPS 0 1sスペクトルである。
【図4E】様々な方法によって作製されたMgOからの微細構造および薄膜化学分析の結果を示す図であり、反応性スパッタリングによって作製されたMgOから得られたXPS 0 1sスペクトルである。
【図5A】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFeまたはCoFeB基準層をもつMTJからのMR比対R×A積である。
【図5B】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFe基準層をもつMTJからの全ヒステリシス・ループである。
【図5C】CoFeまたはCoFeBの強磁性単一基準層をもつMTJの磁気輸送特性の比較およびヒステリシス・ループを示す図であり、CoFeB基準層をもつMTJからの全ヒステリシス・ループである。
【図6】堆積後アニーリングの後のMTJの結晶化および好適結晶粒成長処理の概略的な比較の図である。
【図7】MTJデバイス製造装置を例示する図である。
【図8A】本発明のMTJの概略図である。
【図8B】本発明の第1の実施形態のMTJの概略図である。
【図8C】本発明の第2の実施形態のMTJの概略図である。
【図8D】本発明の第3の実施形態のMTJの概略図である。
【図9A】本発明のPGGPシード層の磁気モーメントの概略図である。
【図9B】垂直異方性の強磁性層への厚いPGGP層の磁気モーメントの影響の概略図である。
【図9C】PGGPシード層厚さと異方性との関係を示す図である。
【図10A】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、MgOトンネル障壁およびCoFeB層によって挟まれたCoFe PGGPシード層である。
【図10B】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、(001)面垂直方向をもつCoFe PGGPシード層の成長を表わすものである。
【図10C】第2の実施形態の成長直後のMTJから高分解透過電子顕微鏡(HRTEM)および断面HRTEM画像によってそれぞれ得られた断面画像を分析するための概略図であり、(011)面垂直方向をもつCoFe PGGPシード層の成長を表わすものである。
【図11】第2の実施形態の成長直後のMTJの断面HREM画像を示す図である。
【図12A】第2の実施形態のアニールされたMTJの断面HREM画像を示す図である。
【図12B】図12Aの断面HREM画像の枠で囲まれた領域からの選択された領域の回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施形態が図面を参照しながら具体的に説明される。合金が元素比を意味する数なしで記述される場合、それは、本文書において、合金が同じ比ではなく任意の比で各元素を含むことを意味する。図7は、好ましい実施形態におけるMTJデバイス製造装置を例示する。図7は、磁気トンネル接合デバイスを製作するための真空処理システム700の概略平面図である。図7に示された真空処理システムは、物理気相堆積技法を使用する複数の薄膜堆積チャンバを備えるクラスタ型システムである。前記真空処理システム中の複数の堆積チャンバは、中央位置にロボット・ローダーを備えた真空搬送チャンバ701(図示せず)に取り付けられる。前記真空処理システム700は、基板をロード/アンロードするために2つのロードロック・チャンバ702および703を備えている。前記真空処理システムは、脱ガス・チャンバ704およびプレエッチング/エッチング・チャンバ705を備えている。真空処理システムは、酸化チャンバ706と、複数の金属堆積チャンバ707、708、および709とを備えている。真空処理システムのチャンバの各々は、チャンバ間の通路を開閉するためにゲート・バルブを介して接続される。真空処理システムの各々のチャンバはポンプ・システム、ガス導入システム、および電源システムを備えていることに留意されたい。さらに、ガス導入システムは流量調整手段を含み、ポンプ・システムは圧力調整手段を含む。流量調整手段および圧力調整手段の各操作により、一定期間の間チャンバの圧力を一定に制御することができる。さらに、流量調整手段および圧力調整手段の組合せに基づいた操作により、一定期間の間チャンバの圧力を一定に制御することができる。
【0031】
前記真空処理システム700の金属堆積チャンバ707、708、および709の各々において、磁性層および非磁性金属層の各々がスパッタリング方法によって1つずつ基板に堆積される。金属堆積チャンバ707、708、および709では、例えば、ターゲットの材料は「CoFe」であり、ターゲットの材料は「CoFeB」であり、ターゲットの材料は「Mg」である。さらに、ターゲットの材料は「下層材料」であり、ターゲットの材料は「キャップ材料」である。プレエッチングおよびエッチングはプレエッチング/エッチング・チャンバで行われる。酸化は酸化チャンバ706で行われる。さらに、各金属堆積チャンバはdc−スパッタリングを行うことができるスパッタ装置を含む。各チャンバへのガス導入、バルブの切替え、電源のON/OFF、ガスの排気、および基板搬送などの手順は、システム・コントローラ(図示せず)によって行われる。
【0032】
図8Dは、トンネル磁気抵抗(TMR)メモリ・セル用の強磁性層の垂直磁化を用いたMTJのスタック構造100を示す。最も有利には、下層120およびSiウェハ110上に、MTJは、垂直異方性をもつ強磁性ピン層130、第1の強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層140、トンネル障壁150、第2の強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層160、および垂直異方性をもつ強磁性自由層170からなる。上部電極が取り付けられるキャプ層180(Ptなど)は自由層170上に形成される。
【0033】
本発明のMTJデバイスは、MTJデバイス中にコア要素を作製することによって形成され、コアは「垂直異方性をもつ結晶強磁性ピン層130/第1の結晶強磁性PGGPシード層140/トンネル障壁150/強磁性PGGPシード層160/垂直異方性をもつ強磁性自由層170」の多層構造を含み、好ましい実施形態では以下の群から選択した材料の組合せを使用する。
【0034】
群1:
強磁性好適結晶粒成長促進(PGGP)シード層に対する選択
a.結晶単層
b.2層化アモルファス層/結晶層
群2:
MgOトンネル障壁堆積の方法
c.Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ
d.Mg xÅ/酸素界面活性物質/Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ
e.Mg xÅ/酸化処理*/Mg yÅ/酸化処理*/Mg zÅ
f.反応性スパッタリングMgOx/酸化処理*/Mg yÅ
g.Mg xÅ/反応性スパッタリングMgOx/酸化処理*/Mg yÅ
酸化処理*はプラズマ、自然、ラジカル、およびオゾン酸化を含む。
群3:
強磁性PGGPシード層の位置
h.ピン層のみ
i.自由層のみ
j.基準および自由層
群4:
垂直異方性をもつ強磁性ピンまたは自由層の選択
k.アモルファス強磁性層
l.結晶強磁性層
m.多層(2層の多数の繰り返し)
群5:
結晶強磁性PGGPシード層または2層化強磁性PGGPシード層の結晶層に対する材料選択
n.CoxFe100−x、ここで、0<x原子%<90
o.(CoxFe100−x)yB100−y、ここで、0<x原子%<90、および90<y原子%<100
p.Fe
【0035】
第1の実施形態
第1の実施形態のスタックの構成を示す図8Aを参照すると、第1の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつアモルファス強磁性ピンおよび自由層133、173の使用である。また、第1の実施形態の別の重要な態様は、MgOトンネル障壁153の下にあるかまたはそれを挟んでいる結晶強磁性PGGPシード層の挿入である。図8Aから8Cは、アニーリング・ステップの前のMgOトンネル障壁を示す。アニーリング・ステップによって、強磁性PGGPシード層に挟まれた層は、全体的な(001)面垂直方向組織をもつMgOトンネル障壁153に変化する。
【0036】
垂直異方性をもつ強磁性ピン層133および自由層173はアモルファス希土類/遷移金属合金(RExTM1−x)とすることができ、ここで、RE=Y、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、およびLu、ならびにTM=Co、Fe、およびCoFe合金である。または、垂直異方性をもつ強磁性ピン層133および自由層173は、希土類/遷移金属/耐食性元素合金(RExTM1−x)yCR1−yとすることができ、ここで、CR=Crである。これらの層は、合金ターゲットのスパッタリングまたはマルチ金属ターゲットの同時スパッタリングで形成することができる。他の気相堆積法を使用することができる。また、強磁性自由層173は強磁性ピン層133よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層133と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0037】
第1および第2の結晶強磁性PGGPシード層143、163はbcc構造をもつ結晶層とすることができる。したがって、第1および第2の結晶強磁性PGGP層143、163は、CoxFe1−x(0≦x≦0.9)、(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦y<1)、Feなどとすることができる。さらに、それは0.5nm≦t≦2nmの厚さ(t)で堆積することができる。垂直異方性をもつ強磁性のピンまたは自由層によって強磁性PGGPシード層に誘起される異方性は、一軸異方性場が形状異方性と競合するので関連するエネルギーを考慮することによって決定することができる。
一軸異方性=2Ku/Ms
形状異方性=4πMs、
ここで、Kuは異方性定数であり、Msは飽和磁化である。図9Cに示されるように、結晶強磁性PGGPシード層の厚さが厚くなるとき、形状異方性が一軸異方性に打ち勝つ移行厚さがある。したがって、結晶強磁性PGGPシード層のこの移行厚さ未満では、強磁性PGGPシード層の垂直異方性が誘起されて、図9Aに示されるようにすべての磁気モーメントが膜面に垂直に整列する。しかし、強磁性PGGPシード層の移行厚さを超えると、形状異方性が支配的となり、したがって、磁気モーメントはすべて膜面に整列し、それにより、次に、強磁性ピンまたは自由層の界面磁気モーメントが誘起され、図9Bに示されるように、垂直異方性が垂直軸から傾く。したがって、強磁性PGGPシード層の厚さは、限界移行厚さより小さくなるように注意深く制御する必要がある。一方、厚さが0.5nm未満である場合、それは薄すぎてPGGPとなりえない。
【0038】
例えば、図8Aの第1の実施形態は、下層120/TbCoFe133/CoFe(1.5)143)/Mg(1.1)/R−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)163/GdCoFe173/キャップ層180であり、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さであり、「R−Ox x秒」はx秒のラジカル酸化処理を意味する。この例では、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(a+c+i+k+n)または(a+c+j+k+n)の組合せによって形成される。
【0039】
MgOトンネル障壁153を形成する方法は、
第1の結晶強磁性PGGPシード層143上への1.1nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
酸化チャンバ内で行われるラジカル酸化による第1の金属層の酸化とであり、酸化チャンバ内には電気的に接地された「シャワー・プレート」が上部イオン化電極と基板との間に配置される。酸素プラズマが、700sccmの酸素流量を用い、イオン化電極に300Wのrf電力を印加することによって生成される。酸素ラジカル・シャワーはシャワー・プレートを通って流れるが、イオン化種および電子などの電荷をもつパーティクルはシャワー・プレートの電気接地のために通過することができず、ラジカル酸化によって酸化された第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップが堆積される。
【0040】
さらに、第2の結晶強磁性Co(70原子%)Fe(30原子%)PGGPシード層163が金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。
【0041】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁153の好適結晶粒成長である。この結晶化および好適結晶粒成長は、第1および第2の結晶CoFe強磁性PGGPシード層143、163を使用して、アニール中に隣接結晶化または好適結晶粒成長として、このようにして最終的にMgOトンネル障壁153の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0042】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJはMR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0043】
第2の実施形態
第2の実施形態のスタックの構成を示す図8Bを参照すると、第2の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつ結晶強磁性ピンおよび自由層131、171の使用である。さらに、第2の実施形態の別の重要な態様は、MgOトンネル障壁151の下にあるかまたはそれを挟んでいる2層化強磁性PGGPシード層の挿入である。
【0044】
垂直異方性をもつ結晶強磁性ピンおよび自由層131、171は、化学的秩序をもつ結晶遷移金属/耐熱性金属合金(TMxRM1−x)とすることができ、ここで、TM=CoまたはFe、およびRM=PtまたはPdである。また、垂直異方性をもつ強磁性自由層171は強磁性ピン層131よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層131と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0045】
第1の2層化強磁性PGGPシード層141は2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層であり、ここで、アモルファス層は強磁性ピン層131とbcc構造の結晶PGGP層とを分離する。同様の方法で、第2の2層化強磁性PGGPシード層161は2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層であり、ここで、アモルファス層は強磁性自由層171とbcc構造の結晶PGGP層とを分離する。
【0046】
2層化強磁性PGGPシード層141、161のアモルファス層は、CoFeB(B>10原子%)で製作することができる。Bの代わりにまたはBに加えて、結晶強磁性材料をアモルファス材料に変化させることができる材料、例えばZr、Hf、Nb、Ta、Ti、Si、またはPを使用することができる。2層化強磁性PGGPシード層141のアモルファス層は、結晶強磁性ピン層131から2層化強磁性PGGPシード層141の結晶層まで結晶構造が伝達するのを妨げ、したがって、2層化強磁性PGGPシード層141の結晶層は好ましいbcc構造で形成することができる。同様の方法で、結晶層上の第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層を形成することによって、強磁性自由層は好ましい結晶構造で形成することができる。
【0047】
第1および第2の強磁性PGGPシード層141、161におけるbcc構造をもつ結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)は、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる。
【0048】
例えば、図8Bの第2の実施形態は、下層120/CoPt131/CoFeB(1.5)/CoFe(1.5)/Mg(1.1)/N−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)/CoFeB(1.5)/FePt171/キャップ層180とすることができ、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さであり、「N−Ox x秒」はx秒の自然酸化処理を意味する。この例では、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(b+c+i+l+n)または(b+c+j+l+n)の組合せによって形成される。
【0049】
MgOトンネル障壁151を形成する方法は、
強磁性PGGPシード層141上への1.1nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
【0050】
酸化チャンバ内で行われる自然酸化による第1の金属Mg層の酸化とである。薄く形成された金属Mg層に有利に適用される自然酸化処理は、約6.5×10−1Paの圧力の酸素ガスで酸化チャンバを浄化することと、700sccmの流量で酸素ガスを流すことと、次に、堆積直後の金属Mg層を所与の曝露時間の間酸素ガス流に接触したままにすることと、自然酸化によって酸化された第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップ層を堆積することとを必要とする。
【0051】
さらに図8Bを参照すると、Co(70原子%)Fe(30原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層161の結晶層は金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、Co(60原子%)Fe(20原子%)B(20原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層が結晶層上に1.5nmの厚さで堆積される。
【0052】
図10Aから10Cおよび図11を参照すると、第1のPGGP層141のアモルファスCoFeB層上の成長直後の結晶CoFe層の微細構造は、体心立方構造で(001)面垂直方向組織の結晶であることが明らかである。図10Aから10Cは、強磁性PGGPシード層141の結晶CoFe層が(001)面垂直方向で成長するかまたは(011)面垂直方向で成長するかを確認するために高分解透過電子顕微鏡によって得られた断面画像を分析する方法を示す。第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層上に堆積された結晶CoFe層が図10Bに示されるように(001)面垂直方向で成長する場合、図10Aにおいて、MgOトンネル障壁と第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層とによって挟まれた第1の強磁性PGGPシード層141の結晶CoFe層の原子間間隔(d)はd110であるが、第1の強磁性PGGPシード層141のアモルファスCoFeB層上に堆積された結晶CoFe層が図10C示されるように(011)面垂直方向で成長される場合、原子間間隔(d)はd200である。体心立方構造のCoFeの(110)原子面の原子間間隔(d110)は2.02Åであり、d200は1.41Åである。図11に関して、強磁性PGGP層141、161の結晶CoFe層の全体的な結晶性が確認される。強磁性PGGPシード層141、161の結晶CoFe層の原子間間隔は、長さ基準のために基準としてCu層の2.08Åのd111を使用して測定される(ここでは図示せず)。この基準を使用して、PGGPシード層141、161の結晶CoFe層の原子間間隔は6つの原子面を平均することによって測定されたが、それによれば原子間間隔は2.02Åである。したがって、強磁性PGGPシード層141、161のアモルファスCoFeB層上の結晶CoFe層は(001)面垂直方向で成長することを確認することができる。さらに、強磁性PGGP層141、161のアモルファスCoFeB層および結晶CoFe層の明瞭な境界を確認することができる。
【0053】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、第1の強磁性PGGP層141のアモルファス層および/または第2の強磁性PGGP層161のアモルファス層の結晶化、および前記アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁151の好適結晶粒成長である。この結晶化および好適結晶粒成長は、第1の強磁性PGGP層141の結晶CoFe層および/または強磁性PGGP層161の結晶CaFe層を使用して、アニーリング中に隣接結晶化または好適結晶粒成長として、このようにして最終的に強磁性PGGP層の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0054】
図12Aおよび図12Bを参照すると、2層化アモルファス層(CoFeB)/結晶(CoFe)強磁性PGGPシード層の微細構造は、体心立方構造で(001)面垂直方向組織の単層構造の完全結晶CoFe PGGPシード層を形成することが明らかである。高分解透過電子顕微鏡によって得られた断面画像(図10Aから10C)を分析する同じ論拠が、アニーリング後の単層構造CoFe PGGPシード層が(001)面垂直方向の結晶であるかまたは(011)面垂直方向の結晶であるかを確認するために適用される。図12Aに関して、強磁性PGGPシード層151の単層構造は、結晶CoFe層およびアモルファスCoFeB層を組み合わせることによって形成されることが確認される。単層構造強磁性PGGPシード層のこの形成は、好適結晶粒成長促進シード層としての結晶CoFeに基づいたアモルファスCoFeB層の結晶化によって説明される。図11で使用された同じ長さ基準を使用して、アニーリング後の単層構造強磁性PGGPシード層の原子間間隔が図12Bの枠で囲まれた領域から7つの原子面を平均することによって測定されたが、それによれば原子間間隔は2.0Åである。さらに、MgOトンネル障壁の原子間間隔が測定され、長さ基準に基づいて2.13Åであった。アニーリング後の単層構造強磁性PGGPシード層およびMgOトンネル障壁からのそれらの原子間間隔により、MgOトンネル障壁および強磁性PGGPシード層が両方とも(001)面垂直方向組織をもつ完全結晶であることが確認される。さらに、Gatan Digital micrographを使用する高速フーリエ変換による図12Aの枠で囲まれた領域からの図12Bに示された選択領域の回折パターンにより、単層CoFe強磁性PGGPシード層の[001]結晶軸がMgOトンネル障壁の[011]結晶軸と平行であるので、MgOトンネル障壁と強磁性PGGPシード層との間の45°回転エピタキシの結晶粒間擬エピタキシが確認される。アンダーラインで示された回折パターンは単層構造CoFe強磁性PGGPシード層からのものであり、アンダーラインのない回折パターンはMgOトンネル障壁からのものである。CoFe/Mg0/CoFeベースの磁気トンネル接合のこの結晶粒間擬エピタキシは、ChoiらによってJ.Appl.Phys.101、013907(2007)に説明されているように巨大TMRを得るための決定的な必要条件である。
【0055】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJは、MR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0056】
第3の実施形態
第3の実施形態のスタックの構成を示す図8Cを参照すると、第3の実施形態の重要な態様の1つは、垂直異方性をもつ多層(2層の多数の繰り返し)強磁性ピンおよび自由層132、172の使用である。さらに、第3の実施形態の重要な態様の別のものは、MgOトンネル障壁152の下にあるかまたはそれを挟んでいる2層化強磁性PGGPシード層の挿入である。
【0057】
垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層132、172は、化学的秩序の有無にかかわらず磁性金属層/非磁性金属層(M/NM)の繰り返しにより多層化することができ、ここで、M=Co、Fe、CoFeまたはCoPt、およびNM=Pt、Pd、AgまたはAuである。また、垂直異方性をもつ強磁性自由層172は強磁性ピン層132よりも低い保磁力を有する。それは、強磁性ピン層132と異なる材料および/または元素比で製作することができる。
【0058】
例えば、図8Cの第3の実施形態は、下層120/Co/Pt132/CoFeB(1.5)/CoFe(1.5)/Mg(0.43)/酸素界面活性物質層30ラングミュア/Mg(0.67)/R−Ox x秒/Mg(0.3)/CoFe(1.5)/CoFeB(1.5)/Co/Pt172/キャップ層180とすることができ、ここで、括弧でくくった数はナノメートル尺度の厚さである。この例は、界面活性物質層の使用およびその後のラジカル酸化法によってMTJデバイスのトンネル障壁を形成する方法である。また、MTJのコア要素は、上述の群1、2、3、4および5の(a+d+j+m+n)の組合せによって形成される。
【0059】
MgOトンネル障壁152を形成する方法は、
強磁性PGGPシード層141の結晶層上への0.43nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
0.43nmの金属Mg層を酸素雰囲気に曝露することによる真空チャンバ内での酸素界面活性物質層の形成であって、その曝露が曝露時間およびチャンバを通る酸素流量によって30ラングミュアとなるように制御される形成と、
【0060】
酸素界面活性物質層上への0.67nmの厚さをもつ第2の金属Mg層の堆積と、
酸化チャンバ内で行われるラジカル酸化による第1および第2の金属層の酸化であって、酸化チャンバ内には電気的に接地された「シャワー・プレート」が上部イオン化電極と基板との間に配置される酸化とである。酸素プラズマは、700sccmの酸素流量で、イオン化電極に300Wのrf電力を印加することによって生成される。酸素ラジカル・シャワーはシャワー・プレートを通って流れるが、イオン化種および電子などの電荷をもつパーティクルはシャワー・プレートの電気接地のために通過することができず、
【0061】
ラジカル酸化によって酸化された第1および第2の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップが堆積される。
【0062】
図8Cを参照すると、Co(70原子%)Fe(30原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層161の結晶層が金属Mgキャップ層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、Co(60原子%)Fe(20原子%)B(20原子%)からなる第2の強磁性PGGPシード層のアモルファス層が結晶層上に1.5nmの厚さで堆積される。次に、垂直異方性をもつ強磁性自由層172が第2の強磁性PGGPシード層161のアモルファス層上に堆積される。
【0063】
堆積後磁界アニーリングが行われる。堆積後アニーリングの目的は、強磁性PGGPシード層141、161のアモルファス層の結晶化と、前記アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質のMgOトンネル障壁152の好適結晶粒成長とである。この結晶化および好適結晶粒成長は、強磁性PGGPシード層141、161の結晶CoFe層を使用して、アニール中に隣接結晶化または好適結晶粒成長シード層として、このようにして最終的に強磁性PGGPシード層141、161、MgOトンネル障壁152の全体的な(001)面垂直方向組織として実現される。
【0064】
本発明の方法によって作製されたMTJの磁気輸送特性は、両方共に結晶CoFe PGGPシード層が使用されていないrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJおよび同じ酸化法によって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJと比較することができる。同じ酸化法によって作製されたMgOを備えているが結晶PGGPシード層の挿入がないMTJから得られたMR比およびR×A積を参照すると、結晶PGGP層を使用するMTJは、MR比の顕著な増加がR×A積の著しい減少とともに得られ、それはrfスパッタリングによって作製されたMgOトンネル障壁を備えたMTJからのものと同等かまたはさらにより良好であるという非常に改善された磁気輸送特性を示すことが期待され得る。
【0065】
再び、MTJの磁気輸送特性ならびに結晶性および擬エピタキシに関連する前の研究に基づいて、アモルファスまたは不完全な(001)面垂直方向組織をもつ微晶質であるMgOトンネル障壁に隣接して強磁性PGGPシード層を挿入すると、堆積後アニーリング中にMgOトンネル障壁の結晶化および好適結晶粒成長が誘起されることが直観的に推測され得る。
【0066】
MgOトンネル障壁を形成する他の方法として反応性スパッタリングを使用することができる。例えば、それは、
強磁性PGGPシード層上への0.6nmの厚さをもつ第1の金属Mg層の堆積と、
40sccmの流量でアルゴンをおよび4sccmの流量で酸素を流すことによるアルゴンおよび酸素の混合ガス中でのMgの反応性スパッタリングによる第1の金属Mg層上への0.6nmの厚さをもつMgO層の形成と、
【0067】
酸化チャンバ内で行われる自然酸化による第1の金属層およびMgO層の酸化とである。有利には、薄く形成された金属Mg層およびMgO層に適用される自然酸化処理は、約6.5×10−1Paの圧力の酸素ガスで酸化チャンバを浄化することと、700sccmの流量で酸素を流すことと、次に、堆積直後の金属Mg層およびMgO層を所与の曝露時間の間酸素ガス流に接触したままにすることと、自然酸化によって酸化されたMgO層および第1の金属Mg層上に0.3nmの厚さをもつ金属Mgキャップ層を堆積することとを必要とする。
【0068】
別の実施形態では、2層化強磁性PGGPシード層の結晶層としてCoFeB(B<10原子%)を使用することができる。5.1原子%および2.9原子%のホウ素含有量をもつCoFeBの微細構造は堆積直後の状態で結晶であるが、20原子%のホウ素含有量をもつCoFeBの微細構造はアモルファスであり、それは、熱酸化Siウェハ上に堆積されたCoFeB単層からのXRDシータ−2・シータ・スキャンによって確認されることが明らかである。強度はCoFeB単一膜の厚さによって正規化される。Sherrerの式を使用して計算された結晶粒サイズは、CoFeB(B:2.9原子%)の結晶粒サイズがCoFeB(B:5.1原子%)よりも大きいことを示しており、それは抵抗率の著しい減少によって再確認することができる。CoFeBの抵抗率は、ホウ素含有量に対応して結晶性とともに顕著に変化する。さらに、CoFeB(B:2.9原子%)の45.35°からCoFeB(B:5.1原子%)の45.02°へのXRDピークのシフトは、体心立方構造の格子間位置にホウ素を含有することによるCoFeの格子拡大を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性層の垂直磁化を用いた磁気トンネル接合デバイスの製造方法であって、
垂直異方性をもつ強磁性ピン層を形成することと、
MgおよびOを含むトンネル障壁を酸化法によって形成することと、
前記強磁性ピン層よりも低い保磁力を有する垂直異方性をもつ強磁性自由層を形成することと、
前記トンネル障壁のうちの少なくとも一方の表面に接触する強磁性好適結晶粒成長促進シード層を形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記強磁性ピンおよび自由層はアモルファス希土類/遷移金属合金(RExTM1−x)とすることができ、ここで、RE=Y、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、およびLu、ならびにTM=Co、Fe、およびCoFe合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強磁性ピンおよび自由層はアモルファス希土類/遷移金属/耐食性元素合金(RExTM1−x)yCR1−yとすることができ、ここで、CR=Crである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層はbcc構造の結晶層とすることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層は0.5nm≦t≦2nmの厚さ(t)で堆積することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記強磁性ピンおよび自由層は、化学的秩序をもつ結晶遷移金属/耐熱性金属合金(TMxRM1−x)とすることができ、ここで、TM=CoまたはFe、およびRM=PtまたはPdである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層は2層化アモルファス層/結晶層とすることができ、ここで、前記bcc構造の結晶層がトンネル障壁と接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2層化PGGPのスタック順序が自由層側およびピン層側において異なり、2層化PGGP中の前記アモルファス層が2層化PGGP中の前記結晶層と前記結晶自由およびピン層とを分離する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層中のbcc構造の結晶層およびアモルファス層が、それぞれCoxFe1−x(0≦x≦0.9)または(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦x<1)およびCoFeB(B>10原子%)である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層中の前記bcc構造の結晶層の厚さ(t1)および前記アモルファス層の厚さ(t2)は、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層において、化学的秩序をもつ磁性金属層/非磁性金属層(M/NM)の繰り返しにより多層化することができ、ここで、M=Co、Fe、CoFeまたはCoPt、およびNM=Pt、Pd、AgまたはAuである、垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層。
【請求項12】
請求項11に記載の垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層を伴う請求項1に記載の第1の強磁性好適結晶粒成長促進シード層において、2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層とすることができ、ここで、2層化PGGP中のアモルファス層が強磁性ピンおよび自由層と2層化PGGP中の前記bcc構造の結晶層とを分離する、第1の強磁性好適結晶粒成長促進シード層。
【請求項13】
請求項12に記載の第1および第2の強磁性好適結晶粒成長促進シード層におけるbcc構造の結晶層およびアモルファス層において、それぞれCoxFe1−x(0≦x≦0.9)または(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦x<1)およびCoFeB(B>10原子%)である、bcc構造の結晶層およびアモルファス層。
【請求項14】
請求項12および13に記載の第1および第2の強磁性好適結晶粒成長促進シード層におけるbcc構造の結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)において、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる、bcc構造の結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)。
【請求項1】
強磁性層の垂直磁化を用いた磁気トンネル接合デバイスの製造方法であって、
垂直異方性をもつ強磁性ピン層を形成することと、
MgおよびOを含むトンネル障壁を酸化法によって形成することと、
前記強磁性ピン層よりも低い保磁力を有する垂直異方性をもつ強磁性自由層を形成することと、
前記トンネル障壁のうちの少なくとも一方の表面に接触する強磁性好適結晶粒成長促進シード層を形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記強磁性ピンおよび自由層はアモルファス希土類/遷移金属合金(RExTM1−x)とすることができ、ここで、RE=Y、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、およびLu、ならびにTM=Co、Fe、およびCoFe合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強磁性ピンおよび自由層はアモルファス希土類/遷移金属/耐食性元素合金(RExTM1−x)yCR1−yとすることができ、ここで、CR=Crである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層はbcc構造の結晶層とすることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層は0.5nm≦t≦2nmの厚さ(t)で堆積することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記強磁性ピンおよび自由層は、化学的秩序をもつ結晶遷移金属/耐熱性金属合金(TMxRM1−x)とすることができ、ここで、TM=CoまたはFe、およびRM=PtまたはPdである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層は2層化アモルファス層/結晶層とすることができ、ここで、前記bcc構造の結晶層がトンネル障壁と接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2層化PGGPのスタック順序が自由層側およびピン層側において異なり、2層化PGGP中の前記アモルファス層が2層化PGGP中の前記結晶層と前記結晶自由およびピン層とを分離する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層中のbcc構造の結晶層およびアモルファス層が、それぞれCoxFe1−x(0≦x≦0.9)または(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦x<1)およびCoFeB(B>10原子%)である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記強磁性好適結晶粒成長促進シード層中の前記bcc構造の結晶層の厚さ(t1)および前記アモルファス層の厚さ(t2)は、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層において、化学的秩序をもつ磁性金属層/非磁性金属層(M/NM)の繰り返しにより多層化することができ、ここで、M=Co、Fe、CoFeまたはCoPt、およびNM=Pt、Pd、AgまたはAuである、垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層。
【請求項12】
請求項11に記載の垂直異方性をもつ強磁性ピンおよび自由層を伴う請求項1に記載の第1の強磁性好適結晶粒成長促進シード層において、2層化アモルファス層/bcc構造の結晶層とすることができ、ここで、2層化PGGP中のアモルファス層が強磁性ピンおよび自由層と2層化PGGP中の前記bcc構造の結晶層とを分離する、第1の強磁性好適結晶粒成長促進シード層。
【請求項13】
請求項12に記載の第1および第2の強磁性好適結晶粒成長促進シード層におけるbcc構造の結晶層およびアモルファス層において、それぞれCoxFe1−x(0≦x≦0.9)または(CoxFe1−x)yB1−y(0≦x≦0.9および0.9≦x<1)およびCoFeB(B>10原子%)である、bcc構造の結晶層およびアモルファス層。
【請求項14】
請求項12および13に記載の第1および第2の強磁性好適結晶粒成長促進シード層におけるbcc構造の結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)において、0.5nm≦t1≦1.5nmおよび0.5nm≦t2≦1.5nmとすることができる、bcc構造の結晶層の厚さ(t1)およびアモルファス層の厚さ(t2)。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図4A】
【図4B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図4A】
【図4B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2011−138954(P2011−138954A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−298457(P2009−298457)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298457(P2009−298457)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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