説明

感光性樹脂組成物、それを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材

【課題】湿度による硬化阻害がない優れた硬化性を有し、その硬化物が強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する、感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される、化合物(a)を含む、感光性樹脂組成物。


(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは2〜5の整数を表し、nは0〜20の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等のエネルギー線を用いた光硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法である。現在の光硬化システムの主流は、(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化材料である。しかし、ラジカル硬化材料は、酸素による硬化阻害を受けやすく、また、硬化収縮が大きいため基材への密着性が低いという課題を有する。
【0003】
そこで、近年、これらの課題を解決するため、カチオン硬化材料に注目が集まっている。カチオン硬化材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、微小液滴及び薄膜硬化性に優れること、(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な密着性を有すること、(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むことから(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能であること等、ラジカル硬化材料に比べ優れた特長を有する。そのため、カチオン硬化材料を、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等へ応用することが検討されている(非特許文献1参照)。
【0004】
光カチオン硬化材料では主としてエポキシ化合物が用いられる。中でも比較的反応性に富む脂環式エポキシ化合物が多用される(特許文献1参照)。その他にも、エポキシ化合物を用いた光カチオン硬化材料について種々の試みがなされている。例えば、脂環式エポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用することにより、エポキシ化合物の反応性を高める試みが数多くなされている(特許文献2〜4参照)。また、湿度の影響を低減する目的でエポキシ化合物にオキセタン化合物を併用する試みがなされている(特許文献5参照)。さらに、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物を全て併用する試みもなされている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3794576号明細書
【特許文献2】特開平6−298911号公報
【特許文献3】特開平9−328634号公報
【特許文献4】特許第4235698号公報
【特許文献5】特許第4158460号公報
【特許文献6】特表2008−521962号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】角岡正弘、他著「カチオン硬化技術の工業展開」MATERIAL STAGE、技術情報協会、2002年5月10日、第2巻、第2号、p.39−p.92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的なカチオン硬化材料は、空気中の水分による反応阻害が起こりやすい。そのため、硬化時における雰囲気の湿度の影響を受けやすく、安定的な硬化性を得ることが困難である。光カチオン硬化材料としてエポキシ化合物を用いる場合、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化材料に比べて優れた表面硬化性を有するが、内部の反応性が不十分であり、十分な機械特性が得られないという問題がある。
【0008】
特許文献1に開示された技術では、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化材料に比べて優れた表面硬化性を有するが、内部の反応性が不十分であり、十分な機械特性が得られないという問題がある。
【0009】
特許文献2〜4に開示された技術では、ビニルエーテルの配合により水分による反応阻害を受けやすくなるため、高湿度下で硬化物の硬度が低下してしまい、十分な表面硬化性を得ることができないという問題がある。
【0010】
特許文献5に開示された技術では、オキセタン化合物はエポキシ化合物と共重合しないため、エポキシ化合物の反応性を向上する効果が得られない。その結果、十分な機械特性を有する硬化物を得ることはできず、さらに未反応成分が多量に残留してしまうため用途も限定されるという問題がある。
【0011】
特許文献6に開示された技術では、ビニルエーテル化合物はオキセタン化合物と共重合しないため、柔軟性の低いオキセタン化合物の単独重合体が副生してしまう。その結果、硬化物の柔軟性が低下してしまい、クラックが入りやすくなってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、湿度による硬化阻害のない優れた硬化性を有し、その硬化物が強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基を有する化合物を含む感光性樹脂組成物がその目的を達成することを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される、化合物(a)を含む、感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは2〜5の整数を表し、nは0〜20の整数を表す。)
[2]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)と、
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)と、をさらに含む[1]の感光性樹脂組成物。
[3]
3〜5個のフェノール性芳香環を含み、
前記フェノール性芳香環のフェノール性水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、又はシクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、
前記フェノール性水酸基の少なくとも1個のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(d)を、さらに含む[1]又は[2]の感光性樹脂組成物。
[4]
前記(a)成分5〜70質量%と、
前記(b)成分25〜90質量%と、
前記(c)成分0.1〜10質量%と、
を含む、[2]又は[3]の感光性樹脂組成物。
[5]
前記(d)成分0.1〜40質量%を、さらに含む、[3]又は[4]の感光性樹脂組成物。
[6]
前記(d)成分が、下記式(2)で表される多核フェノール化合物(e)と、下記式(3)で表される多核フェノール化合物(f)と、をさらに含み、かつ、
前記(e)成分及び前記(f)成分の合計に対する前記(e)成分の割合(e/(e+f))が40質量%以上である、[3]〜[5]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRは、互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【化3】

(式中、R、R及びRは、式(2)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。)
[7]
前記(d)成分が、下記式(4)で表される多核フェノール化合物(g)と、
下記式(5)で表される多核フェノール化合物(h)と、をさらに含み、かつ、
前記(g)成分及び前記(h)成分の合計に対する前記(g)成分の割合(g/(g+h))が40質量%以上である、[3]〜[5]のいずれか一つの感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
【化5】

(式中、nは0又は4以上の整数を示す)
[8]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物と、着色剤と、を含む、感光性インクジェットインク。
[9]
[1]〜[7]のいずれか一つの記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性接着剤。
[10]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物を含む、感光性コーティング剤。
[11]
[1]〜[7]のいずれか一つの感光性樹脂組成物を含む、半導体封止材。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、湿度による硬化阻害のない優れた硬化性を有し、その硬化物が強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する、感光性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される、1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)を含むものである。
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは2〜5の整数を表し、nは0〜20の整数を表す。)
【0021】
本実施形態の感光性樹脂組成物が化合物(a)を含むことで、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物と、オキセタン化合物を共重合させることが可能となり、オキセタン化合物の単独重合体の副生を抑制することができる。その結果、湿度による硬化阻害がない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)を有し、強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する硬化物とすることができる。硬化物の強靭性と柔軟性が優れることで、硬化物の屈曲性等についても優れたものにすることができる。
【0022】
化合物(a)について説明する。
式(1)で表される化合物のうちnが1〜20であるものは、例えば、式(6)で表される化合物と、式(7)で表される化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させることにより得ることができる。また、式(1)中、nが0である化合物は、アセチレンと式(7)で表される化合物とを反応させることにより得ることができ、このときの反応は、加圧下又は常圧下で行うことができる。
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、mは2〜5の整数を表し、nは1〜20の整数を表し、Xはハロゲン原子、トシル基、ベンゼンスルホニル基、又はメタンスルホニル基を表す。)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、Rはメチル基、又はエチル基を表す。)
【0027】
式(6)で表される化合物の具体例としては、2−クロロエチルビニルエーテル、4−クロロブチルビニルエーテル、2−ブロモエチルビニルエーテル、4−ブロモブチルビニルエーテル、2−ビニロキシエチルトシレート、4−ビニロキシブチルトシレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
式(7)で表される化合物の具体例としては、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが挙げられる。これらの化合物は、Pattison[J. Am. Chem. Soc., 79 (1957) 3455-3456]の方法により、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等から合成することができる。
【0029】
上記方法における式(7)で表される化合物の使用量は、式(6)で表される化合物1モルに対して通常0.1モル以上、好ましくは0.2〜2.0モルである。
【0030】
式(6)で表される化合物と式(7)で表される化合物との反応温度は、通常20〜120℃、好ましくは60〜90℃であり、反応時間は通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0031】
式(6)で表される化合物と式(7)で表される化合物との反応は、塩基性化合物の存在下、不活性溶媒中で行うことができる。不活性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリドンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、トリオキサン、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0032】
不活性溶媒の使用量は、式(6)で表される化合物0.1モルに対して、通常0〜500mL、好ましくは50〜300mLである。また、低沸点物を反応系外に除去しながら反応を進行させることもできる。
【0033】
塩基性化合物の具体例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、金属ナトリウム、金属カリウムなどのアルカリ金属、ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラートが挙げられる。その使用量は、式(6)で表される化合物1.0モル当量に対して通常1.0モル以上、好ましくは1.2〜10モルである。
【0034】
上記反応の終了後、反応混合液を室温まで冷却した後、水と、ジエチルエーテルやヘキサンなどで抽出を行う。次いで、有機層に無水硫酸ナトリウム、合成ゼオライトなどの乾燥剤を加えて乾燥させる。このときに、活性炭などの脱色剤を加えてもよい。この後、反応混合液を濾過し、減圧蒸留等により目的物(式(1)で表される化合物(a))を得ることができる。
【0035】
式(1)のnが1〜20の整数で表される化合物は、別法として、例えば、式(8)で表される化合物と、式(9)で表される化合物を、塩基性化合物の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0036】
【化9】

(式中、mは2〜5の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、Rはメチル基、又はエチル基を表し、Xはハロゲン原子、トシル基、ベンゼンスルホニル基、又はメタンスルホニル基を表す。)
【0039】
式(8)で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
式(9)で表される化合物の具体例としては、3−メチル−3−クロロメチルオキセタン、3−エチル−3−クロロメチルオキセタン、3−エチル−3−ブロモメチルオキセタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
式(9)で表される化合物の使用量は、式(8)で表される化合物1モルに対して通常0.1モル以上、好ましくは、0.2〜2.0モルである。
【0042】
式(8)で表される化合物と式(9)で表される化合物との反応の温度は、通常0〜100℃、好ましくは40〜70℃である。反応時間は、通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0043】
式(8)で表される化合物と式(9)で表される化合物との反応は、式(6)で表される化合物と式(7)で表される化合物との反応に準じて行うことができる。反応は、上記した塩基性化合物の存在下、上記した不活性溶媒中で行ってもよい。塩基性化合物の使用量は、式(9)で表される化合物1.0モル当量に対して通常1.0モル以上、好ましくは1.2〜10モルである。
【0044】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらにエポキシ化合物(b)を含むことが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物が含む化合物(a)は、エポキシ化合物(b)と重合することができるため、エポキシ化合物としての反応性をより向上できる。さらに、化合物(a)とエポキシ化合物(b)の未反応成分として残留する不純物も発生しない。これにより、優れた強靭性と柔軟性を有する硬化物を得ることができる。
【0045】
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0046】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0047】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0048】
2官能脂環式エポキシ化合物としては、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」(商品名、ダイセル化学工業社製)、「UVR−6110」、「UVR−6105」、「UVR−6128」、「ERLX−4360」(商品名、ダウ・ケミカル日本社製)等を用いることができる。
【0049】
3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としては「エポリードGT300」、「エポリードGT400」(商品名、ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
【0050】
これらのうち、カチオン重合反応性に優れるため、脂環式エポキシ化合物が好ましい。これらエポキシ基を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、3〜5個のフェノール性芳香環を含み、このフェノール性芳香環の水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、シクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、前記フェノール性芳香環の水酸基の少なくとも1個のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(d)を、さらに含むことが好ましい。
【0052】
本実施形態の感光性樹脂組成物が含む化合物(a)は、多核フェノール化合物(d)と重合することができるため、多核フェノール化合物(d)の反応性をより向上できるだけでなく、強靭性と柔軟性に優れた硬化物を得ることができる。その結果、レゾール型フェノール樹脂等を用いた場合に通常起こりうる、硬化物の硬度が時間の経過に伴い徐々に低下する、などの問題も起こらない。
【0053】
多核フェノール化合物(d)の全てのフェノール性水酸基のオルト位の全てが、メチロール基を有さない。すなわち、多核フェノール化合物(d)には、一般にレゾール樹脂と呼ばれる、分子中にメチロール基を有するものはこれには含まれない。メチロール基はエポキシ基との反応性は有するが、反応により形成された結合は酸性条件下で不安定であり、硬化後に得られる膜硬度が経時で低下するからである。
【0054】
さらに、多核フェノール化合物(d)の全てのフェノール性水酸基のオルト位の全てが、炭素数4以上のアルキル基及びシクロアルキル基を有しない。すなわち、特に嵩高いt−ブチル基等を有するヒンダードフェノール等のような、一般にラジカル禁止剤や酸化防止剤と呼ばれるフェノール化合物はこれには含まれない。多核フェノール化合物(d)は、そのフェノール性水酸基が直接光硬化反応に関与するため、反応の阻害因子となる嵩高い置換基がフェノール性水酸基のオルト位に置換したものは好ましくないからである。
【0055】
さらに、多核フェノール化合物(d)は、フェノール性芳香環が3〜5個からなり、かつ、その分子中に、そのフェノール性水酸基の少なくとも一方のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、少なくとも2つ以上有する。1〜2個のフェノール性芳香環では、光硬化反応において、効率的に架橋構造を形成することができず、また、6個以上の場合、架橋反応に関与しないフェノール性水酸基が発生し硬化性及び硬化物の機械特性に悪影響を及ぼすからである。
【0056】
このような多核フェノール化合物としては、例えば、下記式(10)〜(14)及び(18)で表される種々の多核フェノール化合物、下記式(2)、(4)で表される種々の多核フェノール化合物、及び低分子量の鎖状ポリブタジエンとフェノールとのFriedel−Crafts反応付加物である3〜5個のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物等が挙げられる。ここで、低分子量とは、重量平均分子量で1000以下のものをいう。重量平均分子量は、移動相としてテトラヒドロフランを用い、標準物質としてポリスチレンを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R、R10及びR11は、炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、各々のベンゼン環におけるp個のR、R10及びR11は互いに同一でも異なっていてもよい。p、p10及びp11は、0〜4の整数を表し、互いに同一でも異なってもよく、q、q10及びq11は、1〜3の整数を表し、互いに同一でも異なってもよい。対応するpとqにおいて、p+q≦5である。ここで、R、R10及びR11のいずれかの炭素数が4又は5の場合、当該R、R10又はR11はベンゼン環上の水酸基に対しオルト位に位置することはない。)
【0059】
【化12】

【0060】
(式中、R、R10、R11、p、p10、p11、q、q10及びq11の定義は、式(10)と同じである。)
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、R、R10、R11、p、p10、p11、q、q10及びq11の定義は、式(10)と同じである。)
【0063】
【化14】

【0064】
(式中、R12、R13、R14及びR15は、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、各々のベンゼン環におけるp個のR12及びR13は互いに同一でも異なっていてもよい。p12及びp13は、0〜4の整数を表し、互いに同一でも異なってもよく、q12及びq13は、1〜3の整数を表し、互いに同一でも異なってもよい。ここで、対応するpとqにおいて、p+q≦5である。)
【0065】
【化15】

【0066】
(式中、Bは下記式(15)、(16)、又は(17)で表される基を表し、R16、R17、R18及びR19の定義は式(10)のR、R10、及びR11と同じであり、p16、p17、p18及びp19の定義は式(10)のp、p10、及びp11と同じである。)
【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
(式中、R20、R21、及びR22の定義は式(10)のR、R10、及びR11と同じであり、p20及びp21の定義は式(10)のp、p10、及びp11と同じであり、q20及びq21の定義は式(10)のq、q10、及びq11と同じであり、xは、1〜3の整数を表す。)
【0072】
【化20】

【0073】
(式中、R、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRは、互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【0074】
【化21】

【0075】
(式中、nは1〜3の整数を表す。)
【0076】
これらのうち、上記式(2)で表される多核フェノール化合物(e)と、上記式(4)で表される付加化合物に相当する多核フェノール化合物(g)が好ましい。多核フェノール化合物(e)は、化合物(a)とエポキシ化合物(b)とを相溶化することができ、かつ反応性に優れるため好ましい。多核フェノール化合物(g)は、吸水性が低く耐水性に優れた硬化物が得られるため好ましい。
【0077】
多核フェノール化合物(e)において、mは1〜3の整数が好ましく、より好ましくは1である。また、mが1〜3の整数の場合、置換基Rはベンゼン環の水酸基に対しパラ位に結合したものが好ましい。ここでRは、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が好ましい。
【0078】
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。
【0079】
炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α´−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0080】
炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
【0081】
多核フェノール化合物(e)及び(f)は、例えば、Rで表される置換基を有するフェノール(R置換フェノール)又はフェノールをアルデヒド類と縮合反応させることにより、n(式(2)のn、式(3)のn)が0以上の整数で表される縮合体として得ることができる。ここで、Rとは、上記したR、R及びRのいずれかで表される置換基である。R置換フェノールは、1置換に限定されず、2以上の置換基を有するものであってもよい。
【0082】
上記縮合反応は、公知の方法によって行うことができる。例えば、塩酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下で、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン等のアルデヒド類と、上記R置換フェノール又はフェノールを、0〜150℃で、数時間から数十時間反応させる方法が挙げられる。このとき反応条件にもよるが、R置換フェノール又はフェノールと、アルデヒド類と、の混合割合を制御することにより、副生成物として生成する下記式(3)で表される多核フェノール化合物(f)の生成量を制御することができる。
【0083】
【化22】

【0084】
(式中、R、R及びRは、式(2)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。)
【0085】
例えば、R置換フェノールがアルデヒド類より多すぎると、フェノール2核体の含有量が増加し、逆に少なすぎると6個以上のフェノール性芳香環からなる多核フェノール化合物(f)の含有量が増加する。得られた縮合体中の、多核フェノール化合物(e)成分の含有量が少なすぎる場合、蒸留又は再沈等の方法により未反応原料及び多核フェノール化合物(f)を除去することができる。
【0086】
本実施形態においては、その多核フェノール化合物(e)及び(f)の合計に対する多核フェノール化合物(e)の割合(e/(e+f))は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0087】
多核フェノール化合物(e)の上記含有率(e/(e+f))が40質量%以上であることが好ましい理由を、多核フェノール化合物(f)の構造に基づき説明する。
式(3)においてnが0の場合、感光性樹脂組成物の反応性の低下を抑制できるため、多核フェノール化合物(e)の含有率(e/(e+f))が40質量%以上であることが好ましい。式(3)においてnが4以上の場合、光硬化反応終了後における、未反応のフェノール性水酸基の残存を低減し、硬化物の耐水性を向上できることや、光の照射による黄変を抑制できることから、多核フェノール化合物(e)の含有率(e/(e+f))が40質量%以上であることが好ましい。
【0088】
市販されているもののなかで多核フェノール化合物(e)として好ましいものとしては、例えば、新規分子量分布集約型ノボラック樹脂「PAPS」(商品名、旭有機材工業社製)が挙げられる。
【0089】
多核フェノール化合物(e)の合成に用いられるR置換フェノールの具体例としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、m−sec−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−(α−メチルベンジル)フェノール、m−(α−メチルベンジル)フェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−クロロフェノール、m−クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0090】
多核フェノール化合物(g)及び(h)は、ジシクロペンタジエンとフェノールを、BFなどの酸触媒の存在下で、Friedel−Crafts反応を行うことにより得ることができる。この場合、使用するジシクロペンタジエンとフェノールの混合割合を決定することにより、副生成物として生成する下記式(5)で表される種々の多核フェノール化合物(h)の生成量を制御することができる。
【0091】
【化23】

【0092】
(式中、nは0又は4以上の整数を表す。)
【0093】
本実施形態においては、多核フェノール化合物(g)及び(h)の合計に対する多核フェノール化合物(g)の含有比率(g/(g+h))は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0094】
多核フェノール化合物(g)の上記含有率(g/(g+h))が40質量%以上であることが好ましい理由を、多核フェノール化合物(g)の構造に基づき説明する。
式(5)においてnが0の場合、感光性樹脂組成物の反応性の低下を抑制できるため、多核フェノール化合物(g)の含有率(g/(g+h))が40質量%以上であることが好ましい。
式(5)においてnが4以上の場合、光硬化反応終了後における、未反応のフェノール性水酸基の残存を低減し、硬化物の耐水性を向上できることや、光の照射による黄変を抑制できることから、多核フェノール化合物(g)の含有率(g/(g+h))が40質量%以上であることが好ましい。
【0095】
市販されているもののなかで多核フェノール化合物(g)として好ましいものとしては、例えば、日石特殊フェノール樹脂「DPP−6125」(商品名、新日本石油化学社製)が挙げられる。
【0096】
本実施形態で用いられる多核フェノール化合物(d)としては、上述した種々の多核フェノール化合物のうち1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記化合物(a)と、エポキシ樹脂(b)と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)と、を含むことが好ましい。
本実施形態におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。好ましいものとしては、照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩が挙げられる。
【0098】
このようなオニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF、PF、SbF、[BX(ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す。)等により構成されたオニウム塩が挙げられる。
【0099】
具体的には、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等が挙げられる。
【0100】
また、市販品として、「CD−1012」(商品名、SARTOMER社製)、「PCI−019」、「PCI−021」(商品名、日本化薬社製)、「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−170」(商品名、旭電化社製)、「UVI−6990」(商品名、ダウ・ケミカル社製)、「CPI−100P」、「CPI−100A」(商品名、サンアプロ社製)、「TEPBI−S」(商品名、日本触媒社製)、「RHODORSIL PHOTOINITIATOR2074」(商品名、Rhodia社製)等を用いることができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)は、上述したものを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
本実施形態では、ビニルエーテル化合物を併用することも可能である。その中でも水酸基含有ビニルエーテル化合物が好ましい。
【0102】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0103】
水酸基含有ビニルエーテル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0104】
さらに、本実施形態では、オキセタン化合物を併用することも可能である。このようなオキセタン化合物としては、例えば、1,4−ビス([(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が挙げられる。また、本実施形態では水酸基を有するオキセタン化合物を用いることもでき、下記式(19)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【化24】

【0106】
(式中、R20は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、又はチエニル基を表す。R21は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数1〜6のアルキレン基にエーテルが結合したオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等のオキシアルキレン基を表す。)
【0107】
これらのうち、R20としては、低級アルキル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。また、R21としては、メチレン基が好ましい。
【0108】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物には、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を発生させる、他の重合開始剤を、重合開始剤(c)と併用することもできる。他の重合開始剤の具体的な例としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0109】
この他、硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度にカチオン重合性を示す他の化合物を添加することができる。これらの化合物としては、例えば、希釈剤として、前記以外の低分子量のエポキシ化合物を用いることができる。また、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等を用いることができる。
【0110】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエネルギー線に対する硬化性を促進する(感度の向上)目的で、(メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類及びビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物及び光ラジカル開始剤等を添加してもよい。このうち特に、1分子中にビニル基とアクリレート基の双方を有するビニルアクリレート化合物は、低粘度で且つカチオン重合性もあるため、高い感度を維持しながら低粘度化が可能であることから、インクジェット用途に用いる場合に有効な希釈剤である。この他、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。このうち特に透湿性を低下させる場合、微粒子無機フィラー及びシランカップリング剤の添加が有効である。
【0111】
微粒子無機フィラーとしては、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーであり、具体的にはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、雲母等が挙げられる。
【0112】
微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの、及び表面処理したもの共に使用できる。表面処理した微粒子無機フィラーとしては、例えば、メトキシ化、トリメチルシリル化、オクチルシリル化、又はシリコーンオイルで表面処理したものが挙げられる。これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
シランカップリング剤としては、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基等の反応性基を有するアルコキシシラン化合物であり、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0114】
次に、本実施形態において用いられる感光性樹脂組成物中の各成分の組成割合について説明する。なお、以下に示される「部」は特に断りがない限り「質量部」である。
【0115】
本実施形態の感光性樹脂組成物における、1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)の含有量は、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。5質量%以上の含有量とすることにより、ビニルエーテル化合物によるエポキシ基の転化率向上効果に優れるため、未反応のエポキシ基の残留を低減できる。また、70質量%以下の含有量とすることにより、硬化物の硬度を高くすることができるため、十分な硬化物の機械特性を得ることができる。
【0116】
感光性樹脂組成物における、1分子中に少なくとも1個以上のエポキシ基を有する化合物(b)の含有量は、好ましくは25〜90質量%であり、より好ましくは50〜70質量%である。25質量%以上の含有量とすることにより、硬化物の硬度を高くすることができるため、十分な硬化物の機械特性を得ることができる。また、90質量%以下の含有量とすることにより、ビニルエーテル化合物の含有量が増加し、エポキシ基の転化率向上効果に優れるため、未反応のエポキシ基の残留を低減できる。
【0117】
感光性樹脂組成物における、多核フェノール化合物(d)の含有量は、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。0.1質量%以上の含有量とすることにより、反応性を高くすることができるため、未反応のエポキシ基の残留を低減できる。また、40質量%以下の含有量とすることにより、架橋構造が過多になることを抑制できるため、硬化物の柔軟性を良好なものにできる。
【0118】
感光性樹脂組成物における、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜8質量%である。0.1質量%以上の含有量とすることにより、エネルギー線照射により発生する活性カチオン物質が十分な量となり、十分な硬化性を得ることができる。また、10質量%以下の含有量とすることにより、高価な開始剤を過剰に使用しなくてもよいため経済的に好ましく、光線透過率が低下せず、膜底部の硬化も十分に行うことができるため好ましい。
【0119】
前記微粒子無機フィラーの含有量は、感光性樹脂組成物において、好ましくは0〜70質量%であり、より好ましくは0.1〜60質量%である。また、シランカップリング剤の含有量は、感光性樹脂組成物において、好ましくは0〜70質量%であり、より好ましくは0.1〜60質量%である。
【0120】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物に着色剤を添加することにより、感光性インクジェットインクとすることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物は、比較的低粘度化が容易であるという特徴も有しており、優れた光硬化性とあいまって、着色剤と混合することにより感光性のインクジェットインクとしても好適に用いることが可能である。
【0121】
本実施形態において用いられる着色剤としては、有機顔料、無機顔料の種々のものが使用可能である。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料;アニリンブラック、鉄黒、及びカーボンブラック等の黒色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー、及びパーマネントイエロー等の黄色顔料;クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料;酸化鉄、パーマネントブラウン、及びパラブラウン等の褐色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料;コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料;その他各種蛍光顔料、金属紛顔料、体質顔料等が挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物中における、これらの顔料の含有量は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。
【0122】
上記顔料には必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の活性剤;スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる2種以上の単量体からなるブロック共重合体又はランダム共重合体、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0123】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離機やフィルターを用いてもよい。
【0124】
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性等を考慮して選択するが、光沢向上、質感向上の観点からも粒径は適宜選択することが好ましい。
【0125】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む感光性コーティング剤とすることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物は、空気中において薄膜を高速に硬化することが出来ることから、非加熱で高速に硬化することが要求される樹脂フィルム、基板等へのコーティング材としても好適に使用される。このような例としては、フラットパネルディスプレイ(FPD)等に用いられる反射防止膜形成用コーティング材が挙げられ、基材上に塗布、硬化した後1.4以下の屈折率を持った被膜を形成させるために、本実施形態の感光性樹脂組成物に空隙を有した多孔質微粒子を含有させることにより得られる。
【0126】
このような多孔質微粒子としては、平均粒径が5nm〜1μmであるシリカ粒子が挙げられ、感光性樹脂組成物の透明性の観点から、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ粒子が好ましい。具体的な市販品としては、親水性又は表面を疎水化処理したフュームドシリカである「アエロジル」(商品名、日本アエロジル社製)や、シリカ粒子が直鎖状に連結したパールネックレス状シルカゾルである「スノーテックスPS」(商品名、日産化学社製)等が挙げられる。これらの多孔質微粒子は、感光性樹脂組成物100質量部に対し、多孔質微粒子の合計が10〜70質量部の範囲で添加して用いることが好ましく、ホモジナイザー等を用いて感光性樹脂組成物内に均一に分散させることが好ましい。
【0127】
このようにして得られる感光性コーティング剤を、透明な基材(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂基材や、ガラス等の無機材料)の表面上に、反射防止膜や傷防止膜等として厚さ10nm〜1μmの範囲で形成させることができる。基材上への塗布に当たっては、比較的薄膜を高い精度で形成する必要があることから、マイクログラビア法、ロールコート法、フローコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、スプレーコート法等が用いられる。
【0128】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、基材等に塗布して薄膜とし、この薄膜にエネルギー線照射や加熱を行うことで、短時間で硬化させることができる。感光性樹脂組成物の硬化は、エネルギー線照射と加熱を併用してもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤等を含まなくても十分に実用できるが、粘度調整のために溶剤等を用いて希釈してもよいし、多孔質微粒子等を含んだゾルの形態としてもよい。溶剤等を用いて希釈した場合、及び多孔質微粒子等を含んだゾルの形態で用いた場合には、事前に溶剤成分を揮散させるために、光照射前に、50〜150℃で数分程度の加熱を行ってもよい。また、露光後に同様に加熱をすることにより硬化をさらに促進させることもできる。またさらに、本実施形態の感光性樹脂組成物は光照射により硬化するため、感光性接着剤として用いることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物を含む感光性接着剤は、上記した形態等にして用いることができ、湿度による硬化阻害がなく優れた接着性を発揮できる。
【0129】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む半導体封止材とすることができる。本実施形態における半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子等の封止材として用いることができる。図1は、本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。OLEDディスプレイ素子Aは、基材1上に、正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4及び電子注入電極5を順次形成した後、本実施形態の半導体封止材6により封止し、その後基材7を張り合わせる方法で形成することができる。このような固体膜による全面封止は、基材1及び7としてフレキシブルな材質のものを用いる場合、特に有効な方法である。
【0130】
基材1上に、上記正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子注入電極5を順次積層した多層構造を形成する方法としては、公知の方法である抵抗加熱蒸着法、イオンビームスパッタ法、常圧で形成できるインクジェット法、印刷法等を用いることができる。次いで、本実施形態の半導体封止材を多層構造上に塗布する方法としては、半導体封止材を均一に塗布できる方法であれば特に制約はないが、例えば、スクリーン印刷やフレキソ印刷等の印刷法によるものや、ディスペンサーを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0131】
本実施形態の半導体封止材6に基材7を張り合わせた後、基材7側又は基材1側から光等のエネルギー線を照射することにより、半導体封止材6を硬化させることができる。エネルギー線としては、半導体封止材6を硬化させるものであればよく、光や放射線等が挙げられる。また、ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で半導体封止材6を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、紫外線や可視光線の波長の光を照射できるものを用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯、無電極放電ランプ等が挙げられる。このように本実施形態の半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子をはじめとする種々の半導体素子の封止に用いることができる。特に、本実施形態の半導体封止材は、硬化物とする際に常温で硬化物を作製できるため、従来の熱硬化性樹脂で見られる基材や素子の熱劣化や熱による変形を防ぐことができる。さらに、基材や素子に対する高い密着性を有するため、FPD等のような精密機器の半導体素子の封止に好ましく用いることができ、特にOLEDディスプレイ素子の封止により好ましく用いることができる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施形態の例を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
1.感光性樹脂組成物の作製
感光性樹脂組成物の作製は以下の方法で行った。
【0134】
[実施例1]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製;重量平均分子量890)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0135】
[実施例2]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0136】
[実施例3]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)30質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0137】
[実施例4]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)30質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)65質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0138】
[実施例5]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)5質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)90質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0139】
[実施例6]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3−エチル−3−[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)65質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)30質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0140】
[比較例1]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)65質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0141】
[比較例2]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0142】
[比較例3]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)65質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)30質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0143】
[比較例4]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、モノヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)30質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名:サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0144】
[比較例5]
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT−221」(商品名、東亜合成株式会社製)30質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
【0145】
2.評価方法
感光性樹脂組成物の光硬化性及び硬化物の機械特性の評価は以下の方法で行った。
<モノマーの転化率>
表面処理を行った2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cmとなるように上記フィルムを露光した。光照射の反応条件は温度:23℃、湿度:60%RHで行った。
感光性樹脂組成物における転化率は、FT−IR(「Nicolet6700」、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)により、エポキシ基、ビニル基、オキセタニル基の紫外線照射前後の各吸収を測定した。これらの官能基の減少率から平均の反応率を算出し、添加率とした。モノマー添加率60%以上を少なくとも実用に耐えうるレベルとして判断した。
◎:モノマー転化率90%以上
○:モノマー転化率75%以上、90%未満
△:モノマー転化率60%以上、75%未満
×:モノマー転化率60%未満
【0146】
<表面タック性>
ガラス基板上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cmとなるように上記ガラス基板を露光した。硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHで行った。
○:露光終了30秒後に被膜を指で触って評価した。べたつきがなく、指がくっつかない。
×:露光終了30秒後に被膜を指で触って評価した。べたつきがあり、指がくっつく。
【0147】
<屈曲性>
表面処理を行った2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cmとなるように上記フィルムを露光して、硬化物を得た。屈曲性は10mmφの円筒形マンドレルテスター「BD2000」(コーテック株式会社製)を用いて硬化物の180度折り曲げ試験を行い、目視にて判断した。
○:変化がなかったもの
×:クラック等のひび割れが生じたもの
【0148】
3.評価結果
各実施例及び各比較例で用いた化合物名の一覧を表1に示し、各実施例及び各比較例の評価結果を表2及び表3に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
表2及び表3で示すように、実施例1〜6の感光性樹脂組成物は、モノマー添加率、表面タック性試験、屈曲性試験のいずれにおいても優れていることが確認された。一方、比較例1〜5の感光性樹脂組成物は、モノマー添加率、表面タック性試験、屈曲性試験の少なくともいずれかが不良であることが確認された。以上より、本実施形態の感光性樹脂組成物は、エネルギー線の照射により大気中における硬化性(表面タック性とモノマー転化率)及び屈曲性が優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の感光性樹脂組成物は、エネルギー線の照射により大気中における硬化性(表面タック性とモノマー転化率)及び屈曲性に優れる硬化物とすることができることから、塗料、接着剤、インキ、フィルムコーティング、より具体的には、インクジェット用UVインク、液晶や有機EL等のディスプレイパネル用シール材、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、CD、DVD、さらには次世代光ディスクであるブルーレイディスク(Blu−ray(登録商標) Disc)の表面保護層形成材、反射防止膜形成用コーティング材、ハードコーティング材等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0154】
A OLEDディスプレイ素子
1、7 基材
2 正孔注入電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子注入電極
6 半導体封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、化合物(a)を含む、感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは2〜5の整数を表し、nは0〜20の整数を表す。)
【請求項2】
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)と、
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)と、をさらに含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
3〜5個のフェノール性芳香環を含み、
前記フェノール性芳香環のフェノール性水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、又はシクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、
前記フェノール性水酸基の少なくとも1個のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(d)を、さらに含む請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)成分5〜70質量%と、
前記(b)成分25〜90質量%と、
前記(c)成分0.1〜10質量%と、
を含む、請求項2又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(d)成分0.1〜40質量%を、さらに含む、請求項3又は4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(d)成分が、下記式(2)で表される多核フェノール化合物(e)と、下記式(3)で表される多核フェノール化合物(f)と、をさらに含み、かつ、
前記(e)成分及び前記(f)成分の合計に対する前記(e)成分の割合(e/(e+f))が40質量%以上である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRは、互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【化3】

(式中、R、R及びRは、式(2)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。)
【請求項7】
前記(d)成分が、下記式(4)で表される多核フェノール化合物(g)と、
下記式(5)で表される多核フェノール化合物(h)と、をさらに含み、かつ、
前記(g)成分及び前記(h)成分の合計に対する前記(g)成分の割合(g/(g+h))が40質量%以上である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
【化5】

(式中、nは0又は4以上の整数を示す)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物と、着色剤と、を含む、感光性インクジェットインク。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性接着剤。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性コーティング剤。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、半導体封止材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1422(P2011−1422A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144141(P2009−144141)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】