説明

成形型、電子写真装置用ブレードの製造方法及び現像剤量規制ブレード

【課題】長期間良好な剥離性と脱型性を示すエラストマー成形体製造用の成形型、ブレード部材の寸法精度と表面性を高精度化可能な電子写真装置用ブレードの製造方法および現像剤量規制ブレードを提供する。
【解決手段】金型本体の内周面に保持層と離型層を備えたエラストマー成形体製造用の成形型において、離型層が、主鎖がポリシラザン系又はポリシロキサン系である付加型2成分液状シリコーンから形成され、液状エラストマー原料の硬化温度で揮発する成分の含有量が0.5質量%以下で、シリカを含有せず、50〜85°の国際ゴム硬度で、平均粒径2〜20μmの固体潤滑剤を含有する。この成形型を用いる電子写真装置用ブレードの製造方法。ブレード部材がこの方法で製造され、現像剤担持体に当接する部分の負荷長さ率(切断レベル50%)が30〜90で十点平均粗さが2〜25μmである現像剤量規制ブレード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像成型装置である電子写真装置用のブレードに関し、現像剤量規制ブレードに関する。また電子写真装置用ブレードを成形するために好適に用いることのできる成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真装置では、記録用紙に転写を行った後感光体上に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレードや、現像装置内で現像剤を摩擦帯電させながら薄膜層を形成するための現像剤量規制ブレード等が用いられる。
【0003】
このような電子写真装置用ブレードは、一般に、ゴム板、金属製薄板、樹脂板、およびこれらの積層体から形成される。クリーニングブレードは感光体に当接するブレード部材と、このブレード部材を所定の位置に支持する支持部材とから作製される。また、現像剤量規制ブレードは、現像剤担持体に圧接されるブレード部材と、このブレード部材を所定の位置に支持する支持部材とから作製される。ブレード部材の現像剤担持体に圧接される面は、現像剤の摩擦電荷を制御する機能を有していることから、電荷制御面とも呼ばれる。また、電荷制御面の表層を電荷制御層と呼ぶこともある。
【0004】
このような電子写真装置用として用いられるブレード部材としては、例えばウレタン樹脂、ポリアミドエラストマー、シリコーンゴム等の板材が用いられている。特に、クリーニングブレードや現像剤量規制ブレードのブレード部材には高い寸法精度が要求され、更には両者共に回転部材との摺擦でその機能を発するために、耐磨耗性の高い材料が好まれ、主にポリウレタン樹脂が用いられることが多い。
【0005】
近年、電子写真プロセスは、より高画質化、高速度化が進み、クリーニングブレード、現像剤量規制ブレードともより高性能が要求されている。特に現像剤量規制ブレードでは、現像剤が現像剤担持体表面に帯電量の揃った状態で薄く均一に担持されることが求められており、ブレード部材表面の表面性が現像剤の搬送力、帯電量に大きく影響する事が分かっている。
【0006】
従来、現像剤粒子を均一に帯電し搬送するには、この現像剤量規制ブレードの電荷制御面を滑らかにするほど良いと考えられてきた。ところが、近年電荷制御面の平坦性が、現像剤の均一な帯電及び搬送に与える影響を詳細に研究したところ、現像剤制御面をある程度粗面化した方が、現像剤の均一な帯電及び搬送を実現できることが分かった。従って、安定してブレード部材の表面を粗面化することが好ましい。
【0007】
また、クリーニングブレードにおいても、最近の小粒径現像剤に対して、感光体上の残存現像剤を完全に除去しなければならない為、ブレード部材の寸法高精度化が求められている。また、感光体に接触するクリーニングブレードの端面は表面粗さ精度(エージ精度)が重要であり、表面粗さ精度が10μm以上であると、クリーニング不良が発生し、記録紙上にスジとなってしまう場合がある。その為、金型面に接する部分の表面性も重要になってくる。
【0008】
このような、寸法精度、表面性に対して、より高精度な電子写真装置用ブレードを安定して安価に作製するには、成形型が重要である。繰り返し成形するにあたり、良好な剥離性、脱型性を長期に渡って継続できる成形型が、寸法精度、表面性に優れた電子写真装置用ブレードを安価に製造する為に、望まれる。
【0009】
特許文献1に、厚み精度に優れ、金型に精密な加工を施す事が無く、成形後にシートの洗浄もする必要が無い製造方法が記載される。この文献に開示される技術では、遠心成形法を用いた円筒形状の金型の内側に無溶媒2成分液状シリコーンゴムを流し込んでシリコーンゴムの成形体を形成した後、電子写真装置用ブレードの材料を流し込んで硬化させる。これによって、厚み精度を0.1mm以下にすることに効果があるとされている。しかし、この方法では、長期に渡って成形、脱型を繰り返すと、揮発成分が揮発する事によりシリコーンゴムが変形し、ちぎれ、脱型不良等の問題が発生してしまう場合がある。
【0010】
特許文献2に、成形後に離型剤の洗浄をすること無く、長期間の離型性を維持する事ができる方法として、金型内面に、主鎖がポリシラザン系又はポリシロキサン系であり硬度がJISAタイプで55〜85°である離型層を形成することが提案されている。しかし、この方法では、反応後の安定性に問題がある場合があり、長期間の成形により、離型層の表面とブレード部材の材料間で化学反応が起こり、離型性の維持が困難になる場合がある。また、シリコーンゴムの反応硬化後も反応基として残るシリカがブレード部材の材料と反応してしまい、長期間良好な離型性を維持できない場合がある。
【特許文献1】特開2001−305858号公報
【特許文献2】特開2003−231142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
即ち、寸法精度、表面性に対し、より高精度な電子写真用ブレード部材を得るために、良好な剥離性、脱型性を長期に渡って継続できる成形型が求められている。
【0012】
本発明の目的は、良好な剥離性および脱型性を長期に渡って継続することのできる、エラストマー成形体製造用の成形型を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、ブレード部材の寸法精度および表面性をより高精度化することのできる電子写真装置用ブレードの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、ブレード部材の寸法精度および表面性がより高精度であり、高画質な画像を形成するに好適な現像剤量規制ブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、金型本体の内周面に形成された保持層と、この保持層の内周面に形成された離型層とを備えた成形型であって、成形型の内部に液状エラストマー原料を投入して硬化させるエラストマー成形体の製造に用いられる成形型において、
(a)該離型層が、主鎖がポリシラザン系またはポリシロキサン系である付加型2成分液状シリコーンから形成され、
(b)該離型層中の、該液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量が0.5質量%以下であり、
(c)該離型層のシリカ(SiO2)含有量が1質量%以下であり、
(d)該離型層の硬度が50°以上85°以下の国際ゴム硬度であり、かつ、
(e)該離型層の中に平均粒径が2μm以上20μm以下である固体潤滑剤が含有される
ことを特徴とする成形型が提供される。
【0016】
本発明により、ブレード部材と該ブレード部材を支持する支持部材とを備える電子写真装置用ブレードの製造方法において、
該ブレード部材が、
(1)上記の成形型に液状エラストマー原料を投入する工程、および
(2)該原料を該成形型内で硬化させ硬化成型体とする工程
を経て製造される
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードの製造方法が提供される。
【0017】
本発明により、現像剤担持体に当接されて用いられるブレード部材と、該ブレード部材を支持する支持部材とを備える、電子写真装置用の現像剤量規制ブレードにおいて、
該ブレード部材が上記の製造方法によって製造され、
該ブレード部材の少なくとも現像剤担持体に当接されて用いられる部分の負荷長さ率をTp(C)としたとき(ここでCは切断レベル(%)である)、Tp(50%)が30以上90以下であり、且つ、
該ブレード部材の少なくとも現像剤担持体に当接されて用いられる部分の十点平均粗さ(Rz)が2μm以上25μm以下である
ことを特徴とする現像剤量規制ブレードが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、良好な剥離性および脱型性を長期に渡って継続することのできる、エラストマー成形体製造用の成形型が提供される。
【0019】
本発明により、ブレード部材の寸法精度および表面性をより高精度化することのできる電子写真装置用ブレード部材の製造方法が提供される。
【0020】
本発明により、ブレード部材の寸法精度および表面性がより高精度であり、高画質な画像を形成するに好適な現像剤量規制ブレードが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0022】
本発明は、金型本体の内周面に形成された保持層と、この保持層の内周面に形成された離型層とを備えた成形型であって、成形型の内部に液状エラストマー原料を投入して硬化させるエラストマー成形体の製造に用いられる成形型である。そしてこの成形型の離型層が次の(a)から(e)までの要件を満たしている。
(a)該離型層が、主鎖がポリシラザン系またはポリシロキサン系である付加型2成分液状シリコーンから形成される。
(b)該離型層中の、該液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量が0.5質量%以下である。
(c)該離型層のシリカ(SiO2)含有量が1質量%以下である。
(d)該離型層の硬度が50°以上85°以下の国際ゴム硬度(IRHD)である。
(e)該離型層の中に平均粒径が2μm以上20μm以下である固体潤滑剤が含有される。
【0023】
図1には、現像剤担持体に当接するブレード部材10と、ブレード部材が接着される支持部材11とを有する本発明の現像剤量規制ブレードの例を示した。ここでブレード部材10と支持部材11の間は、ブレード部材10が支持部材11に接着される面(接着面)であり、15は現像剤担持体が摺動する面(摺動面)であり、現像剤の電荷を制御する面(電荷制御面)である。さらに、この様なブレード部材10及び支持部材11を積層して作製された現像剤量規制ブレード12が現像剤容器(不図示)に固定されている。現像剤量規制ブレードは摺動部15で現像剤担持体13に圧接され、摺動部15を通過する現像剤粒子の量を規制する。図1にこの様子を示した。
【0024】
現像剤担持体13が矢印の方向に回転されることにより、現像剤粒子14が摺動部15に搬送される。この時現像剤担持体13に現像剤量規制ブレード12の電荷を制御する面(電荷制御面)が当接している為、現像剤粒子に所定の摩擦帯電を付与させ、さらに摺動部15をすり抜け感光体(不図示)まで搬送される現像剤粒子の量を規制することができる。
【0025】
図2には、感光体に当接するブレード部材20と、ブレード部材が接着される支持部材21とからなる、クリーニングブレードの例を示した。ここでブレード部材20と支持部材21の間は、ブレード部材20が支持部材21に接着される面(接着面)であり、25は感光体に当接するクリーニングブレードの部分であり、残存した現像剤24を除去するエッジ部分である。さらに、この様なブレード部材20及び支持部材21により作製されたクリーニングブレード22がクリーニング容器(不図示)に固定されており、エッジ部25で感光体23に圧接され、当接部25により現像剤が除去される。図2にこの様子を示した。
【0026】
(電子写真装置用ブレード)
電子写真装置用ブレードは、電子写真装置(電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像形成装置)に用いられる弾性ブレードである。これらの弾性ブレードは一般に鋼板等の剛性を有するブレード支持部材と、ゴム弾性を有するブレード部材及び接着剤層から構成される。
【0027】
支持部材の材質としてクロメート処理及び潤滑樹脂等の表面処理鋼板、リン青銅、ばね鋼等の弾性金属板より加工したもの、プラスチックやセラミックなど成型品等、電子写真装置用ブレードの支持部材の材質として公知のものから適宜選んで用いることができる。
【0028】
(電子写真装置用ブレードの製造方法)
本発明の電子写真装置用ブレードの製造方法において、ブレード部材は遠心成型法によって成型することができる。ただし、遠心成型に限らず、注型、連続注入成型等、適宜の成型方法を採用することができる。ここで、成形型面の内表面が粗面化された型で成型することにより、現像剤量規制ブレードにおける少なくとも現像剤担持体に当接される部分の表面粗さを制御する事ができる。また、型内面(空気面)側を使用することにより、クリーニングブレードにおける感光体に当接する部分の表面性を満足する事ができる。
【0029】
高速で回転する加熱した円筒形状の成形型の内面に熱硬化性樹脂を流し込み、平面形状のシートを得る成型方法を遠心成型法という。この遠心成型法により、均一な厚みのシートを容易に作製することができるため、熱硬化性材料の成型方法として広く用いられる。また、材料仕込み量と得られるシートのカット寸法を変える事により、様々な寸法のブレード部材が容易に得られ、少量多品種生産等に適しているため、遠心成形法によりブレード部材を製造することが好ましい。
【0030】
(保持層の形成)
円筒金型と離型層の間には、円筒金型から円滑に離型層を除去するための保持層を設ける。薄肉円筒状シートの成型を繰り返し行っていると、離型層の離型性が次第に低下していくため、ある程度の成型回数ごとに円筒金型から離型層を除去し、新たな離型層を形成し直す必要がある。このときに機械的強度が低い樹脂を離型層として用いた場合、離型層を円筒金型から完全に除去するには、極めて長い時間と労力を要する場合がある。円筒金型と離型層の間に保持層を設けることで、保持層と離型層は強固に接合されているため、円筒金型から保持層を離型層とともに除去することは比較的容易である。
【0031】
保持層としては、遠心成形材料(液状エラストマー原料)の硬化温度以上、一般的には150℃程度の耐熱温度を有する熱硬化性樹脂にて形成されていることが好ましい。特に室温から150℃の範囲でゴム状弾性を示さないようなものであれば、型本体から離型層と共に保持層を除去する際に有利である。このような熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。特に型本体の内周面との間に適度な密着性を保持することができるエポキシ樹脂が好ましい。
【0032】
成型を繰り返すと離型性が低下するが、このときに、離型層のみを追加して形成してもよい。保持層と何層かの離型層の全体の厚みが薄肉円筒状シート(エラストマー成型体)の物性に影響を及ぼす程度になった場合、円筒金型から保持層を離型層とともに除去し、新たに保持層と離型層を形成し直せばよい。
【0033】
(離型層を形成する材料)
本発明では、離型層は、主鎖がポリシラザン系またはポリシロキサン系である付加型2成分液状シリコーンから形成される。これにより、離型剤がゴム層に移行することが無く、シート(エラストマー成型体)変形等の問題もなく、長期間に渡り離型性を維持することができる。成形型の内壁面上の離型層は面精度を発揮する事と、使用が終われば簡単に取り外しが可能であることが望まれる。縮合型シリコーンは、形成する離型層の層厚により完全硬化までの時間にバラツキが生じることがある事から付加硬化型を選択する。
【0034】
付加硬化型シリコーンは、熱硬化時の反応速度が非常に速く、離型層を設けるべき成形型の壁面全域に均一に生き渡る前に硬化してしまうことがある。このような場合は、適時、付加硬化型シリコーンに反応遅延剤を添加すれば良い。本発明に好適に用いる事のできる反応遅延剤としては、例えば、制御剤No.6−10(商品名。信越化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0035】
また、離型層には、粗面を形成するための固体潤滑剤を添加しても良い。固体潤滑剤としては、例えば、フッ化カーボンを挙げることができる。
【0036】
(離型層中の揮発成分)
また、離型層は、液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量が0.5質量%以下である。揮発する成分の含有量が0.5質量%以下であると、繰り返しの成型により揮発成分が揮発し離型層の変形が発生してしまうことを防止できる。その結果、離型性の維持が困難になってちぎれや脱型不良等が発生してしまうことを防止できる。
【0037】
本発明における、離型層に含まれる、液状エラストマー原料の硬化温度にて揮発する成分量の含有量は、次のようにして測定することができる。
【0038】
成形型を用意し、この成形型内に離型層を形成するための液状硬化型シリコーンを流し込む。液状エラストマー原料が硬化完了する時の硬化温度、時間と同一の温度、時間加熱して液状硬化型シリコーンを硬化し、離型層テストピースを作製する。離型層テストピースの質量を測定し、この時の質量を初期離型層テストピース質量W1とする。次に、この離型層テストピースを、液状エラストマー原料の硬化温度と同一の温度の電気炉内に投入して質量の経時変化を計測する。この離型層テストピースの質量が下げ止まるまで加熱を継続し、質量が下げ止まるまでの時間を求めるとともに、この時間が経過した時点における離型層テストピースの質量を計測する。この時の質量を液状エラストマー原料の硬化温度において揮発される成分が揮発した後の離型層テストピース質量W2とする。そして、下記式により、離型層の液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量ΔW(質量%)を求めればよい。
【0039】
【数1】

【0040】
(離型層中のシリカ)
更に、離型層のシリカ(SiO2)含有量は1質量%以下とする。液状シリコーンが反応硬化後も反応基として残存するシリカ(SiO2)の含有量を1質量%以下とすることにより、長期間に渡り、離型性の維持が継続できる。
【0041】
(離型層のゴム硬度)
更に、離型層は、硬度が国際ゴム硬度(IRHD)で50°以上85°以内である。硬度が50°以上であると、繰り返しの離型に耐えることができ、硬度が85°以下であると、離型層と成型したブレード部材との密着性を抑え、離型性が良好となる。
【0042】
(離型層中の固体潤滑剤)
更に、離型層中に平均粒径が2μm以上20μm以下である固体潤滑剤を含有している。固体潤滑剤は150℃程度の耐熱性を有する粉状の潤滑剤であればよく、例えばシリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、二硫化モリブデン、黒鉛、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、二硫化タングステン、タルクなどを採用することができる。特に、種々の作業性の観点からフッ化黒鉛が好ましい。
【0043】
固体潤滑剤の平均粒径が20μm以下であると、得られるブレード部材の負荷長さ率が小さくなることを抑え、画像評価の結果がスジ不良となってしまうことを防止できる。更に、離型層の内周面の平滑性が低下して得られる遠心成形体の厚みに悪影響を与えてしまうことを防止できる。また、2μm以上であると、得られるブレード部材の負荷長さ率が大きくなることを抑え、現像剤担持体上の現像剤量を規制し難くなることを抑え、均一な現像剤薄層を形成することができる。従って、固体潤滑剤の粒径が2μm以上、20μm以下、特に10μm以下が有効である。
【0044】
(離型層の粘度)
更に、シリコーンゴムの粘度は100cps以上10000cps以下(0.1Pa・s以上10Pa・s以下)が良い。100cps以上であると、硬化反応の安定性が良好で、目標のシリコーンゴムの硬度が安定して得られる。10000cps以下であると粘度が高くなることを抑え、遠心成型機内での流れ性が悪くなることを防止できる。その結果遠心成型体の厚みに悪影響を与えてしまうことを防止できる。
【0045】
(液状エラストマー原料)
本発明で使用する液状エラストマー原料としては、耐磨耗性、機械的特性に優れるものであればよく、ポリウレタン樹脂を主成分として含む原料が良い。上記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤および触媒を用い、プレポリマー法、セミワンショット法によって製造することができる。
【0046】
例えば、プレポリマー法の場合は、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調製し、このプレポリマーに鎖延長剤および触媒を添加して液状エラストマー原料を得ることができる。これを成形用の金型に注入して硬化させることができる。
【0047】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等があげられる。これらのなか中でも、MDIを用いることが好ましい。
【0048】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。その数平均分子量が1500以上5000以下であることが好ましい。すなわちこれは、1500以上であると、得られるウレタンゴムの物性が低下することを防止することができ、また5000以下であると、プレポリマーの粘度が高くなってハンドリングが困難になることを防止することができるからである。
【0049】
ポリオールとして、低分子量の鎖延長剤を併用することができる。例えば、グリコールが使用され、このようなグリコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等があげられるが挙げられる。また、上記グリコールの他に、その他の多価アルコールを使用することができ、このような多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0050】
触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒が挙げられる。
【0051】
(電子写真装置用ブレード、現像剤量規制ブレードの製造)
上記成形型を使用して、下記工程を経ることによってブレード部材を作製し、電子写真装置用ブレードを製造することができる。
(1)上記成形型に、ブレード部材の原料(液状エラストマー原料)を投入する工程、および、
(2)投入された原料を、成形型内で硬化させ硬化成型体とする工程。
【0052】
また、電子写真装置用ブレードの一つである現像剤量規制ブレードの製造において、ブレード部材を上記電子写真装置用ブレードの製造方法によって成形することができる。
【0053】
電子写真装置の現像装置には、現像剤容器から現像剤を現像部に向かって搬送するローラー形状の現像剤担持体が備わる。また、現像装置には、現像剤担持体に圧接されるブレード部材と、ブレード部材を支持する支持部材とを備える現像剤量規制ブレードが搭載される。現像装置では、ブレード部材と現像剤担持体との間で現像剤を摩擦帯電させつつ薄層状に規制し、その薄層状の現像剤を潜像担持体(感光体)上に形成された静電潜像に供給して現像を行う。
【0054】
現像剤量規制ブレードのブレード部材の少なくとも現像剤担持体に当接される部分の負荷長さ率をTp(C)(C:切断レベル%)としたとき、Tp(50%)が30以上90以下であることが好ましい。そして、現像剤量規制ブレードの少なくとも現像剤担持体に当接される部分の十点平均粗さ(Rz)が2μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0055】
(負荷長さ率Tp(C))
ここで負荷長さ率とは、現像剤量規制ブレードの表面からある基準長さLを抜き取り、その平均線に平行で、かつ最高山頂から切断レベルCだけ下方にある直線で切断される表面の切断部分の長さを、全長Lに対する百分率で表したものをいう。本発明では、切断レベルCは、最高山頂を0%、最低谷底を100%とした時の百分率%で表す%法に従う。
【0056】
現像剤量規制ブレードの少なくとも該現像剤担持体に当接される部分の負荷長さ率をTp(C)(C:切断レベル%)としたとき、30以上90以下であることが好ましい。負荷長さ率Tp(50%)が30以上であると、現像剤量規制ブレード上の凹の部分が多くなることを抑え、現像剤が大量に入り込み抜け難くなることを防止し、現像剤の融着が起こり画像スジになってしまうことを防止することができる。また負荷長さ率Tp(50%)が90以下であると、現像剤量規制ブレード上の凹凸部分が少なくなって粗面化の効果が得られなくなることを防止し、現像剤担持体上に現像剤の均一な薄層の形成が困難になることを防止できる。その結果、現像剤に対して均一な帯電付与が可能となり、画像ムラやゴーストが発生してしまうことを防止できる。
【0057】
(ブレード部材のRz)
更に、本発明において現像剤量規制ブレードの少なくとも現像担持体に当接される部分の十点平均粗さ(Rz)は2μm以上25μm以下であることが好ましい。この十点平均粗さ(Rz)が2μm以上であると、現像担持体と現像剤量規制ブレードの間で現像剤粒子の回転が止まることを防止でき、現像剤の搬送力が上がりすぎることを防止できる。従って、現像担持体上で現像剤が薄層とならず充分な電荷量を付与できないといった現象を防止することができる。十点平均粗さ(Rz)が25μm以下であると、現像剤粒子が、現像剤量規制ブレードの大きな粗さのプロフィールに挟まれることを防止でき、良好な摩擦帯電を可能とし、現像剤の凝集による画像不具合を防止することができる。
【0058】
(離型性に係る現象)
図3に遠心成形型の一例の概要を示す模式図を示す。またその断面模式図を図4に示す。ただし図4は遠心成形型に蓋30cを取り付けた状態、図3は蓋を取り付けていない状態を示す。遠心成形型30は、円筒形状をしており、内周に凹型の内壁面(内周面と表すことがある)30aを有している。この成形型内に液状エラストマー原料を投入して加熱硬化してエラストマー成形体を成形する。
【0059】
図5に遠心成形型を用いてエラストマー成形体を形成したときの金型の内周面末端部分30bの近傍の断面の模式図を示す。金型の内周面末端部壁面は、遠心成形型30の内周面30aと、内周面末端部分30bの内壁面から構成されている。そして、金型の内周面には、剥離可能な保持層31と離型層32が設けられている。これにより水平精度と剥離性、及び生産時の良好な離型性が発現し、エラストマー成形体33が成形され、離型され生産される。
【0060】
従来から、保持層31の上に形成された離型層32は主成分がポリジメチルシロキサン構造をもつ事が多い。これは重合によって分子鎖が長くなり、これらが架橋したり、官能基によって修飾されたりして形成されるのが一般的である。液状硬化型シリコーンを用いて離型層を形成する段階においても、高分子の分子鎖の成長反応と環状シロキサン構造を有する環状体の生成反応の両方が起こることが知られている。このように低分子量で揮発性の環状体成分が少なからず混入してしまうのが液状硬化型シリコーンの硬化反応における従来の一般的な特性である。このような低分子量の揮発性成分は市販されている液状硬化型シリコーン中にも残存してしまう。
【0061】
遠心成形型30の内周面30a上に保持層31を形成し、保持層31の内周面上に離型層32を形成する。この後に、遠心成形型に液状エラストマー原料を投入し硬化させると、図5に示したように、内周面末端部分30bの内壁面まで行き渡った離型層32が形成される。このように離型層32が、内周面末端部分30bの内壁面まで行き渡っていれば問題なくエラストマー成形体33の成形が可能となる。液状エラストマー原料が熱硬化型であれば、遠心成形型30、保持層31及び離型層32は、成形中、常に、液状エラストマー原料の硬化温度に曝されている事になる。例えば、液状エラストマー原料がポリウレタン系のものであると、硬化温度は、通常、100〜160℃である。エラストマー成形を長期に渡って繰り返せば、この間、離型層32もこの温度に曝されることとなる。
【0062】
液状硬化型シリコーンから形成された離型層が高温に曝されると、低分子量成分(主にはD3〜D10と称される3量体〜10量体の環状シロキサン成分)のみならず、さらに大きな分子量成分も揮発する事が考えられる。これらの揮発性成分は直ぐには揮発せず数日かけて徐々に揮発して、同時に質量減少を起こす。例えば、2液硬化型シリコーンで離型層32を形成しても、液状エラストマー原料の硬化温度に長時間曝されると、徐々に質量減少を起こす。質量減少を起こした離型層は同時に寸法収縮を起こす。従って、2液硬化型シリコーンを用いて形成した離型層32中に液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量が多い場合には、その分、寸法収縮も大きいといえる。すると、初期においては図5に示したように内周面末端部分30bまで離型層32が満たされていても、硬化温度に長時間曝されると、低分子量成分が揮発して質量減少を起こす。それに伴って離型層32が寸法収縮を起こし、図6に示す様に微小ながらも離型層32と成形型の内周面末端部分30bとの間に収縮隙間34が発生してしまう事が観察事実として明らかとなった。
【0063】
このような状態の成形型で成形を行うと、成形型の内周面末端部分30b近傍の収縮隙間に液状エラストマー原料が入り込んで硬化されバリが発生する。これが原因で、成形型内周面末端部分30bから離型性が悪くなり、長期に渡って連続してエラストマー成形を行うと離型性、加工性が悪くなり、成形不良の原因となる。
【0064】
このような問題を発生せず長期に渡って良好な加工性、量産性を得る為には図5に示したような状態が液状エラストマー原料の硬化温度にさらされても長期に渡って継続できる事が望まれる。すなわち、液状エラストマー原料の硬化温度に長時間さらされても離型層が、図6に示されているような収縮を起こさない事が理想であり、揮発性の低分子量成分が少ないほど加工性に有利であると理解出来る。
【0065】
しかし、一般的に低分子量成分を含有する液状硬化型シリコーンを用いて形成した離型層を成形型内に設けて用いる場合には常温では揮発しないような分子量成分まで揮発して質量減少や収縮を起こしてしまうと懸念される。
【0066】
そこで本発明者等は鋭意検討の結果、液状硬化型シリコーンを用いて形成された離型層が、前述の(a)〜(e)の要件を満たしていることにより、長期に渡って、良好な離型性を確保できることを突き止め、本発明に至ったのである。
【0067】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な手段によって、成形型からエラストマーを剥離しやすく効率よく脱型する事が可能となり、脱型時のちぎれ等の不良を低減する事ができる。また、成形型を長期に渡って繰り返し使用でき、安定した生産性を得る事ができる。さらに寸法精度が高く、均一なエラストマーの製造が可能となり、特に、電子写真装置用のクリーニングブレードや現像剤量規制ブレード等のブレード部材の製造に対して優位性を発揮する。また、本発明の成形型は遠心成形型、注型型に限定されるものではなく、他の成形方法においても適用する事ができる。更に本発明の成形型で作製された電子写真装置用ブレード部材は、電子写真装置用クリーニングブレードや現像剤量規制ブレードに好適に用いられる。
【0068】
クリーニングブレードのブレード部材として用いられる場合、このブレードは感光体上に転写されずに残存した現像剤を掻き落とし、清掃する役割を果たす。近年の電子写真技術の進歩に伴って5μm程の微細な現像剤となり、しかも粒径現像剤も開発され、これを効率良く清掃するには非常に高い厚み寸法の精度が求められる。また、こうしたクリーニングブレードには表面の凹凸も重要であり、より高精度な表面性が求められる。本発明の成形型によれば、このようなクリーニングブレードのブレード部材として要求される寸法精度や表面精度を有する電子写真装置用ブレード部材を製造することができる。
【0069】
一方、現像剤量規制ブレードのブレード部材として用いられる場合においても、その役割上、寸法精度の要求特性は高いものである。現像剤量規制ブレードは、現像剤担持体と当接して微細な現像剤層を形成する機能部材であるために、その厚みは現像剤担持体との当接圧を決定し、良好な画像形成及び画像形成の安定化に重要な要因となる。また、表面性が現像剤に与える電荷に重要な要因となるため、表面性の制御も求められる。本発明の成形型によれば、このような現像剤量規制ブレードのブレード部材として要求される寸法精度や表面性を有する電子写真装置用ブレード部材を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例について比較例と併せて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
円筒形金型を備える遠心成型機を用いて、現像剤量規制ブレードを以下のようにして作製した。
【0072】
支持部材として、ウレタン変性オレフィン樹脂及びアクリル変性オレフィン樹脂を含む非クロム表面処理層を有する電気亜鉛メッキ鋼板(商品名:ジンコート21。新日本製鐵(株)製)を使用した。これに、フィルム状ホットメルト接着剤(商品名:エルファン−UH。日本マタイ(株)製)を仮接着した。
【0073】
次いで、アジペート系ウレタンプレポリマー100質量部(数平均分子量2000、NCO含有量6.25質量%)、1,4−ブタンジオール3.7質量部、トリメチロールプロパン1.9質量部を注型機ミキシングチャンバー内で混合攪拌した。得られた液状エラストマー原料を遠心成型機に注入して成型した。成形は、130℃の温度を保持した円筒形金型内に液状エラストマー原料を流し込み、50分間加熱して原料を硬化することによって行った。その後、脱型し、厚さ1mmのポリウレタンシートを得た。脱型したシート状のポリウレタンエラストマーを所定寸法に裁断し、ブレード部材とした。
【0074】
このブレード部材と上記ホットメルト接着剤を仮接着した支持板金とを加熱接着し、現像剤量規制ブレードを得た。
【0075】
前記遠心成型機は、常温でのフレが0.06mmの円筒形金型を有するものであり、この金型の内周面には予め次のようにして離型層を形成しておいた。まず、金型を所定の温度に加熱し、回転させながら離型層形成用材料(2液混合型シリコーンゴム)を所定量供給し、内周面全域に行き渡らせた。その後、固体潤滑剤としてフッ化カーボンと上述した2液混合型シリコーンゴムと溶剤として炭化水素系溶剤を所定量スプレー塗布し、加熱硬化させて1mm厚みの粗面化された離型層を形成した。前述のようにして、この層の上にポリウレタンエラストマーを注入し、加熱成形することにより、予め形成しておいた粗面化された面をポリウレタンエラストマーに転写させて粗面化されたブレード部材を得た。
【0076】
(離型層中の揮発成分の含有量測定)
液状硬化型シリコーンを用いて形成された離型層の、液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量は、次のようにして測定した。
【0077】
50mm×80mm×5mmの寸法の金型を用意した。この金型内に離型層形成用の液状硬化型シリコーンを流し込み、実施例で用いた液状エラストマー原料の硬化温度である130℃で1時間加熱して硬化して離型層テストピースを作製した。温度を常温に戻して、離型層テストピースの質量を測定した。この時の質量を初期離型層テストピース質量W1とした。次に、この離型層テストピースを、実施例で用いた液状エラストマー原料の硬化温度である130℃の電気炉内に投入して質量の経時変化を計測した。この離型層テストピースの質量は、およそ10日間で下げ止ることがわかった。そこで、130℃×10日間加熱後の離型層テストピースの質量を、実施例で用いた液状エラストマー原料の硬化温度において揮発される成分が揮発した後の離型層テストピース質量W2とした。下記式により、液状硬化型シリコーンを用いて形成した離型層中の、液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量ΔW(質量%)を求めた。
【0078】
【数2】

【0079】
(離型層の硬度の評価方法)
離型層についての国際ゴム硬度(IRHD)の測定は、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製ウォーレス微小硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて行った。
【0080】
(負荷長さ率の評価方法)
ブレード部材の電荷制御面の負荷長さ率Tp(50%)は、超深度レーザー顕微鏡VK−8510(商品名。キーエンス(株)製)を用い、JIS B 0601に基づいて計測した。
【0081】
(粗さの評価方法)
ブレード部材の電荷制御面の十点平均粗さ(Rz)は、表面粗さ測定機SE3500(商品名。小坂研究所(株)製)を用い、JIS B 0601に基づいて計測した。
【0082】
(固体潤滑剤の平均粒径の測定方法)
固体潤滑剤の平均粒径は、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(商品名。堀場製作所製)を用い、分散媒体を界面活性剤水溶液、分散条件を超音波分散として測定した。
【0083】
(粘度の測定方法)
離型層形成に用いるシリコーンゴムの粘度は、SV型粘度計:SV−10(商品名。エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した。離型層に用いるシリコーンゴムを予め130℃に加熱しておき、130℃での粘度を測定した。
【0084】
(剥離性評価)
前記液状エラストマー原料を投入して硬化・脱型する作業を繰り返し、連続生産性について評価した。得られた薄膜円筒状のポリウレンエラストマ−成形体について、遠心成形型から脱型するときの剥離しやすさについて、脱型する際の成形物に剥離力が不足することにより起こる以下の1〜4の不良の発生回数につき、以下のように評価を行った。評価は成形体の成形を100回繰り返し行い、100回中に発生する不良回数を評価基準とした。
1.成形体にちぎれが生じ端部が型内に残る。
2.成形体を取り出す際に力がかかり、成形体の形状が変形する。
3.成形体の端部が固着し裂け目が生じる。
4.完全に脱型できない。
◎:2以下
○:5以下
×:5以上。
【0085】
<実施例1>
2液付加硬化型シリコーンゴム(商品名:XE15−C3074。メーカー:GE東芝シリコーン(株)社)を主剤:硬化剤=10:1の質量比率で混合攪拌したものをシリコーンゴムとして用いた。このシリコーンゴムに、低分子量成分(主にはD3〜D10と称される3量体〜10量体の環状シロキサン成分)を添加し、離型層全体に対する揮発成分の含有量が0.5質量%となるように調整して、離型層形成用材料とした。この離型層形成用材料を、遠心成型機に投入し、硬化温度を140℃にして離型層を得た。さらに、離型層の表面は、平均粒径が5μmのフッ化カーボンと上記シリコーンゴムと溶剤とを1:1:4の質量比で均一に混合したものをエアー圧0.3MPaで30秒間均一に噴霧して、粗面化した。ここではフッ化カーボンとしてCMC(商品名。セントラル硝子社製)、溶剤としてはアクトレル(商品名。エクソンモービル社製)を用いた。
【0086】
このようにして離型層を形成した成形型を用い、前述のようにして、シート状のエラストマー成型体を得、これを裁断してブレード部材を得、これを用いて現像剤量規制ブレードを製造した。
【0087】
表1に、離型層形成に用いたシリコーンゴムの種類(付加型か縮合型か)および粘度、離型層形成用材料を硬化させる温度、離型層中の揮発成分およびシリカの含有量、離型層の国際ゴム硬度を示した。また、離型層の粗面化に用いた固体潤滑剤(フッ化カーボン)の平均粒径、剥離性評価結果、負荷長さ率Tp(50%)、十点平均粗さ(Rz)も表1に示した。
【0088】
<実施例2>
離型層全体に対してシリカ(SiO2)が1質量%になるようシリカを離型層形成用材料に添加した。
【0089】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表1に示す。
【0090】
<実施例3>
離型層形成用材料を硬化させる温度(離型層硬化温度)を100℃にした。
【0091】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表1に示す。
【0092】
<実施例4>
離型層の粗面化のための固体潤滑剤として平均粒径が2μmのフッ化カーボンを用いた。
【0093】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表1に示す。
【0094】
<実施例5>
離型層の粗面化のための固体潤滑剤として平均粒径が20μmのフッ化カーボンを用いた。
【0095】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表1に示す。
【0096】
<実施例6>
離型層形成用材料を硬化させる温度(離型層硬化温度)を130℃にした。これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表1に示す。
【0097】
<比較例1>
シリコーンゴムとして2液縮合硬化型シリコーンゴム(商品名:CY52。東レ・ダウコーニング社製)を主剤:硬化剤=10:1の比率で混合攪拌したものを用いた。
【0098】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0099】
<比較例2>
実施例1で用いたシリコーンゴムに、低分子量成分(主にはD3〜D10と称される3量体〜10量体の環状シロキサン成分)を添加し、離型層全体に対する揮発成分の含有量が0.6質量%となるように調整して、離型層形成用材料とした。
【0100】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0101】
<比較例3>
離型層全体に対してシリカ(SiO2)が1.5質量%となるようシリカを離型層形成用材料に添加した。
【0102】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0103】
<比較例4>
離型層形成用材料を硬化させる温度(離型層硬化温度)を80℃にした。
【0104】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0105】
<比較例5>
離型層形成用材料を硬化させる温度(離型層硬化温度)を150℃にした。
【0106】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0107】
<比較例6>
離型層の粗面化のための固体潤滑剤として、平均粒径が1μmのフッ化カーボンを用いた。
【0108】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0109】
<比較例7>
離型層の粗面化のための固体潤滑剤として、平均粒径が25μmのフッ化カーボンを用いた。
【0110】
これ以外は実施例1と同様にして、離型層の形成、現像剤量規制ブレードの作製、および各種評価を行った。実施例1と同様に、用いた材料の物性や評価結果を表2に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
上記表1の結果から、実施例品はいずれにおいても100回の成型におけるちぎれ、脱型不良の発生が低減され、長期間の離型性の維持が満足できた。これに対して、上記表2における比較例では、ちぎれ、脱型不良の発生が多く見られ、長期間の離型性の維持が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】現像剤量規制ブレードを説明する為の模式的断面図である。
【図2】クリーニングブレードを説明する為の模式的断面図である。
【図3】本発明の成形型の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の成型型の一例の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の成形型の一例における内周面末端部近傍の断面模式図である。
【図6】離型層と内周面末端部分との間に収縮隙間が発生した成形型の一例の断面模式図である。
【符号の説明】
【0115】
10 ブレード部材
11 支持部材
12 現像剤量規制ブレード
13 現像剤担持体
14 現像剤(トナー粒子)
15 摺動部
20 ブレード部材
21 支持部材
22 クリーニングブレード
23 感光体
24 現像剤(トナー粒子)
25 当接部
30 遠心成形金型(金型本体)
30a 内壁面(内周面)
30b 内周面末端部
30c 蓋
31 保持層
32 離型層
33 エラストマー成形体
34 収縮隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型本体の内周面に形成された保持層と、この保持層の内周面に形成された離型層とを備えた成形型であって、成形型の内部に液状エラストマー原料を投入して硬化させるエラストマー成形体の製造に用いられる成形型において、
(a)該離型層が、主鎖がポリシラザン系またはポリシロキサン系である付加型2成分液状シリコーンから形成され、
(b)該離型層中の、該液状エラストマー原料の硬化温度において揮発する成分の含有量が0.5質量%以下であり、
(c)該離型層のシリカ(SiO2)含有量が1質量%以下であり、
(d)該離型層の硬度が50°以上85°以下の国際ゴム硬度であり、かつ、
(e)該離型層の中に平均粒径が2μm以上20μm以下である固体潤滑剤が含有される
ことを特徴とする成形型。
【請求項2】
遠心成形型である請求項1記載の成形型。
【請求項3】
注型型である請求項1記載の成形型。
【請求項4】
前記付加型2成分液状シリコーンの粘度が0.1Pa・s以上10Pa・s以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項5】
前記液状エラストマー原料が、ポリウレタン樹脂を主成分として含むものである請求項1から4の何れか一項に記載の成形型。
【請求項6】
ブレード部材と該ブレード部材を支持する支持部材とを備える電子写真装置用ブレードの製造方法において、
該ブレード部材が、
(1)請求項1から5のいずれか一項に記載の成形型に液状エラストマー原料を投入する工程、および
(2)該原料を該成形型内で硬化させ硬化成型体とする工程
を経て製造される
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードの製造方法。
【請求項7】
現像剤担持体に当接されて用いられるブレード部材と、該ブレード部材を支持する支持部材とを備える、電子写真装置用の現像剤量規制ブレードにおいて、
該ブレード部材が請求項6記載の方法によって製造され、
該ブレード部材の少なくとも現像剤担持体に当接されて用いられる部分の負荷長さ率をTp(C)としたとき(ここでCは切断レベル(%)である)、Tp(50%)が30以上90以下であり、且つ、
該ブレード部材の少なくとも現像剤担持体に当接されて用いられる部分の十点平均粗さ(Rz)が2μm以上25μm以下である
ことを特徴とする現像剤量規制ブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12420(P2009−12420A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179637(P2007−179637)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】