説明

成膜方法及びプラズマ成膜装置

【課題】被処理体の凹部の開口にオーバハング部分を生ずることなく、この凹部の側壁に均一に金属膜を形成することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】真空引き可能になされた処理容器14内でプラズマにより金属ターゲット56をイオン化させて金属イオンを発生させ、金属イオンを処理容器内の載置台20上に載置した被処理体にバイアス電力により引き込んで凹部2が形成されている被処理体に金属膜6、70を堆積させるようにした成膜方法において、載置台に、金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力を加えて、凹部の側壁に金属膜を堆積させる成膜工程を行う。これにより、凹部の開口にオーバハング部分を生ずることなく、この凹部の側壁に均一に金属膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法及びプラズマ成膜装置に係り、特に半導体ウエハ等の被処理体に形成されている凹部の表面に効果的に薄膜を形成する成膜方法及びプラズマ成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層との密着性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)やタンタル窒化膜(TaN)等がバリヤ層として用いられる。
【0003】
このバリヤ層を形成するには、プラズマスパッタ装置内にてウエハ表面にまず、下地層としてタンタル窒化膜(以下、「TaN膜」とも称す)を形成し、次に、同じプラズマスパッタ装置内にてタンタル膜(以下、「Ta膜」とも称す)を形成することによって、バリヤ層を形成するようになっている。そして、その後、このバリヤ層の表面に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次にウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を埋め込むようになっている。
【0004】
この点については図8を参照して説明する。図8は半導体ウエハの上部の部分拡大断面図を示しており、この半導体ウエハSの表面には、ビアホールやスルーホールや溝(トレンチやDual Damascene構造)等に対応する凹部2が形成されており、この凹部2は設計ルールの微細化に伴ってアスペクト比が非常に大きく(例えば3〜4程度に)なっており、この凹部2の幅、或いは内径は例えば0.01μm程度になっている。
【0005】
この半導体ウエハSの表面には上記凹部2内の内面も含めて略均一に例えばTaN膜よりなる下地層4がプラズマスパッタ装置にて形成されている。そして、更に、上記下地層4の上に同じくプラズマスパッタ装置にて例えばTa膜よりなる金属膜6を形成する。この場合、上記下地層4や金属膜6をプラズマスパッタ装置内で形成する際、半導体ウエハ側に高周波電圧のバイアス電力を印加して、金属イオンの引き込みを効率良く行うようになっている。その後、この金属膜6の表面全体に薄い銅膜よりなるシード膜を形成し、更に、銅メッキ処理を施すことにより上記凹部2内を銅膜で埋め込むようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−77365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的にプラズマスパッタ装置内で成膜を行う場合、上述のように半導体ウエハ側にバイアス電力を印加して金属イオンの引き込みを促進させることによって、成膜レートを大きくするようになっている。この場合、バイアス電圧を過度に大きくすると、プラズマを発生させるために装置内に導入されている不活性ガス、例えばアルゴンガスによりウエハ表面がスパッタされて折角堆積した金属膜が削り取られてしまうので、上記バイアス電力はそれ程大きくは設定されていない。
【0008】
しかしながら、上記のようにTa膜よりなる金属膜6を形成した場合、図8に示すように、凹部2内の底部や凹部2内の側壁の上部には金属膜が付着するが、凹部2の上端の開口部における金属膜6の部分に、この開口を挟めるような形で突出したオーバハング部分8が発生してしまうのみならず、凹部2の側壁の下部に金属膜6の未形成部分10が発生してしまう場合がある。この理由は、スパッタにより発生した金属イオンの直進性が弱いために、上記発生した金属イオンが側壁の下部に到達する前に側壁上部に衝突してしまうためである。このため、その後にこの凹部2をメッキ等により銅膜で埋め込んでも内部が十分に埋まらずにボイドが発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、被処理体の凹部の開口にオーバハング部分を生ずることなく、この凹部の側壁に均一に金属膜を形成することができる成膜方法及びプラズマ成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、プラズマガスによる成膜方法について鋭意研究した結果、載置台に供給するバイアス電力を制御して金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとを同時にバランスよく生じさせることによって半導体ウエハ表面に形成されている非常に微細な凹部の側壁に金属膜を均一に形成することができる、という知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
【0011】
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属ターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記金属イオンを前記処理容器内の載置台上に載置した被処理体にバイアス電力により引き込んで凹部が形成されている前記被処理体に金属膜を堆積させるようにした成膜方法において、前記載置台に、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力を加えて、前記凹部の側壁に金属膜を堆積させる成膜工程を行うようにしたことを特徴とする成膜方法である。
【0012】
このように、載置台に供給するバイアス電力を制御して金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとを同時にバランスよく生じさせることによって半導体ウエハ表面に形成されている非常に微細な凹部の側壁に金属膜を均一に形成することができる。この結果、被処理体の表面に形成されている凹部を、その後のメッキ処理を行うことにより例えば銅等の金属によりボイドを発生させることなく適正に埋め込むことができる。
【0013】
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記バイアス電力は、前記被処理体の前記金属ターゲットに対する対向面に関して、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような大きさに設定されている。
また例えば請求項3に規定するように、前記被処理体の表面全体には、前記金属膜に対する下地層が予め形成されている。
また例えば請求項4に規定するように、前記バイアス電力は、前記下地層をスパッタによりエッチングしないような大きさに設定されている。
【0014】
また例えば請求項5に規定するように、前記成膜工程の前に、前記成膜工程で形成する膜種と同じ膜種の金属膜を補助金属膜として形成する初期金属膜形成工程を行う。
また例えば請求項6に規定するように、前記成膜工程は、第1の金属膜を形成する第1ステップと、この第1ステップの後に、前記第1の金属膜とは異なる種類の第2の金属膜を形成する第2ステップとを有する。
【0015】
また例えば請求項7に規定するように、前記第1ステップと第2ステップとの間に、前記凹部の底部に位置する下地層をエッチングにより削り取る底部下地層エッチングステップを行う。
また例えば請求項8に規定するように、前記金属膜はタンタル膜である。
また例えば請求項9に規定するように、前記第1の金属膜はタンタル膜であり、前記第2の金属膜は銅膜である。
また例えば請求項10に規定するように、前記下地層はタンタル窒化膜(TaN)である。
また例えば請求項11に規定するように、前記凹部は、ビアホール、スルーホール、溝(トレンチ)の内の少なくとも1以上である。
【0016】
請求項12に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器と、凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属ターゲットと、前記載置台に対して所定のバイアス電力を供給するバイアス電源と、前記バイアス電源を制御するバイアス電源制御部と、を有するプラズマ成膜装置において、前記バイアス電源制御部は、前記バイアス電源より出力されるバイアス電力を、前記載置台に、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力に設定して、前記凹部の側壁に金属膜を堆積させるように構成したことを特徴とするプラズマ成膜装置である。
【0017】
この場合、例えば請求項13に規定するように、前記バイアス電源制御部は、前記バイアス電力を、前記被処理体の前記金属ターゲットに対する対向面に関して、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような大きさに設定する。
【0018】
請求項14に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器と、凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属ターゲットと、前記載置台に対して所定のバイアス電力を供給するバイアス電源と、前記バイアス電源を制御するバイアス電源制御部と、前記処理容器内へ導入させたガスをプラズマ化して前記金属ターゲットをイオン化させて金属イオンを形成する工程と、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力を印加して前記凹部の側壁に金属膜を堆積させるようにした工程とを実行するように装置全体を制御する装置制御部と、を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の成膜方法及びプラズマ成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
載置台に供給するバイアス電力を制御して金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとを同時にバランスよく生じさせることによって半導体ウエハ表面に形成されている非常に微細な凹部の側壁に金属膜を均一に形成することができる。この結果、被処理体の表面に形成されている凹部を、その後のメッキ処理を行うことにより例えば銅等の金属によりボイドを発生させることなく適正に埋め込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る成膜方法及びプラズマ成膜装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係るプラズマ成膜装置の一例を示す断面図である。ここではプラズマ成膜装置としてICP(Inductively Coupled Plasma)型プラズマスパッタ装置を例にとって説明する。図示するように、このプラズマ成膜装置12は、例えばアルミニウム等により筒体状に成形された処理容器14を有している。この処理容器14は接地され、この底部16には排気口18が設けられて、スロットルバルブ66を介して真空ポンプ68により真空引き可能になされている。
【0021】
この処理容器14内には、例えばアルミニウムよりなる円板状の載置台20が設けられると共に、この上面に静電チャック22が設置されており、この静電チャック22上に被処理体である半導体ウエハSを吸着して保持できるようになっている。尚、この静電チャック22には、図示しない吸着用の直流電圧が必要に応じて印加される。この載置台20は、この下面の中心部より下方へ延びる支柱24により支持されており、この支柱24の下部は、上記容器底部16を貫通している。そして、この支柱24は、図示しない昇降機構により上下移動可能になされており、上記載置台20自体を昇降できるようにしている。
【0022】
上記支柱24を囲むようにして伸縮可能になされた蛇腹状の金属ベローズ26が設けられており、この金属ベローズ26は、その上端が上記載置台20の下面に気密に接合され、また下端が上記底部16の上面に気密に接合されており、処理容器14内の気密性を維持しつつ上記載置台20の昇降移動を許容できるようになっている。この載置台20には、ウエハSを冷却する冷媒を流す冷媒循環路28が形成されており、この冷媒は支柱24内の図示しない流路を介して給排されている。
【0023】
また容器底部16には、これより上方に向けて例えば3本(図示例では2本のみ記す)の支持ピン30が起立させて設けられており、また、この支持ピン30に対応させて上記載置台20にピン挿通孔32が形成されている。従って、上記載置台20を降下させた際に、上記ピン挿通孔32を貫通した支持ピン30の上端部でウエハSを受けて、このウエハSを外部より侵入する図示しない搬送アームとの間で移載ができるようになっている。このため、処理容器14の下部側壁には、上記搬送アームを侵入させるために開閉可能になされたゲートバルブ34が設けられている。
【0024】
またこの載置台20に設けた上記静電チャック22には、配線36を介して例えば13.56MHz高周波を発生する高周波電源よりなるバイアス電源38が接続されており、上記載置台20に対して所定のバイアス電力を印加できるようになっている。またこのバイアス電源38は、例えばマイクロコンピュータ等よりなるバイアス電源制御部40により、その出力されるバイアス電力を必要に応じて制御できるようになっている。
【0025】
一方、上記処理容器14の天井部には、例えば窒化アルミニウム等の誘電体よりなる高周波に対して透過性のある透過板42がOリング等のシール部材44を介して気密に設けられている。そして、この透過板42の処理容器14内の処理空間52に例えばプラズマガスとしてのArガスをプラズマ化してプラズマを発生するためのプラズマ発生源46が設けられる。具体的には、このプラズマ発生源46は、上記透過板42に対応させて設けた誘導コイル部48を有しており、この誘導コイル部48には、プラズマ発生用の例えば13.56MHzの高周波電源50が接続されて、上記透過板42を介して処理空間52に高周波を導入できるようになっている。
【0026】
また上記透過板42の直下には、導入される高周波を拡散させる例えばアルミニウムよりなるバッフルプレート54が設けられる。そして、このバッフルプレート54の下部には、上記処理空間52の上部側方を囲むようにして例えば断面が内側に向けて傾斜されて環状(截頭円錐殻状)になされた金属ターゲット56が設けられており、この金属ターゲット56には可変直流電源58が接続されている。ここでは金属ターゲット56として例えばタンタル金属や銅等が用いられ、これら金属はプラズマ中のArイオンにより金属原子、或いは金属原子団としてスパッタされると共に、プラズマ中を通過する際にイオン化される。
【0027】
またこの金属ターゲット56の下部には、上記処理空間52を囲むようにして例えばアルミニウムよりなる円筒状の保護カバー60が設けられており、この保護カバー60は接地されると共に、この下部は内側へ屈曲されて上記載置台20の側部近傍に位置されている。また処理容器14の底部には、この処理容器14内へ必要とされる所定のガスを導入するガス導入手段として例えばガス導入口62が設けられる。このガス導入口62からは、プラズマガスとして例えばArガスや他の必要なガスが、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部64を通して供給される。
【0028】
ここでプラズマ成膜装置12の各構成部は、装置制御部100に接続されて制御される構成となっている。具体的には装置制御部100は、バイアス電源制御部40、高周波電源50、可変直流電源58、ガス制御部64、スロットルバルブ66、真空ポンプ68等の動作を制御し、本発明の金属膜を成膜する時に次のように動作する。
まず真空ポンプ68を動作させることにより真空にされた処理容器14内に、ガス制御部64を動作させつつArガスを流し、スロットルバルブ66を制御して処理容器14内を所定の真空度に維持する。その後、可変直流電源58を介してDC電力を金属ターゲット56に印加し、更に高周波電源50を介して誘導コイル部48に高周波電力を印加する。
【0029】
一方、装置制御部100はバイアス電源制御部40にも指令を出し、載置台20に対して所定のバイアス電力を印加する。このように制御された処理容器14内においては、金属ターゲット56、誘導コイル部48に印加された電力によりアルゴンプラズマが形成されてアルゴンイオンが生成され、これらイオンは金属ターゲット56に衝突し、この金属ターゲット56がスパッタされる。
また、スパッタされた金属ターゲット56の金属原子、金属原子団はプラズマ中を通る際にイオン化されると共に載置台20に印加されたバイアス電力に引きつけられ、ウエハSに対し垂直性の高い金属イオンとして載置台20上のウエハSに堆積する。
【0030】
後述するように、装置制御部100は、バイアス電源制御部40にさらに大きな出力を出す指令を与えることによりプラズマ中のArイオンにおいても載置台20側に引きつけることが可能となり、成膜とスパッタエッチングの両方が同時に起きることが達成される。ここで装置各構成部の制御は、装置制御部100により、所定の条件で金属膜の成膜が行われるように作成されたプログラムに基づいて制御されるようになっている。この際、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)やコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリー等の記憶媒体に、各構成部の制御を行うための命令を含むプログラムを格納しておき、このプログラムに基づいて所定の条件で処理を行うように各構成部を制御させるようにしても良い。
【0031】
次に、以上のように構成されたプラズマ成膜装置を用いて行われる本発明方法について説明する。
<第1実施例>
図2はスパッタエッチングの角度依存性を示すグラフ、図3はバイアス電力とウエハ上面の成膜量との関係を示すグラフ、図4は本発明方法の第1実施例を説明するための各工程を示す図である。
【0032】
まず本発明方法の特徴は、一連の成膜処理の内の特定の工程において、プラズマによるスパッタ成膜を行う際に、バイアス電力を適切な大きさに制御することにより、金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるようにして、半導体ウエハに形成されている凹部の側壁に集中的に金属膜を堆積させるようにした点である。具体的には、この時のバイアス電力は、金属ターゲット56に対する対向面、すなわち図1においてはウエハの上面に関して、金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような大きさに設定される。
【0033】
この点について更に詳しく説明する。
まず、成膜量を考慮しないでプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートについてその特性を検討すると、スパッタ面の角度とエッチングレートとの関係は図2に示すグラフのようになる。ここでスパッタ面の角度とは、スパッタ面の法線がスパッタガス(Arガス)の入射方向(図1中では下向き方向)となす角度を指し、例えばウエハ上面及び凹部の底部は共に”0度”であり、凹部側壁は”90度”である。
このグラフから明らかなように、ウエハ上面(スパッタ面の角度=0度)はある程度スパッタエッチングが行われ、凹部の側壁(スパッタ面の角度=90度)はほとんどスパッタエッチングが行われず、また凹部の開口の角部(スパッタ面の角度=40〜80度近傍)はかなり激しくスパッタエッチングされることが判る。
【0034】
さて、図1に示すようなICP型スパッタ装置よりなるプラズマ成膜装置では、ウエハS側に印加するバイアス電力とウエハ上面(凹部の側壁ではない)に堆積する成膜量との関係は図3に示すような関係となる。すなわち、一定のプラズマ発生用高周波電力を加えている状況において、バイアス電力がそれ程大きくない場合には、金属イオンの引き込みによって高い成膜量が得られるが、更にバイアス電力が増加すると、ウエハ表面がバイアス電力により加速されたプラズマガスのイオンによりスパッタされる傾向が次第に強くなり(図2参照)、この結果、折角、堆積した金属膜がエッチングされてしまう。このエッチングは当然のこととしてバイアス電力が大きくなる程、激しくなる。
【0035】
従って、金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスのイオンによるスパッタエッチングのエッチングレートとが同一になると、成膜とエッチングとが相殺されて、ウエハ上面の成膜量が”ゼロ”になり、この時の条件は図3中の点X1(バイアス電力:350W)に対応する。尚、図3中のバイアス電力や成膜量は単に一例を示したに過ぎず、装置や成膜時間等によってこれらの数値が変動するのは勿論である。
【0036】
従来、この種のスパッタ装置で一般的に動作される条件は、領域A1の部分であり、バイアス電力をあまり大きくせずに、高い成膜量(成膜レート)を稼ぐことができる領域であった。これに対して、本発明方法の特定の成膜工程では、金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずる領域で行うようにしている。更に詳しくは、上述のようにウエハ上面において、金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような領域A2で行う。ここで”略均衡”とは、ウエハ上面の成膜量が”ゼロ”の場合のみならず、領域A1における成膜量と比較して3/10程度までの僅かな膜厚で成膜量が生ずる場合も含むものである。
【0037】
さて、以上のような現象を理解した上で、本発明に方法について説明する。
まず、載置台20を下方へ降下させた状態で処理容器14のゲートバルブ34を介して真空引き可能になされた処理容器14内へウエハSを搬入し、これを支持ピン30上に支持させる。そして、この状態で載置台20を上昇させると、この上面にウエハSが受け渡され、このウエハSが静電チャック22により載置台20の上面に吸着される。
そして、載置台20上にウエハSを載置した吸着固定したならば、成膜処理を開始する。この時、ウエハSの上面には、図8において説明したようにビアホールやスルーホールや溝のような凹部2が予め搬入前に前工程で形成されている。
【0038】
まず、金属ターゲット56としてここではタンタルが用いられており、処理容器14内を所定の圧力に真空引きした後に、プラズマ発生源46の誘導コイル部48に高周波電圧を印加し、且つバイアス電源38より所定のバイアス電力を載置台20の静電チャック22に印加して成膜を行う。ここでは、TaN膜を形成するためにガス導入口62よりプラズマガスである例えばArガスの他に、窒化ガスとしてN ガスを処理容器14内に供給する。これにより、図4(A)に示すように、ウエハSの上面のみならず、凹部2内の側壁や底面にも略均一に下地層4としてTaN膜を形成する。この時のバイアス電力は図3中の領域A1であって従来の一般的な成膜条件と同じであり、具体的には100W(ワット)程度である。この場合には、TaN膜よりなる下地層4の成膜量は非常に薄いので、凹部2の開口部にオーバハングが生ずることはない。
【0039】
上記のように下地層4の形成が完了したならば、次に本発明の特徴とする成膜工程を行う。すなわち、この成膜工程では、バイアス電力を増加して図3中の領域A2内に設定する。例えばここではウエハ上面の成膜量を”ゼロ”に設定するためにバイアス電力を図3中のポイントX1に設定して第1の金属膜であるTa膜の成膜を行う(第1ステップ)。この時のバイアス電力は、具体的には350Wである。尚、この時にガス導入口62からは窒化ガスの供給は停止してArガスのみを供給する。これにより、図4(B)に示すように、ウエハSの上面や凹部2の内の底部には金属膜はほとんど堆積せずに凹部2内の側壁のみにTa膜よりなる金属膜6が略均一に堆積することになり、しかも凹部2の開口にもオーバハングが生ずることもない。
【0040】
この理由は次のように説明される。すなわち、上述のようにバイアス電力の大きさを図3中の領域A2、詳しくは、ポイントX1に設定することにより金属イオンの引き込み方向と直交することになるウエハ上面は、前述したように金属イオンの成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するので、結果的に金属膜の成膜量が略ゼロになるからである。また、凹部2内の底部に関しては、この部分でスパッタにより飛散された金属がこの凹部2内の側壁に付着して堆積することになり、この結果、凹部2内の底部の成膜量も略ゼロになり、その分が、側壁に付着して側壁部分の膜厚の均一性向上に寄与することになる。また凹部2の開口にオーバハング部分8(図8参照)が生じない理由も、上記したように成膜現象とエッチング現象とが互いに相殺するように作用した結果による。
【0041】
このように金属イオンの成膜レートと、プラズマガスによるエッチングレートとが略均衡する成膜方法において、重要な点は、成膜に寄与する金属はプラズマ中において中性金属原子を含まず、略全てがイオン化されている(95%以上、好ましくは99%以上)点である。
このためにはプラズマ発生源46の高周波電力を高く設定すればよい(5000〜6000W)。すなわち、成膜種として中性金属原子を含んでいると、ウエハ上面での成膜量がゼロであっても凹部2内の底部においてはエッチングが発生してしまい、下地膜であるバリヤ層4がダメージを受けるので、好ましくない。このエッチングが発生する理由は、もしプラズマ中に中性金属原子が存在すると、この中性金属原子はウエハ上面には成膜するが、凹部2の底部には、ウエハSに対する垂直性が低いことから、この中性金属原子が到達できないからである。このため凹部2の底部においては、金属イオンよりもプラズマガスのイオンの方が多くなり、エッチングされてしまうことになる。
【0042】
尚、ここで説明を単純化するため、プラズマガスのイオン1個により、成膜された金属原子(或いは金属イオン)1個が飛び出る(エッチングされる)と想定している。
また本発明による成膜方法では、凹部2の側壁に金属膜を堆積させていることから、金属イオンのウエハに対する垂直性はある程度低い方が好ましい。このため処理容器14内の圧力を、従来の成膜方法と比較して高く維持して低真空状態とし(1〜100mTorr、より好ましくは3〜10mTorr)、金属イオンの平均自由工程を短くする。これにより金属イオンがプラズマガスに衝突する回数が増え、ウエハに対する垂直性を低くすることができる。
【0043】
この点について、図5を参照しつつ説明する。図5はバイアス電力やプロセス圧力に対する金属イオンの垂直性を示すグラフである。図5においてA、B及びCで示される各楕円は、ウエハ上面において単位面積当たりに成膜される金属イオンの量とその入射角を示している。つまり各楕円に対して原点から直線を引いた場合、原点からその交点までの長さが金属イオン量となり、X軸とのなす角度が入射角となる。ただしここでは、ウエハ上面に対して垂直に入射する場合が0度となる。ここで例えば楕円Aは図3における領域A1で成膜した場合に相当し、楕円Bはプロセス圧力が低真空で、且つ領域X1で成膜した場合に相当し、楕円Cはプロセス圧力が高真空(0.5mTorr以下)で、且つ領域X1で成膜した場合に相当する。また直線L1、L2は図6中に併記して示すように、凹部2の底部に到達できる金属イオンの臨界角θ示すものである。
【0044】
図5において、臨界角θより小さい角度でウエハ上面に到達した金属イオンは、側壁にも成膜するが、底部にも成膜する。また臨界角θよりも大きい角度で入射した金属イオンは、側壁のみに成膜し、且つその角度が大きいほど側壁の上側に成膜する。従って、本発明のように凹部側壁全体に渡って効率良く成膜するためには、楕円Cよりも、臨界角θ付近の成分を多く含んでいる楕円A、更には楕円Bの方がより好適である。
【0045】
尚、この時、バイアス電力をポイントX1以外の領域A2内に設定して、領域A1の場合の膜厚と比較して遥かに少ない僅かな厚さの金属膜6をウエハ上面に形成するようにしてもよい。
また、バイアス電力は、TaN膜よりなる下地層4がスパッタによりダメージを受けない範囲内の大きさとし、このバイアス電力を過度に大きく設定しないようにする。
【0046】
図4に戻って、このように、Ta膜よりなる金属膜6を形成することにより、TaN膜とTa膜の積層構造よりなるバリヤ層を形成したならば、このウエハSを金属ターゲットがタンタルでなく銅により形成された図1に示す構成と同じ構成のプラズマ処理装置内へ搬入し、ここで先のTa膜よりなる金属膜6を形成した場合と同じプラズマ電力の条件で、すなわちプラズマ電力を図3中の領域A2内のポイントX1に設定し、図4(C)に示すように凹部2内の側壁上、すなわちTa膜の金属膜6上にこれと異なる種類の第2の金属膜として銅膜よりなる金属膜70を形成する(第2ステップ)。この場合にもこの金属膜70は凹部2内の側壁上に均一に形成されることになる。
【0047】
尚、上記のような銅の金属ターゲットが装着されたプラズマ成膜装置は、先のタンタルの金属ターゲットが装着されたプラズマ成膜装置に真空引き可能になされたトランスファチャンバを介して連結すればよく、半導体ウエハSを大気に晒すことなく真空雰囲気中で両成膜装置間に亘って搬送することができる。
【0048】
上記のように、銅膜よりなる金属膜70を本発明方法で形成したならば、同じプラズマ処理容器内で、ここではプラズマ電力を図3中の領域A1に設定して従来方法と同様な条件にし、図4(D)に示すようにウエハ上面のみならず、凹部2内の側壁及び底部にも薄く銅よりなるメッキ電極用金属膜72を形成する。ここで凹部2の開口にオーバハングが生じない理由は、この時に成膜される銅膜の厚みが、例えば90nm以下と、薄いためである。
【0049】
このようにして、メッキ電極用金属膜72を形成したならば、ウエハSをプラズマ成膜装置より取り出して、これに通常のメッキ処理を施すことにより、図4(E)に示すように凹部2内を銅よりなる金属74により完全に埋め込むことになる。この場合、図8に示す従来方法の場合と異なって、凹部2の開口にはオーバハング部分は生じていないので、ボイド等を生ずることなく凹部2内を銅により完全に埋め込むことができる。
ここで上記各プラズマ成膜時のプロセス条件は略同じであり、装置制御部100は、例えばターゲット用の直流電源58の出力は0〜12000W、Arガスの流量は50〜1000sccm、バイアス電力は320〜350W程度、窒化ガスであるN ガスは5〜500sccmの範囲の所定値になるようにプラズマ成膜装置12の各構成部を制御する。
【0050】
<第2実施例>
次に本発明の第2実施例について説明する。
図6は本発明方法の第2実施例の一部を示す工程図である。上記第1実施例では、図4(B)に示すTa膜よりなる金属膜6を形成する第1ステップと図4(C)に示すCu膜よりなる金属膜70を形成する第2ステップとを連続的に行ったが、この第2実施例では、上記第1ステップと第2ステップとの間に、エッチングステップを行って凹部の下地層を削り取るようにしている。
【0051】
具体的には、この場合には、図6(A)(図4(B)と略同じ構造)に示すように本発明方法を用いてTa膜よりなる金属膜6を形成する第1ステップを行う時に、図3中の領域A2中のポイントX1よりも少し上方の領域A3あたりのバイアス電力を印加し、次工程のエッチングに備えてウエハSの上面にも僅かな厚さΔHの金属膜6Aを形成しておく。この場合、領域A3におけるバイアス電力として例えば320W程度に設定する。尚、この時、凹部2の底部においては、図示しないが上記厚さΔHの20%程度の厚さの金属膜が堆積される。
【0052】
そして、次に、図6(B)に示すように底部下地層エッチングステップを行って、凹部2内の底部のみに位置するTaN膜よりなる下地層4を削り取る。この底部下地層エッチングステップは、図1に示すような装置において金属ターゲット56を取り外した装置、すなわちプラズマスパッタ装置を用い、Arスパッタにより凹部2内の底部のTaN膜よりなる下地層をエッチングして削り取ってしまう。
【0053】
この際、ウエハSの上面側もArスパッタによりたたかれるが、この部分には上述したように僅かな厚さΔHのTa膜よりなる金属膜6Aが形成されているので、この金属膜6Aが保護膜として作用し、このウエハ上面がダメージを受けることはない。
上述のように、底部下地層エッチングステップが終了したならば、次に図6(C)(図4(C)に対応)に示すように、Cu膜よりなる金属膜70を形成する第2ステップを行う。そして更に、図6(D)(図4(D)に対応)に示すように、メッキ電極用金属膜72の形成及びメッキ処理による凹部2内に対するCu膜による埋め込み処理(図4(E)参照)を順次行うことになる。
この場合、凹部2の下方は一般的には、Cuよりなる配線等が存在するので(図6(D)参照)、凹部2の底部では間にTaN膜4が存在することのないCu−Cuコンタクト(接続)が実現し、この部分における電気抵抗を大幅に抑制することが可能となる。
【0054】
<第3実施例>
次に本発明の第3実施例について説明する。
図7は本発明方法の第3実施例を示す工程図である。上記第1及び第2実施例では、Ta膜よりなる金属膜を形成する前にTaN膜より下地層4を予め形成していたが、図7に示すようにこのTaN膜に代えて、この上層の膜種と同じ膜種であるTa膜をストッパ層(初期金属膜)として用いるようにしてもよい。
【0055】
すなわち、図7(A)に示すように、まずウエハSの上面及び凹部2の内面に、従来方法を用いてプラズマによるスパッタ成膜処理を用いて、ここではこの上層の膜種と同じ膜種の金属膜であるTa膜を初期金属膜80として形成する。ここでは、バイアス電力の大きさは図2中の領域A1を用いており、十分な厚さの初期金属膜80を堆積させる。この場合、十分な膜厚(例えば100nm以上)のTa膜を形成することから、凹部2の底面のみならず側壁にもTa膜が堆積されるが、凹部2の開口にはオーバハング部分82が形成されて開口を挟めることになって好ましくない。しかし、このオーバハング部分82の問題は次の工程で解決されることになる。
【0056】
次に、上記初期金属膜80を形成したならば、図7(B)に示すように本発明方法を用いてTa膜よりなる金属膜6を形成する(第1ステップ)。この時のバイアス電力は図3中の領域A2のポイントX1に設定する(図4(B)に対応)。これにより、凹部2内の壁面のみに金属膜6が形成される。すなわち、ウエハSの上面においては金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に平衡状態となるように生じているので、ウエハSの上面の初期金属膜80の厚さHはほとんど変化することはない。また凹部2の開口部分は、多方向からArイオンによりスパッタを受け易くなるので、この部分に形成されていたオーバハング部分82(図7(A)参照)は削り取られてしまうことになり、比較的に正常な開口に戻ることになる。
【0057】
これ以降の工程は、図7(C)に示すようにCu膜よりなる金属膜70を形成する第2ステップを行い(図4(C)に対応)、次に、図7(D)に示すように凹部2内を含む全面にCu膜よりなるメッキ電極用金属膜72を形成し(図4(D)に対応)、更に図7(E)に示すようにメッキ処理を施して上記凹部2内をCuよりなる金属74により埋め込むようにする(図4(E)参照)。この場合にも、第1実施例の場合と同様の作用効果を示し、例えば凹部2内にボイド等が発生することを防止することができる。
【0058】
尚、上記各実施例における各数値は単に一例を示したに過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。また上記実施例では、バリヤ膜/シード膜の積層構造として、全体としてTaN/Ta/Cu(第1及び第2実施例)或いはTa/Cu(第3実施例)の積層構造を例にとって説明したが、この種の積層構造に限定されず、例えばTiN/Ti/Cu積層構造、TiN/Ti/Ru積層構造、更には、Ti/Cu、Ti/Ruの各積層構造についても本発明方法を適用できるのは勿論である。
【0059】
更に、各高周波電源の周波数も13.56MHzに限定されるものではなく、他の周波数、例えば27.0MHz等を用いることもできる。またプラズマ用の不活性ガスとしてはArガスに限定されず、他の不活性ガス、例えばHeやNe等を用いてもよい。
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、LCD基板、ガラス基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るプラズマ成膜装置の一例を示す断面図である。
【図2】スパッタエッチングの角度依存性を示すグラフである。
【図3】バイアス電力とウエハ上面の成膜量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明方法の第1実施例を説明するための各工程を示す図である。
【図5】バイアス電力やプロセス圧力に対する金属イオンの垂直性を示すグラフである。
【図6】本発明方法の第2実施例の一部を示す工程図である。
【図7】本発明方法の第3実施例を示す工程図である。
【図8】半導体ウエハの上部を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0061】
2 凹部
4 下地層
6 金属膜(第1の金属膜)
12 プラズマ成膜装置
14 処理容器
20 載置台
22 静電チャック
38 バイアス電源
40 バイアス電源制御部
46 プラズマ発生源
48 誘導コイル部
50 高周波電源
56 金属ターゲット
62 ガスノズル(ガス導入手段)
70 金属膜(第2の金属膜)
72 メッキ電極用金属膜
80 初期金属膜
S 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた処理容器内でプラズマにより金属ターゲットをイオン化させて金属イオンを発生させ、前記金属イオンを前記処理容器内の載置台上に載置した被処理体にバイアス電力により引き込んで凹部が形成されている前記被処理体に金属膜を堆積させるようにした成膜方法において、
前記載置台に、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力を加えて、前記凹部の側壁に金属膜を堆積させる成膜工程を行うようにしたことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記バイアス電力は、前記被処理体の前記金属ターゲットに対する対向面に関して、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような大きさに設定されていることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記被処理体の表面全体には、前記金属膜に対する下地層が予め形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記バイアス電力は、前記下地層をスパッタによりエッチングしないような大きさに設定されていることを特徴とする請求項3記載の成膜方法。
【請求項5】
前記成膜工程の前に、前記成膜工程で形成する膜種と同じ膜種の金属膜を補助金属膜として形成する初期金属膜形成工程を行うことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項6】
前記成膜工程は、第1の金属膜を形成する第1ステップと、この第1ステップの後に、前記第1の金属膜とは異なる種類の第2の金属膜を形成する第2ステップとを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記第1ステップと第2ステップとの間に、前記凹部の底部に位置する下地層をエッチングにより削り取る底部下地層エッチングステップを行うことを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項8】
前記金属膜はタンタル膜であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第1の金属膜はタンタル膜であり、前記第2の金属膜は銅膜であることを特徴とする請求項6または7記載の成膜方法。
【請求項10】
前記下地層はタンタル窒化膜(TaN)であることを特徴とする請求項8または9記載の成膜方法。
【請求項11】
前記凹部は、ビアホール、スルーホール、溝(トレンチ)の内の少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項12】
真空引き可能になされた処理容器と、
凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、
前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、
前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、
前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属ターゲットと、
前記載置台に対して所定のバイアス電力を供給するバイアス電源と、
前記バイアス電源を制御するバイアス電源制御部と、を有するプラズマ成膜装置において、
前記バイアス電源制御部は、前記バイアス電源より出力されるバイアス電力を、前記載置台に、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力に設定して、前記凹部の側壁に金属膜を堆積させるように構成したことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項13】
前記バイアス電源制御部は、前記バイアス電力を、前記被処理体の前記金属ターゲットに対する対向面に関して、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜レートとプラズマガスによるスパッタエッチングのエッチングレートとが略均衡するような大きさに設定することを特徴とする請求項12記載のプラズマ成膜装置。
【請求項14】
真空引き可能になされた処理容器と、
凹部の形成された被処理体を載置するための載置台と、
前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、
前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、
前記処理容器内に設けられて前記プラズマによりイオン化されるべき金属ターゲットと、
前記載置台に対して所定のバイアス電力を供給するバイアス電源と、
前記バイアス電源を制御するバイアス電源制御部と、
前記処理容器内へ導入させたガスをプラズマ化して前記金属ターゲットをイオン化させて金属イオンを形成する工程と、前記金属イオンに対する引き込みによる成膜とプラズマガスによるスパッタエッチングとが同時に生ずるような大きさのバイアス電力を印加して前記凹部の側壁に金属膜を堆積させるようにした工程とを実行するように装置全体を制御する装置制御部と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−148074(P2006−148074A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293044(P2005−293044)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】