説明

成膜装置及び基板処理装置

【課題】排気口の位置を変更することなく、複数の処理領域の雰囲気を互いに混合させずに夫々対応する排気口へ排気させること。
【解決手段】回転テーブルの回転方向に、互いに離れて設けられ、反応ガス供給手段を備える複数の処理領域と、複数の処理領域の雰囲気を互いに分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、分離ガスを供給する分離ガス供給手段が設けられた分離領域と、前記複数の処理領域の雰囲気を夫々排気するために処理容器に設けられた複数の排気口と、前記複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を案内する排気路とを、排気される各処理領域の雰囲気同士が混合しないように処理領域毎に独立して形成する排気路形成部材と、を備え、前記回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブル上の基板に複数種類の反応ガスを順番に供給し、反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置及び複数種類の反応ガスを順番に供給して基板に処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれている。例えば特許文献1〜4にこのような処理を行う装置が記載されている。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として、例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
【0004】
このような成膜方法を実施する装置としては、複数枚の基板を真空容器内の回転テーブルに回転方向に配置して成膜処理を行う装置を用いることが検討されている。より具体的に、このような成膜装置では、例えば前記真空容器内の回転テーブルの回転方向に互いに離れた位置に夫々異なる反応ガスが供給されて成膜処理が行われる処理領域が複数形成され、また、前記回転方向において処理領域と処理領域との間の領域は、これら処理領域の雰囲気を分離するための分離ガスが供給される分離ガス供給手段を備えた分離領域として構成される。
【0005】
成膜処理時には、前記分離ガス供給手段から分離ガスが供給され、その分離ガスが回転テーブル上を回転方向両側に広がり、分離領域にて各反応ガス同士の混合を阻止するための分離空間が形成される。そして、処理領域に供給された反応ガスは例えばその回転方向両側に広がった分離ガスと共に真空容器内に設けられた排気口から排気される。このように処理領域にて処理ガスを、分離領域にて分離ガスを夫々供給する一方で、前記回転テーブルを回転させてそのテーブルに載置されたウエハを一の処理領域から他の処理領域へ、他の処理領域から一の処理領域へと交互に繰り返し移動させ、ALDまたはMLD処理を行う。
【0006】
ところで、分離領域の適切な大きさは、使用するガスの種類などの処理条件によって様々である。例えば処理ガス中の分子の吸着に長い時間を要する処理の場合には、前記吸着に要する時間が短い場合に比べて分離領域の大きさを抑えることが有効である。また、酸化に比較的長い時間を要する処理の場合には、回転方向において酸化用のガスを供給する領域から分離領域に至るまでの長さを大きく設定することが有効である。また、3つ以上のガスをウエハ上で互いに反応させるように処理領域を設け、各処理領域間に分離領域を配置することも考えられる。このように適切な処理領域の及び分離領域の配置は処理によって異なる。
【0007】
ところで、このような成膜装置では、異なる処理領域に供給される反応ガス同士が混ざって反応するとパーティクルが発生するため、このような混合を防ぐために排気流の形成方向を制御する必要がある。そこで、上記のように処理領域の数、分離領域の配置が変われば、これらの各領域の配置に従って真空容器内の排気流を変更する必要がある。しかし、処理が変更されるたびに真空容器に排気口を形成することは手間である。上記の特許文献の成膜装置においてはこのような問題は記載されておらず、当該問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図6(a)、(b)
【特許文献2】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献3】米国特許公報6,869,641号:図1
【特許文献4】特開2007−247066号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は排気口の位置を変更することなく、複数の処理領域の雰囲気を互いに混合させずに夫々対応する排気口へ排気させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜装置は、処理容器内にて回転テーブルを回転させることにより、当該回転テーブル上の基板に複数種類の反応ガスを順番に供給し、反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記回転テーブルの回転方向に、互いに離れて設けられた複数の処理領域と、
これら複数の処理領域に互いに異なる種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の雰囲気を互いに分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、分離ガスを供給する分離ガス供給手段が設けられた分離領域と、
前記複数の処理領域の雰囲気を夫々排気するために処理容器に設けられた複数の排気口と、
前記複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を案内する排気路とを、排気される各処理領域の雰囲気同士が混合しないように処理領域毎に独立して形成する排気路形成部材と、
を備え、
前記回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できることを特徴とする。
【0011】
本発明の具体的な態様としては例えば下記の通りである。
(1)前記排気路形成部材の一の開口部に接続される一の排気路と、他の開口部に接続される他の排気路とは互いに並行して、回転テーブルの回転方向に沿って形成される。
(2)排気路形成部材は、前記開口部の位置を変更するために処理容器に対して着脱自在に構成される。
(3)排気路形成部材は、各排気路を形成するための本体部と、各開口部を構成するための開口部形成部材とにより構成され、前記本体部に対する開口部形成部材の前記回転方向の位置が変更自在に構成されることを特徴とする。
本発明の基板処理装置は、処理容器内にて回転テーブルを回転させることにより、当該回転テーブル上の基板に複数種類の反応ガスを順番に供給し、ガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルの回転方向に、互いに離れて設けられた複数の処理領域と、
これら複数の処理領域に互いに異なる種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の雰囲気を互いに分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、分離ガスを供給する分離ガス供給手段が設けられた分離領域と、
前記複数の処理領域の雰囲気を夫々排気するために処理容器に設けられた複数の排気口と、
前記複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を案内する排気路とを、排気される各処理領域の雰囲気同士が混合しないように処理領域毎に独立して形成する排気路形成部材と、
を備え、
前記回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理容器に設けられる排気路形成部材が、複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を互いに独立して案内する排気路とを備え、回転テーブルの回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できるように構成されている。それによって任意の位置から排気を行い、各処理領域に供給される反応ガスを互いに混合させずに排気口へ排気させることができる。従って、処理領域または分離領域の位置変更を行ったときに排気口の位置変更を行う必要が無いので装置の構成の変更に要する手間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】前記成膜装置の平面図である。
【図4】前記成膜装置に設けられる気流形成部材の正面側斜視図である。
【図5】前記気流形成部材の背面側斜視図である。
【図6】前記気流形成部材のA−A矢視縦断斜視図である。
【図7】前記気流形成部材のB−B矢視縦断斜視図である。
【図8】前記気流形成部材のC−C矢視縦断斜視図である。
【図9】前記成膜装置に形成される気流の説明図である。
【図10】成膜装置の他の構成を示す平面図である。
【図11】他の気流形成部材を示す横断平面図である。
【図12】前記気流形成部材のD−D矢視縦断側面図である。
【図13】前記気流形成部材のE−E矢視縦断斜視図である。
【図14】前記気流形成部材のF−F矢視縦断斜視図である。
【図15】更に他の気流形成部材を示す斜視図である。
【図16】前記気流形成部材を示す斜視図である。
【図17】更に他の気流形成部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の例)
本発明の実施形態である成膜装置1について説明する。成膜装置1は、基板である半導体ウエハ(以下ウエハと記載する)WにALD(Atomic Layer Deposition)及びMLD(Molecular Layer Deposition)を行う。図1、図2、図3は夫々成膜装置1の縦断側面図、概略斜視図、横断平面図である。成膜装置1は、概ね円形状の扁平な真空容器(処理容器)11と、真空容器11内に水平に設けられた円板状の回転テーブル12と、を備えている。真空容器11は大気雰囲気に設けられ、天板13と、真空容器11の側壁及び底部をなす容器本体14とにより構成されている。図1中11aは、真空容器11内を気密に保つためのシール部材であり、14aは容器本体14の中央部を塞ぐカバーである。図中12aは回転駆動機構であり、回転テーブル12を周方向に回転させる。
【0015】
回転テーブル12の表面には、当該回転テーブル12の回転方向に沿って5つの凹部16が形成されている。図中17は搬送口である。図3中18は搬送口17を開閉自在なシャッタである(図2では省略している)。搬送口17から搬送機構2AがウエハWを保持した状態で真空容器11内に進入すると、搬送口17に臨む位置における凹部16の孔16aから回転テーブル12上に不図示の昇降ピンが突出してウエハWを突き上げ、凹部16と搬送機構2Aとの間でウエハWが受け渡される。真空容器11からウエハWが搬出される時には、昇降ピンが凹部16内のウエハWを突き上げ、前記搬送機構2Aが突き上げられたウエハWを受け取り、真空容器11の外に搬出する。
【0016】
回転テーブル12上には、夫々回転テーブル12の外周から中心へ向かって伸びる棒状の第1の反応ガスノズル21、分離ガスノズル22、第2の反応ガスノズル23及び分離ガスノズル24が、この順で周方向に配設されている。これらのガスノズル21〜24は下方に開口部を備え、回転テーブル12の径に沿って夫々ガスを供給する。第1の反応ガスノズル21はBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスを、第2の反応ガスノズル23はO3(オゾン)ガスを夫々吐出する。分離ガスノズル22、24はN2(窒素)ガスを吐出する。
【0017】
真空容器11の天板13は、下方に突出する扇状の2つの突状部25を備え、突状部25は周方向に間隔をおいて形成されている。前記分離ガスノズル22、24は、夫々突状部25にめり込むと共に、当該突状部25を周方向に分割するように設けられている。前記第1の反応ガスノズル21及び第2の反応ガスノズル23は、各突状部25から離れて設けられている。
【0018】
第1の反応ガスノズル21の下方のガス供給領域を第1の処理領域P1、第2の反応ガスノズル23の下方のガス供給領域を第2の処理領域P2とする。突状部25、25の下方は分離領域D、Dとして構成されている。成膜処理時に分離ガスノズル22、24から前記分離領域Dに供給されたN2ガスが、当該分離領域Dを周方向に広がり、回転テーブル12上でBTBASガスとO3ガスとが混合されることを防ぎ、余剰のBTBASガス及びO3ガスを、後述の気流形成部材4の開口部へと押し流す。
【0019】
また、この成膜処理時には、回転テーブル12の中心部領域28にN2ガスが供給される。天板13において、リング状に下方に突出した突出部29の下方を介して、このN2ガスが回転テーブル12の径方向外側に供給され、前記中心部領域でのBTBASガスとO3ガスとの混合が防がれる。また、図示は省略しているが、カバー14a内及び回転テーブル12の裏面側にもN2ガスが供給され、反応ガスがパージされるようになっている。真空容器11の底部にはヒータ19が設けられ、回転テーブル12を介してウエハWを所定の温度に加熱する。図中19Aはヒータ19に対する成膜を防ぐためのシールドである。
【0020】
真空容器11の側壁には互いに異なる高さに第1の排気口31及び第2の排気口32が開口している。この例では回転テーブル12は平面視時計回りに回転し、排気口31、32は、前記回転方向において処理領域P2と、その下流側に隣り合う分離領域Dとの間の領域の径方向外側に設けられている。ただし、後述の気流形成部材により任意の位置より排気を行うことができるので、排気口31、32の位置としてはこの例に限られるものではない。
【0021】
真空容器11の外側には接続部33、34が設けられ、これら接続部33、34を介して排気口31、32に排気管35が各々接続されている。真空容器11の底面の周縁部にはリング状の凹部40が設けられている。そして、回転テーブル12と真空容器11の側壁の内周面11Aとの間にはリングを略半分に分割した形状の排気路形成部材4が設けられており、排気路形成部材4の下方側は前記凹部40に埋め込まれるように配置されている。この例では排気路形成部材4は、第2の処理領域P2の下流側から回転テーブル12の回転方向に沿って第1の処理領域P1の下流側へ向かって延びている。
【0022】
図4、図5は排気路形成部材4の正面側(回転テーブル12に向かう側)、背面側(真空容器11の内周面11Aに向かう側)を夫々示している。また、図6、図7、図8は、図3のA−A、B−B、C−Cの矢視断面を夫々示している。これらの図を参照しながら排気路形成部材4について説明する。排気路形成部材4は回転テーブル12に向かう内周板41と、内周板41上に設けられる上板42と、前記回転方向の両端部を構成する立て板43、43とを備え、これら各板により囲まれる空間が設けられている。つまり、排気路形成部材4は背面側及び底面側が開放された箱体として構成されている。
【0023】
そして、前記各板により囲まれる空間を2つに仕切るように仕切り板44が設けられている。この仕切り板44は、内周板41の上端よりも下方の高さから回転テーブル12の径方向外側へ向かって伸びた後、下方に向かって90°屈曲され、さらにその先端は回転テーブル12の径方向外側へ向かって90°屈曲されている。
【0024】
この排気路形成部材4は、前記凹部40の底面11B及び真空容器11の内周面11Aと共に、仕切り板44により互いに区画された2つの排気路を形成する。仕切り板44の上方側の排気路を第1の排気路45、下方側の排気路を第2の排気路46とする。内周板41には、第1の排気路45に接続される第1の開口部47と、第2の排気路46に接続される第2の開口部48とが設けられている。この例では第1の開口部47は、第1の処理領域P1の回転方向下流側に位置している。第2の開口部48は第1の処理領域P1の回転方向上流側の分離領域Dよりもさらに上流側位置に開口している。排気路形成部材4の開口部47、48の位置は、排気路形成部材により変更できるようになっている。
【0025】
ここで、開口部の位置を排気路形成部材により変更するとは、排気口に対する開口部の回転方向における開口位置が互いに異なる排気路形成部材同士で交換を行うことにより開口部の位置を変更するために排気路形成部材を真空容器(処理容器)に対して着脱自在に構成することと、排気路形成部材を複数の分割片により構成し、一の分割片の位置を他の分割片の位置に対して変更することにより開口部の位置を変更することと、開口位置が互いに異なる一の分割片同士で他の分割片に対して交換を行うことにより開口部の位置を変更するために、他の分割片に対して一の分割片を着脱自在に構成することと、が含まれる。この例における排気路形成部材4は、真空容器11に対して着脱自在に構成されている。
【0026】
仕切り板44及び内周板41にはガスノズル21、24を貫通させるための貫通孔49A、49Bが形成されている。図6及び図7に示すように第1の排気路45は前記第1の排気口31に接続され、図8に示すように第2の排気路46は前記第2の排気口32に接続されるように前記仕切り板44は各排気路45、46を仕切っている。つまり、第1の処理領域P1の雰囲気は第1の開口部47及び第1の排気路45を介して第1の排気口31より排気され、第2の処理領域P2の雰囲気は第2の開口部48及び第2の排気路46を介して第2の排気口34より排気される。
【0027】
続いて、この成膜装置1の作用について説明する。外部から搬送機構2Aにより搬送口17を介して、ウエハWを順次回転テーブル2の凹部16に受け渡す。各凹部16にウエハWが載置されると、第1の排気口31及び第2の排気口32に夫々接続された真空ポンプにより排気が行われ、排気路形成部材4を介してこれら第1の排気口31及び第2の排気口32に接続される第1の開口部47及び第2の開口部48から真空容器11内が排気され、真空容器11内が真空雰囲気になる。そして、回転テーブル12が回転すると共にヒータ19により回転テーブル12を介してウエハWが例えば350℃に加熱される。
【0028】
続いて、各ガスノズル21〜24からガスが供給され、ウエハWは第1の反応ガスノズル21の下方の第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル23の下方の第2の処理領域P2とを交互に通過し、ウエハWにBTBASガスが吸着し、次いでOガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成される。こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0029】
図9では矢印で真空容器11内のガスの流れを示しており、第1の開口部47により排気されるガスの流れを実線の矢印で、第2の開口部48により排気されるガスの流れを点線の矢印で夫々示している。図中30の矢印は回転テーブル12の回転方向を示している。この図9も参照しながら説明を続けると、上記の成膜処理時に分離ガスノズル22、24から前記分離領域Dに供給されたN2ガスが、当該分離領域Dを周方向に広がり、回転テーブル12上でBTBASガスとO3ガスとが混合されることを防ぐ。また、この成膜処理時には、回転テーブル12の中心部領域28上の空間にN2ガスが供給される。天板13において、リング状に下方に突出した突出部29の下方を介して、このN2ガスが回転テーブル12の径方向外側に供給され、前記中心部領域28でのBTBASガスとO3ガスとの混合が防がれる。また、図示は省略しているが、カバー14a内及び回転テーブル12の裏面側にもN2ガスが供給され、反応ガスがパージされるようになっている。
【0030】
第1の処理領域P1に開口した第1の開口部47により排気されているため、第1の処理領域P1に供給された余剰のBTBASガスと、中心部領域28から第1の処理領域P1に向けて吐出されたN2ガスと、分離領域Dから第1の処理領域P1に向けて広がったN2ガスとは、この第1の開口部47に流入する。また、第2の処理領域P2に開口した第2の開口部48により排気されているため、第2の処理領域P2に供給された余剰のO3ガスと、中心部領域28から第2の処理領域P1に向けて吐出されたN2ガスと、分離領域Dから第2の処理領域P2に向けて広がったN2ガスとは、この第2の開口部48に流入する。
【0031】
第1の開口部47に流入したガスは、排気路形成部材4の第1の排気路45を介して第1の排気口31から排気され、第2の開口部48に流入したガスは、排気路形成部材4の第2の排気路46を介して第2の排気口32から排気される。このように互いに区画された排気路45、46を通ってBTBASガス、O3ガスが夫々排気されるので、これらのガスが混合されることによりパーティクルの発生が防がれる。所定の回数、回転テーブル12が回転して所定の膜厚のシリコン酸化膜が形成されると、各ガスの供給が停止し、ヒータ19の温度が低下する。そして、搬送機構2AによりウエハWは真空容器11の外側へ搬出される。
【0032】
この成膜装置1によれば、排気路形成部材4の第1の開口部47により処理領域P1の雰囲気を、処理領域P2の雰囲気を排気するための第2の排気路46から区画されると共に回転テーブル12の回転方向に沿って設けられた第1の排気路45を介して、第1の開口部47とは回転テーブル12の回転方向にずれた位置にある第1の排気口31へと排気している。このように排気路形成部材4を備えることで、排気口31、排気口32の位置によらず回転テーブル12上の雰囲気を排気する位置を制御することができる。この例では第1の排気口31が第1の処理領域P1に開口していないが、この第1の排気口31をそのように処理領域P1に開口させる必要が無いため、装置の製造に要する手間を抑えることができる。
【0033】
(第2の例)
図10には、成膜装置1の他の構成例を示している。この例では回転テーブル12上に時計回りに第1の反応ガスノズル21、分離ガスノズル22、第2の反応ガスノズル23、分離ガスノズル24、第1の反応ガスノズル21、分離ガスノズル22、第2の反応ガスノズル23、分離ガスノズル24、をこの順に配置しており、回転テーブル12の一回の回転でBTBASガスの分子の吸着及び前記分子の酸化が2回行えるように構成されている。そして、各反応ガスノズル間には突状部25による分離領域Dが形成されており、回転テーブル12上での反応ガスの混合が防がれるようになっている。なお、図10では回転テーブル12上のウエハWの記載は省略している。
【0034】
この成膜装置1に設けられる排気路形成部材5は、回転テーブル12を囲むようにリング状に構成され、第1の排気路45及び第2の排気路46についてもリング状に形成されている。そして各処理領域P1の雰囲気を吸引できるように第1の開口部47が2つ、各処理領域P2の雰囲気を吸引できるように第2の開口部48が2つ設けられている。このような差異点を除いて排気路形成部材5は排気路形成部材4と同様に構成されており、第1の開口部47は第1の排気路45に、第2の開口部48は第2の排気路46に夫々開口している。そして、第1の例と同様に矢印で示すようにBTBASガス及びN2ガスが第1の開口部47から、O3ガス及びN2ガスが第2の開口部48から夫々吸引され、第1の排気路45、第2の排気路46を流れて互いに混ざり合うことなく排気口31、32から排気される。
【0035】
排気口31、32による真空容器11内の排気位置は、排気路形成部材の開口部47、48の位置により特定される。従って、このように第1の例と第2の例との間で分離領域D及び処理領域Pの数及び配置を変更する場合に、排気路形成部材4、5を互いに取り替えることにより、開口部47、48の回転方向における位置及び数を変更すればよく、排気口31、32の配置を変更する必要が無い。従って、このような処理の変更によって装置構成の変更にかかる手間を抑えることができる。
【0036】
(第3の例)
また、排気路形成部材の形状としてはこの例に限られず、例えば真空容器11の内周面11Aと真空容器11の凹部20の底面11Bによらずに第1の排気路、第2の排気路を構成するものであってもよく、図11はそのような排気路形成部材6を示している。排気路形成部材4との差異点を中心に説明すると、この排気路形成部材6は内周板41、上板42、立て板43、43、底板61及び前記真空容器11の内周面11A側に設けられた外周板62に囲まれる箱状に形成されており、この箱内の空間が上下に伸びる仕切り板44により外周側、内周側に仕切られて第1の排気路45、第2の排気路46が形成されている。図11中のD−D、E−E、F−Fの矢視断面を夫々図12、図13、図14に示している。
【0037】
図12に示すように仕切り板44において第1の開口部47に重なるように開口部63が設けられており、さらにこれら開口部47、63を接続する筒状体64が設けられている。そのように構成されることで、第1の開口部47から流入したガスが第2の排気路46に漏れることなく第1の排気路45に導入される。また、図13に示すように外周板62は、第1の排気口31と重なる位置に開口部65を備えており、これによって第1の排気路45を排気できるようになっている。また、図14に示すように仕切り板44及び外周板62には第2の排気口32と重なる位置に開口部66、67が設けられており、これら開口部66、67を互いに接続する筒状体68が設けられている。そのように構成されることで、第2の開口部48から第2の排気路46に流入したガスが第1の排気路45に漏れることなく排気される。
【0038】
(第4の例)
さらに排気路形成部材としては図15に示すように構成してもよい。この例で示す排気路形成部材7は、排気路45、46を形成するための本体部71と、開口部を形成するためのカバー(開口部形成部材)72とにより分割されるように構成されている。本体部71は、第3の例として示した排気路形成部材6と略同様に構成されており、差異点としては排気路形成部材5と同様にリング状に形成され、内周板41には、横長のスリット73、74が設けられている。これらのスリット73、74は、夫々第1の排気路45、第2の排気路46に接続されている。即ち、スリット73、74は排気路形成部材6の第1の開口部47、第2の開口部48を夫々横に広く形成したものに相当する。
【0039】
カバー72はリング状の立て板として構成されており、本体部71に対して着脱自在且つ回転テーブル12の回転方向において本体部71に対する取り付け位置が変更自在に構成されている。カバー72には第1の開口部47、第2の開口部48が設けられている。図16に示すようにスリット73と第1の開口部47との重なる領域、スリット74と第2の開口部48との重なる領域から夫々排気が行われる。つまり、カバー72の開口部47、48の位置により排気する位置が決定される。カバー72を本体部71に対して前記回転方向にずらして取り付けることで、前記開口部47、48をずらすことができるので、所望の位置から排気を行うことができる。また、回転方向に夫々異なる位置に開口部47、48が設けられたカバー72を複数用意し、分離領域D及び処理領域Pの配置に応じてこれらカバー72を選択して取り付けることで、開口部47、48の位置を変更してもよい。
【0040】
この第4の例においても他の各例と同様に、処理位置に応じて排気口の位置をずらす必要が無いため、排気流の変更に要する手間を抑えることができる。他の各例にもこのようなカバー72を設けて排気の位置を制御してもよい。また、図17は、カバー75と本体部71とからなる排気路形成部材70の例を示している。カバー75は本体部71の内周板41の任意の位置に着脱自在に構成される。このカバー75により、スリット73、74の一部を塞ぎ、カバー73により覆われていない領域を第1の開口部47、第2の開口部48として構成することができる。
【0041】
各例で説明したように排気路形成部材の開口部から各処理領域の雰囲気を排気することができるので、各排気口の位置としては既述の例に限られず、処理領域の径方向外側位置に設けてもよいし、分離領域の径方向外側位置に設けてもよいし、真空容器11の底面に設けてもよい。また、成膜用のガスとしては上記のように各ガスノズルから下方へ吐出する代わりに、回転テーブル12の回転中心側から当該回転テーブル12の外側へ向かって吐出してもよい。また、上記の例では第1及び第2の処理領域で夫々成膜用のガスを供給する成膜装置に排気路形成部材を適用しているが、一方の処理領域では反応ガスをウエハWに供給してウエハWに成膜を行い、他方の処理領域では不活性ガスを供給して、ウエハWに形成された膜のアニール処理を行ってもよい。また、一方の処理領域でそのように成膜を行い、他方の処理領域では酸化用ガスを供給すると共にその酸化用ガスをプラズマ化して膜の酸化を行ってもよい。プラズマ処理としては酸化処理に限られず、窒化処理を行ってもよい。また、各処理領域で、ウエハWに互いに異なるガスを供給することにより、ウエハWに形成された膜のエッチング処理を行ってもよい。さらに、異なるガスにより処理を行う処理領域は装置に3箇所以上設け、これら各処理領域間を分離領域Dにより区画してもよい。
【符号の説明】
【0042】
W ウエハ
D 分離領域
P1、P2 処理領域
1 成膜装置
12 回転テーブル
14 容器本体
21、23 反応ガスノズル
22、24 分離ガスノズル
31 第1の排気口
32 第2の排気口
45 第1の排気路
46 第2の排気路
47 第1の開口部
48 第2の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内にて回転テーブルを回転させることにより、当該回転テーブル上の基板に複数種類の反応ガスを順番に供給し、反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記回転テーブルの回転方向に、互いに離れて設けられた複数の処理領域と、
これら複数の処理領域に互いに異なる種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の雰囲気を互いに分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、分離ガスを供給する分離ガス供給手段が設けられた分離領域と、
前記複数の処理領域の雰囲気を夫々排気するために処理容器に設けられた複数の排気口と、
前記複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を案内する排気路とを、排気される各処理領域の雰囲気同士が混合しないように処理領域毎に独立して形成する排気路形成部材と、
を備え、
前記回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記排気路形成部材の一の開口部に接続される一の排気路と、他の開口部に接続される他の排気路とは互いに並行して、回転テーブルの回転方向に沿って形成されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
排気路形成部材は、前記開口部の前記回転方向における位置を変更するために処理容器に対して着脱自在に構成されることを特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
排気路形成部材は、各排気路を形成するための本体部と、各開口部を構成するための開口部形成部材とにより構成され、前記本体部に対する開口部形成部材の前記回転方向の位置が変更自在に構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記排気口による真空容器内の排気位置は、排気路形成部材の前記開口部の位置により特定され、前記開口部の位置を変更することで前記排気位置の変更を行うことができることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
処理容器内にて回転テーブルを回転させることにより、当該回転テーブル上の基板に複数種類の反応ガスを順番に供給し、ガス処理を行う基板処理装置において、
前記回転テーブルの回転方向に、互いに離れて設けられた複数の処理領域と、
これら複数の処理領域に互いに異なる種類の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
前記複数の処理領域の雰囲気を互いに分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、分離ガスを供給する分離ガス供給手段が設けられた分離領域と、
前記複数の処理領域の雰囲気を夫々排気するために処理容器に設けられた複数の排気口と、
前記複数の処理領域に各々開口する開口部と、各開口部から対応する排気口に処理領域の雰囲気を案内する排気路とを、排気される各処理領域の雰囲気同士が混合しないように処理領域毎に独立して形成する排気路形成部材と、
を備え、
前記回転方向における前記開口部の位置が、排気路形成部材により変更できることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−26460(P2013−26460A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160211(P2011−160211)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】