説明

成膜装置

【課題】上蓋の開閉動作や開閉位置にかかわらず、成膜処理室内の異物を検出し、上蓋の開閉動作を停止させ、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させることを目的とする。
【解決手段】成膜装置は、成膜処理室と、成膜処理室の上蓋を開閉する上蓋開閉機構と、上蓋の開閉を撮像する撮像装置と、撮像装置で取得した画像を画像処理する画像処理回路と、上蓋開閉機構の作動を制御するインターロック回路とを備える。ここで、画像処理回路は、撮像装置で取得した画像から異物を検出し、インターロック回路は、画像処理回路による異物検出に基づいて、上蓋開閉機構の作動を停止する。画像処理回路は、この撮像装置で撮像した画像から、成膜処理室および上蓋の画像を除く画像処理を行うことで、異物が存在する場合にはこの異物の画像のみを抽出し、この画像から異物が存在することを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関し、特に、成膜装置の成膜処理室の上蓋を開閉する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に成膜を行って薄膜等を製造する成膜装置が知られている。このような成膜装置は、例えば、太陽電池用薄膜、感光ドラム、液晶ディスプレイ等に用いられるTFTアレイ等の種々の半導体製造に使用されている。
【0003】
このような成膜装置は、複数の成膜処理室をインランに配列することによって、各成膜処理室において基板に種々の膜をそれぞれ異なる条件で成膜処理を行う。このようなインライン式の成膜装置では、各成膜処理室内の保守作業時や清掃作業時には、成膜処理室が備える上蓋を開放する。作業者は、成膜処理室の上蓋を開放した後、成膜処理室の内部の作業を行う。
【0004】
内部作業時には、通常、安全上から作業対象の成膜処理室に上蓋を開閉駆動する上蓋駆動装置の動力源を遮断して行うが、動力源を遮断することを失念し、動力源が有効となった状態で上蓋を開いて内部作業時を行う場合がある。また、内部作業の内容によっては、動力源が有効な状態でなければ行うことができないものもあるため、このような場合には、動力源を有効とした状態で上蓋を開いて内部作業時を行う。
【0005】
したがって、このように、動力源が有効な状態で上蓋を開いて内部作業を行う場合には、内部作業時に上蓋開閉機構が作動し、成膜処理室内に人や異物を挟み込むといった事態が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、上蓋を開放した際に、成膜処理室内に人や異物を挟み込まないように、エリアセンサやライトカーテン等の光学式センサを設ける場合がある。電子部品の製造において、安全性のためにエリアセンサやライトカーテンを設ける技術としては例えば、特許文献1,2がある。
【0007】
図11は、成膜処理室にエリアセンサやライトカーテン等の遮光型センサを適用した場合の一構成例を説明するための図である。図11に示す構成例では、成膜処理室102の上部に上蓋103が上蓋開閉装置(図示していない)によって開閉自在に取り付けられ、成膜処理室102の両側を挟む位置に発光部110aと受光部110bを配置する。上蓋103が開放した際に異物130の存在した場合には、発光部110aから発せられた光は異物130によって遮光される。受光部110bはこの遮光状態を検出することで異物検出を行う。なお、図11(a)は上蓋を閉じた状態を示し、図11(b)は上蓋を開いた状態を示している。
【0008】
図12は、従来の成膜装置の概略構成を説明するための図である。エリアセンサやライトカーテン等の光学センサ110は、成膜処理室102内の異物を検出し、検出信号をインターロック回路114に送る。インターロック回路114は、検出信号に基づいて動力源105から上蓋開閉機構104への動力供給を遮断する。動力供給が遮断されると、上蓋開閉機構104は開閉動作が停止するため、上蓋が開閉することによる人への危害や、異物による成膜装置への損傷を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2001−144499号公報
【特許文献1】特開平11−150399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図12に示したような成膜装置の構成では、異物検出が上蓋の開閉動作の影響を受けるため、異物センサとしての機能を十分に発揮することができないという問題がある。
【0010】
図12(b)は、上蓋103の開閉動作中の状態を示している。この状態では、光学センサ110がエリアセンサやライトカーテン等の光学センサ110は、上蓋103自身を検出することになる。インターロック回路114は、光学センサ110が上蓋103自身を検出したことで作動し、上蓋開閉機構104への動力供給を遮断することになる。そのため、異物が存在しないにもかかわらず、上蓋103の開閉が停止することになり、成膜処理室内での作業を行うことができなくなる。
【0011】
そこで、インターロック回路114を動作させないために、光学センサ110の検出範囲外である、上蓋103が上限位置付近以外にあるときは、光学センサ110からの検出信号を無効とし、光学センサ110からの検出信号が出力されている場合であっても、上蓋開閉機構104への動力供給を遮断することなく続行させる必要がある。図12(c)はこの状態を示している。
【0012】
つまり、上蓋の開閉位置が光学センサ110で検出される位置にある場合には、光学センサ110の検出出力は上蓋開閉機構104の動力制御に反映されないため、仮に成膜処理室102内に人や異物が存在する場合であっても、上蓋の開閉動作が可能であり、光学センサ110によって成膜処理室内に人や異物を挟み込まないようにするという目的が達成されないことになる。図12(d)はこの状態を示している。
【0013】
そこで、本発明は上記課題を解決して、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させることを目的とする。
【0014】
より、詳細には、上蓋の開閉動作や開閉位置にかかわらず、成膜処理室内の異物を検出し、上蓋の開閉動作を停止させ、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させることを目的とする。
【0015】
また、上蓋を開閉する上蓋開閉機構に対する動力を遮断するインターロック回路の機能を十分に発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、成膜処理室を挟む位置に設置した遮光型の光学センサによって異物の有無を検出することに代えて、上蓋の開閉状態を画像によって取得し、取得した画像から異物の存在を判断することで、上蓋の開閉動作やその開閉位置に係わらずに異物の検出を可能とする。そして、異物が存在すると判断されたときにのみ上蓋開閉機構への動力供給を遮断して、上蓋の開閉を停止することで、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させる。
【0017】
なお、以下では、本発明が検出する異物は、成膜処理室において通常処理では存在しない物であり、人も含むものである。
【0018】
本発明の成膜装置は、成膜処理室と、成膜処理室の上蓋を開閉する上蓋開閉機構と、上蓋の開閉を撮像する撮像装置と、撮像装置で取得した画像を画像処理する画像処理回路と、上蓋開閉機構の作動を制御するインターロック回路とを備える。ここで、画像処理回路は、撮像装置で取得した画像から異物を検出し、インターロック回路は、画像処理回路による異物検出に基づいて、上蓋開閉機構の作動を停止する。
【0019】
本発明の成膜装置が備える撮像装置は、成膜処理室および、開閉動作に伴って変化する各開閉角度における上蓋を撮像し、さらに、異物が存在する場合にはこの異物についても、同一画像内に撮像する。
【0020】
本発明の成膜装置が備える画像処理回路は、この撮像装置で撮像した画像から、成膜処理室および上蓋の画像を除く画像処理を行うことで、異物が存在する場合にはこの異物の画像のみを抽出し、この画像から異物が存在することを識別することができる。なお、異物が存在しない場合には、画像処理後の画像には何も残らないため、画像処理後の画像に何もないことから、異物が存在しないことを識別することができる。
【0021】
本発明の画像処理回路が行う画像処理としては、例えば、撮像装置で取得した画像から上蓋の画像と背景画像を除いた差分画像を求め、この差分画像を異物画像として検出する。
【0022】
本発明の成膜装置が備える画像処理回路は、背景画像データを予め取得して記憶手段に記憶しておき、記憶手段から背景画像データを読み出すことで背景画像を取得することができる。
【0023】
また、本発明の画像処理回路は、上蓋の形状データを予め取得して記憶手段に記憶しておき、記憶手段からこの形状データを読み出し、読み出した形状データと取得画像との間でパターンマッチングを行うことで上蓋画像を取得することができる。
【0024】
本発明の成膜装置が備えるインターロック回路は、上蓋開閉機構の駆動するモータ等の駆動機構と動力源との間を開閉制御する回路であり、画像処理装置から異物を検出したことを表す異物検出出力を受けた場合には、駆動機構と動力源との間を遮断して、動力源から駆動機構への動力供給を停止し、上蓋の開閉動作を停止させる。
【0025】
また、本発明の成膜装置が備える撮像装置は、成膜処理室の側面方向、又は、成膜処理室の上方あるいは成膜処理室内を見通す斜め上方向から上蓋を撮像する位置に設置する。この位置に撮像装置を設置することで、上蓋の開閉状態の画像を撮像することができる。
【0026】
また、本発明の成膜装置は、複数の成膜処理室を配置する構成とすることができ、撮像装置は、この複数の成膜処理室の各上蓋の開閉を個別に撮像する複数台CCDカメラで構成する他に、各上蓋の開閉を一画像で撮像する一つのCCDカメラで構成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明によれば、上蓋の開閉動作や開閉位置にかかわらず、成膜処理室内の異物を検出し、上蓋の開閉動作を停止させることができ、これによって、上蓋の開閉動作時における作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、上蓋を開閉する上蓋開閉機構に対する動力を遮断するインターロック回路の機能を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の成膜装置が備える成膜処理室と撮像装置を示す図である。図1(a)は上蓋を閉じた状態を示し、図1(b)は上蓋を開いた状態を示している。
【0032】
図1に示す構成例では、成膜処理室2の上部に上蓋3が上蓋開閉装置(図示していない)によって開閉自在に取り付けられ、上蓋3の開閉状態を撮像する位置に撮像装置11を配置する。なお、ここでは、撮像装置11を上蓋3を側面方向から撮像する位置に配置する構成例を示している。したがって、この位置に配置された撮像装置11によれば、成膜処理室2および上蓋3の側面画像が取得される。上蓋3の側面画像は、上蓋3が上蓋開閉装置(図示していない)によって開閉される種々の角度位置について取得される。撮像装置11は、例えば、CCDカメラを用いることができる。
【0033】
成膜処理室2内に異物30が存在する場合には、撮像装置11は、成膜処理室2および上蓋3の画像と共に、異物30の画像を撮像する。
【0034】
なお、撮像装置11の設置位置は、図1に示した位置に限らず、例えば、上蓋の上方位置としてもよい。この上蓋の上方位置に配置する構成例については、図8〜図10を用いて後述する。
【0035】
図2は、本発明の成膜装置の概略構成を説明するための図である。本発明の成膜装置1は、上方の形成された開口部を上蓋3によって開閉自在とする成膜処理室2と、成膜処理室2の開口部を開閉する上蓋3と、上蓋3を開閉させるモータ等の上蓋開閉機構4と、この上蓋開閉機構4を駆動する動力源5を備える。
【0036】
さらに、成膜装置1は、画像取り込み回路12、画像処理回路13、およびインターロック回路14を備える。
【0037】
画像取り込み回路12は、撮像装置11から出力信号を入力して画像データを取得し、画像処理回路13に送る。
【0038】
画像処理回路13は、画像取り込み回路12から取得した画像データに基づいて、画像中に異物画像が含まれているか否かを判定する画像処理を行い、画像中に異物画像が含まれている場合には、インターロック回路14に検出信号を出力する。
【0039】
インターロック回路4は、画像処理回路13からの検出信号に基づいて、動力源5から上蓋開閉機構4への動力供給を遮断する制御を行う。上蓋開閉機構4は、動力源4からの動力供給が遮断されると、開閉動作を停止する。これによって、上蓋3が開閉することによる人への危害や、異物30による成膜装置1への損傷を防ぐことができる。
【0040】
図2(a)は上蓋3が閉じた状態を示し、図2(b),(c)は上蓋3が開放された状態を示し、図2(b)は異物30が存在しない状態を示し、図2(c)は異物30が存在する状態を示している。
【0041】
図2(a)に示す上蓋3が閉じた状態では、画像処理回路13は上蓋3の存在を識別するが、異物については存在を識別しないため、インターロック回路14には検出信号を出力しない。そのため、上蓋開閉機構4は、インターロック回路14によって動力源5からの動力供給が遮断されることはないため、上蓋3の開放動作を行う。
【0042】
図2(b)に示す上蓋3が開放中の状態においても、画像処理回路13は上蓋3の存在を識別するが、異物については存在を識別しないため、インターロック回路14には検出信号を出力しない。そのため、上蓋開閉機構4は、図2(a)の状態と同様に、インターロック回路14によって動力源5からの動力供給が遮断されることはないため、上蓋3の開放動作を続行する。
【0043】
一方、図2(c)に示す状態は、上蓋3の開放中の状態において、成膜処理室2内に異物30が存在する場合である。この場合には、画像処理回路13は上蓋3と共に、異物30の存在を識別するため、インターロック回路14に検出信号を出力する。そのため、上蓋開閉機構4は、インターロック回路14によって動力源5からの動力供給が遮断され、上蓋3の開放動作を停止する。これによって、異物30による成膜装置1への影響を防ぐ。
【0044】
なお、上記した図2(b)および図2(c)では、上蓋が閉じた状態(図2(a)に示す状態)から上蓋を開放する場合について示しているが、上蓋が開放された状態(図示してない)から上蓋を閉じる場合についても同様である。
【0045】
ここで、本発明の成膜装置の動作例について、図3のフローチャートを用いて説明する。はじめに、上蓋3を閉じた状態(図2(a)に示す状態)とし、撮像装置11で撮像する。この上蓋3を閉じた状態で撮像した映像を、成膜処理室2(上蓋3)の上方に異物が存在しないときの背景画像として記憶装置(図示していない)に記憶する(S1)。
【0046】
次に、上蓋3を開放した状態とし(図2(b)に示す状態)とし、撮像装置11で撮像する。この上蓋3を開放した状態で撮像した映像から、上蓋画像を取得して上蓋形状を記憶装置(図示していない)に記憶する(S2)。
【0047】
上記S1,S2の工程を予め行うことで、背景画像と上蓋形状の上蓋画像とを取得しておき、以後に行う異物検出、および異物検出による上蓋開閉機構の制御に用いる。
【0048】
撮像装置11によって上蓋を撮像し画像を取得する(S3)。画像信号回路13は、記憶装置に記憶しておいた背景画像を読み出し、撮像装置11で撮像した取得画像から背景画像を除く画像処理を行う。この背景画像の除去処理によって、処理後画像中には、異物が存在しない場合には上蓋の画像のみが残る。一方、異物が存在する場合には上蓋の画像とともに異物画像が残る(S4)。
【0049】
次に、S4の工程で残った処理後画像から、上蓋画像を識別する。この上蓋画像の識別は、記憶装置に記憶しておいた上蓋の上蓋形状のデータを読み出し、この上蓋形状データを用いて処理後画像中に含まれる上蓋画像をパターンマッチングすることで識別することができる。なお、上蓋を側面方向から撮像した場合には、上蓋3の開閉動作に伴って取得される撮像画像中に含まれる上蓋画像は、単に回転角度が異なるだけであるため、例えば、上蓋形状データを回転させ、位置を合わせを行うことで上蓋画像とのパターンマッチングを行うことができる(S5)。
【0050】
次に、S4の工程で得られた背景画像を除いた処理後画像から、S5の工程で得られた上蓋画像を除く画像処理を行う。この画像処理によって得られる画像は、異物が存在しない場合には、何も無い状態の画像となり、一方、異物が存在する場合には、異物画像となる。したがって、この画像に含まれる像の有無によって、異物の存在を識別することができる。画像中に像の有無の判定は、例えば、所定強度を超える信号の出現割合が、しきい値を超えるか否か等の画像処理を用いることができるが、この画像処理に限定されるものではなく、画像の有無を識別する任意の画像処理を適用することができる。
【0051】
また、上記画像処理において、撮像画像から背景画像を除く画像処理や、処理後画像から上蓋画像を除く画像処理は、両画像の差分をとる画像処理を適用することができる(S6)。
【0052】
S6の工程で得られた画像中に異物画像が見つからない場合には、S3の工程に戻り、新たに取得した撮像画像について上記工程を繰り返す。
【0053】
一方、S6の工程で得られた画像中に異物画像が見つかった場合には、インターロック回路14に異常を知らせる検出信号を出力する(S7)。インターロック回路14は、検出信号を受けて、動力源5から上蓋開閉機構4への動力供給を遮断する(S9)。
【0054】
図4,5は、S4〜S6の工程で行う、取得画像から背景画像を除く画像処理と、処理後画像から上蓋画像を除く画像処理を説明するための図である。なお、図4(a)〜(c)は上蓋が閉じた状態を示し、図4(d)〜(f)は上蓋が開いた状態であって、異物が存在しない場合を示し、図5(a)〜(c)は上蓋が開いた状態であって、異物が存在する場合を示している。
【0055】
上蓋が閉じた状態において、撮像装置で撮像して得られる取得画像20には、上蓋画像21と背景画像22が含まれる(図4(a))。この取得画像20から背景画像22を除くと、上蓋が閉じた状態では、成膜処理室内に異物が存在しないため、上蓋画像のみを含む処理後画像23が得られる。この処理後画像23において、上蓋形状とパターンマッチングすることで上蓋画像21を識別する(図4(b))。
【0056】
次に、処理後画像23から識別した上蓋画像21を除くことで差分画像24を取得する。ここでは。異物が存在しないため、差分画像24には、何の像も残らないことになる(図4(c))。
【0057】
次に、上蓋が開放された状態において、異物が存在しない場合には、撮像装置で撮像して得られる取得画像20には、上蓋画像21と背景画像22が含まれる。このときの上蓋画像21は、開放された像を示している(図4(d))。この取得画像20から背景画像22を除くと、ここでは成膜処理室内に異物が存在しないため、上蓋画像のみを含む処理後画像23が得られる。この処理後画像23において、上蓋形状とパターンマッチングすることで上蓋画像21を識別する(図4(e))。
【0058】
次に、処理後画像23から識別した上蓋画像21を除くことで差分画像24を取得する。ここでは。異物が存在しないため、差分画像24には、何の像も残らないことになる(図4(f))。
【0059】
一方、上蓋が開放された状態において、異物が存在する場合には、撮像装置で撮像して得られる取得画像20には、上蓋画像21と背景画像22と異物画像25が含まれる。このときの上蓋画像21は、開放された像を示している(図5(a))。この取得画像20から背景画像22を除くと、ここでは成膜処理室内に異物が存在するため、上蓋画像21と異物画像25を含む処理後画像23が得られる。この処理後画像23において、上蓋形状とパターンマッチングすることで上蓋画像21を識別する(図5(b))。
【0060】
次に、処理後画像23から識別した上蓋画像21を除くことで差分画像24を取得する。ここでは。異物が存在するため、差分画像24には、異物画像25の像が残ることになる(図5(c))。
【0061】
本発明の成膜装置1は、複数の成膜処理室11A〜11Dをインラインに配列する構成し、基板40に対して順に成膜処理を施す。図6はこの構成例を示している。なお、図6では、4つの成膜処理室1A〜2Dの例について示しているが、配列する個数は任意とすることができる。各成膜処理室2A〜2Dの上蓋3A〜3Dは、上蓋開閉機構A4〜4Dによって駆動され、各上蓋開閉機構A4〜4Dは動力源5からの動力の供給を受ける。
【0062】
また、各成膜処理室2A〜2Dには、上蓋3A〜3Dの開閉状態を撮像する撮像装置11A〜11Dが設けられ、各撮像装置11A〜11Dの撮像信号は、画像取り込み回路12に取り込まれた後、画像処理回路13で画像処理される。インターロック回路14は、画像処理回路13から出力される検出信号によって、動力源5から上蓋開閉機構4A〜4Dへの動力供給を制御する。なお、これらの動作は前記してと動作と同様である。
【0063】
図7はこの動作例を説明するための図である。なお、図7(a)は異物がない場合を示し、図7(b)は成膜処理室2Aに異物30が有る場合を示している。
【0064】
図7(a)に示す状態では、何れの成膜処理室2A〜2Dにも異物が無いため、インターロック回路14は作動せずに上蓋開閉機構4A〜4Dの全てを駆動させ、全ての上蓋3A〜3Dの開閉動作を可能とする。
【0065】
一方、図7(b)に示す状態では、例えば、成膜処理室2Aに異物30があるため、インターロック回路14は作動して上蓋開閉機構4A〜4Dの内の上蓋開閉機構4Aのみの駆動を遮断し、残り上蓋開閉機構4B〜4Dについては駆動させ、上蓋3Aの開閉動作を停止させ、上蓋3B〜3Dの開閉動作を可能とする。
【0066】
上記した構成例は、撮像装置は上蓋の側面側を撮像する構成について示しているが、成膜処理室内を上方位置あるいは、見通す斜め上方向から上蓋を撮像する位置に設置する構成としてもよい。図8〜図10は、この成膜処理室内を見通す斜め上方向から上蓋を撮像する位置に設置する構成例を説明するための図である。
【0067】
図8は、本発明の成膜装置が備える成膜処理室に対して斜め上方向の位置に撮像装置を設置する図である。図8(a)は上蓋を閉じた状態を示し、図8(b)は上蓋を開いた状態を示している。なお、図8に示す成膜処理室2および上蓋3の構成は、前記した図1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
撮像装置11Eは、成膜処理室2に対して斜め上方向の位置において、成膜処理室2の上蓋3を開いた状態において、成膜処理室の内部を見通すことができる位置に配置する。これによって、図8(b)に示すように、上蓋3が開いた状態において成膜処理室2の内部に異物30が有る場合には、撮像装置11Eは上蓋3と共に異物30を撮像する。なお、ここで、撮像装置11Eによって撮像される上蓋3の画像は、上蓋3の開閉状態(開閉角度)によって変化する。
【0069】
画像処理回路13は、上蓋3の開閉状態によって変化する上蓋3の画像上の形状について、予め各開閉状態の角度位置で撮像し、その撮像画像を記憶装置(図示していない)に記憶しておき、前記したと同様にパターンマッチングすることで上蓋を識別することができる。
【0070】
また、上蓋3の形状変化が、開閉角度に伴って単に縮小あるいは拡大する場合には、所定位置(例えば、閉じた状態)の上蓋のみを撮像して記憶させておき、その他の角度位置については、その記憶した画像を縮小あるいは拡大させることで対応させてもよい。
【0071】
図9は、前記図6で示したと同様に、複数の成膜処理室2A〜2Dをインライン配列させた構成を示している。
【0072】
この構成では、インライン配列させた複数の成膜処理室2A〜2Dの一方の端部側の斜め上方に撮像装置11Fを配置し、一つの撮像装置で複数の成膜処理室2A〜2Dの異物を検出する。
【0073】
なお、ここでは、撮像装置11Fは、成膜処理室2A〜2Dの上蓋3A〜3Dが開放されたときに、成膜処理室2A〜2Dの内部が見通すことができ、内部を撮像可能な位置および向きに配置する。
【0074】
この例では、複数の成膜処理室2A〜2Dに対して一台の撮像装置11Fを配置する構成であるため、撮像装置11Fで取得される取得画像中には、複数の成膜処理室2A〜2D、複数の上蓋3A〜3D、および場合によっては異物の各像が存在する。そのため、画像処理回路13では、これらの複数の像から異物像のみを抽出する。
【0075】
図10は、撮像装置で取得される取得画像から異物の画像を抽出する画像状態を示している。図10(a)は、撮像装置で取得される取得画像20であり、この取得画像20中には、複数の上蓋画像21と背景画像22と異物画像25が含まれている。なお、ここでは、背景画像22中に成膜処理室の外形画像や、成膜処理室間を繋ぐゲートの外形画像も含まれている。
【0076】
はじめに、この取得画像20から、予め撮像して記憶しておいた背景画像22を除いて、複数の上蓋画像21と異物画像25のみを含む処理後画像23を得る。次に、上蓋画像21を識別して、処理後画像23から除去する。これによって、差分画像25には、異物画像のみが含まれることになる。なお、異物が無い場合には、差分画像25には何の像も含まれない。
【0077】
なお、前記したように、上蓋画像21の形状は、上蓋の開閉状態(開閉角度)によって変化するが、前記した画像処理で対応することができる。また、複数の上蓋が全て同様の開閉角度で開閉する場合には、画像処理は一つの上蓋についてのみ行い、残りの上蓋については、その画像処理結果を転用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、基板上に種々の薄膜を生成する成膜装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の成膜装置が備える成膜処理室と撮像装置を示す図である。
【図2】本発明の成膜装置の概略構成を説明するための図である。
【図3】本発明の成膜装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の取得画像から背景画像を除く画像処理と、処理後画像から上蓋画像を除く画像処理を説明するための図である。
【図5】本発明の取得画像から背景画像を除く画像処理と、処理後画像から上蓋画像を除く画像処理を説明するための図である。
【図6】本発明の複数の成膜処理室をインライン配列する構成の成膜処理を説明するための図である。
【図7】本発明の複数の成膜処理室をインライン配列する構成の動作例を説明するための図である。
【図8】本発明の撮像装置の他の配置例を説明するための図である。
【図9】本発明の撮像装置の他の配置例を説明するための図である。
【図10】本発明の撮像装置の他の配置例を説明するための図である。
【図11】成膜処理室にエリアセンサやライトカーテン等の遮光型センサを適用した場合の一構成例を説明するための図である。
【図12】従来の成膜装置の概略構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
1…成膜装置、2…成膜処理室、3…上蓋、4…上蓋開閉機構、5…動力源、11,11A〜11F…撮像装置、12…画像取り込み回路、13…画像処理回路、14…インターロック回路、20…取得画像、21…上蓋画像、22…背景画像、23…処理後画像、24…差分画像、25…異物画像、30…異物、40…基板、101…成膜装置、102…成膜処理室、103…上蓋、104…上蓋開閉機構、105…動力源、110…センサ、114…インターロック回路、130…異物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜処理室と、
当該成膜処理室の上蓋を開閉する上蓋開閉機構と、
前記上蓋の開閉を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で取得した画像を画像処理する画像処理回路と、
前記上蓋開閉機構の作動を制御するインターロック回路とを備え、
前記画像処理回路は、撮像装置で取得した画像から異物を検出し、
前記インターロック回路は、前記画像処理回路による異物検出に基づいて、前記上蓋開閉機構の作動を停止することを特徴とする、成膜装置。
【請求項2】
前記画像処理回路は、撮像装置で取得した画像から上蓋の画像と背景画像を除いた差分画像を求め、当該差分画像を異物画像として検出することを特徴とする、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記画像処理回路は、
予め取得して記憶手段に記憶しておいた背景画像データから背景画像を取得し、
予め取得して記憶手段に記憶しておいた上蓋の形状データと撮像画像とのパターンマッチングによって上蓋画像を取得することを特徴とする、請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記インターロック回路は、前記上蓋開閉機構の駆動する駆動機構と動力源との間を開閉制御することを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、前記成膜処理室の側面方向、又は、前記成膜処理室の上方あるいは成膜処理室内を見通す斜め上方向から上蓋を撮像する位置に設置することを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記成膜処理室を複数備え、
前記撮像装置は、前記複数の成膜処理室の各上蓋の開閉を個別に撮像する複数台のCCDカメラ、又は各上蓋の開閉を一画像で撮像する一つのCCDカメラを備えることを特徴とする、請求項1から5の何れか一つに記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−95135(P2008−95135A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276151(P2006−276151)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】