成膜装置
【課題】 成膜時においてシャドウエリアの少ない基板ホルダーを備える成膜装置を提供すること。
【解決手段】 成膜装置の基板ホルダーは、開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、開口部の内周から開口部内に向けて突出して形成されており、絶縁性基板の一端部を支持するための挟持部材を備える第1の支持部材と、絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、開口部内に向けて突出し、または開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する。
【解決手段】 成膜装置の基板ホルダーは、開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、開口部の内周から開口部内に向けて突出して形成されており、絶縁性基板の一端部を支持するための挟持部材を備える第1の支持部材と、絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、開口部内に向けて突出し、または開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードディスクの製造工程等において絶縁性基板の両主面に連続して複数層の薄膜を成膜する際に用いられる基板ホルダーを備える成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクの製造工程においては、絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続して成膜している。より具体的には、金属膜からなる下地層を成膜した後、該下地層にバイアス電圧を印加しながら磁性層を成膜する。このような複数層の薄膜を連続して成膜する工程がバイアス電圧印加成膜工程を含む場合に用いられる成膜装置としては、特許文献1に基板持ち替えチャンバー及び基板持ち替え機構を備えた装置が開示されている。図5に係る装置の主要部分の模式図を示す。
【0003】
係る装置においては、基板ホルダーは本体21と複数の基板支持爪23a,23bとを備えており、絶縁性基板22を両主面が垂直方向に平行になるように保持している。係る基板22に金属膜からなる下地層を成膜した後、基板ホルダーに保持された基板22を基板持ち替え機構31によって保持し、基板支持爪23bを不図示のリリース機構により押し下げることにより、該基板22を基板支持爪23a,23bから開放する。その後、該基板支持爪23a,23bの位置が下地層付着面になるように基板22を回転させて再度基板22を支持することにより、基板22上の下地層と基板ホルダーの本体21とが電気導通状態となる。この基板ホルダーをバイアス電圧印加工程を行う成膜チャンバーに移動させ、バイアス電圧供給電極の電極可動部(不図示)を基板ホルダーの本体21に接触させ、本体21と基板支持爪23a,23bを介して下地層にバイアス電圧を印加しながら次の成膜を行う。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、下地層成膜後に一旦基板22を基板ホルダーから基板持ち替え機構31に受け渡し、基板22を回転させた後に再度基板ホルダーに再支持させるため、上記受け渡しや再支持の際に基板が落下する恐れがあった。また、基板持ち替え機構31は複雑な構造であり、該機構を備えた専用真空チャンバーが必要となり、装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決した装置として、特許文献2乃至4に、基板ホルダーに本来備えられた基板支持爪とは別にバイアス電圧印加用の爪を用意し、バイアス電圧印加成膜工程でのみ該バイアス電圧印加用の爪を基板に接触させて成膜を行う装置が開示されている。係る装置の基板ホルダーの模式図を図6A、B,図7A、Bにそれぞれ示す。
【0006】
図6A、Bの基板ホルダーは本体41と複数の基板支持爪43とを備え、さらに、バイアス電圧印加専用爪44を備えている。係る装置においては、基板支持爪43が全て基板42に接触する構造で、下地層成膜時に不図示の機構によりバイアス電圧印加専用爪44を押し下げる(図6A)。その後、バイアス電圧印加専用爪44を押し下げていた機構をリリースしてバイアス電圧印加専用爪44を下地層に接触させ、バイアス電圧電源45よりバイアス電圧印加専用爪44を介して下地層にバイアス電圧を印加しながら成膜を行う(図6B)。
【0007】
また、図7A、Bの基板ホルダーは本体51と複数の基板支持爪53とを備え、さらに、バイアス電圧印加専用爪54を備えている。係る装置においては、通常、基板支持爪53のみで基板52が支持されており、バイアス電圧印加専用爪54は基板から離脱している(図7A)。この状態で下地層成膜を行い、その後、バイアス電圧印加成膜工程ではバイアス電圧供給バー56によってバイアス電圧印加専用爪54を押し上げて下地層に接触させる(図7B)。この状態で、バイアス電圧電源55よりバイアス電圧供給バー56、バイアス電圧印加専用爪54を介してバイアス電圧を下地層に印加しながら成膜を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−243037号公報
【特許文献2】特表2003−521792号公報
【特許文献3】特許第3002632号公報
【特許文献4】特許第2926740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2乃至4に開示された装置ではバイアス電圧を印加する工程でのみバイアス電圧印加専用爪を基板に接触させるだけであるため、構造が簡易である。
【0010】
しかしながら、バイアス電圧印加成膜工程では、本来基板を支持している基板支持爪にバイアス電圧印加専用爪が加わるため、爪が基板を覆うことにより成膜されない領域(シャドウエリア)が多いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、バイアス電圧印加成膜工程とバイアス電圧非印加成膜工程とを含む、複数層の薄膜の連続成膜工程において用いられ、構造が簡易で成膜装置の大型化といった問題を生じず、成膜時においてシャドウエリアの少ない基板ホルダーを備える成膜装置の提供を目的とする。
【0012】
上記の目的を達成する本発明にかかる成膜装置は、絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続的に成膜する成膜装置であって、
前記絶縁性基板に電圧を印加しないで前記絶縁性基板に導電性膜を成膜する第1の成膜チャンバーと、
前記絶縁性基板に電圧を印加しながら前記絶縁性基板に薄膜を成膜する第2の成膜チャンバーと、
開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、前記開口部の内周から当該開口部内に向けて突出して形成されており、前記絶縁性基板の一端部を支持するための複数の挟持部材を備え、当該複数の挟持部材のうち少なくとも一つが前記絶縁性基板にバイアス電圧を印加可能なバイアス電圧印加支持部材として機能する第1の支持部材と、前記絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、前記開口部内に向けて突出し、または当該開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する基板ホルダーと、
前記第1の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材における前記バイアス電圧印加支持部材として機能する狭持部材が前記基板から離れるように、前記第2の支持部材の狭持部材により前記基板を支持しながら前記第2の支持部材を移動させ、または、前記絶縁性基板の前記他の端部が前記第2の支持部材の狭持部材により支持されている位置から前記第1の支持部材の挟持部材により前記絶縁性基板が支持される位置まで前記第2の支持部材を移動させるためのモータ駆動機構を用いた駆動手段と、
前記第2の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材へ電圧を印加する電圧印加手段と、
前記駆動手段による移動と、前記電圧印加手段による前記電圧の印加と、前記第1の成膜チャンバーの動作と、前記第2の成膜チャンバーの動作と、を制御する制御手段と、を備え、
前記第1の支持部材の前記挟持部材が前記基板から離れた位置で、前記制御手段により制御された前記第1の成膜チャンバーは前記基板の上に導電性膜を成膜し、
前記制御手段は、前記モータ駆動機構の駆動量を制御して、前記導電性膜が成膜された前記基板を前記第1の支持部材の前記挟持部材により支持される位置まで前記第2の支持部材を下降させ、
前記制御手段は、前記第1の支持部材に前記電圧が印加される様に前記電圧印加手段を制御し、前記電圧を印加しながら前記第2の成膜チャンバーの動作を制御して前記導電性膜が成膜された絶縁性基板に薄膜を成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に拠れば、バイアス電圧印加成膜工程とバイアス電圧非印加成膜工程とを含む、複数層の薄膜の連続成膜工程において用いられ、構造が簡易で成膜装置の大型化といった問題を生じず、成膜時においてシャドウエリアの少ない基板ホルダーを備える成膜装置の提供が可能になる。
【0014】
本発明においては、構造が簡易で装置の大型化を招く恐れがなく、全体として爪の基板からの離脱着回数が少なく、パーティクルの発生が抑えられ、また、シャドウエリアも従来より低減される。
【0015】
さらに、常時基板を支持する基板支持爪を本体とは電気的に絶縁することで、バイアス電圧印加成膜時に基板支持部での異常放電発生を低減することができる。
【0016】
よって、本発明によれば、従来よりもシャドウエリアが低減された成膜を効率良く、且つ歩留まり良く行うことができ、ハードディスク等、複数の薄層を連続成膜してなる部材をより高品質で且つ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧非印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図3】本発明の成膜装置の一実施形態の一部を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図5】従来の成膜装置の基板ホルダーと基板持ち替え機構の構成を模式的に示す斜視図である。
【図6A】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図6B】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図7A】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図7B】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図8】制御手段100の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図3の変形例を示す斜視図である。
【図10A】上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である(非接触状態)。
【図10B】上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である(接触状態)。
【図11A】制御手段100により駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6と基板2とが非接触となり、基板支持爪5と基板支持爪3とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図11B】制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6と基板2とが接触し、基板支持爪5が基板と非接触となり、補助基板支持爪6と基板支持爪3とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図12A】図11Bにおいて、駆動手段14が上昇して、補助基板支持爪6と接触し、これに伴い補助基板支持爪6が上昇し、基板2と接触した状態を示す図である。
【図12B】補助基板支持爪6が基板と接触し、基板支持爪5が基板2と非接触となった状態を拡大して示した図である。
【図13A】図11Aにおいて、駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6が基板2と非接触となり、基板支持爪5が基板2と接触し、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図13B】図13Aにおける基板支持爪3、基板支持爪5の状態を拡大して示す図である。
【図14A】バイアス電圧印加手段16の電極が下降し、本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態を示す図である。
【図14B】制御手段100により制御されたバイアス電圧印加手段16の電極が上昇し、本体1と接触し、基板2にバイアスが印加されている状態を示す図である。
【図15A】バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。
【図15B】バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。
【図16】モータ駆動機構を用いた駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された構成例を示す図である。
【図17】駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された、図3の構成例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0019】
図1,図2は本発明の第1の基板ホルダーの好ましい実施形態に基板を保持した状態を示す図であり、図1はバイアス電圧印加成膜時、図2はバイアス電圧非印加成膜時の状態を示す。図中、1は基板ホルダーの本体、2は絶縁性基板、3,5は基板支持爪、6は補助基板支持爪、7は、例えば、板バネ等により構成される弾性部材である。
【0020】
本発明の基板ホルダーは、絶縁性基板2を支持する複数の基板支持爪3,3,5,5と導電性の基板ホルダー本体(以下、「本体1」という)とを有しており、さらに、補助基板支持爪6を備えている。本体1は、平板状であり、中央部に絶縁性基板2の外形よりも大きい開口部を備え、基板支持爪3,3,5,5は該開口部において本体1から開口部の内周から開口部内に向けて突出している。本体1は、後述するように外部に設けたバイアス電圧印加手段が接触・非接触可能で、外部よりバイアス電圧印加可能に構成されている。基板支持爪3,3,5,5は、基板ホルダーの本体1に形成された開口部の内周から開口部内に向けて突出して形成されており、絶縁性基板周辺の一端部(基板の外周部)を支持する挟持部材を備えた第1の支持部材として機能する。ここで、第1の支持部材の少なくとも1つは基板にバイアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加支持部材として機能する。
【0021】
複数の基板支持爪3,3,5,5は全て導電性の素材で構成され、本体1に電気的に接続されている。
【0022】
本発明においては、垂直に立てて配置した本体1の開口部内において、基板支持爪により、基板2が本体1より所定の距離を置いて保持される。即ち、基板支持爪3,3,5,5が基板2の外形端面に接触して、該基板2を本体1の開口部内において垂直に保持する。尚、補助基板支持爪6は、先端を基板2の下方に位置して上下移動可能に配置されている。補助基板支持爪6の下端は、駆動手段14に接続されており、駆動手段14の動作により、補助基板支持爪6は上昇(開口部内に向けて突出)、または降下(開口部内から退避)が可能である。制御手段100は、駆動手段14と接続しており、バイアス電圧印加成膜プロセス、またはバイアス電圧非印加成膜プロセスに応じて、駆動手段14を上昇(突出移動)させ、あるいは降下(退避移動)させる上下動動作を制御することが可能である。
【0023】
本例においては、基板2の上半分の2箇所と、下半分の2箇所にそれぞれ基板支持爪3,3及び5,5を配置している。補助基板支持爪6を基板2に接触させない状態(図1)においては、基板支持爪3,3,5,5の全てによって基板2は支持されている。ここで、駆動手段14の上昇動作に従い、補助基板支持爪6を上方に突き上げて、補助基板支持爪6を基板2に接触させる。駆動手段14が、補助基板支持爪6をそのまま押し上げると、図2に示すように基板2が本体1との間隙分だけ上方に押し上げられ、基板2を基板2の下方から支持していた基板支持爪5,5が基板2から離脱して基板2に非接触となる。尚、この時、基板支持爪3,3も基板2によって上方に押し上げられるため、基板支持爪3,3はこれに耐えうる程度の可撓性を有する素材で構成しておくことが好ましい。ここで、補助基板支持爪6は、絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、基板ホルダーの本体1に形成された開口部内に向けて突出し、または開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材として機能する。補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材により基板2を支持する時には、バイアス電圧印加支持部材(例えば、基板支持爪5,5)の狭持部材が基板から離れる。バイアス電圧印加支持部材(例えば、基板支持爪5,5)の狭持部材により基板を支持する時には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材は基板から離れ、補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材により支持された位置からバイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5,5)の挟持部材により支持される位置まで基板は移動する。
【0024】
基板支持爪3,3,5,5及び補助基板支持爪6の挟持部材は、基板2を良好に保持しうるように、基板2の主面の法線方向断面においてV字型やU字型などの凹部を有し、該凹部内に基板2の端面を挟み込む形態が好ましい。
【0025】
本例においては、補助基板支持爪6の下方には、例えば、板バネ等で構成される弾性部材7が取り付けられており、駆動手段14の上昇動作に従い、補助基板支持爪6を上方に突き上げる際には、弾性部材7が押圧される。よって、駆動手段14の降下動作によって、補助基板支持爪6を上方に突き上げている力を解除すれば、弾性部材7の復元力によって補助基板支持爪6は自動的に下方に移動して基板2から離脱し、基板2が下方に戻ると同時に基板2に再び基板支持爪5,5が接触し、基板支持爪5,5は、下方に戻った基板2を支持する。
【0026】
本発明においては、図1,図2に示したように、補助基板支持爪6を上下に移動させて基板2に接触・非接触させることにより、基板支持爪5,5を基板2に非接触・接触させることができる。よって、基板2は、基板支持爪3,3と補助基板支持爪6とに支持された状態と、基板支持爪3,3,5,5に支持された状態の2つの状態をとる。
【0027】
尚、本発明において基板支持爪の本数は、基板2を安定して保持できれば少ない方が爪によるシャドウエリアが少なくなるため好ましい。図1,図2においては、上方と下方にそれぞれ2本ずつとしたが、基板支持爪3,3については、基板2の鉛直上方に1本としてもかまわない。また、基板支持爪5,5については、どちらか一方のみとしてもかまわない。
【0028】
次に、図1,図2に例示した基板ホルダーを用いた、本発明の成膜装置の一実施形態を図3に模式的に示す。
【0029】
本発明の成膜装置は複数の成膜チャンバーと、基板ホルダーに絶縁性基板2を垂直保持して上記複数の成膜チャンバー間を搬送するための搬送手段とを備えている。図3は成膜装置の一部を例示する図である。図中、11a,11bは成膜チャンバーであり、成膜チャンバー11aはバイアス電圧非印加成膜に用いられ、成膜チャンバー11bはバイアス電圧印加成膜に用いられる。13a乃至13cはゲートバルブである。
【0030】
本装置の成膜チャンバー11a,11bはいずれも基板2の両主面に対してスパッタカソードを備えており、基板2の両面から同時成膜することができる。また、基板ホルダーの搬送手段(不図示)は、紙面左右方向に基板ホルダーを搬送可能である。尚、本例においては、成膜チャンバー11aと11bとが水平方向にライン状に並んだ状態を示したが、本発明の成膜装置はライン状の成膜装置に限定されるものではない。例えば中央に位置するチャンバーの周囲を複数の成膜チャンバーが取り囲んだ形態であっても良い。
【0031】
本装置において、バイアス電圧印加成膜を行う成膜チャンバー11bの前段に位置するバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバー11aは、下方から補助基板支持爪6を突き上げて上昇させ、あるいは補助基板支持爪6を降下させるための駆動手段14を備えている。駆動手段14の動作は制御手段100によって制御される。制御手段100の制御の下に、駆動手段14は補助基板支持爪6を突き上げ、基板2に接触させて基板2を補助基板支持爪6に支持させると同時に、基板2から基板支持爪5,5を離脱させることができる。図3の成膜チャンバー11aにおいては、駆動手段14が補助基板支持爪6を突き上げた状態を示しており、制御手段100の制御の下に駆動手段14が上昇した状態を解除する(矢印の方向に降下する)ことによって、補助基板支持爪6も下方に移動して基板2から補助基板支持爪6は離脱する。尚、図3においては、バイアス電圧印加成膜を行うチャンバー11bの前段に位置し、駆動手段14を備えたバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバーが一つだけ示されているが、本発明はこれに限定されない。バイアス電圧印加成膜を行う前に複数回のバイアス電圧非印加成膜を行う場合には、バイアス電圧印加成膜を行うチャンバー11bの前段に、駆動手段14を備えたバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバーが複数配置される。
【0032】
図11A、B乃至図13A、Bは、基板ホルダーの本体1の斜視図である。図11Aでは、制御手段100により駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6と基板2とが非接触となり、基板支持爪5と基板支持爪3とで基板2を支持した状態になる。図11Bでは、制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6と基板2とが接触し、基板支持爪5が基板と非接触となり、補助基板支持爪6と基板支持爪3とで基板2を支持した状態になる。図12Aは、図11Bにおいて、駆動手段14が上昇して、補助基板支持爪6と接触し、これに伴い補助基板支持爪6が上昇し、基板2と接触した状態を示す図であり、図12Bは、補助基板支持爪6が基板と接触し、基板支持爪5が基板2と非接触となった状態を拡大して示した図である。図13Aは、図11Aにおいて、駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6が基板2と非接触となり、基板支持爪5が基板2と接触し、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2を支持した状態を示す図であり、図13Bは、図13Aにおける基板支持爪3、基板支持爪5の状態を拡大して示す図である。
【0033】
また、バイアス電圧印加成膜を行う成膜チャンバー11bは、例えば、下方から本体1にバイアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加手段16とバイアス電圧印加手段16に電圧を供給する電源15を備えている。バイアス電圧印加手段16は上昇または降下が可能な電極を有する(以下、「バイアス電圧印加手段16の電極」を単に「バイアス電圧印加手段16」ともいう)。バイアス電圧印加手段16の電極が上昇して本体1に接触すると、基板ホルダーの本体1を介して基板支持爪3,3,5,5の少なくとも1つにバイアス電圧印加手段16からバイアス電圧が印加される。制御手段100は、電源15及びバイアス電圧印加手段16と接続し、電源15のON/OFF制御や、バイアス電圧印加手段16が有する電極の上昇または降下を制御することが可能である。
【0034】
図3の成膜チャンバー11bにおいては、バイアス電圧印加手段16の電極を上昇させて本体1に接触させた状態を示している。この状態から、制御手段100の制御の下にバイアス電圧印加手段16の電極を矢印の方向に降下させることによって、バイアス電圧印加手段16の電極は本体1に非接触となり、本体1にバイアス電圧が印加できなくなる。
【0035】
図14A、Bは、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された場合の斜視図である。図14Aでは、バイアス電圧印加手段16の電極が下降し、本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態を示す。図14Bでは、制御手段100により制御されたバイアス電圧印加手段16の電極が上昇し、本体1と接触し、基板2にバイアスが印加されている状態を示す。
【0036】
図17は、駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された、図3の構成例の斜視図である。成膜チャンバー11aにおいて、制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6が基板2と接触して、基板2を上昇させると基板支持爪5は基板2と非接触となる。この場合、基板支持爪3と補助基板支持爪6とで基板2が支持される。成膜チャンバー11bにおいて、制御手段100によりバイアス電圧供給手段16が上昇し、基板ホルダーの本体1と接触すると、基板2にバイアスが印加される。尚、図17Bでは、駆動手段14が無いため、補助基板支持爪6は降下して基板2から離れ、補助基板支持爪6は基板2と非接触となり、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2が支持される。
【0037】
図8は、制御手段100の機能構成を示すブロック図である。図8において、成膜装置800(第1の成膜チャンバー11a、第2の成膜チャンバー11bを含む)は、制御手段100に接続されている。制御手段100は、第1の成膜チャンバ11a、第2の成膜チャンバー11bからの入力信号を受け取る。制御手段100は、駆動手段14、電源15、バイアス電圧印加手段16、及び成膜装置800を構成するチャンバー内で実行されるプロセスを制御するようにプログラムされた制御プログラムを動かし、動作指示を成膜装置800に出力する。制御手段100は、図8に示すコンピュータ(情報処理装置)の構成を有する。制御手段100は、成膜装置800から入力信号の入力を受け付ける入力部802、プログラム及びデータを有するコンピュータ可読の記憶媒体803、プロセッサ804及び制御信号を含む動作指示を成膜装置800に出力する出力部805を有する。入力部802は、成膜装置800からのデータ入力機能の他に、例えば、ネットワークを介して接続している他の外部装置からの命令の入力を受け付けることが可能である。
【0038】
即ち、制御手段100は、基板ホルダーが第1の成膜チャンバー(図3の11a)内にある時には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)と絶縁性の基板2とが接触状態となるように駆動手段14を移動させ、制御手段100は、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)を、絶縁性の基板2と非接触な状態にする。制御手段100は、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)以外の基板支持爪3(第1の支持部材)と補助基板支持爪6(第2の支持部材)とで基板2を支持しながら基板上に導電性膜である下地層のスパッタ成膜を行うように制御する。
【0039】
また、基板ホルダーが第2の成膜チャンバー(図3の11b)内にある時には、第2の成膜チャンバー(図3の11b)内には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)を上下動させる駆動手段14はないため、補助基板支持爪6(第2の支持部材)は基板2と非接触状態となるよう移動し、基板2と非接触状態になる。
【0040】
制御手段100は、バイアス印加手段16の電極を基板ホルダーの本体1と接触状態となるように移動させ、基板支持爪3(第1の支持部材)で導電性の膜がついた絶縁性基板を保持し、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)から導電性の膜がついた絶縁性基板にバイアスを印加しながら、基板に薄膜を成膜するように制御する。
【0041】
図9は、図3の変形例を示す斜視図である。なお、図3では、バイアス電圧印加手段16は本体1の下方に設けられており、バイアス電圧印加手段16の接点が上下動する構成となっている。本発明の趣旨は、図3の構成に限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、バイアス電圧印加手段16を本体1と平行に配置し、水平方法に電極を移動させて、本体1にバイアス電圧を印加する構成とすることも可能である。
【0042】
図10Aは上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である。図10Aは、各バイアス電圧印加手段16の電極は基板ホルダーの本体1に対して非接触な状態を示す。制御手段100は、各バイアス電圧印加手段16の電極を基板ホルダーの本体1に対して接触するように制御すると、図10Bに示すようになる。
【0043】
図15A、Bは、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。水平方向に設けられたバイアス電圧印加手段16が、制御手段100により制御されて、図中の水平方向右側(矢印1501の方向)に電極が移動すると、バイアス電圧印加手段16の電極は基板ホルダーの本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態になる(図15A)。また、水平方向に設けられたバイアス電圧印加手段16が、制御手段100により制御されて、図面中水平方向左側(矢印1502の方向)に電極が移動すると、バイアス電圧印加手段16の電極が基板ホルダーの本体1と接触し、基板2にバイアス電圧が印加されている状態になる(図15B)。
【0044】
図16は、モータ駆動機構を用いた駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された構成例を示す図である。制御手段100によりモータの駆動量が制御されると駆動手段14が上昇して補助基板支持爪6と接触し、駆動手段14の上昇に従って補助基板支持爪6が上昇して基板2と接触する。成膜チャンバー11aにおいて、基板支持爪3と補助基板支持爪6とで基板2が支持された状態になる。この状態では、基板支持爪5は、基板2に非接触な状態になる。制御手段100によりバイアス電圧印加手段16の電極が水平方向に移動すると、基板ホルダーの本体1と接触し、基板2にバイアス電圧が印加される。成膜チャンバー11bにおいて、補助基板支持爪6は、基板2と非接触であり、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2が支持される。
【0045】
本発明の成膜方法について、図3の装置を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0046】
本発明の成膜方法は、絶縁性基板の両主面に複数層の薄層を連続的に成膜する方法である。本発明においては、先ず、成膜チャンバー11aにおいて絶縁性の基板2にバイアス電圧非印加成膜により金属等からなる導電性の第1層を成膜する(第1の成膜工程)。第1の成膜工程では、駆動手段14によって補助基板支持爪6を突き上げて基板2に接触させると同時に基板支持爪5,5を基板2から離脱させ、補助基板支持爪6と基板支持爪3,3とで基板2を支持する。この時、バイアス電圧印加支持部材として機能する基板支持爪5は、絶縁性基板と非接触な状態になる。従って、基板支持爪5,5が非接触な状態に保持される前に、基板2に接触していた位置にも、金属等からなる導電性の第1層が成膜される。
【0047】
第1層の成膜が終了したら、補助基板支持爪6の駆動手段14を解除して、板バネ7の復元力により補助基板支持爪6を下方に移動させる。これにより、基板2から補助基板支持爪6が離脱し、代わって基板支持爪5,5が下方に降りてきた基板2を支持する。この時、基板支持爪5,5が基板2に接触する位置には第1層が成膜されているため、基板支持爪5,5は第1層に接触する。
【0048】
第1層の成膜が終了した基板2を基板ホルダーごと成膜チャンバー11bに搬送し、基板ホルダーの本体1にバイアス電圧印加手段16の電極を接触させて、本体1にバイアス電圧を印加する。基板2は基板支持爪3,3,5,5によって支持されているため、本体1と基板支持爪3,3,5,5のうちの少なくとも1つを介して第1層にバイアス電圧が印加される。この状態で成膜を行うことにより、第1層の上にバイアス電圧印加成膜によって新たな薄層(第2層)が成膜される(第2の成膜工程)。
【0049】
この時、基板支持爪3,3,5,5はいずれにもバイアス電圧が印加されるが、基板支持爪3,3は第1層の成膜時に基板2を支持していたため、第1層との接触領域が非常に小さく、電圧印加効率が悪い。これに対して、基板支持爪5,5は第1層の成膜時に基板2から離脱していたため、基板支持爪5,5が基板2に接触する領域にも第1層が成膜されており、基板支持爪5,5と第1層との接触領域が広く、効率の良い電圧印加を行うことができる。
【0050】
本発明によれば、バイアス電圧印加成膜工程を複数回繰り返す場合であっても、工程毎に基板支持爪5,5を基板2から離脱させる必要がなく、基板支持爪5,5の基板2からの離脱によるパーティクルの発生が最小限に抑えられる。
【0051】
次に、本発明の第2の基板ホルダーについて図4を用いて説明する。図4において、4は絶縁性部材である。第2の基板ホルダーは、基板支持爪5,5をバイアス電圧印加用基板支持爪(バイアス電圧印加支持部材)とし、該バイアス電圧印加用基板支持爪以外の基板支持爪3,3をバイアス電圧が印加されないバイアス電圧非印加用基板支持爪(バイアス電圧非印加支持部材)とする。即ち、基板支持爪5,5は導電性の素材で構成して本体1に電気的に接続し、常時基板2に接触して支持している基板支持爪3,3を絶縁性或いは本体1とは電気的に絶縁した構成とする。尚、図4においては、導電性の基板支持爪3,3を絶縁性部材4を介して本体1に取り付けているが、基板支持爪3,3を絶縁性の素材で構成することにより、本体1に直接取り付けてもかまわない。
【0052】
第2の基板ホルダーでは、本体1に外部のバイアス電圧印加手段からバイアス電圧が印加された場合でも、該基板支持爪3,3にはバイアス電圧が印加されないため、バイアス電圧印加成膜時に基板支持部での異常放電発生を低減することができる。
【0053】
本例においても、制御手段100の制御の下に駆動手段14を上下に移動させて、補助基板支持爪6を基板2に接触・非接触させることにより、基板支持爪5,5を基板2に非接触・接触させることができる。よって、基板2は、基板支持爪3,3と補助基板支持爪6とに支持された状態(第1の状態)と、基板支持爪3,3,5,5に支持された状態(図4に示す第2の状態)と、の2つの状態をとる。換言すれば、バイアス電圧非印加用の基板支持爪3,3は常に基板2に接触して基板2を支持しており、バイアス電圧印加・非印加に応じて、バイアス電圧印加用の基板支持爪5,5または補助基板支持爪6のいずれかが基板2の支持に加わることになる。第1の状態または第2の状態の切替えは、制御手段100の制御の下に実行される。
【0054】
尚、本例において基板支持爪の本数は、例えば、先に図1、図2を参照して説明した第1の基板ホルダーと同様である。即ち、バイアス電圧印加用、バイアス電圧非印加用のそれぞれが少なくとも1本必要であるが、合計数は、基板2を安定して保持できれば少ない方が爪によるシャドウエリアが少なくなるため好ましい。図4においてはそれぞれ2本ずつとしたが、基板支持爪3,3については、基板2の鉛直上方に1本としてもかまわない。また、基板支持爪5,5については、どちらか一方のみをバイアス電圧印加用として、他方を基板支持爪3,3と同様の構成にしてバイアス電圧非印加用としてもかまわない。
【0055】
図4に示す第2の基板ホルダーを用いた成膜装置は、基本的に第1の基板ホルダーを用いた成膜装置と同様であり、図3に例示した装置が好ましく用いられる。
【0056】
即ち、図3の成膜チャンバー11aに設けた駆動手段14によって、第2の基板ホルダーの補助基板支持爪6を突き上げ、補助基板支持爪6に基板2を支持させると同時に、基板2から基板支持爪5,5を離脱させる。また、成膜チャンバー11bにおいては、バイアス電圧印加手段16の電極を本体1に接触させることで、本体1を介して基板支持爪5,5にバイアス電圧印加手段16のバイアス電圧が印加される。
【0057】
また、第2の基板ホルダーを用いた成膜方法は、バイアス電圧印加成膜時に、本体1とは電気的に絶縁された基板支持爪3,3からはバイアス電圧が印加されない点でのみ、第1の基板ホルダーを用いた成膜方法とは異なる。
【0058】
尚、本例においては、補助基板支持爪6を絶縁性の素材で構成するか、或いは本体1と電気的に絶縁した構成とすることにより、バイアス電圧非印加成膜時に、基板2を支持する基板支持爪3,3,6を全て本体1とは電気的に絶縁された状態とすることができる。よって、本体1にバイアス電圧が印加される状態であっても、基板2にはバイアス電圧を印加せずに成膜することができ、常時本体1にバイアス電圧が印加される装置、或いは成膜チャンバーであっても、バイアス電圧非印加成膜を行うことができる。
【0059】
本発明は、特にハードディスク製造に好ましく用いられる。ハードディスクの製造においては、絶縁性基板の両主面に、少なくとも下地層、磁性層、保護層が成膜されるが、本発明においては、先ず下地層を前記したバイアス電圧非印加成膜によって成膜し、次いで磁性層、保護層をバイアス電圧印加成膜によって成膜すれば良い。
【0060】
本発明においては、スパッタによる成膜の事例を取り上げたが、CVDやエッチングなどのバイアス印加工程にも適用できる。また、本発明によるホルダーによって、導電性基板を処理する事は可能である。
【0061】
尚、本発明の基板ホルダー及びこれを用いた成膜方法、成膜装置はハードディスクの製造以外にも好ましく用いられるものである。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。
【0063】
本願は、2007年12月26日提出の日本国特許出願特願2007−333836を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【技術分野】
【0001】
本発明はハードディスクの製造工程等において絶縁性基板の両主面に連続して複数層の薄膜を成膜する際に用いられる基板ホルダーを備える成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクの製造工程においては、絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続して成膜している。より具体的には、金属膜からなる下地層を成膜した後、該下地層にバイアス電圧を印加しながら磁性層を成膜する。このような複数層の薄膜を連続して成膜する工程がバイアス電圧印加成膜工程を含む場合に用いられる成膜装置としては、特許文献1に基板持ち替えチャンバー及び基板持ち替え機構を備えた装置が開示されている。図5に係る装置の主要部分の模式図を示す。
【0003】
係る装置においては、基板ホルダーは本体21と複数の基板支持爪23a,23bとを備えており、絶縁性基板22を両主面が垂直方向に平行になるように保持している。係る基板22に金属膜からなる下地層を成膜した後、基板ホルダーに保持された基板22を基板持ち替え機構31によって保持し、基板支持爪23bを不図示のリリース機構により押し下げることにより、該基板22を基板支持爪23a,23bから開放する。その後、該基板支持爪23a,23bの位置が下地層付着面になるように基板22を回転させて再度基板22を支持することにより、基板22上の下地層と基板ホルダーの本体21とが電気導通状態となる。この基板ホルダーをバイアス電圧印加工程を行う成膜チャンバーに移動させ、バイアス電圧供給電極の電極可動部(不図示)を基板ホルダーの本体21に接触させ、本体21と基板支持爪23a,23bを介して下地層にバイアス電圧を印加しながら次の成膜を行う。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、下地層成膜後に一旦基板22を基板ホルダーから基板持ち替え機構31に受け渡し、基板22を回転させた後に再度基板ホルダーに再支持させるため、上記受け渡しや再支持の際に基板が落下する恐れがあった。また、基板持ち替え機構31は複雑な構造であり、該機構を備えた専用真空チャンバーが必要となり、装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決した装置として、特許文献2乃至4に、基板ホルダーに本来備えられた基板支持爪とは別にバイアス電圧印加用の爪を用意し、バイアス電圧印加成膜工程でのみ該バイアス電圧印加用の爪を基板に接触させて成膜を行う装置が開示されている。係る装置の基板ホルダーの模式図を図6A、B,図7A、Bにそれぞれ示す。
【0006】
図6A、Bの基板ホルダーは本体41と複数の基板支持爪43とを備え、さらに、バイアス電圧印加専用爪44を備えている。係る装置においては、基板支持爪43が全て基板42に接触する構造で、下地層成膜時に不図示の機構によりバイアス電圧印加専用爪44を押し下げる(図6A)。その後、バイアス電圧印加専用爪44を押し下げていた機構をリリースしてバイアス電圧印加専用爪44を下地層に接触させ、バイアス電圧電源45よりバイアス電圧印加専用爪44を介して下地層にバイアス電圧を印加しながら成膜を行う(図6B)。
【0007】
また、図7A、Bの基板ホルダーは本体51と複数の基板支持爪53とを備え、さらに、バイアス電圧印加専用爪54を備えている。係る装置においては、通常、基板支持爪53のみで基板52が支持されており、バイアス電圧印加専用爪54は基板から離脱している(図7A)。この状態で下地層成膜を行い、その後、バイアス電圧印加成膜工程ではバイアス電圧供給バー56によってバイアス電圧印加専用爪54を押し上げて下地層に接触させる(図7B)。この状態で、バイアス電圧電源55よりバイアス電圧供給バー56、バイアス電圧印加専用爪54を介してバイアス電圧を下地層に印加しながら成膜を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−243037号公報
【特許文献2】特表2003−521792号公報
【特許文献3】特許第3002632号公報
【特許文献4】特許第2926740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2乃至4に開示された装置ではバイアス電圧を印加する工程でのみバイアス電圧印加専用爪を基板に接触させるだけであるため、構造が簡易である。
【0010】
しかしながら、バイアス電圧印加成膜工程では、本来基板を支持している基板支持爪にバイアス電圧印加専用爪が加わるため、爪が基板を覆うことにより成膜されない領域(シャドウエリア)が多いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、バイアス電圧印加成膜工程とバイアス電圧非印加成膜工程とを含む、複数層の薄膜の連続成膜工程において用いられ、構造が簡易で成膜装置の大型化といった問題を生じず、成膜時においてシャドウエリアの少ない基板ホルダーを備える成膜装置の提供を目的とする。
【0012】
上記の目的を達成する本発明にかかる成膜装置は、絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続的に成膜する成膜装置であって、
前記絶縁性基板に電圧を印加しないで前記絶縁性基板に導電性膜を成膜する第1の成膜チャンバーと、
前記絶縁性基板に電圧を印加しながら前記絶縁性基板に薄膜を成膜する第2の成膜チャンバーと、
開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、前記開口部の内周から当該開口部内に向けて突出して形成されており、前記絶縁性基板の一端部を支持するための複数の挟持部材を備え、当該複数の挟持部材のうち少なくとも一つが前記絶縁性基板にバイアス電圧を印加可能なバイアス電圧印加支持部材として機能する第1の支持部材と、前記絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、前記開口部内に向けて突出し、または当該開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する基板ホルダーと、
前記第1の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材における前記バイアス電圧印加支持部材として機能する狭持部材が前記基板から離れるように、前記第2の支持部材の狭持部材により前記基板を支持しながら前記第2の支持部材を移動させ、または、前記絶縁性基板の前記他の端部が前記第2の支持部材の狭持部材により支持されている位置から前記第1の支持部材の挟持部材により前記絶縁性基板が支持される位置まで前記第2の支持部材を移動させるためのモータ駆動機構を用いた駆動手段と、
前記第2の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材へ電圧を印加する電圧印加手段と、
前記駆動手段による移動と、前記電圧印加手段による前記電圧の印加と、前記第1の成膜チャンバーの動作と、前記第2の成膜チャンバーの動作と、を制御する制御手段と、を備え、
前記第1の支持部材の前記挟持部材が前記基板から離れた位置で、前記制御手段により制御された前記第1の成膜チャンバーは前記基板の上に導電性膜を成膜し、
前記制御手段は、前記モータ駆動機構の駆動量を制御して、前記導電性膜が成膜された前記基板を前記第1の支持部材の前記挟持部材により支持される位置まで前記第2の支持部材を下降させ、
前記制御手段は、前記第1の支持部材に前記電圧が印加される様に前記電圧印加手段を制御し、前記電圧を印加しながら前記第2の成膜チャンバーの動作を制御して前記導電性膜が成膜された絶縁性基板に薄膜を成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に拠れば、バイアス電圧印加成膜工程とバイアス電圧非印加成膜工程とを含む、複数層の薄膜の連続成膜工程において用いられ、構造が簡易で成膜装置の大型化といった問題を生じず、成膜時においてシャドウエリアの少ない基板ホルダーを備える成膜装置の提供が可能になる。
【0014】
本発明においては、構造が簡易で装置の大型化を招く恐れがなく、全体として爪の基板からの離脱着回数が少なく、パーティクルの発生が抑えられ、また、シャドウエリアも従来より低減される。
【0015】
さらに、常時基板を支持する基板支持爪を本体とは電気的に絶縁することで、バイアス電圧印加成膜時に基板支持部での異常放電発生を低減することができる。
【0016】
よって、本発明によれば、従来よりもシャドウエリアが低減された成膜を効率良く、且つ歩留まり良く行うことができ、ハードディスク等、複数の薄層を連続成膜してなる部材をより高品質で且つ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧非印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図3】本発明の成膜装置の一実施形態の一部を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の基板ホルダーの一実施形態に基板を保持し、バイアス電圧印加成膜に用いる状態を示す図である。
【図5】従来の成膜装置の基板ホルダーと基板持ち替え機構の構成を模式的に示す斜視図である。
【図6A】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図6B】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図7A】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図7B】従来の成膜装置の基板ホルダーの模式図である。
【図8】制御手段100の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図3の変形例を示す斜視図である。
【図10A】上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である(非接触状態)。
【図10B】上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である(接触状態)。
【図11A】制御手段100により駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6と基板2とが非接触となり、基板支持爪5と基板支持爪3とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図11B】制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6と基板2とが接触し、基板支持爪5が基板と非接触となり、補助基板支持爪6と基板支持爪3とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図12A】図11Bにおいて、駆動手段14が上昇して、補助基板支持爪6と接触し、これに伴い補助基板支持爪6が上昇し、基板2と接触した状態を示す図である。
【図12B】補助基板支持爪6が基板と接触し、基板支持爪5が基板2と非接触となった状態を拡大して示した図である。
【図13A】図11Aにおいて、駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6が基板2と非接触となり、基板支持爪5が基板2と接触し、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2を支持した状態を示す図である。
【図13B】図13Aにおける基板支持爪3、基板支持爪5の状態を拡大して示す図である。
【図14A】バイアス電圧印加手段16の電極が下降し、本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態を示す図である。
【図14B】制御手段100により制御されたバイアス電圧印加手段16の電極が上昇し、本体1と接触し、基板2にバイアスが印加されている状態を示す図である。
【図15A】バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。
【図15B】バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。
【図16】モータ駆動機構を用いた駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された構成例を示す図である。
【図17】駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された、図3の構成例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0019】
図1,図2は本発明の第1の基板ホルダーの好ましい実施形態に基板を保持した状態を示す図であり、図1はバイアス電圧印加成膜時、図2はバイアス電圧非印加成膜時の状態を示す。図中、1は基板ホルダーの本体、2は絶縁性基板、3,5は基板支持爪、6は補助基板支持爪、7は、例えば、板バネ等により構成される弾性部材である。
【0020】
本発明の基板ホルダーは、絶縁性基板2を支持する複数の基板支持爪3,3,5,5と導電性の基板ホルダー本体(以下、「本体1」という)とを有しており、さらに、補助基板支持爪6を備えている。本体1は、平板状であり、中央部に絶縁性基板2の外形よりも大きい開口部を備え、基板支持爪3,3,5,5は該開口部において本体1から開口部の内周から開口部内に向けて突出している。本体1は、後述するように外部に設けたバイアス電圧印加手段が接触・非接触可能で、外部よりバイアス電圧印加可能に構成されている。基板支持爪3,3,5,5は、基板ホルダーの本体1に形成された開口部の内周から開口部内に向けて突出して形成されており、絶縁性基板周辺の一端部(基板の外周部)を支持する挟持部材を備えた第1の支持部材として機能する。ここで、第1の支持部材の少なくとも1つは基板にバイアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加支持部材として機能する。
【0021】
複数の基板支持爪3,3,5,5は全て導電性の素材で構成され、本体1に電気的に接続されている。
【0022】
本発明においては、垂直に立てて配置した本体1の開口部内において、基板支持爪により、基板2が本体1より所定の距離を置いて保持される。即ち、基板支持爪3,3,5,5が基板2の外形端面に接触して、該基板2を本体1の開口部内において垂直に保持する。尚、補助基板支持爪6は、先端を基板2の下方に位置して上下移動可能に配置されている。補助基板支持爪6の下端は、駆動手段14に接続されており、駆動手段14の動作により、補助基板支持爪6は上昇(開口部内に向けて突出)、または降下(開口部内から退避)が可能である。制御手段100は、駆動手段14と接続しており、バイアス電圧印加成膜プロセス、またはバイアス電圧非印加成膜プロセスに応じて、駆動手段14を上昇(突出移動)させ、あるいは降下(退避移動)させる上下動動作を制御することが可能である。
【0023】
本例においては、基板2の上半分の2箇所と、下半分の2箇所にそれぞれ基板支持爪3,3及び5,5を配置している。補助基板支持爪6を基板2に接触させない状態(図1)においては、基板支持爪3,3,5,5の全てによって基板2は支持されている。ここで、駆動手段14の上昇動作に従い、補助基板支持爪6を上方に突き上げて、補助基板支持爪6を基板2に接触させる。駆動手段14が、補助基板支持爪6をそのまま押し上げると、図2に示すように基板2が本体1との間隙分だけ上方に押し上げられ、基板2を基板2の下方から支持していた基板支持爪5,5が基板2から離脱して基板2に非接触となる。尚、この時、基板支持爪3,3も基板2によって上方に押し上げられるため、基板支持爪3,3はこれに耐えうる程度の可撓性を有する素材で構成しておくことが好ましい。ここで、補助基板支持爪6は、絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、基板ホルダーの本体1に形成された開口部内に向けて突出し、または開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材として機能する。補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材により基板2を支持する時には、バイアス電圧印加支持部材(例えば、基板支持爪5,5)の狭持部材が基板から離れる。バイアス電圧印加支持部材(例えば、基板支持爪5,5)の狭持部材により基板を支持する時には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材は基板から離れ、補助基板支持爪6(第2の支持部材)の狭持部材により支持された位置からバイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5,5)の挟持部材により支持される位置まで基板は移動する。
【0024】
基板支持爪3,3,5,5及び補助基板支持爪6の挟持部材は、基板2を良好に保持しうるように、基板2の主面の法線方向断面においてV字型やU字型などの凹部を有し、該凹部内に基板2の端面を挟み込む形態が好ましい。
【0025】
本例においては、補助基板支持爪6の下方には、例えば、板バネ等で構成される弾性部材7が取り付けられており、駆動手段14の上昇動作に従い、補助基板支持爪6を上方に突き上げる際には、弾性部材7が押圧される。よって、駆動手段14の降下動作によって、補助基板支持爪6を上方に突き上げている力を解除すれば、弾性部材7の復元力によって補助基板支持爪6は自動的に下方に移動して基板2から離脱し、基板2が下方に戻ると同時に基板2に再び基板支持爪5,5が接触し、基板支持爪5,5は、下方に戻った基板2を支持する。
【0026】
本発明においては、図1,図2に示したように、補助基板支持爪6を上下に移動させて基板2に接触・非接触させることにより、基板支持爪5,5を基板2に非接触・接触させることができる。よって、基板2は、基板支持爪3,3と補助基板支持爪6とに支持された状態と、基板支持爪3,3,5,5に支持された状態の2つの状態をとる。
【0027】
尚、本発明において基板支持爪の本数は、基板2を安定して保持できれば少ない方が爪によるシャドウエリアが少なくなるため好ましい。図1,図2においては、上方と下方にそれぞれ2本ずつとしたが、基板支持爪3,3については、基板2の鉛直上方に1本としてもかまわない。また、基板支持爪5,5については、どちらか一方のみとしてもかまわない。
【0028】
次に、図1,図2に例示した基板ホルダーを用いた、本発明の成膜装置の一実施形態を図3に模式的に示す。
【0029】
本発明の成膜装置は複数の成膜チャンバーと、基板ホルダーに絶縁性基板2を垂直保持して上記複数の成膜チャンバー間を搬送するための搬送手段とを備えている。図3は成膜装置の一部を例示する図である。図中、11a,11bは成膜チャンバーであり、成膜チャンバー11aはバイアス電圧非印加成膜に用いられ、成膜チャンバー11bはバイアス電圧印加成膜に用いられる。13a乃至13cはゲートバルブである。
【0030】
本装置の成膜チャンバー11a,11bはいずれも基板2の両主面に対してスパッタカソードを備えており、基板2の両面から同時成膜することができる。また、基板ホルダーの搬送手段(不図示)は、紙面左右方向に基板ホルダーを搬送可能である。尚、本例においては、成膜チャンバー11aと11bとが水平方向にライン状に並んだ状態を示したが、本発明の成膜装置はライン状の成膜装置に限定されるものではない。例えば中央に位置するチャンバーの周囲を複数の成膜チャンバーが取り囲んだ形態であっても良い。
【0031】
本装置において、バイアス電圧印加成膜を行う成膜チャンバー11bの前段に位置するバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバー11aは、下方から補助基板支持爪6を突き上げて上昇させ、あるいは補助基板支持爪6を降下させるための駆動手段14を備えている。駆動手段14の動作は制御手段100によって制御される。制御手段100の制御の下に、駆動手段14は補助基板支持爪6を突き上げ、基板2に接触させて基板2を補助基板支持爪6に支持させると同時に、基板2から基板支持爪5,5を離脱させることができる。図3の成膜チャンバー11aにおいては、駆動手段14が補助基板支持爪6を突き上げた状態を示しており、制御手段100の制御の下に駆動手段14が上昇した状態を解除する(矢印の方向に降下する)ことによって、補助基板支持爪6も下方に移動して基板2から補助基板支持爪6は離脱する。尚、図3においては、バイアス電圧印加成膜を行うチャンバー11bの前段に位置し、駆動手段14を備えたバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバーが一つだけ示されているが、本発明はこれに限定されない。バイアス電圧印加成膜を行う前に複数回のバイアス電圧非印加成膜を行う場合には、バイアス電圧印加成膜を行うチャンバー11bの前段に、駆動手段14を備えたバイアス電圧非印加成膜を行う成膜チャンバーが複数配置される。
【0032】
図11A、B乃至図13A、Bは、基板ホルダーの本体1の斜視図である。図11Aでは、制御手段100により駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6と基板2とが非接触となり、基板支持爪5と基板支持爪3とで基板2を支持した状態になる。図11Bでは、制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6と基板2とが接触し、基板支持爪5が基板と非接触となり、補助基板支持爪6と基板支持爪3とで基板2を支持した状態になる。図12Aは、図11Bにおいて、駆動手段14が上昇して、補助基板支持爪6と接触し、これに伴い補助基板支持爪6が上昇し、基板2と接触した状態を示す図であり、図12Bは、補助基板支持爪6が基板と接触し、基板支持爪5が基板2と非接触となった状態を拡大して示した図である。図13Aは、図11Aにおいて、駆動手段14が下降し、補助基板支持爪6が基板2と非接触となり、基板支持爪5が基板2と接触し、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2を支持した状態を示す図であり、図13Bは、図13Aにおける基板支持爪3、基板支持爪5の状態を拡大して示す図である。
【0033】
また、バイアス電圧印加成膜を行う成膜チャンバー11bは、例えば、下方から本体1にバイアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加手段16とバイアス電圧印加手段16に電圧を供給する電源15を備えている。バイアス電圧印加手段16は上昇または降下が可能な電極を有する(以下、「バイアス電圧印加手段16の電極」を単に「バイアス電圧印加手段16」ともいう)。バイアス電圧印加手段16の電極が上昇して本体1に接触すると、基板ホルダーの本体1を介して基板支持爪3,3,5,5の少なくとも1つにバイアス電圧印加手段16からバイアス電圧が印加される。制御手段100は、電源15及びバイアス電圧印加手段16と接続し、電源15のON/OFF制御や、バイアス電圧印加手段16が有する電極の上昇または降下を制御することが可能である。
【0034】
図3の成膜チャンバー11bにおいては、バイアス電圧印加手段16の電極を上昇させて本体1に接触させた状態を示している。この状態から、制御手段100の制御の下にバイアス電圧印加手段16の電極を矢印の方向に降下させることによって、バイアス電圧印加手段16の電極は本体1に非接触となり、本体1にバイアス電圧が印加できなくなる。
【0035】
図14A、Bは、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された場合の斜視図である。図14Aでは、バイアス電圧印加手段16の電極が下降し、本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態を示す。図14Bでは、制御手段100により制御されたバイアス電圧印加手段16の電極が上昇し、本体1と接触し、基板2にバイアスが印加されている状態を示す。
【0036】
図17は、駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して垂直方向に配置された、図3の構成例の斜視図である。成膜チャンバー11aにおいて、制御手段100により駆動手段14が上昇し、補助基板支持爪6が基板2と接触して、基板2を上昇させると基板支持爪5は基板2と非接触となる。この場合、基板支持爪3と補助基板支持爪6とで基板2が支持される。成膜チャンバー11bにおいて、制御手段100によりバイアス電圧供給手段16が上昇し、基板ホルダーの本体1と接触すると、基板2にバイアスが印加される。尚、図17Bでは、駆動手段14が無いため、補助基板支持爪6は降下して基板2から離れ、補助基板支持爪6は基板2と非接触となり、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2が支持される。
【0037】
図8は、制御手段100の機能構成を示すブロック図である。図8において、成膜装置800(第1の成膜チャンバー11a、第2の成膜チャンバー11bを含む)は、制御手段100に接続されている。制御手段100は、第1の成膜チャンバ11a、第2の成膜チャンバー11bからの入力信号を受け取る。制御手段100は、駆動手段14、電源15、バイアス電圧印加手段16、及び成膜装置800を構成するチャンバー内で実行されるプロセスを制御するようにプログラムされた制御プログラムを動かし、動作指示を成膜装置800に出力する。制御手段100は、図8に示すコンピュータ(情報処理装置)の構成を有する。制御手段100は、成膜装置800から入力信号の入力を受け付ける入力部802、プログラム及びデータを有するコンピュータ可読の記憶媒体803、プロセッサ804及び制御信号を含む動作指示を成膜装置800に出力する出力部805を有する。入力部802は、成膜装置800からのデータ入力機能の他に、例えば、ネットワークを介して接続している他の外部装置からの命令の入力を受け付けることが可能である。
【0038】
即ち、制御手段100は、基板ホルダーが第1の成膜チャンバー(図3の11a)内にある時には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)と絶縁性の基板2とが接触状態となるように駆動手段14を移動させ、制御手段100は、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)を、絶縁性の基板2と非接触な状態にする。制御手段100は、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)以外の基板支持爪3(第1の支持部材)と補助基板支持爪6(第2の支持部材)とで基板2を支持しながら基板上に導電性膜である下地層のスパッタ成膜を行うように制御する。
【0039】
また、基板ホルダーが第2の成膜チャンバー(図3の11b)内にある時には、第2の成膜チャンバー(図3の11b)内には、補助基板支持爪6(第2の支持部材)を上下動させる駆動手段14はないため、補助基板支持爪6(第2の支持部材)は基板2と非接触状態となるよう移動し、基板2と非接触状態になる。
【0040】
制御手段100は、バイアス印加手段16の電極を基板ホルダーの本体1と接触状態となるように移動させ、基板支持爪3(第1の支持部材)で導電性の膜がついた絶縁性基板を保持し、バイアス電圧印加支持部材(基板支持爪5)から導電性の膜がついた絶縁性基板にバイアスを印加しながら、基板に薄膜を成膜するように制御する。
【0041】
図9は、図3の変形例を示す斜視図である。なお、図3では、バイアス電圧印加手段16は本体1の下方に設けられており、バイアス電圧印加手段16の接点が上下動する構成となっている。本発明の趣旨は、図3の構成に限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、バイアス電圧印加手段16を本体1と平行に配置し、水平方法に電極を移動させて、本体1にバイアス電圧を印加する構成とすることも可能である。
【0042】
図10Aは上下方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、水平方向に電極が移動可能な状態で配置されたバイアス電圧印加手段16と、の構成例を示す図である。図10Aは、各バイアス電圧印加手段16の電極は基板ホルダーの本体1に対して非接触な状態を示す。制御手段100は、各バイアス電圧印加手段16の電極を基板ホルダーの本体1に対して接触するように制御すると、図10Bに示すようになる。
【0043】
図15A、Bは、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された場合の斜視図である。水平方向に設けられたバイアス電圧印加手段16が、制御手段100により制御されて、図中の水平方向右側(矢印1501の方向)に電極が移動すると、バイアス電圧印加手段16の電極は基板ホルダーの本体1と非接触となり、基板2にバイアス電圧が印加されていない状態になる(図15A)。また、水平方向に設けられたバイアス電圧印加手段16が、制御手段100により制御されて、図面中水平方向左側(矢印1502の方向)に電極が移動すると、バイアス電圧印加手段16の電極が基板ホルダーの本体1と接触し、基板2にバイアス電圧が印加されている状態になる(図15B)。
【0044】
図16は、モータ駆動機構を用いた駆動手段14と、バイアス電圧印加手段16が基板ホルダーの本体1に対して水平方向に配置された構成例を示す図である。制御手段100によりモータの駆動量が制御されると駆動手段14が上昇して補助基板支持爪6と接触し、駆動手段14の上昇に従って補助基板支持爪6が上昇して基板2と接触する。成膜チャンバー11aにおいて、基板支持爪3と補助基板支持爪6とで基板2が支持された状態になる。この状態では、基板支持爪5は、基板2に非接触な状態になる。制御手段100によりバイアス電圧印加手段16の電極が水平方向に移動すると、基板ホルダーの本体1と接触し、基板2にバイアス電圧が印加される。成膜チャンバー11bにおいて、補助基板支持爪6は、基板2と非接触であり、基板支持爪3と基板支持爪5とで基板2が支持される。
【0045】
本発明の成膜方法について、図3の装置を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0046】
本発明の成膜方法は、絶縁性基板の両主面に複数層の薄層を連続的に成膜する方法である。本発明においては、先ず、成膜チャンバー11aにおいて絶縁性の基板2にバイアス電圧非印加成膜により金属等からなる導電性の第1層を成膜する(第1の成膜工程)。第1の成膜工程では、駆動手段14によって補助基板支持爪6を突き上げて基板2に接触させると同時に基板支持爪5,5を基板2から離脱させ、補助基板支持爪6と基板支持爪3,3とで基板2を支持する。この時、バイアス電圧印加支持部材として機能する基板支持爪5は、絶縁性基板と非接触な状態になる。従って、基板支持爪5,5が非接触な状態に保持される前に、基板2に接触していた位置にも、金属等からなる導電性の第1層が成膜される。
【0047】
第1層の成膜が終了したら、補助基板支持爪6の駆動手段14を解除して、板バネ7の復元力により補助基板支持爪6を下方に移動させる。これにより、基板2から補助基板支持爪6が離脱し、代わって基板支持爪5,5が下方に降りてきた基板2を支持する。この時、基板支持爪5,5が基板2に接触する位置には第1層が成膜されているため、基板支持爪5,5は第1層に接触する。
【0048】
第1層の成膜が終了した基板2を基板ホルダーごと成膜チャンバー11bに搬送し、基板ホルダーの本体1にバイアス電圧印加手段16の電極を接触させて、本体1にバイアス電圧を印加する。基板2は基板支持爪3,3,5,5によって支持されているため、本体1と基板支持爪3,3,5,5のうちの少なくとも1つを介して第1層にバイアス電圧が印加される。この状態で成膜を行うことにより、第1層の上にバイアス電圧印加成膜によって新たな薄層(第2層)が成膜される(第2の成膜工程)。
【0049】
この時、基板支持爪3,3,5,5はいずれにもバイアス電圧が印加されるが、基板支持爪3,3は第1層の成膜時に基板2を支持していたため、第1層との接触領域が非常に小さく、電圧印加効率が悪い。これに対して、基板支持爪5,5は第1層の成膜時に基板2から離脱していたため、基板支持爪5,5が基板2に接触する領域にも第1層が成膜されており、基板支持爪5,5と第1層との接触領域が広く、効率の良い電圧印加を行うことができる。
【0050】
本発明によれば、バイアス電圧印加成膜工程を複数回繰り返す場合であっても、工程毎に基板支持爪5,5を基板2から離脱させる必要がなく、基板支持爪5,5の基板2からの離脱によるパーティクルの発生が最小限に抑えられる。
【0051】
次に、本発明の第2の基板ホルダーについて図4を用いて説明する。図4において、4は絶縁性部材である。第2の基板ホルダーは、基板支持爪5,5をバイアス電圧印加用基板支持爪(バイアス電圧印加支持部材)とし、該バイアス電圧印加用基板支持爪以外の基板支持爪3,3をバイアス電圧が印加されないバイアス電圧非印加用基板支持爪(バイアス電圧非印加支持部材)とする。即ち、基板支持爪5,5は導電性の素材で構成して本体1に電気的に接続し、常時基板2に接触して支持している基板支持爪3,3を絶縁性或いは本体1とは電気的に絶縁した構成とする。尚、図4においては、導電性の基板支持爪3,3を絶縁性部材4を介して本体1に取り付けているが、基板支持爪3,3を絶縁性の素材で構成することにより、本体1に直接取り付けてもかまわない。
【0052】
第2の基板ホルダーでは、本体1に外部のバイアス電圧印加手段からバイアス電圧が印加された場合でも、該基板支持爪3,3にはバイアス電圧が印加されないため、バイアス電圧印加成膜時に基板支持部での異常放電発生を低減することができる。
【0053】
本例においても、制御手段100の制御の下に駆動手段14を上下に移動させて、補助基板支持爪6を基板2に接触・非接触させることにより、基板支持爪5,5を基板2に非接触・接触させることができる。よって、基板2は、基板支持爪3,3と補助基板支持爪6とに支持された状態(第1の状態)と、基板支持爪3,3,5,5に支持された状態(図4に示す第2の状態)と、の2つの状態をとる。換言すれば、バイアス電圧非印加用の基板支持爪3,3は常に基板2に接触して基板2を支持しており、バイアス電圧印加・非印加に応じて、バイアス電圧印加用の基板支持爪5,5または補助基板支持爪6のいずれかが基板2の支持に加わることになる。第1の状態または第2の状態の切替えは、制御手段100の制御の下に実行される。
【0054】
尚、本例において基板支持爪の本数は、例えば、先に図1、図2を参照して説明した第1の基板ホルダーと同様である。即ち、バイアス電圧印加用、バイアス電圧非印加用のそれぞれが少なくとも1本必要であるが、合計数は、基板2を安定して保持できれば少ない方が爪によるシャドウエリアが少なくなるため好ましい。図4においてはそれぞれ2本ずつとしたが、基板支持爪3,3については、基板2の鉛直上方に1本としてもかまわない。また、基板支持爪5,5については、どちらか一方のみをバイアス電圧印加用として、他方を基板支持爪3,3と同様の構成にしてバイアス電圧非印加用としてもかまわない。
【0055】
図4に示す第2の基板ホルダーを用いた成膜装置は、基本的に第1の基板ホルダーを用いた成膜装置と同様であり、図3に例示した装置が好ましく用いられる。
【0056】
即ち、図3の成膜チャンバー11aに設けた駆動手段14によって、第2の基板ホルダーの補助基板支持爪6を突き上げ、補助基板支持爪6に基板2を支持させると同時に、基板2から基板支持爪5,5を離脱させる。また、成膜チャンバー11bにおいては、バイアス電圧印加手段16の電極を本体1に接触させることで、本体1を介して基板支持爪5,5にバイアス電圧印加手段16のバイアス電圧が印加される。
【0057】
また、第2の基板ホルダーを用いた成膜方法は、バイアス電圧印加成膜時に、本体1とは電気的に絶縁された基板支持爪3,3からはバイアス電圧が印加されない点でのみ、第1の基板ホルダーを用いた成膜方法とは異なる。
【0058】
尚、本例においては、補助基板支持爪6を絶縁性の素材で構成するか、或いは本体1と電気的に絶縁した構成とすることにより、バイアス電圧非印加成膜時に、基板2を支持する基板支持爪3,3,6を全て本体1とは電気的に絶縁された状態とすることができる。よって、本体1にバイアス電圧が印加される状態であっても、基板2にはバイアス電圧を印加せずに成膜することができ、常時本体1にバイアス電圧が印加される装置、或いは成膜チャンバーであっても、バイアス電圧非印加成膜を行うことができる。
【0059】
本発明は、特にハードディスク製造に好ましく用いられる。ハードディスクの製造においては、絶縁性基板の両主面に、少なくとも下地層、磁性層、保護層が成膜されるが、本発明においては、先ず下地層を前記したバイアス電圧非印加成膜によって成膜し、次いで磁性層、保護層をバイアス電圧印加成膜によって成膜すれば良い。
【0060】
本発明においては、スパッタによる成膜の事例を取り上げたが、CVDやエッチングなどのバイアス印加工程にも適用できる。また、本発明によるホルダーによって、導電性基板を処理する事は可能である。
【0061】
尚、本発明の基板ホルダー及びこれを用いた成膜方法、成膜装置はハードディスクの製造以外にも好ましく用いられるものである。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。
【0063】
本願は、2007年12月26日提出の日本国特許出願特願2007−333836を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続的に成膜する成膜装置であって、
前記絶縁性基板に電圧を印加しないで前記絶縁性基板に導電性膜を成膜する第1の成膜チャンバーと、
前記絶縁性基板に電圧を印加しながら前記絶縁性基板に薄膜を成膜する第2の成膜チャンバーと、
開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、前記開口部の内周から当該開口部内に向けて突出して形成されており、前記絶縁性基板の一端部を支持するための複数の挟持部材を備え、当該複数の挟持部材のうち少なくとも一つが前記絶縁性基板にバイアス電圧を印加可能なバイアス電圧印加支持部材として機能する第1の支持部材と、前記絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、前記開口部内に向けて突出し、または当該開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する基板ホルダーと、
前記第1の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材における前記バイアス電圧印加支持部材として機能する狭持部材が前記基板から離れるように、前記第2の支持部材の狭持部材により前記基板を支持しながら前記第2の支持部材を移動させ、または、前記絶縁性基板の前記他の端部が前記第2の支持部材の狭持部材により支持されている位置から前記第1の支持部材の挟持部材により前記絶縁性基板が支持される位置まで前記第2の支持部材を移動させるためのモータ駆動機構を用いた駆動手段と、
前記第2の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材へ電圧を印加する電圧印加手段と、
前記駆動手段による移動と、前記電圧印加手段による前記電圧の印加と、前記第1の成膜チャンバーの動作と、前記第2の成膜チャンバーの動作と、を制御する制御手段と、を備え、
前記第1の支持部材の前記挟持部材が前記基板から離れた位置で、前記制御手段により制御された前記第1の成膜チャンバーは前記基板の上に導電性膜を成膜し、
前記制御手段は、前記モータ駆動機構の駆動量を制御して、前記導電性膜が成膜された前記基板を前記第1の支持部材の前記挟持部材により支持される位置まで前記第2の支持部材を下降させ、
前記制御手段は、前記第1の支持部材に前記電圧が印加される様に前記電圧印加手段を制御し、前記電圧を印加しながら前記第2の成膜チャンバーの動作を制御して前記導電性膜が成膜された絶縁性基板に薄膜を成膜することを特徴とする成膜装置。
【請求項1】
絶縁性基板の両面に同時に、複数層の薄膜を連続的に成膜する成膜装置であって、
前記絶縁性基板に電圧を印加しないで前記絶縁性基板に導電性膜を成膜する第1の成膜チャンバーと、
前記絶縁性基板に電圧を印加しながら前記絶縁性基板に薄膜を成膜する第2の成膜チャンバーと、
開口部を有する導電性の基板ホルダー本体と、前記開口部の内周から当該開口部内に向けて突出して形成されており、前記絶縁性基板の一端部を支持するための複数の挟持部材を備え、当該複数の挟持部材のうち少なくとも一つが前記絶縁性基板にバイアス電圧を印加可能なバイアス電圧印加支持部材として機能する第1の支持部材と、前記絶縁性基板の他の端部を支持するための狭持部材を備え、前記開口部内に向けて突出し、または当該開口部内から退避するように移動可能な第2の支持部材と、を有する基板ホルダーと、
前記第1の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材における前記バイアス電圧印加支持部材として機能する狭持部材が前記基板から離れるように、前記第2の支持部材の狭持部材により前記基板を支持しながら前記第2の支持部材を移動させ、または、前記絶縁性基板の前記他の端部が前記第2の支持部材の狭持部材により支持されている位置から前記第1の支持部材の挟持部材により前記絶縁性基板が支持される位置まで前記第2の支持部材を移動させるためのモータ駆動機構を用いた駆動手段と、
前記第2の成膜チャンバーに設けられ、前記第1の支持部材へ電圧を印加する電圧印加手段と、
前記駆動手段による移動と、前記電圧印加手段による前記電圧の印加と、前記第1の成膜チャンバーの動作と、前記第2の成膜チャンバーの動作と、を制御する制御手段と、を備え、
前記第1の支持部材の前記挟持部材が前記基板から離れた位置で、前記制御手段により制御された前記第1の成膜チャンバーは前記基板の上に導電性膜を成膜し、
前記制御手段は、前記モータ駆動機構の駆動量を制御して、前記導電性膜が成膜された前記基板を前記第1の支持部材の前記挟持部材により支持される位置まで前記第2の支持部材を下降させ、
前記制御手段は、前記第1の支持部材に前記電圧が印加される様に前記電圧印加手段を制御し、前記電圧を印加しながら前記第2の成膜チャンバーの動作を制御して前記導電性膜が成膜された絶縁性基板に薄膜を成膜することを特徴とする成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−277343(P2009−277343A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141591(P2009−141591)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【分割の表示】特願2009−519729(P2009−519729)の分割
【原出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【分割の表示】特願2009−519729(P2009−519729)の分割
【原出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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